説明

有機エレクトロルミネッセンス素子及び表示装置

【課題】特に、青色発光において、高輝度、高発光効率および耐久性の両立を達成した有機EL素子、およびこれを用いた高発光輝度、耐久性の良好な表示装置を提供する。
【解決手段】ホスト化合物及び燐光性化合物を含有する発光層を有する有機EL素子であって、ホスト化合物として発光層に下記一般式1で表されるシクロファン化合物を含有することを特徴とする有機エEL素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)及び表示装置に関し、詳しくは発光輝度、発光効率及び耐久性に優れた有機エレクトロルミネッセンス素子、及びそれを有する表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光型の電子ディスプレイデバイスとして、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)がある。ELDの構成要素としては、無機エレクトロルミネッセンス素子(無機EL素子)や有機エレクトロルミネッセンス素子が挙げられる。無機エレクトロルミネッセンス素子は平面型光源として使用されてきたが、発光素子を駆動させるためには交流の高電圧が必要である。有機エレクトロルミネッセンス素子は、発光する化合物を含有する発光層を、陰極と陽極で挟んだ構成を有し、発光層に電子及び正孔を注入して、再結合させることにより励起子(エキシトン)を生成させ、このエキシトンが失活する際の光の放出(蛍光・燐光)を利用して発光する素子であり、数V〜数十V程度の電圧で発光が可能であり、更に、自己発光型であるために視野角に富み、視認性が高く、薄膜型の完全固体素子であるために省スペース、携帯性等の観点から注目されている。
【0003】
しかしながら、今後の実用化に向けた有機EL素子には、更なる低消費電力で効率よく高輝度に発光する有機EL素子の開発が望まれている。
【0004】
例えば、特許第3,093,796号では、スチルベン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体又はトリススチリルアリーレン誘導体に、微量の蛍光体をドープし、発光輝度の向上、素子の長寿命化を達成している。
【0005】
又、8−ヒドロキシキノリンアルミニウム錯体をホスト化合物として、これに微量の蛍光体をドープした有機発光層を有する素子(特開昭63−264692号公報)、8−ヒドロキシキノリンアルミニウム錯体をホスト化合物として、これにキナクリドン系色素をドープした有機発光層を有する素子(特開平3−255190号公報)が知られている。以上のように、蛍光量子収率の高い蛍光体をドープすることによって、従来の素子に比べて発光輝度を向上させている。
【0006】
しかし、上記文献において、ドープされる微量の蛍光体からの発光は、励起一重項からの発光であり、励起一重項からの発光を用いる場合、一重項励起子と三重項励起子の生成比が1:3であるため発光性励起種の生成確率が25%であることと、光の取り出し効率が約20%であるため、外部取り出し量子効率(ηext)の限界は5%とされている。ところが、プリンストン大から励起三重項からの燐光発光を用いる有機EL素子が報告がされて以来(M.A.Baldo et al.,nature、395巻、151〜154頁(1998年))、室温で燐光を示す材料の研究が活発になってきている(例えば、M.A.Baldo et al.,nature、403巻、17号、750〜753頁(2000年)、米国特許第6,097,147号など)。励起三重項を使用すると、内部量子効率の上限が100%となるため、励起一重項の場合に比べて原理的に発光効率が最大4倍となり、冷陰極管とほぼ同等の性能が得られ照明用にも応用可能であり注目されている。
【0007】
燐光性化合物をドーパントとして用いるときのホストは、燐光性化合物の発光極大波長よりも短波な領域に発光極大波長を有することが必要であることはもちろんであるが、その他にも満たすべき条件があることが分かってきた。
【0008】
The 10th International Workshop on Inorganic and Organic Electroluminescence(EL ’00、浜松)では、燐光性化合物についていくつかの報告がなされている。例えば、Ikaiらはホール輸送性の化合物を燐光性化合物のホストとして用いている。又、M.E.Tompsonらは、各種電子輸送性材料を燐光性化合物のホストとして、これらに新規なイリジウム錯体をドープして用いている。更に、Tsutsuiらは、ホールブロック層の導入により高い発光効率を得ている。
【0009】
燐光性化合物のホスト化合物については、例えば、C.Adachi et al.,Appl.Phys.Lett.,77巻、904頁(2000年)等に詳しく記載されているが、高輝度の有機エレクトロルミネッセンス素子を得るためにホスト化合物に必要とされる性質について、より新しい観点からのアプローチが必要である。
【0010】
しかし、何れの報告も、素子の発光輝度の向上及び耐久性を両立しうる構成は得られていない。
【0011】
特に青色の光を発生する燐光系有機EL素子は、燐光性化合物のトリプレットエネルギーよりも同等またはそれ以上の高いトリプレットエネルギーを持つ化合物が発光ホスト、またはそれと隣接する層を構成する化合物(例えば正孔輸送材料、電子輸送材料またはホールブロッカー等)として必要であり、なおかつ寿命や耐久性の観点から、有機EL素子に用いられる有機材料は一般に100℃以上の極めて高いガラス転移温度(Tg)を有することが必要とされている。
【0012】
一方、Tgを上昇させるための分子設計として、置換基にビフェニルやオリゴアリーレンのような剛直な基を導入すること、またはアントラセンやピレンのような多環縮合芳香族基を導入することが一般的である。
【0013】
しかしながら、青色のリン光を光らせるための発光ホスト材料やそれと隣接する層を構成する化合物に上記のような置換基を導入すると、トリプレットエネルギーが低下してしまい、効率の良い青色リン光発光を得ることが困難になる。
【0014】
例えば、緑色の光を発光するリン光系有機EL素子の発光ホストとして最も適しているといわれている4,4′−N,N′−ジカルバゾリルビフェニル(CBP)の最低励起3重項エネルギー(T1)は約2.6eVであり、緑色ドーパントであるトリスフェニルピリジンイリジウム錯体(Ir[ppy]3:T1=2.4eV)では問題がないが、より短波な青色発光を得る場合にはT1が低すぎるため十分な発光効率を得ることができないのが実状である。
【0015】
つまり、Tgが高く、かつT1が十分大きい化合物が青色燐光用発光ホストとしては必要であるが、このような化合物が極めて希であることから効率の高い青色発光の素子が発見されていないのが現状である。
【0016】
本発明に係わるシクロファン誘導体を有機EL素子に適用した例としては、特開平6−145657号が挙げられる。該明細書中には、トリアリールアミンの置換基としてパラシクロファンが用いられており、主に正孔輸送材料または発光材料として利用されているが、該明細書中には上記のような燐光性化合物のホストとして好適である旨の記載はなく、本発明とは根本的に概念がことなる。
【特許文献1】特開平6−145657号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
従って、本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、その目的は発光輝度、発光効率の向上および耐久性の両立を目的になされたものであり、本発明は、発光輝度、発光効率の向上および耐久性の両立を達成した有機エレクトロルミネッセンス素子、および本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子を用いた発光輝度の高い、耐久性の良好な表示装置を提供するものである。特には、青色発光において、素子の発光輝度、発光効率の向上および耐久性の両立を目的になされたものであり、本発明は、青色発光において、発光輝度、発光効率の向上および耐久性の両立を達成した有機エレクトロルミネッセンス素子、および本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子を用いた発光輝度の高い、耐久性の良好な表示装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の目的は以下に示す構成により達成される。
【0019】
1.ホスト化合物及び燐光性化合物を含有する発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、ホスト化合物として発光層に下記一般式1で表されるシクロファン化合物を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0020】
【化1】

