説明

有効成分保持体

【課題】多分岐高分子を用い、有効成分を安定的かつ効果的に保持可能であり、有効成分が親水性あるいは疎水性のいずれであっても、有効成分の徐放性、溶解性などの有用な機能を実現することのできる有効成分保持体を提供する。
【解決手段】本発明にかかる有効成分保持体は、分子量500〜100000の分岐状ポリグリセリンの球状多分岐構造分子に所望の有効物質が保持されてなる構成を有し、好ましくは、前記球状多分岐構造分子の表面に存在する分岐状ポリグリセリンの末端水酸基と反応する化合物から構成され、前記球状多分岐構造分子の表面の少なくとも一部を覆うシェルを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香料、薬剤などの有効成分を散逸しないように保持するとともに、前記有効成分の徐放性、溶解性などの有用な機能を実現する有効成分保持体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、香料、清涼剤、酸化防止剤、殺菌剤、消臭剤などを始めとする薬用化合物、化粧用化合物や、電子材料用の金属イオンなどの有効成分を担持もしくは保持する技術として、活性剤によるミセル化合物、多孔質微粒子への吸着、または有効成分を含有する芯物質と高分子化合物等からなる多芯型のマイクロカプセルなどが知られている。
【0003】
これらの有効成分を担持する従来の技術では、有効成分の担持量が比較的多く、有効成分を生体の微小領域に作用させるための担持体として、あるいは電子材料へ微量な金属イオンを添加するための担持体として利用することが難しいという問題があった。
【0004】
これに対し、ナノサイズ〜ミクロンサイズのスペースに有効成分を担持することを可能とする担持体材料として、多分岐状高分子が注目されている。
【0005】
多分岐状高分子として、例えば、分岐状ポリグリセリンまたはその誘導体が知られている。この分岐状ポリグリセリンまたはその誘導体は、分子鎖が非常に多岐に分岐した構造を持つため、全体が網目構造を有している。そのため、分子の内部及び/又は表面に有効成分を担持することが可能となる。かかる担持構造は、一種のカプセル構造と見なせるので、いわゆる分子カプセルとしての応用が期待されている。
【0006】
上記多分岐高分子に有効成分を担持させた場合、カプセル構造が実現されることになり、外環境の影響を受けづらい。また、多分岐高分子が網目構造を有し、かつ有効成分を担持する駆動力として、水素結合や疎水性相互作用、π電子相互作用などの分子間相互作用が期待できるため、担持主体である多分岐高分子よりも分子量の小さい化合物を有効成分として用いれば、簡単な操作によって有効成分の安定配合、安定分散、放出制御といった機能を発揮すること可能と考えられる。
【0007】
上述の観点から、多分岐高分子に有効成分を内包する様々な技術が提案されている。
例えば、特許文献1には、「α−グリコール内包型デンドリマー、その製造方法、α−グリコール型二座配位子及びその配位構造を有するルイス酸触媒」が開示されている。この技術では、特定構造のデンドリマーにアルミニウム化合物を担持させ、それをルイス酸触媒として利用可能とすることが記載されている。
【0008】
また、特許文献2には、「樹状分岐分子に金属粒子前駆体を結合乃至内包させてなる複合粒子を含有することを特徴とする触媒」が開示されている。前記金属粒子前駆体として、Sc、Y、Ti、Zr、V、Nb、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、ランタノイド系列の元素、及び、アクチノイド系列の元素の少なくともいずれかの金属と白金との合金、並びに、白金の少なくともいずれかである金属イオンが、挙げられており、かかる触媒が、燃料電池用として好適な触媒として用い得ることが記載されている。
【0009】
また、特許文献3には、「電子供与性の結合もしくは原子を含むデンドリマーもしくはデンドロンに、有機化合物および有機金属化合物の1種以上のカチオンもしくはカチオンラジカルが内包あるいは複合化されていることを特徴とする有機・有機金属化合物内包デンドリマー」が開示されており、かかる有機・有機金属化合物内包デンドリマーは、発光材料、EL素子電子デバイスに好適に用い得ることが記載されている。
【0010】
また、特許文献4には、「A)少なくとも1種の窒素原子含有ハイパーブランチポリマーと、 B)25℃かつ1013mbarにおいて10g/L未満の水への溶解度を呈する少なくとも1種の活性物質または有効物質と、を含む、活性物質組成物または有効物質組成物」が開示されており、かかる構成の組成物により、水不溶性活性物質の水性相中での安定化が図れることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2006−188479号公報
【特許文献2】特開2006−134774号公報
【特許文献3】特開2006−070100号公報
【特許文献4】特表2008−531763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記従来技術では、内包された有効成分の安定性や、保持性の低さに問題があり、有効成分を安定的かつ効果的に保持する点については、まだ満足のいくものとはなっていない。また、親水性、疎水性などの物性の異なる有効成分を一連の保持主体材料で効果的に保持する点についても、改良しなければ、実用に供することができない。
【0013】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたもので、その課題は、多分岐高分子を用い、有効成分を安定的かつ効果的に保持可能であり、有効成分が親水性あるいは疎水性のいずれであっても、有効成分の徐放性、溶解性などの有用な機能を実現することのできる有効成分保持体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明者らが、鋭意、実験、検討を重ねたところ、以下のような知見を得るに至った。
【0015】
すなわち、従来問題であった有効成分の安定的かつ効果的な保持を可能とするために、有効成分を保持する保持主体として用いる多分岐ポリグリセリンの分子量を500〜100000の範囲に制御して球状多分岐構造分子とすることが有効であることが、判明した。分子量が500以上に制御すると、多分岐ポリグリセリンを安定的に球状とすることができ、球状とすることにより、網目構造の内部に有効成分を保持する空間を最大限に確保することができ、さらに分子の表面積も最大限に確保でき、球状多分岐構造の分子全体に保持する有効成分量を増大させ、かつ安定に保持することができる。
【0016】
また、多分岐ポリグリセリンを球状多分岐構造分子とした後、表面に存在する多分岐ポリグリセリンの末端水酸基に適宜に選択される化合物を反応させることにより、球状多分岐構造分子をコアとし、このコアを覆うシェルを形成することができる。そして、このシェルを構成する化合物を適宜に選択することにより、シェルに親水性を付与したり、疎水性を付与することができる。その結果、疎水性の有効成分であっても、シェルを親水性にすることにより、水溶性溶媒に容易に溶解させて使用することができる。逆に、シェルを疎水性とすることにより、親水性の有効成分の水溶性溶媒に対する遮蔽性を実現することができる。
【0017】
また、シェルの親水性および疎水性を一方に偏らせずに、親水性/疎水性バランスを適宜に調整すれば、球状多分岐構造分子の水溶性溶媒への溶解性を維持すると同時に、内部に保持した有効成分の保護性を向上させることもできる。
【0018】
さらに、前記コアとなる球状多分岐構造分子の前記シェルによる表面被覆率を制御することにより、香料などの有効成分の徐放性を自由に制御することが可能となる。
【0019】
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、以下の構成の有効成分保持体を提供する。
【0020】
[1] 分子量500〜100000の分岐状ポリグリセリンの球状多分岐構造分子に所望の有効物質が保持されてなる有効成分保持体。
[2] 前記球状多分岐構造分子の表面に存在する分岐状ポリグリセリンの末端水酸基と反応する化合物から構成され、前記球状多分岐構造分子の表面の少なくとも一部を覆うシェルを有することを特徴とする、上記[1]に記載の有効成分保持体。
[3] 前記シェルが親水性であることを特徴とする、上記[2]に記載の有効成分保持体。
[4] 前記シェルが疎水性であることを特徴とする、上記[2]に記載の有効成分保持体。
[5] 前記シェルが下記一般式(I):
【0021】
【化1】

