説明

放電抵抗一体型コンデンサ

【課題】しわの発生のおそれがなく、放熱性能が良く、コンデンサの性能が劣化するおそれのない放電抵抗一体型コンデンサを提供すること。
【解決手段】放電抵抗一体型コンデンサ10は、絶縁部と電極蒸着部を備える薄膜が筒形状に巻回されて構成されるコンデンサと、コンデンサのP極とN極間を抵抗物質により連結した放電抵抗部を有する放電抵抗一体型コンデンサにおいて、絶縁部に抵抗膜14,24が形成される。この抵抗膜14,24を、薄膜の一端側に全周に渡って形成し、しわの発生を防止する。また、抵抗膜14,24をP極とN極の近くに形成して、軸心方向の中心部付近には放電抵抗を設けないことで、発生する熱がP極とN極(各メタリコン電極15,25)から放熱されて、抵抗膜14,24が高温になることがなく、コンデンサ10の性能が劣化するおそれがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁部と電極蒸着部を備える薄膜が筒形状に巻回されて構成されるコンデンサと、前記コンデンサのP極とN極間を抵抗物質により連結した放電抵抗部を有する放電抵抗一体型コンデンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、絶縁部と電極蒸着部を備える薄膜が筒形状に巻回されて構成されるコンデンサと、前記コンデンサのP極とN極間を抵抗物質により連結した放電抵抗部を有する放電抵抗一体型コンデンサが使用されている。
放電抵抗部を有する理由は、機器を運転している途中で機器を停止して、制御装置を点検する場合に、コンデンサが高い電圧を保ったままだと、使用者が感電するおそれがあるので、機器が停止した場合に、速やかに、放電抵抗部により、蓄積された電荷を放電するためである。
【0003】
放電抵抗一体型コンデンサとして、特許文献1には、図10に示すように、絶縁部と電極蒸着部が形成されたコンデンサフィルム102,103の途中にP極とN極を接続する1つの大きな放電抵抗101を形成することが記載されている。また、図11に示すように、放電抵抗105を1つではなく、複数に分割して、コンデンサフィルム102,103に周期的に形成することが記載されている。
また、特許文献2には、図12に示すように、コンデンサの軸心106に、始めに放電抵抗シート107を巻回することにより、放電抵抗を形成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第4443829号公報
【特許文献2】特公平7−44125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1,2の技術には、次のような問題があった。
(1)特許文献1の技術では、ブロック状の放電抵抗が、フィルムを巻回している途中に挿入されるため、さらに巻回したときに、その部分でしわが発生する問題があった。このようにしわが発生すると、その付近で電極蒸着部が剥離するおそれがあり、問題であった。また、図11のように、複数の放電抵抗を挿入することは、製造工程において、繰り返し複雑な作業を必要とするため、生産効率の低下を招く問題があった。
(2)特許文献2の技術では、放電抵抗シートが軸心に対して全周に均一に巻回されているため、しわが発生するおそれはない。しかしながら、放電抵抗は発熱物質であり、軸心の付近、特に軸心方向の中心部付近では放熱する箇所がないため、高温になるおそれがあった。コンデンサの電極蒸着部は、高温に弱いため、コンデンサの性能が劣化するおそれがあり、問題であった。
【0006】
そこで、本発明はこのような課題を解決するために、しわの発生のおそれがなく、放熱性能が良く、コンデンサの性能が劣化するおそれのない放電抵抗一体型コンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の放電抵抗一体型コンデンサは、次のような構成を有している。
(1)絶縁部と電極蒸着部を備える薄膜が筒形状に巻回されて構成されるコンデンサと、前記コンデンサのP極とN極間を抵抗物質により連結した放電抵抗部を有する放電抵抗一体型コンデンサにおいて、前記絶縁部に抵抗膜を形成したこと、を特徴とする。
(2)(1)に記載する放電抵抗一体型コンデンサにおいて、前記電極蒸着部の表面にも、前記抵抗膜が形成されていること、を特徴とする。
【0008】