【0021】
〔式中、RおよびR′はそれぞれ独立に置換基を表し、nは0〜4の整数を表し、mは0〜4の整数を表し、L1およびL2はそれぞれ独立に、−CH2CH2−、−O−CH2CH2−O−、−O−Ph−O−で表される2価の連結基を表す。nが2以上の整数を表す場合、複数のRは互いに縮合して環を形成することはなく、mが2以上の整数を表す場合、複数のR′は互いに縮合して環を形成することはない。〕
2.ホスト化合物及び燐光性化合物を含有する発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、ホスト化合物として発光層に下記一般式2で表されるシクロファン化合物を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0022】
【化2】

【0023】
〔中、R1〜R8は水素原子または置換基を表し、R9〜R16は水素原子を表す。〕
3.一般式2においてR1〜R8の少なくとも1つがアリール基、アルケニル基またはアルキニル基であることを特徴とする、前記2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0024】
4.ホスト化合物及び燐光性化合物を含有する発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、ホスト化合物として発光層に下記一般式3で表されるシクロファン化合物を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0025】
【化3】

【0026】
〔式中、Ra,Rb,RcおよびRdは水素原子または置換基を表し、そのうちの少なくとも1つはアリール基、アミノ基、アルケニル基またはアルキニル基を表す。〕
5.燐光性化合物がイリジウム化合物、オスミウム化合物または白金化合物であることを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0027】
6.燐光性化合物がイリジウム化合物であることを特徴とする前記5に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0028】
7.前記1〜6のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を有することを特徴とする表示装置。
【発明の効果】
【0029】
発光輝度、発光効率の高い、耐久性の良好な有機エレクトロルミネッセンス素子および表示装置を提供することができ、特に、青色発光において、発光輝度、発光効率が向上と耐久性の両立を達成した有機エレクトロルミネッセンス素子および表示装置を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明者らは、シクロファン化合物に着目し鋭意検討を重ねた結果、これまでに知られている燐光系有機EL素子に用いられている化合物と比較して、燐光性化合物の発光ホストまたは電子輸送材料(ホールブロッカーとも称す)として、本発明に係わる前記化合物は、極めて高い発光効率が得られる良好な化合物であることを見出した。
【0031】
シクロファン化合物は2つのベンゼン環が正対した構造を持ち、構造式的には2つのベンゼン環同士は共役していないが、その物理的距離が近いことからわずかではあるが共役性が認められる特異的な分子である。
【0032】
理由は定かではないが、シクロファン化合物は適度なキャリア移動性の他に、トリプレットエネルギーが高い(おそらくビフェニルのようなπ電子の共役がないことが主要因と考えられる)という特徴があり、それが奏功して効率の良い発光を実現できるものと考えている。
【0033】
一方、シクロファン誘導体を有機EL素子に適用した例としては、前記のように特開平6−145657が挙げられるが、該特許明細書中には、トリアリールアミンの置換基としてパラシクロファンが用いられており、主に正孔輸送材料または発光材料として利用されているが、該明細書中には上記のような燐光性化合物のホストとして好適である旨の記載はなく、本発明とは根本的に概念のことなる発明である。
【0034】
従って、本発明の有機EL素子は、ホスト化合物及び燐光性化合物を含有する発光層を有し、該素子を構成する何れかの層に下記一般式1で表される化合物を含有することを特徴とする。
【0035】
【化4】

【0036】
前記一般式1において、RおよびR′で表される置換基としては、アルキル基(メチル基、エチル基、i−プロピル基、ヒドロキシエチル基、メトキシメチル基、トリフルオロメチル基、t−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基等)、アリール基(フェニル基、ナフチル基、p−トリル基、p−クロロフェニル基、ピロール基、ピリジル基、ベンズイミダゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、トリアゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、チエニル基、カルバゾリル基等)、アルケニル基(ビニル基、プロペニル基、スチリル基等)、アルキニル基(エチニル基等)、アルキルオキシ基(メトキシ基、エトキシ基、i−プロポキシ基、ブトキシ基等)、アリールオキシ基(フェノキシ基等)、アルキルチオ基(メチルチオ基、エチルチオ基、i−プロピルキオ基等)、アリールチオ基(フェニルチオ基等)、アミノ基、アルキルアミノ基(ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、エチルメチルアミノ基等)、アリールアミノ基(アニリノ基、ジフェニルアミノ基等)、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、シアノ基、ニトロ基、非芳香族性複素環基(ピロリジル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、等)、シリル基(トリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、トリフェニルシリル基等)等が挙げられる。それぞれの置換基はさらに置換基を有していても良い。
【0037】
この中で好ましいものとしては、アリール基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。nは0〜4の整数を表し、mは0〜4の整数を表す。
【0038】
L1およびL2で表される2価の連結基としてはアルキレン、アルケニレン等の非芳香族系の2価の連結基、或いは、芳香族系の2価の連結基を表す。非芳香族系の2価の連結基、例えばアルキレン、アルケニレン等の基のうち好ましくはアルキレン基であるが、これらは置換されていてもよく、置換基としては前記R、R′等で挙げられた基が挙げられるが、好ましくはメチレン、エチレン等の無置換のアルキレン基である。又、これら非芳香族系の置換基、例えばアルキレン等の基は、骨格となる炭素原子が構成するメチレン或いは置換メチレン等の基が酸素原子、硫黄原子或いは窒素原子等のヘテロ原子で置換されたエーテル、チオエーテル、又イミノ構造を有するものであってもよい。
【0039】
又、芳香族系の2価の置換基としては同様にフェニレン基、ビフェニレン基等のほか、このような芳香族基が、メチレン、エチレン等のアルキレン基、又前記骨格となるメチレン基等がヘテロ原子により置換されたエーテル、チオエーテル基等を含むアルキレン基、或いは酸素原子、硫黄原子、窒素原子等によりそれぞれエーテル結合、チオエーテル結合、イミノ基等を介してそれぞれ複数連結した基であってもよい。
【0040】
前記一般式1で示されるシクロファン化合物のうち好ましいものは下記一般式2で表される化合物である。
【0041】
【化5】

