説明

有機半導体材料及び有機半導体素子

【課題】高電荷移動度,溶媒可溶性、酸化安定性、良好な製膜性を有する有機半導体材料並びにこれを使用した有機半導体素子を提供する。
【解決手段】有機発光材料は、アリールエチニル基を1つ以上有するN置換インドロカルバゾール誘導体からなる。有機半導体素子としては、上記有機半導体材料を薄膜層として有する。アリールエチニル基を1つ以上有するN置換インドロカルバゾール誘導体としては、下記式(101)で示される化合物が例示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機半導体材料、有機半導体膜、有機半導体素子、有機薄膜トランジスタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、無機半導体材料のシリコンを用いる半導体素子では、その薄膜形成において、高温プロセスと高真空プロセスが必須である。高温プロセスを要することから、シリコンをプラスチック基板上等に薄膜形成することができないため、半導体素子を組み込んだ製品に対して、可とう性の付与や、軽量化を行うことは困難であった。また、高真空プロセスを要することから、半導体素子を組み込んだ製品の大面積化と低コスト化が困難であった。
【0003】
そこで、近年、有機半導体材料を有機電子部品として利用する有機半導体デバイス(例えば、有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子、有機薄膜トランジスタ素子または有機薄膜光電変換素子など)に関する研究がなされている。これら有機半導体材料は、無機半導体材料に比べて、作製プロセス温度を著しく低減できるため、プラスチック基板上等に形成することが可能となる。さらに、溶媒への溶解性が大きく、かつ、良好な成膜性を有する有機半導体を用いることにより、真空プロセスを要さない塗布法、例えば、インクジェット装置等を用いて薄膜形成が可能となり、結果として、無機半導体材料であるシリコンを用いる半導体素子では困難であった大面積化と低コスト化の実現が期待される。このように、有機半導体材料は、無機半導体材料と比べて、大面積化、可とう性、軽量化、低コスト化等の点で有利であるため、これらの特性を生かした有機半導体製品への応用、例えば、情報タグ、電子人工皮膚シートやシート型スキャナー等の大面積センサー、液晶ディスプレイ、電子ペーパーおよび有機ELパネル等のディスプレイなどへの応用が期待されている。
【0004】
このように、広範な用途が期待される有機半導体素子に用いられる有機半導体材料には、高い電荷移動度が要求される。例えば、有機FETデバイスでは、スイッチング速度や駆動する装置の性能に直接影響するので、実用化のためには電荷移動度の向上が必須の課題である。さらに前述のように、塗布法による半導体素子の作成を可能とするためには、溶媒可溶性、酸化安定性、良好な製膜性が求められる。
【0005】
特に、電荷移動度が大きいことが有機半導体に対する要求特性として挙げられる。この観点から、近年、アモルファスシリコンに匹敵する電荷輸送性を有する有機半導体材料が報告されている。例えば、5個のベンゼン環が直線状に縮合した炭化水素系アセン型多環芳香族分子であるペンタセンを有機半導体材料として用いた有機電界効果型トランジスタ素子(OFET)では、アモルファスシリコン並みの電荷移動度が報告されている(非特許文献1)。しかしながら、ペンタセンをOFETの有機半導体材料として用いる場合、有機半導体薄膜層は、超高真空での蒸着法で形成されるため、大面積化、可とう性、軽量化および低コスト化の観点で不利である。また、真空蒸着法を用いずに、トリクロロベンゼンの希薄溶液中でペンタセン結晶を形成させる方法も提案されているが、製造方法が難しく安定な素子を得るには至っていない(特許文献1)。ペンタセンのような炭化水素系アセン型多環芳香族分子では酸化安定性が低いことも課題として挙げられる。
【0006】
また、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)等の長鎖アルキル基を有するポリチオフェン誘導体は溶媒に可溶であり、塗布法による有機半導体デバイス作製が報告されてはいるが、電荷移動度が結晶性化合物より低いことから、得られた有機半導体デバイスの特性が低いという問題があった(非特許文献2)。
【0007】
また、チオフェン環が縮環したペンタチエノアセンはペンタセンに比べ耐酸化性が向上しているが、キャリア移動度が低いこと及びその合成に多工程を必要とすることから実用上好ましい材料ではなかった(非特許文献3)。
【0008】
また、最近では溶解性の高いアセン類であるルブレンの単結晶によって非常に高い移動度が報告されているが、溶液キャストで成膜したルブレンの膜はこのような単結晶構造を取らず、十分な移動度は得られていない(非特許文献4)。
【0009】
溶媒溶解性が高く酸化に対して比較的安定な炭化水素系アセン型化合物の例として、ペンタセンの6、13位をシリルエチニル基で置換した一部の化合物が、塗布膜の安定性が良いとの報告がされている(非特許文5)。しかしながら、これらの報告においては、文章中において酸化に対する安定性が向上したと定性的な性状を述べているのみであり、いまだ実用に耐えうる程度の安定性は得られていない。
【0010】
一方、炭化水素系アセン型多環芳香族骨格に、窒素や硫黄のようなヘテロ原子を導入したヘテロアセン系骨格が最近報告されている。しかしながら、その特性は十分なものではなく、例えば、ヘテロ原子として窒素を導入することにより得られるインドロカルバゾール系材料の場合、十分な電荷移動度を得るにいたっていない(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】WO2003/016599号公報
【特許文献2】US7456424B2
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Journal of Applied Physics, Vol.92, 5259(2002)
【非特許文献2】Science, Vol.280,(5370) 1741(1998)
【非特許文献3】Journal Of American Chemical Society, Vol.127, 13281(2005)
【非特許文献4】Science, Vol.303(5664),1644(2004)
【非特許文献5】Org. Lett., Vol.4, 15(2002)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、高い電荷移動性、酸化安定性、溶媒可溶性を有する有機半導体材料及びそれを使用した有機半導体素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、鋭意検討した結果、高い電荷移動性、酸化安定性、溶媒可溶性を有する有機半導体材料を見出し、これを有機半導体素子に使用することで、高特性の有機半導体素子が得られることを見出し、本発明に到達した。
【0015】
本発明は、下記一般式(1)で示される化合物からなることを特徴とする有機半導体材料である。
【化1】

