説明

新規筋成長調節因子

本発明は、ポリヌクレオチドおよびポリペプチド配列、プロモータ配列、この配列を含んでなる構成物、および筋成長を調節し、かつ筋成長に付随する疾患を治療するための組成物を含む新規筋成長調節因子を提供する。本発明は、変化した筋肉量を有する動物の識別における本配列の使用、および変化した筋肉量を有する動物を生産する選択的繁殖プログラムをも提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(技術分野)
本発明は、筋成長の調節に関与する新規タンパク質、および筋成長の調節または促進ならびに筋成長または筋消耗に付随する病状の治療における新規タンパク質の使用に関する。
【0002】
(従来技術)
筋組織は大きな多核細胞を含んでなる。これら細胞の大部分、およそ3分の2は筋原線維、または収縮単位である。筋原線維はミオシン細フィラメントおよびアクチン細フィラメントである。
【0003】
筋細胞の発達は筋芽または前駆細胞で開始する。筋芽は分化および融合過程を受けて筋管を形成し、そしてそれがさらに分化して筋線維になる。
【0004】
タンパク質ミオスタチン(または成長分化因子8)は、筋成長および発展の調節における主要な因子として同定されている。ミオスタチンは筋成長を負に調節することが示された(非特許文献1)。ミオスタチンにおける11bpの欠失が畜牛におけるベルギーブルー(またはダブル筋肉(double-muscled))表現型をもたらすことが明らかにされている。ベルギーブルー牛は20%〜30%の筋肉量の増加を有する。
【0005】
ミオスタチンが筋成長を遅らせる役割を果たす正確な機序は依然として不明である。
【0006】
長期の不使用(例えば、ベッド休養、宇宙飛行)の期間中、または筋消耗疾患(例えば、筋ジストロフィー)の場合、骨格筋は萎縮するが、これは主に筋タンパク質の増大した分解およびタンパク質合成の削減による。デュシェンヌ型筋ジストロフィーは筋ジストロフィーの最も一般的な形態の1つである。筋線維は壊死し、その再生能を失う。最近、mdxマウスのデュシェンヌ型ジストロフィーモデルにおいて、線維症だからなおさら衛星細胞の完全な消耗により筋肉が再生不能であることが明らかにされている。サルコペニアは、正常な老化に付随する筋肉量および能力の減少である。
【0007】
骨格筋は依然として自己再生能を有するが、老齢筋における環境は筋衛星細胞活性、増殖、および分化に対して支持的ではない。
【0008】
多くの成長因子、例えばIGF、HGF、およびFGFが生後骨格筋成長および発達の調節に関与している。骨格筋の発達に対してミオスタチン(GDF−8)よりも強力な悪影響を有する成長因子は知られていない。ミオスタチンまたは成長および分化因子−8(GDF−8)は、マウスにおいて最初に特徴づけられた。ミオスタチン−ヌルマウスは、劇的に増大した筋の発達を示し、体重が野生型マウスの2〜3倍になった。筋肉量の増加は、筋過形成および肥大によるものであることが示された。これらのデータは、ミオスタチンが筋肉量の制御において重要な役割を有し、かつミオスタチンが筋成長の強力な負の調節因子であることを示す。
【0009】
したがって、筋成長を促進することが可能である因子を含む、筋成長の調節に関与する別の因子を同定することが有利であろう。現在まで、筋成長を調節することが可能である別の因子は同定されていない。
【非特許文献1】Kambadur et. al. 1997
【0010】
(発明の開示)
本発明は、筋成長の促進に関与するポリペプチドの同定に基づく。この筋成長プロモータは「マイティー(mighty)」と呼ばれている。マイティーという語は、本発明による新規筋成長プロモータに言及する本明細書の全体を通じて使用される。
【0011】
本発明は、マイティータンパク質をコードするDNAおよび対応するマイティー遺伝子プロモータの同定にも基づく。
【0012】
本発明は、配列番号2または配列番号4から選択される配列を含んでなるポリペプチドを提供する。
【0013】
本発明は、配列番号2または配列番号4から選択される配列を含んでなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列をも提供する。ポリヌクレオチド配列は、配列番号1または配列番号3から選択される配列を含む。
【0014】
本発明は、
a)配列番号1または配列番号3の相補体と、
b)配列番号1または配列番号3の逆相補体と、
c)配列番号1または配列番号3の逆配列と
からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含んでなるポリヌクレオチドをも提供する。
【0015】
本発明のポリヌクレオチドは、サイレント置換または結果として生じるアミノ酸における同類置換をもたらす置換の結果として配列番号1または配列番号3と異なるヌクレオチド配列を含む。
【0016】
本発明のポリペプチドは、本発明によるポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドを含む。少なくとも1つのポリペプチド、またはそれらの断片を含んでなる融合タンパク質も提供される。
【0017】
本発明は、本発明の配列を含んでなる1つもしくはそれ以上のベクター、およびかかるベクターを有する1つもしくはそれ以上の宿主細胞をも提供する。このベクターは、5’−3’方向において、a)遺伝子プロモータ配列と、b)本発明によるポリヌクレオチドと、c)遺伝子末端配列とを含んでなる。このポリヌクレオチドは、センスまたはアンチセンス方向でありうる。
【0018】
本発明は、筋成長を調節するための組成物をも提供する。
【0019】
1つの態様において、組成物は、
a)配列番号1または配列番号3を含んでなるポリヌクレオチドと、
b)(a)の断片もしくは変種と、
c)(a)との少なくとも95%、90%、もしくは70%の配列同一性を有するポリヌクレオチドと、
d)(a)〜(c)のいずれか1つの相補体と、
e)(a)〜(c)のいずれか1つの逆相補体と、
f)(a)〜(c)のいずれか1つのアンチセンスポリヌクレオチドと、
g)(a)〜(c)のいずれか1つによってコードされたポリペプチドと、
h)配列番号2または配列番号4を含んでなるポリペプチドと、
i)(g)または(h)の断片もしくは変種と、
j)(g)または(h)に関して少なくとも95%、90%、もしくは70%の配列同一性を有するポリペプチドと
のいずれか1つを含む。
【0020】
もう1つの態様において、組成物は、配列番号5の配列、配列番号5との少なくとも95%、90%、または70%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、またはそれらの断片もしくは変種を含むマイティー遺伝子プロモータを含んでなりうる。
【0021】
別の態様において、組成物は、マイティー遺伝子発現またはマイティータンパク質活性のモジュレータを含みうる。
【0022】
マイティー遺伝子発現またはマイティータンパク質活性のモジュレータは、
a)配列番号1、配列番号3、または配列番号5と、
b)配列番号2または配列番号4のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと、
c)(a)または(b)との少なくとも95%、90%、または70%の配列同一性を有するポリヌクレオチドと、
d)(a)〜(c)のいずれか1つの相補体と、
e)(a)〜(c)のいずれか1つの逆相補体と、
f)(a)〜(e)のいずれか1つの断片もしくは変種と
のいずれか1つから選択されるポリヌクレオチドに特異的に結合しうる。
【0023】
マイティー遺伝子発現のモジュレータはアンチセンスポリヌクレオチドでありうる。マイティー発現のモジュレータは干渉RNA分子でもありうる。具体的には、マイティー遺伝子発現のモジュレータはRNAiまたはsiRNA分子でありうる。
【0024】
モジュレータはミオスタチンまたはミオスタチンの模倣剤でもありうる。模倣剤はアミノ酸位置330と350において、またはその間でC末端切断されたミオスタチンペプチドでありうる。切断は330、335、または350のいずれか1つにおいてである。
【0025】
別の態様において、本発明の組成物は筋成長に付随する疾患の治療または予防において使用されうる。この疾患は筋萎縮をもたらしうる疾患でありうる。この疾患は、筋ジストロフィー、筋悪液質、萎縮、肥大、筋消耗関連性癌またはHIV、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、または梗塞を含む心筋成長に付随する疾患から選択されうる。組成物は筋損傷後の筋再生の促進においても使用されうる。
【0026】
本発明は、本発明による組成物を使用する、筋成長の調節または促進の方法、損傷後の筋成長または筋再生に付随する疾患の治療または予防をも提供する。この方法を使用し、増加した筋肉量を有する動物を生産しうる。
【0027】
本発明の組成物は、筋成長を調節するための医薬品の製造、損傷後の筋成長または筋再生に付随する疾患の治療または予防においても使用されうる。
【0028】
本発明は、本発明による組成物でトランスフェクトされたトランスジェニック動物をも提供する。トランスジェニック動物は、増加した筋肉量を有する動物をもたらしうる。トランスジェニック動物は、ヒツジ、雌牛、雄牛、シカ、家禽、シチメンチョウ、ブタ、ウマ、マウス、ラット、魚、またはヒトから選択されうる。
【0029】
本発明は、動物における筋肉量を予測する方法であって、
i)動物からサンプルを得る工程と、
ii)配列番号1または配列番号3の配列を有するポリヌクレオチド、配列番号1または配列番号3との少なくとも95%、90%、または70%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、またはそれらの断片もしくは変種からの遺伝子発現レベルを測定し、または配列番号2または配列番号4の配列を有するポリペプチド、配列番号2または配列番号4との少なくとも95%、90%、または70%の配列同一性を有するポリペプチド、またはそれらの断片もしくは変種の量を測定する工程と、
iii)遺伝子発現レベルまたはポリペプチドの量を平均と比較する工程と、
iv)前記動物の筋肉量を予測する工程と
を含んでなる方法をも提供する。
【0030】
遺伝子発現のレベルはRTPCRまたはノーザン分析を使用して測定されうる。ポリペプチドは、ELISAまたはウェスタンブロット分析を使用して測定されうる。
【0031】
別の態様において、本発明はマイティーの変種を検出する方法であって、
a)配列番号1、配列番号3、または配列番号5と、
b)配列番号2または配列番号4のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと、
c)(a)または(b)との少なくとも95%、90%、または70%の配列同一性を有するポリヌクレオチドと、
d)(a)〜(c)のいずれか1つの相補体と、
e)(a)〜(c)のいずれか1つの逆相補体と、
f)(a)〜(e)のいずれか1つの断片もしくは変種と
から選択されるヌクレオチド配列の使用を含んでなり、
前記マイティーの変種に対する生物からのサンプルをスクリーニングする方法を提供する。
【0032】
マイティーの変種は多型、特に単一ヌクレオチド多型でありうる。マイティーの変種は変化した筋表現型とも関連しうる。
【0033】
本発明は動物の筋肉量を改善する方法であって、
i)本発明による筋肉量の増加を有することが予測される1つもしくはそれ以上の動物を選択する工程と、
ii)増加した筋肉量を有することが予測される1つもしくはそれ以上の動物を繁殖し、改善された筋肉量を有する動物を生産する工程と
を含んでなる方法をも提供する。
【0034】
本発明による動物は、ヒツジ、雌牛、雄牛、シカ、家禽、シチメンチョウ、ブタ、ウマ、マウス、ラット、魚、またはヒトから選択されうる。
【0035】
本発明は、配列番号2または配列番号4の配列を有するポリペプチド、もしくは配列番号2または配列番号4との少なくとも95%、90%、または70%の配列同一性を有するポリペプチドに優先的に結合する抗体をも提供する。
【0036】
本発明は、配列番号2または配列番号4の配列を有するポリペプチド、もしくは配列番号2または配列番号4との少なくとも95%、90%、または70%の配列同一性を有するポリペプチドに優先的に結合する抗体の製造における配列番号2または配列番号4の配列を有するポリペプチドの抗原断片の使用をも提供する。
【0037】
本発明は、マウスマイティー遺伝子のプロモータ領域を含んでなる配列番号5の配列番号、配列番号5との少なくとも95%、90%、または70%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、またはそれらの断片もしくは変種を含んでなる単離されたポリヌクレオチドをも提供する。
【0038】
断片は、マイティー開始部位の上流の少なくとも200のヌクレオチドを含んでなり、かつマイティー開始部位の上流の209、287、315、400、600、1000、および2100のヌクレオチドのいずれか1つの断片を含んでなりうる。
【0039】
本発明は、配列番号5のポリヌクレオチドを含んでなる1つもしくはそれ以上のベクター、配列番号5との少なくとも95%、90%、または70%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、またはそれらの断片もしくは変種、およびかかるベクターを含有する1つもしくはそれ以上の宿主細胞をも提供する。
【0040】
本発明は、筋成長の抑制または促進において潜在的に有用である1つもしくはそれ以上の化合物のスクリーニングのための方法であって、
