放射線画像撮影装置
【課題】装置自体で少なくとも放射線の照射が開始されたことを的確に検出可能な放射線画像撮影装置を提供する。
【解決手段】放射線画像撮影装置1の制御手段22は、検出部P上の全放射線検出素子7からデータDを読み出す期間を1フレームとするとき、検出部P上で隣接する放射線検出素子7のデータ同士Dの差分として算出した差分データΔDを各フレームごとにそれぞれ1つのヒストグラムHmに投票し、1フレーム分の差分データΔDの投票が終了した時点におけるヒストグラムHm中の差分データΔDの度数Fの分布に基づいて、放射線が照射されていない状態のフレームで得られたヒストグラムHdark中の差分データΔDの度数Fの分布に対して、現在のフレームで得られたヒストグラムHm中の差分データΔDの度数Fの分布が変化した場合に、現在のフレームで装置に対する放射線の照射が開始されたと判断する。
【解決手段】放射線画像撮影装置1の制御手段22は、検出部P上の全放射線検出素子7からデータDを読み出す期間を1フレームとするとき、検出部P上で隣接する放射線検出素子7のデータ同士Dの差分として算出した差分データΔDを各フレームごとにそれぞれ1つのヒストグラムHmに投票し、1フレーム分の差分データΔDの投票が終了した時点におけるヒストグラムHm中の差分データΔDの度数Fの分布に基づいて、放射線が照射されていない状態のフレームで得られたヒストグラムHdark中の差分データΔDの度数Fの分布に対して、現在のフレームで得られたヒストグラムHm中の差分データΔDの度数Fの分布が変化した場合に、現在のフレームで装置に対する放射線の照射が開始されたと判断する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像撮影装置に係り、特に放射線の照射中にも読み出し処理を行う放射線画像撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
照射されたX線等の放射線の線量に応じて検出素子で電荷を発生させて電気信号に変換するいわゆる直接型の放射線画像撮影装置や、照射された放射線をシンチレータ等で可視光等の他の波長の電磁波に変換した後、変換され照射された電磁波のエネルギーに応じてフォトダイオード等の光電変換素子で電荷を発生させて電気信号に変換するいわゆる間接型の放射線画像撮影装置が種々開発されている。なお、本発明では、直接型の放射線画像撮影装置における検出素子や、間接型の放射線画像撮影装置における光電変換素子を、あわせて放射線検出素子という。
【0003】
このタイプの放射線画像撮影装置はFPD(Flat Panel Detector)として知られており、従来は支持台(或いはブッキー装置)と一体的に形成されていたが(例えば特許文献1参照)、近年、放射線検出素子等をハウジングに収納した可搬型の放射線画像撮影装置が開発され、実用化されている(例えば特許文献2、3参照)。
【0004】
このような放射線画像撮影装置では、例えば後述する図3や図7に示すように、通常、放射線検出素子7が二次元状(マトリクス状)に配列され、各放射線検出素子7にそれぞれ薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor。以下、TFTという。)8で形成されたスイッチ手段が設けられている。そして、放射線画像撮影前、すなわち放射線画像撮影装置に放射線発生装置から放射線が照射される前に、TFT8のオン/オフを適宜制御しながら、各放射線検出素子7内に残存する余分な電荷を放出されるリセット処理が行われるように構成される場合が多い。
【0005】
そして、各放射線検出素子7のリセット処理が終了した後、走査駆動手段15のゲートドライバ15bから各走査線6を介してTFT8にオフ電圧を印加して全TFT8をオフ状態とした状態で放射線発生装置から放射線画像撮影装置に放射線を照射すると、放射線の線量に応じた電荷が各放射線検出素子7内で発生して、各放射線検出素子7内に蓄積される。
【0006】
そして、放射線画像撮影後、走査駆動手段15のゲートドライバ15bから信号読み出し用のオン電圧を印加する走査線5の各ラインL1〜Lxを順次切り替えながら、各放射線検出素子7から、その内部に蓄積された電荷を読み出して、読み出し回路17で電荷電圧変換する等して画像データとして読み出すように構成される場合が多い。
【0007】
しかし、このように構成する場合、放射線画像撮影装置と放射線発生装置との間のインターフェースを的確に構築し、放射線が照射される段階で放射線画像撮影装置側が各放射線検出素子7内に電荷を蓄積できる状態になっていることが必要となるが、装置間のインターフェースの構築は必ずしも容易ではない。そして、放射線画像撮影装置側が各放射線検出素子7のリセット処理を行っている最中に放射線が照射されてしまうと、放射線の照射により発生した電荷が各放射線検出素子7から流出してしまい、照射された放射線の電荷(すなわち画像データ)への変換効率が低下してしまう等の問題があった。
【0008】
そこで、近年、放射線画像撮影装置自体で放射線が照射されたことを検出する技術が種々開発されている。そして、それらの技術の一環として、例えば特許文献4や特許文献5に記載された技術を利用して、放射線画像撮影装置自体で放射線の照射を検出することが考えられている。
【0009】
特許文献4、5では、放射線画像撮影装置に対する放射線の照射が開始される以前から、例えば後述する図7等に示すように、走査駆動手段15のゲートドライバ15bからオン電圧を印加する走査線5の各ラインL1〜Lxを順次切り替えながら、放射線検出素子7からの電荷の読み出し処理を繰り返して行い、放射線が照射されている最中も電荷の読み出し処理を続けて行う放射線画像撮影装置や画像データの読み出し方法が記載されている。
【0010】
そして、二次元状に配列された全ての放射線検出素子7から各画像データを読み出す期間を1フレームとするとき、放射線の照射が開始されたフレームから放射線の照射が終了したフレームの次のフレームまでの各フレームごとに読み出された画像データを各放射線検出素子7ごとに加算して、各放射線検出素子7ごとの画像データを再構成する技術が開示されている。
【0011】
放射線画像撮影装置への放射線の照射が開始された時点以降に走査駆動手段15のゲートドライバ15bからオン電圧が印加される走査線5にTFT8が接続されている各放射線検出素子7からは、それ以前にオン電圧が印加された走査線5にTFT8が接続されている各放射線検出素子7から読み出される電荷よりも著しく大きな値の電荷が読み出される。
【0012】
そのため、この技術を利用して、各放射線検出素子7から読み出される電荷の値を監視することによって、放射線画像撮影装置に対する放射線の照射が開始されたことを放射線画像撮影装置自体で検出する技術が研究、開発されている。このような技術としては、例えば、各フレームごとに各放射線検出素子7から読み出された電荷の値を積算し、その積算値が前回のフレームでの積算値より大きくなったフレームで放射線画像撮影装置に対して放射線の照射が開始されたと判断するように構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平9−73144号公報
【特許文献2】特開2006−058124号公報
【特許文献3】特開平6−342099号公報
【特許文献4】特開平9−140691号公報
【特許文献5】特開平7−72254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところで、上記のようにして、放射線画像撮影装置自体が、各放射線検出素子7から読み出される電荷の値に基づいて装置に対する放射線の照射が開始されたことを検出するように構成する場合、装置に対して放射線が照射されたにもかかわらず放射線画像撮影装置が放射線の照射を検出できなかったり、或いは、装置に対して放射線が照射されていないにもかかわらず放射線画像撮影装置が放射線の照射を誤検出してしまい、実際に放射線が照射された際に各放射線検出素子7から電荷を読み出せなかったりする場合には、装置に対して放射線を再度照射しなければならなくなる。
【0015】
そのため、電力を浪費するとともに、例えば放射線発生装置のX線管球の寿命を縮めてしまう等の問題が生じる虞れがある。また、放射線画像撮影装置を患者の病変部等を撮影する医療用に用いる場合等には、患者に対する再度の放射線の照射が必要になり、患者の被曝量が増大して、患者に負担をかけることになる。
【0016】
このような事態が生じることを防止するためには、上記のように、単に、各放射線検出素子7から読み出される電荷の値やこの電荷の値のフレームごとの積算値等に基づいて放射線画像撮影装置に対する放射線の照射の開始を検出するだけでなく、それに代えて、或いはそれと並行して、それとは別の仕方で放射線画像撮影装置に対する放射線の照射の開始を検出することができるように構成されていることが望ましい。
【0017】
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、装置自体で少なくとも放射線の照射が開始されたことを的確に検出可能な放射線画像撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記の問題を解決するために、本発明の放射線画像撮影装置は、
互いに交差するように配設された複数の走査線および複数の信号線と、前記複数の走査線および複数の信号線により区画された各領域に二次元状に配列された複数の放射線検出素子とを備える検出部と、
前記放射線検出素子からのデータの読み出し処理の際に、データ読み出し用の電圧を印加する前記各走査線を順次切り替えながら印加する走査駆動手段と、
前記各走査線に接続され、前記データ読み出し用の電圧が印加されると前記放射線検出素子に蓄積された電荷を前記信号線に放出させるスイッチ素子と、
前記信号線を介して前記放射線検出素子から読み出された前記電荷を前記データに変換する読み出し回路と、
少なくとも前記走査駆動手段および前記読み出し回路を制御して前記放射線検出素子からの前記データの読み出し処理を行わせる制御手段と、
前記検出部上で隣接する前記放射線検出素子の前記データ同士の差分として差分データを算出する算出手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記検出部上の全ての前記放射線検出素子から前記データを読み出す期間を1フレームとするとき、前記算出手段が算出した前記差分データを各フレームごとにそれぞれ1つのヒストグラムに投票し、1フレーム分の前記差分データの投票が終了した時点における前記ヒストグラム中の前記差分データの度数の分布に基づいて、放射線が照射されていない状態の前記フレームで得られた前記ヒストグラム中の前記差分データの度数の分布に対して、現在のフレームで得られた前記ヒストグラム中の前記差分データの度数の分布が変化した場合に、当該現在のフレームで放射線の照射が開始されたと判断することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明のような方式の放射線画像撮影装置によれば、各フレームごとに算出した差分データをヒストグラムに投票した場合の、ヒストグラム中の差分データの度数の分布の変化に基づいて、放射線画像撮影装置に対して放射線の照射が開始されたか否かを判断する。そのため、放射線画像撮影装置自体で、放射線画像撮影装置に対する放射線の照射の開始を的確に判断して検出することが可能となる。
【0020】
また、それとともに、例えば前述したように各放射線検出素子7から読み出されたデータの値そのものに基づいて放射線の照射の開始を検出する仕方と併用する等すれば、放射線画像撮影装置に対する放射線の照射の開始をより的確に検出することが可能となる。そのため、放射線の照射開始を検出できずに放射線を再度照射しなければならなくなって電力を浪費したり、患者の負担が増大することを確実に防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】各実施形態に係る放射線画像撮影装置を示す斜視図である。
【図2】図1におけるX−X線に沿う断面図である。
【図3】放射線画像撮影装置の基板の構成を示す平面図である。
【図4】図3の基板上の小領域に形成された放射線検出素子とTFT等の構成を示す拡大図である。
【図5】図4におけるY−Y線に沿う断面図である。
【図6】COFやPCB基板等が取り付けられた基板を説明する側面図である。
【図7】放射線画像撮影装置の等価回路を表すブロック図である。
【図8】検出部を構成する1画素分についての等価回路を表すブロック図である。
【図9】読み出し処理において各走査線に印加する電圧をオン電圧とオフ電圧との間で切り替えるタイミングを示すタイミングチャートである。
【図10】各放射線検出素子のリセット処理において各走査線に印加する電圧をオン電圧とオフ電圧との間で切り替えるタイミングを示すタイミングチャートである。
【図11】各読み出しICで放射線検出素子から読み出されたデータがバッファメモリに蓄積された後、並べ替えられて記憶手段に送信される状態を説明する図である。
【図12】バッファメモリの構成およびバッファレジスタに格納されたデータを説明する図である。
【図13】各データをバッファレジスタに格納するアドレスを説明する図である。
【図14】並べ替えられた各データが記憶手段に送信されることを説明する図である。
【図15】並べ替えられた各データが別のバッファレジスタに移されることを説明する図である。
【図16】差分データの算出処理およびヒストグラムへの投票処理を説明する図である。
【図17】差分データの算出処理およびヒストグラムへの投票処理を説明する図である。
【図18】(A)〜(C)は1つのバッファレジスタを用いた場合の差分データの算出処理およびヒストグラムへの投票処理を説明する図である。
【図19】(A)は信号線方向に隣接する各放射線検出素子を、(B)は走査線方向に隣接する各放射線検出素子を、それぞれ説明する図である。
【図20】走査線方向に隣接する放射線検出素子のデータ同士の差分データの算出処理およびヒストグラムへの投票処理を説明する図である。
【図21】走査線方向に隣接する放射線検出素子のデータ同士の差分データの算出処理およびヒストグラムへの投票処理の変形例を説明する図である。
【図22】放射線が照射されていない状態で得られた差分データの度数の分布を表すヒストグラムである。
【図23】放射線を照射して患者の胸部正面(A)や腰椎側面(B)、頭蓋骨正面(C)を撮影した状態で得られた差分データの度数の分布を表すヒストグラムである。
【図24】図9において放射線が照射されるタイミングの例を示すタイミングチャートである。
【図25】差分データを所定の数値範囲ごとに区分した場合の各数値範囲をそれぞれ階級として作成されたヒストグラムを表す図である。
【図26】(A)は放射線が照射されていない状態、(B)は放射線が照射された状態で得られた差分データの度数の分布を表すヒストグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る放射線画像撮影装置および放射線画像撮影システムの実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0023】
なお、以下では、放射線画像撮影装置が、シンチレータ等を備え、照射された放射線を可視光等の他の波長の電磁波に変換して電気信号を得るいわゆる間接型の放射線画像撮影装置である場合について説明するが、本発明は、直接型の放射線画像撮影装置に対しても適用することが可能である。また、放射線画像撮影装置が可搬型である場合について説明するが、支持台等と一体的に形成された放射線画像撮影装置に対しても適用される。
【0024】
図1は、本実施形態に係る放射線画像撮影装置の外観斜視図であり、図2は、図1のX−X線に沿う断面図である。本実施形態に係る放射線画像撮影装置1は、図1や図2に示すように、筐体2内にシンチレータ3や基板4等が収納されて構成されている。
【0025】
筐体2は、少なくとも放射線入射面Rが放射線を透過するカーボン板やプラスチック等の材料で形成されている。なお、図1や図2では、筐体2がフレーム板2Aとバック板2Bとで形成された、いわゆる弁当箱型である場合が示されているが、筐体2を一体的に角筒状に形成した、いわゆるモノコック型とすることも可能である。
【0026】
また、図1に示すように、筐体2の側面部分には、電源スイッチ36や、LED等で構成されたインジケータ37、図示しないバッテリ41(後述する図7参照)の交換等のために開閉可能とされた蓋部材38等が配置されている。また、本実施形態では、蓋部材38の側面部には、画像データ等を外部装置に無線で転送するためのアンテナ装置39が埋め込まれている。
【0027】
また、図2に示すように、筐体2の内部には、基板4の下方側に図示しない鉛の薄板等を介して基台31が配置され、基台31には、電子部品32等が配設されたPCB基板33や緩衝部材34等が取り付けられている。なお、本実施形態では、基板4やシンチレータ3の放射線入射面Rには、それらを保護するためのガラス基板35が配設されている。
【0028】
シンチレータ3は、基板4の後述する検出部Pに貼り合わされるようになっている。シンチレータ3は、例えば、蛍光体を主成分とし、放射線の入射を受けると300〜800nmの波長の電磁波、すなわち可視光を中心とした電磁波に変換して出力するものが用いられる。
【0029】
基板4は、本実施形態では、ガラス基板で構成されており、図3に示すように、基板4のシンチレータ3に対向する側の面4a上には、複数の走査線5と複数の信号線6とが互いに交差するように配設されている。基板4の面4a上の複数の走査線5と複数の信号線6により区画された各小領域rには、放射線検出素子7がそれぞれ設けられている。
【0030】
このように、走査線5と信号線6で区画された各小領域rに二次元状に配列された複数の放射線検出素子7が設けられた領域r全体、すなわち図3に一点鎖線で示される領域が検出部Pとされている。
【0031】
本実施形態では、放射線検出素子7としてフォトダイオードが用いられているが、この他にも例えばフォトトランジスタ等を用いることも可能である。各放射線検出素子7は、図3や図4の拡大図に示すように、スイッチ素子であるTFT8のソース電極8sに接続されている。また、TFT8のドレイン電極8dは信号線6に接続されている。
【0032】
そして、TFT8は、後述する走査駆動手段15により、接続された走査線5にオン電圧が印加され、ゲート電極8gにオン電圧が印加されるとオン状態となり、放射線検出素子7内で発生し蓄積されている電荷を信号線6に放出させるようになっている。また、TFT8は、接続された走査線5にオフ電圧が印加され、ゲート電極8gにオフ電圧が印加されるとオフ状態となり、放射線検出素子7から信号線6への電荷の放出を停止して、放射線検出素子7内で発生した電荷を放射線検出素子7内に保持して蓄積させるようになっている。
【0033】
ここで、本実施形態における放射線検出素子7やTFT8の構造について、図5に示す断面図を用いて簡単に説明する。図5は、図4におけるY−Y線に沿う断面図である。
【0034】
基板4の面4a上に、AlやCr等からなるTFT8のゲート電極8gが走査線5と一体的に積層されて形成されており、ゲート電極8g上および面4a上に積層された窒化シリコン(SiNx)等からなるゲート絶縁層81上のゲート電極8gの上方部分に、水素化アモルファスシリコン(a−Si)等からなる半導体層82を介して、放射線検出素子7の第1電極74と接続されたソース電極8sと、信号線6と一体的に形成されるドレイン電極8dとが積層されて形成されている。
【0035】
ソース電極8sとドレイン電極8dとは、窒化シリコン(SiNx)等からなる第1パッシベーション層83によって分割されており、さらに第1パッシベーション層83は両電極8s、8dを上側から被覆している。また、半導体層82とソース電極8sやドレイン電極8dとの間には、水素化アモルファスシリコンにVI族元素をドープしてn型に形成されたオーミックコンタクト層84a、84bがそれぞれ積層されている。以上のようにしてTFT8が形成されている。
【0036】
