説明

放電灯点灯装置、放電灯点灯装置の負荷電力調整方法、照明器具

【課題】ランプ電流や電圧が商用電源の周波数に同期して変動する場合でも、容易に定電力制御を行うことができる放電灯点灯装置を提供する。
【解決手段】設置環境によって周波数が異なる商用電源に接続する放電灯点灯装置であって、商用電源を整流する整流回路2と、整流回路2の出力電圧を所定の直流電圧に変換する昇圧チョッパ回路と、昇圧チョッパ回路からの電圧を交流に変換するインバータと、負荷を接続する端子と、インバータの動作を制御する制御手段18と、を備え、制御手段18は、負荷に印加する交流電圧の周波数を、商用電源の各周波数の公倍数となるように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電灯点灯装置、および放電灯点灯装置の負荷電力調整方法、並びにこれらを用いた照明器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、『HIDランプの点灯装置において低耐圧のスイッチング素子を使用可能とし、小型化を可能とする。』ことを目的とした技術として、『直流電源Eと、放電ランプLaの電力制御を行うダウンコンバータ1と、ダウンコンバータ1の出力を平滑する平滑用コンデンサCfと、ダウンコンバータ1の出力を矩形波電流に変換するフルブリッジインバータ2と、始動用の高電圧パルスを発生させるイグナイタIGと、フルブリッジインバータ2の出力にイグナイタIGを介して接続された放電ランプLaとを備え、点灯前の平滑用コンデンサCfの電圧Vcを平滑用コンデンサCfを含む放電ランプ系までの電圧が起動用の高電圧パルスを除き所定値以下に制限されるように制御する。』というものが提案されている(特許文献1)。
【0003】
また、降圧チョッパ(チョッパ回路10)とフルブリッジインバータ回路で構成され、ランプ電圧とランプ電流の検出電圧をいずれも直流電圧で検出できるようにしたものがある(特許文献2)。
【0004】
また、『少なくとも検出電圧値のばらつき及び検出電流値のばらつきの両方を簡単に補正でき、電力調整を能率よく行うことのできる放電ランプ点灯装置を提供する。』ことを目的とした技術として、『放電ランプ14のランプ電流及びランプ電圧に応じて定常時に放電ランプに供給される電力を定電力制御する電力制御手段11、18と、電力制御手段のアナログ回路部に直流定電圧を供給する電源手段19とを少なくとも備えている。この電源手段は、当該点灯装置の定常時における出力電力調整を行うための上述の直流定電圧の可変手段R7を有している』というものが提案されている(特許文献3)。
【0005】
【特許文献1】特開2003−187996号公報(要約)
【特許文献2】特開2003−178896号公報(図1)
【特許文献3】特開平7−135086号公報(要約)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載のダウンコンバータ1や、特許文献2に記載の降圧チョッパは、ランプ電力の調整を行うものである。これらの構成を用いない場合、交流電源周波数に同期してランプ電圧・電流が大きく変動する場合がある。この場合、ランプを定常時で定格出力となるようにする定電力制御が行いにくくなる。
【0007】
例えば特許文献2に記載の降圧チョッパとフルブリッジインバータ回路で構成された回路では、ランプ電圧とランプ電流の検出電圧はいずれも降圧チョッパ回路の出力電圧と同じ直流電圧となる。この直流電圧をさらに平滑化することで、制御回路では、ほぼフラットな直流電圧によりこれらの検出を行い、交流電源周波数の影響を受けずに電力制御を行うことができる。
しかし、これらの構成を用いない場合、上述のような直流電圧による検出ができないため、ランプ電圧とランプ電流の検出電圧は矩形波となり、これを平滑化した場合でも、交流電源周波数の影響をうけて、ランプ電圧とランプ電流の検出電圧が変動してしまう。
【0008】
また、特許文献3に記載の技術では、電力調整を行うための可変抵抗を設けているが、調整のための手間を要する。
【0009】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、ランプ電流や電圧が交流電源の周波数に同期して変動する場合でも、容易に定電力制御を行うことができる放電灯点灯装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る放電灯点灯装置は、設置環境によって周波数が異なる商用電源に接続する放電灯点灯装置であって、前記商用電源を整流する整流回路と、前記整流回路の出力電圧を所定の直流電圧に変換する昇圧チョッパ回路と、前記昇圧チョッパ回路からの電圧を交流に変換するインバータと、負荷を接続する端子と、前記インバータの動作を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記負荷に印加する交流電圧の周波数を、前記商用電源の各周波数の公倍数となるように制御するものである。
