説明

映像表示スクリーン、映像表示システム、および撮影装置検出方法

【課題】盗撮防止用の妨害画像としての非可視光を含む映像から該非可視光を除去して盗撮しようとする者を容易に検出する技術を提供する。
【解決手段】映像表示システム1は、映像を表示する映像表示部と、映像と共に、可視光以外の光を観察者に対して照射する非可視光発光部と、観察者が有する撮影装置から反射された非可視光を受けて、フレーム画像データを生成する非可視光受光部と、前記画像データを処理することにより、前記撮影装置の存在を検出する画像処理部143とを備える。画像処理部143は、背景画像を表すリファレンス画像データを参照し、前記フレーム画像データから前記背景画像の成分を除去する背景削除部150と、背景削除部150の処理後のフレーム画像データを、複数フレームにわたって平均化処理を行うことにより、フリッカを除去するフリッカ除去部151とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーンや画像表示パネルに表示された映画などの画像コンテンツをビデオカメラなどの画像記録装置で盗撮する行為を防ぐための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタル画像表示装置やデジタルカメラ等の撮影装置の普及および高画質化が進み、低コストで高画質のコンテンツを視聴することが可能となっている。しかし一方で、スクリーンやディスプレイに表示された画像、動画像などのコンテンツをデジタルビデオカメラ等の撮影装置で撮影し、撮影したコンテンツを違法に流通させる行為が問題視されている。このように不正に撮影された海賊版DVDの流通は、著作権の保護に反するとともに、経済的な損失も非常に大きいため、対策が急がれている。
【0003】
この問題の対策として、電子透かし(watermark)により、表示前の画像コンテンツ(オリジナルの画像コンテンツ)に施設ID(上映されている施設の情報)や機器ID(上映している機器の情報)などを埋め込み、盗撮され流通された後の画像コンテンツ(盗撮された画像コンテンツ)から当該IDを検出することで、盗撮が行われた施設や機器を特定する方法が提案されている。
【0004】
また、上記の方法とは異なる手段で盗撮行為を防止する試みとして、映像表示とともに赤外線をスクリーンから観客席に対して照射するという方法が提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。この方法は、赤外線は、人間の眼には認識されないが、CCD、CMOSイメージセンサなどを備えたコンテンツ記録装置(具体的には、例えば、ビデオカメラ)では可視光と同様に検出されるという、人間の視覚特性とカメラの撮像特性のとの違いを利用したものである。この技術によれば、映像を見ている観察者には、映像表示のみが視認される一方、盗撮用のカメラには、赤外線が映像を妨害する画像として記録されることになる。図9Aには、映像表示とともに赤外線をスクリーンから観客席に対して照射した場合に、その映像をカメラで撮影したときに得られる画像の一例を示す。この図に示すように、カメラで撮影した画像には、赤外線が白い妨害画像Aとして含まれることになる。
【0005】
このように、上記の方法によれば、盗撮された映像を劣化させ、盗撮画像の利用価値をなくすことができるため、映画館などでの盗撮を防止する手段として効果的な方法であると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−176195号公報
【特許文献2】特開2002−341449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の赤外線を使用した盗撮行為の妨害方法では、例えば、赤外線除去フィルタなどのように赤外波長の光を透過させないフィルタをカメラの全面に配置することで、映像を妨害する効果が著しく低下してしまうという問題がある。上記のようなフィルタを使用したカメラで赤外線を含む表示映像を撮影した場合、得られる映像には赤外線に起因した映像がほとんど含まれず、盗撮画像の利用価値をなくすことができない。図9Bには、赤外線が妨害画像として含まれる映像を、赤外線除去フィルタが取り付けられたカメラで撮影した場合に得られる画像の一例を示す。この図に示すように、赤外線除去フィルタの作用によって、赤外線による妨害画像が取り除かれ、撮影された画像がコンテンツとしての価値を保ち続けることになる。
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、非可視光を含む映像から該非可視光を除去して盗撮しようとする者を容易に検出する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にかかる映像表示スクリーンは、上記の課題を解決するために、映像を表示する映像表示部と、映像とともに可視光以外の光を観察者に対して照射する非可視光発光部と、上記観察者が有する撮影装置から反射された上記可視光以外の光を受けて、フレーム画像データを生成する非可視光受光部と、前記画像データを処理することにより、前記撮影装置の存在を検出する画像処理部とを備え、前記画像処理部が、背景画像を表すリファレンス画像データを参照し、前記フレーム画像データから前記背景画像の成分を除去する背景削除部と、前記背景削除部の処理後のフレーム画像データを、複数フレームにわたって平均化処理を行うことにより、フリッカを除去するフリッカ除去部とを備える。
【0010】
ここで、可視光以外の光とは、380nmから780nmまでの可視光波長帯に含まれない光のことであり、具体的には、赤外光または紫外光のことである。このような可視光以外の光は、人間の眼には認識されないが、CCD、CMOSイメージセンサなどを備えた撮影装置(具体的には、例えば、ビデオカメラ)では可視光と同様に検出される。
【0011】
上記の構成によれば、映像表示部に映像が表示されている期間中に、人間の眼には認識されないが、ビデオカメラなどの撮影装置には可視画像として記録される可視光以外の光を映像とともに観察者に対して照射することができる。これにより、観察者が盗撮用のビデオカメラを所持していた場合には、撮影された画像コンテンツ中には、可視光以外の光がオリジナルの映像を妨害する画像(盗撮防止信号)として付加されることになり、盗撮された画像の表示品質を劣化させることができる。なお、発光部から照射される光は可視光ではないので、人間の目には、オリジナルの映像のみが映像表示部に表示されているように見える。
【0012】
また、フリッカ除去部において複数フレームにわたって平均化処理を行う前に、背景削除部において、フレーム画像データから背景画像の成分を除去することにより、平均化処理によって反射物の像が複数フレームにわたってフレーム画像データへ写り込むことを効果的に防止できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、映像の表示品質を落とすことなく、観察者が有する撮影装置によって盗撮された映像の表示品質を劣化させることができる。さらに、観察者が映像表示スクリーンから照射される非可視光を除去しながら盗撮を試みた場合には、観察者の撮影装置から反射される非可視光を容易に検知することができる。したがって、盗撮行為を抑制するという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態にかかる盗撮防止用映像表示システムの機能構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施の形態にかかる盗撮防止用映像表示システムの概略構成を示す模式図である。
【図3】図1に示すシステムにおいて、盗撮用のカメラに妨害画像を加える方法、および、盗撮用のカメラを検知する方法を説明するための模式図である。
【図4】本発明の第1の実施形態にかかる盗撮防止用映像表示システム内の赤外線検知部に備えられた画像処理部の機能構成を示すブロック図である。
【図5】図4に示す画像処理部内において行われる画像処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】第1の実施形態の変形例における、画像処理部の処理対象フレームを示す模式図である。
【図7A】本発明の第2の実施形態において、背景削除部が係数λを決定するために参照する画素領域の配置の一例を示す模式図である。
【図7B】本発明の第2の実施形態において、背景削除部が係数λを決定するために参照する画素領域の配置の一例を示す模式図である。
【図7C】本発明の第2の実施形態において、背景削除部が係数λを決定するために参照する画素領域の配置の一例を示す模式図である。
【図7D】本発明の第2の実施形態において、背景削除部が係数λを決定するために参照する画素領域の配置の一例を示す模式図である。
【図7E】本発明の第2の実施形態において、背景削除部が係数λを決定するために参照する画素領域の配置の一例を示す模式図である。
【図8】第3の実施形態にかかる映像表示システムにおけるスクリーンの概略構成を示す背面図である。
【図9A】映像表示とともに赤外線をスクリーンから観客席に対して照射した場合に、その映像をカメラで撮影したときに得られる画像の一例を示す模式図である。
【図9B】赤外線が妨害画像として含まれる映像を、赤外線除去フィルタが取り付けられたカメラで撮影した場合に得られる画像の一例を示す模式図である。
【図10】図4に示した構成の比較例としての画像処理部の機能構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態にかかる映像表示スクリーンは、映像を表示する映像表示部と、映像とともに可視光以外の光を観察者に対して照射する非可視光発光部と、上記観察者が有する撮影装置から反射された上記可視光以外の光を受けて、フレーム画像データを生成する非可視光受光部と、前記画像データを処理することにより、前記撮影装置の存在を検出する画像処理部とを備え、前記画像処理部が、背景画像を表すリファレンス画像データを参照し、前記フレーム画像データから前記背景画像の成分を除去する背景削除部と、前記背景削除部の処理後のフレーム画像データを、複数フレームにわたって平均化処理を行うことにより、フリッカを除去するフリッカ除去部とを備えた構成である(第1の構成)。
【0016】
映像とともにその映像を妨害するための非可視光が観察者に対して照射されるような映像表示スクリーンを備えた劇場において盗撮を試みる場合には、盗撮者は、映像を妨害するための非可視光(盗撮防止信号)を除去するために、赤外線反射フィルタまたは赤外線吸収フィルタなどの非可視光除去フィルタ(赤外線除去フィルタ)をカメラの前面に設けることが想定される。上記非可視光除去フィルタは、多くの非可視光を反射する。そのため、上記非可視光検知部には、盗撮用の撮影装置からの反射光が比較的強い強度で検知される。したがって、上記非可視光検知部が設けられていることで、撮影装置の存在を容易に確認することができる。この非可視光の反射光の光源は盗撮防止信号以外の補助用のものでもよい。
【0017】
このように、第1の構成にかかる映像表示スクリーンによれば、映像表示部に表示される映像の表示品質を落とすことなく、観察者が有する撮影装置によって盗撮された映像の表示品質を劣化させることができる。さらに、観察者が映像表示スクリーンから照射される非可視光を除去しながら盗撮を試みた場合には、非可視光検知部によって、観察者の撮影装置から反射される非可視光を容易に検知することができる。したがって、盗撮行為を防止する効果をより向上させることができる。
【0018】
また、前記第1の構成にかかる映像表示スクリーンにおいては、画像処理部が、背景画像を表すリファレンス画像データを参照し、前記フレーム画像データから前記背景画像の成分を除去する背景削除部と、前記背景削除部の処理後のフレーム画像データを、複数フレームにわたって平均化処理を行うことにより、フリッカを除去するフリッカ除去部とを備えたことを特徴とする。
【0019】
このように、フリッカ除去部において複数フレームにわたって平均化処理を行う前に、背景削除部において、フレーム画像データから背景画像の成分を除去することにより、平均化処理によって反射物の像が複数フレームにわたってフレーム画像データへ写り込むことを効果的に防止できる。
【0020】
なお、本実施形態の映像表示スクリーンにおいて、上記可視光以外の光が赤外線であり、上記非可視光検知部が、赤外線を検知する赤外線検知部であってもよい。可視光以外の光が赤外線であれば、人体に悪影響を与えることなく、人間には視認不可能であり、かつ、ビデオカメラなどの撮影装置には映像を妨害する画像として感知させることができる。また、赤外線検知部として、例えば、赤外線カメラ、フォトダイオードなどを用いることで、ビデオカメラなどの撮影装置からの反射光を容易に検出することができる。
【0021】
本実施形態の映像表示スクリーンにおいて、上記赤外線検知部は、赤外線カメラであってもよい。赤外線検知部が赤外線カメラであることにより、検知した赤外線の強度に応じた画像を得ることができる。なお、ここでいう赤外線カメラとは、少なくとも赤外領域の光を検知することが可能なもののことを意味する。すなわち、赤外線カメラには、赤外領域の光のみを検知することができるもの以外に、赤外領域+可視領域の光を検知して画像データを形成することができるものなども含まれる。
【0022】
本実施形態の映像表示スクリーンにおいて、上記赤外線検知部は、赤外線を遮断する部材からの反射光を検知するものであってもよい。ここで、赤外線を遮断する部材とは、赤外線の透過を防ぐ機能を有する部材である。この赤外線を遮断する部材は、上記観察者が有する撮影装置(盗撮用のカメラ)の前面に設けることで、赤外線を含む映像表示を行う映像表示スクリーンの映像から、赤外線を除去して映像のみを撮影することができる。
【0023】
このような赤外線を遮断する部材として具体的には、赤外線反射フィルタまたは赤外線吸収フィルタなどが挙げられる。このようなフィルタを盗撮用のカメラの前面に設けていると、赤外線を多く反射するため、上記赤外線検知部は、閾値以上の強度の赤外光を受光した場合に反射光ありと判定することで、上記の赤外線を遮断する部材からの反射光を選択的に検知することができる。
【0024】
前記第1の構成において、フレーム画像データをXt(tはフレーム番号)、リファレンス画像データをY、係数をλとした場合、前記背景削除部が、(Xt−λY)の絶対値総和が最小となるように係数λを決定し、決定された係数λを用いて(Xt−λY)を算出する構成とすることが好ましい(第2の構成)。
【0025】
前記第2の構成において、前記背景削除部が、下記の数式(数1)、(数2)、および(数3)を満たす係数λを用いて、下記の数式(数4)により(Xt−λY)を算出することがさらに好ましい(第3の構成)。
【0026】
【数1】

