説明

放射線硬化性シリコーンゴム組成物で封止又はコーティングされた電子部品

【課題】
短時間の放射線照射で速やかに硬化して、各種基材に対し良好な接着性を示す放射線硬化性組成物のシリコーンゴム硬化物で封止又はコーティングされた電子部品、および電子部品の封止又はコーティング方法を提供する。
【解決手段】
(A) 複数のアクリロイル基および/またはメタクリロイル基を有するオルガノポリシロキサン、
(B) 放射線増感剤、および
(C) 式:−SiR63(R6 は独立に炭素原子数1〜8のアルキル基またはアルコキシ基である)で表されるトリオルガノシリル基を有するイソシアヌレート化合物
(更に、好ましくは(D) チタネート化合物およびチタンキレート化合物より成る群から選ばれる少なくとも一種のチタン含有有機化合物)
を含有する放射線硬化性シリコーンゴム組成物に放射線を照射して得られたシリコーンゴム硬化物で封止又はコーティングされた電子部品、および該組成物でコーティング又はポッティングした電子部品に放射線を照射して該組成物を硬化させることを特徴とする、電子部品の封止又はコーティング方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着性に優れた硬化物を形成できる放射線硬化性シリコーンゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線等の放射線を照射して硬化物とすることができるオルガノポリシロキサン組成物としては、例えば、複数個のアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等のビニル官能性基含有オルガノポリシロキサンと光重合開始剤からなる放射線硬化性光ファイバー用コーティング剤(特許文献1参照)が知られている。しかし、この組成物は基材に対する接着性が低く、特に、電気・電子部品関連のコーティング剤、接着剤、またはポッティング剤としては使用できるものではなかった。
【0003】
また、先に、本出願人は複数のアクリロイルオキシ基および/またはメタクリロイルオキシ基を有するオルガノポリシロキサンと光増感剤とともに、アルコキシシラン(および/またはその部分加水分解縮合物)を含有し、接着性に優れた硬化物を形成できる放射線硬化性シリコーンゴム組成物(特許文献2)を提案しているが、この組成物は接着力の発現が十分に速やかでなく、また、特に過酷な条件下における基材との接着が未だ不十分であるとの問題を有するものであった。
【0004】
【特許文献1】特公平4−25231号公報
【特許文献2】特開平11−302348号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、短時間の放射線照射で速やかに硬化して、各種基材に対し良好な接着性を示す放射線硬化性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するものとして
(A) 下記一般式(1):
【0007】
【化1】


〔式中、R1 は独立に非置換または置換の炭素原子数1〜9の1価炭化水素基であり、
Xは独立に下記一般式(2):
【0008】
【化2】


{式中、R2 は炭素原子数2〜4の2価炭化水素基または酸素原子であり、R3 は独立に下記一般式:
【0009】
【化3】


(式中、Rは水素原子またはメチル基である)
で表されるアクリロイル基および/またはメタクリロイル基を1〜3個有する炭素原子数4〜25の1価の有機基であり、R4 は独立に非置換または置換の炭素原子数1〜9の1価炭化水素基であり、R5 は独立に炭素原子数1〜18の1価炭化水素基であり、nは1〜3、mは0〜2、かつn+mの和は1〜3の整数である。但し、n=1のとき、前記R3 は2〜3個のアクリロイル基および/またはメタクリロイル基を有する有機基である。}で表される基であり、Lは8〜10,000の整数である〕
で表されるオルガノポリシロキサン、
(B) 放射線増感剤、並びに、
(C) 式:−SiR63(R6 は独立に炭素原子数1〜8のアルキル基またはアルコキシ基である)で表されるトリオルガノシリル基を有するイソシアヌレート化合物および/またはその加水分解縮合物
を含有する放射線硬化性シリコーンゴム組成物を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の組成物は、放射線、例えば紫外線の短時間の照射により容易に硬化し、しかも速やかに接着性が発現する。そのため、各種基材の接着、コーティング、ポッティング用等として有用である。また、硬化速度が速いため、例えば、電気・電子部品の製造における工程の短縮、生産性の向上、省エネルギー等の効果が得られる。更に、本発明の組成物は硬化直後から接着性が強く発現されるので、得られる接着性部品の取り扱いが容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本明細書において、(メタ)アクリロイル((meth)acryloyl)、(メタ)アクリル、(メタ)アクリレート等は、それぞれ、アクリロイル(acryloyl)およびメタクリロイル(methacryloyl)、アクリルおよびメタクリル、並びにアクリレートおよびメタクリレート等を包含する用語として使用する。また、「Me」はメチル基を、「Et」はエチル基を、「Pr」はプロピル基を、「iPr」はイソプロピル基を意味するものである。
【0012】
[(A) オルガノポリシロキサン]
(A)成分のオルガノポリシロキサンは、下記一般式(1)で表されるものであり、本発明の放射線硬化性シリコーンゴム組成物の主剤(ベースポリマー)として使用されるものである。
【0013】
【化4】