【0011】
また、直流電源回路からの出力を交流に変換するインバータと、負荷を接続する端子と、前記インバータの動作を制御する制御手段と、データを格納保持する記憶手段と、前記負荷に流れる電流を検出する電流検出手段と、を備え、前記記憶手段は、前記電流検出手段が検出した電流値に乗算する値を格納しており、前記制御手段は、前記負荷に供給される交流電力の定電力制御を行う際には、前記記憶手段が格納している値を、前記電流検出手段が検出した電流値に乗算し、その乗算結果を用いて定電力制御を行うものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る放電灯点灯装置によれば、放電灯に供給する電力の安定した定電力制御を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る放電灯点灯装置とその周辺構成を示す図である。
図1において、交流電源1から供給される交流電流は、整流回路2で直流電流に整流され、平滑コンデンサ3で平滑化される。
整流回路2が出力する直流電圧は、コイル4、ダイオード5、FET(Field Effect Transistor)6からなる昇圧チョッパ回路によって電圧値を変換されて出力される。
FET7、8、及びコンデンサ9、10は、ハーフブリッジインバータ回路を構成し、チョッパ回路が出力する直流電圧を交流電圧に変換して、放電灯14などの負荷に交流電力を供給する。
【0014】
コイル13と始動回路15は、放電灯14に瞬間的に高い電圧を印加するイグナイタの役割を果たす。放電灯14は、図示しない負荷端子に接続され、取り外しが可能となっている。
【0015】
電流検出回路16は、放電灯14に流れる電流を検出して、制御回路に検出値を出力する。電圧検出回路17は、放電灯14に印加される電圧を検出して、制御回路に検出値を出力する。
制御回路18は、FET7、8の動作を制御するとともに、放電灯14の定電力制御を行う。なお、制御回路18は、図示しないメモリ等の記憶装置を備えている。
【0016】
なお、本実施の形態1における「直流電源回路」は、交流電源1、整流回路2、平滑コンデンサ3がこれに相当する。「直流電源回路」の構成は、この構成に限られるものではない。
【0017】
制御回路18は、マイコン、DSP(Digital Signal Processor)等の演算装置で構成される。また、動作を指示するプログラムを格納した記憶装置を適宜備えるものとする。
【0018】
次に、放電灯14の定電力制御について説明する。
放電灯点灯装置は、定常時の出力電力が定格値となるよう、コイル等の部品の特性バラツキに起因する出力電力のバラツキを調整して出荷される。これにより、放電灯14の定常動作時は、出力電力が定格値となるように、制御回路18によってFET7、8の動作が制御される。
【0019】
ただし、図1のような構成の場合、交流電源1の周波数に同期して、放電灯14に流れる電流や印加電圧が変動する。そこで、定電力制御は、ある一定期間における電圧や電流の平均値が定格値となるように行われる。ある一定期間とは、交流電源1の1周期の定数倍に相当する時間である。
しかし、商用の交流電源は、地理的な場所によって周波数が異なる。例えば日本国内では、50Hzと60Hzの2種類の周波数が存在する。周波数が異なれば、1周期に相当する時間も当然に異なる。
したがって、50Hzまたは60Hzのいずれか一方の1周期を基準として平均値を求めると、もう一方の周波数における動作で求めた平均値とは異なる値が算出されてしまうという不都合がある。
【0020】
こうした交流電源1の周波数の違いに起因する不都合を回避するための手法について、次の図2で説明する。
【0021】
図2は、交流電源1の周波数が異なるそれぞれの場合における電圧等の波形を示すものである。図2(a)は周波数=50Hz、(b)は周波数=60Hzの場合である。
放電灯14の定電力制御は、ある一定期間における電圧や電流の平均を求め、その平均値を定格値とするように行われる。ここでは、図2における0.00s〜0.05sの期間の平均値を求めることとして、以下の説明を行う。
【0022】
図2における0.00s〜0.05sの期間における放電灯14の出力電力は、この期間に放電灯14に印加される交流電圧の周波数に依拠して定まる。図2では、放電灯14に印加される交流電圧の周波数を、(a)(b)それぞれの場合における交流電源1の周波数の公倍数をとって、300Hzとする。