【0042】
一般式2において、R1〜R8は水素原子または置換基を表し、置換基としては、アルキル基(メチル基、エチル基、i−プロピル基、ヒドロキシエチル基、メトキシメチル基、トリフルオロメチル基、t−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基等)、アリール基(フェニル基、ナフチル基、p−トリル基、p−クロロフェニル基、ピロール基、ピリジル基、ベンズイミダゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、トリアゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、チエニル基、カルバゾリル基等)、アルケニル基(ビニル基、プロペニル基、スチリル基等)、アルキニル基(エチニル基等)、アルキルオキシ基(メトキシ基、エトキシ基、i−プロポキシ基、ブトキシ基等)、アリールオキシ基(フェノキシ基等)、アルキルチオ基(メチルチオ基、エチルチオ基、i−プロピルキオ基等)、アリールチオ基(フェニルチオ基等)、アミノ基、アルキルアミノ基(ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、エチルメチルアミノ基等)、アリールアミノ基(アニリノ基、ジフェニルアミノ基等)、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、シアノ基、ニトロ基、非芳香族性複素環基(ピロリジル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、等)、シリル基(トリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、トリフェニルシリル基等)等が挙げられる。それぞれの置換基はさらに置換基を有していても良い。又、隣接する例えばR1及びR2、R3及びR4、R5及びR6、R7及びR8等の基同士は連結して環を形成していてもよい。
【0043】
この中で好ましいものとしては、アリール基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。
【0044】
9〜R16は水素原子または置換基を表すが、置換基としては前記R1〜R8で説明したものと同義であるが、好ましくは水素原子である。
【0045】
前記一般式3において、Ra、Rb、RcおよびRdは水素原子または置換基を表すが、該置換基は前記R1〜R8で説明したものと同義であり、好ましい置換基も同様である。
【0046】
以下に、一般式1、2および3で表される化合物の具体例を示すが、本発明におけるシクロファン化合物はこれらに限定されるものではない。
【0047】
【化6】

【0048】
【化7】

【0049】
【化8】

【0050】
【化9】

【0051】
【化10】

【0052】
【化11】

【0053】
【化12】

【0054】
【化13】

【0055】
本発明のシクロファン化合物は公知の方法で容易に合成でき、一般的には下記に示す合成経路で比較的良好な収率で得ることができる。
【0056】
(合成例1)
シクロファンに置換アミノ基を導入する場合
【0057】
【化14】

【0058】
(合成例2)
シクロファンに置換アリール基を導入する場合
【0059】
【化15】

【0060】
以上の合成方法は下記文献にも記載されている一般的なものである。
【0061】
M.Nishiyama et al.,Tetrahedron Lett.39(1998),2367−2370
特許316360号(JP)アリールアミン類の合成法 東ソー 西山ら(出願日97.4.15 優先日96.4.19)
J.F.Hartwig,Angew.Chem.Ind.Ed.37(1998),2046−2067
M.Nishiyama et al.,Tetrahedron Lett.41(2000),481−484
N.Miyaura et al.,Synth.Commun.11(7)(1981)、513−519
又、本発明の化合物の分子量は300〜2000であることが好ましい。分子量が300〜2000であるとTg(ガラス転移温度)が上昇し、熱安定性が向上し、素子寿命が改善される。より好ましい分子量は500〜2000である。
【0062】
ただし、本発明の化合物を繰り返し単位の一部として含むポリマーであってもよく、その場合は上記好ましい分子量から逸脱しても構わない。
【0063】
本発明の化合物は有機エレクトロルミネッセンス素子を構成する何れの層に含有していても良いが、特に、ホスト化合物として発光層に含有する場合、または、電子輸送層に含有する場合に、発光輝度、発光効率の向上および耐久性の両立を達成した有機エレクトロルミネッセンス素子を提供する。
【0064】
本発明において「ホスト化合物」とは、2種以上の化合物で構成される発光層中にて混合比(質量)の最も多い化合物のことを意味し、それ以外の化合物については「ドーパント化合物」という。例えば、発光層を化合物A、化合物Bという2種で構成し、その混合比がA:B=10:90であれば化合物Aがドーパント化合物であり、化合物Bがホスト化合物である。更に、発光層を化合物A、化合物B、化合物Cの3種から構成し、その混合比がA:B:C=5:10:85であれば、化合物A、化合物Bがドーパント化合物であり、化合物Cがホスト化合物である。従って、本発明における燐光性化合物はドーパント化合物の一種である。
【0065】
本発明における「燐光性化合物」とは励起三重項からの発光が観測される化合物であり、燐光量子収率が、25℃において0.001以上の化合物である。燐光量子収率は好ましくは0.01以上、更に好ましくは0.1以上である。
【0066】
上記燐光量子収率は、第4版実験化学講座7の分光IIの398頁(1992年版、丸善)に記載の方法により測定できる。溶液中での燐光量子収率は種々の溶媒を用いて測定できるが、本発明に用いられる燐光性化合物は、任意の溶媒の何れかにおいて上記燐光量子収率が達成されれば良い。
【0067】
本発明で用いられる燐光性化合物としては、好ましくは元素の周期律表でVIII属の金属を含有する錯体系化合物であり、更に好ましくは、イリジウム化合物、オスミウム化合物、又は白金化合物(白金錯体系化合物)であり、中でも最も好ましいのはイリジウム化合物である。
【0068】
以下に、本発明で用いられる燐光性化合物の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。これらの化合物は、例えば、Inorg.Chem.40巻、1704〜1711に記載の方法等により合成できる。
【0069】
【化16】

