説明

有機廃棄物質および非有機廃棄物質の有用生成物への転換方法

本発明は、廃棄物および低価値物質をコスト効率的およびエネルギー効率的な方法で信頼できる純度の有用生成物に転換することに関する。特に、本発明は、これ以外には商業的な価値がほとんどない破砕残渣、臓物、家畜肥料、都市下水汚泥、タイヤ、プラスチックなどのさまざまなフィードストックの混合流を取り扱い、ガス、油、スペシャルティケミカルおよび炭素固体をはじめとする有用生成物にすることが可能な方法を提供するものである。この方法では、熱分解または接触分解の方法に従って、フィードストックに熱および圧力を付し、さまざまな成分を分離した後、さらにこれらの成分1種以上に熱と圧力を印加する。本発明はさらに、廃棄物質を有用物質に転換する多段方法を実施するための装置と、この方法で発生する少なくとも1種の油生成物とを含む。この有用生成物については、方法の異なる時点で迂回される物質から得るまたは誘導することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
関連出願の相互参照
本件特許出願は、2005年9月28日に出願された米国仮特許出願第60/721,836号明細書、2005年10月17日に出願された米国仮特許出願第60/727,491号明細書、2006年2月28日に出願された米国仮特許出願第60/778,034号明細書、2006年6月9日に出願された米国仮特許出願第60/812,275号明細書、2006年8月25日に出願された米国仮特許出願第60/840,207号明細書の優先権の利益を主張するものであり、いずれもその内容全体を本願明細書に援用する。
【技術分野】
【0002】
発明の分野
本発明は、広義には、廃棄物質または低価値物質を処理して有用生成物を生成することに関する。特に、本発明は、炭素を主成分とする化合物を含有する、工業用、農業用ならびに他の廃棄物または低価値物質を、燃料油、肥料および有機スペシャルティケミカルなどの商業的に有用な生成物に転換するための方法および装置に関する。また、本発明は、無機廃棄物の流れが原因となる環境汚染の危険性を低減するものでもある。
【背景技術】
【0003】
背景
人間社会が生み出す廃棄物質の多くが最終的には各々に本質的な価値のある少数の単純な有機物質に分解可能であることは、かねてから知られている。このような変換を、エネルギー効率がよく且つ十分に大きな規模で実現できることは、社会にとって非常に大きな利点となろう。
【0004】
家庭用や商業用の利用分野において用いられる、生体構成物質の大半ならびに合成有機物質の大半は、炭素を主成分とするさまざまな組成のポリマーを含有している。適切な条件下であれば、このような物質(木材、炭、プラスチック、タイヤ、動物の糞尿など)のほとんどが、ガス生成物と油と炭素との混合物に分解される。農業用廃棄物質などの物質にも、鉱物性の生成物に分解される無機物質を含有するものがある。これらの生成物のほぼすべてが、有機物であるか無機物であるかを問わず、有益で且つしばしば利益が上がる多数の利用分野で、新たな活用の場を見いだすことができる。
【0005】
他に何ら役に立たない廃棄物から有用物質を作り出すという方向性自体に訴求力があるばかりでなく、急増する人間集団が21世紀における大きな課題に対処していく上でも、廃棄物質の再利用は基本的に重要である。人類が直面している2つの主な課題は、限りある物質供給とエネルギー供給に対処することと、地球温暖化による環境に対する脅威の拡大の抑制に対処することである。特に、昨今ひろく認められるようになっている1つの考え方として、地下に存在する油や天然ガス、石炭鉱脈から新たな炭素源を導入するのではなく、炭素を主成分とする物質を生物圏内から再利用することで、地球温暖化を軽減できるのではないかというものがある。
【0006】
しかしながら、今現在、主として有機物質を含む廃棄物質を大量に排出する産業では、その廃棄物の廃棄および保管の点ならびに、これを最大限に有効な使い道に供する点で多大なる課題に直面している。
【0007】
適例の1つに、世界中の食品加工業界で毎年数十億ポンドもの有機的に豊かな廃棄物が発生していることがある。これらの廃棄物は、動物と植物両方の製品加工に付随するものであり、七面鳥、魚、鶏、豚、牛の加工廃棄物および畜産廃棄物を含む。食品加工業界は成長を続けており、そこに従事する者らは自らの廃棄物質について何らかの生産性のあることをしなければという、経済面および環境面での大きな重圧に直面している。このような廃棄物質は、多数の重大な問題を引き起こす。食品廃棄物の埋め立て、農地還元(land apply)、消化により、他には何ら利点のない二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガスが生成されることが、このような問題の1つである。理想的には、悪臭を放つ物質や不快な汚染物質を排出することなく自らの廃棄物を取り扱う効率的かつ経済的な方法を食品業界に取り入れなければならない。
【0008】
ごく最近では、使用できない副生成物の倉庫保管コストが、多くの分野でかなり膨らんでいる。農業用家畜に給餌できる廃棄物のタイプがますます規制されてきている。たとえば、欧州のBSE/CJD騒ぎを受けて、適切な用途が決まらないままに多くの廃棄物質が単に倉庫保管されるだけになっている。明らかに、このような物質を清潔に加工および利用するための許容できる手段を見つけることが急務である。好ましくは、食品加工廃棄物を有用な高価値製品に転換する方法を見つける必要がある。
【0009】
代わりとなる処理を求める別の運動に、廃水排出規制の施行と下水に対する追加課金の拡大との併用がある。食品加工業界は、自らの廃水や固体(湿った)廃棄物の前処理または完全な処理をするためのコスト効率のよい技術を見つけなければならない。歴史的に、地方自治体内や地方自治体の近隣にある食品加工施設は、廃水の処理と廃棄を地元の公有処理場(POTW)に頼っている。だが、施策が厳しくなった結果、次第にこの選択肢も利用できなくなってきており、廃水排出の許可条件を満たさねばという重圧が大きくなってきている。また、新設かつ改良されたPOTWの建設に対する連邦補助金の減少も、この選択肢があまり訴求力のないものであることを意味する。よって、食品加工業界は、非可食生成物を廃棄するための従来よりも効率的な方法を考案せねばという、ますます大きな重圧を感じるようになっている。
【0010】
食品加工業者および食品の消費者の別なく、もう1つの脅威にダイオキシンなどの難分解性化学物質の生物蓄積ならびに狂牛病(BSE)などの生命を脅かす疾患が蔓延する危険性がある。この脅威は、食品加工残渣を農場の動物の食餌とすることで大幅に深刻化する。食品加工業者らは、このサイクルから抜け出すための経済的な解決策を必要としている。
【0011】
工業廃棄物、すなわち、破砕残渣の処理にも、別の取り組むべき課題がある。耐用年数を超えた自動車、家庭用品、業務用品のほとんどの構成要素は、再利用、再使用または回収が可能なものであるのだが、大部分が破砕処理されたまま残っており、埋め立てられている。破砕残渣の廃棄は、これらにカドミウム、鉛、水銀、その他の重金属などの有毒物質が含まれるがゆえになおさら困難になる。埋め立て用として利用できる空間には限りがあり、危険な廃棄物の廃棄にかかるコストもかさんでいるため、別の解決策が必要である。自動車産業やリサイクル産業は目下、コスト効率およびエネルギー効率のよい方法で破砕残渣を利用する方法を考案せねばという重圧下にある。
【0012】
さらに、都市および地方の下水道管轄機関が、有機生化学的酸素要求量(BOD)、化学的酸素要求量(COD)、さらには下水道に固体を流す量を減らすよう業界に求めている。一般に、懸濁固体やアンモニア、タンパク質化合物の濃度の高い高強度食品加工廃水はBOD濃度が高いため、食品加工業界にはさらに厳しい視線が注がれている。食品加工施設では、廃水と固体廃棄物とを効率よく扱うためのコスト効率的で特定用途向けの処理技術を必要としている。
【0013】
他の産業でも、同様の問題がさまざまな形で増加し、拡大され、増大している。たとえば、動物の糞尿を熱により脂肪とタンパク質とに転換する工場があるがゆえに悪臭のある空気放出物が生成されることも、こうした問題の1つである。もう1つが、病原体を高い濃度で含有する都市のバイオソリッドの農地還元(land application)である。
【0014】
使用済みの廃棄タイヤ、すなわち、トラックや乗用車のタイヤを処理し、燃料、石油、炭素、燃料ガス、タイヤおよび他のゴム製品製造用のフィードストックといった有用生成物に変えるためのさまざまなアプローチが開発されている。一般に、これらのスキームではタイヤを加熱して溶剤に溶解させる必要がある。スキームによっては、タイヤゴムの脱硫、すなわち、成分であるポリマーをその長さ方向に沿って結合している硫黄結合を切断することを試みているものもある。また、ゴム物質の解重合を試みているものもある。解重合では、長鎖ポリマーを切断し、これよりも流動性が高く有用度も高い、燃料油などの小さなサブユニットの組成物にする。また、スキームによっては、臨界点(約3,200psiおよび約370℃)付近またはこれを超える条件下で水を使用する必要があるが、この臨界点で水はタイヤフィードストックに対する効果的な溶剤かつ反応物質となる。しかしながら、このようなスキームは、超臨界条件を達成するのに必要なエネルギー量がゆえにエネルギー効率の悪いものとなる。また、超臨界条件での処理には高価な超合金を用いる設備が必要になるため、コスト効率的ではない。
【0015】
タイヤ物質を溶解して重油または脱硫ゴム製品を製造するための多数の有機物質が検討されてきている。中程度の条件(<200psi)で稼働する既存のスキームでは、通常、重汚染物質が生成されるのに対し、軽めの溶剤を用いるスキームではこれよりは良い製品が得られるが、さらに高価な溶剤が必要になるか作動圧力(>2,000psi)を高くする必要があり、あるいはその両方ということもある。また、タイヤ物質の溶解に溶剤を用いるスキームの大半は、溶剤の回収と再使用を行うことができる場合ですら、溶剤の一部が方法の途中で失われる上に、溶剤を作るのに要するコストもかさみ、非経済的である。
【0016】
下水処理プラントでは、都市下水汚泥処理に好気性および嫌気性のダイジェスターが用いられている。ただし、その使用には多くの問題がある。その作用の背景にある基本原理は、生物学的に豊かな物質を、生体物質を消化する細菌の入った大きな保持容器に送ることにある。一般に、溶解した固体が好気性ダイジェスターに、懸濁固体は嫌気性ダイジェスターに送られる。栄養のある供給物質が枯渇すると、微生物は自活できなくなり、死んでしまう。消化の最後に得られる生成物は死んだ細菌を含む汚泥となり、これを何らかの方法で廃棄しなければならない。こうして得られる物質に関する問題の1つに、そこには依然として病原体が含まれるということがある。方法全般についての問題には、消化容器内での保持時間が17日間と長くなり得るため、稼働条件を維持するのが難しい点がある。たとえば、通常は、比較的大きな容器(一般に、直径20〜30フィート)を85°Fよりも高い温度に維持し、場合によっては122°Fよりも高い温度に維持している。
【0017】
各種産業界、特に食品加工業界で現在利用できる廃棄技術はいずれも制約や短所が大きく、これが別の方法を探し求める動機となっている。そのことは、既存のPOTWを使用することのみならず技術についても当てはまる。特に、地上処分(埋め立て、堆肥化、農地還元)、生物処理、さらには焼却/燃焼および熱分解/ガス化などの伝統的な熱酸化処理といった4通りのアプローチそれぞれに短所がある。
【0018】
地上処分の短所としては、運搬または輸送のコストが高く、地下水への浸出による汚染の危険性が高く、該当地域の住民を高濃度の有害汚染物質(農地還元の場合は病原体など)に曝露してしまうことがある。埋め立てでは、温室効果ガスの生成などの大気汚染問題を生みかねないガスが発生する。
【0019】
廃棄物の生物処理にも欠点がある。この方法は制御が難しく、性能の確認も同様に難しい。方法がいかにうまく機能するかは、好気性細菌を必要とする土壌に適切な空気流、すなわち、酸素化手段が供給されるか否かに左右されるところが大きい。また、特定の化合物を消費する目的で開発されたであろう細菌が、土壌中に入ると、別の酵素系を活性化して最も容易に入手可能な化合物が消費されてしまう場合もある。
【0020】
年数を経た焼却ユニットまたは燃焼ユニットの短所には、次第に高くなる大気汚染物質放出基準を満たすための設備または要素を追加しなければならない点がある。また、焼却に対する地域住民の関心が高いため、焼却炉では他の技術に比べて空気中への排出許可を得るのに時間を要することもある。さらに、排出時における廃棄物処理では大量のガスを処理することになるため、極めて大型のプラント設備が必要になる。また、フィードストックは熱量値も低い。焼却炉によっては、固体燃料または固体の廃棄物では炉内で酸化しすぎてしまうという理由から、これらの物質には対応していないこともある。反対に、フィードストックの水分含有量が高いことも問題になる。なぜなら、焼却または燃焼時に水分を蒸発させて取り除くことになるのだが、この方法で水1ポンドを蒸発させるのに約1,000Btuの熱量が必要になるためである。これは、システムにとっては莫大な熱/エネルギー損失である。
【0021】
利用されている手法の最後のカテゴリーである熱分解/ガス化は、上述した他の手法とは違って廃棄物を油や炭素などの利用可能な物質に転換しようとしている点で訴求力がある。廃棄物質(ematerial)を分解する方法を実施する上での主な懸案事項に、分解に要するエネルギー量を最小限に抑えつつ、得られる生成物の組成を制御する手段を見つけることがある。過去に採用されていた熱分解およびガス化法は、通常、一段方法で廃棄物質の分解を目指すものであったが、一段では最終生成物の純度および組成に対する制御が適切ではないことが明らかになっている。
【0022】
有機物質を分解して、ガス、油、タール、炭素質の物質にする目的にはパイロライザーが用いられている。パイロライザーを用いると、有機物質を約400〜500℃の高温まで加熱することができるが、エネルギー効率が悪く、得られる物質の組成をほとんど制御できない。特に、廃棄物質(特に農業用途の供給源に由来するもの)の大半が最大で50%の水分を含有する。分解を起こすには、従来技術のパイロライザーでは極めてエネルギー要求量が大きな方法で水分を沸騰させて取り除くことになろう。また、熱分解チャンバは、一般に、スループットを最大にするために大きく作られている。しかしながら、大きなチャンバを用いると、チャンバ全体に著しい温度勾配が発生するという不利な副作用が生じ、結果として廃棄物質の加熱が不均一になり、品質が悪かったり不純な最終生成物となってしまう。
【0023】
廃棄物質の部分燃焼にはガス化装置が用いられている。基本的には、通常は、空気、酸素またはスチームであるガスを、可燃性物質をすべて酸化するには十分な量で廃棄物質の上に通す。よって、CO、HO、CO、H、軽質炭化水素などの何種類かの燃焼生成物を生成し、発生した熱によって残りの廃棄物質を油やガス、炭素質の物質に転換する。生成されるガスには投入ガスの一部が含まれることになるが、生成されるガスは保存しておけないほど多いため、すぐに使用するか使用可能な場所までパイプで供給しなければならない。また、ガス化装置にも、廃棄物質の水分を蒸発させるのに消費するエネルギー量が大きいなどのパイロライザーと同様の短所がいくつかある。
【0024】
また、熱分解およびガス化法の生成物は、許容できないほど高濃度の不純物を含有しやすい。特に、廃棄物質中の硫黄含有物質や塩素含有物質がゆえに、得られる最終生成物でそれぞれメルカプタンなどの硫黄含有化合物や有機塩素化合物が生じる。一般に、炭化水素油であれば濃度1〜2ppmの塩素化炭化水素が混じっていても許されるが、ガス化と熱分解法のどちらでも信頼性のある形でこのような低濃度を保証することはできない。
【0025】
さらに、熱分解およびガス化法は効率が悪く、一般に、30%程度である。理由の1つに、その生成物は熱量の点で最適ではないことがある。もう1つの理由として、一段方法では、エネルギーを効率的に利用して方法で再利用可能なように物質を生成することが容易にはできない点があげられる。たとえば、生成された固体生成物で熱エネルギーを捕捉し、これをリダイレクトして反応容器の加熱を手伝うのは困難である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
上記にて詳細に説明したように、熱分解/ガス化法には、いくつかの点で弱みがある。油生成物には、通常、タールおよびアスファルトなどの望ましくない高粘度成分が多く含まれる。熱分解方法とガス化方法はいずれも伝熱性が悪く、結果として均一な加熱がなされない。よって、最終生成物は数のばらつきが大きく、経済的に回収できる十分な量または品質のものはわずかしかない。湿ったフィードストックでは水分を飛ばすのに相当なエネルギーが必要であり、水がガスとしてスタックに残るためシステムにとっての大きなエネルギー損失となる。要するに、熱分解/ガス化は全体としての操業コストが高く、資本集約的であり、価値がまったくないか限られる副生成物の生成を伴う。
【0027】