(式中、Rは炭素数6〜20のアルキル基又はアルケニル基、Rは炭素数1〜3の直鎖又は分枝鎖のアルキル基又は水素であり、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、又は水素である)で表わされる化合物から構成されていることを特徴とする、上記[2]〜[4]のいずれか1つに記載の有効成分保持体。
[6] 前記球状多分岐構造分子の表面に存在する前記分岐状ポリグリセリンの末端水酸基の少なくとも30%が前記シェルを構成する化合物と反応していることを特徴とする、上記[1]〜[5]のいずれか1つに記載の有効成分保持体。
[7] 前記有効成分が、金属イオン、薬用化合物、化粧用化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、上記[1]〜[6]のいずれか1つに記載の有効成分保持体。
【発明の効果】
【0022】
本発明にかかる有効成分保持体は、香料、薬剤などの有効成分を散逸しないように保持するとともに、前記有効成分の徐放性、溶解性などの有用な機能を実現するという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
前述のように、本発明にかかる有効成分保持体は、分子量500〜100000の分岐状ポリグリセリンの球状多分岐構造分子に所望の有効物質が保持されてなる有効成分保持体である。
以下、各構成要素について、順次、詳しく説明する。
【0024】
(球状多分岐構造分子)
本発明の有効成分保持体の保持主体である球状多分岐構造分子は、分子量500〜100000の分岐状ポリグリセリンから構成される。
【0025】
(分岐状ポリグリセリン)
分岐状ポリグリセリンとは、グリセリン単位が分岐状に結合した構造の化合物である。分岐状ポリグリセリンの原料としては、グリセリン、グリシドール等が挙げられる。
分岐状ポリグリセリンの合成には、分岐度を向上させるため、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールが用いられることもある。
この分岐状ポリグリセリンを球状多分岐構造分子とするためには、その分子量は500以上とすることが好ましく、より安定的に球状多分岐構造分子とするためには、分子量は800以上とすることが好ましい。また、分子量の上限値は、100000とすることが好ましい。分子量が100000を超えると、粘度が極めて高くなり、ハンドリング性に欠けるので、好ましくない。かかる観点から、分岐状ポリグリセリンの分子量は、800〜50,000がより好ましく、1,000〜30,000がさらに好ましい。
【0026】
分岐状ポリグリセリンとしては、グリセリン、グリシドール等の縮合反応物や、下記市販化合物が挙げられる。
すなわち、本発明に用いることのできる市販の分岐状ポリグリセリンとしては、ダイセル化学工業株式会社製の商品名「PGL06」、「PGL10PSW」、「PGL20PW」、「PGLX」や、HyperPolymers社製の商品名「PG−2」、「PG−5」、「PG−6」などが挙げられる。
【0027】
(シェル)
前記球状多分岐構造分子の表面の少なくとも一部を覆うシェルは、前記球状多分岐構造分子の表面に存在する分岐状ポリグリセリンの末端水酸基と反応する化合物から構成される。
本発明において、このシェルに対して前記球状多分岐構造分子をコアと呼称する場合もある。コアに対してシェルを形成することにより、有効成分を保持している球状多分岐構造分子の表面特性を様々に制御することが可能となる。また、シェルによるコアの被覆率を制御することによりコアに保持されている有効成分の外部への放散速度(徐放性)を制御することもできる。
シェルは、前記球状多分岐構造分子(コア)の表面の全ての水酸基と反応してコア全体を覆う場合もあれば、一部と反応して部分的にコアを覆う場合もある。シェルは、コア表面の水酸基の30%以上と反応するのが好ましく、コア表面の水酸基の50%以上と反応するのがさらに好ましい。コア表面の水酸基との反応率が低い場合、有効成分の保持効率が不十分になる恐れがある。
【0028】
(シェルを構成する化合物)
シェルを構成する化合物とは、前記球状多分岐構造分子(コア)の表面に存在する水酸基と反応する化合物を意味し、例えば、エポキシ化合物、カルボン酸、カルボン酸塩、アルファスルホ脂肪酸、アルファスルホ脂肪酸アルキルエステル、カルボン酸ハライド、無水カルボン酸、イソシアネート、アミン塩酸塩、アルキレンオキサイド等が挙げられる。
【0029】
上記エポキシ化合物としては、1,2−エポキシプロパン、1,2−エポキシブタン、1,2−エポキシペンタン、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシオクタン、エポキシポリアルキレン、エポキシポリアルキレングリコール、オキシラニルシクロヘキサン、グリシジルメチルエーテル、グリシジルエチルエーテル、グリシジルプロピルエーテル、グリシジルブチルエーテル、グリシジルペンチルエーテル、グリシジルヘキシルエーテル、グリシジルシクロヘキシルエーテル、グリシジルフェニルエーテル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、1,2:5,6−ジエポキシヘキサン、1,2:7,8−ジエポキシオクタン、ポリオキシエチレングリコールメチルグリシジエーテル、ポリオキシエチレングリコールフェニルグリシジルエーテル、ポリオキシエチレングリコールイソプロピルグリシジルエーテル、ポリオキシエチレングリコールn−ブチルグリシジルエーテル、ポリオキシエチレングリコールオクチルフェニルグリシジルエーテル、ポリオキシエチレングリコールノニルフェニルグリシジルエーテル、ポリオキシエチレングリコールセチルグリシジルエーテル、ポリオキシプロピレングリコールメチルグリシジルエーテル、ポリオキシエチレングリコールフェニルグリシジルエーテル、ポリオキシエチレングリコールn−ブチルグリシジルエーテル、ポリオキシエチレングリコールオクチルフェニルグリシジルエーテル、ポリオキシエチレングリコールノニルフェニルグリシジルエーテル、ポリオキシテトラメチレングリコールメチルグリシジルエーテル、ポリオキシエチレングリコール/ポリオキシプロピレングリコール共重合体のメチルグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ε−カプロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、トリメチルカプロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、β−メチル−δ−バレロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシシクロへキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシシクロヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル等が挙げられる。上記エポキシポリアルキレンのアルキレン部としては、エチレン、プロピレン等が挙げられ、これらは共重合されていてもよい。上記エポキシポリアルキレングリコールのアルキレングリコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられ、これらは共重合されていてもよい。これらは単独または混合して用いることができる。
【0030】
上記カルボン酸としては、脂肪酸、芳香族カルボン酸等が挙げられ、これらは単独または混合して用いることができる。
【0031】
上記脂肪酸としては、ギ酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、ヘプチル酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、パルミトイル酸、マルガリン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、リノレン酸、エレオステアリン酸、ツベルクロステアリン酸、アラキジン酸、アラキドン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、ネルボン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸等が挙げられ、これらは単独または混合して用いることができる。
【0032】
上記芳香族カルボン酸としては、安息香酸、o−ヒドロキシ安息香酸(サリチル酸)、m−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、o−メチル安息香酸(サリチル酸)、m−メチル安息香酸、p−メチル安息香酸、4−(ジメチルアミノ)安息香酸等が挙げられ、これらは単独または混合して用いることができる。
【0033】
上記カルボン酸塩としては、上記カルボン酸のナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等が挙げられ、これらは単独または混合して用いることができる。
【0034】
上記アルファスルホ脂肪酸としては、酪酸、吉草酸、カプロン酸、ヘプチル酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、パルミトイル酸、マルガリン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、リノレン酸、エレオステアリン酸、ツベルクロステアリン酸、アラキジン酸、アラキドン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、ネルボン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸等の脂肪酸のα位がスルホン化された化合物等が挙げられ、これらは単独または混合して用いることができる。
【0035】
上記アルファスルホ脂肪酸アルキルエステルとしては、酪酸、吉草酸、カプロン酸、ヘプチル酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、パルミトイル酸、マルガリン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、リノレン酸、エレオステアリン酸、ツベルクロステアリン酸、アラキジン酸、アラキドン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、ネルボン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸等のアルファスルホ脂肪酸のアルキルエステル化合物等が挙げられる。アルキルエステルとしては、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル等が挙げられる。これらは単独または混合して用いることができる。
【0036】
上記カルボン酸ハライドとしては、上記カルボン酸のブロマイド物、クロライド物、アイオダイド物等が挙げられ、これらは単独または混合して用いることができる。
【0037】
上記無水カルボン酸としては、無水酢酸、無水フタル酸等が挙げられ、これらは単独または混合して用いることができる。
【0038】
上記イソシアネートとしては、2,4−トリレンジイソシアネート 、2,6−トリレンジイソシアネート 、1,3−キシリレンジイソシアネート 、1,4−キシリレンジイソシアネート 、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート 、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート 、3−メチルジフェニルメタンジイソシアネート 、ヘキサメチレンジイソシアネート 、イソホロンジイソシアネート 、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート 、ジシクロヘキシルメタン−2,4’−ジイソシアネート 、ω,ω’−ジイソシアネート ジメチルシクロヘキサン、リジンイソシアネート等が挙げられ、これらは単独または混合して用いることができる。
【0039】
上記アミン塩酸塩としては、トリメチルアミン塩酸塩、トリエチルアミン塩酸塩、トリプロピルアミン塩酸塩、トリブチルアミン塩酸塩等が挙げられ、これらは単独または混合して用いることができる。
【0040】
上記アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等が挙げられ、これらは単独または混合して用いることができる。
【0041】
上述のシェルの原料を選ぶ基準としては、例えば、有効成分を保持しているコアに付与したい特性、例えば、吸着性、遮蔽性、親水性、疎水性の観点が挙げられる。
【0042】
例えば、繊維等の基材への吸着性の観点からは、コアに前記基材との間に静電的相互作用を発揮し得る特性を付与する化合物として、4−(ジメチルアミノ)安息香酸等を選択することができる。
【0043】
また、コアに保持している有効成分の外界からの遮蔽性を実現する観点からは、分岐構造に由来する立体障害を有する化合物として、イソステアリン酸等を選択することができる。
【0044】
また、水溶性向上につながる親水性をコアに付与する観点からは、親水性化合物として、エチレンオキサイド等を選択することができる。
【0045】
また、疎水性化合物との親和性や、水溶性の環境下での水分遮断性を実現する疎水性をコアに付与する観点からは、疎水性化合物として、オレイン酸、ステアリン酸等を選択することができる。
【0046】
また、疎水性向上の為の「疎水シェル導入率向上」とそれに伴う水溶性の低下を抑制する「水溶性の確保」の両立という観点からは、極性基と疎水鎖を有する化合物としてアルファスルホ脂肪酸やアルファスルホ脂肪酸エステル等を選択することができる。
【0047】
かかる親水性/疎水性バランスを制御可能な化合物として、具体的には、下記一般式(I):
【0048】
【化2】