【0023】
図2(a)の場合、0.00s〜0.05sの期間は、交流電源1の2.5周期に相当し、放電灯14に印加される交流電圧の15周期に相当する。
図2(b)の場合、0.00s〜0.05sの期間は、交流電源1の3周期に相当し、放電灯14に印加される交流電圧の15周期に相当する。
即ち、0.05sの時点において、放電灯14に印加される交流電圧は、図2(a)(b)いずれの場合でも15周期分に相当している。この時点で放電灯14の電流や電圧の平均値を求めると、両者は一致する。
したがって、0.05s単位で放電灯14の電流や電圧の平均値を求めて定電力制御を行うことにより、交流電源1の周波数が異なっていても、同じ基準で定電力制御を行うことができるため、交流電源1の周波数に合わせて異なる処理を実装する必要がない。
【0024】
このように、交流電源1の周波数によらず同じ基準で定電力制御を行うことができるのは、放電灯14に印加される交流電圧の周波数を、交流電源1の周波数の公倍数としていることによる。
【0025】
即ち、図1の構成の下で、制御回路18は、放電灯14に印加される交流電圧の周波数を、交流電源1の周波数の公倍数となるようにFET7、8を駆動制御するので、交流電源1の周波数が設置環境によって異なっていても、容易に定電力制御を行うことができるのである。
【0026】
なお、本実施の形態1において、FETを用いることを図1で説明したが、これに限られるものではなく、任意のスイッチング素子を用いることができる。以下の実施の形態においても同様である。
【0027】
また、交流電源1の周波数(50Hz、60Hz)をどのように取得するかについては、これらの数値が既知である場合には、制御回路18が備えるメモリ等の記憶装置にその数値を格納しておけばよい。また、整流回路2の前に、周波数検出回路を設けてもよい。
メモリ等の記憶装置は、制御回路18自体が備えていてもよいし、別途設けて制御回路18と接続するように構成してもよい。
【0028】
実施の形態2.
実施の形態1では、放電灯14に印加される交流電圧の周波数を、交流電源1の周波数の公倍数とすることを説明した。本実施の形態2では、その前提の下、いずれの時点を基準に放電灯14の電流や電圧の平均値を求めるかについて説明する。
【0029】
実施の形態1では、図2における0.05sの時点で、図2(a)(b)ともに、放電灯14に印加される交流電圧が15周期分となり、この時点で放電灯14の電流や電圧の平均値を求めると、両者は一致することを説明した。
この(a)(b)が一致する時点、即ち図2の場合における0.05sの時点を求める手順について、次の図3を用いて説明する。
【0030】
図3は、交流電源1の周波数が異なる場合において、放電灯14の電流や電圧の平均値が一致する時点を求める手順を説明するものである。なお、各波形は図2と同じものを用いている。
【0031】
(1)まず、図3(a)(b)双方で、交流電源1の1周期に相当する時間を求める。
図3(a)の場合は、周波数=50Hzであるので、1周期=1/50s=6/300sである。
図3(b)の場合は、周波数=60Hzであるので、1周期=1/60s=5/300sである。
【0032】
(2)次に、ステップ(1)で求めた1周期に相当する時間の公倍数を求める。ここでは30/300sとなる。
(3)次に、ステップ(2)で求めた公倍数を2分の1にする。ここでは15/300sとなる。
【0033】
(4)ステップ(3)で得られた15/300sの時点が、実施の形態1における0.05sの時点に相当する。
【0034】
以上のステップ(1)〜(4)のような手順で、放電灯14の電流や電圧の平均値が一致する時点を求めることができる。なお、交流の周期性により、30/300s、45/300s、60/300s、といった時点で平均値を求めても、同様に一致することは当然である。
【0035】
以上のように、交流電源1の1周期に相当する時間の公倍数を求め、その2分の1に相当する期間で、放電灯14の電流や電圧の平均値を求め、その平均値を用いて定電力制御を行うことにより、交流電源1の周波数が設置環境によって異なっていても、容易に定電力制御を行うことができるのである。
【0036】
なお、定電力制御を行うに際し、放電灯14に流れる電流や印加電圧を取得する場合には、電流検出回路16や電圧検出回路17を用いて各値を取得すればよい。
即ち、上述のステップ(1)〜(4)で求めた期間内において、制御回路18は、電流検出回路16や電圧検出回路17を用いて各値を取得し、同期間内におけるその平均値を求めることができる。
【0037】
実施の形態3.
