説明

操作子装置

【課題】ねじりコイルバネの暴れによる衝撃や衝突音を抑制する。
【解決手段】ねじりコイルバネ20は、巻回部23と巻回部23の軸中心C0に直交する方向に延設される脚部21、22とを有する。回動体51には支持軸52、駆動部53が設けられる。ねじりコイルバネ20の装着状態で且つ操作子56の非操作状態においては、脚部21、22が開脚状態でなおかつ脚部係合部54a、54bによって互いが開く方向に押圧されることで、ねじりコイルバネ20に付勢力F1が働き、支持軸52の外周の下部に巻回部23の内周の下部が当接して、巻回部23が支持軸52に支持される。中立状態から操作子56を右方に操作して回動体51が時計方向に回動する際、駆動部53が脚部21を駆動し、脚部21は脚部係合部54aから離れて開く方向に変位するが、脚部22は脚部係合部54bに係止されて動きが規制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ねじりコイルバネにより復帰力を受ける操作子を有した操作子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ねじりコイルバネにより復帰力を受ける操作子を有した操作子装置が知られている。例えば、特許文献1の装置では、軸に固定された中央復帰用ねじりコイルバネの両端部の両側に係合片が弾発的に係合する。回転可能なホイール本体が、ねじりコイルバネの作用により常に中央位置に復帰するよう弾発力を受ける。
【0003】
この種の装置におけるねじりコイルバネによる代表的な復帰機構を図6で説明する。図6(a)は、従来の操作子装置のねじりコイルバネによる復帰機構の例を示す模式図である。
【0004】
不図示の操作子の操作により回動体151がX方向に回動自在である。ねじりコイルバネ120の巻回部123が軸部152に巻回装着されている。ねじりコイルバネ120の2本の脚部121、122が巻回部123から平行に延び、可動しない固定部154を挟むように位置する。回動体151には、駆動部153が設けられる。
【0005】
かかる構成において、通常、巻回部123と軸部152との間は僅かな間隙が生じており、両者は遊嵌状態となっている。また、操作子の非操作状態においては、必ずしも脚部121、122の双方が固定部154に当接しているわけではなく、脚部121、122は特に付勢力を受けていない。
【0006】
操作子の操作により回動体151が例えば同図時計方向に回動すると、脚部121が駆動されると共に、脚部122は固定部154により動きが規制されることで、脚部121、122は互いに開くように姿勢を変える。それにより、巻回部123は同図上方に付勢されることになる。操作子の操作を解除すると、ねじりコイルバネ120の力により回動体151が駆動部153から復帰方向の力を受けて初期位置(中立位置)に復帰する。同図反時計方向へ操作された場合も、回動方向が反対になるが、基本的動作は同じである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第2921483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の装置では、非操作状態において、巻回部123と軸部152との当接箇所は通常、重力によって定まるか、あるいは製造誤差により不定である。しかし一旦操作されると、巻回部123が軸部152の下部に当接する。従って、操作と操作解除あるいは逆方向への操作とが繰り返されることで、ねじりコイルバネ120が暴れ、巻回部123と軸部152との衝撃が指に伝わったり、衝突音が生じたりするという問題があった。
【0009】
また、図6(b)に示すように、操作子の操作時における脚部121、122の変位方向が図6(a)の例とは逆に互いに閉じる方向となる構成もあり得る。すなわち、固定部159の間に脚部121、122が挟まれるように位置し、回動体151の駆動部155、156は、それぞれ脚部121、122を閉じ方向に駆動するように構成される。回動体151において、巻回部123の上下に支持部157、158が設けられる。
【0010】
この構成では、非操作状態においては、重力により下側の支持部158に巻回部123が支持されるか、あるいは支持される位置は不定である。しかし、操作子の操作により脚部121、122が駆動されると、巻回部123は浮き上がり、上側の支持部157に当接することになる。従って、図6(a)の例と同様に、操作と操作解除あるいは逆方向への操作とが繰り返されることで、ねじりコイルバネ120が暴れるという作用が生じる。
【0011】
