映像信号処理装置、撮像装置及び映像信号処理方法
【課題】フォーカス調整を容易に行えるようにする。
【解決手段】入力映像信号からピーキング信号を生成するピーキング信号生成部12と、ピーキング信号による輪郭補正を行う対象領域の指定を受け付ける操作部31と、指定された領域に対応する位置情報を記載したエリアゲート信号を生成する制御部32とを備えた。また、エリアゲート信号に基づいて、指定された対象領域に、ピーキング信号が加算された映像信号を出力するマスク処理部18と、マスク処理された映像信号を所定のスケーリングの比率を用いて画素変換するスケーリング処理部16a,16bを備えた。スケーリング処理部16bでは、輪郭補正された映像信号を拡大表示するよう指示された場合に、対象領域に出力される映像信号を、対象領域以外の領域に出力される映像信号に適用するスケーリングの比率の値よりも大きな値を用いて画素変換するようにした。
【解決手段】入力映像信号からピーキング信号を生成するピーキング信号生成部12と、ピーキング信号による輪郭補正を行う対象領域の指定を受け付ける操作部31と、指定された領域に対応する位置情報を記載したエリアゲート信号を生成する制御部32とを備えた。また、エリアゲート信号に基づいて、指定された対象領域に、ピーキング信号が加算された映像信号を出力するマスク処理部18と、マスク処理された映像信号を所定のスケーリングの比率を用いて画素変換するスケーリング処理部16a,16bを備えた。スケーリング処理部16bでは、輪郭補正された映像信号を拡大表示するよう指示された場合に、対象領域に出力される映像信号を、対象領域以外の領域に出力される映像信号に適用するスケーリングの比率の値よりも大きな値を用いて画素変換するようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像信号処理装置、撮像装置及び映像信号処理方法に関し、特にフォーカス調整用に映像中のエッジ部分等を強調表示する、ピーキングを行う映像信号処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、放送局用のビデオカメラやカメラ一体型ビデオテープレコーダでは、フォーカス調整を容易にするために、フォーカス調整時に、高域成分が強調され画像の輪郭が明瞭化された撮像画をビューファインダに表示するようにしている。このときビューファインダに表示する撮影画は、ビデオカメラ等の撮像装置で得られた映像信号にピーキング信号を加算したものとなる。
【0003】
ピーキング信号とは、映像信号を構成する輝度信号から高域成分を抽出し、増幅することで生成される信号である。このようにして生成されたピーキング信号を映像信号に加算し、ビューファインダに出力することで、ビューファインダに表示される撮影画は、映像中の輪郭部分等が強調して表示されるようになる。撮影者(以下、ユーザとも称する)は、このような表示が行われた画面を見ることで、フォーカス調整を容易に行うことができる。
【0004】
図14は、このような高域成分が強調された撮像画を表示する、従来の撮像装置200の構成例を示すブロック図である。図14に示した撮像装置200は、カメラ部150とビューファインダ部160とから構成される。まず、カメラ部150の構成を説明すると、カメラ部150は、光学系として、撮像レンズ101と、レンズ鏡筒102と、プリズム103とを備え、撮像素子104B,104G,104Rで撮像を行う。撮像素子104B,104G,104Rでの撮像で得た映像信号は、ビデオアンプ105と、アナログ・デジタル変換部106(以下、A/D変換部106と称する)と、デジタル信号処理部107と、デジタル・アナログ変換部(以下、D/A変換部108と称する)とで処理される構成としてある。
【0005】
撮像レンズ102は、被写体の光学像を撮像素子104B,104G,104Rの各感光面(図示略)上に結像するものであり、フォーカス調整機能を有する。レンズ鏡筒102は、撮像レンズ101を格納する筒である。プリズム103は、撮像レンズ102を通して入射される光線をR(赤)G(緑)B(青)の3原色の光線に分解する。
【0006】
撮像素子104B,104G,104Rは、プリズム103によって分解された各色の光線を光電変換して映像信号AB,AG,ARを生成し、得られた映像信号AB,AG,ARをビデオアンプ105に出力する。ビデオアンプ105は、撮像素子104B,104G,104Rから出力された映像信号AB,AG,ARを増幅して、増幅して得られた映像信号AB′,AG′,AR′を、A/D変換部106に出力する。A/D変換部106は、ビデオアンプ105から出力された映像信号AB′,AG′,AR′をデジタルの映像信号DB,DG,DRに変換して出力する。
【0007】
デジタル信号処理部107は、映像信号DR,DG,DBのそれぞれに対して、マトリクス処理を含むデジタル信号処理を施して輝度信号DY、色差信号DU,DVを生成し、生成した各信号をD/A変換部108へ出力する。D/A変換部108は、デジタル信号処理部107から出力されたデジタルの輝度信号DYをアナログの輝度信号AYに変換し、同じくデジタル信号処理部107から出力されたデジタルの色差信号DU,DVを、アナログの色差信号AU,AYに変換する。そして、生成した輝度信号AY及び色差信号DU,DVを、ビューファインダ部160に出力する。
【0008】
ビューファインダ部160は、ビデオアンプ109、帯域制限フィルタ110、A/D変換部111、ピーキング信号生成部112、乗算器113、加算器114、スケーリング処理部115、マトリクス処理部116、表示素子駆動部117、表示素子118とを含む。
【0009】
ビデオアンプ109は、カメラ部150のD/A変換部108から出力された輝度信号AY、色差信号AU、AVを増幅し、増幅した輝度信号AY′、色差信号AU′,AV′を帯域制御フィルタ110へ供給する。帯域制御フィルタ110は、ローパスフィルタもしくはバンドパスフィルタで構成してあり、入力された輝度信号AY′、色差信号AU′,AV′の周波数帯域を所定の周波数帯域に制限して、帯域制限された輝度信号AY′′、色差信号AU′′,AV′′をA/D変換部111に出力する。
【0010】
A/D変換部111は、帯域制限フィルタ110から出力された輝度信号AY′′、色差信号AU′′,AV′′を、それぞれデジタルの輝度信号DY、デジタルの色差信号DU,DVに変換し、輝度信号DYをピーキング信号生成部112と加算器114に、色差信号DUとDVはスケーリング処理部115に出力する。
【0011】
ピーキング信号生成部112は、A/D変換部111から出力された輝度信号DYから高周波成分を抽出してピーキング信号を生成する。そして、生成したピーキング信号を乗算器113に出力する。乗算器113は、図示せぬ制御部等から供給されるピーキングレベル設定信号と、ピーキング信号生成部112から出力されたピーキング信号とを乗算し、乗算後のピーキング信号PEAKを加算器114に出力する。
【0012】
ここでいうピーキングレベル設定信号とは、ピーキングの度合い(強弱)を設定するための信号であり、ピーキングの度合いは、図示せぬ操作部等を通してユーザ(撮影者)が設定可能としてある。従って、乗算器113より出力される、ピーキング設定信号とピーキング信号とが乗算されて生成されたピーキング信号PEAKは、ピーキングのレベルが所定の値に調整されたピーキング信号となる。
【0013】
加算器114は、A/D変換部111から出力された輝度信号DYに、乗算器113から出力されたピーキング信号PEAKを加算して、輝度信号DYpkとしてスケーリング処理部115に出力する。スケーリング部115は、加算器114から出力された輝度信号DYpkと、A/D変換部111から出力された色差信号DU,DVとを、表示素子118の画素数に応じて画素数の変換を行う画素変換をしたり、i/p(interlace/progressive)変換したりする処理を行う。処理後の輝度信号DYpk′と色差信号DU′,DV′は、マトリクス処理部116に出力される。
【0014】
マトリクス処理部116は、輝度信号DYpk′と色差信号DU′,DV′とを、RGB形式の映像信号に変換して、映像信号DRpk,DGpk,DBpkを生成し、生成した各映像信号を表示素子駆動部117に出力する。表示素子駆動部117は、表示素子118を駆動する駆動信号を生成して表示素子118に供給する。表示素子118は、LCD(Liquid Crystal Display)等で構成されるものであり、表示素子駆動部117から供給される駆動信号に基づいて、画像を表示する。
【0015】
表示素子118に表示される画像を構成する、映像信号DRpk,DGpk,DBpkは、ピーキング信号生成部112で生成されたピーキング信号が付加された映像信号である。このため、表示素子118には、輪郭部分等が強調された画像が表示されるようになる。
【0016】
例えば特許文献1には、カラー液晶表示素子を用いたビューファインダにおいて、撮像画の輪郭部分を十分に強調して表示する技術について記載されている。
【特許文献1】特開平09−139952号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
ところで、上述したような従来のビューファインダ及び撮像装置においては、ピーキングを施す範囲を指定することができないため、ビューファインダに表示される撮影画全体において、画像の輪郭部分が強調されてしまうことになる。このため、特に被写界深度を深くとって撮影している場合には、フォーカスの調整を行いたい被写体以外の部分においても、その輪郭が強調されてしまうことになる。つまり、どの部分に一番フォーカスが合っているかを、ユーザが判断し辛くなってしまうという問題があった。
【0018】
また、通常スケーリング処理部では、表示素子の解像度に合わせて画素を縮小処理することが多い。このような処理が行われた場合には、表示素子上に表示される映像の解像度が、表示素子の解像度に制限されてしまう。このため、ユーザがフォーカス調整をし辛くなってしまうという問題もあった。
【0019】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、フォーカス調整を容易に行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、入力映像信号に含まれる高域成分を抽出して増幅し、ピーキング信号を生成するピーキング信号生成部と、ピーキング信号による輪郭補正を行う対象領域が指定される操作部と、指定された領域に対応する位置情報を記載したエリアゲート信号を生成する制御部とを備えた。また、制御部から供給されるエリアゲート信号に基づいて、操作部を通して指定された対象領域に、ピーキング信号が加算された映像信号を出力する処理を行うマスク処理部と、操作部を通して、輪郭補正された映像信号を拡大表示するよう指示された場合に、対象領域に出力される映像信号を、対象領域以外の領域に出力される映像信号に適用するスケーリング比率の値よりも大きいスケーリング比率の値を用いて画素変換するスケーリング処理部とを備えるようにしたものである。
【0021】
このようにしたことで、ピーキング信号による輪郭補正が行われるエリアが、操作部を通して輪郭補正対象領域として設定された領域と対応する領域に、限定されるようになる。
【0022】
また、スケーリング処理部に設定されるスケーリング比率の値大きさに応じて、ピーキング信号が加算された映像信号による映像の表示拡大率が変更されるようになる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によると、ピーキング信号による輪郭補正が行われるエリアが、操作部を通して輪郭補正対象領域として設定された領域と対応する領域に限定されるようになるため、ユーザは、フォーカス調整を行いたい領域のみに輪郭補正処理を施すことができるようになる。従って、容易にフォーカス調整を行うことができるようになる。
【0024】
さらに、スケーリング処理部に設定されるスケーリング比率の値大きさに応じて、ピーキング信号が加算された映像信号による映像の表示拡大率が変更されるため、フォーカス調整を行う対象の輪郭補正済みの映像を、拡大して表示することができる。
【0025】
これにより、フォーカス調整の対象の被写体の解像度が上がるため、ユーザは、細かい部分も確認しながら容易にフォーカス調整を行うことができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の一実施の形態を、図1〜図11を参照して説明する。本実施の形態における撮像装置は、ピーキング処理(以下、輪郭補正処理とも称する)を施す範囲を、ユーザに自由に指定させることができるようにするものである。本例では、ピーキング処理を施す範囲を、映像信号に含まれる色成分や、ビューファインダの画面上の表示領域を指定することにより、特定できるようにしている。
【0027】
ピーキング処理を施す範囲を、色成分を指定することにより特定できる「色選択輪郭補正モード」においては、ユーザにより画面上の任意の領域を指定させ、その領域で検出された色成分と近似する色成分を有する映像信号にのみ、ピーキング信号を加算する。また、画面上の任意の領域を指定することにより特定できる「領域選択輪郭補正モード」においては、ユーザにより指定された領域に表示される映像信号にはピーキング信号を加算し、指定された領域以外の領域においては、ピーキング処理を施さないようにする。
【0028】
本例においては、これらの2つのモードに加えて、ピーキング処理を施す範囲を指定しない「標準輪郭補正モード」(従来の機能と同様)も設け、これらの3つのモードをユーザが自由に切り替え可能に構成している。
【0029】
さらに、輪郭補正が施されたフォーカス調整用の映像と、輪郭補正の施されていない構図確認用の映像とを同一画面上に同時に表示させ、輪郭補正が行われた映像を拡大して表示することもできる機能も備えさせてある。表示の形態としては、「拡大表示モード1」と「拡大表示モード2」及び、拡大表示を使用しないモードとしての「標準輪郭補正モード」の3つのモードを設けており、これらのモードを、ユーザによって切り替え可能な構成としている。
【0030】
なお、本例では、1つの撮像装置が、輪郭補正のモードとしては3つのモードを、拡大表示のモードとしては3つのモードを有する例を挙げて説明するが、この構成に限定されるものではない。例えば、輪郭補正のモードとしては「領域選択輪郭補正モード」と「標準輪郭補正モード」のみを有し、2つの拡大表示モードも備える構成等に適用してもよい。
【0031】
図1は、本例における撮像装置100の構成例を示すブロック図である。図1に示した撮像装置100は、カメラ部50とビューファインダ部60とで構成される。まず、カメラ部50の構成を説明すると、カメラ部50は、光学系として、撮像レンズ1と、レンズ鏡筒2と、プリズム3とを備え、撮像素子4B,4G,4Rで撮像を行う。撮像素子4B,4G,4Rでの撮像で得た映像信号は、ビデオアンプ5と、A/D変換部6と、デジタル信号処理部7と、D/A変換部8とで処理される構成としてある。
【0032】
撮像レンズ1は、被写体の光学像を撮像素子4B,4G,4Rの各感光面(図示略)上に結像するものであり、フォーカス調整機能を有する。レンズ鏡筒2は、撮像レンズ1を格納する筒であり、その側面には撮影倍率メモリや距離目盛などが表示されている。プリズム3は、撮像レンズ1を通して入射される光線をR(赤)G(緑)B(青)の3原色の光線に分解するものであり、ダイクロイックプリズム等で構成される。なお、本例では3板式の撮像装置を例に挙げているが、単板式や2板式、4板式等、他の形式の撮像装置に適用してもよい。
【0033】
撮像素子4B,4G,4Rは、プリズム3によって分解された各色の光線を光電変換して映像信号AB,AG,ARを生成し、得られた映像信号AB,AG,ARをビデオアンプ5に出力する。撮像素子4B,4G,4Rは、例えばCCD(Charge Coupled Devices)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等で構成される。ビデオアンプ5は、撮像素子4B,4G,4Rから出力された映像信号AB,AG,ARを増幅して、増幅して得られた映像信号AB′,AG′,AR′を、A/D変換部6に出力する。A/D変換部6は、ビデオアンプ5から出力された映像信号AB′,AG′,AR′をデジタルの映像信号DB,DG,DRに変換して出力する。
【0034】
デジタル信号処理部7は、映像信号DR,DG,DBのそれぞれに対して、マトリクス処理を含むデジタル信号処理を施して輝度信号DY、色差信号DU,DVを生成し、生成した各信号をD/A変換部8へ出力する。D/A変換部8は、デジタル信号処理部7から出力されたデジタルの輝度信号DYをアナログの輝度信号AYに変換し、同じくデジタル信号処理部7から出力されたデジタルの色差信号DU,DVを、アナログの色差信号AU,AVに変換する。そして、生成した輝度信号AY及び色差信号AU,AVを、ビューファインダ部60に出力する。
【0035】
ビューファインダ部60は、ビデオアンプ9、帯域制限フィルタ10、A/D変換部11、ピーキング処理部12、乗算器13、スイッチSw1、加算器14、スイッチSw2、加算器15、画像処理部30、マーカ加算部19、OSD(On Screen Display)処理部20、表示素子駆動部21、表示素子22、操作部31、制御部32とを含む。
【0036】
また画像処理部30には、第1のスケーリング処理部16a及び第2のスケーリング処理部16b、第1のマトリクス処理部17a及び第2のマトリクス処理部17b、オーバレイ処理部18とが含まれる。画像処理部30内の各部の詳細については後述する。
【0037】
なお、カメラ部50とビューファインダ部60間でやりとりする信号は、アナログ信号に限定されるものではなく、デジタル信号で行うようにしてもよい。この場合は、カメラ部50のD/A変換部8からビューファインダ部60のA/D変換部11までの構成は省略される。
【0038】
ビデオアンプ9は、カメラ部50のD/A変換部8から出力された輝度信号AY、色差信号AU、AVを増幅し、増幅した輝度信号AY′、色差信号AU′,AV′を帯域制御フィルタ10へ供給する。帯域制限フィルタ10は、ローパスフィルタもしくはバンドパスフィルタで構成してあり、入力された輝度信号AY′、色差信号AU′,AV′の周波数帯域を所定の周波数帯域に制限して、帯域制限された輝度信号AY′′、色差信号AU′′,AV′′をA/D変換部11に出力する。
【0039】
A/D変換部11は、帯域制限フィルタ10から出力された輝度信号AY′′、色差信号AU′′,AV′′を、それぞれデジタルの輝度信号DY、デジタルの色差信号DU,DVに変換し、輝度信号DYはピーキング処理部12と加算器14と15に、色差信号DUとDVは、ピーキング処理部12と第1のスケーリング処理部16a及び第2のスケーリング処理部16bに出力する。
【0040】