ここで、環Aは隣接環と縮合する式(1a)で表される芳香環を表し、環Bは隣接環と縮合する式(1b)で表される複素環を表す。一般式(1)、式(1a)中のR1は、独立に炭素数1〜30のアルキル基、又は炭素数3〜50の芳香族基を示す。一般式(1)、式(1b)中のR2は、独立に水素、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数3〜50の芳香族基又は下式(1c)
【化2】

で表されるアセチレン結合含有基を示し、少なくとも1つは式(1c)で表されるアセチレン結合含有基である。式(1c)中のArは炭素数3〜50の芳香族基を示す。
【0016】
一般式(1)で示される化合物が、下記一般式(2)、(3)、及び(4)から選ばれるいずれかであることが好ましい。
【化3】

ここで、一般式(2)、(3)、(4)中のR1、R2は一般式(1)、及び式(1a)又は式(1b)と同じ意味を示す。
【0017】
また、一般式(1)で示される化合物が、下記一般式(5)で示される化合物であることが好ましい。
【化4】

ここで、R1、R2は一般式(1)、及び式(1a)又は式(1b)と同じ意味を示す。
【0018】
更に、一般式(1)で示される化合物が、下記一般式(6)で示される化合物であることが好ましい。
【化5】

ここで、R1は一般式(1)、式(1a)と同意であり、R3は独立に水素、又は式(1c)で表されるアセチレン結合含有基を示し、少なくとも1つは式(1c)で表されるアセチレン結合含有基である。
【0019】
また、本発明は上記のいずれかに記載の有機半導体材料を含有することを特徴とする有機半導体膜である。更に、本発明は上記のいずれかに記載の有機半導体材料を有機溶媒に溶解し、調製された溶液を塗布・乾燥する工程を経て、形成されたことを特徴とする有機半導体膜である。
【0020】
また、本発明は上記のいずれかに記載の有機半導体材料を用いることを特徴とする有機半導体デバイス、及び有機薄膜トランジスタである。
【発明の効果】
【0021】
本発明の有機半導体材料は高い電荷移動特性を有する。従って、本発明の有機半導体素子は、高い特性を発現することが可能となり、例えば、有機電界効果トランジスタ、有機薄膜太陽電池、情報タグ、電子人工皮膚シートやシート型スキャナー等の大面積センサー、液晶ディスプレイ、電子ペーパーおよび有機ELパネル等のディスプレイ等への応用が考えられ、その技術的価値は大きいものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】有機電界効果トランジスタ素子の一例を示した模式断面図を示す。
【図2】有機電界効果トランジスタ素子の他の一例を示した模式断面図を示す。
【図3】有機電界効果トランジスタ素子の他の一例を示した模式断面図を示す。
【図4】有機電界効果トランジスタ素子の他の一例を示した模式断面図を示す。
【図5】有機電界効果トランジスタ素子の他の一例を示した模式断面図を示す。
【図6】有機電界効果トランジスタ素子の他の一例を示した模式断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の有機半導体材料は、一般式(1)で示される化合物である。
【0024】
一般式(1)で示される化合物は、インドロカルバゾール骨格を有する。そして、R1がインドロカルバゾール環のNに結合し、Nを含まない環にR2が結合した構造を有する。
【0025】
すなわち、一般式(1)において、環Aは式(1a)で表される複素環であり、環Bは式(1b)で表される芳香環である。そして、環Aと環Bと縮合した環はインドール環となる。
【0026】
一般式(1)で示される化合物の骨格は、左からベンゼン環、環Aと環Bが縮合した環、インドール環が連結した縮環構造を有する。例えば、環Aの左側のベンゼン環、環A、環Bで構成される3環の縮合環をカルバゾール環、環Bの右側をインドール環とすれば、カルバゾール環の1,2-位、2,3-位又は3,4-位の位置とインドール環の2,3-位又は3,2-位の位置で縮合することができるので、式(1a)で表される複素環中のNの向きが異なる異性体がある。したがって、一般式(1)で示される化合物の骨格であるインドロカルバゾール環には下記一般式(7)〜(11)に示す5種類の異性体がある。
【0027】
【化6】

