説明

有機化合物、染料および高密度光記録媒体

【課題】
短波長レーザー光源を使用して記録、再現/再生を可能とする高密度光記録媒体のための新しい染料を含む記録層を形成可能とする新規有機化合物の提供。
【解決手段】該化合物は下記の一般化学構造式を有し、該化合物(染料)を含む記録層により、波長530nmに超えない短波長レーザー光源を用い、高密度情報の記録が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機化合物、染料および高密度光記録媒体に関するものである。特に、本発明は、高密度記憶および高密度情報記録の再現/再生を可能とする短波長レーザーを用いる高密度光記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、レーザーを用いる光記録媒体の発展が目覚ましい。この光記録媒体としては、例えば光ディスクがあるが、通常、ディスク状の基板上に形成した薄い記録層に約1μmの集束レーザービームを照射し、情報記録を実施するように設計されている。記録が以下の方式で行われており、すなわち、レーザービームのエネルギーを吸収することにより、記録層における照射部分は熱変形、例えば分解、蒸発または融解が発生する。記録された情報の再現は、レーザービームによる変形部分とそのような変形は有しない部分との間の反射率の差異を読み取ることにより実施されている。
【0003】
従って、光記録媒体は効率的にレーザービームのエネルギーを吸収することが必要となり、且つ記録するために用いられる固有波長を有するレーザービームに対し、所定吸収光量を示し、且つ情報の再現を精確に行うために再現用の固有波長を有するレーザービームに対し高反射率を有することが必要となる。
【0004】
しかし、レーザー光源を利用する光記録媒体の記憶容量は光回折により制限されている。現在、例えば赤色レーザーから青色レーザー等へレーザー光源の波長をシフトすること、あるいは対物レンズ開口数(「NA」)を大きくする等を含め、光情報記憶媒体の記憶密度を上げる原理および方法が発表されている。他の方法としては、例えば、デジタル信号のエンコード方式の改善、あるいは極細分解能近視野光学構造を採用するディスク記憶方式、あるいは、積層型多重記録層を利用し情報記憶媒体(例えばコンパクトディスク)の記憶容量を増加する技術などが挙げられる。すなわち、最後の技術は、記憶容量を増加するために、情報記憶媒体の記録層は三次元空間の多層構造に進展させたものである。上述の全ての方法は効率的に光記録媒体の記憶容量を増加するために用いることができる。
【0005】
より短い波長を有するレーザー光源にシフトする方法において、2002年、新世代の高密度ディスク記憶仕様(ブルー・レイディスク)が日立、LG、ナショナル、パイオニア、フィリップス、サムスン、シャープ、ソニーおよびThomson Multimediaなどの会社により共同で公表された。片面ブルー・レイディスクは405nmの青色レーザー光源及び0.1mm光伝送カバー層構造を採用することにより27GBの記憶容量まで達することが可能となる。従って、短波長レーザー光源を用いて読取りと記憶操作を行う光記録媒体が高密度光記録媒体の発展の主流となってきている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明は、短波長レーザー光源を使用して記録、再現/再生を可能とする高密度光記録媒体の記録層に用いることができる新規有機化合物および該新規有機化合物を含む染料を提供することを目的とする。
【0007】
更に、本発明は波長が530nm以下の短波長レーザー光源を用い、高密度情報を記録し、且つ高密度情報記録を再現/再生する高密度光記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る新規有機化合物は、下記一般化学構造式(化1)を有する。
【化1】


ここで、n:0または1の整数;
X1:酸素原子またはC(CN)2またはシアノ基;
Y1:酸素原子、CH2またはN-R11
L1,L2,L3,L4:置換または無置換メチン基;
R1とR11:炭素数1〜18(C1-18)の置換または無置換アルキル基、
炭素数1〜18(C1-18)の置換または無置換アルコキシ基、
炭素数1〜18(C1-18)の置換または無置換カルボキシル基、
炭素数1〜18(C1-18)の置換または無置換アルキルエステル基、
置換または無置換アリールエステル、
アダマンチルカルボニル基、
アダマンチル基、または
置換または無置換アラルキル基;
R2とR3:水素原子、
置換または無置換アルキル基、
置換または無置換アリール基、
置換または無置換アラルキル基、または
置換または無置換複素環;
Z1は置換または無置換有機環状基と、酸素原子を有する複素環と、硫黄原子と、セレン原子と、窒素原子とベンゼン環状基とを含むグループから選択される。
【0009】
本発明に係る新規有機化合物は、下記一般化学構造式(化2)を有してもよい。
【化2】


