説明

時間遅延積分による対象を撮像するための装置および方法

表面上に整列または堆積した微視的対象の同定または分類を可能とする自動化収集およびイメージ解析のための装置および方法を開示する。そのような対象、例えば、検出可能に標識された希少標的細胞を磁気的または非磁気的に固定し化し、時間遅延積分イメージング(TDI)に付す。Cell Tracksのようなイメージサイトメトリー分析へのTDI技術の導入は移動する対象を非常に高い感度および信号対ノイズ比で撮像することを可能とする。TDIカメラ技術に濃縮希少細胞のデュアル励起および多重スペクトルイメージングを付加することは、サイズ、モルホロジーおよび免疫発現型分類に基づき、撮像された希少細胞の検出、計数、分別およびキャラクタリゼーション用の高速システムを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、35USC第119条(e)項の規定により、米国特許出願第10/612,144号および2003年8月11日に出願された米国仮出願第60/494101号を基礎とする優先権を主張する。
【0002】
本発明は、概略、対象のイメージをスキャンし獲得するための装置および方法に関し、より詳しくは、二次元平面に分布した体液から得られた細胞のごとき対象の部分的サブイメージから再構築されたイメージに関する。本発明により提供されるスキャニングおよびイメージング技術は、特に、磁気的手段により配列され、時間遅延積分(Time-Delay-Integration)によるデジタル化光電子的手段により調査される細胞の撮像に有利である。
【背景技術】
【0003】
血液1mLあたり一つのガン細胞の頻度で存在するかもしれないガン患者の血中上皮由来の循環ガン細胞の同定および計数は、例えば、CellTracksR System (Immunicon Corporation, Hungington Valley, PA)における磁気的濃縮およびイメージサイトメトリーを用いて検出されてきた。磁気的手段による上皮細胞濃縮と組み合わせた多重パラメータフローサイトメトリー(multi-parametic flowcytometry)との組合せを用いることによって、健康な個人と乳ガン患者との間で、「循環細胞」の個数における顕著な差異が見つかった[Racila et al., Proc. Nat. Acad, Sci. 95, 4589-4594, 1998]。いくつかの研究において、そのような「循環細胞(circulating tumor cells; CTC)」は次の特徴:上皮細胞マーカーサイトケラチンに陽性、白血球マーカーCD45に対する陰性、核酸ダイでの陽性染色および細胞に適合する光散乱特性を発現するイベントとして定義される。しかしながら、検出されたイベントの細胞としてのモルホロジー確認およびさらなる分子的証拠がフローサイトメトリー法では欠如しているが、検出された希少なイベントが本当に原発腫瘍(primary tumor)に由来する腫瘍細胞であることの確認が明らかに必要である。手動方法における異なるオペレーター間の細胞分類の本質的な誤差を低減するために自動イメージ分析システムが導入されているが、予備的な細胞濃縮を行わないそのような先行技術は、依然として、本来的に感度が欠如している。細胞分析用に、いくつかの自動細胞イメージングシステムが記載されている、あるいは市場で入手可能である。Chromavision, ACISTMによって開発されたこのシステムすなわち自動細胞イメージングシステム[Douglass et al., 米国特許第6,151,405号]は、自動コンピュータ制御顕微鏡および/または保健医療専門家の目視により観察されたサイズ、形状、色調、および染色強度によって、調製された細胞の微視的調査による色彩パターン認識を用いる。このシステムは、顕微鏡スライド上の細胞調査を用い、組織断片用に設計されている。Applied Imaging Corp.のSlideScanTM または MDSTM (Saunders et al., 米国特許第5,432,954号)が、自動化インテリジェント顕微鏡であって、細胞すなわち「対象」を色彩、強度、サイズ、パターンおよび形状を検出し、次いで、視覚認識および分類するイメージングシステムとして記載されている。ACISシステムに対して、このシステムは蛍光ラベルを検出する能力を有し、さらなる能力を備えている。しかしながら、これらおよびその他の現在利用可能な方法は、血中循環細胞のごとき希少イベントの正確な分類および判定に対して十分な感度ではない。
【0004】
かくして、イメージングシステム[米国特許出願10/612,144号]は、比較的速い速度で蛍光信号を検出するように開発され、標準フローサイトメトリーと同程度に作動する。このシステムは、免疫磁性粒子でまず標識することによる細胞の分離に基づく。これらの粒子は、当該標的細胞上に見出される特徴的な細胞表面抗原に特異的なモノクローナル抗体に結合したコロイド状常磁性粒子である。標的細胞集団に十分に結合したら、磁場で免疫磁性粒子−細胞コンプレックスをチャンバーの上部にまで上昇させ、そこで、細胞はニッケル線間に整列する。上皮細胞接着分子(Epithelial Cell Adhesion molecule; EpCAM)に対するモノクローナル抗体で上皮由来細胞を標的する場合、赤血球その他の非標識細胞はチャンバーの上部ガラス表面に上昇する標識細胞と分離する。これは既知の体積であるから、細胞の個数は容易に決定される。赤色ダイオードレーザー(635nm)を楕円ビームとしてニッケル線とともにチャンバー上に集光する。ニッケル線からの反射を整列細胞上のレーザービームのトラッキングおよびフォーカシングの信号として用いる。試料チャンバーをX−YステージでY方向に移動させ、レーザーを一度に一つのラインでスキャンする。整列細胞を一つずつ照射し、発光蛍光を光電子倍増管で測定する。この設計の利点は、標的細胞のみがチャンバーの観察部分の内面上に整列し、第1の分析が完了した後、整列細胞を容易に移動させることができることである。いずれの利点も、極度に小さな標的細胞の母集団でも、磁気的濃縮後、米国特許出願第10/612,144号に記載されたイメージングシステムで測定し得ることを保証する。多重標識実験により作成された蛍光データからの散布図を用いて希少イベントを選択する。チャンバーの観察部分の内面に整列した細胞で、細胞の下方にある流体を置換し、細胞をさらに分析し得る。
【0005】