(式中、Rは炭素数6〜20のアルキル基又はアルケニル基、Rは炭素数1〜3の直鎖又は分枝鎖のアルキル基又は水素であり、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、又は水素である)で表わされる化合物を挙げることができる。
さらに具体的には、例えば、アルファスルホパルミチン酸、アルファスルホパルミチン酸メチルエステルを挙げることができる。
【0049】
(シェルを形成するための、コア表面への化合物の修飾反応条件)
シェル形成とは、換言すれば、分岐状ポリグリセリンの誘導体化であり、この誘導体化は、触媒の存在なしに進行する場合もあるが、各種の触媒で行うこともできる。触媒の種類としては、塩基性触媒、酸性触媒、四級アンモニウム塩触媒等が挙げられる。
【0050】
上記塩基性触媒としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、それらの水素化物、アルコキシド、水酸化物、アルキル化物、炭酸塩等を挙げることができる。
【0051】
また、上記酸性触媒としては、フッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸、沃化水素酸、シアン化水素酸、イソシアン化水素酸、アジ化水素酸、ホウ酸、炭酸、硝酸、亜硝酸、リン酸、亜リン酸、硫酸、亜硫酸、塩素酸、亜塩素酸、次亜塩素酸、過塩素酸、ヨウ素酸、過ヨウ素酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、サリチル酸、没食子酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、アジピン酸等を挙げることができる。
【0052】
上記四級アンモニウム塩触媒としては、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラプロピルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラプロピルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド等が挙げられ、これらは単独または混合して用いることができる。
【0053】
上記触媒の使用量は、出発物質(分岐状ポリグリセリン)に対して、0.1〜30質量%であることが好ましく、1〜20質量%であることがより好ましい。
【0054】
本発明に用いる分岐状ポリグリセリンの誘導体化は、溶媒の存在なしに進行するが、各種の溶媒中で行うこともできる。
溶媒を用いて誘導体化する場合に用いる溶媒の種類としては、特に限定はされないが、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、アニソール、ジメトキシベンゼン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプチルケトン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等のアルコール系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒、N.N−ジメチルホルムアミド、N.N−ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒が挙げられる。これらは、単独で使用しても、2種以上を併用しても良い。
【0055】
上記誘導体化の反応濃度(溶媒に対する分岐状ポリグリセリンの濃度)は、1質量%〜100質量%(溶媒なし)、好ましくは、10質量%〜100質量%、より好ましくは、30質量%〜100質量%である。
【0056】
上記誘導体化の反応は、好ましくは、不活性ガス(Ar、Nなど)下にモノマー溶液と触媒を混合させる。この時、シェル形成用の化合物は、一度に混合させても、反応系に滴下してもどちらでも良い。反応温度は、30℃〜180℃が好ましく、より好ましくは、60℃〜160℃である。反応時間は0.5〜10時間、より好ましくは、1〜7時間として、重合を完結させる。
【0057】
(有効成分)
本発明において、分岐状ポリグリセリンからなる球状多分岐構造分子(コア)に保持する有効成分としては、香料、金属イオン、殺菌剤、抗菌剤、抗炎症剤、清涼剤、制汗剤、必須脂肪酸、ビタミン等が挙げられる。
【0058】
上記有効成分のうち、水難溶性物質(水への溶解度:25℃で5%未満)は、疎水性化合物から形成したシェルを有するコア(球状多分岐構造分子)と特に保持体を形成しやすい。一方、水溶性物質(水への溶解度:25℃で5%以上)は、親水性のコア(分岐状ポリグリセリンからなる球状多分岐構造分子)または親水性のシェルが形成された球状多分岐構造分子に、特に保持されやすい。また、遮蔽性を有するシェルが形成された球状多分岐構造分子は、シェルによる遮蔽効果によって、揮発性の有効成分の保持能が向上する。
【0059】
上記香料としては、アルデヒド(C8〜C20)、アニスアルデヒド、アセトフェノン、アセチルセドレン、アリルアミルグリコレート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、α−ダマスコン、アンブロキサン、アニスアルデヒド、ベンジルアルコール、ボルニルアセテート、ベンズアルデヒド、セドロール、セレストリッド、シンナミックアルコール、シンナミックアルデヒド、シスジャスモン、シトラール、シトロネラール、シトロネロール、シトロネリルニトリル、シクラメンアルデヒド、クマリン、シンナミルアセテート、ジプロピレングリコール、ジメチルベンジルカービノール、ジヒドロミルセノール、ジフェニルオキサイド、エチルバニリン、オイゲノール、フェニルエチルフェニルアセテート、ガラキソリッド、ゲラニオール、ゲラニルニトリル、ヘリオナール、ヘリオトロピン、シス−3−ヘキセノール、ヘキシルシンナミックアルデヒド、ハイドロトロピックアルコール、ヒドロキシシトロネラール、インドール、イオノン、イソシクロシトラール、アンバーコア、イソEスーパー、イソブチルキノリン、ジャスモラクトン、コアボン、リリアール、リモネン、リナロール、リナロールオキサイド、リラール、マイヨール、γ−メチルイオノン、ムスクケトン、ムスクチベチン、ムスクモスケン、ミラックアルデヒド、ネロール、ノピールアルコール、フェニルエチルアルコール、α−ピネン、ローズオキサイド、サンダルマイソールコア、サンタレックス、バクダノール、ターピネオール、テトラヒドロリナロール、テトラヒドロリナリールアセテート、テトラヒドロゲラニオール、トナリッド、トリプラール、チモール、バニリン、アニス油、ベイ油、ボアドローズ油、カナンガ油、カルダモン油、セダーウッド油、オレンジ油、マンダリン油、バジル油、ナツメグ油、シトロネラ油、クローブ油、コリアンダー油、エレミ油、ユーカリ油、フェンネル油、ゼラニウム油、ジャスミン油、ラベンダー油、レモン油、レモングラス油、ライム油、ネロリ油、オークモス油、パチュリ油、ペパーミント油、プチグレン油、パイン油、ローズ油、ローズマリー油、クラリーセージ油、サンダルウッド油、スペアミント油、スパイクラベンダー油、スターアニス油、タイム油、ベチバー油、イランイラン油、トルーバルサム油、チュベローズ油等が挙げられる。
【0060】
上記金属イオンとしては、Auイオン、Agイオン、Cuイオン、Znイオン、Feイオン、Ptイオン、Pdイオン、Niイオン、Reイオン、Rhイオン、Ruイオン、Scイオン、Tiイオン、Vイオン、Crイオン、Mnイオン、Yイオン、Zrイオン、Nbイオン、Moイオン、Tcイオン、Hfイオン、Taイオン、Wイオン、Osイオン、Irイオン、Cdイオン、Hgイオン等が挙げられる。
【0061】
上記殺菌剤としては、ピロクトンオラミン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、イソプロピルメチルフェノール、次亜塩素酸ナトリウム、アクリノール、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジン、クロラムフェニコール、塩酸オキシテトラサイクリン、グリセオフルビン、トリクロサン、クララエキス等が挙げられる。
【0062】