ここで、k:0または1の整数;
X2:酸素原子またはC(CN)2またはシアノ基;
Y2:酸素原子、CH2またはN-R11
L5,L6,L7,L8:置換または無置換メチン基;
R4とR11:炭素数1〜18(C1-18)の置換または無置換アルキル基、
炭素数1〜18(C1-18)の置換または無置換アルコキシ基、
炭素数1〜18(C1-18)の置換または無置換カルボキシル基、
炭素数1〜18(C1-18)の置換または無置換アルキルエステル基、
置換または無置換アリールエステル、
アダマンチルカルボニル基、
アダマンチル基、または
置換または無置換アラルキル基;
R5,R6,R7,R8:水素原子、
置換または無置換アルキル基、
置換または無置換アリール基、
置換または無置換アラルキル基、または
置換または無置換複素環;
Z2,Z3は置換または無置換有機環状基と、酸素原子を有する複素環と、硫黄原子と、セレン原子と、窒素原子とベンゼン環状基とを含むグループから選択される。
【0010】
本発明に係る新規有機化合物は、下記一般化学構造式(化3)を有してもよい。
【化3】


ここで、m:0または1の整数;
A:置換または無置換環状アルキル基;
X3,X4:酸素原子またはC(CN)2またはシアノ基;
Y3,Y4:酸素原子、CH2またはN-R11
L9,L10,L11,L12,L13,L14,L15,L16:置換または無置換メチン基;
R9,R10とR11:炭素数1〜18(C1-18)の置換または無置換アルキル基、
炭素数1〜18(C1-18)の置換または無置換アルコキシ基、
炭素数1〜18(C1-18)の置換または無置換カルボキシル基、
炭素数1〜18(C1-18)の置換または無置換アルキルエステル基、
置換または無置換アリールエステル、
アダマンチルカルボニル基、
アダマンチル基、または
置換または無置換アラルキル基;
Z4,Z5は置換または無置換有機環状基と、酸素原子を有する複素環と、硫黄原子と、セレン原子と、窒素原子とベンゼン環状基とを含むグループから選択される。
【0011】
本発明によれば、前記新規有機化合物は300〜600nmの範囲内の波長において吸光作用を示し、且つ優れた光堅牢度および熱安定性を有する。
【0012】
従って、本発明に係る新規有機化合物により、波長が530nm以下の短波長レーザー光源を用い、高密度情報を記録し且つ高密度情報記録を再現/再生する高密度光記録媒体に対して好適な記録層用の染料が得られる。
【0013】
本発明に係る高密度光記録媒体は、波長が530nm以下の短波長レーザーを用いてデータを読取り且つ記録する高密度光記録媒体であって、第一基板と、カバー層と、該第一基板と該カバー層との間に設置される少なくとも記録層とを備え、この記録層は少なくとも上記新規有機化合物の一つを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の新規有機化合物は染料として用いることができ、該染料を含む記録層は波長範囲300〜600nm内において吸光能力を示し、且つ優れた光堅牢度及び熱安定性を有する。従って、本発明の前記染料を含む前記記録層を用いた高密度光記録媒体は、波長530nm以下の短波長レーザー、好ましくは405nmのブルー・レーザーを用い、前記記録層に高密度情報を記録し且つ記録された前記高密度情報を再生することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
上述の一般説明および下記の詳細説明は例示的なものであり、本発明を更に説明することを意図すると理解すべきである。
【0016】
本発明は、新規有機化合物を提供するもので、該新規有機化合物は下記の一般化学構造式(化4、化5、化6)を有し、波長が530nm以下の短波長レーザー光源を用い、高密度情報を記録し且つ前記高密度情報記録を再現/再生する高密度光記録媒体を製造するための記録層に好適な染料を提供する。
【0017】
【化4】


