最小限侵襲性高性能装置
本発明は、患者身体内のターゲット部位の領域における環境状態を検出でき、かつ器具の先端の医療装置が所望される最小限侵襲性の医療処置を遂行するために作動するか、または遂行を阻止するかを自発的に決定する、高性能最小限侵襲性装置を提供する。この装置はルーメンの先端に装着できる医療装置、前記医療装置に隣接する環境状態を検出できる少なくとも一つの環境状態感知器、および環境状態感知器からの信号に応答する少なくとも一つの医療装置アクチュエータを含み、前記医療装置による所望医療処置を遂行させるかまたは前記医療装置アクチュエータの作動を阻止させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は患者身体内での最小限侵襲性の装置の作動環境感知および作動制御に関する。更に具体的には、本発明は患者身体内の最小限侵襲性装置の周辺における局所状態の高機能感知、および最小限侵襲性の処置時に治療薬等の物質の高精度配置(deployment)またはバルーンカテーテルもしくは生検鉗子等の治療装置の作動を可能にするために最小限侵襲性装置に装着する弁または針等の装置の作動制御のための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非侵襲性画像法による生物学的プロセスの追跡に有用な材料等の医薬または他の物質の身体内配置は、しばしば反復されかつ有利処置が近代医学の実行時に施行される。かかる物質は内視鏡および血管カテーテル導入等の非侵襲性処置、更に患者の身体への大きい切開を必要とする侵襲性処置のいずれの場合にも配置されてよい。非侵襲性および小侵襲性処置は、概ね、ターゲット領域が身体ルーメンから接近できるときに使用され、他方、大侵襲性処置はターゲット領域が身体内深くに位置するまたは身体ルーメンへ容易に接近できないときに採用される。
【0003】
過去に、心内膜注射または注入、血管形成、または組織もしくは流体の生検等の処置の施行時に、最小限侵襲性の医療器具は最初に医師により処置を施すべき患者身体内部位へ、例えばその医療器具のルーメンの端に設置された光学装置または非侵襲性画像形成法(例えばエックス線画像形成)による画像を使用して、操縦される。所望部位に一旦設置されると、医療器具の先端の装置は処置(例えば注射または注入、バルーン膨張、サンプル採取)を施行するために医師によって操作される。理想的には、医療装置は図1に示されたように所望ターゲットで精確に作動する。図1はルーメン2に装着された従来注入装置1が治療物質4をターゲット細胞へ直接注入するように血管3内に理想的に位置決めされる理想的状態を示す。
【0004】
しかし、実際使用において、患者身体内の所望位置への医療器具の先端の設置は、身体内における器具先端の設置について注意深い時間を消耗するモニタリングを必要とする。しかし、かかる注意を払っても、利用可能画像の質の限界、および周囲組織または流体による視界の遮断は器具の設置の精度を低下させる。かかる困難性は結果として最適注射、注入、膨張またはサンプル採取を妨害する。
【0005】
更に、適正に位置決めされても、医療器具は医療処置の施行が望ましくない領域、例えば血管内側の非対称血小板沈着が注入配送または血管形成を無効または潜在的に危険にするようなに領域に整列することになる。かかる状況例は図2に示されている。図2は、医療装置が不均一状態に遭遇する場所で血管7内に位置決めされた、ルーメン6に装着された従来周知型の血管形成バルーン5の側面図である。血管の一側8で、バルーン5により配送される治療物質のターゲット、内皮細胞は血管壁を覆い、バルーン5と接触し、かつ治療物質の所望注入が続行する。しかし、血管7の他側9には共通の偏心(eccentric)傷害10が付けられ、ここでは血管に付けられかつバルーン5と接触している。傷害10の存在により、治療物質は血管7の壁に到達できず、この最小限侵襲性外科処置は傷害の領域で無効になる。
【0006】
最小限侵襲性外科処置時の手動設置および医療装置の作動に関する従来技術の問題に鑑み、患者の身体内のターゲット場所で最小限侵襲性医療装置の高性能、高精度作動を達成する装置および方法に対するニーズが存在する。
【発明の開示】
【0007】
発明の概要
本発明は、最小限侵襲性のカテーテルおよび内視鏡システムに関する上述の問題を解決することを志向する。本発明の一形態において、患者身体内のターゲット部位の領域における環境状態を検出でき、かつ器具の先端の医療装置が所望医療処置を遂行するために作動しまたは遂行を阻止するかを自主的に決定する、所謂『高性能(smart)』最小限侵襲性装置を提供する。この装置はルーメンの先端に装着できる医療装置、前記医療装置に隣接する環境状態を検出できる少なくとも一つの環境状態感知器、および環境状態感知器からの信号に応答する少なくとも一つの医療装置アクチュエータを含み、前記医療装置による所望医療処置を遂行させるかまたは前記医療装置アクチュエータの作動を阻止させる。本発明による装置は、前記医療装置がターゲット部位の領域へ操縦されるまで、例えば医療装置アクチュエータへの電気信号を覆うまたは妨害する格納式装置を使用することにより、医療装置アクチュエータの感知かつ/または作動を阻止するために装備されてよい。
【0008】
本発明における医療装置および医療装置アクチュエータの実施形態は、最小限医療処置を遂行するために種々の装置を含む。例えば、ポートもしくは弁を開放することによって、またはターゲット領域へ針を伸張し物質をターゲット領域へ注入または注射することによって、装置のハウジングから治療剤または他の物質を分配する装置およびアクチュエータ、血管形成時にまたはステント配置処置時のごとくバルーンを膨張させる装置およびアクチュエータ、生検組織または流体サンプルを採取する装置およびアクチュエータを含む。これらの装置およびアクチュエータはカテーテルおよび内視鏡を含む種々の最小限侵襲性ルーメンへの使用に適している。
【0009】
本発明の実施形態に使用できる感知器は、生物学的センサ、電気的センサ、圧電センサ、磁気センサ、および熱センサ、ならびにそれらを組み合わせたセンサを含む、遂行すべき最小限侵襲性医療処置の性質に適した種々の技術を含んでよい。これらのセンサおよび機械的装置アクチュエータは、ターゲット環境に対する充分な精確性と感知性をもってルーメンに取り付けた医療装置へ容易に合体させるためにマイクロ電子機械システム技術を利用してよい。
【0010】
本発明は、更に、所望場所で最小限侵襲性医療処置を確実に遂行するために前記装置を利用する方法を含む。本発明による方法は、ルーメンの先端に装着された最小限侵襲性医療装置を含む本発明による装置を挿入し、最小限侵襲性外科処置分野で実務家に周知の方法を使用してターゲット領域へ医療装置を操縦し、かつターゲット領域へ医療装置を移動させて、医療装置上のセンサにより、所望最小限侵襲性処置を遂行させる医療装置上のアクチュエータの作動のために適宜場所を精確に確認する。
【0011】
