説明

方向及び/又は軸角度が可変な流体のジェットを噴射する方法及び装置

本発明は、少なくとも1つのジェットの方向及び/又は軸角度が可変であり得る少なくとも1つの流体のジェットを噴射する装置であって、少なくとも1つの主たる流体ジェットを噴射する手段と、少なくとも1つの第2流体ジェットを噴射する手段と、少なくとも1つの主たる流体ジェットを少なくとも1つの第2流体ジェットと相互作用させ、この相互作用の結果として得られる、方向及び/又は軸角度が可変な流体ジェットを製造する手段とを具備した方法と共に、関連した方法及びこれらの使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
本発明は、流体ジェット、例えば、空気、酸素、窒素、気体燃料の又は気体を同伴した液体若しくは固体燃料のジェットの方向及び/又は軸角度(l'ouverture)を変更することを可能にする噴射装置であって、前記流体ジェットは、第1流体ジェットと少なくとも1つの第2流体ジェットとの相互作用の結果として得られる噴射装置に関する。本発明は、特には、このような噴射ランス(lance)に関する。
【0002】
また、本発明は、例えば、表面に接して、特には、装填物の上方で流体ジェットの方向及び/又は軸角度を変更するための前記噴射装置の使用に関する。また、ユーザーが少なくとも1つの流体ジェットの方向及び/又は軸角度を変更する噴射方法に関する。
【0003】
発明の背景
制御ガス流を用いた霧状ジェットの方向の変更を、(1)霧状にされるべき材料を、一定の断面を有する部分と末広形の下流部分とを持つ霧化流路に通し、(2)この材料を、霧化ガスの環状ジェットを用いて霧化させ、(3)霧化ガスのジェットと制御ガスの流れとを接触させて、霧化ガスジェットを貫く圧力差を生じさせ、(4)この圧力差を使用して、霧状ジェットの方向を変更することによって行うことは、欧州特許第0545357号から知られた慣習である。
【0004】
しかしながら、この方法は、霧状ジェットに限定されており、ジェットの方向の極僅かな変更のみを可能にする。
【0005】
発明の目的
本発明の目的は、噴射器の作用を中断させる必要なしに、流体ジェットの方向及び/又は軸角度の大きく変更させることを可能にすることにある。本発明の更なる目的は、最適化された堅牢な装置を用いて、この変更を可能にすることにある。
【0006】
発明の概略
本発明は、第1流体ジェット(主たるジェットとも呼ばれる)を、第1ジェットを配送する流路(一定の断面又は不定な断面を有したパイプなど)の内部の、前記第1ジェットが前記流路から出る前、任意には、第1ジェットが前記流路から出る場所の近く(以下、「主たる出口開口部」と呼ぶ)で起こる、少なくとも1つの他の流体ジェット(第2又はアクチュエータジェットと呼ばれる)との相互作用によって制御することを提案する。
【0007】
それ故に、本発明は、第1ジェットと少なくとも1つの第2ジェットとの相互作用の結果として得られた流体ジェットを噴射する装置であって、前記合成ジェットの方向及び/又は軸角度を変更することを可能にする装置に関する。
【0008】
この噴射装置は、第1ジェットを主たる出口開口部へと導く流路を具備している。また、それは、第2ジェットを噴射する少なくとも1つの第2パイプも具備しており、この第2パイプは、主たる開口部の上流に位置した第2開口部を介して、第1ジェットの流路内へと通じている。第1ジェットを運ぶ流路と第2パイプとのこの配置は、第1ジェットとこの第2パイプから出て行く第2ジェット(以下、対応する第2ジェットと呼ばれる)との相互作用の位置を規定する。
【0009】
この装置は、少なくとも1つの第2パイプを具備しており、これは、前記流路に対して、対応する第2ジェットと第1ジェットとの相互作用の位置にて、対応する第2ジェットの軸と、第1ジェットの軸に対して垂直な平面との間の角度θが、0°以上90°未満、好ましくは0°乃至80°、より好ましくは0°乃至45°であるように位置決めされている。
【0010】
また、本発明に従うと、主たる出口開口部の上流に位置した第2開口部は、前記主たる開口部から、この主たる開口部の断面積sの平方根の10倍以下である距離Lだけ離れている。距離Lは、好ましくはこの平方根の5倍以下であり、より好ましくはこの平方根の3倍以下である。
【0011】
少なくとも1つの第2ジェットは、第1ジェットと相互作用し、合成ジェットをつくり出す。
【0012】
"Proceedings of FEDSM'02 Joint US ASME-European Fluid Engineering Division Summer Meeting of July 14-18, 2002"及びV. Faivre及びTh. Poinsotによる論文"Experimental and numerical investigations of jet active control for combustion applications"(Journal of Turbulence、Volume 5、No.1、2004年、3月、p.25)から、主たるジェットの周りの4つの第2ジェットの特定の配置を使用して、第2ジェットと第1ジェットとの相互作用のおかげで火炎を安定化させることは、知られた慣習である。より広角な散布が報告されている。
【0013】
本発明に従うと、装置は、少なくとも1つの第2ジェットの力積(impulsion)を制御する手段を備えている。
【0014】
それ故に、本発明は、少なくとも1つの第2ジェットの力積を前記手段を用いて変更することにより、合成ジェットの方向及び/又は軸角度を変更することを可能にする。
【0015】
好ましくは、少なくとも1つの第2ジェットの力積を制御する手段は、第2ジェットの力積と第1ジェットの力積との比を制御することを可能にする手段である。
【0016】
それ故に、本発明は、特には、高温火室などの好ましくない環境において機能不全を起こし得る原因である機械的手段を使用することなく、ジェットの方向及び/又は軸角度の大きな変更をもたらすことを可能にする。
【0017】
この制御手段は、特には、少なくとも1つの第2ジェットの能動的又は動的制御を可能にする。即ち、これは、主たるジェットの噴射を中断させることなく、力積を変更することを可能にする。それ故に、本発明に従う装置は、合成ジェットの方向及び/又は軸角度の動的変更を可能にする。
【0018】
好ましくは、合成ジェットに対する所望の効果を得るべく第1ジェットと相互作用する第2ジェットの数は、この装置の製造の複雑さ及び費用を抑えるだけでなく、第2ジェットが独立した方法で制御される場合に、流体を供給し、その流速を調節するシステムの複雑さ及び費用をも抑えるために、最小限にされるであろう。例えば、単一方向効果は、単一の第2ジェットを用いて得られ得る。
【0019】
本記載の中で使用される用語の中には、それらの意義をより十分に定めるために、より正確に定義されるに値するものがある。