熱分解およびガス化法には多くの変形例があるが、そのいずれも概して似たような短所があり、最近の進歩の1つといえば処理効率を大きく高められるようになったことである。たとえば、米国特許第5,269,947号明細書、同第5,360,553号明細書、同第5,543,061号明細書には、従来の方法における一段方法を二段方法に代えたシステムが開示されている。加水分解段(「ウェット」段と呼ばれることも多い)では、廃棄物質に200〜250℃程度の熱および約20〜120気圧を付す。好ましい実施形態では、廃棄物質に約50気圧の圧力を付す。このような条件下にあっては、廃棄物質の水分によって脂肪やタンパク質など廃棄物質中に含まれる場合のあるバイオポリマーの多くが加水分解し、油の混合物が生成される。第2段(「ドライ」段と称されることも多い)では、混合物を低圧までフラッシュし、その間に水分のほぼ半分をスチームとして除去してしまう。この混合物を加熱して残った水分をさらに揮発させ、一方で混合物は最終的に分解されてガス生成物や、油、炭素になる。
【0028】
これらの二段による方法で改善された主な点といえば、それまでのどの一段方法よりも高品質かつ有用度の高い油混合物を生成できるようになったことであった。しかしながら、このような方法の生成物にも依然として、硫黄含有化合物や塩素含有化合物物質による汚染の問題があり、水分のかなりの部分を揮発させる必要性も依然としてエネルギー面での実質的な不利益を伴う。よって、従来の二段による方法を商業的に実施可能なものとするのは困難であった。
【0029】
したがって、廃棄物および低価値の生成物を処理し、信頼できる純度および組成の有用物質を許容可能な資本と操業コストで生成する方法には需要がある。
【課題を解決するための手段】
【0030】
発明の概要
本発明は、広義には、廃棄物および低価値物質の処理に関する。特に、本発明は、廃棄物および低価値物質を、許容可能なコストかつ高エネルギー効率で、悪臭のする放出物を生成することなく信頼できる純度および組成の有用生成物に転換する方法に関する。
【0031】
特に、本発明の方法は、これ以外には商業的な価値または用途がほとんどないさまざまなフィードストックを、ガス、油、スペシャルティケミカル(脂肪酸など)、肥料および炭素固体などの有用物質に転換する方法を含む。本発明は、さらに、廃棄物質を有用物質とこの方法で発生する少なくとも1種の油生成物とに転換する多段方法を実施するための装置を含む。本発明の装置および方法は、有機廃棄物および無機廃棄物、家禽類(七面鳥、鶏、ダチョウなど)、牛、豚、魚の臓物、さらには破砕残渣、家畜肥料、グリース、植物油、都市下水汚泥ならびにタイヤおよびプラスチックなどの他の廃棄物質の処理に特に適用可能である。
【0032】
概して、本発明による方法は、適切に調製されたフィードストックに熱および圧力を加え、結果として得られる原料のさまざまな成分を分離した後、これらの成分のうちの1種以上に熱および圧力をさらに印加する。本発明の方法の異なる時点で生成されるさまざまな物質を、再循環させ、本発明の方法内で他の役目を果たすよう使用することができる。
【0033】
本発明は、フィードストックを少なくとも1種の有用物質に転換するための装置であって、フィードストックからフィードストックスラリーを生成するためのスラリー化装置を含む調製ユニットと、フィードストック調製ユニットと連通し、フィードストック調製ユニットからフィードストックスラリーを受け入れるための容器と、スラリーを加圧および加熱して加熱済みスラリーを生成するよう構成されたポンプおよび熱交換器などの追加設備と、容器と連通して加熱済みスラリーを受け入れるための加水分解段の反応器であって、加熱済みスラリーに第1の上昇温度および第1の上昇圧力を印加して、少なくとも1種の反応後の固体生成物と、少なくとも1種の反応後の液体生成物と、水とを含む反応後の原料を生成する加水分解段の反応器と、加水分解段の反応器と連通し、少なくとも1種の固体生成物と、少なくとも1種の液体生成物と、水とを受け入れる少なくとも1つの分離ユニットであって、少なくとも1種の反応後の固体生成物、水、少なくとも1種の反応後の液体生成物を分離するユニットと、分離ユニットと連通し、少なくとも1種の反応後の液体生成物を受け入れる油最終加工段の反応器であって、少なくとも1種の反応後の液体生成物に第2の上昇温度を印加し、任意に、第2の上昇圧力をも印加することで、少なくとも1種の反応後の液体生成物を少なくとも1種の有用物質に転換する油最終加工段の反応器と、を含む装置をさらに含む。
【0034】
本発明は、さらに、炭素含有フィードストックからスラリーを調製し、スラリーを加水分解段で反応させて、少なくとも1種の反応後の固体生成物と、少なくとも1種の反応後の液体生成物と、水とを含む反応後の原料を生成し、前記少なくとも1種の反応後の固体生成物、前記水、前記少なくとも1種の反応後の液体生成物を、前記反応後の原料から分離し、前記少なくとも1種の反応後の液体生成物を第2の反応で燃料油に転換することを含む方法で製造される燃料油を含む。
【0035】
また、本発明は、有機液を炭化水素と炭素固体との混合物に転換するための装置であって、有機液を加熱することで、液体と気化油との混合物を生成するための加熱器と、液体と気化油との混合物を、炭素固体と、炭化水素とガスとの混合物とに転換するための反応器と、炭素固体を受け入れるための第1の冷却器と、炭化水素とガスとの混合物を受け入れるための第2の冷却器と、を含む、装置を提供するものである。
【0036】
本発明は、さらに、流入口と流出口とを有する加熱済み容器と、流入口と流出口とを有する第1の加熱済みオーガであって、流入口および流出口が、第1のオーガ内で高めの圧力を印加できるように構成され、寸法決定され、第1のオーガ流入口が容器の流出口と連通した、第1の加熱済みオーガと、第1のオーガ流出口と連通し、液体および気体用の第1の流出口と固体用の第2の流出口とを有する流体−固体分離器と、固体と連通した第2のオーガであって、固体の冷却状態を提供する第2のオーガと、を含む、装置を含む。
【0037】
本発明はさらに、有機液を炭化水素と炭素固体との混合物に転換するための方法であって、有機液を加熱することで、液体と気化油との混合物を生成し、液体と気化油との混合物を、炭素固体と、炭化水素とガスとの混合物とに転換し、炭化水素とガスとの混合物から炭素固体を分離することを含む、方法を含む。
【0038】
また、本発明は、フィードストックからスラリーを調製し、スラリーに解重合方法を施して少なくとも1種の無機物質と液体混合物とを含む組成物を形成し、前記少なくとも1種の無機物質を液体混合物から分離し、前記液体混合物から燃料を誘導することを含む、フィードストックから燃料を製造するための方法をも提供するものである。
【0039】
本発明は、さらに、フィードストックからスラリーを調製し、前記フィードストックを少なくとも1種の無機物質と液体混合物とを含む組成物に解重合するのに十分な温度でスラリーを加熱し、前記少なくとも1種の無機物質を液体混合物から分離し、前記液体混合物から肥料を誘導することを含む、フィードストックから肥料を製造するための方法を提供するものである。
【0040】
また、本発明は、さらに、フィードストックからスラリーを調製し、前記フィードストックを少なくとも1種の無機物質と液体混合物とを含む組成物に解重合するのに十分な温度でスラリーを加熱し、前記少なくとも1種の無機物質を液体混合物から分離し、前記液体混合物から食品を誘導することを含む、フィードストックから食品を製造するための方法を提供するものである。
【0041】
本発明は、破砕残渣を溶剤に溶解させ、破砕残渣からスラリーを調製し、このスラリーを加水分解段で水と反応させて、少なくとも1種の反応後の固体と、生成物と、少なくとも1種の反応後の液体生成物とを含む反応後の原料を生成し、前記少なくとも1種の反応後の固体生成物、前記水、前記少なくとも1種の反応後の液体生成物を、前記反応後の原料から分離し、前記少なくとも1種の反応後の液体生成物を第2の反応で油に転換することを含む、破砕残渣を油に転換する方法をも提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
詳細な説明
本発明の方法は、通常の家事または商業的なオペレーションのいずれかで社会全体において生成された低価値物質または廃棄物質から1種以上の有用物質を得ることに関するものである。一般に、本発明の方法は、相当な比率で有機物質を含有する廃棄物質または他の低価値生成物(たとえばグリース)に適用される。しかしながら、本発明を、通常であれば低価値とはみなされない他の生成物を、さらに価値の高い生成物に転換する目的で適用しても構わない。
【0043】
有機物質とは、当業者らが一般に理解しているものである。特に、本発明で用いるためには、有機物質とは、炭素を、水素、酸素、窒素、硫黄、亜リン酸、さらにはハロゲン元素、特にフッ素、塩素、臭素およびヨウ素などの1種以上の他の要素との組み合わせで構成要素に含む物質である。本発明の目的で、有機物質には、ヒ素、セレンおよびケイ素などの元素との組み合わせで炭素を含有する化合物ならびに、有機分子の塩および有機分子と金属(マグネシウム、水銀、鉄、亜鉛、クロム、銅、鉛、アルミニウム、スズなどであるがこれに限定されるものではない)との錯体も含まれる。本発明で用いられる多くの有機物質は生物学的起源由来であり、タンパク質、脂質、スターチ、核酸、炭化水素、セルロース、リグニンおよびキチンならびに全細胞を含む。本発明で用いる他の有機物質には、プラスチックや他の石油製品などの人工または合成由来のものがある。
【0044】
本発明の方法では、フィードストックの長分子鎖を切断することができるレベルで熱と圧力とをフィードストックに印加する。よって、フィードストック物質は分子レベルで1種以上の構成物質に分解される。この方法では、フィードストックを、コストまたは低価値から利益に変換するか、あるいは相当なコスト削減または最初より高い価値に変換する。重要なのは、この方法ではフィードストック中に含まれる場合がある病原体をも破壊できることである。
【0045】
本発明の基本方法は、七面鳥臓物、フライヤー油、トウモロコシの茎、籾殻、廃棄スクラップ、キャノーラ油、ダイズ油、パーム油、ココナツ油、菜種油、綿実油、コーン油またはオリーブ油などの最終圧搾食用油および他の油、食品加工廃棄物およびシーフード業界の廃棄物などの食品の製造流通に伴う副生成物;セルロースおよびリグニン副生成物、紙−パルプ廃液など、紙および他の木材業界での製造の副生成物;葉や刈り取った芝などの庭ごみ;タイヤ;破砕残渣;プラスチックボトル;港で劣化した堆積物;古いコンピュータなどの使用済みプラスチックおよび電子機器;固体の都市ごみ;油精製残渣;産業汚泥;バガス;海草;製粉廃棄物;黒液;石炭精製廃棄物;タールサンド;シェール油;掘削汚水;綿くず;家畜肥料などの農業用加工廃棄物;感染性の医療廃棄物;生物病原体;さらには生物兵器の製造に利用できる炭疽菌の胞子などの物質に至るまで、潜在的にどのような廃棄物または低価値生成物でも取り扱えるように設計されている。上記の物質一覧は包括的な一覧ではないことを理解されたい。上記一覧において、バガスはサトウキビ加工処理の副生成物であり、黒液は、木材チップを溶解し、リグニンを遊離させ、繊維を自由にしてリグニンとヘミセルロース溶液を得る際に出る化学的な木材−パルプ化の副生成物である。
【0046】
本発明で用いる廃棄物質は、主に、一般には他にすぐ使用することもないおよび/または通常は廃棄されてしまう、他の産業方法、化学調製および家庭内または都市での使用の副生成物または最終生成物である。低価値生成物も同様に、他の産業方法、化学調製および家庭内または都市での使用の副生成物または最終生成物であり得るが、一般に再販価値が極めて低いおよび/または役立つものに転換するのにさらに処理が必要な物質である。
【0047】
本発明の方法で用いる場合、廃棄物および低価値生成物とは、通常、フィードストックまたは未処理原料(raw feed)を指す。また、本発明の方法で用いる未処理原料には、出所がさまざまで異なるタイプの廃棄物および/または低価値生成物を含み得ることを理解されたい。たとえば、都合がよいのであれば食品加工廃棄物を農業用加工廃棄物と一緒にして同時処理することもできよう。
【0048】
本発明で用いるさらに他の例である未処理原料物質として、都市下水汚泥、都市の再利用場で得ることができるもののような混合プラスチック(ポリ塩化ビニル(「PVC」)を含む)、タイヤがあげられる。
【0049】
ポリ塩化ビニル(PVC)は、ビニル製のサイディング材やプラスチック製の配管用パイプに含まれる。PVCは塩素を約55重量%含有するため、分解時に有害な塩素含有化合物を生じやすい。たとえば、PVCを燃焼させると、周知の化合物の中では最も毒性が高いものの1つであるダイオキシンが発生する。本発明の方法の早い段階で水を用いることの利点の1つに、水中の水素イオンがPVCの塩素イオンと結合し、洗浄剤および溶剤用に有用な比較的無害で産業的に価値のある化学物質である塩酸などの可溶化生成物が生成されることがある。
【0050】
タイヤは、一般に、自動車、バス、トラック、航空機、その他の大量輸送機ならびに、軍用車両や他の商業車両などの車両から得られる。本発明の方法をタイヤに適用する場合、生成される油の一部を流入口に再循環させ、流入してくるフィードストックへのタイヤの溶解を助けるようにすると好ましい。
【0051】
破砕残渣(SR)とは、破砕または分解した車両、白物家電、消費財などから鉄類を回収した後に残る物質のことである。本発明の恩恵がなければ、このような物質は、一般に、埋め立てに回される。「白物家電」の例としては、洗濯機、ドライヤー、冷蔵庫、食器洗い機、ストーブ、エアコン、給湯器などがあり、本願明細書で使用する場合、この用語には金属部分を回収可能な家電品も包含される。試料解析で判定した2つのSR試料の成分および元素組成物を以下にあげておく。
【0052】
【表1】

【0053】
【表2】

【0054】
上記のデータは、単に特定のSR試料に含まれる場合がある物質のタイプを示すためにあげたものであり、本発明の用途を限定するものとは解釈されない。由来に応じて、破砕残渣物質の組成が試料ごとに異なる可能性もある。たとえば、SRは、図14に示すような異なるサイズのプラスチック、ゴム、ガラス、布帛、塗料、木材、発泡体、微粉、エラストマー、残留金属などの断片を含み得る。たとえば、古いテレビや冷蔵庫のSRには、塩素化化合物の危険な混合物であるポリ塩化ビフェニル(PCB)または重金属が含まれていることが多い。SRに含まれている可能性がある他の有毒成分としては、難燃剤として一般的に用いられ、化学的にPCBに近いポリ臭素化ジフェニルエーテル(PBDE)ならびに、自動車製造における重要な成分であるPVCに含まれるフタル酸エステルがあげられる。
【0055】
本発明の方法では、物質を純粋なストリームに事前に振り分ける必要なく混合低価値廃棄物質のフィードストックを取り扱い、処理することができる。また、本発明の方法では、PVCの酸素−塩素結合を加水分解し、金属およびハロゲン化物を水中に移すことができる。PVCの加水分解と同様に、水中の水素イオンがBrやClなどのハロゲン化物イオンと結合し、比較的無害で役に立つ化学物質が生成される。処理をしなければSRから浸出するであろうPCBやPBDEなどの有毒化学物質を方法中に破壊し、このような汚染物質や他の破片を含まない油を生成する。SRの接触分解油生成物の2つのバッチの特長を、以下の表にあげておく。本発明のもう1つの利点に、異なるサイズと組成の物質を取り扱い、効果的に処理できることがある。この方法の解重合ステップによって粒度測定/還元の必要性がなくなるが、その機序については以下の開示内容から明らかになろう。
【0056】
本発明の方法をSRに適用する場合、生成される油の一部を流入口に再循環させ、流入してくるフィードストックへのSRの溶解を助けるようにすると好ましい。この方法をSRに適用した場合の概要を図10に示す。未処理フィードストックに、調製ステップ110、解重合または「溶融ステップ」を施し、続いて機械的選別を行うことで、混合物から固体を除去する。解重合によって、固体SR中の有機物が液体になるため、金属の物体と他の固体有機物とを分離できるほか、以後の加水分解ステップでの有機物と水との接触性が改善される。本発明の好ましい実施形態では、解重合は、約690°Fから約785°Fの範囲、より好ましくは約700°Fから約775°Fの範囲、最も好ましくは約720°Fから約750°Fの範囲の温度で行われる。
【0057】
続いて、得られた混合物に、本願明細書で説明する加水分解段120と等価な加水分解ステップを施す。混合物中の塩素化および/または臭素化有機物を加水分解することで、炭素−ハロゲン化物結合が切断されてハロゲン化物が水相に移動するため、PCBなどの化合物が効果的に破壊される。また、加水分解によって金属イオンも水相に移動し、得られる油は基本的に汚染のないものとなる。本発明の好ましい実施形態では、加水分解は、約430°Fから約510°Fの範囲、より好ましくは約440°Fから約500°Fの範囲、最も好ましくは約450°Fから約480°Fの範囲の温度で行われる。
【0058】
次に、反応後の生成された原料に対し、熱および機械的選別ステップを行う。ディレードコーキングに似た方法で、加水分解油を約500℃まで加熱する。油への伝熱は急速かつ等温的であるため、「乾燥」有機油だけが最終温度まで加熱される。そこから得られた燃料油または有機液500を油最終加工段に送って仕上げる。施設内または精製所のいずれかで有機液をコーキングすれば、燃料−ガス146、炭素固体142または油144を生成することが可能である。あるいは、施設内で鉱物を処理して#4ディーゼル油と同様の構成の炭化水素油を生成することが可能である。