i)配列番号5の配列を有するポリヌクレオチド、配列番号5との少なくとも95%、90%、または70%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、またはそれらの断片もしくは変種を適切なマーカー遺伝子に結合した適切なベクターへ挿入する工程と、
ii)適切な宿主細胞を前記ベクターで形質転換する工程と、
iii)目的とする化合物を前記宿主細胞に投与する工程と、
iv)前記マーカー遺伝子発現のレベルの差異を測定する工程と
を含んでなる方法をも提供する。
【0041】
ベクターは、適切なベクターを含み、かつ原核細胞プラスミド、真核細胞プラスミド、またはウイルスベクターを含みうる。マーカー遺伝子は、適切なマーカー遺伝子を含み、かつ緑色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、ルシフェラーゼ酵素、またはβ−ガラクトシダーゼ酵素をコードするポリヌクレオチドを含みうる。
【0042】
本発明は、筋細胞において所望のタンパク質を発現する方法であって、
i)発現される遺伝子をコードするポリヌクレオチド配列を単離する工程と、
ii)5’−3’方向で発現されるタンパク質のポリヌクレオチド配列に操作可能に結合された、配列番号5の配列を有するポリヌクレオチド、または配列番号5との少なくとも95%、90%、または70%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、またはそれらの断片もしくは変種を適切なベクターへ挿入する工程と、
iii)ベクターを筋宿主細胞へ導入する工程と
を含んでなる方法をも提供する。
【0043】
ベクターは、真核細胞ベクター、ウイルスベクター、または遺伝子療法に適したベクターを含みうる。
【0044】
宿主細胞は、初代筋芽細胞系、形質転換された筋芽細胞系、またはマイティープロモータが活性である細胞系を含む。宿主細胞は、宿主動物のインビボ骨格または心筋細胞をも含みうる。
【0045】
宿主動物は、ヒツジ、雌牛、シカ、雄牛、家禽、シチメンチョウ、ブタ、ウマ、マウス、ラット、魚、またはヒトを含む。
【0046】
定義
「ポリヌクレオチド」という語は、デオキシリボ核酸またはリボ核酸のポリマーを意味すると理解すべきであり、DNA、RNA、cDNA、ゲノムDNA、組換えDNA、および他の既知の形態のポリヌクレオチドのすべてを含む、一本鎖および二本鎖ポリマーを含む。ポリヌクレオチドは、天然起源から単離され、組換えまたは分子生物学的方法を使用して製造され、または合成的に製造されうる。ポリヌクレオチドは、全部の遺伝子またはそれらの一部を含みうるとともに、オープンリーディングフレームを有する必要はない。
【0047】
本発明によるすべてのポリヌクレオチドの使用は、ありとあらゆるオープンリーディングフレームを含む。オープンリーディングフレームは、当技術分野で周知の方法を使用して確立されうる。これらの方法としては、既知の開始および終止コドンを識別する配列の分析が挙げられる。この機能を実行する多くのコンピュータソフトウェアプログラムが当技術分野で周知である。
【0048】
「ポリペプチド」という語は、共有結合アミノ酸のポリマーを意味すると理解すべきである。ポリペプチドとしては、天然起源から単離されているポリペプチド、組換え方法によって製造されているポリペプチド、または合成的に製造されているポリペプチドが挙げられる。インビトロで開裂されるリーダーまたはプロ配列を含むポリペプチド、またはリンカーもしくは他の配列を含むポリペプチド、または翻訳後修飾を受けるポリペプチドが、ポリペプチドの定義に入ることが意図されていると理解すべきである。
【0049】
「断片もしくは変種」という語は、部分的配列、または1つもしくはそれ以上のヌクレオチドまたは1つもしくはそれ以上のアミノ酸残基の置換、挿入、または欠失によって修飾されているが、実質的にそれと同じ活性を有する配列を意味すると理解すべきである。
【0050】
ポリヌクレオチド断片は、厳しい条件下に配列番号3の配列番号1の配列にハイブリダイズするのに十分な長さおよび特異性のポリヌクレオチド断片をも含む。「厳しい条件」の例は、65℃下5X SSC、0.2%SDSによるプレハイブリダイゼーション、65℃下5X SSC、0.2%SDSで一夜のハイブリダイゼーションの実行、各々30分間、65℃下1X SSC、0.1%SDSの2回の洗浄後、やはり各々30分間、65℃下0.2X SSC、0.1%SDSのさらに2回の洗浄を含む。
【0051】
ポリペプチド断片は、マイティータンパク質の活性を保持する断片をも含む。この断片は増大活性を有し、したがって、細胞において導入または発現されると、マイティータンパク質活性の増加をもたらす。あるいは、断片は主要な悪影響を有しうる。
【0052】
「マイティー遺伝子」は、配列番号1または配列番号3によるポリヌクレオチド、もしくは配列番号1または配列番号3との95%、90%、または70%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、またはそれらの断片と定義される。
【0053】
「遺伝子発現」は、転写の開始、マイティー遺伝子のmRNAへの転写、およびmRNAのポリペプチドへの翻訳と定義される。「マイティー遺伝子発現のモジュレータ」は、マイティー遺伝子発現の増加または減少をもたらすことが可能である化合物と定義される。
【0054】
「マイティータンパク質」は、配列番号2または配列番号4の配列を有するポリペプチド、配列番号2または配列番号4との95%、90%、または70%の同一性を有するポリペプチド、またはそれらの断片もしくは変種と定義されうる。
【0055】
「マイティータンパク質活性」は、マイティータンパク質の筋成長を刺激する能力と定義される。
【0056】
「筋成長」は、筋細胞の分裂および/または分化と定義され、筋前駆細胞の分裂および/または分化を含む。
【0057】
「マイティータンパク質活性のモジュレータ」は、マイティータンパク質活性を増加または減少させることが可能である化合物と定義される。
【0058】
「マイティー遺伝子プロモータ」は、配列番号5のポリヌクレオチド、配列番号5との95%、90%、または70%の同一性を有するポリヌクレオチド、またはそれらの断片もしくは変種と定義される。
【0059】
本発明の別の態様は、ほんの一例として示されている、以下の図面および説明から明らかになるであろう。
【0060】
(図面の簡単な記載)
ここで本発明を以下の図面を参照してほんの一例として説明する。
図1:ダブル筋肉ウシおよび正常な筋肉ウシからのマイティーのPCR増幅を示す。
図2:(A)正常な筋肉ウシ(wt、レーン1)およびダブル筋肉ウシ表現型(BB、レーン2)の心組織からのマイティーのPCR増幅を示す。(B)ヒツジ骨格筋(レーン4)からのマイティーのPCR増幅を示す。
図3:(A)および(B)はマイティープロモータ配列、および同定転写因子結合部位を示す。
図4:筋芽C2C12細胞増殖におけるマイティーの発現の結果を示す。
図5:MHC抗体による対照およびマイティー過剰発現筋管の免疫染色を示す。
図6:(A)細胞領域の定量的画像分析によって測定された活発に成長するC2C12クローン7および11およびlacZ対照の測定を示す。定量的画像分析によって測定された筋管を含有する3核の(B)前角光散乱(FALS)を測定するFACScanフローサイトメトリー(クローン7およびクローン11において見られる右への移動は細胞サイズの増加を示す)および長さ(C)、幅(D)および面積(E)を示す。
【0061】
図7:(A)C2C12クローン7および11を過剰発現するマイティー、および対照C2C12筋芽を分化培地(DMEM2%HS)中で48、60、および72時間培養したことを示す。筋芽を固定し、抗MHC抗体を使用して免疫染色し、ジルス(Gills)ヘマトキシリンで薄く対比染色した。(B)C2C12クローン7および11を過剰発現するマイティー、および対照C2C12のウェスタンブロット分析を示す図である。筋芽を分化培地(DMEM2%HS)中で0、24、48、および72時間培養した。細胞から抽出した総タンパク質(15μg)を4−12%SDS−PAGEによって分解し、ニトロセルロースフィルタに移し、マウスモノクローナル抗−p21、ウサギポリクローナル抗−MyoD、またはマウスモノクローナル抗−MHC抗体でプローブした。フィルタもマウスモノクローナル抗−α−チューブリンでプローブし、同等の負荷を明らかにした。
図8:静止および活性化衛星細胞におけるマイティータンパク質の検出を示す図である。静止および活性化衛星細胞からのタンパク質をSDS−PAGEによって分解し、ニトロセルロース膜に移した。マイティータンパク質をウサギ抗−マイティー抗体で検出した。マイティータンパク質は活性化衛星細胞では検出可能であったが、静止衛星細胞では検出可能ではなかった。
【0062】
図9:骨格筋再生中のマイティーの発現を示す。TA筋にノテキシン(Notexin)を注射して筋損傷を誘発し、損傷後0、1、5、14、および28日にマイティーの免疫組織化学のために採集した。(A)0日の非損傷対照TA筋。(B)損傷後1日目。(C)損傷後5日。(D)損傷後7日。(G)損傷後28日。グリーン、マイティー、ブルー、DNA。
図10:梗塞後心組織におけるマイティーの発現を示す。マイティーの免疫組織化学を非梗塞(0日)および梗塞後(2および6日)心組織で行った。(A)非梗塞対照心組織。(B)梗塞後2日。(C)梗塞後6日。
図11:マイティーおよび対照トランスフェクトヒト筋芽におけるMHC陽性筋管の数を示す。ヒト筋芽をマイティー−pcDNA3またはpcDNA3のみ(対照)でトランスフェクトし、分化条件下に12時間培養した。次いで、免疫組織化学(ICC)を筋管におけるミオシン重鎖(MHC)発現について実行した。連続非重複写真を間を置いてウェル全体にわたって撮影し、MHC陽性筋管/ウェルの数を計算した。
【0063】
図12:(A)筋管当たりの筋核の頻度および(B)5、6、7、8、および9個の筋核を含有する筋管の幅を示す。ヒト筋芽をマイティー−pcDNA3またはpcDNA3のみ(対照)でトランスフェクトし、分化条件下に12時間培養し、MHC発現についてICCを実行した。5、6、7、8、および9個の筋核(n=53)を含有するMHC陽性筋管をその最も広い幅で測定した。
図13:馴化培地処理ヒト筋芽における筋核/MHC陽性筋管の数を示す。ヒト筋芽をマイティー安定トランスフェクトC2C12細胞またはLacZ(対照)トランスフェクトC2C12細胞からの馴化培地で処理した。細胞を馴化培地で48時間培養し、次いでMHC発現についてICCを実行した。筋核/MHC発現筋管の数を顕微鏡視野当たりの5個の筋管で計算した(n=245筋管)。(A)1−3、4−6、および7−9の筋核の筋管の数。(B)筋核/筋管の平均数。
図14:8個の筋核を含有する馴化培地処理筋管の幅を示す。ヒト筋芽をマイティー安定トランスフェクトC2C12細胞またはLacZ(対照)トランスフェクトC2C12細胞からの馴化培地で処理した。細胞を馴化培地で48時間培養し、次いでMHC発現についてICCを実行した。8個の筋核を含有するMHC陽性筋管(n=100)をその最も広い幅で測定した。
【0064】
図15:馴化培地処理ヒト横紋筋肉腫(RD)細胞におけるMHC陽性筋管の数を示す。ヒトRD細胞をマイティー安定トランスフェクトC2C12細胞またはLacZ(対照)トランスフェクトC2C12細胞からの馴化培地で処理した。細胞を馴化培地で72時間培養し、次いでMHC発現についてICCを実行した。MHC陽性筋管/ウェルの数を計算した。
図16:マウスマイティープロモータがさまざまな細胞系において活性を有することを示す。(A)C2C12筋芽、初代ヒツジ筋芽、NIH3T3線維芽細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)および(B)ヒトRD(横紋筋肉腫)細胞を一時的に1kbマイティープロモータレポーター構成物で24時間トランスフェクトした。次いで、これらを成長または分化培地中でさらに24時間培養した。ルシフェラーゼ活性を測定し、共トランスフェクトpCH110からのβ−ガラクトシダーゼ(β−gal)に標準化した。
図17:マイティープロモータが用量依存的にミオスタチンによって阻害されることを示す。方法において記載されているようにC2C12筋芽を一時的に1kbプロモータでトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、細胞を成長培地中において組換えミオスタチン4および8μg/mlで処理した。細胞を処理の24時間後に回収した。ルシフェラーゼ活性をβ−ガラクトシダーゼ活性に標準化した。
【0065】
図18:ミオスタチン模倣剤がマイティープロモータのミオスタチン介在阻害を回復しうることを示す。X軸は、β−ガラクトシダーゼ活性に標準化されたマイティープロモータの相対ルシフェラーゼ活性である。Ctrlバーは対照ヒツジ筋芽を示し、wtバーは野生型ミオスタチン(3μg)で処理したヒツジ筋芽を示し、335バーはミオスタチン模倣剤335 15μgで処理したヒツジ筋芽を示し、335+wtはミオスタチン3μgおよびミオスタチン模倣剤15μgで処理したヒツジ筋芽を示す。
図19:マイティー遺伝子の上流断片のプロモータ活性を示す。方法において記載されているように、C2C12筋芽を一時的にプロモータ断片レポーター構成物でトランスフェクトした。次いで、これらを成長または分化培地中でさらに24時間培養した。ルシフェラーゼ活性を測定し、共トランスフェクトpCH110からのβ−ガラクトシダーゼ(β−gal)活性に標準化した。