ピーキング処理部12は、A/D変換部11から出力された輝度信号DYから高周波成分を抽出してピーキング信号PKを生成する。被写体を撮影したときにフォーカスが合っていない状態では、画像ボケを生じているため、輝度信号DYには高域成分が含まれない。このため、ピーキング処理部12ではピーキング信号PKが生成されない。一方、フォーカス調整が行われてフォーカスが合う状態に近づくと、画像の輪郭が明瞭となるため、輪郭部分における輝度信号DYには、高域成分が発生するようになる。従って、ピーキング処理部12では、フォーカスが合う状態に近づいた段階で、輝度信号DYの高域成分に基づいてピーキング信号PKが生成される。ピーキング処理部12の詳細については、次の図2を参照して後述する。
【0041】
ピーキング処理部12へは、サンプリングタイミング制御信号や、「輝度設定幅」、「飽和度設定幅」、「色相設定幅」等の各種設定幅を指定するための設定信号(以下、各種設定幅設定信号とも称する)が、制御部32から供給される。サンプリングタイミング制御信号とは、ユーザにより指定された領域における、色成分のサンプリングのオン・オフを制御する信号である。
【0042】
サンプリングのオン(開始)を指示する制御信号は、ユーザによって操作部31等を介してサンプリングの開始を指示する入力を受け付けた段階で、制御部32により生成され、ピーキング処理部12に供給される。本例では、後述する輪郭補正モード切り替え用のスイッチを長押しする操作を、サンプリングのオンを指示する制御信号の生成トリガとして割り当てているが、他の操作をトリガとするようにしてもよい。各種設定幅設定信号の詳細については後述する。
【0043】
乗算器13は、制御部32から供給されるピーキングレベル設定信号と、ピーキング処理部12から出力されたピーキング信号PKとを乗算し、乗算後のピーキング信号PK′を、スイッチSw1及びスイッチSw2に出力する。
【0044】
ピーキングレベル設定信号とは、ピーキングの度合い(強弱)を設定するための信号であり、ピーキングの度合いは、操作部31等を通してユーザが設定可能としてある。従って、乗算器13より出力されるピーキング信号PK′は、ピーキングのレベルが所定の値に調整されたピーキング信号とになる。
【0045】
スイッチSw1とスイッチSw2とは、それぞれ制御部32から供給される制御信号に基づいて開閉するものである。具体的には、ユーザによって「映像領域選択輪郭補正モード」を選択する操作があった場合には、スイッチSw2がオンになり、スイッチSw1がオフされるような制御が行われる。「映像領域選択輪郭補正モード」以外のモードが選択された場合には、スイッチSw1がオンになり、スイッチSw2がオフになるよう制御される。
【0046】
スイッチSw1は、オンされることで、ピーキングレベルが調整されたピーキング信号PK′を加算器14に出力し、スイッチSw2は、オンされることで、ピーキングレベルが調整されたピーキング信号PK′を加算器15に出力する。
【0047】
加算器14は、A/D変換部11から出力された輝度信号DYに、スイッチSw1を通して伝送されたピーキング信号PK′を加算し、輝度信号DYpk1として第1のスケーリング処理部16aに出力する。加算器15は、A/D変換部11から出力された輝度信号DYに、スイッチSw2を通して伝送されたピーキング信号PK′を加算し、輝度信号DYpk2として第2のスケーリング処理部16bに出力する。
【0048】
第1のスケーリング部16aは、加算器14から出力された輝度信号DYpk1と、A/D変換部11から出力された色差信号DU,DVとを、表示素子22の解像度に応じて画素変換したり、i/p変換したりする処理を行う。処理後の輝度信号DYpk1′と色差信号DU′,DV′は、第1のマトリクス処理部17aに出力される。第2のスケーリング部16bも第1のスケーリング処理部16aと同様の処理を行うものであり、加算器15から出力された輝度信号DYpk2と、A/D変換部11から出力された色差信号DU,DVとを、表示素子22の解像度に応じて画素変換(拡大又は縮小)したり、i/p変換したりする処理を行う。そして、処理後の輝度信号DYpk2′と色差信号DU′,DV′とを、第2のマトリクス処理部17bに出力する。
【0049】
この場合の、画素変換におけるスケーリングの比率は、制御部32より供給されるスケーリング比率設定信号に基づいて決定される。スケーリング比率設定信号は、第1のスケーリング処理部16aと第2のスケーリング処理部16bのそれぞれに対して出力されるものであり、表示のモード(「拡大表示モード1」「拡大表示モード2」「拡大表示モードオフ」)がいずれのモードに選択されているかによって、スケーリングの比率が定まるようにしてある。表示のモードとスケーリングの比率との関係については、後述する。
【0050】
第1のマトリクス処理部17aは、第1のスケーリング部16aから出力された輝度信号DYpk1′と色差信号DU′,DV′とを、RGB形式の映像信号に変換して映像信号DRpk1,DGpk1,DBpk1を生成し、生成した各映像信号をオーバレイ処理部18に出力する。第2のマトリクス処理部17bは、第2のスケーリング部16bから出力された輝度信号DYpk2′と色差信号DU′,DV′とを、RGB形式の映像信号に変換して映像信号DRpk2,DGpk2,DBpk2を生成し、生成した各映像信号をオーバレイ処理部18に出力する。
【0051】
オーバレイ処理部18は、第1のマトリクス処理部17aから出力された映像信号DRpk1,DGpk1,DBpk1と、第2のマトリクス処理部17bから出力された映像信号DRpk2,DGpk2,DBpk2とをそれぞれ合成して、映像信号DRpk,DGpk,DBpkを生成する。
【0052】
映像信号DRpk1,DGpk1,DBpk1により構成される映像をCH1、映像信号DRpk2,DGpk2,DBpk2により構成される映像をCH2と称した場合、オーバレイ処理部18による映像CH1と映像CH2との合成処理は、制御部32から供給される2画面合成制御信号に基づいて行われる。
【0053】
またオーバレイ処理部18は、制御部32よりエリアゲート信号が入力された場合には、第2のマトリクス処理部17bから入力される映像信号CH2に対して、マスク処理を行う。エリアゲート信号とは、画面上の表示領域において輪郭補正処理を施す範囲(位置や大きさ)を指定する信号であり、「映像領域選択輪郭補正モード」が選択されている場合にのみ生成される。
【0054】
エリアゲート信号に基づいて、オーバレイ処理部18でマスク処理が行われることにより、画面上の指定された位置に、輪郭補正が施された映像信号CH2による映像が出力されるようになる。なお、2画面合成制御信号やエリアゲート信号の値は、選択された表示のモードの種類によって変わるようにしてある。
【0055】
マーカ加算部19は、色成分を抽出する対象の領域を指定するための「色成分抽出領域指定マーカ」を構成する信号や、輪郭補正を有効にする領域を指定するための「輪郭補正有効領域指定マーカ」を構成する信号等を、オーバレイ処理部18から出力された映像信号DRpk,DGpk,DBpkに重畳する。そして、それらが重畳された映像信号DRpk′,DGpk′,DBpk′を、OSD処理部20に出力する。
【0056】
OSD処理部20は、表示素子22に表示させる映像に、各種設定用のメニュー等を重畳して表示するためのOSD処理を行う。表示素子駆動部21は、表示素子22を駆動する駆動信号を生成して表示素子22に供給する。表示素子22は、LCD(Liquid Crystal Display)等で構成されるものであり、表示素子駆動部21から供給される駆動信号に基づいて、画像を表示する。
【0057】
操作部31は、スイッチやボタン、つまみ等で構成されるインターフェースを備えるものであり、それらのインターフェースを介してユーザからの入力された操作内容に応じて、操作信号を生成し、生成した操作信号を制御部32に供給する。具体的には、輪郭補正のモードを切り替えるための「輪郭補正モード切替スイッチ」や、操作内容を取り消すための「キャンセルスイッチ」、設定メニューを選択したり値を設定するためのスイッチや、つまみ等を備えるものとする。
【0058】
制御部32は、MPU(Micro Processing Unit)等により構成されるものであり、撮像装置100を構成する各部の制御を行う。操作部31より操作信号が入力された場合には、その内容に応じて、輪郭補正モードの切り替えを指示する信号や、サンプリングタイミング制御信号や各種設定幅設定信号、ピーキングレベル設定信号、スケーリング比率設定信号、エリアゲート信号、2画面合成制御信号、OSD制御信号等を生成し、上述した各部に供給する。
【0059】
次に、図2を参照して、ピーキング処理部12の構成の詳細について説明する。図2に示したピーキング処理部12は、ピーキング信号生成部12−1、飽和度変換部12−2、色相変換部12−3、閾値生成部12−4、エリア判定部12−5、ピーキングマスク処理部12−6とを有する。
【0060】
ピーキング信号生成部12−1は、輝度信号DYから高周波成分を抽出してピーキング信号PEAKを生成し、生成したピーキング信号PEAKをピーキングマスク処理部12−6に出力する。飽和度変換部12−1は、A/D変換部11(図1参照)から入力された色差信号DU,DVを演算処理することにより、飽和度変換値i_SATを生成し、得られた飽和度変換値i_SATを、閾値生成部12−4とエリア判定部12−5に出力する。色相変換部12−3は、同じくA/D変換部11から入力された色差信号DU,DVを演算処理することにより、色相変換値i_HUEを生成し、得られた色相変換値i_HUEを、閾値生成部12−4とエリア判定部12−5に出力する。
【0061】
閾値生成部12−4は、サンプリングの開始を指示するサンプリングタイミング制御信号を、制御部32から受け付けると、水平同期信号HDおよび垂直同期信号VDに同期して、所定のエリア内の輝度値i_Y、飽和度変換値i_SAT、色相変換値i_HUEをサンプリングする。ここでいう所定のエリアとは、ユーザにより画面上で「色成分抽出領域」として指定された領域である。「色成分抽出領域」は、画面上に表示された「色成分抽出領域指定マーカ」の大きさや位置に基づいて決定される。
【0062】
なお、「標準輪郭補正モード」が選択されている場合には、色成分のサンプリングを指示する操作は行われないため、上述したような閾値生成部12−4での処理も、行われなくなる。
【0063】
図3(a)に、「色成分抽出領域指定マーカ」の表示例を示してある。図3(a)においては、画面の中央部分に、色成分抽出領域指定マーカMk1が表示されている。ユーザよりこの位置を確定する操作を受け付けた段階で、この領域が色成分抽出領域Ar1となる。
【0064】
図2に戻って説明を続けると、閾値生成部12−4は、所定のエリア内における輝度値i_Yのサンプル値、飽和度変換値i_SATのサンプル値、色相変換値i_HUEのサンプル値を用いて、まずそれぞれの色成分における平均値を求める。そして、求めた各平均値を、輝度サンプル値、飽和度サンプル値、色相サンプル値とする。さらに、得られた輝度サンプル値、飽和度サンプル値、色相サンプル値を基に、輝度閾値Yminと輝度閾値Ymax、飽和度閾値Sminと飽和度閾値Smax、色相閾値Hminと色相閾値Hmaxとを生成する。各閾値における「min」とは、閾値の下限を示すものであり、「max」とは、閾値の上限を示すものである。
【0065】
輝度閾値Ymin及び輝度閾値Ymax、飽和度閾値Smin及び飽和度閾値Smax、色相閾値Hmin及び色相閾値Hmaxは、例えば下記の式を用いることによって算出する。
輝度閾値Ymin=輝度サンプル値−輝度設定幅/2
輝度閾値Ymax=輝度サンプル値+輝度設定幅/2
飽和度閾値Smin=飽和度サンプル値−飽和度設定幅/2
飽和度閾値Smax=飽和度サンプル値+飽和度設定幅/2
色相閾値Hmin=色相サンプル値−色相設定幅/2
色相閾値Hmax=色相サンプル値+色相設定幅/2
【0066】
つまり、各サンプリング値に、各種設定幅の1/2の値が加算された値が閾値maxとして設定され、各サンプリング値から、各種設定幅の1/2の値が減算された値が閾値minとして設定される。すなわち、閾値が、サンプリング値をセンター値として、上下の方向に幅を持ったものに設定されるようになる。「輝度設定幅」、「飽和度設定幅」、「色相設定幅」の各値は、ユーザにより操作部31等を介して設定される。なお、本例では算出して閾値を構成するパラメータとして、各サンプル値の平均値を求めるようにしてあるが、最頻値等を用いるようにしてもよい。また、各設定幅の1/2の値を各サンプル値に加減するようにしてあるが、1/2以外の値に設定するようにしてもよい。
【0067】
エリア判定部12−5は、A/D変換部11(図1参照)から出力された輝度値i_Yを、閾値生成部12−4で生成された輝度閾値Ymin及び輝度閾値Ymaxに照らし合わせることにより、輝度値i_Yが、輝度閾値Yminと輝度閾値Ymaxにより特定される範囲内に収まっているか否かの判断を行う。
【0068】
同様に、飽和度変換部12−2から出力された飽和度変換値i_SATと、閾値生成部12−4から出力された飽和度閾値Smin及び飽和度閾値Smaxとを比較し、色相変換部12−3から出力された色相変換値i_HUEと、閾値生成部12−4から出力された色相閾値Hmin及び色相閾値Hmaxとを比較する。そしてそれぞれの比較の結果から、各閾値minと各閾値maxとによって求まる色空間と、マッチングする色成分を有する映像信号を抽出し、抽出した映像信号をゲートさせるための、色検出ゲート信号を生成する。生成された色検出ゲート信号は、ピーキングマスク処理部12−6に出力される。
【0069】
従って、エリア判定部12−5において、閾値minと閾値maxによって規定される色空間の範囲内に存在する色成分が抽出されなかった場合や、輪郭補正のモードとして「色選択輪郭補正モード」が選択されていない場合には、エリア判定部12−5での色検出ゲート信号生成は行われないことになる。
【0070】
ピーキングマスク処理部12−6は、エリア判定部12−5から色検出ゲート信号が入力された場合には、色検出ゲート信号に基づいて、ピーキング信号生成部12−1から入力されたピーキング信号PEAKにマスク処理を施し、ピーキング信号PKとして乗算器13に出力する。
【0071】
すなわち、ここで生成されるピーキング信号PKは、映像領域内の所定の色成分を含む映像信号に対して輪郭の強調(輪郭補正)を行うための信号となる。ピーキング信号PKによって輪郭が強調される領域は、輪郭補正有効領域として画面上に表示するようにしてある。
【0072】
図3(a)〜図3(c)に、本例における色成分抽出の概念について説明した図を示してある。図3(a)には、ビューファインダ60の画面上に、被写体Ob1(女性)と、被写体Ob2(コーヒーカップ)と、被写体Ob3(コーヒーカップ)とが表示された状態が示されている。そして、被写体Ob1の顔面上に、色成分抽出領域指定マーカMk1が表示されている。ここでは、色成分抽出領域指定マーカMk1が示す領域が、色成分抽出領域Ar1として、ユーザにより確定されているものとする。
【0073】
図3(b)は輝度、色相、飽和度の三つの成分からなる色空間モデルを示している。この図において、円筒の軸の上下方向は輝度の値を示し、軸からの距離の方向は飽和度の値を示し、円周の角度は色相の値を示す。従って図3(b)では、円筒の高さが輝度サンプル値Lの値を示し、軸から外側の方向に向かって伸びた矢印の長さが、飽和度サンプル値Sを示し、円周方向の回転角が色相サンプル値Hを示している。
【0074】
図3(b)においては、輝度サンプル値Lと、飽和度サンプル値Sと、色相サンプル値Hにより定まった位置が、点Pとして示されている。つまり、図3(a)に示された色成分抽出領域Ar1において抽出された色成分が、図3(b)に示した円筒上では、点Pとして表現されることになる。
【0075】
また、図3(b)において、輝度設定幅Wl、飽和度設定幅Ws、色相設定幅Whのそれぞれは、矢印の長さで表現されている。各設定幅の値は、閾値minと閾値maxとを算出するためのパラメータとして用いられるものであり、各値を増減させることで、閾値の幅も可変させることができる。
【0076】
点Pを中心として、これらの設定幅の1/2の値だけ増減方向に幅を持たせた色空間が、すなわち閾値min及び閾値maxで特定される色空間となる。この色空間にマッチングする映像領域に対してのみ、輪郭補正処理が行われるものであり、その映像領域は、画面上では輪郭補正有効領域Ar2として表現される。
【0077】
図3(c)には、輪郭補正有効領域Ar2を、網がけで示してある。輪郭補正有効領域Ar2に指定された領域に対してのみ輪郭補正を行うことで、図3(a)で抽出された色成分とは異なる色成分を有する被写体Ob2や被写体Ob3、背景部に対しては、輪郭補正処理が行われなくなる。
【0078】
閾値min及び閾値maxと、各種設定値とは上述したような関係を有するものであるため、輪郭補正有効領域Ar2の範囲を広げたい場合には、ユーザは各種設定幅の値をより大きな値とすればよいことになる。また、輪郭補正有効領域Ar2の範囲を狭めたい場合には、ユーザは、各種設定幅の値をより小さな値に設定し直せばよい。
【0079】
図3(a)においては、色成分抽出領域Ar1は被写体の顔の位置に設定されているため、肌色の色成分が抽出されていることになる。ユーザが、輝度設定幅Wlと飽和度設定幅Wsと色相設定幅Whの各値をより小さな値に設定することにより、閾値の範囲にマッチングする色空間の範囲は狭くなる。つまり、輪郭補正有効領域Ar2の範囲が、抽出された肌色の成分と同等の色成分を有する映像領域のみに限定される。
【0080】
この場合の表示例を、図4(a)に示してある。図4(a)に示された輪郭補正有効領域Ar2の範囲は、図3(c)に示した輪郭補正有効領域Ar2の範囲よりも狭くなっている。図4(b)には、輪郭補正有効領域Ar2が図3(c)に示した範囲であることを確認した後に、輝度設定幅Wlと飽和度設定幅Wsと色相設定幅Whの各値をより大きな値に設定し直した場合の表示例を示してある。図4(b)に示された輪郭補正有効領域Ar2の範囲は、図3(c)に示した輪郭補正有効領域Ar2の範囲よりも広くなっていることが分かる。そして図4(b)では、被写体Ob1以外の背景の部分も、被写体Ob1の肌の色と近い色成分を有しているため、背景の領域も、輪郭補正有効領域Ar2として設定されている。
【0081】
次に、図5と図6のフローチャートを参照して、ピーキング処理部12における処理の例について説明する。図5においてまず、輪郭補正のモードが、「色選択輪郭補正モード」に設定されているか否かの判断が行われる(ステップS1)。
【0082】
「色選択輪郭補正モード」が選択されていると判断された場合には、次に、ユーザより、色成分抽出開始の操作を受け付けたか否かの判断が行われる(ステップS3)。色成分抽出開始の操作を受け付けた段階で、表示素子22(図1参照)上に色成分抽出領域指定マーカMk1を表示する処理が行われる(ステップS4)。色成分抽出開始の操作を行わない場合は、前回抽出した色成分(もしくは初期値)により、それぞれの閾値を生成する処理が行われる(図6のステップS12へ)。
