説明

映像信号処理装置及びプログラム

【課題】色成分を考慮したノイズ低減処理を行うことで、好適な画像を得ること。
【解決手段】
入力されたカラー映像信号に対して色空間変換を行うことで第1色変換信号を生成する第1色空間変換部102と、第1色空間変換部102での処理の対象となるフレームよりも前のフレームである過去フレームのカラー映像信号に対して色空間変換を行うことで第2色変換信号を生成する第2色空間変換部106と、第1色空間変換部102と第2色空間変換部106とで行う色空間変換方法を決定する色空間変換方法決定部105と、第1色変換信号と第2色変換信号を元にノイズ低減処理を行うことでノイズ低減後信号を生成するノイズ低減部103と、色空間変換方法決定部105で決定された色空間変換方法に基づいてノイズ低減後信号を逆変換する色空間逆変換部107とを有する映像信号処理装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラー映像信号に対してノイズ低減を行うのに好適な映像信号処理装置及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特開2001−197321号公報には、読み取った3原色のディジタルデータを、色相H軸、彩度S軸、明度V軸とで表現されるHSV表色系に色変換し、明度V軸または彩度S軸の少なくとも一つの軸上で平滑化処理を行う方法が開示されている。
また、動画に関して、特開2004−88234号公報には、フレーム巡回型ノイズ低減装置において、動きを検出し動き成分に応じた巡回係数で1フレーム前と現在のフレームの画素を合成する方法が開示されている。
【特許文献1】特開2001−197321号公報
【特許文献2】特開2004−88234号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
撮影する対象によって色の傾向が偏ることがある。例えば、内視鏡を用いて人体の内部を撮影する場合は赤色や黄色や白色が多くなる。この場合、これらの色に関しては解像度が重視される。特開2001−197321号公報に示されている方法では、ある決まった色成分に関してのみ平滑化処理がなされるので、その映像信号に関する重要な色成分に対してノイズ低減度合いを変更できない。
また、特開2004−88234に示されている方法では、重要な色成分について考慮されていない。
【0004】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、色成分を考慮したノイズ低減処理を行うことで、好適な画像を得ることのできる映像信号処理装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明は、入力されたカラー映像信号に対して1フレーム毎に信号処理を行う映像信号処理装置であって、前記カラー映像信号に対して色空間変換を行うことで第1色変換信号を生成する第1色空間変換部と、前記第1色空間変換部での処理の対象となるフレームよりも前のフレームである過去フレームのカラー映像信号に対して色空間変換を行うことで第2色変換信号を生成する第2色空間変換部と、前記第1色空間変換部と前記第2色空間変換部とで行う色空間変換方法を決定する色空間変換方法決定部と、前記第1色変換信号と前記第2色変換信号を元にノイズ低減処理を行うことでノイズ低減後信号を生成するノイズ低減部と、前記色空間変換方法決定部で決定された色空間変換方法に基づいて前記ノイズ低減後信号を逆変換する色空間逆変換部とを有する映像信号処理装置を提供する。
【0006】
本発明は、入力されたカラー映像信号に対して信号処理を行う映像信号処理装置であって、前記カラー映像信号に対して色空間の変換方法を決定する色空間変換方法決定部と、前記色空間変換方法決定部で決定された色空間変換方法を用いて、前記カラー映像信号を変換して色変換信号を生成する色空間変換部と、前記色空間変換方法と前記色変換信号に基づいてノイズ低減処理を行い、ノイズ低減後信号を生成するノイズ低減部と、前記色空間変換方法に基づいて前記ノイズ低減後信号を逆変換する色空間逆変換部とを有する映像信号処理装置を提供する。
【0007】
本発明は、入力されたカラー映像信号に対して1フレーム毎に信号処理を行うための映像信号処理プログラムであって、前記カラー映像信号に対して色空間変換を行うことで第1色変換信号を生成する第1色空間変換ステップと、前記第1色空間変換ステップでの処理の対象となるフレームよりも前のフレームである過去フレームのカラー映像信号に対して色空間変換を行うことで第2色変換信号を生成する第2色空間変換ステップと、前記第1色空間変換部と前記第2色空間変換部とで行う色空間変換方法を決定する色空間変換方法決定ステップと、前記第1色変換信号と前記第2色変換信号を元にノイズ低減処理を行うことでノイズ低減後信号を生成するノイズ低減ステップと、前記色空間変換方法決定ステップで決定された色空間変換方法に基づいて前記ノイズ低減後信号を逆変換する色空間逆変換ステップとをコンピュータに実行させる映像信号処理プログラムを提供する。