【0027】
【数2】

【0028】
【数3】

【0029】
【数4】

【0030】
前記第2または第3の構成において、前記背景削除部が、前記フレーム画像データの一部の領域内の画素のみを用いて係数λを決定することがさらに好ましい(第4の構成)。
【0031】
前記第1〜第4のいずれかの構成において、前記画像処理部が、時間的に連続する複数フレームのうち一部のフレームのフレーム画像データのみを処理対象とすることが好ましい(第5の構成)。
【0032】
前記第1〜第5のいずれかの構成において、前記画像処理部が、前記フリッカ除去部から出力されたフレーム画像データから、前記非可視光の反射物の像のうち動く成分を検出する動き検出部をさらに備えた構成とすることが好ましい(第6の構成)。
【0033】
前記第1〜第6のいずれかの構成において、前記非可視光発光部は、前記映像表示部に映像が表示されている期間中、点灯と消灯とを繰り返すことが好ましい(第7の構成)。
【0034】
上記の構成によれば、映像表示部から可視光以外の光が点滅しながら発せられる。これにより、非可視光発光部からの光が、ビデオカメラなどの撮影装置で撮影した画像中に点滅しながら入り込むことになる。このように、本来の映像とは異なる光が点滅しながら表示されると、人間の視角にはより目立って認識される。したがって、上記の構成によれば、撮影画像の表示品質をより大きく低下させることができる。
【0035】
前記第1〜第6のいずれかの構成において、前記画像処理部が、前記フレーム画像データの画素毎に閾値に応じた2値化処理を行う2値化処理部をさらに備えた構成とすることが好ましい(第8の構成)。この構成によれば、盗撮用の撮影装置からの反射光と、それ以外の物からの反射光とをより確実に識別することができる。
【0036】
前記第8の構成において、前記画像処理部が、前記2値化処理部によって前記閾値以上の値に2値化処理された画素が集合している領域の面積を計測する面積計測部と、該面積計測部によって前記画素が集合している領域が所定の面積以上であるか否かを判別し、所定の面積以上の場合に、前記撮影装置が存在すると判定する判定部とをさらに有することが好ましい(第9の構成)。この構成によれば、盗撮用の撮影装置とは無関係の劇場内の備品などからの反射光を容易に除去することができる。これにより、赤外線検知部の誤検知を減少させることができる。
【0037】
本発明の一実施形態にかかる映像表示システムは、前記第1〜第9のいずれかの構成にかかる映像表示スクリーンと、デジタル映像信号に基づいて表示画像を生成し、該表示画像を前記映像表示スクリーンに投射する画像形成部とを有する。
【0038】
本発明の一実施形態にかかる撮影装置検出方法は、映像表示スクリーンに表示される映像を撮影するための撮影装置を検出する方法であって、前記映像表示スクリーンに表示される映像とともに、可視光以外の光を観察者に対して照射する工程と、上記観察者が有する撮影装置から反射された上記可視光以外の光を受けて、フレーム画像データを生成する工程と、前記画像データを処理することにより、前記撮影装置の存在を検出する画像処理工程とを含む。前記画像処理工程は、背景画像を表すリファレンス画像データを参照し、前記フレーム画像データから前記背景画像の成分を除去する工程と、前記背景削除処理後のフレーム画像データを、複数フレームにわたって平均化処理を行うことにより、フリッカを除去する工程とを含む。
【0039】
[実施形態]
以下、図面を参照しながら、本発明のより具体的な実施形態について説明する。
【0040】
人間の視覚には赤外線や紫外線などの可視光以外の光は認知されないのに対して、盗撮に用いられるデジタルカメラおよびデジタルビデオカメラなどの撮像素子であるCCDおよびCMOSイメージセンサでは、素子そのものの不安定性から赤外線や紫外線などの可視光領域以外の波長もノイズとして検知される。本願発明者らは、この点に着目し、そして、映画館などのスクリーンにおいて映像を表示しているときに、画像表示面から人間による知覚が困難な波長の光を盗撮防止信号として同時に照射することで、ビデオカメラなどによって盗撮された画像コンテンツ中に上記盗撮防止信号を知覚可能な信号として取り込むことが可能になることを見出した。これにより、ビデオカメラが取り込んだ画像コンテンツを再生した場合には、盗撮防止信号に基づく画像がオリジナルの映像を妨害するノイズとして見えるため、盗撮された画像コンテンツの品質を劣化させることができる。
【0041】
しかしながら、赤外線遮断フィルタなどのバンドパスフィルタをビデオカメラのレンズの前面に配置すると、特定の波長の光(例えば、可視光)のみを選択的に透過し、それ以外の光(例えば、赤外線や紫外線などの可視光以外の光)については遮断することができる。このようなバンドパスフィルタは、市販されており容易に入手可能である。
【0042】
そのため、ビデオカメラに赤外線遮断フィルタなどを取り付けた状態で、上記の盗撮防止信号が含まれる映像表示を撮影した場合には、盗撮防止信号がカメラから遮断され、盗撮防止信号が含まれず品質の劣化が生じない映像が入手されてしまうことになるという問題が生じる。
【0043】
本願発明者らは、この問題を解決するために検討を行ったところ、可視光のみを選択的に透過し、可視光以外の光を遮断する上記のようなフィルタは、金属などの反射率の高い素材よりも可視光以外の光を多く反射する作用があることを確認した。そして、この知見に基づいて、盗撮防止信号が含まれる映像を表示することのできる劇場内において、可視光以外の光を検知するカメラなどを設けることにより、可視光を遮断するフィルタが取り付けられたビデオカメラを容易に検知することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0044】
上記のような技術思想に基づいて実現される本発明の一実施形態について、図面に基づいて説明すると以下の通りである。なお、ここで説明する具体例は本発明の一例であり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0045】
[第1の実施形態]
本実施形態では、デジタル画像コンテンツを基にして、映画館や劇場などにおいて映画などの映像を上映する映像表示システムについて説明する。本実施形態の映像表示システムでは、劇場で上映されている映画などのデジタル画像コンテンツがデジタルビデオカメラなどによって撮影された場合に、撮影されたデジタル画像コンテンツの表示品質を視聴不可能な程度に劣化させることで、盗撮後の画像コンテンツが不正に流通することを防ぐことができる。
【0046】
さらに、本実施形態の映像表示システムには、赤外線除去フィルタなどを取り付けたデジタルビデオカメラから反射された赤外線を検知するための赤外線カメラが備えられており、赤外線による画像品質の劣化を回避しながら盗撮を行おうとするカメラの存在を検知することもできる。
【0047】
つまり、本実施形態の映像表示システムは、盗撮を防止し、かつ、盗撮者を検知するための機能を有している盗撮防止用の映像表示システム(盗撮検知システム)である。
【0048】
(映像表示システムの概略構成について)
図2には、本実施形態にかかる映像表示システム1の概略構成を示す。映像表示システム1(映像表示装置)は、映像再生機201、プロジェクタ202(画像形成部)、スクリーン203(映像表示部)、赤外線発光ユニット204(非可視光発光部、発光制御部)、および赤外線カメラ(非可視光検知部、赤外線検知部)205で構成されている。なお、本実施形態では、スクリーン203、赤外線発光ユニット204、および赤外線カメラ205が、映像表示スクリーンを構成する。
【0049】
映像再生機201は、外部から取り込んだ画像コンテンツを一旦格納した後、画像形成を可能にするためのデコード処理を行い、処理後のデジタル映像信号をプロジェクタ202へ送信する。映像再生機201の構成については、従来公知のデジタル映像再生装置の構成を適用することができる。なお、本実施の形態のような映像表示システム1では、映像再生機201によって再生される画像コンテンツは、複数の画像フレームで構成されている画像コンテンツ(動画コンテンツ)が一般的であるが、本発明では必ずしもこれに限定はされない。つまり、画像コンテンツは、静止画像のコンテンツであってもよい。
【0050】
プロジェクタ202は、映像再生機201から送信されたデジタル映像信号に基づいて、内蔵された表示素子において表示画像を形成し、さらに形成された画像を、内蔵された投射光学系を用いてスクリーン203に投射させる。プロジェクタ202の構成については、従来公知の前面投射型の画像表示装置の構成を適用することができる。
【0051】
スクリーン203は、プロジェクタ202から投射された画像を表示する。
【0052】
赤外線発光ユニット204は、スクリーン203の背面側に配置されており、スクリーン203に映像が表示されている期間中、赤外光を前面側に発光する。ここで、スクリーン203の背面側とは、画像が表示される面(観察者または観客席と対向している面)とは反対側のことであり、スクリーン203の前面側とは、画像が表示される側(観察者がいる側)のことである。
【0053】