先行技術は、例えば、25フレーム/秒のフレーム速度の標準フルフレーム型電荷結合素子(CCD)カメラに基づく。細胞を移動ステージまたはスキャニングミラーでスキャンする。このカメラで得られたイメージを互いに足し合わせて細胞の完全イメージを形成する。欠点は、スキャンするとき、レーザーが細胞の小領域のみしか照射しないことである。それゆえ、細胞全体を撮像するために、対象(すなわち細胞)をスキャンする必要があることである。十分な光子を獲得し、細胞の移動によるブレを防止するためには、ゆっくりとスキャンする必要がある。結果として、その時点で発光された全ての蛍光光子は無駄になる。そのカメラは、25fpsおよび40Mhzの高速読み出し速度にて、512×512ピクセルの読み出しに対して、総時間の約16%の間閉じている。
【0006】
軍事航空機偵察および衛星イメージングに最初に用いられたTDI技術は移動対象の高品質イメージの捕捉を可能とする。TDIイメージングデバイスは、文書スキャニングや工業製品の検査にも適用されている。
【0007】
TDIイメージング装置は、標準フルフレーム型CCDイメージング装置であり、その高さ(行またはTDAステージ)に比して非常に大きな長さ(列)を有する。このラインスキャナーは96TDI行を有し、単一のピクセル行の標準ラインスキャナーと比べて、同一の読み出し速度にて、96倍も良い感度をもたらす。図1は、いかに移動対象をTDI技術で分析するかを示す。Sは時刻tでの移動対象の位置を表す。時刻t+3にて、TDI CCDの第1行は移動対象により発光された光を収集する。TDIは、S+3からS+4に移動対象と同じ速度で収集電荷を第1行から第2行にシフトする。かくして、各シフト後、蓄積された電荷を新しい部位の光発生電荷に足し合わせ、TDI列に沿った電荷を積分する。このプロセスをセンサーの端部に達するまで繰り返す。例えば、Dalsa Eclipse ラインスキャナーは96のTDIステージ数を有し、プロセスが96回繰り返されることを意味する。
【0008】
TDIイメージングは、アウトプットデータ速度に影響することなく、向上した光感度および良好な信号対ノイズの利点を有する。その結果、高スキャン速度および低光量レベルで撮像する能力を獲得した。ピクセル感度の均一性は全TDIステージの平均化によって向上し、より線形的なアウトプットをもたらした。ピクセルの暗電流の均一性は、全TDIステージの平均化の結果、向上した。露出は、対象のスキャン速度を通して容易に制御される。さらに、大きな対象を、それらが移動しているときに、小さなCCDカメラで撮像することが可能である。
【0009】
したがって、本発明は、Cell SpotterTM Systemのごときイメージサイトメトリック分析に関連するように伝統的なCCD技術を向上させること、および血液その他の流体中のCCTのごとき、希少な標的種の検出、計数および正確な分類を可能とすることを追求する。
【0010】
【非特許文献1】Racila et al., Proc. Nat. Acad, Sci. 95, 4589-4594, 1998
【非特許文献2】Tibbe et al., Nature Biotech. 17, 1210-13, 1999
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、Tibbe ら[Nature Biotech. 17, 1210-13, 1999]によって記載されたように、CellTracksR分析システムのようなシステムに新規撮像能を適用することを可能とする装置および方法を向上させる。Tibbeによって記載され、また本発明の開示にあるその装置および方法は、他の標的対象にも適用し得る。しかしながら、主たる適用は、血液から希少細胞の迅速な免疫磁気的選択、その後の単離細胞の自動整列および自動イメージ解析である。簡単に言えば、本発明の好ましい具体例は、血液からの磁気的な収集および濃縮後、磁気的標識した細胞をニッケル(Ni)の強磁性線に沿って整列させ、コンパクトディスクプレイヤーからのごとく、従来の対象レンズによって集光されたレーザーによってスキャンする。それらの細胞は1以上の蛍光ラベルで選択的に染色されているため、測定された蛍光発光およびその強度を用いて、細胞型を同定または分類し得る。
【0012】
液体フローシステムは本発明には必要ない。ニッケル線近傍の角のあるマグネットによって誘発された磁場が磁気的標識された細胞を固定位置に保持する。これは、蛍光発光およびその強度を測定した後、検出されたイベントをさらに同定するためのさらなる広汎な分析のために、検出されたイベントの再検討を可能とする。そのようなイベントのイメージを微視的に観察し、実際の細胞として、イベントを同定する独立したモルホロジー基準を適用し得る。
【0013】
本発明は、細胞の検出、分類および計数用の新規走査イメージング診断システムを提供し、それは体液由来の磁気的標的細胞を収集し整列させる十分に自動化された手段を含み、ここに、そのような収集された細胞は、異なる蛍光ラベルで標識された非標的細胞から標的を差別化する少なくとも一つの免疫特異的蛍光ラベルも有する。
【0014】
本発明によれば、新しいTDIスキャニングおよびイメージング技術を米国特許出願10/612,144号のイメージングシステムのごときシステムに組み込んで、高品位蛍光イメージを獲得し得る。ここに記載され特許請求される発見は、先行技術のシステムおよび方法に対して、希少細胞の検出、計数および分類に大きな向上をもたらした。非常に低頻度の細胞、いわゆる希少イベントの十分な検出は、細胞の損失を回避すべく最小の試料ハンドリングが必要である。さらに、そこから希少細胞が分離され濃縮される体積は、検出感度を増強し得る程度に大きくなければならない。開示した新規技術の開発および適用で、今や、特定イベントの蛍光イメージを得ることができ、高度に正確な同定をもたらし、かくして、本発明のシステムを体液中の希少イベントの検出にとって強力なツールとする。
【0015】
Racila ら[Proc. Nat. Acad. Sci. 95, 4589-94, 1998]は、免疫磁気的標識、その後のフローサイトメーターでの免疫発現型解析を含む連続ステップを用いて血液から乳ガン細胞を分離する方法を記載した。米国特許出願第10/612,144号に記述したように、このイメージングシステムは、個々の細胞を免疫発現型分類および蛍光イメージの提供によるそれらの同定の確認が可能である。この手順は、全血にスパイクされた乳ガン細胞、SKBR3の培養細胞の検出によってテストされた。スパイクされた試料は実施例に記載するようにして調製した。図2aは、フローサイトメトリーにおけるAPC/VY7チャネル対APCチャネルの散布図である。SKBR3細胞は領域1に位置する。デブリスはブロードなバンドで現れ、白血球は、存在すれば、領域2に位置する。散布図の測定後、イベントのいくつかをここに記載する新規イメージング技術で撮像した。散布図中の対象すなわち細胞を選択した後、イメージングシステムは自動的に細胞の測定位置に戻り、撮像ルーチンを開始する。領域1のイベントから撮られた一連のイメージは蛍光染色された細胞質を示す。これらの細胞の核はより暗い領域として見える。これらのイメージはデブリスとは異なり、領域1にはない。図2bは、SKBR3細胞のイメージをそれに対応する測定蛍光信号とともに示す。蛍光イメージと測定PMT信号とは良く相関している。