【0083】
そして、色成分抽出領域指定マーカMk1で囲まれた領域が、ユーザよって確定されたか否かの判断が行われ(ステップS5)、確定されたと判断された場合には、色成分抽出領域Ar1における色成分が抽出される(ステップS6)。色成分抽出以降の処理については、次の図6にフローチャートを参照して説明する。
【0084】
図6において、まず映像信号から抽出された色差信号を基に、飽和度変換部12−2(図2参照)で飽和度変換値i_SATが生成され、色相変換部12−3で色相変換値i_HUEが生成される(ステップS11)。そして、閾値生成部12−4によって、A/D変換部11(図1参照)から出力された輝度値i_Yと、飽和度変換部12−2から出力された飽和度変換値i_SATと、色相変換部12−3から出力された色相変換値i_HUEに基づいて、輝度閾値Yminと輝度閾値Ymax、飽和度閾値Sminと飽和度閾値Smax、色相閾値Hminと色相閾値Hmaxが生成される(ステップS12)。
【0085】
続いて、閾値生成部12−4において、色成分抽出領域Ar1内で抽出された輝度値i_Yと輝度閾値Ymin及び輝度閾値Ymaxとが比較され、飽和度変換値i_SATと飽和度閾値Smin及び飽和度閾値Smaxとが比較される。また、色相変換値i_HUEと色相閾値Hmin及び色相閾値Hmaxとが比較される。そして比較結果に基づいて、特定の色成分を含むエリアが判定される(ステップS13)。
【0086】
エリアが判定されると、閾値生成部12−4において、そのエリアに存在する色成分に対応する色検出ゲート信号が生成され(ステップS14)、生成された色検出ゲート信号は、ピーキングマスク処理部12−6(図2参照)に出力される。ピーキングマスク処理部12−6では、入力された色検出ゲート信号に基づいて、ピーキング生成部12−1から出力されたPEAK信号に対するマスク処理が行われ、マスク処理が行われたピーキング信号PKが出力される(ステップS15)。
【0087】
そして、加算器14(または加算器15)(図1参照)によって、輝度信号DYとピーキング信号PKとが加算される(ステップS16)。つまり、映像信号の所定の色空間に対してのみ、ピーキング処理が施されるようになる。
【0088】
一方、図5のステップS1で、「色選択輪郭補正モード」が選択されていないと判断された場合、つまり、「標準輪郭補正モード」が設定されている場合には、エリア判定部12−5での色検出ゲート信号の生成がオフにされる(ステップS2)。すなわち、ピーキングマスク処理部12−6には色検出ゲート信号が出力されなくなる。このため、ピーキングマスク処理部12−6ではマスク処理が行われず、ピーキング信号生成部12−1で生成されたピーキング信号PEAKが、そのままピーキングPKとして出力されるようになる。そして、加算器14(図1参照)によって、輝度信号DYとピーキング信号PKとが加算される(ステップS16)。
【0089】
この場合の、ピーキングPK(=ピーキング信号PEAK)によって輪郭が強調される範囲は、図7に示されたもののようになる。図7には、輪郭補正有効領域Ar2が網がけで示してあり、その範囲が画面全体に及んでいる状態が示されている。つまり、エリア判定部12−5によって色検出ゲート信号が生成されない場合には、従来における処理と同様に、高周波成分が検出された映像信号のすべてに対して、ピーキング処理が施されるようになる。
【0090】
再び図6のフローチャートに戻って説明を続けると、ステップS17では、ユーザによるキャンセルスイッチの押下操作を受け付けたか否かの判断が行われ、キャンセルスイッチの押下を受け付けた場合には、図5のステップS3に戻って処理が続けられる。
【0091】
キャンセルスイッチの押下を受け付けていないと判断された場合には、各種設定幅(輝度設定幅Wl、飽和度設定幅Ws、色相設定幅Wh)の調整を受け付けたか否かの判断が行われる(ステップS18)。ユーザにより、各種設定値の調整が行われた場合には、ステップS12に戻って処理が続けられる。つまり、ユーザによって新たに設定された各種設定幅の値に基づいて、閾値生成部12−4によって、閾値minと閾値maxとが再計算されるようになる。ステップS19で、各種設定幅の調整が完了したと判断された場合には、処理は終了となる。また、ステップS18において、各種設定幅の調整処理が行われていないと判断された場合にも、その時点で処理は終了となる。
【0092】
次に、図8のフローチャートを参照して、乗算器13(図1参照)からピーキング信号PK′が出力された以降の処理について説明する。図8において、まず、輪郭補正のモードが「映像領域選択輪郭補正モード」に設定されているか否かの判断が行われる(ステップS21)。
【0093】
「映像領域選択輪郭補正モード」が選択されていないと判断された場合は、制御部32による制御に基づいて、スイッチSw1(図1参照)がオンにされ、スイッチSw2がオフにされる(ステップS22)。
【0094】
ステップS22でスイッチSw1がオンにされたことにより、乗算部13での処理によってレベル設定がされたピーキング信号PK′が、加算器14によって、輝度信号DYと加算される。そして、ピーキング信号PK′が加算された輝度信号DYpk1と、色差信号DU,DVが、第1のスケーリング処理部16aに入力される。そして、スイッチSw2がオフとされることにより、ピーキング信号PK′は、スイッチSw2の接続先にある加算器15には出力されなくなる。従って、加算器15の接続先の第2のスケーリング処理部16bには、ピーキング信号PK′が付加されていない輝度信号DYpk2と、色差信号DU,DVが入力される。
【0095】
「色選択輪郭補正モード」が選択されていない場合、第1のスケーリング処理部16aに入力される輝度信号DYpk1は、高域成分を有するすべての映像信号に対して、ピーキング信号PK′が加算されて生成された信号となる。「色選択輪郭補正モード」が選択されている場合、第1のスケーリング処理部16aに入力される輝度信号DYpk1は、高域成分を有し所定の色成分を含む映像信号に対して、ピーキング信号PK′が加算されて生成された信号となる。
【0096】
次に、ステップS24に進み、第1のスケーリング処理部16aにおいて、縮小比率(スケーリングの比率)が「A」に設定された上で(ステップS24)、画素変換処理が行われる。「A」の値は、例えば表示素子22(図1参照)の解像度を、入力映像信号の解像度で除算して得られる値等に設定してあるものとする。例えば表示素子22の解像度が、入力映像信号の解像度の半分であった場合には、縮小率Aは0.5に設定される。すなわちステップS24では、表示素子22の画素数に合わせて、画像を縮小する処理が行われることになる。
【0097】
第1のスケーリング処理部16aで画素変換と、必要に応じてi/p変換処理が行われた映像信号CH1と、第2のスケーリング処理部16bで同様の処理を施された映像信号CH2は、第1のマトリクス処理部17aと第2のマトリクス処理部17bを経由してオーバレイ処理部18に出力される。そしてオーバレイ処理部18によって、制御部32から入力される2画面合成制御信号に基づいて、映像信号CH1のみが出力される。
【0098】
つまり、「映像領域選択輪郭補正モード」が選択されていない場合には、制御部32よりオーバレイ処理部18に対して、映像信号CH1のみを出力するよう指示する2画面合成制御信号が供給される。もしくは、「映像領域選択輪郭補正モード」が選択されていない場合には、第2のスケーリング処理部16bには映像信号を出力しないような構成としてもよい。また、「映像領域選択輪郭補正モード」を備えないシステム構成としてもよく、この場合は、スケーリング処理部16、マトリクス処理部17の処理系統を1本とするようにしてもよい。つまり、画像処理部30からは、映像信号CH1のみが出力されるような構成としてもよい。
【0099】
オーバレイ処理部18から出力された映像信号CH1は、マーカ加算部19、OSD処理部20、表示素子駆動部21を経由して表示素子22に表示される。映像信号CH1は、輝度信号DYpk1を基に生成された信号であり、輝度信号DYpk1は、「色選択輪郭補正モード」が選択されていない場合には、高域成分を有するすべての映像信号に対して、ピーキング信号PK′が加算されて生成された信号となる。また、「色選択輪郭補正モード」が選択されている場合には、高域成分を有し、かつ所定の色成分を含む映像信号に対して、ピーキング信号PK′が加算されて生成された信号となる。このため、例えば「映像領域選択輪郭補正モード」と「色選択輪郭補正モード」のいずれも選択されていない場合、つまり「標準輪郭補正モード」が選択されている場合には、映像信号CH1による表示画像は、図7に示したようなものとなる。すなわち、輪郭補正有効領域Ar2が画面全体に及ぶようになる。
【0100】
図8のステップS21で、「映像領域選択輪郭補正モード」が選択されていると判断された場合には、スイッチSw1はオフにされ、スイッチSw2がオンにされる(ステップS26)。つまり、乗算器13によってレベル設定されたピーキング信号PK′は、スイッチSw1の接続先にある加算器14には出力されず、スイッチSw2の接続先にある加算器15のみに出力される。
【0101】
加算器14にはピーキング信号PK′が入力されないため、A/D変換部11(図1参照)から出力された輝度信号DYが、そのまま輝度信号DYpk1として第1のスケーリング処理部16aに出力される。すなわち、第1のスケーリング処理部16aには、輪郭補正処理が施されない輝度信号DYpk1が入力されることになる。
【0102】
また、加算器15には、スイッチSw2を介してピーキング信号PK′が入力されるため、加算器15から第2のスケーリング処理部16bに対しては、輝度信号DYとピーキング信号PK′とが加算して生成された、輝度信号DYpk2が入力される。すなわち、第2のスケーリング処理部16bには、輪郭補正処理が施された輝度信号DYpk2が入力されることになる。
【0103】
続いて、ユーザより、輪郭補正有効領域Ar2の位置や大きさを指定する操作を受け付ける(ステップS27)。図9に、輪郭補正有効領域Ar2を指定するためのGUI(Graphical User Interface)の例を示してある。図9には、画面の中央部に、輪郭補正有効領域指定マーカMk2が表示された状態が示されている。この輪郭補正有効領域指定マーカMk2の大きさ及び位置、ユーザが自由に変更することができるようにしてある。
【0104】
図9に示したような輪郭補正有効領域指定マーカMk2によって、輪郭補正有効領域Ar2が決定されると、次に、「拡大表示モード」がオフに設定されているか否かの判断が行われる(ステップS28)。「拡大表示モード」がオフにされている場合には、第1のスケーリング処理部16aと第2のスケーリング処理部16bの両方において、スケーリング比率が「A」に設定され(ステップS29)、オーバレイ処理部18によって、第1のスケーリング処理部16aから入力された映像CH1の上面に、第2のスケーリング処理部16bから入力され、マスク処理が施された映像CH2が重畳される(ステップS30)。
【0105】
図10(a)に、「映像領域選択輪郭補正モード」が選択され、かつ拡大表示モードがオフに設定されている場合の表示例を示してある。図10(a)には、画面全体に映し出された映像CH1の上面に、輪郭補正有効領域Ar2が重畳された状態が示されている。また、輪郭補正有効領域Ar2に表示された映像が、第2のスケーリング処理部16bからの入力映像CH2であることが示されている。
【0106】
つまり、「映像領域選択輪郭補正モード」が選択され、かつ拡大表示モードがオフに設定された場合には、輪郭補正有効領域指定マーカMk2によって特定された輪郭補正有効領域Ar2に対してのみ輪郭補正処理が行われ、それ以外の領域(映像CH1が表示される領域)に表示される映像信号には、ピーキング処理が施されなくなる。
【0107】
図8のステップS28で、拡大表示モードがオンに設定されていると判断された場合には、次に「拡大表示モード1」が選択されているか否かの判断が行われる(ステップS31)。「拡大表示モード1」が選択されている場合には、第1のスケーリング処理部16aにおけるスケーリング比率は「A」に、第2のスケーリング処理部16bにおけるスケーリング比率は「B」に設定される(ステップS32)。
【0108】
スケーリング比率Bは、スケーリング比率Aよりは大きく、かつ1以下の値に設定されているものとする。スケーリング比率Aが0.5に設定されている場合には、例えば0.8等の値に設定される。スケーリング比率Bが1の場合、スケーリング処理部16bではスケーリング処理が施されず、必要に応じてi/p変換処理が行われることになる。そして、オーバレイ処理部18によって、第1のスケーリング処理部16aから入力された映像CH1の上面に、第2のスケーリング処理部16bから入力され、マスク処理が施された映像CH2が重畳される(ステップS29)。
【0109】
図10(b)に、「映像領域選択輪郭補正モード」が選択され、かつ「拡大表示モード1」が選択されている場合の表示例を示してある。図10(b)には、画面全体に映し出された第1のスケーリング処理部16aからの入力映像CH1の上面に、輪郭補正有効領域Ar2が拡大されて重畳されている状態が示されている。また、輪郭補正有効領域Ar2に表示された映像は、第2のスケーリング処理部16bからの出力映像CH2であることが示されている。
【0110】
つまり、「映像領域選択輪郭補正モード」が選択され、かつ「拡大表示モード1」が選択された場合には、輪郭補正有効領域指定マーカMk2によって特定された輪郭補正有効領域Ar2に対してのみ輪郭補正処理が行われ、かつ、輪郭補正有効領域Ar2が拡大して表示されるようになる。そして、それ以外の領域に表示される映像信号には、ピーキング処理が施されなくなる。
【0111】
このように、輪郭補正有効領域Ar2に表示される映像が拡大されることで、フォーカス調整対象の被写体の解像度も向上する。これにより、ユーザはフォーカスの調整をより行いやすくなる。さらに、輪郭補正有効領域Ar2の背面には、ピーキング処理の施されていない通常の映像が画面全体に渡って表示されるようになるため、フォーカスの調整とともに、構図の確認も同時に行うことができるようになる。
【0112】
ここでの輪郭補正有効領域Ar2における映像の表示の拡大率は、図8のステップS32で第2のスケーリング処理部16bに設定される、スケーリング比率Bにより決まる。従ってユーザは、フォーカス調整の対象エリアにおける拡大率を変更したい場合には、縮小率Bの値を、1≧B>Aの範囲内における任意の値に設定することで、ピーキング処理が施される範囲である輪郭補正有効領域Ar2の表示サイズを、変えることができる。
【0113】
図8のステップS31で、「拡大表示モード1」が選択されていないと判断された場合、つまり、「拡大表示モード2」が選択されている場合には、第1のスケーリング処理部16aにおけるスケーリング比率は「A′」に、第2のスケーリング処理部16bにおけるスケーリング比率は「B′」に設定される(ステップS33)。スケーリング比率A′は、スケーリング比率Aよりも小さな値に設定されているものとし、スケーリング比率B′は、スケーリング比率Aよりは大きく、かつ1以下の値に設定されているものとする。そして、オーバレイ処理部18によって、第2のスケーリング処理部16bから入力され、マスク処理が施された映像CH2の上面に、第1のスケーリング処理部16aから入力された映像CH1が重畳される(ステップS34)。
【0114】
図10(c)に、「映像領域選択輪郭補正モード」が選択され、かつ「拡大表示モード2」が選択されている場合の表示例を示してある。図10(c)では、図10(a)や図10(b)の表示例とは異なり、第2のスケーリング処理部16bからの入力映像CH2が画面の全面に表示され、その上面に、第1のスケーリング処理部16aから入力された映像CH1が重畳されている。
【0115】
つまり、「映像領域選択輪郭補正モード」が選択され、かつ「拡大表示モード2」が選択された場合には、輪郭補正有効領域Ar2が画面全面に表示され、輪郭補正が施されていない映像CH1は、画面の右下端等の所定の位置に、縮小して表示されるようになる。
【0116】
「拡大表示モード2」によれば、ユーザは輪郭補正有効領域Ar2を拡大して、画面全体に表示させることができるため、フォーカスの調整がより行い易くなる。それとともに、子画面上に構図確認用の映像を表示させることができるため、フォーカスの調整と構図の確認を同時に行うことができる。
【0117】
上述した実施の形態によれば、ピーキング処理を施す範囲を、映像信号に含まれる色成分や表示画面上での領域によって特定することができるようになる。そして、特定された範囲以外にはピーキング処理が施されなくなるため、輪郭補正が行われるべきではない領域に対して、ピーキング処理が施されてしまうことを防止することができる。
【0118】
この場合、フォーカス調整を行いたい被写体に関連する箇所にのみ、輪郭補正を行うことができるようになるため、ユーザによるフォーカスの調整を容易にすることができる。
【0119】
また、上述した実施の形態によれば、画面上に表示される「色成分抽出領域決定マーカMk1」や「輪郭補正有効領域指定マーカMk2」の大きさや位置に基づいて、輪郭補正が行われる範囲が決定される。このためユーザは、輪郭補正を行いたい範囲を、これらのマーカの大きさや位置を動かすことによって容易に設定することができる。
【0120】
また、「色選択輪郭補正モード」が選択されている場合には、ユーザにより選択された特定の領域に含まれる色成分と、近似する色空間に含まれる色成分を有する被写体に対してのみ、ピーキング処理が施されるようになる。このためユーザは、特定の被写体を対象としたフォーカスの調整を、容易に行うことができる。
【0121】
この場合、様々な映像領域に映し出された様々な色の被写体に対して、選択的に輪郭補正を行うことができるため、選択した特定の被写体に対するフォーカスの調整が容易になる。
【0122】
例えば、被写体として人物が複数存在するコマ等においては、その中の1人の肌の部分等を指定するだけで、その色成分と近似する色成分を有する映像空間全体に対して、輪郭補正処理が施されるようになる。つまり、複数の被写体をそれぞれ特定することなく、すべての被写体(の肌色部分のみ)を輪郭補正する等のことができるようになる。このような表示をすることで、被写体中の人物のみを対象に容易にフォーカス調整を行うことができる。
【0123】
また、「色選択輪郭補正モード」が選択されている場合には、ユーザによって指定された領域に含まれる色成分と、映像信号に含まれる色成分とのマッチングを行う際に用いられる閾値として、上限値(max)と下限値(min)の2つの値を設けている。これにより、ユーザによって指定された領域に含まれる色成分と完全に一致する色成分を有する領域だけでなく、近似する色成分を有する領域に対しても、輪郭補正が行われるようになる。