また、放射線検出素子7の部分では、基板4の面4a上に前記ゲート絶縁層81と一体的に形成される絶縁層71の上にAlやCr等が積層されて補助電極72が形成されており、補助電極72上に前記第1パッシベーション層83と一体的に形成される絶縁層73を挟んでAlやCr、Mo等からなる第1電極74が積層されている。第1電極74は、第1パッシベーション層83に形成されたホールHを介してTFT8のソース電極8sに接続されている。
【0037】
第1電極74の上には、水素化アモルファスシリコンにVI族元素をドープしてn型に形成されたn層75、水素化アモルファスシリコンで形成された変換層であるi層76、水素化アモルファスシリコンにIII族元素をドープしてp型に形成されたp層77が下方から順に積層されて形成されている。
【0038】
放射線画像撮影装置1の筐体2の放射線入射面Rから放射線が入射し、シンチレータ3で可視光等の電磁波に変換され、変換された電磁波が図中上方から照射されると、電磁波は放射線検出素子7のi層76に到達して、i層76内で電子正孔対が発生する。放射線検出素子7は、このようにして、シンチレータ3から照射された電磁波を電荷に変換するようになっている。
【0039】
また、p層77の上には、ITO等の透明電極とされた第2電極78が積層されて形成されており、照射された電磁波がi層76等に到達するように構成されている。本実施形態では、以上のようにして放射線検出素子7が形成されている。なお、p層77、i層76、n層75の積層の順番は上下逆であってもよい。また、本実施形態では、放射線検出素子7として、上記のようにp層77、i層76、n層75の順に積層されて形成されたいわゆるpin型の放射線検出素子を用いる場合が説明されているが、これに限定されない。
【0040】
放射線検出素子7の第2電極78の上面には、第2電極78を介して放射線検出素子7にバイアス電圧を印加するバイアス線9が接続されている。なお、放射線検出素子7の第2電極78やバイアス線9、TFT8側に延出された第1電極74、TFT8の第1パッシベーション層83等、すなわち放射線検出素子7とTFT8の上面部分は、その上方側から窒化シリコン(SiNx)等からなる第2パッシベーション層79で被覆されている。
【0041】
図3や図4に示すように、本実施形態では、それぞれ列状に配置された複数の放射線検出素子7に1本のバイアス線9が接続されており、各バイアス線9はそれぞれ信号線6に平行に配設されている。また、各バイアス線9は、基板4の検出部Pの外側の位置で結線10に結束されている。
【0042】
本実施形態では、図3に示すように、各走査線5や各信号線6、バイアス線9の結線10は、それぞれ基板4の端縁部付近に設けられた入出力端子(パッドともいう)11に接続されている。各入出力端子11には、図6に示すように、IC12a等のチップがフィルム上に組み込まれたCOF(Chip On Film)12が異方性導電接着フィルム(Anisotropic Conductive Film)や異方性導電ペースト(Anisotropic Conductive Paste)等の異方性導電性接着材料13を介して接続されている。
【0043】
また、COF12は、基板4の裏面4b側に引き回され、裏面4b側で前述したPCB基板33に接続されるようになっている。このようにして、放射線画像撮影装置1の基板4部分が形成されている。なお、図6では、電子部品32等の図示が省略されている。
【0044】
ここで、放射線画像撮影装置1の回路構成について説明する。図7は本実施形態に係る放射線画像撮影装置1の等価回路を表すブロック図であり、図8は検出部Pを構成する1画素分についての等価回路を表すブロック図である。
【0045】
前述したように、基板4の検出部Pの各放射線検出素子7は、その第2電極78にそれぞれバイアス線9が接続されており、各バイアス線9は結線10に結束されてバイアス電源14に接続されている。バイアス電源14は、結線10および各バイアス線9を介して各放射線検出素子7の第2電極78にそれぞれバイアス電圧を印加するようになっている。また、バイアス電源14は、後述する制御手段22に接続されており、制御手段22は、バイアス電源14から各放射線検出素子7に印加するバイアス電圧を制御するようになっている。
【0046】
図7や図8に示すように、本実施形態では、放射線検出素子7のp層77側(図5参照)に第2電極78を介してバイアス線9が接続されていることからも分かるように、バイアス電源14からは、放射線検出素子7の第2電極78にバイアス線9を介してバイアス電圧として放射線検出素子7の第1電極74側にかかる電圧以下の電圧(すなわちいわゆる逆バイアス電圧)が印加されるようになっている。
【0047】
各放射線検出素子7の第1電極74はTFT8のソース電極8s(図7、図8中ではSと表記されている。)に接続されており、各TFT8のゲート電極8g(図7、図8中ではGと表記されている。)は、後述する走査駆動手段15のゲートドライバ15bから延びる走査線5の各ラインL1〜Lxにそれぞれ接続されている。また、各TFT8のドレイン電極8d(図7、図8中ではDと表記されている。)は各信号線6にそれぞれ接続されている。
【0048】
走査駆動手段15は、配線15cを介してゲートドライバ15bにオン電圧とオフ電圧を供給する電源回路15aと、走査線5の各ラインL1〜Lxに印加する電圧をオン電圧とオフ電圧の間で切り替えて各TFT8のオン状態とオフ状態とを切り替えるゲートドライバ15bとを備えている。
【0049】
そして、走査駆動手段15は、各放射線検出素子7からデータDを読み出す画像読み出し処理等の際に、後述する制御手段22からトリガ信号を受信すると、ゲートドライバ15bから走査線5の各ラインL1〜Lxに印加する電圧のオン電圧とオフ電圧との間での切り替えを開始させるようになっている。
【0050】
具体的には、本実施形態では、走査駆動手段15は、各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理の際には、制御手段22からトリガ信号を受信すると、例えば図9に示すように、ゲートドライバ15bから印加する電圧をオン電圧(すなわちデータ読み出し用の電圧)とオフ電圧との間で切り替える走査線5のラインL1〜Lxを順次切り替える処理をフレームごとに繰り返し行い、各TFT8を介して走査線5の各ラインL1〜Lxに接続されている各放射線検出素子7に蓄積された電荷に相当するデータDをそれぞれ読み出させるようになっている。
【0051】
なお、以下では、図9に示すように、検出部P(図3や図7参照)上に二次元状に配列された1面分の全放射線検出素子7からデータDを読み出す期間を1フレームという。
【0052】
また、各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理前や、次の放射線画像撮影を行うまでの間等に、各放射線検出素子7内に残存する電荷を放出させる各放射線検出素子7のリセット処理を行うように構成することも可能である。
【0053】
各放射線検出素子7のリセット処理を行う場合には、例えば、走査駆動手段15は、図10に示すように、ゲートドライバ15bから印加する電圧をオン電圧とオフ電圧との間で切り替える走査線5のラインL1〜Lxを順次切り替えさせて1面分のリセット処理Rmを行い、この1面分のリセット処理Rmを必要に応じて繰り返し行わせながら各放射線検出素子7のリセット処理を行うように構成される。
【0054】
図7や図8に示すように、各信号線6は、読み出しIC16内に形成された各読み出し回路17にそれぞれ接続されている。なお、本実施形態では、読み出しIC16に、1本の信号線6につき1個ずつ読み出し回路17が設けられている。
【0055】
読み出し回路17は、増幅回路18と相関二重サンプリング回路19等で構成されている。読み出しIC16内には、さらに、アナログマルチプレクサ21と、A/D変換器20とが設けられている。なお、図7や図8中では、相関二重サンプリング回路19はCDSと表記されている。また、図8中では、アナログマルチプレクサ21は省略されている。
【0056】
本実施形態では、増幅回路18はチャージアンプ回路で構成されており、オペアンプ18aと、オペアンプ18aにそれぞれ並列にコンデンサ18bおよび電荷リセット用スイッチ18cが接続されて構成されている。また、増幅回路18には、増幅回路18に電力を供給するための電源供給部18dが接続されている。
【0057】
また、増幅回路18のオペアンプ18aの入力側の反転入力端子には信号線6が接続されており、増幅回路18の入力側の非反転入力端子には基準電位V0が印加されるようになっている。なお、基準電位V0は適宜の値に設定され、本実施形態では、例えば0[V]が印加されるようになっている。
【0058】
また、増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cは、制御手段22に接続されており、制御手段22によりオン/オフが制御されるようになっている。各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理時に、電荷リセット用スイッチ18cがオフの状態で放射線検出素子7のTFT8がオン状態とされると、各放射線検出素子7から放出された電荷が信号線6を介してコンデンサ18bに流入して蓄積され、蓄積された電荷量に応じた電圧値がオペアンプ18aの出力側から出力されるようになっている。
【0059】
増幅回路18は、このようにして、各放射線検出素子7から出力された電荷量に応じて電圧値を出力して電荷電圧変換するようになっている。また、電荷リセット用スイッチ18cがオン状態とされると、増幅回路18の入力側と出力側とが短絡されてコンデンサ18bに蓄積された電荷が放電されて増幅回路18がリセットされるようになっている。なお、増幅回路18を、放射線検出素子7から出力された電荷に応じて電流を出力するように構成することも可能である。
【0060】
増幅回路18の出力側には、相関二重サンプリング回路(CDS)19が接続されている。相関二重サンプリング回路19は、本実施形態では、サンプルホールド機能を有しており、この相関二重サンプリング回路19におけるサンプルホールド機能は、制御手段22から送信されるパルス信号によりそのオン/オフが制御されるようになっている。
【0061】
そして、制御手段22は、放射線画像撮影後の各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理においては、増幅回路18や相関二重サンプリング回路19を制御して、各放射線検出素子7に蓄積され、読み出し処理の際に各放射線検出素子7から放出された電荷を増幅回路18で電荷電圧変換させ、電荷電圧変換された電圧値を相関二重サンプリング回路19でサンプリングさせてデータDとして下流側に出力させるようになっている。
【0062】
相関二重サンプリング回路19から出力された各放射線検出素子7のデータDは、アナログマルチプレクサ21(図7参照)に送信され、アナログマルチプレクサ21から順次A/D変換器20に送信される。そして、各放射線検出素子7のデータDは、A/D変換器20で順次デジタル値のデータDに変換されて記憶手段40に出力されて順次保存されるようになっている。
【0063】
なお、本実施形態では、後述するように、制御手段22は、検出部P上で隣接する放射線検出素子7のデータD同士の差分ΔDとして差分データΔDを算出する算出手段として機能し、A/D変換器20から出力された各データDを記憶手段40に保存させる前にこの差分データΔDの算出を行うようになっているが、この点については後で詳しく説明する。
【0064】
制御手段22は、図示しないCPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力インターフェース等がバスに接続されたコンピュータや、FPGA(Field Programmable Gate Array)等により構成されている。専用の制御回路で構成されていてもよい。そして、制御手段22は、放射線画像撮影装置1の各部材の動作等を制御するようになっている。また、図7等に示すように、制御手段22には、DRAM(Dynamic RAM)等で構成される記憶手段40が接続されている。
【0065】
また、本実施形態では、制御手段22には、前述したアンテナ装置39が接続されており、さらに、検出部Pや走査駆動手段15、読み出し回路17、記憶手段40、バイアス電源14等の各部材に電力を供給するためのバッテリ41が接続されている。また、バッテリ41には、図示しない充電装置からバッテリ41に電力を供給してバッテリ41を充電する際の接続端子42が取り付けられている。
【0066】
前述したように、制御手段22は、バイアス電源14を制御してバイアス電源14から各放射線検出素子7に印加するバイアス電圧を設定したり、読み出し回路17の増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cのオン/オフを制御したり、相関二重サンプリング回路19にパルス信号を送信して、そのサンプルホールド機能のオン/オフを制御する等の各種の処理を実行するようになっている。
【0067】
また、本実施形態では、制御手段22は、検出部P上で隣接する放射線検出素子7のデータD同士の差分ΔDとして差分データΔDを算出する算出手段として機能し、A/D変換器20から出力された各データDを記憶手段40に保存させる前にこの差分データΔDの算出を行うようになっている。
【0068】
以下、各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理や差分データΔDの算出処理等に関する構成について説明する。
【0069】
本実施形態では、制御手段22は、放射線画像撮影前に、放射線画像撮影装置1の電源スイッチ36(図1参照)が押下されたり、放射線画像撮影装置1が覚醒状態に遷移されたり、或いは、コンソール58から各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理を開始する旨の信号等を受信すると、その時点で、走査駆動手段15に対して、各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理を開始させるためのトリガ信号を送信するようになっている。
【0070】
また、制御手段22は、読み出し回路17の増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cのオン/オフを制御したり、相関二重サンプリング回路19にパルス信号を送信して、各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理を行わせるようになっている。
【0071】
なお、本実施形態では、各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理は、各放射線検出素子7から余分な電荷を放出させるリセット処理を兼ねているが、例えば各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理を開始する前等に、各放射線検出素子7のリセット処理を別途行うように構成してもよいことは前述した通りである。
【0072】
本実施形態では、このように、放射線画像撮影装置1に対して放射線が照射される以前から、各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理が開始される。そして、データDの読み出し処理が開始された直後の各フレームでは、放射線が照射されていない各放射線検出素子7内で発生した暗電荷がデータDとして読み出される。そして、この暗電荷に相当するデータDは、放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生した電荷に起因する真の画像データd*を算出するためのオフセットデータOとして利用することができる。
【0073】
そのため、本実施形態では、制御手段22は、データDの読み出し処理が開始された直後の各フレームごとに各放射線検出素子7から読み出される各データDを、余分なデータDとして廃棄するのではなく、オフセットデータOとしてそれぞれフレームごとに記憶手段40に保存させるようになっている。
【0074】
しかし、各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理が開始されて以降のフレームごとのオフセットデータOを全て保存する必要はない。また、記憶手段40の記憶容量等の制約もある。そのため、本実施形態では、記憶手段40にデータDを保存するフレーム数が予め設定されている。
【0075】
そして、制御手段22は、上記のように各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理を繰り返して、予め設定されたフレーム数のフレーム分の各放射線検出素子7のデータD(この場合はオフセットデータO)が記憶手段40に保存されると、それ以降の各フレームのデータDについては、最初にデータDを保存したフレームから順に、過去のフレームのデータD上に順次上書き保存していくようになっている。
【0076】
また、制御手段22は、上記のようにして各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理を行わせると同時に、検出部P上で隣接する放射線検出素子7のデータD同士の差分ΔDとして差分データΔDを算出するようになっている。以下、この差分データΔDの算出処理について具体的に説明する。なお、以下では、各放射線検出素子7の検出部Pにおける位置を(p,q)(p、qはそれぞれ信号線方向および走査線方向の位置を表す。)で表し、放射線検出素子(p,q)からのデータDをD(p,q)と表す。
【0077】
本実施形態では、1つの読み出しIC16(図7参照)には、例えば128本の信号線6が接続されており、1本の信号線6につき1個の読み出し回路17が設けられている。すなわち、1つの読み出しIC16は、128個の読み出し回路17(すなわち増幅回路18や相関二重サンプリング回路19等)を備えており、また、1つのアナログマルチプレクサ21と1つのA/D変換器20等で形成されるようになっている。
【0078】
そして、信号線6の本数が例えば2048本であるとすると、2048÷128=16個の読み出しIC16が並設されて読み出し部が形成されるようになっている。なお、本発明は、1つの読み出しIC16内に形成された読み出し回路17の数や接続される信号線6の本数が128の場合に限定されず、また、信号線6の総本数が2048本である場合に限定されない。
【0079】
図11に示すように、データDの読み出し処理の際に、例えば走査線5のラインL1にオン電圧が印加されると、走査線5のラインL1に接続された各放射線検出素子(1,1)〜(1,2048)から一斉にデータD(1,1)〜D(1,2048)が読み出されてパラレルに各読み出しIC16に送られる。
【0080】
そして、各読み出しIC16の各読み出し回路17(図11では図示省略)で電荷電圧変換等の各処理が行われ、パラレルに送信されてきた各128個のデータDを、各読み出しIC16中の各アナログマルチプレクサ21(図示省略)でA/D変換器20(図示省略)に順次シリアル転送し、デジタル化されたデータDがA/D変換器20から一旦バッファメモリ45に蓄積されるようになっている。なお、バッファメモリ45は、制御手段22を構成するCPUやFPGA等に設けられている。
【0081】
すなわち、各読み出しIC16から、まず、D(1,1)、D(1,129)、D(1,257)、…、D(1,1921)の各データDが送信されてバッファメモリ45に蓄積され、続いて、D(1,2)、D(1,130)、D(1,258)、…、D(1,1922)の各データDが送信されてバッファメモリ45に蓄積される。
【0082】
そして、バッファメモリ45に、走査線5のラインL1に接続された各放射線検出素子(1,1)〜(1,2048)からの各データD(1,1)〜D(1,2048)が蓄積されると、各データDがデータD(1,1)、D(1,2)、D(1,3)、D(1,4)、…の順に並べ替えられて記憶手段40に送信されて保存されるようになっている。
【0083】
