有機薄膜、有機薄膜の製造方法、電界効果トランジスタ、有機発光素子、太陽電池、表示装置用アレイ及び表示装置
【課題】有機分子の配向性が制御されて十分な機能を有する有機薄膜及びその製造方法、並びに該有機薄膜を用いた有機電子デバイス及び表示装置の提供。
【解決手段】基材60上に第一の有機分子61を化学結合させて立設し、点在させ、第二の有機分子62を導入し、第一の有機分子61に対して第二の有機分子62を配列させて、有機薄膜6を形成する。第一の有機分子61及び第二の有機分子62が有機半導体分子である、かかる有機薄膜を、有機半導体層として設け、電界効果トランジスタとする。
【解決手段】基材60上に第一の有機分子61を化学結合させて立設し、点在させ、第二の有機分子62を導入し、第一の有機分子61に対して第二の有機分子62を配列させて、有機薄膜6を形成する。第一の有機分子61及び第二の有機分子62が有機半導体分子である、かかる有機薄膜を、有機半導体層として設け、電界効果トランジスタとする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機薄膜及びその製造方法、並びに該有機薄膜を用いた電界効果トランジスタ、有機発光素子、太陽電池、表示装置用アレイ及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ユビキタス情報社会を迎え、情報端末としてフレキシブル、軽量、かつ安価なデバイスが求められている。さらに、このような情報端末としてのアプリケーションを想定した場合、大量生産のみならず、様々なユーザーの要求に対して迅速に対処できるプロセスが必要となる。こうしたデバイスやプロセスは、従来からあるシリコン系デバイス技術の延長ではその要望に十分に対応できない。そこで近年、このような要望に応え得る技術として、有機材料を半導体等に用いた電子デバイス技術の研究が盛んに行われている。その中でも、有機半導体材料を用いた有機トランジスタ(OFET)、有機発光ダイオード(OLED)、有機太陽電池などの有機電子デバイスが注目され、その一部ではすでに実用化が始まっている。
【0003】
このような有機電子デバイスがその機能を発現するためには、基本構造として有機薄膜を備えることが必要となる。例えば、一般的な有機薄膜トランジスタは、ゲート電極上に絶縁体層が設けられ、さらに絶縁体層上に、有機半導体薄膜からなる層が設けられた構造を有する。ここでは、有機薄膜トランジスタを例に挙げたが、有機薄膜は半導体であるか否かによらず、各種デバイスに幅広く応用されており、産業上極めて重要なものである。
【0004】
有機電子デバイスでは、構成する分子の配向性が、デバイスの機能発現に際して極めて重要な要素となる。有機単結晶は、配向の欠損が殆ど無く、有機電子デバイスとしては理想的であるが、所望のサイズの単結晶を作成しデバイス上に配置することは極めて困難であり、例えば、単結晶トランジスタはごく一部の有機半導体材料のみでしか実現出来ていない。一方、有機薄膜は、真空蒸着法などのドライプロセスや、スピンコート法、印刷法などのウエットプロセスで作製されるが、その作製条件によっては、有機分子が多様な形態で凝集するため、所望の有機薄膜が得られるように、分子の配向性を制御することは容易ではない。 これは、薄膜形成に用いるような有機分子では、分子間力が主にファンデルワールス力であり、比較的弱い力であるため、有機分子が基材との相互作用に強く影響されることが一因である。
【0005】
有機分子を配列させる方法としては、自己組織化単分子膜(以下、SAM膜と略記する)の技術を利用したものが例示できる。SAM膜とは、有機分子が自己整合的に秩序性を持って集積された単分子膜のことであり、SAM膜と、SAM膜に隣接する膜(基材)とは、化学結合により連結される。例えば、長鎖アルキル基からなるSAM膜は、トランジスタのゲート絶縁膜における濡れ性の改善や、電極における接触抵抗低減のための表面修飾剤として一般に用いられている。また、有機半導体分子を含むSAM膜は、通常の溶液プロセスで容易に広い面積で作製でき、基材と有機半導体分子とが強固な化学結合によって連結可能なことから、フレキシブルデバイスへの応用が期待される。例えば、これまでに、シランカップリング部位を有するオリゴチオフェンを用いて基材上にSAM膜を形成し、このSAM膜を備えたトランジスタデバイスは、0.04cm2/(Vs)の移動度を示すことが開示されている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Nature,第455巻,956(2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、同様のπ電子共役系を有する有機分子であって、配向の欠損が無いオリゴチオフェン単結晶を用いたトランジスタ(「Appl.Phys.Lett.,第73巻,(1998)」参照)では、0.5cm2/(Vs)の移動度を示しており、非特許文献1に記載されたトランジスタデバイスは、これに比べて一桁小さな移動度しか示さない。その主たる原因としては、トランジスタの活性層となるSAM膜において、有機半導体分子がその特性を十分に発揮できる最適な分子配列の周期性と、有機半導体分子が実際に基材と連結された状態での分子配列の周期性とが整合していないこと(ミスマッチング)が考えられる。有機半導体分子は、通常カップリング剤を介して基材と連結されるが、その場合、カップリング部位によって分子配列の周期性が決定される。このミスマッチングについて、図1を参照しながらより具体的に説明する。
【0008】
図1において、有機分子63は、シランカップリング部位63aを介して基材60と連結され、単分子膜である有機薄膜6’を形成している。なお、ここでは判り易くするために、有機分子63を長方形で示している。そして、シランカップリング部位63aにおける、隣り合うケイ素原子(Si)間の距離Laによって、隣り合う有機分子63間の距離が決定され、分子配列の周期はLbとなる。そして、実質的にLa及びLbはほぼ等しくなり、その値は約4.3Å(オングストローム)であることが知られている(「An Introduction to Ulutrahin Organic Film,257,Academic press 1991」参照)。
これに対して、有機分子63がπ電子共役系を有する場合、隣り合う有機分子63の間で分子間相互作用が最大になると考えられる分子間の距離は、理論上、π電子共役分子のファンデルワールス半径の和である約3.4Åであり、例えば、有機分子63が上記のオリゴチオフェンである場合など、ファンデルワールス半径が大きい硫黄原子が含まれることを考慮しても約3.6Åに過ぎない。このように、従来の有機薄膜6’では、有機分子63の分子配列の周期Lb(約4.3Å)は、前記分子間相互作用が最大になる分子間の距離(約3.4〜3.6Å)よりも大きいために、隣り合う有機分子63間での分子間相互作用が不十分となり、有機薄膜6’が所望の機能を発現できないと考えられる。なお、ここでは、有機分子がπ電子共役系を有する場合について説明したが、π−π相互作用以外の分子間相互作用を発現する有機分子についても、同様の問題点がある。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、有機分子の配向性が制御されて十分な機能を有する有機薄膜及びその製造方法、並びに該有機薄膜を用いた有機電子デバイス及び表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、基材上に設けられた有機薄膜の製造方法であって、前記基材上に第一の有機分子を化学結合させて立設し、点在させる工程と、前記基材上に第二の有機分子を導入し、前記第一の有機分子に対して前記第二の有機分子を配列させて、薄膜を形成する工程と、を有することを特徴とする有機薄膜の製造方法を提供する。
また、本発明は、かかる有機薄膜の製造方法において、前記第一の有機分子に対して前記第二の有機分子を分子間相互作用により配列させることを特徴とする有機薄膜の製造方法を提供する。
また、本発明は、かかる有機薄膜の製造方法において、前記第一及び第二の有機分子が、π電子共役系を有することを特徴とする有機薄膜の製造方法を提供する。
また、本発明は、かかる有機薄膜の製造方法において、前記第一の有機分子が溶解された溶液を前記基材と接触させて、前記第一の有機分子を前記基材上に化学結合させることを特徴とする有機薄膜の製造方法を提供する。
また、本発明は、かかる有機薄膜の製造方法において、前記第一の有機分子が溶解された溶液の濃度により、前記基材上に化学結合された前記第一の有機分子の密度を調節することを特徴とする有機薄膜の製造方法を提供する。
また、本発明は、かかる有機薄膜の製造方法において、前記第一の有機分子が溶解された溶液と前記基材との接触時間により、前記基材上に化学結合された前記第一の有機分子の密度を調節することを特徴とする有機薄膜の製造方法を提供する。
また、本発明は、かかる有機薄膜の製造方法において、前記第二の有機分子が溶解された溶液を塗布することで、前記第二の有機分子を前記基材上に導入することを特徴とする有機薄膜の製造方法を提供する。
また、本発明は、かかる有機薄膜の製造方法において、前記第二の有機分子を蒸着させることで、前記基材上に導入することを特徴とする有機薄膜の製造方法を提供する。
また、本発明は、かかる有機薄膜の製造方法において、前記基材が親水性基を有し、前記第一の有機分子が、下記一般式(I)で表される有機ケイ素化合物であることを特徴とする有機薄膜の製造方法を提供する。
【0011】
【化1】
(式中、Rはπ電子共役系を有する有機基であり;X1、X2及びX3はそれぞれ独立して、これらが結合しているケイ素原子(Si)と前記親水性基との反応で離脱する基である。)
【0012】
また、本発明は、基材上に設けられた有機薄膜であって、前記基材上に、第一の有機分子が化学結合により立設及び点在され、第二の有機分子が、前記第一の有機分子に対して配列されてなることを特徴とする有機薄膜を提供する。
また、本発明は、かかる有機薄膜において、前記第一の有機分子に対して前記第二の有機分子が分子間相互作用により配列されてなることを特徴とする有機薄膜を提供する。
また、本発明は、かかる有機薄膜において、前記第一及び第二の有機分子が、π電子共役系を有することを特徴とする有機薄膜を提供する。
また、本発明は、かかる有機薄膜において、前記第一の有機分子が含まれる溶液と前記基材との接触により、前記第一の有機分子が前記基材上に化学結合されたことを特徴とする有機薄膜を提供する。
また、本発明は、かかる有機薄膜において、前記第一の有機分子が含まれる溶液の濃度により、前記基材上に化学結合された前記第一の有機分子の密度が調節されたことを特徴とする有機薄膜を提供する。
また、本発明は、かかる有機薄膜において、前記第一の有機分子が含まれる溶液と前記基材との接触時間により、前記基材上に化学結合された前記第一の有機分子の密度が調節されたことを特徴とする有機薄膜を提供する。
また、本発明は、かかる有機薄膜において、前記第二の有機分子が含まれる溶液の塗布により、前記第二の有機分子が前記基材上に導入され、配列されたことを特徴とする有機薄膜を提供する。
また、本発明は、かかる有機薄膜において、前記第二の有機分子が蒸着により、前記基材上に導入され、配列されたことを特徴とする有機薄膜を提供する。
また、本発明は、かかる有機薄膜において、 前記基材が親水性基を有し、前記第一の有機分子が、下記一般式(I)で表される有機ケイ素化合物であることを特徴とする有機薄膜を提供する。
【0013】
【化2】
(式中、Rはπ電子共役系を有する有機基であり;X1、X2及びX3はそれぞれ独立して、これらが結合しているケイ素原子(Si)と前記親水性基との反応で離脱する基である。)
【0014】
また、本発明は、有機半導体層を備えた電界効果トランジスタであって、かかる有機薄膜において、前記第一及び第二の有機分子が有機半導体分子である有機薄膜を、前記有機半導体層として備えたことを特徴とする電界効果トランジスタを提供する。
また、本発明は、かかる電界効果トランジスタにおいて、ゲート電極、ゲート絶縁膜、ソース電極、ドレイン電極及び有機半導体層を備え、前記有機半導体層が、前記ゲート絶縁膜を介して前記ゲート電極と対向するように設けられており、前記ソース電極及びドレイン電極が、前記有機半導体層上に接するように設けられていることを特徴とする電界効果トランジスタを提供する。
また、本発明は、かかる電界効果トランジスタにおいて、ゲート電極、ゲート絶縁膜、ソース電極、ドレイン電極及び有機半導体層を備え、前記有機半導体層が、前記ゲート絶縁膜を介して前記ゲート電極と対向するように設けられており、前記ソース電極及びドレイン電極が、前記ゲート絶縁膜上に設けられていることを特徴とする電界効果トランジスタを提供する。
【0015】
また、本発明は、基材上に一対の電極を備え、前記一対の電極間に、少なくともキャリア輸送層及び発光層を備えた有機発光素子であって、かかる有機薄膜において、前記第一及び第二の有機分子が有機半導体分子である有機薄膜を、前記キャリア輸送層として備えたことを特徴とする有機発光素子を提供する。
また、本発明は、基材上に一対の電極を備え、前記一対の電極間に、p型半導体層及びn型半導体層を備えた太陽電池であって、かかる有機薄膜において、前記第一及び第二の有機分子が有機半導体分子である有機薄膜を、前記p型半導体層及び/又はn型半導体層として備えたことを特徴とする太陽電池を提供する。
また、本発明は、かかる電界効果トランジスタをスイッチング素子として備えたことを特徴とする表示装置用アレイを提供する。
また、本発明は、画像信号を発生して出力する画像信号出力部と、前記画像信号に基づいて電流又は電圧を発生する駆動部と、発生した前記電流又は電圧により発光する発光部と、を備えた表示装置であって、前記発光部が、かかる有機発光素子であることを特徴とする表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、有機分子の配向性が制御されて十分な機能を有する有機薄膜及びその製造方法、並びに該有機薄膜を用いた有機電子デバイス及び表示装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】有機薄膜における分子配列の周期性のミスマッチングを説明するための模式図である。
【図2】本発明に係る有機薄膜の製造方法を説明するための模式図である。
【図3】第一の有機分子が基材とシロキサン結合を形成して結合している様子を例示する模式図である。
【図4】第一の有機分子が含まれる液体を用いて、第一の有機分子を基材上に点在させる場合について、液体中における第一の有機分子の濃度と仕事関数との関係を例示するグラフである。
【図5】第一の実施形態に係る電界効果トランジスタの要部を例示する概略断面図である。
【図6】第二の実施形態に係る電界効果トランジスタの要部を例示する概略断面図である。
【図7】第三の実施形態に係る電界効果トランジスタの要部を例示する概略断面図である。
【図8】第四の実施形態に係る電界効果トランジスタの要部を例示する概略断面図である。
【図9】図5に示す電界効果トランジスタの製造方法を説明するための概略断面図である。
【図10】図6に示す電界効果トランジスタの製造方法を説明するための概略断面図である。
【図11】本発明に係る太陽電池の要部を例示する概略断面図である。
【図12】図11に示す太陽電池の製造方法を説明するための概略断面図である。
【図13】本発明に係る有機発光素子の要部を例示する概略断面図である。
【図14】図13に示す有機発光素子の製造方法を説明するための概略断面図である。
【図15】本発明に係る表示装置用アレイの要部を例示する概略図であり、(a)は平面図、(b)は拡大平面図、(c)は(b)のC−C線における断面図、(d)は(b)のD−D線における断面図である。
【図16】本発明に係る表示装置用アレイにおける有機半導体装置の製造方法を説明するための概略断面図である。
【図17】本発明に係る表示装置の要部を例示する概略図であり、(a)は平面図、(b)は1画素の等価回路図、(c)は1画素の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<有機薄膜及びその製造方法>
