説明

断熱性インモールド成形容器

【課題】インモールドラベル成形容器において、複雑な構造を採ることなく十分な断熱効果を有し、高温のコーヒーなどを内容物とする容器を直に手で持つことが可能な断熱性インモールド成形容器を提供する。
【解決手段】 プラスチック容器の外表面に形成するインモールトラベル4は、印刷層1,ホールシート層2および接着層3で構成されている。ホールシート層2は多数の貫通孔を有している。インジェクション成形などによって容器の表面に接着層3が熱融着する。ホールシート層2の多数の貫通孔によって高温の内容物の熱は断熱される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インモールドラベルを容器の外表面に融着してなる飲料用などに用いられるプラスチック成形容器に関する。
【背景技術】
【0002】
冬場の季節、「手軽に温かいコーヒーなどが飲みたい。」と思った場合、多くの人々が自動販売機もしくは、コンビニエンスストアやスーパーマーケットに設置してあるホットストッカーで温められ保温されているコーヒーなどを購入して飲むことが多い。
このような場合、缶飲料は温めたものを飲むと「なにか鉄臭さがある。」などの声を聞くことが良くある。ましてや、缶は熱伝導性が高いため、中身を熱く温めると消費者が購入した際、熱すぎて持てない。その為、本格的な温かい飲み物を満喫することができない。
【0003】
昨今、缶飲料等でも発泡性包装材を外周に取り付けて対処し始めているのを良く見かける。このようにしても中身の味わい自体の問題は解決しないのが現状である。
例えば、コーヒーを例にとると、缶よりプラスチックカップの製品の方が断然美味しく味わうことができる。
この製品を高温で温ため、なおかつ、消費者が製品を購入して手にした際に、熱くなくハンドリングでき本格的な味わいを満喫できることが望まれる。
【0004】
このようなことから缶やプラスチック容器の断熱を行うものや持ち易くする構造の容器が種々提案されている(特許文献1,2)。
特許文献1は、筒状の内周壁で形成された収容部と、容器の側壁となる筒状の外周壁の間にリブ状突起を形成し内周壁と外周壁の間に間隙を設けたものであり、リブによって熱湯などの高温内容物を入れた時でも、手で持ちやすくしたものである。しかしながら、外周壁の外面に一体的に形成れさるラベル自体には断熱作用は有せず、断熱のための構造として比較的複雑で厚さを要するものである。
【0005】
また、特許文献2は表面フィルムと基材フィルムとが積層されたインモールドラベルについて、表面フィルムに貫通孔を設け、表面フィルムの外面に貫通孔の周縁に沿って肉盛り部を形成したものである。しかしながら、この提案の貫通孔は基材フィルムではなく表面フィルムに設けられ、表面フィルム外面の滑り止めを肉盛り部とともに実現し持ちやすくするためのものである。したがって高温の内容物の熱伝導を阻止して容器の外表面の温度上昇を抑えるために設けられた孔ではない。
【特許文献1】特開2000−335543号公報
【特許文献2】特開2005−132067号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記状況に鑑みたもので、インモールドラベル成形容器において、複雑な構造を採ることなく十分な断熱効果を有し、高温のコーヒーなどを内容物とする容器を直に手で持つことができる断熱性インモールド成形容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために本発明の請求項1は、インモールドラベルを容器の外表面層に熱融着して構成されるインモールド成形容器において、前記インモールドラベルをプラスチック材の印刷層,基板層および接着層の多層構造にして前記基板層に多数の貫通孔を設けることにより、該基板層の熱伝導性を小さくし前記容器内流動体から前記インモールドラベルへの熱伝導を抑制することを特徴とする。
本発明の請求項2は請求項1記載の発明において前記インモールドラベルの厚さは50μm〜150μmであり、前記印刷層,基板層および接着層はそれぞれ略1/3の厚さであることを特徴とする。
本発明の請求項3は請求項1または2記載の発明において前記インモールドラベルのプラスチック材はポリエチレン,ポリプロピレンまたはポリスチレンであることを特徴とする。
本発明の請求項4は、請求項1,2または3記載の発明において前記インモールド成形はインジェクション成形またはブロー成形で容器を形成することを特徴とする。
本発明の請求項5は、請求項1,2,3または4記載の発明において前記容器は、有底円筒形状であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
上記構成によれば製品化が困難であるとされた、断熱性機能を付加したインモールド成形容器を実現でき、今後、主に飲食産業にて幅広く使用されていくことが期待できる。また、容器自体に断熱機能を持たせることから、消費者側での二次利用を期待でき、廃棄物の発生を抑制し環境維持に貢献できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態をさらに詳しく説明する。
図1は、本発明による断熱性インモールド成形容器に用いるインモールドラベルの構成を示す斜視図、図2は断面図である。
インモールドラベル構造としては、多層構造が用いられる。
基板層として多数の貫通孔2aを設けたホールシート層2を有し、容器の外表面となる絵,文字,模様などの印刷層1が形成されている。さらにホールシート層2の下面には接着層3が形成されている。
インモールドラベル4の各層はポリエチレン,ポリプロピレン,ポリスチレンなど用途に合わせたフィルム材料が用いられ、例えば、ホールシート層2に印刷層1を接着する方法としてラミネートによって行うことができる。
【0010】
貫通孔2aには断熱に一番効果がある空気の層を入れ断熱性の機能を持たせている。貫通孔2aの大きさ及び形状は自在に変更することができる。例えば、貫通孔2aの断面が楕円形状や矩形形状であり、さらには幾何学的形状とすることもできる。孔自体の大きさも断熱性能に対応させて大きくしたり、小さくしたりすることができる。このことにより目的とした容器の用途により断熱効果の程度を容易に変更することも可能である。
容器成形については、インジェクション成形やブロー成形を用い、一般で使用している成形用金型をそのまま何も変更することなく適用することが可能である。
【0011】
インモールドラベルの厚さは、例えば、印刷層1は35μm,ホールシート層2は38μm,接着層3は35μmとしてトータルで約108μmである。実際には使用用途によって50μm〜150μm程度の範囲の厚さのものが使用される。なお、必要に応じてさらに厚い寸法や薄い寸法のものを用いることもできる。
【0012】
図3は容器に用いられる基板層であるホールシート層の外形の一例である。
容器がコップ形状である場合には、外周面を全て印刷層で覆うために、僅かに扇型形状になっている。このように多数の貫通孔2aをホールシート層全面に形成することにより容器周辺のいずれでも内容物の熱が伝導することなく把持することができる。
【0013】
図4は、プラスチック容器のインジェクション成形の方法を説明するための図である。外型5の内側に、ホールシート層に多数の貫通孔2aを有するインモールドラベル4を添付配置する。内型6を挿通するとインモールドラベル4と内型6の外面の間に空胴8aが形成される。外型5の湯口7よりプラスチック材を注入することにより、空胴8aにプラスチックが充填され、接着層3の熱融着により充填されたプラスチック材の表面にインモールドラベル4が接着する。
冷却して外型5および内型6を外すことにより図5に示すようなプラスチック容器8が形成される。
【0014】
図6は、高温のコーヒーが入っている本発明による容器の断熱構造を説明するための図である。
例えば、98°Cに熱せられたコーヒーの熱はプラチック容器8,ホールシート層2を熱伝導しようとするが、ホールシート層2の多数の貫通孔2aの空気層によって阻止され、印刷層1を介して指10に伝達する熱は60°C以下の人が把持しても熱いと感じない温度以下に下げることができる。
【0015】
つぎにインモールド成形容器と従来例との比較例を表に示す。
【表1】