【0008】
本発明は、入力されたカラー映像信号に対して信号処理を行うための映像信号処理プログラムであって、前記カラー映像信号に対して色空間の変換方法を決定する色空間変換方法決定ステップと、前記色空間変換方法決定ステップで決定された色空間変換方法を用いて、前記カラー映像信号を変換して色変換信号を生成する色空間変換ステップと、前記色空間変換方法と前記色変換信号に基づいてノイズ低減処理を行い、ノイズ低減後信号を生成するノイズ低減ステップと、前記色空間変換方法に基づいて前記ノイズ低減後信号を逆変換する色空間逆変換ステップとをコンピュータに実行させる映像信号処理プログラムを提供する。
【0009】
本発明によれば、カラー映像信号をフレーム毎に適切な色空間に変換してノイズ低減を行うので、例えば、主要色と、それ以外の色とでそれぞれノイズ低減量を異ならせることが可能となる。これにより、重要な色成分を考慮したノイズ低減処理を行うことができ、好適な画像を得ることが可能となる。
また、本発明の映像信号処理装置及び映像信号処理プログラムは、動画像に対して映像信号処理を実施するのに好適なものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、色成分を考慮した好適なノイズ低減処理を行うことができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明に係る映像信号処理装置及び映像信号処理プログラムの一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0012】
〔第1の実施形態〕
図1は、本実施形態に係る映像信号処理装置の概略構成を示したブロック図である。
図1に示されるように、本実施形態に係る映像信号処理装置は、入力部101を介して入力されたカラー映像信号に対して色空間変換を行うことで第1色変換信号を生成する第1色空間変換部102と、前記第1色空間変換部での処理の対象となるフレームよりも前のフレームである過去フレームのカラー映像信号に対して色空間変換を行うことで第2色変換信号を生成する第2色空間変換部106と、第1色空間変換部102と第2色空間変換部106とで行う色空間変換方法を決定する色空間変換方法決定部105と、第1色変換信号と第2色変換信号を元にノイズ低減処理を行うことでノイズ低減後信号を生成するノイズ低減部103と、色空間変換方法決定部105で決定された色空間変換方法に基づいてノイズ低減後信号を逆変換する色空間逆変換部107とを主な構成要素として備えている。
【0013】
上記各部は、制御部109に接続されており、制御部109からの制御指令に基づいて作動する。制御部109は、電源のオン/オフ、ノイズ低減時の各種モードの切り替え等をユーザが入力するための外部インターフェース部(以下「外部I/F部」という。)110に接続されている。
【0014】
上記第1色空間変換部102は、入力部101を介して入力されるR(赤色)、G(緑色)、B(青色)の色空間で表されたカラー映像信号が入力されると、このカラー映像信号に対して色空間変換処理を行い、第1色変換信号を生成する。具体的には、第1色空間変換部102は、以下の(1)式を用いてカラー映像信号の色空間{R、G、B}を色空間T{T0、T1、T2}に変換する。ここで、色空間T{T0、T1、T2}は、1フレーム前の映像信号における主要色の色空間軸及び主要色に直交する色空間軸により特定される色空間であり、後述する色空間変換方法決定部105によって決定される。
【0015】
【数1】

【0016】
上記(1)式において、Cは第1色変換関数であり、後述する色空間変換方法決定部105によって決定される。iはフレーム番号を示している。第1色空間変換部102により生成された第1色変換信号は、ノイズ低減部103に転送される。
【0017】
第2色空間変換部106は、バッファ104に格納されている1フレーム前の映像信号(ノイズ低減信号)に対して色空間変換処理を行い、第2色変換信号を生成する。具体的には、第2色空間変換部106は、以下の(2)式を用いることにより、1フレーム前の映像信号の色空間Ti−1{Ti−10、Ti−11、Ti−12}を色空間T{T0、T1、T2}に変換する。