【0059】
方法をSRに適用した場合の接触分解油生成物のバッチ2種類の特長を以下にあげておく。
【0060】
【表3】

【0061】
本発明の方法では、向流熱交換によって高エネルギー効率を達成する。エネルギーの大半を液体の水を加熱するのに用いる。加水分解でフラッシュされる水からスチームが発生するので、これを分離して迂回させ、流入してくる原料を予熱する。図24および図25の概略図に示すように、加水分解ステップの間にフラッシュされる水をこうして再利用する。未処理原料の化学組成が変われば、エネルギー効率も実施するごとに変わる可能性がある。しかしながら、複数回の実施時に行った試験の結果から方法のエネルギー効率を求めたところ、以下の表に詳細を示すとおり、約91%であった。このとき、実施には温度900°Fを選択した。これは、方法に適した温度よりもずっと高く、混合物を極めて高い温度まで加熱したときですら高エネルギー効率を達成可能であることが分かるからである。
【0062】
【表4】

【0063】
また、市販の部品を使って本発明の装置を構成することも可能である。最初の生物質の取り扱いについては、ライブボトムビン(live bottom bin)、従来のオーガ付き(augured)コンベアおよび/またはバケットエレベータを用いて周囲条件で行うことができる。必要があれば、微粉スカルピング用の振動篩を用いて浮いた汚れや破片などを除去してもよい。強力な解重合ステップを用いれば、未処理原料の粒度測定をさらに行う必要性がなくなる。以下の開示から明らかなように、現行の商業用途で一般に用いられている温度および圧力(750°F、150psigなど)は、未処理原料の解重合には十分すぎるものである。こうした現行の方法では比較的低い圧力が用いられているため、解重合反応器を設計するには、バッチまたはジャケット付き反応器に通すなどの既存の単純な技術を使用すればよい。また、振動篩、一軸および二軸プレス、既製の遠心分離機などの容易に入手可能な装置を用いて解重合分離を行うことも可能である。同様に、加水分解後の処理についても、蒸気再圧縮/蒸留、焼成、流動床システム、脱塩および遠心分離ユニットなどの市販の装置および方法を用いて行うことが可能である。
【0064】
本発明の実施形態によって処理される廃棄物および低価値物質は、通常、高品質の油;燃焼による大気汚染が少ないガス;鉱物を含む精製固体ならびに、燃料、肥料または製造用原材料として利用可能な炭素固体という3タイプの有用物質に転換されるが、いずれも価値があり、もともとが環境に害のないものである。また、本発明の方法では、場合によっては「フィッシュソリュブル」に似た濃縮物への副流を含むさまざまな副流が生成される。一般に、有用物質とは、フィードストックとして供給される廃棄物や低下値物質または他の物質よりも経済的な価値が高い物質であるとされる。このような有用物質は、その起源となったフィードストックよりもたとえば熱量が大きいこともあれば、応用範囲が広いこともある。
【0065】
本発明の方法は、図1および図2に示されるように多数の段を含む。図1は、概要で、本発明の方法の実施形態の主な特徴を示している。図2は、本発明による方法を実施するための一例としての装置200を示している。
【0066】
図1に示す未処理原料100は、潜在的にはどのような廃棄物質または低価値有機物および/または無機物流であっても構わない。好ましくは、未処理原料は、相当な量の炭素含有物質を含む。
【0067】
未処理原料100を調製段110に送る。調製段の一態様は、パルプ化および他の粉砕技術を用いて、未処理原料の大きさをポンピングに適した大きさまで小さくすることである。調製段は、1種以上のステップを含むものであればよく、物質を未処理原料に加えるかあるいは物質を未処理原料から除去し、加水分解段120を通るスラリー112を得る含むものであっても構わない。スラリー化では、未処理原料100の最初の水分含有量に応じてこれに水(または他の好適な流体)を加えなければならない場合もある。スラリーを用いると、調製段110での場合のように、湿式研磨によって摩擦やエネルギー消費量が抑えられる上、スラリーは1つの容器から別の容器にポンプで容易に移動できるため、スラリーを用いることには利点がある。好適なスラリー化装置としては、パルパー、インライングラインダ、マセレータがあげられる。調製段110でスチームとガスとの混合物121が発生する。
【0068】
動物および動物の糞尿とは、不可分の一部に骨および他の無機鉱物質がある。タンパク質、脂肪および炭化水素の形の有機物は、物理的および化学的にこの無機鉱物物質と結合するため、両者を分離しない限りは有機物を価値のある生成物にする処理が難しくなる。したがって、ステップ114では、スラリーに解重合ステップを施し、ここで、骨および他の固体質などの無機物を有機構成要素から分離する目的で、スラリーを275°Fから380°F、好ましくは275°Fから325°F、さらに好ましくは300°Fから325°Fの温度まで加熱する。無機物および有機物の組成が、使用するフィードストックの性質に応じてバッチごとに異なることは、当業者であれば分かるであろう。骨物質116は、本発明のいくつかの実施形態で用いられる無機物のタイプを例示するだけのためのものである。破砕残渣、タイヤ、プラスチックまたはゴムなどで未処理原料が構成されている場合、無機物質は骨物質を含まないことのほうが多い。
【0069】
加熱ステップ114とも呼ばれる解重合ステップは、少なくとも15分間、好ましくは45分間行われる。加熱時間は温度によって決まり、温度が高めであれば必要なのは15分程度であり、その範囲で温度が低めであれば1時間超かかることもある。このような温度まで加熱することで、スラリーの全体としての粘度が劇的に下がり、鉱物質の物理的および化学的な結合が切断されるため、フィードストック中のタンパク質様物質がアミノ酸ビルディングブロックまたはジペプチドおよびトリペプチドになる加水分解と整合する。このように粘度が低下することで、不要な鉱物質を含む骨物質116や微粉砕された骨などの付着した不溶性固体をスラリーから分離することができるようになり、後ほど加水分解段に送られる液体混合物118が得られる。
【0070】
この段で分離除去された鉱物質は、主に、粉末化された微粒子状の骨物質と、フィードストックに混入した砂、土、または他の汚染物質の鉱物を若干量とを含む。鉱物質を残りの物質から分離するには、重力分離を用いるか、液体/固体遠心分離機、篩またはフィルタなどの当業者間で周知の他の分離機を利用すればよい。このようにして分離した鉱物質を鉱物肥料として利用してもよい。分離後の鉱物質は、好ましくは有機物質を含有しないが、実際には微量が分離方法を通過してしまう。
【0071】
分離によって得られる液体混合物118は、一般に、脂肪および炭化水素を含有する油相と、タンパク質分解で得られたアミノ酸および小ペプチドが溶解した水性相とを含む。液体混合物は、さらに、分解されなかった何種類かの鉱物およびペプチドなどのいくつかの不溶物を含む。上記の点を踏まえて、液体混合物の組成は、加水分解120経路から迂回させてそのままで使用したり、食品、肥料、燃料または他の生成物として濃縮された形で使用できるようなものである。本発明のいくつかの実施形態では、濃縮液体混合物にはボイラーまたはエンジンの燃料としての用途が可能であり、あるいは、これを精油所などでさらに処理することも可能である。プラスチック廃棄物、ゴム、使用済みタイヤなどの炭化水素を主成分とするフィードストックを用いる本発明のいくつかの実施形態では、有機溶剤を未処理原料100と併用してフィードストックの有機画分を最大限にし、これによって利用可能な液体混合物の収率を高めることができる。
【0072】
当業者であれば理解できるであろうように、解重合ステップ114は、骨および鉱物質を含有する動物の糞尿を分解して他の利用可能な物質を形成する動物のレンダリングなどの他の方法にも適用できる。通常、275°Fから380°F、好ましくは275°Fから325°F、さらに好ましくは300°Fから325°Fの熱をこのようなフィードストックに加えると、今まで可能だったよりも一層効率的に有機物が骨および鉱物から分離される。このような方法は、骨および鉱物質をフィードストックの残りから分離するのを容易にし、さらに純粋な有機部分が得られると同時に利用できない鉱物質に付着して廃棄される有機物質の量が低減される。
【0073】
したがって、本発明は、不溶性の固体に結合した有機物を含有する動物の体の一部をレンダリングする方法をさらに含むものであって、動物の体の一部からスラリーを調製し、このスラリーを、275°Fから380°F、好ましくは275°Fから325°F、さらに好ましくは300°Fから325°Fまで加熱して液体混合物と不溶性の物質とを生成し、骨物質を除去することを含む。既存の動物レンダリング方法では、一般に、フィードストックを高温まで加熱することはしておらず、通常は、212°F(100℃)未満の温度まで加熱するだけである点に注意されたい。さらに、既存の動物レンダリング方法では、一般に、2つの製品バッチを生成する。すなわち、一方のバッチが肉と骨ミールで、他方のバッチが脂肪である。これとは対照的に、本発明の方法では、完全に分離され、なおかつ鉱物肥料などとして利用できる、主に骨を含有する固体物質と、それ自体が脂肪酸の生成に利用できる別の油状部分と、動物の餌として利用できる水性部分(水に溶けたアミノ酸を含有)とを含む液体部分という、異なる構成で2つのバッチを生成する。
【0074】
加水分解段120では、スラリーを熱と高めの圧力とに付すが、この際スラリーに加水分解段の反応とも呼ばれる加水分解ステップが施される。このような熱と圧力との条件を用いることで、スラリーの生体成分の細胞構造が分解され、タンパク質、脂肪、核酸および炭化水素などの構成分子が放出される。また、多くのポリマー性有機物質が、スラリー中の水で加水分解されてさらに単純な有機生成物の混合物になる。特に、脂肪は部分的に分割され、水溶性グリセロール(すなわち、3つの水酸基を含有する分子)および脂肪酸(カルボン酸基を含有)などの浮動性(floatable)有機物質が得られる。タンパク質は、一般に、さらに単純なポリペプチド、ペプチドおよび構成アミノ酸に分解される。炭化水素は、大部分はさらに単純な水溶性糖類に分解される。PETおよびPVCなどのプラスチックの酸素および塩素結合も加水分解段で切断される。加水分解段に水が存在すると、フィードストックに熱を伝達しやすくなるため特に都合がよい。
【0075】
「反応する」、「反応している」、「反応」といった表現は、本発明の実施形態との関連で用いる場合、多くの異なるタイプの化学変化を包含し得ることを理解されたい。特に、「反応」という表現は、1種以上の生成物を発生させる2種以上の種の組み合わせまたは会合から生じる化学変化を包含し得るものであり、温度、圧力または電磁放射の衝撃などの条件によって誘発されるような、単一の種の分解または変換が必要な他のタイプの分解(decomposition)または転換を包含し得るものであり、さらに、加水分解などの溶剤を必要とする変換を包含し得るものである。また、「反応」または「反応する」という表現を、ある方法または方法中のある段を説明するのに本願明細書で使用する場合、2つ以上の化学変化が同時に起こり得る点も理解されたい。よって、1つの反応で、たとえば、加水分解と分解(decomposition)が同時に起こることもあり得る。
【0076】
スチームとガス生成物との混合物126は、一般に、加水分解段120でスラリーから遊離する。加水分解段で得られる反応後の原料122は、一般に、反応後の固体生成物の混合物と反応後の液体生成物の混合物とからなる。これらのさまざまな生成物は、一般に、油相、水相、湿った鉱物相として特徴付けられる。水相および油相は、一般に、さまざまな溶解有機物質を含有する。加水分解段120で生成されたスチームとガスとの混合物126を、好ましくは凝縮器で分離し、スチームを利用して流入してくるスラリーを予熱する。
【0077】
続いて、反応後の原料122を分離段130に付し、ここでスチームとガスとのさらに別の混合物132を除去し、鉱物の混合物134または他の固体物質を選別する。好ましくは、炭素固体が入力フィードストック中に含まれていたのでなければ、この段で得られる固体物質は炭素固体を含まない。分離段130は、2通り以上の独立した分離を含むものであっても構わない。本発明のいくつかの実施形態では、固体物質に対し、焼成炉でさらに処理を施して、残留有機物を消散させて焼成することも可能である。非凝縮性の濃縮ガス、固体無機物116、水性濃縮燃料などの本願明細書で説明する方法のさまざまな時点で生成される他の物質についても同様に、焼成炉に供給してさらに処理することが可能である。本発明のいくつかの実施形態では、焼成炉は、焼成固体の生成と、さまざまな用途で用いられる熱油および/または熱蒸気の生成という2つの機能を担う。たとえば、熱蒸気を利用して、発電所または他の産業および製造場面の蒸気タービンに供給することが可能である。
【0078】
分離段130で得られた残留物質は、生成された水138(可溶物を伴う水)を含む液体生成物の混合物と有機液500とからなる。有機液500は、一般に、加水分解段で得られた反応後の液体生成物などの炭素含有種の混合物を含有する液体である。好ましくは、生成された水138を取り分け、有機液500などの液体生成物を油最終加工段140に送る。よって、有機液は、水と分離され、ほとんどの場合は反応後の固体生成物とも分離された反応後の液体生成物を含むものであると好ましい。生成された水138は、硫黄含有物質および塩素含有物質をはじめとする多数の化合物を含有し、好ましくは濃縮139のために迂回される。このような化合物については分離することが望ましく、好ましい実施形態では、濃縮によって凝縮物151(その純度は、通常、都市濃度の廃水よりも高い)および濃縮物153(多くの場合、フィッシュソリュブルに似た有機燃料または液体肥料として使用可能である)が得られる。
【0079】
有機液500の一部を任意の分離137へと迂回させ、たとえば有機液を分留することで脂肪酸またはアミノ酸などの有機スペシャルティケミカル143を形成してもよい。スペシャルティケミカルとして有用ではない画分を含む、「重液」とも呼ばれる分留済み液145である残留画分を、油最終加工段140にリダイレクトするようにしてもよい。
【0080】
フィードストックが都市下水汚泥である場合、加水分解段の反応で得られた反応後の原料122は、一般に、生成された水と、有機および無機物質の固体マトリクスと、少量の有機液とを含む。このうち都市下水汚泥からの生成された水については、肥料としての用途がある生成物を形成する目的で迂回させられる。
【0081】
「油最終加工」としても知られる油最終加工段140では、有機液500を、第2の反応を行う条件に付す。第2の反応では、単純な脱水、脂肪酸蒸留、熱分解、接触分解、汚泥除去などの従来技術において周知の1種以上の方法を必要とすることがある。また、有機液に反応後の固体生成物がいくらか含有され、これも油最終加工段に送られる可能性がある。有機液と反応後の固体生成物とを合わせて固体マトリクスと呼んでもよい。第2の反応では、有機液は、通常は、炭素固体142を含む有用物質の混合物と一般に炭化水素蒸気およびガス148として放出される炭化水素混合物へと転換される。この転換には、有機液中の1種以上の物質の分解(decomposition)が関与することもある。油最終加工段における好適な条件は、一般に、加水分解段よりも高い温度とし、かつ、加水分解段よりも低い圧力を使用する。油最終加工段には、一般に、付加水の使用が関与していない。本願明細書でさらに説明するように、油最終加工段の実施には多数の異なる装置を利用することができる。
【0082】
炭素固体142は、一般に、コークス、すなわち、燃料として利用するのに適した熱量値の高い通常は硬質の炭素質物質である。炭素固体142は、好ましくは、一般に酸素欠乏雰囲気中での炭素含有物質の焼却の結果として生じる、あったとしてもごくわずかな不燃性鉱物を含有している。炭素固体142の鉱物含有量は、好ましくは10重量%未満、より好ましくは5重量%未満、さらに一層好ましくは2重量%未満、最も好ましくは1重量%未満である。炭素固体142が鉱物を含有する場合、これらも炭素−鉱物マトリクスとして説明できる。
【0083】
炭化水素蒸気およびガス148は、生体物質が本発明の方法に対するフィードストックである場合、つねに「生体由来炭化水素」と呼ばれる。炭化水素蒸気およびガスについては、未処理フィードストックがタイヤ、ゴム、またはプラスチックを含む場合に、それぞれ「タイヤ由来」、「ゴム由来」または「プラスチック由来」などさまざまに呼称することが可能である。炭化水素蒸気およびガス148は、一般に、場合によっては非炭化水素ガスの微量不純物をいくらか伴う炭化水素ガスを含む。炭化水素ガスは、燃料−ガス146などの気体を含み、炭化水素蒸気は、#2ディーゼル油の軽量成分などの液体または油144へと容易に凝縮できるものである。当業者であれば、#2ディーゼル油が、比較的低い粘度または密度の油であることが理解できる。
【0084】
フィードストックが都市下水汚泥である場合、油最終加工段で得られる固体生成物は、一般に、固体形態で、炭化水素油の混合物と、燃料ガスと、炭素を伴う鉱物混合物とを含む。
【0085】