ここで、n:0または1の整数;
X1:酸素原子またはC(CN)2またはシアノ基;
Y1:酸素原子、CH2またはN-R11
L1,L2,L3,L4:置換または無置換メチン基;
R1とR11:炭素数1〜18(C1-18)の置換または無置換アルキル基、
炭素数1〜18(C1-18)の置換または無置換アルコキシ基、
炭素数1〜18(C1-18)の置換または無置換カルボキシル基、
炭素数1〜18(C1-18)の置換または無置換アルキルエステル基、
置換または無置換アリールエステル、
アダマンチルカルボニル基、
アダマンチル基、または
置換または無置換アラルキル基;
R2とR3:水素原子、
置換または無置換アルキル基、
置換または無置換アリール基、
置換または無置換アラルキル基、または
置換または無置換複素環;
Z1は置換または無置換有機環状基と、酸素原子を有する複素環と、硫黄原子と、セレン原子と、窒素原子とベンゼン環状基とを含むグループから選択される。
【0018】
本発明に係る新規有機化合物は、下記一般化学構造式(化5)を有してもよい。
【化5】


ここで、k:0または1の整数;
X2:酸素原子またはC(CN)2またはシアノ基;
Y2:酸素原子、CH2またはN-R11
L5,L6,L7,L8:置換または無置換メチン基;
R4とR11:炭素数1〜18(C1-18)の置換または無置換アルキル基、
炭素数1〜18(C1-18)の置換または無置換アルコキシ基、
炭素数1〜18(C1-18)の置換または無置換カルボキシル基、
炭素数1〜18(C1-18)の置換または無置換アルキルエステル基、
置換または無置換アリールエステル、
アダマンチルカルボニル基、
アダマンチル基、または
置換または無置換アラルキル基;
R5,R6,R7,R8:水素原子、
置換または無置換アルキル基、
置換または無置換アリール基、
置換または無置換アラルキル基、または
置換または無置換複素環;
Z2,Z3は置換または無置換有機環状基と、酸素原子を有する複素環と、硫黄原子と、セレン原子と、窒素原子とベンゼン環状基とを含むグループから選択される。
【0019】
本発明に係る新規有機化合物は、下記一般化学構造式(化6)を有してもよい。
【化6】


ここで、m:0または1の整数;
A:置換または無置換環状アルキル基;
X3,X4:酸素原子またはC(CN)2またはシアノ基;
Y3,Y4:酸素原子、CH2またはN-R11
L9,L10,L11,L12,L13,L14,L15,L16:置換または無置換メチン基;
R9,R10とR11:炭素数1〜18(C1-18)の置換または無置換アルキル基、
炭素数1〜18(C1-18)の置換または無置換アルコキシ基、
炭素数1〜18(C1-18)の置換または無置換カルボキシル基、
炭素数1〜18(C1-18)の置換または無置換アルキルエステル基、
置換または無置換アリールエステル、
アダマンチルカルボニル基、
アダマンチル基、または
置換または無置換アラルキル基;
Z4,Z5は置換または無置換有機環状基と、酸素原子を有する複素環と、硫黄原子と、セレン原子と、窒素原子とベンゼン環状基とを含むグループから選択される。
【0020】
本発明による新規有機化合物(染料(化1、化2と化3))は300〜600nmの波長範囲内において吸光作用を示し、且つ優れた光堅牢度および熱安定性を有している。従って、本発明による染料を含む記録層を利用することにより、波長が530nm以下の短波長レーザー、好ましくは波長が405nmであるブルー・レーザーを用い、高密度情報を記録層に記録し、且つ記録された情報を再現/再生することが可能な高密度光記録媒体を製造することが可能となる。
【0021】
以下、(化7)〜(化26)は本発明による新規染料(化1、化2、化3)の具体的な誘導体のいくつかである。しかし、本発明の範囲は下記の例示に限られていることではない。
【0022】
【化7】