なお、本実施形態では、バッファ104に格納されている1フレーム前の映像信号に対して色空間変換処理を行うこととしたが、これに限られず、上述した第1色空間変換部102において処理対象とされたカラー映像信号よりも前のフレームである過去フレームのカラー映像信号に対して色空間変換処理を行うこととしてもよい。
【0018】
【数2】

【0019】
ここで、Dは第2色変換関数であり、後述する色空間変換方法決定部105により決定される。第2色空間変換部106により生成された第2色変換信号は、ノイズ低減部103に転送される。
【0020】
ノイズ低減部103は、第1色空間変換部102からの第1色変換信号と第2色空間変換部106からの第2色変換信号とに基づいてノイズ低減処理を行いノイズ低減後信号を生成し、バッファ104及び色空間逆変換部107に転送する。
以下、ノイズ低減部103について図2を参照して詳しく説明する。
【0021】
図2は、ノイズ低減部103の概略構成を示した図である。図2に示されるように、ノイズ低減部103は、動き検出部201、重み決定部202、フレーム合成部203を備えて構成されている。
【0022】
動き検出部201は、第1色空間変換部102から転送される第1色変換信号(現フレームの色空間変換後の映像信号)と、第2色空間変換部106から転送される第2色変換信号(ノイズ低減処理及び色空間変換処理が施された1フレーム前の映像信号)との差(動き量)を色空間毎に計算し、前フレームとの動きがあるか否かを判定する。動きがあるか否かの判定は、例えば、前フレームと現フレームとの差の絶対値を求め、絶対値が予め設定しておいた閾値よりも大きければ動きがあると判定する。なお、上記閾値或いは動きがあるか否かの判定方法については、外部I/F部110から入力可能とされていてもよいし、或いは、制御部109に予め設定されていてもよい。
【0023】
重み決定部202は、動き検出部201での動き判定情報に基づいて、第1色変換信号と第2色変換信号とを合成する際の重み係数Kを決定する。例えば、重み決定部202は、動き検出部201で動きがあると判定された場合には重み係数を大きめ(例えば、0.5以上)に設定する。
更に、重み決定部202は、後述する色空間変換方法決定部105で決定される色空間の情報と、予め登録されている重要視する色空間軸とのなす角度に基づいて、上記重み係数Kを調整する。例えば、図3に示されるように、重要視する色空間軸としてRの色空間軸が予め登録されており、第1色変換信号の色空間軸がT,T,Tであった場合、予め登録されているRの色空間軸と変換後の色空間軸Tとのなす角に応じて、重み係数Kを調整する。
更に、重み決定部202は、主要色の色空間軸Tと、主要色でない色空間軸T,Tとで重み係数Kの調整量を異ならせてもよい。例えば、主要色である色空間軸Tについては重み係数Kを小さめに設定し、それ以外の色空間軸T,Tについては重み係数Kを大きめに設定する。また、逆に、主要色である色空間軸Tについては重み係数Kを大きめに設定し、それ以外の色空間軸T,Tについては重み係数Kを小さめに設定することとしてもよい。
【0024】
フレーム合成部203は、重み決定部202で決定された重み係数Kを用いて、第1色変換信号及び第2色変換信号とを合成することでノイズ低減を行い、ノイズ低減後信号を出力する。ノイズ低減後信号は、例えば、以下の(3)式で与えられる。
ノイズ低減後信号=(1−K)*第1色変換信号+K*第2色変換信号 (3)
【0025】
このようにして、ノイズ低減処理が施された映像信号は、ノイズ低減後信号として色空間逆変換部107及びバッファ104に転送される。バッファ104に格納されたノイズ低減後信号は、1フレーム前の映像信号として、上記第2色空間変換部106並びに色空間変換方法決定部105において用いられることとなる。
【0026】
色空間逆変換部107は、ノイズ低減部103からのノイズ低減信号に対して、色空間変換方法決定部105で決定された色逆変換関数を用いて逆色変換処理を行う。これにより、ノイズ低減後信号は、R、G、Bの3色の色空間軸で定義される色空間の信号に変換される。処理後の映像信号は、出力部108へ転送され、メモリカードなどの記録媒体に映像信号が記録保存される。
【0027】
色空間変換方法決定部105は、バッファ104に格納されているノイズ低減後信号を元に、第1色空間変換部102で用いられる第1色変換関数、第2色空間変換部106で用いられる第2色変換関数、色空間逆変換部107で用いられる逆色変換関数を決定し、これらの変換関数を各部へ転送する。
【0028】
以下、色空間変換方法決定部105の詳細について図を参照して説明する。
図4は、色空間変換方法決定部105の概略構成を示した図である。図4に示されるように、色空間変換方法決定部105は、主要色決定部301、直交軸決定部302、及び変換関数決定部303を備えている。