本発明に係る有機薄膜の製造方法は、基材上に設けられた有機薄膜の製造方法であって、前記基材上に第一の有機分子を化学結合させて立設し、点在させる工程(以下、「点在化工程」と略記する)と、前記基材上に第二の有機分子を導入し、前記第一の有機分子に対して前記第二の有機分子を配列させて、薄膜を形成する工程(以下、「成膜工程」と略記する)と、を有することを特徴とする。かかる製造方法について、以下、図2を参照しながら詳しく説明する。
【0019】
[点在化工程]
図2は、本発明に係る有機薄膜の製造方法を説明するための模式図である。
点在化工程では、図2(a)及び(b)に示すように、基材60上に、第一の有機分子61を化学結合させて立設し、点在させる。本工程では、第一の有機分子61が基材60上に点在するだけなので、第一の有機分子61は薄膜を形成しない。なお、図2では判り易くするために、第一の有機分子61を長方形で、第一の有機分子61と基材60との結合部位を三角形で、それぞれ示している。
【0020】
基材60は、有機薄膜の用途に応じて任意に選択できる。例えば、有機半導体薄膜を製造する場合には、薄膜の材質、デバイスの構成及び性能等を考慮して、基材60を適宜選択すればよく、具体的な材質としては、シリコン単結晶、多結晶シリコン、アモルファスシリコン、ゲルマニウム(Ge)等の元素半導体;ガリウムヒ素(GaAs)、インジウムガリウムヒ素(InGaAs)、セレン化亜鉛(ZnSe)等の化合物半導体;石英ガラス等のガラス;ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリテトラフルオロエチレン等の絶縁性高分子化合物が例示できる。
また、第一の有機分子61が結合できるものであれば、基材60として薄膜を用いてもよい。すなわち、第一の有機分子61を結合させて、二層構造の薄膜とすることもできる。
【0021】
また、基材60は、その表面に酸化シリコン(SiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)等の金属酸化膜が形成されていてもよい。
そして、好ましい基材60としては、水酸基(−OH)、カルボキシル基(−C(=O)−OH)、アミノ基(−NH2)、ヒドロキシルアミノ基(−NHOH)、イミノ基(=NH)、チオール基(−SH)等の活性水素を有する親水性基が表面に露出された、親水化処理されたものが例示できる。
親水化処理は、例えば、過酸化水素及び濃硫酸を含む溶液中に未処理の基材を浸漬することで行うことができる。また、前記金属酸化膜が表面に形成された基材を、UVオゾン処理、酸化プラズマ処理等することでも行うことができる。
【0022】
基材60は、単層構造及び複数層構造のいずれでもよく、複数層構造である場合には、層数も特に限定されず、すべてが同じ材質でもよいし、すべてが異なる材質でもよく、一部が異なる材質でもよい。
【0023】
基材60は、フィルム状又はプレート状であることが好ましく、厚さは目的に応じて適宜選択すればよいが、0.1〜3mmであることが好ましい。
【0024】
第一の有機分子61は、後述する第二の有機分子62を配列させ、且つ基材60の表面と化学結合するものであれば特に限定されず、第二の有機分子62との間で分子間相互作用を発現するものが好ましい。ここで、分子間相互作用としては、π−π相互作用、ファンデルワールス力による相互作用、水素結合による相互作用、クーロン力による相互作用(電荷−電荷相互作用)、電荷移動相互作用等が例示できる。そして、第一の有機分子61としては、半導体分子も好ましい。
また、第一の有機分子61は、基材60との結合部位が、分子の末端又はその近傍にあるものが好ましく、基材60との結合部位が一つであるものが好ましい。
【0025】
第一の有機分子61としては、有機ケイ素化合物が好ましく、基材60とシロキサン結合(−Si−O−)を形成して結合するものがより好ましい。図3は、第一の有機分子61が基材60とシロキサン結合(−Si−O−)を形成して結合している様子を例示する模式図である。ここでは、基材60として、表面に酸化シリコン(SiO2)の膜が形成されたものを示しており、一部で水酸基(−OH)が露出され、親水化されている。そして、第一の有機分子61は、その構造中のケイ素原子が基材60上の水酸基と反応してシロキサン結合を形成し、シランカップリング部位61aを形成している。これは、基材60として、表面が親水化処理されたものを用いれば、いずれも同様である。なお、シランカップリング部位61aの一つのケイ素原子は第一の有機分子61に由来し、シランカップリング部位61aの三つの酸素原子は基材60に由来する。
一方、シランカップリング部位61aの三つの酸素原子は、基材60上で三脚状に、基材60のケイ素原子と結合していると考えられる。これにより、第一の有機分子61が基材60の表面に対して略垂直な方向に分子鎖を伸ばして結合する効果が促進されると考えられる。
なお、第一の有機分子は、基材に結合することで、この結合に関与した部位の構造が一部変化するが、本明細書においては便宜上、基材に結合後も第一の有機分子と称する。
【0026】
第一の有機分子61は、下記一般式(I)で表される有機ケイ素化合物(以下、有機ケイ素化合物(I)と略記する)であることが好ましい。
【0027】
【化3】
(式中、Rはπ電子共役系を有する有機基であり;X1、X2及びX3はそれぞれ独立して、これらが結合しているケイ素原子(Si)と前記親水性基との反応で離脱する基である。)
【0028】
式中、Rはπ電子共役系を有する有機基であり、後述する第二の有機分子との間で、分子間相互作用(π−π相互作用)によりπ−πスタッキング構造を形成し得る基である。前記有機基は、π電子共役系を有していれば特に限定されず、各種芳香族基を有する基が例示できる。
【0029】
前記芳香族基は、単環状及び多環状のいずれでもよく、芳香族炭化水素基及び芳香族複素環式基のいずれでもよい。
前記芳香族炭化水素基としては、ベンゼン(C6H6)、ナフタレン(C10H8)、アントラセン(C14H10)、テトラセン(C18H12)、ピレン(C16H10)、ペンタセン(C22H14)、コロネン(C24H12)等の単環状又は多環状の芳香族炭化水素から、一つ以上の水素原子を除いた基が例示できる。除かれる水素原子の数は、Rにおける前記芳香族炭化水素基の位置や数等に応じて決定されるものであり、特に限定されない。
前記芳香族複素環式基は、芳香族環を構成する原子としてヘテロ原子を有するものであれば特に限定されず、前記ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子等が例示できる。芳香族複素環式基としてより具体的には、単環状又は多環状の芳香族複素環化合物から、一つ以上の水素原子を除いた基が例示でき、好ましい前記芳香族複素環化合物としては、チオフェン、フタロシアニン金属錯体が例示できる。ここで、錯体を構成する金属としては、遷移金属が例示できる。除かれる水素原子の数は、Rにおける前記芳香族複素環式基の位置や数等に応じて決定されるものであり、特に限定されない。
【0030】
前記有機基は、芳香族基のみからなるものでもよいし、脂肪族基、原子、イオン等の芳香族基以外の基を有していてもよい。前記原子、イオンで好ましいものとしては、金属原子、金属イオンが例示できる。
前記有機基が有する芳香族基の数は特に限定されないが、例えば、芳香族基が単環状である場合には、複数であることが好ましく、3以上であることがより好ましく、実用性も考慮すると3〜6であることが好ましい。
前記有機基が有する芳香族基の数が複数である場合には、これら芳香族基は、互いに直接結合していてもよいし、連結基を介して間接的に結合していてもよく、直接結合したものと間接的に結合したものとが混在していてもよい。このような、単環状の芳香族基を複数有する構造で好ましいものとしては、複数のチオフェンが互いに直接結合したオリゴチオフェン又はポリチオフェン、複数のベンゼンが互いに直接結合したオリゴフェニレン又はポリフェニレン、複数のベンゼンがビニレン基(−C=C−)を介して互いに結合したオリゴビニレンフェニレン又はポリビニレンフェニレン等から、一つ以上の水素原子を除いた構造が例示できる。
【0031】
式中、X1、X2及びX3はそれぞれ独立して、これらが結合しているケイ素原子(Si)と親水性基との反応で離脱する基である。すなわち、有機ケイ素化合物(I)中のケイ素原子と、基材が有する親水性基とが反応した時に、前記ケイ素原子との結合が切断される離脱基であり、加水分解性基であることが好ましい。
好ましいX1〜X3としては、ハロゲン原子、アルコキシ基が例示できる。
前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が例示できる。
前記アルコキシ基は、低級アルコキシ基が好ましく、炭素数1〜5のアルコキシ基が例示でき、炭素数が1〜3であることがより好ましく、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基が例示できる。
【0032】
好ましい有機ケイ素化合物(I)としては、下記一般式で表されるものが例示できる。
【0033】
【化4】
(式中、X1、X2及びX3はそれぞれ独立して、これらが結合しているケイ素原子(Si)と前記親水性基との反応で離脱する基であり;Mは遷移金属原子である。)
【0034】
式中、X1、X2及びX3は、一般式(I)におけるX1、X2及びX3と同じである。
式中、Mは遷移金属原子であり、銅原子が好ましい。
【0035】
上記で例示した有機ケイ素化合物(I)は、通常p型半導体としての性質を示すが、これら化合物の芳香族環を構成している一つ以上の水素原子をフッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル基(−CF3)、シアノ基(−C≡N)等の電子求引性基で置換することにより、n型有機半導体として用いることもできる。
【0036】
第一の有機分子61は、一種でもよいし二種以上でもよく、二種以上である場合、その組み合わせ及び比率は特に限定されないが、有機薄膜の配向性をより向上させるためには、一種であることが好ましい。
【0037】
第一の有機分子61は、基材60と接触させることで、基材60上に化学結合させることができるが、好ましくは第一の有機分子61が含まれる液体、より好ましくは第一の有機分子61が溶解された溶液を基材60と接触させるとよい。
基材60と結合した第一の有機分子61は、基材60上で分子鎖を上方向に伸ばすようにして立ち上がった状態で存在する。そして、基材60の表面が親水化処理されている場合に、よりこの状態をとり易いと考えられる。最も好ましいのは、第一の有機分子61が基材60の表面に対して略垂直方向に伸びた状態である。
【0038】
第一の有機分子61が、例えば、前記有機ケイ素化合物(I)等のように加水分解性基を有する場合、第一の有機分子61は水の存在下で加水分解され、自己縮合反応を起こすことがある。そこで、このような第一の有機分子61を含む液体を用いる場合、溶媒成分として無水のものを用いるか、または、第一の有機分子61の濃度を低くすることが好ましく、これらの条件を共に満たすことがより好ましい。
【0039】
第一の有機分子61は、基材60上で互いに接近し過ぎないように所定の距離をおいて基材60と接触させることで、点在させることができる。
第一の有機分子61が含まれる液体を用いて、第一の有機分子61を基材60上に点在させる場合、基材60上における第一の有機分子61の密度(点在の程度)は、例えば、前記液体中における第一の有機分子61の濃度、又は前記液体と基材60との接触時間により、容易に調節できる。具体的には、前記濃度を低くすることで密度を小さくでき、前記接触時間を短くすることで密度を小さくできる。
【0040】
通常、基材上における分子の密度(分子密度)は、直接測定することが困難である。そこで、分子密度と相関があることが知られている、基材表面の仕事関数の変化を評価することで、分子密度を間接的に評価する手法が適用される。
例えば、基材上の分子がダイポールモーメントμを有すると考えた場合、基材上の分子密度dと、ダイポールモーメントμによる基材表面の仕事関数の変化量ΔWFとは、下記式(1)で表される関係を有する。
ΔWF=μd/2ε0 ・・・・(1)
(式中、dは基材上の分子密度であり;μは分子が有するダイポールモーメントであり;ΔWFはダイポールモーメントμによる基材表面の仕事関数の変化量であり;ε0は真空中での誘電率である。)
一方、基材表面を構成する材料自身が有する仕事関数をWF0とすると、分子が結合された基材表面の仕事関数WFは下記式(2)で表される。
WF=WF0+ΔWF ・・・・(2)
(式中、WFは分子が結合された基材表面の仕事関数であり;WF0は基材表面を構成する材料自身が有する仕事関数であり;ΔWFはダイポールモーメントμによる基材表面の仕事関数の変化量である。)
式(2)において、WF0は定数であり、ΔWFは基材上の分子密度dと比例関係にあるので、仕事関数WFの変化を評価することによって、基材上の分子密度dの変化を評価できる。
【0041】
ここで、上記のように、第一の有機分子が含まれる液体を用いて、第一の有機分子を基材上に点在させる場合、第一の有機分子が基材上に結合する反応は、基材と第一の有機分子との反応速度式によって表すことができ、前記液体中における第一の有機分子の濃度と処理時間(反応時間、接触時間)によって変化する。そこで、前記式(2)のΔWFに反応速度式を組み込むと、下記式(3)が得られる。
WF=WF0+WFsat{1−exp(−k×t×Z1)} ・・・・(3)
(式中、WFsatは高濃度領域又は長時間処理での飽和仕事関数であり;tは処理時間であり;kは反応速度定数であり;Z1は第一の有機分子の濃度であり;WF及びWF0は前記と同じである。)
WF0は前記と同じであるが、濃度がゼロの時の仕事関数と言い換えることができる。
また、kは反応速度定数であり、第一の有機分子と基材の種類(材料)によって決定される値である。Z1は液体中における第一の有機分子の濃度である。
【0042】
したがって、ある特定の材料においては、第一の有機分子の濃度と処理時間を変化させることによって、基材に結合する第一の有機分子の数が変化するので、これが仕事関数の変化として評価できる。図4は、処理時間を一定(1分)とした場合の、第一の有機分子の濃度と仕事関数との関係を例示するグラフである。単位「μM」は「μmol/L」を示す。なお、図4のグラフは一例に過ぎず、第一の有機分子の濃度と仕事関数との関係は、これに限定されるものではない。このグラフは、第一の有機分子の濃度を調節することで、仕事関数を調節できることを示しており、したがって、この仕事関数と相関がある基材表面の分子密度も調節できることになる。基材上における第一の有機分子の密度を小さくしたい場合には、図4のグラフから、仕事関数の変化が小さくなる濃度域を選択すればよいことになる。このグラフからは、例えば、第一の有機分子の好ましい濃度として、1×10−4〜1×10−2μmol/Lの範囲が選択できる。なお、ここでは、処理時間を一定とした場合について説明したが、反対に、第一の有機分子の濃度を一定とした場合には、処理時間を調節することで、同様に基材表面の分子密度も調節できる。例えば、図4のグラフを作成した時の反応条件において、第一の有機分子の濃度を一定(1×10−4μmol/L)として、処理時間と仕事関数との関係を求めることができ、この時のグラフからは、1〜100分が好ましい処理時間として選択できる。
【0043】
[成膜工程]
次いで、成膜工程では、図2(c)に示すように、第一の有機分子61が点在している基材60上に、第二の有機分子62を導入し、第一の有機分子61に対して第二の有機分子62を配列させて、薄膜6を形成する。本工程で、第二の有機分子62が第一の有機分子61と共に配列することで、初めて薄膜が形成される。
【0044】
第二の有機分子62は、基材60上に化学結合する必要は無く、第一の有機分子61に対して配列するものであれば特に限定されず、第一の有機分子61との間で及び/又は第二の有機分子62同士で分子間相互作用を発現するものが好ましい。ここで、「分子間相互作用」とは、第一の有機分子61の場合と同様である。そして、第二の有機分子62としては、半導体分子も好ましい。第二の有機分子62として、具体的には、第一の有機分子61において基材60と結合する基が、基材60と結合しないその他の基で置換されたものが例示でき、前記その他の基が水素原子であるものが好ましい。
そして、特に好ましい第二の有機分子62は、下記一般式(II)で表される有機ケイ素化合物(以下、有機ケイ素化合物(II)と略記する)である。
R−H ・・・・(II)
(式中、Rはπ電子共役系を有する有機基である。)
【0045】
