説明

昇華/凝縮プロセスにより炭化ケイ素の大きな均一のインゴットを製造するための方法

本発明は、炭化ケイ素のモノリシックなインゴットの製造方法であって、i)ポリシリコン金属チップおよび炭素粉末を含む混合物を、蓋を有する円筒状反応セルの中へと導入する工程と、ii)i)の円筒状反応セルを密封する工程と、iii)ii)の円筒状反応セルを真空加熱炉の中へと導入する工程と、iv)iii)の加熱炉を排気する工程と、v)iv)の加熱炉に、大気圧近くまで実質的に不活性ガスであるガス混合物を充填する工程と、vi)v)の加熱炉の中の円筒状反応セルを1600〜2500℃の温度に加熱する工程と、vii)vi)の円筒状反応セルの中の圧力を0.05torr(約6.7Pa)以上50torr(約6.7kPa)未満まで低下させる工程と、viii)vii)の円筒状反応セルの蓋の内側でのこの蒸気の実質的な昇華および凝縮を許容する工程と、を含む方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、米国特許法第119条第(e)項にもとづき、2007年12月12日出願の米国仮特許出願第61/013083号の利益を主張する。米国仮特許出願第61/013083号は、参照により本願明細書に援用したものとする。
【0002】
本発明は、炭化ケイ素(SiC)の大きいインゴットを製造する方法を記載する。この方法は、多結晶性のSiC、または任意の結晶多形の結晶性SiCを製造するために調整することができる。
【背景技術】
【0003】
結晶性の炭化ケイ素は、ケイ素およびガリウムヒ素などの慣用的な半導体の結晶性材料と比べてより高い出力およびより高い温度で動作することができる炭化ケイ素デバイスの製作にとって有用な半導体材料である。
【0004】
バルクの結晶性SiCは、成長させることが困難な材料である。なぜなら、その成長プロセスは極めて高い温度(1900〜2500℃)を必要とするからである。バルクの結晶性SiCの成長のための最も一般的な方法は昇華である。
【0005】
商業的用途におけるバルクの結晶性SiCの成長についての標準となる技術は、昇華方法を記載するDavisらの特許文献1の技術である。この特許文献の中の方法は、Lely(特許文献2)、Tairov(非特許文献1を参照)および多くの者によって以前に報告された方法に対する改良として出現した。
【0006】
バルクの結晶性SiCの成長のための昇華反応は、一般に、加熱炉が置かれている閉鎖系の円筒状反応セルの中で行われる。この反応についての熱源は、抵抗加熱またはRF誘導加熱であってよい。この反応セルは、典型的にはグラファイトで作られている。種晶はこのセルの内部、通常は頂部に置かれ、そしてこの結晶の成長のための供給源材料はこの種晶の反対側に置かれる。この反応セルを加熱する際に、この供給源材料は気化され、次いでそれはその種晶上で凝縮する。
【0007】
上記のプロセスは思い描くには比較的単純であるが、実際は、それは実現するのは困難である。反応および蒸気輸送の制御は複数の変更要素に依存するが、そのうちのいずれも、このプロセスの間、直接には使用者の制御下にはない。閉鎖系の、不透明なセルの中でそのプロセスが実施される場合、このプロセスは、その場でモニターすることができない。この供給源から種晶への蒸気の輸送、ならびにその凝縮および結晶化は、そのセルの中での温度分布によって著しく影響される。材料が気化してその供給源領域から種晶領域へと移動するにつれて、温度分布は変化する。これらの変更要素のすべては、成功裏の結晶成長を成し遂げるために、事前に、実行に適合される必要がある。
【0008】
典型的には、炭化ケイ素の粉末形態が、供給源材料として使用される。粒径およびその分布の選択は、成長プロセスに影響を与えるであろう。Davisらは、この粉末は、「単一の結晶多形を含めた一定の割合の結晶多形から構成される」一定の結晶多形組成物のものであるべきであると教示する。炭化ケイ素の粉末形態を供給源材料として使用する際には、このことは、この蒸気組成物の反復可能性を最大にする。Wangら(非特許文献2)およびその中の引用文献は、SiC粉末の粒径構造はパッキングをもたらし、結晶成長速度を増加させるために異なるSiC粒径を使用することができるということを示す。
【0009】
SiC粉末の純度は、SiC結晶の純度に影響するであろうし、ひいてはその抵抗率値および電気の伝導に影響を及ぼすであろう。低コストの、高純度炭化ケイ素粉末は容易には入手できない。昇華によるSiC結晶成長の間の反応環境(温度、圧力など)の特定の制御が、供給源からSiC結晶の中への望まれない不純物の組み込みを制限するために必要とされる。半導体デバイス用途用のSiC結晶成長における懸念される不純物の例としては、ホウ素、リン、窒素、アルミニウム、チタン、バナジウム、および鉄が挙げられる。