本発明の方法の動作パラメータを、1以上の場合において、異なるタイプの未処理原料物質に対応するよう調整してもよいことを理解されたい。たとえば、七面鳥臓物などの未処理原料である状況において、主要な成分は、動物性脂肪、タンパク質、炭水化物および鉱物である。したがって、主要成分のバランスによって本発明の動作条件のいくつかの態様を決めるようにすればよい。さらに、第1段および油最終加工段の反応器の温度範囲を、特定の生成物を生成するように制御することで、さまざまな生成物の収量から得られる経済的価値を最大限にすることが可能である。
【0086】
本発明による方法を実施するための装置200を図2に示す。本発明の教示内容に基づいて、装置200のさまざまな構成要素の組み立ては、方法エンジニアリングまたはケミカルエンジニアリングの当業者の技能範囲内に入るものであろう。したがって、当業者にとってはなじみのあるこうした技術的詳細については、本明細書では割愛する。さらに、本願明細書にて説明するように、当業者であれば、図2に示す個々の部品をさまざまな装置部品に置き換えて本発明の方法を実施することができよう。
【0087】
フィードストックの調製およびスラリー化は、フィードストック調製装置210内で実施可能である。原料調製と原料スラリー化の後、スラリーを原料貯蔵タンクと呼ばれる低圧排出式容器220へと送る。好ましくは、原料貯蔵タンク内またはその前で原料を加熱して、加水分解段の反応器に入る前に任意に加圧される、加熱済みスラリーを生成する。このような加熱および加圧は、一般に、スラリーを保持するための容器と、スラリーの圧力を高めるためのポンプと、スラリーを加熱するための熱交換器とを含む設備で行われる。原料スラリーを液体状態に保ち、かつ生物活性を制限するために、約140°Fおよび1psiの条件が一般に用いられる。好ましい実施形態では、原料貯蔵タンクは第1のタンクと第2のタンクとを含む。このような好ましい実施形態では、第1のタンクを約140°F(約60℃)の温度まで加熱し、約1psiの圧力に付す。第1のタンク内のこのような条件は、生物活動の停止を効果的に生じさせる。一例としての実施形態では、このような第1のタンクは、約1,000,000米国ガロンの容量であり得るもので、100〜150ガロン/分のスループットについて、かかるタンク内の有効滞留時間は約700分である。このような実施形態における第2のタンクは、約300°Fの温度に維持できるものであり、内容物を最高約100psiの圧力に付す。この圧力は、通常、特定温度での混合物の飽和圧力よりわずかに高いものである。たとえば、混合物の飽和圧力は、約300°F(約150℃)で66psiである。第2のタンク内の条件は、一般に、スラリー中のタンパク性物質を分解し、スラリーを緩め、アンモニアを除去できるだけの厳しいものである。第2のタンクの容量は、一般に、第1のタンクの容量よりも少なく、2,500米国ガロンという少量であり得る。よって、一実施形態では、毎分約40ガロンの流量で第2のタンク内での滞留時間約1時間となる。第2のタンク内で、特定のフィードストックについて上記より長い好ましい滞留時間(たとえば数時間)を、上記よりも少ない流量で達成してもよい。
【0088】
本発明の加水分解段は、スラリーの構成物質の滞留時間分布が狭くなるような形で、好ましくは多重チャンバ容器を含む加水分解段の反応器230で実施される。別の実施形態では、加水分解段の反応器がオーガ付き反応器でもあり得る。好ましくは、この容器には、各チャンバ内のスラリーを同時撹拌できる多重ブレード式電動攪拌機とバッフルとが備えられている。好ましい実施形態では、このような容器内には4つのチャンバがある。もう1つの好ましい実施形態では、スラリーの加熱はこの容器の何段か前に行われる。
【0089】
加水分解段後の反応後の原料のフラッシングは、通気孔付きのフラッシュ容器240(「第2段分離器」)の中で達成可能である。好ましくは、フラッシュ容器240内の圧力は、加水分解段の反応器230内の圧力よりもかなり低い。一実施形態において、加水分解段の反応器内の圧力が600psi前後である場合に、フラッシュ容器内の圧力は約300psiである。
【0090】
加水分解段の反応器230で得られた原料のさまざまな第2段分離を達成するには、さまざまな設備を使用することができる。好ましくは、このような分離によって、スチームおよびガス132、有機液500、鉱物134および可溶物を伴う生成された水138の混合物が得られる。スチームおよびガス132は、好ましくは調製段に戻るように迂回されて原料の加熱を補助する。
【0091】
有機液および水からの鉱物の分離は、遠心分離機、ハイドロサイクロンまたは静止タンクで達成可能である。鉱物134の乾燥は、たとえば、乾燥窯または「リング」乾燥機などの他の鉱物用乾燥機(図2には図示せず)を用いて達成可能である(別の実施形態では、エマルジョンを破壊する化学物質を添加することによって分離が容易になる)。
【0092】
水から有機液を分離して得られる、可溶物を伴う生成された水138は、業界で普通に入手可能なタイプの蒸発器250で濃縮可能である。鉱物および水から分離された有機液500を、油最終加工段の反応器260に移す前に有機液保持容器252に入れておいてもよい。このような保持容器は、業界で一般に用いられているような普通の貯蔵容器で構わない。
【0093】
本発明の一例としての実施形態では、有機液500の一部または全部を迂回させて1種以上のスペシャルティケミカルを得ることができる。これには一般に、有機液を分留に付すことが関与する。分留に付される有機液は、一般に、蒸留塔254内で蒸留される。蒸留塔に送る前に有機液を酸洗いして、微量のアミノ酸を分離するようにしてもよい。脂肪酸といった有機液からの揮発性の高い物質が、留去および回収される。蒸留塔の底部に見られる不揮発脂肪および脂肪誘導体などの重い物質は、油最終加工段の反応器260の上に送られる。
【0094】
本発明の他の一例としての実施形態では、有機液500の一部または全部を迂回させてカルボン酸油を得る。カルボン酸油は、適用範囲の広い燃料源、すなわち、ボイラー、加熱器またはエンジンでの燃料源としてそのまま利用可能なものである。本発明のいくつかの実施形態では、カルボン酸油に対して精油所での処理のような処理をさらに施す。あるいは、濾過および/または遠心分離によってカルボン酸油を使用前にさらに処理または精製してもよい。たとえば、窒素や硫黄が存在すると燃焼時にNOxおよびSOxが形成されるため、石油精製所において石油から窒素および硫黄を除去して大気汚染の少ない燃料を得るのに普通に用いられている方法である水素化処理を、カルボン酸油に施すことが可能である。実施例のセクションで説明するように、本発明で得られるカルボン酸油は硫黄含有量が少なく、一般に0.2%未満であるため、水素化処理目的の水素はわずかしか必要ない。また、カルボン酸油の等級をあげやすいのは、窒素含有量が少ないことにもよるものであり、その大半が複素環ではなくアミンの形で存在する。
【0095】
この方法のこの時点で、さまざまなフィードストックを利用して使用に適したカルボン酸油を精製することが可能である。脂肪/グリース(動物性脂肪など)、油種子−ダイズ、キャノーラ、トラップグリース、タンパク質源を含むフィードストックが、使用に適したカルボン酸油の収率を最大にする上で好ましい。この目的に適した物質としては、動物の糞尿、植物廃棄物、廃棄物、エタノール製造施設からの低価値流(DDG)があげられるが、これに限定されるものではない。
【0096】
第2段分離で得られる有機液についても、油最終加工段の反応器260に送ることが可能である。この反応器で、有機液が油や炭素固体142などの1種以上の有用物質へと転換される第2の反応が起こる。油最終加工段の反応器で得られる油を分離器270内でさらに分離し、油144と燃料−ガス146を生成するようにしてもよい。この分離は、さまざまなステップで油を凝縮させることと、貯蔵容器内の油貯蔵庫280にこれを迂回させることを含むものであってもよい。油最終加工段の反応器で得られる炭素固体142を冷却して貯蔵してもよく、あるいはさらに加熱した後に当業者間で周知の方法に従って活性化するよう処理しても構わない。たとえば、炭素固体を別の反応器内で加熱し、過熱スチームを注入して活性化させることができる。
【0097】
上述したように、一例としての未処理原料物質は、農業および食品加工業からの廃棄物質を含む。このような廃棄物には、翼、骨、羽毛、臓器、皮膚、頭、血液および首、軟組織、つめおよび毛といった動物の一部を含み得る。標準的な動物の一部は、食肉処理場からの七面鳥臓物および死がいの残物中に見られるものである。本発明の方法で処理するのに適している食品加工業界からのその他の廃棄物質としては、バーガーフランチャイズなどのファーストフード店舗からの未使用グリース、および食品加工工場からの気泡浮上分離(「DAF」)汚泥といった物質が含まれる。農業廃棄物質には、羊、豚および畜牛の糞または肥料、ならびに鶏の残物および作物残留物などのその他の物質も含まれる可能性がある。図3〜図5に示される一例としての実施形態では、未処理原料100は、七面鳥臓物などの食品加工の副生成物である。
【0098】
図3に示さすように、未処理原料100をまずは調製およびスラリー化110に付し、スチームおよびガス121が伴う原料スラリー112を生成する。スラリー112については、熱交換器114を介して、原料貯蔵タンク(「FST」またはホモジナイザ)内の原料貯蔵庫320まで送り、ここで加熱して混合物中の骨および他の硬い体の一部に結合したタンパク質様物質を分解することができる。食品加工廃棄物または都市下水汚泥などのフィードストックの場合、こうした目的での加熱は、275°Fから380°F、好ましくは275°Fから325°F、さらに一層好ましくは300°Fから325°Fの温度までである。300°Fから325°Fの範囲での加熱は、好ましくは1時間程度としておく。こうした加熱の結果、スラリーの粘度が低下し、内容物が生物学的に不活性化され、鉱物物質(骨粉および骨微粒子を含む)の混合物および液体混合物が生成される。ステップ310では、たとえば重力分離または液体/固体遠心分離機、あるいは篩またはフィルタによって、鉱物および骨物質116を含む不溶性固体を液体混合物118から分離する。水と、水不溶性有機成分と、いくらかの微量鉱物との混合物を含む液体混合物を冷却し、原料貯蔵タンク320(「FST」またはホモジナイザ)に送る。加水分解段の反応器に送るのに適した比較的均質な原料であるコンディショニング済み原料322を生成するために、内容物をFSTで約275〜280°Fまで加熱し、約50psiの圧力に付す。原料の貯蔵時、スチームおよびガス状不純物338を排気336すると好ましい。
【0099】
よって、本発明の1つの利点は、FST内で脱気が起こり、本発明の方法全体の早い段階で不要なガス状不純物が除去される点にある。原料スラリー112については、本発明の方法でさらに処理できるようになるまで、任意の適切な時間、原料貯蔵庫320内に保持しておけばよい。好ましくは、FSTは、原料を加圧しそれを加水分解段の反応器まで輸送する高圧スラリーポンプに一定の原料流を供給する。好ましい実施形態では、本発明の方法でさらに処理できるようになるまで任意の適切な時間、原料スラリー112を大型の貯蔵タンクに保持しておけばよい。
【0100】
七面鳥臓物などの相当量のアンモニア(NH)を含有する未処理原料物質については、遊離アンモニアがスチームおよびガス121の一成分である調製110の間か、それがスチームおよびガス状不純物338と一緒に排出される貯蔵320の間に、この遊離アンモニアを除去すると都合がよい。アンモニア源の1つに、動物の体の一部の集合体に存在することの多い尿残留物中に見出される尿酸の分解がある。アンモニアの除去方法は、当業者の知識の範囲内にあり、スラリー化前に尿成分を分離する、酵素分解を利用する、熱を加えることを含むが、これに限定されるものではない。さらに、アンモニアは、酸性化すれば硫酸アンモニウムまたはリン酸アンモニウムなどの塩に転換可能である。好ましい実施形態では、FSTは、異なる条件に維持された2つの容器を含む。第1のこのような容器は貯蔵の役目を果たし、第2の容器はタンパク質の分解を生じさせ、アンモニアを放出する。
【0101】
原料貯蔵庫320から流出するコンディショニング済み原料スラリー322は、加水分解段330に送られ、ここでコンディショニング済み原料スラリー322の水分が、存在するバイオポリマーの多くを加水分解する。固体が懸濁状態に保たれるように、(ミキサーおよび/または再循環装置によりなされる)充分な撹拌がなされる。加水分解段には、一般に、約5〜約60分かかる。加水分解段から出てくるのは、反応後の原料122である。通常、スチームおよびガス339も加水分解段から放出される。
【0102】
加水分解段330では、窒素および硫黄化合物の部分的除去が起こる若干の脱ガスがなされ、相当量のタンパク質がアンモニアおよび潜在的には二酸化炭素といった生成物に解離する脱アミノ化および脱炭酸反応が起こり得る。実際には、本発明の方法では、二酸化炭素以外の生成物は水溶性および揮発性のことが多いアミンであるため、脱炭酸反応は不要である。このため、通常は、脱炭酸反応よりも脱アミノ化反応が好ましく、加水分解段で得られる反応後の液体生成物は、一般に、フィードストックがタンパク質や脂肪などの物質を含む場合にカルボン酸を含む。したがって、脱炭酸反応は、一般に、脱アミノ反応よりも高い温度で起こることから、脂肪分子が分割される、考えられる最低温度で加水分解段を実行すると好ましい。別の例として、酸を加えることで脱炭酸反応を阻止することにより、加水分解段でのpHを変化させることができる。
【0103】
この段および先行する予熱段で窒素および硫黄化合物を除去することで、特定のタイプの油最終加工段の反応器を介して処理済みとなり得た場合、結果として得られる生物由来の炭化水素の望ましくない成分となり得る有機窒素化合物、アンモニアおよびさまざまな硫黄化合物の形成が阻止される。
【0104】
この例での加水分解段を実施するための代表的な条件は、加水分解段の反応器で得ることができるように150℃〜330℃であるが、好ましくは250℃前後であり、50気圧前後または約600psiである。通常、加水分解段の反応器内の圧力は、20〜120気圧の範囲にある。予熱と加水分解段での総加熱時間は、最長120分前後である。このような条件は、使用される原料に応じて変わることがある。PVCを含有するフィードストックに適用される場合、本発明の一態様では、加水分解段での動作温度は十分に高く、その後に洗浄ステップが続くため、塩素含有生成物が除去される。
【0105】
一般に、加水分解段は、以下の3通りの変換のうちの少なくとも1つが実施可能なような形で約150℃〜約330℃の範囲の温度で実施される。第1に、タンパク質は、それらを構成する個々のアミノ酸残基まで分解される。これは、約150〜220℃の範囲の温度でタンパク質の主鎖内でアミノ酸残基の各対の間のペプチドアミドリンケージを加水分解することにより達成可能である。第2に、脂肪分子を脂肪酸分子まで分解させることが可能であり、これは、200〜290℃の範囲で起こり得る方法である。このとき、脂肪はトリグリセリドを分割するように加水分解され、遊離脂肪酸とグリセロールが形成される。第3に、加水分解段でアミノ酸の脱アミノ化および脱炭酸反応が発生し得る。カルボン酸基は、それぞれのアミノ酸部分に結合したままの状態で、油最終加工段の反応器まで進むことができる場合、いずれも比較的穏やかな動作条件で炭化水素へと転換されることになる。また、アミノ酸の中に脱アミノ化されるものがあってもよく、これは、一般に210〜320℃の温度範囲で起こる方法である。このように、加水分解段だけで、スラリーに含まれる事実上すべてのタンパク質が、加水分解段の比較的低い温度でアミノ酸に転換されることにある。さらに、アミノ酸の脱アミノ化の程度については、加水分解段での動作温度を適宜選択することにより制御可能である。
【0106】
当業者であれば理解できるであろうように、加水分解段の反応器が動作する実際の条件は、利用されるフィードストックに応じて変わることになる。たとえば、動物の臓物では、一般に、加水分解段の温度を約200℃から約250℃の範囲にする。都市下水汚泥では、一般に、加水分解段の温度を約170℃から約250℃の範囲にする。混合プラスチックを含むフィードストックでは、一般に、加水分解段の温度を約200℃から約250℃の範囲にする。タイヤでは、一般に、加水分解段の温度を約250℃から約400℃の範囲にする。本発明の方法の加水分解段の反応器でのタイヤ処理用の通常の動作条件は、溶剤とタイヤとの比が重量比で1:1以下の時に275℃および300psiである。特定温度についてのこのような処理圧力は、その他のタイヤ処理方法で報告された圧力よりもかなり低く、したがって一層経済的である。
【0107】
タイヤ処理の加水分解段でも、塩素などの元素を含有する物質の除去用の水が関与し得る。好ましくは、このような物質は、通常の動作条件でほぼ完全に除去される。タイヤ物質、溶剤および水を、加水分解段のために混合することが可能であり、あるいは、タイヤを溶剤および水と順次接触させてもよい。
【0108】
加水分解段の反応器内の圧力は、一般に、該当する動作温度での水の飽和圧力に近くなるよう選択される。飽和圧力は、水を沸騰させずに保つために特定の温度で印加する必要のある圧力であり、精製済みの原料スラリー中の他の気体の存在および量に左右される。反応器内の総圧は、スラリー混合物中の水の蒸気圧よりも高いため、水が沸騰蒸発してしまうことはない。この圧力は、好ましくは45〜55気圧の範囲にあり、40〜60気圧の範囲であってよく、30〜70気圧の範囲であってもよい。通常、圧力は、原料調製、原料貯蔵または加水分解段の反応器から不要な気体を排気336できるように飽和より上の最大で0〜100psiで、この範囲内の量だけ調整される。