図20:マイティータンパク質に対する抗体の適用を示す。レーンは、M、マーカー、1、ペプチド特異的マイティー抗体によって認識された精製組換えマウスマイティータンパク質、2、ウシタンパク質抗体によって認識された精製組換えウシマイティータンパク質、3、マイティー発現(使用されたウシタンパク質抗体)に対して誘発されたマイティー発現プラスミドを含有する大腸菌(E.coli)細胞からのタンパク質抽出物、および4、マイティー発現プラスミド(非誘発)(使用されたウシタンパク質抗体)を含有する大腸菌(E.coli)細胞からのタンパク質抽出物を示す。
【0066】
(発明の詳細な記載)
本発明は、筋の発達および再生に関与する新規タンパク質に基づく。このタンパク質は「マイティー」と呼ばれている。
【0067】
マイティー遺伝子は、ヒツジ(配列番号1)およびウシ(配列番号3)から同定され、クローン化されている。1つの態様において、本発明は、ウシおよびヒツジから単離されたマイティーポリヌクレオチドを提供する。具体的には、本発明は、ヒツジ、配列番号1、およびウシ、配列番号3からの、アンチセンスポリヌクレオチドおよび操作可能なアンチセンス断片を含む、ポリヌクレオチド配列を提供する。
【0068】
本発明は、ウシおよびヒツジから単離されたポリペプチド配列を提供する。具体的には、本発明はヒツジ、配列番号2、およびウシ配列番号4からのポリペプチド、ならびに配列番号2および配列番号4のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0069】
ポリヌクレオチドは、遺伝情報における冗長性の結果として、サイレント置換、または結果として生じるアミノ酸において同類置換をもたらす置換を含みうることが理解されるであろう。さらに、タンパク質の活性を実質的に変化させることがない本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドの断片および変種も意図されている。
【0070】
本発明は、本発明のポリヌクレオチドを含有するベクターをも提供する。ポリヌクレオチド配列を保存、複製、および発現するベクターの使用は当技術分野で公知である。一般に、ベクターは、5’−3’方向において、遺伝子プロモータ配列、本発明によるポリヌクレオチド配列、および遺伝子末端配列を含んでなる。ベクターは、本発明による配列のプラスミドおよび/またはウイルスへの取込みを含み、宿主細胞における配列の導入および/または維持に役立つことが意図されている。宿主細胞は、原核細胞または真核細胞のいずれかを含みうる。真核細胞はインビボであり、または初代もしくは形質転換された細胞系でありうる。
【0071】
マイティータンパク質は、発明者によって、ダブル筋肉ウシ(図1および図2を参照)において高度に発現され、マイティーが筋成長の促進において役割を果たすことが示すことが明らかにされている。マイティーは、筋芽C2C12細胞の成長を上方調節し、筋成長の促進におけるマイティーの役割を裏付けることも明らかにされている(図4)。マイティーを過剰発現するC2C12細胞の別の調査は、マイティーが筋細胞における肥大を誘発することを示す。これはマイティーを過剰発現する細胞における核の数の増加(図5)、および細胞サイズの増加(図6)によって示されている。さらに、図7に示されているように、マイティーを過剰発現するC2C12細胞は対照細胞よりも早期に分化する。初代筋芽(活性化衛星細胞)も衛星(静止細胞)よりも大きなレベルのマイティーを有することが明らかにされている。
【0072】
これらの結果は、筋の成長および発達におけるマイティーの役割を裏付け、かつマイティーが筋成長および発達を調節または促進するために使用されうることを示す。マイティーは、農業上の利点を有しうる増加した筋肉量を有する動物を生産するための有用な手段を提供する。さらに、マイティーは筋成長に付随する疾患、特に筋萎縮に付随する疾患を治療するための組成物の開発を提供する。かかる疾患としては、筋ジストロフィー、筋悪液質、萎縮、肥大、筋消耗関連性癌またはHIV、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、または梗塞を含む心筋成長に付随する疾患が挙げられるが、これらに限定されない。
【0073】
したがって、筋成長を調節するための組成物が含まれる。「筋成長の調節」は、筋成長および/または発達の速度のあらゆる変化を含むことが意図されており、筋前駆細胞の成長および/または分化を含む。これは、前駆筋細胞が分裂する速度の変化、および/または前駆筋細胞が分化する速度のあらゆる変化を含む。その変化は増加または減少のいずれかでありうる。
【0074】
かかる組成物は、ヒツジ配列番号1またはウシ配列番号3からの配列、配列番号1または配列番号5との少なくとも95%、90%、または70%の配列同一性を有するポリペプチド、またはそれらの断片もしくは変種を含む、マイティー遺伝子配列に基づく。この配列は、プロモータ、マイティープロモータ(配列番号5)、または他の適切なプロモータのいずれかの調節下、適切なベクターへの取込みによって細胞へ導入されうる。このプロモータを使用し、マイティータンパク質の発現を誘発し、それによって細胞内の遺伝子発現およびマイティータンパク質活性を増大させることができる。
【0075】
この組成物は、本発明のポリヌクレオチド配列と少なくとも95%、90%、または70%の配列同一性を有する配列をも含みうる。配列同一性は、配列を整列し、同一のヌクレオチドの数を測定することによって判定されうる。多くのコンピュータアルゴリズム、例えば、BLASTNアルゴリズムが配列同一性を測定するために周知である。
【0076】
この組成物は、本発明によるポリヌクレオチドの相補体、逆相補体、またはアンチセンスヌクレオチドをも含みうる。
【0077】
この組成物は、本発明によるマイティーポリペプチドをも含んでなりうる。このポリペプチドはヒツジ、配列番号2、またはウシ、配列番号4、配列番号2または配列番号4との少なくとも95%、90%、または70%の配列同一性を有するポリペプチド、またはそれらの断片もしくは変種からのものでありうる。
【0078】
この組成物は、本発明のポリペプチド配列との少なくとも95%、90%、または70%の配列同一性を有する配列をも含んでなりうる。配列同一性は、配列を整列し、かつ同一の残基の数を測定することによって判定されうる。多くのコンピュータアルゴリズム、例えば、BLASTPアルゴリズムが配列同一性を測定するために当技術分野で周知である。
【0079】
この筋成長を調節するための組成物は、マイティー遺伝子発現のモジュレータをも含んでなりうる。
【0080】
この筋成長を調節するための組成物は、マイティータンパク質活性のモジュレータをも含みうる。
【0081】
マイティー遺伝子発現のモジュレータは、特に本発明によるポリヌクレオチドに結合しうる化合物でありうる。具体的には、かかるマイティー遺伝子発現のモジュレータはマイティー遺伝子プロモータに結合し、それによって遺伝子転写が開始または維持される速度に影響を及ぼしうる。あるいは、それらのプロモータまたは断片を使用し、細胞の天然のプロモータへ特定の変化を導入し、野生型のマイティー遺伝子発現を増強または抑制しうる。変化としては、1つもしくはそれ以上のヌクレオチドの置換、挿入、または欠失を含みうる。
【0082】
マイティー遺伝子発現の別のモジュレータは、遺伝子が発現される速度を直接影響を及ぼすマイティー遺伝子にも結合しうる。
【0083】
マイティー遺伝子発現の別のモジュレータは、マイティー遺伝子に結合し、変化を配列へ導入することによって、例えば、遺伝子が発現される速度に影響を及ぼし、またはマイティータンパク質活性を変化しうる相同的組換えによって機能しうる。配列の変化としては、ヌクレオチドの変化、挿入、または欠失が挙げられるが、これらは結果として生じるポリペプチドにおけるアミノ酸の変化、挿入、または欠失をもたらす場合ももたらさない場合もある。変化の例としては、切断ポリペプチドが製造されるように末端コドンの挿入、または1つもしくはそれ以上のアミノ酸残基が変化するように1つもしくはそれ以上のコドンの変化を挙げることができる。あるいは、野生型マイティー遺伝子の部分を削除し、または部分をマイティー野生型遺伝子へ導入する変動がありうる。かかる変化を引き起こす方法が当技術分野で公知である。さらに、かかる変化をマイティー遺伝子へ導入し、次いでマイティー活性における変化を、例えば実施例4に記載されている筋芽増殖アッセイを使用して検査することは当業者の技術範囲内であろう。
【0084】
マイティー遺伝子発現は、転写および/または翻訳を妨げるポリヌクレオチドを導入することによっても変化されうる。例えば、アンチセンスポリヌクレオチドが導入されうるが、アンチセンス発現ベクター、アンチセンスオリゴデオキシリボヌクレオチド、アンチセンスホスホロチオエートオリゴデオキシリボヌクレオチド、アンチセンスオリゴリボヌクレオチド、アンチセンスホスホチオエートオリゴヌクレオチド、またはアンチセンスポリヌクレオチドの効率を増強する化学的修飾の使用を含む、当技術分野で周知である他の手段を挙げることができる。
【0085】
アンチセンスポリペプチドが問題のポリヌクレオチドと100%相補的である必要はないが、アンチセンスポリヌクレオチドが遺伝子に結合し、またはmRNAが遺伝子発現を阻止するが、実質的に他の遺伝子の発現を阻止することがないことを可能にするのに十分な同一性を有する必要だけはあることが理解されるであろう。5’非翻訳領域を含む、遺伝子に対して相補的であるポリヌクレオチドを使用し、マイティータンパク質の翻訳も阻止しうることも理解されるであろう。同様に、これらの相補的ポリヌクレオチドは100%相補的である必要はないが、十分にmRNAに結合し、翻訳を阻止するが、実質的に他の遺伝子の翻訳を阻止しない必要がある。
【0086】
遺伝子発現の変調は、当技術分野で周知であるように干渉RNA分子の使用をも含んでなり、RNA干渉(RNAi)および小さな干渉RNA(siRNA)を含みうる。
【0087】
遺伝子発現の変調は、触媒RNA分子またはリボザイムの使用によっても達成されうる。かかるリボザイムが特定標的RNA分子とペアを組むように設計されることは当技術分野で周知である。
【0088】
遺伝子発現を調節する当技術分野で周知の他の方法を使用し、マイティー遺伝子発現を調節することもできる。
【0089】
この組成物は、マイティー活性のモジュレータをも含みうる。マイティーのモジュレータはマイティータンパク質の優性阻害突然変異体を含みうる。優性阻害効果は、変異体が野生型タンパク質の生理活動を遮断するように作用する場合に生じる。これは、活性化ではなく、受容体と結合すると同時に、野生型タンパク質を結合から防ぐことによって起こりうる。あるいは、優性阻害は、野生型タンパク質に直接結合し、かつこれを不活性化することによって作用しうる。
【0090】
したがって、本発明のポリヌクレオチドを使用して適切な組成物を作り出すことができ、またはこれを使用してマイティー遺伝子発現を調節し、それによって筋成長を調節する適切は組成物を設計することができる。かかる方法を使用し、細胞内、例えば、初代または形質転換された細胞系内のマイティー遺伝子発現を調節し、または動物内の筋成長を調節しうる。
【0091】
本発明の組成物の1つの可能な用途は、筋細胞成長および/または分化を促進または阻害することである。筋細胞は初代または形質転換された細胞系のいずれかであり、または細胞は宿主動物のインビボ細胞でありうる。適切な宿主動物は、ヒツジ、雌牛、雄牛、シカ、家禽、ブタ、魚、ウマ、マウス、ラット、またはヒトを含みうる。
【0092】
本発明の組成物は、筋組織に付随する疾患の治療にも使用されうる。かかる疾患または損傷は、筋ジストロフィー、筋失調、または心筋成長に付随する疾患を含みうる。同様に、この組成物を使用して筋損傷後の筋再生を促進することもできる。
【0093】
図9に示されているように、マイティー発現は筋損傷後、筋再生中の細胞において増加する。さらに、マイティー発現はヒツジにおける心組織における梗塞後に増加することが明らかにされている(図10)。これらの結果は、マイティーが筋再生にも関与することを示す。したがって、この組成物は、筋成長に付随する疾患の治療に有用であるだけではなく、損傷後の筋損傷の治療において有用でもある。
【0094】
図11〜15における結果は、本発明の組成物を使用してヒト筋の成長および分化を刺激することができ、さらに本発明のヒト用医学的応用の可能性を裏付けることを示す。
【0095】
同様に、この組成物を使用してトランスジェニック動物を製造することができうる。この組成物を使用して筋肉量の増加を有するトランスジェニック動物を製造することができうる。適切な動物は、ヒツジ、雌牛、雄牛、シカ、家禽、ブタ、魚、ウマ、マウス、ラット、またはヒトを含みうる。多くの方法が、トランスジェニック動物を製造するために当技術分野で周知であり、かつ適切な方法が使用されうる。
【0096】
本発明の別の用途は動物の筋肉量を予測することでありうる。これを行うために、サンプルが動物から得られる。次いで、サンプルはマイティー遺伝子発現、またはマイティータンパク質のレベルについて分析される。多くの方法が、遺伝子発現またはタンパク質量を測定するために当技術分野で周知である。例えば、遺伝子発現は定量的RTPCRまたはノーザン分析を使用して分析されうる。タンパク質含量は、ELISA[酵素免疫吸着アッセイ]またはウェスタンブロット分析を使用して測定されうる。
【0097】
次いで、マイティー遺伝子発現、またはマイティータンパク質の量のレベルは平均と比較される。マイティー遺伝子発現の平均レベルは、平均筋肉量の動物のサンプルから得られた平均レベルである。同様に、マイティータンパク質の平均量は平均筋肉量の動物のサンプルにおいて得られたタンパク質の量である。
【0098】
平均と比較されたマイティー遺伝子発現またはマイティータンパク質の増加レベルは、動物の筋肉量が平均以上の筋肉量を有することが予測されることを意味する。平均と比較されたマイティー遺伝子発現またはマイティータンパク質の減少レベルは、筋肉量が平均以下であることが予測されることを意味する。