式中、Rは、前記一般式(I)におけるRと同じである。すなわち、有機ケイ素化合物(II)は、有機ケイ素化合物(I)において、一般式「−SiX1X2X3」で表される基が水素原子(−H)で置換されたものである。
したがって、第二の有機分子62としては、第一の有機分子61と同様に、p型半導体としての性質を示す化合物を用いることができるが、該化合物の芳香族環を構成している一つ以上の水素原子をフッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル基(−CF3)、シアノ基(−C≡N)等の電子求引性基で置換することにより、n型有機半導体として用いてもよい。
【0046】
第二の有機分子62は、一種でもよいし二種以上でもよく、二種以上である場合、その組み合わせ及び比率は特に限定されないが、有機薄膜の配向性をより向上させるためには、一種であることが好ましい。
【0047】
第二の有機分子62は、例えば、第一の有機分子61との間でπ−π相互作用等の分子間相互作用により、スタッキング構造を形成すると共に、第二の有機分子62同士の間でも同様にスタッキング構造を形成した場合に、基材60上で配向性がより良好に制御されて、薄膜を形成する。このような観点から、第二の有機分子62としては、スタッキング構造がより強固となる点から、π電子共役系を有する骨格など、分子間相互作用を発現する部位が、組み合わせる第一の有機分子61と同じであるものが好ましい。
また、上記のように薄膜を形成するためには、例えば、薄膜を形成できる限り、第二の有機分子62を基材60に導入し続け、第二の有機分子62を密に配列させればよく、過剰量の第二の有機分子62を導入するのが最も簡便な方法である。
【0048】
第二の有機分子62の導入方法は特に限定されないが、好ましくは第二の有機分子62が含まれる液体、より好ましくは第二の有機分子62が溶解された溶液を基材60と接触させる方法が例示できる。そして、第二の有機分子62の導入時には、第一の有機分子61を基材60上に化学結合させる場合とは異なり、精密な条件の調節は不要であり、より低コストの方法が適用できる。第二の有機分子62が含まれる液体を用いる場合、好ましい第二の有機分子62の導入方法としては、浸漬法、塗布法、インクジェット法等の各種印刷法が例示でき、キャスト法、スピンコート法等の塗布法がより好ましい。
また、好ましい第二の有機分子62の導入方法としては、第二の有機分子62が含まれる液体を用いない方法として、蒸着法も例示できる。
【0049】
導入された第二の有機分子62は、点在している第一の有機分子61に対して、好ましくは分子間相互作用により配列し、基材60上で分子鎖を上方向に伸ばすようにして立ち上がった状態で存在する。そして、基材60の表面が親水化処理されている場合に、よりこの状態をとり易いと考えられる。最も好ましいのは、第二の有機分子62が基材60の表面に対して略垂直方向に伸びた状態である。また、第二の有機分子62は、基材60上の第一の有機分子61を含む層(第一層)を形成するだけでなく、さらに第一層の上部に積層して複数層を形成していてもよい。
【0050】
成膜工程後、形成された有機薄膜は、必要に応じて適宜周知の方法に従って、洗浄等を行ってもよい。
【0051】
上記製造方法により、基材60上に第一の有機分子61が化学結合により立設及び点在され、第二の有機分子62が、第一の有機分子61に対して配列されてなる有機薄膜6が得られる。有機薄膜6の厚さは、第一の有機分子61及び第二の有機分子62の大きさ(分子長)により決定され、特に限定されるものではない。
有機薄膜6は、従来のSAM膜とは異なり、第一の有機分子61及び第二の有機分子62について、最適な分子配列の周期性と、実際の分子配列の周期性との不整合(ミスマッチング)が生じないので、配向の乱れや欠陥が抑制され、十分な機能を有する緻密な膜となる。第一及び第二の有機分子は、π電子共役系を有する場合、例えば、π電子共役系ではなくアルキル基等を有する有機分子よりも、分子の厚さと幅との比が大きく、動径半径が大きくなると考えられる。その結果、通常であれば、配列構造の自由度が高まり、配向の乱れや欠陥が多い薄膜になると考えられる。しかし、本発明に係る有機薄膜では、上記理由により、このような問題点が生じない。
また、第一の有機分子61及び第二の有機分子62の大きさによらず、配向性が制御された有機薄膜6が得られるので、種々の有機分子を用いることができ、汎用性が高い。
【0052】
<電界効果トランジスタ>
本発明に係る電界効果トランジスタは、有機半導体層を備えた電界効果トランジスタであって、前記第一及び第二の有機分子が有機半導体分子である前記有機薄膜を、前記有機半導体層として備えたことを特徴とする。そして、かかる有機半導体層を備えたこと以外は、従来の電界効果トランジスタと同様の構成とすることができる。本発明に係る電界効果トランジスタは、前記有機薄膜を備えたことで、高速動作が可能となる。
前記有機薄膜は、例えば、先に例示した第一及び第二の有機分子を用いた場合、主にp型半導体層として利用されるが、上記のようにフッ素原子等の電子吸引性が強い置換基が導入された有機分子を用いた場合や、電極の材料の選択によっては、n型半導体層として機能させることも可能である。
以下、図面を参照しながら説明する。
【0053】
図5は、第一の実施形態に係る電界効果トランジスタの要部を例示する概略断面図である。
ここに示す電界効果トランジスタ1Aは、基板11上に、ゲート電極12、ゲート絶縁膜13、有機半導体層16、ソース電極14及びドレイン電極15が積層され、概略構成されている。より具体的には、基板11上の一部にゲート電極12が設けられ、さらにゲート電極12を覆うように、基板11上にゲート絶縁膜13が設けられ、ゲート絶縁膜13上に有機半導体層16が設けられている。そして、有機半導体層16上には、これに接するようにソース電極14及びドレイン電極15が離間して設けられている。有機半導体層16は、ゲート絶縁膜13を介してゲート電極12と対向するように設けられている。電界効果トランジスタ1Aは、ボトムゲート・トップコンタクト型構造のトランジスタ構造を有する。
【0054】
基板11の材質は、デバイスの構成及び性能等に応じて適宜選択できる。例えば、ガラス、石英、シリコン単結晶、多結晶シリコン、アモルファスシリコン;ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリテトラフルオロエチレン等の絶縁性の高分子化合物等が例示できる。
基板11は一種の材質からなる単層構造でもよいし、二種以上の材質が積層された複数層構造でもよい。
【0055】
ゲート電極12の材質は特に限定されず、当該分野で通常使用されるものでよい。具体的には、金、白金、銀、銅、アルミニウム、タンタル、ドープシリコン等の低抵抗の金属;3,4−ポリエチレンジオキシチオフェン(以下、PEDOTと略記する)/ポリスチレンサルフォネイト(以下、PSSと略記する)等の有機導電体等が例示できる。
【0056】
ソース電極14、ドレイン電極15の材質としては、p型有機半導体に対しては、有機半導体分子の最高占有分子軌道(HOMO:Highest Occupied Molecular Orbital)レベル、n型有機半導体に対しては、有機半導体分子の最低非占有分子軌道(LUMO:Lowest Unocuppied Molecular Orbital)レベルに仕事関数を有するものが例示できる。
HOMOレベルに近い材質としては、金、白金、銀、又はこれらの一種以上を含む合金等の比較的仕事関数が高い金属;インジウム・スズ酸化物(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)等の透明酸化物導電体;PEDOT/PSS等の有機導電体が例示できる。
LUMOレベルに近い材質としては、アルミニウム、チタン、アルカリ金属、又はこれらの一種以上を含む合金等の比較的仕事関数が低い金属等が例示できる。前記アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が例示できる。
【0057】
ソース電極14及びドレイン電極15は、その表面に有機分子等からなる表面修飾層が設けられていてもよい。表面修飾層は、例えば、ソース電極14及びドレイン電極15の表面に表面修飾剤を作用させることで形成できる。
【0058】
ゲート電極12、ソース電極14、ドレイン電極15の膜厚は、特に限定されず、通常のトランジスタにおける膜厚であればよく、目的に応じて適宜調節することが好ましい。例えば、材質が金属である場合には、30〜200nmであることが好ましい。
これら電極は、材質に応じて、例えば、蒸着、スパッタ、塗布等で成膜できる。
【0059】
ゲート絶縁膜13の材質は、誘電率が高く、薄膜形成時にピンホール等の欠陥が生じにくいものが好ましい。誘電率が高いことで、電界効果トランジスタの閾値をより低減できる。また、薄膜形成時にピンホール等の欠陥を少なくすることで、ゲート絶縁膜13の機能低下が抑制され、特性がより良好な電界効果トランジスタが得られる。
また、ゲート絶縁膜13は、第一の有機分子が良好に化学結合できるように、例えば、シランカップリング剤を構成するアルコキシシラン、ハロゲノシラン等の基(例えば、有機ケイ素化合物(I)において、一般式「−SiX1X2X3」で表される基)との反応性に優れる水酸基等の反応性基を、少なくとも表面に有することが好ましい。
このような材質の膜としては、シリコン酸化膜、五酸化タンタル膜、酸化アルミニウム膜等の無機絶縁膜;ポリビニルフェノール膜等の有機絶縁膜等が例示できる。
ゲート絶縁膜13の膜厚は、単位面積あたりの静電容量が大きくなるように設定することが好ましく、また、膜厚を薄くすることで、電界効果トランジスタの閾値電圧をより低減できる。そして、ゲート絶縁膜13の膜厚は、材質の比誘電率、絶縁性等に応じて適宜調節することが好ましく、例えば、50〜300nmであることが好ましい。このようにすることで、単位面積あたりの静電容量を大きくでき、かつ電界効果トランジスタの閾値電圧を低減できる。
ゲート絶縁膜13は、材質に応じて、例えば、蒸着、スパッタ、塗布等で成膜できる。
【0060】
有機半導体層16は、上記の本発明に係る有機薄膜である。
有機半導体層16の膜厚は、1〜100nmであることが好ましい。
有機半導体層16は、上記のように、薄膜を構成する第一及び第二の有機分子の配向性が制御され、十分な機能を有する。
【0061】
図6は、第二の実施形態に係る電界効果トランジスタの要部を例示する概略断面図である。なお、図6において、図5に示すものと同様の構成要素には、図5の場合と同様の符号を付し、その詳細な説明は省略する。これは、以降の図においても同様である。
ここに示す電界効果トランジスタ1Bは、基板11上に、ゲート電極12、ゲート絶縁膜13、ソース電極14、ドレイン電極15及び有機半導体層16が積層され、概略構成されている。より具体的には、基板11上の一部にゲート電極12が設けられ、さらにゲート電極12を覆うように、基板11上にゲート絶縁膜13が設けられている。そして、ゲート絶縁膜13上には、ソース電極14及びドレイン電極15が離間して設けられ、さらにソース電極14及びドレイン電極15間のゲート絶縁膜13上に、有機半導体層16が設けられている。有機半導体層16は、ゲート絶縁膜13を介してゲート電極12と対向するように設けられている。電界効果トランジスタ1Bは、ボトムゲート・ボトムコンタクト型のトランジスタ構造を有する。
【0062】
ゲート絶縁膜13は、電界効果トランジスタ1Aと同様に、水酸基等の反応性基を、少なくとも表面に有することが好ましい。さらに、ソース電極14及びドレイン電極15上には有機半導体層16が設けられるので、これら電極の表面には、表面修飾層として親水性の膜が設けられていることが好ましい。
また、ソース電極14及びドレイン電極15は、密着層(図示略)を介してゲート絶縁膜13上に形成してもよい。密着層の材質としては、クロム等が例示できる。
【0063】
本発明に係る電界効果トランジスタは、図5〜6に示すものに限定されず、これらの構成の一部が変更されたものでもよい。例えば、以下に示すものが挙げられる。
(I)図7に例示するように、基板11上に有機半導体層16が設けられ、有機半導体層16上に、ソース電極14及びドレイン電極15が離間して設けられ、ソース電極14及びドレイン電極15間の有機半導体層16上に、ゲート絶縁膜13及びゲート電極12がこの順で設けられた電界効果トランジスタ1C(第三の実施形態)。
(II)図8に例示するように、基板11上にソース電極14及びドレイン電極15が離間して設けられ、ソース電極14及びドレイン電極15上を覆うように、基板11上に有機半導体層16が設けられ、有機半導体層16上にゲート絶縁膜13が設けられ、ゲート絶縁膜13上の一部にゲート電極12が設けられた電界効果トランジスタ1D(第四の実施形態)。
【0064】
電界効果トランジスタ1C及び1Dにおいては、基板11上に有機半導体層16が設けられるので、基板11の材質は上記の基材60(図1〜3)と同様であることが好ましい。
さらに、電界効果トランジスタ1Dにおいては、ソース電極14及びドレイン電極15上に有機半導体層16が設けられるので、これら電極の表面に、表面修飾層として親水性の膜が設けられていることが好ましい。
なお、電界効果トランジスタ1C及び1Dのように、ゲート絶縁膜13上にゲート絶縁膜13に接して有機半導体層16が設けられていない場合には、ゲート絶縁膜13の表面は、必ずしも水酸基等の反応性基を有する必要は無く、この場合、ゲート絶縁膜13の材質としては、上記のもの以外に、さらに、シリコン窒化膜等の無機絶縁膜;ポリイミド膜、パリレン膜等の有機絶縁膜等が例示できる。
【0065】
本発明に係る電界効果トランジスタは、例えば、以下の方法で製造できる。
まず、図5に示す電界効果トランジスタ1Aの製造方法について説明する。図9は、電界効果トランジスタ1Aの製造方法を説明するための概略断面図である。
基板11上に、ゲート電極12を構成する材質からなる膜を形成し、フォトリソグラフィー及びエッチングにより、前記膜を所望のパターンに形成して、図9(a)に示すように、基板11上の所定箇所にゲート電極12を形成する。膜の形成方法としては、スパッタリング法が例示できる。
【0066】
次いで、図9(b)に示すように、ゲート電極12を覆うように基板11上にゲート絶縁膜13を形成する。ゲート絶縁膜13の形成方法としては、スパッタリング法が例示できる。
【0067】
次いで、図9(c)に示すように、ゲート絶縁膜13上に有機半導体層16を形成する。有機半導体層16の形成方法は、上記の有機薄膜の製造方法で説明した通りである。
【0068】
次いで、有機半導体層16上に、所定の開口部を有する金属マスク(図示せず)を介して真空蒸着法等により、図9(d)に示すように、ソース電極14及びドレイン電極15を形成する。
上記工程を行うことで、図5に示す電界効果トランジスタ1Aが得られる。
【0069】
次に、図6に示す電界効果トランジスタ1Bの製造方法について説明する。図10は、電界効果トランジスタ1Aの製造方法を説明するための概略断面図である。
図9(a)〜(b)を参照して説明した方法と同様の方法で、図10(a)〜(b)に示すように、基板11上にゲート電極12、ゲート絶縁膜13を形成する。
【0070】
次いで、ゲート絶縁膜13上に、スピンコート法等により、レジスト膜を形成した後、フォトリソグラフィー法で露光及び現像を行うことにより、図10(c)に示すように、所定のパターンのフォトレジスト膜90を形成する。フォトレジスト膜90は、ソース電極14及びドレイン電極15を形成するためのものであり、これらの形状に対応して開口部を有する。
【0071】
次いで、フォトレジスト膜90を覆うように、ゲート絶縁膜13上にソース電極14及びドレイン電極15の材質からなる金属膜を形成し、フォトレジスト膜90を除去することにより、図10(d)に示すように、ゲート絶縁膜13上の所定の箇所にソース電極14及びドレイン電極15を形成する。この時、前記金属膜を形成する前に、フォトレジスト膜90を覆うように、ゲート絶縁膜13上に密着層(図示略)を形成しておき、この密着層上に前記金属膜を形成してもよい。密着層の材質としては、クロム等の金属が例示できる。前記金属膜、密着層の形成方法としては、真空蒸着法が例示できる。フォトレジスト膜90の除去により、この上に形成された前記金属膜、さらに密着層を形成した場合には、この密着層も、フォトレジスト膜90とともに除去される。フォトレジスト膜90の除去方法としては、基板11をアセトン等の有機溶媒中に浸漬するリフトオフ法が例示できる。