【0109】
本発明の1つの利点に、原料調製110、原料貯蔵320および加水分解段での排出により、アンモニア、二酸化炭素、硫黄含有ガスなどのガス状不純物を除去することができることがある。一般に、加水分解段330では、さまざまな生体物質中の硫黄含有部分の分解時に硫黄含有ガスが発生する。主な硫黄源はタンパク質分子であり、その多くがシステイン残基間に硫黄架橋を有する。硫黄含有ガスは、一般に、硫化水素(HS)ならびにメチルメルカプタンなどのメルカプタン(アルキル−硫黄化合物)である。さらに、硫化カルシウム(CaS)などいくつかの塩を生成することもでき、これらは、通常、後段で分離される。
【0110】
加水分解段の後、一般に、少なくとも1種の反応後の液体生成物と少なくとも1種の反応後の固体生成物と水とを含む反応後の原料122は、さらに低い圧力にフラッシング340され、加水分解段の前に余分な熱を放出して加熱段に戻すことができるようになる。一般に、フラッシングは、好ましくは2段から3段の多重減圧で達成される。フラッシングの効果は、反応後の原料に伴う残留スチームおよびガス132を排出することにある。熱を用いずに水が除去されることから、減圧による脱水が効率的である。余分な熱の効果的な活用法は熱回収として知られ、本発明の方法がさらに進歩したことを表している。加水分解段で、他のガス339と一緒にスチームとして排出可能な水を用いるのは、効率の良いエネルギー回収と結びつく。水とスチームは熱交換において有効であり、1つ以上の凝縮器を用いて加水分解段の前の加熱段にリダイレクトしてもよい。凝縮器は、かなり小型で効率を促進する。このように、反応後の原料122から排出されたスチームおよびガス132も、好ましくは流れ込む原料を加熱し加水分解段の温度を維持する一助となるように用いられ、これによって本発明の方法のエネルギー損失が低減される。スチームおよびガス339を、原料貯蔵庫320の前または後ろに設置された1つ以上の熱交換器まで送ってもよい。また、場合によってはスチームを流入する原料100に直接戻すように注入してもよい。好ましくは、加水分解段330からのスチームおよびガス339を、熱交換器114に送る前にスチームおよびガス132と組み合わせる。
【0111】
熱交換器114では、スチームとガスは互いに分離される。スチームの大部分は凝縮して凝縮物151となる。好ましくは、この凝縮物をリダイレクトし、以下でさらに説明する本発明の方法の後段で得られる「生成された水」と組み合わせる。残留する少量のスチームがガスとともに排出116される。好ましくは、これらの排出されたガスを、本発明の方法の後段で生成される他のガスと組み合わせ、燃料ガスを得る。
【0112】
反応後の原料をフラッシング340し、熱を回収した後、中間原料400は、一般に、少なくとも1種の反応後の液体生成物と、少なくとも1種の反応後の固体生成物と、水とを含む。少なくとも1種の反応後の液体生成物は、一般に、有機液の一成分であり、少なくとも1種の反応後の固体生成物は、一般に、鉱物を含む。中間原料は、好ましくは実質的にガス生成物を含まない。
【0113】
図4は、中間原料に適用される一連の分離を示している。加水分解段で得られる中間原料を、油最終加工段の反応での処理の前に鉱物および水を除去する1以上の分離段に付す点が、本発明の方法のもう1つの利点である。分離段では、遠心分離機、ハイドロサイクロン、蒸留塔、濾過装置、篩などの分離用機器を使用し、中間原料400から非常に細かい炭素固体を除去するのに蒸留を用いるようにしてもよい。通常、さらに減圧すれば一層多くのスチームが回収され、鉱物および他の固体を回収するための固体/液体分離が容易になる。
【0114】
有機液と水と鉱物とを含む中間原料400は、一般に、ほとんどの鉱物412を除去し灰分の少ない有機液と水の混合物414を生成する第1の分離410に付される。このような分離は、固体/液体分離が特徴であり、たとえば、重力沈降などの機械的方法または非機械的方法により、第1の遠心分離機を用いてまたは液体/固体分離装置を介して達成できるものである。分離された鉱物412は、一般に、湿っているため、乾式鉱物貯蔵庫430に送る前に乾燥段420に付される。乾燥段は、一般に、通常の大気条件下で行われる。このようにして得られる乾燥鉱物には、土壌改良またはその他の工業用前駆物質としてかなりの商業的な利用分野が考えられる。
【0115】
有機液/水混合物414を第2の分離440に付し、水を除去して有機液500を残す。このような第2の分離は、第2の液体/液体遠心分離機(または他の分離装置)を用いて達成できるものである。重力差があるため、生成された水と有機液の遠心分離が可能となる。除去後の生成された水138には、タンパク質の分解によって生じるいくつかの水溶性アミノ酸およびグリセロールなどの小さな有機分子が相当な量で溶けている。生成された水には、一般に、塩化物の不純物が含まれる。油最終加工段の反応の前にこのような不純物を分離することは、以後の生成物が汚染されなくなるため、本発明のさらなる利点となる。
【0116】
生成された水138を、蒸発などによる濃縮139に付してもよく、こうして、本発明の方法内で再利用できる水凝縮物151と、濃縮物貯蔵庫460に送り出される濃縮物153とを生成する。蒸発は、一般に、わずかな真空を印加することで達成される。アミノ酸、グリセロール、さらに潜在的には硫酸アンモニウムまたはリン酸塩などのアンモニウム塩のスラリーを主に含む濃縮物は、一般に、たとえば、国内の園芸店で販売されている「フィッシュソリュブル」として知られる肥料などとして商業的価値を有することになる。
【0117】
ここで、本発明が、2つのステップからなる分離段に限定されるものではないことを理解されたい。また、本発明は、いずれかの分離ステップが実施される順序によっても限定されるものではない。このように、有機液、鉱物、水などの生成物への中間原料400の分離が1ステップまたは3以上のステップでなされたとしても、そのことは本発明と矛盾しない。さらに、場合によっては、設計上は有機原料に鉱物が残っていてもよく、この場合は、油最終加工段の処理の前にこれを分離する必要はない。
【0118】
本発明の実施形態でタイヤを処理する場合、有機液の一部を、ゴム製品製造用の脱硫タイヤフィードストックである最終生成物として利用してもよい。
【0119】
図5は、図4の分離段で得られる有機液500を油最終加工段140に付し、1種以上の有用精製物を生成する、本発明の方法の一段を示す。有機液500は、通常、さらに加工されるまで保持用容器に送られる。油最終加工段140で得られる生成物の厳密な分布が、使用する装置のタイプなど油最終加工段で採用する条件によって変わることは、当業者であれば理解できよう。たとえば、いくつかの油最終加工段の反応では、優勢となる生成物は炭化水素蒸気およびガス148であり、炭素固体はほとんどないかまったくない。
【0120】
有機液500の一部分またはすべてについて、任意に、油最終加工段140に先行する処理を実施して1種以上のスペシャルティケミカル143を生成することも可能である。このような任意の方法では、有機液500の所望の一部を、一般に、分留510などの分離方法に付すか、あるいは当業者で理解できるであろうように、アルコールなどの化合物と反応させてもう1つの化合物を形成する。このような分離方法では、スペシャルティケミカル143が生成され、トリグリセリド油などの高分子量の有機分子を含む、「重液」とも呼ばれる分留済み液145が残る。分留済み液145を、有機液500への場合と同様にして処理する目的で油最終加工段140にリダイレクトしてもよい。
【0121】
スペシャルティケミカル143は、一般に、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸アミドまたは一定範囲のアミノ酸などの有機化合物である。好ましくは、スペシャルティケミカル143は脂肪酸である。より好ましくは、スペシャルティケミカル143はC12〜20の範囲の脂肪酸である。なお一層好ましくは、スペシャルティケミカル143はC16〜20の範囲の脂肪酸である。スペシャルティケミカル143が脂肪酸アミドおよび脂肪酸エステルである場合、これらは一般に、脂肪酸との反応によって形成される。七面鳥臓物などのフィードストックから得られるスペシャルティケミカル143には、潤滑油およびコーティングおよび塗料としての用途があり得る。
【0122】
油最終加工段140では、有機液500の水分含有量はほぼゼロであるため、油最終加工段の条件は、余分なまたは追加された水またはスチームによる加水分解によるものではなく、主に、高温にすることで残りの有機分子が分解されるようなものとなっている。油最終加工段を実施するための代表的な条件は、油最終加工段の反応器または他の容器で実現できるように、400℃前後である。最適な温度は、全体としての反応条件によって変わってくる。油最終加工段には、一般に、約5分〜約120分かかるが、正確な時間は利用する反応器のタイプによって変わってくる。実際には、液のさまざまな相が油最終加工段の反応器内で異なる時間量を必要とする。たとえば、蒸気は比較的短時間で通過し、液体はこれよりも長い時間を要する。油最終加工段からの流出物は、別々に、炭化水素蒸気およびガス148の混合物を含み、非炭化水素ガスには二酸化炭素、CO、窒素および硫黄含有化合物、炭素固体142を含み得る。炭素固体142は、好ましくは上質コークスに似たものである。炭化水素蒸気およびガスの混合物148は、一般に、油蒸気を含有する。油最終加工段の条件は、好ましくは、炭素固体142および炭化水素蒸気およびガスの混合物148の純度を最適化するように選択される。炭化水素蒸気およびガスの混合物148などの熱蒸気を急冷すると、反応が停止して、油最終加工段後の炭素炭化物の形成が最小限に抑えられる。好ましい実施形態では、蒸気の急冷は、ドラム一杯の水の中に蒸気を誘導することによってか、あるいは熱流体と冷却媒体を用いた多重急冷ステップで達成できる。このような多重急冷ステップを利用すると、さまざまな画分を別々の商業的利用分野へと迂回させ得るように油から多数の留分(ディーゼル、ガソリンなど)を取り出す上で都合がよい。あるいは、もう1つの実施形態において、油蒸気を流入してくる有機液の存在下で急冷し、これによってエネルギー回収を容易にするようにしてもよい。
【0123】
通常、以下の2つの変換のうちの少なくとも1つを実施できるように、油最終加工段は、約310℃から約510℃の範囲の温度で実施される。第1に、脂肪酸が炭化水素に分解される。これは、約316〜400℃の範囲の温度で各脂肪酸分子からカルボキシル基を除去することによって達成可能である。第2に、炭化水素分子自体が、「クラッキング」されて、これよりも分子量が小さい分子の分布を形成する。この方法は、約450〜510℃の範囲で起こり得る。しかしながら、炭化水素のクラッキングは480℃を超える温度で起こる。好ましくは、加水分解段の温度よりも高い温度で油最終加工段を実施する。油最終加工段に適用可能な本願明細書に記載の温度を、本発明の原理から著しく逸脱することなく変えることが可能である旨は理解できよう。たとえば、油最終加工段は、約300〜525℃の温度範囲内ならびに400〜600℃の範囲で有効に実施可能である。いくつかの実施形態では、油最終加工段の反応器の温度は約400℃から約510℃の間である。
【0124】
さらに、少なくとも1つの実施形態においては、約15psigから約70psigの間、すなわち、大気圧より約15psi高い圧力から大気圧より約70psi高い圧力までの圧力まで、油最終加工段の反応器をわずかに加圧する。好ましくは、油最終加工段の反応器内の圧力は、加水分解段の反応器内の圧力よりも低い。
【0125】
油最終加工段で生成された炭素固体142は、一般に、まずは炭素がその余熱を失うことのできる炭素固体冷却器630へと送られる。冷却後、炭素固体142を炭素貯蔵庫540まで送り、多数の有用な利用分野のために販売してもよい。たとえば、土壌中の細菌の多くが炭素供給源を必要としていることから、炭素を家庭園芸使の「土壌改良剤」として販売することができる。特に、生成される炭素は、その品質が多くの形態の「活性炭」に似ているため、自動車における排出蒸気を吸収するための物質として、あるいは家庭用浄水器のフィルタとしての用途もある。さらに、純度が高いため炭素を石炭などの固形燃料としても利用できるが、この場合、石炭製品では一般的な汚染物質の燃焼による有毒物放出の問題はない。同様に、本発明の方法で得られる炭素固体のような炭素添加物を使用することで、土壌マトリクスにおける多くの環境毒物を中和することができる。
【0126】
炭素固体142の代わりに、または炭素固体142に加えて、本発明の方法で生成される有用生成物は、精炭であり得る。精炭は、未処理原料が未加工石炭である場合に生成される。本発明の方法で生成される石炭微粉は、都合のよいことに、一般入手可能な未加工石炭よりも硫黄含有汚染物質や塩素含有汚染物質の含有量が少ないことが明らかになっている。本発明の方法で生成される石炭のこうした特性により、この石炭は、燃焼による大気汚染が少ない燃料の供給源として特に魅力あるものとなっている。
【0127】
油最終加工段の反応器で生成された炭化水素蒸気およびガスの混合物148は、一般に、この混合物を燃料−ガス146と炭化水素油144とに分離する冷却器/凝縮器850に送られる。燃料−ガス146は、発熱量を有し、それ自体、さまざまな段での加熱のためのエネルギーを提供する目的で本発明の方法内で内部的に再分配できるものであり、あるいは外部または内部で使用する電気エネルギーまたは他の形態のエネルギーを生成するために使用可能なものである。油144は、一般に、炭素鎖の炭素原子数が20以下の炭化水素を含む。この点において、蒸気の混合物は、#2グレードのディーゼル油などの燃料−油の軽量成分と似ている。このような製品も市場でよく売れている。しかしながら、油144の厳密な組成は、フィードストックや油最終加工段での反応条件次第であることを理解されたい。このように、油は、パラフィン、α−オレフィン、芳香族化合物ならびに飽和脂肪族炭化水素を含み得る。たとえば、フィードストックがタイヤからなる場合に得られる油の組成は、フィードストックが七面鳥臓物である場合の組成とは異なる。脂肪含有量の多いフィードストックから得られる油には、オレフィンおよびジオレフィンが多く含まれることが明らかになっている。望ましくない場合、このようなオレフィンについては、当業者になじみのある再飽和またはさまざまな分離法によって油から除去すればよい。
【0128】
未処理フィードストックがタイヤの場合、炭化水素油144(この場合はタイヤ由来の炭化水素である)から得られる最終段の油は、当該技術分野においてそれまで利用されている他の溶剤よりも優れたタイヤ用溶剤であることが明らかになっている。「似たもの同士が溶解する」という一般的な化学原理にしたがうと、最終段の油は突き詰めるとタイヤに由来することから、その化学的性質はもとのタイヤに類似しているため、優れたタイヤ用溶剤なのである。本発明の方法で使用される未処理原料がタイヤを含む場合、タイヤ由来の炭化水素の少なくとも一部を、投入される未処理原料へとリダイレクトし、スラリーの調製前または調製時にその溶解を助ける。一般に、タイヤ由来の炭化水素は沸点範囲が約100℃から約350℃である。好ましい実施形態では、タイヤへの適用前に、タイヤ由来の炭化水素を加熱する。もう1つの実施形態では、タイヤ由来の炭化水素をタイヤに適用し、この混合物を約200℃から350℃の間の温度まで加熱する。最終段の油生成物を使用することにより、他の溶剤を用いる場合に繰り返し発生するコストがなくなり、これを補充する必要もなくなる。
【0129】
本発明のさまざまな実施形態では、最終段の油の全範囲の成分またはこれらの成分の一部のみを使用してタイヤを溶解させる。好ましくは、タイヤ由来の炭化水素をすべて、投入される未処理原料にリダイレクトする。もう1つの実施形態では、最終段の重油生成物のみをこの要領でリダイレクトする。成分の一部を用いる場合、溶剤の各部分への分離は、最終段での処理または第1段での処理のいずれかで行えばよい。最終的な油生成物を溶剤として使用することで、本発明の方法は他の手法に比べてはるかに経済的なものとなる。この油は、通常、特定の機会に処理すべき第1のタイヤバッチでは利用可能とならないことから、他の溶剤を付加的に利用してタイヤの初期分解を助けるようにしてもよい。このような溶剤は、トルエンであり、その他の溶剤も当業者間で周知である。
【0130】
未処理原料が都市下水汚泥の場合、無機物質からの有機物質の分離を容易にすることが好ましい。したがって、好ましい実施形態では、物質を浮遊させる一助となる目的で、炭化水素油144の一部(この場合は生体由来の炭化水素)を未処理原料または加水分解段での生成物に対してリダイレクトする。他の実施形態では、たとえば、ファーストフード店で得られるようなトラップグリースなどの物質を使用することが可能である。物質の浮遊の背後にある原理は、水より重い有機物質の浮遊を補助する目的で水より軽い物質を未処理原料または加水分解段での生成物に導入することで、無機物質からの有機物質の分離が容易になるというものである。その結果、このような処理をしていない場合に比して遠心分離が容易な汚泥が得られる。
【0131】