【0020】
・ジェットの方向は、流体の流路の断面に直角な単位ベクトルと定義されており、流れの方向、即ち、上流から下流に向いている。
【0021】
・「太さe」は、第1ジェットの流れの方向(図1における矢印の方向)における第2パイプの寸法を意味している。それ故、この図1の特定の場合では、この例におけるこの第2パイプ21は円筒形なので、eは、第2開口部31の位置での第2パイプ21の径を表している。
【0022】
・ジェットの「軸角度」は、図1における10などの円筒形流路から出て行くジェットについての、流路を出るジェットの表面の位置での流路の長手方向の軸と母線との間の角度を意味している。第2ジェットとの相互作用がない場合、この母線は、この軸に対して約15°傾き、この傾きは、本発明に従うと、70°以上に達することが可能である(図6A参照)。拡大解釈すれば、「軸角度」は、円形の断面を有していない場合の流路内の流体の方向と、母線との間の角度を意味するであろう。
【0023】
発明の詳細な説明
本発明に従う装置の実施形態の様々な特徴及びその使用は、以下の詳細な説明からより明らかになるであろう。非制限的であり、より詳細なものとして挙げられた例示的実施形態を概略的に示した図面が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】ジェットの相互作用によって流れを制御する本発明に従う装置の図。
【図2】火室に搭載された本発明に従う装置の調節。
【図3A】合成ジェットの方向を制御する装置であって、それぞれ互いに90°に位置し、第1ジェットの方向に垂直に入射する4つの第2ジェットを含んだ装置の断面図。
【図3B】合成ジェットの方向を制御する装置であって、それぞれ互いに90°に位置し、第1ジェットの方向に垂直に入射する4つの第2ジェットを含んだ装置の長手方向の断面図。
【図3C】平行な第1及び第2ジェットを有したノズルを、本発明に従う装置へと変形するためのパステル(pastille)の使用。
【図3D】平行な第1及び第2ジェットを有したノズルを、本発明に従う装置へと変形するためのパステルの使用。
【図3E】平行な第1及び第2ジェットを有したノズルを、本発明に従う装置へと変形するためのパステルの使用。
【図4A】合成ジェットの軸角度を制御することを可能にする装置の長手方向の断面図。
【図4B】合成ジェットの軸角度を制御することを可能にする装置の断面図。
【図5】2つ(合成)のジェットの方向を変更するための、装置の部材の使用。
【図6A】ジェットの装置の制御の様々な実施形態。
【図6B】ジェットの装置の制御の様々な実施形態。
【図7】合成ジェットの偏向に対する、第1及び第2流量の効果を示したグラフ。
【図8】合成ジェットの軸角度に対する、ジェットの力積の比の効果を示したグラフ。
【図9】耐火性ポートによる、装置の端部の保護。
【図10】スリーブによる、装置の端部の保護。
【0025】
以下の本文において、同じ参照番号が、一方では、第1ジェットと内部にそれが流れる流路とを示すのに使用されており、他方では、第2ジェット又はアクチュエータと内部にこの第2ジェットが流れる対応する第2パイプとを示すのに使用されている。
【0026】
図1は、本発明に従う、ジェットを制御する方法の図を示している。
【0027】
制御されるべき第1ジェットは、流路10を介して運ばれ、第2パイプ21から生ずる第2ジェットと相互作用を起こし、第2ジェットがない場合の主たる出口開口部11から生ずるジェットとは異なる方向及び/又は軸角度を持った合成ジェットをつくり出す。
【0028】
この装置は、第1ジェットを主たる出口開口部11へと運ぶことを可能にする流路10を具備している。
【0029】
第2ジェットを噴射する少なくとも1つの第2パイプ21は、第2開口部31を介して、流路10へと通じている。この第2パイプは、流路10に対し、対応する第2ジェットと第1ジェットとの相互作用の位置で、第2ジェット21の軸と第1ジェット10の軸に垂直な平面との間の角θが0°以上90°未満となるように位置決めされている。(図1では、θ=0°)。第2開口部31は、主たる開口部11から、10H√s(s=主たる開口部11の断面積)以下の距離Lだけ離れている。
【0030】
距離Lは、それぞれ同じ力積を以って、複数の第2ジェットが第1ジェットにぶつかる効果に影響を与えることを可能にする。例えば、方向の効果を最大限にするために、ユーザーはこの距離を最小にすることを試みるであろう。
【0031】
一般に、Lは、20cm以下であり、より好ましくは10以下である。
【0032】
この装置は、第2ジェットの力積を制御する手段を具備している。この手段は、有利には、質量流量制御用、圧力損失制御用、流路断面制御用のデバイスだけでなく、温度制御用、流体の化学組成の制御用又は圧力制御用のデバイスの中からも選択され得る。
【0033】
この手段は、好ましくは、第2ジェットの力積と第1ジェットの力積との比を制御することを可能にする。
【0034】
この制御手段は、合成ジェットの方向及び/又は軸角度を動的に変更するために、1つ以上の第2ジェットを作動及び停止(当該第2ジェットを流すか流さないか)することを可能にする。
【0035】
この制御手段は、好ましくは、1つ以上の第2ジェットの力積を動的に増減させる(ゼロにはしない)ことか、又は、第2ジェットの力積と第1ジェットの力積との比を動的に増減させることも可能にする。
【0036】
この装置は、内部に、流路10の少なくとも一部が位置した耐火性材料のブロックなどの材料5のブロックを具備し得るものであり、この主たる出口開口部11は、このブロックの面又は表面のうちの1つ、前面6上に位置している。
【0037】
図1では、第2ジェットは、ブロック5を通った第2パイプ21によって運ばれ、この第2ジェットは、好ましくは、第1ジェットに対して実質的に垂直に出て行く。
【0038】
第1ジェットと第2ジェットとの相互作用は、第1ジェットの流路10が現れるこのブロックの前面6から距離Lの位置で起き、この距離Lは上述のように多様であり得る。
【0039】
合成流体ジェットの方向を変更することを可能にする、図3A及び3Bに図示された或る実施形態に従うと、この装置は、少なくとも1つの第2パイプ321、322、323及び324を具備しており、これは、第1ジェットの流路310に対し、対応する第2開口部331、332、333及び334(即ち、当該の第2パイプをこの流路に通じさせる第2開口部)の位置で、第1ジェットの軸と対応する第2ジェットの軸とが交差(secant)又は準交差(quasi-secant)するように位置決めされている。
【0040】
流路と第2パイプとの間のこのような配置は、(対応する第2開口部の下流にある)合成流体ジェットの軸と、この第2開口部の上流における第1ジェットの軸との間の角度を、少なくとも1つの対応する第2ジェットの力積を変更することによって変更することを可能にする。
【0041】