【0023】
【化8】

【0024】
【化9】

【0025】
【化10】

【0026】
【化11】

【0027】
【化12】

【0028】
【化13】

【0029】
【化14】

【0030】
【化15】

【0031】
【化16】

【0032】
【化17】

【0033】
【化18】



【0034】
【化19】



【0035】
【化20】

【0036】
【化21】



【0037】
【化22】



【0038】
【化23】



【0039】
【化24】



【0040】
【化25】

【0041】
【化26】

【0042】
以下、本発明の一つの実施例による新規有機化合物(染料(化13))の合成プロセスを例として説明する。反応スキームは以下の通り(化27)である。

【化27】

【0043】
上記の反応スキームによれば、まず、0.1モルの化合物Aと0.1モルのN,N’-ジフェニルホルムアミジンとを0.12モルのトリエチルアミンを含むメタノール溶液に加え、得られた混合物を還流温度に加熱する。該反応混合物をこの状態で8時間維持する。反応が終わると、得られた反応混合物を一夜置く。次に、沈殿物をろ過し集め、中間化合物Bを得る。その後、0.1モルの化合物Bと0.12モルの2-メチル-2-フェニル-1,3-ジオキサン-4,6-ジオンとを0.12モルのトリエチルアミンを含むDEF(ジエチルホルムアミド)溶液に加え、得られた混合物を100℃まで加熱し、8時間反応させる。反応が終わると、得られた反応混合物を一夜置く。最後に、沈殿物をろ過し集め、前記新規有機化合物(染料(化13))を得る。
【0044】
当業者は、本発明に係る染料として用いられる新規有機化合物およびそれらの誘導体が多様な化学反応と異なる反応スキームとにより合成可能であることが理解できる。また上記の反応スキームは例に過ぎない。本発明の範囲に含まれる全ての化合物の合成プロセスのステップおよび条件は本明細書において詳細に述べない。
【0045】
添付した図面は本発明の更なる理解を得るために用いられ、本明細書に組み入れられ且つ明細書の一部分を構成する。図面は本発明の実施例を図解し、記述と共に本発明の原理を説明する役割を果たす。
【0046】
以下、図4を参照し、ブルー・レイ高密度光記録媒体の構造について説明する。図4によれば、この高密度光記録媒体は第一基板400と、カバー層408と少なくとも記録層402とを備える。記録層402は上述した本発明の染料である化1、化2と化3の少なくとも一つの誘導体の少なくとも一つを含んでおり、且つ第一基板400とカバー層408との間に配置されている。さらに、必要に応じて、反射層406は記録層402上に、下塗り層は第一基板400上に、保護層404は記録層402あるいは反射層406上に設けてもよく、また表面保護層を第一基板400の記録層402との対向側に設けてもよい。
【0047】
本発明によれば、第一基板400とカバー層408とはレーザービームに対して透過的であることが好ましい。第一基板400とカバー層408の材料は、例えば、ガラスまたはプラスチック材料とすることが可能であるが、無論上記の材料に限られない。種々の視点を考慮し、プラスチック材料を採用するのが好ましい。前記プラスチック材料は、例えば、ポリカーボネート(PC)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリマー樹脂、ガラス、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、ニトロセルロース、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリスルホン樹脂及びメタロセン系環状オレフィン共重合体(mCOC)等とすることが可能であるが、無論上記の材料に限られない。前記のプラスチック材料のうち、高い生産性、低コストと耐湿性の観点から、射出成形されたポリカーボネート樹脂基板が特に重要である。第一基板400の厚さが0.5mmから1.3mmの間、好ましくは約0.6mmとすることができる。第一基板400は、例えば、ランドあるいは予め形成されたピット(pre-curved pits)あるいは溝部を備え、トラックピッチが0.4μmよりも小さい。第一基板400に備える前記ランドあるいは予め形成されたピットあるいは溝部はレーザーのピックアップ・ヘッドによるレーザートラッキングのための信号面を提供するのに用いられている。