また、走査線5のラインL1に接続された各放射線検出素子(1,1)〜(1,2048)からの各データD(1,1)〜D(1,2048)の読み出し処理が終了すると、続いて、図9に示したように、オン電圧が印加される走査線5のラインがL2に切り替えられる。そして、図11に示した場合と同様にして、各データD(2,1)〜D(2,2048)が各読み出しIC16ごとにバッファメモリ45に送信されて並べ替えられた後、記憶手段40に順次送信されて保存される。
【0084】
そして、この読み出し処理と記憶手段40への保存処理とが走査線5の各ラインL1〜Lxごとに順次繰り返されて、全ての放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理が行われるようになっている。
【0085】
なお、このデータDの並べ替えの処理は、データDを転送する図示しない外部装置がどのような装置であっても、通常、データDをD(1,1)、D(1,2)、D(1,3)、D(1,4)、…の順番で転送すれば対応することができるため、データDの記憶手段40への保存の段階で、汎用的にデータDを上記の順番に並べ替えて保存するための処理であるが、データDの並べ替え処理は必ずしも行われる必要はない。
【0086】
一方、本実施形態では、算出手段としての制御手段22は、このバッファメモリ45におけるデータDの並べ替え処理を利用して、前述した検出部P上で隣接する放射線検出素子7のデータD同士の差分ΔDとして差分データΔDを算出する差分データΔDの算出処理を行うようになっている。また、制御手段22は、算出した各差分データΔDをフレームごとにヒストグラムHmに投票する統計処理を行うようになっている。
【0087】
具体的には、本実施形態では、バッファメモリ45内には、図12に示すように、少なくとも2つのバッファレジスタ45a、45bが設けられている。そして、上記のように、各読み出しIC16からデータD(1,1)、D(1,129)、D(1,257)、…がバッファメモリ45に送信されてくると、それらのデータDは、図12に示すように、バッファレジスタ45aの対応するアドレスに格納される。
【0088】
続いて、データD(1,2)、D(1,130)、D(1,258)、…が送信されてくると、それらのデータDが、図13に示すように、バッファレジスタ45aの対応するアドレスに格納される。
【0089】
この処理を繰り返すことにより、図14に示すように、走査線5のラインL1に接続された各放射線検出素子(1,1)〜(1,2048)からの各データD(1,1)〜D(1,2048)がバッファメモリ45のバッファレジスタ45aに格納されると、それらの並べ替えられたデータD(1,1)〜D(1,2048)が記憶手段40に送信されるとともに、図15に示すように、バッファレジスタ45bに移し替えられ、バッファレジスタ45aが空になる。
【0090】
次に、走査線5のラインL2に接続された各放射線検出素子(2,1)〜(2,2048)からの各データD(2,1)〜D(2,2048)の読み出し処理が開始されると、各読み出しIC16からは、まず、データD(2,1)、D(2,129)、D(2,257)、…が送信されてくる。
【0091】
そして、図16に示すように、それらのデータD(2,1)、D(2,129)、D(2,257)、…がバッファレジスタ45aの対応するアドレスに格納されると、制御手段22は、バッファレジスタ45bに格納されているデータD(1,1)、D(1,129)、D(1,257)、…とバッファレジスタ45aに格納されたデータD(2,1)、D(2,129)、D(2,257)、…との各差分データΔD(2,1)、ΔD(2,129)、ΔD(2,257)、…をそれぞれ算出して、ヒストグラムHmに投票する。
【0092】
続いて、図17に示すように、データD(2,2)、D(2,130)、D(2,258)、…が送信されてきてバッファレジスタ45aの対応するアドレスに格納されると、制御手段22は、バッファレジスタ45bに格納されているデータD(1,2)、D(1,130)、D(1,258)、…とバッファレジスタ45aに格納されたデータD(2,2)、D(2,130)、D(2,258)、…との各差分データΔD(2,2)、ΔD(2,130)、ΔD(2,258)、…をそれぞれ算出して、ヒストグラムHmに投票する。
【0093】
この処理を繰り返して、走査線5のラインL2に接続された各放射線検出素子(2,1)〜(2,2048)からの各データD(2,1)〜D(2,2048)がバッファメモリ45のバッファレジスタ45aに格納されると、差分データΔDが算出された後、それらのデータD(2,1)〜D(2,2048)が記憶手段40に送信される。また、データD(2,1)〜D(2,2048)はバッファレジスタ45bに移し替えられ、すなわち、バッファレジスタ45bに格納されていたデータD(1,1)〜D(1,2048)に上書きされ、バッファレジスタ45aが空になる。
【0094】
そして、この処理を走査線5の全てのラインL1〜Lxについて繰り返すことで、各放射線検出素子(1,1)〜(x,2048)からの各データD(1,1)〜D(x,2048)が並べ替えられて記憶手段40に送信されて保存される。また、それとともに、今回の1フレーム分の全ての差分データΔD(2,1)〜ΔD(x,2048)が算出されて、今回のフレームのヒストグラムHmへの投票処理が終了する。
【0095】
各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理が次のフレームに移行すると、制御手段22は、今回のフレームのヒストグラムHmとは別のヒストグラムHm+1を作成し、次回のフレームで読み出された各データD同士の各差分データΔDを算出すると、それらの差分データΔDを作成したヒストグラムHm+1に投票する。
【0096】
このように、制御手段22は、各フレームごとにヒストグラムHmを作成して、算出した差分データΔDを当該フレームのヒストグラムHmに投票するようになっている。
【0097】
なお、作成した1フレーム分のヒストグラムHmに対する差分データΔDの投票結果に対していかなる処理を行うかについては、後で詳しく説明する。また、本実施形態では、ヒストグラムHmは、1単位ごとの差分データΔDの値をそれぞれ階級として作成されており、例えばデータDが0から216−1までの値として表される場合、ヒストグラムHmは−216+1から216−1までの2×(216−1)+1個の階級を有するものとなる。
【0098】
また、上記の説明では、バッファメモリ45に設けられた2つのバッファレジスタ45a、45bを利用して各差分データΔDを算出する場合について説明したが、1つのバッファレジスタ45aを用いて各差分データΔDを算出するように構成することも可能である。
【0099】
すなわち、具体的には、図18(A)に示すように、走査線5のラインLnに接続された各放射線検出素子(n,1)〜(n,2048)からの各データD(n,1)〜D(n,2048)がバッファレジスタ45aに格納された状態で、続いて、走査線5のラインLn+1に接続された各放射線検出素子(n+1,1)、(n+1,129)、…からの各データD(n+1,1)、D(n+1,129)、…がバッファメモリ45に送信されてくると、制御手段22は、それらのデータDにそれぞれ対応する各データD(n,1)、D(n,129)、…との差分データΔD(n+1,1)、ΔD(n+1,129)、…を算出してヒストグラムHmに投票するとともに、バッファレジスタ45aに格納された各データD(n,1)、D(n,129)、…を、送信されてきた各データD(n+1,1)、D(n+1,129)、…で置換して格納する。
【0100】
また、図18(B)、(C)に示すように、各放射線検出素子(n+1,2)、(n+1,130)、…や各放射線検出素子(n+1,3)、(n+1,131)、…からの各データD(n+1,2)、D(n+1,130)、…やD(n+1,3)、D(n+1,131)、…がバッファメモリ45に送信されてくるごとに、制御手段22は、それらのデータDにそれぞれ対応する各データD(n,2)、D(n,130)、…やD(n,3)、D(n,131)、…との差分データΔD(n+1,2)、ΔD(n+1,130)、…やΔD(n+1,3)、ΔD(n+1,131)、…を算出してヒストグラムHmに投票する。
【0101】
また、同時に、バッファレジスタ45aに格納された各データD(n,2)、D(n,130)、…やD(n,3)、D(n,131)、…を、送信されてきた各データD(n+1,2)、D(n+1,130)、…やD(n+1,3)、D(n+1,131)、…で置換して格納する。
【0102】
そして、走査線5のラインLn+1に接続された各放射線検出素子(n+1,1)〜(n+1,2048)について各差分データΔD(n+1,1)〜ΔD(n+1,2048)を算出してヒストグラムHmに投票し、バッファレジスタ45aに格納されていた各データD(n,1)〜D(n,2048)をデータD(n+1,1)〜D(n+1,2048)に全て置換すると、制御手段22は、その時点で、並べ替えたデータD(n+1,1)〜D(n+1,2048)を記憶手段40に送信して保存する。
【0103】
そして、この処理を走査線5の全てのラインL1〜Lxについて繰り返すことで、各放射線検出素子(1,1)〜(x,2048)からの各データD(1,1)〜D(x,2048)が並べ替えられて記憶手段40に送信されて保存されるとともに、今回の1フレーム分の全ての差分データΔD(2,1)〜ΔD(x,2048)が算出されて、今回のフレームのヒストグラムHmへの投票処理が終了する。
【0104】
このように、バッファメモリ45の1つのバッファレジスタ45aを用いる場合でも、データDの並べ替えや各差分データΔDの算出処理を的確に行うことが可能となる。
【0105】
なお、上記のように、本実施形態では、各データDを記憶手段40に保存する際に差分データΔDの算出処理を行うように構成されているが、各データDを一旦記憶手段40に保存した後で記憶手段40から読み出して差分データΔDの算出処理を行うように構成することも可能である。
【0106】
また、上記の実施形態では、図16〜図18に示したように、制御手段22が算出する検出部P上で隣接する放射線検出素子7のデータD同士の差分データΔDが、検出部P上で信号線6が延在する方向、すなわち図19(A)に矢印で模式的に示す方向(以下、信号線方向という。)に隣接する放射線検出素子(p,q)の各データD同士の差分データΔDとして算出される場合について説明した。
【0107】
しかし、検出部P上で隣接する放射線検出素子7のデータD同士の差分データΔDとして、図19(B)に矢印で模式的に示す走査線5の延在方向(以下、走査線方向という。)に隣接する放射線検出素子(p,q)の各データD同士の差分データΔDを算出するように構成することも可能である。
【0108】
この場合、例えば図20に示すように、送信されてきたデータD(n,1)、D(n,129)、D(n,257)、…がバッファレジスタ45aに格納され、続いて送信されてきたデータD(n,2)、D(n,130)、D(n,258)、…がバッファレジスタ45aに格納された時点で各差分データΔD(n,2)、ΔD(n,130)、ΔD(n,258)、…を算出してヒストグラムHmに投票する。
【0109】
そして、図示を省略するが、続いて送信されてきたデータD(n,3)、D(n,131)、D(n,259)、…がバッファレジスタ45aに格納された時点で各データD(n,2)、D(n,130)、D(n,258)、…との各差分データΔD(n,3)、ΔD(n,131)、ΔD(n,259)、…を算出してヒストグラムHmに投票する。
【0110】
そして、この格納、算出、投票の各処理を繰り返し、走査線5のラインLnに接続された各放射線検出素子(n,1)〜(n,2048)からの各データD(n,1)〜D(n,2048)がバッファレジスタ45aに格納された時点で、差分データΔDの算出、ヒストグラムHmへの投票を完了するとともに、並べ替えられたデータD(n,1)〜D(n,2048)を記憶手段40に送信して保存するように構成される。
【0111】
さらに、上記の本実施形態や変形例では、データDの並べ替えの処理を行う際に差分データΔDを算出してヒストグラムHmに投票する場合について説明したが、データDの並べ替えを行う必要がない場合は、より単純な仕方で差分データΔDの算出やヒストグラムHmへの投票を行うように構成することができる。
【0112】
具体的には、例えば図19(A)に示したように信号線方向の差分データΔDを算出する場合には、図12〜図18に示したように各データDを最初のアドレスから順番にD(n,1)、D(n,2)、D(n,3)、…の順にバッファレジスタ45a等に格納する必要はなく、各データDを各読み出しIC16から送信されてきた順番にアドレスに格納する。
【0113】
すなわち、D(n,1)、D(n,129)、…、D(n,1921)、D(n,2)、D(n,130)、…、D(n,1922)、D(n,3)、…の順にバッファレジスタ45a等に格納し、続いて送信されてきた各データD(n+1,1)、D(n+1,129)、…との差分データΔDを順次算出してヒストグラムHmに投票するように構成することが可能である。
【0114】
また、例えば図19(B)に示したように走査線方向の差分データΔDを算出する場合には、例えば図21に示すように、各読み出しIC16から送信されてきた各データD(n,1)、D(n,129)、D(n,257)、…をバッファレジスタ45aに格納した後、バッファレジスタ45bに移し、続いて送信されてきた各データD(n,2)、D(n,130)、D(n,258)、…をバッファレジスタ45aに格納して、各差分データΔD(n,2)、ΔD(n,130)、ΔD(n,258)、…を算出してヒストグラムHmに投票する。
【0115】
そして、図示を省略するが、バッファレジスタ45bの各データD(n,1)、D(n,129)、D(n,257)、…を記憶手段40に送信して保存するとともに、バッファレジスタ45aの各データD(n,2)、D(n,130)、D(n,258)、…をバッファレジスタ45bに移し、続いて送信されてきた各データD(n,3)、D(n,131)、D(n,259)、…をバッファレジスタ45aに格納して、各差分データΔD(n,3)、ΔD(n,131)、ΔD(n,259)、…を算出してヒストグラムHmに投票するように構成することが可能である。
【0116】
次に、制御手段22は、上記のようにして、1フレームごとに、算出した各差分データΔDを当該フレームのヒストグラムHmに投票すると、ヒストグラムHm中の差分データΔDの度数(頻度等ともいう。)Fの分布に基づいて、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始されたか否かを判断するようになっている。
【0117】
以下、この算出した各差分データΔDのヒストグラムHmへの投票結果に基づく制御手段22での放射線の照射開始の判断処理について説明する。
【0118】
本実施形態では、制御手段22は、現在のフレーム(すなわち現在投票を完了したばかりのフレーム)で得られたヒストグラムHm中の差分データΔDの度数Fの分布が、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されていない状態で得られた差分データΔDのヒストグラムHdark中の差分データΔDの度数Fの分布から変化した場合に、現在のフレームで放射線の照射が開始されたと判断するようになっている。
【0119】
本発明者らの研究によれば、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されていない状態で得られた差分データΔD、すなわち各放射線検出素子7から読み出された暗電荷に起因するデータDから算出された差分データΔDのヒストグラムHdark中の度数Fの分布は、例えば図22に示すように、0の差分データΔDを中心として比較的狭い範囲に分布する正規分布状の分布になることが分かっている。
【0120】
なお、図22に示したヒストグラムHdarkや、後述する図23(A)〜(C)に示すヒストグラムHchest、Hlumbar、Hheadでは、前述した−216+1から216−1までの階級のうちの−300から+300までの階級の部分のみが示されている。
【0121】
また、本発明者らの研究では、放射線画像撮影装置1に放射線を照射して患者の胸部正面(図23(A)参照)や腰椎側面(図23(B)参照)、頭蓋骨正面(図23(C)参照)を撮影した状態で各放射線検出素子7から読み出された電荷に起因するデータDから算出された差分データΔDのヒストグラムHchest、Hlumbar、Hhead中の度数Fの各分布は、図22に示したヒストグラムHdarkの場合と同様に、0の差分データΔDを中心とした正規分布状の分布になるが、ヒストグラムHdarkにおける分布に比べて分布の範囲が拡大することが分かっている。
【0122】
そのため、上記のように、各フレームで得られたヒストグラムHm中の差分データΔDの度数Fの分布が、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されていない状態で得られた差分データΔDのヒストグラムHdark中の度数Fの分布から変化したかどうかを監視することで、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始されたか否かを判断することができる。
【0123】
本実施形態では、上記の判断処理の基準となる、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されていない状態で得られた差分データΔDのヒストグラムHdark中の度数Fの分布を、各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理が開始された後、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始される前の段階で得ておくようになっている。
【0124】
具体的には、前述したように、放射線画像撮影装置1の電源スイッチ36(図1参照)が押下される等した時点で各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理が開始されるが、読み出し処理が開始された直後は読み出し回路17がまだ安定していない可能性がある。そこで、本実施形態では、図9に示したようにして各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理を開始して予め設定されたフレーム数の読み出し処理を行った後、続く所定のフレーム数分の各フレームで、それぞれ差分データΔDを各ヒストグラムHdarkに投票する。
【0125】
そして、所定のフレーム数分の各ヒストグラムHdarkの度数Fの平均値を各階級ごとに算出し、各階級における度数Fの平均値を、新たに作成したヒストグラムHdarkの各階級に割り当てることによって、上記の判断処理の基準となる、暗電荷に起因するデータDから算出された差分データΔDのヒストグラムHdarkを得るようになっている。
【0126】
なお、上記の判断処理の基準となるヒストグラムHdarkを、1フレーム分の差分データΔDをヒストグラムHdarkに投票することによって得るように構成することも可能である。また、基準となるヒストグラムHdarkを得るための上記の処理を省くために、予め上記の処理を行って基準となるヒストグラムHdarkを得ておき、制御手段22のメモリや記憶手段40に保存しておき、各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理を開始した時点で、制御手段22が基準となるヒストグラムHdarkを読み出すように構成することも可能である。
【0127】
一方、制御手段22は、上記のようにして各フレームごとに差分データΔDを算出してヒストグラムHmに投票し、各フレームでの各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理および差分データΔDの算出処理、ヒストグラムHmへの投票処理が終了すると、上記のように、現在のフレームで得られたヒストグラムHm中の差分データΔDの度数Fの分布がヒストグラムHdark中の差分データΔDの度数Fの分布から変化したかどうかを判断する.