赤外線カメラ205は、波長780nm以上の赤外領域の光を主に検知して画像を形成する。赤外線カメラ205は、上記の赤外線発光ユニット204から照射された赤外線のうち、盗撮用のビデオカメラに取り付けられた赤外線除去フィルタなどによって反射された赤外線を検知するために設けられている。
【0054】
なお、赤外線カメラ205は、赤外領域の光のみを検知することができるものに限定されず、ビデオカメラのナイトショット機能のように赤外領域+可視領域の光を検知して画像データを形成することができるものであってもよい。すなわち、ここでいう赤外線カメラ205とは、少なくとも赤外領域の光を検知することが可能なもののことをいう。
【0055】
ここで、スクリーン203および赤外線発光ユニット204の具体的な構成について、以下に説明する。
【0056】
スクリーン203は、映画館において映像を表示する従来の一般的なスクリーンと同様の構成である。なお、従来の一般的なスクリーンは、音響用の多数の小さな穴(直径1mm程度の穴)を有する幕の表面に白い塗料が塗布されて、画像表示面203aが形成されている。
【0057】
また、赤外線発光ユニット204は、上記のようにスクリーン203の背面側に配置されている。さらに、本実施の形態では、赤外線発光ユニット204は、スクリーン203の画像表示領域203aのほぼ中央部に対応する位置に配置されている。図2に示すように、赤外線発光ユニット204には、縦3個×横3個の計9個の赤外光発光領域214が存在する。各赤外光発光領域214には、赤外LEDが設けられている。赤外LEDとしては、例えば、波長780nm付近の波長帯の光を発するもの(これを780nmのLEDとする)、波長850nm付近の波長帯の光を発するもの(これを850nmのLEDとする)などが挙げられる。また、赤外線発光ユニット204から照射される赤外線は平行光であることが好ましい。これにより、赤外線の強度を強くすることができる。
【0058】
上記の構成により、図3に示すように、赤外線発光ユニット204から発せられた赤外光は、スクリーン203に設けられた穴を通過して、観察者(観客席)に向かって照射される。
【0059】
なお、赤外LEDから照射される光には、赤外領域に近い可視光領域の光が含まれることがある。そのため、赤外線発光ユニット204の光照射面に、可視光カットフィルタを配置してもよい。ここで使用する可視光カットフィルタは、従来公知のものでよい。特に、780nmのLEDは、より可視光領域に近い波長帯の光を発するため、可視光カットフィルタとともに利用することが望ましい。これにより、ビデオカメラなどのコンテンツ記録装置では検知されるが、観客席にいる人の目には視認されない赤外線発光ユニットを実現することができる。
【0060】
(映像表示システム1内の各機能について)
続いて、映像表示システム1において、映像を表示するための構成、盗撮された画像の品質を劣化させるための構成、および、盗撮用のカメラを検知するための構成についてそれぞれ説明する。図1は、映像表示システム1内の各装置の構成を示す機能ブロック図である。
【0061】
図1に示すように、映像表示システム1内には、スクリーン203に映像を表示するためのコンテンツ表示部110と、盗撮された画像の表示品質を劣化させるための盗撮防止信号出力部120と、盗撮用のカメラを検知するための赤外線検知部140とが含まれている。
【0062】
コンテンツ表示部110には、コンテンツ格納部111、デコーダ112、および、コンテンツ出力部113が含まれている。
【0063】
コンテンツ格納部111は、外部から取り込んだ映画などの画像コンテンツを一時的に格納するためのものである。この場合、コンテンツ格納部111は、ハードディスクドライブや大容量メモリなどで実現される。但し、本発明では、コンテンツ格納部は上記のようなものに限定はされず、キャッシュや高速メモリなどといった、画像コンテンツの再生および表示中のバッファとして機能するものであってもよい。デコーダ112は、コンテンツ格納部111に格納された画像コンテンツを、プロジェクタ202の表示規格に適合するフォーマットにデコード処理する。コンテンツ出力部113は、デコード処理された画像コンテンツ(デジタル映像信号)から表示画像を形成し、スクリーン203の画像表示面(画像表示領域)203aに表示する。
【0064】
本実施の形態においては、コンテンツ表示部110内の各ブロックのうち、コンテンツ格納部111およびデコーダ112は、映像再生機201内にある。また、コンテンツ出力部113は、プロジェクタ202およびスクリーン203として実現される。
【0065】
上記したコンテンツ表示部110については、公知の映像表示システムと同様の構成を適用することができる。
【0066】
盗撮防止信号出力部120には、コンテンツ解析部121(画像解析部)、信号制御部122(発光制御部)、信号出力パターン格納部123(発光制御部)、および、信号発生部124(発光部)が含まれている。
【0067】
コンテンツ解析部121は、コンテンツ表示部110から取り出した画像コンテンツ(デジタル映像信号)の空間的特徴量および時間的特徴量を解析する。すなわち、複数の画像フレームで構成されている画像コンテンツについて、フレームごとに各画素の明るさ(階調値)を解析する。これにより、一連の映像において、どの時点(どのフレーム)でどの領域がどの程度の明るさであるかという空間的特徴量および時間的特徴量に関する画像情報が得られる。なお、コンテンツ解析部121に送信されるデジタル映像信号は、デコーダ112において処理された映像信号である。
【0068】
信号制御部122では、コンテンツ解析部121で得られた画像情報に基づいて、ある特定の画像フレームが表示されている時点での、赤外線発光ユニット204における発光強度を制御する。このとき、発光強度の制御は、信号出力パターン格納部123に格納されている情報を参照しながら行われる。
【0069】
なお、信号出力パターン格納部123には、信号発生部124が出力する赤外光(盗撮防止信号)の強度や信号発生のON/OFFパターンなどが格納されている。具体的には、画像フレームにおける各画素の平均階調値と、そのときの赤外線発光ユニット204の発光強度(赤外LEDの電流値)とが対応付けて格納されている。これにより、信号制御部122では、信号出力パターン格納部123に格納されている信号発生パターンを参照しながら、信号発生部124における赤外LEDの発光状態を制御することができる。
【0070】
信号発生部124は、信号制御部122からの指示に応じて盗撮防止信号である赤外光の出力のON/OFFを行うとともに、その強度を変化させる。
【0071】
本実施の形態においては、盗撮防止信号出力部120内の各ブロックのうち、コンテンツ解析部121、信号制御部122、および、信号出力パターン格納部123は、映像再生機201内にある。また、信号発生部124は、赤外線発光ユニット204に相当する。
【0072】
上記のように、コンテンツ解析部121、信号制御部122、および、信号出力パターン格納部123が設けられていることにより、画像コンテンツの性質に合わせて、赤外線発光ユニット204における赤外線の発光強度や発光パターンを制御することができる。また、赤外線発光ユニット204の各発光領域214からそれぞれ異なる発光強度の赤外線が照射されるように制御することもできる。
【0073】
但し、本発明では、画像コンテンツの性質に合わせた発光強度および発光パターン(点灯と消灯の周期)の変更は必ずしも必要ではなく、予め決められた発光強度および発光パターンで赤外線発光ユニット204における発光の制御を行ってもよい。これにより、盗撮防止信号出力部120における処理量を軽減させることができる。このように、発光の制御を予め決められたパターンで行う場合には、赤外線発光ユニット204に発光制御部を取り付け、スクリーン203に映像が表示されている期間中、画像コンテンツの内容とは無関係に一定の発光強度および発光パターンで赤外線を出力させればよい。
【0074】
本実施の形態の映像表示システム1は、上記のような構成を有していることによって、スクリーン203の画像表示面から観察者に向かって映像とともに赤外光を照射することができる(図3参照)。人間の目は赤外光を認識しないため、赤外光を含む映像がスクリーンに映し出されても、通常の映像と何ら変わることのない映像が表示されているように認識される。これに対して、盗撮に使用されるビデオカメラ130(130a・130b)は、赤外光も検知するCCDまたはCMOSイメージセンサを受光素子として有している。そのため、赤外光を含む映像を撮影すると、スクリーンから照射された赤外光も人間が視認可能な画像として取り込まれる。
【0075】
なお、本実施の形態の映像表示システム1では、可視光以外の光を発する発光部として、赤外LEDを光源とする発光ユニットを用いているが、本発明はこの構成に限定されない。赤外光を発する光源として、LED以外の赤外光源を使用してもよい。また、可視光以外の光としては、波長780nm以上の赤外線に限定はされず、波長380nm以下の紫外線であってもよい。但し、紫外線は人体に対して有害であるため、映画館などの公共の施設で本発明の映像表示装置を使用する場合には、赤外光を発する発光部を用いることが好ましい。また、発光ユニットから照射される可視光以外の光が紫外線の場合には、非可視光検知部は、赤外線検知部140の代わりに、紫外線検知部が用いられる。紫外線検知部の具体例としては、紫外線カメラなどが挙げられる。また、可視光以外の光を発する発光部は、映像表示部以外の場所に配置してもよい。