【0124】
この場合、閾値算出時にパラメータとして用いられる輝度設定幅Wl、飽和度設定幅Ws、色相設定幅Whのそれぞれの値を、ユーザによって自由に設定可能としてあるため、ユーザは、これらの設定幅を増減させることにより、輪郭補正を行う対象となる領域の範囲を自在に調整することができる。
【0125】
さらに、これらの設定幅の値を変更した時点で、新たに設定された設定幅の値を用いて再び閾値が設定され、この閾値に基づいて輪郭補正有効領域Ar2が再設定されるため、ユーザはピーキング処理を施したい領域を、視覚的・感覚的な操作によって調整することができるようになる。
【0126】
また、「映像領域選択輪郭補正モード」が選択されている場合には、輪郭補正有効領域Ar2としてユーザに指定された領域に対してのみ、輪郭補正処理が施されるようになる。これにより、ユーザはフォーカス調整を行いたい対象を、領域を指定することで容易に特定することができるようになる。
【0127】
また、「拡大表示モード1」又は「拡大表示モード2」が選択されることにより、輪郭補正を有効とする領域中の映像が拡大して表示されるようになるため、ユーザは、映像補正有効領域Ar2内の映像の、より詳細な部分を確認しながら、容易にフォーカス調整を行うことができる。
【0128】
また、いずれの拡大表示モードにおいても、輪郭補正処理が施されたフォーカス調整用の映像とともに、ピーキング処理が施されていない通常の映像も同時に表示されるため、ユーザは、構図を確認しながらフォーカス調整を行うことができる。
【0129】
すなわち、フォーカス調整を行いたい領域を大きく表示したい場合と、構図確認用の領域の方を大きく表示したい場合とで、ユーザはモードを選択的に切り替えて使用することができる。
【0130】
「色選択輪郭補正モード」と「映像領域選択輪郭補正モード」とどちらの輪郭補正モードも選択されていない「標準輪郭補正モード」との3つのモードが用意されている。よって、ユーザは、ピーキング処理を施す範囲を特に設定する必要がない場合には「標準輪郭補正モード」を選択する等、用途に応じてこれらのモードを使い分けることができるようになる。
【0131】
なお、上述した実施の形態では、3つの輪郭補正モードのうち、いずれか1つの輪郭補正モードのみを使用可能とする構成を例に挙げたが、「色選択輪郭補正モード」と「映像領域選択輪郭補正モード」との両方の機能を同時に使用可能な構成に適用してもよい。
【0132】
図11(a)及び図11(b)には、画面上に、フォーカスを合わせの対象物である被写体Ob1と、被写体Ob1の色成分と近似した色成分を持つ被写体Ob4とが、同時に存在している状態が示されている。図11(a)は、このような画面において、「色選択輪郭補正モード」が選択された場合の表示例を示したものである。
【0133】
「色選択輪郭補正モード」によって、輪郭補正有効領域Ar2が決定された場合には、図11(a)に示されたように、フォーカス合わせを行いたい対象としての被写体Ob1だけでなく、被写体Ob4も、輪郭補正有効領域Ar2の範囲に含まれてしまう。つまり、ピーキング処理を施す必要のない被写体Ob4に対しても、輪郭補正が行われてしまう。
【0134】
このような場合、「映像領域選択輪郭補正モード」を選択し、輪郭補正有効領域Ar2の大きさや位置を、被写体Ob1が存在する領域のみに縮小することで、輪郭補正を行う対象を被写体Ob1のみに限定することが可能となる。
【0135】
この場合の表示例を図11(b)に示してある。図11(b)には、輪郭補正有効領域Ar2が、被写体Ob1の顔面付近のみに縮小されている状態が示されている。このような操作を行うことにより、輪郭補正が行われる対象が、輪郭補正有効領域Ar2内の、特定の色成分を有する映像領域のみに限定されるようになる。
【0136】
つまり、「色選択輪郭補正モード」と「映像領域選択輪郭補正モード」とを組み合わせて使用することにより、フォーカス合わせの対象物以外の被写体が、フォーカス合わせの対象の被写体が有する色成分と近似した色成分を有していた場合にも、それらのフォーカス合わせ対象外の被写体を、輪郭補正の対象領域から外すことができるようになる。
【0137】
また、上述した実施の形態では、1つの撮像装置が3つの輪郭補正モードと、3つの拡大表示のモードを有する例を挙げたが、拡大表示は行わない構成に適用してもよい。このような構成とした場合のブロック図を、図12に示してある。図12において、図1と対応する箇所には同一の符号を付してあり、詳細な説明は省略する。
【0138】
図12に示した撮像装置100′は、ビューファインダ部60′のスケーリング処理部16′と、マトリクス処理部17′を、それぞれ1つのみで構成してある。このため、2つの処理系統によって処理された映像を合成するための、オーバレイ処理部も不要となっている。代わりに、ピーキング信号処理部12から出力されるピーキング信号PKに対してマスク処理を行う、ピーキング有効領域マスク処理部40を設けている。
【0139】
ピーキング有効領域マスク処理部40は、制御部32からエリアゲート信号が供給された場合に、そのエリアゲート信号を用いて、ピーキング処理部12から入力されたピーキング信号PKをマスク処理する。エリアゲート信号は、ユーザにより指定された輪郭補正有効領域Ar2の位置情報に対応して、制御部32で生成されるものである。このエリアゲート信号を用いて、ピーキング信号PKに対するマスク処理が行われることで、ユーザにより指定された領域内における、高周波成分を有する映像に対してのみ、輪郭補正処理が施されることになる。
【0140】
図13に、ピーキング有効領域マスク処理部40による処理の例を、フローチャートで示してある。まず、「映像領域選択輪郭補正モード」が選択されているか否かの判断が行われ(ステップS41)、「映像領域選択輪郭補正モード」が選択されていない、つまり、「色選択輪郭補正モード」もしくは「標準輪郭補正モード」が選択されている場合には、ピーキング処理部12から入力されたピーキング信号を、そのまま出力する処理が行われる(ステップS42)。
【0141】
つまり、「色選択輪郭補正モード」や「標準輪郭補正モード」が選択された場合には、制御部32よりエリアゲート信号が供給されないため、ピーキング有効領域マスク処理部40においては、マスク処理が行われない。
【0142】
ステップS41において、「映像領域選択輪郭補正モード」が選択されていると判断された場合には、制御部32から供給されたエリアゲート信号を用いて、ピーキング処理部12から出力されたピーキング信号PKをマスクする処理が行われる(ステップS43)。そして、マスク処理が施されたピーキング信号PK′′が、乗算器13に出力される(ステップS44)。
【0143】
乗算器13では、マスク処理されたピーキング信号PK′′に、制御部32から供給されたピーキングレベル設定信号が乗算され、ピーキング信号PK′が生成される。ピーキングレベルが調整されたピーキング信号PK′は加算器14に出力され、加算器14によって、輝度信号DYと加算される。
【0144】
なお、図12に示した撮像装置100′において、「映像領域選択輪郭補正モード」に加えて、「色選択輪郭補正モード」での処理も行われた場合には、ピーキング有効領域マスク処理部40に入力されるピーキング信号PKは、特定の色空間がゲートされた信号であることになる。このようなピーキング信号PKに対して、さらにピーキング有効領域マスク処理部40、エリアゲート信号によるマスク処理が施されることで、ピーキング処理が施される対象は、ユーザにより指定された映像領域内の、ユーザにより指定された色成分を有する被写体のみに限定されるようになる。
【0145】
このような構成とすることにより、図1に示した例に比べて回路構成を低減することができる上に、ユーザにより選択された輪郭補正モードに応じて、輪郭補正処理を施す範囲が決定されるようになる。
【0146】
なお、上述した実施の形態では、ビューファインダ部60(60′)を備えた撮像装置100(100′)に適用した例を挙げたが、ビューファインダ部60(60′)は備えない構成に適用するようにしてもよい。つまり、出力端子等を通して外部の表示装置に映像信号を出力する装置に適用してもよい。また、カメラ部50を有さず、外部の撮像装置から入力される映像信号を処理する映像信号処理装置に適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1】本発明の一実施の形態による撮像装置の内部構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施の形態によるピーキング処理部の内部構成例を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施の形態による色抽出の概念を説明する説明図であり、(a)は色成分抽出領域の設定例を示し、(b)は閾値生成のパラメータである各サンプル値と各設定幅との関係を示し、(c)は色成分抽出領域で抽出された色成分に基づいて決定された、輪郭補正有効領域の例を示す。
【図4】本発明の一実施の形態による輪郭補正有効領域の範囲の例を示す説明図であり、(a)は輪郭補正有効領域の範囲を狭めた場合の表示例を示し、(b)は輪郭補正有効領域の範囲広げた場合の表示例を示す。
【図5】本発明の一実施の形態による色選択輪郭補正モード選択時の処理の例を示すフローチャートである。
【図6】本発明の一実施の形態による色選択輪郭補正モード選択時の処理の例を示すフローチャートである。
【図7】本発明の一実施の形態による標準輪郭補正モード選択時の輪郭補正有効領域の表示例を示す説明図である。
【図8】本発明の一実施の形態による映像領域選択輪郭補正モード選択時の処理の例を示すフローチャートである。
【図9】本発明の一実施の形態による輪郭補正有効領域の表示例を示す説明図である。
【図10】本発明の一実施の形態による各拡大表示モード選択時における表示例を示す説明図であり、(a)は「拡大表示モードオフ」選択時の表示例を示し、(b)は「拡大表示モード1」選択時の表示例を示し、(c)は「拡大表示モード2」選択時の表示例を示す。
【図11】本発明の一実施の形態による色選択輪郭補正モードと映像領域選択輪郭補正モードとを併用した場合の表示例を示す説明図であり、(a)は色選択輪郭補正モードのみを使用した場合の表示例を示し、(b)は色選択輪郭補正モード及び映像領域選択輪郭補正モードを用いた場合の表示例を示す。
【図12】本発明の他の実施例による撮像装置の内部構成例を示すブロック図である。
【図13】本発明の他の実施例によるピーキング有効領域マスク処理部の処理の例を示すフローチャートである。
【図14】従来の撮像装置の構成例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0148】
1…撮像レンズ、2…レンズ鏡筒、3…プリズム、4…撮像素子、5…ビデオアンプ、6…A/D変換部、7…デジタル信号処理部、8…D/A変換部、9…ビデオアンプ、10…帯域制限フィルタ、11…A/D変換部、12…ピーキング処理部、12−1…ピーキング信号生成部、12−2…飽和度変換部、12−3…色相変換部、12−4…閾値生成部、12−5…エリア判定部、12−6…ピーキングマスク処理部、13…乗算器、14,15…加算器、16a…第1のスケーリング処理部、16b…第2のスケーリング処理部、17a…第1のマトリクス処理部、17b…第2のマトリクス処理部、18…オーバレイ処理部、19…マーカ加算部、20…OSD処理部、21…表示素子駆動部、22…表示素子、30…画像処理部、31…操作部、32…制御部、40…ピーキング有効領域マスク処理部、PK…ピーキング信号、Sw1,Sw2,Sw3…スイッチ、Ymin,Ymax…輝度閾値、Smin,Smax…飽和度閾値、Hmin,Hmax…色相閾値
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像信号処理装置、撮像装置及び映像信号処理方法に関し、特にフォーカス調整用に映像中のエッジ部分等を強調表示する、ピーキングを行う映像信号処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、放送局用のビデオカメラやカメラ一体型ビデオテープレコーダでは、フォーカス調整を容易にするために、フォーカス調整時に、高域成分が強調され画像の輪郭が明瞭化された撮像画をビューファインダに表示するようにしている。このときビューファインダに表示する撮影画は、ビデオカメラ等の撮像装置で得られた映像信号にピーキング信号を加算したものとなる。
【0003】
ピーキング信号とは、映像信号を構成する輝度信号から高域成分を抽出し、増幅することで生成される信号である。このようにして生成されたピーキング信号を映像信号に加算し、ビューファインダに出力することで、ビューファインダに表示される撮影画は、映像中の輪郭部分等が強調して表示されるようになる。撮影者(以下、ユーザとも称する)は、このような表示が行われた画面を見ることで、フォーカス調整を容易に行うことができる。
【0004】
図14は、このような高域成分が強調された撮像画を表示する、従来の撮像装置200の構成例を示すブロック図である。図14に示した撮像装置200は、カメラ部150とビューファインダ部160とから構成される。まず、カメラ部150の構成を説明すると、カメラ部150は、光学系として、撮像レンズ101と、レンズ鏡筒102と、プリズム103とを備え、撮像素子104B,104G,104Rで撮像を行う。撮像素子104B,104G,104Rでの撮像で得た映像信号は、ビデオアンプ105と、アナログ・デジタル変換部106(以下、A/D変換部106と称する)と、デジタル信号処理部107と、デジタル・アナログ変換部(以下、D/A変換部108と称する)とで処理される構成としてある。
【0005】
撮像レンズ102は、被写体の光学像を撮像素子104B,104G,104Rの各感光面(図示略)上に結像するものであり、フォーカス調整機能を有する。レンズ鏡筒102は、撮像レンズ101を格納する筒である。プリズム103は、撮像レンズ102を通して入射される光線をR(赤)G(緑)B(青)の3原色の光線に分解する。
【0006】
撮像素子104B,104G,104Rは、プリズム103によって分解された各色の光線を光電変換して映像信号AB,AG,ARを生成し、得られた映像信号AB,AG,ARをビデオアンプ105に出力する。ビデオアンプ105は、撮像素子104B,104G,104Rから出力された映像信号AB,AG,ARを増幅して、増幅して得られた映像信号AB′,AG′,AR′を、A/D変換部106に出力する。A/D変換部106は、ビデオアンプ105から出力された映像信号AB′,AG′,AR′をデジタルの映像信号DB,DG,DRに変換して出力する。
【0007】
デジタル信号処理部107は、映像信号DR,DG,DBのそれぞれに対して、マトリクス処理を含むデジタル信号処理を施して輝度信号DY、色差信号DU,DVを生成し、生成した各信号をD/A変換部108へ出力する。D/A変換部108は、デジタル信号処理部107から出力されたデジタルの輝度信号DYをアナログの輝度信号AYに変換し、同じくデジタル信号処理部107から出力されたデジタルの色差信号DU,DVを、アナログの色差信号AU,AYに変換する。そして、生成した輝度信号AY及び色差信号DU,DVを、ビューファインダ部160に出力する。
【0008】
ビューファインダ部160は、ビデオアンプ109、帯域制限フィルタ110、A/D変換部111、ピーキング信号生成部112、乗算器113、加算器114、スケーリング処理部115、マトリクス処理部116、表示素子駆動部117、表示素子118とを含む。
【0009】
ビデオアンプ109は、カメラ部150のD/A変換部108から出力された輝度信号AY、色差信号AU、AVを増幅し、増幅した輝度信号AY′、色差信号AU′,AV′を帯域制御フィルタ110へ供給する。帯域制御フィルタ110は、ローパスフィルタもしくはバンドパスフィルタで構成してあり、入力された輝度信号AY′、色差信号AU′,AV′の周波数帯域を所定の周波数帯域に制限して、帯域制限された輝度信号AY′′、色差信号AU′′,AV′′をA/D変換部111に出力する。
【0010】
A/D変換部111は、帯域制限フィルタ110から出力された輝度信号AY′′、色差信号AU′′,AV′′を、それぞれデジタルの輝度信号DY、デジタルの色差信号DU,DVに変換し、輝度信号DYをピーキング信号生成部112と加算器114に、色差信号DUとDVはスケーリング処理部115に出力する。
【0011】
ピーキング信号生成部112は、A/D変換部111から出力された輝度信号DYから高周波成分を抽出してピーキング信号を生成する。そして、生成したピーキング信号を乗算器113に出力する。乗算器113は、図示せぬ制御部等から供給されるピーキングレベル設定信号と、ピーキング信号生成部112から出力されたピーキング信号とを乗算し、乗算後のピーキング信号PEAKを加算器114に出力する。
【0012】
ここでいうピーキングレベル設定信号とは、ピーキングの度合い(強弱)を設定するための信号であり、ピーキングの度合いは、図示せぬ操作部等を通してユーザ(撮影者)が設定可能としてある。従って、乗算器113より出力される、ピーキング設定信号とピーキング信号とが乗算されて生成されたピーキング信号PEAKは、ピーキングのレベルが所定の値に調整されたピーキング信号となる。
【0013】
加算器114は、A/D変換部111から出力された輝度信号DYに、乗算器113から出力されたピーキング信号PEAKを加算して、輝度信号DYpkとしてスケーリング処理部115に出力する。スケーリング部115は、加算器114から出力された輝度信号DYpkと、A/D変換部111から出力された色差信号DU,DVとを、表示素子118の画素数に応じて画素数の変換を行う画素変換をしたり、i/p(interlace/progressive)変換したりする処理を行う。処理後の輝度信号DYpk′と色差信号DU′,DV′は、マトリクス処理部116に出力される。
【0014】
マトリクス処理部116は、輝度信号DYpk′と色差信号DU′,DV′とを、RGB形式の映像信号に変換して、映像信号DRpk,DGpk,DBpkを生成し、生成した各映像信号を表示素子駆動部117に出力する。表示素子駆動部117は、表示素子118を駆動する駆動信号を生成して表示素子118に供給する。表示素子118は、LCD(Liquid Crystal Display)等で構成されるものであり、表示素子駆動部117から供給される駆動信号に基づいて、画像を表示する。
【0015】
表示素子118に表示される画像を構成する、映像信号DRpk,DGpk,DBpkは、ピーキング信号生成部112で生成されたピーキング信号が付加された映像信号である。このため、表示素子118には、輪郭部分等が強調された画像が表示されるようになる。