本発明は治療剤の局所的かつ高制御配送、またはバルーンカテーテルおよび生検鉗子等の医療装置の患者内ターゲット部位での高精度作動を可能にする。本発明は更に治療剤のターゲット組織または器官への高濃度の配送を可能にする利点を提供し、かつそのようにして脆弱周囲組織の摂動を最小限限にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、広範囲の最小限限侵襲性の医療装置および処置に適用できる。本発明の第一形態は、図3に示されている。図3は、ルーメン12に装着された注入カテーテル11を示し、注入カテーテルは、複数のセンサ14および複数の医療装置アクチュエータ15を外周面13上に装備する。外周面13まわりへの医療装置アクチュエータ15の配分を示す端面図は図4に示されている。図3および4に示されたセンサおよび医療装置アクチュエータの場所は、外周面13のまわりでのこれら構成要素の分布の概略的図示にすぎず、これらのセンサおよびアクチュエータは共に最小限侵襲性医療処置の効率的遂行の必要性に応じて外周面に配分されてよい。更に、センサおよび他の構成要素が同一場所に設置され、または後述の第二形態に示されたようにセンサとアクチュエータの単一ユニットに結合されてよい。見通しとして、この形態のセンサおよびアクチュエータはマイクロ機械装置であり、マイクロメータからナノメータの単位のスケールを有する。
【0013】
この形態の医療装置は患者の身体へ挿入されかつ最小限侵襲性外科分野で周知の方法によりターゲット領域へ操縦される。挿入および操縦工程で、装置上のセンサ14が作動し、または医療装置の時期尚早の作動を妨害することが望ましい場合には、医療装置がターゲット部位注入領域に到達するまでその作動が阻止される。輸送時に作動を阻止する思案例として、操縦時に保護スリーブに医療装置を入れておき、その後にターゲット領域に到達後に医療装置を配置するか、またはアクチュエータの作動をトリガーするセンサからの信号(電気インパルス等)の伝送を阻止し、その後にターゲット領域に到達したなら信号送信を可能にする方法等がある。
【0014】
センサ14は医療装置の周辺の所定環境状態を検出するように構成される。この形態において、治療物質を血管へ配送する場合に、センサは差圧を反転するために応答するマイクロ機械装置である。センサ14が医療装置の外側の所定低圧を検出したときに、センサは治療物質を解放するために医療装置アクチュエータ15(注入ポートまたは弁)を開放する信号を送る。反対に、センサ14が医療装置の外部の高圧を検出したときには、注入ポートまたは弁を閉鎖維持して望ましくない領域への注入を阻止する。
【0015】
第一形態のセンサ14およびアクチュエータ15は、それぞれのアクチュエータにリンクする特定形態に限定されない。この形態において、センサの物理的運動はアクチュエータ15を開閉させるが、さまざまな出力を伴う異なるセンサがアクチュエータへ送られた電気信号を作動または妨害するために役立つ。センサの信号は、また、医療装置内に設置された制御器(図示せず)または患者身体の外側の遠隔場所の制御器へ送られることができ、医療装置上の適宜アクチュエータに送信するために処理されうる。このように、センサはその運動が直接影響を与える機械要素または医療装置アクチュエータに機械的にリンクする機械要素を含んでよいが、これらのセンサは、また、アクチュエータを直接励起するか、また医療装置上または医療装置から遠隔の中間制御電子装置へ信号を送り、そして順次、医療装置アクチュエータへ信号を送る電気インパルスを発生してよい。
【0016】
重要なことは、第一形態における複数のセンサ14および複数のアクチュエータ15が、注入カテーテルの一部の上のアクチュエータがセンサの一方のサブセットに応答し、かつ注入カテーテルの他の部の上のアクチュエータがセンサの他方のサブセットに応答するようにグループ化されていることである。このように、この形態の医療装置は、第一環境状態を選択的に感知しかつ注入が所望される医療装置の周辺の特定領域のみに治療物質を注入するようにする能力を有し、かつ図2に示されたような偏心傷害等の注入が望ましくない領域に対応し、かつ従ってアクチュエータの作動を阻止する第二環境状態を感知できる。この選択的作動および作動阻止の特徴は、第一環境状態(この実施例において、差圧)を検出するための圧力センサ、および第二環境状態(例えば傷害)を検出するための生物学的センサ等の二つの異なるタイプの感知器の使用により提供できる。センサ14およびアクチュエータ15は、更に、センサおよびアクチュエータの数量の一対一の対応を必要としないサブセットにグループ化され、単一センサが幾つかのアクチュエータの作動および阻止を制御するとか、または単一アクチュエータが複数のセンサのいずれかにより作動するような形態であってよい。
【0017】
本発明に使用されるセンサは第一形態の圧力センサに限定されない。反対に、センサの選択は、施行される最小限侵襲性医療処置により決定される。例えば、医療装置が、図5と図6に示された事例のように、柔軟組織と硬質組織間の区別が必要とされるターゲット部位に設置される場合、圧力センサが採用されてよい。図5は、所定レベルの軸方向の力および/またはそれを横切る力に応答するように調整された接触感知プローブを具備した医療装置11の表面上に注入ノズル16を示す。図6においてノズルの断面図に示されたように、感知プローブ17はバネ18によりノズル閉鎖位置に付勢され、その力はターゲット環境にプローブ17の応答を合わせるために変化してよい。他の物理的接触センサは、プローブの変位後に電流を発生する圧電結晶に付設された感知プローブを含む。
【0018】
本発明に採用されるセンサは、生物学的状態を感知するセンサを含んでよい。例えば、無傷内皮の存在を検出するために窒素酸化物を検出するセンサが使用でき、目的が内皮細胞へ治療物質を発射することである場合には所望部位で所望注入または注射を精確に行わせるためにセンサはアクチュエータへ信号を送る。
【0019】
生物学的状態の検出を採用する他のセンサが同様に使用できる。マクロファージ多傷害またはスムース細胞増殖領域を検出するためにpHを検出するセンサが使用でき、かつ静電気センサがカルシュウム等の要素が存在する領域を確認するために使用できる。同様に、疎水的相互作用を検出するセンサは、適正処置のために脂質沈殿場所を精確に鑑定する。生物学的センサが、内皮細胞インテグリン検出のためにリセプタリガンドによるセンサのコーティングを含んでよく、この場合、細胞結合認識が医療装置作動信号を発生する。または生物学的センサは、例えば脂質関連アテロームを検出してかかる領域への治療薬の配送を阻止するために、ターゲットとするリボタンパク質のためにモノクロナール抗体によるセンサのコーティングを含んでよい。他の非心臓用途は、正常組織から低酸素症組織を識別するために癌腫瘍の治療に酸素検出センサ、癌組織の温度上昇の検出のための温度センサ、および正常組織と壊死組織間の生物機械的差異を検出するために、原子力顕微鏡検査チップ等の力変換器センサの使用を含む。