【0076】
図3には、映像表示システム1において、盗撮用のカメラに妨害画像を加える方法、および、盗撮用のカメラを検知する方法を模式的に示す。なお、図2に示す映像表示システム1では、赤外線カメラ205がスクリーン203の上部に設けられていたが、ここでは、赤外線カメラ205がスクリーン203の背面に設けられている構成を示す。また、図2に示す映像表示システム1では、赤外線発光ユニット204はスクリーン203の中央部に1つ設けられていたが、ここでは、2つの赤外線発光ユニットが、スクリーンの上部と下部にそれぞれ設けられている構成を示す。本発明では、これらの構成について特に限定はされず、場合に応じて適宜変更することができる。
【0077】
また、図3では、スクリーン203に表示された映像を盗撮しようとする者(観察者または盗撮行為者とも呼ぶ)が用いる盗撮用のカメラ(撮影装置)130(130a・130b)を示す。図3に示す2台の盗撮用のカメラ130a・130bのうち、カメラ130aは、赤外線除去フィルタ(非可視光(特に赤外線)を遮断する部材)131が取り付けられたビデオカメラであり、カメラ130bは、赤外線除去フィルタが取り付けられていない通常のビデオカメラである。
【0078】
まず、盗撮用のカメラに妨害映像を加える方法について説明する。
【0079】
映像表示システム1では、スクリーン203に表示画像aが映し出されている期間中、同時に、赤外線発光ユニット204から赤外線bが盗撮防止信号として発せられる。赤外線発光ユニット204から発せられた赤外線bは、スクリーン203に設けられた穴を通過して、観察者(観客席)に向かって照射される。
【0080】
そして、カメラ130bを使用して画像コンテンツの盗撮を行った場合には、カメラの受光部(レンズ)に、表示画像aおよび赤外線bが入射する。カメラ130bの受光素子は、可視光および赤外光に受光感度を有するため、図9Aに示すように、記録された画像コンテンツ内には、赤外線に起因した画像が妨害画像Aとして含まれる。これにより、映像表示システム1では、盗撮された画像の表示品質を劣化させ、利用価値を低下させることができるため、映像コンテンツの不正流通を目的とするビデオカメラの撮影を防止することができる。
【0081】
一方、赤外線除去フィルタ131が取り付けられたカメラ130aを使用して画像コンテンツの盗撮を行った場合には、表示画像aについては赤外線除去フィルタ131を通過して受光部に入射するが、赤外線bについては赤外線除去フィルタ131によって反射されるため受光部にはほとんど入射しない。そのため、図9Bに示すように、記録された画像コンテンツ内には妨害画像がほとんど含まれず、不十分ながら視認可能な画像となる。
【0082】
このように、盗撮行為者が、ビデオカメラに赤外線除去フィルタなどを取り付け、赤外領域の光を遮断して撮影を行った場合には、赤外線発光ユニット204から発せられる盗撮防止信号の効果が低減してしまう。そこで、このようなビデオカメラの存在を検知するために、本実施の形態の映像表示システム1には、赤外線検知部140が設けられている。
【0083】
(赤外線検知部について)
以下に、赤外線検知部140の構成について説明する。
【0084】
赤外線検知部140には、広角レンズ141、赤外線受光部142(非可視光受光部)、および、画像処理部143などが含まれている。
【0085】
広角レンズ141は、赤外線受光部142が広範囲からの反射光を受光できるようにするためのものである。通常、広角レンズ141は、画角が63度以上である。この広角レンズ141が設けられていることにより、劇場内の全ての観客席からの反射光を受光することができる。
【0086】
赤外線受光部142は、CCDまたはCMOSイメージセンサを受光素子として備えている。この受光素子は、可視領域だけではなく、紫外および赤外領域の波長の光に対しても受光感度を有する。そのため、受光素子の受光面には可視光カットフィルタなどの光学フィルタが設けられており、この光学フィルタによって紫外領域および可視領域の波長の光を除去した後、受光素子に取り込まれ、当該素子が取得したデータに基づいて画像を形成する。なお、前記のフィルタは特定の波長の光のみ通過させるフィルタであってもよく、また、特定の波長のみを除去するフィルタであってもよい。
【0087】
画像処理部143は、盗撮用のビデオカメラをより確実に認識するために、赤外線受光部142によって取り込まれた画像に対して処理を施す。ここで行われる画像処理の詳細については、後述する。
【0088】
本実施の形態においては、赤外線検知部140は赤外線カメラ205で実現される。なお、画像処理部143については、赤外線カメラ205とは別体のPCなどの専用の画像処理装置で実現してもよい。
【0089】
本実施の形態の映像表示システム1は、上記のような赤外線検知部140を有していることによって、図3に示すように、赤外線による妨害画像を除去するためにローパスフィルタなどの赤外線除去フィルタ131をカメラ130aに取り付けた場合に、赤外線発光ユニット204から照射された赤外線bが赤外線除去フィルタ131によって反射されて得られる反射光(反射された赤外線c)を検知することができる。
【0090】
なお、赤外線検知部140において検知することが可能な赤外線除去フィルタ131としては、例えば、赤外線反射フィルタまたは赤外線吸収フィルタなどがある。これらのフィルタは、赤外線の反射率が高いため、盗撮用のカメラ130にこれらのフィルタが取り付けられていた場合に、赤外線検知部140によって容易にカメラ130の存在を検知することができる。
【0091】
また、赤外線反射フィルタと赤外線吸収フィルタとを比較すると、赤外線反射フィルタのほうがより赤外線の反射率が高いが、赤外線吸収フィルタを使用した場合にも、ガラスなどと同程度の反射率が得られるため、赤外線検知部140によって検知することができる。
【0092】
なお、ビデオカメラのレンズのような曲面レンズの赤外線の反射率は、一般的に、赤外線除去フィルタの反射率よりも低いが、曲面状のガラス(例えば、ガラスコップ)や曲面状の金属(例えば、ねじ回し(screwdriver)やメガネのフレーム等のような棒状の金属)の反射率よりは高い。そのため、画像処理部143における画像処理の方法によれば、赤外線除去フィルタが設けられていない通常のビデオカメラのレンズについても、赤外線検知部140における検知が可能となる。
【0093】
なお、赤外線検知部140は、スクリーンと同じ平面上またはスクリーンの裏側等の盗撮される画面側に設けられており、観察者側からの反射光を効率良く受光できるようにその受光面が向いていることが好ましい。
【0094】
なお、上記の説明においては、スクリーン203に設けられた音響用の穴を通して、観察者(観客席)に向かって赤外線が照射される構成を例示した。しかし、赤外線の照射は、必ずしも音響用の穴を利用しなくても良い。例えば、赤外線を通過させる穴を専用に設けても良いし、音響用以外の他の用途に設けられた穴を利用しても良い。
【0095】
(画像処理部での画像処理方法について)
続いて、画像処理部143において行われる画像処理の具体例を説明する。但し、この方法は本発明の一例であり、本発明はこれに限定されない。
【0096】
赤外線検知部140(赤外線カメラ205)内の赤外線受光部142で得られた赤外線画像データは、複数のフレームからなる画像データとしてフレームごとに画像処理部143に入力される。各フレーム画像データは、縦横に配列した複数の画素に対応した階調データを有している。各画素の階調データは、当該画素において受光した赤外線の強度に対応した階調値(例えば、0〜255階調)のデータである。ここでは、受光した赤外線強度がゼロの場合に0階調(これを便宜上、黒表示と呼ぶ)となり、受光した赤外線強度が最大の場合に255階調(これを便宜上、白表示と呼ぶ)となる。
【0097】
図4には、画像処理部143内を機能ごとに分割した構成を示す。図4に示すように、画像処理部143内には、背景削除部150、フリッカ除去フィルタ151、動き検出部152、ノイズ除去フィルタ153、2値化処理部154、面積計測部155、および、カメラ判定部156(判定部)が設けられている。
【0098】
背景削除部150は、赤外線受光部142で得られた赤外線画像データ(フレーム画像データ)を入力し、入力されたフレーム画像データから背景画像を除去する。このとき、背景削除部150は、リファレンス画像データ150aを参照する。例えば、観客がいない場合の劇場内において映像表示システム1の赤外線発光ユニット204を作動させ、このときに赤外線カメラ205で撮影された1フレーム分の画像データを、リファレンス画像データ150aとして用いることができる。
【0099】
ここで、背景削除部150による背景画像の除去処理について、詳しく説明する。
【0100】
背景削除部150へ入力されるフレーム画像データXtを、下記の数式(数5)のとおりに表すものとする。ここで、1つのフレーム画像データxtが、水平方向にN画素、垂直方向にM画素の、合計M×N画素の解像度を有するものとする。tは、フレーム番号を表す。
【0101】
【数5】