〔式中、R1 は独立に非置換または置換の炭素原子数1〜9の1価炭化水素基であり、
Xは独立に下記一般式(2):
【0014】
【化5】


{式中、R2 は炭素原子数2〜4の2価炭化水素基または酸素原子、R3 は独立に下記一般式:
【0015】
【化6】


(式中、Rは水素原子またはメチル基である)
で表されるアクリロイル基および/またはメタクリロイル基を1〜3個有する炭素原子数4〜25、好ましくは5〜20の1価の有機基、R4 は独立に非置換または置換の炭素原子数1〜9、好ましくは1〜6の1価炭化水素基、R5 は独立に炭素原子数1〜18、好ましくは1〜8の1価炭化水素基であり、nは1〜3、mは0〜2、かつn+mの和は1〜3の整数である。但し、n=1のとき、前記R3 は2〜3個のアクリロイル基および/またはメタクリロイル基を有する有機基である。}で表される基であり、Lは8〜10,000、好ましくは 48〜1,000の整数である〕
【0016】
上記R1 の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基等のアルキル基;シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、3-フェニルプロピル基等のアラルキル基;および、これらの基の炭素原子に結合した水素原子の少なくとも一部をハロゲン原子、シアノ基等の置換基で置換した、クロロメチル基、シアノエチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基等が挙げられる。
【0017】
中でも、メチル基が全R1 の 50モル%以上、より好ましくは 80モル%以上、特に 90モル%以上を占めるものがよく、フェニル基が全R1 の 25モル%以下、好ましくは 10モル%以下(0〜10モル%)であるものが望ましい。
【0018】
上記一般式(2)におけるR2 は炭素原子数2〜4の2価炭化水素基または酸素原子であるが、加水分解等に対する化学的安定性の点から好ましくは2価炭化水素基である。この2価炭化水素基の具体例としては、エチレン基、プロピレン基、メチルエチレン基、テトラメチレン基等のアルキレン基が挙げられるが、好ましくはエチレン基である。
【0019】
一般式(2)におけるR3は1〜3個、好ましくは2〜3個、更に好ましくは3個の(メタ)アクリロイル基、即ち、CH2=CHCO-および/または CH2=C(CH3)CO-を、例えば(メタ)アクリロイルオキシ((meth)acyloyloxy)基として有する1価有機基である。この(メタ)アクリロイル基を含む1価有機基の具体例としては、CH2=CHCOOCH2CH2-、[CH2=C(CH3)COOCH2]3C-CH2-、(CH2=CHCOOCH2)3C-CH2-、(CH2=CHCOOCH2)2C(C2H5)CH2-、
【0020】
【化7】


等の、1〜3個の(メタ)アクリロイルオキシ基で置換された炭素原子数1〜10、好ましくは2〜6のアルキル基等が挙げられる。中でも好ましくは、[CH2=C(CH3)COOCH2]3C-CH2-、(CH2=CHCOOCH2)3C-CH2-、(CH2=CHCOOCH2)2C(C2H5)CH2-および
【0021】
【化8】


