説明

暗号機能付デジタルインターフェースを備えたストリーム記録装置

【課題】頭切れを防止したデジタルコンテンツのムーブ処理技術を提供する。
【解決手段】まず、ムーブ先機器Bからのコンテンツ再生要求31に基づいてムーブ元機器Aにおいて、実コンテンツパラメータを確認する(32)。次いで、ダミーコンテンツのパラメータを実コンテンツのパラメータと一致するように設定した後、ダミーコンテンツの再生を開始する(34)。次いで、認証とキー交換35、36を行った後、実コンテンツの再生を開始する(37)。認証とキー交換(35)、(36)を行った時点までが暗号解読不能期間t1であり、その後が暗号解読可能期間t2である。暗号解読不能時間は、おおむね、ムーブ先機器からのコンテンツ再生要求から暗号解読が可能になった時間(認証キーを得て、ムーブ元機器との間でキー交換が完了した時点までの期間)を指す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暗号化されたストリームコンテンツをムーブ先機器側に提供するためのコンテンツデジタルインターフェースを搭載した記録装置に関し、特に、ムーブ時におけるムーブ先機器側でのコンテンツの頭切れを防止する機能を有する記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル放送においては、簡単にコピーが可能になると著作権上問題になるため、コピー制限が課されているのが一般的である。代表例であるコピーアットワンスでは、デジタル放送などのコピー制御がかかった信号を一度HDDレコーダなどのデジタル記録装置に記録すると、以後、コピーはできずに移動(ムーブ)しかできなくなる。
【0003】
図5は一般的なストリームデータ記憶装置の構成例を示す機能ブロック図である。図6は、この装置におけるダビング時のシーケンス図である。
【0004】
図5に示すように、ストリーム記録装置Xは、IEEE1394インターフェース101と、暗号装置103と、制御用CPU105と、コンテンツ蓄積用HDD107とを有している。一方、コピー先の記録装置Yは、IEEE1394インターフェース115と、暗号解読装置117と、制御用CPU121と、コンテンツ蓄積用HDD123と、を有している。IEEE1394インターフェース101・115は、ケーブル111により接続可能である。
【0005】
図6に示すように、上記装置においては、まず、コピー先機器Yからのコンテンツ再生要求131に基づいてコピー元機器Xにおいてコンテンツ再生が開始される(132)。認証、キー交換(133,134)により暗号解読不能期間t3から暗号解読可能期間t4になる。
【0006】
IEEE1394インターフェースの場合にはDTCP暗号化などの暗号化がかかっているため、ムーブ時は、暗号化ストリームをムーブ先機器に対して送出した後で、ムーブ元/ムーブ先の機器間で認証・暗号解読処理を行い、その後に初めてムーブ先の機器においては暗号を解読したストリームを得ることができる。
【0007】
従って、暗号解読処理が終了するまでの時間の信号は捨てていたために、頭切れの状態でしかムーブ処理ができなかった。尚、この点をムーブ先機器側で認証タイミングを早めることで解決する技術がある(特許文献1参照)。
【0008】
【特許文献1】特開2001−43621号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ムーブ先が上記のような機能を持たない場合には頭切れが発生する。特許文献1に記載の技術を用いた場合にも、ムーブ元機器がタイトルの再生開始時に一度ストリームデータを止めると認証処理からやり直さざるを得ないため、このようなムーブ元機器には対応できない(ムーブ元とムーブ先の組み合わせによっては対応できない)。
【0010】
本発明は、頭切れを防止したデジタルコンテンツのムーブ処理技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
ムーブ元の機器側でタイトルの頭に認証時間分の余裕を持たしたダミーコンテンツを入れる。これにより、ムーブ先機器に対して頭切れの防止が可能となる。
【発明の効果】
【0012】
ムーブ先機器がDVDレコーダ/DVHSなどの種々の機器に対して頭切れを防止したデジタルコンテンツのムーブ処理が可能となる。また、コンテンツの先頭に実際のコンテンツと同解像度のダミー画面を付加しているため、ダミー画面の再生終了後にテレビのフォーマット変換が起こらないため違和感のない映像表示が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態による暗号機能付デジタルインターフェースを備えたストリーム記録装置(以下、「記録装置」と称する。)について図面を参照しつつ説明を行う。
【0014】
図1は、本実施の形態による記録装置の一構成例を示す図である。図1に示すように、本実施の形態によるストリーム記録装置Aは、IEEE1394インターフェース1と、暗号装置3と、制御用CPU5と、エンコーダ装置7と、コンテンツ蓄積用HDD11と、を有している。一方、ムーブ先の記録装置Bは、IEEE1394インターフェース21と、暗号解読装置23と、制御用CPU25と、コンテンツ蓄積用HDD27と、を有している。IEEE1394インターフェース1・21は、ケーブル15により接続可能である。コンテンツ蓄積用HDD11に蓄積する前にダミーコンテンツを実コンテンツに付加しても良いし、再生時にエンコードされた実コンテンツデータにダミーコンテンツデータを付加しても良いが、本明細書においては、図示しないが、ダミーコンテンツを付加する機能をダミーコンテンツ付加部と称する。