【0020】
上述のタイプのセンサに加えて、他のセンサ技術が本発明に有利に利用でき、医療装置の周囲面13で生物学的環境に直接浸入することを必要としないセンサを含む。このタイプのセンサ例として、異常低血流または高血管注入の領域等における温度差を検出するために熱センサが使用できる。これらのセンサは医療装置の外面上への設置を必要としない。これらのセンサは、図7に示されたように選択により医療装置の上方の外鞘の下(センサ19は医療装置の鞘20下の破線により示されている)、または医療装置それ自体の表面下に設置できる。同様に、磁石は、注射または挿入された磁気物質から局所的磁気異常を検出するために使用でき、かつ医療装置上または医療装置の表面下に設置でき、かつ医療装置の高精度の作動を可能にする。
【0021】
第一形態における複数のセンサのごとく、種々のアクチュエータが、施行される最小限侵襲性医療処置の性質に応じて、第一形態における医療装置アクチュエータ15の代わりに使用できる。図8に示されたように、医療装置11は注射針配置アクチュエータ21を装備してよく、これはセンサ(またはセンサからの信号に応答する制御器)から信号を受信後に医療装置11からターゲット組織へ針を伸張させて治療剤注射を可能にする。他のアクチュエータとして図9に示されたような生検針解放装置22を含み、この装置はサンプル採取のために生検針23を、かつ生検組織サンプル採取のために生検鉗子を医療装置24から生検ターゲット領域へ伸張させる。
【0022】
本発明の第二形態は図10に示されている。図10において、センサおよび医療装置アクチュエータは取り付けスペースおよび費用最小限化のために結合されている。この形態において、組み合わされたセンサおよびアクチュエータのユニット25は医療装置26上に設置され、医療装置は第一形態と同様にルーメン27に装着される。センサ/アクチュエータの組合せユニットの使用により実現されるスペース節約は、ターゲット用途に依存して、医療装置を最適にするための多くの選択を医療装置設計者に提供する。センサ/アクチュエータの組合せユニットは、医療装置上のセンサおよびアクチュエータの高密度を可能にし、そのようにして所望される注入場所と所望されない注入場所間を正確に区別するための医療装置の能力を向上させる。かかる高レベル区別が必要とされない場合であっても、センサ/アクチュエータの組合せユニットの低価格は、適宜医療装置の低廉構築を可能にする。選択的に、相対的に小さいセンサ/アクチュエータ組合せユニットは医療装置本体の小型化を可能にし、それにより更に多くの最小限侵襲性医療処置の有用性を改善する。第二形態の特定事例におけるセンサ/アクチュエータの組合せユニットは、センサと、注入ポートからの流れを遮断する注入ポートカバーとの間に直接的機械的リンクを形成する接触センサである。当業者に理解されるように、種々のタイプのセンサとアクチュエータとの組合せが、異なるターゲット領域に使用される医療装置の周辺の異なる環境要求に対して、上述のユニットと置換できる。
【0023】
本発明の第三形態は図11に概略的に示されている。この形態において、医療装置28はルーメン29に装着された膨張自在血管形成バルーンである。医療装置28は当業界に周知のタイプの拡張自在膜30、およびルーメン29内で内ルーメン32への膨張流体の浸入を制御する血管形成バルーンの表面下のセンサとアクチュエータの組合せユニット31を含む。この形態において、センサ/アクチュエータ組合せユニット31のプローブがターゲット領域との接触により押し込まれるときに、センサ/アクチュエータ組合せユニット31のポートカバー部は内ルーメン32の先端を露出させ、それによりバルーン28への膨張ガスまたは流体の導入を可能にする。バルーン拡張処置の終了後に、センサ/アクチュエータ組合せユニット31が閉鎖位置に復帰するまで膨張流体は内ルーメン32の露出先端から放出され、それによりバルーンを充分に接触させて患者からの取り外しを可能にする。
【0024】
上述形態のごとく、第三形態に採用される特定センサ/アクチュエータ組合せユニットは図11に示されたプローブとポートカバーの組合せに限定されず、それに代えて、所定生物学的環境を検出するためにバルーンの外面に装着される生物学的センサ、分割膨張室の個別膨張を可能にするための分離センサとアクチュエータ、および電気コネクタまたは中間制御器(図示せず)を介してセンサへ連結されただけの分離アクチュエータを含んでよい。更に、この形態の医療装置26は、バルーンの膨張が終了するときを(例えばバルーンとターゲット部位間の接触圧力が限界に達したとき)自発的に決定しかつ閉鎖または膨張流体の流れを中止するようにアクチュエータへ命令する信号を発生する第二環境状態に対応する第二センサを装備してよい。更に、この形態の膨張自在バルーン装置は、医療装置付近の環境状態に対するセンサの露出が未膨張バルーン上への拡張可能ステントの設置によって妨害されない限り、拡張可能ステント(コーティングを有するまたは有しない)のための拡張バルーンとして使用できる。この問題は、未拡張ステントの下でない領域で(例えばルーメン端、またはバルーンの先端近くで)バルーン上に、またはターゲット部位に直接露出したステントの外面上に、もしくは未膨張ステント上方の保護鞘下のいずれかにセンサを設置することによって解決され得る。この後者の場合、センサはバルーンが収縮するときにバルーンからそれ自体解放できる要素を装備するものである。
【0025】
本発明は、更に、最小限侵襲性外科処置を遂行するために上述の装置を使用するための方法に関する。この方法の第一工程として、医師は、患者内のターゲット部位の少なくとも一つの所定環境状態を検出するように構成された少なくとも一つのセンサ、および所定環境状態の検出後に所望医療処置の施行を開始するように構成された少なくとも一つのアクチュエータを装備しかつルーメンに装着された医療装置を患者へ挿入する。医師は、周知の最小限侵襲性外科技術により患者身体内の所望場所へ医療装置およびルーメンを操縦する。ターゲット部位の周辺に達したならば、医師は少なくとも一つのセンサが医療装置に隣接する所定環境状態を検出するまで、医療装置を移動させる。所定環境状態の一つの検出に基づいて、センサは少なくとも一つの医療装置アクチュエータを作動させるために使用される信号を発生し、かつそれにより医療装置による最小限侵襲性医療処置の実行を開始する。所望処置の実行に続いて、ルーメンおよび医療装置は患者から取り外される。
【0026】
上述方法の使用時に、少なくとも一つの他のセンサを医療装置に隣接する第二の所定環境状態を検出するようにし、かつ第二の所定環境状態が検出される場合に、少なくとも一つの他のセンサが望まれない場所で最小限侵襲性医療処置の実行を阻止するために少なくとも一つの医療装置アクチュエータの作動を禁止する信号を発生する。
【0027】