実施の形態1〜2では、ある一定期間における放電灯14の電流や電圧の平均値を求め、その平均値を用いて定電力制御を行うことを説明した。
一方、放電灯14の異常検出に際しては、平均値ではなく瞬時値を用いる。これは、平均値を用いて異常検出を行うと、放電灯14の電流や電圧が定常的に異常状態となっていなければ、異常であることを検出しないことによる。
したがって、制御回路18は、放電灯14の定電力制御に関しては電流や電圧の平均値を用い、異常検出に関しては瞬時値を用いる。
【0038】
実施の形態4.
実施の形態1〜3では、一定期間における放電灯14の電流や電圧の平均値を用いて定電力制御を行うことを説明した。
本実施の形態4では、コイル等の部品の特性バラツキに起因する出力電力のバラツキを容易に補正することのできる手法について説明する。なお、放電灯点灯装置とその周辺構成は図1と同様であるため、説明を省略する。
【0039】
本実施の形態4では、以下のステップ(1)〜(4)のような手法で、放電灯14の出力電力を調整する。以下、各ステップについて説明する。
【0040】
(1)放電灯点灯装置の出荷前の段階で、放電灯14を端子から取り外し、代わりに定電流負荷を接続し、負荷電流を一定にする。例えば70Wインバータの場合、放電灯14点灯時の定格電流0.8Aを負荷電流とする。
この定電流負荷の定格電流値は、所定の入力端子より入力する、もしくはメモリ等の記憶装置に格納しておく、などの方法で、あらかじめ制御回路18に与えておく。
【0041】
(2)制御回路18に所定の電気信号を与えて、今から電力調整を行うことを制御回路18に伝える。制御回路18は、その電気信号を受けて、以下に説明するような電力調整を実行するモードに移行する。
ここでいう電気信号とは、例えば制御回路18が備える端子に所定の直流電圧を印加することなどをいう。
【0042】
(3)制御回路18は、FET7、8を駆動制御し、定電流負荷に電流を流す。次に、制御回路18は、電流検出回路16より負荷電流値を取得する。
このとき、部品特性のバラツキ等により、定電流負荷の定格電流値と、電流検出回路に16より検出される電流値とに、差異が生じる。ここでは、定格電流値が0.8Aであるのに対し、検出値は0.9Aであるものとする。
【0043】
(4)制御回路18は、上記ステップ(3)で検出された検出値と定格電流値との比を求める。ここでは、0.8A÷0.9A≒0.889となる。
制御回路18は、求めた値を補正係数として、メモリ等の記憶装置に格納する。
【0044】
以上のステップ(1)〜(4)のような手法で、電力調整が完了した。放電灯点灯装置を出荷する際は、定電流負荷を取り外す。
放電灯14を点灯して定電力制御を行う際は、上記ステップ(4)で求めた補正係数を用いて、以下のステップ(5)のような動作を行う。
【0045】
(5)制御回路18は、放電灯14の定電力制御を行う際に、放電灯14の電流値を電流検出回路16より取得し、放電灯14の出力電力を求める。このとき、電流検出回路16より取得する検出値には、部品特性のバラツキ等によるズレが生じている。
そこで、制御回路18は、先のステップ(4)で記憶装置に格納した補正係数を読み込み、その値を検出値に乗算して、乗算後の値を用いて出力電力を求める。
例えば、検出値が0.9Aである場合、電力演算に用いる電流値は、0.9A×0.889=0.8Aとなる。
これにより、部品特性のバラツキによらず、正確な電力演算が可能となり、定電力制御の精度が向上する。
【0046】
以上のように、本実施の形態4によれば、定電流負荷を接続して取得した負荷電流値を用いて補正係数を求め、その補正係数を用いて定電力制御を行うので、部品特性のバラツキによらず、正確な電力演算が可能である。
また、特許文献1に記載のように、可変抵抗を調整することにより電力調整を行う必要がなく、簡易な手順で調整が可能である。
【0047】
実施の形態5.
