説明

放熱性ダイボンドフィルム

【課題】高い熱伝導性と放熱性に優れたダイボンドフィルム及び当該ダイボンドフィルムを備えたダイシング・ダイボンドフィルムを提供する。
【解決手段】本発明に係る放熱性ダイボンドフィルムは、半導体素子を被着体上に接着して固定させる放熱性ダイボンドフィルムであって、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、及び熱伝導率が12W/m・K以上の熱伝導性フィラーを少なくとも含み、前記熱伝導性フィラーの含有量は有機樹脂成分と熱伝導性フィラーの合計に対し50重量%〜120重量%の範囲内であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は放熱性ダイボンドフィルム及びそれを備えたダイシング・ダイボンドフィルムに関し、より詳細には、半導体チップ等を基板やリードフレーム等の被着体上にダイボンドする際に用いられる放熱性ダイボンドフィルム及びそれを備えたダイシング・ダイボンドフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
回路パターンを形成した半導体ウェハは、必要に応じて裏面研磨により厚さを調整した後、チップ状の半導体素子にダイシングされる。次いで、半導体素子を接着剤にてリードフレームなどの被着体に固着(ダイボンド工程)した後、ボンディング工程に移される。前記マウント工程においては、接着剤をリードフレームや半導体素子に塗布していた。しかし、この方法では接着剤層の均一化が困難であり、また接着剤の塗布のために特殊な装置や長い時間を必要とする。このため、ダイシング工程で半導体ウェハを接着保持するとともに、マウント工程に必要なチップ固着用の接着剤層をも付与するダイシング・ダイボンドフィルムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
前記ダイシング・ダイボンドフィルムは、基材上に接着剤層を剥離可能に設けてなるものである。すなわち、接着剤層による保持下に半導体ウェハをダイシングしたのち、支持基材を延伸して半導体チップを接着剤層とともに剥離し、これを個々に回収してその接着剤層を介してリードフレームなどの被着体に固着させるようにしたものである。
【0004】
一方、近年、半導体素子が高集積化、多段化、高機能化し、その寸法も大型化するに伴い、半導体素子の作動時に発生する熱が増加傾向にある。このため、当該熱が半導体装置内部で蓄熱され、半導体素子のジャンクション温度を超えると、機能不良に陥る問題がある。このため、放熱性の向上が課題となっている。
【0005】
この課題に対し、例えば、下記特許文献2では、半導体素子を固定しているダイパッド上に金属箔を積層させ、この金属箔により放熱を図る方法が提案されている。しかし、当該発明では、半導体装置の厚み方向での構成材料のアンバランス、即ち、金属箔の線膨張係数は、一般に半導体素子やダイパッドに比べて大きいため、半導体素子が発熱を繰り返すことにより、金属箔に応力が繰り返し発生し、これにより金属箔の剥離やクラックが生じるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭60−57342号公報
【特許文献2】特開平5−198701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来の前記課題に鑑みなされたものであり、高い熱伝導性と放熱性に優れたダイボンドフィルム及び当該ダイボンドフィルムを備えたダイシング・ダイボンドフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者等は、前記従来の問題点を解決すべく、放熱性ダイボンドフィルム及び当該放熱性ダイボンドフィルムを備えたダイシング・ダイボンドフィルムについて検討した。その結果、接着剤層中に熱伝導性フィラーを含有させることにより放熱性に優れたダイボンドフィルムが得られることを見出して、本発明を完成させるに至った。
【0009】
即ち、本発明に係る放熱性ダイボンドフィルムは、前記の課題を解決する為に、半導体素子を被着体上に接着して固定させる放熱性ダイボンドフィルムであって、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、及び熱伝導率が12W/m・K以上の熱伝導性フィラーを少なくとも含み、前記熱伝導性フィラーの含有量は有機樹脂成分と熱伝導性フィラーの合計に対し50重量%〜120重量%の範囲内であることを特徴とする。
【0010】
本発明の放熱性ダイボンドフィルム(以下、「ダイボンドフィルム」という場合がある。)は熱伝導率が12W/m・K以上の熱伝導性フィラーを有機樹脂成分と熱伝導性フィラーの合計に対し50重量%以上含有するので、熱を蓄積することなく放熱させることができる。これにより、例えば半導体素子がその作動時において熱を発生した場合、当該熱は本発明のダイボンドフィルムに伝導するが、当該フィルム中に蓄積されることなく被着体側に放熱させることが可能になる。その結果、半導体素子が熱により劣化するのを防止することができる。尚、熱伝導フィラーの含有量を有機樹脂成分と熱伝導性フィラーの合計に対し120重量%以下にするのは、半導体素子や被着体に対するダイボンドフィルムの濡れ性及び接着性が低下するのを防止する為である。また、熱伝導性フィラーの熱伝導率が12W/m・K未満であると、ダイボンドフィルムの熱伝導性が低下し、熱の蓄積が発生する場合がある。
【0011】
ここで、前記「被着体」とは、BGA(Ball Grid Array)基板やBT(ビスマレイミド・トリアジン)基板等の各種基板、リードフレーム、他の半導体素子、スペーサ等を含む。また、「熱伝導率」とは物質の熱伝導の度合を示す値であって、下記式により算出した値である。
【数1】

尚、式中の熱拡散率は温度波熱分析法(TWA法)により測定可能であり、比熱はJIS K 7123の比熱容量測定法により測定可能であり、密度はアルキメデス法により測定可能である。
【0012】
前記の構成に於いて、前記熱伝導性フィラーの平均粒径は0.01〜10μmの範囲内であることが好ましい。平均粒径を0.01μm以上にすることにより、ダイボンドフィルムの熱伝導性及び耐熱性の向上が図れる。その一方、平均粒径を10μm以下にすることにより、ダイボンドフィルムの熱伝導性が低下し過ぎるのを防止すると共に、被着体や半導体素子に対する濡れ性を良好なものにし、接着性の低下を抑制することができる。尚、フィラーの平均粒径は、光度式の粒度分布計(HORIBA製、装置名;LA−910)により求めた値である。
【0013】
前記の構成に於いて、前記熱伝導性フィラーは酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、水酸化マグネシウム、窒化アルミニウム、及び炭化珪素からなる群より選択される少なくとも何れか1種であることが好ましい。
【0014】
前記の構成に於いて、前記熱伝導性フィラーは平均粒径が相互に異なる2種の熱伝導性フィラーを含み、一方の熱伝導性フィラーは平均粒径が0.01〜1μmの範囲内のものであり、他方の熱伝導性フィラーは平均粒径が1〜10μmの範囲内のものであることが好ましい。熱伝導性フィラーとして、平均粒径が0.01〜1μmの範囲内のフィラーと、平均粒径が1〜10μmの範囲内のフィラーとを用いることにより、ダイボンドフィルム中における熱伝導性フィラーの充填率を向上させることができる。これにより、ダイボンドフィルムに対し優れた熱伝導性を付与することが可能になる。
【0015】
また、前記の構成に於いては、175℃で1時間の熱処理を行い熱硬化した後の260℃における貯蔵弾性率が0.1MPa以上であることが好ましい。これにより、例えば、耐湿半田リフロー試験等においても高信頼性の半導体装置の製造を可能にする。
【0016】
更に、前記の構成に於いては、175℃で1時間の熱処理を行い熱硬化した後の260℃における重量減少量が1重量%以下であることが好ましい。重量減少量を1重量%以下にすることにより、例えば、リフロー工程に於いてパッケージにクラックが発生するのを防止することができる。