更に、医療装置は、保護鞘下に封入する等により少なくとも一つのセンサが作動しないまたは抑制されることを確実にして、医療装置が患者身体内のターゲット場所に達する前に不本意に作動しないことを確実にする。医療装置がそのように構成される場合には、少なくとも一つのセンサを作動させまたは自由にする付加的工程は、医療装置が患者内のターゲット部位に達したときに、実行される。
【0028】
上述の方法は、複数のセンサおよび複数の医療装置アクチュエータを装備した本発明の医療装置を使用することにより遂行され、かつそのように構成される場合に、本発明の方法の使用は、複数の医療装置アクチュエータのサブセットの作動または抑制のためにいずれかの信号を送る複数のセンサのサブセットによる高精密かつ選択的方法において、所望最小限侵襲性医療処置の遂行を可能にする。そのように、本発明による方法の使用は、治療剤の極めて局所的かつ制御された配送、またはバルーンカテーテルおよび生検鉗子等の医療装置の、最小限侵襲性医療処置時に患者内のターゲット部位における、高精度の作動を可能にし、他方で、脆弱周囲組織の摂動を最小限限にする。
【0029】
以上、本発明は現在好適と考えられる形態を参照して説明されたが、本発明は開示の形態または構成に限定されるものでないことが理解されるべきである。反対には、本発明は、医療装置の自発的起動の改善が予測される最小限侵襲性外科分野における他の用途を含む種々の改変および均等の構成に及ぶことが意図されている。更に、開示された本発明の種々の形態が例示としての組合せおよび構成で説明かつ/または示されているが、それ以上、それ以下、または単一形態を含む他の組合せおよび構成が本発明の精神および範囲に属する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】治療物質注入処置を施行するために血管内での使用を示す注入装置の側面図である。
【図2】血管形成処置時に動脈損傷の存在下で連続注入および不連続注入する領域を示す動脈管内における当分野で周知型の血管形成バルーンの側面図である。
【図3】本発明の第一形態の医療装置の側面図であり、医療装置の周面上の複数のセンサおよび複数の医療装置アクチュエータを概略的に示す。
【図4】図3の医療装置の概略端面図である。
【図5】本発明の第一形態の医療装置の側面図であり、医療装置の外面に付設された複数の圧力感知センサおよび注入ポートを示す。
【図6】本発明の第一形態の医療装置の外周面の断面図であり、医療装置の外面に装着された複数のセンサとアクチュエータ注入針装置との組み合わせを示す。
【図7】本発明の第一形態の医療装置の側面図であり、医療装置の外周面上の鞘下の複数のセンサを概略的に示す。
【図8】本発明の第一形態の医療装置の断面図であり、医療装置の外周面下の配置可能注射針を含む医療装置アクチュエータを示す。
【図9】本発明の医療装置の断面図であり、針解放アクチュエータにより着脱自在に保持された配置可能針を先端に付けた内ルーメンを有するカテーテルを概略的に示す。
【図10】本発明の第二形態の側面図であり、医療装置の外面に装着されたセンサとアクチュエータユニットとの組み合わせを装備した医療装置を示す。
【図11】本発明の第三形態の側面図であり、膨張自在バルーン、およびセンサと膨張ポートの作動を制御するアクチュエータとの組み合わせを備えたバルーンカテーテル医療装置を概略的に示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は患者身体内での最小限侵襲性の装置の作動環境感知および作動制御に関する。更に具体的には、本発明は患者身体内の最小限侵襲性装置の周辺における局所状態の高機能感知、および最小限侵襲性の処置時に治療薬等の物質の高精度配置(deployment)またはバルーンカテーテルもしくは生検鉗子等の治療装置の作動を可能にするために最小限侵襲性装置に装着する弁または針等の装置の作動制御のための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非侵襲性画像法による生物学的プロセスの追跡に有用な材料等の医薬または他の物質の身体内配置は、しばしば反復されかつ有利処置が近代医学の実行時に施行される。かかる物質は内視鏡および血管カテーテル導入等の非侵襲性処置、更に患者の身体への大きい切開を必要とする侵襲性処置のいずれの場合にも配置されてよい。非侵襲性および小侵襲性処置は、概ね、ターゲット領域が身体ルーメンから接近できるときに使用され、他方、大侵襲性処置はターゲット領域が身体内深くに位置するまたは身体ルーメンへ容易に接近できないときに採用される。
【0003】
過去に、心内膜注射または注入、血管形成、または組織もしくは流体の生検等の処置の施行時に、最小限侵襲性の医療器具は最初に医師により処置を施すべき患者身体内部位へ、例えばその医療器具のルーメンの端に設置された光学装置または非侵襲性画像形成法(例えばエックス線画像形成)による画像を使用して、操縦される。所望部位に一旦設置されると、医療器具の先端の装置は処置(例えば注射または注入、バルーン膨張、サンプル採取)を施行するために医師によって操作される。理想的には、医療装置は図1に示されたように所望ターゲットで精確に作動する。図1はルーメン2に装着された従来注入装置1が治療物質4をターゲット細胞へ直接注入するように血管3内に理想的に位置決めされる理想的状態を示す。
【0004】
しかし、実際使用において、患者身体内の所望位置への医療器具の先端の設置は、身体内における器具先端の設置について注意深い時間を消耗するモニタリングを必要とする。しかし、かかる注意を払っても、利用可能画像の質の限界、および周囲組織または流体による視界の遮断は器具の設置の精度を低下させる。かかる困難性は結果として最適注射、注入、膨張またはサンプル採取を妨害する。
【0005】
更に、適正に位置決めされても、医療器具は医療処置の施行が望ましくない領域、例えば血管内側の非対称血小板沈着が注入配送または血管形成を無効または潜在的に危険にするようなに領域に整列することになる。かかる状況例は図2に示されている。図2は、医療装置が不均一状態に遭遇する場所で血管7内に位置決めされた、ルーメン6に装着された従来周知型の血管形成バルーン5の側面図である。血管の一側8で、バルーン5により配送される治療物質のターゲット、内皮細胞は血管壁を覆い、バルーン5と接触し、かつ治療物質の所望注入が続行する。しかし、血管7の他側9には共通の偏心(eccentric)傷害10が付けられ、ここでは血管に付けられかつバルーン5と接触している。傷害10の存在により、治療物質は血管7の壁に到達できず、この最小限侵襲性外科処置は傷害の領域で無効になる。
【0006】
最小限侵襲性外科処置時の手動設置および医療装置の作動に関する従来技術の問題に鑑み、患者の身体内のターゲット場所で最小限侵襲性医療装置の高性能、高精度作動を達成する装置および方法に対するニーズが存在する。
【発明の開示】
【0007】
発明の概要