【0072】
次いで、図10(e)に示すように、ソース電極14及びドレイン電極15間のゲート絶縁膜13上に有機半導体層16を形成する。有機半導体層16の形成方法は、上記の有機薄膜の製造方法で説明した通りである。
上記工程を行うことで、図6に示す電界効果トランジスタ1Bが得られる。
ソース電極14及びドレイン電極15の表面に表面修飾層を設ける場合には、図10(d)に示すようにソース電極14及びドレイン電極15を形成した後に、これらの表面に表面修飾剤を作用させて、表面修飾層を形成してから、図10(e)に示すように、有機半導体層16を形成すればよい。
【0073】
<太陽電池>
本発明に係る太陽電池は、基材上に一対の電極を備え、前記一対の電極間に、p型半導体層及びn型半導体層を備えた太陽電池であって、前記第一及び第二の有機分子が有機半導体分子である前記有機薄膜を、前記p型半導体層及び/又はn型半導体層として備えたことを特徴とする。そして、かかるp型半導体層及び/又はn型半導体層を備えたこと以外は、従来の太陽電池と同様の構成とすることができる。本発明に係る太陽電池は、前記有機薄膜を備えたことで、光電変換効率が向上する。
前記有機薄膜は、例えば、先に例示した第一及び第二の有機分子を用いた場合、主にp型半導体層として利用されるが、上記のようにフッ素原子等の電子吸引性が強い置換基が導入された有機分子を用いた場合や、電極の材料の選択によっては、n型半導体層として機能させることも可能である。
以下、図面を参照しながら説明する。
【0074】
図11は、本発明に係る太陽電池の要部を例示する概略断面図である。
ここに示す太陽電池2Aは、ガラス基板21上に、アノード電極22、p型半導体層24、n型半導体層25及びカソード電極23がこの順に積層され、概略構成されている。すなわち、ガラス基板21上に、アノード電極22及びカソード電極23からなる一対の電極と、該一対の電極間に挟持された、pn接合したp型半導体層24及びn型半導体層25と、が設けられたものである。
【0075】
p型半導体層24は、公知の材質で形成してもよく、上記の本発明に係る有機薄膜としてもよい。n型半導体層25を前記有機薄膜とする場合には、p型半導体層24は、親水性基等の第一の有機分子が結合できる部位を有していればよい。
p型半導体層24の膜厚は、5〜500nmであることが好ましい。
【0076】
n型半導体層25は、上記の本発明に係る有機薄膜としてもよい。n型半導体層25を公知の材質で形成する場合、好ましい材質としては、フラーレン;[6,6]−フェニルC61酪酸メチルエステル(PCBM)等のフラーレン誘導体;フタルイミド環を構成している一つ以上の水素原子がフッ素原子で置換されたフッ素化フタロシアニン等が例示できる。前記フッ素化フタロシアニンは、フタルイミド環を構成しているすべての水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい。
n型半導体層25の膜厚は、5〜500nmであることが好ましい。
【0077】
p型半導体層24及びn型半導体層25のいずれか一方は、公知のものであってもよい。そして、前記有機薄膜であるp型半導体層24及び/又はn型半導体層25は、薄膜を構成する第一及び第二の有機分子の配向性が制御され、十分な機能を有する。
【0078】
p型半導体層24を前記有機薄膜とする場合には、アノード電極22は、第一の有機分子が良好に化学結合できるように、例えば、シランカップリング剤を構成するアルコキシシラン、ハロゲノシラン等の基(例えば、有機ケイ素化合物(I)において、一般式「−SiX1X2X3」で表される基)との反応性に優れる水酸基等の反応性基を、少なくとも表面に有することが好ましい。このような材質としては、透明電極であるITO等が例示できる。
アノード電極22の膜厚は、10〜500nmであることが好ましい。
【0079】
カソード電極23の材質としては、銀、アルミニウム等が例示できる。
カソード電極23の膜厚は、10〜500nmであることが好ましい。
【0080】
本発明に係る太陽電池は、例えば、以下の方法で製造できる。
図12は、太陽電池2Aの製造方法を説明するための概略断面図である。
まず、図12(a)に示すように、ガラス基板21上にアノード電極22を形成する。アノード電極22の形成方法としては、スパッタリング法が例示できる。
【0081】
次いで、図12(b)に示すように、アノード電極22上にp型半導体層24を形成する。p型半導体層24の形成方法としては、p型半導体層24が前記有機薄膜である場合には、上記の有機薄膜の製造方法が例示でき、前記有機薄膜でない場合には、真空蒸着法が例示できる。
【0082】
次いで、図12(c)に示すように、p型半導体層24上にn型半導体層25を形成する。n型半導体層25の形成方法としては、n型半導体層25が前記有機薄膜である場合には、上記の有機薄膜の製造方法が例示でき、前記有機薄膜でない場合には、真空蒸着法が例示できる。
【0083】
次いで、図12(d)に示すように、n型半導体層25上にカソード電極23を形成する。カソード電極23の形成方法としては、真空蒸着法が例示できる。
上記工程を行うことで、図11に示す太陽電池2Aが得られる。
【0084】
<有機発光素子>
本発明に係る有機発光素子は、基材上に一対の電極を備え、前記一対の電極間に、少なくともキャリア輸送層及び発光層を備えた有機発光素子であって、前記第一及び第二の有機分子が有機半導体分子である前記有機薄膜を、前記キャリア輸送層として備えたことを特徴とする。そして、かかるキャリア輸送層を備えたこと以外は、従来の有機発光素子と同様の構成とすることができる。本発明に係る有機発光素子は、前記有機薄膜を備えたことで、キャリア輸送特性が向上し、良好な発光特性が得られる。
前記有機薄膜は、例えば、先に例示した第一及び第二の有機分子を用いた場合、主にp型半導体層として利用されるが、上記のようにフッ素原子等の電子吸引性が強い置換基が導入された有機分子を用いた場合や、電極の材料の選択によっては、n型半導体層(電子輸送層)として機能させることも可能である。
以下、図面を参照しながら説明する。
【0085】
図13は、本発明に係る有機発光素子の要部を例示する概略断面図である。
ここに示す有機発光素子3Aは、ガラス基板31上に、アノード電極32、有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機ELと略記する)部34及びカソード電極33がこの順に積層され、概略構成されている。すなわち、ガラス基板31上に、アノード電極32及びカソード電極33からなる一対の電極と、該一対の電極間に挟持された有機EL部34と、が設けられたものである。
【0086】
アノード電極32及びカソード電極33は、それぞれ、上記の太陽電池におけるアノード電極及びカソード電極と同様のものである。
【0087】
有機EL部34は、アノード電極32側からカソード電極33側へかけて、キャリア(正孔)注入層34a、キャリア輸送層34b、発光層34c、電子輸送層34d及び電子注入層34eがこの順に積層され、概略構成されている。
キャリア注入層34a、キャリア輸送層34b、発光層34c、電子輸送層34d、電子注入層34eは、それぞれ単層構造及び多層構造のいずれであってもよい。
【0088】
キャリア輸送層34bは、上記の本発明に係る有機薄膜である。
キャリア輸送層34bの膜厚は、5〜500nmであることが好ましい。
キャリア輸送層34bは、上記のように、薄膜を構成する第一及び第二の有機分子の配向性が制御され、十分な機能を有する。
【0089】
キャリア注入層34aにおいて、キャリア注入材料は、有機EL用又は有機光導電体用として公知のものでよい。好ましいキャリア注入材料としては、酸化バナジウム(V2O5)、酸化モリブデン(MoO2)等の酸化物や無機p型半導体材料;ポリアニリン(PANI)、ポリアニリン−樟脳スルホン酸(PANI−CSA)、3,4−ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンサルフォネイト(PEDOT/PSS)、ポリ(トリフェニルアミン)誘導体(Poly−TPD)、ポリビニルカルバゾール(PVCz)、ポリ(p−フェニレンビニレン)(PPV)、ポリ(p−ナフタレンビニレン)(PNV)等の高分子材料等が例示できる。
また、キャリア注入層34aに適用する材料としては、陽極からのキャリアの注入・輸送をより効率よく行う観点から、キャリア輸送層34bに適用するキャリア注入輸送材料よりも、最高被占分子軌道(HOMO)のエネルギー準位が低い材料が好ましい。
キャリア注入層34aの膜厚は、1〜500nmであることが好ましい。
【0090】
発光層34cの材質は、有機EL用の公知のものでよく、例えば、低分子発光材料及び高分子発光材料等に分類できる。
前記低分子発光材料の好ましいものとしては、4,4’−ビス(2,2’−ジフェニルビニル)−ビフェニル(DPVBi)等の芳香族ジメチリデン化合物;5−メチル−2−[2−[4−(5−メチル−2−ベンゾオキサゾリル)フェニル]ビニル]ベンゾオキサゾール等のオキサジアゾール化合物;3−(4−ビフェニルイル)−4−フェニル−5−t−ブチルフェニル−1,2,4−トリアゾール(TAZ)等のトリアゾール誘導体;1,4−ビス(2−メチルスチリル)ベンゼン等のスチリルベンゼン化合物;フルオレノン誘導体等の蛍光性有機材料等が例示できる。
前記高分子発光材料の好ましいものとしては、ポリ(2−デシルオキシ−1,4−フェニレン)(DO−PPP)等のポリフェニレンビニレン誘導体;ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン)(PDAF)等のポリスピロ誘導体等が例示できる。
発光層34cの膜厚は、5〜500nmであることが好ましい。
【0091】
電子輸送層34d及び電子注入層34eにおいて、電子注入輸送材料は、有機EL用又は有機光導電体用として公知のものでよい。好ましい電子注入輸送材料としては、n型半導体である無機材料、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、チオピラジンジオキシド誘導体、ベンゾキノン誘導体、ナフトキノン誘導体、アントラキノン誘導体、ジフェノキノン誘導体、フルオレノン誘導体、ベンゾジフラン誘導体等の低分子材料;ポリ(オキサジアゾール)(Poly−OXZ)、ポリスチレン誘導体(PSS)等の高分子材料が例示できる。特に、電子注入材料としては、フッ化リチウム(LiF)、フッ化バリウム(BaF2)等のフッ化物;酸化リチウム(Li2O)等の酸化物等が例示できる。
また、電子注入層34eに適用する材料としては、陰極からの電子の注入・輸送をより効率よく行う観点から、電子輸送層34dに適用する電子注入輸送材料よりも、最低非占有分子軌道(LUMO)のエネルギー準位が高い材料が好ましい。そして、電子輸送層34dに適用する材料としては、電子注入層34eに適用する電子注入輸送材料よりも、電子の移動度が高い材料が好ましい。
電子輸送層34dの膜厚は、5〜500nmであることが好ましい。また、電子注入層34eの膜厚は、0.1〜100nmであることが好ましい。
【0092】
本発明に係る有機発光素子は、図13に示すものに限定されず、その構成の一部が変更されたものでもよい。例えば、有機EL部34の構成を以下のようにしたものが挙げられる。
(i)アノード電極32側からカソード電極33側へかけて、キャリア輸送層、発光層及び電子輸送層がこの順に積層された有機EL部。
(ii)アノード電極32側からカソード電極33側へかけて、キャリア注入層、キャリア輸送層、発光層及び電子輸送層がこの順に積層された有機EL部。
(iii)アノード電極32側からカソード電極33側へかけて、キャリア注入層、キャリア輸送層、発光層、キャリア防止層及び電子輸送層がこの順に積層された有機EL部。
(iv)アノード電極32側からカソード電極33側へかけて、キャリア注入層、キャリア輸送層、発光層、キャリア防止層、電子輸送層及び電子注入層がこの順に積層された有機EL部。
(v)アノード電極32側からカソード電極33側へかけて、キャリア注入層、キャリア輸送層、電子防止層、発光層、キャリア防止層、電子輸送層及び電子注入層がこの順に積層された有機EL部。
【0093】
前記キャリア防止層及び電子防止層は、有機EL用として公知のものでよく、それぞれ単層構造及び多層構造のいずれであってもよい。
【0094】
本発明に係る有機発光素子は、例えば、以下の方法で製造できる。
図14は、有機発光素子3Aの製造方法を説明するための概略断面図である。
まず、図14(a)に示すように、ガラス基板31上にアノード電極32を形成する。アノード電極32の形成方法としては、スパッタリング法が例示できる。
【0095】
次いで、図14(b)に示すように、アノード電極32上にキャリア注入層34aを形成する。キャリア注入層34aの形成方法としては、スピンコート法が例示できる。
【0096】
次いで、図14(c)に示すように、キャリア注入層34a上にキャリア輸送層34bを形成する。キャリア輸送層34bの形成方法は、上記の有機薄膜の製造方法で説明した通りである。
【0097】
次いで、図14(d)に示すように、キャリア輸送層34b上に発光層34cを形成する。発光層34cの形成方法としては、真空蒸着法が例示できる。
【0098】
次いで、図14(e)に示すように、発光層34c上に電子輸送層34dを形成する。電子輸送層34dの形成方法としては、真空蒸着法が例示できる。
【0099】
次いで、図14(f)に示すように、電子輸送層34d上に電子注入層34eを形成する。電子注入層34eの形成方法としては、真空蒸着法が例示できる。
【0100】
次いで、図14(g)に示すように、電子注入層34e上にカソード電極33を形成する。カソード電極33の形成方法としては、真空蒸着法が例示できる。
上記工程を行うことで、図13に示す有機発光素子3Aが得られる。
【0101】
<表示装置用アレイ>
本発明に係る表示装置用アレイは、前記電界効果トランジスタをスイッチング素子として備えたことを特徴とする。そして、かかる電界効果トランジスタを備えたこと以外は、従来の表示装置用アレイと同様の構成とすることができる。本発明に係る表示装置用アレイは、前記電界効果トランジスタを備えたことで、高速動作が可能となる。
以下、図面を参照しながら説明する。
【0102】
図15は、本発明に係る表示装置用アレイの要部を例示する概略図であり、(a)は平面図、(b)は拡大平面図、(c)は(b)のC−C線における断面図、(d)は(b)のD−D線における断面図である。
ここに示す表示装置用アレイ4Aは、図6に示す電界効果トランジスタ1Bを備えた有機半導体装置42をマトリクス状に配置することで、画像表示装置の駆動用アレイとして用いたものである。
表示装置用アレイ4Aは、透明な基板11上に設けられたゲート配線40、ソース配線41、画素電極43、及びこれらに電気的に接続された電界効果トランジスタ1Bを備えた有機半導体装置42から概略構成されている。ゲート配線40は、図6におけるゲート電極12を構成するとともに、それへの接続配線ともなっている。
そして、ゲート配線40上にゲート絶縁膜13を介してソース電極14及びドレイン電極15が離間して設けられ、さらにソース電極14及びドレイン電極15間のゲート絶縁膜13上に、有機半導体層16が設けられている。また、ドレイン電極15は、画素電極43と接続され、駆動用アレイとして構成されている。
【0103】
有機半導体装置42は、例えば、ソース配線41及び画素電極43を形成する工程を有すること以外は、電界効果トランジスタ1Bの場合と同様の方法で製造できる。具体的には、以下の通りである。図16は、有機半導体装置42の製造方法を説明するための概略断面図である。
まず、図10(a)〜(c)を参照して説明した方法と同様の方法で、図16(a)〜(c)に示すように、基板11上にゲート配線40(ゲート電極12)、ゲート絶縁膜13を順次形成し、次に所定のパターンのフォトレジスト膜90を形成する。ゲート絶縁膜13は、ゲート配線40の表面を覆い、基板11上の全面を覆うように形成し、次いで所定のパターンにエッチングする。
次いで、図10(d)を参照して説明した方法と同様の方法で、図16(d)に示すように、ソース電極14及びドレイン電極15を形成する。さらに、ソース電極14に接触するようにソース配線41を、ドレイン電極15に接触するように画素電極43を、それぞれゲート絶縁膜13上に形成する。ソース配線41及び画素電極43は、例えば、銀(Ag)等の金属を材質とし、各種印刷法により形成できる。