【0010】
Otaら(非特許文献3)は、純粋なケイ素および炭素粉末の混合物を使用する高抵抗率SiC結晶の成長は、その粉末混合物中のケイ素および炭素の相対量を変動させることによって成し遂げることができるということを示す。Otaらは、ケイ素および炭素粉末混合物の混合物に基づく供給源を使用する結果を報告し、その混合物を焼成すると、SiC粉末供給源と比較してより良好な結果を与えると論じている。このケイ素および炭素粉末供給源は、ホウ素およびアルミニウムの組み込みの減少を示す。この研究は、著者らの方法の反復可能性については深く検討していない。
【0011】
SiC結晶成長のための供給源材料の他の変更例が報告されている。Balakrishnaら(特許文献3)は、新規なSiCのその場での(in−situ)供給源方法を使用することにより、SiC結晶成長における不純物の組み込みを減少させるための方法を開発した。この方法では、高純度ケイ素金属は高純度炭化水素ガスの存在下で気化され、炭化ケイ素成長のための化学種を送る。Maruyamaら(特許文献4)は、有機ケイ素材料および炭素含有樹脂の反応によるSiC供給源粉末材料の形成のための方法を記載する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第RE34,861号明細書
【特許文献2】米国特許第2,854,364号明細書
【特許文献3】米国特許第5,985,024号明細書
【特許文献4】米国特許第7,048,798(B2)号明細書
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】J.Crystal Growth、1981年、第52巻、46頁
【非特許文献2】J.Crystal Growth 2007年、doi:10.1016/j.jcrysgro.2007.03.022
【非特許文献3】Materials Science Forum 2004年、第457−460巻、115頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
SiC粉末サイズおよびパッキングの制御がなければ、そのSiC結晶成長プロセスの反復可能性の欠如が生じるであろう。供給源材料の純度制御は、高純度SiC結晶を得るために重要である。不純物が少なくかつSiC結晶の成長のために有用な、一般のSiC粉末に代わるものを創出するために、より多くの努力が必要とされる。半導体デバイス用途での使用に適したSiC結晶を成長させるための反復可能なプロセスは、すべてのこれらの変更要素の繊細な均衡および管理を必要とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1の実施形態は、炭化ケイ素のモノリシックなインゴットの製造方法であって、i)ポリシリコン金属チップおよび炭素粉末を含む混合物を、蓋を有する円筒状反応セルの中へと導入する工程と、ii)i)の円筒状反応セルを密封する工程と、iii)ii)の円筒状反応セルを真空加熱炉の中へと導入する工程と、iv)iii)の加熱炉を排気する工程と、v)iv)の加熱炉に、大気圧近くまで実質的に不活性ガスであるガス混合物を充填する工程と、vi)v)の加熱炉の中の円筒状反応セルを1600〜2500℃の温度に加熱する工程と、vii)vi)の円筒状反応セルの中の圧力を0.05torr(約6.7Pa)以上50torr(約6.7kPa)未満まで低下させる工程と、viii)vii)の円筒状反応セルの蓋の内側での蒸気の実質的な昇華および凝縮を許容する工程と、を含む方法に関する。
【0016】
本発明の第2の実施形態は、上記の方法が、ix)viii)の生成物を、蓋の内側表面に炭化ケイ素種晶が置かれた第2の円筒状反応セルの中へと導入する工程と、x)ix)の円筒状反応セルを密封する工程と、xi)x)の円筒状反応セルを真空加熱炉の中へと導入する工程と、xii)xi)の加熱炉を排気する工程と、xiii)xii)の加熱炉に、大気圧近くまで実質的に不活性ガスであるガス混合物を充填する工程と、xiv)xiii)の加熱炉の中の円筒状反応セルを1600〜2500℃の温度に加熱する工程と、xv)xiv)の円筒状反応セルの中の圧力を0.05torr(約6.7Pa)以上50torr(約6.7kPa)未満まで低下させる工程と、xvi)xv)の円筒状反応セルの蓋の内側での蒸気の実質的な昇華および凝縮を許容する工程と、をさらに含むことができる実施形態に関する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の方法では、当該ポリシリコン金属チップは、典型的には、シーメンス(Siemens)法(W.O’Mara,R.Herring,L.Hunt;「Handbook of Semiconductor Silicon Technology」、Noyes Publications、Norwich、NY、1990 ISBN 0−8155−1237−6の中の第1〜2章)などのCVDベースの成長方法から得られる。