本発明は、最小限侵襲性のカテーテルおよび内視鏡システムに関する上述の問題を解決することを志向する。本発明の一形態において、患者身体内のターゲット部位の領域における環境状態を検出でき、かつ器具の先端の医療装置が所望医療処置を遂行するために作動しまたは遂行を阻止するかを自主的に決定する、所謂『高性能(smart)』最小限侵襲性装置を提供する。この装置はルーメンの先端に装着できる医療装置、前記医療装置に隣接する環境状態を検出できる少なくとも一つの環境状態感知器、および環境状態感知器からの信号に応答する少なくとも一つの医療装置アクチュエータを含み、前記医療装置による所望医療処置を遂行させるかまたは前記医療装置アクチュエータの作動を阻止させる。本発明による装置は、前記医療装置がターゲット部位の領域へ操縦されるまで、例えば医療装置アクチュエータへの電気信号を覆うまたは妨害する格納式装置を使用することにより、医療装置アクチュエータの感知かつ/または作動を阻止するために装備されてよい。
【0008】
本発明における医療装置および医療装置アクチュエータの実施形態は、最小限医療処置を遂行するために種々の装置を含む。例えば、ポートもしくは弁を開放することによって、またはターゲット領域へ針を伸張し物質をターゲット領域へ注入または注射することによって、装置のハウジングから治療剤または他の物質を分配する装置およびアクチュエータ、血管形成時にまたはステント配置処置時のごとくバルーンを膨張させる装置およびアクチュエータ、生検組織または流体サンプルを採取する装置およびアクチュエータを含む。これらの装置およびアクチュエータはカテーテルおよび内視鏡を含む種々の最小限侵襲性ルーメンへの使用に適している。
【0009】
本発明の実施形態に使用できる感知器は、生物学的センサ、電気的センサ、圧電センサ、磁気センサ、および熱センサ、ならびにそれらを組み合わせたセンサを含む、遂行すべき最小限侵襲性医療処置の性質に適した種々の技術を含んでよい。これらのセンサおよび機械的装置アクチュエータは、ターゲット環境に対する充分な精確性と感知性をもってルーメンに取り付けた医療装置へ容易に合体させるためにマイクロ電子機械システム技術を利用してよい。
【0010】
本発明は、更に、所望場所で最小限侵襲性医療処置を確実に遂行するために前記装置を利用する方法を含む。本発明による方法は、ルーメンの先端に装着された最小限侵襲性医療装置を含む本発明による装置を挿入し、最小限侵襲性外科処置分野で実務家に周知の方法を使用してターゲット領域へ医療装置を操縦し、かつターゲット領域へ医療装置を移動させて、医療装置上のセンサにより、所望最小限侵襲性処置を遂行させる医療装置上のアクチュエータの作動のために適宜場所を精確に確認する。
【0011】
本発明は治療剤の局所的かつ高制御配送、またはバルーンカテーテルおよび生検鉗子等の医療装置の患者内ターゲット部位での高精度作動を可能にする。本発明は更に治療剤のターゲット組織または器官への高濃度の配送を可能にする利点を提供し、かつそのようにして脆弱周囲組織の摂動を最小限限にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、広範囲の最小限限侵襲性の医療装置および処置に適用できる。本発明の第一形態は、図3に示されている。図3は、ルーメン12に装着された注入カテーテル11を示し、注入カテーテルは、複数のセンサ14および複数の医療装置アクチュエータ15を外周面13上に装備する。外周面13まわりへの医療装置アクチュエータ15の配分を示す端面図は図4に示されている。図3および4に示されたセンサおよび医療装置アクチュエータの場所は、外周面13のまわりでのこれら構成要素の分布の概略的図示にすぎず、これらのセンサおよびアクチュエータは共に最小限侵襲性医療処置の効率的遂行の必要性に応じて外周面に配分されてよい。更に、センサおよび他の構成要素が同一場所に設置され、または後述の第二形態に示されたようにセンサとアクチュエータの単一ユニットに結合されてよい。見通しとして、この形態のセンサおよびアクチュエータはマイクロ機械装置であり、マイクロメータからナノメータの単位のスケールを有する。
【0013】
この形態の医療装置は患者の身体へ挿入されかつ最小限侵襲性外科分野で周知の方法によりターゲット領域へ操縦される。挿入および操縦工程で、装置上のセンサ14が作動し、または医療装置の時期尚早の作動を妨害することが望ましい場合には、医療装置がターゲット部位注入領域に到達するまでその作動が阻止される。輸送時に作動を阻止する思案例として、操縦時に保護スリーブに医療装置を入れておき、その後にターゲット領域に到達後に医療装置を配置するか、またはアクチュエータの作動をトリガーするセンサからの信号(電気インパルス等)の伝送を阻止し、その後にターゲット領域に到達したなら信号送信を可能にする方法等がある。
【0014】
センサ14は医療装置の周辺の所定環境状態を検出するように構成される。この形態において、治療物質を血管へ配送する場合に、センサは差圧を反転するために応答するマイクロ機械装置である。センサ14が医療装置の外側の所定低圧を検出したときに、センサは治療物質を解放するために医療装置アクチュエータ15(注入ポートまたは弁)を開放する信号を送る。反対に、センサ14が医療装置の外部の高圧を検出したときには、注入ポートまたは弁を閉鎖維持して望ましくない領域への注入を阻止する。
【0015】
第一形態のセンサ14およびアクチュエータ15は、それぞれのアクチュエータにリンクする特定形態に限定されない。この形態において、センサの物理的運動はアクチュエータ15を開閉させるが、さまざまな出力を伴う異なるセンサがアクチュエータへ送られた電気信号を作動または妨害するために役立つ。センサの信号は、また、医療装置内に設置された制御器(図示せず)または患者身体の外側の遠隔場所の制御器へ送られることができ、医療装置上の適宜アクチュエータに送信するために処理されうる。このように、センサはその運動が直接影響を与える機械要素または医療装置アクチュエータに機械的にリンクする機械要素を含んでよいが、これらのセンサは、また、アクチュエータを直接励起するか、また医療装置上または医療装置から遠隔の中間制御電子装置へ信号を送り、そして順次、医療装置アクチュエータへ信号を送る電気インパルスを発生してよい。
【0016】
重要なことは、第一形態における複数のセンサ14および複数のアクチュエータ15が、注入カテーテルの一部の上のアクチュエータがセンサの一方のサブセットに応答し、かつ注入カテーテルの他の部の上のアクチュエータがセンサの他方のサブセットに応答するようにグループ化されていることである。このように、この形態の医療装置は、第一環境状態を選択的に感知しかつ注入が所望される医療装置の周辺の特定領域のみに治療物質を注入するようにする能力を有し、かつ図2に示されたような偏心傷害等の注入が望ましくない領域に対応し、かつ従ってアクチュエータの作動を阻止する第二環境状態を感知できる。この選択的作動および作動阻止の特徴は、第一環境状態(この実施例において、差圧)を検出するための圧力センサ、および第二環境状態(例えば傷害)を検出するための生物学的センサ等の二つの異なるタイプの感知器の使用により提供できる。センサ14およびアクチュエータ15は、更に、センサおよびアクチュエータの数量の一対一の対応を必要としないサブセットにグループ化され、単一センサが幾つかのアクチュエータの作動および阻止を制御するとか、または単一アクチュエータが複数のセンサのいずれかにより作動するような形態であってよい。