【0016】
図3に示すように、米国特許出願第10/612,144号に開示されたイメージングシステムは、フレーム速度25Hzの標準モノクロ監視用電荷結合素子(CCD)カメラで構成され、手動ゲイン調節を有する(米国特許出願第10/612,144号)。光ビームに取り外し可能なミラーを挿入してこの配列を用いて、コンパクトディスク(CD)対物レンズによって捕捉された蛍光を、単なるピンホールの代わりにCCD上の球面色消しレンズ(f=150mm)によって集光する。このCD対物レンズは、単一の非球面レンズからなり、現行のCDプレイヤーに用いられているものと同様に、波長780nmにて回折制限スポットサイズが得られるように最適化されている。このレンズの好ましい開口率(NA)はお。45で、レンズ径が4mmで、楕円形状のイメージが2つの円柱レンズによって作成され、それらのレンズは個々の焦点長の2倍より僅かに長い距離で置かれている。楕円焦点の短軸は4μm(FWHM)に設定され、それは細胞の直径よりも短く、いかなるときも唯一の細胞に焦点を制限する。長軸はNi線間隔よりも長い。Ni線上に集光された光は反射され、フィードバック制御に使用される。Ni線は0.5mm厚ガラス基板上に置かれる。ガラス基板を通して、CD対物レンズでレーザー光(635nm)をNi線上に集光することは、非均質レーザー焦点を生じる。
【0017】
イメージングシステムは、スライド上への遠心堆積を用いるサイトスピンシステムで通常観察されるように、細胞にストレスを与えたりひずませたりしない磁気的収集法に基づく。ゆえに、磁気的に整列された細胞はその本来の三次元形状および体積を維持する。ここに記載する装置および方法を用いて、細胞の共焦点イメージも獲得し得、したがって、細胞内の蛍光ダイの3D分布のより正確な測定を可能にすることによってイメージ品位を向上させる。
【0018】
測定イベントの完全イメージ(完全イメージとは組み合わされた複数のデジタル化サブイメージからなる再構成イメージと定義される。)は、位置情報の獲得によって得られる。以前に測定されたイベントのイメージ獲得の前に、そのイベントを試料チャンバー上に再配置される。その結果、各サブイメージのx−y試料座標のごとき位置情報が必要である。y方向の位置情報を得るため、マグネットおよび試料チャンバーの双方を移動させるステージが解像度0.2ミクロンを有するエンコーダに取り付けられている。特定イベントのサブイメージのライン番号を測定してx方向の位置情報を与える。エンコーダ信号は、ライン番号とともにメモリーに保存され、各サブイメージにつき光電子倍増管(PMT)から測定された信号と結合する。この様にして、全ての測定サブイメージイベントを試料のx−y位置と関連付け、索引を付ける。
【0019】
特定のイベントまたはサブイメージが測定された場所に戻すため、レーザー焦点は現在のライン番号から特定のイベントが測定されたライン番号を差し引いてものと同等のラインの数分シフトする。同時に、ステージは特定のエンコーダ位置に向かってy方向に移動する。エンコーダ信号を得るための代替的な方法はNi線にプロファイルを付加して位置を記録することである。このアプローチは、さらに、試料を移動させるための著しい簡便かつ安価なステージの使用を許容する。さらに特記すべきは、Ni線を用いて細胞を整列させ、その細胞が対応するエンコーダ値で測定されるライン番号で再配置される間、本発明のイメージングNi線すなわち磁性線の存在に依存せず、細胞または着目する他の蛍光対象が存在するかまたは堆積し得るいかなる表面をも用い得る。スキャン方向のエンコーダデータのみが、保存され取り込まれたサブイメージの再構築に必要である。
【0020】
レーザー焦点の特定位置での強度プロファイルは非均質であり、細胞の直径が典型的には5ないし20ミクロンの間であるから、それの細胞径よりも小さい。それゆえ、細胞径よりも小さく非均質プロファイルを有するレーザー焦点での均一照射は、レーザー走査顕微鏡 (Corle, TR, Confocal Scanning Microscopy and Related Imaging Systems, Academic Press, NY, 1995) で行われるように、ビーム中の光学部品の移動で細胞表面を横切ってレーザーでスキャンすることによって得られる。米国特許出願第10/612,144号のイメージングシステムにおいて、この方法による均一照射はフィードバックの損失を生じ、今度は、それが、x方向の位置情報の損失を生じる。強度プロファイルはy方向の焦点スポットイメージの個々のピクセル強度を足し合わせた後に得られる。10ミクロン間隔のNi線で、合算した強度プロファイルはライン間隔を横切って±6%の強度偏差を有する。この焦点を通って細胞を移動させれば、細胞がレーザー焦点を通過した後、細胞の全体がほとんど同一の照射を受ける結果となる。この方法を用いて、サブイメージの総和に基づく整列細胞の完全高品位蛍光イメージを得る。
【0021】
マグネットおよびチャンバーは、焦点を通って細胞をy方向に移動させるステージ上に配置する。特定細胞の完全イメージを得るために、特定のサブイメージが測定されたラインにレーザー焦点をシフトし、ステージを10mm/秒の速度で対応するエンコーダ位置に向かってy方向に移動する。細胞位置までの距離が25ミクロンになったら、ステージを5μm/秒に減速する。この低い一定速度でy方向にステージを移動させつつ、細胞をレーザー焦点でスキャンし、各サブイメージにつき蛍光信号をCCDで捕捉する(図4)。
【0022】