当該ポリシリコンチップはサイズによって分別され、当該炭素粉末は、上記ポリシリコンサイズ範囲とは異なりかつそれよりも著しく小さい値までサイズによって分別される。このポリシリコン金属チップは、特有の制御された粒度分布を有して選択される。このポリシリコン金属チップは、1つのインゴットとして装填されてもよいし、またはいくつかの小片へと分割されてもよい。バルクの高純度ポリシリコン(>99.99原子%)は、典型的には、手動の、機械的プロセスによってチップへと砕かれる。このポリシリコン金属チップは、ふぞろいの形状を有する。このポリシリコン金属チップは、最大寸法によって0.5〜10mm、または0.5〜3.5mm、または1〜3.5mmのサイズへと分別される。
【0018】
典型的には、当該炭素粉末は、上記ポリシリコン金属チップよりもはるかに小さい寸法を有する。この炭素粉末は、典型的には、5〜125μmのサイズへと選り分けられる。これらのポリシリコンチップおよび炭素粉末は、円筒状反応セルの中へと装填される。ポリシリコン/炭素混合物の全質量は、0.3〜2.0kgである。ポリシリコン金属チップおよび炭素粉末の量は、モル比ベースで0.9〜1.2の、炭素に対するポリシリコンのモル比となるような量である。この円筒状反応セルは、総反応セル容積の30%〜60%、またはこの反応セルの全容積の35〜50%を占めるのに十分なポリシリコン金属チップおよび炭素粉末の混合物で満たされる。
【0019】
典型的には、この円筒状反応セルは、典型的に電気伝導性のグラファイトから構成される。この円筒状の電気伝導性のグラファイト反応セルは、ねじ山を切った蓋を有する。この反応セルの高さおよび直径は、ポリシリコン金属チップおよび炭素粉末を含む混合物を底に保持するための容積を許容して、かつ頂部に空き容積を提供するように設計される。
【0020】
この円筒状反応セルは、利用できるいずれかの公知の手段を使用して密封されるが、しかしながら、典型的には、この円筒状反応セルは機械的な方法によって密封される。この円筒状反応セルは、合致するねじ山を切られた蓋をそのセルへと締め付けることにより、密封される。
【0021】
当該真空加熱炉としては、当該反応セルを保持するのに十分大きい容積の真空気密のチャンバーが挙げられる。この加熱炉の熱源は、(RF誘導系におけるように)外部から組み込まれてもよいし、または内部から組み込まれてもよい(抵抗加熱された系)。
【0022】
この加熱炉は、0.05torr(約6.7Pa)未満の圧力を成し遂げることができる機械式のオイルベースのまたは乾式のポンプ排気システムによって排気され、低真空条件(<1E−3torr(約0.13Pa))を成し遂げるためのターボ分子ポンプを有することもできる。
【0023】
大気圧近くまで実質的に不活性ガスであるガス混合物としては、アルゴンガスまたはヘリウムガスが挙げられる。このガス混合物は、残留する窒素ガスまたは酸素を含むことができるが、それは典型的には全ガス混合物の0.5%未満の量で存在する。
【0024】
この円筒状反応セルの加熱は、典型的には、RF誘導加熱によって成し遂げられる。
【0025】
この円筒状反応は1600℃〜2500℃、あるいは1975℃〜2200℃の温度に加熱される。圧力は大気圧近く(300〜600torr(約40〜約80kPa))に確立され、この容器は、徐々におよそ1600〜2500℃に加熱される。この高温条件下で、このポリシリコン金属チップは融解し炭素粉末と反応するであろう。これらの条件は約10〜100時間保持され、次いでこの反応セルは冷却される。
【0026】
この円筒状反応セル中の圧力は、より高いポンプ排気速度を与えるために真空ポンプの絞り弁を開くことにより、低下される。これは自動圧力制御装置を用いて行われる。この圧力は0.05torr(約6.7Pa)以上50torr(約6.7kPa)未満まで下げられ、そして30〜100時間保持され、次いで冷却される。
【0027】
この円筒状反応セルの蓋の内側での当該蒸気の実質的な昇華および凝縮のための時間は、典型的には24〜100時間である。
【0028】
i)の反応セルには、その蓋の内側表面の上に炭化ケイ素種晶も置かれていてもよい。炭化ケイ素種晶としては、研磨された炭化ケイ素ディスクまたは単結晶炭化ケイ素のウェーハが挙げられる。この種晶の結晶多形は、所望の生成物結晶と同じである。
【0029】