【0028】
一般式(1)及び式(1a)において、R1は、独立に炭素数1〜30のアルキル基、又は炭素数3〜50の芳香族基を示し、好ましくは炭素数1〜16のアルキル基、又は炭素数3〜36の芳香族基である。これらアルキル基、又は芳香族基は置換基を有してもよく、1つ以上の置換基を有する場合は、炭素数の計算にはそれら置換基の炭素数を含む。
【0029】
1の好ましいアルキル基としては、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−オクタデシル基、n−ドコシル基、n−テトラコシル基の如き直鎖飽和炭化水素基、イソブチル基、ネオペンチル基、2−エチルヘキシル基、2−ヘキシルオクチル基、4−デシルドデシル基等の分岐飽和炭化水素基、アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、4−ブチルシクロヘキシル基、4−ドデシルシクロヘキシル基等の飽和脂環炭化水素基が例示できる。
【0030】
1の好ましい芳香族基としては、ベンゼン、ペンタレン、インデン、ナフタレン、アズレン、ヘプタレン、オクタレン、インダセン、アセナフチレン、フェナレン、フェナンスレン、アントラセン、トリンデン、フルオランテン、アセフェナントリレン、アセアントリレン、トリフェニレン、ピレン、クリセン、テトラフェン、テトラセン、プレイアデン、ピセン、ペリレン、ペンタフェン、ペンタセン、テトラフェニレン、ヘリセン、ヘキサフェン、ルビセン、コロネン、トリナフチレン、ヘプタフェン、ピラントレン、オバレン、コラヌレン、フルミネン、アンタントレン、ゼトレン、テリレン、ナフタセノナフタセン、トルキセン、フラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、キサンテン、オキサトレン、ジベンゾフラン、ペリキサンテノキサンテン、チオフェン、チオキサンテン、チアントレン、フェノキサチイン、チオナフテン、イソチアナフテン、チオフテン、チオファントレン、ジベンゾチオフェン、ピロール、ピラゾール、テルラゾール、セレナゾール、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、フラザン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、インドリジン、インドール、イソインドール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、カルバゾール、イミダゾール、ナフチリジン、フタラジン、キナゾリン、ベンゾジアゼピン、キノキサリン、シンノリン、キノリン、プテリジン、フェナントリジン、アクリジン、ペリミジン、フェナントロリン、フェナジン、カルボリン、フェノテルラジン、フェノセレナジン、フェノチアジン、フェノキサジン、アンチリジン、テベニジン、キンドリン、キニンドリン、アクリンドリン、フタロペリン、トリフェノジチアジン、トリフェノジオキサジン、フェナントラジン、アントラジン、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、ベンゾイソチアゾール、インドロカルバゾール又はこれら芳香環が複数連結された芳香族化合物から水素を除いて生じる基等が挙げられる。より好ましくは、ベンゼン、ナフタレン、フェナンスレン、アントラセン、クリセン、フラン、チオフェン、ピロール、カルバゾール、インドロカルバゾール又はこれら芳香環が複数連結された芳香族化合物から水素を除いて生じる基が挙げられる。なお、芳香環が複数連結された芳香族化合物から生じる基である場合、連結される数は2〜10が好ましく、より好ましくは2〜7であり、連結される芳香環は同一であっても異なっていても良い。
【0031】
ここで、芳香環が複数連結されて生じる基は、例えば、下記式で表わされる。
【化7】

ここで、Ar1〜Ar6は、置換又は無置換の芳香環を示す。但し、この場合、分岐して連結する芳香族基は置換基としては扱わない。
【0032】
上記芳香環が複数連結されて生じる基の具体例としては、例えばビフェニル、ターフェニル、ビピリジン、ビピリミジン、フェニルナフタレン、ジフェニルナフタレン、フェニルフェナンスレン、ピリジルベンゼン、ピリジルフェナンスレン、フェニルインドロカルバゾール等から水素を除いて生じる基が挙げられる。
【0033】
1のアルキル基又は芳香族基は置換基を有していても良く、置換基は半導体材料の性能を損なわなければ限定されるものではないが、置換基の総数は1〜4、好ましくは1〜2である。なお、芳香環が複数連結された芳香族化合物から生じる基も同様に置換基を有することができる。これらの好ましい置換基としては炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のアルキニル基、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜10のアルキルスルホニル基、炭素数1〜10のハロアルキル基、炭素数2〜10のアルキルアミド基、炭素数3〜20のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20のトリアルキルシリルアルキル基、炭素数5〜20のトリアルキルシリルアルケニル基、炭素数5〜20のトリアルキルシリルアルキニル基等が挙げられる。より好ましくは、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−オクタデシル基、n−ドコシル基、n−テトラコシル基の如き直鎖飽和炭化水素基、イソブチル基、ネオペンチル基、2−エチルヘキシル基、2−ヘキシルオクチル基、4−デシルドデシル基等の分岐飽和炭化水素基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、4−ブチルシクロヘキシル基、4−ドデシルシクロヘキシル基等の飽和脂環炭化水素基、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n−ヘキシルオキシ基等が例示できる。置換基を2つ以上有する場合は、同一であっても異なっていても良い。
【0034】
上記一般式(1)及び式(1b)中のR2は、独立に水素、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数3〜50の芳香族基又は式(1c)で表されるアセチレン結合含有基を示すが、R2の内、少なくとも一つはこのアセチレン結合含有基である。R2が、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数3〜50の芳香族基である場合は、前記R1で説明したアルキル基、芳香族基の場合と同様である。また、式(1c)中のArは炭素数3〜50の芳香族基を示すが、前記R1で説明した芳香族基の場合と同様である。一般式(1)で表わされる化合物は、式(1c)で表されるアセチレン結合含有基を1つ以上有するが、好ましくは1〜4、より好ましくは2有することがよい。
【0035】
本発明の一般式(1)で表わされる化合物は以下の公知文献を参考にして製造することができる。例えば、一般式(2)に示されるインドロカルバゾール骨格を有する化合物において、両端のベンゼン環にR2として式(1c)で示されるアリールエチニル基を有する下記一般式(12)の場合、J. Chem. Soc. 1963, 2504.やJ. Chem. Soc. 1963, 3097.に示される合成例を参考にして以下の反応式Aにより製造することができる。
【0036】
反応式A
【化8】