であり、更に好ましくは、[CH2=C(CH3)COOCH2]3C-CH2-、(CH2=CHCOOCH2)3C-CH2-および
【0022】
【化9】


である。
【0023】
一般式(2)におけるR4 の具体例としては、一般式(1)におけるR1 として例示したものと同じものが挙げられるが、R1 の場合と同様に、メチル基が全R4 の 50モル%以上、より好ましくは 80モル%以上、特に 90モル%以上を占めるものがよく、フェニル基が全R1 の 25モル%以下、好ましくは 10モル%以下(0〜10モル%)であるものが望ましい。
【0024】
一般式(2)におけるR5 の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基等のアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基等のアリール基;アリル基、プロペニル基、ブテニル基等のアルケニル基等が挙げられるが、好ましくはアルケニル基等の脂肪族不飽和基ではないものがよい。
【0025】
上記一般式(1)で表されるオルガノポリシロキサンの好ましい具体例としては、例えば、以下の式で表されるものが挙げられる。
【0026】
【化10】

【0027】
【化11】

【0028】
【化12】

【0029】
【化13】

【0030】
【化14】

【0031】
【化15】

【0032】
【化16】

【0033】
【化17】

【0034】
【化18】

【0035】
【化19】

【0036】
【化20】

【0037】
【化21】

【0038】
【化22】

【0039】
【化23】

【0040】
【化24】

【0041】
【化25】

【0042】
【化26】

【0043】
【化27】

【0044】
【化28】

【0045】
【化29】

【0046】
【化30】

【0047】
【化31】

【0048】
【化32】


〔上記各式中、R'はメチル基、フェニル基または 3,3,3-トリフルオロプロピル基を表し、Lは前記のとおりである。〕
【0049】
この(A)成分のオルガノポリシロキサンは放射線重合性基として、−OR3 基を有している(即ち、分子鎖両末端にそれぞれ複数個の、具体的には2〜9個、好ましくは2〜6個の(即ち、1分子中に4〜18個、好ましくは4〜12個の)(メタ)アクリロイル基を有している)ので、このものは紫外線、遠紫外線、電子線、X線、γ線等の放射線照射により容易に重合して本発明の組成物を硬化させることができるという特徴を有している。なお、この(A)成分のオルガノポリシロキサンは、1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0050】
(A)成分のオルガノポリシロキサンは、例えば、対応するクロロシロキサン類と、活性水酸基を有する(メタ)アクリロイル基含有化合物との脱塩化水素反応等によって調製することができる。前記クロロシロキサン類としては、例えば、次式で示されものが挙げられる。
【0051】
【化33】

【0052】
【化34】

【0053】
また、活性水酸基を有する(メタ)アクリロイル基含有化合物としては、例えば、2-ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-1-アクリロイルオキシ-3-メタクリロイルオキシプロパン等が挙げられる。
【0054】
(A)成分のオルガノポリシロキサンは、上記一般式(2)に記載の1つのケイ素原子に複数個の(メタ)アクリロイル基を有することが好ましいので、この点からみて、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレートおよびペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートが好ましく、特にペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0055】
[(B) 放射線増感剤]
(B)成分の放射線増感剤としては、特に限定されないが、好ましくは、ベンゾフェノン等のベンゾイル化合物(または、フェニルケトン化合物)、特に、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン等のカルボニル基のα−位の炭素原子上にヒドロキシ基を有するベンゾイル化合物(またはフェニルケトン化合物);2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビスアシルモノオルガノフォスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4,-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等のオルガノホスフィンオキサイド化合物;イソブチルベンゾインエーテル等のベンゾインエーテル化合物;アセトフェノンジエチルケタール等のケタール化合物;チオキサントン系化合物;アセトフェノン系化合物等が挙げられる。これらは1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0056】
本発明の組成物中の該(B)成分の含有量は、放射線増感剤として本発明の組成物の紫外線等に照射による硬化に有効な量であればよく、特に制限されないが、上記(A)成分 100重量部に対して、通常、0.1〜10重量部、好ましくは 0.5〜10重量部、より好ましくは 1.0〜5.0重量部である。
【0057】
[(C) イソシアヌレート化合物]
本発明組成物の(c)成分の式:−SiR63(R6 は独立に炭素原子数1〜8、好ましくは1〜6、より好ましくは1〜4のアルキル基またはアルコキシ基である)で表されるトリオルガノシロキシ基を1分子中に1〜3個、好ましくは2〜3個有するイソシアヌレート化合物および/またはその加水分解縮合物(即ち、オルガノポリシロキサン変性イソシアヌレート化合物)は、ビニル基、アリル基等のアルケニル基を有するイソシアヌレートと、ケイ素原子に結合した水素原子(SiH)を有するトリアルキルシラン、トリアルコキシシラン等のハイドロジェントリオルガノシランとを白金系触媒の存在下で付加反応させることにより合成することができる(特公昭45-233544号公報、米国特許第3,821,218号明細書、米国特許第3,517,001号明細書参照)。
【0058】
上記R6 としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、2-エチルヘキシル等のアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基等のアルコキシ基が挙げられる。
【0059】
この(C)成分のイソシアヌレート化合物としては、例えば、1分子中に、γ-トリメトキシプロピル基、γ-トリエトキシプロピル基等のトリアルコキシシリル置換アルキル基を1〜3個有するイソシアヌレート、およびこれらトリアルコキシシリル基が加水分解縮合したもの(即ち、オルガノポリシロキサン変性イソシアヌレート)を挙げることができ、具体的には下式で表されるものを挙げることができる。
【0060】
【化35】