【0017】
また、本発明に係るダイシング・ダイボンドフィルムは、前記に記載の放熱性ダイボンドフィルムが、ダイシングフィルム上に積層された構造であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、前記に説明した手段により、以下に述べるような効果を奏する。
即ち、本発明によれば、熱伝導率が12W/m・K以上の熱伝導性フィラーを有機樹脂成分に対し50重量%以上含有するので、熱を蓄積することなく放熱させることができる。従って、例えば半導体素子がその作動時において熱を発生した場合には、当該熱を本発明の放熱性ダイボンドフィルムに伝導させ、更に当該フィルム中に蓄積されることなく被着体側に放熱させる。その結果、半導体素子及びこれを備える半導体装置の信頼性が熱により低下するのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の一形態に係るダイシング・ダイボンドフィルムを示す断面模式図である。
【図2】本発明の他の実施の形態に係るダイシング・ダイボンドフィルムを示す断面模式図である。
【図3】本発明の実施の一形態に係るダイボンドフィルムを介して半導体チップを実装した例を示す断面模式図である。
【図4】前記ダイボンドフィルムを介して半導体チップを3次元実装した例を示す断面模式図である。
【図5】前記ダイボンドフィルムを用いて、2つの半導体チップをスペーサを介して3次元実装した例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(放熱性ダイボンドフィルム)
本実施の形態に係る放熱性ダイボンドフィルム(以下、「ダイボンドフィルム」という。)について、図1に示す様に、ダイシングフィルム上に積層された態様を例にして以下に説明する。
【0021】
前記ダイボンドフィルム3は、半導体素子を被着体上に接着して固定させる際に用いる接着フィルムであって、少なくとも熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂及び熱伝導性フィラーを含む。当該固定には、ダイボンドフィルム3を完全に硬化させない状態で接着させる場合を含む意味である。
【0022】
前記熱伝導性フィラーは、その熱伝導率が12W/m・K以上であり、好ましくは15〜70W/m・K、より好ましくは25〜70W/m・Kである。前記熱伝導率が12W/m・K以上であると、ダイボンドフィルム3に対し、少なくとも1.5W/m・K以上の熱伝導性を付与することが可能になる。但し、熱伝導性フィラーの熱伝導率が70W/m・Kを超えると、コスト高を招来する場合がある。
【0023】
前記熱伝導性フィラーとしては特に限定されず、例えば、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、水酸化マグネシウム、窒化アルミニウム、炭化珪素等の電気絶縁性のものが挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を併用して用いることができる。なかでも、酸化アルミニウムは高伝導率であり、ダイボンドフィルム3中における分散性に優れ、入手の容易さの点から好ましい。
【0024】
前記熱伝導性フィラーの含有量は、有機樹脂成分と熱伝導性フィラーの合計に対し50〜120重量%の範囲内であり、好ましくは50〜95重量%の範囲内である。含有量が50重量%未満であると、ダイボンドフィルム3の熱伝導性が低下し、半導体素子等に熱の蓄積を招来する。その一方、含有量が120重量%を超えると、ダイボンドフィルム3中の接着成分の含有量が相対的に減少する結果、半導体素子や被着体に対するダイボンドフィルム3の濡れ性及び接着性が低下する。
【0025】
前記熱伝導性フィラーの平均粒径は0.01〜10μmの範囲内であることが好ましく、0.1〜10μmの範囲内であることがより好ましい。前記平均粒径が0.01μm以上であると、ダイボンドフィルム3の熱伝導性の過度な低下を抑制し、放熱性及び耐熱性の向上が図れる。その一方、平均粒径が10μm以下であると、被着体や半導体素子に対する濡れ性を良好なものにし、接着性の低下を抑制することができる。尚、平均粒径は、例えば、光度式の粒度分布計(HORIBA製、装置名;LA−910)により求めた値である。
【0026】
更に、前記熱伝導性フィラーとしては、平均粒径が相互に異なる2種類のフィラーを用いてもよい。この場合、平均粒径は、一方の熱伝導性フィラーが0.01〜1μm、好ましくは0.05〜1μmであり、他方の熱伝導性フィラーが1〜10μm、好ましくは2〜10μmとなる様に設定される。平均粒径が前記数値範囲内にあり、かつ、相互に相違する熱伝導性フィラーを用いることにより、ダイボンドフィルム3中における熱伝導性フィラーの充填率を向上させることができる。これにより、ダイボンドフィルム3に対し優れた放熱性を付与することが可能になる。また、平均粒径が相互に異なる2種類の熱伝導性フィラーを用いる場合、平均粒径が0.01〜1μmの熱伝導性フィラーと、平均粒径が1〜10μmの熱伝導性フィラーとの配合割合は、重量比1:9〜7:3の範囲が好ましく、2:8〜6:4の範囲がより好ましい。
【0027】
前記熱伝導性フィラーの粒子形状は特に限定されず、例えば、球状、針状、繊維状、フレーク状、スパイク状、コイル状等が挙げられる。これらの形状のうち、球状はフィルム中における熱伝導性フィラーの分散性及び充填率の向上が図れる点で好ましい。尚、本発明に於いては、粒子形状が相互に異なる熱伝導性フィラー同士をフィルム中に含有させてもよい。
【0028】
前記熱可塑性樹脂としては、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリブタジエン樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、PETやPBT等の飽和ポリエステル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、又はフッ素樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。これらの熱可塑性樹脂のうち、イオン性不純物が少なく耐熱性が高く、半導体素子の信頼性を確保できるアクリル樹脂が特に好ましい。
【0029】
前記アクリル樹脂としては、特に限定されるものではなく、炭素数30以下、特に炭素数4〜18の直鎖若しくは分岐のアルキル基を有するアクリル酸又はメタクリル酸のエステルの1種又は2種以上を成分とする重合体等が挙げられる。前記アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、イソブチル基、アミル基、イソアミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ラウリル基、トリデシル基、テトラデシル基、ステアリル基、オクタデシル基、又はドデシル基等が挙げられる。
【0030】
また、前記重合体を形成する他のモノマーとしては、特に限定されるものではなく、例えばアクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸若しくはクロトン酸等の様なカルボキシル基含有モノマー、無水マレイン酸若しくは無水イタコン酸等の様な酸無水物モノマー、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル若しくは(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)−メチルアクリレート等の様なヒドロキシル基含有モノマー、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート若しくは(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等の様なスルホン酸基含有モノマー、又は2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等の様な燐酸基含有モノマーが挙げられる。