【0037】
すなわち、2分子のハロゲン置換フェニルヒドラジンと1,4−シクロヘキサンジオンを酸触媒存在下で作用させることにより中間体A−1を得た後、インドロカルバゾール骨格のNにR1を導入し、その後、アリールエチニル基を導入する方法である。
【0038】
一般式(3)に示されるインドロカルバゾール骨格を有する化合物において、両端のベンゼン環にR2として式(1c)で示されるアリールエチニル基を有する下記一般式(13)の場合、反応式Aの方法で用いた1,4−シクロヘキサンジオンの代わりに1,2−シクロヘキサンジオンを用いる反応式Bの方法により製造できる。
【0039】
反応式B
【化9】

【0040】
一般式(3)に示されるインドロカルバゾール骨格を有する化合物において、中央のベンゼン環にR2として式(1c)で示されるアリールエチニル基を有する下記一般式(14)の場合、以下の反応式Cの方法により製造できる。
【0041】
反応式C
【化10】

【0042】
一般式(4)に示されるインドロカルバゾール骨格を有する化合物において、両端のベンゼン環にR2として式(1c)で示されるアリールエチニル基を有する下記一般式(15)の場合、Tetrahedron, 1999, 55,2371に示される合成例を参考にして以下の反応式Dにより製造することができる。
【0043】
反応式D
【化11】

【0044】
一般式(1)に示されるインドロカルバゾール骨格を有する化合物において、中央のベンゼン環にR2として式(1c)で示されるアリールエチニル基を有する下記一般式(16)の場合、以下の反応式Eの方法により製造できる。
【0045】
反応式E
【化12】