実施の形態4では、放電灯点灯装置の出荷前に電力調整を行い、補正係数を記憶装置に格納しておいて、放電灯14の定電力制御を行う際には、その補正係数を用いて正確な電力演算を行う手法を説明した。
本実施の形態5では、放電灯点灯装置の出荷後の任意の時点で電力調整を行うことのできる構成について説明する。
【0048】
図4は、本実施の形態5に係る放電灯点灯装置とその周辺構成を示す図である。
図4において、放電灯14を接続する端子と並列に定電流負荷20を接続し、放電灯14と定電流負荷20のいずれに電力を供給するかを切り替えるためのスイッチ19を新たに設けた。このスイッチ19は、制御回路18の指示により切替動作を行う。
その他の構成は図1と同様であるため、説明を省略する。
【0049】
次に、図4の構成の動作について説明する。なお、放電灯点灯装置の出荷前に電力調整を行うか否かは、いずれでもよい。
【0050】
(1)制御回路18に所定の電気信号を与えて、今から電力調整を行うことを制御回路18に伝える。制御回路18は、その電気信号を受けて、以下に説明するような電力調整を実行するモードに移行する。
このとき、制御回路18は、スイッチ19を定電流負荷20の側に切り替えておく。
【0051】
(2)実施の形態4で説明したステップ(3)〜(4)のような手法により、補正係数を求め、記憶装置に格納する。既に格納されている補正係数がある場合は、最新の値で上書きする。
放電灯14を点灯して定電力制御を行う際は、上記ステップ(4)で求めた補正係数を用いて、以下のステップ(3)のような動作を行う。
【0052】
(3)制御回路18は、放電灯14の定電力制御を行う際には、スイッチ19を放電灯14の側に切り替えるとともに、実施の形態4のステップ(5)で説明したような手法により、補正係数を用いた定電力制御を行う。
【0053】
以上、本実施の形態5で説明したような構成と手法によれば、放電灯点灯装置の出荷後の任意の時点で、放電灯14の電力調整を行うことができる。
例えば、部品の経年劣化や使用環境の変化等によって出力電力の特性が変化した場合でも、即座かつ容易な手順で電力調整が可能であるので、常時正確な定電力制御を行うことができる。
【0054】
実施の形態6.
以上の実施の形態1〜5において、放電灯14の寿命などにより、半波放電現象(放電灯に流れる電流が正負非対称となる現象)が発生し、上側のコンデンサ9と下側のコンデンサ10の電圧が不均衡となり、各素子の許容電圧を超えた電圧が印加されて素子が破壊される場合がある。
本発明の実施の形態6では、このような電圧不均衡が生じる場合に、ハーフブリッジインバータ回路のFET7〜8、およびコンデンサ9〜10を保護することのできる構成と制御動作について説明する。
【0055】
図5は、本実施の形態6に係る放電灯点灯装置とその周辺構成を示す図である。
本実施の形態6に係る放電灯点灯装置は、昇圧チョッパ回路の出力電圧を検出する直流出力電圧検出回路21と、下側のコンデンサ10の電圧を検出するコンデンサ電圧検出回路22とを備えている。直流出力電圧検出回路21とコンデンサ電圧検出回路22は、それぞれ制御回路18に検出値を出力する。
その他の構成は実施の形態1で説明した図1と同様であるため、説明を省略する。
なお、図1の構成において、昇圧チョッパ回路の出力電圧を制御するために直流出力電圧検出回路を既に備えている場合には、これを直流出力電圧検出回路21として用いてもよい。
【0056】
以上、本実施の形態6に係る放電灯点灯装置の構成について説明した。
次に、本実施の形態6に係る放電灯点灯装置の動作について説明する。
制御回路18は、放電灯の点灯を開始する際、例えば以下のステップ(1)〜(3)のような動作を行う。
【0057】
(1)制御回路18は、点灯動作開始時の所定期間(以下、第1期間と呼ぶ)は、上側のスイッチング素子であるFET7を高周波でオン・オフ動作し、下側のスイッチング素子であるFET8はオフにしておく。
(2)次に、制御回路18は、第1期間が終了した後の所定期間(以下、第2期間と呼ぶ)、下側のスイッチング素子であるFET8を高周波でオン・オフ動作し、上側のスイッチング素子であるFET7はオフにしておく。
(3)制御回路18は、以後上記(1)〜(2)の動作を、低周波で交互に切り替える。また、始動回路15を用いて高電圧の始動パルスをその低周波の半周期毎に1回以上発生させる。
【0058】
上記ステップ(1)の第1期間においてのみ放電灯14へ電流が流れた場合、上側のコンデンサ9に印加される電圧は低くなり、下側のコンデンサ10に印加される電圧は高くなる。