【0031】
前記熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、又は熱硬化性ポリイミド樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独で又は2種以上を併用して用いることができる。特に、半導体素子を腐食させるイオン性不純物等の含有が少ないエポキシ樹脂が好ましい。また、エポキシ樹脂の硬化剤としてはフェノール樹脂が好ましい。
【0032】
前記エポキシ樹脂は、接着剤組成物として一般に用いられているものであれば特に限定はなく、例えばビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、臭素化ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールAF型、ビフェニル型、ナフタレン型、フルオレイン型、フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、トリスヒドロキシフェニルメタン型、テトラフェニロールエタン型等の二官能エポキシ樹脂や多官能エポキシ樹脂、又はヒダントイン型、トリスグリシジルイソシアヌレート型若しくはグリシジルアミン型等のエポキシ樹脂が用いられる。これらは単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。これらのエポキシ樹脂のうちノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型樹脂又はテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂が特に好ましい。このエポキシ樹脂は、硬化剤としてのフェノール樹脂との反応性に富み、耐熱性等に優れるからである。
【0033】
更に、前記フェノール樹脂は、前記エポキシ樹脂の硬化剤として作用するものであり、例えば、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールノボラック樹脂、tert−ブチルフェノールノボラック樹脂、ノニルフェノールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、ポリパラオキシスチレン等のポリオキシスチレン等が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。これらのフェノール樹脂のうちフェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂が特に好ましい。半導体装置の接続信頼性を向上させることができるからである。
【0034】
前記エポキシ樹脂とフェノール樹脂の配合割合は、例えば、前記エポキシ樹脂成分中のエポキシ基1当量当たりフェノール樹脂中の水酸基が0.5〜2.0当量になるように配合することが好適である。より好適なのは、0.8〜1.2当量である。即ち、両者の配合割合が前記範囲を外れると、十分な硬化反応が進まず、エポキシ樹脂硬化物の特性が劣化し易くなるからである。
【0035】
尚、本発明に於いては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂及びアクリル樹脂を含むダイボンドフィルム3が特に好ましい。これらの樹脂は、イオン性不純物が少なく耐熱性が高いので、半導体素子の信頼性を確保できる。この場合の配合比は、アクリル樹脂成分100重量部に対して、エポキシ樹脂とフェノール樹脂の混合量が10〜200重量部である。
【0036】
本発明のダイボンドフィルム3を予めある程度架橋をさせておく場合には、作製に際し、重合体の分子鎖末端の官能基等と反応する多官能性化合物を架橋剤として添加させておくのがよい。これにより、高温下での接着特性を向上させ、耐熱性の改善を図ることができる。
【0037】
前記架橋剤としては、従来公知のものを採用することができる。特に、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、多価アルコールとジイソシアネートの付加物等のポリイソシアネート化合物がより好ましい。架橋剤の添加量としては、前記の重合体100重量部に対し、通常0.05〜7重量部とするのが好ましい。架橋剤の量が7重量部より多いと、接着力が低下するので好ましくない。その一方、0.05重量部より少ないと、凝集力が不足するので好ましくない。また、この様なポリイソシアネート化合物と共に、必要に応じて、エポキシ樹脂等の他の多官能性化合物を一緒に含ませるようにしてもよい。
【0038】
尚、ダイボンドフィルム3は、必要に応じて他の添加剤を適宜に配合することができる。他の添加剤としては、例えば難燃剤、シランカップリング剤又はイオントラップ剤等が挙げられる。
【0039】
前記難燃剤としては、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、臭素化エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは、単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
【0040】
前記シランカップリング剤としては、例えば、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。これらの化合物は、単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0041】
前記イオントラップ剤としては、例えばハイドロタルサイト類、水酸化ビスマス等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0042】
ダイボンドフィルム3の膜厚(積層体の場合は、総厚)は特に限定されないが、フィルム中に含まれる熱伝導性フィラーの平均粒径が0.01〜10μmの範囲内である点を考慮すると、10〜200μmの範囲が好ましく、10〜100μmの範囲がより好ましい。膜厚が10μm未満であると、ダイボンドフィルム3の膜表面から熱伝導性フィラーが表出し、表面凹凸が大きくなって、ダイボンドフィルム3の接着性が低下する場合がある。その一方、膜厚が200μmを超えると、フィルムの熱伝導性が低下する場合がある。
【0043】
ダイボンドフィルム3の熱伝導率は1.5W/m・K以上であることが好ましく、2W/m・K以上であることがより好ましい。ダイボンドフィルム3自体の熱伝導率を2W/m・K以上にすることにより、例えば、半導体素子の作動時に発生する熱を効果的に被着体側に放熱させることができ、半導体装置内の熱の蓄積を低減することができる。尚、ダイボンドフィルム3の自己支持性の観点から、ダイボンドフィルム3の熱伝導率は5W/m・K以下であることが好ましい。
【0044】
また、前記ダイボンドフィルム3の熱硬化後の250℃での貯蔵弾性率が0.1MPa以上であることが好ましく、0.3MPa以上がより好ましい。前記貯蔵弾性率を0.1MPa以上にすることにより、耐湿半田リフロー試験等においても高信頼性の半導体装置の製造を可能にする。
【0045】
また、ダイボンドフィルム3を175℃で1時間の熱処理を行って熱硬化させ、その後260℃において測定した重量減少量は1重量%以下であることが好ましい。これにより、例えば、リフロー工程に於いてパッケージにクラックが発生するのを防止することができる。重量減少量の調整は、例えば、熱伝導性フィラーの添加量を調整することにより可能である。
【0046】
尚、ダイボンドフィルム3は、図1に示すように接着剤層の単層のみからなる構成とすることができる。また、ガラス転移温度の異なる熱可塑性樹脂、熱硬化温度の異なる熱硬化性樹脂を適宜に組み合わせて、2層以上の多層構造にしてもよい。更に、半導体ウェハのダイシング工程では切削水を使用することから、ダイボンドフィルムが吸湿して、常態以上の含水率になる場合がある。この様な高含水率のまま、基板等に接着させると、アフターキュアの段階で接着界面に水蒸気が溜まり、浮きが発生する場合がある。従って、ダイボンドフィルムとしては、透湿性の高いコア材料を接着剤層で挟んだ構成とすることにより、アフターキュアの段階では、水蒸気がフィルムを通じて拡散して、かかる問題を回避することが可能となる。かかる観点から、ダイボンドフィルムはコア材料の片面又は両面に接着剤層を形成した多層構造にしてもよい。