【0070】
【化17】

【0071】
【化18】

【0072】
又、別の形態では、ホスト化合物と燐光性化合物の他に、燐光性化合物からの発光の極大波長よりも長波な領域に、蛍光極大波長を有する蛍光性化合物を少なくとも1種含有する場合もある。この場合、ホスト化合物と燐光性化合物からのエネルギー移動で、有機EL素子としての電界発光は蛍光性化合物からの発光が得られる。蛍光性化合物として好ましいのは、溶液状態で蛍光量子収率が高いものである。ここで、蛍光量子収率は10%以上、特に30%以上が好ましい。具体的な蛍光性化合物は、クマリン系色素、ピラン系色素、シアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、オキソベンツアントラセン系色素、フルオレセイン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム系色素、ペリレン系色素、スチルベン系色素、ポリチオフェン系色素、又は希土類錯体系蛍光体等が挙げられる。
【0073】
ここでの蛍光量子収率も、前記第4版実験化学講座7の分光IIの362頁(1992年版、丸善)に記載の方法により測定することが出来る。
【0074】
前記燐光性化合物は、前記のような燐光量子収率が、25℃において0.001以上であるほか、前記ホストとなる蛍光性化合物の蛍光極大波長よりも長い燐光発光極大波長を有するものである。これにより、ホストとなる蛍光性化合物の発光極大波長より長波の燐光性化合物を用いて燐光性化合物の発光、即ち三重項状態を利用した、ホスト化合物の蛍光極大波長よりも長波において電界発光するEL素子を得ることができる。従って、用いられる燐光性化合物の燐光発光極大波長としては特に制限されるものではなく、原理的には、中心金属、配位子、配位子の置換基等を選択することで得られる発光波長を変化させることができる。
【0075】
例えば、350〜440nmの領域に蛍光極大波長を有する蛍光性化合物をホスト化合物として用い、例えば、緑の領域に燐光を有するイリジウム錯体を用いることで緑領域に電界発光する有機EL素子を得ることが出来る。
【0076】
本明細書の蛍光性化合物及び燐光性化合物が発光する色は、「新編色彩科学ハンドブック」(日本色彩学会編、東京大学出版会、1985)の108頁の図4.16において、分光放射輝度計CS−1000(ミノルタ製)で測定した結果をCIE色度座標に当てはめたときの色で決定される。
【0077】
《有機EL素子の構成層》
本発明の有機EL素子の構成層について説明する。
【0078】
本発明において、有機EL素子の層構成の好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
(i)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
(ii)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(iii)陽極/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極
(iv)陽極/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極バッファー層/陰極
(v)陽極/陽極バッファー層/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極バッファー層/陰極
《陽極》
有機EL素子における陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。このような電極物質の具体例としてはAu等の金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO2、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。また、IDIXO(In23−ZnO)等非晶質で透明導電膜を作製可能な材料を用いてもよい。陽極は、これらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により、薄膜を形成させ、フォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成してもよく、あるいはパターン精度をあまり必要としない場合は(100μm以上程度)、上記電極物質の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。この陽極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましく、また、陽極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。さらに膜厚は材料にもよるが、通常10〜1000nm、好ましくは10〜200nmの範囲で選ばれる。
【0079】
《陰極》
一方、陰極としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al23)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子注入性及び酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えばマグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al23)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。陰極は、これらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により、薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜1000nm、好ましくは50nm〜200nmの範囲で選ばれる。なお、発光を透過させるため、有機EL素子の陽極または陰極のいずれか一方が、透明または半透明であれば発光輝度が向上し好都合である。
【0080】
次に、本発明の有機EL素子の構成層として用いられる、注入層、正孔輸送層、電子輸送層等について説明する。
【0081】
《注入層》:電子注入層、正孔注入層
注入層は必要に応じて設け、電子注入層と正孔注入層があり、上記のごとく陽極と発光層または正孔輸送層の間、及び、陰極と発光層または電子輸送層との間に存在させてもよい。
【0082】
注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と有機層間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日 エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されており、正孔注入層(陽極バッファー層)と電子注入層(陰極バッファー層)とがある。
【0083】
陽極バッファー層(正孔注入層)は、特開平9−45479号公報、同9−260062号公報、同8−288069号公報等にもその詳細が記載されており、具体例として、銅フタロシアニンに代表されるフタロシアニンバッファー層、酸化バナジウムに代表される酸化物バッファー層、アモルファスカーボンバッファー層、ポリアニリン(エメラルディン)やポリチオフェン等の導電性高分子を用いた高分子バッファー層等が挙げられる。
【0084】
陰極バッファー層(電子注入層)は、特開平6−325871号公報、同9−17574号公報、同10−74586号公報等にもその詳細が記載されており、具体的にはストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属バッファー層、フッ化リチウムに代表されるアルカリ金属化合物バッファー層、フッ化マグネシウムに代表されるアルカリ土類金属化合物バッファー層、酸化アルミニウムに代表される酸化物バッファー層等が挙げられる。
【0085】
上記バッファー層(注入層)はごく薄い膜であることが望ましく、素材にもよるが、その膜厚は0.1nm〜100nmの範囲が好ましい。
【0086】
阻止層は、上記のごとく、有機化合物薄膜の基本構成層の他に必要に応じて設けられるものである。例えば特開平11−204258号、同11−204359号、及び「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日 エヌ・ティー・エス社発行)」の237頁等に記載されている正孔阻止(ホールブロック)層がある。
【0087】
正孔阻止層とは広い意味では電子輸送層であり、電子を輸送する機能を有しつつ正孔を輸送する能力が著しく小さい材料からなり、電子を輸送しつつ正孔を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。
【0088】