フレームグラバーカードはCCDサブイメージを25Hzで捕捉し、これらをメモリーに保存する。各連続サブイメージにおいて、細胞の異なる部分を照射する。なぜならば、スキャニング方向のレーザー焦点は細胞径よりも小さいからである。サブイメージ捕捉と共に、エンコーダ位置を読み取り、双方をコンピュータメモリーに保存する。全部で40ミクロンをスキャンし、それは各々が150×250ピクセルの200枚の捕捉サブイメージに相当する。互いに平均0.2ミクロンシフトしている。これはCCD表面上で2.63ピクセルに相当する。エンコーダ値を用いて、捕捉サブイメージを、相関付けられたエンコーダ値×2.63の差に相当するピクセル数分シフトし、次いで、それを合計すなわちまとめる。これは図3に例示するような再構築フル細胞イメージを生じる。y方向のサブイメージ解像度はエンコーダ解像度(0.2ミクロン)に依存する。x方向の解像度は、x方向に記録されたイメージにおけるピクセル数(0.07ミクロン/ピクセル)によって決定される。どちらの解像度も回折限界よりも小さい。それゆえ、当業者は、撮像光学系ではなく、エンコーダまたはカメラによって最大イメージ解像度が決定されることを理解するであろう。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明のイメージング光学系の積分成分はイメージ全体の照射の均質性である。かくして、10ミクロンの間隔で置かれたNi線間に整列するように磁気的標識細胞と同一平面上に置かれた濃蛍光ダイ溶液の薄層で、プロファイルのこの均一性を評価する。このダイ層を、前記の通り、5μm/秒でスキャンし撮像する。連続的に捕捉されたサブイメージを図5aに表す。蛍光ダイの均一層のため、照射が均一であれば、均質な蛍光イメージが期待できる。得られたイメージを図5bに示す。イメージのy方向のセンタートレースに沿った強度単位で測定された観察信号は±7%で変化することが分かった。この変化のひとつの説明は、発光し捕捉された蛍光に影響するダイ層の非均質性であろう。別の説明は、ステージが一定速度で移動しなかったことであろう。ステージの位置はカメラのフレーム速度およびフレームグラバーカードと同調しないが、イメージはステージの速度およびy方向の位置に拘わらず25Hzにて取り込まれる。ステージがある領域で5ミクロン/秒より速く移動すると、この領域ではより少ないイメージしか捕捉されずより低い総強度をもたらす。しかしながら、ステージの速度の変化は測定され、測定されたイメージ強度の観察された変化よりも非常に小さなことが分かった。したがって、センタートレースに沿った見かけの非均質性はダイ層の非均質性によるものであろう。x方向すなわちNi線およびスキャニング方向に垂直な強度プロファイルも図5bに表される。この方向のサブイメージの強度は、Ni線のエッジ付近から離れたNi線間の中心で最大であることを示す。Ni線は発光した蛍光の障害物となり、収集角をより小さくし、今度は、それが、対物レンズの有効NAをより小さくする。図6aにおいて、対物レンズによって検出される有効立体角はチャンバーにおける位置の関数で算出される。10ミクロンの線間隔および14μmの深さすなわち層厚を用いてシミュレーションを行った。図6bのグラフは、z方向における図5aの算出立体角の値の合計を示し、かくして、x位置の関数で収集し測定した強度の指標を提供する。算出された強度プロファイルは均一ダイ層につき測定された強度と一致する。Ni線に近い対物レンズの有効NAは、大きく低減され、均一照射を用いたとしてもx方向で非均一捕捉強度を生じる。図6aにおいてマル印で示されるように、7ミクロンより小さな直径の対象はNi線の遮蔽効果による強度損失なく撮像される。なぜならば、この領域の有効NAはNi線によって低下しているからである。
【0024】
本発明に用いる好ましいカメラはDalsa エクリプス高感度TDIラインスキャンカメラである。それをフレームグラバーボードでコンピュータに接続する。このカメラは0ないし255のグレーレベル(8bit)を有し、全部で512の水平ピクセルおよび垂直方向に96TDIステージを持つ。ピクセルサイズは13ミクロンであり、最大線速度は64kHzである。
【0025】
CCDの応答性は波長に依存し、デジタル数(DN)で表示される。Delsa Eclipseラインスキャナーは、可視領域における高い量子効率のため、高い応答性を有する。この応答性は、典型的には、センサーの各列において0dBにつき1950DN/(nJ/cm)である。応答性は、ピクセル領域、各ピクセルのフィルファクター、CCDの量子効率(QE;電子/光子)、TDIステージ数(96)および電子利得にも依存する。このカメラのフィルファクターは100%であり、これは、CCDセンサーの全領域が光感受性であることを意味する。実際に信号電子に転換される光子の量はセンサーの量子効率(QE)に依存する。QE効率は通常0.4から0.7の範囲にある。各ピクセルの光応答は少し変化するが、TDI CCDカメラに関しては、標準フォトダイオード線形アレイと比較して光応答均一性が非常に良好である。光応答は96TDIステージ全部の平均化により向上し、非均一性は1/96の因子で低減される。暗電流分布に見られる平均化と同一の効果で、ピクセルの良好な均一性はカメラの線形アウトプットを向上させる。
【0026】
いくつかのノイズ源がCCDカメラには存在する。主要な源は、読み出しノイズ、光子ノイズ、および暗電流ノイズである。これらのノイズは、イメージングアレイ、読み出しレジスターおよびアウトプット構造に起因する。光子ノイズは、光子がCCDに入射し、シリコン層内部で光電子に転換されることと定義される。これらの光電子は信号を含むが、あるポイントで光子到達速度のゆらぎの統計的変動を保持している。読み出しノイズはCCD上の電子信号を定量するプロセスにおいて発生する不確実性をいう。暗電流ノイズは熱発生電子の統計的変動に起因する。これらの電子は熱変動によってCCD材料から生じる。これら全てノイズ源が、信号対ノイズ比(SNR)として表現される全信号の質に寄与する。
【0027】
SNRは測定の質を示す。詳しくは、ピクセルにて測定された全ノイズに対する測定された信号の比率である。高SNRは低光量測定を得るアプリケーションにおいて特に重要である。まとめると、CCDカメラの各ピクセルに対するSNRは以下の関係式:
【0028】
【数1】

【0029】
に依存し、ここに、Tintは総積分時間(秒)、Nは時間TintにCCDにヒットした信号光子数(フォトン)、Nは時間TintにCCDにヒットしたバックグラウンド光子数(フォトン)、Iは暗電流(電子/ピクセル/秒)、Nは読み出しノイズおよびnは量子効率である。
【0030】