(3)絶縁部と電極蒸着部を備える薄膜が筒形状に巻回されて構成されるコンデンサと、前記コンデンサのP極とN極間を抵抗物質により連結した放電抵抗部を有する放電抵抗一体型コンデンサにおいて、前記薄膜の巻回された最終部に、抵抗膜が形成されていること、を特徴とする。
(4)(3)に記載する放電抵抗一体型コンデンサにおいて、前記薄膜には、前記抵抗膜が形成された部分の後に保護膜が形成されていること、を特徴とする。
【0009】
(5)絶縁部と電極蒸着部を備える薄膜が筒形状に巻回されて構成されるコンデンサと、前記コンデンサのP極とN極間を抵抗物質により連結した放電抵抗部を有する放電抵抗一体型コンデンサにおいて、前記薄膜を巻回する軸心に前記放電抵抗部を形成し、前記放電抵抗部と前記薄膜との間に断熱材を設けたこと、を特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上記構成を有する本発明の放電抵抗一体型コンデンサは、次のような作用・効果を奏する。
(1)絶縁部と電極蒸着部を備える薄膜が筒形状に巻回されて構成されるコンデンサと、前記コンデンサのP極とN極間を抵抗物質により連結した放電抵抗部を有する放電抵抗一体型コンデンサにおいて、前記絶縁部に抵抗膜を形成したこと、を特徴とするので、通常絶縁部は、薄膜の一端面に全周に渡って形成されており、その部分に全周に渡って放電抵抗膜を形成するので、しわが発生するおそれがない。また、P極とN極の近くに放電抵抗が形成され、軸心方向の中心部付近に放電抵抗が存在しないため、発生する熱がP極とN極から放熱されて、放電抵抗部が高温になることがなく、コンデンサの性能が劣化するおそれがない。
また、フィルムに対して、電極蒸着部を塗布するときに、その直後に放電抵抗部を塗布すれば良いので、製造設備を全体として簡略化できる。
【0011】
(2)(1)に記載する放電抵抗一体型コンデンサにおいて、前記電極蒸着部の表面にも、前記抵抗膜が形成されていること、を特徴とするので、放電抵抗膜を塗布するときに、電極蒸着部との境を厳密に位置合わせする必要がないため、塗布装置等の製造装置を簡略化でき、製造装置のコストダウンを図ることができる。
【0012】
(3)絶縁部と電極蒸着部を備える薄膜が筒形状に巻回されて構成されるコンデンサと、前記コンデンサのP極とN極間を抵抗物質により連結した放電抵抗部を有する放電抵抗一体型コンデンサにおいて、前記薄膜の巻回された最終部に、抵抗膜が形成されていること、を特徴とするので、放電抵抗部が外周付近にのみ全周に渡って形成されるため、しわが発生するおそれがなく、また、放電抵抗部で発生する熱が、外周から外気に放熱されるため、放電抵抗部が高温になることがなく、コンデンサの性能を劣化するおそれがない。
【0013】
(4)(3)に記載する放電抵抗一体型コンデンサにおいて、前記薄膜には、前記抵抗膜が形成された部分の後に保護膜が形成されていること、を特徴とするので、放電抵抗部が保護膜により保護されているため、放電抵抗部に傷がつくことがなく、安定した放電を行うことができる。
【0014】
(5)絶縁部と電極蒸着部を備える薄膜が筒形状に巻回されて構成されるコンデンサと、前記コンデンサのP極とN極間を抵抗物質により連結した放電抵抗部を有する放電抵抗一体型コンデンサにおいて、前記薄膜を巻回する軸心に前記放電抵抗部を形成し、前記放電抵抗部と前記薄膜との間に断熱材を設けたこと、を特徴とするので、巻回する薄膜の途中に抵抗部材を挿入する必要がないため、しわが発生するおそれがない。また、放電抵抗部と薄膜との間に断熱材を設けているため、放電抵抗部の発熱が薄膜側に伝わらず、コンデンサの性能を劣化させるおそれがない。さらに、薄膜を巻回する軸心に放電抵抗部を形成しているため、薄膜の途中に放電抵抗部を形成した場合に比べて、製造が容易となり、量産性の向上、コンデンサの小型化、低コスト化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1実施形態に係る放電抵抗一体型コンデンサを示す模式図である。
【図2】同コンデンサの製造方法における蒸着工程を示す説明図である。
【図3】同製造方法における巻取工程を示す説明図である。
【図4】同製造方法における蒸着工程の変更例を示す説明図である。
【図5】第2実施形態に係る放電抵抗一体コンデンサを示す模式図である。
【図6】第3〜第5実施形態に係る放電抵抗一体コンデンサの外観を示す斜視図である。
【図7】第3実施形態に係る図6のA−A線における断面図である。
【図8】第4実施形態に係る図6のA−A線における断面図である。
【図9】第5実施形態に係る図6のA−A線における断面図である。