【0048】
本発明によれば、前記染料である化1、化2あるいは化3を含有する記録層402の厚さは10A〜500nmの範囲内、好ましくは約5nm〜200nmの範囲内であるように形成されている。本発明の記録層402は周知の薄膜形成方法により形成することができる。周知の薄膜形成方法としては、例えば、スピン・コーティング法、ローラー・プレス法、真空蒸着法、スパッタリング法、ドクターブレード法、キャスティング法、インクジェット方式あるいは浸漬法などがある。しかし、生産性及びコストの観点から考えると、スピン・コーティング法が好ましい。本発明に係る染料である化1、化2、化3の何れか一つを用いて1.5Wt.%の2,2,3,3-テトラフルオロプロパノール溶液を用意し、第一基板400に薄膜記録層402をスピン・コーティングすることができる。留意すべきは、他の溶媒、例えばアルコール、ケトン、エーテル、クロロホルムあるいはジクロロメタンも薄膜記録層402を形成するための染料溶液を作るのに用いることができることである。2,2,3,3-テトラフルオロプロパノール、メタノール、エタノール及びイソプロパノールなどは好ましいアルコールの例である。ケトンの好ましい例はアセトンとジメチルーエチルケトンとであり、好ましいエーテルの例はエチル・エーテルとテトラヒドロフランとである。
【0049】
本発明によれば、反射層406は、例えば、少なくとも、金属例えば金、銀、銅、アルミまたは白金、チタン及びそれの合金、あるいはそれらと同等のものからなるものとすることができ、これらの材料は利用されているレーザー波長範囲において高い反射率を有している。無論、反射層406に含まれる材料は上記の材料に限られない。反射層406の厚さを約1nm〜300nmとすることができる。また反射層406は真空スパッタリング法により記録層402上に形成することができる。
【0050】
最後に、カバー層408は反射層406に付着され、前記ブルー・レイ高密度光記録媒体の製造が完成される。カバー層408はスピン・コーティング、スクリーン印刷、熱接着あるいはローラー・プレスにより反射層406に付着されてもよい。
【0051】
本発明によれば、前記第一基板の鏡面表面側にある表面保護層は、例えば、少なくとも紫外線強化型アクリル樹脂あるいはシリコンタイプ硬質コーティング剤からなるものとすることができる。無論、表面保護層に含まれる材料は上記の材料に限られない。塵埃などが付着されることを防止するために、前記表面保護層は帯電防止機能を備えることが好ましい。
【0052】
本発明の光記録媒体の記録層402は第一基板400の一つ面に形成されてもよい。本発明によれば、光記録媒体の記憶容量をさらに増加するために、多重記録層を用いて多層の積層型光記録媒体構造を製造することができる。
【0053】
上記のように得られた光記録媒体は、波長が530nm以下のレーザービーム、例えば、波長405nmの青色レーザーを照射することにより記録することができる。レーザービームが照射された部分において、レーザーのエネルギーの吸収により、記録層の熱変形、例えば分解、蒸発あるいは融解を発生させることが可能である。記録された情報の再現はレーザービームによるこのような熱変形を有する部分とこのような熱変形を有していない部分との間での反射率の差異を読み取ることにより実施される。
【0054】
上述の光記録媒体の記録及び再現特性が下記の条件でPULSTEC ODU-1000装置により評価された。すなわち、評価条件は以下の通りである:
波長405nmの青色レーザービーム、0.65の対物レンズ開口数(NA)、CLV=6.61m/s、反射層(Ag)=150nm;
タイプ1:高ー低、基準(16%〜32%);
タイプ2:低ー高、基準(14%〜28%)、及び
記録パターン3Tである。
記録効率が7〜12mWの範囲であり、且つ読取り効率が0.5mWであることが確認された。下記の表1に示されている記録及び再現特性の結果から分かるように、本発明の前記染料誘導体((化8)と(化11))を含む記録層を組み入れた光記録媒体は、記録及び読取り効率を10mW以下に維持し、且つ記録パターンにおけるCNRは、例えば45〜48dBの共に高いレベルを維持した。従って、上述の本発明による有機染料の誘導体は実際に、例えばブルー・レイHD-DVD-Rのための記録層用の光記録材料として利用できる。
【表1】