上記抗菌剤としては、カテキン、ヒノキチオール、1,8−シネオール、イソチオシアン酸アリル、イソチオシアン酸ブチル、タケ抽出オイル、シソオイル、アスコルビン酸、アスコルビン酸のアルカリ金属塩、アスコルビン酸の脂肪酸エステル、没食子酸のエステル類、エリソルビン酸、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、p−メトキシフェノール(PMP)、トコフェロール、トコトリエノール等が挙げられる。
【0063】
上記抗炎症剤としては、ヒドロコルチゾン、コハク酸ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、デキサメタゾン、ベタメタゾン、ベタメタゾン吉草酸塩、プロピオン酸クロベタゾール、イブプロフェン及びその塩、ジクロフェナック及びその塩、アセチルサリチル酸、アセトアミノフェン、またはグリシルレチン酸、フェルビナク、インドメタシンが挙げられる。
【0064】
上記清涼剤としては、ハッカ油、マスティック油、パセリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、カルダモン油、ローレル油、カモミル油、キャラウェイ油、パインニードル油、メントール、メントン、カルボン、アネトール、サリチル酸メチル、オクチルアルデヒド、メンチルアセテート、3−(1−メントキシ)プロパン−1,2−ジオール、p−メンタン−3,8−ジオール、6−イソプロピル−9−メチル−1,4−ジオキサスピロ−(4,5)−デカン−2−メタノール、コハク酸メンチルおよびそのアルカリ土類塩、トリメチルシクロヘキサノール、N−エチル−2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキサンカルボキサミド、3−(1−メントキシ)−2−メチル-プロパン−1,2−ジオール、メントングリセリンケタール、乳酸メンチル、[1’R,2’S,5’R]−2−(5’−メチル−2’−(メチルエチル)シクロヘキシルオキシ)エタン−1−オール、[1’R,2’S,5’R]−3−(5’−メチル−2’−(メチルエチル)シクロヘキシルオキシ)プロパン−1−オール、[1’R,2’S,5’R]−4−(5’−メチル−2’−(メチルエチル)シクロヘキシルオキシ)ブタン−1−オール等が挙げられる。
【0065】
上記制汗剤としては、クロロヒドロキシアルミニウム、パラフェノールスルホン酸亜鉛、クロルヒドロキシアルミニウム・プロピレングリコール、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、クエン酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、塩基性塩化アルミニウム、フェノールスルホン酸アルミニウム、β−ナフトールジスルホン酸アルミニウム、過ホウ酸ナトリウム、アルミニウムジルコニウムオクタクロロハイドレート、アルミニウムジルコニウムペンタクロロハイドレート、アルミニウムジルコニウムテトラクロロハイドレート、アルミニウムジルコニウムトリクロロハイドレート、ジルコニウムクロロハイドレート、硫酸アルミニウムカリウム、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、塩基性臭化アルミニウム、アルミニウムナフタリンスルホン酸、塩基性ヨウ化アルミニウム等が挙げられる。
【0066】
上記必須脂肪酸としては、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、ジホモ−γ−リノレン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、アラキドン酸、ドコサペンタエン酸等が挙げられる。
【0067】
上記ビタミンとしては、ビタミンA(レチノール)、ビタミンD(エルゴカルシフェロール)、ビタミンD(コレカルシフェロール)、ビタミンE(トコフェロール)、ビタミンK(フィロキノン)、ビタミンK(メナキノン)、ビタミンK(メナジオール二リン酸ナトリウム)等が挙げられる。
【0068】
(有効成分の保持形態)
本発明における球状多分岐構造分子への有効成分の保持は、球状多分岐構造分子(コア)またはシェルが形成された球状多分岐構造分子(コア−シェル構造体)と有効成分との混合することにより得られる。有効成分の球状多分岐構造分子への保持は、配位結合、イオン結合、共有結合、静電的相互作用、疎水性相互作用、分子間力相互作用、などの結合形態により実現される。
【0069】
(有効成分の保持化方法)
本発明における球状多分岐構造分子への有効成分の保持を実現する方法は、特に限定されないが、球状多分岐構造分子と有効成分のそれぞれをそのままで混合する方法、何れか一方を溶媒に溶解させてから、もう片方をそのままで混合する方法、どちらも溶媒に溶解させてから混合する方法などが挙げられる。
【0070】
上記混合を行う時の温度は、−20℃〜180℃が好ましく、より好ましくは、0℃〜120℃である。混合時間は1分〜10時間、より好ましくは、10分〜5時間として、有効成分の球状多分岐構造分子への保持を完結させる。
【0071】
(本発明の有効成分保持体の用途)
本発明の有効成分保持体は、多くの用途に使用することができる。例えば、化粧品、洗浄剤、医薬品、芳香剤、ポリウレタン配合物、塗料、水性塗料、接着剤、硬化樹脂、生物学的適合性ポリマー、機能性物質や触媒の担持体として、医薬、生化学、および合成における有効成分等に使用することができる。
【実施例】
【0072】
以下に、本発明にかかる有効成分保持体の実施例を説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではない。
【0073】
(実施例1:シェル付き球状多分岐構造分子の調製)
攪拌機、環流冷却器および窒素導入管を取り付けた100mLの4つ口セパラブルフラスコに、分岐状ポリグリセリンとしてダイセル化学工業株式会社製の「PGL10PSW」10g、シェル形成用化合物としてグリシジルフェニルエーテル18g、溶媒としてジメチルホルムアミド10gを入れ、窒素導入管によって4つ口セパラブルフラスコ内に窒素ガスを導入した。
つづいて、窒素ガスが導入された4つ口セパラブルフラスコを、110℃に昇温させ、120分加温した。反応終了後、ヘキサンで再沈させた後、溶媒を留去することで、分岐状ポリグリセリン誘導体(シェルを有する球状多分岐構造分子)を得た。
収率は85%であり、GPCによる重量平均分子量は2,500であった。
【0074】
(実施例2:シェル付き球状多分岐構造分子の調製)
攪拌機、環流冷却器および窒素導入管を取り付けた100mLの4つ口セパラブルフラスコに、分岐状ポリグリセリンとしてダイセル化学工業株式会社製の「PGL10PSW」10g、シェル形成用化合物としてラウリン酸クロリド23g、溶媒としてジイソプロピルエチルアミン21gおよびジエトキシエタン30gを入れ、窒素導入管によって4つ口セパラブルフラスコ内に窒素ガスを導入した。
つづいて、窒素ガスが導入された4つ口セパラブルフラスコを、70℃に昇温させ、180分加温した。反応終了後、THF/ヘキサンで再沈精製した。溶媒を留去することで、分岐状ポリグリセリン誘導体(シェルを有する球状多分岐構造分子)を得た。
収率は88%であり、GPCによる重量平均分子量は3,100であった。
【0075】
(実施例3:シェル付き球状多分岐構造分子の調製)
攪拌機、環流冷却器および窒素導入管を取り付けた100mLの4つ口セパラブルフラスコに、分岐状ポリグリセリンとしてダイセル化学工業株式会社製の「PG20PW」10g、シェル形成用化合物として1,2−エポキシヘキサン9g、溶媒としてジメチルホルムアミド10gを入れ、窒素導入管によって4つ口セパラブルフラスコ内に窒素ガスを導入した。
つづいて、窒素ガスが導入された4つ口セパラブルフラスコを、110℃に昇温させ、120分加温した。反応終了後、ヘキサンで再沈させたのち溶媒を留去することで、分岐状ポリグリセリン誘導体(シェルを有する球状多分岐構造分子)を得た。
収率は79%であり、GPCによる重量平均分子量は3,500であった。
【0076】
(実施例4:シェル付き球状多分岐構造分子の調製)
攪拌機、環流冷却器および窒素導入管を取り付けた100mLの4つ口セパラブルフラスコに、分岐状ポリグリセリンとしてダイセル化学工業株式会社製の「PG20PW」10g、シェル形成用化合物として無水フタル酸16g、溶媒として濃硫酸1gを入れ、窒素導入管によって4つ口セパラブルフラスコ内に窒素ガスを導入した。