一方、電子阻止層とは広い意味では正孔輸送層であり、正孔を輸送する機能を有しつつ電子を輸送する能力が著しく小さい材料からなり、正孔を輸送しつつ電子を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。
【0089】
正孔輸送層とは正孔を輸送する機能を有する材料からなり、広い意味で正孔注入層、電子阻止層も正孔輸送層に含まれる。
【0090】
正孔輸送層、電子輸送層は単層もしくは複数層設けることができる。
【0091】
本発明の有機EL素子においては、発光層のホスト、発光層に隣接する正孔輸送層、発光層に隣接する電子輸送層すべての材料の蛍光極大波長が415nm以下であることが好ましい。
【0092】
《発光層》
本発明に係る発光層は、電極または電子輸送層、正孔輸送層から注入されてくる電子および正孔が再結合して発光する層であり、発光する部分は発光層の層内であっても発光層と隣接層との界面であっても良い。
【0093】
発光層に使用される材料(以下、発光材料という)は、蛍光または燐光を発する有機化合物または錯体であることが好ましく、有機EL素子の発光層に使用される公知のものの中から適宜選択して用いることができる。このような発光材料は、主に有機化合物であり、所望の色調により、例えば、Macromol.Synth.,125巻,17〜25頁に記載の化合物等を用いることができるが、本発明においては前記燐光性化合物が好ましい。
【0094】
発光材料は、発光性能の他に、正孔輸送機能や電子輸送機能を併せ持っていても良く、正孔輸送材料や電子輸送材料の殆どが、発光材料としても使用できる。
【0095】
発光材料は、p−ポリフェニレンビニレンやポリフルオレンのような高分子材料でも良く、さらに前記発光材料を高分子鎖に導入した、または前記発光材料を高分子の主鎖とした高分子材料を使用しても良い。
【0096】
この発光層は、上記化合物を、例えば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法などの公知の薄膜化法により製膜して形成することができる。発光層としての膜厚は、特に制限はないが、通常は5nm〜5μmの範囲で選ばれる。この発光層は、これらの発光材料一種又は二種以上からなる一層構造であってもよいし、あるいは、同一組成又は異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。本発明の有機EL素子の好ましい態様は、発光層が二種以上の材料からなり、その内の一種が本発明の化合物であるときである。
【0097】
また、この発光層は、特開昭57−51781号公報に記載されているように、樹脂などの結着材と共に上記発光材料を溶剤に溶かして溶液としたのち、これをスピンコート法などにより薄膜化して形成することができる。このようにして形成された発光層の膜厚については、特に制限はなく、状況に応じて適宜選択することができるが、通常は5nm〜5μmの範囲である。
【0098】
発光層の材料が2種以上であるとき、主成分をホスト、その他の成分をドーパントといい、本発明に係る、前記燐光性化合物は、後述するドーパントとして用いられることが好ましい。
【0099】
その場合、主成分であるホスト化合物に対するドーパントの混合比は好ましくは質量で0.1質量%〜15質量%未満である。
【0100】
(ホスト化合物)
発光層のホスト化合物は、有機化合物または錯体であることが好ましく、本発明においては、好ましくは蛍光極大波長が415nm以下である。ホスト化合物の極大波長を415nm以下にすることにより可視光、特にBGR発光が可能となる。
【0101】
つまり蛍光極大波長を415nm以下にすることにより、通常のπ共役蛍光もしくは燐光材料において、π−π吸収を420nm以下に有するエネルギー移動型のドーパント発光が可能である。また415nm以下の蛍光を有することから非常にワイドエネルギーギャップ(イオン化ポテンシャル−電子親和力、HOMO−LUMO)であるので、キャリアトラップ型にも有利に働く。
【0102】
このようなホスト化合物としては、有機EL素子に使用される公知のものの中から任意のものを選択して用いることができ、また後述の正孔輸送材料や電子輸送材料の殆どが発光層ホスト化合物としても使用できる。
【0103】
ポリビニルカルバゾールやポリフルオレンのような高分子材料でもよく、さらに前記ホスト化合物を高分子鎖に導入した、または前記ホスト化合物を高分子の主鎖とした高分子材料を使用してもよい。
【0104】
ホスト化合物としては、正孔輸送能、電子輸送能を有しつつ、かつ、発光の長波長化を防ぎ、なおかつ高Tg(ガラス転移温度)である化合物が好ましい。
【0105】
(ドーパント)
次にドーパントについて述べる。
【0106】
原理としては2種挙げられ、一つはキャリアが輸送されるホスト上でキャリアの再結合が起こってホスト化合物の励起状態が生成し、このエネルギーをドーパントに移動させることでドーパントからの発光を得るというエネルギー移動型、もう一つはドーパントがキャリアトラップとなり、ドーパント化合物上でキャリアの再結合が起こりドーパントからの発光が得られるというキャリアトラップ型であるが、いずれの場合においても、ドーパント化合物の励起状態のエネルギーはホスト化合物の励起状態のエネルギーよりも低いことが条件である。
【0107】
本発明においては、前記燐光性化合物がドーパント化合物として好ましい。
【0108】
《正孔輸送層》
正孔輸送層とは正孔を輸送する機能を有する材料からなり、広い意味で正孔注入層、電子阻止層も正孔輸送層に含まれる。正孔輸送層は単層もしくは複数層設けることができる。
【0109】
正孔輸送材料としては、特に制限はなく、従来、光導伝材料において、正孔の電荷注入輸送材料として慣用されているものやEL素子の正孔注入層、正孔輸送層に使用される公知のものの中から任意のものを選択して用いることができる。
【0110】
正孔輸送材料は、正孔の注入もしくは輸送、電子の障壁性のいずれかを有するものであり、有機物、無機物のいずれであってもよい。例えばトリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、また、導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられる。
【0111】
正孔輸送材料としては、上記のものを使用することができるが、ポルフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物、特に芳香族第三級アミン化合物を用いることが好ましい。
【0112】
芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物の代表例としては、N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノフェニル;N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−〔1,1′−ビフェニル〕−4,4′−ジアミン(TPD);2,2−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)プロパン;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン;N,N,N′,N′−テトラ−p−トリル−4,4′−ジアミノビフェニル;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン;ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン;ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)フェニルメタン;N,N′−ジフェニル−N,N′−ジ(4−メトキシフェニル)−4,4′−ジアミノビフェニル;N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル;4,4′−ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル;N,N,N−トリ(p−トリル)アミン;4−(ジ−p−トリルアミノ)−4′−〔4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル〕スチルベン;4−N,N−ジフェニルアミノ−(2−ジフェニルビニル)ベンゼン;3−メトキシ−4′−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼン;N−フェニルカルバゾール、さらには、米国特許第5,061,569号明細書に記載されている2個の縮合芳香族環を分子内に有するもの、例えば4,4′−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル(NPD)、特開平4−308688号公報に記載されているトリフェニルアミンユニットが3つスターバースト型に連結された4,4′,4″−トリス〔N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ〕トリフェニルアミン(MTDATA)等が挙げられる。