本発明は上記従来技術の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、ねじりコイルバネの暴れによる衝撃や衝突音を抑制することができる操作子装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明の請求項1の操作子装置は、巻回部(23)と該巻回部から該巻回部の軸中心(C0)に直交する方向に延設された2本の脚部(21、22)とを有するねじりコイルバネ(20)と、前記ねじりコイルバネの前記巻回部を支持するための支持部(52、63、64)と、操作により回動する回動体(51)と、前記回動体に設けられ、前記2本の脚部のうち前記回動体の回動方向に応じた一方の脚部を駆動する駆動部(53、57、58)と、前記駆動部により前記一方の脚部が駆動されるときに他方の脚部の動きを規制する脚部係合部(54a、54b、59a、59b)とを有し、前記巻回部は、前記駆動部により駆動されることによる前記脚部の全可動域(θ)において前記軸中心に直交する方向の成分を持つ力(F1)により付勢されることで前記支持部に当接して支持されるように構成されたことを特徴とする。
【0013】
好ましくは、前記巻回部は、弾性部材(61)により付勢される。
【0014】
前記2本の脚部の延出方向は、前記駆動部により駆動されることによる全可動域において、前記巻回部の軸中心方向視で互いに一致することがない。
【0015】
好ましくは、前記2本の脚部は、前記駆動部により駆動されることによる全可動域において、前記巻回部から遠い部分同士ほど互いの間隔が大きく、前記2本の脚部は、前記駆動部により駆動されることで互いの間隔が開く方向に回動する。
【0016】
なお、上記括弧内の符号は例示である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ねじりコイルバネの暴れによる衝撃や衝突音を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る操作子装置の斜視図である。
【図2】本操作子装置の模式的な側面図である。
【図3】第2の実施の形態に係る操作子装置の模式的な側面図である。
【図4】第3の実施の形態に係る操作子装置の模式的な側面図である。
【図5】復帰機構の変形例を示す模式的な側面図である。
【図6】従来の操作子装置のねじりコイルバネによる復帰機構の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0020】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る操作子装置の斜視図である。この操作子装置は、例えばホイール操作子やジョイスティックとして構成され、用途としては電子楽器の楽音制御用の入力装置等が適している。制御対象としては、例えば音高、音色、音量のほか、ビブラート、リバーブ等の各種効果に関する楽音パラメータが考えられる。ただし、楽音制御に限定されるものではなく、楽器以外の電気機器(ゲーム装置等)にも適用可能である。
【0021】
この操作子装置は、大別して3つのユニットから構成される。すなわち、第1のユニットである親ユニット10、第2のユニットである子ユニット30、第3のユニットである孫ユニット50を有する。孫ユニット50は、子ユニット30に対してX方向に相対的に回動自在である。子ユニット30は、親ユニット10に対してY方向に相対的に回動自在である。電気機器に親ユニット10が固定されるとし、親ユニット10を固定体と考えれば、子ユニット30と孫ユニット50は可動体といえる。
【0022】
操作子56は、操作者により直接操作される構成要素であり、孫ユニット50及び/又は子ユニット30の可動により、X方向及びY方向、またはこれら双方の成分を含む方向に操作が可能である。例えば操作子56をX方向の成分を含む方向に操作すると、それに応じて孫ユニット50がX方向に回動する。操作子56をY方向の成分を含む方向に操作すると、それに応じて子ユニット30が孫ユニット50と一体となって親ユニット10に対してY方向に回動する。
【0023】
親ユニット10は、上ケース11を含んで一体に構成され、通常、親ユニット10が電子機器に固定される。子ユニット30は、いずれも樹脂製のホイール41及び下フレーム42を有する。孫ユニット50は、樹脂製の回動体51と操作子56とを有する。棒状の操作子56は、ゴム、または回動体51より柔らかい樹脂で一体に形成される。操作子56は、非操作時において上ケース11から突出している。以降の説明上、操作子56の突出方向を上方とする。
【0024】
本操作子装置では、操作子56の操作により回動した孫ユニット50が、操作子56の操作解除により子ユニット30に対して初期の中立位置に復帰するための復帰機構を設けている。以下、模式図を用いてこの復帰機構の構成を説明する。
【0025】