もし、アクチュエータジェットがなく、主たる出口開口部311から生ずるジェットが、図3Aの平面に対して垂直に流れる場合、第2パイプ323を介するジェットの噴射は、合成ジェットを、図3Aにおける右方、即ち、323から生ずるジェットの流れ方向と同じ方向へと偏向させることを可能にする。第2パイプ324を介する第2ジェットの噴射が同時に行われる場合、323及び324から生ずるジェットの相対的な力積に応じて、323及び324から生ずるジェットの方向(図3Aにおける右向き及び下向き)の間で連続的に変化し得る(図3Aの平面に投影された)方向に偏向された合成ジェットを得ることができるであろう。
【0042】
好ましくは、この装置は、少なくとも2つの第2パイプを具備しており、これらは、流路310に対し、一方では、2つの対応する第2開口部が流路310の同一断面に位置するように、他方では、これら2つの第2開口部の位置で、対応する第2ジェットの軸が第1ジェットの軸に対して交差又は準交差するように位置決めされている。この場合、これら2つの第2開口部は、有利には、第1ジェットの軸の両側に位置していても良く(開口部331及び333については右側及び左側、開口部332及び334については下側及び上側)、2つの第2開口部と第1ジェットの軸とは、好ましくは、同一平面内(開口部331及び333については水平面、開口部332及び334については垂直面)に位置している。
【0043】
他の有用な配置に従うと、2つの第2開口部の位置で、第1ジェットの軸と対応する第2開口部のうちの一方とによって規定された平面は、第1ジェットの軸と対応する第2開口部のうちの他方とによって規定された平面に対して垂直である。例えば、流路310の軸と第2開口部331とによって規定された水平面は、この軸と第2開口部332によって規定された垂直面に対して垂直である。
【0044】
これら2つの形態の実施を併用することも可能である。この場合、図3A及び図3Bに図示されたように、この装置は、少なくとも4つの第2パイプ321、322、323及び324を具備しており、これらは、流路310に対し、
(1)4つの対応する第2開口部331、332、333、334が、流路310の同一断面上に位置し、
(2)これら対応する第2開口部のうちの2つ331及び333が、第1ジェットの軸と共に第1平面を規定し且つこの軸の両側に位置し、他の2つの開口部332及び334が、第1ジェットの軸と共に第2平面を規定し、第1平面が、好ましくは、第2平面に対して垂直である
ように位置決めされている。
【0045】
この配置は、第1及び第2平面上(例えば、水平面上及び垂直面上)での合成流体ジェットの軸と第1ジェットの軸との間の角を、必要に応じて、各平面に位置した一方及び他方の2つの第2開口部(例えば、水平面上での左方及び右方、並びに垂直面上での上向き及び下向き)へと、並びに、上で説明したように、任意の中間の方向へと変更することを可能にする。
【0046】
4つの対応する第2開口部331乃至334の位置で、4つの対応する第2ジェットの軸は、好ましくは、第1ジェット310の軸に対して垂直な同一平面にある。
【0047】
また、本発明は、第1ジェットと1つ以上の第2ジェットとの相互作用を生じさせ、合成ジェットのその軸の周りの回転を生成、維持する又は強めることも可能にする。このような相互作用は、合成ジェットの軸角度を変更するのを可能にする。
【0048】
図4A及び4Bに図示したように、この装置は、少なくとも1つの第2パイプ421乃至424を備えており、これは、第1ジェットの流路410に対し、対応する第2開口部431乃至434の位置で、対応する第2ジェット421乃至424の軸が、第1ジェットの軸と同一平面にも実質的に同一平面にもなく、この少なくとも1つの第2パイプ421乃至424が、好ましくは、第1ジェットの流路410内へと接するように出て行くように位置決めされている。このようにして、第1ジェットと第2ジェットとの相互作用は、第1ジェットに回転力を与える。
【0049】
この装置は、有利には、2つの第2パイプ421及び422を具備しており、これらは、流路410に対し、2つの対応する第2開口部431及び432の位置で、2つの対応する第2ジェット421及び422の軸が第1ジェット410の軸と同一平面上になく、この2つの第2ジェットが、第1ジェットの軸の周りで、同一回転方向を向くように位置決めされている。それ故に、この2つの第2ジェットは、第1ジェットに与えられる回転力に寄与する。
【0050】
この2つの第2開口部は、有利には、流路410の同一断面上、即ち第1ジェットの軸に対して垂直な同一平面に位置している。それらは、第1ジェットの軸の両側に位置していても良い(開口部421及び423又は422及び424)。また、それらは、第1ジェットの軸と2つの第2開口部のうちの一方421とによって規定される平面が、第1ジェットの軸と2つの第2開口部のうちの他方422とによって規定される平面に垂直であるように位置していても良い。
【0051】
或る実施形態に従うと、この装置は、少なくとも4つの第2パイプ421乃至424を具備している。これらは、第1ジェットの流路410に対し、対応する第2開口部431乃至434の位置で、対応する第2ジェットの軸が、第1ジェットの軸と実質的には同一平面上にないように位置決めされている。これら対応する第2開口部のうちの2つ431及び433は、第1平面上で、第1ジェット410の軸と実質的には同一平面上にあり、第1ジェットの軸の両側に位置している。他方の2つの対応する第2開口部432及び434は、第2平面上で、第1ジェット410の軸と同一平面上にあり、更に、第1軸の両側に位置している。4つの対応する第2ジェットは、第1ジェットの軸の周りで、同一回転方向を向いている。この第1及び第2平面は、特には、互いに対して垂直であり得る。また、この4つの対応する第2開口部が流路410の同一断面上にあることも好ましい。
【0052】
第1ジェットに回転力を与え、それにより合成ジェットの軸角度を変更するために、ユーザーは、好ましくは、第1ジェットと対応する第2ジェットとが相互作用を起こす第2開口部の位置で、一方では、第2ジェットの軸が、第1ジェットの軸に対してこの位置で垂直な平面に属し、他方では、第2ジェットの軸とこの平面における第2開口部(又は、より正確には、第2開口部の位置での第1ジェットの流路の想像上の表面)に対する接線との間の角度が、0乃至90℃、好ましくは0乃至45℃であることを確実にするであろう。
【0053】
図4a及びbは、合成ジェットの軸角度を制御するために第2ジェットを用いる例示的実施形態を示している。(図4aにおいて、流路410内を左から右へと流れる)第1ジェットは、第2パイプ421、422、423及び424(図4bにおいて、図4aの平面AAでの断面として示されている)から生じた第2ジェットと合流する。これら第2ジェットは、流路410に対して接線方向で、第1ジェットにぶつかり、それにより、これら様々なジェットの力積に応じて、合成ジェットの「開き」を大小させることを可能にする。この開きの効果は、本質的には、第2ジェットと第2ジェットとが、互いに交差しない軸を有しているが、これらジェットが、互いとの物理的相互作用を有しているという事実に拠るものである。これは、合成ジェットをその軸の周りに回転させる。