【図10】従来例に係る放電抵抗一体型コンデンサを示す斜視図である。
【図11】従来例に係る放電抵抗一体型コンデンサを示す斜視図である。
【図12】従来例に係る放電抵抗一体型コンデンサを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る放電抵抗一体型コンデンサを具体化した実施形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
まず、第1実施形態に係る放電抵抗一体型コンデンサの全体構成について、図1を参照しながら説明する。図1は、第1実施形態に係る放電抵抗一体型コンデンサを示す模式図である。図1における破線部分は、説明のために巻回された薄膜の一部をほどいたものである。この破線部分では、ほどき始めの部位Pから、薄膜の先端Qにかけて、図示するXY座標のうちY方向へ次第に拡大して示している。
【0017】
[第1実施形態]
放電抵抗一体型コンデンサ10は、N型薄膜11とP型薄膜21とを重ね合わせて筒形状に巻回したものである。このコンデンサ10の寸法は、例えば52mm×38mm×100mm程度であり、巻数は、例えば3174回程度である。N型薄膜11は、N型薄膜誘電体フィルム12上に、N型電極蒸着膜13とN型薄膜抵抗膜14とを形成したものである。P型薄膜21は、P型薄膜誘電体フィルム22上に、P型電極蒸着膜23とP型薄膜抵抗膜24とを形成したものである。これらの抵抗膜14,24により、コンデンサ10のP極−N極間を抵抗物質により連結した放電抵抗部が形成されている。また、コンデンサ10における図中X方向の端面には、N型電極を統合するN型メタリコン電極15と、P型電極を統合するP型メタリコン電極25とが形成されている。N型メタリコン電極15は、N型電極蒸着膜13及びP型薄膜抵抗膜24と接している。P型メタリコン電極25は、P型電極蒸着膜23及びN型薄膜抵抗膜14と接している。なお、本実施形態の「N型薄膜11」及び「P型薄膜21」が、本発明の「薄膜」に相当し、本実施形態の「N型電極蒸着膜13」及び「P型電極蒸着膜23」が、本発明の「電極蒸着部」に相当し、本実施形態の「N型薄膜抵抗膜14」及び「P型薄膜抵抗膜24」が、本発明の「放電抵抗部」に相当する。
【0018】
N型薄膜誘電体フィルム12及びP型薄膜誘電体フィルム22は、厚さが3μm程度であり、その材質には、PP(ポリプロピレン)が用いられている。N型電極蒸着膜13は、厚さが0.1μm程度であり、そのX方向の一端側には、N型薄膜抵抗膜14が同じ厚さ(0.1μm程度)で全周に渡って形成されている。また、P型電極蒸着膜23も、厚さが0.1μm程度であり、そのX方向の他端側(N型薄膜抵抗膜14とは逆側)には、P型薄膜抵抗膜24が同じ厚さ(0.1μm程度)で全周に渡って形成されている。N型薄膜抵抗膜14及びP型薄膜抵抗膜24の材質には、金属皮膜、金属酸化被膜、カーボン、ガラス、モリブデン、タングステン等の高抵抗物質が用いられており、薄膜を3174回巻いたときの抵抗膜全体としての抵抗値は、100kΩ程度となっている。
【0019】
<製造方法>
続いて、上記構成を有する放電抵抗一体型コンデンサ10の製造方法について、図2,図3及び図4を参照しながら説明する。図2は、同製造方法における蒸着工程を示す説明図である。図3は、同製造方法における巻取工程を示す説明図である。図4は、同製造方法における蒸着工程の変更例を示す説明図である。
放電抵抗一体型コンデンサ10の製造方法は、電極材料を誘電体フィルム上に蒸着する蒸着工程と、蒸着後の2枚の薄膜(N型薄膜11及びP型薄膜21)を重ね合わせて巻き取る巻取工程とを有している。なお、N型電極材料の蒸着工程と、P型電極材料の蒸着工程とは、基本的に同じであるため、ここではN型電極材料の蒸着工程を例に挙げて説明する。
【0020】
蒸着工程では、図2に示すように、まず巻出軸30から蒸着前のN型薄膜誘電体フィルム12を巻き出す。巻き出されたN型薄膜誘電体フィルム12は、電極蒸着機31へと搬送されて、片面にN型電極材料32が蒸着される。本実施形態では、N型電極材料32を、N型薄膜誘電体フィルム12の片面全体にではなく、N型薄膜誘電体フィルム12の幅方向(図1におけるX方向)の一端側を2,3mm程度残すようにして蒸着する。N型電極材料32が蒸着されたN型薄膜誘電体フィルム12は、抵抗膜形成機33へと搬送される。抵抗膜形成機33では、N型薄膜誘電体フィルム12の片面のうちN型電極材料32を蒸着していない幅方向一端側(端から2,3mm程度の部分)に、抵抗膜材料34を蒸着する。こうして、蒸着工程が完了する。この蒸着工程を経て、N型薄膜誘電体フィルム12の片面全体には、N型電極蒸着膜13とN型薄膜抵抗膜14とが、隙間の無いように位置合わせされて形成されている。こうして形成されたものが、N型薄膜11である。なお、本実施形態では、同一の蒸着工程において電極材料32と抵抗膜材料34とを誘電体フィルム12(22)に蒸着しているため、製造設備を全体として簡略化することが可能となる。