【0016】
例えば特許文献1には、カラー液晶表示素子を用いたビューファインダにおいて、撮像画の輪郭部分を十分に強調して表示する技術について記載されている。
【特許文献1】特開平09−139952号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
ところで、上述したような従来のビューファインダ及び撮像装置においては、ピーキングを施す範囲を指定することができないため、ビューファインダに表示される撮影画全体において、画像の輪郭部分が強調されてしまうことになる。このため、特に被写界深度を深くとって撮影している場合には、フォーカスの調整を行いたい被写体以外の部分においても、その輪郭が強調されてしまうことになる。つまり、どの部分に一番フォーカスが合っているかを、ユーザが判断し辛くなってしまうという問題があった。
【0018】
また、通常スケーリング処理部では、表示素子の解像度に合わせて画素を縮小処理することが多い。このような処理が行われた場合には、表示素子上に表示される映像の解像度が、表示素子の解像度に制限されてしまう。このため、ユーザがフォーカス調整をし辛くなってしまうという問題もあった。
【0019】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、フォーカス調整を容易に行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、入力映像信号に含まれる高域成分を抽出して増幅し、ピーキング信号を生成するピーキング信号生成部と、ピーキング信号による輪郭補正を行う対象領域が指定される操作部と、指定された領域に対応する位置情報を記載したエリアゲート信号を生成する制御部とを備えた。また、制御部から供給されるエリアゲート信号に基づいて、操作部を通して指定された対象領域に、ピーキング信号が加算された映像信号を出力する処理を行うマスク処理部と、操作部を通して、輪郭補正された映像信号を拡大表示するよう指示された場合に、対象領域に出力される映像信号を、対象領域以外の領域に出力される映像信号に適用するスケーリング比率の値よりも大きいスケーリング比率の値を用いて画素変換するスケーリング処理部とを備えるようにしたものである。
【0021】
このようにしたことで、ピーキング信号による輪郭補正が行われるエリアが、操作部を通して輪郭補正対象領域として設定された領域と対応する領域に、限定されるようになる。
【0022】
また、スケーリング処理部に設定されるスケーリング比率の値大きさに応じて、ピーキング信号が加算された映像信号による映像の表示拡大率が変更されるようになる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によると、ピーキング信号による輪郭補正が行われるエリアが、操作部を通して輪郭補正対象領域として設定された領域と対応する領域に限定されるようになるため、ユーザは、フォーカス調整を行いたい領域のみに輪郭補正処理を施すことができるようになる。従って、容易にフォーカス調整を行うことができるようになる。
【0024】
さらに、スケーリング処理部に設定されるスケーリング比率の値大きさに応じて、ピーキング信号が加算された映像信号による映像の表示拡大率が変更されるため、フォーカス調整を行う対象の輪郭補正済みの映像を、拡大して表示することができる。
【0025】
これにより、フォーカス調整の対象の被写体の解像度が上がるため、ユーザは、細かい部分も確認しながら容易にフォーカス調整を行うことができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の一実施の形態を、図1〜図11を参照して説明する。本実施の形態における撮像装置は、ピーキング処理(以下、輪郭補正処理とも称する)を施す範囲を、ユーザに自由に指定させることができるようにするものである。本例では、ピーキング処理を施す範囲を、映像信号に含まれる色成分や、ビューファインダの画面上の表示領域を指定することにより、特定できるようにしている。
【0027】
ピーキング処理を施す範囲を、色成分を指定することにより特定できる「色選択輪郭補正モード」においては、ユーザにより画面上の任意の領域を指定させ、その領域で検出された色成分と近似する色成分を有する映像信号にのみ、ピーキング信号を加算する。また、画面上の任意の領域を指定することにより特定できる「領域選択輪郭補正モード」においては、ユーザにより指定された領域に表示される映像信号にはピーキング信号を加算し、指定された領域以外の領域においては、ピーキング処理を施さないようにする。
【0028】
本例においては、これらの2つのモードに加えて、ピーキング処理を施す範囲を指定しない「標準輪郭補正モード」(従来の機能と同様)も設け、これらの3つのモードをユーザが自由に切り替え可能に構成している。
【0029】
さらに、輪郭補正が施されたフォーカス調整用の映像と、輪郭補正の施されていない構図確認用の映像とを同一画面上に同時に表示させ、輪郭補正が行われた映像を拡大して表示することもできる機能も備えさせてある。表示の形態としては、「拡大表示モード1」と「拡大表示モード2」及び、拡大表示を使用しないモードとしての「標準輪郭補正モード」の3つのモードを設けており、これらのモードを、ユーザによって切り替え可能な構成としている。
【0030】
なお、本例では、1つの撮像装置が、輪郭補正のモードとしては3つのモードを、拡大表示のモードとしては3つのモードを有する例を挙げて説明するが、この構成に限定されるものではない。例えば、輪郭補正のモードとしては「領域選択輪郭補正モード」と「標準輪郭補正モード」のみを有し、2つの拡大表示モードも備える構成等に適用してもよい。
【0031】
図1は、本例における撮像装置100の構成例を示すブロック図である。図1に示した撮像装置100は、カメラ部50とビューファインダ部60とで構成される。まず、カメラ部50の構成を説明すると、カメラ部50は、光学系として、撮像レンズ1と、レンズ鏡筒2と、プリズム3とを備え、撮像素子4B,4G,4Rで撮像を行う。撮像素子4B,4G,4Rでの撮像で得た映像信号は、ビデオアンプ5と、A/D変換部6と、デジタル信号処理部7と、D/A変換部8とで処理される構成としてある。
【0032】
撮像レンズ1は、被写体の光学像を撮像素子4B,4G,4Rの各感光面(図示略)上に結像するものであり、フォーカス調整機能を有する。レンズ鏡筒2は、撮像レンズ1を格納する筒であり、その側面には撮影倍率メモリや距離目盛などが表示されている。プリズム3は、撮像レンズ1を通して入射される光線をR(赤)G(緑)B(青)の3原色の光線に分解するものであり、ダイクロイックプリズム等で構成される。なお、本例では3板式の撮像装置を例に挙げているが、単板式や2板式、4板式等、他の形式の撮像装置に適用してもよい。
【0033】
撮像素子4B,4G,4Rは、プリズム3によって分解された各色の光線を光電変換して映像信号AB,AG,ARを生成し、得られた映像信号AB,AG,ARをビデオアンプ5に出力する。撮像素子4B,4G,4Rは、例えばCCD(Charge Coupled Devices)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等で構成される。ビデオアンプ5は、撮像素子4B,4G,4Rから出力された映像信号AB,AG,ARを増幅して、増幅して得られた映像信号AB′,AG′,AR′を、A/D変換部6に出力する。A/D変換部6は、ビデオアンプ5から出力された映像信号AB′,AG′,AR′をデジタルの映像信号DB,DG,DRに変換して出力する。
【0034】
デジタル信号処理部7は、映像信号DR,DG,DBのそれぞれに対して、マトリクス処理を含むデジタル信号処理を施して輝度信号DY、色差信号DU,DVを生成し、生成した各信号をD/A変換部8へ出力する。D/A変換部8は、デジタル信号処理部7から出力されたデジタルの輝度信号DYをアナログの輝度信号AYに変換し、同じくデジタル信号処理部7から出力されたデジタルの色差信号DU,DVを、アナログの色差信号AU,AVに変換する。そして、生成した輝度信号AY及び色差信号AU,AVを、ビューファインダ部60に出力する。
【0035】
ビューファインダ部60は、ビデオアンプ9、帯域制限フィルタ10、A/D変換部11、ピーキング処理部12、乗算器13、スイッチSw1、加算器14、スイッチSw2、加算器15、画像処理部30、マーカ加算部19、OSD(On Screen Display)処理部20、表示素子駆動部21、表示素子22、操作部31、制御部32とを含む。
【0036】
また画像処理部30には、第1のスケーリング処理部16a及び第2のスケーリング処理部16b、第1のマトリクス処理部17a及び第2のマトリクス処理部17b、オーバレイ処理部18とが含まれる。画像処理部30内の各部の詳細については後述する。
【0037】
なお、カメラ部50とビューファインダ部60間でやりとりする信号は、アナログ信号に限定されるものではなく、デジタル信号で行うようにしてもよい。この場合は、カメラ部50のD/A変換部8からビューファインダ部60のA/D変換部11までの構成は省略される。
【0038】
ビデオアンプ9は、カメラ部50のD/A変換部8から出力された輝度信号AY、色差信号AU、AVを増幅し、増幅した輝度信号AY′、色差信号AU′,AV′を帯域制御フィルタ10へ供給する。帯域制限フィルタ10は、ローパスフィルタもしくはバンドパスフィルタで構成してあり、入力された輝度信号AY′、色差信号AU′,AV′の周波数帯域を所定の周波数帯域に制限して、帯域制限された輝度信号AY′′、色差信号AU′′,AV′′をA/D変換部11に出力する。
【0039】
A/D変換部11は、帯域制限フィルタ10から出力された輝度信号AY′′、色差信号AU′′,AV′′を、それぞれデジタルの輝度信号DY、デジタルの色差信号DU,DVに変換し、輝度信号DYはピーキング処理部12と加算器14と15に、色差信号DUとDVは、ピーキング処理部12と第1のスケーリング処理部16a及び第2のスケーリング処理部16bに出力する。
【0040】
ピーキング処理部12は、A/D変換部11から出力された輝度信号DYから高周波成分を抽出してピーキング信号PKを生成する。被写体を撮影したときにフォーカスが合っていない状態では、画像ボケを生じているため、輝度信号DYには高域成分が含まれない。このため、ピーキング処理部12ではピーキング信号PKが生成されない。一方、フォーカス調整が行われてフォーカスが合う状態に近づくと、画像の輪郭が明瞭となるため、輪郭部分における輝度信号DYには、高域成分が発生するようになる。従って、ピーキング処理部12では、フォーカスが合う状態に近づいた段階で、輝度信号DYの高域成分に基づいてピーキング信号PKが生成される。ピーキング処理部12の詳細については、次の図2を参照して後述する。
【0041】
ピーキング処理部12へは、サンプリングタイミング制御信号や、「輝度設定幅」、「飽和度設定幅」、「色相設定幅」等の各種設定幅を指定するための設定信号(以下、各種設定幅設定信号とも称する)が、制御部32から供給される。サンプリングタイミング制御信号とは、ユーザにより指定された領域における、色成分のサンプリングのオン・オフを制御する信号である。
【0042】
サンプリングのオン(開始)を指示する制御信号は、ユーザによって操作部31等を介してサンプリングの開始を指示する入力を受け付けた段階で、制御部32により生成され、ピーキング処理部12に供給される。本例では、後述する輪郭補正モード切り替え用のスイッチを長押しする操作を、サンプリングのオンを指示する制御信号の生成トリガとして割り当てているが、他の操作をトリガとするようにしてもよい。各種設定幅設定信号の詳細については後述する。
【0043】
乗算器13は、制御部32から供給されるピーキングレベル設定信号と、ピーキング処理部12から出力されたピーキング信号PKとを乗算し、乗算後のピーキング信号PK′を、スイッチSw1及びスイッチSw2に出力する。
【0044】
ピーキングレベル設定信号とは、ピーキングの度合い(強弱)を設定するための信号であり、ピーキングの度合いは、操作部31等を通してユーザが設定可能としてある。従って、乗算器13より出力されるピーキング信号PK′は、ピーキングのレベルが所定の値に調整されたピーキング信号とになる。
【0045】
スイッチSw1とスイッチSw2とは、それぞれ制御部32から供給される制御信号に基づいて開閉するものである。具体的には、ユーザによって「映像領域選択輪郭補正モード」を選択する操作があった場合には、スイッチSw2がオンになり、スイッチSw1がオフされるような制御が行われる。「映像領域選択輪郭補正モード」以外のモードが選択された場合には、スイッチSw1がオンになり、スイッチSw2がオフになるよう制御される。
【0046】
スイッチSw1は、オンされることで、ピーキングレベルが調整されたピーキング信号PK′を加算器14に出力し、スイッチSw2は、オンされることで、ピーキングレベルが調整されたピーキング信号PK′を加算器15に出力する。
【0047】
加算器14は、A/D変換部11から出力された輝度信号DYに、スイッチSw1を通して伝送されたピーキング信号PK′を加算し、輝度信号DYpk1として第1のスケーリング処理部16aに出力する。加算器15は、A/D変換部11から出力された輝度信号DYに、スイッチSw2を通して伝送されたピーキング信号PK′を加算し、輝度信号DYpk2として第2のスケーリング処理部16bに出力する。
【0048】
第1のスケーリング部16aは、加算器14から出力された輝度信号DYpk1と、A/D変換部11から出力された色差信号DU,DVとを、表示素子22の解像度に応じて画素変換したり、i/p変換したりする処理を行う。処理後の輝度信号DYpk1′と色差信号DU′,DV′は、第1のマトリクス処理部17aに出力される。第2のスケーリング部16bも第1のスケーリング処理部16aと同様の処理を行うものであり、加算器15から出力された輝度信号DYpk2と、A/D変換部11から出力された色差信号DU,DVとを、表示素子22の解像度に応じて画素変換(拡大又は縮小)したり、i/p変換したりする処理を行う。そして、処理後の輝度信号DYpk2′と色差信号DU′,DV′とを、第2のマトリクス処理部17bに出力する。
【0049】
この場合の、画素変換におけるスケーリングの比率は、制御部32より供給されるスケーリング比率設定信号に基づいて決定される。スケーリング比率設定信号は、第1のスケーリング処理部16aと第2のスケーリング処理部16bのそれぞれに対して出力されるものであり、表示のモード(「拡大表示モード1」「拡大表示モード2」「拡大表示モードオフ」)がいずれのモードに選択されているかによって、スケーリングの比率が定まるようにしてある。表示のモードとスケーリングの比率との関係については、後述する。
【0050】
第1のマトリクス処理部17aは、第1のスケーリング部16aから出力された輝度信号DYpk1′と色差信号DU′,DV′とを、RGB形式の映像信号に変換して映像信号DRpk1,DGpk1,DBpk1を生成し、生成した各映像信号をオーバレイ処理部18に出力する。第2のマトリクス処理部17bは、第2のスケーリング部16bから出力された輝度信号DYpk2′と色差信号DU′,DV′とを、RGB形式の映像信号に変換して映像信号DRpk2,DGpk2,DBpk2を生成し、生成した各映像信号をオーバレイ処理部18に出力する。
【0051】
オーバレイ処理部18は、第1のマトリクス処理部17aから出力された映像信号DRpk1,DGpk1,DBpk1と、第2のマトリクス処理部17bから出力された映像信号DRpk2,DGpk2,DBpk2とをそれぞれ合成して、映像信号DRpk,DGpk,DBpkを生成する。
【0052】
映像信号DRpk1,DGpk1,DBpk1により構成される映像をCH1、映像信号DRpk2,DGpk2,DBpk2により構成される映像をCH2と称した場合、オーバレイ処理部18による映像CH1と映像CH2との合成処理は、制御部32から供給される2画面合成制御信号に基づいて行われる。
【0053】
またオーバレイ処理部18は、制御部32よりエリアゲート信号が入力された場合には、第2のマトリクス処理部17bから入力される映像信号CH2に対して、マスク処理を行う。エリアゲート信号とは、画面上の表示領域において輪郭補正処理を施す範囲(位置や大きさ)を指定する信号であり、「映像領域選択輪郭補正モード」が選択されている場合にのみ生成される。
【0054】
エリアゲート信号に基づいて、オーバレイ処理部18でマスク処理が行われることにより、画面上の指定された位置に、輪郭補正が施された映像信号CH2による映像が出力されるようになる。なお、2画面合成制御信号やエリアゲート信号の値は、選択された表示のモードの種類によって変わるようにしてある。
【0055】
マーカ加算部19は、色成分を抽出する対象の領域を指定するための「色成分抽出領域指定マーカ」を構成する信号や、輪郭補正を有効にする領域を指定するための「輪郭補正有効領域指定マーカ」を構成する信号等を、オーバレイ処理部18から出力された映像信号DRpk,DGpk,DBpkに重畳する。そして、それらが重畳された映像信号DRpk′,DGpk′,DBpk′を、OSD処理部20に出力する。
【0056】
OSD処理部20は、表示素子22に表示させる映像に、各種設定用のメニュー等を重畳して表示するためのOSD処理を行う。表示素子駆動部21は、表示素子22を駆動する駆動信号を生成して表示素子22に供給する。表示素子22は、LCD(Liquid Crystal Display)等で構成されるものであり、表示素子駆動部21から供給される駆動信号に基づいて、画像を表示する。
【0057】
操作部31は、スイッチやボタン、つまみ等で構成されるインターフェースを備えるものであり、それらのインターフェースを介してユーザからの入力された操作内容に応じて、操作信号を生成し、生成した操作信号を制御部32に供給する。具体的には、輪郭補正のモードを切り替えるための「輪郭補正モード切替スイッチ」や、操作内容を取り消すための「キャンセルスイッチ」、設定メニューを選択したり値を設定するためのスイッチや、つまみ等を備えるものとする。
【0058】
制御部32は、MPU(Micro Processing Unit)等により構成されるものであり、撮像装置100を構成する各部の制御を行う。操作部31より操作信号が入力された場合には、その内容に応じて、輪郭補正モードの切り替えを指示する信号や、サンプリングタイミング制御信号や各種設定幅設定信号、ピーキングレベル設定信号、スケーリング比率設定信号、エリアゲート信号、2画面合成制御信号、OSD制御信号等を生成し、上述した各部に供給する。
【0059】
次に、図2を参照して、ピーキング処理部12の構成の詳細について説明する。図2に示したピーキング処理部12は、ピーキング信号生成部12−1、飽和度変換部12−2、色相変換部12−3、閾値生成部12−4、エリア判定部12−5、ピーキングマスク処理部12−6とを有する。