ここで、n:前記染料膜の実際の屈折率;
k:前記染料膜の反射率の虚部(imaginary);
CNR:搬送波対雑音比;
PRSNR:部分応答S/N(信号/雑音)比
SbER:シミュレートビットエラー率(Simulated bit Error Rate)
【0055】
本発明に係る染料である化1、化2、化3の少なくとも一つを含む前記記録層は波長範囲300〜600nm内において吸光能力を示し、且つ優れた光堅牢度及び熱安定性を有するため、波長530nm以下の短波長レーザー、好ましくは405nmのブルー・レーザーを用い、前記記録層に高密度情報を記録し且つ記録された前記高密度情報を再生することが可能となる。従って、本発明に係る染料である化1、化2、化3の少なくとも一つを含む前記記録層により高密度光記録媒体の製造が可能となる。
【0056】
当業者にとって、本発明の範囲または精神を逸脱しない範囲で、本発明の構造に対して種々の変形と変更することが可能であることが明らかである。前述の説明を鑑み、本発明はこの発明の変形及び変更を包含することを意図しており、そのような変形及び変更は、特許請求項の範囲及びその均等物の範囲内に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明による染料誘導体(化8)のUV/可視/IR吸光スペクトルを示す図である。
【図2】本発明による染料誘導体(化11)のUV/可視/IR吸光スペクトルを示す図である。
【図3】本発明による染料誘導体(化8)のHD-DVD-R記録層を有するディスクの反射スペクトルを示す図である。
【図4】本発明の一つの実施例による高密度光記録媒体を示す断面図である。
【符号の説明】
【0058】
400 第一基板
402 記録層
406 反射層
408 カバー層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般化学構造式(化1)を有する有機化合物であって、
【化1】


ここで、n:0または1の整数;
X1:酸素原子またはC(CN)2またはシアノ基;
Y1:酸素原子、CH2またはN-R11
L1,L2,L3,L4:置換または無置換メチン基;
R1とR11:炭素数1〜18(C1-18)の置換または無置換アルキル基、
炭素数1〜18(C1-18)の置換または無置換アルコキシ基、
炭素数1〜18(C1-18)の置換または無置換カルボキシル基、
炭素数1〜18(C1-18)の置換または無置換アルキルエステル基、
置換または無置換アリールエステル、
アダマンチルカルボニル基、
アダマンチル基、または
置換または無置換アラルキル基;
R2とR3:水素原子、
置換または無置換アルキル基、
置換または無置換アリール基、
置換または無置換アラルキル基、または
置換または無置換複素環;
Z1は置換または無置換有機環状基と、酸素原子を有する複素環と、硫黄原子と、セレン原子と、窒素原子とベンゼン環状基とを含むグループから選択されることを特徴とする有機化合物。
【請求項2】
下記の一般化学構造式(化2)を有する有機化合物であって、
【化2】


ここで、k:0または1の整数;
X2:酸素原子またはC(CN)2またはシアノ基;
Y2:酸素原子、CH2またはN-R11
L5,L6,L7,L8:置換または無置換メチン基;
R4とR11:炭素数1〜18(C1-18)の置換または無置換アルキル基、
炭素数1〜18(C1-18)の置換または無置換アルコキシ基、
炭素数1〜18(C1-18)の置換または無置換カルボキシル基、
炭素数1〜18(C1-18)の置換または無置換アルキルエステル基、
置換または無置換アリールエステル、
アダマンチルカルボニル基、
アダマンチル基、または
置換または無置換アラルキル基;
R5,R6,R7,R8:水素原子、
置換または無置換アルキル基、
置換または無置換アリール基、
置換または無置換アラルキル基、または
置換または無置換複素環;
Z2,Z3は置換または無置換有機環状基と、酸素原子を有する複素環と、硫黄原子と、セレン原子と、窒素原子とベンゼン環状基とを含むグループから選択されることを特徴とする有機化合物。
【請求項3】
下記の一般化学構造式(化3)を有する有機化合物であって、
【化3】