【0102】
また、リファレンス画像データYを、下記の数式(数6)のとおりに表すものとする。なお、リファレンス画像データには時間的変化はないので、フレーム画像データXtの全てに対して、常に同じリファレンス画像データYが用いられる。
【0103】
【数6】

【0104】
背景削除部150は、フレーム画像データXtの各画素成分から、リファレンス画像データYの各画素成分に所定の係数λを乗じて得られた成分を差し引くことにより、背景画像を除去する。すなわち、背景除去部150は、下記の数式(数7)で表される(Xt−λY)を演算する。
【0105】
【数7】

【0106】
ここで、背景削除部150は、上記数式(数7)の各成分の絶対値総和が最小となるように、上記の係数λの値を求める。このように係数λの値を決定して、上記数式(数7)の演算を行うことにより、フレーム画像データXtにおける、リファレンス画像データYに含まれる固定反射物からの反射光成分の影響を最小限とすることができる。なお、上記数式(数7)の各成分の絶対値総和は、下記の数式(数8)で表される。
【0107】
【数8】

【0108】
なお、上記数式(数8)で表される絶対値総和を最小とする方法の一例として、これにのみ限定されないが、解析的手法(ラグランジュの未定乗数法)による方法を以下に説明する。数式(数8)で表される絶対値総和を最小とすることと、下記の数式(数9)で表される関数Λ(λ)の値を最小とすることとは、同義である。
【0109】
【数9】