本発明の方法のさらなる利点は、すべての生成物にDNAおよび病原体が含まれない点にある。すなわち、生成物には、動物細胞、細菌、ウイルスまたはプリオンに由来する病理物質が含まれない。このような物質は、本発明の方法で無傷のまま生き延びることはない。このような分子が食物連鎖に再度入り込む危険が存在するであろう農業用途に本発明の方法の生成物のどれを使用してもリスクが一切ないことから、このことは重要な成果である。
【0132】
有機液などの分離段で得られる反応後の液体生成物を炭化水素混合物および炭素固体に転換するための装置の1つに、本発明の方法で使用する好適な油最終加工段の反応器がある。図6に示すように、本発明の実施形態による好ましい油最終加工段の反応器600は、有機液を加熱することで液体と気化油との混合物を生成するための加熱器610と、液体と気化油との混合物を固体炭素142と炭化水素蒸気とガスとの混合物148とに転換するための反応器620と、炭素固体142を受け入れるための第1の冷却器630と、炭化水素蒸気およびガスを受け入れるための第2の冷却器640と、を含む。油最終加工段の反応器600は、さらに、炭化水素蒸気およびガス148を炭素固体142から分離するための反応器620と連通する流体−固体分離器624を含むものであってもよい。
【0133】
加熱器610は、好ましくは、熱交換のための大きな表面積を作り出す多数の内部管を含む効率的かつ小型のものである。加熱器610は、一般に、「加熱炉」である。加熱器610は、一般に、有機液およびスチーム602を受け入れるための流入口と、加熱済みの有機液/スチーム混合物を反応器620に送るための流出口とを有する。約2〜5重量%の量のスチーム602が、加熱器610内に入る時点で有機液に随伴する。このような量のスチームは、均一な加熱を助け、加熱器内での残渣の蓄積を防止する。好ましい実施形態では、1以上の予熱器を使用して、スチームとの混合および/または加熱器610への移送前に有機液500を加熱する。油最終加工段用の圧力が、貯蔵500の後にポンプシステムによって印加される。
【0134】
反応器620は、好ましくは、少なくとも1つの加熱済みオーガを含み、それぞれ加熱器610から液体と気化油との加熱済み混合物を受け入れるよう、なおかつ炭素固体およびガスと炭化水素との混合物を流体−固体分離器に送るように構成された、流入口および流出口を有する。スチームを伴う液体と気化油との加熱済み混合物は、反応器620に送られ、炭素固体と、好ましくは油および燃料ガスの成分を含有する炭化水素ガス混合物とに分けられる。一般に、生成される炭素固体は、液体と気化油との混合物の約10重量%に達する。他の実施形態では、未処理フィードストックの成分に応じて、生成される炭素固体は、液体と気化油との混合物の約5から約20重量%である。本発明のいくつかの実施形態では、余分な炭素固体が反応器620内で蓄積されるのを避けるため、加工対象となるフィードストックの量を調整する。
【0135】
オーガは、流入する有機液の滞留時間および温度の制御を可能にし、炭素固体および揮発性生成物の効率的な分離を可能にすることから、炭素固体および炭化水素混合物を生成するのに適している。好ましくは、得られる炭化水素混合物および炭素固体の純度が最適になるような形でオーガの寸法を選択する。たとえば、オーガの横断面直径は、主に、そこを通る蒸気の流量を左右する。この流量は、埃が蒸気と一緒に流れて不純な炭化水素混合物になってしまうほど高くないことが好ましい。有機液、蒸気およびスチームの加熱済み混合物の反応時の滞留時間も、オーガの大きさを左右する。好ましくは、油最終加工段の反応器は、1日あたり少なくとも1,000トンの有機液を処理できるものである。
【0136】
好ましくは、油最終加工段の反応器600は、反応器620の流出口と連通する流体−固体分離器を含む。流体−固体分離器は、好ましくは、炭化水素およびガス用の第1の流出口と、炭素固体用の第2の流出口とを有する。炭化水素とガスとの混合物から得られる燃料ガスの一部を、好ましくはリダイレクトして加熱器610に戻し、燃やして加熱器内の温度を維持する上での一助とすることで、このように本発明の方法の全体的な効率を向上させる。
【0137】
約500℃といった高温にあることも多い炭素固体は、第1の冷却器、すなわち、好ましくはエアロック装置または任意に流体−固体分離器介して反応器と連通する冷却用オーガである炭素固体冷却器630内に送られる。本発明のいくつかの実施形態では、2つ以上の冷却用オーガ630を利用することができる。水632を炭素固体冷却器630内に導入し、冷却方法を補助するようにすると好ましい。炭素固体は、任意に移送オーガまたはバケットエレベータ654などの他の何らかの搬送装置を介して最終生成物貯蔵システム650まで送られるか、炭素固体を活性化するためのもう1つの加熱器/反応器まで送られる。
【0138】
炭化水素蒸気とガスとの混合物を受け入れるための第2の冷却器640は、好ましくは、残留炭素固体をすべて分離し、それを反応器620に戻すための炭素微粒子分離器を含む。
【0139】
図6に示す好ましい油最終加工段の反応器は、オーガを用いたことで、加熱済み有機液の炭化水素の熱分解が連続的に行われ、通常であればクラッキングに伴って生じる炭素固体の堆積が起こらないため好都合である。炭化水素の熱分解を実現し、図6の反応器よりもかなり大規模にクラッキングを行うには、石油化学精製で利用されているディレードコーカーなどの他の装置が当業者間で周知であるが、こうした装置では、クラッキング時に反応器壁面の内側に炭素固体が堆積してしまう。この蓄積物を定期的に除去しなければならず、これにはかなりの中断時間が必要になるか、反応器の容器を交換せざるを得ないこともある。それにもかかわらず、現行の経済条件では、本発明の油最終加工段の反応を達成するのにこうした装置が用いられる。ディレードコーカーでは、図6の反応器とは生成物の分布が異なる。たとえば、ディレードコーカーでは、最初に脂肪酸分子からカルボキシル基を除去して炭化水素を生成し、これをクラッキングして鎖長がさらに短い炭化水素を得る。
【0140】
ディレードコーカー装置に加えて、本発明の油最終加工段の反応を、これに適宜合わせた他の装置で実現することも可能である。好適な装置および方法の例が、「Chemistry of Petrochemical Processes」第2版、S.MatarおよびL.F.Hatch著(Gulf Professional Publishing、2001)、特に第3章に記載されている。好適な方法は、一般に、2つのタイプ、すなわち、水素処理装置で実現されるような熱を利用したものか、流動接触分解装置で実現されるような触媒によるものである。
【0141】
熱転換方法には、主に、コーキング方法、ビスブレーキング、水蒸気クラッキングが含まれる。コーキング方法は、一般に、アスファルテン含有量が高い画分などの重質画分に適用される。コーキング方法では、大部分が不飽和度の高い炭化水素ガス、分解ナフサ、中間留分、コークスが生成される。ガスおよび液体成分には、一般に、さまざまな生成物を飽和させるとともに脱硫する目的で水素化処理が施される。熱分解の基礎をなす基本的な反応は、一対のアルキルラジカルを生成する炭素−炭素結合の均一開裂に基づくものである。各アルキルラジカルは、さらに分解されてアルケンを生成するか、他の炭化水素から水素原子を抜き取ることで他のアルキルラジカルを生成することが多い。反応生成物全体は、主に、アルキルラジカル自体が異性化しないという理由で、分枝炭化水素ではないことが多い。
【0142】
熱分解方法には、主に、ディレードコーキングおよび流動コーキングの2つのタイプがある。ディレードコーキングでは、反応器システムは、予熱した原料のバッチを浸す大きなドラムに連結された接触時間の短い加熱器を有する。ドラム頂部からの蒸気を精留塔に迂回させて、ガス、ナフサ、ケロシン、ガス油に分離する。動作条件は、一般に、480〜500℃で25〜30psiである。15psiなどの低めの圧力で動作させれば、液体生成物の収率を高めることができる。高温条件では、温度が低いときよりもコークスおよびガスは多く生成されるが、液体生成物の生成量は少なくなる。コークスの品質は、突き詰めてしまえば原料品質によって決まるものであるが、ドラムの大きさ、加熱速度、浸漬時間、圧力、最終反応温度によってもばらつきが出る。ドラムがコークスで一杯になったら、バッチ原料の流れを第2のドラムに迂回させ、第1のドラムを空にする、すなわち「デコーキング」できるようにする。一般に、ドラムのデコーキングは、圧力が少なくとも3,000psiの水をコークスに送る水力ジェットのシステムで行うことが可能である。当業者であれば、本発明の油最終加工段の反応を行うためのディレードコーカー装置を実現することができる。
【0143】
流動コーキングでは、生成されるコークスを利用してクラッキング反応に燃料を供給する。流動床反応器にて事前に形成したコークス粒子に高温の原料を噴霧することで、流動コークスが生成される。反応器の温度は、一般に、520℃である。この方法には、コークスの硫黄含有量が減らないという大きな短所がある。「フレキシコーキング」として知られる流動コーキングの変形例では、流動コーキングとコークスのガス化とを併用するため、この方法が好ましい。本発明の油最終加工段の反応に流動コーキング装置とフレキシコーキング装置の両方を取り入れることは、当業者の技術力の範囲内である。
【0144】
ビスブレーキングは、ワックス状物質を含むものなどの高粘性フィードストックを熱的に分解して、これよりも粘度の低い生成物の混合物を形成するのに用いられる、穏やかな方法である。一般に、ビスブレーキングは、温度450℃、短い加熱時間で行われる。本発明では、分離段で得られる有機液が、特に粘性(viscose)である状況で活用される。
【0145】
炭化水素の混合物を転換するための触媒方法には、当業者にとってなじみのある多くの異なる方法が含まれる。一例として、接触改質(特にナフサに適用)、接触分解、水素化分解、水素化脱アルキル化、異性化、アルキル化、重合があげられる。ここでも引用する水素化処理方法では、1種以上の触媒を利用する。これらの触媒方法およびそのための装置は、各々、本発明の油最終加工段の反応に合わせて当業者が改変可能なものである。
【0146】
接触分解は、本発明の油最終加工段の反応を実施するのに特に適している。接触分解では、低価値のストックを分解し、これよりも価値が高い軽質留分および中間留分ならびに軽質炭化水素ガスを生成する。接触分解で用いられる一般的な触媒は、非晶質の合成シリカ−アルミナであり、ゼオライトを含むことも含まないこともある。これらの触媒は、反応時に異性化反応を促進してカルボニウムイオンを形成し、カルボニウムイオンは短時間で自然転位しやすいわりに寿命が長く、反応性の選択性が高いため、熱分解で得られる生成物分布に比して分枝した炭化水素が多めで不飽和生成物が少なめの生成物分布となりやすい。分枝した生成物は生成される炭化水素混合物のオクタン価を改善することが多く、なおかつ飽和生成物は同じ生成物が不飽和の状態にあるときよりも安定しやすいため、上記のことには利点がある。
【0147】
接触分解では、一般に、流動床を利用し、移動床を用いることは少ない。流動床方法では、予熱した原料を反応器に投入した後、高温の再生触媒を投入する。触媒については、多孔度の大きい粉末として利用する。反応器内の条件は、一般に、450〜520℃、圧力約10〜20psigである。流動接触分解装置では、一般に、軽質(C〜C)の不飽和炭化水素、オクタン価の高いガソリン、ガス油、タールが生成される。温度を高くし、滞留時間を長くし、触媒/油比を大きくすれば、ガスとガソリンの収率が高まる。油最終加工段を「深度接触分解」で実現可能であることは、本発明と矛盾しない。この方法では、軽質の不飽和炭化水素が高い収率で生成されるため好都合である。
【0148】
移動床方法では、触媒が、原料を介して触媒再生ゾーンまで重力の力で落ちる高温のビーズ状である。この方法では、飽和および不飽和の軽質炭化水素ガスの混合物と、芳香族および分岐パラフィンを豊富に含むガソリン生成物が生成される。
【0149】
さらに、本発明の油最終加工段の反応では、本質的に水素の存在下でなされる接触分解である水素化分解方法を利用することができる。この方法では、大部分が飽和した炭化水素生成物が得られる。
【0150】
本発明の油最終加工段の反応を実現するためのさらに他の方法が、「Liquid hydrocarbon fules from biomass」、D.C.ElliottおよびG.F.Schiefelbein著、Amer. Chem. Soc. Div. Fuel. Chem. Preprints、34、1160〜1166(1989)に記載されている。
【0151】
本発明の方法を一部変更したものを用いて、地下のタールサンド埋蔵物にスチームを注入した後、この埋蔵物を地上で軽油に精製し、豊富ではあるが手が届きにくかったこの資源をはるかに利用しやすいものにすることができる。実験では、本発明の方法が、石炭から硫黄や水銀、ナフサ、オレフィン(いずれも販売可能な産物)を抽出することで、石炭をより高温できれいに燃やすことができることも示されている。また、本発明の方法による前処理を行えば一部の石炭が脆弱化されるため、発電所で燃焼させる前にこれらを圧壊するのに必要なエネルギーが少なくなる。
【0152】
フィードストックによっては、本発明の方法では原料調製段の一部として流体から細かい懸濁固体を分離するための装置を利用している。また、その他の多くの工業的および商業的利用分野でも、懸濁固体を液体から分離する必要がある。図7は、このような分離に役立つ本発明の好ましい実施形態よる分離用装置700を示している。固体懸濁液の分離を必要とする利用分野のもう1つの例に、全血からの赤血球および白血球の分離がある。懸濁固体粒子のサイズが大きいか、その密度が流体の密度とは大きくかけ離れている場合、それらを分離可能な多くの異なるタイプの装置が存在する。たとえば、懸濁固体粒子よりも小さい開口のある多くの異なる構成のフィルタを、ひずみが加わっても大きく変形することのない固体物質用に使用することが可能である。固体粒子と流体との密度差が大きい場合は、除濁装置、沈降室、単純なサイクロンを有効に用いることができる。サイズまたは密度差が小さくなるにつれて、遠心力を用いた能動的な装置が効果的になる可能性がある。しかしながら、これらの分離用装置ではいずれも、懸濁用の流体と密度がわずかしか違わない変形可能な物質の場合、粒度が非常に小さいと効率は劇的に低下する。
【0153】
本発明の好ましい方法に関しては、懸濁固体が小さく、変形可能で、密度差も小さい1つの利用分野に、都市下水汚泥(MSS)がある。MSS中の懸濁物質は、主として細菌由来の細胞物質および細胞残屑からなり、一般に、寸法が約1マイクロメートルである。この物質は、変形可能で、有効密度が懸濁用水媒質に比して10%以内である。この固体物質を水から分離することは、本発明の方法用のフィードストックとしてMSSを調製する上で好ましいステップである。このような分離は、遠心分離機を用いて達成できるものであるが、好ましい実施形態では、分離用装置700を利用する。
【0154】
本発明の好ましい実施形態によれば、本発明の方法によってさらに処理する前にMSSなどの未処理原料の固体成分と液体成分とを分離するため、図7に示すような分離用装置700を利用すると好ましい。このような装置は、固体微粒子が変形可能であるか、有効密度が液相に比して約10%以内である場合に、他の工業的または商業的廃水汚泥にも応用可能である。
【0155】
装置700は、好ましくは、円錐台形状の内側チャンバ706内に取り付けられた旋回アセンブリ704を収納するハウジング702を含む。内側チャンバ706の形状は、一般に、旋回アセンブリ704の他の部品を収納する錐台の基部および/または頂部の付加的な断面を伴う、テーパ角を有する円錐台形断面を含んでいる。ハウジング702は、好ましくは、互いに連結され、旋回アセンブリ704が収容されるスピナーケース底部714とスピナーケース頂部716とを含む。分離用装置700は、さらに、流入口710と、内側チャンバと連通する第1の流出口730と、第2の流出口750とを含む。流入口710を設けたことで、内側チャンバの静止内壁720と旋回アセンブリとの間の環状の空間712の中に、懸濁固体を含有する流体を導入することが可能となる。
【0156】
旋回アセンブリは、内側が中空の円錐台形シリンダを含み、このシリンダは、好ましくは、それ自体がスピナー頂部718に連結されたテーパ付き円筒壁724と連結されたスピナー底部722から作られている。旋回アセンブリは、一般に、約1,000rpmから約50,000rpmの範囲の速度で回転する中空スピンドル726の長手方向の軸736を中心にして同心的に取り付けられている。MSSを分離する好ましい実施形態では、回転速度は約10,000rpmである。好ましくは、カオス流を最小限におさえるような回転速度を選択する。旋回アセンブリは、幅が狭くなるにつれて有効横断面積が小さくなるような形でテーパが形成されている。一般に、テーパ角度は約1°から約10°の間にある。好ましい実施形態では、テーパ角は約2°から約2.5°の間であり、なお一層好ましくは約2.25°である。旋回アセンブリの中空の内部は、第2の流出口750と連通している。
【0157】
好ましくは、流入口710と分離器装置700の内部との間には、圧力差がある。一般に、この圧力差は、約3〜150psiの間であり、2つのポンプ(図7には図示せず)によって制御される。
【0158】