【0113】
さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
【0114】
また、p型−Si,p型−SiC等の無機化合物も正孔注入材料、正孔輸送材料として使用することができる。
【0115】
また、本発明においては正孔輸送層の正孔輸送材料は415nm以下に蛍光極大波長を有することが好ましい。すなわち、正孔輸送材料は、正孔輸送能を有しつつかつ、発光の長波長化を防ぎ、なおかつ高Tgである化合物が好ましい。
【0116】
この正孔輸送層は、上記正孔輸送材料を、例えば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、LB法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。正孔輸送層の膜厚については特に制限はないが、通常は5〜5000nm程度である。この正孔輸送層は、上記材料の一種または二種以上からなる一層構造であってもよい。
【0117】
《電子輸送層》
電子輸送層とは電子を輸送する機能を有する材料からなり、広い意味で電子注入層、正孔阻止層も電子輸送層に含まれる。電子輸送層は単層もしくは複数層設けることができる。
【0118】
従来、単層の電子輸送層、及び複数層とする場合は発光層に対して陰極側に隣接する電子輸送層に用いられる電子輸送材料(正孔阻止材料を兼ねる)としては、下記の材料が知られている。
【0119】
さらに、電子輸送層は、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよく、その材料としては従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。
【0120】
この電子輸送層に用いられる材料(以下、電子輸送材料という)の例としては、本発明に係わる前記シクロファン化合物のほか、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、ナフタレンペリレンなどの複素環テトラカルボン酸無水物、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン及びアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体などが挙げられる。さらに、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送材料として用いることができる。
【0121】
さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
【0122】
また、8−キノリノール誘導体の金属錯体、例えばトリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)など、及びこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、Ga又はPbに置き替わった金属錯体も、電子輸送材料として用いることができる。その他、メタルフリー若しくはメタルフタロシアニン、又はそれらの末端がアルキル基やスルホン酸基などで置換されているものも、電子輸送材料として好ましく用いることができる。また、発光層の材料として例示したジスチリルピラジン誘導体も、電子輸送材料として用いることができるし、正孔注入層、正孔輸送層と同様に、n型−Si、n型−SiCなどの無機半導体も電子輸送材料として用いることができる。
【0123】
電子輸送層に用いられる好ましい化合物は、415nm以下に蛍光極大波長を有することが好ましい。すなわち、電子輸送層に用いられる化合物は、電子輸送能を有しつつかつ、発光の長波長化を防ぎ、なおかつ高Tgである化合物が好ましい。
【0124】
《基体(基板、基材、支持体等ともいう)》
本発明の有機EL素子に係る基体としては、ガラス、プラスチック等の種類には特に限定はなく、また、透明のものであれば特に制限はないが、好ましく用いられる基板としては例えばガラス、石英、光透過性樹脂フィルムを挙げることができる。特に好ましい基体は、有機EL素子にフレキシブル性を与えることが可能な樹脂フィルムである。
【0125】
樹脂フィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリカーボネート(PC)、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)等からなるフィルム等が挙げられる。
【0126】
樹脂フィルムの表面には、無機物もしくは有機物の被膜またはその両者のハイブリッド被膜が形成されていてもよい。
【0127】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の発光の室温における外部取り出し効率は1%以上であることが好ましく、より好ましくは2%以上である。ここに、外部取り出し量子効率(%)=有機EL素子外部に発光した光子数/有機EL素子に流した電子数×100である。
【0128】
また、カラーフィルター等の色相改良フィルター等を併用してもよい。
【0129】
本発明の多色表示装置は少なくとも2種類の異なる発光極大波長を有する有機EL素子からなるが、有機EL素子を作製する好適な例を説明する。
【0130】
《有機EL素子の作製方法》
本発明の有機EL素子の作製方法の一例として、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極からなる有機EL素子の作製法について説明する。
【0131】
まず適当な基体上に、所望の電極物質、例えば陽極用物質からなる薄膜を、1μm以下、好ましくは10nm〜200nmの膜厚になるように、蒸着やスパッタリング等の方法により形成させ、陽極を作製する。次に、この上に素子材料である正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、正孔阻止層の有機化合物薄膜を形成させる。
【0132】
この有機化合物薄膜の薄膜化の方法としては、前記の如くスピンコート法、キャスト法、インクジェット法、蒸着法、印刷法等があるが、均質な膜が得られやすく、かつピンホールが生成しにくい等の点から、真空蒸着法またはスピンコート法が特に好ましい。さらに層ごとに異なる製膜法を適用してもよい。製膜に蒸着法を採用する場合、その蒸着条件は、使用する化合物の種類等により異なるが、一般にボート加熱温度50〜450℃、真空度10-6Pa〜10-2Pa、蒸着速度0.01nm〜50nm/秒、基板温度−50℃〜300℃、膜厚0.1nm〜5μmの範囲で適宜選ぶことが望ましい。
【0133】
これらの層の形成後、その上に陰極用物質からなる薄膜を、1μm以下好ましくは50nm〜200nmの範囲の膜厚になるように、例えば蒸着やスパッタリング等の方法により形成させ、陰極を設けることにより、所望の有機EL素子が得られる。この有機EL素子の作製は、一回の真空引きで一貫して正孔注入層から陰極まで作製するのが好ましいが、途中で取り出して異なる製膜法を施してもかまわない。その際、作業を乾燥不活性ガス雰囲気下で行う等の配慮が必要となる。
【0134】
本発明の多色表示装置は、発光層形成時のみシャドーマスクを設け、他層は共通であるのでシャドーマスク等のパターニングは不要であり、一面に蒸着法、キャスト法、スピンコート法、インクジェット法、印刷法等で膜を形成できる。
【0135】
発光層のみパターニングを行う場合、その方法に限定はないが、好ましくは蒸着法、インクジェット法、印刷法である。蒸着法を用いる場合においてはシャドーマスクを用いたパターニングが好ましい。
【0136】
また作製順序を逆にして、陰極、電子注入層、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、陽極の順に作製することも可能である。
【0137】
このようにして得られた多色表示装置に、直流電圧を印加する場合には、陽極を+、陰極を−の極性として電圧2〜40V程度を印加すると、発光が観測できる。また、逆の極性で電圧を印加しても電流は流れずに発光は全く生じない。さらに、交流電圧を印加する場合には、陽極が+、陰極が−の状態になったときのみ発光する。なお、印加する交流の波形は任意でよい。
【0138】
本発明の多色表示装置は、表示デバイス、ディスプレー、各種発光光源として用いることができる。表示デバイス、ディスプレーにおいて、青、赤、緑発光の3種の有機EL素子を用いることにより、フルカラーの表示が可能となる。
【0139】
表示デバイス、ディスプレーとしてはテレビ、パソコン、モバイル機器、AV機器、文字放送表示、自動車内の情報表示等が挙げられる。特に静止画像や動画像を再生する表示装置として使用してもよく、動画再生用の表示装置として使用する場合の駆動方式は単純マトリックス(パッシブマトリックス)方式でもアクティブマトリックス方式でもどちらでもよい。