図2は、本操作子装置の模式的な側面図である。この図では、操作子装置を概念的に模式図として描いているが、図1に示すものと同じ構成要素には同じ符号が付されている。また、図1、図2(a)は操作子56の非操作状態、図2(b)は操作子56の操作状態を示している。操作子56が非操作状態であるときの孫ユニット50の位置が中立位置である。なお、孫ユニット50は操作子56という形態の要素を有しなくてもよく、ホイール操作子のように、孫ユニット50自体が直接されて回動する構成であってもよい。
【0026】
孫ユニット50は、子ユニット30に対してX方向に相対的に回動するとき、回動軸AXを中心に回動する。孫ユニット50の回動体51には、円柱状に突設される支持軸52のほか、円弧状に突設される駆動部53が一体に設けられる。回動体51に近接して固定部54が設けられる。固定部54は、子ユニット30の一部として子ユニット30に固定的に設けられ、上部両側に脚部係合部54a、54bを有する。
【0027】
孫ユニット50と子ユニット30との間には、孫ユニット50を中立位置に復帰させる復帰機構の主要部品であるねじりコイルバネ20が介装される。ねじりコイルバネ20は金属製で、巻回部23と、一対となっている2本の脚部21、22とを有して一体に形成される。巻回部23は円形の環状であり、その中心位置を貫通する軸線が巻回部23の軸中心C0として認識される。脚部21、22は、軸中心C0に直交する方向に延設されている。
【0028】
支持軸52はねじりコイルバネ20の巻回部23を支持するための支持部として機能する。支持軸52の外周側に巻回部23が遊嵌される。軸中心C0は回動軸AXとは平行であるが、支持軸52の外形よりも巻回部23の内径が大きいので、支持軸52に対して巻回部23が偏倚して支持される状態では軸中心C0と回動軸AXとは位置がずれる。
【0029】
脚部21、22は、巻回部23から遠い部分(先端部)同士ほど互いの間隔が大きくなるよう、いわゆる拡開(開脚)している。脚部21、22の単体自由状態での、固定部54の脚部係合部54a、54bに当接すべき部分の間隔は、脚部係合部54a、54bの図2(a)の横幅より小さめとなるよう設計されている。
【0030】
従って、ねじりコイルバネ20の装着状態で且つ操作子56の非操作状態においては、脚部21、22の互いに対向する側が、それぞれ固定部54の脚部係合部54a、54bに圧接状態となっている。すなわち、脚部係合部54a、54bにより脚部21、22の閉脚方向の位置が規制されている。この状態において、駆動部53が脚部21、22にちょうど当接するか、わずかに間隙を保つように、駆動部53の図2(a)の横幅が設定されている。これとは逆に、操作子56の非操作状態において、脚部係合部54aまたは脚部係合部54bが脚部21、22とはわずかに離間し、脚部21、22が駆動部53に圧接状態となって脚部21、22の閉脚方向の位置が規制されてもよい。
【0031】
脚部21、22が開脚状態でなおかつ脚部係合部54a、54bによって互いが開く方向に押圧されているので、ねじりコイルバネ20の全体としては図2(a)の上方に付勢する付勢力F1が働く。しかも、この付勢力F1は、ねじりコイルバネ20を持ち上げるのに十分なほど大きく、これにより、支持軸52の外周の下部に巻回部23の内周の下部が当接する。その結果として、ねじりコイルバネ20は、中立状態において、脚部係合部54a、54bとの2箇所の当接点と支持軸52との1箇所の当接点の3点で、支持軸52と固定部54との協働により支持される。
【0032】
操作子56を操作すると次のように動作する。図2(a)の中立状態から操作子56を図2(a)の右方に操作すると、回動体51がX方向のうち図2(a)の時計方向に操作子56と一体に回動する。その際、図2(b)に示すように、回動体51と一体に回動する駆動部53が脚部21を駆動し、脚部21は脚部係合部54aから離れて開く方向(時計方向)に変位する。しかし、脚部22は脚部係合部54bに係止されて動きが規制される。
【0033】
この状態では、ねじりコイルバネ20自身の弾性により、脚部21から駆動部53を介して回動体51に復帰方向(反時計方向)への付勢力が働く。従って、操作子56の操作を解除すると、回動体51が元の中立状態に復帰する。操作子56を左方に操作したときは、これとは脚部21、22の関係や回動方向が逆になる。すなわち、2本の脚部21、22は各々、駆動部53により駆動されることで互いの間隔が開く方向に回動することになる。脚部21、22の駆動方向(回動方向)は、中立状態において脚部係合部54a、54bにより押圧される回動方向と同じである。
【0034】
ここで、駆動部53により駆動されることによる脚部21、22のそれぞれの全可動域をθとする(図2(a))。全可動域θは、例えば、回動体51が子ユニット30等におけるストッパのような部分に当接して回動が規制されることで定まる。脚部21、22の各々の全可動域θは共通であるが、異なっていてもよい。操作方向にかかわらず、脚部21、22は、全可動域θにおいて常に開脚状態を維持し、軸中心C0方向視において、それらの延出方向が互いに一致することはない。