【0021】
巻取工程では、図3に示すように、蒸着工程を経て形成されたN型薄膜11とP型薄膜21とが、搬送ローラ35により巻取軸36へと搬送される。そして、N型薄膜11の蒸着面とは逆側の面Aと、P型薄膜21の蒸着面Bとを重ね合わせた状態で、巻取軸36に巻き取る。このように巻き取ることで、N型電極蒸着膜13とP型電極蒸着膜23とが、各誘電体フィルム12,22を介して交互に配置される。その後、各端面にN型メタリコン電極15及びP型メタリコン電極25を形成して、図1に示す放電抵抗一体型コンデンサ10が得られる。なお、本実施形態では、抵抗膜14,24が誘電体フィルム12,22の一端側又は他端側に、全周に渡って形成されているため、巻取りの際にしわが発生するおそれがない。
【0022】
上記工程を経て得られた放電抵抗一体型コンデンサ10では、N型メタリコン電極15及びP型メタリコン電極25に所定電圧が印加されると、N型電極蒸着膜13とP型電極蒸着膜23の間に電荷が蓄えられる。ところで、機器を運転している途中で機器を停止して、制御装置を点検する場合がある。この場合、コンデンサが高い電圧を保ったままだと、使用者がコンデンサに触れたとき感電するおそれがある。しかしながら、このコンデンサ10によれば、機器が停止した場合にも、抵抗膜14,24により電荷を速やかに放電できるため、安全性を向上させることができる。つまり、このコンデンサ10では、抵抗膜全体としての抵抗値を100kΩ程度としたことにより、機器を運転している通常の状態では、抵抗膜14,24を絶縁に近い状態で機能させており、機器の運転を停止した場合には、蓄えられた電荷が例えば20〜30秒程度かけて抵抗膜14,24により放電されるようにしている。
【0023】
また、抵抗膜14,24により放電する際、熱が発生してしまう。そして、コンデンサ10の電極蒸着膜13,23は熱に弱いため、熱の発生によりコンデンサ10の性能が劣化するおそれがある。しかしながら、このコンデンサ10によれば、各抵抗膜14,24がN型メタリコン電極15又はP型メタリコン電極25に接しており、各メタリコン電極15,25がコンデンサ10の両端面を形成しているため、抵抗膜14,24で発生する熱が、各メタリコン電極15,25を介してコンデンサ10の両端側から外部へと効率よく放熱される。これにより、抵抗膜14,24が高温になることがなく、電極蒸着膜13,23を熱から保護することができるため、コンデンサ10の性能を劣化させるおそれがない。
【0024】
以上、詳細に説明したとおり、本実施形態の放電抵抗一体型コンデンサ10は、絶縁部と電極蒸着部を備える薄膜が筒形状に巻回されて構成されるコンデンサと、コンデンサのP極とN極間を抵抗物質により連結した放電抵抗部を有する放電抵抗一体型コンデンサにおいて、絶縁部に抵抗膜14,24を形成したこと、を特徴とするので、通常絶縁部は、薄膜の一端面に全周に渡って形成されており、その部分に全周に渡って抵抗膜14,24を形成するので、巻取りの際にしわが発生するおそれがない。また、P極とN極の近くに(特に本実施形態では各メタリコン電極15,25に接するように)抵抗膜14,24が形成され、軸心方向の中心部付近に放電抵抗部が存在しないため、発生する熱がP極とN極(各メタリコン電極15,25)から放熱されて、抵抗膜14,24が高温になることがなく、コンデンサ10の性能が劣化するおそれがない。
また、各誘電体フィルム12,22に対して、電極蒸着膜13,23を塗布するときに、その直後に抵抗膜14,24を塗布すれば良いので、製造設備を全体として簡略化できる。
【0025】
なお、上記第1実施形態では、図2に示す製造方法の蒸着工程において、誘電体フィルム12,22に抵抗膜材料34を蒸着させることにより抵抗膜14,24を形成しているが、例えば図4に示すように印刷機(印刷用ロール)37を用いて抵抗膜材料34を誘電体フィルム12,22に印刷してもよい。あるいは、抵抗膜材料34を誘電体フィルム12,22に溶射してもよい。