TDIなしのイメージングシステムにおいて、SNRは撮像スキャン速度を低下させて特定イベントのサブイメージを大量に捕捉することによって向上させて、より良い信号対ノイズ比を得る。しかしながら、イメージスキャン速度を低下させると、APC標識SKBR3細胞のイメージ品位には向上が観察されない。撮像スキャン速度の限界は、ダイ分子の光脱色速度によって決定される。SKBR3を二回目にスキャンするとCCDカメラでは蛍光が検出されず、ほとんどのAPC分子が、一回目のスキャンですでに光破壊されていることを示している。したがって、スキャン速度の低減は検出された蛍光信号に差異をもたらさず、蛍光バックグラウンドを増大させるだけであろう。したがって、最適なスキャン速度は個々のダイの特性に依存し、各蛍光ダイによって異なる。それゆえ、信号対ノイズ比を向上させるためには、より速くスキャンするのがよい。一方、25Hzのフレーム速度のカメラを用いたとき、5ミクロン/秒より速いスキャン速度は解像度の損失を生じる。なぜならば、捕捉イメージは0.2ミクロン以上離れるからである。より高いフレーム速度のCCDカメラが、解像度を損失させずにより速くスキャンするために必要である。標準監視用CCDカメラをより感度の高いカメラに置換することもぼんやりと染色された細胞のイメージングを可能にする。
【0031】
本発明で特許請求されるTDIカメラ付きのイメージングシステムにおけるSNRは、カメラ、総積分時間および積分中にCCDにヒットする信号光子の量に依存する。これらの信号光子は細胞に付着した蛍光ダイから生じる。蛍光信号光子の総量はこれらのダイについて一定ではなく、ダイの脱色による減少した総時間により低減する。その結果は、遅いスキャン速度(長い積分時間)にて集まったほとんどの蛍光が高いSNRを生じる。しかしながら、1秒あたり発光される光子数が非常に少なく、暗電流が低いSNRを生じる電荷分布を支配する場合、スキャン速度は遅すぎるであろう。
【0032】
その結果、スキャン速度は最大SNRを得るために用いる特定のダイに調整すべきであろう。典型的な状況は、本発明のTDIイメージング装置で最高のSNRを得るために蛍光インジケータを用いる場合、試料ステージに対してY方向の最適スキャン速度を決定することであろう。SNRの依存性は脱色速度、レーザー照射および倍率に対してであろう。図7はいくつかのレーザーパワーでのローダミンGについて算出されたSNRを示す。測定は表1のパラメータに基づく。
【0033】
【表1】

【0034】
低いスキャン速度にて、SNRは速度の増加とともに向上する。SNRは照射パワーの増大とともに向上する。光子の総量が暗電流光子の量よりも多くなったとき、最大SNRが得られる。したがって、スキャニングが遅すぎる場合、SNRは減少し、蛍光発色団によって発光される光子の率は十分には高くない。スキャニングが速すぎる場合、より少ない量の光子が収集され、SNRの減少をもたらす。図8は10mWのレーザーパワーについてのいくつかの倍率で算出されたSNRである。倍率が低くなり、より小さな対象に対してCCD上の光子密度がより高くなるにつれ、SNRは向上する。図7は、65倍の倍率および10mWのレーザーパワーで、約1.8mm/秒が最適速度であることを示す。倍率が上昇するに従って(図8)、最適速度は減少する。
【0035】
上記のごとく、SNRは積分時間の関数でもある。図9は、積分時間の関数で、CCDに到達した光子量およびSNRとの関連を示す。一定照射に対する最適SNRは定常的に上昇し、ピクセルが保持し得る電荷量によって制限される。最善の特性に対して、高い照射率は総収集時間を短縮し、暗電流の総量を減少させる。
【0036】
TDI付きのイメージングシステムのSNRは、好ましくは、約1ないし2.5mm/秒の範囲の速度で対象をスキャンする。本発明の範囲を限定しないが、このSNRはローダミン6Gに基づき算出され、特定のダイに依存する。
【0037】
元来のイメージングシステム(米国特許出願第10/612,144号)は、いくつかの蛍光ラベルに対する励起源として赤色レーザーダイオードを用いる。エンコーダを用いて、細胞の位置情報を得、整列細胞を再配置する。
【0038】
TDIイメージング装置付きのCellTracksは、全ての赤色励起可能ダイおよびそれらのダイの発光を、使用できるダイの量を拡張し、さらに離れた発光スペクトルを有するための別の緑色レーザー(532nm)と共に、内包する(図10)。この緑色レーザービームはビームエキスパンダーによって4倍に拡張される。円柱レンズで、楕円スポットを作り、CD対物レンズで集光した後、2つの焦点面を生じる(図11)。緑色レーザー光を反射し、赤色レーザー光を通過させる二色ミラーを用いて2つのレーザー光を合わせる。緑色レーザースポットは赤色レーザースポットとオーバーラップする。色消しレンズをCDレンズと置き換えて、ビーム内で組み合わさった赤色および緑色レーザー光に対して同等の焦点面を得る。これは、ビームが平行に走ることを可能にする。ミラー/2色性ミラーの組合せを用いて、CCD上の異なる位置に赤色蛍光、その後緑色蛍光を投影する。次いで、PMTまたは、本発明のごとくTDIカメラで、蛍光信号を測定する。緑色蛍光をCCDの左側領域に投影し、赤色レーザー励起からの蛍光はCCDの右側領域に投影する。
【0039】
TDIカメラを用いたイメージに必要な倍率は位置エンコーダおよびカメラの解像度に依存する。好ましいエンコーダは、0.2ミクロンの解像度を持つHeidenhein MT 2571 である。このエンコーダはTTLパルスを0.2ミクロン毎発生し、TDIカメラおよびパルスのトリガーとして用いられ、ひとつのTDI行シフトをもたらす。
【0040】
矩形ピクセルイメージを達成するために、y方向のピクセルサイズはx方向のピクセルサイズと等しい。各パルス後、TDI行をCCD上で、対応距離lp=13ミクロン分移動する。これは、この構成に対して、倍率13/0.2=65をもたらす。別の倍率を用いるため、カウンターを用いる。このカウンターは、エンコーダの1、2、4、6、・・・パルス後に、1TTLパルスを与える。このカウンターで、以下の倍率を用い得る。
【0041】
【数2】

【0042】
エンコーダを用いるとき、設定はある倍率に制約され、対象の動きとTDI行のシフトとが同調することを保証するように補正されることがきわめて重要である。ステージの倍率とカメラとのミスマッチがイメージのピンボケをもたらす。倍率が大きすぎるか小さすぎる場合、イメージは、それぞれ、前方または後方に引き延ばされる。倍率が同調している場合、x−yステージの速度は変化するがカメラの最大および最小ライン速度によって限定される。カメラの最小ライン速度は約100Hzであり、0.01秒のライン時間および全TDIステージにつき0.96秒の総露出時間に相当する。エンコーダを用いない場合も、ライン速度およびx−yステージの速度はある倍率に対して固定値を有する。