【0046】
一般式(1)で表される化合物の好ましい具体例を以下に示すが、これらに限定するものではない。
【0047】
【化13】

【0048】
【化14】

【0049】
【化15】

【0050】
【化16】

【0051】
【化17】

【0052】
【化18】

【0053】
【化19】

【0054】
【化20】

【0055】
【化21】

【0056】
【化22】

【0057】
【化23】

【0058】
【化24】

【0059】
【化25】

【0060】
【化26】

【0061】
続いて、本発明の有機半導体材料からなる有機半導体材料を備える有機半導体デバイスについて、図1、図2、図3、図4、図5、及び図6に基づいて説明する。
【0062】
図1、図2、図3、図4、図5、及び図6は、本発明の有機半導体デバイスの実施形態を示すものであり、いずれも有機電界効果トランジスタデバイスの構造を示す模式的断面図である。
【0063】
図1において、有機電界効果トランジスタデバイスは、基板1の表面上にゲート電極2を備え、基板1に関してゲート電極2と逆側の表面上には絶縁膜層3が形成されており、絶縁膜層3上にはソース電極5およびドレイン電極6が設けられ、さらに有機半導体層4が形成されている。
【0064】
図2において、本発明に係る有機電界効果トランジスタデバイスは、基板1の表面上にゲート電極2を備え、基板1に関してゲート電極2と逆側の表面上には絶縁膜層3および有機半導体層4が形成されており、有機半導体層4上にはソース電極5およびドレイン電極6が設けられている。
【0065】
図3において、本発明に係る有機電界効果トランジスタデバイスは、基板1の表面上にゲート電極2を備え、その上に絶縁層3が形成されており、絶縁層3上にはソース電極5およびドレイン電極6が設けられ、さらに有機半導体層4が形成されている。
【0066】
図4において、本発明に係る有機電界効果トランジスタデバイスは、基板1の表面上にゲート電極2を備え、その上に絶縁層3が形成されており、さらにその上に有機半導体層4が形成され、有機半導体層4上にはソース電極5およびドレイン電極6が設けられている。
【0067】
図5において、本発明に係る有機電界効果トランジスタデバイスは、基板1上にソース電極5およびドレイン電極6が設けられ、その上に有機半導体層4が形成される。有機半導体層4上には、絶縁層3を形成し、さらにその上にゲート電極2が設けられる。
【0068】
図6において、本発明に係る有機電界効果トランジスタデバイスは、基板1上に有機半導体層4が形成され、その上にソース電極5およびドレイン電極6が設けられる。さらにその上に絶縁層3が形成され、絶縁層3上にはゲート電極2が設けられる。
【0069】
基板1に用いる基板材料としては、例えば、ガラス、石英、酸化アルミニウム、サファイア、窒化珪素、炭化珪素等のセラミックス基板、シリコン、ゲルマニウム、ガリウム枇素、ガリウム燐、ガリウム窒素等半導体基板、ポリエチレンテレフタレート、ポリナフタレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体、環状ポリオレフィン、ポリイミド、ポリアミド、ポリスチレン等の樹脂基板等が挙げられる。基板の厚さは、約10 マイクロメートル〜約2ミリメートルとすることができるが、特に可撓性のプラスチック基板ではたとえば約50〜約100μm、剛直な基板、たとえばガラスプレートまたはシリコンウェーハなどでは約0.1〜 約2mmとすることができる。
【0070】
ゲート電極2は、金属薄膜、導電性ポリマ膜、導電性のインキまたはペーストから作った導電性膜などであってもよく、あるいは、たとえば重度にドープしたシリコンのように、基板そのものをゲート電極とすることができる。ゲート電極の材料の例としては、アルミニウム、金、クロム、インジウムスズ酸化物、導電性ポリマたとえば、ポリスチレンスルホン酸をドープしたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、カーボンブラック/グラファイトを含む導電性インキ/ペースト、または、ポリマバインダの中にコロイド状の銀を分散させたもの等を例示できる。
【0071】
ゲート電極2は、真空蒸着、金属または導電性金属酸化物のスパッタリング、スピンコート法による導電性ポリマ溶液または導電性インキからのコーティング、キャスティング等を用いることにより作成できる。ゲート電極2の厚さは、たとえば、金属膜の場合で約10〜約200nmの範囲、導電性ポリマの場合で約1〜約10μmの範囲が好ましい。
【0072】
絶縁膜層3は一般に、無機材料膜または有機ポリマ膜とすることができる。絶縁膜層3として好適な無機材料の例としては、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコニウムバリウム等が例示できる。絶縁膜層3として好適な有機化合物の例としては、ポリエステル類、ポリカーボネート類、ポリ(ビニルフェノール)、ポリイミド類、ポリスチレン、ポリ(メタクリレート)類、ポリ(アクリレート)類、エポキシ樹脂などがある。絶縁膜層の厚さは、使用する絶縁材料の誘電率によって異なるが、例えば約100nm〜約500nmである。
【0073】
ソース電極5およびドレイン電極6は、後述する有機半導体層4に対して低抵抗オーム性接触を与える材料から作ることができる。ソース電極5およびドレイン電極6として好ましい材料としては、ゲート電極2に好ましい材料として例示したものを用いることができ、例えば、金、ニッケル、アルミニウム、白金、導電性ポリマおよび導電性インキなどがある。ソース電極5およびドレイン電極6の厚さは、典型的には、たとえば、約40nm〜約10μm、より好ましくは厚さが約100〜約400nmである。
【0074】
有機半導体層4を形成する手段としては、例えば、真空蒸着法、CVD法、スパッタリング法、レーザー蒸着法等のドライ成膜方法と、基板上に溶液や分散液を塗布した後に、溶媒や分散媒を除去することで薄膜を形成するウエット成膜法が挙げられるが、ウエット成膜法を用いることが好ましい。ウエット成膜法としては、スピンコート法、ブレードコート法、ロッドコート法、スクリーン印刷、インキジェット印刷、スタンプ法などが例示できる。例えばスピンコート法を用いる場合、本発明の有機半導体材料が溶解度を有する適切な溶媒に溶解させることにより、濃度が0.01wt%〜10wt%の溶液を調製した後、基板1に形成した絶縁膜層3上に有機半導体溶液を滴下し、次いで500〜6000回転で5〜120秒回転することにより行われる。有機半導体材料溶液を調製する溶媒としては、有機半導体材料が有する各溶媒に対する溶解度と製膜後の膜質によって選択されるが、たとえば、水、メタノールに代表されるアルコール類、トルエンに代表される芳香族炭化水素類、ヘキサンやシクロヘキサン等に代表される脂肪族炭化水素類、ニトロメタンやニトロベンゼン等の有機ニトロ化合物、テトラヒドロフランやジオキサン等の環状エーテル化合物、アセトニトリルやベンゾニトリル等のニトリル系化合物、アセトンやメチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル等のエステル類、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、スルホラン、N−メチルピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン等に代表される非プロトン性極性溶媒等から選ばれる溶媒を用いることができる。また、これらの溶媒は2種類以上を組合せて用いることもできる。有機半導体層4に使用する有機半導体材料としては、必要により本発明の有機半導体材料と共に他の材料を使用することも可能である。