【0035】
上記した付勢力F1の方向は、脚部21、22の回動位置によって少しずつ変化するが、全可動域θにおいては常時、軸中心C0に直交する方向(ここではほぼ上方)の成分を持つ力である。しかも、付勢力F1の方向は軸中心C0を通り且つ脚部21と脚部22との間を通る直線の方向でもある。
【0036】
本実施の形態によれば、巻回部23が、脚部21、22の全可動域θにおいて軸中心C0に直交する付勢力F1により付勢されることで、支持軸52に当接して支持される。このような作用は、中立状態を含め脚部21、22の全可動域θにおいて生じる。付勢力F1の方向は基本的には上方であって、大きく変化したり逆転したりするようなことがない。従って、巻回部23と支持軸52との当接位置が可動途中でランダムに変化するようなことがなく、ねじりコイルバネ20の暴れによる衝撃や衝突音を抑制することができる。
【0037】
特に、軸中心C0方向視において、脚部21、22の延出方向が全可動域θにおいて互いに一致することがない。また、操作子56の非操作状態において脚部係合部54a、54bが脚部21、22のそれぞれを付勢する回動方向は、脚部21、22が駆動部53により駆動されるときに付勢されるのと同じ方向である。従って、巻回部23を支持軸52に当接させるべく付勢するための上記コイルバネ20のような特別な付勢手段を設ける必要がなく、構成が簡単である。また、付勢力F1の方向は、軸中心C0を通り且つ脚部21と脚部22との間を通る直線の方向であって、全可動域θにおいて大きく変化しないので、巻回部23は支持軸52に対してほぼ決まった位置で当接し、位置決めがなされる。これにより、巻回部23の位置や支持状態が安定する。
【0038】
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態では、ねじりコイルバネ20において一対の脚部21、22は開脚型であった。本発明の第2の実施の形態では、脚部21、22を閉脚型に構成すると共に、脚部21、22が駆動される方向を第1の実施の形態とは逆にし、互いに閉じる方向とする。
【0039】
図3(a)、(b)は、第2の実施の形態に係る操作子装置の模式的な側面図である。図3(a)、(b)はそれぞれ、操作子56の非操作状態(中立状態)、操作状態を示している。
【0040】
図3(a)に示すように、中立状態において、ねじりコイルバネ20の脚部21、22は、巻回部23から遠い部分同士ほど互いの間隔が小さい。固定部59の脚部係合部59a、59bの間に脚部21、22が挟まれるように位置し、なおかつ中立状態において脚部係合部59a、59bによって脚部21、22は閉じる方向に押圧されている。
【0041】
これにより、ねじりコイルバネ20の全体としては図3(a)の上方に付勢する付勢力F1が働き、支持軸52の外周の下部に巻回部23の内周の下部が当接する。その結果として、第1の実施の形態と同様に、ねじりコイルバネ20は、中立状態において、脚部係合部59a、59bとの2箇所の当接点と支持軸52との1箇所の当接点の3点で、支持軸52と固定部59との協働により支持される。
【0042】
回動体51の2つの駆動部57、58は、それぞれ脚部21、22の互いに対向する側の反対側(外側)に設けられる。2本の脚部21、22は各々、駆動部57、58により駆動されることで互いの間隔が閉じる方向に回動することになる。操作方向にかかわらず、脚部21、22は、全可動域θにおいて常に閉脚状態を維持し、軸中心C0方向視において、延出方向が互いに一致することはない。第1の実施の形態と同様に、上記した付勢力F1の方向はほぼ上方であって、全可動域θにおいて常時、軸中心C0に直交し、軸中心C0を通り、且つ脚部21と脚部22との間を通る直線の方向である。
【0043】
図3(a)の中立状態から操作子56を図3(a)の右方に操作すると、回動体51がX方向のうち図3(a)の時計方向に操作子56と一体に回動する。その際、図3(b)に示すように、回動体51と一体に回動する駆動部58が脚部22を駆動し、脚部22は脚部係合部59bから離れて閉じる方向(時計方向)に変位する。しかし、脚部21は脚部係合部59aに係止されて動きが規制される。
【0044】
この状態では、ねじりコイルバネ20自身の弾性により、脚部22から駆動部58を介して回動体51に復帰方向(反時計方向)への付勢力が働く。従って、操作子56の操作を解除すると、回動体51が元の中立状態に復帰する。操作子56を左方に操作したときは、これとは脚部21、22の関係や回動方向が逆になる。
【0045】