【0128】
その際、以下のようにしてこの判断処理を行うように構成することが可能である。
【0129】
[判断処理1]
ヒストグラムHdark中の差分データΔDの度数Fの分布における、予め設定された値の差分データΔDに対応する階級の度数Fに対して、現在のフレームで得られたヒストグラムHm中の差分データΔDの度数Fの分布における、当該値の差分データΔDに対応する階級の度数Fが、予め設定された閾値または割合以下になった場合、または予め設定された閾値または割合を越えた場合に、当該現在のフレームで放射線の照射が開始されたと判断する。すなわち、いわゆる定点監視による判断である。
【0130】
具体的には、例えば、0の差分データΔDに対応する階級の度数FをF0とすると、図22と図23(A)〜(C)とを見比べた場合、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されて得られるヒストグラムHchest、Hlumbar、Hheadにおける度数F0の方が、ヒストグラムHdarkにおける度数F0よりも小さくなっている。
【0131】
このように、放射線画像撮影装置1に対して放射線が照射されると、少なくともそのフレームにおけるヒストグラムHm中の差分データΔDの度数Fの分布における度数F0が小さくなることが分かる。
【0132】
[判断処理1−1]
そこで、例えば、ヒストグラムHdark中の差分データΔDの度数Fの分布における度数F0に対して、現在のフレームで得られたヒストグラムHm中の差分データΔDの度数Fの分布における度数F0が、予め設定された閾値または割合以下になった場合に、当該現在のフレームで放射線の照射が開始されたと判断するように構成することができる。
【0133】
また、例えば、図22や図23(A)〜(C)に示す0ではない値−s、sの差分データΔDに対応する階級の度数FをF−s、Fsとすると、図22と図23(A)〜(C)とを見比べると分かるように、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されて得られるヒストグラムHchest、Hlumbar、Hheadにおける度数F−s、Fsの方が、ヒストグラムHdarkにおける度数F−s、Fsよりもそれぞれ大きくなる。
【0134】
このように、適切な−sやsを選べば、放射線画像撮影装置1に対して放射線が照射されると、そのフレームにおけるヒストグラムHm中の差分データΔDの度数Fの分布における度数F−s、Fsは逆に大きくなることが分かる。
【0135】
[判断処理1−2]
そこで、0でない適切な−sやsを予め設定しておき、例えば、ヒストグラムHdark中の差分データΔDの度数Fの分布における度数F−sや度数Fsに対して、現在のフレームで得られたヒストグラムHm中の差分データΔDの度数Fの分布における度数F−sや度数Fsが、予め設定された閾値または割合を越えた場合に、当該現在のフレームで放射線の照射が開始されたと判断するように構成することができる。
【0136】
[判断処理2]
また、図22のヒストグラムHdarkと図23(A)〜(C)のヒストグラムHchest、Hlumbar、Hheadとを見比べて分かるように、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されて得られるヒストグラムHchest、Hlumbar、Hheadでは、ヒストグラムHchest、Hlumbar、Hhead中の差分データΔDの分布における半値幅が、ヒストグラムHdark中の差分データΔDの分布における半値幅よりも大きくなる。
【0137】
そこで、ヒストグラムHdark中の差分データΔDの度数Fの分布における半値幅に対して、現在のフレームで得られたヒストグラムHm中の差分データΔDの度数Fの分布における半値幅が、予め設定された閾値または割合を越えた場合に、当該現在のフレームで放射線の照射が開始されたと判断するように構成することが可能である。
【0138】
[判断処理3]
また、図22のヒストグラムHdarkと図23(A)〜(C)のヒストグラムHchest、Hlumbar、Hheadとを見比べて分かるように、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されて得られるヒストグラムHchest、Hlumbar、Hheadでは、ヒストグラムHchest、Hlumbar、Hhead中の差分データΔDの分布における分散や標準偏差が、ヒストグラムHdark中の差分データΔDの分布における分散や標準偏差よりも大きくなる。
【0139】
そこで、ヒストグラムHdark中の差分データΔDの度数Fの分布における分散や標準偏差に対して、現在のフレームで得られたヒストグラムHm中の差分データΔDの度数Fの分布における分散や標準偏差が、予め設定された閾値または割合を越えた場合に、当該現在のフレームで放射線の照射が開始されたと判断するように構成することが可能である。
【0140】
このように構成する場合、制御手段22は、上記のようにして1フレーム分の各差分データΔDを算出した時点で、それらの平均値ΔDaveを算出し、下記(1)式に従って分散σ2を算出し、或いは算出した分散σ2の平方根を算出して標準偏差とする。
【数1】
【0141】
なお、現在のフレームでは放射線画像撮影装置1には放射線が照射されておらず、各放射線検出素子7から読み出されたデータDが暗電荷に起因するデータDである場合であっても、データDから算出された差分データΔDのヒストグラムHdarkを得ると、度数F0や度数F−s、Fsや分布の半値幅、或いは分布の分散σ2や標準偏差にはフレームごとのゆらぎが生じる。
【0142】
そのため、上記の各判断処理の基準となる閾値や割合として、このような度数F0や度数F−s、Fs、分布の半値幅、分散σ2、標準偏差に生じるフレームごとのゆらぎと区別して、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始されたことを的確に検出することができる閾値や割合を設定する必要がある。
【0143】
また、上記の各判断処理のいずれか1つのみを行うように構成してもよく、また、上記の各判断処理のうちの複数の判断処理を組み合わせて行って、複数の判断処理のいずれかで条件が満たされた場合や、複数の判断処理の全てで条件がともに満たされた場合に現在のフレームで放射線の照射が開始されたと判断するように構成することも可能である。
【0144】
さらに、上記の各判断処理の仕方で放射線の照射開始を検出する場合、制御手段22は、ヒストグラムHdarkにおける度数F0や度数F−s、Fsの情報や半値幅の情報或いは分散σ2や標準偏差の情報と、閾値や割合の情報とを有していればよく、ヒストグラムHdarkの全階級について差分データΔDの度数Fの情報を有している必要はない。
【0145】
次に、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1の作用について説明する。
【0146】
前述したように、制御手段22は、放射線画像撮影装置1の電源スイッチ36(図1参照)が押下されたり、放射線画像撮影装置1が覚醒状態に遷移されたり、或いは、コンソール58から各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理を開始する旨の信号等を受信すると、その時点で、各読み出し回路17を起動させるとともに、走査駆動手段15にトリガ信号を送信して、図9に示したように、走査駆動手段15のゲートドライバ15bから走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加させて、各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理を開始させる。
【0147】
また、制御手段22は、走査線5の各ラインL1〜Lxに接続されている各放射線検出素子7からデータDが読み出されて記憶手段40に保存される際に、本実施形態では図11〜図17に示したように、それらのデータDの差分データΔDを算出してヒストグラムHmに投票して、各フレームごとに算出した差分データΔDの度数Fの分布を得る。
【0148】
そして、本実施形態では、前述したように、制御手段22は、各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理が開始されてから予め設定されたフレーム数の読み出し処理を行った後、続く所定のフレーム数分の各フレームで、上記のようにしてそれぞれ差分データΔDを各ヒストグラムHdarkに投票する。そして、所定のフレーム数分の各ヒストグラムHdarkの度数Fの平均値を各階級ごとに算出し、各階級における度数Fの平均値を、新たに作成したヒストグラムHdarkの各階級に割り当てることによって、暗電荷に起因するデータDから算出された差分データΔDのヒストグラムHdarkを得る。
【0149】
制御手段22は、上記のようにして差分データΔDのヒストグラムHdarkを得ると、予め設定された上記の各判断処理のいずれかの判断処理、或いは全ての判断処理に必要なヒストグラムHdarkにおける度数F0や度数F−s、Fsの情報や、半値幅の情報、或いは分散σ2や標準偏差の情報を、ヒストグラムHdark中の差分データΔDの度数Fの分布から算出して、制御手段22のメモリや記憶手段40に保存する。
【0150】
なお、前述した閾値や割合は予め制御手段22のメモリや記憶手段40に保存されている。また、本実施形態では、上記のように各階級ごとの平均値を算出するために、所定のフレーム数分のヒストグラムHdarkの全階級について差分データΔDの度数Fの情報を記憶手段40等に記憶しておく必要があるが、上記のように各階級の度数Fの平均値を算出してヒストグラムHdarkを作成し、ヒストグラムHdarkにおける度数F0や度数F−s、Fsの情報等を算出した後は、ヒストグラムHdarkの全階級について差分データΔDの度数Fの情報を有している必要がないことは前述した通りである。
【0151】
制御手段22は、その後も、各差分データΔDの算出処理や、ヒストグラムHmへの投票処理、差分データΔDの度数Fの分布の変化に基づく放射線の照射開始の判断処理をフレームごとに続行する。
【0152】
また、前述したように、本実施形態では、記憶手段40にデータDを保存するフレーム数が予め設定されているため、各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理を繰り返して、予め設定されたフレーム数のフレーム分の各放射線検出素子7のデータDが記憶手段40に保存されると、それ以降の各フレームのデータDについては、最初にデータDを保存したフレームから順に、過去のフレームのデータD上に順次上書き保存していく。
【0153】
このようにして、各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理が繰り返され、差分データΔDの算出処理やヒストグラムHmへの投票処理、放射線の照射開始の判断処理、読み出されたデータDの記憶手段40への保存が繰り返される。
【0154】
そして、例えば、図24に示すようなタイミングで放射線画像撮影装置1に対して放射線が照射されたとする。なお、図24では、斜線を付した期間が、放射線が照射された期間を表す。
【0155】
この場合、m回目のフレームでは、走査線5のラインL1やラインL2、ラインL3にそれぞれオン電圧が印加されて、走査線5の各ラインL1〜L3に接続されている各放射線検出素子7からそれぞれ読み出されたデータDは、放射線が照射される前に読み出されたデータであり、前述した暗電荷に起因するデータであるが、走査線5のラインL4以降の各ラインLに接続されている各放射線検出素子7からそれぞれ読み出されたデータDは、放射線の照射が開始された後に読み出されたデータDである。
【0156】
そのため、図24では図示しないm−1回目までの各フレームでは、ヒストグラムH中の差分データΔDの度数Fの分布は、多少のゆらぎはあるが図22に示した分布と同様の分布であったものが、今回のm回目のフレームでは、ヒストグラムH中の差分データΔDの度数Fの分布が図23(A)〜(C)に示したような分布に変化する。
【0157】
そのため、制御手段22が予め設定された上記の各判断処理のいずれか或いはそれらの組み合わせに従って判断処理を行うと、設定された判断処理の条件が満たされるため、制御手段22は、今回のm回目のフレームで放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始されたと判断する。
【0158】
また、図24の例では、m回目のフレームからm+1回目のフレームまで放射線が照射されている。そのため、m回目のフレームだけでなく、m+1回目のフレームでも設定された判断処理の条件が満たされるため、制御手段22は、m+1回目のフレームでも放射線画像撮影装置1に対して放射線が照射されていると判断する。
【0159】
一方、m+2回目のフレームでは、実際には放射線の照射は終了しているが、m+2回目のフレームの読み出し処理で、走査線5のラインL1やラインL2に接続されている各放射線検出素子7からは、m+1回目のフレームでの読み出し処理後にさらに放射線が照射されたことにより発生した電荷に起因するデータDが読み出される。
【0160】
そのため、m+2回目のフレームでも設定された判断処理の条件が満たされれば、制御手段22は、m+2回目のフレームでも放射線画像撮影装置1に対して放射線が照射されていると判断する。
【0161】
しかし、図24では図示しないm+3回目のフレームでは、ヒストグラムHm+3中の差分データΔDの度数Fの分布は、多少のゆらぎはあるが図22に示した分布と同様の分布に戻るため、m+3回目のフレームでは、設定された判断処理の条件が満たされず、制御手段22は、m+3回目のフレームで放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が終了したと判断する。
【0162】
ところで、前述したように、本実施形態では、各フレームで読み出されたデータDを記憶手段40に記憶されている過去のフレームのデータD上に順次上書き保存していくように構成されているため、上記のように放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が終了したと判断した後も各フレームごとの各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理を続行してしまうと、m回目からm+2回目のフレームで得られた、放射線の照射により発生した電荷に起因する有用なデータDが、その後の各フレームの読み出し処理で読み出された暗電荷に起因するデータDで上書きされて失われてしまう。
【0163】
そのため、制御手段22は、m回目からm+2回目のフレームで得られた有用なデータDが後の各フレームで得られたデータDで上書きされないようにするために、m+3回目のフレームで放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が終了したと判断すると、走査駆動手段15のゲートドライバ15bからの走査線5の各ラインL1〜Lxに対するオン電圧の印加を停止させて、当該m+3回目のフレームで各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理を停止させる。
【0164】
なお、上記のように、制御手段22が放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射の終了を検出して各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理を停止させる代わりに、放射線の照射の開始が検出されたフレームから何フレーム目で各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理を停止させるかを予め決めておき、放射線の照射の終了を検出することなく、予め設定されたフレームの読み出し処理を終了した時点で各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理を停止させるように構成することも可能である。
【0165】
図24に示した例では、m回目からm+2回目の各フレームで読み出されたデータDに、放射線の照射により発生した電荷に起因する有用な情報が含まれている。また、前述したように、放射線画像撮影装置1に対して放射線が照射される以前のm−1回目のフレーム等で読み出されたデータDは、暗電荷に相当するデータDであり、真の画像データd*を算出するためのオフセットデータOとして利用することができる。
【0166】
そのため、少なくともm−1回目からm+2回目の各フレームで読み出されたデータDを用いて真の画像データd*を算出することができる。なお、m−1回目のフレームで読み出されたデータDをオフセットデータOとして用いることも可能であり、また、m−1回目のフレームを含むそれ以前の複数のフレームでの各データDの放射線検出素子7ごとの平均値を算出する等して、オフセットデータOを算出するように構成することも可能である。
【0167】
図24に示した例の場合、m回目からm+2回目の各フレームで読み出された各データDには、放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生した電荷すなわち真の画像データd*の一部に相当するデータと、暗電荷に起因するデータすなわちオフセットデータOとが含まれている。
【0168】
そこで、例えばm回目のフレームで読み出されたデータDをD(m)のように表すと、放射線の照射により各放射線検出素子7ごとに取得されるべき真の画像データd*は、
d*=(D(m)−O)+(D(m+1) −O)+(D(m+2) −O)
∴d*=D(m)+D(m+1)+D(m+2)−3O …(2)
で算出することができる。
【0169】
この各放射線検出素子7ごとの真の画像データd*の算出処理は、放射線画像撮影装置1自体で行ってもよく、また、必要なデータDを放射線画像撮影装置1から外部装置に送信して、外部装置で行うように構成することも可能である。
【0170】
以上のように、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1によれば、上記のように、各フレームごとに算出した差分データΔDをヒストグラムHmに投票した場合の、ヒストグラムHm中の差分データΔDの度数Fの分布の変化に基づいて、放射線画像撮影装置1に対して放射線の照射が開始されたか否かを判断する。そのため、放射線画像撮影装置1自体で、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射の開始を的確に判断して検出することが可能となる。
【0171】
また、それとともに、例えば前述したように各放射線検出素子7から読み出されたデータDの値そのものに基づいて放射線の照射の開始を検出する仕方と併用する等すれば、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射の開始をより的確に検出することが可能となる。そのため、放射線の照射開始を検出できずに放射線を再度照射しなければならなくなって電力を浪費したり、患者の負担が増大することを確実に防止することが可能となる。
【0172】
なお、上記の実施形態では、ヒストグラムHmを、1単位ごとの差分データΔDの値をそれぞれ階級として作成する場合について説明した。しかし、ヒストグラムHmの作成の仕方はこれに限定されず、例えば図25に示すように、ヒストグラムHm*を、差分データΔDを所定の数値範囲ごとに区分した場合の各数値範囲をそれぞれ階級として作成することも可能である。図25の例では、各階級が、−t未満の数値範囲と、−t以上t以下の数値範囲と、tより大きい数値範囲とに区分されて設定されている場合が示されている。
【0173】
ヒストグラムHm*をこのように作成する場合、制御手段22は、算出した差分データΔDを、その値に応じたヒストグラムHm*の階級に投票する。この場合、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されていないフレームで算出された差分データΔD、すなわち各放射線検出素子7から読み出された暗電荷に起因するデータDから算出された差分データΔDのヒストグラムHm*(この場合のヒストグラムHm*は図22のHdarkに相当する。)中の度数Fの分布は、図26(A)に示すように、0を含む数値範囲の階級、すなわち−t以上t以下の数値範囲の階級に多くの差分データΔDが集中する分布になる。
【0174】
また、放射線画像撮影装置1に放射線が照射された場合には、図26(B)に示すように、0を含む数値範囲の階級すなわち−t以上t以下の数値範囲の階級に多くの差分データΔDが集まるが、図26(A)の場合に比べて、それ以外の階級の度数Fの、0を含む数値範囲の階級の度数Fに対する比率が大きくなる。
【0175】
そこで、この場合、上記の[判断処理1−1]や[判断処理1−2]と同様に、以下のように判断処理を行うように構成することが可能である。
【0176】
[判断処理4−1]
例えば、図26(A)のヒストグラムHm*(すなわちHdark)中の差分データΔDの度数Fの分布における、0を含む数値範囲の差分データΔDに対応する階級の度数Fに対して、現在のフレームで得られたヒストグラムHm*中の差分データΔDの度数Fの分布における、0を含む数値範囲の差分データΔDに対応する階級の度数Fが、予め設定された閾値または割合以下になった場合に、当該現在のフレームで放射線の照射が開始されたと判断するように構成することができる。
【0177】
[判断処理4−2]
また、図26(A)のヒストグラムHm*(すなわちHdark)中の差分データΔDの度数Fの分布における、0を含む数値範囲以外の数値範囲(すなわち−t未満の数値範囲とtより大きい数値範囲)の差分データΔDに対応する階級の度数Fに対して、現在のフレームで得られたヒストグラムHm*中の差分データΔDの度数Fの分布における、0を含む数値範囲以外の数値範囲の差分データΔDに対応する階級の度数Fが、予め設定された閾値または割合を越えた場合に、当該現在のフレームで放射線の照射が開始されたと判断するように構成することができる。
【0178】
そして、上記の各判断処理のいずれか1つ或いは両方を組み合わせて行うことで、制御手段22は、放射線画像撮影装置1に対して放射線の照射が開始されたか否かを的確に判断することが可能となる。そして、この場合も、放射線画像撮影装置1自体で、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射の開始を的確に判断して検出することが可能となり、上記の実施形態と同等の効果を発揮することが可能となる。
【符号の説明】
【0179】
1 放射線画像撮影装置
5、L1〜Lx 走査線
6 信号線
7、(p,q) 放射線検出素子
8 TFT(スイッチ手段)
15 走査駆動手段
17 読み出し回路
22 制御手段(制御手段、算出手段)
D、D(p,q) データ
F 度数
F0 値が0の差分データに対応する階級の度数
Hdark 放射線が照射されていない状態で得られたヒストグラム
Hm ヒストグラム(現在のフレームで得られたヒストグラム)
Hm* ヒストグラム
P 検出部
r 領域
s、−s 予め設定された値
−t〜t 0を含む数値範囲
ΔD、ΔD(p,q) 差分、差分データ
σ2 分散
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像撮影装置に係り、特に放射線の照射中にも読み出し処理を行う放射線画像撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
照射されたX線等の放射線の線量に応じて検出素子で電荷を発生させて電気信号に変換するいわゆる直接型の放射線画像撮影装置や、照射された放射線をシンチレータ等で可視光等の他の波長の電磁波に変換した後、変換され照射された電磁波のエネルギーに応じてフォトダイオード等の光電変換素子で電荷を発生させて電気信号に変換するいわゆる間接型の放射線画像撮影装置が種々開発されている。なお、本発明では、直接型の放射線画像撮影装置における検出素子や、間接型の放射線画像撮影装置における光電変換素子を、あわせて放射線検出素子という。