【0060】
ピーキング信号生成部12−1は、輝度信号DYから高周波成分を抽出してピーキング信号PEAKを生成し、生成したピーキング信号PEAKをピーキングマスク処理部12−6に出力する。飽和度変換部12−1は、A/D変換部11(図1参照)から入力された色差信号DU,DVを演算処理することにより、飽和度変換値i_SATを生成し、得られた飽和度変換値i_SATを、閾値生成部12−4とエリア判定部12−5に出力する。色相変換部12−3は、同じくA/D変換部11から入力された色差信号DU,DVを演算処理することにより、色相変換値i_HUEを生成し、得られた色相変換値i_HUEを、閾値生成部12−4とエリア判定部12−5に出力する。
【0061】
閾値生成部12−4は、サンプリングの開始を指示するサンプリングタイミング制御信号を、制御部32から受け付けると、水平同期信号HDおよび垂直同期信号VDに同期して、所定のエリア内の輝度値i_Y、飽和度変換値i_SAT、色相変換値i_HUEをサンプリングする。ここでいう所定のエリアとは、ユーザにより画面上で「色成分抽出領域」として指定された領域である。「色成分抽出領域」は、画面上に表示された「色成分抽出領域指定マーカ」の大きさや位置に基づいて決定される。
【0062】
なお、「標準輪郭補正モード」が選択されている場合には、色成分のサンプリングを指示する操作は行われないため、上述したような閾値生成部12−4での処理も、行われなくなる。
【0063】
図3(a)に、「色成分抽出領域指定マーカ」の表示例を示してある。図3(a)においては、画面の中央部分に、色成分抽出領域指定マーカMk1が表示されている。ユーザよりこの位置を確定する操作を受け付けた段階で、この領域が色成分抽出領域Ar1となる。
【0064】
図2に戻って説明を続けると、閾値生成部12−4は、所定のエリア内における輝度値i_Yのサンプル値、飽和度変換値i_SATのサンプル値、色相変換値i_HUEのサンプル値を用いて、まずそれぞれの色成分における平均値を求める。そして、求めた各平均値を、輝度サンプル値、飽和度サンプル値、色相サンプル値とする。さらに、得られた輝度サンプル値、飽和度サンプル値、色相サンプル値を基に、輝度閾値Yminと輝度閾値Ymax、飽和度閾値Sminと飽和度閾値Smax、色相閾値Hminと色相閾値Hmaxとを生成する。各閾値における「min」とは、閾値の下限を示すものであり、「max」とは、閾値の上限を示すものである。
【0065】
輝度閾値Ymin及び輝度閾値Ymax、飽和度閾値Smin及び飽和度閾値Smax、色相閾値Hmin及び色相閾値Hmaxは、例えば下記の式を用いることによって算出する。
輝度閾値Ymin=輝度サンプル値−輝度設定幅/2
輝度閾値Ymax=輝度サンプル値+輝度設定幅/2
飽和度閾値Smin=飽和度サンプル値−飽和度設定幅/2
飽和度閾値Smax=飽和度サンプル値+飽和度設定幅/2
色相閾値Hmin=色相サンプル値−色相設定幅/2
色相閾値Hmax=色相サンプル値+色相設定幅/2
【0066】
つまり、各サンプリング値に、各種設定幅の1/2の値が加算された値が閾値maxとして設定され、各サンプリング値から、各種設定幅の1/2の値が減算された値が閾値minとして設定される。すなわち、閾値が、サンプリング値をセンター値として、上下の方向に幅を持ったものに設定されるようになる。「輝度設定幅」、「飽和度設定幅」、「色相設定幅」の各値は、ユーザにより操作部31等を介して設定される。なお、本例では算出して閾値を構成するパラメータとして、各サンプル値の平均値を求めるようにしてあるが、最頻値等を用いるようにしてもよい。また、各設定幅の1/2の値を各サンプル値に加減するようにしてあるが、1/2以外の値に設定するようにしてもよい。
【0067】
エリア判定部12−5は、A/D変換部11(図1参照)から出力された輝度値i_Yを、閾値生成部12−4で生成された輝度閾値Ymin及び輝度閾値Ymaxに照らし合わせることにより、輝度値i_Yが、輝度閾値Yminと輝度閾値Ymaxにより特定される範囲内に収まっているか否かの判断を行う。
【0068】
同様に、飽和度変換部12−2から出力された飽和度変換値i_SATと、閾値生成部12−4から出力された飽和度閾値Smin及び飽和度閾値Smaxとを比較し、色相変換部12−3から出力された色相変換値i_HUEと、閾値生成部12−4から出力された色相閾値Hmin及び色相閾値Hmaxとを比較する。そしてそれぞれの比較の結果から、各閾値minと各閾値maxとによって求まる色空間と、マッチングする色成分を有する映像信号を抽出し、抽出した映像信号をゲートさせるための、色検出ゲート信号を生成する。生成された色検出ゲート信号は、ピーキングマスク処理部12−6に出力される。
【0069】
従って、エリア判定部12−5において、閾値minと閾値maxによって規定される色空間の範囲内に存在する色成分が抽出されなかった場合や、輪郭補正のモードとして「色選択輪郭補正モード」が選択されていない場合には、エリア判定部12−5での色検出ゲート信号生成は行われないことになる。
【0070】
ピーキングマスク処理部12−6は、エリア判定部12−5から色検出ゲート信号が入力された場合には、色検出ゲート信号に基づいて、ピーキング信号生成部12−1から入力されたピーキング信号PEAKにマスク処理を施し、ピーキング信号PKとして乗算器13に出力する。
【0071】
すなわち、ここで生成されるピーキング信号PKは、映像領域内の所定の色成分を含む映像信号に対して輪郭の強調(輪郭補正)を行うための信号となる。ピーキング信号PKによって輪郭が強調される領域は、輪郭補正有効領域として画面上に表示するようにしてある。
【0072】
図3(a)〜図3(c)に、本例における色成分抽出の概念について説明した図を示してある。図3(a)には、ビューファインダ60の画面上に、被写体Ob1(女性)と、被写体Ob2(コーヒーカップ)と、被写体Ob3(コーヒーカップ)とが表示された状態が示されている。そして、被写体Ob1の顔面上に、色成分抽出領域指定マーカMk1が表示されている。ここでは、色成分抽出領域指定マーカMk1が示す領域が、色成分抽出領域Ar1として、ユーザにより確定されているものとする。
【0073】
図3(b)は輝度、色相、飽和度の三つの成分からなる色空間モデルを示している。この図において、円筒の軸の上下方向は輝度の値を示し、軸からの距離の方向は飽和度の値を示し、円周の角度は色相の値を示す。従って図3(b)では、円筒の高さが輝度サンプル値Lの値を示し、軸から外側の方向に向かって伸びた矢印の長さが、飽和度サンプル値Sを示し、円周方向の回転角が色相サンプル値Hを示している。
【0074】
図3(b)においては、輝度サンプル値Lと、飽和度サンプル値Sと、色相サンプル値Hにより定まった位置が、点Pとして示されている。つまり、図3(a)に示された色成分抽出領域Ar1において抽出された色成分が、図3(b)に示した円筒上では、点Pとして表現されることになる。
【0075】
また、図3(b)において、輝度設定幅Wl、飽和度設定幅Ws、色相設定幅Whのそれぞれは、矢印の長さで表現されている。各設定幅の値は、閾値minと閾値maxとを算出するためのパラメータとして用いられるものであり、各値を増減させることで、閾値の幅も可変させることができる。
【0076】
点Pを中心として、これらの設定幅の1/2の値だけ増減方向に幅を持たせた色空間が、すなわち閾値min及び閾値maxで特定される色空間となる。この色空間にマッチングする映像領域に対してのみ、輪郭補正処理が行われるものであり、その映像領域は、画面上では輪郭補正有効領域Ar2として表現される。
【0077】
図3(c)には、輪郭補正有効領域Ar2を、網がけで示してある。輪郭補正有効領域Ar2に指定された領域に対してのみ輪郭補正を行うことで、図3(a)で抽出された色成分とは異なる色成分を有する被写体Ob2や被写体Ob3、背景部に対しては、輪郭補正処理が行われなくなる。
【0078】
閾値min及び閾値maxと、各種設定値とは上述したような関係を有するものであるため、輪郭補正有効領域Ar2の範囲を広げたい場合には、ユーザは各種設定幅の値をより大きな値とすればよいことになる。また、輪郭補正有効領域Ar2の範囲を狭めたい場合には、ユーザは、各種設定幅の値をより小さな値に設定し直せばよい。
【0079】
図3(a)においては、色成分抽出領域Ar1は被写体の顔の位置に設定されているため、肌色の色成分が抽出されていることになる。ユーザが、輝度設定幅Wlと飽和度設定幅Wsと色相設定幅Whの各値をより小さな値に設定することにより、閾値の範囲にマッチングする色空間の範囲は狭くなる。つまり、輪郭補正有効領域Ar2の範囲が、抽出された肌色の成分と同等の色成分を有する映像領域のみに限定される。
【0080】
この場合の表示例を、図4(a)に示してある。図4(a)に示された輪郭補正有効領域Ar2の範囲は、図3(c)に示した輪郭補正有効領域Ar2の範囲よりも狭くなっている。図4(b)には、輪郭補正有効領域Ar2が図3(c)に示した範囲であることを確認した後に、輝度設定幅Wlと飽和度設定幅Wsと色相設定幅Whの各値をより大きな値に設定し直した場合の表示例を示してある。図4(b)に示された輪郭補正有効領域Ar2の範囲は、図3(c)に示した輪郭補正有効領域Ar2の範囲よりも広くなっていることが分かる。そして図4(b)では、被写体Ob1以外の背景の部分も、被写体Ob1の肌の色と近い色成分を有しているため、背景の領域も、輪郭補正有効領域Ar2として設定されている。
【0081】
次に、図5と図6のフローチャートを参照して、ピーキング処理部12における処理の例について説明する。図5においてまず、輪郭補正のモードが、「色選択輪郭補正モード」に設定されているか否かの判断が行われる(ステップS1)。
【0082】
「色選択輪郭補正モード」が選択されていると判断された場合には、次に、ユーザより、色成分抽出開始の操作を受け付けたか否かの判断が行われる(ステップS3)。色成分抽出開始の操作を受け付けた段階で、表示素子22(図1参照)上に色成分抽出領域指定マーカMk1を表示する処理が行われる(ステップS4)。色成分抽出開始の操作を行わない場合は、前回抽出した色成分(もしくは初期値)により、それぞれの閾値を生成する処理が行われる(図6のステップS12へ)。
【0083】
そして、色成分抽出領域指定マーカMk1で囲まれた領域が、ユーザよって確定されたか否かの判断が行われ(ステップS5)、確定されたと判断された場合には、色成分抽出領域Ar1における色成分が抽出される(ステップS6)。色成分抽出以降の処理については、次の図6にフローチャートを参照して説明する。
【0084】
図6において、まず映像信号から抽出された色差信号を基に、飽和度変換部12−2(図2参照)で飽和度変換値i_SATが生成され、色相変換部12−3で色相変換値i_HUEが生成される(ステップS11)。そして、閾値生成部12−4によって、A/D変換部11(図1参照)から出力された輝度値i_Yと、飽和度変換部12−2から出力された飽和度変換値i_SATと、色相変換部12−3から出力された色相変換値i_HUEに基づいて、輝度閾値Yminと輝度閾値Ymax、飽和度閾値Sminと飽和度閾値Smax、色相閾値Hminと色相閾値Hmaxが生成される(ステップS12)。
【0085】
続いて、閾値生成部12−4において、色成分抽出領域Ar1内で抽出された輝度値i_Yと輝度閾値Ymin及び輝度閾値Ymaxとが比較され、飽和度変換値i_SATと飽和度閾値Smin及び飽和度閾値Smaxとが比較される。また、色相変換値i_HUEと色相閾値Hmin及び色相閾値Hmaxとが比較される。そして比較結果に基づいて、特定の色成分を含むエリアが判定される(ステップS13)。
【0086】
エリアが判定されると、閾値生成部12−4において、そのエリアに存在する色成分に対応する色検出ゲート信号が生成され(ステップS14)、生成された色検出ゲート信号は、ピーキングマスク処理部12−6(図2参照)に出力される。ピーキングマスク処理部12−6では、入力された色検出ゲート信号に基づいて、ピーキング生成部12−1から出力されたPEAK信号に対するマスク処理が行われ、マスク処理が行われたピーキング信号PKが出力される(ステップS15)。
【0087】
そして、加算器14(または加算器15)(図1参照)によって、輝度信号DYとピーキング信号PKとが加算される(ステップS16)。つまり、映像信号の所定の色空間に対してのみ、ピーキング処理が施されるようになる。
【0088】
一方、図5のステップS1で、「色選択輪郭補正モード」が選択されていないと判断された場合、つまり、「標準輪郭補正モード」が設定されている場合には、エリア判定部12−5での色検出ゲート信号の生成がオフにされる(ステップS2)。すなわち、ピーキングマスク処理部12−6には色検出ゲート信号が出力されなくなる。このため、ピーキングマスク処理部12−6ではマスク処理が行われず、ピーキング信号生成部12−1で生成されたピーキング信号PEAKが、そのままピーキングPKとして出力されるようになる。そして、加算器14(図1参照)によって、輝度信号DYとピーキング信号PKとが加算される(ステップS16)。
【0089】
この場合の、ピーキングPK(=ピーキング信号PEAK)によって輪郭が強調される範囲は、図7に示されたもののようになる。図7には、輪郭補正有効領域Ar2が網がけで示してあり、その範囲が画面全体に及んでいる状態が示されている。つまり、エリア判定部12−5によって色検出ゲート信号が生成されない場合には、従来における処理と同様に、高周波成分が検出された映像信号のすべてに対して、ピーキング処理が施されるようになる。
【0090】
再び図6のフローチャートに戻って説明を続けると、ステップS17では、ユーザによるキャンセルスイッチの押下操作を受け付けたか否かの判断が行われ、キャンセルスイッチの押下を受け付けた場合には、図5のステップS3に戻って処理が続けられる。
【0091】
キャンセルスイッチの押下を受け付けていないと判断された場合には、各種設定幅(輝度設定幅Wl、飽和度設定幅Ws、色相設定幅Wh)の調整を受け付けたか否かの判断が行われる(ステップS18)。ユーザにより、各種設定値の調整が行われた場合には、ステップS12に戻って処理が続けられる。つまり、ユーザによって新たに設定された各種設定幅の値に基づいて、閾値生成部12−4によって、閾値minと閾値maxとが再計算されるようになる。ステップS19で、各種設定幅の調整が完了したと判断された場合には、処理は終了となる。また、ステップS18において、各種設定幅の調整処理が行われていないと判断された場合にも、その時点で処理は終了となる。
【0092】
次に、図8のフローチャートを参照して、乗算器13(図1参照)からピーキング信号PK′が出力された以降の処理について説明する。図8において、まず、輪郭補正のモードが「映像領域選択輪郭補正モード」に設定されているか否かの判断が行われる(ステップS21)。
【0093】
「映像領域選択輪郭補正モード」が選択されていないと判断された場合は、制御部32による制御に基づいて、スイッチSw1(図1参照)がオンにされ、スイッチSw2がオフにされる(ステップS22)。
【0094】
ステップS22でスイッチSw1がオンにされたことにより、乗算部13での処理によってレベル設定がされたピーキング信号PK′が、加算器14によって、輝度信号DYと加算される。そして、ピーキング信号PK′が加算された輝度信号DYpk1と、色差信号DU,DVが、第1のスケーリング処理部16aに入力される。そして、スイッチSw2がオフとされることにより、ピーキング信号PK′は、スイッチSw2の接続先にある加算器15には出力されなくなる。従って、加算器15の接続先の第2のスケーリング処理部16bには、ピーキング信号PK′が付加されていない輝度信号DYpk2と、色差信号DU,DVが入力される。
【0095】
「色選択輪郭補正モード」が選択されていない場合、第1のスケーリング処理部16aに入力される輝度信号DYpk1は、高域成分を有するすべての映像信号に対して、ピーキング信号PK′が加算されて生成された信号となる。「色選択輪郭補正モード」が選択されている場合、第1のスケーリング処理部16aに入力される輝度信号DYpk1は、高域成分を有し所定の色成分を含む映像信号に対して、ピーキング信号PK′が加算されて生成された信号となる。
【0096】
次に、ステップS24に進み、第1のスケーリング処理部16aにおいて、縮小比率(スケーリングの比率)が「A」に設定された上で(ステップS24)、画素変換処理が行われる。「A」の値は、例えば表示素子22(図1参照)の解像度を、入力映像信号の解像度で除算して得られる値等に設定してあるものとする。例えば表示素子22の解像度が、入力映像信号の解像度の半分であった場合には、縮小率Aは0.5に設定される。すなわちステップS24では、表示素子22の画素数に合わせて、画像を縮小する処理が行われることになる。
【0097】
第1のスケーリング処理部16aで画素変換と、必要に応じてi/p変換処理が行われた映像信号CH1と、第2のスケーリング処理部16bで同様の処理を施された映像信号CH2は、第1のマトリクス処理部17aと第2のマトリクス処理部17bを経由してオーバレイ処理部18に出力される。そしてオーバレイ処理部18によって、制御部32から入力される2画面合成制御信号に基づいて、映像信号CH1のみが出力される。
【0098】
つまり、「映像領域選択輪郭補正モード」が選択されていない場合には、制御部32よりオーバレイ処理部18に対して、映像信号CH1のみを出力するよう指示する2画面合成制御信号が供給される。もしくは、「映像領域選択輪郭補正モード」が選択されていない場合には、第2のスケーリング処理部16bには映像信号を出力しないような構成としてもよい。また、「映像領域選択輪郭補正モード」を備えないシステム構成としてもよく、この場合は、スケーリング処理部16、マトリクス処理部17の処理系統を1本とするようにしてもよい。つまり、画像処理部30からは、映像信号CH1のみが出力されるような構成としてもよい。
【0099】
オーバレイ処理部18から出力された映像信号CH1は、マーカ加算部19、OSD処理部20、表示素子駆動部21を経由して表示素子22に表示される。映像信号CH1は、輝度信号DYpk1を基に生成された信号であり、輝度信号DYpk1は、「色選択輪郭補正モード」が選択されていない場合には、高域成分を有するすべての映像信号に対して、ピーキング信号PK′が加算されて生成された信号となる。また、「色選択輪郭補正モード」が選択されている場合には、高域成分を有し、かつ所定の色成分を含む映像信号に対して、ピーキング信号PK′が加算されて生成された信号となる。このため、例えば「映像領域選択輪郭補正モード」と「色選択輪郭補正モード」のいずれも選択されていない場合、つまり「標準輪郭補正モード」が選択されている場合には、映像信号CH1による表示画像は、図7に示したようなものとなる。すなわち、輪郭補正有効領域Ar2が画面全体に及ぶようになる。