【0075】
上述の方法により、本発明の有機半導体材料を用いた有機電界効果トランジスタ素子を作成することが可能である。この際、ソース電極5を接地させ、バイアス電圧、一般にたとえば、約0V〜約−80Vの電圧をドレイン電極6に印加し、さらに、約0V〜約−80Vの電圧をゲート電極に印加することにより、電界効果トランジスタとして動作する。
【0076】
本発明の有機半導体材料は、高電荷移動度,溶媒可溶性、酸化安定性、良好な製膜性を有しており、これを使用した有機半導体デバイスも高い特性を発揮する。本発明の有機半導体材料の特徴を生かせる具体的な有機半導体デバイスとしては、例えば、有機電界効果トランジスタや有機薄膜太陽電池を示すことができ、さらには、これらの有機半導体デバイスを組み込むことにより、情報タグ、電子人工皮膚シートやシート型スキャナー等の大面積センサー、液晶ディスプレイ、電子ペーパーおよび有機ELパネル等のディスプレイに応用していくことができる。
【実施例】
【0077】
以下、本発明につき、実施例によって更に詳しく説明するが、本発明は勿論、これらの実施例に限定されるものではなく、その要旨を越えない限りにおいて、種々の形態で実施することが可能である。なお、化合物番号は上記化学式に付した番号に対応する。
【0078】
実施例1
化合物(122)の合成例
還流管、メカニカルスタラーを備え付けた3000ml三口フラスコに、3-ブロモフェニルヒドラジン塩酸塩(148.1g、662mmol)、1,2−シクロヘキサンジオン(35.9g、320mmol)、酢酸1600mlを量り取り、撹拌しながら、硫酸(400g)を15分かけて滴下し、室温で撹拌した。一晩撹拌を行った後、反応混合物を水2000mlの中に注いだ。沈殿物を濾取した後、濾取した固体をメタノール500mlで2回洗浄し、50℃で一晩真空乾燥をおこなった。これを減圧乾燥し、3,9−ジブロモインドロ[3,2b]カルバゾールを21.7g(白色固体)得た。
【0079】
次に、500mlの三口丸底フラスコに、3,9−ジブロモインドロ[3,2b]カルバゾール(10.35g、25.0mmol)、DMF(250ml)を量り入れ、フラスコ内を窒素置換した。50mlビーカーに含有量60.2%のNaH(2.19g、54.9mmol)を加え、ヘキサン30mlを加えスパチュラでかき混ぜ、静置して上澄みをパスツールピペットで除いた。新たに、ヘキサン30mlを加えて、撹拌、静置、上澄み液除去の作業をもう二度行った。新たに、ヘキサン30mlを加え、NaHのヘキサンけん濁液を調製した。NaHのヘキサンけん濁液を10分かけて少しずつ反応液に加えた。その後、ヨードオクタン(13.2g、55.0mmol)を10分かけて少しずつ滴下し、その後、室温で一晩撹拌した。反応液にメタノールを少しずつ加えて、泡が出ないことを確認し、反応混合物を水1000mlの中に注いだ。沈殿物をろ取した後、ろ取物をメタノール1500mlで洗浄した後に、ヘキサン500ml、メタノール1500mlで順に洗浄した。50℃で一晩真空乾燥を行うことで、3,9−ジブロモ−5,11−ジオクチルインドロ[3,2b]カルバゾールを10.6g(黄色固体)得た。
【0080】
次に、還流管を備え付けた200mlの三口丸底フラスコを窒素雰囲気下にした後、3,9−ジブロモ−5,11−ジオクチルインドロ[3,2b]カルバゾール(4.82g、7.5mmol)、THF(60ml)、ジイソプロピルアミン(60ml)、エチニルベンゼン(1.85g、18.1mmol)、よう化銅(I)(0.57g、3.0mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(1.82g、1.6mmol)を加えた。窒素雰囲気下、85℃で8時間撹拌した。反応混合物の溶媒を減圧留去し、残渣をジクロロメタン300mlに溶解し、水100mlで3回洗浄し、減圧濃縮した。残渣をメタノール1000mlでリスラリーを行った。これを、50℃で一晩真空乾燥を行うことで、化合物(122)を1.82g(黄色固体)得た。
1H―NMR(CDCl3):δ8.15(d)、7.96(s)、7.58−7.62(m)、7.32−7.43(m)、4.37(t)、1.95(m)、1.25−1.50(m)、0.86(m)
【0081】
実施例2
化合物(101)の合成例
還流管を備え付けた200mlの三口丸底フラスコを窒素雰囲気下にした後、3,9−ジブロモ−5,11−ジオクチルインドロ[3,2b]カルバゾール(4.80g、7.5mmol)、THF(60ml)、ジイソプロピルアミン(60ml)、4−エチニルビフェニル(3.24g、18.2mmol)、よう化銅(I)(0.58g、3.0mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(1.76g、1.5mmol)を加えた。窒素雰囲気下、85℃で8時間撹拌した。反応混合物の溶媒を減圧留去し、残渣を水、メタノールで洗浄をした。得られた固体をジクロロメタンでリスラリーを行った。これを50℃で一晩真空乾燥を行うことで、化合物(101)を2.75g(黄色固体)得た。
1H―NMR(CDCl3):δ8.16(d)、7.98(s)、7.60−7.68(m)、7.42−7.47(m)、7.34−7.38(m)、4.40(t)、1.98(m)、1.28−1.53(m)、0.87(m)
【0082】
実施例3
本発明の有機半導体材料の特性を、図1に示す構成の有機電界効果トランジスタを作成し、評価した。まず、約300nmの厚みの熱成長酸化ケイ素層を有するシリコンウェハ(nドープ)を、硫酸−過酸化水素水溶液で洗浄し、イソプロピルアルコールで煮沸した後、乾燥した。得られたシリコンウェハにフォトレジストをスピンコート後、フォトマスクを介して露光機により露光した。次いで、現像液で現像を行った後、イオン交換水で洗浄し、空気乾燥した。そのパターニングされたフォトレジストが塗布されたシリコンウェハ上に、真空蒸着法により、厚さ3nmのクロム、更にその上から50nmの金を蒸着した。そのシリコンウェハを、リムーバー溶液に浸すことでシリコンウェハ上にソース電極およびドレイン電極を作製した。ソース電極およびドレイン電極が作成されたシリコンウェハをアセトンで洗浄し、さらに、イソプロピルアルコールで煮沸し乾燥した後、オクチルトリクロロシランの約1×10-6M トルエン溶液中に、一晩浸漬した。その後、トルエン、イソプロピルアルコールで洗浄した後、110℃で約10分間加熱することで、オクチルトリクロロシラン(OTS)処理を行った有機電界効果トランジスタ基板を作製した。チャネル長はL=25μm、チャネル幅はW=15.6cmであった。
次に実施例1で得た化合物(122)のクロロベンゼン溶液(2重量%)を0.2μmのシリンジフィルターを用いてろ過し、OTS処理を行った基板上に、室温、1000rpm、30秒間の条件でスピンコートした。次いでそれを80℃で30分間乾燥した。この時、有機半導体層の厚さは50nmであった。このようにして図1に示す構造を有する有機電界効果トランジスタを得た。
【0083】
得られた有機電界効果トランジスタ素子のソース電極及びドレイン電極間に-10〜-100 V の電圧を印加し、ゲート電圧を-30〜-80 Vの範囲で変化させて、電圧−電流曲線を25 ℃の温度において求め、そのトランジスタ特性を評価した。電界効果移動度(μ)は、ドレイン電流Idを表わす下記式(I)を用いて算出した。
d=(W/2L)μCi(Vg−Vt2 (I)
【0084】
上記式(I)において、Lはゲート長であり、Wはゲート幅である。また、Ciは絶縁層の単位面積当たりの容量であり、Vgはゲート電圧であり、Vtは閾値電圧である。また、オン/オフ比は、最大及び最小ドレイン電流値(Id)の比より算出した。