【0099】
マイティー遺伝子の自然発生変種が存在しうることが理解されるであろう。かかる変種は、多型、例えば、単一ヌクレオチド多型(SNP)を含みうる。当業者は、本発明の配列を使用し、かかる変種をスクリーニングすることができるであろう。例えば、これらの配列を使用し、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)における使用に適切なプライマーを設計し、マイティー遺伝子、またはマイティー遺伝子の断片を増幅し、さまざまな生物におけるかかる変種についてスクリーニングしうる。スクリーニングは、直接シーケンスまたは一本鎖立体構造多型分析(SSCP)などの方法を含みうる。マイティーの変種が生物の変化した筋肉量と関連しうることも理解されるであろう。
【0100】
マイティー発現のレベルを測定し、または変化した筋肉量と関連したマイティーの変種を検出するための上記の方法を使用し、繁殖プログラムに関与する動物を選定し、増加または減少した筋肉量を有する子孫を生産することができる。
【0101】
本発明は、マイティータンパク質に対する抗体をも提供する。本明細書に開示された配列を前提として、当業者はマイティータンパク質に対する抗体を製造することができるであろう。ハイブリドーマ細胞の製造を含む、いかにして抗体が製造されうるかの例は、Eryl LiddellとCryer(1996年)またはJavois(1999年)において見出されうる。抗体の結合ドメインが抗体の定義に含まれることも理解されるであろう。
【0102】
実施例16において概要が示され、かつ図20に示されているように、ポリクローナル抗体は適切な動物におけるマイティータンパク質の全体に対して生じうる。あるいは、抗原断片を使用し、ペプチドを特異的に生成することができる。これは、本発明による抗体が当技術分野で周知の方法を使用していかに生成されるかを示す。
【0103】
かかる抗体を使用し、サンプルにおけるマイティータンパク質を検出、および/または定量化しうる。あるいは、本発明による抗体を使用し、マイティー活性を結合および調節しうる。
【0104】
他の型の抗体および結合タンパク質が製造されうること、かつこれらが本発明の一部であることが意図されていることが理解されるであろう。これらは、非哺乳類抗体、例えばサメからのIgNARクラスの抗体、細菌性免疫タンパク質、例えば大腸菌(E.coli)からのIMM7免疫タンパク質、または当技術分野で周知の他のクラスの結合タンパク質を含むが、これらに限定されない。本明細書に開示された配列を前提として、当業者は、かかるポリペプチドを製造し、あるいは既知の結合ポリペプチドのライブラリーをスクリーニングして、本発明のポリペプチドに優先的に結合するポリペプチドを得ることができるであろう。
【0105】
マウスマイティープロモータも単離され、クローン化されており(配列番号5)、これが本発明の一部をも形成する。本発明は、マウスマイティープロモータを含んでなる1つもしくはそれ以上のポリヌクレオチドをも提供する。マイティープロモータは、配列番号5のポリヌクレオチド、配列番号5との少なくとも95%、90%、または70%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、またはそれらの断片もしくは誘導体である。
【0106】
プロモータ配列の分析、図3は、既知の転写因子結合部位を示す。
【0107】
マイティー遺伝子プロモータを含有するベクターは周知の方法を使用して製造されうる。ベクターは、ポリヌクレオチドのプラスミドおよび/またはウイルスへの取込みを含み、宿主細胞におけるポリヌクレオチドの導入および/または維持を補助することが意図されている。宿主細胞は原核細胞または真核細胞、インビボまたは初代もしくは形質転換された細胞系でありうる。
【0108】
図16に示されているように、マイティープロモータを使用し、ヒトを含むさまざまな細胞系における遺伝子の発現を推進することができる。さらに、図19に示されているように、マイティー開始部位の上流の200ヌクレオチドほどの断片が遺伝子発現を推進する能力がある。
【0109】
マイティー遺伝子プロモータを使用し、マイティー遺伝子発現の調節に有用でありうる化合物についてスクリーニングすることができ、したがって筋成長の調節に有用でありうる。これを行うには、マイティープロモータを適切なマーカー遺伝子を有する適切な発現ベクターへ配置されうる。「マーカー遺伝子」は、その発現産物が同定かつ定量化されうる遺伝子である。多くの適切なマーカー遺伝子が周知であり、例えば、緑色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、ルシフェラーゼ、またはβ−ガラクトシダーゼを含みうる。
【0110】
次いで、ベクターは周知のトランスフェクション方法を使用して適切な宿主細胞へ配置される。適切な宿主細胞は、マイティー遺伝子プロモータが活性化され、発現されるマーカー遺伝子をもたらされる細胞を含んでなり、かつマーカー遺伝子発現産物のレベルが検出されうる。次いで、目的とする化合物は宿主細胞へ適用され、マーカー遺伝子における変化が測定される。
【0111】
基線と比較されたマーカー遺伝子発現産物の量における増加は、化合物がマイティー遺伝子プロモータを介して遺伝子発現を増強しており、したがって筋成長の促進に有用でありうることを示す。基線と比較されたマーカー遺伝子産物の量における減少は、マイティー遺伝子プロモータを介して遺伝子発現を阻害しており、したがって筋成長の阻害に有用でありうることを示す。
【0112】
図17に示されているように、この方法を使用し、マイティープロモータがミオスタチンによって調節されることを示しうる。ミオスタチンは筋の既知の負の調節因子であるため、この結果により、さらに筋成長および発達の促進および調節におけるマイティーの活性が裏付けられる。ミオスタチンの優性阻害模倣剤も周知である。国際公開第01/53350号パンフレット、C末端切断(位置330と350との間)ミオスタチンペプチドは結果として、優性阻害効果を有するミオスタチン模倣剤が生じる。図18に示されているように、ミオスタチン模倣剤335(位置335で切断)はマイティープロモータのミオスタチン介在阻害を救うことが可能である。図17および図18を組合せて、ミオスタチンおよびミオスタチン模倣剤を使用し、マイティー発現をそれぞれ下方調節または上方調節することができ、したがって本発明による組成物において使用されうるがことが示されている。
【0113】
マイティー遺伝子プロモータを使用し、筋細胞における指定遺伝子を発現することもできる。指定遺伝子は、本発明によるポリヌクレオチドを含んでなり、または他のポリヌクレオチド、例えば、ミオスタチンタンパク質をコードするポリヌクレオチドでありうる。これを達成するには、マイティー遺伝子プロモータは、目的とする遺伝子とともに適切なベクターへ挿入される。多くの適切なベクターが当技術分野で周知であり、真核細胞ベクター、ウイルスベクター、または遺伝子療法に適したすべてのベクターを含みうる。
【0114】
次いで、ベクターは周知のトランスフェクション方法を使用して適切な宿主細胞へ導入されうる。
【0115】
適切な宿主細胞は、マイティープロモータが活性化される筋細胞または哺乳動物細胞でありうる。宿主細胞は、例えば、宿主動物の初代もしくは筋芽細胞系、または形質転換された筋芽細胞、または骨格もしくは心筋細胞を含みうる。
【0116】
マイティープロモータが活性であるいかなる宿主動物も使用されうるが、これは例えばヒツジ、雌牛、雄牛、シカ、家禽、シチメンチョウ、ブタ、魚、ウマ、マウス、ラット、またはヒトを含みうる。
【0117】
実施例1:マイティーcDNAの単離
RNA精製:メーカーのプロトコールに従いTRIZOL(インビトロジェン(Invitrogen))を使用してヒツジおよびウシ骨格筋および心組織サンプルからRNAを精製した。
【0118】
マイティーcDNAの増幅:マイティーcDNAの増幅を複合型逆転写PCRにおいて行った。ファーストストランドcDNAを、メーカーの説明書に従いスーパースクリプト(Superscript)前増幅キット(インビトロジェン(Invitrogen))を使用し、5μgの総RNAからの逆転写反応混合液20μl中で合成した。増幅に使用されたPCR条件および特定のプライマーは以下の通りである。
【0119】
ヒツジおよび畜牛骨格筋マイティーcDNAおよびウシ心マイティーcDNAの増幅をプライマー、すなわち、
順方向プライマー5’CACCATGGCGTGCGGGGCGACACTG3’ (配列番号6)
逆方向プライマー5’GGATACATAGCTTGTTGGCCT 3’ (配列番号7)
を使用して行った。
【0120】
PCRを94℃下に1分間、初期変性とともにQ溶液(キアゲン(Qiagen))存在下に行った。その後、以下の工程、94℃で15秒間、60℃で45秒間、72℃で1分間の35サイクル、および最終延長72℃で5分間の1サイクルを行った。
【0121】
ベルギーブルーおよび正常な筋肉ウシからのマイティー断片のPCR増幅(図1)。
使用プライマー:
bcoo3291 Fwd 5’TGAAGCGGCCCATGGAGTTC3’ (配列番号8)
bcoo3291 Rev2 5’GGTGGGCTGGTCCTTCTTCATC3’ (配列番号9)
【0122】
PCRを94℃下に1分間、初期変性とともにQ溶液(キアゲン(Qiagen))およびTaqポリメラーゼの存在下に行った後、94℃で15秒間、62℃で30秒間、72℃で45秒間の35サイクル、および最終延長72℃で5分間の1サイクルを行った。
【0123】
PCR産物を1%アガロースゲル上で実行し、エチジウムブロマイドで染色し、視覚化した。図1における結果は、マイティーが正常な筋肉ウシと比べダブル筋肉ウシにおいて過剰発現されることを示す。この結果は、マイティーが筋成長の促進に役割を有することを示す。図2の部分Aは、マイティー遺伝子発現もダブル筋肉ウシの心組織において上方調節されることを示し、マイティーが心筋成長および発達ならびに骨格筋成長および発達を調節することも可能であることを示す。図2の部分Bは、ヒツジ骨格筋におけるマイティー発現の存在を示す。
【0124】
PCR産物の精製:PCR反応を0.8%低融点アガロースゲル上で実行し、所望のバンドを含有するゲルを除外した。ゲルからのDNAをウィザード(Wizard)PCR調製(preps)DNA精製系((プロメガ(Promega))を使用して精製した。
【0125】
実施例2:マイティーcDNAのクローニング
精製cDNAをメーカーのプロトコール(プロメガ(Promega))に従いpGEM−Tイージー(easy)ベクターにライゲートした。ライゲーション反応物をメーカーのプロトコールに従いコンピテント大腸菌(E.coli)DH5アルファ細菌(インビトロジェン(Invitrogen))へ形質転換した。形質転換された細菌をアンシピリン(50mg/リットル)、IPTG、およびX−galを含有するレノックス(Lennox)Lブロス(LB)寒天プレート上にプレーティングした。白色コロニーをLB+アンピシリン培地に播種し、培養菌を一夜成長させた。プラスミドDNAをキアゲン(Qiagen)ミニプラスミドキット(キアゲン(Qiagen))を使用して培養菌から精製した。プラスミドDNAを制限酵素EcoRIで消化し、アガロースゲル上で分析した。陽性クローンを正しいサイズの断片によって同定した。陽性クローンをさらなる確認の配列決定のために送った。ヒツジマイティーポリヌクレオチド配列は配列番号1で示されており、対応するポリペプチド配列は配列番号2で示されている。ウシマイティーポリヌクレオチド配列は配列番号3で、対応するポリペプチド配列は配列番号4として示されている。
【0126】
実施例3:マウスマイティー安定細胞系の生成
マウスマイティーのORFを以下のプライマーでPCR増幅した。
Fwd 5’CACCATGGCGTGCGGGGCGACACTG3’ (配列番号6)
Rev 5’GGATACATAGCTTGTTGGCCT3’ (配列番号7)
【0127】
Pwoポリメラーゼ(ロシュ(Roche))、Q溶液((キアゲン(Qiagen))、およびマウスESTクローン(レスジーン(Resgene))をテンプレートとして、メーカーの推奨に従いPCR反応のために使用した。PCR条件は以下の通りであった。すなわち、94℃で20秒間、60℃で30秒間、72℃で1分間の35サイクル、および72℃で5分間の1サイクル。
【0128】
マウスマイティー遺伝子のcDNAをウィザード(Wizard)PCR調製DNA精製系((プロメガ(Promega))によって精製し、メーカーのプロトコールによりpcDNA3.1D/V5HisTOPOベクター(インビトロジェン(Invitrogen))のTOPO部位へクローン化した。組換えを制限消化によって分析し、陽性組換えを配列決定した。
【0129】
マウスマイティー構成物によるC2C12の安定トランスフェクションのために、C2C12筋芽(1×107)を2回、良く冷えた1×HBS(140mM NaCl、0.77mM NaHP、25mM Hepes(7.1))中で洗浄し、良く冷えた1×HBS0.5ml中に再懸濁し、予冷キュベットギャップ0.4cm(バイオラッド(BioRad)に移した。10μgの線形化プラスミドDNAを添加した(Sca Iで線形化)。氷上で5分後、細胞を攪拌によって混合し、200Ωで設定した抵抗による静電容量960μFでキュベットを0.24kVでパルスし、時定数は平均36msであった。細胞を氷上で10分間インキュベートし、10cm皿上のDMEM10mlの10%FBSに移し、上下に粉砕して細胞破片に解体した。次いで、細胞をジェネテシン(600μg/ml)で選択し、個々のクローンを選択した。トランス遺伝子を発現するクローンをプラスミドにおけるV5タグのウェスタンブロットによって同定した。