【0015】
図2は、本実施の形態によるムーブ元のストリーム記録装置Aにおける処理の流れを示すフローチャート図である。図2に示すように、ステップS1において、コンテンツ再生要求を受信する。次いで、ステップS2において、HDD11内のコンテンツパラメータを確認する。ステップS3において、エンコードパラメータを確認し、ステップS4において、エンコーダ7にダミーコンテンツ用のブランクを入力した後、ステップS5においてエンコードを開始する。ステップS6において暗号キーを設定し、ステップS7においてダミーコンテンツのムーブ先機器側への送信を開始する。ステップS8において認証、キー交換を行い、ステップS9において一定時間だけ待機した後にステップS10においてムーブ先機器側のHDD内に転送されたコンテンツの再生を開始する。
【0016】
尚、ステップS2とS3におけるパラメータは、解像度、アスペクト、コンテンツのPIDなどを指す。ダミーコンテンツと実コンテンツとで、パラメータが異なるとダミーから実コンテンツへの切り替割時に映像が乱れるなどのショックがある。そこで、これらのパラメータを合わせるように設定する。
【0017】
図3は、上記機器間のダビング処理時の概要を示すシーケンス図であり、図6に対応する図である。図3に示すように、上記装置においては、まず、ムーブ先機器Bからのコンテンツ再生要求31に基づいてムーブ元機器Aにおいて、実コンテンツパラメータを確認する(32)。次いで、ダミーコンテンツのパラメータを実コンテンツのパラメータと一致するように設定した後、ダミーコンテンツの再生を開始する(34)。次いで、認証とキー交換35、36を行った後、実コンテンツの再生を開始する(37)。認証とキー交換35、36を行った時点までが暗号解読不能期間t1であり、その後が暗号解読可能期間t2である。暗号解読不能時間は、おおむね、ムーブ先機器からのコンテンツ再生要求から暗号解読が可能になった時間(認証キーを得て、ムーブ先機器との間でキー交換が完了した時点までの期間)を指す。
【0018】
図4(a)は、ダミーコンテンツを含むコンテンツのデータ構成を示す図であり、先頭側にダミーコンテンツ41が、その後に実コンテンツ43が配置される。従って、図4(b)に示すように、まずHDD内ダミー区間(t10〜t11)に基づく再生に次いで、HDD内実コンテンツ再生区間(t11以降)に基づく再生が行われる。
【0019】
このように、ムーブ元の機器A側で予め、移動するタイトルの先頭に通常認証に要するだけの時間分だけのダミーコンテンツ(例えば黒画面などのダミー画面を再生するコンテンツ)を挿入した状態で移動処理を行うことにより、全てのムーブ先機器Bについて頭切れを防止する記録再生装置を実現することができる。
【0020】
尚、その後に再生する実コンテンツと同じフォーマット(例えば、1920x1080i,720x480i 16:9 or 4:3など)に合わせるように再生時における上記黒画面のサイズを調整する制御を行うこともできる。これにより、コンテンツ先頭でのテレビ表示に関連するフォーマット切り替え処理を行わないようにすることができる。
【0021】
また、予め、黒画面をエンコードしたデータをHDD内に記録しておき、HDD内に記録したエンコードデータとタイトルとをインデックス又はIDにより関連付けしておけば、装置内にエンコーダの実装を行わなくても良いので装置が簡単化できるという利点がある。
【0022】
また、コンテンツ送出時にエンコーダで黒画面をエンコードした画像を一定時間分送出後に実コンテンツを送出するように制御する構成でも良い。これにより、HDDの空き領域を確保することができるという利点がある。
【0023】
尚、コンテンツ付加部において、記録されたコンテンツの解像度、アスペクトと同一の解像度、アスペクトとなるようにあらかじめサポートする全ての解像度、アスペクトの前記ダミー画面をエンコードしたデータをコンテンツ蓄積部内に記録しておき、それをコンテンツの頭に付加して再生するようにしても良いし、黒画面(ダミー画面)の時間を調整する機能を有していても良い。また、上記方法をコンピュータに実行させるためのプログラム、及びこのプログラムを記録した記憶媒体も発明の範囲に入るものである。
【0024】
尚、コンテンツ送出バスがIEEE1394であっても、USBであっても、また、イーサネットであっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、記録再生装置に利用可能である。ストリームの記録先がHDD、DVD、BD(ブルーレイディスク)のいずれであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施の形態による記録装置の一構成例を示す図である。
【図2】本実施の形態によるムーブ元のストリーム記録装置Aにおける処理の流れを示すフローチャート図である。