本実施の形態によれば、ねじりコイルバネ20の暴れによる衝撃や衝突音を抑制すること、及び、巻回部23を付勢するための特別な付勢手段を設ける必要がないことに関し、第1の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0046】
(第3の実施の形態)
上記した第1、第2の実施の形態では、巻回部23を支持軸52に当接させるための付勢力F1を、ねじりコイルバネ20自身の弾性によって生み出すよう構成した。また、軸中心C0方向視において、脚部21、22は常時非平行であるとした。これに対し、本発明の第3の実施の形態では、専用の付勢手段を設ける。また、脚部21、22については、操作子56の非操作状態において平行とする。
【0047】
図4(a)、(b)は、第3の実施の形態に係る操作子装置の模式的な側面図である。図4(a)、(b)はそれぞれ、操作子56の非操作状態(中立状態)、操作状態を示している。
【0048】
図4(a)に示すように、中立状態において、ねじりコイルバネ20の脚部21、22は軸中心C0方向視において平行である。ねじりコイルバネ20の装着状態で且つ操作子56の非操作状態においては、脚部21、22の互いに対向する側が、それぞれ固定部54の脚部係合部54a、54bに弱く接触している。駆動部53と脚部21、22との係合関係は第1の実施の形態(図2)と同様である。
【0049】
回動体51には、バネ支持部60が固定的に設けられ、バネ支持部60と巻回部23との間につる巻きの圧縮バネ61が介装される。圧縮バネ61は、その弾性により巻回部23を上方に付勢し、第1、第2の実施の形態と同様の付勢力F1が働く。この付勢力F1により、支持軸52の外周の下部に巻回部23の内周の下部が当接する。従って、ねじりコイルバネ20は、固定部54によって回動方向の位置を規制されながら支持軸52によって支持される。
【0050】
付勢力F1は専ら圧縮バネ61によって生じるので、中立状態において脚部係合部54a、54bによって脚部21、22が押圧されている必要はない。付勢力F1を確保する観点からは、脚部21、22と脚部係合部54a、54bとはわずかに離間していても構わない。
【0051】
中立状態から操作子56を操作したときの駆動部53による脚部21、22の動作、あるいは操作を解除したときの動作は第1の実施の形態と同様である。駆動部53により駆動されることによる脚部21、22の可動方向は第1の実施の形態と同様に開く方向であり、中立状態を除けば全可動域θにおいて脚部21、22は開脚状態となる(図4(b))。
【0052】
全可動域θにおいて圧縮バネ61によるほぼ上方への付勢力F1が働き、巻回部23は同じ位置で支持軸52に当接して支持される。第1の実施の形態と同様に、付勢力F1の方向は、全可動域θにおいては常時、軸中心C0に直交し、軸中心C0を通り、且つ脚部21と脚部22との間を通る直線の方向である。
【0053】
本実施の形態によれば、ねじりコイルバネ20の暴れによる衝撃や衝突音を抑制することに関し、第1の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0054】
なお、圧縮バネ61の代わりに、引っ張りバネを、巻回部23の上部と回動体51の上部との間に介装して巻回部23を上方に引っ張るようにしてもよい。
【0055】
図5(a)〜(d)は、復帰機構の変形例を示す模式的な側面図である。
【0056】
上記した第1〜第3の実施の形態では、付勢力F1の方向は基本的に上方、すなわち、ねじりコイルバネ20の脚部21、22がない側の方向であった。しかし、これとは逆に、図5(a)、(b)に示す変形例のように、脚部21、22がある側(下方)に付勢してもよい。
【0057】
例えば、図5(a)に示すように、脚部21、22は、駆動部57、58により駆動されることで互いの間隔が閉じる方向に回動するが、全可動域θにおいて脚部21、22は開脚状態を維持するよう構成する。この構成ならば、付勢力F1の方向は常に下方となり、支持軸52の外周の上部に巻回部23の内周の上部が当接して、巻回部23が支持軸52に支持される。従ってねじりコイルバネ20は、中立状態において、脚部係合部59a、59bとの2箇所の当接点と支持軸52との1箇所の当接点の3点で、支持軸52と固定部59との協働により支持される。
【0058】
あるいは、図5(b)に示すように、脚部21、22は、駆動部53により駆動されることで互いの間隔が開く方向に回動するが、全可動域θにおいて脚部21、22は閉脚状態を維持するよう構成する。この構成ならば、付勢力F1の方向は常に下方となり、支持軸52の外周の上部に巻回部23の内周の上部が当接して、巻回部23が支持軸52に支持される。
【0059】
ところで、上記各実施の形態や変形例では、付勢力F1で付勢される巻回部23を受けて支持する支持部は支持軸52であった。しかし、支持軸52に限るものでなく、図5(c)、(d)に示すような変形例を採用することもできる。