【0130】
実施例4:筋芽増殖アッセイ
アッセイ前に、C2C12細胞(YaffeとSaxel)およびトランスフェクトC2C12クローンを、NaHCO(41.9mmol/l、シグマ・セル・カルチャー株式会社(Sigma Cell Culture Ltd)、St Louis、ミズーリ州(MO)、米国)および気体COで緩衝したDMEM培地(ライフ・テクノロジーズ(Life Technologies)、Grand Island、ニューヨーク州(NY)、米国)中で成長させた。フェノールレッド(7.22nmol/l、シグマ(Sigma))をpH指示薬として使用した。ペニシリン(1×10IU/l)およびストレプトマイシン(100mg/l、シグマ(Sigma))を、10%胎仔ウシ血清(ライフ・テクノロジーズ株式会社(Life Technologies Ltd)もそうであるように規定通りに培地に添加した。
【0131】
細胞増殖アッセイを非コート96ウェルヌンク(Nunc)マイクロタイタープレートで行った。C2C12培養物を増殖培地中に3×10細胞/cmで播種した。24時間の付着期間後、培地を傾斜し、添加した新鮮増殖培地をプレートに戻した。
【0132】
次いで、プレートを37℃および5%COの雰囲気下にインキュベートした。試験プレートを培地変更後0、24、48、および72時間の時点で固定し、Oliver et al.(1989)の方法によって増殖についてのアッセイを行った。手短に言えば、成長培地を傾斜し、細胞を1回PBSで洗浄し、次いで30分間、10%ホルモル食塩水中に固定した。次いで、固定細胞を30分間、0.01Mホウ酸塩バッファー(pH8.5)中メチレンブルー10g/lで染色した。過剰染料をホウ酸塩バッファー中での連続4回の洗浄によって除去した。次いで、メチレンブルーを1:1(v/v)のエタノールと100mlの0.1M HClの添加によって固定細胞から溶出した。次いで、プレートを静かに振り、マイクロプレート光度計(バイオラッド(BioRad)モデル3550マイクロプレートリーダー、バイオラッド(BioRad)、Hercules、カリフォルニア州(CA)、米国)によって各ウェルについて655nmでの吸光度を測定した。
【0133】
図4における結果は、マイティー遺伝子でトランスフェクタした細胞は高い吸光度を有し、正常C2C12細胞と比べより速い成長速度を示したことを示す。この結果は、マイティーが筋芽細胞の成長を上方調節するように作用することを示す。
【0134】
実施例5:マイティー誘発肥大
筋形成の促進におけるマイティーの機能を評価するために、マイティーを安定に発現する筋芽を低血清培地で分化させた。MHCの免疫染色を行って筋管の形態を評価した。
【0135】
DMEM2%ウマ血清中で72時間分化したマイティー過剰発現細胞および親細胞系、C2C12を1回、PBS中で洗浄し、次いで70%エタノール:ホルムアルデヒド:氷酢酸(20:2:1)で30秒間固定し、次いで3回PBSでリンスした。次いで細胞を1%正常ヒツジ血清(NSS)を含有するTBS中4℃で一夜遮断した。細胞をTBS/1%NSS中で1時間、初代抗体、1:100希釈抗MHCでインキュベートした。細胞を(3×5分)TBSTで洗浄し、TBS/1%NSS中で30分間、二次抗体、1:100希釈ヒツジ抗マウスIgGでインキュベートした。細胞を前述同様に洗浄し、TBS/1%NSS中で30分間、三次抗体、1:100希釈ストレプトアビジン−ビオチンペルオキシダーゼ複合体(RPN1051、アマシャム(Amersham))でインキュベートした。次いで、細胞を前述同様に再度洗浄した。MHC免疫染色を0.0375%CoClで強化した3,3−ジアミノベンジジンテトラヒドロクロライド(DAB、インビトロジェン(Invitrogen))を使用して視覚化し、次いでジルス(Gills)ヘマトキシリンで対比染色し、マウンティングし、写真撮影した。
【0136】
図5に示されているように、マイティーの発現は筋核数における増加をもたらし、マイティーが筋細胞における肥大をも促進することを示す。
【0137】
実施例6:マイティー誘発肥大の分析
方法:
細胞培養
C2C12細胞または2つのマイティー過剰発現C2C12クローン、クローン7およびクローン11を、活発に成長する細胞の分析には15,000細胞/cm、分化試験の分析には25,000細胞/cmでパーマノックス(permanox)カバースリップ(ヌンク(Nunc))上にプレーティングした。
【0138】
5%CO2/37℃の雰囲気下の24時間の付着期間後、培地を成長培地(DMEM/10%FBS)またはDMEM/2%HS(分化培地)(インビトロジェン(Invitrogen))のいずれかに変更し、細胞を60および72時間分化させた。細胞を視覚化するために、70%エタノール20部/40%ホルムアルデヒド2部/氷酢酸1部で適切な時点で培養を固定し、次いでジルス(Gills)ヘマトキシリン(1:1)で5分間染色した後、1%エオシンで1分間染色した。次いで、カバースリップを100%エタノール中で脱水し、清掃し、スライドガラス上でDPXを使用して恒久的にマウンティングした。
【0139】
ヒト筋芽培養
ヒト骨格筋筋芽をクロネチックス(Clonetics)、ケンブレックス(Cambrex)ニュージャージー州(NJ)、米国から入手した。細胞をメーカーの説明書によりrhEGF、デキサメタゾン、FBS、グルチミン、GA−1000を含有するSkGM−2培地中で規定通りに成長させた。
【0140】
トランスフェクションおよび馴化培地実験のために、30,000細胞/cmの密度で細胞をプレーティングした。24時間の付着期間後、培養物をマイティー−pCDNA3および対照ベクターでトランスフェクトし、または馴化培地を受けた。馴化培地は、マイティークローン11または対照細胞による48時間の馴化にかけられていたDMEM/2%HSで構成された。
トランスフェクションの24時間後、培地をDMEM/2%HSに変更した。培養物を12、24、36、48時間に20:2:1の固定剤で固定した。
【0141】
C2C12クローンにおける肥大の定量化
オリンパス(Olympus)顕微鏡に取付けたSPOT RTカメラで、ウィンドウズ(Windows)およびマック(Mac)用に設計されたSPOT RTソフトウェアv3.5を使用して画像を収集した。活発に成長する細胞については、細胞系当たり40の無作為に選択された細胞の面積を40倍の倍率で測定した。筋管については、細胞系当たり40の無作為に選択された筋管の面積、幅、および長さを測定し、3および4個の核については、それぞれ、やはり40倍の倍率で測定した。データは平均+/−標準偏差で表されている。
【0142】
FACS分析
マイティー過剰発現C2C12クローン7および11、ならびにlacZ対照C2C12筋芽をDMEM10%FBS中で10cm皿において培養した。細胞をトリプシンを使用して回収した後、遠心分離し、70%エタノール/PBS 800ml中に固定した。次いで、固定細胞をPBS 50μl+DNA抽出バッファー(200mM NaHPO、100mMクエン酸)500μl中に10分間、室温下に再懸濁した。DNA抽出バッファーをDNA染色バッファー(プロピジウムアイオダイド50μg/ml、PBS中DNaseを含まないRNase A50μg/ml)で置換し、再懸濁細胞に短くボルテックスし、暗所で室温下、30分間インキュベートした。次いで、べクトン・ディッキンソン(Becton−Dickinson)FACScanフローサイトメーター(べクトン・ディッキンソン(Becton−Dickinson)を使用するプロピジウムアイオダイド蛍光および前方角光散乱について検査し、細胞周期分析のために、細胞サイズ、およびDNA含量の測定を、セルフィット(CellFit)ソフトウェア(べクトン・ディッキンソン(Becton−Dickinson)を使用して分析した。
【0143】
ウェスタンブロット法
マイティー過剰発現C2C12クローン7および11、ならびにlacZ発現C2C12筋芽をDMEM10%FBS中で10cm皿において、0、24、48、72、および96時間の分化培地(DMEM2%HS)へ変更される前の24時間培養した。細胞をトリプシン化によって回収し、溶解バッファー(50mMトリス(pH7.5)、250mM NaCl、5mM EDTA、0.1%NP−40、1×プロテアーゼ阻害剤(コンプリート(Complete)、ロシュ(Roche))300μl中に再懸濁した。細胞抽出物を0.5mmの注射針に10回通過させ、遠心分離し(10分間14,000g)、細胞破片にペレット化し、上清をウェスタンブロット法のために使用した。バイオ・ラッド(Bio−Rad)タンパク質アッセイ試薬(バイオ・ラッド(Bio−Rad))を使用してタンパク質濃度を測定し、タンパク質15μgを45mAでプレキャストNuPAGE4−12%Bis−トリスゲル(インビトロジェン(Invitrogen))で電気泳動させた。次いで、50−60Vで2時間、Mini−ProteanII転写系(バイオ・ラッド(Bio−Rad))を使用してタンパク質ゲルをトランス・ブロット転写膜(バイオ・ラッド(Bio−Rad))に移した。次いで、膜を一夜、TBST中5%ミルク中で遮断した。初代抗体を以下の通りTBST中5%ミルク中で希釈し、すなわち、p21、精製マウスモノクローナル抗−p21抗体(SX118、ファルミンゲン(PharMingen)の1:400希釈、MyoD、精製ウサギポリクローナル抗−MyoD抗体(sc−304、サンタ・クルズ(Santa Cruz)の1:200希釈、MHC、精製マウスモノクローナル抗−MHC抗体(MF−20、ドナルド・フィッシュマン(Donald Fischman)博士からの寄贈)、α−チューブリン、精製マウスモノクローナル抗−α−チューブリン抗体(DM1A、シグマ(Sigma))の1:4000希釈、かつ室温下に3時間インキュベートした。膜を5回、TBST中で5分間洗浄し、さらに1時間、室温下に、1:2000の希釈で抗マウスIgG HRPコンジュゲート(P0447、ダコ(Dako))または抗ウサギIgG HRPコンジュゲート(P0448、ダコ(Dako))を含有するTBST中5%ミルク中でインキュベートした。次いで、膜を5回、TBST中で5分間洗浄し、ウェスタン・ライトニング化学発光試薬プラス(パーキン・エルマー(Perkin Elmer))を使用してHRP活性を検出した。
【0144】
結果
マイティー過剰発現筋芽および筋管は対照細胞と比べ肥大を示す。
活発に成長するマイティー過剰発現クローンは、対照細胞と比べると肥大していると思われる。定量画像分析を使用すると、活発に成長するマイティー過剰発現クローンは対照細胞よりも著しく大きな面積を有する(図6A)。この結果を裏付けるために、筋芽肥大、または相対細胞サイズを前方角光散乱を使用するフローサイトメトリーによって測定した。この分析により、クローン11およびクローン7のそれぞれ対照細胞と比べ細胞サイズの増加が明らかにされた(図6B)。
【0145】
分化マイティー過剰発現クローンも対照細胞と比べると肥大していると思われる。肥大に対する説明が筋管により融合された細胞の数の増加でありうるということから、筋管のサイズをマイティー過剰発現クローンと対照細胞との間の同じ数の核と比較する分析を行った。定量画像分析を使用すると、筋管肥大がマイティー過剰発現クローンにおいて明らかであった。3および4個の核を有する筋管の筋管の面積、幅、および長さを比較した。マイティー過剰発現クローンは、3個および4個の核を有する筋管において対照細胞と比べ面積、幅、および長さにおける増加を明らかに示した(図6C−6E)。
【0146】
マイティー過剰発現クローンは対照細胞よりも早く分化する
マイティー過剰発現クローンの分化表現型は、MHCに対する免疫細胞化学を使用し、筋管形成を視覚化することによって判定された。マイティー過剰発現クローンを分化培地へ切り替えると、多核筋管が60時間までにマイティー過剰発現クローンにおいて明らかであると同時に、72時間まで対照培養において多核筋管が明らかにならない。72時間までにマイティー過剰発現はほぼ完全に分化したように思われるが、対照細胞は新生筋管のみを形成しているように思われる(図7A)。これらの結果は分化マーカーに対するウェスタンブロット法を使用して裏付けられた。早期、中期、および後期分化マーカーp21、myoDおよびMHCをそれぞれ使用し、筋分化遺伝子発現を調査した(図7B)。p21発現はすべての時点で増加し、p21発現が早期に、かつマイティー過剰発現クローンにおいて相当に発生することを示した。MyoD発現はマイティー過剰発現クローンにおいて早期に増加し、MyoD発現は分化の0、24、および48時間の時点で対照細胞と比べ増大した。MyoDレベルはすべての細胞系において72時間までに同等に高かった。MHC発現はクローン11において24時間までに発生し、48時間の時点で両方のクローンにおいて高いレベルに発現される。この発現はすべての細胞系において72時間までに同等である。筋分化マーカーの早期および増加した発現は組織化学的結果と一致している。これらの結果は、マイティーの過剰発現が結果として増強した分化表現型をもたらすことを示す。
【0147】
実施例7:筋発達におけるマイティー
方法
衛星細胞(静止)の単離
衛星細胞(SC)を4週齢野生型マウスの後肢筋から単離した(パーコール密度遠心分離)。筋を細分化し、0.2%コラゲナーゼ型1Aで90分間消化した。細胞を軽度の粉砕によって基底膜より下で放出させ、次いでろ過した(70μm)。次いで、細胞懸濁液を70%/40%パーコール勾配ヘオーバーレイし、1,600rpmで20分間遠心分離した。衛星細胞を含有する70%と40%のパーコール溶液間の接触面を回収し、細胞をPBSで洗浄した。ウェスタンブロット法のためのタンパク質を抽出するために、細胞を溶解バッファーに再懸濁し、0.45mmゲージ針に通して細胞を溶解した。細胞破片を10,000rpmで10分間の遠心分離によって除去し、結果として生じるタンパク質溶液を−80℃で保存した。