【0061】
【化36】

【0062】
【化37】


(上記各式中、Rは独立に水素、アルキル基、アラルキル基、低級アルケニル基、アリール基、または複素環式アリール基である。)
この(C)成分は、1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0063】
この(C)成分は接着助剤として機能するものであって、該成分の配合により金属基材、プラスチック基材、セラミック基材、ガラス基材等の各種基材に対する接着性を向上させることが可能となる。
本発明の組成物中の該(C)成分の含有量は、上記(A)成分 100重量部に対して、通常、0.1〜20重量部、好ましくは 0.5〜10重量部、より好ましくは1〜5重量部である。
【0064】
[(D) チタン含有有機化合物]
本発明の組成物には、上記(A)〜(C)成分に加えて、更に、必要に応じて配合される任意成分として、(D) チタネート化合物およびチタンキレート化合物より成る群から選ばれる少なくとも一種のチタン含有有機化合物を配合することができる。この(D)成分のチタネート化合物およびチタンキレート化合物より成る群から選ばれるチタン含有有機化合物は、接着助剤として機能する上記(C)成分のイソシアヌレート化合物と併用することによって、放射線照射で硬化した際に、各種基材に対する接着性を速やかに発現させる成分である。
【0065】
この(D)成分としては、例えば、式:(R7O)pTi(OSiR8910)4-p(式中、R7 は炭素原子数1〜8、好ましくは2〜4のアルキル基であり、R8、R9、R10 は各々独立に炭素原子数1〜10、好ましくは1〜8のアルキル基またはアルコキシ基であり、pは0〜4の整数である)で表される化合物が挙げられる。上記R7、R8〜R10 としては、上記R6 について例示したと同様のアルキル基、またはアルコキシ基が例示される。
【0066】
上記式で表される化合物の具体例としては、例えば、テトラメチルチタネート、テトラエチルチタネート、テトラプロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、テトライソブチルチタネート、テトラヘキシルチタネート、テトラ(2-エチルヘキシル)チタネート等のチタネート化合物;(C37O)3TiOSi(CH3)(OC37)2、(C37O)3TiOSi(CH3)2(OC37)、[(CH3)3SiO]3TiOSi(CH3)2(OC37)、[(CH3)3SiO]4Ti等のトリアルキルシロキシ基、アルコキシジアルキルシロキシ基、トリアルコキシシロキシ基、アルキルジアルコキシシロキシ基等のトリオルガノシロキシ基を有するチタン化合物が挙げられる。
【0067】
(D)成分としては、更に、例えば、アセチルアセトン、アセト酢酸メチルもしくはアセト酢酸エチルに由来する配位子を有するチタンキレート化合物が挙げられる。このチタンキレート化合物としては、前記配位子とともにケイ素原子含有基を有し、かつチタン原子に酸素原子を介して前記ケイ素原子含有基中のケイ素原子が結合しているものが好ましい。このチタンキレート化合物の具体例としては、例えば、以下のものが例示される。
【0068】
【化38】