つづいて、窒素ガスが導入された4つ口セパラブルフラスコを、100℃に昇温させ、120分加温した。反応終了後、苛性ソーダで中和したのち、THF/ヘキサンで再沈精製した。溶媒を留去することで、分岐状ポリグリセリン誘導体(シェルを有する球状多分岐構造分子)を得た。
収率は73%であり、GPCによる重量平均分子量は4,300であった。
【0077】
(実施例5:シェル付き球状多分岐構造分子の調製)
攪拌機、環流冷却器および窒素導入管を取り付けた100mLの4つ口セパラブルフラスコに、分岐状ポリグリセリンとしてダイセル化学工業株式会社製の「PGLX」10g、シェル形成用化合物としてグリシジルフェニルエーテル14g、溶媒としてDMF10gを入れ、窒素導入管によって4つ口セパラブルフラスコ内に窒素ガスを導入した。
つづいて、窒素ガスが導入された4つ口セパラブルフラスコを、120℃に昇温させ、90分加温した。反応終了後、ヘキサンで再沈させたのち溶媒を留去することで、分岐状ポリグリセリン誘導体(シェルを有する球状多分岐構造分子)を得た。
収率は91%であり、GPCによる重量平均分子量は6,800であった。
【0078】
(実施例6:シェル付き球状多分岐構造分子の調製)
攪拌機、環流冷却器および窒素導入管を取り付けた100mLの4つ口セパラブルフラスコに、分岐状ポリグリセリンとしてダイセル化学工業株式会社製の「PGLX」10g、シェル形成用化合物としてラウリン酸クロリド26g、溶媒としてジイソプロピルエチルアミン19g、ジエトキシエタン30gを入れ、窒素導入管によって4つ口セパラブルフラスコ内に窒素ガスを導入した。
つづいて、窒素ガスが導入された4つ口セパラブルフラスコを、70℃に昇温させ、240分加温した。反応終了後、THF/ヘキサンで再沈精製した。溶媒を留去することで、分岐状ポリグリセリン誘導体(シェルを有する球状多分岐構造分子)を得た。
収率は82%であり、GPCによる重量平均分子量は9,500であった。
【0079】
(実施例7:シェル付き球状多分岐構造分子の調製)
攪拌機、環流冷却器および窒素導入管を取り付けた100mLの4つ口セパラブルフラスコに、分岐状ポリグリセリンとしてHyperPolymers社製の「PG−2」10g、シェル形成用化合物として1,2−エポキシヘキサン9gおよびジメチルホルムアミド10gを入れ、窒素導入管によって4つ口セパラブルフラスコ内に窒素ガスを導入した。
つづいて、窒素ガスが導入された4つ口セパラブルフラスコを、100℃に昇温させ、180分加温した。反応終了後、溶媒を留去することで、分岐状ポリグリセリン誘導体(シェルを有する球状多分岐構造分子)を得た。
収率は86%であり、GPCによる重量平均分子量は3,600であった。
【0080】
(実施例8:シェル付き球状多分岐構造分子の調製)
攪拌機、環流冷却器および窒素導入管を取り付けた100mLの4つ口セパラブルフラスコに、分岐状ポリグリセリンとしてHyperPolymers社製の「PG−2」10g、シェル形成用化合物として無水フタル酸16g、濃硫酸1gを入れ、窒素導入管によって4つ口セパラブルフラスコ内に窒素ガスを導入した。
つづいて、窒素ガスが導入された4つ口セパラブルフラスコを、100℃に昇温させ、120分加温した。反応終了後、苛性ソーダで中和したのち、THF/ヘキサンで再沈精製した。溶媒を留去することで、分岐状ポリグリセリン誘導体(シェルを有する球状多分岐構造分子)を得た。
収率は79%であり、GPCによる重量平均分子量は4,500であった。
【0081】
(実施例9:シェルなし球状多分岐構造分子の調製)
シェルなしの球状多分岐構造分子として、市販の分岐状ポリグリセリン(ダイセル化学工業株式会社製の「PGL10PSW」)を用いた。このシェルなしの球状多分岐構造分子のGPCによる重量平均分子量は1,000であった。
【0082】
(実施例10:シェルなし球状多分岐構造分子の調製)
シェルなしの球状多分岐構造分子として、市販の分岐状ポリグリセリン(ダイセル化学工業株式会社製の「PG20PW」)を用いた。このシェルなしの球状多分岐構造分子のGPCによる重量平均分子量は2,000であった。
【0083】
(実施例11:シェルなし球状多分岐構造分子の調製)
シェルなしの球状多分岐構造分子として、市販の分岐状ポリグリセリン(ダイセル化学工業株式会社製の「PGLX」)を用いた。このシェルなしの球状多分岐構造分子のGPCによる重量平均分子量は3,000であった。
【0084】
(実施例12:シェルなし球状多分岐構造分子の調製)
シェルなしの球状多分岐構造分子として、市販の分岐状ポリグリセリン(HyperPolymers社製の「PG−2」)を用いた。このシェルなしの球状多分岐構造分子のGPCによる重量平均分子量は2,000であった。
【0085】
(実施例13:シェル付き球状多分岐構造分子の調製)
200mLナスフラスコ中でダイセル化学工業株式会社「PGLX」48gをエタノール115gに溶解させ、次いで減圧濃縮により脱水した。前記方法により脱水操作を2回繰り返した。
上記脱水後の「PGLX」を分岐状ポリグリセリンとして10g、シェル形成用化合物としてアルファスルホパルミチン酸30gを撹拌機、還流冷却器および窒素導入管を取り付けた100mLの4つ口セパラブルフラスコに添加し、100℃で15分間攪拌混合した。その後、チオ硫酸ナトリウム3gを添加して、120℃、減圧下で6時間反応を行った。
反応終了後、チオ硫酸ナトリウムをろ過によって除去し、次いで水酸化ナトリウム水溶液にて中和した。その後、THF/ヘキサンで再沈精製し、溶媒を留去することで、分岐状ポリグリセリン誘導体(シェルを有する球状多分岐構造分子)を得た。
収率は85%であり、GPCによる重量平均分子量は4,800であった。
【0086】
(実施例14:シェル付き球状多分岐構造分子の調製)
200mLナスフラスコ中でダイセル化学工業株式会社「PGLX」48gをエタノール115gに溶解させ、次いで減圧濃縮により脱水した。前記方法により脱水操作を2回繰り返した。
上記脱水後の「PGLX」を分岐状ポリグリセリンとして10g、シェル形成用化合物としてアルファスルホパルミチン酸メチルエステル30gを撹拌機、還流冷却器および窒素導入管を取り付けた100mLの4つ口セパラブルフラスコに添加し、100℃で15分間攪拌混合した。その後、チオ硫酸ナトリウム3gを添加して、120℃、減圧下で6時間反応を行った。
反応終了後、チオ硫酸ナトリウムをろ過によって除去し、次いで水酸化ナトリウム水溶液にて中和した。その後、THF/ヘキサンで再沈精製した。溶媒を留去することで、分岐状ポリグリセリン誘導体(シェルを有する球状多分岐構造分子)を得た。
収率は82%であり、GPCによる重量平均分子量は4,500であった。
【0087】
(比較例1)
比較のための有効成分担持体として、ポリエチレングリコール4000(関東化学製の「PEG4000(商品名)」)を用いた。この担持体のGPCによる重量平均分子量は3,000であり、球状多分岐構造分子ではない。
【0088】
(比較例2)
比較のための有効成分担持体として、ヒドロキシプロピルβシクロデキストリン(日本食品化学工業株式会社製「HP−β−CD(商品名)」)を用いた。この担持体のGPCによる重量平均分子量は1,300であり、球状多分岐構造分子ではない。
【0089】
(比較例3)
比較のための有効成分担持体として、ポリグリセリン(阪本薬品工業株式会社製「ポリグリセリン#750(商品名)」)を用いた。この担持体のGPCによる重量平均分子量は750であり、球状多分岐構造分子ではない。
【0090】
(有効成分の保持化および性能評価)
上記実施例1〜14及び比較例1〜3で得たサンプルに有効成分を混合して、有効成分の保持性と、シェルにより付加された機能について、評価した。
【0091】
(評価試験1)
実施例1,11,13と、比較例1の各サンプル0.1g、リナロール(有効成分)0.05g、EMALEX715(商品名:日本エマルジョン社製の「ポリオキシエチレンドデシルエーテル(EO=15)」)0.1g、水10gを混合し、開放系容器中、室温で攪拌した。
溶液中の7日後のリナロールの残存量を、シクロヘキサノンを標準物質とした内部標準法を用いて、ガスクロマトグラフィーで定量した。
リナロールの残存率を算出し、放出持続性を下記評価条件によって評価した。
◎:10%以上
○:1%以上、10%未満
×:1%未満
評価結果を下記(表1)に示す。
【0092】
【表1】