【0003】
このタイプの放射線画像撮影装置はFPD(Flat Panel Detector)として知られており、従来は支持台(或いはブッキー装置)と一体的に形成されていたが(例えば特許文献1参照)、近年、放射線検出素子等をハウジングに収納した可搬型の放射線画像撮影装置が開発され、実用化されている(例えば特許文献2、3参照)。
【0004】
このような放射線画像撮影装置では、例えば後述する図3や図7に示すように、通常、放射線検出素子7が二次元状(マトリクス状)に配列され、各放射線検出素子7にそれぞれ薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor。以下、TFTという。)8で形成されたスイッチ手段が設けられている。そして、放射線画像撮影前、すなわち放射線画像撮影装置に放射線発生装置から放射線が照射される前に、TFT8のオン/オフを適宜制御しながら、各放射線検出素子7内に残存する余分な電荷を放出されるリセット処理が行われるように構成される場合が多い。
【0005】
そして、各放射線検出素子7のリセット処理が終了した後、走査駆動手段15のゲートドライバ15bから各走査線6を介してTFT8にオフ電圧を印加して全TFT8をオフ状態とした状態で放射線発生装置から放射線画像撮影装置に放射線を照射すると、放射線の線量に応じた電荷が各放射線検出素子7内で発生して、各放射線検出素子7内に蓄積される。
【0006】
そして、放射線画像撮影後、走査駆動手段15のゲートドライバ15bから信号読み出し用のオン電圧を印加する走査線5の各ラインL1〜Lxを順次切り替えながら、各放射線検出素子7から、その内部に蓄積された電荷を読み出して、読み出し回路17で電荷電圧変換する等して画像データとして読み出すように構成される場合が多い。
【0007】
しかし、このように構成する場合、放射線画像撮影装置と放射線発生装置との間のインターフェースを的確に構築し、放射線が照射される段階で放射線画像撮影装置側が各放射線検出素子7内に電荷を蓄積できる状態になっていることが必要となるが、装置間のインターフェースの構築は必ずしも容易ではない。そして、放射線画像撮影装置側が各放射線検出素子7のリセット処理を行っている最中に放射線が照射されてしまうと、放射線の照射により発生した電荷が各放射線検出素子7から流出してしまい、照射された放射線の電荷(すなわち画像データ)への変換効率が低下してしまう等の問題があった。
【0008】
そこで、近年、放射線画像撮影装置自体で放射線が照射されたことを検出する技術が種々開発されている。そして、それらの技術の一環として、例えば特許文献4や特許文献5に記載された技術を利用して、放射線画像撮影装置自体で放射線の照射を検出することが考えられている。
【0009】
特許文献4、5では、放射線画像撮影装置に対する放射線の照射が開始される以前から、例えば後述する図7等に示すように、走査駆動手段15のゲートドライバ15bからオン電圧を印加する走査線5の各ラインL1〜Lxを順次切り替えながら、放射線検出素子7からの電荷の読み出し処理を繰り返して行い、放射線が照射されている最中も電荷の読み出し処理を続けて行う放射線画像撮影装置や画像データの読み出し方法が記載されている。
【0010】
そして、二次元状に配列された全ての放射線検出素子7から各画像データを読み出す期間を1フレームとするとき、放射線の照射が開始されたフレームから放射線の照射が終了したフレームの次のフレームまでの各フレームごとに読み出された画像データを各放射線検出素子7ごとに加算して、各放射線検出素子7ごとの画像データを再構成する技術が開示されている。
【0011】
放射線画像撮影装置への放射線の照射が開始された時点以降に走査駆動手段15のゲートドライバ15bからオン電圧が印加される走査線5にTFT8が接続されている各放射線検出素子7からは、それ以前にオン電圧が印加された走査線5にTFT8が接続されている各放射線検出素子7から読み出される電荷よりも著しく大きな値の電荷が読み出される。
【0012】
そのため、この技術を利用して、各放射線検出素子7から読み出される電荷の値を監視することによって、放射線画像撮影装置に対する放射線の照射が開始されたことを放射線画像撮影装置自体で検出する技術が研究、開発されている。このような技術としては、例えば、各フレームごとに各放射線検出素子7から読み出された電荷の値を積算し、その積算値が前回のフレームでの積算値より大きくなったフレームで放射線画像撮影装置に対して放射線の照射が開始されたと判断するように構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平9−73144号公報
【特許文献2】特開2006−058124号公報
【特許文献3】特開平6−342099号公報
【特許文献4】特開平9−140691号公報
【特許文献5】特開平7−72254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところで、上記のようにして、放射線画像撮影装置自体が、各放射線検出素子7から読み出される電荷の値に基づいて装置に対する放射線の照射が開始されたことを検出するように構成する場合、装置に対して放射線が照射されたにもかかわらず放射線画像撮影装置が放射線の照射を検出できなかったり、或いは、装置に対して放射線が照射されていないにもかかわらず放射線画像撮影装置が放射線の照射を誤検出してしまい、実際に放射線が照射された際に各放射線検出素子7から電荷を読み出せなかったりする場合には、装置に対して放射線を再度照射しなければならなくなる。
【0015】
そのため、電力を浪費するとともに、例えば放射線発生装置のX線管球の寿命を縮めてしまう等の問題が生じる虞れがある。また、放射線画像撮影装置を患者の病変部等を撮影する医療用に用いる場合等には、患者に対する再度の放射線の照射が必要になり、患者の被曝量が増大して、患者に負担をかけることになる。
【0016】
このような事態が生じることを防止するためには、上記のように、単に、各放射線検出素子7から読み出される電荷の値やこの電荷の値のフレームごとの積算値等に基づいて放射線画像撮影装置に対する放射線の照射の開始を検出するだけでなく、それに代えて、或いはそれと並行して、それとは別の仕方で放射線画像撮影装置に対する放射線の照射の開始を検出することができるように構成されていることが望ましい。
【0017】
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、装置自体で少なくとも放射線の照射が開始されたことを的確に検出可能な放射線画像撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記の問題を解決するために、本発明の放射線画像撮影装置は、
互いに交差するように配設された複数の走査線および複数の信号線と、前記複数の走査線および複数の信号線により区画された各領域に二次元状に配列された複数の放射線検出素子とを備える検出部と、
前記放射線検出素子からのデータの読み出し処理の際に、データ読み出し用の電圧を印加する前記各走査線を順次切り替えながら印加する走査駆動手段と、
前記各走査線に接続され、前記データ読み出し用の電圧が印加されると前記放射線検出素子に蓄積された電荷を前記信号線に放出させるスイッチ素子と、
前記信号線を介して前記放射線検出素子から読み出された前記電荷を前記データに変換する読み出し回路と、
少なくとも前記走査駆動手段および前記読み出し回路を制御して前記放射線検出素子からの前記データの読み出し処理を行わせる制御手段と、
前記検出部上で隣接する前記放射線検出素子の前記データ同士の差分として差分データを算出する算出手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記検出部上の全ての前記放射線検出素子から前記データを読み出す期間を1フレームとするとき、前記算出手段が算出した前記差分データを各フレームごとにそれぞれ1つのヒストグラムに投票し、1フレーム分の前記差分データの投票が終了した時点における前記ヒストグラム中の前記差分データの度数の分布に基づいて、放射線が照射されていない状態の前記フレームで得られた前記ヒストグラム中の前記差分データの度数の分布に対して、現在のフレームで得られた前記ヒストグラム中の前記差分データの度数の分布が変化した場合に、当該現在のフレームで放射線の照射が開始されたと判断することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明のような方式の放射線画像撮影装置によれば、各フレームごとに算出した差分データをヒストグラムに投票した場合の、ヒストグラム中の差分データの度数の分布の変化に基づいて、放射線画像撮影装置に対して放射線の照射が開始されたか否かを判断する。そのため、放射線画像撮影装置自体で、放射線画像撮影装置に対する放射線の照射の開始を的確に判断して検出することが可能となる。
【0020】
また、それとともに、例えば前述したように各放射線検出素子7から読み出されたデータの値そのものに基づいて放射線の照射の開始を検出する仕方と併用する等すれば、放射線画像撮影装置に対する放射線の照射の開始をより的確に検出することが可能となる。そのため、放射線の照射開始を検出できずに放射線を再度照射しなければならなくなって電力を浪費したり、患者の負担が増大することを確実に防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】各実施形態に係る放射線画像撮影装置を示す斜視図である。
【図2】図1におけるX−X線に沿う断面図である。
【図3】放射線画像撮影装置の基板の構成を示す平面図である。
【図4】図3の基板上の小領域に形成された放射線検出素子とTFT等の構成を示す拡大図である。
【図5】図4におけるY−Y線に沿う断面図である。
【図6】COFやPCB基板等が取り付けられた基板を説明する側面図である。
【図7】放射線画像撮影装置の等価回路を表すブロック図である。
【図8】検出部を構成する1画素分についての等価回路を表すブロック図である。
【図9】読み出し処理において各走査線に印加する電圧をオン電圧とオフ電圧との間で切り替えるタイミングを示すタイミングチャートである。
【図10】各放射線検出素子のリセット処理において各走査線に印加する電圧をオン電圧とオフ電圧との間で切り替えるタイミングを示すタイミングチャートである。
【図11】各読み出しICで放射線検出素子から読み出されたデータがバッファメモリに蓄積された後、並べ替えられて記憶手段に送信される状態を説明する図である。
【図12】バッファメモリの構成およびバッファレジスタに格納されたデータを説明する図である。
【図13】各データをバッファレジスタに格納するアドレスを説明する図である。
【図14】並べ替えられた各データが記憶手段に送信されることを説明する図である。
【図15】並べ替えられた各データが別のバッファレジスタに移されることを説明する図である。
【図16】差分データの算出処理およびヒストグラムへの投票処理を説明する図である。
【図17】差分データの算出処理およびヒストグラムへの投票処理を説明する図である。
【図18】(A)〜(C)は1つのバッファレジスタを用いた場合の差分データの算出処理およびヒストグラムへの投票処理を説明する図である。
【図19】(A)は信号線方向に隣接する各放射線検出素子を、(B)は走査線方向に隣接する各放射線検出素子を、それぞれ説明する図である。
【図20】走査線方向に隣接する放射線検出素子のデータ同士の差分データの算出処理およびヒストグラムへの投票処理を説明する図である。
【図21】走査線方向に隣接する放射線検出素子のデータ同士の差分データの算出処理およびヒストグラムへの投票処理の変形例を説明する図である。
【図22】放射線が照射されていない状態で得られた差分データの度数の分布を表すヒストグラムである。
【図23】放射線を照射して患者の胸部正面(A)や腰椎側面(B)、頭蓋骨正面(C)を撮影した状態で得られた差分データの度数の分布を表すヒストグラムである。
【図24】図9において放射線が照射されるタイミングの例を示すタイミングチャートである。
【図25】差分データを所定の数値範囲ごとに区分した場合の各数値範囲をそれぞれ階級として作成されたヒストグラムを表す図である。
【図26】(A)は放射線が照射されていない状態、(B)は放射線が照射された状態で得られた差分データの度数の分布を表すヒストグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る放射線画像撮影装置および放射線画像撮影システムの実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0023】
なお、以下では、放射線画像撮影装置が、シンチレータ等を備え、照射された放射線を可視光等の他の波長の電磁波に変換して電気信号を得るいわゆる間接型の放射線画像撮影装置である場合について説明するが、本発明は、直接型の放射線画像撮影装置に対しても適用することが可能である。また、放射線画像撮影装置が可搬型である場合について説明するが、支持台等と一体的に形成された放射線画像撮影装置に対しても適用される。
【0024】
図1は、本実施形態に係る放射線画像撮影装置の外観斜視図であり、図2は、図1のX−X線に沿う断面図である。本実施形態に係る放射線画像撮影装置1は、図1や図2に示すように、筐体2内にシンチレータ3や基板4等が収納されて構成されている。
【0025】
筐体2は、少なくとも放射線入射面Rが放射線を透過するカーボン板やプラスチック等の材料で形成されている。なお、図1や図2では、筐体2がフレーム板2Aとバック板2Bとで形成された、いわゆる弁当箱型である場合が示されているが、筐体2を一体的に角筒状に形成した、いわゆるモノコック型とすることも可能である。
【0026】
また、図1に示すように、筐体2の側面部分には、電源スイッチ36や、LED等で構成されたインジケータ37、図示しないバッテリ41(後述する図7参照)の交換等のために開閉可能とされた蓋部材38等が配置されている。また、本実施形態では、蓋部材38の側面部には、画像データ等を外部装置に無線で転送するためのアンテナ装置39が埋め込まれている。
【0027】
また、図2に示すように、筐体2の内部には、基板4の下方側に図示しない鉛の薄板等を介して基台31が配置され、基台31には、電子部品32等が配設されたPCB基板33や緩衝部材34等が取り付けられている。なお、本実施形態では、基板4やシンチレータ3の放射線入射面Rには、それらを保護するためのガラス基板35が配設されている。
【0028】
シンチレータ3は、基板4の後述する検出部Pに貼り合わされるようになっている。シンチレータ3は、例えば、蛍光体を主成分とし、放射線の入射を受けると300〜800nmの波長の電磁波、すなわち可視光を中心とした電磁波に変換して出力するものが用いられる。
【0029】
基板4は、本実施形態では、ガラス基板で構成されており、図3に示すように、基板4のシンチレータ3に対向する側の面4a上には、複数の走査線5と複数の信号線6とが互いに交差するように配設されている。基板4の面4a上の複数の走査線5と複数の信号線6により区画された各小領域rには、放射線検出素子7がそれぞれ設けられている。
【0030】
このように、走査線5と信号線6で区画された各小領域rに二次元状に配列された複数の放射線検出素子7が設けられた領域r全体、すなわち図3に一点鎖線で示される領域が検出部Pとされている。
【0031】
本実施形態では、放射線検出素子7としてフォトダイオードが用いられているが、この他にも例えばフォトトランジスタ等を用いることも可能である。各放射線検出素子7は、図3や図4の拡大図に示すように、スイッチ素子であるTFT8のソース電極8sに接続されている。また、TFT8のドレイン電極8dは信号線6に接続されている。
【0032】
そして、TFT8は、後述する走査駆動手段15により、接続された走査線5にオン電圧が印加され、ゲート電極8gにオン電圧が印加されるとオン状態となり、放射線検出素子7内で発生し蓄積されている電荷を信号線6に放出させるようになっている。また、TFT8は、接続された走査線5にオフ電圧が印加され、ゲート電極8gにオフ電圧が印加されるとオフ状態となり、放射線検出素子7から信号線6への電荷の放出を停止して、放射線検出素子7内で発生した電荷を放射線検出素子7内に保持して蓄積させるようになっている。
【0033】
ここで、本実施形態における放射線検出素子7やTFT8の構造について、図5に示す断面図を用いて簡単に説明する。図5は、図4におけるY−Y線に沿う断面図である。
【0034】
基板4の面4a上に、AlやCr等からなるTFT8のゲート電極8gが走査線5と一体的に積層されて形成されており、ゲート電極8g上および面4a上に積層された窒化シリコン(SiNx)等からなるゲート絶縁層81上のゲート電極8gの上方部分に、水素化アモルファスシリコン(a−Si)等からなる半導体層82を介して、放射線検出素子7の第1電極74と接続されたソース電極8sと、信号線6と一体的に形成されるドレイン電極8dとが積層されて形成されている。
【0035】
ソース電極8sとドレイン電極8dとは、窒化シリコン(SiNx)等からなる第1パッシベーション層83によって分割されており、さらに第1パッシベーション層83は両電極8s、8dを上側から被覆している。また、半導体層82とソース電極8sやドレイン電極8dとの間には、水素化アモルファスシリコンにVI族元素をドープしてn型に形成されたオーミックコンタクト層84a、84bがそれぞれ積層されている。以上のようにしてTFT8が形成されている。
【0036】
また、放射線検出素子7の部分では、基板4の面4a上に前記ゲート絶縁層81と一体的に形成される絶縁層71の上にAlやCr等が積層されて補助電極72が形成されており、補助電極72上に前記第1パッシベーション層83と一体的に形成される絶縁層73を挟んでAlやCr、Mo等からなる第1電極74が積層されている。第1電極74は、第1パッシベーション層83に形成されたホールHを介してTFT8のソース電極8sに接続されている。
【0037】
第1電極74の上には、水素化アモルファスシリコンにVI族元素をドープしてn型に形成されたn層75、水素化アモルファスシリコンで形成された変換層であるi層76、水素化アモルファスシリコンにIII族元素をドープしてp型に形成されたp層77が下方から順に積層されて形成されている。
【0038】
放射線画像撮影装置1の筐体2の放射線入射面Rから放射線が入射し、シンチレータ3で可視光等の電磁波に変換され、変換された電磁波が図中上方から照射されると、電磁波は放射線検出素子7のi層76に到達して、i層76内で電子正孔対が発生する。放射線検出素子7は、このようにして、シンチレータ3から照射された電磁波を電荷に変換するようになっている。
【0039】
また、p層77の上には、ITO等の透明電極とされた第2電極78が積層されて形成されており、照射された電磁波がi層76等に到達するように構成されている。本実施形態では、以上のようにして放射線検出素子7が形成されている。なお、p層77、i層76、n層75の積層の順番は上下逆であってもよい。また、本実施形態では、放射線検出素子7として、上記のようにp層77、i層76、n層75の順に積層されて形成されたいわゆるpin型の放射線検出素子を用いる場合が説明されているが、これに限定されない。
【0040】
放射線検出素子7の第2電極78の上面には、第2電極78を介して放射線検出素子7にバイアス電圧を印加するバイアス線9が接続されている。なお、放射線検出素子7の第2電極78やバイアス線9、TFT8側に延出された第1電極74、TFT8の第1パッシベーション層83等、すなわち放射線検出素子7とTFT8の上面部分は、その上方側から窒化シリコン(SiNx)等からなる第2パッシベーション層79で被覆されている。
【0041】
図3や図4に示すように、本実施形態では、それぞれ列状に配置された複数の放射線検出素子7に1本のバイアス線9が接続されており、各バイアス線9はそれぞれ信号線6に平行に配設されている。また、各バイアス線9は、基板4の検出部Pの外側の位置で結線10に結束されている。
【0042】
本実施形態では、図3に示すように、各走査線5や各信号線6、バイアス線9の結線10は、それぞれ基板4の端縁部付近に設けられた入出力端子(パッドともいう)11に接続されている。各入出力端子11には、図6に示すように、IC12a等のチップがフィルム上に組み込まれたCOF(Chip On Film)12が異方性導電接着フィルム(Anisotropic Conductive Film)や異方性導電ペースト(Anisotropic Conductive Paste)等の異方性導電性接着材料13を介して接続されている。
【0043】
また、COF12は、基板4の裏面4b側に引き回され、裏面4b側で前述したPCB基板33に接続されるようになっている。このようにして、放射線画像撮影装置1の基板4部分が形成されている。なお、図6では、電子部品32等の図示が省略されている。
【0044】
ここで、放射線画像撮影装置1の回路構成について説明する。図7は本実施形態に係る放射線画像撮影装置1の等価回路を表すブロック図であり、図8は検出部Pを構成する1画素分についての等価回路を表すブロック図である。
【0045】
前述したように、基板4の検出部Pの各放射線検出素子7は、その第2電極78にそれぞれバイアス線9が接続されており、各バイアス線9は結線10に結束されてバイアス電源14に接続されている。バイアス電源14は、結線10および各バイアス線9を介して各放射線検出素子7の第2電極78にそれぞれバイアス電圧を印加するようになっている。また、バイアス電源14は、後述する制御手段22に接続されており、制御手段22は、バイアス電源14から各放射線検出素子7に印加するバイアス電圧を制御するようになっている。
【0046】
図7や図8に示すように、本実施形態では、放射線検出素子7のp層77側(図5参照)に第2電極78を介してバイアス線9が接続されていることからも分かるように、バイアス電源14からは、放射線検出素子7の第2電極78にバイアス線9を介してバイアス電圧として放射線検出素子7の第1電極74側にかかる電圧以下の電圧(すなわちいわゆる逆バイアス電圧)が印加されるようになっている。
【0047】
各放射線検出素子7の第1電極74はTFT8のソース電極8s(図7、図8中ではSと表記されている。)に接続されており、各TFT8のゲート電極8g(図7、図8中ではGと表記されている。)は、後述する走査駆動手段15のゲートドライバ15bから延びる走査線5の各ラインL1〜Lxにそれぞれ接続されている。また、各TFT8のドレイン電極8d(図7、図8中ではDと表記されている。)は各信号線6にそれぞれ接続されている。
【0048】
走査駆動手段15は、配線15cを介してゲートドライバ15bにオン電圧とオフ電圧を供給する電源回路15aと、走査線5の各ラインL1〜Lxに印加する電圧をオン電圧とオフ電圧の間で切り替えて各TFT8のオン状態とオフ状態とを切り替えるゲートドライバ15bとを備えている。
【0049】
そして、走査駆動手段15は、各放射線検出素子7からデータDを読み出す画像読み出し処理等の際に、後述する制御手段22からトリガ信号を受信すると、ゲートドライバ15bから走査線5の各ラインL1〜Lxに印加する電圧のオン電圧とオフ電圧との間での切り替えを開始させるようになっている。
【0050】
具体的には、本実施形態では、走査駆動手段15は、各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理の際には、制御手段22からトリガ信号を受信すると、例えば図9に示すように、ゲートドライバ15bから印加する電圧をオン電圧(すなわちデータ読み出し用の電圧)とオフ電圧との間で切り替える走査線5のラインL1〜Lxを順次切り替える処理をフレームごとに繰り返し行い、各TFT8を介して走査線5の各ラインL1〜Lxに接続されている各放射線検出素子7に蓄積された電荷に相当するデータDをそれぞれ読み出させるようになっている。