【0017】
本発明に使用されるセンサは第一形態の圧力センサに限定されない。反対に、センサの選択は、施行される最小限侵襲性医療処置により決定される。例えば、医療装置が、図5と図6に示された事例のように、柔軟組織と硬質組織間の区別が必要とされるターゲット部位に設置される場合、圧力センサが採用されてよい。図5は、所定レベルの軸方向の力および/またはそれを横切る力に応答するように調整された接触感知プローブを具備した医療装置11の表面上に注入ノズル16を示す。図6においてノズルの断面図に示されたように、感知プローブ17はバネ18によりノズル閉鎖位置に付勢され、その力はターゲット環境にプローブ17の応答を合わせるために変化してよい。他の物理的接触センサは、プローブの変位後に電流を発生する圧電結晶に付設された感知プローブを含む。
【0018】
本発明に採用されるセンサは、生物学的状態を感知するセンサを含んでよい。例えば、無傷内皮の存在を検出するために窒素酸化物を検出するセンサが使用でき、目的が内皮細胞へ治療物質を発射することである場合には所望部位で所望注入または注射を精確に行わせるためにセンサはアクチュエータへ信号を送る。
【0019】
生物学的状態の検出を採用する他のセンサが同様に使用できる。マクロファージ多傷害またはスムース細胞増殖領域を検出するためにpHを検出するセンサが使用でき、かつ静電気センサがカルシュウム等の要素が存在する領域を確認するために使用できる。同様に、疎水的相互作用を検出するセンサは、適正処置のために脂質沈殿場所を精確に鑑定する。生物学的センサが、内皮細胞インテグリン検出のためにリセプタリガンドによるセンサのコーティングを含んでよく、この場合、細胞結合認識が医療装置作動信号を発生する。または生物学的センサは、例えば脂質関連アテロームを検出してかかる領域への治療薬の配送を阻止するために、ターゲットとするリボタンパク質のためにモノクロナール抗体によるセンサのコーティングを含んでよい。他の非心臓用途は、正常組織から低酸素症組織を識別するために癌腫瘍の治療に酸素検出センサ、癌組織の温度上昇の検出のための温度センサ、および正常組織と壊死組織間の生物機械的差異を検出するために、原子力顕微鏡検査チップ等の力変換器センサの使用を含む。
【0020】
上述のタイプのセンサに加えて、他のセンサ技術が本発明に有利に利用でき、医療装置の周囲面13で生物学的環境に直接浸入することを必要としないセンサを含む。このタイプのセンサ例として、異常低血流または高血管注入の領域等における温度差を検出するために熱センサが使用できる。これらのセンサは医療装置の外面上への設置を必要としない。これらのセンサは、図7に示されたように選択により医療装置の上方の外鞘の下(センサ19は医療装置の鞘20下の破線により示されている)、または医療装置それ自体の表面下に設置できる。同様に、磁石は、注射または挿入された磁気物質から局所的磁気異常を検出するために使用でき、かつ医療装置上または医療装置の表面下に設置でき、かつ医療装置の高精度の作動を可能にする。
【0021】
第一形態における複数のセンサのごとく、種々のアクチュエータが、施行される最小限侵襲性医療処置の性質に応じて、第一形態における医療装置アクチュエータ15の代わりに使用できる。図8に示されたように、医療装置11は注射針配置アクチュエータ21を装備してよく、これはセンサ(またはセンサからの信号に応答する制御器)から信号を受信後に医療装置11からターゲット組織へ針を伸張させて治療剤注射を可能にする。他のアクチュエータとして図9に示されたような生検針解放装置22を含み、この装置はサンプル採取のために生検針23を、かつ生検組織サンプル採取のために生検鉗子を医療装置24から生検ターゲット領域へ伸張させる。
【0022】
本発明の第二形態は図10に示されている。図10において、センサおよび医療装置アクチュエータは取り付けスペースおよび費用最小限化のために結合されている。この形態において、組み合わされたセンサおよびアクチュエータのユニット25は医療装置26上に設置され、医療装置は第一形態と同様にルーメン27に装着される。センサ/アクチュエータの組合せユニットの使用により実現されるスペース節約は、ターゲット用途に依存して、医療装置を最適にするための多くの選択を医療装置設計者に提供する。センサ/アクチュエータの組合せユニットは、医療装置上のセンサおよびアクチュエータの高密度を可能にし、そのようにして所望される注入場所と所望されない注入場所間を正確に区別するための医療装置の能力を向上させる。かかる高レベル区別が必要とされない場合であっても、センサ/アクチュエータの組合せユニットの低価格は、適宜医療装置の低廉構築を可能にする。選択的に、相対的に小さいセンサ/アクチュエータ組合せユニットは医療装置本体の小型化を可能にし、それにより更に多くの最小限侵襲性医療処置の有用性を改善する。第二形態の特定事例におけるセンサ/アクチュエータの組合せユニットは、センサと、注入ポートからの流れを遮断する注入ポートカバーとの間に直接的機械的リンクを形成する接触センサである。当業者に理解されるように、種々のタイプのセンサとアクチュエータとの組合せが、異なるターゲット領域に使用される医療装置の周辺の異なる環境要求に対して、上述のユニットと置換できる。
【0023】
本発明の第三形態は図11に概略的に示されている。この形態において、医療装置28はルーメン29に装着された膨張自在血管形成バルーンである。医療装置28は当業界に周知のタイプの拡張自在膜30、およびルーメン29内で内ルーメン32への膨張流体の浸入を制御する血管形成バルーンの表面下のセンサとアクチュエータの組合せユニット31を含む。この形態において、センサ/アクチュエータ組合せユニット31のプローブがターゲット領域との接触により押し込まれるときに、センサ/アクチュエータ組合せユニット31のポートカバー部は内ルーメン32の先端を露出させ、それによりバルーン28への膨張ガスまたは流体の導入を可能にする。バルーン拡張処置の終了後に、センサ/アクチュエータ組合せユニット31が閉鎖位置に復帰するまで膨張流体は内ルーメン32の露出先端から放出され、それによりバルーンを充分に接触させて患者からの取り外しを可能にする。
【0024】