【0093】
(評価試験2)
実施例2,9,14と、比較例3の各サンプル0.1g、メントール(有効成分)0.05g、水10gを混合し、室温で3時間攪拌した。メントールの可溶化量を、シクロヘキサノンを標準物質とした内部標準法を用いて、ガスクロマトグラフィーで定量した。メントールの可溶化能を下記評価条件によって評価した。
◎:0.1%以上
○:0.03%以上、0.1%未満
×:0.03%未満
評価結果を下記(表2)に示す。
【0094】
【表2】

【0095】
(評価試験3)
実施例3,10,13と、比較例2の各サンプル0.1g、有効成分としてジブチルヒドロキシトルエン(BHT)0.05g、水10gを混合し、室温で3時間攪拌した。BHTの可溶化量を、シクロヘキサノンを標準物質とした内部標準法を用いて、ガスクロマトグラフィーで定量した。BHTの可溶化能を下記評価条件によって評価した。
◎:0.002%以上
○:0.001%以上、0.002%未満
×:0.001%未満
評価結果を下記(表3)に示す。
【0096】
【表3】

【0097】
(評価試験4)
実施例4,12,14と、比較例3の各サンプル0.1g、有効成分としてイソプロピルメチルフェノール(IPMP)0.05g、水10gを混合し、室温で3時間攪拌した。IPMPの可溶化量を、シクロヘキサノンを標準物質とした内部標準法を用いて、ガスクロマトグラフィーで定量した。IPMPの可溶化能を下記評価条件によって評価した。
◎:0.1%以上
○:0.03%以上、0.1%未満
×:0.03%未満
評価結果を下記(表4)に示す。
【0098】
【表4】