【0069】
【化39】


(式中、nは2〜100の整数である)
【0070】
この(D)成分は、一種単独でも二種以上を組み合わせても使用することができる。
また、本発明の組成物中の該(D)成分の含有量は、上記(A)成分 100重量部に対して、20重量部以下(即ち、0〜20重量部)の範囲で必要に応じて配合することができ、通常、0.001〜20重量部、好ましくは 0.01〜10重量部、より好ましくは 0.1〜5重量部である。
【0071】
[他の配合成分]
本発明の組成物には、上記(A)〜(D)成分に加えて、更に、本発明の目的および効果を損なわない限度において他の成分を配合することは任意である。例えば、硬化時における収縮率、および得られる硬化物の熱膨張係数、機械的強度、耐熱性、耐薬品性、難燃性、燃膨張係数、ガス透過率等を適宜調整することを目的として各種添加剤を配合してもよい。
【0072】
得られる硬化物の接着力を更に向上させることを目的として、(E) アルコキシシランおよび/またはその部分加水分解縮合物を配合することができる。前記アルコキシシランとしては、式:Si(OR11)4(式中、R11 は、炭素原子数1〜4の非置換またはアルコキシ置換のアルキル基である)で表されるテトラアルコキシシランを挙げることができる。前記R11 としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基等のアルキル基、メトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基等のアルコキシ置換のアルキル基が挙げられ、好ましくは、メチル基、エチル基である。なお、前記アルコキシシランの部分加水分解縮合物とは、前記アルコキシ基の加水分解縮合反応によって生成する、分子中に少なくとも1個、好ましくは2個以上のアルコキシ基が残存するシロキサン化合物(ケイ素原子数が2〜100個、好ましくは2〜30個程度のシロキサンオリゴマー)を意味する。
【0073】
この(E)成分は、一種単独でも二種以上を組み合わせても使用することができる。また、本発明の組成物に配合する場合、その含有量は、(A)成分 100重量部に対して、10重量部以下(即ち、0〜10重量部)、通常、0.5〜10重量部、好ましくは 0.5〜5.0重量部程度である。
【0074】
この他にも、例えば、煙霧質シリカ、シリカエアロゲル、石英粉末、ガラス繊維、酸化鉄、酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の無機質充填剤;ヒドロキノン、メトキシヒドロキノン、2,6-ジ-tert-ブチル-p−クレゾール等のラジカル重合禁止剤(ポットライフ延長剤)等を配合してもよい。
【0075】
[組成物の調製および硬化]
本発明の上記(A)〜(D)成分、および必要に応じてその他の配合成分を混合することにより得られる。得られた組成物は、これに放射線を照射することにより速やかに硬化して硬化直後から強固な接着性を発現するゴム状弾性体を与える。
【0076】
照射する放射線としては、紫外線、遠赤外線、電子線、X線、γ線等が挙げられるが、装置の手軽さ、扱いの容易性等から、紫外線を使用することが好ましい。紫外線を発する光源としては、例えば、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアークランプ、キセノンランプ等が挙げられる。紫外線(ピーク波長:320〜390nm)の照射量は、例えば、本発明の組成物を厚み2mmに成形したもの対して、200〜2,400mJ/cm2、好ましくは 400〜1,600mJ/cm2である。
【0077】
[用途]
本発明の組成物から得られる硬化物は、シリコン、シリコン酸化膜、ガラス、アルミニウム、ポリイミド(例えば、カプトン(商品名、デュポン社製)、ポリカーボネート、エポキシ樹脂等の基材に対する接着性に優れたものである。更に、接着性に乏しいNi、Cr、Ag、Au等の金属製基材にも優れた接着性を示す。従って、電子部品(例えば、液晶デバイス)の電極封止剤、ハイブリッドIC等の高温加熱硬化が不可能な電子部品実装回路をはじめとする各種電子部品のコーティング材として有用であり、硬化工程の短縮による生産性の向上を図ることが可能となる。
【実施例】
【0078】
以下、本発明を、合成例、実施例等によって説明する。なお、下記において、「部」は重量部を示す。
【0079】
(合成例)
攪拌装置、還流冷却器、滴下ロートおよび乾燥空気導入器を備えた1,000mLの反応装置に、(A)下記平均一般式:
【0080】
【化40】