次いで、図10(e)を参照して説明した方法と同様の方法で、図16(e)に示すように、ソース電極14及びドレイン電極15間のゲート絶縁膜13上に有機半導体層16を形成する。有機半導体層16の形成方法は、上記の有機薄膜の製造方法で説明した通りである。
上記工程を行うことで、有機半導体装置42が得られる。
そして、得られた有機半導体装置42は、マトリクス状に配置することで、表示装置用アレイ4Aが得られる。
【0104】
ここでは、電界効果トランジスタとして電界効果トランジスタ1Bを用いた例を示しているが、その他の電界効果トランジスタも用いることができ、その構成に応じて、有機半導体装置の構成を調節すればよい。
本発明に係る表示装置用アレイは、例えば、液晶表示装置や有機EL表示装置等の画像表示装置の駆動用として好適である。
【0105】
<表示装置>
本発明に係る表示装置は、画像信号を発生して出力する画像信号出力部と、前記画像信号に基づいて電流又は電圧を発生する駆動部と、発生した前記電流又は電圧により発光する発光部と、を備えた表示装置であって、前記発光部が、前記有機発光素子であることを特徴とする。そして、かかる有機発光素子を備えたこと以外は、従来の表示装置と同様の構成とすることができる。
本発明に係る表示装置は、前記有機発光素子を備えたことで、良好な発光特性が得られる。
以下、図面を参照しながら説明する。
【0106】
図17は、本発明に係る表示装置の要部を例示する概略図であり、(a)は平面図、(b)は1画素の等価回路図、(c)は1画素の平面図である。
ここに示す表示装置5Aは、本発明に係る有機発光素子3を有機EL表示装置の素子として用いた有機EL表示装置である。
表示装置5Aにおいては、複数の走査線(ゲート配線)50と、複数の信号線(ソース配線)51とが縦横に配されたマトリクスが形成されており、それぞれの交差部に1つの画素が設けられた画素アレイが形成されている。画素アレイの周囲領域には、走査線50に接続された走査線駆動回路(ゲートドライバ)55と、信号線51に接続された信号線駆動回路(ソースドライバ)56が、それぞれ配置されている。そして、前記走査線駆動回路55及び信号線駆動回路56には、画像表示を行うためのタイミング信号やRGB輝度信号等の画像信号を供給するためのコントローラ57が接続され、さらに走査線50及び信号線51に与える信号電圧を供給するための電源回路59が接続されている。コントローラ57には、表示装置5Aに対して外部より水平・垂直同期信号や画像信号を与えるための外部処理装置58が接続されている。
表示装置5Aを構成する画素アレイの1画素は、図17(b)に示すように、走査線50及び信号線51に接続されたスイッチング用トランジスタ52、画素を駆動するための駆動用トランジスタ53、並びに保持容量54を備え、駆動用トランジスタ53に有機発光素子3(有機EL素子)からなる画素部が接続されている。有機発光素子3は、駆動電流又は電圧により発光する。
スイッチング用トランジスタ52及び駆動用トランジスタ53は、例えば、一般的な多結晶シリコンを半導体として用いたトランジスタ等で構成できる。以上により表示装置5Aが構成されている。
有機発光素子3としては、図13に示す有機発光素子3Aをはじめとして、本発明に係る素子であれば、いずれも用いることができる。
【実施例】
【0107】
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0108】
<有機半導体薄膜の製造>
[実施例1]
厚さ300nmの酸化シリコン膜(SiO2)を表面に有するSi基板(厚さ:1mm)において、UVオゾン処理によって、前記酸化膜表面を親水化処理した。次いで、不活性ガス雰囲気下において、前記式(3)の関係に基づいて決定された濃度のクォーターチオフェントリクロロシラン(前記一般式(I)−102で表される有機ケイ素化合物において、X1、X2及びX3が塩素原子であるもの)の無水トルエン溶液(濃度:1×10−3μmol/L)に、親水化処理した前記Si基板を1分間浸漬し、ゆっくりと引き上げ、溶媒洗浄を行い、Si基板上にクォーターチオフェンを結合させた。
次いで、クォーターチオフェンが結合した前記Si基板に、スピンコート法(回転数1500rpm)でクォーターチオフェン(第二の有機分子)のクロロホルム飽和溶液を塗布し、有機半導体薄膜を形成した。得られた有機半導体薄膜の膜厚は約2nmであった。
この薄膜を原子間力顕微鏡(AFM)により観察したところ、有機分子の配向性が制御され、グレインのない均一な薄膜であることが確認できた。
【0109】
<電界効果トランジスタの製造>
[実施例2]
図9を参照して説明した製造方法により、図5に示す電界効果トランジスタ1Aを製造した。より具体的には、以下の通りである。
基板11としては、ガラス基板(コーニング社製、Eagle2000、厚さ:0.5mm)を用いた。
ゲート電極12の材質は、アルミニウム(Al)に対して10%のシリコン(Si)を添加したAlSi合金とした。そして、このAlSi合金からなる金属ターゲットを用いたスパッタリング法により、基板11上に、AlSi合金からなる膜厚40nmの金属膜を形成した。この金属膜のパターンニングは、フォトリソグラフィー及びエッチングで行った。
ゲート絶縁膜13の材質は、酸化シリコン(SiO2)とし、スパッタリング法により、膜厚300nmの酸化シリコン膜を形成した。
有機半導体層16は、実施例1と同様の材質及び方法で形成した。有機半導体層16の膜厚は2nmであった。
ソース電極14及びドレイン電極15の材質は金(Au)とし、金属マスクを介して真空蒸着法により、膜厚40nmのAu膜を形成した。この時、ソース電極14及びドレイン電極15間の間隔(チャネル長)は50μmであり、対向する電極の長さ(チャネル幅)は1000μmであった。
得られた電界効果トランジスタ1Aについて、電界効果移動度を測定したところ、8×10−2cm2/Vsであった。実施例1と同様の方法で作製した有機半導体薄膜を有機半導体層としたことにより、高い特性の電界効果トランジスタが得られた。
【0110】
[実施例3]
図10を参照して説明した製造方法により、図6に示す電界効果トランジスタ1Bを製造した。より具体的には、以下の通りである。
基板11としては、ガラス基板(コーニング社製、Eagle2000、厚さ:0.5mm)を用いた。
ゲート電極12の材質は、アルミニウム(Al)に対して10%のシリコン(Si)を添加したAlSi合金とした。そして、このAlSi合金からなる金属ターゲットを用いたスパッタリング法により、基板11上に、AlSi合金からなる膜厚40nmの金属膜を形成した。この金属膜のパターンニングは、フォトリソグラフィー及びエッチングで行った。
ゲート絶縁膜13の材質は、酸化シリコン(SiO2)とし、スパッタリング法により、膜厚300nmの酸化シリコン膜を形成した。
フォトレジスト膜90は、膜厚を4μmとし、リフトオフプロセス用のネガ型フォトレジスト(日本ゼオン社製、ZPN1150)を用いて、スピンコート法により成膜した後、フォトリソグラフィー法で形成した。
真空蒸着法によって、膜厚2nmのクロム(Cr)からなる密着層、及び膜厚40nmの金(Au)からなる金属膜を順次成膜し、アセトン等の有機溶媒中に基板11を浸漬するリフトオフ法により、フォトレジスト膜90及びその上に形成された不要なAu膜/Cr膜を除去して、ソース電極14及びドレイン電極15を形成した。この時、ソース電極14及びドレイン電極15間の間隔(チャネル長)は20μmであり、対向する電極の長さ(チャネル幅)は1000μmであった。
有機半導体層16は、第一の有機分子としてクォーターチオフェントリクロロシランに代えて2−トリクロロシリルペンタセンを、第二の有機分子としてクォーターチオフェンに代えてペンタセンをそれぞれ使用し、ペンタセンをスピンコート法に代えて蒸着法で導入したこと以外は、実施例1と同様の方法で形成した。有機半導体層16の膜厚は3nmであった。
得られた電界効果トランジスタ1Bについて、実施例2と同様の方法で電界効果移動度を測定したところ、6×10−2cm2/Vsであった。実施例1と同様の方法で作製した有機半導体薄膜を有機半導体層としたことにより、高い特性の電界効果トランジスタが得られた。
【0111】
<太陽電池の製造>
[実施例4]
図12を参照して説明した製造方法により、図11に示す太陽電池2Aを製造した。より具体的には、以下の通りである。
ガラス基板21としては、「コーニング社製、Eagle2000、厚さ:0.5mm」を用いた。
アノード電極22としては、膜厚150nmのITO膜を、スパッタリング法によりガラス基板21上に形成した。
p型半導体層24は、第一の有機分子としてクォーターチオフェントリクロロシランに代えてキンクエチオフェントリクロロシラン(前記一般式(I)−103で表される有機ケイ素化合物において、X1、X2及びX3が塩素原子であるもの)を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で形成した。p型半導体層24の膜厚は10nmであった。
n型半導体層25としては、膜厚20nmのパーフルオロフタロシアニンからなる膜を、真空蒸着法により形成した。
カソード電極23としては、膜厚100nmのAl膜を、真空蒸着法により形成した。
得られた太陽電池2Aについて、AM1.5の擬似太陽光を照射し、正極−負極間の電圧−電流特性を評価し、変換効率を算出したところ、0.1%であり、光電変換することを確認できた。
【0112】
<有機発光素子の製造>
[実施例5]
図14を参照して説明した製造方法により、図13に示す有機発光素子3Aを製造した。より具体的には、以下の通りである。
ガラス基板31としては、「コーニング社製、Eagle2000、厚さ:0.5mm」を用いた。
アノード電極32としては、膜厚150nmのITO膜を、スパッタリング法によりガラス基板31上に形成した。
キャリア注入層34aは、PEDOT/PSS(Bytron−P、バイエル社製)をスピンコート法(回転数1500rpm)でアノード電極32上に載せることで形成し、膜厚を約50nmとした。
キャリア輸送層34bは、第一の有機分子としてクォーターチオフェントリクロロシランに代えてターチオフェントリクロロシラン(前記一般式(I)−101で表される有機ケイ素化合物において、X1、X2及びX3が塩素原子であるもの)を、第二の有機分子としてクォーターチオフェンに代えてターチオフェンをそれぞれ使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で形成した。キャリア輸送層34bの膜厚は2nmであった。
発光層34cは、キャリア輸送層34b上に、4,4’−N,N’−ジカルバソル−ビフェニル(CBP)及びトリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(Ir(PPY)3)を、それぞれ異なる蒸着源から共蒸着させる真空蒸着法によって形成した。形成した発光層34c中のIr(PPY)3の濃度は、6.5質量%であった。また、膜厚は30nmであった。
電子輸送層34dは、発光層34c上にトリス(8−ヒドロキシキノリンアルミニウム)(A1q3)を真空蒸着させることで形成し、膜厚を40nmとした。
電子注入層34eは、電子輸送層34d上に酸化リチウム(Li2O)を真空蒸着させることで形成し、膜厚を0.5nmとした。
カソード電極33は、電子注入層34e上にアルミニウム(Al)を真空蒸着させることで形成し、膜厚を150nmとした。
得られた有機発光素子3Aについて、陽極−陰極間に電圧を印加し、発光スペクトルを評価したところ、Ir(PPY)3からの発光が観測された。
【0113】
<表示装置用アレイの製造>
[実施例6]
図16を参照して説明した製造方法により、図15に示す表示装置用アレイ4Aを製造した。より具体的には、以下の通りである。
基板11としては、ガラス基板(コーニング社製、Eagle2000、厚さ:0.5mm)を用いた。
ゲート配線40の材質は、アルミニウム(Al)に対して10%のシリコン(Si)を添加したAlSi合金とした。そして、このAlSi合金からなる金属ターゲットを用いたスパッタリング法により、基板11上に、AlSi合金からなる膜厚40nmの金属膜を形成した。この金属膜のパターンニングは、フォトリソグラフィー及びエッチングで行った。
ゲート絶縁膜13の材質は、酸化シリコン(SiO2)とし、スパッタリング法により、膜厚300nmの酸化シリコン膜を形成した。
フォトレジスト膜90は、膜厚を4μmとし、リフトオフプロセス用のネガ型フォトレジスト(日本ゼオン社製、ZPN1150)を用いて、スピンコート法により成膜した後、フォトリソグラフィー法で形成した。
真空蒸着法によって、膜厚2nmのクロム(Cr)からなる密着層、及び膜厚40nmの金(Au)からなる金属膜を順次成膜し、アセトン等の有機溶媒中に基板11を浸漬するリフトオフ法により、フォトレジスト膜90及びその上に形成された不要なAu膜/Cr膜を除去して、ソース電極14及びドレイン電極15を形成した。この時、ソース電極14及びドレイン電極15間の間隔(チャネル長)は20μmであり、対向する電極の長さ(チャネル幅)は1000μmであった。
ソース配線41及び画素電極43は、Agインクを反転印刷し、180℃で焼成することにより、厚さ50nmで所望のパターンに形成した。
有機半導体層16は、第一の有機分子としてクォーターチオフェントリクロロシランに代えて2−トリクロロシリルペンタセン(前記一般式(I)−303で表される有機ケイ素化合物において、X1、X2及びX3が塩素原子であるもの)を、第二の有機分子としてクォーターチオフェンに代えてペンタセンをそれぞれ使用し、ペンタセンをスピンコート法に代えて蒸着法で導入したこと以外は、実施例1と同様の方法で形成した。有機半導体層16の膜厚は3nmであった。
そして、得られた有機半導体装置42をマトリクス状に配置して、表示装置用アレイ4Aとした。
【0114】
<表示装置の製造>
[実施例7]
図13に示す有機発光素子3Aを有機EL表示装置の素子として用い、図17に示す表示装置5Aを製造した。有機発光素子3Aは、実施例5と同様の方法で製造した
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明は、電界効果トランジスタ、太陽電池、有機発光素子等の半導体デバイスに利用可能である。
【符号の説明】
【0116】
1A,1B・・・電界効果トランジスタ、11・・・基板、12・・・ゲート電極、13・・・ゲート絶縁膜、14・・・ソース電極、15・・・ドレイン電極、16・・・有機半導体層、2A・・・太陽電池、21・・・ガラス基板、22・・・アノード電極、23・・・カソード電極、24・・・p型半導体層、25・・・n型半導体層、3,3A・・・有機発光素子、31・・・ガラス基板、32・・・アノード電極、33・・・カソード電極、34b・・・キャリア輸送層、34c・・・発光層、4A・・・表示装置用アレイ、40・・・ゲート配線、5A・・・表示装置、55・・・走査線駆動回路(ゲートドライバ)、56・・・信号線駆動回路(ソースドライバ)、57・・・コントローラ、6・・・有機薄膜、60・・・基材、61・・・第一の有機分子、62・・・第二の有機分子
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機薄膜及びその製造方法、並びに該有機薄膜を用いた電界効果トランジスタ、有機発光素子、太陽電池、表示装置用アレイ及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ユビキタス情報社会を迎え、情報端末としてフレキシブル、軽量、かつ安価なデバイスが求められている。さらに、このような情報端末としてのアプリケーションを想定した場合、大量生産のみならず、様々なユーザーの要求に対して迅速に対処できるプロセスが必要となる。こうしたデバイスやプロセスは、従来からあるシリコン系デバイス技術の延長ではその要望に十分に対応できない。そこで近年、このような要望に応え得る技術として、有機材料を半導体等に用いた電子デバイス技術の研究が盛んに行われている。その中でも、有機半導体材料を用いた有機トランジスタ(OFET)、有機発光ダイオード(OLED)、有機太陽電池などの有機電子デバイスが注目され、その一部ではすでに実用化が始まっている。