【0029】
主要色決定部301は、図5に示されるように、主成分分析部401を備えている。主成分分析部401は、バッファ104から転送される1フレーム前の映像信号に対して公知の主成分分析を行い、求められた主成分を最も重要な色(主要色)として決定する。なお、主成分分析部401により主要色を決定する方法の外、例えば、外部I/F部110を介してユーザが主要色を指定可能な構成としてもよい。
直交軸決定部302は、主要色決定部301で決定された主要色と色空間上で直交する任意の2つの色空間軸を決定する。なお、2つの色空間軸も互いに直交している。
【0030】
変換関数決定部303は、主要色決定部301により決定された主要色の色空間軸と直交軸決定部302で決定された2つの色空間軸とに基づいて、上記第1色空間変換部102が用いる第1色変換関数C及び第2色空間変換部106が用いる第2色変換関数D、及び色空間逆変換部107が用いる逆色空間関数を算出する。
【0031】
まず、変換関数決定部303は第2色変換関数Dを求める。この第2色変換関数D(上記(2)式参照)は、例えば、主要色決定部301及び直交軸決定部302によって決定された主要色の色空間軸及び主要色に直交する2つの色空間軸で特定される色空間Ti−1に関して、共分散行列を無相関にすることで求める。
【0032】
続いて、変換関数決定部303は、決定した第2色変換関数Dを以下の(4)式に代入することで、第1色変換関数Cを求める。
【数3】

【0033】
ここで、iはフレーム番号を示している。
なお、第1色変換関数Cは、(4)式からわかるように帰納的に決定される。従って、変換関数決定部303は、算出したCを記録しておき、次のフレームi+1の色変換関数の算出時にCi+1=Di+1+Cを算出することで、第1色空間変換部102で用いる第1色変換関数を容易に求めることができる。
変換関数決定部303は、第1色変換関数Cを第1色空間変換部102に、第2色変換関数Dを第2色空間変換部106に転送する。更に、変換関数決定部303は、上記第1色変換関数Cの逆行列を求め、これを逆色変換関数として色空間逆変換部107に転送する。
【0034】
次に、本実施形態に係る映像信号処理装置の作用について簡単に説明する。
まず、入力部101から入力された映像信号は、第1色空間変換部102に転送される。このとき、1フレーム目の場合には、バッファ104にはノイズ低減後信号が格納されていない状態であるので、第1色空間変換部102において色変換は行われず、そのままの色空間、つまり、RGBの3色空間軸で定義される映像信号のまま、ノイズ低減部103に転送される。ノイズ低減部103においてもノイズ低減処理が行われず、そのままの状態でバッファ104及び色空間逆変換部107に出力される。
【0035】
バッファ104に格納された1フレーム目の映像信号は色空間変換方法決定部105に読み出される。色空間変換方法決定部105においては、図4に示される主要色決定部301において、1フレーム目の映像信号の主要色が決定され、直交軸決定部302において、主要色の色空間軸に直交する2つの直交色空間軸が決定される。そして、変換関数決定部303において、1フレーム目の映像信号の色空間を主要色の色空間軸等で定義される色空間に変換するための第2色変換関数Dが求められ、この第2色変換関数Dを用いて第1色変換関数C並びに逆色変換関数が求められる。これらの色変換関数は、各部へ転送されて用いられる。
【0036】
第1色空間変換部102は、入力部101を介して入力された2フレーム目のRGB映像信号を、色空間変換方法決定部105から与えられた第1色変換関数Cを用いて色変換し、第1色変換信号をノイズ低減部103に転送する。また、第2色空間変換部106は、バッファ104に格納されている1フレーム目の映像信号を第2色変換関数Dを用いて色変換し、第2色変換信号をノイズ低減部103に転送する。これにより、ノイズ低減部103には、1フレーム目の主要色によって定義される色空間に変換された1フレーム目の映像信号と2フレーム目の映像信号とが入力されることとなる。
【0037】
ノイズ低減部103では、図2に示される動き検出部201において第1色変換信号と第2色変換信号との動きの差が検出され、重み決定部202において動き量と色空間軸とに基づいて1フレーム目の映像信号と2フレーム目の映像信号とを合成するための重み係数Kが決定され、フレーム合成部203において、第1色変換信号と第2色変換信号とが重み係数Kで合成されてノイズ低減後信号が生成される。ノイズ低減後信号は、バッファ104及び色空間逆変換部107に転送される。
【0038】