【0060】
例えば、図5(c)に示すように、第1または第2の実施の形態(図3等)と同様の構成において、支持軸52に代えて円弧状の受け部63を回動体51に設けてもよい。受け部63は巻回部23の上方に設け、巻回部23の外側の上部と当接する。付勢力F1が上方である構成においてはこのような受け部63を設ける構成を適用できる。
【0061】
一方、図5(d)に示すように、付勢力F1が下方である構成においては、円弧状の受け部64を巻回部23の下方において回動体51に設けてもよい。受け部64は巻回部23の外側の下部と当接する。
【0062】
ところで、図4に示す構成において、付勢力F1を生じさせる弾性部材はつる巻きバネに限られず、ゴム等の弾性材であってもよい。
【0063】
また、ねじりコイルバネ20自体の弾性で付勢力F1を生じさせる構成においても、別途、弾性部材を設け、付勢力F1と同じ方向への付勢力を加算するようにしてもよい。例えば、図2または図3に示す構成であれば、圧縮バネ61と同様の上方への付勢力を生じさせる弾性部材を追加してもよい。逆に、図5(a)、(b)に示す構成であれば、圧縮バネ61ではなく引っ張りバネ等の、下方への付勢力を生じさせる弾性部材を追加してもよい。
【0064】
なお、上記各実施の形態においては、操作子56の操作解除により孫ユニット50が子ユニット30に対して中立位置に復帰する復帰機構として説明した。しかしこれに限られず、復帰機構を親ユニット10と子ユニット30との間に設けてもよい。すなわち、操作子56のY方向への操作により、孫ユニット50と子ユニット30とが一体となって親ユニット10に対して回動するので、親ユニット10に対して子ユニット30が中立位置に復帰するような復帰機構に、上記説明した各種の構成を適用してもよい。さらに言えば、4つ以上のユニットが存在する操作子装置において、相対的に回動関係にあるユニット間に上記のような復帰機構を設けてもよい。
【0065】
なお、付勢力F1は、全可動域θにおいて軸中心C0に直交する方向の成分を持てばよく、これ以外の成分を有していてもよい。
【0066】
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳述してきたが、本発明はこれら特定の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。上述の実施形態の一部を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0067】
20 ねじりコイルバネ、 21、22 脚部、 23 巻回部、 51 回動体、 52 支持軸(支持部)、 53、57、58 駆動部、 56 操作子、 54a、54b、59a、59b 脚部係合部、 61 圧縮バネ(弾性部材)、 63、64 受け部(支持部)、 C0 軸中心、 F1 付勢力、 θ 全可動域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻回部と該巻回部から該巻回部の軸中心に直交する方向に延設された2本の脚部とを有するねじりコイルバネと、
前記ねじりコイルバネの前記巻回部を支持するための支持部と、
操作により回動する回動体と、
前記回動体に設けられ、前記2本の脚部のうち前記回動体の回動方向に応じた一方の脚部を駆動する駆動部と、
前記駆動部により前記一方の脚部が駆動されるときに他方の脚部の動きを規制する脚部係合部とを有し、
前記巻回部は、前記駆動部により駆動されることによる前記脚部の全可動域において前記軸中心に直交する方向の成分を持つ力により付勢されることで前記支持部に当接して支持されるように構成されたことを特徴とする操作子装置。
【請求項2】
前記巻回部は、弾性部材により付勢されることを特徴とする請求項1記載の操作子装置。
【請求項3】
前記2本の脚部の延出方向は、前記駆動部により駆動されることによる全可動域において、前記巻回部の軸中心方向視で互いに一致することがないことを特徴とする請求項1または2記載の操作子装置。
【請求項4】
前記2本の脚部は、前記駆動部により駆動されることによる全可動域において、前記巻回部から遠い部分同士ほど互いの間隔が大きく、前記2本の脚部は、前記駆動部により駆動されることで互いの間隔が開く方向に回動することを特徴とする請求項3記載の操作子装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−37531(P2013−37531A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173047(P2011−173047)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】