【0043】
エンコーダは、ライン速度を制御するためにカメラをトリガーするパルスを送る。また、連結して、フレームグラバーはエンコーダ信号の各立ち下がりエッジにつきLVDSフォーマットのパルスをカメラに送る。エンコーダの解像度を確認するために、ステップ量を5m秒間カウントする。カウンター値を20KHzのサンプリング周期で測定する。
【0044】
イメージ解像度、特に横方向の解像度は、波長、焦点距離および入射径に依存し、全て対物レンズの回折限界で限定される。本発明で検討されている対物レンズのひとつはSony CD ピックアップシステム(KSS-210ARP)である。このCDシステムのアキュレータを焦点距離f=3.8mm、開口率NA=0.45、および開口径D=4mmで用いる。CDレンズは720nmで作動するように設計され、それゆえ、他の波長に対して球面かつ色消しの収差を生じることが予想され、それは解像度を低下させる。
【0045】
エンコーダの解像度はM=65で0.2ミクロンであり、CCD行をシフトして、照射は常に2つのピクセルに広げられて、イメージに対して0.4ミクロンである。この解像度は、光学的限界よりも高く、光学的解像度によって限定される。
【0046】
X方向において、スキャニング方向とTDI行との間のミスマッチが解像度の低下をもたらす。細胞の動きはTDI行と平行であるべきである。オーバーラップするピクセル数は増大し、偏角より高くなる(図12)。Y方向において、倍率のミスマッチもオーバーラップするピクセルによるピンボケ効果で解像度の低下を招く。
【0047】
収集および照射効率はレンズの集光力(NA)によって決定される。本発明において、ピックアップアキュレータ内でCDレンズを色消しレンズと置き換える。この色消しレンズは7.5mmの焦点距離および6.5mmの入射開口を有している。NAは約0.27である。立体角(図13)は色消しレンズで0.21であり、CDレンズの立体角0.72と置き換える。色消しレンズを緑色レーザーにも用いて、同一の焦点距離を有するようにする。しかしながら、色消しレンズの立体角はCDレンズの立体角よりも非常に小さい。立体角は収集した光の強度に比例するので、CDレンズは色消しレンズよりも効率的である。色消しレンズは、(光子の照射および収集の双方に対して約15の因子で)感度が制限されるが、第2のレーザーを付加するにはより簡便であり、システムのトラッキングおよびフォーカシングを可能とする。開口率(NA>0.5)のより高いNAを有する色消しレンズが好ましい。これはより高いSNRおよびより高い解像度をもたらす。本発明も顕微鏡対物レンズの使用を検討するが、このタイプの対物レンズはトラッキングおよびフォーカシング系の変更を余儀なくする。
【0048】
蛍光発光のイメージングおよびスペクトル分離のため、プリズムまたはフィルターの組合せを用い得る。二色ミラーの使用の代わりに、CCDの前にプリズムを挿入する。直視プリズムでは、屈折角は波長に依存し、屈折角は光の入射線とほぼ平行である。蛍光がスペクトルオーバーラップなしで分離されているイメージを得るために、スペクトル分離は最大細胞サイズより大きく分離するのに十分大きくなければならない。例えば、最大細胞サイズが20ミクロンの場合、APCとPEとの発光は約100nm離れており、発光のバンド幅は約10nmであって、X方向に2ミクロンのピクセル解像度をもたらす。かくして、より小さな発光スペクトルのダイが0.7から約1ミクロンの光学的解像度を得るのに必要である。二色ミラー/ミラーの組合せも用い得、これによって、光波長側パスフィルターおよびほぼ平行なミラーを用いて、蛍光発光を2つの別個の領域に分離し得る。例えば、緑色レーザーで励起したPEの発光は、フィルター表面で反射するが、APCの発光はフィルターを通過し、ミラーで反射する。
【0049】
CellTracksのごときイメージングシステムへのTDIイメージングの付加は、スキャニングミラーおよびフルフレーム型CCDでの解析と比較して、良好なイメージ解像度および向上した信号対ノイズの方法を提供する。スキャン速度もTDIイメージング下、(1.5mm/秒の速度にて)1ラインを撮像する時間分である約10秒増加させる。以前の方法はこの時間でたった1つの細胞を測定するだけであろう。デュアル励起レーザーで、1を超えるダイの蛍光発光を撮像することが可能である。同一の吸収スペクトルを有するが異なる発光スペクトルを有するダイは、互いに近接する発光を有し、これらのダイを撮像するためには狭いバンド幅のフィルターが要求される。
【0050】
本発明のスキャニングおよびイメージングシステムは前記の好ましい具体例に限定されないことは、当業者にとって明白であり、前記したように、これらの改良を含む本発明の好ましい具体例は、本発明が多くの分野および細胞診断および一般的な特定の標的種に対するアプリケーションに採用されることを可能にすることが分かった。以下の実施例は本発明を具体的に例示するが、それによって範囲は限定されない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
実施例1
これらの実験のため、10μLの固定化SKBR3(50,000細胞/mL)を290μLのEDTA血液と混合した。100μLの抗EpCAMでコートした磁性フェロ流体(タンパク質、ストレプトアビジンおよびビオチン化EpCAM抗体でコートした約200nmサイズの磁性粒子)、(Immunicon Corp., Huntington Valley, PAで培養された)SKBR3細胞上に存在することが知られている上皮細胞に特異的な抗体、抗サイトケラチン種すなわち上皮細胞に存在する細胞骨格タンパク質(例えば、上皮細胞由来のSKBR3)に結合したアロフィコシアニン(APC)10μLおよび10μLのCD45−APC/Cy7(Caltag, Burlingame, CA) も同時に添加して、白血球を同定し、サイトケラチン抗体に非特異的に結合するであろう白血球を同定した。15分間のインキュベーション後、50μLのこの血液反応混合物をチャンバーに注入した。チャンバーをCellTracksマグネットアッセンブリーに入れ、2分間の収集時間後、フィードバックシステムのスイッチを入れ、測定を開始した。単一の測定において、各々15mm長、30μmのライン間隔である40ラインの整列細胞をスキャンした。0.5mmのチャンバー高にて、スキャンする体積は9μLである。収集標識SKBR3細胞のスキャニングの結果およびそれに対応する測定免疫蛍光信号を図2aおよび2bに示す。図2aは、EpCAM−標識磁性ナノ粒子によって捕捉され整列された、全血中のSKBR3のCAM5.2抗体−APC蛍光に対するCD45−APC/Cy7の散布図を示す。領域1、SKBR3領域、およびデブリスを含有するブロードなバンドの測定イベントのいくつかの代表イメージを示す。領域2は、存在すれば、Ni線に沿って整列した白血球が出現する領域である。図2bは一つのSKBR3のイメージとそれに対応する測定蛍光信号を示す。