この容器が開かれるとき、バルクの多結晶性の炭化ケイ素インゴットの大きい円筒状インゴットがその蓋の上に生成している。
【0030】
本発明の第2の実施形態では、本願明細書で上述した方法は、ix)viii)の生成物を、蓋の内側表面に炭化ケイ素種晶が置かれた第2の円筒状反応セルの中へと導入する工程と、x)ix)の円筒状反応セルを密封する工程と、xi)x)の円筒状反応セルを真空加熱炉の中へと導入する工程と、xii)xi)の加熱炉を排気する工程と、xiii)xii)の加熱炉に、大気圧近くまで実質的に不活性ガスであるガス混合物を充填する工程と、xiv)xiii)の加熱炉の中の円筒状反応セルを1600〜2500℃の温度に加熱する工程と、xv)xiv)の円筒状反応セルの中の圧力を0.05torr(約6.7Pa)以上50torr(約6.7kPa)未満まで低下させる工程と、xvi)xv)の円筒状反応セルの蓋の内側での蒸気の実質的な昇華および凝縮を許容する工程と、をさらに含むことができる。
【0031】
第2の円筒状反応セル、炭化ケイ素種晶、この円筒状反応セルを密封するための方法、加熱炉、この加熱炉の排気、大気圧近くまで実質的に不活性ガスであるガス混合物、円筒状反応セルの加熱、円筒状反応セルが加熱される温度、この円筒状反応セル中の圧力を低下させる方法、およびこの円筒状反応セルの蓋の内側での当該蒸気の実質的な昇華および凝縮のための時間はすべて、本発明の第1の実施形態(その好ましい実施形態を含む)について上記したとおりである。
【0032】
本発明の方法を使用することによって、ケイ素および炭化ケイ素粉末ならびに蒸気組成物の制御に関連する問題は回避され、反復可能なSiC結晶成長が実現される。
【0033】
これらの実施形態のうちのいずれかの得られる生成物は、SiCのインゴットである。蒸気輸送の間に種晶が存在しない場合には、そのインゴットは多結晶性であろう。種晶が存在する場合、そのインゴットの結晶多形は、その種晶の結晶多形によって決定される。もっとも一般的な結晶多形としては、3C、4H、および6Hが挙げられる。上記の方法を使用すると、SiC供給源材料のもとの質量が所望のSiC結晶の質量よりも大きく、かつ供給源材料の上のグラファイト容器の高さがその結晶の予想される高さを超える限り、厚さ1〜50mm以上、および直径50〜150mmの結晶を成長させることが可能である。
【0034】
これらの方法によって作製されるSiCのインゴットは、機械加工でき、ウェーハへと切断できる。このウェーハは、半導体デバイスの製作に有用である。
【0035】
アルゴンに加えて、窒素またはリン含有ガスなどのドーパントが加熱炉の中へと供給され、成長するSiC材料は、電気伝導性、n型になるであろう。アルゴンに加えて、ホウ素またはアルミニウム含有ガスなどのドーパントが加熱炉の中へと供給され、成長するSiC材料は、電気伝導性、p型になるであろう。これらのドーパントは、加熱炉圧力が大気圧から目的の圧力へと低下されるときに、加えられる。
【実施例】
【0036】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を実証するために含められる。以下の実施例で開示される技術は、本発明の実施において十分に機能すると本発明者らが見出した技術を表し、従って本発明の実施のための好ましい態様を構成すると考えることができるということを、当業者は分かるべきである。しかしながら、当業者は、本開示を参酌して、開示される具体的な実施形態において多くの変更をなすことができ、そして本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく依然として同様または類似の結果を得ることができるということが分かるべきである。すべての百分率は、重量%である。
【0037】
(実施例1)
およそ高さ20cmおよび内径10cmの超高純度(UHP)円筒状グラファイト反応セルを、UHPポリシリコンチップおよび炭素粉末の混合物で満たした。このポリシリコンの小片は、最大寸法を0.5〜3.5mmのサイズ範囲へ適合させた。炭素粉末の粒径範囲は5〜125マイクロメートルであった。このポリシリコン/炭素混合物の総重量は、およそ0.75kgであり、このうち、この重量の70%がポリシリコンであった。この粉末混合物を、容器の容積のおよそ45%まで充填した。この反応セルをグラファイトの蓋で密封した。このセルをグラファイト絶縁物の中に包み、このセルの温度が光学式高温計を使用してモニターすることが可能となるように、この絶縁物を貫通する穴を設けた。次いでこの反応セルを真空加熱炉の中に入れた。この加熱炉チャンバーを30mtorr(約4Pa)未満の圧力まで排気し、次いで350torr(約47kPa)を超える圧力までアルゴンで満たした。この反応セルの温度を2200℃に上げた。この時点で、圧力を5torr(約0.67kPa)まで低下させ、この圧力を20時間一定に保った。このセルを室温まで冷却した。多結晶性のSiCの円筒状インゴットが、セルの上方の容積の中に生成していた。この多結晶性のSiCインゴットの質量は、およそ600グラムであった。