【0054】
単一の装置において、上述した適用方法の何れか1つに従う合成ジェットの方向を変更することを可能にする実施形態を、合成ジェットの回転を生成する、維持する又は強めることを可能にして、それによりその軸角度を変更することを可能にする上述した実施形態の何れか1つと組み合わせることも可能である。
【0055】
それ故、方向及び回転の双方の効果を得るために、ユーザーは、上述の段落の教示を組み合わせるであろう。方向及び回転の効果の動的変更を得るために、ユーザーは、例えば、第2ジェットの複数の噴射システムを提供しても良い。それ故、第2ジェットの力積を調節する手段を備えた別個の第2パイプを提供することにより、連続的又は断続的な方法において、単に調節手段(バルブ)を作動させることにより、合成ジェットの形状及び方向を変更することが可能である。
【0056】
第2ジェットを、第1ジェットに対し、できるだけ効率的に作用させるために、アクチュエータジェットは、主たるジェットの方向に対して、実質的に垂直に噴射されねばならない。
【0057】
最適な作用に関し、本発明に従う装置は、少なくとも1つの第2パイプを具備していても良く、これは、第1ジェットの流路10に対し、対応する第2開口部31の位置で、このパイプが、l≧0.5xe、好ましくは、0.5xe≦l≦5.0xeを満たす或る太さe及び或る高さlを有するように位置決めされている(図1参照)。0.5xe以上という最小の高さは、対応する第2ジェットと第1ジェットとの間で最適な相互作用を達成することを可能にする。
【0058】
例えば、第2ジェットであって、この第2ジェットと第1ジェットとの相互作用の位置で、第2ジェットの軸と、第1ジェットの軸に垂直な平面との間の角度θが0°であるような第2ジェットを実際に得るためには、第2開口部の前で、第2パイプが、長さlに亘って、第1ジェットの軸に対して実質的に垂直な方向を有していることが好ましく、この長さlは、好ましくは、前記管の太さe(主たる流体の流れ方向における寸法)の0.5乃至5倍であろう(eは、この管が円筒形である場合の管の径である)。当然だが、この長さlは5eを超えることもできるが、これは、第1ジェットに対する第2ジェットの大きなぶつかりに対して、追加の効果を何ら有さない。
【0059】
第1ジェットの流路は、全体として又は少なくとも或る一部に関して、第1ジェットの噴射用の第1パイプからなっていても良い。この第1パイプは、第1開口部309へと通じている(図3c参照)。この第1開口部は、この流路の主たる出口開口部に一致しても良い。
【0060】
図3c、d及びeに図示したように、第1パイプ308が、主たる出口開口部311の前で終端している場合、第1開口部309は、主たる開口部311の上流に位置決めされている。この場合、少なくとも1つの第2開口部334は、第1パイプ308の第1開口部309とこの流路の主たる開口部311との間に位置していても良い。
【0061】
図3cは、図3と類似しているが、ノズル345内に2つの平行な流路(第1パイプ308及び第2パイプ324)が存在している変形の実施形態を示している。この2つの流路308及び324は、ノズルの前面へと通じている。この前面に、パステル324が取り付けられており、これは、第2パイプ324の第2ジェットを、第1パイプ308から出てくる第1ジェットへと向かせ、より詳細には、第1ジェットに対して垂直に又は実施的に垂直に向かせ、例えば図3cにおいて矢印344で示された方向にある合成ジェットを得ることを可能にする。(合成ジェットのこの方向334は、第1及び第2ジェットの力積の比に依存するであろう)。それ故に、制御手段を用いて第2ジェットの力積を変更することにより、合成ジェットを用いて表面全体を掃射することを可能にする可変な合成ジェット方向を得ることができる。図3dは、パステル342が(この図では示されていない手段により)取り付けられるノズル345の組み立て分解図であり、このパステル342は、この例では中空で横向きの円筒状部材350の形態にあり、ノズル345の端部に取り付けられる。このパステルにおける開口部は、第1パイプ308が現れるところに位置決めされる。
【0062】
図3eは、このパステル342の底部(内側)を示しており、この内面349は、キャビティ347を具備しており、この内側で、第2パイプ324から生ずる第2ジェットは、分配され、その後、主たる出口開口部346の上方にあるスリット348によって、第1パイプ308から生ずる第1ジェットに実質的に垂直に衝突する。それ故に、この開口部346から出て行く合成ジェット344(図3c)は、(図3c、d及びeに関しては)下向きに偏向されるであろう。
【0063】
なお、第1ジェットとの各々の相互作用の位置の前で、1つ以上の第2ジェットへと所望の指向性を与えるためのパステルの使用の可能性は、第2ジェットに向き付けをして、合成ジェットの方向を変化させることに限定されず、上で説明した、合成ジェットの軸角度を変更することを可能にする第2ジェットにも適用される。
【0064】
本発明に従う装置の最適な作用に関して、第1ジェットの流路は、少なくとも1つの第2開口部の位置に、少なくとも1つの対応する第2パイプの延長部において、遮るもののない又は少なくも実質的に遮るもののない流体流路を有しており、少なくとも1つの対応する第2ジェットと第1ジェットとの効率的な相互作用を可能にしている。典型的には、第1ジェットの流路の断面は、少なくとも1つの第2開口部の位置で、遮るもののない又は少なくも実質的に遮るもののない流体流路を規定するであろう。
【0065】
また、本発明は、流体ジェット、例えば、酸素及び/又はアルゴン及び/又は二酸化炭素及び/又は水素を含んだ流体ジェットの方向及び/又は軸角度を変更するための、先の装置の使用にも関する。他の可能性は、燃焼領域内へと噴射される燃料及び/又は支燃剤を含んだ流体ジェットの方向及び軸角度を変更するための、先の装置の使用である。
【0066】
このようにしてユーザーが方向及び/又は軸角度を変更した合成ジェットは、超臨界流体ジェットであり得る。
【0067】
このジェットは、典型的には、気体ジェットであるが、この気体ジェットは、霧状液体及び/又は粉末固体などの固体粒子を含んでいても良い。
【0068】
また、本発明は、噴射方法であって、本発明に従う装置が、第1ジェットと少なくとも1つの第2ジェットとの相互作用の結果として得られた流体を噴射するのに使用され、ユーザーが、少なくとも1つの第2ジェットの力積を変更するか、又は少なくとも1つの第2ジェットの力積と第1ジェットの力積との比を変更することによって、合成ジェットの方向及び/又は軸角度を動的に変更する方法にも関する。