【0110】
ここで、数式(数9)の関数をλで微分すると、数式(数10)のとおりとなる。
【0111】
【数10】

【0112】
そして、この数式(数10)の値がゼロとなるように、すなわち、下記数式(数11)が成り立つように、係数λの値を求める。
【0113】
【数11】

【0114】
そうすると、係数λの値は、下記数式(数12)のとおりとなる。
【0115】
【数12】

【0116】
すなわち、解析的手法によれば、背景削除部150は、上記数式(数12)にしたがって係数λの値を決定し、決定された係数λを上記の数式(数7)に適用することにより、フレーム画像データXtから背景画像を削除する。この背景削除処理により、フレーム画像データXtにおける、リファレンス画像データYに含まれる固定反射物からの反射光成分の影響を最小限とすることができる。
【0117】
フリッカ除去フィルタ151は、複数のフレーム画像データにおける各画素の階調値の平均を算出し、前記複数のフレーム画像データにおける各画素の階調値を、求められた平均値に置き換える。これにより、赤外線発光ユニット204の光源点滅の影響等を除去する。
【0118】
動き検出部152は、複数のフレーム間の差分をとることにより、動く赤外線反射物からの反射光成分を検出する動き検出処理を行う。検出された反射光成分は、ノイズ成分として、後段のノイズ除去フィルタ153において除去される。これにより、画像データ内の動きのある箇所を排除することができる。通常、盗撮行為はカメラを固定して行うため、この動き検出処理によって、動きのある赤外線反射物からの反射光成分を除去し、静止している反射物のみを特定することができる。この結果、盗撮用カメラの検知精度を上げることが可能になる。
【0119】
なお、この実施形態においては、背景削除部150が、フリッカ除去フィルタ151の前段に設けられていることにより、以下の効果がある。なお、本実施形態との比較例として、フリッカ除去処理を行ってから背景画像を削除する構成を、図10に示す。図10の構成では、入力されたフレーム画像データは、最初に、フリッカ除去フィルタ151へ入力され、フリッカ除去フィルタ151において、複数のフレーム画像データの各画素の平均を求めることにより、フリッカが除去される。フリッカが除去された(すなわち平均化された)複数のフレーム画像データは、差分処理部252へ送られる。差分処理部252は、前記複数のフレーム画像データから、リファレンス画像データを差し引くことにより、背景画像の成分を除去する。
【0120】
すなわち、この図10の比較例によれば、フリッカ除去フィルタ151が、複数のフレームにおける各画素の階調値の平均を算出してから背景画像成分を差し引くので、動く反射物が存在する場合、平均算出の対象となった複数のフレームの全てにわたって、その反射物の像が、うっすらと写り込んだ状態となる。この状態では、後段の動き検出部152において、それら複数のフレームから前記の動く反射物の像を除去することができなくなってしまう。
【0121】
しかし、本実施形態のように、背景削除部150がフリッカ除去フィルタ151の前段において、フレーム画像データXtのそれぞれについて、背景削除処理を行うことにより、上述の比較例のように、動く反射物の像が他のフレームに写り込むことがない。したがって、後段の動き検出部152において、複数のフレーム画像データ間の差分をとることにより、動く反射物の像を効果的に除去することができる。
【0122】
ノイズ除去フィルタ153は、周辺の数画素が黒表示である領域内に1画素または一定数未満の数画素からなる白表示が存在する場合には、当該白表示の画素をノイズとして除去する回路である。このフィルタ回路では、自画素を中心とする複数画素(例えば、3×3画素、5×5画素)内に、一定数以上(例えば、1画素、2画素など)の画素が閾値以上の赤外線を検知した場合に、当該自画素を赤外線検知ありのデータ(例えば、白表示のデータ)として残す。自画素を中心とする複数画素内に、閾値以上の赤外線を検知した画素の数が一定数未満であった場合には、当該自画素を赤外線検知なしのデータとする(すなわち、階調値0と出力する)。また、ノイズ除去フィルタ153は、動き検出部152で検出された、動きのあるノイズ成分も除去する。
【0123】
2値化処理部154は、階調データに閾値を設け、階調データが閾値以上の画素については、その階調データを白表示のデータ(すなわち、階調値255)に変換し、階調データが閾値未満の画素については、その階調データを黒表示のデータ(すなわち、階調値0)に変換するという処理を行う回路である。
【0124】
面積計測部155は、2値化処理部154によって2値化処理が行われた画像データ内において、白表示の領域内に含まれる画素数を計測する回路である。ここでの処理は、例えば、黒表示の画素と白表示の画素との境界を測定し、この境界内に含まれる画素数をカウントすることによって行う。
【0125】
カメラ判定部156は、面積計測部155によって白表示の領域が所定の面積以上(画素数以上)であるか否かを判別し、所定の面積以上の場合に、盗撮用のカメラありと判定する。
【0126】
ここで、上記の構成を有する画像処理部143内において行われる画像処理の流れを、図5に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0127】
まず、赤外線受光部142から送信されたフレーム画像データ(赤外線画像データ)は、背景削除部150に入力される。背景削除部150は、リファレンス画像データ150aに基づいて、入力したフレーム画像データから、背景画像を削除する(ステップS101)。この処理により、劇場内に予め設置されている備品などからの赤外線反射光を含む背景画像が除去され、観客に起因した反射光のみによる赤外線強度を反映させた画像データが得られる。
【0128】
背景画像が削除されたフレーム画像データは、フリッカ除去フィルタ151へ送られ、前述のとおり、フリッカが除去される(ステップS102)。なお、赤外線発光ユニット204から照射される赤外線が常時点灯している場合には、フリッカ除去フィルタ151による処理は必ずしも行う必要はない。
【0129】
フリッカ除去フィルタ151による処理後のフレーム画像データは、動き検出部152へ送られ、動く反射物のデータが除去される(ステップS103)。
【0130】
次に、ノイズ除去フィルタ153においてノイズ除去処理を行う(ステップS104)。ノイズ除去処理とは、閾値以上の高い赤外線強度を有する画素のうち、所定数の画素(例えば1画素)のみが孤立して存在しているものについては、黒表示の階調データに変換する処理である。なお、ステップS103において動き検出処理を行った場合は、動きを伴う反射物のノイズ成分も、ここで除去される。
【0131】
次に、2値化処理部154において、階調値が閾値以上の画素を階調値255に変換し、階調値が閾値未満の画素を階調値0に変換する処理を行う(ステップS105)。ここでの閾値は、例えば、80階調または250階調などとすることができる。また、弱い反射光をノイズとして除去する場合には、上記閾値は、例えば、100階調〜250階調の範囲内の値とするのがよい。
【0132】
最後に、面積計測部155が、2値化処理された画像データにおいて、白表示(255階調)の領域の面積(画素数)を計測する(ステップS106)。
【0133】
そして、カメラ判定部156において、白表示の領域が所定の面積以上(画素数以上)であるか否かを判別し、所定の面積以上の場合に、盗撮用のカメラありと判定する(ステップS107)。なお、ここで、カメラ判定部156が盗撮用カメラありと判定した場合には、警報などを発することができる。また、警報と同時に2値化前の撮影画像を管理室などのモニタに表示することにより、監視員が盗撮カメラ位置を容易に推定できるようにしてもよい。
【0134】
以上の方法によれば、映画館などにおいて映画の盗撮を行う者を自動で検出することが可能となる。なお、上記のように自動検出を行う場合には、例えば、上記の画像処理によって、赤外線除去フィルタの存在が確認されたら、劇場の管理者(または監視員)がいる部屋で警報を鳴らすなどして盗撮者の存在を知らせることができる。これにより、管理者がカメラを確認することなく、盗撮者の存在を容易に知ることができる。
【0135】
なお、上記した画像処理の方法は一例であり、本発明はこれに限定されない。すなわち、画像処理部143内には、図4に示すような各処理回路が必ずしも全て設けられている必要はなく、図4に示す各処理回路のうちの一つあるいは複数の処理回路が設けられている場合にも、盗撮用のカメラの検知を適切に行うことができる。