ここで、m:0または1の整数;
A:置換または無置換環状アルキル基;
X3,X4:酸素原子またはC(CN)2またはシアノ基;
Y3,Y4:酸素原子、CH2またはN-R11
L9,L10,L11,L12,L13,L14,L15,L16:置換または無置換メチン基;
R9,R10とR11:炭素数1〜18(C1-18)の置換または無置換アルキル基、
炭素数1〜18(C1-18)の置換または無置換アルコキシ基、
炭素数1〜18(C1-18)の置換または無置換カルボキシル基、
炭素数1〜18(C1-18)の置換または無置換アルキルエステル基、
置換または無置換アリールエステル、
アダマンチルカルボニル基、
アダマンチル基、または
置換または無置換アラルキル基;
Z4,Z5は置換または無置換有機環状基と、酸素原子を有する複素環と、硫黄原子と、セレン原子と、窒素原子とベンゼン環状基とを含むグループから選択されることを特徴とする有機化合物。
【請求項4】
波長が530nm以下の短波長レーザーを用いてデータを読取り且つ記録する高密度光記録媒体であって、
第一基板と、
カバー層と、
前記第一基板と前記カバー層との間に設置される少なくとも記録層とを備え、
前記記録層は少なくとも請求項1乃至3の何れか一つによる有機化合物を含むことを特徴とする高密度光記録媒体。
【請求項5】
請求項4による高密度光記録媒体において、
前記第一基板及び前記カバー層の材料はポリカーボネート(PC)と、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)と、ポリマー樹脂と、ガラスと、アクリル樹脂と、メタクリル樹脂と、酢酸ビニル樹脂と、塩化ビニル樹脂と、ニトロセルロースと、ポリエチレン樹脂と、ポリプロピレン樹脂と、ポリカーボネート樹脂と、ポリイミド樹脂と、エポキシ樹脂と、ポリスルホン樹脂とメタロセン系環状オレフィン共重合体(mCOC)とからなるグループから選択されることを特徴とする高密度光記録媒体。
【請求項6】
前記第一基板の厚さは0.5mm〜1.3mmの間であることを特徴とする請求項4による高密度光記録媒体。
【請求項7】
前記カバー層の厚さは0.01mm〜0.7mmの間であることを特徴とする請求項4による高密度光記録媒体。
【請求項8】
前記第一基板はその一つ側にランド&グルーブ表面を備えることを特徴とする請求項4による高密度光記録媒体。
【請求項9】
請求項4による高密度光記録媒体において、
前記カバー層と前記第一基板との間に配置される反射層をさらに備え、
前記反射層の材料は金と、銀と、銅と、アルミと、白金と、チタンとそれの合金とからなるグループから選択されることを特徴とする高密度光記録媒体。
【請求項10】
前記記録層または前記反射層に配置される保護層をさらに備えることを特徴とする請求項4による高密度光記録媒体。
【請求項11】
前記保護層の材料はSiN、SiO2、ZnS-SiO2、紫外線強化型アクリル樹脂あるいはシリコンタイプ硬質コーティング剤を少なくとも含むことを特徴とする請求項10による高密度光記録媒体。
【請求項12】
前記記録層を形成する方法はスピン・コーティング法と、ローラー・プレス法と、インクジェット印刷法と浸漬法とからなるグループから選択されることを特徴とする請求項4による高密度光記録媒体。
【請求項13】
前記カバー層を前記反射層に付着させる方法はスピン・コーティング法と、スクリーン印刷法と、熱接着法とからなるグループから選択されることを特徴とする請求項4による高密度光記録媒体。
【請求項14】
波長が530nm以下の短波長レーザーを用いてデータを読取り且つ記録する高密度光記録媒体の記録層を形成するための請求項1乃至3の何れか一つによる有機化合物を少なくとも含む染料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−197437(P2007−197437A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−353613(P2006−353613)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(390023582)財団法人工業技術研究院 (524)
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】195 Chung Hsing Rd.,Sec.4,Chutung,Hsin−Chu,Taiwan R.O.C
【Fターム(参考)】