サイズの異なる分離器の流量は、回転シリンダの表面積に対応することになる。好ましくは、毎分約1から約200ガロンの流量が得られるように流入口と環状のギャップとを構成する。より好ましくは、流量は毎分約1から約20ガロンである。MSSを取り扱う場合、さらに一層好ましくは、この流量は1分あたり約10ガロンである。
【0159】
旋回アセンブリの壁724には、孔が設けられている。壁724に形成された孔の孔径は、一般に、約1から約200マイクロメートルである。好ましくは、孔径は約50マイクロメートルである。壁724は、好ましくは、動作時に孔がふさがってしまわないように、HDPEなどのプラスチック物質あるいは吸湿性ではない他の任意の物質で作られている。
【0160】
流体および懸濁物質が通常は軸方向に環状通路712に沿って流れるのに対し、流体流の一部は孔が設けられた回転壁724を介してシリンダの中空内部728の中に流入する。中空内部728は、スピンドル流入口732を介して中空スピンドル726と連通している。懸濁粒子の大半は、回転シリンダの表面における剪断力および遠心力がゆえに、孔が設けられたシリンダを通る流体と一緒には流れないようになっている。シリンダの回転速度は、懸濁粒子に加わる剪断力および遠心力を効果的に設定するため、これを利用して、孔の設けられたシリンダを通る流体に追従できないようにされた粒子の最小サイズを制御することが可能である。シリンダ728内に流入する水と粒子は、スピンドル流入口732を介して中空スピンドル726の中心に流れ込み、第2の流出口750から放出される前にスピンドル流出口734に向かって流れる。
【0161】
環状通路712内の物質は、回転シリンダの動きに応答して狭い螺旋流路をたどる。好ましくは、環状通路712の厚みは、その長さ方向に一定である。用途によっては、この環状空間が頂部から底部までで変わることがある。環状空間を変化させることで、孔のあるスピナー表面付近の流れの条件に影響を与えることができる。ここで濃縮された流体流を放出するための第1の流出口730は、入り口から離れた環状通路の端に設けられている。
【0162】
図7の装置の動作は、好ましくはその配置とは無関係である。好ましい実施形態では、テーパ付きシリンダの軸は底部にある第1の流出口730に対して垂直に配置されている。
【0163】
従来技術において周知の他の分離装置よりも優れた図7の装置の利点の1つに、特に、大きさの範囲が1マイクロメートル未満の変形可能な懸濁固体を伴うものまたは密度が懸濁用流体の10%以内のものを含めた、粒子特性が広範囲にわたる汚泥を処理できることがある。好ましい実施形態では、環状のギャップと壁724の孔径は、都市下水汚泥の懸濁液を分離できるように構成される。本発明の方法のいくつかの実施形態では、未処理フィードストックの高スループットでの分離を実現するために、多くのこのような分離器が並列利用される。
【0164】
図7に示される分離器700は、厳密な縮小比で描かれたものでないものの、さまざまな要素が互いにほぼその割合にあることを理解されたい。このように、分離器700は、機械工学および設計の当業者らになじみのある通常の原理で構成できるものである。
【0165】
好ましい実施形態では、スピナー底部722の外径は約2インチであり、スピナー頂部718の外径は約2.2インチである。スピナーケース底部714の好ましい長さは約7インチから約8インチである。スピナー壁724の好ましい長さは約4インチから約6インチであり、その好ましい厚みは好ましくはその長さに沿って一定であり、約1.5インチである。このようなスピナーとの関連で流出口730の好ましい直径は約0.8インチであり、スピナーケース底部の外径は好ましくは約3インチである。その場合、スピナーケース頂部の外径は、好ましくは約4インチである。スピンドル726は中空であり、好ましくは内側の径が約0.25インチである。スピンドル726の外側の径は、その長さに沿って異なっていてもよく、約0.5インチから約0.75インチの間であればよい。スピンドル流入口732とスピンドル流出口734との間の距離は、このような実施形態では約6インチであればよい。環状通路712の厚みは、好ましくは約0.05から約0.50インチである。
【0166】
本願明細書で提示される好ましい寸法は、単なる一例としてとり上げたものであり、設計上の選択肢および所望のスループットに応じて、当業者である機械技師であれば、作業効率を達成する目的で分離器700のさまざまな要素の大きさを拡大または縮小できることであろう。
【0167】
本発明の方法を実施するための全体としての装置には、好ましくは、バルブ、ポンプおよび温度用の単純なコントローラを含むコンピュータ化制御システムが付随している。このようなシステムの開発は、コンピュータ方法制御工学の当業者の能力の範囲内に入るものである。
【0168】
本発明の装置は、需要に応じて拡大縮小可能なものである。たとえば、1日あたり何千トンもの廃棄物を取り扱う工場を想定することができ、かたや平床トラックの背に載せて輸送でき、1日あたりわずか1トンの廃棄物しか扱えない移動式設備を構築することも可能である。
【0169】
以下の実施例は、本発明の方法および物質を例示するためのものであり、特許請求の範囲に記載の発明を限定するものではない。
【実施例】
【0170】
実施例1:パイロットプラント−破砕残渣処理
本発明の装置および方法を利用してパイロットプラントを建設した。
【0171】
このパイロットプラントの1つの応用例では、破砕残渣を実験用のフィードストックとした。この試験的な実施のために入手したSR物質3000ポンドのうち、1072ポンドについて汚れ/微粉を除去して湯で洗浄し、715.5ポンドの無微粉(fines−free)SRを解重合ユニットで処理し、残りの1212.5ポンドの無微粉SRを別の試験用に取っておいた。この無微粉SR物質を、79.5ポンドの破砕タイヤおよび約1741ポンドの使用済みモーター油と一緒に解重合ユニットで処理した。さまざまな生成物の試料を分析に出し、重金属とPCBおよび塩素などの汚染物質との用途を判断した。
【0172】
試料の比較分析結果によれば、PCBが一桁少なくなり、35〜65ppmから2ppm未満まで減少することが明らかになった。
【0173】
この加水分解油の熱分解をベンチスケール反応器で実施し、輸送燃料を製造する精油所での典型的な方法をシミュレーションした。本発明の方法で生成した加水分解油を、石油精製所のディレードコーカーで用いられている温度に近い500℃前後の温度でクラッキングした。生成された生成物は、炭化水素燃料、燃料−ガス、固体炭素生成物であった。燃料/ガス/炭素画分の分布は、それぞれ84%、10%、6%であった。このクラッキングによって、ガソリン、ディーゼル、残りの重量分で炭化水素油が生成された。クラッキングで得られた生成物の分布は、ガソリン(12%)、灯油(38%)、ディーゼル(32%)、重油(15%)、ガス(3%)であった。
【0174】
初期試験のために、もとのSR物質3000ポンドから試料を取り除いた。SRの物質の取り扱い性を改善するために、残りのSRを1/16インチの振動篩でふるい、汚れと微粉とを除去した。SR物質には約1072ポンドの汚れと微粉が含まれており、これは試料全体の約36%、試料の初期分析時に想定した量の1.5倍であった。
【0175】
篩で取り除いた汚れおよび微粉を湯で洗浄し、PCB分析に出した。残りの無微粉物質の一部をパイロット規模の解重合ユニットで処理した。残りを以後の試験用に保管した。715.5ポンドの量の無微粉SR物質を解重合ユニットに入れた。
【0176】
解重合
解重合試験用のフィードストックは、79.5ポンドの廃棄タイヤおよび1,741ポンドの低価値油と一緒に処理した715.5ポンドの無微粉SRからなるものであった。これを、340℃(650°F)までの温度と100psigまでの圧力で動作可能な75ガロンの容器で構成される解重合ユニットを利用して処理し、ゲルおよび重油/固体マトリクスにした。パイロット試験で利用した特定の設備構成での300℃(572°F)までの最大動作温度ならびに熱油システムの動作温度に対する制約を減らすために、実施時の滞留時間を1日8時間内に合うように長くした。これよりも高い温度であれば、解重合方法には一般に1時間とかからない。
【0177】
ディーゼル燃料を都合のよい溶剤として利用して重油/固体マトリクスを洗浄し、55:45比の抽出可能なゲルと未転換の固体物質とを得た。この抽出可能なゲルを、解重合ユニットで得られた容易に除去されるゲルと組み合わせ、加水分解ステップのフィードストックとして利用した。解重合ユニットで処理した2,536ポンドのSR−タイヤ−油フィードストックのうち、1,925ポンドが低灰分のゲルに転換された。ここで説明する方法で生成されるゲルの量が、試験期間および未処理原料中の無機物量などの多くの要因によって変わることは、当業者であれば分かるであろう。約113ポンドのオーバーヘッド蒸気と約343ポンドの転換できない固体があった。
【0178】
上述したように、SR/タイヤへの熱伝導率を大幅に高め、加熱方法を高速化するために、解重合ユニットに流入するSR/タイヤフィードストックに1741ポンドの低価値油を循環させた。ここでは廃棄モーター油を用いたが、本発明の方法で生成されるリサイクル油をはじめとする蒸気圧の低い油であれば、どのような油であっても同じ目的で利用することが可能である。フィードストックの有機画分と最終的な油の収率をさらに増すために、廃棄タイヤをSR試料に加えて有機物含有量を高めた。
【0179】
解重合方法の終わりに、ユニットからの水およびガスを大気圧にフラッシュする。解重合後のSRを貯蔵タンクに移す前に、ユニットを200°Fまで冷却した。液体を抜いた後、解重合ユニットに残った固体金属と無機物とを除去した。
【0180】
加水分解
携帯型タンクと低流高温容積式ポンプとを利用して、解重合SRを2つの加水分解反応器に供給した。これらの反応器を、既存のパイロットプラントの減圧制御弁を介して受液タンクに連結した。加水分解反応器からのスチームを凝縮し、凝縮物タンクに送った。加水分解の実施により、解重合生成物の一部が処理された。約800ポンドの解重合SR/タイヤ/油を、冷たい解重合生成物に流動性を付与するための800ポンドの廃棄モーター油および900ポンドの水と一緒に、加水分解ステップで3ポンド/分の速度で処理した。この混合物を約440°Fから約500°Fの範囲の温度に付した。加水分解後、破砕残渣からの油をフラッシュし、フラッシュタンクに保管した。加水分解後の処理には、木材チップなどの残留固体物を除去するための固体/液体分離と、水から油を除去するための液体/液体分離とが含まれていた。これらの分離には遠心分離機を利用した。
【0181】
加水分解時に、塩化物、臭化物、PCBがSR/タイヤフィードストックからほぼ完全に除去されていることを、以下の表に示す。これは、生成された油ならびに、この油から得られるあらゆる精製品が、望ましくないPCB、塩化物または他のハロゲン化物を実質的に含有しないことを示すものである。
【0182】
【表5】

【0183】
【表6】

【0184】
分離
デカンタおよび液体−液体遠心分離機を加水分解後の分離ステップに利用した。
【0185】
熱分解
SRから得られた約10リットルの加水分解油をベンチスケール反応器にて500℃(932°F)前後の温度で6回熱分解し、炭化水素油、燃料−ガス、固体炭素生成物を生成した。ベンチスケール熱分解ユニットの写真を図12に示す。標的圧力を維持するために、反応時にはガスと油の蒸気を排出した。一定のガス圧から分かるように、ガスの発生が止まった時点で実施を終了した。熱分解装置から得られた油/ガス/炭素画分の分布は、それぞれ84%、10%、6%であった。TCP分解油の蒸留によって、12%の軽質留出燃料と、38%の中間留分と、32%のディーゼルと、15%の燃料重油とが得られ、原料の3%は非凝縮性ガスであった。
【0186】
【表7】

【0187】
TCP液体燃料
TCP加水分解油の化学特性および物性を以下の表1にあげておく。TCP分解油生成物は、従来のディーゼル燃料に類似の再生可能なディーゼルである。この再生可能なディーゼルは、そのままでディーゼル燃料の代わりとして、またはディーゼル燃料用のブレンド成分としてなど、多種多様な目的に利用可能なものである。このTCP分解油をさらに蒸留してガソリンおよび他の画分を得ることも可能である。TCP分解油の化学特性および物性を表2にあげておく。
【0188】
【表8】

【0189】
【表9】

【0190】
実施例2:パイロットプラント−七面鳥の処理
本発明の装置および方法を利用してパイロットプラントを建設した。このパイロットプラントでは、1日に約7トンの廃棄物を取り扱うことができる。
【0191】
このパイロットプラントの1つの応用例では、七面鳥加工工場の廃棄物、すなわち、羽毛、骨、皮、血液、脂肪、内臓を実験的フィードストックとした。この物質を10,044ポンドの量だけ装置の加水分解段、すなわち、物質を灰褐色のスラリーに変える350馬力のグラインダに入れた。この段から、混合物を加熱して改質する一連のタンクおよびパイプに物質を流入させた。
【0192】
2時間後、極めて高温で高純度の薄褐色の油の流れが生成された。この方法で生成された油は非常に軽量である。最長の炭素鎖はC20である。生成された油は、燃料油とガソリン半々のミックスに類似している。
【0193】
本発明の方法は、七面鳥臓物などの複合フィードストックについてエネルギー効率が85%になることが証明されている。これは、プラントに入るフィードストック100Btu(イギリス熱単位)あたり、方法の実行に使用されるのはわずか15Btuにすぎないことを意味する。プラスチックなどの炭素が重いか水分が軽い原料などの比較的乾燥した物質の場合は、さらに効率が良くなる。
【0194】
加水分解段の反応器は、高さ約20フィート、幅3フィートでかつ高いレベルで絶縁された、電気加熱コイルが巻かれたタンクを含む。加水分解段の反応器では、フィードストックは熱および圧力によって加水分解される。水がフィードストックに熱を伝える一助を担うことから、温度と圧力はいずれも非常に極端なものでもなければ生成にエネルギー集約的なものでもない。この方法をパイロットプラントで行うのにかかる時間は通常、わずか約15分である。
【0195】
反応器の容器で有機物質を加熱して部分的に解重合させた後、第2段が開始される。このフェーズで、スラリーの圧力が低い圧力まで降下される。急速な減圧によって、スラリーの自由水の約半分が瞬時に放出される。減圧による脱水では、熱をまったく浪費しないことから、水を加熱沸騰させて除去するよりもはるかに効率的である。「フラッシュされた」水は、流入する方法流を加熱する方法の最初につながるパイプを上って送られる。
【0196】
この第2段では、鉱物が沈降し、貯蔵タンクに分岐供給される。七面鳥廃棄物では、これらの鉱物はほとんどが骨からくるものである。鉱物は、カルシウムとリンを豊富に含有する褐色の乾燥粉末として出てくる。これは、微量栄養素のバランスが良いことから、肥料として使用可能である。特に、これは有用な範囲の微量栄養素と粗大栄養素とを有する。この鉱物は、植物の健全な成長と発達に必要なカルシウムやリンなどの元素を適正量で含有している。
【0197】
パイロットプラントでは、残りの濃縮有機物質が油最終加工段の反応器に流入し、上述したように油最終加工段での処理に付される。この処理によって得られるガスを、本発明の方法を加熱するためにプラント内で現場利用した。油と炭素は、より価値の高い有用な生成物として貯蔵庫に流入する。
【0198】
フィードストックと、第1段および油最終加工段での処理時間とに応じて、本発明の方法を用いて、方法のさまざまなセクションで抽出される他のスペシャルティケミカルを作ることが可能である。たとえば、七面鳥臓物から、石鹸、タイヤ、塗料、潤滑剤に使用される脂肪酸を作ることができる。
【0199】
実施例3:運転プラント
商業規模の大型施設が建設中であり、さらにいくつかの設備が開発段階にある。ピーク時には、このプラントは1日あたり500バレルを超える量の油を生産するよう設計されており、そのうちの一部をシステムに戻してシステム動力源としての熱を生成することが可能である。生成される油は、#2加熱用油と同じ等級の上質油である。このプラントでは約21,000ガロンの水を生成するが、これは都市の下水道に流せるだけのきれいなものであり、病原媒介生物も含まれない。このプラントでは、約25トンの鉱物、濃縮物および炭素も生成する予定である。
【0200】
実施例4:廃棄物質の転換例
本発明の方法を用いて以下の廃棄物質を100ポンドずつ有用な物質に転換した場合の最終生成物とその割合とを表1に示す。都市下水廃棄物(下水汚泥75%とグリーストラップ廃棄物25%とを含む);タイヤ;家禽加工廃棄物(臓器、骨、血液、羽毛および脂肪を含む);プラスチックボトル(炭酸飲料のボトルを製造するのに用いられるポリエチレンテレフタレート(PET)と牛乳用の容器を製造するのに用いられる高密度ポリエチレン(HDPE)とのブレンドを含む);紙;医療廃棄物(主に病院から出るものであり、プラスチック製注射器、輸液袋、ガーゼ、包装紙、含水廃棄物を含む);重油(精油所−真空残渣およびオイルサンドなど)。表1に示す量はポンド単位である。
【0201】
【表10】

【0202】
牛および豚の加工廃棄物からの収量が家禽加工廃棄物の場合に近いことは、指摘に値する。
【0203】
実施例5:石炭微粉および高硫黄炭からの汚染物質の除去
未処理微粉、高硫黄炭、各々に適用した本発明の方法の生成物について、低検出(low detection)水銀分析を実施した。いずれの場合も、0.01ppmを検出限界とした。石炭微粉の未処理原料での水銀レベルは0.12ppmであった。加工済み炭素では水銀が検出されなかった。