移動度;8.8×10-2cm2/Vs、オンオフ比;107であった。
【0085】
実施例4
実施例3において、化合物(122)のクロロベンゼン溶液(2重量%)の代わりに、実施例2で得られた化合物(101)のクロロホルム溶液(1重量%)を使用し、室温にて1000rpm、30秒の条件でスピンコートを行ったほかは同様の操作を行い、有機電界効果トランジスタ素子を作製した。得られた素子の特性を実施例3と同様に評価したところ、移動度;1.4×10-1cm2/Vs、オンオフ比;106であった。
【0086】
比較例1
実施例3において、化合物(122)のクロロベンゼン溶液(2重量%)の代わりに、5,11−ジオクチルインドロ[3,2b]カルバゾールのクロロベンゼン溶液(2重量%)を使用し、室温にて1000rpm、30秒の条件でスピンコートを行ったほかは同様の操作を行い、有機電界効果トランジスタ素子を作製した。得られた素子を実施例3と同様に評価したところ、移動度;1.1×10-4cm2/Vs、オンオフ比;105であった。
【0087】
以上のように、実施例3、4と比較例1を比較することにより、式(1c)で示される置換基を導入したインドロカルバゾール誘導体が、有機半導体として高い特性を有していることが明らかとなった。
【0088】
実施例5
3,9−ビス(フェニルエチニル)−5,11−ビス(2−ヘキシルデシル)インドロ[3,2b]カルバゾール;化合物(142)の合成例
200 mLの三口フラスコに3,9−ジブロモインドロ[3,2b]カルバゾール (4.5 g、10.95 mmol)、脱水DMF(50mL)を量り入れ、フラスコ内を窒素置換した。60.2%NaH(1.03g、24.1mmol)のヘキサン(15mL)けん濁溶液を反応液に加えた。その後、p−トルエンスルホン酸2−ヘキシルデシルエステル (10 g、24.1 mmol、2.2 eq. )を滴下し、室温で一晩撹拌した。反応溶液に水200mLを加え、ヘキサン300 mLで3回抽出を行った。溶媒を減圧留去することにより、3,9−ジブロモ−5,11−ビス(2−ヘキシルデシル)インドロ[3,2b]カルバゾール(粘性の液体7.2 g)を得た。
【0089】
次に、還流管を備え付けた300 mLの三口丸底フラスコを窒素雰囲気下にした後、3,9−ジブロモ−5,11−ビス(2−ヘキシルデシル)インドロ[3,2b]カルバゾール (3.6 g、4.2 mmol)、THF(60ml)、ジイソプロピルアミン(60ml)、エチニルベンゼン (1.16 g、11.3 mmol)、よう化銅(I) (160 mg、0.84 mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0) (485 mg、0.42 mmol)を加えて80℃窒素雰囲気下で一晩撹拌した。得られた反応溶液に水130 mLを加え、ジクロロメタン130 mLで3回抽出を行った後、無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥した。硫酸マグネシウムを濾別後、溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムにより精製を行なうことで3,9−ビス(フェニルエチニル)−5,11−ビス(2−ヘキシルデシル)インドロ[3,2b]カルバゾールを2.0 g(黄色固体)得た。
1H―NMR(CDCl3):δ8.16(d、2H)、7.90(s、2H)、7.58(s、2H)、7.52−7.3(m、12H)、1.40(m、6H)、1.23−1.20(m、48H)、0.85-0.83(m、12H)
【0090】
実施例6
3,9−ビス((1,1’−ビフェニル)−4―エチニル)−5,11−ビス(2−ヘキシルデシル)インドロ[3,2b]カルバゾール;化合物(143)の合成例
還流管を備え付けた300 mLの三口丸底フラスコを窒素雰囲気下にした後、3,9−ジブロモ−5,11−ビス(2−ヘキシルデシル)インドロ[3,2b]カルバゾール (3.62 g、4.2 mmol)、THF(60ml)、ジイソプロピルアミン(60ml)、4−エチニルビフェニル(2.0 g、11.2 mmol)、よう化銅(I) (160 mg、0.84 mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0) (485 mg、0.42 mmol)を加えて80℃窒素雰囲気下で一晩撹拌した。溶液に水130 mLを加え、ジクロロメタン130 mLで3回抽出を行った後、無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥した。硫酸マグネシウムを濾別後、溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムにより精製を行なうことで3,9−ビス((1,1’−ビフェニル)−4−エチニル)−5,11−ビス(2−ヘキシルデシル)インドロ[3,2b]カルバゾールを1.5 g(黄色固体)得た。
1H―NMR(CDCl3):δ8.16(d、2H)、7.97(s、2H)、7.69(d、2H)、7.65−7.62(m、10H)、7.6(s、2H)、 7.35−7.31(m、8H)、1.41(m、6H)、1.25−1.22(m、48H)、0.86-0.83(m、12H)
【0091】
実施例7
3,9−ビス((2,2':5',2''-ターチエニル)-5-エチニル)−5,11−ビス(2-ヘキシルデシル)インドロ[3,2b]カルバゾール;化合物(125)の合成例
還流管を備え付けた300 mLの三口丸底フラスコを窒素雰囲気下にした後、3,9−ジブロモ−5,11−ビス(2-ヘキシルデシル)インドロ[3,2b]カルバゾール (3.62 g、4.2 mmol)、THF(60ml)、ジイソプロピルアミン(60ml)、5-エチニル-2, 2':5', 2''-ターチオフェン(2.97 g、10.9 mmol)、よう化銅(I) (160 mg、0.84 mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0) (485 mg、0.42 mmol)を加えて80℃窒素雰囲気下で一晩撹拌した。溶液に水130 mLを加え、ジクロロメタン130 mLで3回抽出を行った後、無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥した。硫酸マグネシウムを濾別後、溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラム精製、メタノール再沈を行なうことで3,9−ビス((2,2':5',2''-ターチエニル)-5-エチニル)−5,11−ビス(2-ヘキシルデシル)インドロ[3,2b]カルバゾールを0.8 g(黄色固体)得た。
1H―NMR(CDCl3):δ8.1(d、2H)、8.0(s、2H)、7.6(s、2H)、7.4(d、2H)、 7.2−7.0(m、12H)、6.7(d、2H)、1.56(m、6H)、1.25−1.18(m、48H)、0.89-0.82(m、12H)
【0092】
実施例8〜10
実施例3において、化合物(122)のクロロベンゼン溶液(2重量%)の代わりに、実施例5〜7で得られた化合物(142)、化合物(143)、化合物(125)のクロロホルム溶液(1重量%)を使用し、室温にて1000rpm、30秒の条件でスピンコートを行った後、50℃で30分乾燥を行った他は同様の操作を行い、有機電界効果トランジスタ素子を作製した。得られた素子を実施例3と同様に評価した結果を表1に示す。
【0093】
【表1】