【0051】
なお、以下では、図9に示すように、検出部P(図3や図7参照)上に二次元状に配列された1面分の全放射線検出素子7からデータDを読み出す期間を1フレームという。
【0052】
また、各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理前や、次の放射線画像撮影を行うまでの間等に、各放射線検出素子7内に残存する電荷を放出させる各放射線検出素子7のリセット処理を行うように構成することも可能である。
【0053】
各放射線検出素子7のリセット処理を行う場合には、例えば、走査駆動手段15は、図10に示すように、ゲートドライバ15bから印加する電圧をオン電圧とオフ電圧との間で切り替える走査線5のラインL1〜Lxを順次切り替えさせて1面分のリセット処理Rmを行い、この1面分のリセット処理Rmを必要に応じて繰り返し行わせながら各放射線検出素子7のリセット処理を行うように構成される。
【0054】
図7や図8に示すように、各信号線6は、読み出しIC16内に形成された各読み出し回路17にそれぞれ接続されている。なお、本実施形態では、読み出しIC16に、1本の信号線6につき1個ずつ読み出し回路17が設けられている。
【0055】
読み出し回路17は、増幅回路18と相関二重サンプリング回路19等で構成されている。読み出しIC16内には、さらに、アナログマルチプレクサ21と、A/D変換器20とが設けられている。なお、図7や図8中では、相関二重サンプリング回路19はCDSと表記されている。また、図8中では、アナログマルチプレクサ21は省略されている。
【0056】
本実施形態では、増幅回路18はチャージアンプ回路で構成されており、オペアンプ18aと、オペアンプ18aにそれぞれ並列にコンデンサ18bおよび電荷リセット用スイッチ18cが接続されて構成されている。また、増幅回路18には、増幅回路18に電力を供給するための電源供給部18dが接続されている。
【0057】
また、増幅回路18のオペアンプ18aの入力側の反転入力端子には信号線6が接続されており、増幅回路18の入力側の非反転入力端子には基準電位V0が印加されるようになっている。なお、基準電位V0は適宜の値に設定され、本実施形態では、例えば0[V]が印加されるようになっている。
【0058】
また、増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cは、制御手段22に接続されており、制御手段22によりオン/オフが制御されるようになっている。各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理時に、電荷リセット用スイッチ18cがオフの状態で放射線検出素子7のTFT8がオン状態とされると、各放射線検出素子7から放出された電荷が信号線6を介してコンデンサ18bに流入して蓄積され、蓄積された電荷量に応じた電圧値がオペアンプ18aの出力側から出力されるようになっている。
【0059】
増幅回路18は、このようにして、各放射線検出素子7から出力された電荷量に応じて電圧値を出力して電荷電圧変換するようになっている。また、電荷リセット用スイッチ18cがオン状態とされると、増幅回路18の入力側と出力側とが短絡されてコンデンサ18bに蓄積された電荷が放電されて増幅回路18がリセットされるようになっている。なお、増幅回路18を、放射線検出素子7から出力された電荷に応じて電流を出力するように構成することも可能である。
【0060】
増幅回路18の出力側には、相関二重サンプリング回路(CDS)19が接続されている。相関二重サンプリング回路19は、本実施形態では、サンプルホールド機能を有しており、この相関二重サンプリング回路19におけるサンプルホールド機能は、制御手段22から送信されるパルス信号によりそのオン/オフが制御されるようになっている。
【0061】
そして、制御手段22は、放射線画像撮影後の各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理においては、増幅回路18や相関二重サンプリング回路19を制御して、各放射線検出素子7に蓄積され、読み出し処理の際に各放射線検出素子7から放出された電荷を増幅回路18で電荷電圧変換させ、電荷電圧変換された電圧値を相関二重サンプリング回路19でサンプリングさせてデータDとして下流側に出力させるようになっている。
【0062】
相関二重サンプリング回路19から出力された各放射線検出素子7のデータDは、アナログマルチプレクサ21(図7参照)に送信され、アナログマルチプレクサ21から順次A/D変換器20に送信される。そして、各放射線検出素子7のデータDは、A/D変換器20で順次デジタル値のデータDに変換されて記憶手段40に出力されて順次保存されるようになっている。
【0063】
なお、本実施形態では、後述するように、制御手段22は、検出部P上で隣接する放射線検出素子7のデータD同士の差分ΔDとして差分データΔDを算出する算出手段として機能し、A/D変換器20から出力された各データDを記憶手段40に保存させる前にこの差分データΔDの算出を行うようになっているが、この点については後で詳しく説明する。
【0064】
制御手段22は、図示しないCPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力インターフェース等がバスに接続されたコンピュータや、FPGA(Field Programmable Gate Array)等により構成されている。専用の制御回路で構成されていてもよい。そして、制御手段22は、放射線画像撮影装置1の各部材の動作等を制御するようになっている。また、図7等に示すように、制御手段22には、DRAM(Dynamic RAM)等で構成される記憶手段40が接続されている。
【0065】
また、本実施形態では、制御手段22には、前述したアンテナ装置39が接続されており、さらに、検出部Pや走査駆動手段15、読み出し回路17、記憶手段40、バイアス電源14等の各部材に電力を供給するためのバッテリ41が接続されている。また、バッテリ41には、図示しない充電装置からバッテリ41に電力を供給してバッテリ41を充電する際の接続端子42が取り付けられている。
【0066】
前述したように、制御手段22は、バイアス電源14を制御してバイアス電源14から各放射線検出素子7に印加するバイアス電圧を設定したり、読み出し回路17の増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cのオン/オフを制御したり、相関二重サンプリング回路19にパルス信号を送信して、そのサンプルホールド機能のオン/オフを制御する等の各種の処理を実行するようになっている。
【0067】
また、本実施形態では、制御手段22は、検出部P上で隣接する放射線検出素子7のデータD同士の差分ΔDとして差分データΔDを算出する算出手段として機能し、A/D変換器20から出力された各データDを記憶手段40に保存させる前にこの差分データΔDの算出を行うようになっている。
【0068】
以下、各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理や差分データΔDの算出処理等に関する構成について説明する。
【0069】
本実施形態では、制御手段22は、放射線画像撮影前に、放射線画像撮影装置1の電源スイッチ36(図1参照)が押下されたり、放射線画像撮影装置1が覚醒状態に遷移されたり、或いは、コンソール58から各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理を開始する旨の信号等を受信すると、その時点で、走査駆動手段15に対して、各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理を開始させるためのトリガ信号を送信するようになっている。
【0070】
また、制御手段22は、読み出し回路17の増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cのオン/オフを制御したり、相関二重サンプリング回路19にパルス信号を送信して、各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理を行わせるようになっている。
【0071】
なお、本実施形態では、各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理は、各放射線検出素子7から余分な電荷を放出させるリセット処理を兼ねているが、例えば各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理を開始する前等に、各放射線検出素子7のリセット処理を別途行うように構成してもよいことは前述した通りである。
【0072】
本実施形態では、このように、放射線画像撮影装置1に対して放射線が照射される以前から、各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理が開始される。そして、データDの読み出し処理が開始された直後の各フレームでは、放射線が照射されていない各放射線検出素子7内で発生した暗電荷がデータDとして読み出される。そして、この暗電荷に相当するデータDは、放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生した電荷に起因する真の画像データd*を算出するためのオフセットデータOとして利用することができる。
【0073】
そのため、本実施形態では、制御手段22は、データDの読み出し処理が開始された直後の各フレームごとに各放射線検出素子7から読み出される各データDを、余分なデータDとして廃棄するのではなく、オフセットデータOとしてそれぞれフレームごとに記憶手段40に保存させるようになっている。
【0074】
しかし、各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理が開始されて以降のフレームごとのオフセットデータOを全て保存する必要はない。また、記憶手段40の記憶容量等の制約もある。そのため、本実施形態では、記憶手段40にデータDを保存するフレーム数が予め設定されている。
【0075】
そして、制御手段22は、上記のように各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理を繰り返して、予め設定されたフレーム数のフレーム分の各放射線検出素子7のデータD(この場合はオフセットデータO)が記憶手段40に保存されると、それ以降の各フレームのデータDについては、最初にデータDを保存したフレームから順に、過去のフレームのデータD上に順次上書き保存していくようになっている。
【0076】
また、制御手段22は、上記のようにして各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理を行わせると同時に、検出部P上で隣接する放射線検出素子7のデータD同士の差分ΔDとして差分データΔDを算出するようになっている。以下、この差分データΔDの算出処理について具体的に説明する。なお、以下では、各放射線検出素子7の検出部Pにおける位置を(p,q)(p、qはそれぞれ信号線方向および走査線方向の位置を表す。)で表し、放射線検出素子(p,q)からのデータDをD(p,q)と表す。
【0077】
本実施形態では、1つの読み出しIC16(図7参照)には、例えば128本の信号線6が接続されており、1本の信号線6につき1個の読み出し回路17が設けられている。すなわち、1つの読み出しIC16は、128個の読み出し回路17(すなわち増幅回路18や相関二重サンプリング回路19等)を備えており、また、1つのアナログマルチプレクサ21と1つのA/D変換器20等で形成されるようになっている。
【0078】
そして、信号線6の本数が例えば2048本であるとすると、2048÷128=16個の読み出しIC16が並設されて読み出し部が形成されるようになっている。なお、本発明は、1つの読み出しIC16内に形成された読み出し回路17の数や接続される信号線6の本数が128の場合に限定されず、また、信号線6の総本数が2048本である場合に限定されない。
【0079】
図11に示すように、データDの読み出し処理の際に、例えば走査線5のラインL1にオン電圧が印加されると、走査線5のラインL1に接続された各放射線検出素子(1,1)〜(1,2048)から一斉にデータD(1,1)〜D(1,2048)が読み出されてパラレルに各読み出しIC16に送られる。
【0080】
そして、各読み出しIC16の各読み出し回路17(図11では図示省略)で電荷電圧変換等の各処理が行われ、パラレルに送信されてきた各128個のデータDを、各読み出しIC16中の各アナログマルチプレクサ21(図示省略)でA/D変換器20(図示省略)に順次シリアル転送し、デジタル化されたデータDがA/D変換器20から一旦バッファメモリ45に蓄積されるようになっている。なお、バッファメモリ45は、制御手段22を構成するCPUやFPGA等に設けられている。
【0081】
すなわち、各読み出しIC16から、まず、D(1,1)、D(1,129)、D(1,257)、…、D(1,1921)の各データDが送信されてバッファメモリ45に蓄積され、続いて、D(1,2)、D(1,130)、D(1,258)、…、D(1,1922)の各データDが送信されてバッファメモリ45に蓄積される。
【0082】
そして、バッファメモリ45に、走査線5のラインL1に接続された各放射線検出素子(1,1)〜(1,2048)からの各データD(1,1)〜D(1,2048)が蓄積されると、各データDがデータD(1,1)、D(1,2)、D(1,3)、D(1,4)、…の順に並べ替えられて記憶手段40に送信されて保存されるようになっている。
【0083】
また、走査線5のラインL1に接続された各放射線検出素子(1,1)〜(1,2048)からの各データD(1,1)〜D(1,2048)の読み出し処理が終了すると、続いて、図9に示したように、オン電圧が印加される走査線5のラインがL2に切り替えられる。そして、図11に示した場合と同様にして、各データD(2,1)〜D(2,2048)が各読み出しIC16ごとにバッファメモリ45に送信されて並べ替えられた後、記憶手段40に順次送信されて保存される。
【0084】
そして、この読み出し処理と記憶手段40への保存処理とが走査線5の各ラインL1〜Lxごとに順次繰り返されて、全ての放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理が行われるようになっている。
【0085】
なお、このデータDの並べ替えの処理は、データDを転送する図示しない外部装置がどのような装置であっても、通常、データDをD(1,1)、D(1,2)、D(1,3)、D(1,4)、…の順番で転送すれば対応することができるため、データDの記憶手段40への保存の段階で、汎用的にデータDを上記の順番に並べ替えて保存するための処理であるが、データDの並べ替え処理は必ずしも行われる必要はない。
【0086】
一方、本実施形態では、算出手段としての制御手段22は、このバッファメモリ45におけるデータDの並べ替え処理を利用して、前述した検出部P上で隣接する放射線検出素子7のデータD同士の差分ΔDとして差分データΔDを算出する差分データΔDの算出処理を行うようになっている。また、制御手段22は、算出した各差分データΔDをフレームごとにヒストグラムHmに投票する統計処理を行うようになっている。
【0087】
具体的には、本実施形態では、バッファメモリ45内には、図12に示すように、少なくとも2つのバッファレジスタ45a、45bが設けられている。そして、上記のように、各読み出しIC16からデータD(1,1)、D(1,129)、D(1,257)、…がバッファメモリ45に送信されてくると、それらのデータDは、図12に示すように、バッファレジスタ45aの対応するアドレスに格納される。
【0088】
続いて、データD(1,2)、D(1,130)、D(1,258)、…が送信されてくると、それらのデータDが、図13に示すように、バッファレジスタ45aの対応するアドレスに格納される。
【0089】
この処理を繰り返すことにより、図14に示すように、走査線5のラインL1に接続された各放射線検出素子(1,1)〜(1,2048)からの各データD(1,1)〜D(1,2048)がバッファメモリ45のバッファレジスタ45aに格納されると、それらの並べ替えられたデータD(1,1)〜D(1,2048)が記憶手段40に送信されるとともに、図15に示すように、バッファレジスタ45bに移し替えられ、バッファレジスタ45aが空になる。
【0090】
次に、走査線5のラインL2に接続された各放射線検出素子(2,1)〜(2,2048)からの各データD(2,1)〜D(2,2048)の読み出し処理が開始されると、各読み出しIC16からは、まず、データD(2,1)、D(2,129)、D(2,257)、…が送信されてくる。
【0091】
そして、図16に示すように、それらのデータD(2,1)、D(2,129)、D(2,257)、…がバッファレジスタ45aの対応するアドレスに格納されると、制御手段22は、バッファレジスタ45bに格納されているデータD(1,1)、D(1,129)、D(1,257)、…とバッファレジスタ45aに格納されたデータD(2,1)、D(2,129)、D(2,257)、…との各差分データΔD(2,1)、ΔD(2,129)、ΔD(2,257)、…をそれぞれ算出して、ヒストグラムHmに投票する。
【0092】
続いて、図17に示すように、データD(2,2)、D(2,130)、D(2,258)、…が送信されてきてバッファレジスタ45aの対応するアドレスに格納されると、制御手段22は、バッファレジスタ45bに格納されているデータD(1,2)、D(1,130)、D(1,258)、…とバッファレジスタ45aに格納されたデータD(2,2)、D(2,130)、D(2,258)、…との各差分データΔD(2,2)、ΔD(2,130)、ΔD(2,258)、…をそれぞれ算出して、ヒストグラムHmに投票する。
【0093】
この処理を繰り返して、走査線5のラインL2に接続された各放射線検出素子(2,1)〜(2,2048)からの各データD(2,1)〜D(2,2048)がバッファメモリ45のバッファレジスタ45aに格納されると、差分データΔDが算出された後、それらのデータD(2,1)〜D(2,2048)が記憶手段40に送信される。また、データD(2,1)〜D(2,2048)はバッファレジスタ45bに移し替えられ、すなわち、バッファレジスタ45bに格納されていたデータD(1,1)〜D(1,2048)に上書きされ、バッファレジスタ45aが空になる。
【0094】
そして、この処理を走査線5の全てのラインL1〜Lxについて繰り返すことで、各放射線検出素子(1,1)〜(x,2048)からの各データD(1,1)〜D(x,2048)が並べ替えられて記憶手段40に送信されて保存される。また、それとともに、今回の1フレーム分の全ての差分データΔD(2,1)〜ΔD(x,2048)が算出されて、今回のフレームのヒストグラムHmへの投票処理が終了する。
【0095】
各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理が次のフレームに移行すると、制御手段22は、今回のフレームのヒストグラムHmとは別のヒストグラムHm+1を作成し、次回のフレームで読み出された各データD同士の各差分データΔDを算出すると、それらの差分データΔDを作成したヒストグラムHm+1に投票する。
【0096】
このように、制御手段22は、各フレームごとにヒストグラムHmを作成して、算出した差分データΔDを当該フレームのヒストグラムHmに投票するようになっている。
【0097】
なお、作成した1フレーム分のヒストグラムHmに対する差分データΔDの投票結果に対していかなる処理を行うかについては、後で詳しく説明する。また、本実施形態では、ヒストグラムHmは、1単位ごとの差分データΔDの値をそれぞれ階級として作成されており、例えばデータDが0から216−1までの値として表される場合、ヒストグラムHmは−216+1から216−1までの2×(216−1)+1個の階級を有するものとなる。
【0098】
また、上記の説明では、バッファメモリ45に設けられた2つのバッファレジスタ45a、45bを利用して各差分データΔDを算出する場合について説明したが、1つのバッファレジスタ45aを用いて各差分データΔDを算出するように構成することも可能である。
【0099】
すなわち、具体的には、図18(A)に示すように、走査線5のラインLnに接続された各放射線検出素子(n,1)〜(n,2048)からの各データD(n,1)〜D(n,2048)がバッファレジスタ45aに格納された状態で、続いて、走査線5のラインLn+1に接続された各放射線検出素子(n+1,1)、(n+1,129)、…からの各データD(n+1,1)、D(n+1,129)、…がバッファメモリ45に送信されてくると、制御手段22は、それらのデータDにそれぞれ対応する各データD(n,1)、D(n,129)、…との差分データΔD(n+1,1)、ΔD(n+1,129)、…を算出してヒストグラムHmに投票するとともに、バッファレジスタ45aに格納された各データD(n,1)、D(n,129)、…を、送信されてきた各データD(n+1,1)、D(n+1,129)、…で置換して格納する。
【0100】
また、図18(B)、(C)に示すように、各放射線検出素子(n+1,2)、(n+1,130)、…や各放射線検出素子(n+1,3)、(n+1,131)、…からの各データD(n+1,2)、D(n+1,130)、…やD(n+1,3)、D(n+1,131)、…がバッファメモリ45に送信されてくるごとに、制御手段22は、それらのデータDにそれぞれ対応する各データD(n,2)、D(n,130)、…やD(n,3)、D(n,131)、…との差分データΔD(n+1,2)、ΔD(n+1,130)、…やΔD(n+1,3)、ΔD(n+1,131)、…を算出してヒストグラムHmに投票する。
【0101】
また、同時に、バッファレジスタ45aに格納された各データD(n,2)、D(n,130)、…やD(n,3)、D(n,131)、…を、送信されてきた各データD(n+1,2)、D(n+1,130)、…やD(n+1,3)、D(n+1,131)、…で置換して格納する。
【0102】
そして、走査線5のラインLn+1に接続された各放射線検出素子(n+1,1)〜(n+1,2048)について各差分データΔD(n+1,1)〜ΔD(n+1,2048)を算出してヒストグラムHmに投票し、バッファレジスタ45aに格納されていた各データD(n,1)〜D(n,2048)をデータD(n+1,1)〜D(n+1,2048)に全て置換すると、制御手段22は、その時点で、並べ替えたデータD(n+1,1)〜D(n+1,2048)を記憶手段40に送信して保存する。
【0103】
そして、この処理を走査線5の全てのラインL1〜Lxについて繰り返すことで、各放射線検出素子(1,1)〜(x,2048)からの各データD(1,1)〜D(x,2048)が並べ替えられて記憶手段40に送信されて保存されるとともに、今回の1フレーム分の全ての差分データΔD(2,1)〜ΔD(x,2048)が算出されて、今回のフレームのヒストグラムHmへの投票処理が終了する。
【0104】
このように、バッファメモリ45の1つのバッファレジスタ45aを用いる場合でも、データDの並べ替えや各差分データΔDの算出処理を的確に行うことが可能となる。
【0105】
なお、上記のように、本実施形態では、各データDを記憶手段40に保存する際に差分データΔDの算出処理を行うように構成されているが、各データDを一旦記憶手段40に保存した後で記憶手段40から読み出して差分データΔDの算出処理を行うように構成することも可能である。
【0106】
また、上記の実施形態では、図16〜図18に示したように、制御手段22が算出する検出部P上で隣接する放射線検出素子7のデータD同士の差分データΔDが、検出部P上で信号線6が延在する方向、すなわち図19(A)に矢印で模式的に示す方向(以下、信号線方向という。)に隣接する放射線検出素子(p,q)の各データD同士の差分データΔDとして算出される場合について説明した。