色空間逆変換部107では、ノイズ低減後信号が逆色変換関数を用いて色変換処理されることにより、元のRGB色空間軸の映像信号に戻され、出力部108を介してメモリカード等の記録媒体等に記録保存される。また、バッファ104に転送されたノイズ低減後信号は、色空間変換方法決定部105及び第2色空間変換部106に読み出されることにより、3フレーム目のノイズ低減処理に用いられることとなる。
【0039】
そして、上述した処理が繰り返し行われることにより、入力部101を介して入力される映像信号は、フレーム毎にノイズ低減処理が実行され、出力部105を介して出力されることとなる。
【0040】
以上、説明してきたように、本実施形態に係る映像信号処理装置によれば、入力されたカラー映像信号をフレーム毎に適切な色空間に変換してノイズ低減を行うので、例えば、主要な色と、それ以外の色とでそれぞれ個別のノイズ低減量を用いてノイズ低減処理を行うことが可能となる。この結果、高品位な映像信号を得ることができる。
【0041】
なお、上述したノイズ低減方法に代えて、公知のノイズ低減方法を用いることもできる。例えば、平滑化フィルタを用いる場合、ノイズ低減部103は、動き量と色空間軸とに基づいて、平滑化フィルタの係数やサイズなどの特性を変更することにより、ノイズの低減量を変更する。
【0042】
また、本実施形態に係る映像信号処理装置によれば、動き量に基づいて重み係数Kが決定されるので、シーンの変化を考慮したノイズ低減を行うことが可能となる。更に、予め登録されている重要視する色と、1フレーム前の映像信号において決定された主要色との違いに応じて重み係数Kが調整されるので、より主観的に好ましい映像信号を得ることが可能となる。
【0043】
なお、本実施形態では、入出力信号をRGB映像信号としたが、それに限定するものではなく、例えば、YCbCr等の他の信号としてもよい。
【0044】
また、上述した実施形態では、映像信号処理装置としてハードウェアによる処理を前提としていたが、このような構成に限定される必要はない。例えば、別途ソフトウェアにて処理する構成も可能である。この場合、映像信号処理装置は、CPU、RAM等の主記憶装置、上記処理の全て或いは一部を実現させるためのプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、CPUが上記記録媒体に記録されているプログラムを読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、上述の映像信号処理装置と同様の処理を実現させる。
【0045】
以下、CPUが映像信号処理プログラムを実行することにより実現される映像信号処理方法の処理手順について図6を参照して説明する。
まず、ステップSA1において、カラー映像信号およびヘッダ情報が入力されると、ステップSA2において、入力されたカラー映像信号が第1フレームか否かを判定する。第1フレームの場合には、ステップSA11に移行し、当該第1フレームの映像信号をバッファに格納する一方、この映像信号を出力する。
【0046】
次に、ステップSA2において、2フレーム目以降のカラー映像信号であると判定した場合には、ステップSA3において、バッファに格納されている1フレーム前の映像信号に基づいて主要色の色空間軸を決定し、続くステップSA4において、主要色の色空間軸に直交する直交色空間軸を決定する。そして、ステップSA5において、第1色変換関数、第2色変換関数、逆変換関数を算出する。
【0047】
続いて、ステップSA6において、第1色変換関数を用いて、現映像信号の色空間を変換して第1色変換信号を生成し、ステップSA7において、第2色変換関数を用いて、バッファに格納されている1フレーム前の映像信号の色空間を変換して第2色変換信号を生成する。
【0048】
続いて、ステップSA8において、第1色変換信号及び第2色変換信号を用いて動き検出を行い、ステップSA9において、動き検出量及び色空間軸の情報に基づいて合成の重み係数を決定する。そして、ステップSA10において、ステップSA9で決定した重み係数を用いて第1色変換信号及び第2色変換信号を合成し、ノイズ低減後信号を生成する。ステップSA11では、ノイズ低減後信号をバッファに格納するとともに、その一方で、このノイズ低減後信号を逆変換することで元の色空間の映像信号に戻した後、出力する。
【0049】
次に、ステップSA12では、所定のフレーム数を処理したか否かを判定し、処理していなければステップSA1に戻り上述した処理を繰り返し行い、処理していれば当該処理を終了する。
【0050】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態について、図を用いて説明する。