上述形態のごとく、第三形態に採用される特定センサ/アクチュエータ組合せユニットは図11に示されたプローブとポートカバーの組合せに限定されず、それに代えて、所定生物学的環境を検出するためにバルーンの外面に装着される生物学的センサ、分割膨張室の個別膨張を可能にするための分離センサとアクチュエータ、および電気コネクタまたは中間制御器(図示せず)を介してセンサへ連結されただけの分離アクチュエータを含んでよい。更に、この形態の医療装置26は、バルーンの膨張が終了するときを(例えばバルーンとターゲット部位間の接触圧力が限界に達したとき)自発的に決定しかつ閉鎖または膨張流体の流れを中止するようにアクチュエータへ命令する信号を発生する第二環境状態に対応する第二センサを装備してよい。更に、この形態の膨張自在バルーン装置は、医療装置付近の環境状態に対するセンサの露出が未膨張バルーン上への拡張可能ステントの設置によって妨害されない限り、拡張可能ステント(コーティングを有するまたは有しない)のための拡張バルーンとして使用できる。この問題は、未拡張ステントの下でない領域で(例えばルーメン端、またはバルーンの先端近くで)バルーン上に、またはターゲット部位に直接露出したステントの外面上に、もしくは未膨張ステント上方の保護鞘下のいずれかにセンサを設置することによって解決され得る。この後者の場合、センサはバルーンが収縮するときにバルーンからそれ自体解放できる要素を装備するものである。
【0025】
本発明は、更に、最小限侵襲性外科処置を遂行するために上述の装置を使用するための方法に関する。この方法の第一工程として、医師は、患者内のターゲット部位の少なくとも一つの所定環境状態を検出するように構成された少なくとも一つのセンサ、および所定環境状態の検出後に所望医療処置の施行を開始するように構成された少なくとも一つのアクチュエータを装備しかつルーメンに装着された医療装置を患者へ挿入する。医師は、周知の最小限侵襲性外科技術により患者身体内の所望場所へ医療装置およびルーメンを操縦する。ターゲット部位の周辺に達したならば、医師は少なくとも一つのセンサが医療装置に隣接する所定環境状態を検出するまで、医療装置を移動させる。所定環境状態の一つの検出に基づいて、センサは少なくとも一つの医療装置アクチュエータを作動させるために使用される信号を発生し、かつそれにより医療装置による最小限侵襲性医療処置の実行を開始する。所望処置の実行に続いて、ルーメンおよび医療装置は患者から取り外される。
【0026】
上述方法の使用時に、少なくとも一つの他のセンサを医療装置に隣接する第二の所定環境状態を検出するようにし、かつ第二の所定環境状態が検出される場合に、少なくとも一つの他のセンサが望まれない場所で最小限侵襲性医療処置の実行を阻止するために少なくとも一つの医療装置アクチュエータの作動を禁止する信号を発生する。
【0027】
更に、医療装置は、保護鞘下に封入する等により少なくとも一つのセンサが作動しないまたは抑制されることを確実にして、医療装置が患者身体内のターゲット場所に達する前に不本意に作動しないことを確実にする。医療装置がそのように構成される場合には、少なくとも一つのセンサを作動させまたは自由にする付加的工程は、医療装置が患者内のターゲット部位に達したときに、実行される。
【0028】
上述の方法は、複数のセンサおよび複数の医療装置アクチュエータを装備した本発明の医療装置を使用することにより遂行され、かつそのように構成される場合に、本発明の方法の使用は、複数の医療装置アクチュエータのサブセットの作動または抑制のためにいずれかの信号を送る複数のセンサのサブセットによる高精密かつ選択的方法において、所望最小限侵襲性医療処置の遂行を可能にする。そのように、本発明による方法の使用は、治療剤の極めて局所的かつ制御された配送、またはバルーンカテーテルおよび生検鉗子等の医療装置の、最小限侵襲性医療処置時に患者内のターゲット部位における、高精度の作動を可能にし、他方で、脆弱周囲組織の摂動を最小限限にする。
【0029】
以上、本発明は現在好適と考えられる形態を参照して説明されたが、本発明は開示の形態または構成に限定されるものでないことが理解されるべきである。反対には、本発明は、医療装置の自発的起動の改善が予測される最小限侵襲性外科分野における他の用途を含む種々の改変および均等の構成に及ぶことが意図されている。更に、開示された本発明の種々の形態が例示としての組合せおよび構成で説明かつ/または示されているが、それ以上、それ以下、または単一形態を含む他の組合せおよび構成が本発明の精神および範囲に属する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】治療物質注入処置を施行するために血管内での使用を示す注入装置の側面図である。
【図2】血管形成処置時に動脈損傷の存在下で連続注入および不連続注入する領域を示す動脈管内における当分野で周知型の血管形成バルーンの側面図である。
【図3】本発明の第一形態の医療装置の側面図であり、医療装置の周面上の複数のセンサおよび複数の医療装置アクチュエータを概略的に示す。
【図4】図3の医療装置の概略端面図である。
【図5】本発明の第一形態の医療装置の側面図であり、医療装置の外面に付設された複数の圧力感知センサおよび注入ポートを示す。
【図6】本発明の第一形態の医療装置の外周面の断面図であり、医療装置の外面に装着された複数のセンサとアクチュエータ注入針装置との組み合わせを示す。
【図7】本発明の第一形態の医療装置の側面図であり、医療装置の外周面上の鞘下の複数のセンサを概略的に示す。
【図8】本発明の第一形態の医療装置の断面図であり、医療装置の外周面下の配置可能注射針を含む医療装置アクチュエータを示す。
【図9】本発明の医療装置の断面図であり、針解放アクチュエータにより着脱自在に保持された配置可能針を先端に付けた内ルーメンを有するカテーテルを概略的に示す。
【図10】本発明の第二形態の側面図であり、医療装置の外面に装着されたセンサとアクチュエータユニットとの組み合わせを装備した医療装置を示す。
【図11】本発明の第三形態の側面図であり、膨張自在バルーン、およびセンサと膨張ポートの作動を制御するアクチュエータとの組み合わせを備えたバルーンカテーテル医療装置を概略的に示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
最小限侵襲性の医療処置時に医療装置を自発的に作動させる装置であって、
医療装置に隣接する環境状態を検出するために前記医療装置により担持された少なくとも一つの環境状態感知器、および
少なくとも一つの環境状態感知器から少なくとも一つの信号に応答して制御される医療装置により担持された少なくとも一つの医療装置アクチュエータを含む、自発的作動装置。
【請求項2】
第一の所定環境状態が複数の環境状態感知器の少なくとも一つにより検出されるときに、複数の医療装置アクチュエータの少なくとも一つが作動する、請求項1の自発的作動装置。
【請求項3】
第二の所定環境状態が複数の環境状態感知器の他の少なくとも一つにより検出されるときに、複数の医療装置アクチュエータの他の少なくとも一つが作動を阻止する、請求項1の自発的作動装置。
【請求項4】
前記医療装置は注入カテーテルまたは注射カテーテルである、請求項1の自発的作動装置。
【請求項5】
前記医療装置アクチュエータは弁または針配置装置である、請求項1の自発的作動装置。
【請求項6】