この状態の下で、上記ステップ(2)の第2期間において放電灯14へ電流が流れると、下側のコンデンサ10の電圧が高い状態でさらに電流が流れることになり、下側のスイッチング素子8が過電流または過電圧により破壊される可能性がある。
また、例えば上記ステップ(1)の第1期間においてのみ放電灯14へ電流が流れる状態が継続した場合、下側のコンデンサ10に印加される電圧がコンデンサ10の許容電圧を超えてしまい、コンデンサ10が破壊される可能性がある。
【0059】
上述のようなコンデンサやFETの破壊を防止するために、本実施の形態6に係る放電灯点灯装置では、直流出力電圧検出回路21とコンデンサ電圧検出回路22を備え、制御回路18がその検出値を監視し、各素子を過電流または過電圧から保護することとした。以下、その保護動作について説明する。
【0060】
(1)コンデンサ10の保護
制御回路18は、コンデンサ電圧検出回路22の検出値を監視し、検出結果が下側のコンデンサ10の許容電圧を超えた際には、放電灯14の点灯動作を停止する。
【0061】
(2)コンデンサ9の保護
図5の構成では、コンデンサ9に印加される電圧を直接検出する回路等は備えていないが、直流出力電圧検出回路21の検出結果からコンデンサ電圧検出回路22の検出結果を減算することで、コンデンサ9に印加される電圧を検出することと等価な動作を行うことができる。
制御回路18は、直流出力電圧検出回路21とコンデンサ電圧検出回路22の検出値を監視し、上記の減算結果が上側のコンデンサ9の許容電圧を超えた際には、放電灯14の点灯動作を停止する。
【0062】
上記(1)〜(2)は、直接的にはコンデンサ9〜10を過電圧から保護するためのものであるが、その結果として回路の電圧や電流の状態が安定し、もってスイッチング素子を過電流から保護する効果を発揮することもできる。
【0063】
制御回路18が上記(1)〜(2)のような保護動作を行った後に、上側のコンデンサ9と下側のコンデンサ10の電圧不均衡が改善された場合は、制御回路18は放電灯14の点灯動作を再開するようにしてもよい。
【0064】
また、上記(1)〜(2)のような保護動作の結果による放電灯14の点灯動作の停止と、その後に上側のコンデンサ9と下側のコンデンサ10の電圧不均衡が改善されたことによる点灯動作の再開が、所定回数繰り返された場合には、回路状態が不安定であるものとして、以後制御回路18は点灯動作の再開を実施しないようにしてもよい。
【0065】
本実施の形態6に係る放電灯点灯装置では、直流出力電圧検出回路21とコンデンサ電圧検出回路22を備え、その検出値を監視することを説明したが、実施の形態5の図4の構成において直流出力電圧検出回路21とコンデンサ電圧検出回路22を備えておき、同様に検出値を監視して各素子を保護する動作を行うように構成してもよい。
【0066】
なお、本実施の形態6における「コンデンサ電圧検出手段」は、コンデンサ9〜10に印加される電圧を検出する回路がこれに相当する。
即ち、コンデンサ10に印加される電圧の検出に関しては、コンデンサ電圧検出回路22がこれに相当し、コンデンサ9に印加される電圧の検出に関しては、直流出力電圧検出回路21とコンデンサ電圧検出回路22がこれに相当する。
これらは、図5の回路構成の下で成り立つものであり、回路構成が異なれば、コンデンサ電圧検出手段の構成も必要に応じて適宜適切なものに変更する。
【0067】
以上のように、本実施の形態6で説明したような構成と手法によれば、上側のコンデンサ9と下側のコンデンサ10の電圧が不均衡となった場合に、ハーフブリッジインバータ回路のFET7、8ならびにコンデンサ9、10を過電流や過電圧から保護することができる。
【0068】
なお、コンデンサ9、10の電圧不均衡が発生した場合は、スイッチング素子7、8の高周波オン・オフ期間(低周波の期間も含む)を変更することで、コンデンサ9、10の電圧不均衡を改善してもよい。さらには、上述の点灯動作を停止する手法と組み合わせて用いてもよい。
【0069】
放電灯14の点灯時やコンデンサ9、10の寿命により、コンデンサ9、10の電圧不均衡が発生した場合においても、本実施の形態6で説明した手法は有効である。
【0070】
以上説明した実施の形態1〜6は、任意に組み合わせて用いることができることを付言しておく。
また、定電力制御を行う際のFET7、8の駆動制御は、適宜周知の手法等を用いて行うことができる。
【0071】
実施の形態7.