【0140】
発光光源としては家庭用照明、車内照明、時計や液晶用のバックライト、看板広告、信号機、光記憶媒体の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源等が挙げられるがこれに限定するものではない。
【0141】
また、本発明に係る有機EL素子に共振器構造を持たせた有機EL素子として用いてもよい。
【0142】
このような共振器構造を有した有機EL素子の使用目的としては光記憶媒体の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源等が挙げられるが、これらに限定されない。また、レーザー発振をさせることにより、上記用途に使用してもよい。
【0143】
《表示装置》
本発明の有機EL素子は、照明用や露光光源のような一種のランプとして使用しても良いし、画像を投影するタイプのプロジェクション装置や、静止画像や動画像を直接視認するタイプの表示装置(ディスプレイ)として使用しても良い。動画再生用の表示装置として使用する場合の駆動方式は単純マトリクス(パッシブマトリクス)方式でもアクティブマトリクス方式でもどちらでも良い。または、異なる発光色を有する本発明の有機EL素子を2種以上使用することにより、フルカラー表示装置を作製することが可能である。
【0144】
(発明の実施の形態)
本発明の有機EL素子から構成される表示装置の一例を図面に基づいて以下に説明する。
【0145】
図1は、有機EL素子から構成される表示装置の一例を示した模式図である。有機EL素子の発光により画像情報の表示を行う、例えば、携帯電話等のディスプレイの模式図である。
【0146】
ディスプレイ1は、複数の画素を有する表示部A、画像情報に基づいて表示部Aの画像走査を行う制御部B等からなる。
【0147】
制御部Bは、表示部Aと電気的に接続され、複数の画素それぞれに外部からの画像情報に基づいて走査信号と画像データ信号を送り、走査信号により走査線毎の画素が画像データ信号に応じて順次発光して画像走査を行って画像情報を表示部Aに表示する。
【0148】
図2は、表示部Aの模式図である。
【0149】
表示部Aは基板上に、複数の走査線5及びデータ線6を含む配線部と、複数の画素3等とを有する。表示部Aの主要な部材の説明を以下に行う。
【0150】
図においては、画素3の発光した光が、白矢印方向(下方向)へ取り出される場合を示している。
【0151】
配線部の走査線5及び複数のデータ線6は、それぞれ導電材料からなり、走査線5とデータ線6は格子状に直交して、直交する位置で画素3に接続している(詳細は図示せず)。
【0152】
画素3は、走査線5から走査信号が印加されると、データ線6から画像データ信号を受け取り、受け取った画像データに応じて発光する。発光の色が赤領域の画素、緑領域の画素、青領域の画素を、適宜、同一基板上に並置することによって、フルカラー表示が可能となる。
【0153】
次に、画素の発光プロセスを説明する。
【0154】
図3は、画素の模式図である。
【0155】
画素は、有機EL素子10、スイッチングトランジスタ11、駆動トランジスタ12、コンデンサ13等を備えている。複数の画素に有機EL素子10として、赤色、緑色、青色発光の有機EL素子を用い、これらを同一基板上に並置することでフルカラー表示を行うことができる。
【0156】
図3において、制御部Bからデータ線6を介してスイッチングトランジスタ11のドレインに画像データ信号が印加される。そして、制御部Bから走査線5を介してスイッチングトランジスタ11のゲートに走査信号が印加されると、スイッチングトランジスタ11の駆動がオンし、ドレインに印加された画像データ信号がコンデンサ13と駆動トランジスタ12のゲートに伝達される。
【0157】
画像データ信号の伝達により、コンデンサ13が画像データ信号の電位に応じて充電されるとともに、駆動トランジスタ12の駆動がオンする。駆動トランジスタ12は、ドレインが電源ライン7に接続され、ソースが有機EL素子10の電極に接続されており、ゲートに印加された画像データ信号の電位に応じて電源ライン7から有機EL素子10に電流が供給される。
【0158】
制御部Bの順次走査により走査信号が次の走査線5に移ると、スイッチングトランジスタ11の駆動がオフする。しかし、スイッチングトランジスタ11の駆動がオフしてもコンデンサ13は充電された画像データ信号の電位を保持するので、駆動トランジスタ12の駆動はオン状態が保たれて、次の走査信号の印加が行われるまで有機EL素子10の発光が継続する。順次走査により次に走査信号が印加されたとき、走査信号に同期した次の画像データ信号の電位に応じて駆動トランジスタ12が駆動して有機EL素子10が発光する。
【0159】
すなわち、有機EL素子10の発光は、複数の画素それぞれの有機EL素子10に対して、アクティブ素子であるスイッチングトランジスタ11と駆動トランジスタ12を設けて、複数の画素3それぞれの有機EL素子10の発光を行っている。このような発光方法をアクティブマトリクス方式と呼んでいる。
【0160】
ここで、有機EL素子10の発光は、複数の階調電位を持つ多値の画像データ信号による複数の階調の発光でもよいし、2値の画像データ信号による所定の発光量のオン、オフでもよい。
【0161】
また、コンデンサ13の電位の保持は、次の走査信号の印加まで継続して保持してもよいし、次の走査信号が印加される直前に放電させてもよい。
【0162】
本発明においては、上述したアクティブマトリクス方式に限らず、走査信号が走査されたときのみデータ信号に応じて有機EL素子を発光させるパッシブマトリクス方式の発光駆動でもよい。
【0163】
図4は、パッシブマトリクス方式による表示装置の模式図である。図4において、複数の走査線5と複数の画像データ線6が画素3を挟んで対向して格子状に設けられている。
【0164】
順次走査により走査線5の走査信号が印加されたとき、印加された走査線5に接続している画素3が画像データ信号に応じて発光する。
【0165】
パッシブマトリクス方式では画素3にアクティブ素子が無く、製造コストの低減が計れる。
【実施例】
【0166】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の態様はこれに限定されない。
【0167】
実施例1
〈有機EL素子の作製〉
有機EL素子OLED1−1〜1−19を以下のように作製した。
【0168】
陽極として100mm×100mm×1.1mmのガラス基板上にITO(インジウムチンオキシド)を150nm成膜した基板(NHテクノグラス社製NA−45)にパターニングを行った後、このITO透明電極を設けた透明支持基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行なった。
【0169】
この透明支持基板を市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定し、一方、モリブデン製抵抗加熱ボートにα−NPDを200mg入れ、別のモリブデン製抵抗加熱ボートにカルバゾール誘導体(CBP)を200mg入れ、別のモリブデン製抵抗加熱ボートにバソキュプロイン(BCP)を200mg入れ、別のモリブデン製抵抗加熱ボートに燐光性化合物(Ir−12)を100mg入れ、更に別のモリブデン製抵抗加熱ボートにAlq3を200mg入れ、真空蒸着装置に取付けた。
【0170】
次いで、真空槽を4×10-4Paまで減圧した後、α−NPDの入った前記加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/secで透明支持基板に蒸着し、膜厚45nmの正孔輸送層を設けた。更に、CBPとIr−12の入った前記加熱ボートに通電して加熱し、それぞれ蒸着速度0.1nm/sec、0.01nm/secで前記正孔輸送層上に共蒸着して膜厚20nmの発光層を設けた。尚、蒸着時の基板温度は室温であった。更に、BCPの入った前記加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/secで前記発光層の上に蒸着して膜厚10nmの正孔阻止の役割も兼ねた電子輸送層を設けた。その上に、更に、Alq3の入った前記加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/secで前記電子輸送層の上に蒸着して更に膜厚40nmの電子注入層を設けた。尚、蒸着時の基板温度は室温であった。
【0171】
引き続きフッ化リチウム0.5nm及びアルミニウム110nmを蒸着して陰極を形成し、有機EL素子OLED1−1を作製した。
【0172】
発光層のCBPを表1に示す化合物に置き換えた以外は全く同じ方法で、有機EL素子OLED1−2〜1−19を作製した。
【0173】
上記で使用した化合物の構造を以下に示す。
【0174】
【化19】