【0069】
それ故に、本発明は、1つ以上の第2ジェット(アクチュエータジェットとも呼ばれる)を用いて流体噴射システムの性能を動的又は能動的に制御し、第1ジェットに衝撃を与えて第1ジェットの流れを変更し、第1ジェット及び/又は第2ジェットの特徴(特には、方向及び運動量)に従って方向及び/又は軸角度が変更され得る合成ジェットを製造する方法に関する。この方法は、閉ループ又は開プールにおいて、燃焼システム、又は、より一般的には、流体ジェットの噴射(液体、気体又は固体の散布)を使用する産業的方法の性能を調節するのに使用され得る。
【0070】
図2は、火室212に搭載された噴射ランスなどの装置210の性能を、本発明に従って調節する方法を示している。
【0071】
センサ214、216及び217は、それぞれ、燃焼製品、燃焼若しくは火室の作用条件又はこの装置若しくはこのランスの作用を特徴付ける量を測定する。これら測定値は、ライン218、219及び220によって、コントローラ215へと伝えられる。後者は、これら特徴的な量について与えられる指示に応じて、これら特徴的な量をそれらの設定値に維持するための第2ジェットの作用パラメータを決定し、ライン221によって、これらパラメータを、この装置/ランスを制御する部材へと伝える。
【0072】
本発明に従う装置は、有利には、第2ジェットの力積を制御する手段、好ましくは、第1ジェットと第2ジェットとのパルスの比を制御する手段を具備している。
【0073】
この比は、第1ジェットの流路の断面と第2パイプの断面との比の関数であり、第2パイプにおける流量の合成ジェットの流量に対する比の関数であり、第1ジェット及び第2ジェットの流体の密度の比の関数である。(以下の段落では、これら比のうちの1つの比の変化を考える際、他の2つは一定であると見なされる)。
【0074】
対応する第2開口部の位置での第1ジェットの断面と第2パイプの断面の比の値が増加するほど、(それぞれ一定の流量にある)対応する第2ジェットの第1ジェットに対する衝撃は大きくなる。ユーザーは、好ましくは、5乃至50、より好ましくは15乃至30の断面積の比を選択するであろう。
【0075】
全ての第2ジェットの流量の合成ジェットの総流量に対する比は、流量のこの比が大きいほど、合成ジェットの偏向及び/又は軸角度は大きいであろうという理解の下、典型的には、0(第2ジェットがない)乃至0.5、好ましくは0乃至0.3、より好ましくは0乃至0.15であろう。
【0076】
第2ジェットを形成する各流体の密度の、第1ジェットの流体の密度に対する比は、第2ジェットによる衝撃を制御することを可能にする。一定の流量のときには、この比の値が小さいほど、第1ジェットに対する第2ジェットの効果は大きいであろう。実際的な理由で、ユーザーは、しばしば、第2ジェット及び第1ジェットにおいて、同じ流体を使用するであろう(比は1に等しい)。(一定の質量流量で)第2ジェットの効果を高めるために、ユーザーは、第1ジェット中の流体の密度よりも低い密度の流体を使用するであろう。第2ジェット中の流体の性質は、目的の用途に応じて選択されるであろう。例えば、空気ジェットの偏向を制御するのに、空気と(それよりも密度が低い)ヘリウムとの混合物を使用すること、又は、燃料がプロパンである火炎中の燃焼製品の同伴量を高めるために、燃料及び/又は支燃剤の主たるジェットを水蒸気の第2ジェットを用いて制御することが可能である。一般には、最大の密度の流体の最低の密度のものに対する比は、1乃至20、好ましくは1乃至10、より好ましくは1乃至5で変動し得る。
【0077】
第1ジェットの流路及び/又は第2パイプの断面の幾何は、様々な形状を有していても良く、特には、円形、正方形、矩形、三角形、楕円形、マルチローブなどの形状を有し得る。
【0078】
これら噴射断面の幾何は、合成ジェットの不安定性の発現に影響を与える。例えば、三角形の噴射器から出てくるジェットは、円形の噴射器から生じるジェットよりも不安定であり、この不安定さは、合成ジェットの周囲媒体との混合を促進するであろう。同様に、楕円形の噴射器は、噴射器の近くの領域において、円形又は正方形の噴射器とは違ったジェットの等方性発現を促進するであろう。
【0079】
第2ジェットを製造するのに使用される流体の物理化学的特性に関し、それらは、合成フローの或る特性を制御するために選択され得る。例えば、主たる燃料(例えば天然ガス)のジェット、支燃剤(例えば空気)のジェットの混合物の反応性を、酸素(又は他の支燃剤)及び/又は水素(又は他の燃料)を使用することによって変更することが可能である。
【0080】
或る実施形態に従うと、この装置は、ジェットの方向及び/又は軸角度が可変なランス(例えば、酸素などの支燃剤を燃料領域内へと噴射するためのもの)である。当然だが、このようなランスは、液体及び/又は気体及び/又は固体の燃料を、燃焼領域内へと噴射するのに使用されても良く、例えば、微粉炭ランスである(石炭などの固体粉末を同伴する空気などのガス)。
【0081】
それ故に、本発明は、このようなランスが、軸角度及び/又は方向が可変な燃料及び/又は支燃剤のジェットを燃料領域内へと噴射するのに使用される加熱方法にも関する。
【0082】
もし、主たるジェットと第2ジェットとの相互作用の直前で、ランスの端部が、収束/発散システムを具備したノズル(文献では、ラバルノズルとも呼ばれている)を備えていれば、末広部分の出口で、第1流体のジェットと合成ジェットとを(それ自体が文献において知られている方法で)得ることができ、それにより、例えば、超音速である酸素のジェットが、可変な方向(任意に、その超音速を概して失ってしまうことによる可変な軸角度,これにより、或るプロセスにおいて、亜音速と超音速とを交互に生成することを可能にする)を有することができるであろう。また、ラバルノズルは、主たる出口開口部の前で、合成ジェット上に設置されても良い。
【0083】
この方法の変形に従うと、少なくとも2つの第2ジェットは、少なくともセカント平面における合成ジェットの方向の変更を得て、装填物の表面などの表面の一部を掃射するために使用される。
【0084】
軸が第1ジェットの軸と、セカントでも準セカントでもない第2ジェットを使用して、装填物の上方にある合成ジェットの軸角度が、単独又は掃射と組み合わせて変更され得る。
【0085】
好ましくは、第1ジェット及び/又は少なくとも1つの第2ジェットの運動量を制御する手段が提供される。
【0086】
なお、上記では、装置及び方法が、1つ以上の第2ジェットと相互作用させられる単一の第1ジェットを用いる用途の形態を参照することで上に例示されているが、本発明は、軸角度及び/又は方向が可変である多数のジェットを噴射する装置もカバーしていることと、特には、軸角度及び/又は方向が可変なこの複数のジェットは、複数の第1ジェットから、各第1ジェットが1つ以上の第2ジェットと相互作用することによって製造されることとは明らかである。