で示されるオルガノポリシロキサン 571g、2-ヒドロキシ-1-アクリロイルオキシ-3-メタクリロイルオキシプロパン(商品名:NKエステル701−A、新中村化学工業(株)製)47g、トルエン 200mL、トリエチルアミン 26g、および重合禁止剤としてジブチルヒドロキシトルエン(2,6-ジ-tert-ブチル-p−クレゾール)2,000ppmとを仕込み、これらを攪拌しながら、70℃に昇温して7時間加熱した。その後、放冷し、濾過し、得られたろ液に中和剤としてプロピレンオキサイド4gを添加し室温にて1時間攪拌した。その後、100℃/30mmHgの条件でストリップを行って、次式で示される透明なオイル状のオルガノポリシロキサンを得た。
【0081】
【化41】

【0082】
[実施例1]
(A)合成例1で得られたオイル状のオルガノポリシロキサン 100部、(B1) 2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1オン2部、(B2) 2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド1部、(C1)下記式:
【0083】
【化42】


で示されるイソシアヌレート化合物1部、および(D)下記式:
【0084】
【化43】


で示されるチタンキレート化合物 0.1部を混合して、放射線硬化性オルガノポリシロキサン組成物を得た。
【0085】
この組成物を深さ1mm、幅 120mm、長さ 170mmの金型に流し込み、メタルハライド水銀灯2灯を備えるコンベア炉内(照度:80W/cm2)で2秒間紫外線を照射し(エネルギー量:800mJ)、硬化物を得た。
【0086】
<各種性能評価>
・物性
得られた硬化物について、その物性(硬度、伸び、引張り強度)を、JIS K 6301 に準拠して測定した(なお、硬度はスプリング式A型試験機によって測定した)。その結果を表1に示す。
・接着性
また、前記組成物を、シリコン、シリカ、ガラス、アルミニウム、ポリイミド(商品名、カプトン)およびクロム製の各基板の上に、2cm×2cmの面積に厚さ2mmに塗布した後、上記照射条件(照度:80W/cm2、エネルギー量:800mJ)で紫外線を照射し、硬化させた。硬化後1時間室温に放置した後に、得られた硬化被膜の各基板に対する接着性を、以下のようにして評価した。その結果を表1に示す。
【0087】
ピンセットで硬化皮膜の一端をつかみ、被膜の引き剥がしを試みた。剥離するか否か、また、剥離状態を観察して下記のとおりに評価した。
完全に接着して、剥離できない(凝集破壊率:90%以上)場合について、接着性が良好であると評価して○で表示した。
被膜の一部が剥離する(凝集破壊率:20%以上90%未満)場合について、接着性がやや不良であると評価して△で表示した。
全部が完全に剥離する(凝集破壊率:20%未満)場合について、接着性が不良であると評価して×で表示した。
【0088】
・保存安定性
得られた組成物保存安定性を評価するめ、組成物を5℃、25℃の各温度に放置し、粘度の経時的変化を測定した。その結果を表2に示す。
【0089】
[実施例2]
実施例1に記載の(C1)イソシアヌレート化合物に代えて、(C2)下記式:
【0090】
【化44】


で示されるイソシアヌレート化合物1重量部を用いること、および、更に(E)テトラメトキシシランの部分加水分解縮合物(メトキシシロキサンオリゴマー)1部を追加したこと以外は、実施例1と同様にして組成物を調製し、実施例1と同様の試験を行った。その結果を表1および表2に示す。
【0091】
[実施例3]
実施例1に記載の(C1)イソシアヌレート化合物に代えて、(C3)下記式:
【0092】
【化45】