【0100】
図8のステップS21で、「映像領域選択輪郭補正モード」が選択されていると判断された場合には、スイッチSw1はオフにされ、スイッチSw2がオンにされる(ステップS26)。つまり、乗算器13によってレベル設定されたピーキング信号PK′は、スイッチSw1の接続先にある加算器14には出力されず、スイッチSw2の接続先にある加算器15のみに出力される。
【0101】
加算器14にはピーキング信号PK′が入力されないため、A/D変換部11(図1参照)から出力された輝度信号DYが、そのまま輝度信号DYpk1として第1のスケーリング処理部16aに出力される。すなわち、第1のスケーリング処理部16aには、輪郭補正処理が施されない輝度信号DYpk1が入力されることになる。
【0102】
また、加算器15には、スイッチSw2を介してピーキング信号PK′が入力されるため、加算器15から第2のスケーリング処理部16bに対しては、輝度信号DYとピーキング信号PK′とが加算して生成された、輝度信号DYpk2が入力される。すなわち、第2のスケーリング処理部16bには、輪郭補正処理が施された輝度信号DYpk2が入力されることになる。
【0103】
続いて、ユーザより、輪郭補正有効領域Ar2の位置や大きさを指定する操作を受け付ける(ステップS27)。図9に、輪郭補正有効領域Ar2を指定するためのGUI(Graphical User Interface)の例を示してある。図9には、画面の中央部に、輪郭補正有効領域指定マーカMk2が表示された状態が示されている。この輪郭補正有効領域指定マーカMk2の大きさ及び位置、ユーザが自由に変更することができるようにしてある。
【0104】
図9に示したような輪郭補正有効領域指定マーカMk2によって、輪郭補正有効領域Ar2が決定されると、次に、「拡大表示モード」がオフに設定されているか否かの判断が行われる(ステップS28)。「拡大表示モード」がオフにされている場合には、第1のスケーリング処理部16aと第2のスケーリング処理部16bの両方において、スケーリング比率が「A」に設定され(ステップS29)、オーバレイ処理部18によって、第1のスケーリング処理部16aから入力された映像CH1の上面に、第2のスケーリング処理部16bから入力され、マスク処理が施された映像CH2が重畳される(ステップS30)。
【0105】
図10(a)に、「映像領域選択輪郭補正モード」が選択され、かつ拡大表示モードがオフに設定されている場合の表示例を示してある。図10(a)には、画面全体に映し出された映像CH1の上面に、輪郭補正有効領域Ar2が重畳された状態が示されている。また、輪郭補正有効領域Ar2に表示された映像が、第2のスケーリング処理部16bからの入力映像CH2であることが示されている。
【0106】
つまり、「映像領域選択輪郭補正モード」が選択され、かつ拡大表示モードがオフに設定された場合には、輪郭補正有効領域指定マーカMk2によって特定された輪郭補正有効領域Ar2に対してのみ輪郭補正処理が行われ、それ以外の領域(映像CH1が表示される領域)に表示される映像信号には、ピーキング処理が施されなくなる。
【0107】
図8のステップS28で、拡大表示モードがオンに設定されていると判断された場合には、次に「拡大表示モード1」が選択されているか否かの判断が行われる(ステップS31)。「拡大表示モード1」が選択されている場合には、第1のスケーリング処理部16aにおけるスケーリング比率は「A」に、第2のスケーリング処理部16bにおけるスケーリング比率は「B」に設定される(ステップS32)。
【0108】
スケーリング比率Bは、スケーリング比率Aよりは大きく、かつ1以下の値に設定されているものとする。スケーリング比率Aが0.5に設定されている場合には、例えば0.8等の値に設定される。スケーリング比率Bが1の場合、スケーリング処理部16bではスケーリング処理が施されず、必要に応じてi/p変換処理が行われることになる。そして、オーバレイ処理部18によって、第1のスケーリング処理部16aから入力された映像CH1の上面に、第2のスケーリング処理部16bから入力され、マスク処理が施された映像CH2が重畳される(ステップS29)。
【0109】
図10(b)に、「映像領域選択輪郭補正モード」が選択され、かつ「拡大表示モード1」が選択されている場合の表示例を示してある。図10(b)には、画面全体に映し出された第1のスケーリング処理部16aからの入力映像CH1の上面に、輪郭補正有効領域Ar2が拡大されて重畳されている状態が示されている。また、輪郭補正有効領域Ar2に表示された映像は、第2のスケーリング処理部16bからの出力映像CH2であることが示されている。
【0110】
つまり、「映像領域選択輪郭補正モード」が選択され、かつ「拡大表示モード1」が選択された場合には、輪郭補正有効領域指定マーカMk2によって特定された輪郭補正有効領域Ar2に対してのみ輪郭補正処理が行われ、かつ、輪郭補正有効領域Ar2が拡大して表示されるようになる。そして、それ以外の領域に表示される映像信号には、ピーキング処理が施されなくなる。
【0111】
このように、輪郭補正有効領域Ar2に表示される映像が拡大されることで、フォーカス調整対象の被写体の解像度も向上する。これにより、ユーザはフォーカスの調整をより行いやすくなる。さらに、輪郭補正有効領域Ar2の背面には、ピーキング処理の施されていない通常の映像が画面全体に渡って表示されるようになるため、フォーカスの調整とともに、構図の確認も同時に行うことができるようになる。
【0112】
ここでの輪郭補正有効領域Ar2における映像の表示の拡大率は、図8のステップS32で第2のスケーリング処理部16bに設定される、スケーリング比率Bにより決まる。従ってユーザは、フォーカス調整の対象エリアにおける拡大率を変更したい場合には、縮小率Bの値を、1≧B>Aの範囲内における任意の値に設定することで、ピーキング処理が施される範囲である輪郭補正有効領域Ar2の表示サイズを、変えることができる。
【0113】
図8のステップS31で、「拡大表示モード1」が選択されていないと判断された場合、つまり、「拡大表示モード2」が選択されている場合には、第1のスケーリング処理部16aにおけるスケーリング比率は「A′」に、第2のスケーリング処理部16bにおけるスケーリング比率は「B′」に設定される(ステップS33)。スケーリング比率A′は、スケーリング比率Aよりも小さな値に設定されているものとし、スケーリング比率B′は、スケーリング比率Aよりは大きく、かつ1以下の値に設定されているものとする。そして、オーバレイ処理部18によって、第2のスケーリング処理部16bから入力され、マスク処理が施された映像CH2の上面に、第1のスケーリング処理部16aから入力された映像CH1が重畳される(ステップS34)。
【0114】
図10(c)に、「映像領域選択輪郭補正モード」が選択され、かつ「拡大表示モード2」が選択されている場合の表示例を示してある。図10(c)では、図10(a)や図10(b)の表示例とは異なり、第2のスケーリング処理部16bからの入力映像CH2が画面の全面に表示され、その上面に、第1のスケーリング処理部16aから入力された映像CH1が重畳されている。
【0115】
つまり、「映像領域選択輪郭補正モード」が選択され、かつ「拡大表示モード2」が選択された場合には、輪郭補正有効領域Ar2が画面全面に表示され、輪郭補正が施されていない映像CH1は、画面の右下端等の所定の位置に、縮小して表示されるようになる。
【0116】
「拡大表示モード2」によれば、ユーザは輪郭補正有効領域Ar2を拡大して、画面全体に表示させることができるため、フォーカスの調整がより行い易くなる。それとともに、子画面上に構図確認用の映像を表示させることができるため、フォーカスの調整と構図の確認を同時に行うことができる。
【0117】
上述した実施の形態によれば、ピーキング処理を施す範囲を、映像信号に含まれる色成分や表示画面上での領域によって特定することができるようになる。そして、特定された範囲以外にはピーキング処理が施されなくなるため、輪郭補正が行われるべきではない領域に対して、ピーキング処理が施されてしまうことを防止することができる。
【0118】
この場合、フォーカス調整を行いたい被写体に関連する箇所にのみ、輪郭補正を行うことができるようになるため、ユーザによるフォーカスの調整を容易にすることができる。
【0119】
また、上述した実施の形態によれば、画面上に表示される「色成分抽出領域決定マーカMk1」や「輪郭補正有効領域指定マーカMk2」の大きさや位置に基づいて、輪郭補正が行われる範囲が決定される。このためユーザは、輪郭補正を行いたい範囲を、これらのマーカの大きさや位置を動かすことによって容易に設定することができる。
【0120】
また、「色選択輪郭補正モード」が選択されている場合には、ユーザにより選択された特定の領域に含まれる色成分と、近似する色空間に含まれる色成分を有する被写体に対してのみ、ピーキング処理が施されるようになる。このためユーザは、特定の被写体を対象としたフォーカスの調整を、容易に行うことができる。
【0121】
この場合、様々な映像領域に映し出された様々な色の被写体に対して、選択的に輪郭補正を行うことができるため、選択した特定の被写体に対するフォーカスの調整が容易になる。
【0122】
例えば、被写体として人物が複数存在するコマ等においては、その中の1人の肌の部分等を指定するだけで、その色成分と近似する色成分を有する映像空間全体に対して、輪郭補正処理が施されるようになる。つまり、複数の被写体をそれぞれ特定することなく、すべての被写体(の肌色部分のみ)を輪郭補正する等のことができるようになる。このような表示をすることで、被写体中の人物のみを対象に容易にフォーカス調整を行うことができる。
【0123】
また、「色選択輪郭補正モード」が選択されている場合には、ユーザによって指定された領域に含まれる色成分と、映像信号に含まれる色成分とのマッチングを行う際に用いられる閾値として、上限値(max)と下限値(min)の2つの値を設けている。これにより、ユーザによって指定された領域に含まれる色成分と完全に一致する色成分を有する領域だけでなく、近似する色成分を有する領域に対しても、輪郭補正が行われるようになる。
【0124】
この場合、閾値算出時にパラメータとして用いられる輝度設定幅Wl、飽和度設定幅Ws、色相設定幅Whのそれぞれの値を、ユーザによって自由に設定可能としてあるため、ユーザは、これらの設定幅を増減させることにより、輪郭補正を行う対象となる領域の範囲を自在に調整することができる。
【0125】
さらに、これらの設定幅の値を変更した時点で、新たに設定された設定幅の値を用いて再び閾値が設定され、この閾値に基づいて輪郭補正有効領域Ar2が再設定されるため、ユーザはピーキング処理を施したい領域を、視覚的・感覚的な操作によって調整することができるようになる。
【0126】
また、「映像領域選択輪郭補正モード」が選択されている場合には、輪郭補正有効領域Ar2としてユーザに指定された領域に対してのみ、輪郭補正処理が施されるようになる。これにより、ユーザはフォーカス調整を行いたい対象を、領域を指定することで容易に特定することができるようになる。
【0127】
また、「拡大表示モード1」又は「拡大表示モード2」が選択されることにより、輪郭補正を有効とする領域中の映像が拡大して表示されるようになるため、ユーザは、映像補正有効領域Ar2内の映像の、より詳細な部分を確認しながら、容易にフォーカス調整を行うことができる。
【0128】
また、いずれの拡大表示モードにおいても、輪郭補正処理が施されたフォーカス調整用の映像とともに、ピーキング処理が施されていない通常の映像も同時に表示されるため、ユーザは、構図を確認しながらフォーカス調整を行うことができる。
【0129】
すなわち、フォーカス調整を行いたい領域を大きく表示したい場合と、構図確認用の領域の方を大きく表示したい場合とで、ユーザはモードを選択的に切り替えて使用することができる。
【0130】
「色選択輪郭補正モード」と「映像領域選択輪郭補正モード」とどちらの輪郭補正モードも選択されていない「標準輪郭補正モード」との3つのモードが用意されている。よって、ユーザは、ピーキング処理を施す範囲を特に設定する必要がない場合には「標準輪郭補正モード」を選択する等、用途に応じてこれらのモードを使い分けることができるようになる。
【0131】
なお、上述した実施の形態では、3つの輪郭補正モードのうち、いずれか1つの輪郭補正モードのみを使用可能とする構成を例に挙げたが、「色選択輪郭補正モード」と「映像領域選択輪郭補正モード」との両方の機能を同時に使用可能な構成に適用してもよい。
【0132】
図11(a)及び図11(b)には、画面上に、フォーカスを合わせの対象物である被写体Ob1と、被写体Ob1の色成分と近似した色成分を持つ被写体Ob4とが、同時に存在している状態が示されている。図11(a)は、このような画面において、「色選択輪郭補正モード」が選択された場合の表示例を示したものである。
【0133】
「色選択輪郭補正モード」によって、輪郭補正有効領域Ar2が決定された場合には、図11(a)に示されたように、フォーカス合わせを行いたい対象としての被写体Ob1だけでなく、被写体Ob4も、輪郭補正有効領域Ar2の範囲に含まれてしまう。つまり、ピーキング処理を施す必要のない被写体Ob4に対しても、輪郭補正が行われてしまう。
【0134】
このような場合、「映像領域選択輪郭補正モード」を選択し、輪郭補正有効領域Ar2の大きさや位置を、被写体Ob1が存在する領域のみに縮小することで、輪郭補正を行う対象を被写体Ob1のみに限定することが可能となる。
【0135】
この場合の表示例を図11(b)に示してある。図11(b)には、輪郭補正有効領域Ar2が、被写体Ob1の顔面付近のみに縮小されている状態が示されている。このような操作を行うことにより、輪郭補正が行われる対象が、輪郭補正有効領域Ar2内の、特定の色成分を有する映像領域のみに限定されるようになる。
【0136】
つまり、「色選択輪郭補正モード」と「映像領域選択輪郭補正モード」とを組み合わせて使用することにより、フォーカス合わせの対象物以外の被写体が、フォーカス合わせの対象の被写体が有する色成分と近似した色成分を有していた場合にも、それらのフォーカス合わせ対象外の被写体を、輪郭補正の対象領域から外すことができるようになる。
【0137】
また、上述した実施の形態では、1つの撮像装置が3つの輪郭補正モードと、3つの拡大表示のモードを有する例を挙げたが、拡大表示は行わない構成に適用してもよい。このような構成とした場合のブロック図を、図12に示してある。図12において、図1と対応する箇所には同一の符号を付してあり、詳細な説明は省略する。
【0138】
図12に示した撮像装置100′は、ビューファインダ部60′のスケーリング処理部16′と、マトリクス処理部17′を、それぞれ1つのみで構成してある。このため、2つの処理系統によって処理された映像を合成するための、オーバレイ処理部も不要となっている。代わりに、ピーキング信号処理部12から出力されるピーキング信号PKに対してマスク処理を行う、ピーキング有効領域マスク処理部40を設けている。
【0139】
ピーキング有効領域マスク処理部40は、制御部32からエリアゲート信号が供給された場合に、そのエリアゲート信号を用いて、ピーキング処理部12から入力されたピーキング信号PKをマスク処理する。エリアゲート信号は、ユーザにより指定された輪郭補正有効領域Ar2の位置情報に対応して、制御部32で生成されるものである。このエリアゲート信号を用いて、ピーキング信号PKに対するマスク処理が行われることで、ユーザにより指定された領域内における、高周波成分を有する映像に対してのみ、輪郭補正処理が施されることになる。
【0140】
図13に、ピーキング有効領域マスク処理部40による処理の例を、フローチャートで示してある。まず、「映像領域選択輪郭補正モード」が選択されているか否かの判断が行われ(ステップS41)、「映像領域選択輪郭補正モード」が選択されていない、つまり、「色選択輪郭補正モード」もしくは「標準輪郭補正モード」が選択されている場合には、ピーキング処理部12から入力されたピーキング信号を、そのまま出力する処理が行われる(ステップS42)。
【0141】
つまり、「色選択輪郭補正モード」や「標準輪郭補正モード」が選択された場合には、制御部32よりエリアゲート信号が供給されないため、ピーキング有効領域マスク処理部40においては、マスク処理が行われない。
【0142】
ステップS41において、「映像領域選択輪郭補正モード」が選択されていると判断された場合には、制御部32から供給されたエリアゲート信号を用いて、ピーキング処理部12から出力されたピーキング信号PKをマスクする処理が行われる(ステップS43)。そして、マスク処理が施されたピーキング信号PK′′が、乗算器13に出力される(ステップS44)。
【0143】
乗算器13では、マスク処理されたピーキング信号PK′′に、制御部32から供給されたピーキングレベル設定信号が乗算され、ピーキング信号PK′が生成される。ピーキングレベルが調整されたピーキング信号PK′は加算器14に出力され、加算器14によって、輝度信号DYと加算される。
【0144】
なお、図12に示した撮像装置100′において、「映像領域選択輪郭補正モード」に加えて、「色選択輪郭補正モード」での処理も行われた場合には、ピーキング有効領域マスク処理部40に入力されるピーキング信号PKは、特定の色空間がゲートされた信号であることになる。このようなピーキング信号PKに対して、さらにピーキング有効領域マスク処理部40、エリアゲート信号によるマスク処理が施されることで、ピーキング処理が施される対象は、ユーザにより指定された映像領域内の、ユーザにより指定された色成分を有する被写体のみに限定されるようになる。
【0145】
このような構成とすることにより、図1に示した例に比べて回路構成を低減することができる上に、ユーザにより選択された輪郭補正モードに応じて、輪郭補正処理を施す範囲が決定されるようになる。
【0146】
なお、上述した実施の形態では、ビューファインダ部60(60′)を備えた撮像装置100(100′)に適用した例を挙げたが、ビューファインダ部60(60′)は備えない構成に適用するようにしてもよい。つまり、出力端子等を通して外部の表示装置に映像信号を出力する装置に適用してもよい。また、カメラ部50を有さず、外部の撮像装置から入力される映像信号を処理する映像信号処理装置に適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1】本発明の一実施の形態による撮像装置の内部構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施の形態によるピーキング処理部の内部構成例を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施の形態による色抽出の概念を説明する説明図であり、(a)は色成分抽出領域の設定例を示し、(b)は閾値生成のパラメータである各サンプル値と各設定幅との関係を示し、(c)は色成分抽出領域で抽出された色成分に基づいて決定された、輪郭補正有効領域の例を示す。