【0003】
このような有機電子デバイスがその機能を発現するためには、基本構造として有機薄膜を備えることが必要となる。例えば、一般的な有機薄膜トランジスタは、ゲート電極上に絶縁体層が設けられ、さらに絶縁体層上に、有機半導体薄膜からなる層が設けられた構造を有する。ここでは、有機薄膜トランジスタを例に挙げたが、有機薄膜は半導体であるか否かによらず、各種デバイスに幅広く応用されており、産業上極めて重要なものである。
【0004】
有機電子デバイスでは、構成する分子の配向性が、デバイスの機能発現に際して極めて重要な要素となる。有機単結晶は、配向の欠損が殆ど無く、有機電子デバイスとしては理想的であるが、所望のサイズの単結晶を作成しデバイス上に配置することは極めて困難であり、例えば、単結晶トランジスタはごく一部の有機半導体材料のみでしか実現出来ていない。一方、有機薄膜は、真空蒸着法などのドライプロセスや、スピンコート法、印刷法などのウエットプロセスで作製されるが、その作製条件によっては、有機分子が多様な形態で凝集するため、所望の有機薄膜が得られるように、分子の配向性を制御することは容易ではない。 これは、薄膜形成に用いるような有機分子では、分子間力が主にファンデルワールス力であり、比較的弱い力であるため、有機分子が基材との相互作用に強く影響されることが一因である。
【0005】
有機分子を配列させる方法としては、自己組織化単分子膜(以下、SAM膜と略記する)の技術を利用したものが例示できる。SAM膜とは、有機分子が自己整合的に秩序性を持って集積された単分子膜のことであり、SAM膜と、SAM膜に隣接する膜(基材)とは、化学結合により連結される。例えば、長鎖アルキル基からなるSAM膜は、トランジスタのゲート絶縁膜における濡れ性の改善や、電極における接触抵抗低減のための表面修飾剤として一般に用いられている。また、有機半導体分子を含むSAM膜は、通常の溶液プロセスで容易に広い面積で作製でき、基材と有機半導体分子とが強固な化学結合によって連結可能なことから、フレキシブルデバイスへの応用が期待される。例えば、これまでに、シランカップリング部位を有するオリゴチオフェンを用いて基材上にSAM膜を形成し、このSAM膜を備えたトランジスタデバイスは、0.04cm2/(Vs)の移動度を示すことが開示されている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Nature,第455巻,956(2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、同様のπ電子共役系を有する有機分子であって、配向の欠損が無いオリゴチオフェン単結晶を用いたトランジスタ(「Appl.Phys.Lett.,第73巻,(1998)」参照)では、0.5cm2/(Vs)の移動度を示しており、非特許文献1に記載されたトランジスタデバイスは、これに比べて一桁小さな移動度しか示さない。その主たる原因としては、トランジスタの活性層となるSAM膜において、有機半導体分子がその特性を十分に発揮できる最適な分子配列の周期性と、有機半導体分子が実際に基材と連結された状態での分子配列の周期性とが整合していないこと(ミスマッチング)が考えられる。有機半導体分子は、通常カップリング剤を介して基材と連結されるが、その場合、カップリング部位によって分子配列の周期性が決定される。このミスマッチングについて、図1を参照しながらより具体的に説明する。
【0008】
図1において、有機分子63は、シランカップリング部位63aを介して基材60と連結され、単分子膜である有機薄膜6’を形成している。なお、ここでは判り易くするために、有機分子63を長方形で示している。そして、シランカップリング部位63aにおける、隣り合うケイ素原子(Si)間の距離Laによって、隣り合う有機分子63間の距離が決定され、分子配列の周期はLbとなる。そして、実質的にLa及びLbはほぼ等しくなり、その値は約4.3Å(オングストローム)であることが知られている(「An Introduction to Ulutrahin Organic Film,257,Academic press 1991」参照)。
これに対して、有機分子63がπ電子共役系を有する場合、隣り合う有機分子63の間で分子間相互作用が最大になると考えられる分子間の距離は、理論上、π電子共役分子のファンデルワールス半径の和である約3.4Åであり、例えば、有機分子63が上記のオリゴチオフェンである場合など、ファンデルワールス半径が大きい硫黄原子が含まれることを考慮しても約3.6Åに過ぎない。このように、従来の有機薄膜6’では、有機分子63の分子配列の周期Lb(約4.3Å)は、前記分子間相互作用が最大になる分子間の距離(約3.4〜3.6Å)よりも大きいために、隣り合う有機分子63間での分子間相互作用が不十分となり、有機薄膜6’が所望の機能を発現できないと考えられる。なお、ここでは、有機分子がπ電子共役系を有する場合について説明したが、π−π相互作用以外の分子間相互作用を発現する有機分子についても、同様の問題点がある。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、有機分子の配向性が制御されて十分な機能を有する有機薄膜及びその製造方法、並びに該有機薄膜を用いた有機電子デバイス及び表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、基材上に設けられた有機薄膜の製造方法であって、前記基材上に第一の有機分子を化学結合させて立設し、点在させる工程と、前記基材上に第二の有機分子を導入し、前記第一の有機分子に対して前記第二の有機分子を配列させて、薄膜を形成する工程と、を有することを特徴とする有機薄膜の製造方法を提供する。
また、本発明は、かかる有機薄膜の製造方法において、前記第一の有機分子に対して前記第二の有機分子を分子間相互作用により配列させることを特徴とする有機薄膜の製造方法を提供する。
また、本発明は、かかる有機薄膜の製造方法において、前記第一及び第二の有機分子が、π電子共役系を有することを特徴とする有機薄膜の製造方法を提供する。
また、本発明は、かかる有機薄膜の製造方法において、前記第一の有機分子が溶解された溶液を前記基材と接触させて、前記第一の有機分子を前記基材上に化学結合させることを特徴とする有機薄膜の製造方法を提供する。
また、本発明は、かかる有機薄膜の製造方法において、前記第一の有機分子が溶解された溶液の濃度により、前記基材上に化学結合された前記第一の有機分子の密度を調節することを特徴とする有機薄膜の製造方法を提供する。
また、本発明は、かかる有機薄膜の製造方法において、前記第一の有機分子が溶解された溶液と前記基材との接触時間により、前記基材上に化学結合された前記第一の有機分子の密度を調節することを特徴とする有機薄膜の製造方法を提供する。
また、本発明は、かかる有機薄膜の製造方法において、前記第二の有機分子が溶解された溶液を塗布することで、前記第二の有機分子を前記基材上に導入することを特徴とする有機薄膜の製造方法を提供する。
また、本発明は、かかる有機薄膜の製造方法において、前記第二の有機分子を蒸着させることで、前記基材上に導入することを特徴とする有機薄膜の製造方法を提供する。
また、本発明は、かかる有機薄膜の製造方法において、前記基材が親水性基を有し、前記第一の有機分子が、下記一般式(I)で表される有機ケイ素化合物であることを特徴とする有機薄膜の製造方法を提供する。
【0011】
【化1】
(式中、Rはπ電子共役系を有する有機基であり;X1、X2及びX3はそれぞれ独立して、これらが結合しているケイ素原子(Si)と前記親水性基との反応で離脱する基である。)
【0012】
また、本発明は、基材上に設けられた有機薄膜であって、前記基材上に、第一の有機分子が化学結合により立設及び点在され、第二の有機分子が、前記第一の有機分子に対して配列されてなることを特徴とする有機薄膜を提供する。
また、本発明は、かかる有機薄膜において、前記第一の有機分子に対して前記第二の有機分子が分子間相互作用により配列されてなることを特徴とする有機薄膜を提供する。
また、本発明は、かかる有機薄膜において、前記第一及び第二の有機分子が、π電子共役系を有することを特徴とする有機薄膜を提供する。
また、本発明は、かかる有機薄膜において、前記第一の有機分子が含まれる溶液と前記基材との接触により、前記第一の有機分子が前記基材上に化学結合されたことを特徴とする有機薄膜を提供する。
また、本発明は、かかる有機薄膜において、前記第一の有機分子が含まれる溶液の濃度により、前記基材上に化学結合された前記第一の有機分子の密度が調節されたことを特徴とする有機薄膜を提供する。
また、本発明は、かかる有機薄膜において、前記第一の有機分子が含まれる溶液と前記基材との接触時間により、前記基材上に化学結合された前記第一の有機分子の密度が調節されたことを特徴とする有機薄膜を提供する。
また、本発明は、かかる有機薄膜において、前記第二の有機分子が含まれる溶液の塗布により、前記第二の有機分子が前記基材上に導入され、配列されたことを特徴とする有機薄膜を提供する。
また、本発明は、かかる有機薄膜において、前記第二の有機分子が蒸着により、前記基材上に導入され、配列されたことを特徴とする有機薄膜を提供する。
また、本発明は、かかる有機薄膜において、 前記基材が親水性基を有し、前記第一の有機分子が、下記一般式(I)で表される有機ケイ素化合物であることを特徴とする有機薄膜を提供する。
【0013】
【化2】
(式中、Rはπ電子共役系を有する有機基であり;X1、X2及びX3はそれぞれ独立して、これらが結合しているケイ素原子(Si)と前記親水性基との反応で離脱する基である。)
【0014】
また、本発明は、有機半導体層を備えた電界効果トランジスタであって、かかる有機薄膜において、前記第一及び第二の有機分子が有機半導体分子である有機薄膜を、前記有機半導体層として備えたことを特徴とする電界効果トランジスタを提供する。
また、本発明は、かかる電界効果トランジスタにおいて、ゲート電極、ゲート絶縁膜、ソース電極、ドレイン電極及び有機半導体層を備え、前記有機半導体層が、前記ゲート絶縁膜を介して前記ゲート電極と対向するように設けられており、前記ソース電極及びドレイン電極が、前記有機半導体層上に接するように設けられていることを特徴とする電界効果トランジスタを提供する。
また、本発明は、かかる電界効果トランジスタにおいて、ゲート電極、ゲート絶縁膜、ソース電極、ドレイン電極及び有機半導体層を備え、前記有機半導体層が、前記ゲート絶縁膜を介して前記ゲート電極と対向するように設けられており、前記ソース電極及びドレイン電極が、前記ゲート絶縁膜上に設けられていることを特徴とする電界効果トランジスタを提供する。
【0015】
また、本発明は、基材上に一対の電極を備え、前記一対の電極間に、少なくともキャリア輸送層及び発光層を備えた有機発光素子であって、かかる有機薄膜において、前記第一及び第二の有機分子が有機半導体分子である有機薄膜を、前記キャリア輸送層として備えたことを特徴とする有機発光素子を提供する。
また、本発明は、基材上に一対の電極を備え、前記一対の電極間に、p型半導体層及びn型半導体層を備えた太陽電池であって、かかる有機薄膜において、前記第一及び第二の有機分子が有機半導体分子である有機薄膜を、前記p型半導体層及び/又はn型半導体層として備えたことを特徴とする太陽電池を提供する。
また、本発明は、かかる電界効果トランジスタをスイッチング素子として備えたことを特徴とする表示装置用アレイを提供する。
また、本発明は、画像信号を発生して出力する画像信号出力部と、前記画像信号に基づいて電流又は電圧を発生する駆動部と、発生した前記電流又は電圧により発光する発光部と、を備えた表示装置であって、前記発光部が、かかる有機発光素子であることを特徴とする表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、有機分子の配向性が制御されて十分な機能を有する有機薄膜及びその製造方法、並びに該有機薄膜を用いた有機電子デバイス及び表示装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】有機薄膜における分子配列の周期性のミスマッチングを説明するための模式図である。
【図2】本発明に係る有機薄膜の製造方法を説明するための模式図である。
【図3】第一の有機分子が基材とシロキサン結合を形成して結合している様子を例示する模式図である。
【図4】第一の有機分子が含まれる液体を用いて、第一の有機分子を基材上に点在させる場合について、液体中における第一の有機分子の濃度と仕事関数との関係を例示するグラフである。
【図5】第一の実施形態に係る電界効果トランジスタの要部を例示する概略断面図である。
【図6】第二の実施形態に係る電界効果トランジスタの要部を例示する概略断面図である。
【図7】第三の実施形態に係る電界効果トランジスタの要部を例示する概略断面図である。
【図8】第四の実施形態に係る電界効果トランジスタの要部を例示する概略断面図である。
【図9】図5に示す電界効果トランジスタの製造方法を説明するための概略断面図である。
【図10】図6に示す電界効果トランジスタの製造方法を説明するための概略断面図である。
【図11】本発明に係る太陽電池の要部を例示する概略断面図である。
【図12】図11に示す太陽電池の製造方法を説明するための概略断面図である。
【図13】本発明に係る有機発光素子の要部を例示する概略断面図である。
【図14】図13に示す有機発光素子の製造方法を説明するための概略断面図である。
【図15】本発明に係る表示装置用アレイの要部を例示する概略図であり、(a)は平面図、(b)は拡大平面図、(c)は(b)のC−C線における断面図、(d)は(b)のD−D線における断面図である。
【図16】本発明に係る表示装置用アレイにおける有機半導体装置の製造方法を説明するための概略断面図である。
【図17】本発明に係る表示装置の要部を例示する概略図であり、(a)は平面図、(b)は1画素の等価回路図、(c)は1画素の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<有機薄膜及びその製造方法>
本発明に係る有機薄膜の製造方法は、基材上に設けられた有機薄膜の製造方法であって、前記基材上に第一の有機分子を化学結合させて立設し、点在させる工程(以下、「点在化工程」と略記する)と、前記基材上に第二の有機分子を導入し、前記第一の有機分子に対して前記第二の有機分子を配列させて、薄膜を形成する工程(以下、「成膜工程」と略記する)と、を有することを特徴とする。かかる製造方法について、以下、図2を参照しながら詳しく説明する。
【0019】
[点在化工程]
図2は、本発明に係る有機薄膜の製造方法を説明するための模式図である。
点在化工程では、図2(a)及び(b)に示すように、基材60上に、第一の有機分子61を化学結合させて立設し、点在させる。本工程では、第一の有機分子61が基材60上に点在するだけなので、第一の有機分子61は薄膜を形成しない。なお、図2では判り易くするために、第一の有機分子61を長方形で、第一の有機分子61と基材60との結合部位を三角形で、それぞれ示している。
【0020】
基材60は、有機薄膜の用途に応じて任意に選択できる。例えば、有機半導体薄膜を製造する場合には、薄膜の材質、デバイスの構成及び性能等を考慮して、基材60を適宜選択すればよく、具体的な材質としては、シリコン単結晶、多結晶シリコン、アモルファスシリコン、ゲルマニウム(Ge)等の元素半導体;ガリウムヒ素(GaAs)、インジウムガリウムヒ素(InGaAs)、セレン化亜鉛(ZnSe)等の化合物半導体;石英ガラス等のガラス;ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリテトラフルオロエチレン等の絶縁性高分子化合物が例示できる。
また、第一の有機分子61が結合できるものであれば、基材60として薄膜を用いてもよい。すなわち、第一の有機分子61を結合させて、二層構造の薄膜とすることもできる。
【0021】
また、基材60は、その表面に酸化シリコン(SiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)等の金属酸化膜が形成されていてもよい。
そして、好ましい基材60としては、水酸基(−OH)、カルボキシル基(−C(=O)−OH)、アミノ基(−NH2)、ヒドロキシルアミノ基(−NHOH)、イミノ基(=NH)、チオール基(−SH)等の活性水素を有する親水性基が表面に露出された、親水化処理されたものが例示できる。