【0047】
前記コア材料としては、フィルム(例えばポリイミドフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム等)、ガラス繊維やプラスチック製不織繊維で強化された樹脂基板、ミラーシリコンウェハ、シリコン基板又はガラス基板等が挙げられる。
【0048】
また、ダイボンドフィルム3は、セパレータにより保護されていることが好ましい(図示せず)。セパレータは、実用に供するまでダイボンドフィルムを保護する保護材としての機能を有している。また、セパレータは、更に、ダイシングフィルムにダイボンドフィルム3を転写する際の支持基材として用いることができる。セパレータはダイボンドフィルム上にワークを貼着する際に剥がされる。セパレータとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレンや、フッ素系剥離剤、長鎖アルキルアクリレート系剥離剤等の剥離剤により表面コートされたプラスチックフィルムや紙等も使用可能である。
【0049】
前記ダイシングフィルムとしては、例えば基材1上に粘着剤層2を積層したものが挙げられる。ダイボンドフィルム3は、粘着剤層2上に積層される。また図2に示すように、半導体ウェハ貼り付け部分にのみダイボンドフィルム3’を形成した構成であってもよい。
【0050】
前記基材1はとしては、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ランダム共重合ポリプロピレン、ブロック共重合ポリプロピレン、ホモポリプロレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル(ランダム、交互)共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、全芳香族ポリアミド、ポリフェニルスルフイド、アラミド(紙)、ガラス、ガラスクロス、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、セルロース系樹脂、シリコーン樹脂、金属(箔)、紙等からなるものが挙げられる。粘着剤層2が紫外線硬化型である場合、基材1は紫外線に対し透過性を有するものが好ましい。
【0051】
基材1の厚さは、特に制限されず適宜に決定できるが、一般的には5〜200μm程度である。
【0052】
前記粘着剤層2は紫外線硬化型粘着剤を含み構成されている。紫外線硬化型粘着剤は、紫外線の照射により架橋度を増大させてその粘着力を容易に低下させることができ、図2に示す粘着剤層2の半導体ウェハ貼り付け部分に対応する部分2aのみを紫外線照射することにより他の部分2bとの粘着力の差を設けることができる。
【0053】
また、図2に示すダイボンドフィルム3’に合わせて紫外線硬化型の粘着剤層2を硬化させることにより、粘着力が著しく低下した前記部分2aを容易に形成できる。硬化し、粘着力の低下した前記部分2aにダイボンドフィルム3’が貼付けられる為、粘着剤層2の前記部分2aとダイボンドフィルム3’との界面は、ピックアップ時に容易に剥がれる性質を有する。一方、紫外線を照射していない部分は十分な粘着力を有しており、前記部分2bを形成する。
【0054】
前述の通り、図1に示すダイシング・ダイボンドフィルム10の粘着剤層2に於いて、未硬化の紫外線硬化型粘着剤により形成されている前記部分2bはダイボンドフィルム3と粘着し、ダイシングする際の保持力を確保できる。この様に紫外線硬化型粘着剤は、半導体チップを基板等の被着体に固着する為のダイボンドフィルム3を、接着・剥離のバランスよく支持することができる。図2に示すダイシング・ダイボンドフィルム11の粘着剤層2に於いては、前記部分2bがウェハリング16を固定することができる。前記被着体6としては特に限定されず、例えば、BGA基板等の各種基板、リードフレーム、半導体素子、スペーサ等が挙げられる。
【0055】
前記紫外線硬化型粘着剤は、炭素−炭素二重結合等の紫外線硬化性の官能基を有し、かつ粘着性を示すものを特に制限なく使用することができる。紫外線硬化型粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤等の一般的な感圧性粘着剤に、紫外線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分を配合した添加型の紫外線硬化型粘着剤を例示できる。
【0056】
前記感圧性粘着剤としては、半導体ウェハやガラス等の汚染をきらう電子部品の超純水やアルコール等の有機溶剤による清浄洗浄性等の点から、アクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤が好ましい。
【0057】
前記アクリル系ポリマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、s−ブチルエステル、t−ブチルエステル、ペンチルエステル、イソペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、オクチルエステル、2−エチルヘキシルエステル、イソオクチルエステル、ノニルエステル、デシルエステル、イソデシルエステル、ウンデシルエステル、ドデシルエステル、トリデシルエステル、テトラデシルエステル、ヘキサデシルエステル、オクタデシルエステル、エイコシルエステル等のアルキル基の炭素数1〜30、特に炭素数4〜18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキルエステル等)及び(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル(例えば、シクロペンチルエステル、シクロヘキシルエステル等)の1種又は2種以上を単量体成分として用いたアクリル系ポリマー等が挙げられる。尚、(メタ)アクリル酸エステルとはアクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルをいい、本発明の(メタ)とは全て同様の意味である。
【0058】
前記アクリル系ポリマーは、凝集力、耐熱性等の改質を目的として、必要に応じ、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル又はシクロアルキルエステルと共重合可能な他のモノマー成分に対応する単位を含んでいてもよい。この様なモノマー成分として、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等のカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物モノマー;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有モノマー;スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等のリン酸基含有モノマー;アクリルアミド、アクリロニトリル等が挙げられる。これら共重合可能なモノマー成分は、1種又は2種以上使用できる。これら共重合可能なモノマーの使用量は、全モノマー成分の40重量%以下が好ましい。
【0059】
更に、前記アクリル系ポリマーは、架橋させる為、多官能性モノマー等も、必要に応じて共重合用モノマー成分として含むことができる。この様な多官能性モノマーとして、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの多官能性モノマーも1種又は2種以上用いることができる。多官能性モノマーの使用量は、粘着特性等の点から、全モノマー成分の30重量%以下が好ましい。
【0060】