【0038】
この多結晶性のSiCインゴットを、およそ高さ20cmおよび内径10cmの超高純度(UHP)円筒状グラファイト反応セルの底に入れた。4H SiC結晶をグラファイトの蓋の内側に取り付け、この蓋を使用して反応セルを密封した。このセルをグラファイト絶縁物の中に包み、このセルの温度が光学式高温計を使用してモニターすることが可能となるように、この絶縁物を貫通する穴を設けた。次いでこの反応セルを真空加熱炉の中に入れた。この加熱炉チャンバーを排気し、次いで600torr(約80kPa)の圧力までアルゴンガスで満たした。3時間の間にわたって、この反応セルの温度を2180℃まで上げた。この時点で、加熱炉の中の圧力を2torr(約0.26kPa)まで低下させ、アルゴンおよび窒素ガスの混合物をこのチャンバーへと送った。これらの条件をおよそ80時間維持した。4H SiCの結晶が、この反応セルの内蓋の上に生成した。この4H SiCの名目上の抵抗率は約0.025ohm−cmであると測定され、窒素の濃度は7×1018原子/cmであった。この結晶の上半分からウェーハを切り出し、二次イオン質量分析法(SIMS)を使用して不純物を測定した。結果を表1に列記する。
【0039】
表1
試験AI6018/BE6021の結果
【表1】

*これは、SIMS分析の検出限界である。
【0040】
(実施例2)
およそ高さ20cmおよび内径10cmの超高純度(UHP)円筒状グラファイト反応セルを、UHPポリシリコンチップおよび炭素粉末の混合物で満たした。このポリシリコンの小片は、最大寸法を0.5〜3.5mmのサイズ範囲へ適合させた。炭素粉末の粒径範囲は5〜125マイクロメートルであった。このポリシリコン/炭素混合物の総重量は、およそ0.75kgであり、このうち、この重量の70%がポリシリコンであった。この粉末混合物を、容器の容積のおよそ45%まで充填した。この反応セルをグラファイトの蓋で密封した。このセルをグラファイト絶縁物の中に包み、このセルの温度が光学式高温計を使用してモニターすることが可能となるように、この絶縁物を貫通する穴を設けた。次いでこの反応セルを真空加熱炉の中に入れた。この加熱炉チャンバーを30mtorr(約4Pa)未満の圧力まで排気し、次いで350torr(約47kPa)を超える圧力までアルゴンで満たした。この反応セルの温度を2200℃に上げた。この時点で、圧力を5torr(約0.67kPa)まで低下させ、この圧力を20時間一定に保った。このセルを室温まで冷却した。多結晶性のSiCの円筒状インゴットが、セルの上方の容積の中に生成していた。この多結晶性のSiCインゴットの質量は、およそ500グラムであった。
【0041】
この多結晶性のSiCインゴットを、およそ高さ20cmおよび内径10cmの超高純度(UHP)円筒状グラファイト反応セルの底に入れた。4H SiC結晶をグラファイトの蓋の内側に取り付け、この蓋を使用して反応セルを密封した。このセルをグラファイト絶縁物の中に包み、このセルの温度が光学式高温計を使用してモニターすることが可能となるように、この絶縁物を貫通する穴を設けた。次いでこの反応セルを真空加熱炉の中に入れた。この加熱炉チャンバーを排気し、次いで600torr(約80kPa)の圧力までアルゴンで満たした。3時間の間にわたって、この反応セルの温度を2180℃まで上げた。この時点で、加熱炉の中の圧力を2.0torr(約0.27kPa)まで低下させた。これらの条件をおよそ80時間維持した。4H SiCの結晶が、この反応セルの内蓋の上に生成していた。この4H SiCの名目上の抵抗率は1×10ohm−cmよりも大きいと測定され、窒素の濃度は5×1016原子/cmであった。この結晶の上半分からウェーハを切り出し、二次イオン質量分析法(SIMS)を使用して不純物を測定した。結果を表2に列記する。
【0042】
表2
試験AI6008/BE6008の結果
【表2】

これは、SIMS分析の検出限界である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化ケイ素のモノリシックなインゴットの製造方法であって、
i)ポリシリコン金属チップおよび炭素粉末を含む混合物を、蓋を有する円筒状反応セルの中へと導入する工程と、
ii)i)の円筒状反応セルを密封する工程と、
iii)ii)の円筒状反応セルを真空加熱炉の中へと導入する工程と、
iv)iii)の加熱炉を排気する工程と、