【0107】
しかし、検出部P上で隣接する放射線検出素子7のデータD同士の差分データΔDとして、図19(B)に矢印で模式的に示す走査線5の延在方向(以下、走査線方向という。)に隣接する放射線検出素子(p,q)の各データD同士の差分データΔDを算出するように構成することも可能である。
【0108】
この場合、例えば図20に示すように、送信されてきたデータD(n,1)、D(n,129)、D(n,257)、…がバッファレジスタ45aに格納され、続いて送信されてきたデータD(n,2)、D(n,130)、D(n,258)、…がバッファレジスタ45aに格納された時点で各差分データΔD(n,2)、ΔD(n,130)、ΔD(n,258)、…を算出してヒストグラムHmに投票する。
【0109】
そして、図示を省略するが、続いて送信されてきたデータD(n,3)、D(n,131)、D(n,259)、…がバッファレジスタ45aに格納された時点で各データD(n,2)、D(n,130)、D(n,258)、…との各差分データΔD(n,3)、ΔD(n,131)、ΔD(n,259)、…を算出してヒストグラムHmに投票する。
【0110】
そして、この格納、算出、投票の各処理を繰り返し、走査線5のラインLnに接続された各放射線検出素子(n,1)〜(n,2048)からの各データD(n,1)〜D(n,2048)がバッファレジスタ45aに格納された時点で、差分データΔDの算出、ヒストグラムHmへの投票を完了するとともに、並べ替えられたデータD(n,1)〜D(n,2048)を記憶手段40に送信して保存するように構成される。
【0111】
さらに、上記の本実施形態や変形例では、データDの並べ替えの処理を行う際に差分データΔDを算出してヒストグラムHmに投票する場合について説明したが、データDの並べ替えを行う必要がない場合は、より単純な仕方で差分データΔDの算出やヒストグラムHmへの投票を行うように構成することができる。
【0112】
具体的には、例えば図19(A)に示したように信号線方向の差分データΔDを算出する場合には、図12〜図18に示したように各データDを最初のアドレスから順番にD(n,1)、D(n,2)、D(n,3)、…の順にバッファレジスタ45a等に格納する必要はなく、各データDを各読み出しIC16から送信されてきた順番にアドレスに格納する。
【0113】
すなわち、D(n,1)、D(n,129)、…、D(n,1921)、D(n,2)、D(n,130)、…、D(n,1922)、D(n,3)、…の順にバッファレジスタ45a等に格納し、続いて送信されてきた各データD(n+1,1)、D(n+1,129)、…との差分データΔDを順次算出してヒストグラムHmに投票するように構成することが可能である。
【0114】
また、例えば図19(B)に示したように走査線方向の差分データΔDを算出する場合には、例えば図21に示すように、各読み出しIC16から送信されてきた各データD(n,1)、D(n,129)、D(n,257)、…をバッファレジスタ45aに格納した後、バッファレジスタ45bに移し、続いて送信されてきた各データD(n,2)、D(n,130)、D(n,258)、…をバッファレジスタ45aに格納して、各差分データΔD(n,2)、ΔD(n,130)、ΔD(n,258)、…を算出してヒストグラムHmに投票する。
【0115】
そして、図示を省略するが、バッファレジスタ45bの各データD(n,1)、D(n,129)、D(n,257)、…を記憶手段40に送信して保存するとともに、バッファレジスタ45aの各データD(n,2)、D(n,130)、D(n,258)、…をバッファレジスタ45bに移し、続いて送信されてきた各データD(n,3)、D(n,131)、D(n,259)、…をバッファレジスタ45aに格納して、各差分データΔD(n,3)、ΔD(n,131)、ΔD(n,259)、…を算出してヒストグラムHmに投票するように構成することが可能である。
【0116】
次に、制御手段22は、上記のようにして、1フレームごとに、算出した各差分データΔDを当該フレームのヒストグラムHmに投票すると、ヒストグラムHm中の差分データΔDの度数(頻度等ともいう。)Fの分布に基づいて、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始されたか否かを判断するようになっている。
【0117】
以下、この算出した各差分データΔDのヒストグラムHmへの投票結果に基づく制御手段22での放射線の照射開始の判断処理について説明する。
【0118】
本実施形態では、制御手段22は、現在のフレーム(すなわち現在投票を完了したばかりのフレーム)で得られたヒストグラムHm中の差分データΔDの度数Fの分布が、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されていない状態で得られた差分データΔDのヒストグラムHdark中の差分データΔDの度数Fの分布から変化した場合に、現在のフレームで放射線の照射が開始されたと判断するようになっている。
【0119】
本発明者らの研究によれば、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されていない状態で得られた差分データΔD、すなわち各放射線検出素子7から読み出された暗電荷に起因するデータDから算出された差分データΔDのヒストグラムHdark中の度数Fの分布は、例えば図22に示すように、0の差分データΔDを中心として比較的狭い範囲に分布する正規分布状の分布になることが分かっている。
【0120】
なお、図22に示したヒストグラムHdarkや、後述する図23(A)〜(C)に示すヒストグラムHchest、Hlumbar、Hheadでは、前述した−216+1から216−1までの階級のうちの−300から+300までの階級の部分のみが示されている。
【0121】
また、本発明者らの研究では、放射線画像撮影装置1に放射線を照射して患者の胸部正面(図23(A)参照)や腰椎側面(図23(B)参照)、頭蓋骨正面(図23(C)参照)を撮影した状態で各放射線検出素子7から読み出された電荷に起因するデータDから算出された差分データΔDのヒストグラムHchest、Hlumbar、Hhead中の度数Fの各分布は、図22に示したヒストグラムHdarkの場合と同様に、0の差分データΔDを中心とした正規分布状の分布になるが、ヒストグラムHdarkにおける分布に比べて分布の範囲が拡大することが分かっている。
【0122】
そのため、上記のように、各フレームで得られたヒストグラムHm中の差分データΔDの度数Fの分布が、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されていない状態で得られた差分データΔDのヒストグラムHdark中の度数Fの分布から変化したかどうかを監視することで、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始されたか否かを判断することができる。
【0123】
本実施形態では、上記の判断処理の基準となる、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されていない状態で得られた差分データΔDのヒストグラムHdark中の度数Fの分布を、各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理が開始された後、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始される前の段階で得ておくようになっている。
【0124】
具体的には、前述したように、放射線画像撮影装置1の電源スイッチ36(図1参照)が押下される等した時点で各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理が開始されるが、読み出し処理が開始された直後は読み出し回路17がまだ安定していない可能性がある。そこで、本実施形態では、図9に示したようにして各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理を開始して予め設定されたフレーム数の読み出し処理を行った後、続く所定のフレーム数分の各フレームで、それぞれ差分データΔDを各ヒストグラムHdarkに投票する。
【0125】
そして、所定のフレーム数分の各ヒストグラムHdarkの度数Fの平均値を各階級ごとに算出し、各階級における度数Fの平均値を、新たに作成したヒストグラムHdarkの各階級に割り当てることによって、上記の判断処理の基準となる、暗電荷に起因するデータDから算出された差分データΔDのヒストグラムHdarkを得るようになっている。
【0126】
なお、上記の判断処理の基準となるヒストグラムHdarkを、1フレーム分の差分データΔDをヒストグラムHdarkに投票することによって得るように構成することも可能である。また、基準となるヒストグラムHdarkを得るための上記の処理を省くために、予め上記の処理を行って基準となるヒストグラムHdarkを得ておき、制御手段22のメモリや記憶手段40に保存しておき、各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理を開始した時点で、制御手段22が基準となるヒストグラムHdarkを読み出すように構成することも可能である。
【0127】
一方、制御手段22は、上記のようにして各フレームごとに差分データΔDを算出してヒストグラムHmに投票し、各フレームでの各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理および差分データΔDの算出処理、ヒストグラムHmへの投票処理が終了すると、上記のように、現在のフレームで得られたヒストグラムHm中の差分データΔDの度数Fの分布がヒストグラムHdark中の差分データΔDの度数Fの分布から変化したかどうかを判断する.
【0128】
その際、以下のようにしてこの判断処理を行うように構成することが可能である。
【0129】
[判断処理1]
ヒストグラムHdark中の差分データΔDの度数Fの分布における、予め設定された値の差分データΔDに対応する階級の度数Fに対して、現在のフレームで得られたヒストグラムHm中の差分データΔDの度数Fの分布における、当該値の差分データΔDに対応する階級の度数Fが、予め設定された閾値または割合以下になった場合、または予め設定された閾値または割合を越えた場合に、当該現在のフレームで放射線の照射が開始されたと判断する。すなわち、いわゆる定点監視による判断である。
【0130】
具体的には、例えば、0の差分データΔDに対応する階級の度数FをF0とすると、図22と図23(A)〜(C)とを見比べた場合、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されて得られるヒストグラムHchest、Hlumbar、Hheadにおける度数F0の方が、ヒストグラムHdarkにおける度数F0よりも小さくなっている。
【0131】
このように、放射線画像撮影装置1に対して放射線が照射されると、少なくともそのフレームにおけるヒストグラムHm中の差分データΔDの度数Fの分布における度数F0が小さくなることが分かる。
【0132】
[判断処理1−1]
そこで、例えば、ヒストグラムHdark中の差分データΔDの度数Fの分布における度数F0に対して、現在のフレームで得られたヒストグラムHm中の差分データΔDの度数Fの分布における度数F0が、予め設定された閾値または割合以下になった場合に、当該現在のフレームで放射線の照射が開始されたと判断するように構成することができる。
【0133】
また、例えば、図22や図23(A)〜(C)に示す0ではない値−s、sの差分データΔDに対応する階級の度数FをF−s、Fsとすると、図22と図23(A)〜(C)とを見比べると分かるように、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されて得られるヒストグラムHchest、Hlumbar、Hheadにおける度数F−s、Fsの方が、ヒストグラムHdarkにおける度数F−s、Fsよりもそれぞれ大きくなる。
【0134】
このように、適切な−sやsを選べば、放射線画像撮影装置1に対して放射線が照射されると、そのフレームにおけるヒストグラムHm中の差分データΔDの度数Fの分布における度数F−s、Fsは逆に大きくなることが分かる。
【0135】
[判断処理1−2]
そこで、0でない適切な−sやsを予め設定しておき、例えば、ヒストグラムHdark中の差分データΔDの度数Fの分布における度数F−sや度数Fsに対して、現在のフレームで得られたヒストグラムHm中の差分データΔDの度数Fの分布における度数F−sや度数Fsが、予め設定された閾値または割合を越えた場合に、当該現在のフレームで放射線の照射が開始されたと判断するように構成することができる。
【0136】
[判断処理2]
また、図22のヒストグラムHdarkと図23(A)〜(C)のヒストグラムHchest、Hlumbar、Hheadとを見比べて分かるように、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されて得られるヒストグラムHchest、Hlumbar、Hheadでは、ヒストグラムHchest、Hlumbar、Hhead中の差分データΔDの分布における半値幅が、ヒストグラムHdark中の差分データΔDの分布における半値幅よりも大きくなる。
【0137】
そこで、ヒストグラムHdark中の差分データΔDの度数Fの分布における半値幅に対して、現在のフレームで得られたヒストグラムHm中の差分データΔDの度数Fの分布における半値幅が、予め設定された閾値または割合を越えた場合に、当該現在のフレームで放射線の照射が開始されたと判断するように構成することが可能である。
【0138】
[判断処理3]
また、図22のヒストグラムHdarkと図23(A)〜(C)のヒストグラムHchest、Hlumbar、Hheadとを見比べて分かるように、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されて得られるヒストグラムHchest、Hlumbar、Hheadでは、ヒストグラムHchest、Hlumbar、Hhead中の差分データΔDの分布における分散や標準偏差が、ヒストグラムHdark中の差分データΔDの分布における分散や標準偏差よりも大きくなる。
【0139】
そこで、ヒストグラムHdark中の差分データΔDの度数Fの分布における分散や標準偏差に対して、現在のフレームで得られたヒストグラムHm中の差分データΔDの度数Fの分布における分散や標準偏差が、予め設定された閾値または割合を越えた場合に、当該現在のフレームで放射線の照射が開始されたと判断するように構成することが可能である。
【0140】
このように構成する場合、制御手段22は、上記のようにして1フレーム分の各差分データΔDを算出した時点で、それらの平均値ΔDaveを算出し、下記(1)式に従って分散σ2を算出し、或いは算出した分散σ2の平方根を算出して標準偏差とする。
【数1】
【0141】
なお、現在のフレームでは放射線画像撮影装置1には放射線が照射されておらず、各放射線検出素子7から読み出されたデータDが暗電荷に起因するデータDである場合であっても、データDから算出された差分データΔDのヒストグラムHdarkを得ると、度数F0や度数F−s、Fsや分布の半値幅、或いは分布の分散σ2や標準偏差にはフレームごとのゆらぎが生じる。
【0142】
そのため、上記の各判断処理の基準となる閾値や割合として、このような度数F0や度数F−s、Fs、分布の半値幅、分散σ2、標準偏差に生じるフレームごとのゆらぎと区別して、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始されたことを的確に検出することができる閾値や割合を設定する必要がある。
【0143】
また、上記の各判断処理のいずれか1つのみを行うように構成してもよく、また、上記の各判断処理のうちの複数の判断処理を組み合わせて行って、複数の判断処理のいずれかで条件が満たされた場合や、複数の判断処理の全てで条件がともに満たされた場合に現在のフレームで放射線の照射が開始されたと判断するように構成することも可能である。
【0144】
さらに、上記の各判断処理の仕方で放射線の照射開始を検出する場合、制御手段22は、ヒストグラムHdarkにおける度数F0や度数F−s、Fsの情報や半値幅の情報或いは分散σ2や標準偏差の情報と、閾値や割合の情報とを有していればよく、ヒストグラムHdarkの全階級について差分データΔDの度数Fの情報を有している必要はない。
【0145】
次に、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1の作用について説明する。
【0146】
前述したように、制御手段22は、放射線画像撮影装置1の電源スイッチ36(図1参照)が押下されたり、放射線画像撮影装置1が覚醒状態に遷移されたり、或いは、コンソール58から各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理を開始する旨の信号等を受信すると、その時点で、各読み出し回路17を起動させるとともに、走査駆動手段15にトリガ信号を送信して、図9に示したように、走査駆動手段15のゲートドライバ15bから走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加させて、各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理を開始させる。
【0147】
また、制御手段22は、走査線5の各ラインL1〜Lxに接続されている各放射線検出素子7からデータDが読み出されて記憶手段40に保存される際に、本実施形態では図11〜図17に示したように、それらのデータDの差分データΔDを算出してヒストグラムHmに投票して、各フレームごとに算出した差分データΔDの度数Fの分布を得る。
【0148】
そして、本実施形態では、前述したように、制御手段22は、各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理が開始されてから予め設定されたフレーム数の読み出し処理を行った後、続く所定のフレーム数分の各フレームで、上記のようにしてそれぞれ差分データΔDを各ヒストグラムHdarkに投票する。そして、所定のフレーム数分の各ヒストグラムHdarkの度数Fの平均値を各階級ごとに算出し、各階級における度数Fの平均値を、新たに作成したヒストグラムHdarkの各階級に割り当てることによって、暗電荷に起因するデータDから算出された差分データΔDのヒストグラムHdarkを得る。
【0149】
制御手段22は、上記のようにして差分データΔDのヒストグラムHdarkを得ると、予め設定された上記の各判断処理のいずれかの判断処理、或いは全ての判断処理に必要なヒストグラムHdarkにおける度数F0や度数F−s、Fsの情報や、半値幅の情報、或いは分散σ2や標準偏差の情報を、ヒストグラムHdark中の差分データΔDの度数Fの分布から算出して、制御手段22のメモリや記憶手段40に保存する。
【0150】
なお、前述した閾値や割合は予め制御手段22のメモリや記憶手段40に保存されている。また、本実施形態では、上記のように各階級ごとの平均値を算出するために、所定のフレーム数分のヒストグラムHdarkの全階級について差分データΔDの度数Fの情報を記憶手段40等に記憶しておく必要があるが、上記のように各階級の度数Fの平均値を算出してヒストグラムHdarkを作成し、ヒストグラムHdarkにおける度数F0や度数F−s、Fsの情報等を算出した後は、ヒストグラムHdarkの全階級について差分データΔDの度数Fの情報を有している必要がないことは前述した通りである。
【0151】
制御手段22は、その後も、各差分データΔDの算出処理や、ヒストグラムHmへの投票処理、差分データΔDの度数Fの分布の変化に基づく放射線の照射開始の判断処理をフレームごとに続行する。
【0152】
また、前述したように、本実施形態では、記憶手段40にデータDを保存するフレーム数が予め設定されているため、各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理を繰り返して、予め設定されたフレーム数のフレーム分の各放射線検出素子7のデータDが記憶手段40に保存されると、それ以降の各フレームのデータDについては、最初にデータDを保存したフレームから順に、過去のフレームのデータD上に順次上書き保存していく。
【0153】
このようにして、各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理が繰り返され、差分データΔDの算出処理やヒストグラムHmへの投票処理、放射線の照射開始の判断処理、読み出されたデータDの記憶手段40への保存が繰り返される。
【0154】
そして、例えば、図24に示すようなタイミングで放射線画像撮影装置1に対して放射線が照射されたとする。なお、図24では、斜線を付した期間が、放射線が照射された期間を表す。
【0155】
この場合、m回目のフレームでは、走査線5のラインL1やラインL2、ラインL3にそれぞれオン電圧が印加されて、走査線5の各ラインL1〜L3に接続されている各放射線検出素子7からそれぞれ読み出されたデータDは、放射線が照射される前に読み出されたデータであり、前述した暗電荷に起因するデータであるが、走査線5のラインL4以降の各ラインLに接続されている各放射線検出素子7からそれぞれ読み出されたデータDは、放射線の照射が開始された後に読み出されたデータDである。
【0156】
そのため、図24では図示しないm−1回目までの各フレームでは、ヒストグラムH中の差分データΔDの度数Fの分布は、多少のゆらぎはあるが図22に示した分布と同様の分布であったものが、今回のm回目のフレームでは、ヒストグラムH中の差分データΔDの度数Fの分布が図23(A)〜(C)に示したような分布に変化する。
【0157】
そのため、制御手段22が予め設定された上記の各判断処理のいずれか或いはそれらの組み合わせに従って判断処理を行うと、設定された判断処理の条件が満たされるため、制御手段22は、今回のm回目のフレームで放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始されたと判断する。
【0158】
また、図24の例では、m回目のフレームからm+1回目のフレームまで放射線が照射されている。そのため、m回目のフレームだけでなく、m+1回目のフレームでも設定された判断処理の条件が満たされるため、制御手段22は、m+1回目のフレームでも放射線画像撮影装置1に対して放射線が照射されていると判断する。
【0159】
一方、m+2回目のフレームでは、実際には放射線の照射は終了しているが、m+2回目のフレームの読み出し処理で、走査線5のラインL1やラインL2に接続されている各放射線検出素子7からは、m+1回目のフレームでの読み出し処理後にさらに放射線が照射されたことにより発生した電荷に起因するデータDが読み出される。
【0160】
そのため、m+2回目のフレームでも設定された判断処理の条件が満たされれば、制御手段22は、m+2回目のフレームでも放射線画像撮影装置1に対して放射線が照射されていると判断する。
【0161】
しかし、図24では図示しないm+3回目のフレームでは、ヒストグラムHm+3中の差分データΔDの度数Fの分布は、多少のゆらぎはあるが図22に示した分布と同様の分布に戻るため、m+3回目のフレームでは、設定された判断処理の条件が満たされず、制御手段22は、m+3回目のフレームで放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が終了したと判断する。
【0162】