前記アクリル系ポリマーは、単一モノマー又は2種以上のモノマー混合物を重合に付すことにより得られる。重合は、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合等の何れの方式で行うこともできる。清浄な被着体への汚染防止等の点から、低分子量物質の含有量が小さいのが好ましい。この点から、アクリル系ポリマーの数平均分子量は、好ましくは30万以上、更に好ましくは40万〜300万程度である。
【0061】
また、前記粘着剤には、ベースポリマーであるアクリル系ポリマー等の数平均分子量を高める為、外部架橋剤を適宜に採用することもできる。外部架橋方法の具体的手段としては、ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、メラミン系架橋剤等のいわゆる架橋剤を添加し反応させる方法が挙げられる。外部架橋剤を使用する場合、その使用量は、架橋すべきベースポリマーとのバランスにより、更には、粘着剤としての使用用途によって適宜決定される。一般的には、前記ベースポリマー100重量部に対して、5重量部程度以下、更には0.1〜5重量部配合するのが好ましい。更に、粘着剤には、必要により、前記成分のほかに、従来公知の各種の粘着付与剤、老化防止剤等の添加剤を用いてもよい。
【0062】
配合する前記紫外線硬化性のモノマー成分としては、例えば、ウレタンオリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また紫外線硬化性のオリゴマー成分はウレタン系、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリブタジエン系等種々のオリゴマーがあげられ、その分子量が100〜30000程度の範囲のものが適当である。紫外線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分の配合量は、前記粘着剤層の種類に応じて、粘着剤層の粘着力を低下できる量を、適宜に決定することができる。一般的には、粘着剤を構成するアクリル系ポリマー等のベースポリマー100重量部に対して、例えば5〜500重量部、好ましくは40〜150重量部程度である。
【0063】
また、紫外線硬化型粘着剤としては、前記説明した添加型の紫外線硬化型粘着剤のほかに、ベースポリマーとして、炭素−炭素二重結合をポリマー側鎖又は主鎖中もしくは主鎖末端に有するものを用いた内在型の紫外線硬化型粘着剤が挙げられる。内在型の紫外線硬化型粘着剤は、低分子量成分であるオリゴマー成分等を含有する必要がなく、又は多くは含まない為、経時的にオリゴマー成分等が粘着剤中を移動することなく、安定した層構造の粘着剤層を形成することができる為好ましい。
【0064】
前記炭素−炭素二重結合を有するベースポリマーは、炭素−炭素二重結合を有し、かつ粘着性を有するものを特に制限なく使用できる。この様なベースポリマーとしては、アクリル系ポリマーを基本骨格とするものが好ましい。アクリル系ポリマーの基本骨格としては、前記例示したアクリル系ポリマーが挙げられる。
【0065】
前記アクリル系ポリマーへの炭素−炭素二重結合の導入法は特に制限されず、様々な方法を採用できるが、炭素−炭素二重結合はポリマー側鎖に導入するのが分子設計において容易である。例えば、予め、アクリル系ポリマーに官能基を有するモノマーを共重合した後、この官能基と反応しうる官能基及び炭素−炭素二重結合を有する化合物を、炭素−炭素二重結合の紫外線硬化性を維持したまま縮合又は付加反応させる方法が挙げられる。
【0066】
これら官能基の組合せの例としては、カルボン酸基とエポキシ基、カルボン酸基とアジリジル基、ヒドロキシル基とイソシアネート基等が挙げられる。これら官能基の組合せのなかでも反応追跡の容易さから、ヒドロキシル基とイソシアネート基との組合せが好適である。また、これら官能基の組み合わせにより、前記炭素−炭素二重結合を有するアクリル系ポリマーを生成するような組合せであれば、官能基はアクリル系ポリマーと前記化合物のいずれの側にあってもよいが、前記の好ましい組み合わせでは、アクリル系ポリマーがヒドロキシル基を有し、前記化合物がイソシアネート基を有する場合が好適である。この場合、炭素−炭素二重結合を有するイソシアネート化合物としては、例えば、メタクリロイルイソシアネート、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等が挙げられる。また、アクリル系ポリマーとしては、前記例示のヒドロキシ基含有モノマーや2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングルコールモノビニルエーテルのエーテル系化合物等を共重合したものが用いられる。
【0067】
前記内在型の紫外線硬化型粘着剤は、前記炭素−炭素二重結合を有するベースポリマー(特にアクリル系ポリマー)を単独で使用することができるが、特性を悪化させない程度に前記紫外線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分を配合することもできる。紫外線硬化性のオリゴマー成分等は、通常ベースポリマー100重量部に対して30重量部の範囲内であり、好ましくは0〜10重量部の範囲である。
【0068】
前記紫外線硬化型粘着剤には、紫外線等により硬化させる場合には光重合開始剤を含有させる。光重合開始剤としては、例えば、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、α−ヒドロキシ−α,α’−ジメチルアセトフェノン、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のα−ケトール系化合物;メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)−フェニル]−2−モルホリノプロパン−1等のアセトフェノン系化合物;ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アニソインメチルエーテル等のベンゾインエーテル系化合物;ベンジルジメチルケタール等のケタール系化合物;2−ナフタレンスルホニルクロリド等の芳香族スルホニルクロリド系化合物;1−フェノン−1,1―プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム等の光活性オキシム系化合物;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;チオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、2,4−ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4−ジクロロチオキサンソン、2,4−ジエチルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソン等のチオキサンソン系化合物;カンファーキノン;ハロゲン化ケトン;アシルホスフィノキシド;アシルホスフォナート等が挙げられる。光重合開始剤の配合量は、粘着剤を構成するアクリル系ポリマー等のベースポリマー100重量部に対して、例えば0.05〜20重量部程度である。
【0069】
また紫外線硬化型粘着剤としては、例えば、不飽和結合を2個以上有する付加重合性化合物、エポキシ基を有するアルコキシシラン等の光重合性化合物と、カルボニル化合物、有機硫黄化合物、過酸化物、アミン、オニウム塩系化合物等の光重合開始剤とを含有するゴム系粘着剤やアクリル系粘着剤等が挙げられる。
【0070】
前記粘着剤層2に前記部分2aを形成する方法としては、基材1に紫外線硬化型の粘着剤層2を形成した後、前記部分2aに部分的に紫外線を照射し硬化させる方法が挙げられる。部分的な紫外線照射は、半導体ウェハ貼り付け部分3a以外の部分3b等に対応するパターンを形成したフォトマスクを介して行うことができる。また、スポット的に紫外線を照射し硬化させる方法等が挙げられる。紫外線硬化型の粘着剤層2の形成は、セパレータ上に設けたものを基材1上に転写することにより行うことができる。部分的な紫外線硬化はセパレータ上に設けた紫外線硬化型の粘着剤層2に行うこともできる。