【0087】
図5は、本発明が、2つの主たる合成ジェットを変更するのを如何にして可能にするかと、それらが如何にして相互作用するかとを図示している。或る考えられる用途は、火室において、燃料のジェットと、支燃剤のジェットとを変更して、火炎の特徴を変更することにある。図5aは、燃料の主たるジェット61を示しており、この上に、支燃剤の主たるジェット62があり、これらのうちの何れも、第2ジェットとの相互作用によって制御されていない状況にある。図5bは、これらと同様のジェットを示しているが、これらは互いに逆向きに制御又は偏向されている状況にある(収束ジェット)。ジェット60は、第2ジェット62によって下向きに偏向されており、ジェット61は、上向きに(61へと)向けられた第2ジェット63によって上向きに偏向されている。
【0088】
図5cは、ジェットが同一方向(図における上向き)に制御又は偏向されている状況にある、これらと同様の主たるジェットを示している。第2ジェット63及び65は、主たるジェット61及び60に対して上向きに作用を及ぼし、双方とも上に向いた合成ジェットをつくり出している。これら3つの例は、方向と形態(長さ、扁平率など)とが大きく異なる火炎を得ることを可能にする。火炎64は、噴射器の水平な中央平面が非常に幅広いであろうし、一方、火炎67は上向きに大きく偏向されるであろう。
【0089】
本発明に従うと、第2ジェットと第1ジェットとの相互作用の位置で、第2ジェットの軸は、第1ジェットの軸に垂直な平面と、90°未満、好ましくは0°に等しい角度を成す。しかしながら、図3C及びDに図示したように、スペース上の理由により、これらジェットを供給する流路は、最も多くの場合、実質的に平行である。2つのフローの相互作用の領域にて第2フローの向きを変えるために、平行な流路を有する噴射機の端部に、末端部を取り付けることが考えられる。これは、以降、噴射パステルと呼ばれ、その機能は、初めは第1ジェットと平行であった第2ジェットの方向を変更して、第1ジェットにぶつかり、その軸が、好ましくは、第1ジェットの軸と垂直な平面に位置する第2ジェットにすることである。
【0090】
しかしながら、超高温プロセス用(T>1000℃のプロセス用)の装置の使用は、過熱及び噴射パステルへのダメージをもたらし得る。
【0091】
この種の問題を回避するために、ユーザーは、高温の密閉空間において、放熱に供される装置の前面を引き込ませる噴射パステルの設計を試みるであろう。このために、ユーザーは、比l/eを限定しようと試みるであろう。
【0092】
また、図9及び10に図示された2つの解決策のうちの1つを使用することも可能である。第1の解決策(図9)は、装置500を耐火性部品501内に設置し、その耐火性部品501の幾何と開口部/耐火性ポートの相対位置とが、その第1を高すぎる放熱から保護することにある。耐火性ポートにおける開口部のこの位置、即ち引込みは、それを放熱から保護するのに十分でなければならないが、噴射されるジェットの方向的な幅を制限してはならない。このために、耐火性ポートの幾何を、後者の一部を、図9の断続線に沿い、角度αで取り除くことによって変更することが考えられる。
【0093】
好ましくは、比R/dは0.3乃至3に及ぶであろうし、角度αは範囲[0°、60°]にあるであろう。
【0094】
第2の解決策は、図10に図示したように、スリーブ式の耐火性部品をこの装置のノズル(主たる出口開口部が位置する場所)へと直接取り付けることにある。この解決策は、複雑な幾何を有した耐火性ポートを使用せずに済ますことを可能にする。このスリーブの寸法は、それが噴射器の方向的な幅を制限しないようなものである。これは、特には、スリーブの太さfが僅かである(主たるジェットの径より小さい)か、又はこのスリーブを製造するのに使用される材料が非常に低い熱伝導率を有していることを意味している。ユーザーは、例えば、アルミナを選択するであろう。
【0095】
図6A及びBは、第2ジェット(アクチュエータ)の流量の第1ジェット(主たるジェット)の流量に対する比の関数としての、合成ジェットの軸角度を示している。
【0096】
図6Aでは、曲線C1及びC2は、それぞれ、アクチュエータ/主たるジェットの流量比の関数としての、合成ジェットの軸角度を示している。C&は、アクチュエータが、主たるジェットに対して垂直であり、主たる出口開口部から距離hの位置に現れている配置CONF1に関し、C2は、第2開口部と主たる出口開口部との間が、hではなく、距離2Hhであること以外、CONF1と同じ配置に対応している。これら2つの曲線は、アクチュエータと主たるジェットとのぶつかりが主たる出口開口に近いほど、合成ジェットの軸角度が大きいことを示している。
【0097】
また、図6bは、アクチュエータと主たるジェットとの流量の比の関数としての、合成ジェットの軸角度の変化を図示している。曲線C3は、主たる出口開口部から距離2Hhの位置(CONF2と同様)で、アクチュエータが、主たるジェットに、90°(即ち、主たるジェットの軸に対して垂直な平面上:θ=0°)でぶつかる配置に対応しており、曲線C4は、アクチュエータの入射角度が主たるジェットの軸に対して45°である(即ち、アクチュエータの軸と主たるジェットの軸に垂直な平面との間の角度θ=90°−α=45°)こと以外、CONF3と同じ配置CONF4に対応している。なお、アクチュエータが主たるジェットに対して垂直であり(CONF3:θ=0°)、他の全てのものが等しいときには、アクチュエータジェットの入射角αがより小さい(この例では45°)とき(CONF4:θ=45°)よりも、より大きなジェット軸角度が得られる。
【0098】
図7は、パーセントで表されたアクチュエータジェットの流量と主たるジェットの流量との比の関数としての、(度で表された)偏向角を示している。図7は、他の全てのものが等しいときに、主たるジェットの流量が、それぞれ、200l/分、150l/分、100l/分及び50l/分であるものについての、4つの曲線を示している。なお、これら4つの曲線は、殆ど区別がつかず、これは、主たるジェットの偏向が流量の関数でないことを明らかに示している。
【0099】
図8は、ジェットの力積の比の関数としての、合成ジェットの軸角度の曲線を示している。
【0100】
この曲線は、ジェットの軸角度の制御について得られた全ての実験データを示している。測定された軸角度は、アクチュエータジェット及び主たるジェットの特定の力積の比である物理パラメータJの関数として載せてある。この比は、密度の比(アクチュエータ流体対主たる流体)と、アクチュエータジェットの速度の平方の主たるジェットの速度の平方に対する比との積として記載されている。主たる流体は、全ての実験について同一であり、アクチュエータについては、様々な流体が使用された。これら流体は、主に、それらの密度の点で異なる(最も高い密度から最も低い密度へ:CO2、空気、空気−ヘリウム混合物)。(流量及び使用される流体に関わらず)全ての実験点が或る直線上にあることがわかる。これは、ジェットの軸角度を制御する物理的パラメータが、実際に、上で定義された特定の力積の比であることを示している。また、本発明は、軸角度及び/又は方向が可変であり、例えば、酸素及び/又は窒素及び/又はアルゴン及び/又は二酸化炭素及び/又は水素を含み得る合成流体ジェットを噴射するための本発明の装置/ランスの使用にも関する。この合成ジェットは、特には、気体ジェットか、又は、気体に同伴される霧状液体及び/又は固体粒子を含んだ気体ジェットであり得る。