v)iv)の加熱炉に、大気圧近くまで実質的に不活性ガスであるガス混合物を充填する工程と、
vi)v)の加熱炉の中の前記円筒状反応セルを1600〜2500℃の温度に加熱する工程と、
vii)vi)の円筒状反応セルの中の圧力を0.05torr(約6.7Pa)以上50torr(約6.7kPa)未満まで低下させる工程と、
viii)vii)の円筒状反応セルの前記蓋の内側での蒸気の実質的な昇華および凝縮を許容する工程と
を含む、方法。
【請求項2】
前記ポリシリコン金属チップおよび炭素粉末の寸法および形状が実質的に異なる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ポリシリコンチップが0.5〜10mmのサイズを有する請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ポリシリコンチップが1〜3.5mmのサイズを有する、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記炭素粉末が5〜125μmのサイズを有する、請求項1、請求項2、または請求項4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリシリコン金属および炭素粉末混合物が前記反応セルの全容積の35〜50%を占める、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ガス混合物がアルゴンガスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記反応セルが電気伝導性のグラファイトから構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
i)の反応セルが、その蓋の内側表面の上に置かれた炭化ケイ素種晶を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記方法が、
ix)viii)の生成物を、蓋の内側表面に炭化ケイ素種晶が置かれた第2の円筒状反応セルの中へと導入する工程と、
x)ix)の円筒状反応セルを密封する工程と、
xi)x)の円筒状反応セルを真空加熱炉の中へと導入する工程と、
xii)xi)の加熱炉を排気する工程と、
xiii)xii)の加熱炉に、大気圧近くまで実質的に不活性ガスであるガス混合物を充填する工程と、
xiv)xiii)の加熱炉の中の前記円筒状反応セルを1600〜2500℃の温度に加熱する工程と、
xv)xiv)の円筒状反応セルの中の圧力を0.05torr(約6.7Pa)以上50torr(約6.7kPa)未満まで低下させる工程と、
xvi)xv)の円筒状反応セルの前記蓋の内側での蒸気の実質的な昇華および凝縮を許容する工程と
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記円筒状反応セルが電気伝導性の超高純度グラファイトから構成され、前記炭素粉末が超高純度炭素粉末であり、ポリシリコンチップが超高純度ポリシリコンチップである、請求項1または請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記円筒状反応セルが電気伝導性の超高純度グラファイトから構成される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
排気後に前記加熱炉に再充填するために使用されるガス混合物が、ドーピングガスをさらに含む、請求項1または請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記ドーピングガスが、窒素ガス、リン含有ガス、ホウ素含有ガスまたはアルミニウム含有ガスから選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
1×1016/cm未満の、B、P、Al、Ti、V、およびFeの原子濃度の合計を含有するポリシリコンチップを使用して製造される、炭化ケイ素生成物。

【公表番号】特表2011−506253(P2011−506253A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538004(P2010−538004)
【出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【国際出願番号】PCT/US2008/079126
【国際公開番号】WO2009/075935
【国際公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(506143975)ダウ コーニング コーポレーション (19)
【Fターム(参考)】