【0071】
ダイシング・ダイボンドフィルム10の粘着剤層2に於いては、前記部分2aの粘着力<その他の部分2bの粘着力、となるように粘着剤層2の一部を紫外線照射してもよい。即ち、基材1の少なくとも片面の、半導体ウェハ貼り付け部分3aに対応する部分以外の部分の全部又は一部が遮光されたものを用い、これに紫外線硬化型の粘着剤層2を形成した後に紫外線照射して、半導体ウェハ貼り付け部分3aに対応する部分を硬化させ、粘着力を低下させた前記部分2aを形成することができる。遮光材料としては、支持フィルム上でフォトマスクになりえるものを印刷や蒸着等で作製することができる。これにより、効率よく本発明のダイシング・ダイボンドフィルム10を製造可能である。
【0072】
尚、紫外線照射の際に、酸素による硬化阻害が起こる場合は、紫外線硬化型の粘着剤層2の表面から酸素(空気)を遮断するのが望ましい。その方法としては、例えば粘着剤層2の表面をセパレータで被覆する方法や、窒素ガス雰囲気中で紫外線等の紫外線の照射を行う方法等が挙げられる。
【0073】
粘着剤層2の厚さは、特に限定されないが、チップ切断面の欠け防止や接着層の固定保持の両立性等の点よりは、1〜50μm程度であるのが好ましい。好ましくは2〜30μm、更には5〜25μmが好ましい。
【0074】
(半導体装置の製造方法)
次に、本実施の形態に係るダイシング・ダイボンドフィルム10を用いた半導体装置の製造方法について、以下に説明する。
【0075】
先ず、図1に示すように、ダイシング・ダイボンドフィルム10に於けるダイボンドフィルム3の半導体ウェハ貼り付け部分3a上に半導体ウェハ4を圧着し、これを接着保持させて固定する(マウント工程)。本工程は、圧着ロール等の押圧手段により押圧しながら行う。
【0076】
次に、半導体ウェハ4のダイシングを行う。これにより、半導体ウェハ4を所定のサイズに切断して個片化し、半導体チップ5を製造する。ダイシングは、例えば半導体ウェハ4の回路面側から常法に従い行われる。また、本工程では、例えばダイシング・ダイボンドフィルム10まで切込みを行なうフルカットと呼ばれる切断方式等を採用できる。本工程で用いるダイシング装置としては特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。また、半導体ウェハは、ダイシング・ダイボンドフィルム10により接着固定されているので、チップ欠けやチップ飛びを抑制できると共に、半導体ウェハ4の破損も抑制できる。
【0077】
ダイシング・ダイボンドフィルム10に接着固定された半導体チップを剥離する為に、半導体チップ5のピックアップを行う。ピックアップの方法としては特に限定されず、従来公知の種々の方法を採用できる。例えば、個々の半導体チップ5をダイシング・ダイボンドフィルム10側からニードルによって突き上げ、突き上げられた半導体チップ5をピックアップ装置によってピックアップする方法等が挙げられる。
【0078】
ここでピックアップは、粘着剤層2が紫外線硬化型の場合、該粘着剤層2に紫外線を照射した後に行う。これにより、粘着剤層2の半導体ウェハ貼り付け部分3aに対する粘着力が低下し、半導体チップ5の剥離が容易になる。その結果、半導体チップを損傷させることなくピックアップが可能となる。紫外線照射の際の照射強度、照射時間等の条件は特に限定されず、適宜必要に応じて設定すればよい。また、紫外線照射に使用する光源としては、前述のものを使用することができる。
【0079】
次に、図3に示すように、ダイシングにより形成された半導体チップ5を、ダイボンドフィルム3aを介して被着体6にダイボンドする。ダイボンドは圧着により行われる。ダイボンドの条件としては特に限定されず、適宜必要に応じて設定することができる。具体的には、例えば、ダイボンド温度80〜160℃、ボンディング圧力5N〜15N、ボンディング時間1〜10秒の範囲内で行うことができる。
【0080】
続いて、ダイボンドフィルム3aを加熱処理することによりこれを熱硬化させ、半導体チップ5と被着体6とを接着させる。加熱処理条件としては、温度80〜180℃の範囲内であり、かつ、加熱時間0.1〜24時間、好ましくは0.1〜4時間、より好ましくは0.1〜1時間の範囲内であることが好ましい。
【0081】
次に、被着体6の端子部(インナーリード)の先端と半導体チップ5上の電極パッド(図示しない)とをボンディングワイヤー7で電気的に接続するワイヤーボンディング工程を行う。前記ボンディングワイヤー7としては、例えば金線、アルミニウム線又は銅線等が用いられる。ワイヤーボンディングを行う際の温度は、80〜250℃、好ましくは80〜220℃の範囲内で行われる。また、その加熱時間は数秒〜数分間行われる。結線は、前記温度範囲内となる様に加熱された状態で、超音波による振動エネルギーと印加加圧による圧着エネルギーの併用により行われる。
【0082】
ここで、熱硬化後のダイボンドフィルム3aは、175℃において0.01MPa以上の剪断接着力を有していることが好ましく、0.01〜5MPaがより好ましい。熱硬化後の175℃における剪断接着力を0.01MPa以上にすることにより、ワイヤーボンディング工程の際の超音波振動や加熱に起因して、ダイボンドフィルム3aと半導体チップ5又は被着体6との接着面でずり変形が生じるのを防止できる。即ち、ワイヤーボンディングの際の超音波振動により半導体素子が動くことがなく、これにより、ワイヤーボンディングの成功率が低下するのを防止する。
【0083】
尚、ワイヤーボンディング工程は、加熱処理によりダイボンドフィルム3を熱硬化させることなく行ってもよい。この場合、ダイボンドフィルム3aの25℃における剪断接着力は、被着体6に対し0.2MPa以上であることが好ましく、0.2〜10MPaであることがより好ましい。前記剪断接着力を0.2MPa以上にすることにより、ダイボンドフィルム3aを熱硬化させることなくワイヤーボンディング工程を行っても、当該工程に於ける超音波振動や加熱により、ダイボンドフィルム3aと半導体チップ5又は被着体6との接着面でずり変形を生じることがない。即ち、ワイヤーボンディングの際の超音波振動により半導体素子が動くことがなく、これにより、ワイヤーボンディングの成功率が低下するのを防止する。
【0084】
また、未硬化のダイボンドフィルム3aは、ワイヤーボンディング工程を行っても完全に熱硬化することはない。更に、ダイボンドフィルム3aの剪断接着力は、80〜250℃の温度範囲内であっても、0.2MPa以上であることが必要である。当該温度範囲内で剪断接着力が0.2MPa未満であると、ワイヤーボンディングの際の超音波振動により半導体素子が動き、ワイヤーボンディングを行うことができず、歩留まりが低下するからである。
【0085】
続いて、封止樹脂8により半導体チップ5を封止する封止工程を行う。本工程は、被着体6に搭載された半導体チップ5やボンディングワイヤー7を保護する為に行われる。本工程は、封止用の樹脂を金型で成型することにより行う。封止樹脂8としては、例えばエポキシ系の樹脂を使用する。樹脂封止の際の加熱温度は、通常175℃で60〜90秒間行われるが、本発明はこれに限定されず、例えば165〜185℃で、数分間キュアすることができる。これにより、封止樹脂を硬化させると共に、ダイボンドフィルム3aが熱硬化されていない場合は当該ダイボンドフィルム3aも熱硬化させる。即ち、本発明に於いては、後述する後硬化工程が行われない場合に於いても、本工程に於いてダイボンドフィルム3aを熱硬化させて接着させることが可能であり、製造工程数の減少及び半導体装置の製造期間の短縮に寄与することができる。
【0086】
前記後硬化工程に於いては、前記封止工程で硬化不足の封止樹脂8を完全に硬化させる。封止工程に於いてダイボンドフィルム3aが熱硬化されない場合でも、本工程に於いて封止樹脂8の硬化と共にダイボンドフィルム3aを熱硬化させて接着固定が可能になる。本工程に於ける加熱温度は、封止樹脂の種類により異なるが、例えば165〜185℃の範囲内であり、加熱時間は0.5〜8時間程度である。