【0101】
この装置は、特には、例えば炉内での燃焼を与えるべく、燃料及び/又は支燃剤を含んだ流体ジェットを噴射するのに使用され得る。
【0102】
本発明は、特には、超臨界又は超音速流体ジェットを噴射するのに有用である。
【0103】
また、本発明は、極低温液体のジェット(例えば液体窒素)が噴射される食品用又は工業用の極低温装置にも適用されても良く、各ジェットは、本発明及び1つ以上のアクチュエータジェットの使用のおかげで、或る表面を掃射すること(例えば、(方向−形状が)変更され得る単一のジェットノズルのおかげで、凍結されるべき製品の表面全体に「スプレーする」ことなど)が可能である。
【0104】
本発明の方法及び技術は、例えば、窒素を噴射して、或る反応器又はプロセスを不活性にするのに使用されても良い。特には、噴射器が可変な方向及び回転(ジェットの軸角度)の効果を組み合わせることは、例えば、上記方向効果のおかげで、ジェット中の不活性ガスの同伴を増加させることによってか、敏感な場所への窒素の配送を促進させることによって、反応器の雰囲気をより迅速に均一にすることを可能にする。
【0105】
また、本発明は、加圧ガスボンベを充填するのに適用されても良い。軽量タンクにおける、加圧貯蔵物、例えば水素用の複合材料の使用は、ホットスポットのおそれのために、充填速度を制限する。
【0106】
ボンベ内部のフローは、ボンベの入り口で膨張し、次いで、下流の領域(ボンベの底部)にて、ガスが減速し、圧縮され(それにより熱くなり)、2つの再循環領域の両側で、ホットガスが、中央ジェット中へと運ばれる前に、壁に沿って運ばれて、ボンベの軸に沿う1つのジェットへとまとめられる。ボンベの充填中における可変な軸角度を持つ噴射器の使用は、後者の状況に戻すことを可能にする。特には、非常に著しい回転効果を有したジェットの噴射は、ボンベの内部にフローをつくり出し、そこで、ボンベの入口での膨張によって冷却された冷却ガスが、ボンベの壁を伝って移動し、ボンベの底に達したときに圧縮されることと、後者の軸に沿った後者の中心へと戻ることとを可能にする。充填中にこれら2つの状況を交互につくり出すことは、底部の温度を制限することと、高充填速度に関するものを含んだリスクフリーの温度範囲内のままでいることとを可能にする。
【0107】
本発明の他の用途は、ガス急冷である。本発明に従う噴射器の方向的能力は、複雑な形状と高い熱抵抗とを有した複数の場所における温度を均一にすることを可能にする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1流体ジェットと少なくとも1つの第2流体ジェットとの相互作用の結果として得られた流体ジェットを噴射する装置であって、
・前記第1ジェットを主たる出口開口部(11、311、411)へと導く流路(10、310、410)と、
・対応する第2ジェットを噴射する少なくとも1つの第2パイプ(21、321乃至324、421乃至424)であって、前記主たる開口部の上流に位置した対応する第2開口部(31、331乃至334、431乃至434)を介して、前記流路内へと通じている第2パイプと
を具備しており、
・前記少なくとも1つの第2パイプは、前記流路に対して、前記対応する第2ジェットと前記第1ジェットとの相互作用の位置にて、前記対応する第2ジェットの軸と前記第1ジェットの軸に対して垂直な平面との間の角度θが、0°以下及び90°未満、好ましくは0°乃至80°、より好ましくは0°乃至45°であるように位置決めされており、
・前記少なくとも1つの対応する第2開口部は、前記主たる開口部から、前記主たる開口部の断面積sの平方根の10倍以下である距離L、好ましくはL≦5×√s、より好ましくはL≦3×√sだけ離れており、
・前記装置は、前記合成流体ジェットの方向及び/又は軸角度を変更することを、少なくとも1つの対応する第2ジェットの力積を変更することによって可能にするべく、各対応する第2ジェットの力積を調節する手段を具備していることを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置であって、前記調節手段は、各対応する第2ジェットの力積と前記第1ジェットの力積との比を制御する装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の装置であって、少なくとも1つの第2パイプ(321乃至324)を具備しており、前記少なくとも1つの第2パイプは、前記流路(310)に対し、前記第1ジェットの軸と前記対応する第2ジェットの軸とが前記対応する第2開口部(331乃至334)の位置にて交差又は準交差するように位置決めされており、それにより、前記合成流体ジェットの軸と前記対応する第2開口部の上流における前記第1ジェットの軸との間の角度を変更することが可能な装置。
【請求項4】
請求項3記載の装置であって、少なくとも2つの第2パイプ(321乃至324)を具備しており、前記少なくとも2つの第2パイプは、流路(310)に対し、2つの前記対応する第2開口部(331乃至334)が前記第1ジェットの軸に垂直な同一平面内に位置するように、及び、これら2つの対応する第2開口部の位置にて、前記対応する第2ジェットの軸が第1ジェットの軸に対して交差又は準交差するように位置決めされている装置。
【請求項5】
請求項4記載の装置であって、前記2つの対応する第2開口部(331及び333;332及び334)は、前記第1ジェットの軸に対して垂直な同一平面上であって、前記第1ジェットの軸の両側に位置している装置。
【請求項6】
請求項4記載の装置であって、前記2つの対応する第2開口部の位置にて、前記第1ジェットの軸と前記第2つの対応する第2開口部のうちの一方(331)とによって規定される平面は、前記第1ジェットの軸と前記2つの対応する第2開口部のうちの他方(332)とによって規定される平面に対して垂直である装置。
【請求項7】