で示されるイソシアヌレート化合物1重量部を用いること、および、更に(E)テトラメトキシシランの部分加水分解縮合物(メトキシシロキサンオリゴマー)1部を追加したこと以外は、実施例1と同様にして組成物を調製し、実施例1と同様の試験を行った。その結果を表1および表2に示す。
【0093】
[比較例1]
実施例1に記載の(C1)イソシアヌレート化合物を使用しないこと以外は実施例1と同様にして組成物を調製し、この組成物について実施例1と同様の試験を行った。その結果を表1および表2に示す。
【0094】
【表1】

【0095】
【表2】


(注)粘度単位:Pa・s

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A) 下記一般式(1):
【化1】


〔式中、R1 は独立に非置換または置換の炭素原子数1〜9の1価炭化水素基であり、
Xは独立に下記一般式(2):
【化2】


{式中、R2 は炭素原子数2〜4の2価炭化水素基または酸素原子であり、R3 は独立に下記一般式:
【化3】

(式中、Rは水素原子またはメチル基である)
で表されるアクリロイル基および/またはメタクリロイル基を1〜3個有する炭素原子数4〜25の1価の有機基であり、R4 は独立に非置換または置換の炭素原子数1〜9の1価炭化水素基であり、R5 は独立に炭素原子数1〜18の1価炭化水素基であり、nは1〜3、mは0〜2、かつn+mの和は1〜3の整数である。但し、n=1のとき、前記R3 は2〜3個のアクリロイル基および/またはメタクリロイル基を有する有機基である。}で表される基であり、Lは8〜10,000の整数である〕
で表されるオルガノポリシロキサン、
(B) 放射線増感剤、並びに、
(C) 式:−SiR63(R6 は独立に炭素原子数1〜8のアルキル基またはアルコキシ基である)で表されるトリオルガノシリル基を有するイソシアヌレート化合物および/またはその加水分解縮合物
を含有する放射線硬化性シリコーンゴム組成物に放射線を照射して得られたシリコーンゴム硬化物で封止又はコーティングされた電子部品。
【請求項2】
前記(A)成分の前記一般式(2)のR3 が2〜3個のアクリロイルオキシ基および/またはメタクリロイルオキシ基を有するアルキル基である、請求項1記載の電子部品。
【請求項3】
前記放射線硬化性シリコーンゴム組成物が更に(D) チタネート化合物およびチタンキレート化合物より成る群から選ばれる少なくとも一種のチタン含有有機化合物を含有する、請求項1または2に記載の電子部品。
【請求項4】
前記(D)成分のチタン含有有機化合物が、式:(R7O)pTi(OSiR8910)4-p(式中、R7 は炭素原子数1〜8のアルキル基であり、R8、R9、R10は各々独立に炭素原子数1〜10のアルキル基またはアルコキシ基であり、pは0〜4の整数である)で表される化合物、並びに、アセチルアセトン、アセト酢酸メチルもしくはアセト酢酸エチルに由来する配位子を有する錯体、およびケイ素原子含有基を有し、かつチタン原子に酸素原子を介して前記ケイ素原子含有基中のケイ素原子が結合している錯体より成る群から選ばれる化合物である、請求項3記載の電子部品。
【請求項5】
前記放射線硬化性シリコーンゴム組成物が、前記(A)成分 100重量部に対して、前記(B)成分 0.1〜10重量部、前記(C)成分 0.1〜20重量部、および前記(D)成分0〜20重量部を含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子部品。
【請求項6】
前記放射線硬化性シリコーンゴム組成物が更に(E) アルコキシシランおよび/またはその部分加水分解縮合物0〜10重量部を含有する、請求項5記載の電子部品。
【請求項7】
前記放射線が紫外線、遠赤外線、電子線、X線及びγ線から選ばれる、請求項1〜6のいずれか1項記載の電子部品。
【請求項8】
(A) 下記一般式(1):
【化4】