【0094】
実施例11
本発明の有機半導体材料の耐酸化安定性試験
化合物(101)の1mM溶液(クロロホルム)を調製した。このクロロホルム溶液を室温で空気を100ml/Minでバブリングしながら撹拌した。この間、蒸散したクロロホルムの量に応じて随時、クロロホルムを添加し、一定濃度を保つようにした。このクロロホルム溶液の空気バブリング前のHPLCでの純度(当初純度)と、空気バブリング開始後24時間経過したクロロホルム溶液のHPLCでの純度(24hr後純度)を比較する事により、耐酸化安定性を評価した。結果を表2に示す。
【0095】
実施例12〜15
実施例13において化合物(101)の代わりに化合物(122)、(142)、(143)、(125)を用いたほかは同様に操作を行った。結果を表2に示す。
【0096】
比較例2
実施例11において化合物(101)の代わりに、ルブレンを用いたほかは同様に操作を行った。結果を表2に示す。
【0097】
【表2】

【符号の説明】
【0098】
1 基板、2 ゲート電極、3 絶縁層、4 有機半導体層、5 ソース電極、6 ドレイン電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示される化合物からなることを特徴とする有機半導体材料。
【化1】

ここで、環Aは隣接環と縮合する式(1a)で表される芳香環を表し、環Bは隣接環と縮合する式(1b)で表される複素環を表す。一般式(1)、式(1a)中のR1は、独立に炭素数1〜30のアルキル基、又は炭素数3〜50の芳香族基を示す。一般式(1)、式(1b)中のR2は、独立に水素、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数3〜50の芳香族基又は下式(1c)
【化2】

で表されるアセチレン結合含有基を示し、少なくとも1つは式(1c)で表されるアセチレン結合含有基である。式(1c)中のArは炭素数3〜50の芳香族基を示す。
【請求項2】
一般式(1)で示される化合物が、下記一般式(2)、(3)、及び(4)から選ばれるいずれかであることを特徴とする請求項1記載の有機半導体材料。
【化3】

ここで、一般式(2)、(3)、(4)中のR1、R2は、一般式(1)、及び式(1a)又は式(1b)と同じ意味を示す。
【請求項3】
一般式(1)で示される化合物が、下記一般式(5)で示される化合物であることを特徴とする請求項1記載の有機半導体材料。
【化4】

ここで、R1、R2は、一般式(1)、及び式(1a)又は式(1b)と同じ意味を示す。
【請求項4】
一般式(1)で示される化合物が、下記一般式(6)で示される化合物であることを特徴とする請求項1記載の有機半導体材料。
【化5】

ここで、R1は一般式(1)、式(1a)と同意であり、R3は独立に水素、又は式(1c)で表されるアセチレン結合含有基を示し、少なくとも1つは該アセチレン結合含有基である。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機半導体材料を含有することを特徴とする有機半導体膜。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機半導体材料を有機溶媒に溶解し、調製された溶液を塗布・乾燥する工程を経て、形成されたことを特徴とする有機半導体膜。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機半導体材料を用いることを特徴とする有機半導体デバイス。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機半導体材料を半導体層に用いることを特徴とする有機薄膜トランジスタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−222974(P2011−222974A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57752(P2011−57752)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000006644)新日鐵化学株式会社 (747)
【Fターム(参考)】