【0148】
初代筋芽(活性化衛星細胞)の単離
後肢筋を4週齢マウスから除去し、完全に細分化し、DMEM(非血清)中0.2%コラゲナーゼ1Aで37℃下、震盪(70rpm)させながら90分間、消化した。消化物を塊が見えなくなるまで繰り返し10mlピペットで粉砕した。次いで、懸濁液を100μmおよびさらに70μmフィルタを通じてろ過した。次いで、ろ過懸濁液を4,000rpmで10分間遠心分離し、ペレットを加熱増殖培地[DMEM、20%胎仔ウシ血清(FCS),10%ウマ血清(HS)、1%ニワトリ胚抽出液(CEE)]8mlに再懸濁した。この細胞懸濁液を非コート10cmプレートへ1.5時間、前プレーティングし、次いで10%マトリゲルプレートに移し、48時間、37℃でインキュベートした。48時間後、培地をDMEM+10%FCSのいずれかに変更した。細胞を24時間後に活発に成長する条件下に収集した。ウェスタンブロット法のためのタンパク質を抽出するために、細胞を溶解バッファーに再懸濁し、0.45mmゲージ針に通して細胞を溶解した。細胞破片を10,000rpmで10分間の遠心分離によって除去し、結果として生じるタンパク質溶液を−80℃で保存した。
【0149】
マイティーのウェスタン分析
プレキャストポリアクリルアミドゲル(インビトロジェン(Invitrogen)、NuPage4−12%Bis−トリス)をタンパク質分離のために使用した。タンパク質15μgをSDS−PAGE(4−12%)によって分離し、エレクトロブロット法によってニトロセルロース膜に移した。ニトロセルロース膜上に存在するタンパク質をポンソー(Ponceau)S染料を使用して検出し、負荷でも確実に発生させた。膜を0.3%BSA/1%PVP/1%PEG/TBS−T中で3時間、室温(RT)でインキュベートし、非特異的抗体結合を遮断した。次いで、膜を0.3%BSA/1%PVP/1%PEG/TBS−T中ウサギ抗体1:5000希釈で4℃下に一夜、静かに震盪させながらインキュベートした。抗体インキュベーション間に膜を5回それぞれ5分TBS−Tで洗浄した。次いで、ニトロセルロース膜を0.3%BSA/1%PVP/1%PEG/TBS−T中ホースラディシュ・ペルオキシダーゼ(HRP)(アマシャム(Amersham))1:2000希釈にコンジュゲートしたヤギ抗ウサギで1時間インキュベートした。HRP活性をECL試薬(ウェスタン・ライトニング・ケミルミネセンス試薬プラス(Western Lightning Chemiluminescense Reagent Plus)で検出した。
【0150】
結果
マウス衛星細胞におけるマイティーの発現
マイティータンパク質発現のパターンを判定するために、総タンパク質を静止衛星細胞、活発に成長する筋芽から抽出した。マイティータンパク質発現レベルをウェスタンブロット法によって分析した(図8)。静止衛星細胞ではマイティータンパク質発現が検出されなかった。しかし、活発に成長する筋芽(活性化衛星細胞)ではマイティータンパク質が検出された。
【0151】
実施例8:筋再生におけるマイティー
方法
ノテキシン誘発再生
6週齢野生型マウスをケタミン/ロンプン(塩酸ケタミン100mg/ml、塩酸キシラジン20mg/mlを0.1ml/6gm体重)で腹腔内注射によって麻酔した。毛皮を右前脛骨(TA)筋上部位から切取り、小切開を筋上で行った。100μl注射器(ハミルトン社(Hamilton Co.)を使用し、10μl中ノテキシン(Notechis scutatus scutatus)(ベノム・サプライズ(Venom Supplies Pty株式会社(Ltd.)、Tanunda、南オーストラリア州(South Aust)0.1μlを右TAへ注射した。切開をミシェル(Michelle)クリップで閉鎖した。CO窒息による損傷後各々の日にマウスを安楽死させた後、頸椎脱臼を行った。左右のTA筋を注意深く別々にし、秤量して免疫組織化学分析用に処理した。
【0152】
マイティーの免疫組織化学
マウスTA筋およびヒツジ心組織を単離し、OCT中に埋込み、液体窒素で冷蔵したイソペタン中に凍結した。低温切開片を10μmで切断し、スライドを使用するまで−20℃で凍結した。切片をPBS、0.1%トリトンX−100中に30分間、室温で透過化し、PBS、10%正常ロバ血清、1%BSA、0.1%トリトンX−100中1:100希釈における初代抗マイティー抗体で一夜、4℃でインキュベートした。PBSで3回4分の洗浄後、スライドをPBS、5%正常ロバ血清、1%BSA、0.1%トリトンX−100中で1時間インキュベートし、二次抗体の非特異的結合を削減した。切片をビオチニル化抗ウサギ二次抗体(アマシャム(Amersham)、英国)で1:300希釈で1時間、室温でインキュベートした。PBSで洗浄後、切片を最後にストレプトアビジン−コンジュゲートアレクサ フルオル(Alexa fluor)488標識三次抗体(モレキュラー・プローブス(Molecular Probes)、米国)で1時間、室温でインキュベートし、PBSで洗浄し、DAPI(4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール、二塩素酸塩、モレキュラー・プローブス(Molecular Probes)、米国)で対比染色し、DAKO蛍光マウント培地にマウンティングし、マイティー発現について分析した。対照片を初代抗体またはウサギ対照IgGのいずれかでインキュベートし、次いで上述した通り処理した。
【0153】
結果
マウスTA筋再生中のマイティーの発現
野生型マウスにおける筋再生中のマイティーの発現を調査するために、ノテキシンの右前脛骨(TA)筋への注射によって損傷を誘発した。注射後さまざな日にマウスを安楽死させ、TA筋を収集した。マイティー発現のパターンを判定するために、免疫組織化学を行った(図9)。損傷後1日目、筋線維の完全性への広範囲の損傷が認められたが、マイティー発現のレベルにおける変化は確認されなかった。5日までにマイティー発現レベルは0日と比べ実質的に増加し、レベルのピークは損傷後7日目であった。28日までのマイティー発現のレベルは、対照、非損傷筋と同等であった。
【0154】
実施例9:ヒツジにおける梗塞後心組織におけるマイティーの発現
方法
ヒツジ心における心筋梗塞をSharmaら、1999年に記載された公開された方法によって誘発した。心組織を0日(非梗塞)、および梗塞後2日、および6日に収集した。マイティー発現のパターンを判定するために、筋再生実施例(実施例8)に記載されている通り心組織切片で免疫組織化学を行った。
【0155】
結果
非梗塞心組織ではマイティーの発現は一様であり、心筋細胞を取囲む間質内に位置した細胞に限定されていた。マイティーは心筋細胞によって発現されるようにも思われなかった。梗塞後2日のマイティーの発現は、対照心臓におけるものと類似していた。梗塞後6日までに主に梗塞域内の浸潤細胞の数における実質的な増加が認められた。マイティーの発現は壊死性心筋の部位に最も近く位置した浸潤細胞に限定されていた。浸潤細胞が生存心筋に隣接した場合、発現レベルは対照と同様に残存した。梗塞部位より遠位の浸潤細胞はマイティーを発現することはなかった(図10)。
【0156】
壊死性心筋における間質線維芽細胞および浸潤細胞のマイティーの存在により、マイティーが治癒の過程に関与していることが裏付けられる。
【0157】
実施例10:ヒト筋芽の分化および肥大に対するマイティーの効果
結果
マイティーでトランスフェクされたヒト筋芽における分化の増加
ヒト筋芽における分化に対するマイティー過剰発現の効果を判定するために、ヒト筋芽をマイティーpcDNA3またはpcDNA3のみ(対照)でトランスフェクトし、分化培地で12時間培養した。分化筋管の数を測定するために、ミオシン重鎖(MHC)特異的抗体を使用する免疫組織化学を行った。分化条件下の12時間後、MHC陽性筋管の数は、対照筋芽と比べマイティートランスフェクトヒト筋芽において多かった(図11)。
【0158】
マイティーでトランスフェクトされたヒト筋芽の肥大
ヒト筋芽をマイティーpcDNA3またはpcDNA3のみ(対照)でトランスフェクトし、分化条件下に12時間培養した。肥大を判定するために、ミオシン重鎖(MHC)特異的抗体を使用する免疫組織化学を行い、MHC陽性筋管当たりの筋核の数を計算した(図12A)。結果は、少数のマイティーでトランスフェクトされたヒト筋管が1−3個のみの筋核を含有し、対照と比べ多数の筋管が4−9個の筋核を含有した。MHC発現筋管の肥大も5−9個の筋核を含有する筋管の幅を測定することによって評価した(図12B)。マイティートランスフェクト筋管の平均幅は対照筋管と比べ大きかった(図12B)。
【0159】
マイティー過剰発現C2C12細胞からの馴化培地で処理したヒト筋芽の肥大
マイティーによって誘発された加速分化および肥大の現象を明らかにするために、ヒト筋芽を分化条件下、マイティー過剰発現C2C12細胞およびLacZ(対照)C2C12細胞から馴化培地で48時間培養した。肥大のレベルを上記の通り評価した。マイティー過剰発現C2C12細胞からの馴化培地で培養したヒト筋芽は、対照処理筋芽と比べ、1−5個の筋管のみを有する少数の筋管、および16−25個の筋核を有する多数の筋管を含有した(図13A)。筋核の平均数は、対照と比べマイティー過剰発現C2C12細胞からの馴化培地で処理したヒト筋芽において多かった(図13B)。
【0160】
MHC発現筋管の肥大もまた筋管の幅を測定することによって評価した。8個の筋核を含有するMHC発現筋管を測定した(図13)。マイティー過剰発現C2C12細胞からの馴化培地で処理された筋管の平均幅は、対照筋管と比べ大きかった。
【0161】
マイティーからの馴化培地で処理されたヒト横紋筋肉腫(RD)における分化の増加
方法
ヒトRD(横紋筋肉腫)細胞をATCC(ロックビル(Rockville)、メリーランド州(MD))から得た。RD細胞を、41.9mM NaHCO(シグマ・セル・カルチャー株式会社(Sigma Cell Culture Ltd)および5%気体COで緩衝したダルベッコ変法イーグル培地(Dulbecco’s Modified Eagle Medium)(DMEM、インビトロジェン(Invitrogen))におけるアッセイ前に成長させた。7.22nMフェノールレッド(シグマ(Sigma))をpH指示薬として使用した。1×10IU/Lペニシリン(シグマ(Sigam))100mg/Lストレプトマイシン(シグマ(Sigam))および10%胎仔ウシ血清(FBS、インビトロジェン(Invitrogen))を培地に添加した。RD細胞を30,000細胞/cmの密度でパーマノックスチャンバースライド上にプレーティングした。24時間後、それらをヒト筋芽について言及された通り馴化培地(マイティークローン11)で処理し、細胞を72時間後に固定した。MHCの免疫細胞化学を行った。
【0162】
結果
ヒトRD細胞をマイティー馴化培地および対照培地で処理し、72時間分化させた。細胞をMHCに対して免疫染色し、分化の程度を評価した。MHC陽性筋管の数は対照細胞と比べ処理細胞で高く、マイティー過剰発現クローンからの馴化培地が分化を加速しうることを示した(図15)。
【0163】
実施例11:マウスマイティープロモータのクローニング
方法
2.1kbの5’上流配列をマウスゲノムDNAおよび以下のプライマーを使用して増幅した。すなわち、
Rev 5’AGA TCT GAT CCA ACT CTT CAG CTA C 3’ (配列番号10)
Fwd 5’GCT AGC CCA CAT TCA CTG TGC AAG 3’ (配列番号11)
PCRをQ溶液(キアゲン(Qiagen))およびエキスパンドロングDNAポリメラーゼ(ロシュ(Roche))を使用し、メーカーのプロトコールに従い行った。PCR条件は、95℃で15秒間、52℃で30秒間、68℃で3分間の35サイクル、および68℃で7分間の最終伸長の1サイクルであった。
【0164】
PCR産物を0.8%アガロースゲルで分析し、ウィザード(Wizard)精製カラム(プロメガ(Promega))により精製した。精製DNA断片を上述した通りpGEM−Tイージー(easy)ベクターへクローン化した。陽性組換えを選択し、制限消化およびシークエンシングによって分析した。2.1kb断片をpGEM−TイージーベクターからBglIIおよびNhel酵素によってルシフェラーゼレポーターベクターpGL3Bへのクローニングのために切断した。pGL3BをBglIIおよびNheLで消化し、2.1kbマイティープライマー断片を、T4リガーゼを使用してライゲートした。大腸菌(E.coli)DH5アルファをライゲーション反応物で形質転換し、LB寒天+アンピシリンプレート上にプレーティングした。培養物をLB+アンピシリン培地で成長させ、プラスミドDNAを前述した通り精製した。プラスミドDNAを制限消化によって分析し、陽性組換えを識別した。陽性組換え(2.1構成物)をシークエンシング(配列番号5)によって確認した。トランスフェクション実験のために、キアゲン(Qiagen)Maxi Prepキット(キアゲン(Qiagen))を使用して精製した。
【0165】
マイティープロモータ配列は配列番号5で示されている。マイティープロモータ配列も既知の転写因子結合部位について分析した(図3)。これらの部位はプロモータ配列の決定的な役割を担っていることを示す。
【0166】
実施例12:ヒトを含むさまざまな細胞系におけるマイティープロモータ活性の実施例
方法