請求項4乃至6の何れか1項記載の装置であって、少なくとも4つの第2パイプ(321乃至324)を具備しており、前記少なくとも4つの第2パイプは、前記流路(310)に対し、4つの前記対応する第2開口部(331乃至334)が、前記流路(310)の同一断面上に位置するように、及び、これら4つの第2開口部(331乃至334)の位置にて、前記対応する第2ジェットの軸が、前記第1ジェットの軸と交差又は準交差するように位置決めされており、前記対応する第2開口部のうちの2つ(331及び333)は、第1平面をこの第1平面に沿った前記第1ジェットの軸と共に規定し且つこの軸の両側に位置し、他の2つの前記開口部(332及び334)は、前記第1ジェットの軸と共に第2平面を規定し且つこの軸の両側に位置した装置。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1項記載の装置であって、少なくとも1つの第2パイプ(421乃至424)は、前記流路(410)に対し、前記対応する第2開口部(431乃至434)の位置にて、前記対応する第2ジェットの軸が前記第1ジェットの軸と実質的には同一平面にないように位置決めされており、それにより、前記合成ジェットのその軸の周りの回転を生成、維持又は高めることが可能である装置。
【請求項9】
請求項8記載の装置であって、少なくとも2つの第2パイプ(421乃至424)を具備しており、前記少なくとも2つの第2パイプは、前記流路(410)に対し、前記対応する第2ジェットの軸が前記第1ジェットの軸と同一平面上にないように、及び、前記対応する第2ジェットが前記第1ジェットの軸の周りの同一回転方向を向くように位置決めされている装置。
【請求項10】
請求項9記載の装置であって、前記2つの第2パイプ(421乃至424)に対応する前記2つの第2開口部(431乃至434)は、前記流路(410)の同一断面上に位置している装置。
【請求項11】
請求項9又は10記載の装置であって、前記2つの対応する第2開口部(431及び433)は、前記第1ジェットの軸の両側に位置している装置。
【請求項12】
請求項9又は10記載の装置であって、前記2つの対応する第2開口部の位置にて、前記第1ジェットの軸と前記2つの第2開口部のうちの一方(431)とによって規定される平面は、前記第1ジェットの軸と前記2つの第2開口部のうちの他方(432)とによって規定される平面に垂直である装置。
【請求項13】
請求項9乃至12の何れか1項記載の装置であって、少なくとも4つの第2パイプ(421乃至424)を具備しており、前記少なくとも4つの第2パイプは、前記流路に対し、4つの前記対応する第2開口部(431乃至434)が前記流路(410)の同一断面にあるように、及び、これら4つの対応する第2開口部の位置にて、前記対応する第2ジェットの軸が第1ジェットの軸と実質的には同一平面上にないように位置決めされ、これら対応する第2開口部のうちの2つ(431及び433)は、前記第1ジェットの軸と共に第1平面を規定し且つこの軸の両側に位置し、他方の前記2つの対応する第2開口部(432及び434)は、前記第1ジェットの軸と共に第2平面を規定し且つこの軸の両側に位置し、4つの前記対応する第2ジェットは、前記第1ジェットの軸の周りで同一回転方向に向けられる装置。
【請求項14】
請求項1乃至13の何れか1項記載の装置であって、少なくとも1つの第2パイプ(21)は、前記流路に対し、前記対応する第2開口部(31)の位置にて、前記第2パイプが太さe及び高さlを有し、前記高さlが、前記太さeの0.5倍以上、好ましくは0.5×e乃至5×eであるように位置決めされている装置。
【請求項15】
請求項1乃至14の何れか1項記載の装置であって、前記流路のうち少なくとも一部は、前記第1ジェットの噴射用であり且つ第1開口部(309)に通じている第1パイプ(308)からなる装置。
【請求項16】
請求項15記載の装置であって、前記第1開口部(309)は、前記主たる開口部(311)の上流に位置決めされている装置。
【請求項17】
請求項16記載の装置であって、前記第1開口部(311)に隣接し且つ前記主たる開口部(311)と前記第1開口部(309)との間に位置した少なくとも1つの第2開口部(334)を具備した装置。
【請求項18】
請求項1乃至17の何れか1項記載の装置であって、前記主たる流体ジェットと前記第2流体ジェットとの力積の比を制御する手段を具備した装置。
【請求項19】
請求項1乃至18の何れか1項記載の装置であって、内部に前記流路(10)の少なくとも一部が位置した材料(5)のブロックを具備しており、主たる開口部(11)は、前記ブロックの面又は表面のうちの1つ(6)の上に位置している装置。
【請求項20】
請求項1乃至19の何れか1項記載の装置であって、前記第1及び/又は第2ジェットの力積を制御する手段を具備した装置。
【請求項21】
請求項1乃至20の何れか1項記載の装置であって、前記第1及び/又は第2ジェットの流体流量を制御する手段を更に具備したことを特徴とする装置。
【請求項22】
請求項1乃至21の何れか1項記載の装置であって、第2開口部の位置での前記流路の断面と前記第2開口部の断面との比は、5乃至50、好ましくは15乃至30であることを特徴とする装置。
【請求項23】
請求項1乃至22の何れか1項記載の装置であって、前記流路(10、310、410)上の少なくとも1つの第2開口部(31、331乃至334、431乃至434)の上流又は下流に位置した、収束/発散システムを備えたラバルノズルを具備した装置。
【請求項24】
流体ジェットの方向及び/又は軸角度を変更するための請求項1乃至23の何れか1項記載の装置の使用。
【請求項25】
請求項24記載の使用であって、燃料及び/又は支燃剤を含んだ流体ジェットの方向及び/又は軸角度を変更するための使用。
【請求項26】
請求項24又は25記載の使用であって、超臨界流体ジェットの方向及び/又は軸角度を変更するための使用。
【請求項27】
請求項24乃至26の何れか1項記載の使用であって、食品の極低温処理中、ガスボンベの充填中又は気体急冷中に、燃焼を供給する流体ジェットの方向及び/軸角度を変更するための使用。
【請求項28】
請求項24乃至26の何れか1項記載の使用であって、液体及び/又は固体粒子を含んだ流体ジェットの方向及び/又は軸角度を変更するための使用。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2009−543011(P2009−543011A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−517361(P2009−517361)
【出願日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際出願番号】PCT/FR2007/051597
【国際公開番号】WO2008/003907
【国際公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(591036572)レール・リキード−ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード (438)
【出願人】(500174661)サントル・ナショナル・ドゥ・ラ・レシェルシュ・サイエンティフィーク−セ・エン・エール・エス− (54)
【Fターム(参考)】