ところで、前述したように、本実施形態では、各フレームで読み出されたデータDを記憶手段40に記憶されている過去のフレームのデータD上に順次上書き保存していくように構成されているため、上記のように放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が終了したと判断した後も各フレームごとの各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理を続行してしまうと、m回目からm+2回目のフレームで得られた、放射線の照射により発生した電荷に起因する有用なデータDが、その後の各フレームの読み出し処理で読み出された暗電荷に起因するデータDで上書きされて失われてしまう。
【0163】
そのため、制御手段22は、m回目からm+2回目のフレームで得られた有用なデータDが後の各フレームで得られたデータDで上書きされないようにするために、m+3回目のフレームで放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が終了したと判断すると、走査駆動手段15のゲートドライバ15bからの走査線5の各ラインL1〜Lxに対するオン電圧の印加を停止させて、当該m+3回目のフレームで各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理を停止させる。
【0164】
なお、上記のように、制御手段22が放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射の終了を検出して各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理を停止させる代わりに、放射線の照射の開始が検出されたフレームから何フレーム目で各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理を停止させるかを予め決めておき、放射線の照射の終了を検出することなく、予め設定されたフレームの読み出し処理を終了した時点で各放射線検出素子7からのデータDの読み出し処理を停止させるように構成することも可能である。
【0165】
図24に示した例では、m回目からm+2回目の各フレームで読み出されたデータDに、放射線の照射により発生した電荷に起因する有用な情報が含まれている。また、前述したように、放射線画像撮影装置1に対して放射線が照射される以前のm−1回目のフレーム等で読み出されたデータDは、暗電荷に相当するデータDであり、真の画像データd*を算出するためのオフセットデータOとして利用することができる。
【0166】
そのため、少なくともm−1回目からm+2回目の各フレームで読み出されたデータDを用いて真の画像データd*を算出することができる。なお、m−1回目のフレームで読み出されたデータDをオフセットデータOとして用いることも可能であり、また、m−1回目のフレームを含むそれ以前の複数のフレームでの各データDの放射線検出素子7ごとの平均値を算出する等して、オフセットデータOを算出するように構成することも可能である。
【0167】
図24に示した例の場合、m回目からm+2回目の各フレームで読み出された各データDには、放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生した電荷すなわち真の画像データd*の一部に相当するデータと、暗電荷に起因するデータすなわちオフセットデータOとが含まれている。
【0168】
そこで、例えばm回目のフレームで読み出されたデータDをD(m)のように表すと、放射線の照射により各放射線検出素子7ごとに取得されるべき真の画像データd*は、
d*=(D(m)−O)+(D(m+1) −O)+(D(m+2) −O)
∴d*=D(m)+D(m+1)+D(m+2)−3O …(2)
で算出することができる。
【0169】
この各放射線検出素子7ごとの真の画像データd*の算出処理は、放射線画像撮影装置1自体で行ってもよく、また、必要なデータDを放射線画像撮影装置1から外部装置に送信して、外部装置で行うように構成することも可能である。
【0170】
以上のように、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1によれば、上記のように、各フレームごとに算出した差分データΔDをヒストグラムHmに投票した場合の、ヒストグラムHm中の差分データΔDの度数Fの分布の変化に基づいて、放射線画像撮影装置1に対して放射線の照射が開始されたか否かを判断する。そのため、放射線画像撮影装置1自体で、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射の開始を的確に判断して検出することが可能となる。
【0171】
また、それとともに、例えば前述したように各放射線検出素子7から読み出されたデータDの値そのものに基づいて放射線の照射の開始を検出する仕方と併用する等すれば、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射の開始をより的確に検出することが可能となる。そのため、放射線の照射開始を検出できずに放射線を再度照射しなければならなくなって電力を浪費したり、患者の負担が増大することを確実に防止することが可能となる。
【0172】
なお、上記の実施形態では、ヒストグラムHmを、1単位ごとの差分データΔDの値をそれぞれ階級として作成する場合について説明した。しかし、ヒストグラムHmの作成の仕方はこれに限定されず、例えば図25に示すように、ヒストグラムHm*を、差分データΔDを所定の数値範囲ごとに区分した場合の各数値範囲をそれぞれ階級として作成することも可能である。図25の例では、各階級が、−t未満の数値範囲と、−t以上t以下の数値範囲と、tより大きい数値範囲とに区分されて設定されている場合が示されている。
【0173】
ヒストグラムHm*をこのように作成する場合、制御手段22は、算出した差分データΔDを、その値に応じたヒストグラムHm*の階級に投票する。この場合、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されていないフレームで算出された差分データΔD、すなわち各放射線検出素子7から読み出された暗電荷に起因するデータDから算出された差分データΔDのヒストグラムHm*(この場合のヒストグラムHm*は図22のHdarkに相当する。)中の度数Fの分布は、図26(A)に示すように、0を含む数値範囲の階級、すなわち−t以上t以下の数値範囲の階級に多くの差分データΔDが集中する分布になる。
【0174】
また、放射線画像撮影装置1に放射線が照射された場合には、図26(B)に示すように、0を含む数値範囲の階級すなわち−t以上t以下の数値範囲の階級に多くの差分データΔDが集まるが、図26(A)の場合に比べて、それ以外の階級の度数Fの、0を含む数値範囲の階級の度数Fに対する比率が大きくなる。
【0175】
そこで、この場合、上記の[判断処理1−1]や[判断処理1−2]と同様に、以下のように判断処理を行うように構成することが可能である。
【0176】
[判断処理4−1]
例えば、図26(A)のヒストグラムHm*(すなわちHdark)中の差分データΔDの度数Fの分布における、0を含む数値範囲の差分データΔDに対応する階級の度数Fに対して、現在のフレームで得られたヒストグラムHm*中の差分データΔDの度数Fの分布における、0を含む数値範囲の差分データΔDに対応する階級の度数Fが、予め設定された閾値または割合以下になった場合に、当該現在のフレームで放射線の照射が開始されたと判断するように構成することができる。
【0177】
[判断処理4−2]
また、図26(A)のヒストグラムHm*(すなわちHdark)中の差分データΔDの度数Fの分布における、0を含む数値範囲以外の数値範囲(すなわち−t未満の数値範囲とtより大きい数値範囲)の差分データΔDに対応する階級の度数Fに対して、現在のフレームで得られたヒストグラムHm*中の差分データΔDの度数Fの分布における、0を含む数値範囲以外の数値範囲の差分データΔDに対応する階級の度数Fが、予め設定された閾値または割合を越えた場合に、当該現在のフレームで放射線の照射が開始されたと判断するように構成することができる。
【0178】
そして、上記の各判断処理のいずれか1つ或いは両方を組み合わせて行うことで、制御手段22は、放射線画像撮影装置1に対して放射線の照射が開始されたか否かを的確に判断することが可能となる。そして、この場合も、放射線画像撮影装置1自体で、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射の開始を的確に判断して検出することが可能となり、上記の実施形態と同等の効果を発揮することが可能となる。
【符号の説明】
【0179】
1 放射線画像撮影装置
5、L1〜Lx 走査線
6 信号線
7、(p,q) 放射線検出素子
8 TFT(スイッチ手段)
15 走査駆動手段
17 読み出し回路
22 制御手段(制御手段、算出手段)
D、D(p,q) データ
F 度数
F0 値が0の差分データに対応する階級の度数
Hdark 放射線が照射されていない状態で得られたヒストグラム
Hm ヒストグラム(現在のフレームで得られたヒストグラム)
Hm* ヒストグラム
P 検出部
r 領域
s、−s 予め設定された値
−t〜t 0を含む数値範囲
ΔD、ΔD(p,q) 差分、差分データ
σ2 分散
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに交差するように配設された複数の走査線および複数の信号線と、前記複数の走査線および複数の信号線により区画された各領域に二次元状に配列された複数の放射線検出素子とを備える検出部と、
前記放射線検出素子からのデータの読み出し処理の際に、データ読み出し用の電圧を印加する前記各走査線を順次切り替えながら印加する走査駆動手段と、
前記各走査線に接続され、前記データ読み出し用の電圧が印加されると前記放射線検出素子に蓄積された電荷を前記信号線に放出させるスイッチ素子と、
前記信号線を介して前記放射線検出素子から読み出された前記電荷を前記データに変換する読み出し回路と、
少なくとも前記走査駆動手段および前記読み出し回路を制御して前記放射線検出素子からの前記データの読み出し処理を行わせる制御手段と、
前記検出部上で隣接する前記放射線検出素子の前記データ同士の差分として差分データを算出する算出手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記検出部上の全ての前記放射線検出素子から前記データを読み出す期間を1フレームとするとき、前記算出手段が算出した前記差分データを各フレームごとにそれぞれ1つのヒストグラムに投票し、1フレーム分の前記差分データの投票が終了した時点における前記ヒストグラム中の前記差分データの度数の分布に基づいて、放射線が照射されていない状態の前記フレームで得られた前記ヒストグラム中の前記差分データの度数の分布に対して、現在のフレームで得られた前記ヒストグラム中の前記差分データの度数の分布が変化した場合に、当該現在のフレームで放射線の照射が開始されたと判断することを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項2】
前記ヒストグラムは、1単位ごとの前記差分データの値をそれぞれ階級として作成され、
前記制御手段は、放射線が照射されていない状態の前記フレームで得られた前記ヒストグラム中の前記差分データの度数の分布における、予め設定された前記値の前記差分データに対応する階級の度数に対して、現在のフレームで得られた前記ヒストグラム中の前記差分データの度数の分布における、前記予め設定された値の差分データに対応する階級の度数が、予め設定された閾値または割合以下になった場合、または予め設定された閾値または割合を越えた場合に、当該現在のフレームで放射線の照射が開始されたと判断することを特徴とする請求項1に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項3】
前記制御手段は、放射線が照射されていない状態の前記フレームで得られた前記ヒストグラム中の前記差分データの度数の分布における、前記値が0の前記差分データに対応する階級の度数に対して、現在のフレームで得られた前記ヒストグラム中の前記差分データの度数の分布における、前記値が0の前記差分データに対応する階級の度数が、予め設定された閾値または割合以下になった場合に、当該現在のフレームで放射線の照射が開始されたと判断することを特徴とする請求項2に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項4】
前記制御手段は、放射線が照射されていない状態の前記フレームで得られた前記ヒストグラム中の前記差分データの度数の分布における、前記値が0でない前記差分データに対応する階級の度数に対して、現在のフレームで得られた前記ヒストグラム中の前記差分データの度数の分布における、当該値が0でない差分データに対応する階級の度数が、予め設定された閾値または割合を越えた場合に、当該現在のフレームで放射線の照射が開始されたと判断することを特徴とする請求項2に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項5】
前記ヒストグラムは、1単位ごとの前記差分データの値をそれぞれ階級として作成され、
前記制御手段は、放射線が照射されていない状態の前記フレームで得られた前記ヒストグラム中の前記差分データの度数の分布における半値幅に対して、現在のフレームで得られた前記ヒストグラム中の前記差分データの度数の分布における半値幅が、予め設定された閾値または割合を越えた場合に、当該現在のフレームで放射線の照射が開始されたと判断することを特徴とする請求項1に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項6】
前記ヒストグラムは、1単位ごとの前記差分データの値をそれぞれ階級として作成され、
前記制御手段は、放射線が照射されていない状態の前記フレームで得られた前記ヒストグラム中の前記差分データの度数の分布における分散または標準偏差に対して、現在のフレームで得られた前記ヒストグラム中の前記差分データの度数の分布における分散または標準偏差が、予め設定された閾値または割合を越えた場合に、当該現在のフレームで放射線の照射が開始されたと判断することを特徴とする請求項1に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項7】
前記ヒストグラムは、前記差分データを所定の数値範囲ごとに区分した場合の前記各数値範囲をそれぞれ階級として作成され、
前記制御手段は、放射線が照射されていない状態の前記フレームで得られた前記ヒストグラム中の前記差分データの度数の分布における、予め設定された前記数値範囲の前記差分データに対応する階級の度数に対して、現在のフレームで得られた前記ヒストグラム中の前記差分データの度数の分布における、前記予め設定された数値範囲の差分データに対応する階級の度数が、予め設定された閾値または割合以下になった場合、または予め設定された閾値または割合を越えた場合に、当該現在のフレームで放射線の照射が開始されたと判断することを特徴とする請求項1に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項8】
前記制御手段は、放射線が照射されていない状態の前記フレームで得られた前記ヒストグラム中の前記差分データの度数の分布における、0を含む前記数値範囲の前記差分データに対応する階級の度数に対して、現在のフレームで得られた前記ヒストグラム中の前記差分データの度数の分布における、0を含む前記数値範囲の前記差分データに対応する階級の度数が、予め設定された閾値または割合以下になった場合に、当該現在のフレームで放射線の照射が開始されたと判断することを特徴とする請求項7に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項9】
前記制御手段は、放射線が照射されていない状態の前記フレームで得られた前記ヒストグラム中の前記差分データの度数の分布における、0を含む前記数値範囲以外の前記数値範囲の前記差分データに対応する階級の度数に対して、現在のフレームで得られた前記ヒストグラム中の前記差分データの度数の分布における、0を含む前記数値範囲以外の当該数値範囲の前記差分データに対応する階級の度数が、予め設定された閾値または割合を越えた場合に、当該現在のフレームで放射線の照射が開始されたと判断することを特徴とする請求項7に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項1】
互いに交差するように配設された複数の走査線および複数の信号線と、前記複数の走査線および複数の信号線により区画された各領域に二次元状に配列された複数の放射線検出素子とを備える検出部と、
前記放射線検出素子からのデータの読み出し処理の際に、データ読み出し用の電圧を印加する前記各走査線を順次切り替えながら印加する走査駆動手段と、
前記各走査線に接続され、前記データ読み出し用の電圧が印加されると前記放射線検出素子に蓄積された電荷を前記信号線に放出させるスイッチ素子と、
前記信号線を介して前記放射線検出素子から読み出された前記電荷を前記データに変換する読み出し回路と、
少なくとも前記走査駆動手段および前記読み出し回路を制御して前記放射線検出素子からの前記データの読み出し処理を行わせる制御手段と、
前記検出部上で隣接する前記放射線検出素子の前記データ同士の差分として差分データを算出する算出手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記検出部上の全ての前記放射線検出素子から前記データを読み出す期間を1フレームとするとき、前記算出手段が算出した前記差分データを各フレームごとにそれぞれ1つのヒストグラムに投票し、1フレーム分の前記差分データの投票が終了した時点における前記ヒストグラム中の前記差分データの度数の分布に基づいて、放射線が照射されていない状態の前記フレームで得られた前記ヒストグラム中の前記差分データの度数の分布に対して、現在のフレームで得られた前記ヒストグラム中の前記差分データの度数の分布が変化した場合に、当該現在のフレームで放射線の照射が開始されたと判断することを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項2】
前記ヒストグラムは、1単位ごとの前記差分データの値をそれぞれ階級として作成され、
前記制御手段は、放射線が照射されていない状態の前記フレームで得られた前記ヒストグラム中の前記差分データの度数の分布における、予め設定された前記値の前記差分データに対応する階級の度数に対して、現在のフレームで得られた前記ヒストグラム中の前記差分データの度数の分布における、前記予め設定された値の差分データに対応する階級の度数が、予め設定された閾値または割合以下になった場合、または予め設定された閾値または割合を越えた場合に、当該現在のフレームで放射線の照射が開始されたと判断することを特徴とする請求項1に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項3】
前記制御手段は、放射線が照射されていない状態の前記フレームで得られた前記ヒストグラム中の前記差分データの度数の分布における、前記値が0の前記差分データに対応する階級の度数に対して、現在のフレームで得られた前記ヒストグラム中の前記差分データの度数の分布における、前記値が0の前記差分データに対応する階級の度数が、予め設定された閾値または割合以下になった場合に、当該現在のフレームで放射線の照射が開始されたと判断することを特徴とする請求項2に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項4】
前記制御手段は、放射線が照射されていない状態の前記フレームで得られた前記ヒストグラム中の前記差分データの度数の分布における、前記値が0でない前記差分データに対応する階級の度数に対して、現在のフレームで得られた前記ヒストグラム中の前記差分データの度数の分布における、当該値が0でない差分データに対応する階級の度数が、予め設定された閾値または割合を越えた場合に、当該現在のフレームで放射線の照射が開始されたと判断することを特徴とする請求項2に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項5】
前記ヒストグラムは、1単位ごとの前記差分データの値をそれぞれ階級として作成され、
前記制御手段は、放射線が照射されていない状態の前記フレームで得られた前記ヒストグラム中の前記差分データの度数の分布における半値幅に対して、現在のフレームで得られた前記ヒストグラム中の前記差分データの度数の分布における半値幅が、予め設定された閾値または割合を越えた場合に、当該現在のフレームで放射線の照射が開始されたと判断することを特徴とする請求項1に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項6】
前記ヒストグラムは、1単位ごとの前記差分データの値をそれぞれ階級として作成され、
前記制御手段は、放射線が照射されていない状態の前記フレームで得られた前記ヒストグラム中の前記差分データの度数の分布における分散または標準偏差に対して、現在のフレームで得られた前記ヒストグラム中の前記差分データの度数の分布における分散または標準偏差が、予め設定された閾値または割合を越えた場合に、当該現在のフレームで放射線の照射が開始されたと判断することを特徴とする請求項1に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項7】
前記ヒストグラムは、前記差分データを所定の数値範囲ごとに区分した場合の前記各数値範囲をそれぞれ階級として作成され、
前記制御手段は、放射線が照射されていない状態の前記フレームで得られた前記ヒストグラム中の前記差分データの度数の分布における、予め設定された前記数値範囲の前記差分データに対応する階級の度数に対して、現在のフレームで得られた前記ヒストグラム中の前記差分データの度数の分布における、前記予め設定された数値範囲の差分データに対応する階級の度数が、予め設定された閾値または割合以下になった場合、または予め設定された閾値または割合を越えた場合に、当該現在のフレームで放射線の照射が開始されたと判断することを特徴とする請求項1に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項8】
前記制御手段は、放射線が照射されていない状態の前記フレームで得られた前記ヒストグラム中の前記差分データの度数の分布における、0を含む前記数値範囲の前記差分データに対応する階級の度数に対して、現在のフレームで得られた前記ヒストグラム中の前記差分データの度数の分布における、0を含む前記数値範囲の前記差分データに対応する階級の度数が、予め設定された閾値または割合以下になった場合に、当該現在のフレームで放射線の照射が開始されたと判断することを特徴とする請求項7に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項9】
前記制御手段は、放射線が照射されていない状態の前記フレームで得られた前記ヒストグラム中の前記差分データの度数の分布における、0を含む前記数値範囲以外の前記数値範囲の前記差分データに対応する階級の度数に対して、現在のフレームで得られた前記ヒストグラム中の前記差分データの度数の分布における、0を含む前記数値範囲以外の当該数値範囲の前記差分データに対応する階級の度数が、予め設定された閾値または割合を越えた場合に、当該現在のフレームで放射線の照射が開始されたと判断することを特徴とする請求項7に記載の放射線画像撮影装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2011−177356(P2011−177356A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−44822(P2010−44822)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】
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