【0175】
【化20】

【0176】
〈有機EL素子の評価〉
得られた有機EL素子について、以下のようにして評価を行い、結果を表1に示した。
【0177】
(発光輝度、発光効率)
有機EL素子OLED1−1では、初期駆動電圧3Vで電流が流れ始め、発光層のドーパントである燐光性化合物からの青色の発光を示した。有機EL素子OLED1−1の温度23℃、乾燥窒素ガス雰囲気下で10V直流電圧を印加した時の発光輝度(cd/m2)、発光効率(lm/W)を測定した。
【0178】
発光輝度、発光効率は有機EL素子OLED1−1を100とした時の相対値で表した。発光輝度については、CS−1000(ミノルタ製)を用いて測定した。
【0179】
(耐久性)
10mA/cm2の一定電流で駆動したときに初期輝度が元の半分に低下するのに要した時間である半減時間を耐久性の指標として表した。半減時間は有機EL素子OLED1−1を100とした時の相対値で表した。
【0180】
【表1】

【0181】
表1から明らかなように、CBPや比較化合物1〜3のように、ビアリール構造を有する化合物ではバンドギャップが狭く、青色に発光するリン光性化合物のホストとしては発光輝度、発光効率の点で悪い。これらに対し本発明のシクロファン化合物をホストに用いたエレクトロルミネッセンス素子は、発光輝度、発光効率が改善され、耐久性が良いことから、有機EL素子として非常に有用であることがわかった。
【0182】
又、燐光性化合物(Ir−12)をIr−1又はIr−9に変更した以外は有機EL素子OLED1−1〜1−19と同様にして作製した有機EL素子においても同様の効果が得られた。特に、耐久性については大幅な改善がみられた。尚、Ir−1を用いた素子からは緑色の発光が、Ir−9を用いた素子からは赤色の発光が得られた。
【0183】
すなわち、本発明のシクロファン化合物は、青色のみならず緑色および赤色のリン光ドーパントをも有効に発光させることができることがわかった。
【0184】
実施例2
実施例1で作製したそれぞれ赤色、緑色、青色発光有機EL素子を同一基板上に並置し、図2に示すアクティブマトリクス方式フルカラー表示装置を作製した。図2には作製したフルカラー表示装置の表示部Aの模式図のみを示した。即ち同一基板上に、複数の走査線5及びデータ線6を含む配線部と、並置した複数の画素3(発光の色が赤領域の画素、緑領域の画素、青領域の画素等)とを有し、配線部の走査線5及び複数のデータ線6はそれぞれ導電材料からなり、走査線5とデータ線6は格子状に直交して、直交する位置で画素3に接続している(詳細は図示せず)。前記複数画素3は、それぞれの発光色に対応した有機EL素子、アクティブ素子であるスイッチングトランジスタと駆動トランジスタそれぞれが設けられたアクティブマトリクス方式で駆動されており、走査線5から走査信号が印加されると、データ線6から画像データ信号を受け取り、受け取った画像データに応じて発光する。この様に各赤、緑、青の画素を適宜、並置することによって、フルカラー表示が可能となる。
【0185】
該フルカラー表示装置を駆動することにより、輝度の高く耐久性の良好な、鮮明なフルカラー動画表示が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0186】
【図1】有機EL素子から構成される表示装置の一例を示した模式図である。
【図2】表示部Aの模式図である。
【図3】画素の模式図である。
【図4】パッシブマトリクス方式による表示装置の模式図である。
【符号の説明】
【0187】
1 ディスプレイ
3 画素
5 走査線
6 データ線
7 電源ライン
10 有機EL素子
11 スイッチングトランジスタ
12 駆動トランジスタ
13 コンデンサ
A 表示部
B 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホスト化合物及び燐光性化合物を含有する発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、ホスト化合物として発光層に下記一般式1で表されるシクロファン化合物を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化1】

〔式中、RおよびR′はそれぞれ独立に置換基を表し、nは0〜4の整数を表し、mは0〜4の整数を表し、L1およびL2はそれぞれ独立に、−CH2CH2−、−O−CH2CH2−O−、−O−Ph−O−で表される2価の連結基を表す。nが2以上の整数を表す場合、複数のRは互いに縮合して環を形成することはなく、mが2以上の整数を表す場合、複数のR′は互いに縮合して環を形成することはない。〕
【請求項2】
ホスト化合物及び燐光性化合物を含有する発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、ホスト化合物として発光層に下記一般式2で表されるシクロファン化合物を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化2】

〔中、R1〜R8は水素原子または置換基を表し、R9〜R16は水素原子を表す。〕
【請求項3】
一般式2においてR1〜R8の少なくとも1つがアリール基、アルケニル基またはアルキニル基であることを特徴とする、請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】
ホスト化合物及び燐光性化合物を含有する発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、ホスト化合物として発光層に下記一般式3で表されるシクロファン化合物を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化3】

〔式中、Ra,Rb,RcおよびRdは水素原子または置換基を表し、そのうちの少なくとも1つはアリール基、アミノ基、アルケニル基またはアルキニル基を表す。〕
【請求項5】
燐光性化合物がイリジウム化合物、オスミウム化合物または白金化合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項6】
燐光性化合物がイリジウム化合物であることを特徴とする請求項5に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を有することを特徴とする表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−177559(P2008−177559A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−329834(P2007−329834)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【分割の表示】特願2002−314134(P2002−314134)の分割
【原出願日】平成14年10月29日(2002.10.29)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】