【0052】
実施例2
この実験において、100μLのEDTA抗凝集血液、5μgのCD45−標識フェロ磁性ナノ粒子を含有する50μLのフェロ流体、1.5μLのCD4−APCおよび25μLの10−5M オキサジン750ペルクロラート(Exciton Inc., Dayton, OH)を添加した。これらの試薬の最適濃度は試薬の各々の連続的な滴定によって求めた。15分間のインキュベーション後、300μLのBBSを添加し、50μLの血液混合物をマグネット間にすでに配置されているキャピラリーに入れた。このキャピラリーは、マグネットの70゜傾斜面間に適合するような形状のガラス底を有する。厚さ0.5mmの2本の両面テープ(3M Co., St. Paul, MN)を3mmの間隔をあけて前記ガラスに貼って、キャピラリーの側面とした。約30μm幅かつ約0.2μm厚のNi線は、7740 PyrexR ガラスウェハー(Corning International, Germany)上に標準フォトリソグラフ技術によって形成した。ウェハーを4mm×25mmの断片に切り出し、これらをNi線が底を向くようにして両面テープ上に置き、キャピラリーの上部とした。キャピラリーの内寸は、高さ=0.5mm、長さ=25mm、幅=3mmである。ここに提示する測定において、y方向のスキャン速度は4mm/秒であり、チャンバーは15mmにわたってスキャンし、40ラインをスキャンして、測定時間は2分半であった。線の周期が30μmなので、スキャンされた面積は18mmである。チャンバーの高さが0.5mmなので、スキャンされた体積は9μLである。特異的な白血球数(the differential white blood cell counts)に対して、試薬の添加は4.77の希釈度を生じた。細胞が線間に整列し、弱い磁場であっても細胞が上面に引き寄せられることを保証するのに必要とする時間を短縮するため、全血をキャピラリーに入れた後、キャピラリーをマグネットと一緒にひっくり返した。2分間後、マグネットとともにキャピラリーを再びひっくり返し、約1分間後フィードバック系のスイッチを入れ、測定を開始した。発光スペクトルを分離するため、APC用に660df32バンドパスフィルターおよびオキサジン750用に730df100バンドパスフィルター(両フィルターともOmega Optical Co., Brattleboro, VT製)を用いた。オキサジン750染色細胞の蛍光強度が免疫蛍光CD4−APC標識細胞のものよりも非常に強いので、スペクトラルオーバーラップの補償が必要である。補償後の散布図の典型例を図14に示す。4つの集団が明瞭に見られ、CD4+リンパ球、CD4+単球、CD4−リンパ球および好中性顆粒球と同定された。この図に例示されたゲート設定を用いて各ゲートでのイベント数を決定した。測定された白血球の総数は12,350個であり、測定時間は2.5分であった。検出された対象からの蛍光の分布を調べるために、ユーザーが散布図中で着目する対象を指し示せるようにソフトウェアを書いた。次いで、このシステムをこのイベントの場所に移動させてイメージを撮像した。驚くべきことに、イメージは、オキサジン750染色からの蛍光は核に由来せず、顆粒に由来することを明確に示した[Shapiro HM, Stephens S: Flow cytometry of DNA content Using Oxazine 750 or Related Laser Dyes With 633 nm Excitation, Cytometry 1986; 7: 107-10]。顆粒ゲートにおけるイベントから6つのイメージおよび単球ゲートにおけるイベントから2つのイメージを示す。
【0053】
実施例3
実施例2に記載された実験の繰り返しであるが、全血中オキサジン750染色およびCD45フェロ流体捕捉白血球から、CellTracksイメージングシステムで時間分解イメージを撮像した。図15は、20秒間隔で撮像した4例のイメージを示す。フレーム3および4の後の細胞から明らかなように、細胞内の蛍光分布は、時間間隔で明らかに変化しつつあり、異なる細胞は異なる挙動を示した。両フレームにおいて、近接する2つの細胞からのイメージが撮像され、オキサジン750の取込および細胞内分布の違いが明らかである。これらの例から、このイメージングシステムは細胞の機能的分析を行う独特の能力を有し、例えば、血液中の細胞の薬物その他の成分に対する反応をリアルタイムで研究できる。
【0054】
実施例4
CellTracksイメージングシステムへのTDI導入を蛍光ビーズおよびHELA腫瘍細胞で試験した。96CCD面のある非冷却Dalsa Eclipseカメラを用いた。試料チャンバーとともに移動するステージに0.2ミクロンの解像度を有するエンコーダを備え付けた。TDI行をエンコーダパルス毎にシフトさせて、移動する細胞とCCD上のそのイメージとの間の一対一対応を保証する。HELA腫瘍細胞は抗サイトケラチン−PEで標識し、核はDAPIで染色した。明視野イメージは880nmIR−LEDで作成した。TDIイメージングは最適スキャン速度にて、良好なSNRで、細胞の高速イメージングをもたらした。
【0055】
本発明を特定の具体例を参照して説明してきたが、それら、例えば、ここに記載する特定の実験条件から多くの変形をなすことができることを当業者は理解するであろう。また、本発明による開示が本発明のより広い範囲およびその本質から逸脱することなく、単にいくつかの好ましい具体例と本発明の目的および利点を示すのみであることは、理解され認識されるべきである。本発明によるこれらの発見は、当業者が想定するであろう装置および方法のさらなる可能性ある多くのアプリケーションを単に例示するものであり、かくして、本発明をいかなる風にも限定する意図はないことを理解し認識すべきである。したがって、当業者にとって、本発明の他の目的および利点は、詳細な説明および不随する特許請求の範囲から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】TDIイメージングによる対象分析方法。丸印で示す対象は垂直軸に沿って移動している。センサー領域内では、ピクセルウェル内の電荷は露出の増加に伴って連続的に増加し、通過細胞に沿って移動する。時刻T+11にて、センサーの端部に達し、読み出しレジスターが全TDIステージにわたって積分した電荷量を読み出す。