【0136】
また、本実施形態において、画像処理部143が、赤外線受光部142から入力される全てのフレーム画像データをリアルタイムに処理することにより、これらの全てのフレーム画像データから、盗撮用カメラの検知処理を行っても良い。あるいは、画像処理部143を複数設けて、これら複数の画像処理部143により、並列処理を行うようにしても良い。
【0137】
または、図6に示すように、画像処理部143が、一部のフレーム画像データF2のみを処理対象とする構成としても良い。例えば、1秒間に60枚のフレーム画像データF1が赤外線受光部142から出力されるものとした場合、そのうちの一部(例えば30枚、20枚、または12枚)のフレーム画像データF2のみを、画像処理部143が処理対象とすることとしても良い。これらの場合に、全てのフレーム画像データF1を処理対象とする場合と比較して、画像処理部143の処理に、およそ2倍、3倍、または5倍の時間をかけられることとなる。したがって、画像処理部143を構成するプロセッサ等の処理能力があまり高くない場合には、このように、一部のフレーム画像データのみを処理対象とすることが効果的である。
【0138】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態について、以下に説明する。なお、第1の実施形態で説明した構成については、第1の実施形態と同じ参照符号を付記し、その説明を省略する。
【0139】
第1の実施形態においては、数式(数5〜数12)に示したように、フレーム画像データの全画素(水平方向N、垂直方向M、合計M×N画素)を用いて、係数λの値を決定する処理を例示した。しかし、係数λの値を決定するために、フレーム画像データの全画素の情報を用いる必要はない。
【0140】
したがって、本実施形態においては、例えば、図7Aに示すように、フレーム画像データの一部の領域P1のみを用いて、この領域P1内に存在する画素について、フレーム画像データとリファレンス画像データに係数λを乗じた値との差分(すなわちXt−λY)の絶対値総和が最小となるように、係数λを求める。
【0141】
ここで、係数λを決定するために用いる領域の画素数は適宜に決定すれば良く、特に限定はない。また、その位置も、図7Aに示した例のみに限定されない。一般的には、観客席が位置する画像中央部を避けて、画像周辺の適当な領域を用いることが好ましい。例えば、図7Bに示すように、画像の周縁部よりもやや内側を位置する画素からなる領域P2を用いても良い。あるいは、図7Cおよび図7Dにそれぞれ示すように、画像の水平方向または垂直方向に沿った領域P3またはP4を用いても良い。あるいは、図7Eに示すように、画像の二辺に沿った領域P5を用いても良い。なお、これら図7A〜図7Eに示した例も、あくまでも具体例に過ぎず、これ以外の領域を用いることも可能である。
【0142】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態について、以下に説明する。なお、前述した各実施形態で説明した構成については、それらの実施形態と同じ参照符号を付記し、その説明を省略する。
【0143】
上記した実施形態では、劇場の観客席全体を捉えることのできる広角レンズがカメラの前面に取り付けられた赤外線カメラ205を1台備える構成を例に挙げたが、本発明はこれに限定されない。つまり、赤外線カメラ(赤外線検知部)は、劇場の観客席全体を捉えることのできる構成であれば、その構成および台数は、特に限定はされない。
【0144】
また、上記の実施形態においては、映像を妨害するノイズとしての赤外線(盗撮防止信号)を発生する赤外線発光ユニットと、盗撮カメラを検知するための赤外線を発生する赤外線発光ユニットとが共通である構成を例示した。しかし、これらの赤外線発光ユニットが別個に設けられた構成としても良い。
【0145】
以上の観点から、第3の実施形態では、図8に示すように、スクリーン203bの背面側に、盗撮防止信号としての赤外線を発生する複数のノイズ用赤外光源304aと、盗撮カメラを検知するための赤外線を発生する複数のカメラ検知用赤外光源304bとを備えている。また、スクリーン203bの裏面のほぼ中央に、赤外カメラ305が配置されている。
【0146】
ノイズ用赤外光源304aは、例えば、出力1.4Wの赤外LEDである。カメラ検知用赤外光源304bは、例えば、出力0.14Wの砲弾型赤外LEDである。図8の例では、カメラ検知用赤外光源304bは、2枚の基板306によって、スクリーン203bの裏面に、正方格子状に支持されている。ノイズ用赤外光源304aおよびカメラ検知用赤外光源304bの波長は、例えば870〜940nm程度である。赤外カメラ305には、可視域カットフィルタ(カットオフ波長870nmの短波長カットフィルタ)を装着することが好ましい。
【0147】
なお、図8では、カメラ検知用赤外光源304bが正方格子状に配置された例を示したが、カメラ検知用赤外光源304bを三角格子状に配置された構成としても良い。あるいは、カメラ検知用赤外光源304bが、スキャナ式ユニットや回転式ユニット等の可動式ユニットに設けられていても良い。また、ノイズ用赤外光源304aが極端に大型でなければ、ノイズ用赤外光源304aも可動式ユニットに設けることも可能である。
【0148】
ノイズ用赤外光源304aとカメラ検知用赤外光源304bとは独立して制御可能である。ノイズ用赤外光源304aが発光していないタイミングで、カメラ検知用赤外光源304bが発光することが好ましい。この場合、赤外カメラ305は、カメラ検知用赤外光源304bが発光するタイミングに合わせて、反射光の検知を行う。
【0149】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、ここで開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0150】
本発明によれば、画面に表示されたデジタル映像をビデオカメラで撮影した場合に、撮影された画像の表示品質を劣化させることができる。したがって、本発明を映画館などで利用すれば、映像コンテンツの盗撮およびその不正流通を防止することができる。
【0151】
また、本発明によれば、映像コンテンツの盗撮を行おうとする者を容易に検知することができる。したがって、本発明を映画館などで利用すれば、映像コンテンツの盗撮行為を予防することができる。
【符号の説明】
【0152】
1 映像表示システム
130 ビデオカメラ(撮影装置)
131 赤外線除去フィルタ
140 赤外線検知部
141 広角レンズ
142 赤外線受光部(非可視光受光部)
143 画像処理部
151 フリッカ除去フィルタ
152 差分処理部
152a リファレンス画像データ
153 ノイズ除去フィルタ
154 2値化処理部
155 面積計測部(面積計測部)
156 カメラ判定部(判定部)
201 映像再生部
202 プロジェクタ(画像形成部)
203 スクリーン(画像表示部)
204 赤外線発光ユニット(非可視光発光部)
205 赤外線カメラ(赤外線検知部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像を表示する映像表示部と、
映像とともに可視光以外の光を観察者に対して照射する非可視光発光部と、
上記観察者が有する撮影装置から反射された上記可視光以外の光を受けて、フレーム画像データを生成する非可視光受光部と、
前記画像データを処理することにより、前記撮影装置の存在を検出する画像処理部とを備え、
前記画像処理部が、
背景画像を表すリファレンス画像データを参照し、前記フレーム画像データから前記背景画像の成分を除去する背景削除部と、
前記背景削除部の処理後のフレーム画像データを、複数フレームにわたって平均化処理を行うことにより、フリッカを除去するフリッカ除去部とを備えた、映像表示スクリーン。
【請求項2】
前記背景削除部が、フレーム画像データをXt(tはフレーム番号)、リファレンス画像データをY、係数をλとした場合、(Xt−λY)の絶対値総和が最小となるように係数λを決定し、決定された係数λを用いて(Xt−λY)を算出する、請求項1に記載の映像表示スクリーン。
【請求項3】
前記背景削除部が、下記の数式(数13)、(数14)、および(数15)を満たす係数λを用いて、下記の数式(数16)により(Xt−λY)を算出する、請求項2に記載の映像表示スクリーン。
【数13】