〔式中、R1 は独立に非置換または置換の炭素原子数1〜9の1価炭化水素基であり、
Xは独立に下記一般式(2):
【化5】


{式中、R2 は炭素原子数2〜4の2価炭化水素基または酸素原子であり、R3 は独立に下記一般式:
【化6】

(式中、Rは水素原子またはメチル基である)
で表されるアクリロイル基および/またはメタクリロイル基を1〜3個有する炭素原子数4〜25の1価の有機基であり、R4 は独立に非置換または置換の炭素原子数1〜9の1価炭化水素基であり、R5 は独立に炭素原子数1〜18の1価炭化水素基であり、nは1〜3、mは0〜2、かつn+mの和は1〜3の整数である。但し、n=1のとき、前記R3 は2〜3個のアクリロイル基および/またはメタクリロイル基を有する有機基である。}で表される基であり、Lは8〜10,000の整数である〕
で表されるオルガノポリシロキサン、
(B) 放射線増感剤、並びに、
(C) 式:−SiR63(R6 は独立に炭素原子数1〜8のアルキル基またはアルコキシ基である)で表されるトリオルガノシリル基を有するイソシアヌレート化合物および/またはその加水分解縮合物
を含有する放射線硬化性シリコーンゴム組成物でコーティング又はポッティングした電子部品に放射線を照射して該組成物を硬化させることを特徴とする、電子部品の封止又はコーティング方法。
【請求項9】
前記(A)成分の前記一般式(2)のR3 が2〜3個のアクリロイルオキシ基および/またはメタクリロイルオキシ基を有するアルキル基である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記放射線硬化性シリコーンゴム組成物が更に(D) チタネート化合物およびチタンキレート化合物より成る群から選ばれる少なくとも一種のチタン含有有機化合物を含有する請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記(D)成分のチタン含有有機化合物が、式:(R7O)pTi(OSiR8910)4-p(式中、R7 は炭素原子数1〜8のアルキル基であり、R8、R9、R10は各々独立に炭素原子数1〜10のアルキル基またはアルコキシ基であり、pは0〜4の整数である)で表される化合物、並びに、アセチルアセトン、アセト酢酸メチルもしくはアセト酢酸エチルに由来する配位子を有する錯体、およびケイ素原子含有基を有し、かつチタン原子に酸素原子を介して前記ケイ素原子含有基中のケイ素原子が結合している錯体より成る群から選ばれる化合物である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記放射線硬化性シリコーンゴム組成物が、前記(A)成分 100重量部に対して、前記(B)成分 0.1〜10重量部、前記(C)成分 0.1〜20重量部、および前記(D)成分0〜20重量部を含有する、請求項8〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記放射線硬化性シリコーンゴム組成物が更に(E) アルコキシシランおよび/またはその部分加水分解縮合物0〜10重量部を含有する、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記放射線が紫外線、遠赤外線、電子線、X線及びγ線から選ばれる、請求項8〜13のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
(A) 下記一般式(1):
【化7】


〔式中、R1 は独立に非置換または置換の炭素原子数1〜9の1価炭化水素基であり、
Xは独立に下記一般式(2):
【化8】


{式中、R2 は炭素原子数2〜4の2価炭化水素基または酸素原子であり、R3 は独立に下記一般式:
【化9】

(式中、Rは水素原子またはメチル基である)
で表されるアクリロイル基および/またはメタクリロイル基を1〜3個有する炭素原子数4〜25の1価の有機基であり、R4 は独立に非置換または置換の炭素原子数1〜9の1価炭化水素基であり、R5 は独立に炭素原子数1〜18の1価炭化水素基であり、nは1〜3、mは0〜2、かつn+mの和は1〜3の整数である。但し、n=1のとき、前記R3 は2〜3個のアクリロイル基および/またはメタクリロイル基を有する有機基である。}で表される基であり、Lは8〜10,000の整数である〕
で表されるオルガノポリシロキサン、
(B) 放射線増感剤、並びに、
(C) 式:−SiR63(R6 は独立に炭素原子数1〜8のアルキル基またはアルコキシ基である)で表されるトリオルガノシリル基を有するイソシアヌレート化合物および/またはその加水分解縮合物
を含有する放射線硬化性シリコーンゴム組成物に放射線を照射して得られたシリコーンゴム硬化被膜。

【公開番号】特開2008−24944(P2008−24944A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−219163(P2007−219163)
【出願日】平成19年8月27日(2007.8.27)
【分割の表示】特願2003−198247(P2003−198247)の分割
【原出願日】平成15年7月17日(2003.7.17)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】