【0026】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る放電抵抗一体型コンデンサ40について、図5を参照しながら説明する。図5は、第2実施形態に係る放電抵抗一体コンデンサを示す模式図である。図5における破線部分は、図1の場合と同様に、説明のために巻回された薄膜の一部をほどいたものであり、ほどき始めの部位Pから、薄膜の先端Qにかけて、図示するXY座標のうちY方向へ次第に拡大して示している。なお、第2実施形態の放電抵抗一体型コンデンサ40は、上記第1実施形態のものと基本的に同様の構成を有するため、同一部品については同符号を付して説明を適宜省略し、以下では相違点を中心に説明する。
【0027】
第2実施形態に係る放電抵抗一体型コンデンサ40は、N型薄膜41及びP型薄膜42における各抵抗膜43,44の形成位置において、上記第1実施形態のものと相違する。具体的には、図5に示すように、コンデンサ40のN型薄膜抵抗膜43は、N型薄膜誘電体フィルム12の幅方向(X方向)の一端側だけでなく、N型電極蒸着膜13の表面をも覆うように形成されている。また、コンデンサ40のP型薄膜抵抗膜44は、P型薄膜誘電体フィルム22の幅方向(X方向)の他端側だけでなく、P型電極蒸着膜23の表面をも覆うように形成されている。
【0028】
第2実施形態に係る放電抵抗一体型コンデンサ40によれば、蒸着工程において抵抗膜43,44を塗布するときに、電極蒸着膜13,23との境を厳密に位置合わせする必要がない。このため、塗布装置等の製造装置を簡略化でき、製造装置のコストダウンを図ることができる。
【0029】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態に係る放電抵抗一体型コンデンサ50について、図6及び図7を参照しながら説明する。図6は、第3〜第5実施形態に係る放電抵抗一体コンデンサの外観を示す斜視図である。図7は、第3実施形態に係る図6のA−A線における断面図である。なお、第3〜第5実施形態に係るコンデンサでは、外観が略同じであるため、図6を共通の外観を示すものとして併用している。
第3実施形態に係る放電抵抗一体型コンデンサ50は、中心軸51と、中心軸51に巻回されたコンデンサフィルム52と、コンデンサフィルム52の最終部(すなわち外周部)を覆う保護フィルム53と、保護フィルム53の外周を全周に渡って覆う放電抵抗膜54とを備えている。
【0030】
コンデンサフィルム52は、N型電極材料を蒸着した誘電体フィルムとP型電極材料を蒸着した誘電体フィルムとを重ね合わせて筒状に巻回したものであり、上記第1実施形態と同様の製造方法(抵抗膜の形成を除く)を用いて製造される。保護フィルム53は、コンデンサフィルム52に傷がつくのを防ぐ保護膜であり、コンデンサ50の性能が劣化するのを防止している。放電抵抗膜54は、保護フィルム53によりコンデンサフィルム52を覆った後に形成されており、コンデンサ50の各端面を形成するN型メタリコン電極15と、P型メタリコン電極25とを抵抗物質により連結している。なお、放電抵抗膜54の材質や厚みは、例えば第1実施形態のものと同様である。
【0031】
第3実施形態に係る放電抵抗一体型コンデンサ50によれば、放電抵抗膜54が外周付近にのみ全周に渡って形成されるため、巻取りの際にしわが発生するおそれがない。また、放電抵抗膜54で発生する熱が外周から外気に放熱されるため、放電抵抗膜54が高温になることがなく、コンデンサフィルム52の電極蒸着部を熱から適切に保護できるので、コンデンサ50の性能が劣化するおそれがない。
【0032】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態に係る放電抵抗一体型コンデンサ60について、図6及び図8を参照しながら説明する。図8は、第4実施形態に係る図6のA−A線における断面図である。なお、第4実施形態の放電抵抗一体型コンデンサ60は、第3実施形態のものと基本的に同様の構成を有するため、同一部品については同符号を付して説明を適宜省略し、以下では相違点を中心に説明する。
第4実施形態に係る放電抵抗一体型コンデンサ60は、中心軸51と、中心軸51に巻回されたコンデンサフィルム52と、コンデンサフィルム52の外周を全周に渡って覆う放電抵抗膜61と、放電抵抗膜61の外周を全周に渡って覆う保護フィルム62とを備えている。