測定内容は本発明によるインモールド成形容器と従来の単層発泡インモールド容器にそれぞれ98℃の熱湯を入れ、30秒後の容器表面温度とラベル密着力を測定したものである。
容器表面温度測定器は、放射温度計(単位:℃/φ24mm)を、ラベル密着測定器は、引っ張り強度試験機(単位:N/15mm)をそれぞれ用いた。引っ張り強度試験機で与える剥離角度は180°,剥離速度は300mm/minである。
【0016】
表から理解できるように本発明によるインモールド成形容器の表面温度は目標値60℃以下に対し実測値60℃(実質的に把持できる温度)を実現できている。これに対し従来単層発泡インモールドの容器表面温度が目標値60℃以下で実測値は65℃である。この温度は高温で容器を把持できない温度である。
また、ラベル密着力が目標値5N以上に対し本発明によるインモールド成形容器の実測値は8N(ニュートン)、従来単層発泡インモールドは6Nであり、ラベル接着力も優れていることが理解できる。
総合的に評価すると本発明の容器表面温度,ラベル密着力いずれも基準に合格であり、従来の単層発泡インモールドは容器表面温度について基準に不合格である。
【0017】
以上、インモールド成形をインジェクション成形で行う実施の形態を示したが、ブロー成形など他の成形方法を用いても良い。また、飲料用のみでなく、他の目的で用いる容器であっても良い。さらにプラスチック材料の例としてポリエチレン,ポリプロピレン,ポリスチレンなどを挙げたが、他の種類のプラスチックを用いることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0018】
コンビニ,自動販売機などで販売されるコーヒーなどを内容物とする断熱性機能を有するインモールド成形容器である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明による断熱性インモールド成形容器に用いるインモールドラベルの構成を示す斜視図である。
【図2】図1のインモールドラベルの断面図である。
【図3】容器に用いられる基板層であるホールシート層の外形図である。
【図4】プラスチック容器のインジェクション成形の方法を説明するための図である。
【図5】完成したプラスチック容器の外観図である。
【図6】高温のコーヒーが入っている本発明による容器の断熱構造を説明するための図である。
【符号の説明】
【0020】
1 印刷層
2 ホールシート層
2a 貫通孔
3 接着層
4 インモールドラベル
5 外型
6 内型
7 湯口
8 プラスチック容器
8a 空胴
9 印刷模様
10 指

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インモールドラベルを容器の外表面層に熱融着して構成されるインモールド成形容器において、
前記インモールドラベルをプラスチック材の印刷層,基板層および接着層の多層構造にして前記基板層に多数の貫通孔を設けることにより、
該基板層の熱伝導性を小さくし前記容器内流動体から前記インモールドラベルへの熱伝導を抑制することを特徴とする断熱性インモールド成形容器。
【請求項2】
前記インモールドラベルの厚さは50μm〜150μmであり、
前記印刷層,基板層および接着層はそれぞれ略1/3の厚さであることを特徴とする請求項1記載の断熱性インモールド成形容器。
【請求項3】
前記インモールドラベルのプラスチック材はポリエチレン,ポリプロピレンまたはポリスチレンであることを特徴とする請求項1または2記載の断熱性インモールド成形容器。
【請求項4】
前記インモールド成形はインジェクション成形またはブロー成形で容器を形成することを特徴とする請求項1,2または3記載の断熱性インモールド成形容器。
【請求項5】
前記容器は、有底円筒形状であることを特徴とする請求項1,2,3または4記載の断熱性インモールド成形容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−39055(P2007−39055A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−222502(P2005−222502)
【出願日】平成17年8月1日(2005.8.1)
【出願人】(000239563)福島印刷工業株式会社 (10)
【Fターム(参考)】