【図2】(a)EpCAM−標識磁性ナノ粒子によって捕捉され整列された、全血中のSKBR3のCAM5.2抗体−APC蛍光に対するCD45−APC/Cy7の散布図。領域1、SKBR3領域、およびデブリスを含有するブロードなバンドの測定イベントのいくつかの代表イメージを示す。領域2は、存在すれば、Ni線に沿って整列した白血球が出現する領域である。(b)一つのSKBR3の完全イメージとそれに対応する測定蛍光信号。
【図3】米国特許出願第10/612,144号に開示された典型的イメージングシステムの概略図。
【図4】イメージ再構築の概略を示す。エンコーダを備えたステージを移動させることによって、検出されたイベントすなわち細胞をレーザーでスキャンする。CCDカメラは個々のサブイメージを捕捉し、それらをステージのx−y座標を位置付ける対応するエンコーダと一緒にコンピュータに保存する。スキャニングが完了した後、エンコーダ値を用いて、サブイメージを組み合わせて、対象の完全再構築イメージを作成し、次なるサブイメージを互いに対してシフトすべきピクセル数に逆算する。シフトされたサブイメージの足し合わせが細胞の完全再構築蛍光イメージを与える。
【図5】(a)ダイの均質層をスキャンして得られた蛍光信号。(b)スキャンした同一ダイに対するxおよびy方向の蛍光強度の和を示す2つのグラフ。
【図6】(a)チャンバーの位置の関数で、対物レンズによって捕捉された立体角の概略図。コンパクトディスク(CD)対物レンズの空気中での開口率(NA)は0.45であり、ステージ上のチャンバー内では0.34の有効NAを生じる。このNAは立体角0.37に相当する。丸印は、直径7ミクロンの整列対象を表す。2点の有効収集角を表示する。(b)グラフはz方向の図4aの算出立体角の相対和を示す。
【図7】ローダミン6Gで標識した細胞をスキャンしたときのいくつかのレーザーパワーに対するSNR測定。
【図8】ローダミン6Gで標識した細胞をスキャンし、10mWのレーザーパワーで照射たときの様々な倍率でのSNR測定。
【図9】暗電流から電荷を収集するCCD信号、読み出しノイズおよび一定照射および蛍光ダイからの信号光子の例示。垂直線は、ダイからの発光に対してSNRが最適な時刻を示す。
【図10】TDIを備えたCell Tracks システムの概略図。代表的なデュアルレーザー(赤色/緑色)はいくつかのダイの使用を可能とする。
【図11】試料を照射するレーザースポット。ニッケル線が左右に光を反射する。
【図12】整列ミスのためオーバーラップするピクセル数。
【図13】照射および収集用の光の円錐。
【図14】CD45標識磁性ナノ粒子によって捕捉され整列された全血中の白血球のオキサジン750蛍光対CD4−APC蛍光の散布図。単球および顆粒球領域のいくつかの代表的イメージを示す。
【図15】Cell Tracks システムを用いて全血中のオキサジン750染色CD45フェロ流体捕捉白血球の時間分解イメージング:時間範囲は20秒間隔で0から120秒である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的部分の解析イメージング方法であって、
a.標的部分を含有することが疑われる試料を取得し、
b.標的部分に特異的な磁性粒子で、標的部分を磁気的標識し、
c.標的部分を試料チャンバーの収集表面に向かって磁気的に操作し、
d.スキャニングステージ上で試料チャンバーを移動させつつ、収集標的部分を照射し、
e.収集標的部分からの発光を検出し、次いで
f.収集標的部分の特徴を、強度、色彩、モルホロジーおよびそれらの組合せよりなる群から評価する方法。
【請求項2】
さらに、
a.発光光を検出し、これによって、収集標的部分の連続的サブイメージを収集し、
b.これらのサブイメージを再び合わせて収集標的部分の完全イメージを構築することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
発光光をTDIによって検出する請求項1に記載の方法。
【請求項4】
照射ステップが、さらに複数の波長光源の使用を含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
照射がレーザーの励起によるものである請求項1に記載の方法。
【請求項6】
励起が青色または緑色である請求項4に記載の方法。
【請求項7】
検出が蛍光発光である請求項1に記載の方法。
【請求項8】
発光光が、緑色蛍光発光、青色蛍光発光、明視野光およびそれらの組合せよりなる群からのものである請求項1に記載の方法。
【請求項9】
標的部分が、上皮細胞、内皮細胞、腫瘍細胞、細胞デブリスおよびそれらの組合せよりなる群からのものである請求項1に記載の方法。
【請求項10】
磁性ラベルが、標的部分の光源部位に特異的なコロイド状磁性粒子である請求項1に記載の方法。
【請求項11】
コロイド状磁性粒子が上皮細胞接着分子(EpCAM)である請求項10に記載の方法。
【請求項12】
収集表面がガラス基板上の平行ニッケル線を含む請求項1に記載の方法。
【請求項13】
収集表面を備えた試料チャンバー、磁気的標識標的部分を収集表面に向かって操作できるマグネットの配列、少なくとも一つの光源、およびコンピュータを有する標的部分を解析イメージングするための改良された装置であって、
a.制御された速度および位置に固定された試料チャンバーを備えたスキャニングステージ、および
b.TDIカメラ
を含む装置。
【請求項14】
収集表面がガラス基板上の平行ニッケル線を含む請求項13に記載の装置。
【請求項15】
光源がレーザーである請求項13に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2007−502419(P2007−502419A)
【公表日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−523324(P2006−523324)
【出願日】平成16年8月10日(2004.8.10)
【国際出願番号】PCT/US2004/025981
【国際公開番号】WO2005/027037
【国際公開日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(399012963)イムニベスト・コーポレイション (10)
【氏名又は名称原語表記】IMMUNIVEST CORPORATION
【Fターム(参考)】