このコンデンサ60では、コンデンサフィルム52の外周に放電抵抗膜61を形成した後、放電抵抗膜61の外周を保護フィルム62により覆っており、この点で第3実施形態のものと相違している。
【0033】
第4実施形態に係る放電抵抗一体型コンデンサ60によれば、抵抗膜61が形成された後に保護フィルム62が形成されているため、抵抗膜61を保護フィルム62により保護して抵抗膜61に傷がつくのを防止でき、安定した放電を行うことができる。
【0034】
[第5実施形態]
次に、本発明の第5実施形態に係る放電抵抗一体型コンデンサ70について、図6及び図9を参照しながら説明する。図9は、第5実施形態に係る図6のA−A線における断面図である。なお、第5実施形態の放電抵抗一体型コンデンサ70においても、上記実施形態のものと同一の部品については同符号を付して説明を適宜省略する。
第5実施形態に係る放電抵抗一体型コンデンサ70は、放電抵抗物質からなる中心軸71と、中心軸71の外周を全周に渡って覆う断熱材72と、断熱材72の上から中心軸71に巻回されたコンデンサフィルム52と、コンデンサフィルム52の外周を全面に渡って覆う保護フィルム53とを備えている。
【0035】
第5実施形態に係る放電抵抗一体型コンデンサ70によれば、コンデンサフィルム52を巻回する中心軸71が放電抵抗部として形成されているため、巻回するコンデンサフィルム52の途中に抵抗部材を挿入する必要がなく、巻取りの際にしわが発生するおそれがない。また、中心軸(放電抵抗部)71とコンデンサフィルム52との間に断熱材72を設けているため、中心軸71における発熱がコンデンサフィルム52に伝わらず、コンデンサ70の性能を劣化させるおそれがない。さらに、中心軸71に放電抵抗部を形成しているため、コンデンサフィルム52の途中に放電抵抗部を形成した場合に比べて、製造が容易となり、量産性の向上、コンデンサの小型化、低コスト化を実現することが可能となる。
【0036】
以上、本実施例に則して発明を説明したが、この発明は前記実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で構成の一部を適宜変更することにより実施することもできる。
【符号の説明】
【0037】
10…放電抵抗一体型コンデンサ(第1実施形態)
11…N型薄膜
12…N型薄膜誘電体フィルム
13…N型電極蒸着膜
14…N型薄膜抵抗膜
15…N型メタリコン電極
21…P型薄膜
22…P型薄膜誘電体フィルム
23…P型電極蒸着膜
24…P型薄膜抵抗膜
25…P型メタリコン電極
40…放電抵抗一体型コンデンサ(第2実施形態)
41…N型薄膜
42…P型薄膜
43…N型薄膜抵抗膜
44…P型薄膜抵抗膜
50…放電抵抗一体型コンデンサ(第3実施形態)
51…中心軸
52…コンデンサフィルム
53…保護フィルム
54…放電抵抗膜
60…放電抵抗一体型コンデンサ(第4実施形態)
61…放電抵抗膜
62…保護フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁部と電極蒸着部を備える薄膜が筒形状に巻回されて構成されるコンデンサと、前記コンデンサのP極とN極間を抵抗物質により連結した放電抵抗部を有する放電抵抗一体型コンデンサにおいて、
前記絶縁部に抵抗膜を形成したこと、
を特徴とする放電抵抗一体型コンデンサ。
【請求項2】
請求項1に記載する放電抵抗一体型コンデンサにおいて、
前記電極蒸着部の表面にも、前記抵抗膜が形成されていること、
を特徴とする放電抵抗一体型コンデンサ。
【請求項3】
絶縁部と電極蒸着部を備える薄膜が筒形状に巻回されて構成されるコンデンサと、前記コンデンサのP極とN極間を抵抗物質により連結した放電抵抗部を有する放電抵抗一体型コンデンサにおいて、
前記薄膜の巻回された最終部に、抵抗膜が形成されていること、
を特徴とする放電抵抗一体型コンデンサ。
【請求項4】
請求項3に記載する放電抵抗一体型コンデンサにおいて、
前記薄膜には、前記抵抗膜が形成された部分の後に保護膜が形成されていること、
を特徴とする放電抵抗一体型コンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−84783(P2012−84783A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−231387(P2010−231387)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】