以上の実施の形態1〜6で説明した放電灯点灯装置を照明器具に組み込むことで、照明器具の定電力制御等を効果的に行うことのできる照明器具が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】実施の形態1に係る放電灯点灯装置とその周辺構成を示す図である。
【図2】交流電源1の周波数が異なるそれぞれの場合における電圧等の波形を示すものである。
【図3】交流電源1の周波数が異なる場合において、放電灯14の電流や電圧の平均値が一致する時点を求める手順を説明するものである。
【図4】実施の形態5に係る放電灯点灯装置とその周辺構成を示す図である。
【図5】実施の形態6に係る放電灯点灯装置とその周辺構成を示す図である。
【符号の説明】
【0073】
1 交流電源、2 整流回路、3 平滑コンデンサ、4 コイル、5 ダイオード、6〜8 FET、9〜10 コンデンサ、13 コイル、14 放電灯、15 始動回路、16 電流検出回路、17 電圧検出回路、18 制御回路、19 スイッチ、20 定電流負荷、21 直流出力電圧検出回路、22 コンデンサ電圧検出回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置環境によって周波数が異なる商用電源に接続する放電灯点灯装置であって、
前記商用電源を整流する整流回路と、
前記整流回路の出力電圧を所定の直流電圧に変換する昇圧チョッパ回路と、
前記昇圧チョッパ回路からの電圧を交流に変換するインバータと、
負荷を接続する端子と、
前記インバータの動作を制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、
前記負荷に印加する交流電圧の周波数を、
前記商用電源の各周波数の公倍数となるように制御する
ことを特徴とする放電灯点灯装置。
【請求項2】
前記負荷に印加される電圧を検出する電圧検出手段を備え、
前記制御手段は、
前記負荷に供給される交流電力の定電力制御を行う際には、
前記商用電源の各異なる周波数における1周期に相当する時間の公倍数をとり、
その公倍数に相当する時間の2分の1の時間内に前記負荷に印加される電圧値を前記電圧検出手段により取得して同時間内における平均値を求め、
その平均値を用いて前記負荷に供給される交流電力の定電力制御を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の放電灯点灯装置。
【請求項3】
前記負荷に流れる電流を検出する電流検出手段を備え、
前記制御手段は、
前記負荷に供給される交流電力の定電力制御を行う際には、
前記商用電源の各異なる周波数における1周期に相当する時間の公倍数をとり、
その公倍数に相当する時間の2分の1の時間内に前記負荷に流れる電流値を前記電流検出手段により取得して同時間内における平均値を求め、
その平均値を用いて前記負荷に供給される交流電力の定電力制御を行う
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の放電灯点灯装置。
【請求項4】
前記制御手段は、
前記負荷に供給される交流電力の定電力制御を行う際には前記電圧値の平均値を用い、
前記負荷の異常検出を行う際には前記電圧値の瞬時値を用いる
ことを特徴とする請求項2に記載の放電灯点灯装置。
【請求項5】
前記制御手段は、
前記負荷に供給される交流電力の定電力制御を行う際には前記電流値の平均値を用い、
前記負荷の異常検出を行う際には前記電流値の瞬時値を用いる
ことを特徴とする請求項3に記載の放電灯点灯装置。
【請求項6】
直流電源回路からの出力を交流に変換するインバータと、
負荷を接続する端子と、
前記インバータの動作を制御する制御手段と、
データを格納保持する記憶手段と、
前記負荷に流れる電流を検出する電流検出手段と、
を備える放電灯点灯装置の負荷電力調整を行う方法であって、
前記端子に定電流負荷を接続し、
その定電流負荷の定格電流と、前記電流検出手段が検出した電流値との比を求め、
その比の値を前記記憶手段に格納しておき、
前記負荷に供給される交流電力の定電力制御を行う際には、
前記記憶手段に格納した比の値を、前記電流検出手段が検出した電流値に乗算し、