図7は本実施形態に係る映像信号処理装置の概略構成を示した図である。本実施形態に係る映像信号処理装置は、入力されたカラー映像信号に対して信号処理を行う映像信号処理装置であって、カラー映像信号に対して色空間の変換方法を決定する色空間変換方法決定部503と、色空間変換方法決定部503で決定された色空間変換方法を用いて、カラー映像信号を変換して色変換信号を生成する色空間変換部504と、色空間変換方法と色変換信号に基づいてノイズ低減処理を行い、ノイズ低減後信号を生成するノイズ低減部505と、色空間変換方法に基づいてノイズ低減後信号を変換する色空間逆変換部506とを主な構成要素として備えている。
【0051】
このような構成を備える映像信号処理装置において、入力部501を介して入力された映像信号は、バッファ502に格納される。色空間変換方法決定部503は、上述した第1の実施形態と同様の構成を備えており、バッファ502に格納された現フレームの映像信号を読み出し、この映像信号における主要色の色空間軸及び主要色の色空間軸に直交する2つの直交色空間軸を決定するとともに、これらの色空間軸で定義される色空間に現フレームの映像信号を変換するための色変換関数を求める。この色変換関数の求め方は、第1の実施形態に係る第2色変換関数の求め方と同様である。また、色空間変換方法決定部503は、色変換関数の逆行列を算出し、逆色変換関数とする。
【0052】
色空間変換方法決定部503により求められた色変換関数は現フレームの映像信号とともに色空間変換部504に転送され、また、逆変換関数の情報は色空間逆変換部506に転送される。
色空間変換部504は、色変換関数を用いて現フレームの映像信号の色空間を変換し、変換後の映像信号をノイズ低減部505に転送する。
ノイズ低減部505は、色空間変換部504から転送されてきた色空間変換後の映像信号に基づいてノイズ低減を行う。例えば、ノイズ低減部505は、色空間の情報を用いて、平滑化フィルタの係数やサイズなどの特性を変更することにより、ノイズの低減量を変更する。また、このとき、予め登録されている主要色とそれ以外の色とでノイズ低減量を異ならせることとしてもよい。
なお、上述したノイズ低減方法に代えて、例えば、外部I/F部110を介してユーザによって指定された公知のノイズ低減方法を用いることとしてもよい。ノイズ低減後の映像信号は、色空間逆変換部506に転送される。
【0053】
色空間逆変換部506は、色空間変換方法決定部503から与えられた逆色変換関数を用いて、ノイズ低減部505からの映像信号に対して色空間の変換を行う。これにより、ノイズ低減後の映像信号の色空間は、入力時における色空間に戻される。色空間変換後の映像信号は、出力部507へ転送され、メモリカードなどの記録媒体に記録保存される。
【0054】
以上、説明してきたように、本実施形態に係る映像信号処理装置によれば、色空間変換方法決定部503にて現フレームのカラー映像信号に基づいて主要色の色空間が決定され、この色空間への色変換関数が求められる。色空間変換部504では、色空間変換決定部503によって求められた色変換関数を用いて現フレームの映像信号の色空間が変換され、変換後の映像信号に基づいてノイズ低減処理が行われる。このように、カラー映像信号を適切な色空間に変換し、主要色とそれ以外の色とでノイズ低減量を異ならせるので、色に応じて適切なノイズ低減処理を行うことが可能となる。これにより、所望の品質の画像を得ることが可能となる。
【0055】
なお、上記実施形態では、ハードウェアによる処理を前提としていたが、このような構成に限定される必要はない。別途ソフトウェアにて処理する構成も可能である。
図8は本実施形態に係る映像信号処理プログラムの処理手順を示したフローチャートである。
まず、ステップSB1において、カラー映像信号およびヘッダ情報が入力されると、ステップSB2において、この映像信号の色空間が決定され、ステップSB3において映像信号の色空間が変換される。ステップSB4では、色空間変換後の映像信号に基づいてノイズ低減処理が行われ、ステップSB5においてノイズ低減後の映像信号が逆色変換されることにより、入力時の映像信号の色空間に戻され、出力される。
【0056】
ステップSB6では、所定のフレーム数を処理したか否かを判定し、処理していなければステップSB1に戻り上述した処理を繰り返し行い、処理していれば当該処理を終了する。
【0057】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る映像信号処理装置の概略構成を示した図である。
【図2】図1に示したノイズ低減部の概略構成を示した図である。
【図3】色空間の変換処理について説明するための図である。