親水化処理は、例えば、過酸化水素及び濃硫酸を含む溶液中に未処理の基材を浸漬することで行うことができる。また、前記金属酸化膜が表面に形成された基材を、UVオゾン処理、酸化プラズマ処理等することでも行うことができる。
【0022】
基材60は、単層構造及び複数層構造のいずれでもよく、複数層構造である場合には、層数も特に限定されず、すべてが同じ材質でもよいし、すべてが異なる材質でもよく、一部が異なる材質でもよい。
【0023】
基材60は、フィルム状又はプレート状であることが好ましく、厚さは目的に応じて適宜選択すればよいが、0.1〜3mmであることが好ましい。
【0024】
第一の有機分子61は、後述する第二の有機分子62を配列させ、且つ基材60の表面と化学結合するものであれば特に限定されず、第二の有機分子62との間で分子間相互作用を発現するものが好ましい。ここで、分子間相互作用としては、π−π相互作用、ファンデルワールス力による相互作用、水素結合による相互作用、クーロン力による相互作用(電荷−電荷相互作用)、電荷移動相互作用等が例示できる。そして、第一の有機分子61としては、半導体分子も好ましい。
また、第一の有機分子61は、基材60との結合部位が、分子の末端又はその近傍にあるものが好ましく、基材60との結合部位が一つであるものが好ましい。
【0025】
第一の有機分子61としては、有機ケイ素化合物が好ましく、基材60とシロキサン結合(−Si−O−)を形成して結合するものがより好ましい。図3は、第一の有機分子61が基材60とシロキサン結合(−Si−O−)を形成して結合している様子を例示する模式図である。ここでは、基材60として、表面に酸化シリコン(SiO2)の膜が形成されたものを示しており、一部で水酸基(−OH)が露出され、親水化されている。そして、第一の有機分子61は、その構造中のケイ素原子が基材60上の水酸基と反応してシロキサン結合を形成し、シランカップリング部位61aを形成している。これは、基材60として、表面が親水化処理されたものを用いれば、いずれも同様である。なお、シランカップリング部位61aの一つのケイ素原子は第一の有機分子61に由来し、シランカップリング部位61aの三つの酸素原子は基材60に由来する。
一方、シランカップリング部位61aの三つの酸素原子は、基材60上で三脚状に、基材60のケイ素原子と結合していると考えられる。これにより、第一の有機分子61が基材60の表面に対して略垂直な方向に分子鎖を伸ばして結合する効果が促進されると考えられる。
なお、第一の有機分子は、基材に結合することで、この結合に関与した部位の構造が一部変化するが、本明細書においては便宜上、基材に結合後も第一の有機分子と称する。
【0026】
第一の有機分子61は、下記一般式(I)で表される有機ケイ素化合物(以下、有機ケイ素化合物(I)と略記する)であることが好ましい。
【0027】
【化3】
(式中、Rはπ電子共役系を有する有機基であり;X1、X2及びX3はそれぞれ独立して、これらが結合しているケイ素原子(Si)と前記親水性基との反応で離脱する基である。)
【0028】
式中、Rはπ電子共役系を有する有機基であり、後述する第二の有機分子との間で、分子間相互作用(π−π相互作用)によりπ−πスタッキング構造を形成し得る基である。前記有機基は、π電子共役系を有していれば特に限定されず、各種芳香族基を有する基が例示できる。
【0029】
前記芳香族基は、単環状及び多環状のいずれでもよく、芳香族炭化水素基及び芳香族複素環式基のいずれでもよい。
前記芳香族炭化水素基としては、ベンゼン(C6H6)、ナフタレン(C10H8)、アントラセン(C14H10)、テトラセン(C18H12)、ピレン(C16H10)、ペンタセン(C22H14)、コロネン(C24H12)等の単環状又は多環状の芳香族炭化水素から、一つ以上の水素原子を除いた基が例示できる。除かれる水素原子の数は、Rにおける前記芳香族炭化水素基の位置や数等に応じて決定されるものであり、特に限定されない。
前記芳香族複素環式基は、芳香族環を構成する原子としてヘテロ原子を有するものであれば特に限定されず、前記ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子等が例示できる。芳香族複素環式基としてより具体的には、単環状又は多環状の芳香族複素環化合物から、一つ以上の水素原子を除いた基が例示でき、好ましい前記芳香族複素環化合物としては、チオフェン、フタロシアニン金属錯体が例示できる。ここで、錯体を構成する金属としては、遷移金属が例示できる。除かれる水素原子の数は、Rにおける前記芳香族複素環式基の位置や数等に応じて決定されるものであり、特に限定されない。
【0030】
前記有機基は、芳香族基のみからなるものでもよいし、脂肪族基、原子、イオン等の芳香族基以外の基を有していてもよい。前記原子、イオンで好ましいものとしては、金属原子、金属イオンが例示できる。
前記有機基が有する芳香族基の数は特に限定されないが、例えば、芳香族基が単環状である場合には、複数であることが好ましく、3以上であることがより好ましく、実用性も考慮すると3〜6であることが好ましい。
前記有機基が有する芳香族基の数が複数である場合には、これら芳香族基は、互いに直接結合していてもよいし、連結基を介して間接的に結合していてもよく、直接結合したものと間接的に結合したものとが混在していてもよい。このような、単環状の芳香族基を複数有する構造で好ましいものとしては、複数のチオフェンが互いに直接結合したオリゴチオフェン又はポリチオフェン、複数のベンゼンが互いに直接結合したオリゴフェニレン又はポリフェニレン、複数のベンゼンがビニレン基(−C=C−)を介して互いに結合したオリゴビニレンフェニレン又はポリビニレンフェニレン等から、一つ以上の水素原子を除いた構造が例示できる。
【0031】
式中、X1、X2及びX3はそれぞれ独立して、これらが結合しているケイ素原子(Si)と親水性基との反応で離脱する基である。すなわち、有機ケイ素化合物(I)中のケイ素原子と、基材が有する親水性基とが反応した時に、前記ケイ素原子との結合が切断される離脱基であり、加水分解性基であることが好ましい。
好ましいX1〜X3としては、ハロゲン原子、アルコキシ基が例示できる。
前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が例示できる。
前記アルコキシ基は、低級アルコキシ基が好ましく、炭素数1〜5のアルコキシ基が例示でき、炭素数が1〜3であることがより好ましく、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基が例示できる。
【0032】
好ましい有機ケイ素化合物(I)としては、下記一般式で表されるものが例示できる。
【0033】
【化4】
(式中、X1、X2及びX3はそれぞれ独立して、これらが結合しているケイ素原子(Si)と前記親水性基との反応で離脱する基であり;Mは遷移金属原子である。)
【0034】
式中、X1、X2及びX3は、一般式(I)におけるX1、X2及びX3と同じである。
式中、Mは遷移金属原子であり、銅原子が好ましい。
【0035】
上記で例示した有機ケイ素化合物(I)は、通常p型半導体としての性質を示すが、これら化合物の芳香族環を構成している一つ以上の水素原子をフッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル基(−CF3)、シアノ基(−C≡N)等の電子求引性基で置換することにより、n型有機半導体として用いることもできる。
【0036】
第一の有機分子61は、一種でもよいし二種以上でもよく、二種以上である場合、その組み合わせ及び比率は特に限定されないが、有機薄膜の配向性をより向上させるためには、一種であることが好ましい。
【0037】
第一の有機分子61は、基材60と接触させることで、基材60上に化学結合させることができるが、好ましくは第一の有機分子61が含まれる液体、より好ましくは第一の有機分子61が溶解された溶液を基材60と接触させるとよい。
基材60と結合した第一の有機分子61は、基材60上で分子鎖を上方向に伸ばすようにして立ち上がった状態で存在する。そして、基材60の表面が親水化処理されている場合に、よりこの状態をとり易いと考えられる。最も好ましいのは、第一の有機分子61が基材60の表面に対して略垂直方向に伸びた状態である。
【0038】
第一の有機分子61が、例えば、前記有機ケイ素化合物(I)等のように加水分解性基を有する場合、第一の有機分子61は水の存在下で加水分解され、自己縮合反応を起こすことがある。そこで、このような第一の有機分子61を含む液体を用いる場合、溶媒成分として無水のものを用いるか、または、第一の有機分子61の濃度を低くすることが好ましく、これらの条件を共に満たすことがより好ましい。
【0039】
第一の有機分子61は、基材60上で互いに接近し過ぎないように所定の距離をおいて基材60と接触させることで、点在させることができる。
第一の有機分子61が含まれる液体を用いて、第一の有機分子61を基材60上に点在させる場合、基材60上における第一の有機分子61の密度(点在の程度)は、例えば、前記液体中における第一の有機分子61の濃度、又は前記液体と基材60との接触時間により、容易に調節できる。具体的には、前記濃度を低くすることで密度を小さくでき、前記接触時間を短くすることで密度を小さくできる。
【0040】
通常、基材上における分子の密度(分子密度)は、直接測定することが困難である。そこで、分子密度と相関があることが知られている、基材表面の仕事関数の変化を評価することで、分子密度を間接的に評価する手法が適用される。
例えば、基材上の分子がダイポールモーメントμを有すると考えた場合、基材上の分子密度dと、ダイポールモーメントμによる基材表面の仕事関数の変化量ΔWFとは、下記式(1)で表される関係を有する。
ΔWF=μd/2ε0 ・・・・(1)
(式中、dは基材上の分子密度であり;μは分子が有するダイポールモーメントであり;ΔWFはダイポールモーメントμによる基材表面の仕事関数の変化量であり;ε0は真空中での誘電率である。)
一方、基材表面を構成する材料自身が有する仕事関数をWF0とすると、分子が結合された基材表面の仕事関数WFは下記式(2)で表される。
WF=WF0+ΔWF ・・・・(2)
(式中、WFは分子が結合された基材表面の仕事関数であり;WF0は基材表面を構成する材料自身が有する仕事関数であり;ΔWFはダイポールモーメントμによる基材表面の仕事関数の変化量である。)
式(2)において、WF0は定数であり、ΔWFは基材上の分子密度dと比例関係にあるので、仕事関数WFの変化を評価することによって、基材上の分子密度dの変化を評価できる。
【0041】
ここで、上記のように、第一の有機分子が含まれる液体を用いて、第一の有機分子を基材上に点在させる場合、第一の有機分子が基材上に結合する反応は、基材と第一の有機分子との反応速度式によって表すことができ、前記液体中における第一の有機分子の濃度と処理時間(反応時間、接触時間)によって変化する。そこで、前記式(2)のΔWFに反応速度式を組み込むと、下記式(3)が得られる。
WF=WF0+WFsat{1−exp(−k×t×Z1)} ・・・・(3)
(式中、WFsatは高濃度領域又は長時間処理での飽和仕事関数であり;tは処理時間であり;kは反応速度定数であり;Z1は第一の有機分子の濃度であり;WF及びWF0は前記と同じである。)
WF0は前記と同じであるが、濃度がゼロの時の仕事関数と言い換えることができる。
また、kは反応速度定数であり、第一の有機分子と基材の種類(材料)によって決定される値である。Z1は液体中における第一の有機分子の濃度である。
【0042】
したがって、ある特定の材料においては、第一の有機分子の濃度と処理時間を変化させることによって、基材に結合する第一の有機分子の数が変化するので、これが仕事関数の変化として評価できる。図4は、処理時間を一定(1分)とした場合の、第一の有機分子の濃度と仕事関数との関係を例示するグラフである。単位「μM」は「μmol/L」を示す。なお、図4のグラフは一例に過ぎず、第一の有機分子の濃度と仕事関数との関係は、これに限定されるものではない。このグラフは、第一の有機分子の濃度を調節することで、仕事関数を調節できることを示しており、したがって、この仕事関数と相関がある基材表面の分子密度も調節できることになる。基材上における第一の有機分子の密度を小さくしたい場合には、図4のグラフから、仕事関数の変化が小さくなる濃度域を選択すればよいことになる。このグラフからは、例えば、第一の有機分子の好ましい濃度として、1×10−4〜1×10−2μmol/Lの範囲が選択できる。なお、ここでは、処理時間を一定とした場合について説明したが、反対に、第一の有機分子の濃度を一定とした場合には、処理時間を調節することで、同様に基材表面の分子密度も調節できる。例えば、図4のグラフを作成した時の反応条件において、第一の有機分子の濃度を一定(1×10−4μmol/L)として、処理時間と仕事関数との関係を求めることができ、この時のグラフからは、1〜100分が好ましい処理時間として選択できる。
【0043】
[成膜工程]
次いで、成膜工程では、図2(c)に示すように、第一の有機分子61が点在している基材60上に、第二の有機分子62を導入し、第一の有機分子61に対して第二の有機分子62を配列させて、薄膜6を形成する。本工程で、第二の有機分子62が第一の有機分子61と共に配列することで、初めて薄膜が形成される。
【0044】
第二の有機分子62は、基材60上に化学結合する必要は無く、第一の有機分子61に対して配列するものであれば特に限定されず、第一の有機分子61との間で及び/又は第二の有機分子62同士で分子間相互作用を発現するものが好ましい。ここで、「分子間相互作用」とは、第一の有機分子61の場合と同様である。そして、第二の有機分子62としては、半導体分子も好ましい。第二の有機分子62として、具体的には、第一の有機分子61において基材60と結合する基が、基材60と結合しないその他の基で置換されたものが例示でき、前記その他の基が水素原子であるものが好ましい。
そして、特に好ましい第二の有機分子62は、下記一般式(II)で表される有機ケイ素化合物(以下、有機ケイ素化合物(II)と略記する)である。
R−H ・・・・(II)
(式中、Rはπ電子共役系を有する有機基である。)
【0045】
式中、Rは、前記一般式(I)におけるRと同じである。すなわち、有機ケイ素化合物(II)は、有機ケイ素化合物(I)において、一般式「−SiX1X2X3」で表される基が水素原子(−H)で置換されたものである。
したがって、第二の有機分子62としては、第一の有機分子61と同様に、p型半導体としての性質を示す化合物を用いることができるが、該化合物の芳香族環を構成している一つ以上の水素原子をフッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル基(−CF3)、シアノ基(−C≡N)等の電子求引性基で置換することにより、n型有機半導体として用いてもよい。
【0046】
第二の有機分子62は、一種でもよいし二種以上でもよく、二種以上である場合、その組み合わせ及び比率は特に限定されないが、有機薄膜の配向性をより向上させるためには、一種であることが好ましい。
【0047】
第二の有機分子62は、例えば、第一の有機分子61との間でπ−π相互作用等の分子間相互作用により、スタッキング構造を形成すると共に、第二の有機分子62同士の間でも同様にスタッキング構造を形成した場合に、基材60上で配向性がより良好に制御されて、薄膜を形成する。このような観点から、第二の有機分子62としては、スタッキング構造がより強固となる点から、π電子共役系を有する骨格など、分子間相互作用を発現する部位が、組み合わせる第一の有機分子61と同じであるものが好ましい。
また、上記のように薄膜を形成するためには、例えば、薄膜を形成できる限り、第二の有機分子62を基材60に導入し続け、第二の有機分子62を密に配列させればよく、過剰量の第二の有機分子62を導入するのが最も簡便な方法である。
【0048】
第二の有機分子62の導入方法は特に限定されないが、好ましくは第二の有機分子62が含まれる液体、より好ましくは第二の有機分子62が溶解された溶液を基材60と接触させる方法が例示できる。そして、第二の有機分子62の導入時には、第一の有機分子61を基材60上に化学結合させる場合とは異なり、精密な条件の調節は不要であり、より低コストの方法が適用できる。第二の有機分子62が含まれる液体を用いる場合、好ましい第二の有機分子62の導入方法としては、浸漬法、塗布法、インクジェット法等の各種印刷法が例示でき、キャスト法、スピンコート法等の塗布法がより好ましい。