【0087】
また、本発明のダイシング・ダイボンドフィルムは、図4に示すように、複数の半導体チップを積層して3次元実装をする場合にも好適に用いることができる。図4は、ダイボンドフィルムを介して半導体チップを3次元実装した例を示す断面模式図である。図4に示す3次元実装の場合、先ず半導体チップと同サイズとなる様に切り出した少なくとも1つのダイボンドフィルム3aを被着体6上に貼り付けた後、ダイボンドフィルム3aを介して半導体チップ5を、そのワイヤーボンド面が上側となる様にしてダイボンドする。次に、ダイボンドフィルム13を半導体チップ5の電極パッド部分を避けて貼り付ける。更に、他の半導体チップ15をダイボンドフィルム13上に、そのワイヤーボンド面が上側となる様にしてダイボンドする。その後、ダイボンドフィルム3a、13を加熱することにより熱硬化させて接着固定し、耐熱強度を向上させる。加熱条件としては、前述と同様、温度80〜200℃の範囲内であり、かつ、加熱時間0.1〜24時間の範囲内であることが好ましい。
【0088】
また本発明においては、ダイボンドフィルム3a、13を熱硬化させず、単にダイボンドさせてもよい。その後、加熱工程を経ることなくワイヤーボンディングを行い、更に半導体チップを封止樹脂で封止して、当該封止樹脂をアフターキュアすることもできる。
【0089】
次に、ワイヤーボンディング工程を行う。これにより、半導体チップ5及び他の半導体チップ15に於けるそれぞれの電極パッドと、被着体6とをボンディングワイヤー7で電気的に接続する。尚、本工程は、ダイボンドフィルム3a、13の加熱工程を経ることなく実施される。
【0090】
続いて、封止樹脂8により半導体チップ5等を封止する封止工程を行い、封止樹脂を硬化させる。それと共に、熱硬化が行われていない場合は、ダイボンドフィルム3aの熱硬化により被着体6と半導体チップ5との間を接着固定する。また、ダイボンドフィルム13の熱硬化により、半導体チップ5と他の半導体チップ15との間も接着固定させる。尚、封止工程の後、後硬化工程を行ってもよい。
【0091】
半導体チップの3次元実装の場合に於いても、ダイボンドフィルム3a、13の加熱による加熱処理を行わないので、製造工程の簡素化及び歩留まりの向上が図れる。また、被着体6に反りが生じたり、半導体チップ5及び他の半導体チップ15にクラックが発生したりすることもないので、半導体素子の一層の薄型化が可能になる。
【0092】
また、図5に示すように、半導体チップ間にダイボンドフィルムを介してスペーサを積層させた3次元実装としてもよい。図5は、2つの半導体チップをスペーサを介してダイボンドフィルムにより3次元実装した例を示す断面模式図である。
【0093】
図5に示す3次元実装の場合、先ず被着体6上にダイボンドフィルム3、半導体チップ5及びダイボンドフィルム21を順次積層してダイボンドする。更に、ダイボンドフィルム21上に、スペーサ9、ダイボンドフィルム21、ダイボンドフィルム3a及び半導体チップ5を順次積層してダイボンドする。その後、ダイボンドフィルム3a、21を加熱することにより熱硬化させて接着固定し、耐熱強度を向上させる。加熱条件としては、前述と同様、温度80〜200℃の範囲内であり、かつ、加熱時間0.1〜24時間の範囲内であることが好ましい。
【0094】
また本発明においては、ダイボンドフィルム3a、21を熱硬化させず、単にダイボンドさせてもよい。その後、加熱工程を経ることなくワイヤーボンディングを行い、更に半導体チップを封止樹脂で封止して、当該封止樹脂をアフターキュアすることもできる。
【0095】
次に、図5に示すように、ワイヤーボンディング工程を行う。これにより、半導体チップ5に於ける電極パッドと被着体6とをボンディングワイヤー7で電気的に接続する。尚、本工程は、ダイボンドフィルム3a、21の加熱工程を経ることなく実施される。
【0096】
続いて、封止樹脂8により半導体チップ5を封止する封止工程を行い、封止樹脂8を硬化させると共に、ダイボンドフィルム3a、21が未硬化の場合は、これらを熱硬化させることにより、被着体6と半導体チップ5との間、及び半導体チップ5とスペーサ9との間を接着固定させる。これにより、半導体パッケージが得られる。封止工程は、半導体チップ5側のみを片面封止する一括封止法が好ましい。封止は粘着シート上に貼り付けられた半導体チップ5を保護するために行われ、その方法としては封止樹脂8を用いて金型中で成型されるのが代表的である。その際、複数のキャビティを有する上金型と下金型からなる金型を用いて、同時に封止工程を行うのが一般的である。樹脂封止時の加熱温度は、例えば170〜180℃の範囲内であることが好ましい。封止工程の後に、後硬化工程を行ってもよい。
【0097】
尚、前記スペーサ9としては、特に限定されるものではなく、例えば従来公知のシリコンチップ、ポリイミドフィルム等を用いることができる。また、前記スペーサとしてコア材料を用いることができる。コア材料としては特に限定されるものではなく、従来公知のものを用いることができる。具体的には、フィルム(例えばポリイミドフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム等)、ガラス繊維やプラスチック製不織繊維で強化された樹脂基板、ミラーシリコンウェハ、シリコン基板又はガラス被着体を使用できる。
【実施例】
【0098】
以下に、この発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但し、この実施例に記載されている材料や配合量等は、特に限定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。また、「部」とあるのは、重量部を意味する。
【0099】
(実施例1)
アクリル酸エチル−メチルメタクリレートを主成分とするアクリル酸エステル系ポリマー(根上工業(株)製、パラクロンW−197CM)100部に対して、エポキシ樹脂A(JER(株)製、エピコート1004)228部、エポキシ樹脂B(JER(株)製、エピコート827)206部、フェノール樹脂(三井化学(株)製、ミレックスXLC−4L)446部、熱伝導性フィラーとしての球状アルミナ((株)電気化学工業製、DAM−0、平均粒径3μm、熱伝導率40W/m・K)1500部、硬化触媒(四国化成(株)製、C11−Z)3部をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度23.6重量%の接着剤組成物を調製した。
【0100】
この接着剤組成物溶液を、シリコーン離型処理した厚さが50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる離型処理フィルム(剥離ライナー)上に塗布した後、130℃で2分間乾燥させた。これにより、厚さ40μmの放熱性ダイボンドフィルムを作製した。
【0101】
(実施例2)
本実施例に於いては、熱伝導性フィラーの含有量を3000部に変更したこと以外は、前記実施例1と同様にして、本実施例に係る放熱性ダイボンドフィルムを作製した。
【0102】
(実施例3)
本実施例に於いては、熱伝導性フィラーの含有量を8000部に変更したこと以外は、前記実施例1と同様にして、本実施例に係る放熱性ダイボンドフィルムを作製した。
【0103】
(実施例4)
本実施例に於いては、熱伝導性フィラーとして球状酸化亜鉛(堺化学工業(株)製、1種亜鉛、平均粒径0.6μm、熱伝導率54W/m・K)を用い、その含有量を8000部に変更したこと以外は、前記実施例1と同様にして、本実施例に係る放熱性ダイボンドフィルムを作製した。
【0104】
(実施例5)
本実施例に於いては、熱伝導性フィラーとして、球状アルミナA((株)電気化学工業製、DAM−0、平均粒径3μm、熱伝導率40W/m・K)6000部と、球状アルミナB((株)電気化学工業製、ASFP−20、平均粒径0.2μm、熱伝導率40W/m・K)2000部とを用いたこと以外は、前記実施例1と同様にして、本実施例に係る放熱性ダイボンドフィルムを作製した。
【0105】
(比較例1)