【図4】図1に示した色空間変換方法決定部の概略構成を示した図である。
【図5】図3に示した主要色決定部の概略構成を示した図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る映像信号処理プログラムのフローチャートを示した図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る映像信号処理装置の概略構成を示した図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る映像信号処理プログラムのグローチャートを示した図である。
【符号の説明】
【0059】
101,501 入力部
102 第1色空間変換部
103,505 ノイズ低減部
104、502 バッファ
105,503 色空間変換方法決定部
106 第2色空間変換部
107,506 色空間逆変換部
108,507 出力部
109 制御部
110 外部I/F部
201 動き検出部
202 重み決定部
203 フレーム合成部
301 主要色決定部
302 直交軸決定部
303 変換関数決定部
401 主成分分析部
504 色空間変換部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力されたカラー映像信号に対して1フレーム毎に信号処理を行う映像信号処理装置であって、
前記カラー映像信号に対して色空間変換を行うことで第1色変換信号を生成する第1色空間変換部と、
前記第1色空間変換部での処理の対象となるフレームよりも前のフレームである過去フレームのカラー映像信号に対して色空間変換を行うことで第2色変換信号を生成する第2色空間変換部と、
前記第1色空間変換部と前記第2色空間変換部とで行う色空間変換方法を決定する色空間変換方法決定部と、
前記第1色変換信号と前記第2色変換信号を元にノイズ低減処理を行うことでノイズ低減後信号を生成するノイズ低減部と、
前記色空間変換方法決定部で決定された色空間変換方法に基づいて前記ノイズ低減後信号を逆変換する色空間逆変換部と
を有する映像信号処理装置。
【請求項2】
前記色空間変換方法決定部は、
前記過去フレームのカラー映像信号から重要な主要色を決定する主要色決定部と、
前記主要色決定部で決定した主要色を表す色空間軸と直交する色空間軸を決定する直交軸決定部と、
前記主要色決定部で決定した主要色を表す色空間軸と前記直交軸決定部で決定した色空間軸とからなる色空間へ、前記カラー映像信号を変換するための関数を計算する変換関数決定部と
を有する請求項1に記載の映像信号処理装置。
【請求項3】
前記主要色決定部は、前記過去フレームのカラー映像信号に対して主成分分析を行い、前記主要色を決定する主成分分析部を有する請求項2に記載の映像信号処理装置。
【請求項4】
前記ノイズ低減部は、
前記第1色変換信号と前記第2色変換信号との差により動き量を検出する動き検出部と、
前記動き量と前記色空間変換方法決定部で決定された前記色空間軸とに基づいて前記第1色変換信号と前記第2色変換信号とを合成する際の重み係数を決定する重み決定部と、
前記重み決定部により決定された重み係数を用いて前記第1色変換信号と前記第2色変換信号を合成するフレーム合成部と
を有する請求項2または請求項3に記載の映像信号処理装置。
【請求項5】
前記重み決定部は、前記主要色決定部で決定された前記主要色を表す色空間軸と予め設定されている重要視する色空間軸とのなす角に応じて、前記重み係数を決定する請求項4に記載の映像信号処理装置。
【請求項6】
前記ノイズ低減部は、前記主要色決定部で決定された前記主要色を表す色空間軸と予め設定されている重要視する色空間軸とのなす角に応じて、前記ノイズ低減処理の度合いを決定する請求項2に記載の映像信号処理装置。
【請求項7】
入力されたカラー映像信号に対して信号処理を行う映像信号処理装置であって、
前記カラー映像信号に対して色空間の変換方法を決定する色空間変換方法決定部と、
前記色空間変換方法決定部で決定された色空間変換方法を用いて、前記カラー映像信号を変換して色変換信号を生成する色空間変換部と、
前記色空間変換方法と前記色変換信号に基づいてノイズ低減処理を行い、ノイズ低減後信号を生成するノイズ低減部と、
前記色空間変換方法に基づいて前記ノイズ低減後信号を逆変換する色空間逆変換部と
を有する映像信号処理装置。
【請求項8】
前記色空間変換方法決定部は、
前記カラー映像信号から重要な主要色を決定する主要色決定部と、
前記主要色決定部で決定した色を表す色空間軸と直交する色空間軸を決定する直交軸決定部と、
前記主要色決定部で決定した色を表す色空間軸と前記直交軸決定部で決定した色空間軸とからなる色空間へ、前記カラー映像信号を変換するための関数を計算する変換関数決定部とを有し、