【0099】
(評価試験5)
実施例5,9,13、比較例2の各サンプル0.1g、有効成分としてp−メトキシフェノール(PMP)0.05g、水10gを混合し、室温で3時間攪拌した。PMPの可溶化量を、シクロヘキサノンを標準物質とした内部標準法を用いて、ガスクロマトグラフィーで定量した。PMPの可溶化能を下記評価条件によって評価した。
◎:7%以上
○:4%以上、7%未満
×:4%未満
評価結果を下記(表5)に示す。
【0100】
【表5】

【0101】
(評価試験6)
実施例6,12,14と、比較例2の各サンプル1g、有効成分としてピロクトンオラミン3g、プロピレングリコール10gを混合し、50℃で1時間攪拌した。室温で1日静置した。溶液の外観、特にピロクトンオラミンの結晶の析出状態から、ピロクトンオラミンの可溶化能を下記評価条件によって評価した。
◎:結晶が析出しない
○:結晶がやや析出する
×:結晶が析出する
評価結果を下記(表6)に示す。
【0102】
【表6】

【0103】
(評価試験7)
実施例7,11,13と、比較例1の各サンプルの0.05%水溶液1g、100ppm硫酸銀水溶液1gを混合し、室温で3時間攪拌した。1日後の溶液の外観から各サンプルの保持体が有効成分である銀イオンを保持する状態の安定性を、下記評価条件によって評価した。
◎:沈殿物が生成しない
○:沈殿物がやや生成する
×:沈殿物が生成する
評価結果を下記(表7)に示す。
【0104】
【表7】