アクリル酸エチル−メチルメタクリレートを主成分とするアクリル酸エステル系ポリマー(根上工業(株)製、パラクロンW−197CM)100部に対して、エポキシ樹脂A(JER(株)製、エピコート1004)228部、エポキシ樹脂B(JER(株)製、エピコート827)206部、フェノール樹脂(三井化学(株)製、ミレックスXLC−4L)446部、熱伝導性フィラーとしての球状アルミナ((株)電気化学工業製、DAM−0、平均粒径3μm、熱伝導率40W/m・K)100部、硬化触媒(四国化成(株)製、C11−Z)3部をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度23.6重量%の接着剤組成物を調製した。
【0106】
この接着剤組成物溶液を、シリコーン離型処理した厚さが50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる離型処理フィルム(剥離ライナー)上に塗布した後、130℃で2分間乾燥させた。これにより、厚さ40μmのダイボンドフィルムを作製した。
【0107】
(比較例2)
本比較例に於いては、熱伝導性フィラーとして球状シリカ(アドマテックス(株)製、S0−25R、平均粒径0.5μm、熱伝導率10W/m・K)を用い、その含有量を1500部に変更したこと以外は、前記実施例1と同様にして、本比較例に係る放熱性ダイボンドフィルムを作製した。
【0108】
(フィラーの平均粒径)
各実施例及び比較例で使用したフィラーの平均粒径については、光度式の粒度分布計(HORIBA製、装置名;LA−910)を用いて測定した。
【0109】
(熱伝導率)
各実施例及び比較例で作製したダイボンドフィルムを、乾燥機内において175℃、1時間で熱処理を行い、熱硬化させた。その後、TWA法(温度波熱分析法、測定装置;アイフェイズモバイル、(株)アイフェイズ製)により、各ダイボンドフィルムの熱拡散率α(m/s)を測定した。次に、各ダイボンドフィルムの比熱Cp(J/g・℃)を、DSC法により測定した。比熱測定は、エスアイアイナノテクノロジー(株)製のDSC6220を用い、昇温速度10℃/min、温度20〜300℃の条件下で行い、得られた実験データを基に、JISハンドブック(比熱容量測定方法K−7123)により算出した。更に、各ダイボンドフィルムの比重を測定した。
【0110】
前記各測定により得られた熱拡散率α、比熱Cp及び比重の値を基に、下記式により熱伝導率を算出した。結果を下記表1に示す。
【数2】

【0111】
(貯蔵弾性率)
各実施例及び比較例で作製したダイボンドフィルムを、乾燥機内において175℃、1時間で熱処理し、熱硬化させた。その後、長さ22.5mm(測定長さ)、幅10mmの短冊状にカッターナイフで切り出し、固体粘弾性測定装置(RSAIII、レオメトリックサイエンティフィック(株)製)を用いて、260℃における貯蔵弾性率を測定した。測定条件は、周波数1Hz、昇温速度10℃/minとした。結果を下記表1に示す。
【0112】
(吸湿信頼性の評価)
各実施例及び比較例で得られたダイボンドフィルムを、温度40℃の条件下で5mm角の半導体チップに貼り付けた。次に、ダイボンドフィルムを介して9個の前記半導体チップをBGA基板上にダイボンドした。ダイボンド条件は、ダイボンド温度120℃、ダイボンド圧力0.1MPa、ダイボンド時間1秒とした。
【0113】
続いて、乾燥機内において100℃、10時間で熱処理を行い、その後、封止樹脂(日東電工製、商品名;GE−100)により、これらをモールドマシン(TOWA製,Model−Y−serise)を用いて、モールドした。モールド条件は、175℃で、プレヒート設定3秒、インジェクション時間11.5秒、キュア時間90秒とした。更に、175℃×5hrの条件で加熱硬化して半導体パッケージを得た。
【0114】
この半導体パッケージを、恒温恒湿器を用いて、温度60℃、相対湿度80%RHの環境下で、168時間吸湿処理した。その後、パッケージの表面ピーク温度が260℃以上で、30秒間保持可能な様に温度設定したIRリフロー炉に、各半導体パッケージを投入した。その後、パッケージの中心部を切断し、切断面を研磨した後、超音波顕微鏡を用いて、パッケージの断面を観察した。パッケージの断面に於いて、半導体チップとBGA基板の界面に剥離が発生しているか否かを観察した。観察の結果、剥離が認められた半導体チップの数が3個以下である場合を○とし、4個以上である場合を×として評価した。その結果を下記表1に示す。
【0115】
(結果)
下記表1から分かる通り、本実施例1〜3に係るダイボンドフィルムであると、全て2W/m・K以上の熱伝導率を示しており、放熱性に優れていることが確認された。その一方、比較例1及び2に係るダイボンドフィルムでは、熱伝導率がそれぞれ0.2W/m・K、1.2W/m・Kであり、熱伝導率が低く、放熱性に劣っていた。また、260℃における貯蔵弾性率についても、本実施例のダイボンドフィルムは何れも高い値を示している。その結果、本実施例に係るダイボンドフィルムでは、ワイヤーボンディングを行う際にも、超音波振動や加熱によりダイボンドフィルムと被着体との接着面でずり変形が生じるのを防止し得ることが確認された。更に、本実施例に係るダイボンドフィルムは何れも吸湿信頼性に優れており、例えば、リフロー工程において半導体パッケージに対し、クラックの発生を防止し得ることも確認された。
【0116】
【表1】

【符号の説明】
【0117】
1 基材
2 粘着剤層
3、3’、13、21 放熱性ダイボンドフィルム
3a ダイボンドフィルム
5 半導体チップ
6 被着体
7 ボンディングワイヤー
8 封止樹脂
9 スペーサ
10、11 ダイシング・ダイボンドフィルム
15 半導体チップ
16 ウェハリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子を被着体上に接着して固定させる放熱性ダイボンドフィルムであって、
熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、及び熱伝導率が12W/m・K以上の熱伝導性フィラーを少なくとも含み、前記熱伝導性フィラーの含有量は有機樹脂成分と熱伝導性フィラーの合計に対し50重量%〜120重量%の範囲内である放熱性ダイボンドフィルム。
【請求項2】
前記熱伝導性フィラーの平均粒径は0.01〜10μmの範囲内である請求項1に記載の放熱性ダイボンドフィルム。
【請求項3】
前記熱伝導性フィラーは平均粒径が相互に異なる2種の熱伝導性フィラーを含み、一方の熱伝導性フィラーは平均粒径が0.01〜1μmの範囲内のものであり、他方の熱伝導性フィラーは平均粒径が1〜10μmの範囲内のものである請求項2に記載の放熱性ダイボンドフィルム。
【請求項4】
前記熱伝導性フィラーは酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、水酸化マグネシウム、窒化アルミニウム、及び炭化珪素からなる群より選択される少なくとも何れか1種である請求項1〜3の何れか1項に記載の放熱性ダイボンドフィルム。
【請求項5】
175℃で1時間の熱処理を行い熱硬化した後の260℃における貯蔵弾性率が0.1MPa以上である請求項1〜4の何れか1項に記載の放熱性ダイボンドフィルム。
【請求項6】
175℃で1時間の熱処理を行い熱硬化した後の260℃における重量減少量が1重量%以下である請求項1〜5の何れか1項に記載の放熱性ダイボンドフィルム。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載の放熱性ダイボンドフィルムが、ダイシングフィルム上に積層された構造であるダイシング・ダイボンドフィルム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−23607(P2011−23607A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−168159(P2009−168159)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】