【0204】
高硫黄炭の未処理原料での水銀レベルは0.02ppmであった。ここでも、加工済み炭素では水銀が検出されなかった。
【0205】
実施例6:石炭微粉からの硫黄汚染物質の除去
未処理微粉には、1.71%の硫黄が含まれていた。複合炭素には1.58%の硫黄が含まれていたが、これは未処理微粉に対して7.6%の削減であった。本発明の方法を1回適用して生成された炭素では、硫黄含有量1.51%であり、これは未処理原料に対して11.6%の削減であった。
【0206】
実施例7:高硫黄炭からの硫黄汚染物質の除去
未処理原料の高硫黄炭には、2.34重量%の硫黄が含まれていた。本発明の方法を1回適用した後、得られた固体生成物には2.11重量%の硫黄が含まれていた。
【0207】
実施例8:低硫黄炭からの汚染物質の除去
未処理炭には1.08%の硫黄が含まれていた。本発明の方法で得られた炭素には0.49%の硫黄が含まれていたが、これは54.6%の削減であった。生成された水でも極めて低濃度の硫黄(45ppm)しか検出されなかった。
【0208】
同じ試料に対し本発明の方法を別途適用した場合、炭素には0.57%の硫黄が含まれていたが、これは47.2%の削減であった。この適用で生成されたガス(方法から放出されたガス)には0.9重量%の硫黄が含まれており、このように、除去された硫黄はほとんどが最後はガス生成物になることが示された。
【0209】
最初の硫黄含有量がすでに極めて低い場合、硫黄含有汚染物質の約半分もの量を除去可能であることが重要である。
【0210】
本発明の方法は水銀の除去にも役立つ。約10ppbまでの検出レベルが可能な本発明の方法で生成された炭素には、水銀が基本的に存在しなかった。生成された水では、30ppb(0.028ppm)のレベルで水銀が検出されたことから、石炭から水銀が除去されると、この水銀は水に移動することが分かった。水銀が水に含まれていれば、安全に処分しやすい。水から炭化水素を留去し、真空蒸留ユニットを用いて濃縮する。このようにして得られる水銀−濃縮水にケイ酸塩結晶化を行い、これによって得られる不溶度の高いケイ酸塩結晶をコンテナ輸送して、有毒金属貯蔵場である危険廃棄物用地に貯蔵されることになる。
【0211】
実施例9:加水分解油
本発明の方法を用いて、広範囲にわたる有機物質から異なる組成の油を生成することが可能である。動物の臓物をフィードストックとして利用して一例としての燃料を生成し、加水分解段の後で本発明の方法から外した。この燃料から生じる微粒子の放出は、実質的に無視できるものである。この燃料によって、精製所またはブレンダーらは、代替燃料または可燃性燃料のブレンド成分のいずれかとして使用可能な米国石油協会(API)の狭い範囲の40−プラス再生可能燃料を得られる。この燃料の際だった特性を表2に示す。以下の表にあげた試験方法については、ASTM(米国材料試験協会)のコードで示してある。
【0212】
【表11】

【0213】
実施例10:液体混合物由来の燃料
上述したように、この方法で生成された液体混合物は、そのままで使用することも可能であるし、食品、肥料、燃料または他の生成物として濃縮形態で適用しても構わないものである。本発明による一例としての2種類の液体混合物由来燃料の特性を以下の表3に示す。表中、試験方法についてはASTMコード(接頭辞Dが付いた規格)またはAOACコードで示してある。それぞれの燃料は、家畜肥料、汚泥、食品の製造流通における副生成物を含む未処理原料の試料から生成したものである。
【0214】
【表12】

【0215】
実施例11:油最終加工段の反応器および冷却器/凝縮器の実施形態
図8Aおよび図8Bは、本発明の方法で用いる装置の概略的な実施形態を示している。好ましい油最終加工段の反応器のいくつかの要素も図6に示される。
【0216】
図8Aは、本発明の方法の油最終加工段で用いる好ましい装置を概略的に示している。有機液500は貯蔵タンク812に送られる。任意に、有機液および油を液体/液体分離器814まで導き、分留済み液/油の第1の部分816と、分留済み液/油の第2の部分822すなわち残りとに分けてもよい。分留済み液/油の第1の部分を最終生成物貯蔵庫818に導き、再利用または販売可能な分留済み液/油820として分配してもよい。分留済み液/油の第2の部分822は、1つ以上の予熱器830にリダイレクトされる。
【0217】
加熱された後、分留済み液/油822または未分離液/油500を、好ましくはスチーム602と一緒に加熱器610に送る。このようにして得られる液体および気化液/油836をオーガなどの反応器620に送り、炭化水素蒸気およびガス148と炭素固体142とに分離される。炭化水素蒸気およびガス148は、図8Bにさらに示す冷却器/凝縮器850に送られる。残留炭素固体844など、油蒸気およびガス中に残った微粒子がある場合、これを除去して反応器620に戻す。
【0218】
炭素固体142を、エアロック846を介して炭素固体冷却器630に導き、水632と混合する。このようにして得られる水と炭素固体との混合物を、別のエアロック854を介して最終生成物貯蔵システム650に送る。最終生成物の炭素固体142については、1つ以上の商業的利用分野に流通させることができる。
【0219】
図8Aに示される装置800と併用されるのは、図8Bに示される冷却器/凝縮器850である。冷却器/凝縮器850は、水および微粒子も含有することがある油蒸気とガスとの混合物が多数の異なる分離ステップに付される多数の分離サイクルを容易にする。反応器620からの炭化水素蒸気およびガス148は、残留炭素固体844などの残りの固体粒子を分離し、このような固体を反応器620に戻す炭素微粒子分離器842まで移動する。
【0220】
炭素微粒子分離器から出た炭化水素蒸気およびガスは、当業者であれば理解できるであろう一般原則に従って実装される蒸気急冷システム860まで移動する。蒸気急冷システムから、油およびガス870が油/水/ガス分離器872まで移動し、これがさらに油862、廃油876、ガスおよびLPG874、油/炭素スラリー881などのさまざまな成分を分離する。
【0221】
油862は熱交換器864まで移動した後、最終生成物貯蔵システム866まで移動し、油144として販売される。
【0222】
ガスおよび液体石油ガス(「LPG」)874が、他のガス状成分からLPG898を分離する凝縮器890に移動する。ガス894は過熱器892まで送られ、燃料ガス146を生成するが、これをエネルギー源として1つ以上の装置に送り出すことが可能である。LPG898は、以下の要領で再利用される。まず、LPG898は液体/固体分離器884の中に通されて、残留炭素固体886がすべて除去される。次に、油/炭素スラリー881から分離された油と混合された分離済みLPGが油/水/ガス分離器872に戻され、さらなる分離が起こる。ガスおよびLPGの混合物が分離されて凝縮されるこのサイクルを、所望の回数だけ繰り返すことが可能である。
【0223】
油/固体混合物、すなわち、一般には、油/炭素スラリー881を、残留炭素固体886を除去するために油/水/ガス分離器872から液体/固体分離器884まで導いてもよい。LPGと混合された分離済み油は、好ましくは、適宜リダイレクトするために油/水/ガス分離器まで戻される。
【0224】
油/水/ガス分離器872からの廃油876は、油/水分離器878に送られ、水880を放出させるか、あるいはこれを再利用してもよい。油/水分離器からの油882は、分離サイクルをさらに繰り返すために油/水/ガス分離器まで戻される。
【0225】
上述した説明は、本発明のさまざまな態様を例示するためのものである。本願明細書にて提示した実施例は、本発明の範囲を限定することを意図したものではない。以上、本発明について十分に説明がなされており、添付の特許請求の範囲の精神または範囲から逸脱することなく、これに多くの変更および修正を加えることができることは、当業者であれば自明であろう。
【図面の簡単な説明】
【0226】
【図1】本発明による方法全体のフローチャートを示す。
【図2】本発明の方法を実施するにあたって用いられる装置の概略を示す。
【図3】本発明の方法の調製および加水分解段での反応のフローチャートを示す。
【図4】本発明の方法の第2の分離段のフローチャートを示す。
【図5】本発明の方法の油最終加工段での反応のフローチャートを示す。
【図6】本発明の方法の油最終加工段を実施するための装置を示す。
【図7】流体から細かい懸濁物質を分離するための装置を示す。
【図8A】本発明による方法で油最終加工段の反応器を使用することを示す。
【図8B】本発明による方法で冷却器/凝縮器を使用することを示す。
【図9】さまざまな温度でのフィードストックの粘度と剪断率との関係を示す。
【図10】破砕残渣の転換に適用した場合の本発明の方法のフローチャートを示す。
【図11】解重合反応器および分離ユニットの実施形態を示す。
【図12】本発明に用いられるベンチスケール試験装置を示す。
【図13】破砕残渣試料を示す。
【図14】さまざまな大きさの破砕残渣画分を示す。
【図15】本発明による方法を破砕残渣に適用した場合の解重合生成物を示す。
【図16】本発明による方法の中間生成物を示す。
【図17】破砕残渣を未処理フィードストックとして用いて生成された加水分解中間体油を示す。
【図18】本発明の方法のさまざまな開始物質、中間体、最終生成物を示す。
【図19】本発明の方法を用いて生成可能な一例としての蒸留分解油生成物を示す。
【図20】破砕残渣に適用した場合に本発明の方法から燃料−ガスをクラッキングする際に見られるさまざまな化学物質の分解を示す。
【図21】5回実施した場合の加水分解段収率に基づく、本発明の方法の実施ごとの収率の整合性を示すグラフである。
【図22】本発明による方法の解重合ステップ、加水分解ステップおよび油最終加工ステップによって乾燥有機物がさまざまな物質およびガスに転換する様子をトレースした図である。
【図23】本発明の方法を破砕残渣に適用した場合の物質バランスの図である。
【図24】本発明の方法において水をどのように用いて再利用するかを概略的に示したものである。
【図25】本発明により設計された装置における水の動きの図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィードストックからスラリーを調製し、
前記スラリーに解重合方法を施して、少なくとも1種の無機物質と液体混合物とを含む組成物を形成し、
前記少なくとも1種の無機物質を前記液体混合物から分離し、
前記液体混合物から燃料を誘導する
ことを含む、
フィードストックから燃料を製造するための方法。
【請求項2】
前記フィードストックが、家畜肥料、汚泥、食品の製造流通の副生成物、プラスチック廃棄物、ゴムまたはタイヤを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フィードストックが、炭化水素を主成分とするフィードストックである、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記調製または加熱の前に、有機溶剤を前記スラリーに加えることをさらに含む、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記フィードストックが、有機フィードストックである、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記誘導することが、前記液体混合物に熱転換方法を施すことを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記誘導することが、前記液体混合物を水素処理することを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
請求項1の方法で生成された燃料油。
【請求項9】
燃焼駆動式の装置に燃料を供給する方法であって、
請求項1の方法で生成された液体混合物で前記装置に動力を供給することを含む、方法。
【請求項10】
フィードストックからスラリーを調製し、
前記フィードストックを少なくとも1種の無機物質と液体混合物とを含む組成物に解重合するのに十分な温度で前記スラリーを加熱し、
前記少なくとも1種の無機物質を前記液体混合物から分離し、
前記液体混合物から肥料を誘導する
ことを含む、
フィードストックから肥料を製造するための方法。
【請求項11】
請求項10の方法で生成された肥料を適用することを含む、
植物に施肥する方法。
【請求項12】
フィードストックからスラリーを調製し、
前記フィードストックを少なくとも1種の無機物質と液体混合物とを含む組成物に解重合するのに十分な温度で前記スラリーを加熱し、
前記少なくとも1種の無機物質を前記液体混合物から分離し、
前記液体混合物から食品を誘導する
ことを含む、
フィードストックから食品を製造するための方法。
【請求項13】
請求項12の方法で生成された食品を動物に与える
ことを含む、
動物に給餌する方法。
【請求項14】
破砕残渣を溶剤に溶解させ、
前記破砕残渣からスラリーを調製し、
前記スラリーに解重合ステップを施して液体混合物を生成し、
前記液体混合物に加水分解ステップを施して有機液を生成し、
前記有機液から油を誘導する
ことを含む、
破砕残渣を油に転換する方法。
【請求項15】
前記解重合ステップが、約700°Fから約775°Fの範囲の温度で行われる、
請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記加水分解ステップが、約440°Fから約500°Fの範囲の温度で行われる、
請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記解重合ステップが、約700°Fから約775°Fの範囲の温度で行われ、
前記加水分解ステップが、約440°Fから約500°Fの範囲の温度で行われる、
請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記溶剤が、油である、
請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記溶剤が、前記転換により得られた油である、
請求項14に記載の方法。
【請求項20】
破砕残渣と1種以上のタイヤとを含む原流を溶剤に溶解させてスラリーを生成し、
前記スラリーに解重合ステップを施して液体混合物を生成し、
前記液体混合物に加水分解ステップを施して有機液を生成し、
前記有機液から油を誘導する
ことを含む、
破砕残渣と1種以上のタイヤとを含む原流を燃料に転換する方法。
【請求項21】
前記解重合ステップが、約700°Fから約775°Fの範囲の温度で行われる、
請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記加水分解ステップが、約440°Fから約500°Fの範囲の温度で行われる、
請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記解重合ステップが、約700°Fから約775°Fの範囲の温度で行われ、
前記加水分解ステップが、約440°Fから約500°Fの範囲の温度で行われる、
請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記溶剤が、油である、
請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記溶剤が、前記転換により得られた油である、
請求項20に記載の方法。
【請求項26】
請求項14の方法で製造された、燃料油。
【請求項27】
請求項20の方法で製造された、燃料油。
【請求項28】
前記誘導することが、前記液体混合物に加水分解ステップを施して有機液を形成し、前記有機液を燃料に転換することを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記転換することが、前記液体混合物を水素処理することを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記転換することが、前記液体混合物に熱転換方法を施すことを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項31】
前記フィードストックが、脂肪、グリースおよび/またはタンパク質源を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項32】
前記フィードストックが、動物の糞尿、植物廃棄物、廃棄物、またはエタノール製造施設からの低価値流を含む、
請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2009−511734(P2009−511734A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−536592(P2008−536592)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【国際出願番号】PCT/US2006/038024
【国際公開番号】WO2007/047063
【国際公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(505357247)エービー−シーダブリューティー,エルエルシー (6)
【Fターム(参考)】