その乗算結果を用いて定電力制御を行う
ことを特徴とする放電灯点灯装置の負荷電力調整方法。
【請求項7】
直流電源回路からの出力を交流に変換するインバータと、
負荷を接続する端子と、
前記インバータの動作を制御する制御手段と、
データを格納保持する記憶手段と、
前記負荷に流れる電流を検出する電流検出手段と、
を備え、
前記記憶手段は、
前記電流検出手段が検出した電流値に乗算する値を格納しており、
前記制御手段は、
前記負荷に供給される交流電力の定電力制御を行う際には、
前記記憶手段が格納している値を、前記電流検出手段が検出した電流値に乗算し、
その乗算結果を用いて定電力制御を行う
ことを特徴とする放電灯点灯装置。
【請求項8】
前記制御手段は、
所定の電気信号を受け取った際には、
前記端子に接続された負荷の定格電流と、前記電流検出手段が検出した電流値との比を求め、その比の値を前記記憶手段に格納する
ことを特徴とする請求項7に記載の放電灯点灯装置。
【請求項9】
前記端子と並列に接続された第2端子と、
前記端子と前記第2端子のいずれを使用するかを切り替えるスイッチと、
を備え、
前記制御手段は、
前記スイッチの切替動作を制御し、
前記第2端子を使用する際には、
前記第2端子に接続された負荷の定格電流と、前記電流検出手段が検出した電流値との比を求め、その比の値を前記記憶手段に格納し、
前記端子を使用する際には、
前記記憶手段が格納している値を、前記電流検出手段が検出した電流値に乗算し、その乗算結果を用いて前記負荷の定電力制御を行う
ことを特徴とする請求項7または請求項8に記載の放電灯点灯装置。
【請求項10】
放電灯を点灯する装置であって、
直流電圧を供給する直流電源回路と、
前記直流電源回路の出力を交流に変換するインバータと、
負荷を接続する端子と、
前記インバータの動作を制御する制御手段と、
前記端子と接続されたコンデンサと、
前記コンデンサに印加される電圧を検出するコンデンサ電圧検出手段と、
を備え、
前記制御手段は、
前記コンデンサ電圧検出手段の検出結果が前記コンデンサの許容電圧を超えた際は、
前記放電灯を点灯させる動作を停止する
ことを特徴とする放電灯点灯装置。
【請求項11】
前記制御手段は、
前記コンデンサ電圧検出手段の検出結果が前記コンデンサの許容電圧を超えた後に、
その検出結果が前記コンデンサの許容電圧以下となった場合は、
前記放電灯を点灯させる動作を再開する
ことを特徴とする請求項10に記載の放電灯点灯装置。
【請求項12】
前記制御手段は、
前記放電灯を点灯させる動作を再開する動作を所定回数行った後は、
前記コンデンサ電圧検出手段の検出結果が前記コンデンサの許容電圧を超え、
その後にその検出結果が前記コンデンサの許容電圧以下となった場合でも、
前記放電灯を点灯させる動作を再開しない
ことを特徴とする請求項11に記載の放電灯点灯装置。
【請求項13】
放電灯を点灯する装置であって、
直流電圧を供給する直流電源回路と、
スイッチング素子を有し前記直流電源回路の出力を交流に変換するインバータと、
負荷を接続する端子と、
前記スイッチング素子の動作を制御する制御手段と、
前記端子と接続されたコンデンサと、
前記コンデンサに印加される電圧を検出するコンデンサ電圧検出手段と、
を備え、
前記制御手段は、
前記コンデンサ電圧検出手段の検出結果が前記コンデンサの許容電圧を超えた際は、
前記スイッチング素子のオン・オフタイミングを変更することで、前記コンデンサに印加される電圧が前記コンデンサの許容電圧以下になるように制御する
ことを特徴とする放電灯点灯装置。
【請求項14】
請求項1ないし請求項5、または請求項7ないし請求項13のいずれかに記載の放電灯点灯装置を備えることを特徴とする照明器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−48993(P2009−48993A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−56221(P2008−56221)
【出願日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(591015625)オスラム・メルコ株式会社 (123)
【Fターム(参考)】