【数14】

【数15】

【数16】

【請求項4】
前記背景削除部が、前記フレーム画像データの一部の領域内の画素のみを用いて係数λを決定する、請求項2または3に記載の映像表示スクリーン。
【請求項5】
前記画像処理部が、時間的に連続する複数フレームのうち一部のフレームのフレーム画像データのみを処理対象とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の映像表示スクリーン。
【請求項6】
前記画像処理部が、前記フリッカ除去部から出力されたフレーム画像データから、前記非可視光の反射物の像のうち動く成分を検出する動き検出部をさらに備えた、請求項1〜5のいずれか一項に記載の映像表示スクリーン。
【請求項7】
前記非可視光発光部は、前記映像表示部に映像が表示されている期間中、点灯と消灯とを繰り返す、請求項1〜6のいずれか一項に記載の映像表示スクリーン。
【請求項8】
前記画像処理部が、前記フレーム画像データの画素毎に閾値に応じた2値化処理を行う2値化処理部をさらに備えた、請求項1〜7のいずれか一項に記載の映像表示スクリーン。
【請求項9】
前記画像処理部が、
前記2値化処理部によって前記閾値以上の値に2値化処理された画素が集合している領域の面積を計測する面積計測部と、
該面積計測部によって前記画素が集合している領域が所定の面積以上であるか否かを判別し、所定の面積以上の場合に、前記撮影装置が存在すると判定する判定部とをさらに有する、請求項8に記載の映像表示スクリーン。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の映像表示スクリーンと、
デジタル映像信号に基づいて表示画像を生成し、該表示画像を前記映像表示スクリーンに投射する画像形成部とを有する、映像表示システム。
【請求項11】
映像表示スクリーンに表示される映像を撮影するための撮影装置を検出する方法であって、
前記映像表示スクリーンに表示される映像とともに、可視光以外の光を観察者に対して照射する工程と、
上記観察者が有する撮影装置から反射された上記可視光以外の光を受けて、フレーム画像データを生成する工程と、
前記画像データを処理することにより、前記撮影装置の存在を検出する画像処理工程とを含み、
前記画像処理工程が、
背景画像を表すリファレンス画像データを参照し、前記フレーム画像データから前記背景画像の成分を除去する工程と、
前記背景削除処理後のフレーム画像データを、複数フレームにわたって平均化処理を行うことにより、フリッカを除去する工程とを含む、撮影装置検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図7E】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−181262(P2012−181262A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−42761(P2011−42761)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【出願人】(504202472)大学共同利用機関法人情報・システム研究機構 (119)
【Fターム(参考)】