前記関数によって前記色空間変換方法を決定する請求項7に記載の映像信号処理装置。
【請求項9】
前記主要色決定部は、前記カラー映像信号に対して主成分分析を行い、前記主要色の色空間軸を決定する主成分分析部を有する請求項8に記載の映像信号処理装置。
【請求項10】
前記ノイズ低減部は、前記主要色決定部で決定された主要色を表す色空間軸と予め設定されている重要視する色空間軸とのなす角に応じて、ノイズ低減の度合いを変更する請求項9に記載の映像信号処理装置。
【請求項11】
入力されたカラー映像信号に対して1フレーム毎に信号処理を行うための映像信号処理プログラムであって、
前記カラー映像信号に対して色空間変換を行うことで第1色変換信号を生成する第1色空間変換ステップと、
前記第1色空間変換ステップでの処理の対象となるフレームよりも前のフレームである過去フレームのカラー映像信号に対して色空間変換を行うことで第2色変換信号を生成する第2色空間変換ステップと、
前記第1色空間変換ステップと前記第2色空間変換ステップとで行う色空間変換方法を決定する色空間変換方法決定ステップと、
前記第1色変換信号と前記第2色変換信号を元にノイズ低減処理を行うことでノイズ低減後信号を生成するノイズ低減ステップと、
前記色空間変換方法決定ステップで決定された色空間変換方法に基づいて前記ノイズ低減後信号を逆変換する色空間逆変換ステップと
をコンピュータに実行させる映像信号処理プログラム。
【請求項12】
前記色空間変換方法決定ステップは、
前記過去フレームの映像信号から重要な主要色を決定する主要色決定ステップと、
前記主要色決定ステップで決定した主要色を表す色空間軸と直交する色空間軸を決定する直交軸決定ステップと、
前記主要色決定ステップで決定した主要色を表す色空間軸と前記直交軸決定ステップで決定した色空間軸とからなる色空間へ、前記カラー映像信号を変換するための関数を計算する変換関数決定ステップと
を含む請求項11に記載の映像信号処理プログラム。
【請求項13】
前記主要色決定ステップは、前記過去フレームのカラー映像信号に対して主成分分析を行い、前記主要色を決定する主成分分析ステップを含む請求項12に記載の映像信号処理プログラム。
【請求項14】
前記ノイズ低減ステップは、
前記第1色変換信号と前記第2色変換信号との差により動き量を検出する動き検出ステップと、
前記動き量と前記色空間方法決定ステップで決定された前記色空間軸とに基づいて前記第1色変換信号と前記第2色変換信号とを合成する際の重み係数を決定する重み係数決定ステップと、
前記重み係数決定ステップにより決定された重み係数を用いて前記第1色変換信号と前記第2色変換信号を合成するフレーム合成ステップと
を含む請求項12または請求項13に記載の映像信号処理プログラム。
【請求項15】
入力されたカラー映像信号に対して信号処理を行うための映像信号処理プログラムであって、
前記カラー映像信号に対して色空間の変換方法を決定する色空間変換方法決定ステップと、
前記色空間変換方法決定ステップで決定された色空間変換方法を用いて、前記カラー映像信号を変換して色変換信号を生成する色空間変換ステップと、
前記色空間変換方法と前記色変換信号に基づいてノイズ低減処理を行い、ノイズ低減後信号を生成するノイズ低減ステップと、
前記色空間変換方法に基づいて前記ノイズ低減後信号を逆変換する色空間逆変換ステップと
をコンピュータに実行させる映像信号処理プログラム。
【請求項16】
前記色空間変換方法決定ステップは、
前記カラー映像信号から重要な主要色を決定する主要色決定ステップと、
前記主要色決定ステップで決定した色を表す色空間軸と直交する色空間軸を決定する直交軸決定ステップと、
前記主要色決定ステップで決定した色を表す色空間軸と前記直交軸決定ステップで決定した色空間軸とからなる色空間へ、前記カラー映像信号を変換するための関数を計算する変換関数決定ステップとを含み、
前記関数によって前記色空間変換方法を決定する請求項15に記載の映像信号処理プログラム。
【請求項17】
前記主要色決定ステップは、前記カラー映像信号に対して主成分分析を行い、前記主要色の色空間軸を決定する主成分分析ステップを含む請求項16に記載の映像信号処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−124489(P2009−124489A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−296890(P2007−296890)
【出願日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】