【0105】
(評価試験8)
実施例1,11,14と、比較例1の各サンプルの0.05%水溶液1g、100ppm硫酸銀水溶液1g、1%水素化ホウ素ナトリウム0.2gを混合し、室温で3時間攪拌した。1日後の溶液の外観から各サンプルの保持体が有効成分である銀微粒子を保持する状態の安定性を、下記評価条件によって評価した。
◎:沈殿物が生成しない
○:沈殿物がやや生成する
×:沈殿物が生成する
評価結果を下記(表8)に示す。
【0106】
【表8】

【0107】
(評価試験9)
実施例2,10,13と、比較例2の各サンプル0.1g、有効成分として塩化ベンザルコニウム0.1g、水10gを混合し、室温で3時間攪拌した。混合溶液を「スペクトラポア7」(Spectrum社製の商品名;透過分子量1000の透析膜)で3日間透析し、残存する塩化ベンザルコニウム量を、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリドを標準物質とした内部標準法を用いて、高速液体クロマトグラフィーで定量し、下記評価条件によって遮蔽性(有効成分の保護性)の評価した。
◎:残存率が10%以上
○:残存率が5%以上、10%未満
×:残存率が5%未満
評価結果を下記(表9)に示す。
【0108】
【表9】

【0109】
(評価試験10)
実施例3,12,14、比較例3の各サンプル0.1g、有効成分としてレチノール0.1g、水10gを混合し、室温で3時間攪拌した。70℃1週間静置し、レチノールの残存量を高速液体クロマトグラフィーで定量し、レチノールの残存率から、保持安定性を下記評価条件によって評価した。
◎:残存率が70%以上
○:残存率が50%以上、70%未満
×:残存率が50%未満
評価結果を下記(表10)に示す。
【0110】
【表10】

【0111】
(評価試験11)
〈液体洗剤の調製〉
残香試験を実施するために、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(C12/14−12EO):11g、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(C13−7EO):1.5g、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド:0.75g、実施例8,9,13、比較例1の各サンプル:0.5g、香料:0.35g、水:35.9gからなる各種液体洗剤を調製した。
【0112】
〈官能評価〉
上記調製の各種液体洗剤2.1mLを2.1Lの水道水に溶解させた水溶液中に、綿タオルを浸けた。ガラス棒で1分間撹拌し、続いて10分間放置した。その後、流水で1回濯ぎ、手で絞った後、終夜乾燥し、残香性を下記評価条件によって評価した。
(乾燥後のタオルを嗅いだ10人のうち、「香りが残る」と感じた人数)
◎:9〜10人
○:4〜8人
×:0〜3人
評価結果を下記(表11)に示す。
【0113】
【表11】

【0114】
(評価試験12)
〈貼付剤の調製〉
実施例4,10,14、および比較例3の4種類の各サンプル1.0g、メントール(有効成分)0.9g、を混合し、35℃で20時間攪拌し、メントールを保持した有効成分保持体を得た。
下記(表12)に示す配合比に基づいて、上記有効成分保持体とその他の成分からなる4種類の水性粘着剤組成物を調製した。なお、下記(表12)中の「メントール内包有効成分保持体」と記載されている成分は、上述のようにメントールを実施例4,10,14、および比較例3の各サンプルに内包させた有効性保持体を意味している。
得られた各水性粘着剤組成物を不織布上に150g/m2になるように均一に塗布して、ポリエチレンフィルムのフェイシングを施し、実施例4,10,14、および比較例3の各サンプルを含む4種類の貼付剤を得た。
【0115】
【表12】

【0116】
〈メントールの徐放性評価〉
上記調製の各貼付剤を4cm×10cmに切り取り、32℃に調整したアルミニウム製バットに一定時間載置した。
その後、各貼付剤を1cm四方に切り取り200mLナスフラスコに入れ、メタノール50mLを添加し、70℃で1時間還流させた。このナスフラスコ中の溶液を100mLメスフラスコに移した。この溶液を一次抽出溶液と称す。
一方、200mLのナスフラスコ中に残った膏体をテフロン(登録商標)製の棒でヒビが入る程度につぶし、その後、メタノール40mLを添加し、70℃で30分間還流して、膏体中の成分をさらに抽出した。この溶液を二次抽出溶液と称す。
上記二次抽出溶液を上記100mLメスフラスコ中の一次抽出溶液に加えた。この100mLメスフラスコ中の溶液をメスアップし、シクロヘキサノンを内部標準とした内部標準法を用いて、貼付剤中のメントール含有量をガスクロマトグラフィーで測定した。得られた測定値から算出したメントール残存率によりメントール徐放性を下記評価条件にて評価した。
◎:メントール残存率が80%以上
○:メントール残存率が60%以上80%未満
×:メントール残存率が60%未満
評価結果を下記(表13)に示す。
【0117】
【表13】

【産業上の利用可能性】
【0118】
以上説明したに、本発明にかかる有効成分保持体は、香料、薬剤などの有効成分を散逸しないように保持するとともに、前記有効成分の徐放性、溶解性などの有用な機能を実現するという効果を有し、特に、医薬品や、各種衛生製品、精密電子材料などにおける微量成分導入手段に好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子量500〜100000の分岐状ポリグリセリンの球状多分岐構造分子に所望の有効成分が保持されてなる有効成分保持体。
【請求項2】
前記球状多分岐構造分子の表面に存在する分岐状ポリグリセリンの末端水酸基と反応する化合物から構成され、前記球状多分岐構造分子の表面の少なくとも一部を覆うシェルを有することを特徴とする請求項1に記載の有効成分保持体。
【請求項3】
前記シェルが親水性であることを特徴とする請求項2に記載の有効成分保持体。
【請求項4】
前記シェルが疎水性であることを特徴とする請求項2に記載の有効成分保持体。
【請求項5】
前記シェルが下記一般式(I):
【化1】

(式中、Rは炭素数6〜20のアルキル基又はアルケニル基、Rは炭素数1〜3の直鎖又は分枝鎖のアルキル基又は水素であり、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、又は水素である)で表わされる化合物から構成されていることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の有効成分保持体。
【請求項6】
前記球状多分岐構造分子の表面に存在する前記分岐状ポリグリセリンの末端水酸基の少なくとも30%が前記シェルを構成する化合物と反応していることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の有効成分保持体。
【請求項7】
前記有効成分が、金属イオン、薬用化合物、化粧用化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の有効成分保持体。

【公開番号】特開2010−132896(P2010−132896A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−252773(P2009−252773)
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】