【図4】本発明の一実施の形態による輪郭補正有効領域の範囲の例を示す説明図であり、(a)は輪郭補正有効領域の範囲を狭めた場合の表示例を示し、(b)は輪郭補正有効領域の範囲広げた場合の表示例を示す。
【図5】本発明の一実施の形態による色選択輪郭補正モード選択時の処理の例を示すフローチャートである。
【図6】本発明の一実施の形態による色選択輪郭補正モード選択時の処理の例を示すフローチャートである。
【図7】本発明の一実施の形態による標準輪郭補正モード選択時の輪郭補正有効領域の表示例を示す説明図である。
【図8】本発明の一実施の形態による映像領域選択輪郭補正モード選択時の処理の例を示すフローチャートである。
【図9】本発明の一実施の形態による輪郭補正有効領域の表示例を示す説明図である。
【図10】本発明の一実施の形態による各拡大表示モード選択時における表示例を示す説明図であり、(a)は「拡大表示モードオフ」選択時の表示例を示し、(b)は「拡大表示モード1」選択時の表示例を示し、(c)は「拡大表示モード2」選択時の表示例を示す。
【図11】本発明の一実施の形態による色選択輪郭補正モードと映像領域選択輪郭補正モードとを併用した場合の表示例を示す説明図であり、(a)は色選択輪郭補正モードのみを使用した場合の表示例を示し、(b)は色選択輪郭補正モード及び映像領域選択輪郭補正モードを用いた場合の表示例を示す。
【図12】本発明の他の実施例による撮像装置の内部構成例を示すブロック図である。
【図13】本発明の他の実施例によるピーキング有効領域マスク処理部の処理の例を示すフローチャートである。
【図14】従来の撮像装置の構成例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0148】
1…撮像レンズ、2…レンズ鏡筒、3…プリズム、4…撮像素子、5…ビデオアンプ、6…A/D変換部、7…デジタル信号処理部、8…D/A変換部、9…ビデオアンプ、10…帯域制限フィルタ、11…A/D変換部、12…ピーキング処理部、12−1…ピーキング信号生成部、12−2…飽和度変換部、12−3…色相変換部、12−4…閾値生成部、12−5…エリア判定部、12−6…ピーキングマスク処理部、13…乗算器、14,15…加算器、16a…第1のスケーリング処理部、16b…第2のスケーリング処理部、17a…第1のマトリクス処理部、17b…第2のマトリクス処理部、18…オーバレイ処理部、19…マーカ加算部、20…OSD処理部、21…表示素子駆動部、22…表示素子、30…画像処理部、31…操作部、32…制御部、40…ピーキング有効領域マスク処理部、PK…ピーキング信号、Sw1,Sw2,Sw3…スイッチ、Ymin,Ymax…輝度閾値、Smin,Smax…飽和度閾値、Hmin,Hmax…色相閾値
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力映像信号に含まれる高域成分を抽出して増幅し、ピーキング信号を生成するピーキング信号生成部と、
前記ピーキング信号による輪郭補正を行う対象領域の指定を受け付ける操作部と、
前記指定された領域に対応する位置情報を記載したエリアゲート信号を生成する制御部と、
前記制御部から供給される前記エリアゲート信号に基づいて、前記操作部を通して指定された対象領域に、前記ピーキング信号が加算された映像信号を出力する処理を行うマスク処理部と、
前記マスク処理された映像信号を所定のスケーリング比率を用いて画素数の変換を行い、前記操作部を通して、前記輪郭補正された映像信号を拡大表示するよう指示された場合には、前記対象領域に出力される映像信号に適用するスケーリング比率の値を、前記対象領域以外の領域に出力される映像信号に適用するスケーリング比率の値よりも大きくする
映像信号処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の映像信号処理装置において、
前記入力映像信号が有する色成分により構成される第1の色空間のうち、前記操作部で指定された領域に含まれる色成分に基づいて規定された第2の色空間と一致する色空間をゲートするための、色検出ゲート信号を生成するエリア判定部と、
前記エリア判定部で生成された色検出ゲート信号に基づいて、前記ピーキング処理部で生成されたピーキング信号をマスク処理するピーキングマスク処理部とを備えたことを特徴とする
映像信号処理装置。
【請求項3】
請求項2記載の映像信号処理装置において、
前記指定された領域内の色成分を抽出して、前記抽出した色成分と予め設定された設定幅とに基づいて、前記第2の色領域を規定するための閾値を生成する閾値生成部を備えたことを特徴とする
映像信号処理装置。
【請求項4】
請求項3記載の映像信号処理装置において、
前記閾値生成部は、前記指定された領域内で抽出した色成分の平均値に前記設定値の半分の値を加算して上限閾値を生成し、前記指定された領域内で抽出した色成分の平均値から前記設定値の半分の値を減算して下限閾値を生成することを特徴とする
映像信号処理装置。
【請求項5】
請求項4記載の映像信号処理装置において、
前記指定された領域内の映像信号から飽和度変換値を得る飽和度変換部と、
前記指定された領域内の映像信号から色相変換値を得る色相変換部とを備え、
前記閾値生成部は、前記指定された領域内から抽出した輝度値の平均値に前記設定幅の半分の値を加算して輝度上限閾値を生成するとともに、
前記飽和度変換値に基づく飽和度上限閾値及び飽和度下限閾値と、前記色相変換値に基づく色相上限閾値及び色相下限閾値とを生成することを特徴とする
映像信号処理装置。
【請求項6】
請求項2記載の映像信号処理装置において、
前記スケーリング処理部は、前記ピーキング信号が加算されていない映像信号の画素変換を行う第1のスケーリング処理部と、前記ピーキング信号が加算された映像信号の画素変換を行う第2のスケーリング処理部とで構成され、
前記マスク処理部は、前記第2のスケーリング処理部で画素変換された映像信号に対して、前記エリアゲート信号に基づいてマスク処理を行うとともに、前記マスク処理された映像信号と前記第1のスケーリング処理部から出力された映像信号とを合成することを特徴とする
映像信号処理装置。
【請求項7】
請求項6記載の映像信号処理装置において、
前記操作部を通して、前記輪郭補正された映像信号を拡大表示するよう指示された場合には、
前記制御部は、前記第2のスケーリング処理部に、前記第1のスケーリング処理部におけるスケーリング比率の値よりも大きな値を適用させるためのスケーリング比率設定信号を出力し、前記マスク処理部に、第1のスケーリング処理部からの出力された映像信号による映像上に、前記第2のスケーリング処理部から出力された映像信号による映像が重畳されるよう指示する2画面合成制御信号を出力することを特徴とする
映像信号処理装置。
【請求項8】
請求項7記載の映像信号処理装置において、
前記入力映像信号に前記ピーキング信号生成部で生成されたピーキング信号を加算して前記第1のスケーリング処理部に出力する第1の加算部と、
前記入力映像信号に前記ピーキング信号生成部で生成されたピーキング信号を加算して前記第2のスケーリング処理部に出力する第2の加算部と、
接続されることで、前記ピーキング信号生成部で生成されたピーキング信号を前記第1の加算部に出力する第1のスイッチと、
接続されることで、前記ピーキング信号生成部で生成されたピーキング信号を前記第2の加算部に出力する第2のスイッチと備え、
前記制御部は、前記操作部より入力される操作の内容に応じて、前記第1のスイッチと前記第2のスイッチの接続もしくは非接続を切り替える制御を行うことを特徴とする
映像信号処理装置。
【請求項9】
請求項8記載の映像信号処理装置において、
前記操作部を通しての、輪郭補正を行う対象領域の指定を受け付けなかった場合には、
前記制御部は、前記第1のスイッチを接続するとともに前記第2のスイッチを非接続とし、前記エリアゲート信号の生成を行わないことを特徴とする
映像信号処理装置。
【請求項10】
請求項2記載の映像信号処理装置において、
前記入力映像信号に入力されたピーキング信号を加算して前記スケーリング処理部に出力する加算部を備え、
前記マスク処理部は、前記制御部からエリアゲート信号が供給された場合には、前記ピーキング信号生成部から出力されたピーキング信号に対して、前記エリアゲート信号で指定された領域をゲートさせるためのマスク処理を行って、前記マスク処理を行ったピーキング信号を前記加算部に出力することを特徴とする
映像信号処理装置。
【請求項11】
レンズを通して入射される被写体光を光電変換して映像信号を生成する撮像部と、
前記撮像部で生成された映像信号に含まれる高域成分を抽出して増幅し、ピーキング信号を生成するピーキング信号生成部と、
前記ピーキング信号による輪郭補正を行う対象領域の指定を受け付ける操作部と、
前記指定された領域に対応する位置情報を記載したエリアゲート信号を生成する制御部と、
前記制御部から供給される前記エリアゲート信号に基づいて、前記操作部を通して指定された対象領域に、前記ピーキング信号が加算された映像信号を出力する処理を行うマスク処理部と、
前記マスク処理された映像信号を所定のスケーリング比率を用いて画素変換するスケーリング処理部を備え、
前記スケーリング処理部は、前記操作部を通して、前記輪郭補正された映像信号を拡大表示するよう指示された場合に、前記対象領域に出力される映像信号を、前記対象領域以外の領域に出力される映像信号に適用するスケーリング比率の値よりも大きいスケーリング比率を用いて画素変換することを特徴とする
撮像装置。
【請求項12】
請求項11記載の撮像装置において、
前記ピーキング信号が加算された映像信号及び/又は前記入力映像信号で構成される映像を表示する表示部を備えたことを特徴とする、
撮像装置。
【請求項13】
入力映像信号に含まれる高域成分を抽出して増幅し、ピーキング信号を生成するステップと、
前記ピーキング信号による輪郭補正を行う対象領域の指定を受け付けるステップと、
前記指定された領域に対応する位置情報を記載したエリアゲート信号を生成するステップと、
前記輪郭補正された映像信号を拡大表示するよう指示された場合には、前記対象領域に出力される映像信号を、前記対象領域以外の領域に出力される映像信号に適用するスケーリング比率の値よりも大きいスケーリング比率の値を用いて画素変換するステップと、
前記エリアゲート信号に基づいて、前記指定された対象領域に、前記ピーキング信号が加算された映像信号を出力する処理を行うステップとを有することを特徴とする
映像信号処理方法。
【請求項1】
入力映像信号に含まれる高域成分を抽出して増幅し、ピーキング信号を生成するピーキング信号生成部と、
前記ピーキング信号による輪郭補正を行う対象領域の指定を受け付ける操作部と、
前記指定された領域に対応する位置情報を記載したエリアゲート信号を生成する制御部と、
前記制御部から供給される前記エリアゲート信号に基づいて、前記操作部を通して指定された対象領域に、前記ピーキング信号が加算された映像信号を出力する処理を行うマスク処理部と、
前記マスク処理された映像信号を所定のスケーリング比率を用いて画素数の変換を行い、前記操作部を通して、前記輪郭補正された映像信号を拡大表示するよう指示された場合には、前記対象領域に出力される映像信号に適用するスケーリング比率の値を、前記対象領域以外の領域に出力される映像信号に適用するスケーリング比率の値よりも大きくする
映像信号処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の映像信号処理装置において、
前記入力映像信号が有する色成分により構成される第1の色空間のうち、前記操作部で指定された領域に含まれる色成分に基づいて規定された第2の色空間と一致する色空間をゲートするための、色検出ゲート信号を生成するエリア判定部と、
前記エリア判定部で生成された色検出ゲート信号に基づいて、前記ピーキング処理部で生成されたピーキング信号をマスク処理するピーキングマスク処理部とを備えたことを特徴とする
映像信号処理装置。
【請求項3】
請求項2記載の映像信号処理装置において、
前記指定された領域内の色成分を抽出して、前記抽出した色成分と予め設定された設定幅とに基づいて、前記第2の色領域を規定するための閾値を生成する閾値生成部を備えたことを特徴とする
映像信号処理装置。
【請求項4】
請求項3記載の映像信号処理装置において、
前記閾値生成部は、前記指定された領域内で抽出した色成分の平均値に前記設定値の半分の値を加算して上限閾値を生成し、前記指定された領域内で抽出した色成分の平均値から前記設定値の半分の値を減算して下限閾値を生成することを特徴とする
映像信号処理装置。
【請求項5】
請求項4記載の映像信号処理装置において、
前記指定された領域内の映像信号から飽和度変換値を得る飽和度変換部と、
前記指定された領域内の映像信号から色相変換値を得る色相変換部とを備え、
前記閾値生成部は、前記指定された領域内から抽出した輝度値の平均値に前記設定幅の半分の値を加算して輝度上限閾値を生成するとともに、
前記飽和度変換値に基づく飽和度上限閾値及び飽和度下限閾値と、前記色相変換値に基づく色相上限閾値及び色相下限閾値とを生成することを特徴とする
映像信号処理装置。
【請求項6】
請求項2記載の映像信号処理装置において、
前記スケーリング処理部は、前記ピーキング信号が加算されていない映像信号の画素変換を行う第1のスケーリング処理部と、前記ピーキング信号が加算された映像信号の画素変換を行う第2のスケーリング処理部とで構成され、
前記マスク処理部は、前記第2のスケーリング処理部で画素変換された映像信号に対して、前記エリアゲート信号に基づいてマスク処理を行うとともに、前記マスク処理された映像信号と前記第1のスケーリング処理部から出力された映像信号とを合成することを特徴とする
映像信号処理装置。
【請求項7】
請求項6記載の映像信号処理装置において、
前記操作部を通して、前記輪郭補正された映像信号を拡大表示するよう指示された場合には、
前記制御部は、前記第2のスケーリング処理部に、前記第1のスケーリング処理部におけるスケーリング比率の値よりも大きな値を適用させるためのスケーリング比率設定信号を出力し、前記マスク処理部に、第1のスケーリング処理部からの出力された映像信号による映像上に、前記第2のスケーリング処理部から出力された映像信号による映像が重畳されるよう指示する2画面合成制御信号を出力することを特徴とする
映像信号処理装置。
【請求項8】
請求項7記載の映像信号処理装置において、
前記入力映像信号に前記ピーキング信号生成部で生成されたピーキング信号を加算して前記第1のスケーリング処理部に出力する第1の加算部と、
前記入力映像信号に前記ピーキング信号生成部で生成されたピーキング信号を加算して前記第2のスケーリング処理部に出力する第2の加算部と、
接続されることで、前記ピーキング信号生成部で生成されたピーキング信号を前記第1の加算部に出力する第1のスイッチと、
接続されることで、前記ピーキング信号生成部で生成されたピーキング信号を前記第2の加算部に出力する第2のスイッチと備え、
前記制御部は、前記操作部より入力される操作の内容に応じて、前記第1のスイッチと前記第2のスイッチの接続もしくは非接続を切り替える制御を行うことを特徴とする
映像信号処理装置。
【請求項9】
請求項8記載の映像信号処理装置において、
前記操作部を通しての、輪郭補正を行う対象領域の指定を受け付けなかった場合には、
前記制御部は、前記第1のスイッチを接続するとともに前記第2のスイッチを非接続とし、前記エリアゲート信号の生成を行わないことを特徴とする
映像信号処理装置。
【請求項10】
請求項2記載の映像信号処理装置において、
前記入力映像信号に入力されたピーキング信号を加算して前記スケーリング処理部に出力する加算部を備え、
前記マスク処理部は、前記制御部からエリアゲート信号が供給された場合には、前記ピーキング信号生成部から出力されたピーキング信号に対して、前記エリアゲート信号で指定された領域をゲートさせるためのマスク処理を行って、前記マスク処理を行ったピーキング信号を前記加算部に出力することを特徴とする
映像信号処理装置。
【請求項11】
レンズを通して入射される被写体光を光電変換して映像信号を生成する撮像部と、
前記撮像部で生成された映像信号に含まれる高域成分を抽出して増幅し、ピーキング信号を生成するピーキング信号生成部と、
前記ピーキング信号による輪郭補正を行う対象領域の指定を受け付ける操作部と、
前記指定された領域に対応する位置情報を記載したエリアゲート信号を生成する制御部と、
前記制御部から供給される前記エリアゲート信号に基づいて、前記操作部を通して指定された対象領域に、前記ピーキング信号が加算された映像信号を出力する処理を行うマスク処理部と、
前記マスク処理された映像信号を所定のスケーリング比率を用いて画素変換するスケーリング処理部を備え、
前記スケーリング処理部は、前記操作部を通して、前記輪郭補正された映像信号を拡大表示するよう指示された場合に、前記対象領域に出力される映像信号を、前記対象領域以外の領域に出力される映像信号に適用するスケーリング比率の値よりも大きいスケーリング比率を用いて画素変換することを特徴とする
撮像装置。
【請求項12】
請求項11記載の撮像装置において、
前記ピーキング信号が加算された映像信号及び/又は前記入力映像信号で構成される映像を表示する表示部を備えたことを特徴とする、
撮像装置。
【請求項13】
入力映像信号に含まれる高域成分を抽出して増幅し、ピーキング信号を生成するステップと、
前記ピーキング信号による輪郭補正を行う対象領域の指定を受け付けるステップと、
前記指定された領域に対応する位置情報を記載したエリアゲート信号を生成するステップと、
前記輪郭補正された映像信号を拡大表示するよう指示された場合には、前記対象領域に出力される映像信号を、前記対象領域以外の領域に出力される映像信号に適用するスケーリング比率の値よりも大きいスケーリング比率の値を用いて画素変換するステップと、
前記エリアゲート信号に基づいて、前記指定された対象領域に、前記ピーキング信号が加算された映像信号を出力する処理を行うステップとを有することを特徴とする
映像信号処理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−231918(P2009−231918A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−71706(P2008−71706)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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