前記医療装置はバルーンカテーテルである、請求項1の自発的作動装置。
【請求項7】
前記医療装置アクチュエータは前記バルーンカテーテルを膨張させることができる、請求項6の自発的作動装置。
【請求項8】
前記環境状態感知器の少なくとも一つは機械的センサである、請求項1の自発的作動装置。
【請求項9】
少なくとも一つの機械的センサは圧力センサである、請求項8の自発的作動装置。
【請求項10】
少なくとも一つの機械的センサは差圧センサである、請求項8の自発的作動装置。
【請求項11】
少なくとも一つの機械的センサは圧力感知弁である、請求項8の自発的作動装置。
【請求項12】
少なくとも一つの機械的センサは圧電センサにセンサ端で連結されたプローブを含む接触センサである、請求項8の自発的作動装置。
【請求項13】
少なくとも一つの環境状態感知器は生物学的センサである、請求項1の自発的作動装置。
【請求項14】
少なくとも一つの生物学的センサは生化学センサである、請求項13の自発的作動装置。
【請求項15】
少なくとも一つの生化学センサは窒素酸化物を感知する、請求項13の自発的作動装置。
【請求項16】
少なくとも一つの生化学センサはpHを感知する、請求項13の自発的作動装置。
【請求項17】
少なくとも一つの生化学センサは酸素センサである、請求項13の自発的作動装置。
【請求項18】
少なくとも一つの生物学的センサはリセプタリガンドでコートされている、請求項13の自発的作動装置。
【請求項19】
前記リセプタリガンドは内皮細胞性インテグリンである、請求項18の自発的作動装置。
【請求項20】
前記リセプタリガンドは血管細胞性インテグリンである、請求項18の自発的作動装置。
【請求項21】
前記リセプタリガンドはモノクローン抗体である、請求項18の自発的作動装置。
【請求項22】
前記環境状態感知器の少なくとも一つは熱センサである、請求項1の自発的作動装置。
【請求項23】
前記環境状態感知器の少なくとも一つは磁気センサである、請求項1の自発的作動装置。
【請求項24】
前記環境状態感知器の少なくとも一つは静電気センサである、請求項1の自発的作動装置。
【請求項25】
前記医療装置は最小限侵襲性の医療処置時に内視鏡の先端に固定されている、請求項1の自発的作動装置。
【請求項1】
最小限侵襲性の医療処置時に医療装置を自発的に作動させる装置であって、
医療装置に隣接する環境状態を検出するために前記医療装置により担持された少なくとも一つの環境状態感知器、および
少なくとも一つの環境状態感知器から少なくとも一つの信号に応答して制御される医療装置により担持された少なくとも一つの医療装置アクチュエータを含む、自発的作動装置。
【請求項2】
第一の所定環境状態が複数の環境状態感知器の少なくとも一つにより検出されるときに、複数の医療装置アクチュエータの少なくとも一つが作動する、請求項1の自発的作動装置。
【請求項3】
第二の所定環境状態が複数の環境状態感知器の他の少なくとも一つにより検出されるときに、複数の医療装置アクチュエータの他の少なくとも一つが作動を阻止する、請求項1の自発的作動装置。
【請求項4】
前記医療装置は注入カテーテルまたは注射カテーテルである、請求項1の自発的作動装置。
【請求項5】
前記医療装置アクチュエータは弁または針配置装置である、請求項1の自発的作動装置。
【請求項6】
前記医療装置はバルーンカテーテルである、請求項1の自発的作動装置。
【請求項7】
前記医療装置アクチュエータは前記バルーンカテーテルを膨張させることができる、請求項6の自発的作動装置。
【請求項8】
前記環境状態感知器の少なくとも一つは機械的センサである、請求項1の自発的作動装置。
【請求項9】
少なくとも一つの機械的センサは圧力センサである、請求項8の自発的作動装置。
【請求項10】
少なくとも一つの機械的センサは差圧センサである、請求項8の自発的作動装置。
【請求項11】
少なくとも一つの機械的センサは圧力感知弁である、請求項8の自発的作動装置。
【請求項12】
少なくとも一つの機械的センサは圧電センサにセンサ端で連結されたプローブを含む接触センサである、請求項8の自発的作動装置。
【請求項13】
少なくとも一つの環境状態感知器は生物学的センサである、請求項1の自発的作動装置。
【請求項14】
少なくとも一つの生物学的センサは生化学センサである、請求項13の自発的作動装置。
【請求項15】
少なくとも一つの生化学センサは窒素酸化物を感知する、請求項13の自発的作動装置。
【請求項16】
少なくとも一つの生化学センサはpHを感知する、請求項13の自発的作動装置。
【請求項17】
少なくとも一つの生化学センサは酸素センサである、請求項13の自発的作動装置。
【請求項18】
少なくとも一つの生物学的センサはリセプタリガンドでコートされている、請求項13の自発的作動装置。
【請求項19】
前記リセプタリガンドは内皮細胞性インテグリンである、請求項18の自発的作動装置。
【請求項20】
前記リセプタリガンドは血管細胞性インテグリンである、請求項18の自発的作動装置。
【請求項21】
前記リセプタリガンドはモノクローン抗体である、請求項18の自発的作動装置。
【請求項22】
前記環境状態感知器の少なくとも一つは熱センサである、請求項1の自発的作動装置。
【請求項23】
前記環境状態感知器の少なくとも一つは磁気センサである、請求項1の自発的作動装置。
【請求項24】
前記環境状態感知器の少なくとも一つは静電気センサである、請求項1の自発的作動装置。
【請求項25】
前記医療装置は最小限侵襲性の医療処置時に内視鏡の先端に固定されている、請求項1の自発的作動装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2006−507082(P2006−507082A)
【公表日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−555379(P2004−555379)
【出願日】平成15年11月6日(2003.11.6)
【国際出願番号】PCT/US2003/035239
【国際公開番号】WO2004/047907
【国際公開日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【出願人】(500332814)ボストン サイエンティフィック リミテッド (627)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年11月6日(2003.11.6)
【国際出願番号】PCT/US2003/035239
【国際公開番号】WO2004/047907
【国際公開日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【出願人】(500332814)ボストン サイエンティフィック リミテッド (627)
【Fターム(参考)】
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