1kbのマイティー上流配列(2.1kbマイティープロモータの断片)をルシフェラーゼレポーターベクターpGL3−ベーシック(プロメガ(Promega))ヘクローン化した。1kbマイティープロモータ断片を2.1kbプロモータ配列から制限消化によって得た。Sca1、BglII消化を2.1マイティープロモータ構成物で行い、〜1kb断片を切除した。次いで、この断片をルシフェラーゼ発現を推進する正確な方向で多重クローニング部位内のSmaIおよびBglII部位へクローン化した。
【0167】
このプロモータ構成物2μgおよびβ−ガラクトシダーゼ(β−gal)発現プラスミドpCH110(アマシャム(Amersham))0.5または1μgでトランスフェクション効率の標準化のためにトランスフェクションを行った。C2C12筋芽、NIH3T3、CHO、RD(ヒト横紋筋肉腫細胞系)および初代ヒツジ筋芽をリポフェクトアミン(LipofectAMINE)2000試薬(LF2000、インビトロジェン(Invitrogen))を使用し、メーカーのプロトコールに従って上記のベクターでトランスフェクトした。手短に言えば、細胞系を適切な成長培地中15,000細胞/cmで6ウェル細胞培養皿(ヌンク(Nunc))上にプレーティングし、トランスフェクション前に5%CO中で一夜、37℃でインキュベートした。構成物をウェル当たり血清を有さないDMEM 250μl中で希釈した。LF2000をウェル当たり血清を有さないDMEM 250μl中5−8μlで希釈した。次いで、希釈DNAおよびLF2000を混合し、室温で20分間インキュベートした。次いで、DNA/LF2000混合物を適切な成長培地2ml中細胞を含有するウェルに添加した。細胞系をトランスフェクション混合物で37℃下、5%COで一夜インキュベートし、その後に培地を成長または分化培地のいずれかで置換した。次いで、細胞をウェル当たりPBS5ml中で2回リンスし、レポーター溶解バッファー(プロメガ(Promega))300−500μlで溶解した。細胞溶解物10μlを使用し、メーカーのプロトコールによりルシフェラーゼアッセイシステム(プロメガ(Promega))を使用してルシフェラーゼ活性を検出した。細胞溶解物50μlを使用し、メーカーのプロトコールによりレポーター溶解バッファー(プロメガ(Promega))とともにβ−ガラクトシダーゼ酵素アッセイシステムを使用してβ−galアッセイを行った。ルシフェラーゼ値をβ−gal値に標準化し、トランスフェクション効率のために標準化した。
【0168】
結果
マウスマイティー上流配列1kbをさまざまな細胞系へトランスフェクトした。これらにはC2C12筋芽、初代ヒツジ筋芽、NIH3T3線維芽細胞、およびチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(図16A)およびヒトRD細胞(図16B)が含まれる。マウスマイティープロモータは、これら細胞系のすべてにおいて強い活性を示した。したがって、マイティープロモータは、異なる組織型およびヒトを含む種由来の細胞系において強い発現を示す。
【0169】
実施例13:ミオスタチンによるマイティープロモータの用量依存阻害
方法
C2C12筋芽におけるマイティープロモータのトランスフェクションの方法は、ミオスタチンタンパク質でトランスフェクトされた細胞の処理を除き上述した通りであった。トランスフェクションの24時間後、成長培地中組換えミオスタチン4および8μg/mlで細胞を処理した。細胞を処理の24時間に回収した。ルシフェラーゼおよびβ−ガラクトシダーゼ活性を上記の通り判定した。
【0170】
結果
1kbマウスマイティープロモータをC2C12筋芽へトランスフェクトし、4および8μg/mlの増加する濃度の組換えミオスタチンタンパク質で処理した。1kbマイティープロモータの活性は、ミオスタチンタンパク質4および8μg/ml(それぞれ、39.23+/−0.99%および58.22+/−1.00%)の存在下に阻害される。さらにミオスタチンの濃度を増加することによりマイティープロモータは増加範囲に阻害された(図17)。したがって、ミオスタチンは用量依存的にマイティープロモータを阻害する。
【0171】
実施例14:ミオスタチン模倣剤(335)はマイティープロモータに対するミオスタチンの効果を救援する
ヒツジ衛星細胞のトランスフェクト
ヒツジ衛星細胞を上述した通りDMEM+10%FBSで成長させた。細胞を24ウェルプレートにおいて1kbマウスマイティープロモータ構成物0.4μgおよびpCH110(SV40β−ガラクトシダーゼ対照ベクター、アマシャム(Amersham))0.1μgでリポフェクタミン2000を使用し、メーカーの説明書(インビトロジェン(Invitrogen))に従いトランスフェクトした。24時間後、培地をDMEM+10%FBS+3μg/ml野生型組換えミオスタチンまたは335(15mg)もしくはミオスタチンおよび335に変更した。培地変更の24時間後、細胞抽出物を作り、ルシフェラーゼアッセイ(プロメガ(Promega))を確立されたプロトコールに従い行った。β−ガラクトシダーゼ活性のアッセイをプロトコール(プロメガ(Promega))に従い行った。ルシフェラーゼ活性をβ−ガラクトシダーゼ活性に標準化した。
【0172】
結果
ヒツジ芽を1kbマイティープロモータおよびβ−ガラクトシダーゼベクターでトランスフェクトし、ミオスタチンまたはミオスタチン模倣剤もしくは両方で処理した。図18に示されているように、野生型ミオスタチンによる治療とともにマイティープロモータ活性の33%の阻害が確認された。細胞をミオスタチンと5モル過剰の335で処理した場合、ミオスタチンの優性阻害模倣剤のマイティープロモータ活性のわずか19%の阻害が確認された。したがって、優性阻害ミオスタチン模倣剤335は、マイティープロモータのミオスタチン介在阻害を救援しうる。
【0173】
実施例15:マイティープロモータの切断分析
方法:
マイティー0.6kbプロモータをNheI制限部位5’−GCTAGCGTGATCCGATTAATGGCC−3’を有する順方向プライマーおよびBglII制限部位5’−AGATCTGATCCAACTCTTCAGCTAG−3’を有する逆方向プライマーを使用して増幅させた。マイティー0.4kbプロモータをNheI制限部位5’−GCTAGCCCCTTTAGAATCACCTC−3’を有する順方向プライマーおよびBglII制限部位5’−AGATCTGATCCAACTCTTCAGCTAG−3’を有する逆方向プライマーを使用して増幅させた。マイティー0.315kbプロモータをNheI制限部位5’−GCTAGCCGCAGGTGCGAAAGACCTC−3’を有する順方向プライマーおよびBglII制限部位5’−AGATCTGATCCAACTCTTCAGCTAG−3’を有する逆方向プライマーを使用して増幅させた。マイティー0.287kbプロモータをNheI制限部位5’−GCTAGCTCCGGCAGAGAGCGTGAAG−3’を有する順方向プライマーおよびBglII制限部位5’−AGATCTGATCCAACTCTTCAGCTAG−3’を有する逆方向プライマーを使用して増幅させた。マイティー0.209kbプロモータをNheI制限部位5’−GCTAGCAGACCGGCCTACTTCTTC−3’を有する順方向プライマーおよびBglII制限部位5’−AGATCTGATCCAACTCTTCAGCTAG−3’を有する逆方向プライマーを使用して増幅させた。これらの切断をルシフェラーゼ発現を推進させる正しい方向でpGL3bのNheIおよびBglII制限部位へクローン化した。
【0174】
結果
マイティープロモータ断片(0.2kb〜2.1kb)をC2C12筋芽へトランスフェクトし、ルシフェラーゼ活性アッセイを行った。ルシフェラーゼ活性をβ−ガラクトシダーゼ活性に標準化した。図19(AおよびB)に示されている結果は、プロモータ活性が300bp〜1kbのマイティープロモータで最大であることを示す。1kb〜2.1kbのプロモータ活性におけるわずかな減少があるように思われる。
【0175】
実施例16:マイティー抗体製造
方法
完全長ウシマイティータンパク質に対するポリクローナル抗体がウサギにおいて引き起こす。メーカーのプロトコールに従い、最初にウシマイティーcDNAをpRSET Bベクター(インビトロジェン(Invitrogen))へクローン化し、最後に大腸菌(E.coli)BL21star(インビトロジェン(Invitrogen))へ形質転換した。組換えタンパク質の発現を0.5mM IPTGを添加し、インキュベーションを2時間半継続することによって誘発した。細菌を遠心分離によって収集し、溶解バッファー(6MグアニジンHCl、20mMトリスpH8.1、5mM 2−メルカプトエタノール)40ml中に再懸濁し、次いで超音波で分解した。溶解物を10,000gで30分間遠心分離し、組換えタンパク質をNi−アガロース親和性プロトコール(キアゲン(Qiagen)、Valencia、カリフォルニア州(CA))を使用して上清から精製した。断片をプールし、200mM NaClおよび5%グリセロールを含有する50mMトリスpH8.0の2つの変更に対し90分間4℃で透析した。精製マイティータンパク質をフロイントアジュバントで乳化し、各ウサギ(341 g/ウサギ)へ注射した。その後、170 gマイティータンパク質/注射を含有する2つの追加抗原投与量を各ウサギに投与した。
【0176】
接種ラビットからの血液を収集し、4℃で15分間2000rpmで遠心分離した。血清を血塊から分離した。プロテインAアガロース2.5mlを使用し、カラムをパックして抗体のIgG画分を精製した。100mMトリスpH8.0 25mlでカラムを洗浄した。血清のpHを1/10容積の1.0Mトリス(pH8.0)および血清5.5mlで調整し、カラムに通した。回収画分をカラムに再び通した。次に、カラムを100mM トリス(pH8.0)25mlで洗浄した。第2の洗浄を10mMトリス(pH8.0)25mlを使用して行った。抗体を100mMグリシン(pH3.0)を使用して溶出した。溶出物を1Mトリス(pH8.0)50μlを含有する管に収集し、静かに混合した。免疫グロブリン含有画分をタンパク質推定用のブラッドフォード(Bradford)法を使用して同定した。
【0177】
ペプチド特異的マイティー抗体
18マーマイティーペプチド(173−190AA)に対する抗体がQEDバイオサイエンス(Bioscience)社(Inc.)、カリフォルニア州(CA)、米国によって発明者の規格で生じた。
【0178】
ウェスタンブロット法
ウェスタンブロット分析を行い、完全長ウシマイティータンパク質および18マーマイティーペプチド(173−190)に対して生じた抗体を検証した。具体的には、組換えウシマイティータンパク質または精製組換えマイティータンパク質を発現する大腸菌(E.coli)からのタンパク質抽出物を、メーカーの説明書に従い、4−12%NuPAGE(インビトロジェン(Invitrogen))ゲルで分解した。マイティータンパク質抗体をウェスタンブロット法には1:10,000で使用したが、ペプチド抗体には1:5000希釈を使用した。
【0179】
結果
ペプチドとマイティータンパク質抗体の両方は、具体的には、ウェスタンブロットでの35kDaタンパク質バンドである予想サイズを認識し、これらの抗体がマイティータンパク質に特異的であることを裏付けた(図20)。
【0180】
前記の説明では参照が整数または既知の等効物を有する成分に行われており、かつかかる等効物は本明細書で個別に記載されたように組込まれている。
【0181】
本発明は実施例として、かつその可能な実施形態を参照して説明されているが、その改良および修正がその範囲を逸脱することなく行われうることを理解すべきである。
【0182】
文献:
Eryl Liddell, J. and Cryer, A. (1996) A Practical Guide to Monoclonal Antibodies. Wiley.
Javois, Lorette C. (1999) Immunocytochemical Methods and Protocols. Humana Press.
Kambadur, R., Sharma, M., Smith, T.P.L. and Bass, J.J. (1997) Mutations in myostatin (GDF-8) in doubled muscled Belgian Blue and Piedmontese Cattle. Genome Res. 7. 910 916.
Michael P. Spiller, Ravi Kambadur, Ferenc Jeanplong, Mark Thomas, Julie K.
Martyn,,John J. Bass and Mridula Sharma (2002). Myostatin is a downstream target gene of basic helix loop helix transcription factor, MyoD. Mol & Cellular Biology 22: 7066-7082.
Oliver, M. H., Harrison, N. K., Bishop, J. E., Cole, P. J. and Laurent, G. J. (1989). A rapid and convenient assay for counting cells cultured in microwell plates: application for assessment of growth factors. Journal of Cell Science 92, 513-518.
Yaffe, D. and Saxel, O. (1977). Serial passaging and differentiation of myogenic cells isolated from dystrophic mouse muscle. Nature 270, 725-727.