【図3】機器間のダビング処理時の概要を示すシーケンス図である。
【図4】図4(a)は、ダミーコンテンツを含むコンテンツのデータ構成を示す図であり、図4(b)は、HDD内ダミー区間に基づく再生に次いで、HDD内実コンテンツ再生区間に基づく再生が行われる様子を示す図である。
【図5】一般的なストリームデータ記憶装置の構成例を示す機能ブロック図である。
【図6】図5に示す装置におけるダビング時のシーケンス図である。
【符号の説明】
【0027】
A…ストリーム記録装置、1…IEEE1394インターフェース、3…暗号装置、5…制御用CPU、7…エンコーダ装置、11…コンテンツ蓄積用HDD、15…ケーブル、B…ムーブ先の記録装置、21…IEEE1394インターフェース、23…暗号解読装置、25…制御用CPU、27…コンテンツ蓄積用HDD。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストリームコンテンツを蓄積するコンテンツ蓄積部と、
前記ストリームコンテンツを暗号化する暗号化部と、
前記ストリームコンテンツのムーブ時に該ストリームコンテンツの先頭にダミー画面を再生するためのダミーデータを付加するダミーコンテンツデータ付加部と
暗号化された前記ストリームコンテンツをムーブ先機器側に提供するためのコンテンツデジタルインターフェースと
を有することを特徴とするコンテンツ記録装置。
【請求項2】
ストリームコンテンツのムーブ時に該ストリームコンテンツの先頭にダミー画面を再生するためのダミーデータが付加された状態のストリームコンテンツを蓄積するコンテンツ蓄積部と、
前記ストリームコンテンツを暗号化する暗号化部と、
暗号化された前記ストリームコンテンツをムーブ先機器側に提供するためのコンテンツデジタルインターフェースと
を有することを特徴とするコンテンツ記録装置。
【請求項3】
前記ダミーデータは暗号解読不能期間に相当する分だけ付加することを特徴とする請求項1又は2に記載のコンテンツ記録装置。
【請求項4】
前記暗号解読不能期間は、ムーブ先機器からのコンテンツ再生要求から暗号解読が可能になった時間であることを特徴とする請求項3に記載のコンテンツ記録装置。
【請求項5】
前記ダミーコンテンツの解像度又はアスペクトを含むフォーマットを前記ストリームコンテンツのフォーマットに合わせる方向に変換するフォーマット変換部を有することを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項に記載のコンテンツ記録装置。
【請求項6】
記録されたコンテンツの解像度、アスペクトと同一の解像度、アスペクトとなるようにエンコーダでリアルタイムに前記ダミー画面のエンコードデータを作成する制御を行うことを特徴とする請求項5に記載のコンテンツ記録装置。
【請求項7】
前記コンテンツ付加部は、記録されたコンテンツの解像度、アスペクトと同一の解像度、アスペクトとなるようにあらかじめサポートする全ての解像度、アスペクトの前記ダミー画面をエンコードしたデータを前記コンテンツ蓄積部内に記録しておき、それをコンテンツの頭に付加して再生することを特徴とする請求項1に記載のコンテンツ記録装置。
【請求項8】
前記ダミー画面の時間を調整する機能を有することを特徴とする請求項1から7までのいずれか1項に記載のコンテンツ記録装置。
【請求項9】
前記ムーブ先機器との間で認証又は暗号キーの交換の少なくともいずれか一方を行う機能を有することを特徴とする請求項1から8までのいずれか1項に記載のコンテンツ記録装置。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項に記載のコンテンツ記録装置と、
提供されたストリームコンテンツを受信するインターフェース部と、
暗号化コンテンツを復号する暗号解読部と
解読されたコンテンツを記録するコンテンツ記録部と
を有することを特徴とするストリームコンテンツ送受信システム。
【請求項11】
蓄積されたストリームコンテンツを暗号化する暗号化ステップと、
前記ストリームコンテンツのムーブ時に該ストリームコンテンツの先頭にダミー画面を再生するためのダミーデータを付加するダミーコンテンツデータ付加ステップと、
暗号化された前記ストリームコンテンツをムーブ先機器側に出力するステップと
を有することを特徴とするコンテンツ提供方法。
【請求項12】
ストリームコンテンツのムーブ時に該ストリームコンテンツの先頭にダミー画面を再生するためのダミーデータが付加された状態のストリームコンテンツを暗号化するステップと、
暗号化された前記ストリームコンテンツをムーブ先機器側に出力するステップと
を有することを特徴とするコンテンツ提供方法。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−102958(P2007−102958A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−293431(P2005−293431)
【出願日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.イーサネット
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】