【図面の簡単な説明】
【0183】
【図1】ダブル筋肉ウシおよび正常な筋肉ウシからのマイティーのPCR増幅を示す図である。
【図2】(A)正常な筋肉ウシ(wt、レーン1)およびダブル筋肉ウシ表現型(BB、レーン2)の心組織からのマイティーのPCR増幅を示す図である。(B)ヒツジ骨格筋(レーン4)からのマイティーのPCR増幅を示す図である。
【図3】(A)および(B)はマイティープロモータ配列、および同定転写因子結合部位を示す図である。
【図4】筋芽C2C12細胞増殖におけるマイティーの発現の結果を示す図である。
【図5】MHC抗体による対照およびマイティー過剰発現筋管の免疫染色を示す図である。
【図6】(A)細胞領域の定量的画像分析によって測定された活発に成長するC2C12クローン7および11およびlacZ対照の測定を示す図である。定量的画像分析によって測定された筋管を含有する3核の(B)前角光散乱(FALS)を測定するFACScanフローサイトメトリー(クローン7およびクローン11において見られる右への移動は細胞サイズの増加を示す)および長さ(C)、幅(D)および面積(E)を示す図である。
【図7】(A)C2C12クローン7および11を過剰発現するマイティー、および対照C2C12筋芽を分化培地(DMEM2%HS)中で48、60、および72時間培養したことを示す図である。(B)C2C12クローン7および11を過剰発現するマイティー、および対照C2C12のウェスタンブロット分析を示す図である。
【図8】静止および活性化衛星細胞におけるマイティータンパク質の検出を示す図である。
【図9】骨格筋再生中のマイティーの発現を示す図である。
【図10】梗塞後心組織におけるマイティーの発現を示す図である。
【図11】マイティーおよび対照トランスフェクトヒト筋芽におけるMHC陽性筋管の数を示す図である。
【図12】(A)筋管当たりの筋核の頻度および(B)5、6、7、8、および9個の筋核を含有する筋管の幅を示す図である。
【図13】馴化培地処理ヒト筋芽における筋核/MHC陽性筋管の数を示す図である。
【図14】8個の筋核を含有する馴化培地処理筋管の幅を示す図である。
【図15】馴化培地処理ヒト横紋筋肉腫(RD)細胞におけるMHC陽性筋管の数を示す図である。
【図16】マウスマイティープロモータがさまざまな細胞系において活性を有することを示す図である。
【図17】マイティープロモータが用量依存的にミオスタチンによって阻害されることを示す図である。
【図18】ミオスタチン模倣剤がマイティープロモータのミオスタチン介在阻害を回復しうることを示す図である。
【図19】マイティー遺伝子の上流断片のプロモータ活性を示す図である。
【図20】マイティータンパク質に対する抗体の適用を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号2または配列番号4から選択される配列を含んでなるポリペプチド。
【請求項2】
請求項1に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項3】
配列番号1または配列番号3から選択される請求項2に記載のポリヌクレオチド。
【請求項4】
a)配列番号1または配列番号3の相補体と、
b)配列番号1または配列番号3の逆相補体と、
c)配列番号1または配列番号3の逆配列と
からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含んでなるポリヌクレオチド。
【請求項5】
サイレント置換または結果として生じるアミノ酸における同類置換をもたらす置換の結果として配列番号1または配列番号3と異なるヌクレオチド配列を含んでなるポリヌクレオチド。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載のポリヌクレオチドによってコードされたポリペプチド。
【請求項7】
請求項1または請求項6に記載の少なくとも1つのポリペプチドまたはそれらの断片を含んでなる融合タンパク質。
【請求項8】
請求項2〜5のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを含んでなるベクター。
【請求項9】
5’−3’方向において
a)遺伝子プロモータ配列と、
b)請求項2〜5のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド配列と、
c)遺伝子末端配列と
を含んでなるベクター。
【請求項10】
前記ポリヌクレオチドがセンス方向にある、請求項8または請求項9に記載のベクター。
【請求項11】
前記ポリヌクレオチドがアンチセンス方向にある、請求項8または請求項9に記載のベクター。
【請求項12】
請求項8〜11のいずれか一項に記載のベクターを含有する宿主細胞。
【請求項13】
a)配列番号1または配列番号3を含んでなるポリヌクレオチド、
b)(a)の断片もしくは変種、
c)(a)との少なくとも95%、90%、もしくは70%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、
d)(a)〜(c)のいずれか1つの相補体、
e)(a)〜(c)のいずれか1つの逆相補体、
f)(a)〜(c)のいずれか1つのアンチセンスポリヌクレオチド、
g)(a)〜(c)のいずれか1つによってコードされたポリペプチド、
h)配列番号2または配列番号4を含んでなるポリペプチド、
i)(g)または(h)の断片もしくは変種、および
j)(g)または(h)に関して少なくとも95%、90%、もしくは70%の配列同一性を有するポリペプチド
のいずれか1つを含んでなる、筋成長を調節するための組成物。
【請求項14】
a)配列番号5の配列、
b)配列番号5との少なくとも95%、90%、または70%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、および
c)(a)または(b)の断片もしくは変種
のいずれか1つを含んでなる、筋成長を調節するための組成物。
【請求項15】
a)配列番号1、配列番号3、または配列番号5、
b)配列番号2または配列番号4のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
c)(a)または(b)との少なくとも95%、90%、または70%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、
d)(a)〜(c)のいずれか1つの相補体、
e)(a)〜(c)のいずれか1つの逆相補体、および
f)(a)〜(e)のいずれか1つの断片もしくは変種
のいずれか1つから選択されるポリヌクレオチドに結合可能な化合物を含んでなるマイティー(mighty)遺伝子発現を調節するための組成物。
【請求項16】
前記化合物がアンチセンスポリヌクレオチドである、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記化合物が干渉RNA分子である、請求項15または16に記載の組成物。
【請求項18】
前記干渉RNA分子がRNAiまたはsiRNA分子である、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記化合物がミオスタチンである、請求項15に記載の組成物。
【請求項20】
前記化合物がミオスタチン模倣剤である、請求項15に記載の組成物。
【請求項21】
前記ミオスタチン模倣剤がアミノ酸位置330と350において、またはその間でC末端切断されたミオスタチンペプチドである、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記ミオスタチン模倣剤がアミノ酸位置330、335、および350のいずれか1つにおいてC末端切断されたミオスタチンペプチドである、請求項20または21に記載の組成物。
【請求項23】
前記化合物が抗体である、請求項15に記載の組成物。
【請求項24】
筋成長に付随する疾患の治療または予防のための請求項13〜23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
前記疾患が筋萎縮に付随している、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
前記疾患が、筋ジストロフィー、筋悪液質、萎縮、肥大、筋消耗関連性癌またはHIV、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、または梗塞を含む心筋成長に付随する疾患から選択される、請求項24または請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
筋損傷後の筋再生を促進するための請求項13〜23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項28】
生物の筋成長を調節する方法であって、請求項13〜23のいずれか一項に記載の組成物を前記生物に投与することを含んでなる方法。
【請求項29】
増加した筋肉量を有する動物を生産するための請求項28に記載の方法。
【請求項30】
筋成長に付随する疾患の治療または予防のための請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記疾患が筋萎縮に付随している、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記疾患が、筋ジストロフィー、筋悪液質、萎縮、肥大、筋消耗関連性癌またはHIV、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、または梗塞を含む心筋成長に付随する疾患から選択される、請求項30または請求項31に記載の方法。
【請求項33】
筋損傷後の筋再生を促進するための請求項28に記載の方法。
【請求項34】
筋成長を調節するための医薬品の製造における請求項13〜23のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項35】
筋成長に付随する疾患の治療または予防のための医薬品の製造における請求項13〜23のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項36】
前記疾患が筋萎縮に付随している、請求項35に記載の使用。
【請求項37】
前記疾患が、筋ジストロフィー、筋悪液質、萎縮、肥大、筋消耗関連性癌またはHIV、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、または梗塞を含む心筋成長に付随する疾患から選択される、請求項35または請求項36に記載の使用。
【請求項38】
筋損傷後の筋再生を促進するための医薬品の製造における請求項13〜23のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項39】
請求項8〜11のいずれか一項に記載のベクター、または請求項13〜18のいずれか一項に記載の組成物を含んでなるトランスジェニック動物。
【請求項40】
前記動物が増加した筋肉量を有する、請求項39に記載のトランスジェニック動物。
【請求項41】
ヒツジ、雌牛、雄牛、シカ、家禽、シチメンチョウ、ブタ、ウマ、マウス、ラット、またはヒトから選択される、請求項39または請求項40に記載のトランスジェニック動物。
【請求項42】
動物における筋肉量を予測する方法であって、
i)前記動物からサンプルを得る工程と、
iii)配列番号1または配列番号3の配列を有するポリヌクレオチド、配列番号1または配列番号3との少なくとも95%、90%、または70%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、またはそれらの断片もしくは変種からの遺伝子発現レベルを測定するか、または配列番号2または配列番号4の配列を有するポリペプチド、配列番号2または配列番号4との少なくとも95%、90%、または70%の配列同一性を有するポリペプチド、またはそれらの断片もしくは変種の量を測定する工程と、
iv)遺伝子発現レベルまたはポリペプチドの量を平均と比較する工程と、
v)前記動物の筋肉量を予測する工程と
を含んでなる方法。
【請求項43】
前記遺伝子発現のレベルがRTPCRまたはノーザン分析を使用して測定される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記ポリペプチドの量がELISAまたはウェスタンブロット分析を使用して測定される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
マイティーの変種を検出する方法であって、
a)配列番号1、配列番号3、または配列番号5、
b)配列番号2または配列番号4のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
c)(a)または(b)との少なくとも95%、90%、または70%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、
d)(a)〜(c)のいずれか1つの相補体、
e)(a)〜(c)のいずれか1つの逆相補体、または
f)(a)〜(e)のいずれか1つの断片または変種
から選択されるヌクレオチド配列の使用を含んでなり、
生物由来のサンプルを前記マイティーの変種についてスクリーニングする方法。
【請求項46】
前記変種が多型である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記多型が単一ヌクレオチド多型である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記マイティーの変種が変化した筋表現型と関連している、請求項45〜47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
改善された筋肉量を有する動物を繁殖させる方法であって、
i)請求項42〜44または48のいずれか一項に記載の方法を使用する筋肉量の増加することが予測される1つもしくはそれ以上の動物を選択する工程と、
ii)筋肉量の増加が予測される1つもしくはそれ以上の動物を繁殖させ、改善された筋肉量を有する動物を生産する工程と
を含んでなる方法。
【請求項50】
前記動物がヒツジ、雌牛、雄牛、シカ、家禽、シチメンチョウ、ブタ、ウマ、マウス、ラット、魚、またはヒトから選択される、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
配列番号2または配列番号4の配列を有するポリペプチド、もしくは配列番号2または配列番号4との少なくとも95%、90%、または70%の配列同一性を有するポリペプチドに優先的に結合する抗体。
【請求項52】

配列番号2または配列番号4の配列に、もしくは配列番号2または配列番号4との少なくとも95%、90%、または70%の配列同一性を有するポリペプチドに優先的に結合する抗体の製造における配列番号2または配列番号4の配列を含んでなるポリペプチドの抗原断片。
【請求項53】
a)配列番号5の配列、
b)配列番号5との少なくとも95%、90%、または70%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、または
c)プロモータ活性を有するそれらの断片もしくは変種
のいずれか1つを含んでなる単離されたポリヌクレオチド。
【請求項54】
マイティー開始部位の上流の少なくとも200のヌクレオチドを含んでなる、請求項54に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項55】
マイティー開始部位の上流の209、287、315、400、600、1000、および2100のヌクレオチドのいずれか1つの断片を含んでなる、請求項54または請求項55に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項56】
請求項54〜56のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを含んでなるベクター。
【請求項57】
請求項57に記載のベクターを含有する宿主細胞。
【請求項58】
筋成長の抑制または促進において潜在的に有用である1つもしくはそれ以上の化合物についてスクリーニングする方法であって、
i)請求項54〜56のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを適切なマーカー遺伝子に結合した適切なベクターへ挿入する工程と、
ii)適切な宿主細胞を前記ベクターで形質転換する工程と、
iii)目的とする化合物を前記宿主細胞に投与する工程と、
iv)前記マーカー遺伝子発現のレベルの差異を測定する工程と
を含んでなる方法。
【請求項59】
前記ベクターが、原核細胞プラスミド、真核細胞プラスミド、またはウイルスベクターのいずれか1つである、請求項59に記載の方法。
【請求項60】
前記マーカー遺伝子が、緑色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、ルシフェラーゼ酵素、またはβ−ガラクトシダーゼ酵素のいずれか1つをコードするポリヌクレオチドのいずれか1つである、請求項59または請求項60に記載の方法。
【請求項61】
筋細胞において所望のタンパク質を発現する方法であって、
i)発現される遺伝子をコードするポリヌクレオチド配列を単離する工程と、
ii)5’−3’方向で発現されるタンパク質のポリヌクレオチド配列に操作可能に結合された請求項54〜56のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを適切なベクターへ挿入する工程と、
iii)前記ベクターを筋宿主細胞へ導入する工程と
を含んでなる方法。
【請求項62】
前記ベクターが真核細胞ベクター、ウイルスベクター、または遺伝子療法に適したベクターのいずれか1つである、請求項62に記載の方法。
【請求項63】
前記宿主細胞が、初代筋芽細胞系、形質転換された筋芽細胞系、またはマイティープロモータが活性である細胞系のいずれか1つである、請求項62または請求項63に記載の方法。
【請求項64】
前記宿主細胞が宿主動物のインビボ骨格または心筋細胞である、請求項62または請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記宿主動物がヒツジ、雌牛、シカ、雄牛、家禽、シチメンチョウ、ブタ、ウマ、マウス、ラット、魚、またはヒトのいずれか1つである、請求項65に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公表番号】特表2008−507251(P2008−507251A)
【公表日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541073(P2006−541073)
【出願日】平成16年11月26日(2004.11.26)
【国際出願番号】PCT/NZ2004/000308
【国際公開番号】WO2005/051993
【国際公開日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ウィンドウズ
2.WINDOWS
【出願人】(507103400)オリコ・リミテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】ORICO LIMITED
【Fターム(参考)】