また、好ましい第二の有機分子62の導入方法としては、第二の有機分子62が含まれる液体を用いない方法として、蒸着法も例示できる。
【0049】
導入された第二の有機分子62は、点在している第一の有機分子61に対して、好ましくは分子間相互作用により配列し、基材60上で分子鎖を上方向に伸ばすようにして立ち上がった状態で存在する。そして、基材60の表面が親水化処理されている場合に、よりこの状態をとり易いと考えられる。最も好ましいのは、第二の有機分子62が基材60の表面に対して略垂直方向に伸びた状態である。また、第二の有機分子62は、基材60上の第一の有機分子61を含む層(第一層)を形成するだけでなく、さらに第一層の上部に積層して複数層を形成していてもよい。
【0050】
成膜工程後、形成された有機薄膜は、必要に応じて適宜周知の方法に従って、洗浄等を行ってもよい。
【0051】
上記製造方法により、基材60上に第一の有機分子61が化学結合により立設及び点在され、第二の有機分子62が、第一の有機分子61に対して配列されてなる有機薄膜6が得られる。有機薄膜6の厚さは、第一の有機分子61及び第二の有機分子62の大きさ(分子長)により決定され、特に限定されるものではない。
有機薄膜6は、従来のSAM膜とは異なり、第一の有機分子61及び第二の有機分子62について、最適な分子配列の周期性と、実際の分子配列の周期性との不整合(ミスマッチング)が生じないので、配向の乱れや欠陥が抑制され、十分な機能を有する緻密な膜となる。第一及び第二の有機分子は、π電子共役系を有する場合、例えば、π電子共役系ではなくアルキル基等を有する有機分子よりも、分子の厚さと幅との比が大きく、動径半径が大きくなると考えられる。その結果、通常であれば、配列構造の自由度が高まり、配向の乱れや欠陥が多い薄膜になると考えられる。しかし、本発明に係る有機薄膜では、上記理由により、このような問題点が生じない。
また、第一の有機分子61及び第二の有機分子62の大きさによらず、配向性が制御された有機薄膜6が得られるので、種々の有機分子を用いることができ、汎用性が高い。
【0052】
<電界効果トランジスタ>
本発明に係る電界効果トランジスタは、有機半導体層を備えた電界効果トランジスタであって、前記第一及び第二の有機分子が有機半導体分子である前記有機薄膜を、前記有機半導体層として備えたことを特徴とする。そして、かかる有機半導体層を備えたこと以外は、従来の電界効果トランジスタと同様の構成とすることができる。本発明に係る電界効果トランジスタは、前記有機薄膜を備えたことで、高速動作が可能となる。
前記有機薄膜は、例えば、先に例示した第一及び第二の有機分子を用いた場合、主にp型半導体層として利用されるが、上記のようにフッ素原子等の電子吸引性が強い置換基が導入された有機分子を用いた場合や、電極の材料の選択によっては、n型半導体層として機能させることも可能である。
以下、図面を参照しながら説明する。
【0053】
図5は、第一の実施形態に係る電界効果トランジスタの要部を例示する概略断面図である。
ここに示す電界効果トランジスタ1Aは、基板11上に、ゲート電極12、ゲート絶縁膜13、有機半導体層16、ソース電極14及びドレイン電極15が積層され、概略構成されている。より具体的には、基板11上の一部にゲート電極12が設けられ、さらにゲート電極12を覆うように、基板11上にゲート絶縁膜13が設けられ、ゲート絶縁膜13上に有機半導体層16が設けられている。そして、有機半導体層16上には、これに接するようにソース電極14及びドレイン電極15が離間して設けられている。有機半導体層16は、ゲート絶縁膜13を介してゲート電極12と対向するように設けられている。電界効果トランジスタ1Aは、ボトムゲート・トップコンタクト型構造のトランジスタ構造を有する。
【0054】
基板11の材質は、デバイスの構成及び性能等に応じて適宜選択できる。例えば、ガラス、石英、シリコン単結晶、多結晶シリコン、アモルファスシリコン;ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリテトラフルオロエチレン等の絶縁性の高分子化合物等が例示できる。
基板11は一種の材質からなる単層構造でもよいし、二種以上の材質が積層された複数層構造でもよい。
【0055】
ゲート電極12の材質は特に限定されず、当該分野で通常使用されるものでよい。具体的には、金、白金、銀、銅、アルミニウム、タンタル、ドープシリコン等の低抵抗の金属;3,4−ポリエチレンジオキシチオフェン(以下、PEDOTと略記する)/ポリスチレンサルフォネイト(以下、PSSと略記する)等の有機導電体等が例示できる。
【0056】
ソース電極14、ドレイン電極15の材質としては、p型有機半導体に対しては、有機半導体分子の最高占有分子軌道(HOMO:Highest Occupied Molecular Orbital)レベル、n型有機半導体に対しては、有機半導体分子の最低非占有分子軌道(LUMO:Lowest Unocuppied Molecular Orbital)レベルに仕事関数を有するものが例示できる。
HOMOレベルに近い材質としては、金、白金、銀、又はこれらの一種以上を含む合金等の比較的仕事関数が高い金属;インジウム・スズ酸化物(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)等の透明酸化物導電体;PEDOT/PSS等の有機導電体が例示できる。
LUMOレベルに近い材質としては、アルミニウム、チタン、アルカリ金属、又はこれらの一種以上を含む合金等の比較的仕事関数が低い金属等が例示できる。前記アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が例示できる。
【0057】
ソース電極14及びドレイン電極15は、その表面に有機分子等からなる表面修飾層が設けられていてもよい。表面修飾層は、例えば、ソース電極14及びドレイン電極15の表面に表面修飾剤を作用させることで形成できる。
【0058】
ゲート電極12、ソース電極14、ドレイン電極15の膜厚は、特に限定されず、通常のトランジスタにおける膜厚であればよく、目的に応じて適宜調節することが好ましい。例えば、材質が金属である場合には、30〜200nmであることが好ましい。
これら電極は、材質に応じて、例えば、蒸着、スパッタ、塗布等で成膜できる。
【0059】
ゲート絶縁膜13の材質は、誘電率が高く、薄膜形成時にピンホール等の欠陥が生じにくいものが好ましい。誘電率が高いことで、電界効果トランジスタの閾値をより低減できる。また、薄膜形成時にピンホール等の欠陥を少なくすることで、ゲート絶縁膜13の機能低下が抑制され、特性がより良好な電界効果トランジスタが得られる。
また、ゲート絶縁膜13は、第一の有機分子が良好に化学結合できるように、例えば、シランカップリング剤を構成するアルコキシシラン、ハロゲノシラン等の基(例えば、有機ケイ素化合物(I)において、一般式「−SiX1X2X3」で表される基)との反応性に優れる水酸基等の反応性基を、少なくとも表面に有することが好ましい。
このような材質の膜としては、シリコン酸化膜、五酸化タンタル膜、酸化アルミニウム膜等の無機絶縁膜;ポリビニルフェノール膜等の有機絶縁膜等が例示できる。
ゲート絶縁膜13の膜厚は、単位面積あたりの静電容量が大きくなるように設定することが好ましく、また、膜厚を薄くすることで、電界効果トランジスタの閾値電圧をより低減できる。そして、ゲート絶縁膜13の膜厚は、材質の比誘電率、絶縁性等に応じて適宜調節することが好ましく、例えば、50〜300nmであることが好ましい。このようにすることで、単位面積あたりの静電容量を大きくでき、かつ電界効果トランジスタの閾値電圧を低減できる。
ゲート絶縁膜13は、材質に応じて、例えば、蒸着、スパッタ、塗布等で成膜できる。
【0060】
有機半導体層16は、上記の本発明に係る有機薄膜である。
有機半導体層16の膜厚は、1〜100nmであることが好ましい。
有機半導体層16は、上記のように、薄膜を構成する第一及び第二の有機分子の配向性が制御され、十分な機能を有する。
【0061】
図6は、第二の実施形態に係る電界効果トランジスタの要部を例示する概略断面図である。なお、図6において、図5に示すものと同様の構成要素には、図5の場合と同様の符号を付し、その詳細な説明は省略する。これは、以降の図においても同様である。
ここに示す電界効果トランジスタ1Bは、基板11上に、ゲート電極12、ゲート絶縁膜13、ソース電極14、ドレイン電極15及び有機半導体層16が積層され、概略構成されている。より具体的には、基板11上の一部にゲート電極12が設けられ、さらにゲート電極12を覆うように、基板11上にゲート絶縁膜13が設けられている。そして、ゲート絶縁膜13上には、ソース電極14及びドレイン電極15が離間して設けられ、さらにソース電極14及びドレイン電極15間のゲート絶縁膜13上に、有機半導体層16が設けられている。有機半導体層16は、ゲート絶縁膜13を介してゲート電極12と対向するように設けられている。電界効果トランジスタ1Bは、ボトムゲート・ボトムコンタクト型のトランジスタ構造を有する。
【0062】
ゲート絶縁膜13は、電界効果トランジスタ1Aと同様に、水酸基等の反応性基を、少なくとも表面に有することが好ましい。さらに、ソース電極14及びドレイン電極15上には有機半導体層16が設けられるので、これら電極の表面には、表面修飾層として親水性の膜が設けられていることが好ましい。
また、ソース電極14及びドレイン電極15は、密着層(図示略)を介してゲート絶縁膜13上に形成してもよい。密着層の材質としては、クロム等が例示できる。
【0063】
本発明に係る電界効果トランジスタは、図5〜6に示すものに限定されず、これらの構成の一部が変更されたものでもよい。例えば、以下に示すものが挙げられる。
(I)図7に例示するように、基板11上に有機半導体層16が設けられ、有機半導体層16上に、ソース電極14及びドレイン電極15が離間して設けられ、ソース電極14及びドレイン電極15間の有機半導体層16上に、ゲート絶縁膜13及びゲート電極12がこの順で設けられた電界効果トランジスタ1C(第三の実施形態)。
(II)図8に例示するように、基板11上にソース電極14及びドレイン電極15が離間して設けられ、ソース電極14及びドレイン電極15上を覆うように、基板11上に有機半導体層16が設けられ、有機半導体層16上にゲート絶縁膜13が設けられ、ゲート絶縁膜13上の一部にゲート電極12が設けられた電界効果トランジスタ1D(第四の実施形態)。
【0064】
電界効果トランジスタ1C及び1Dにおいては、基板11上に有機半導体層16が設けられるので、基板11の材質は上記の基材60(図1〜3)と同様であることが好ましい。
さらに、電界効果トランジスタ1Dにおいては、ソース電極14及びドレイン電極15上に有機半導体層16が設けられるので、これら電極の表面に、表面修飾層として親水性の膜が設けられていることが好ましい。
なお、電界効果トランジスタ1C及び1Dのように、ゲート絶縁膜13上にゲート絶縁膜13に接して有機半導体層16が設けられていない場合には、ゲート絶縁膜13の表面は、必ずしも水酸基等の反応性基を有する必要は無く、この場合、ゲート絶縁膜13の材質としては、上記のもの以外に、さらに、シリコン窒化膜等の無機絶縁膜;ポリイミド膜、パリレン膜等の有機絶縁膜等が例示できる。
【0065】
本発明に係る電界効果トランジスタは、例えば、以下の方法で製造できる。
まず、図5に示す電界効果トランジスタ1Aの製造方法について説明する。図9は、電界効果トランジスタ1Aの製造方法を説明するための概略断面図である。
基板11上に、ゲート電極12を構成する材質からなる膜を形成し、フォトリソグラフィー及びエッチングにより、前記膜を所望のパターンに形成して、図9(a)に示すように、基板11上の所定箇所にゲート電極12を形成する。膜の形成方法としては、スパッタリング法が例示できる。
【0066】
次いで、図9(b)に示すように、ゲート電極12を覆うように基板11上にゲート絶縁膜13を形成する。ゲート絶縁膜13の形成方法としては、スパッタリング法が例示できる。
【0067】
次いで、図9(c)に示すように、ゲート絶縁膜13上に有機半導体層16を形成する。有機半導体層16の形成方法は、上記の有機薄膜の製造方法で説明した通りである。
【0068】
次いで、有機半導体層16上に、所定の開口部を有する金属マスク(図示せず)を介して真空蒸着法等により、図9(d)に示すように、ソース電極14及びドレイン電極15を形成する。
上記工程を行うことで、図5に示す電界効果トランジスタ1Aが得られる。
【0069】
次に、図6に示す電界効果トランジスタ1Bの製造方法について説明する。図10は、電界効果トランジスタ1Aの製造方法を説明するための概略断面図である。
図9(a)〜(b)を参照して説明した方法と同様の方法で、図10(a)〜(b)に示すように、基板11上にゲート電極12、ゲート絶縁膜13を形成する。
【0070】
次いで、ゲート絶縁膜13上に、スピンコート法等により、レジスト膜を形成した後、フォトリソグラフィー法で露光及び現像を行うことにより、図10(c)に示すように、所定のパターンのフォトレジスト膜90を形成する。フォトレジスト膜90は、ソース電極14及びドレイン電極15を形成するためのものであり、これらの形状に対応して開口部を有する。
【0071】
次いで、フォトレジスト膜90を覆うように、ゲート絶縁膜13上にソース電極14及びドレイン電極15の材質からなる金属膜を形成し、フォトレジスト膜90を除去することにより、図10(d)に示すように、ゲート絶縁膜13上の所定の箇所にソース電極14及びドレイン電極15を形成する。この時、前記金属膜を形成する前に、フォトレジスト膜90を覆うように、ゲート絶縁膜13上に密着層(図示略)を形成しておき、この密着層上に前記金属膜を形成してもよい。密着層の材質としては、クロム等の金属が例示できる。前記金属膜、密着層の形成方法としては、真空蒸着法が例示できる。フォトレジスト膜90の除去により、この上に形成された前記金属膜、さらに密着層を形成した場合には、この密着層も、フォトレジスト膜90とともに除去される。フォトレジスト膜90の除去方法としては、基板11をアセトン等の有機溶媒中に浸漬するリフトオフ法が例示できる。
【0072】
次いで、図10(e)に示すように、ソース電極14及びドレイン電極15間のゲート絶縁膜13上に有機半導体層16を形成する。有機半導体層16の形成方法は、上記の有機薄膜の製造方法で説明した通りである。
上記工程を行うことで、図6に示す電界効果トランジスタ1Bが得られる。
ソース電極14及びドレイン電極15の表面に表面修飾層を設ける場合には、図10(d)に示すようにソース電極14及びドレイン電極15を形成した後に、これらの表面に表面修飾剤を作用させて、表面修飾層を形成してから、図10(e)に示すように、有機半導体層16を形成すればよい。
【0073】
<太陽電池>
本発明に係る太陽電池は、基材上に一対の電極を備え、前記一対の電極間に、p型半導体層及びn型半導体層を備えた太陽電池であって、前記第一及び第二の有機分子が有機半導体分子である前記有機薄膜を、前記p型半導体層及び/又はn型半導体層として備えたことを特徴とする。そして、かかるp型半導体層及び/又はn型半導体層を備えたこと以外は、従来の太陽電池と同様の構成とすることができる。本発明に係る太陽電池は、前記有機薄膜を備えたことで、光電変換効率が向上する。
前記有機薄膜は、例えば、先に例示した第一及び第二の有機分子を用いた場合、主にp型半導体層として利用されるが、上記のようにフッ素原子等の電子吸引性が強い置換基が導入された有機分子を用いた場合や、電極の材料の選択によっては、n型半導体層として機能させることも可能である。
以下、図面を参照しながら説明する。
【0074】
図11は、本発明に係る太陽電池の要部を例示する概略断面図である。
ここに示す太陽電池2Aは、ガラス基板21上に、アノード電極22、p型半導体層24、n型半導体層25及びカソード電極23がこの順に積層され、概略構成されている。すなわち、ガラス基板21上に、アノード電極22及びカソード電極23からなる一対の電極と、該一対の電極間に挟持された、pn接合したp型半導体層24及びn型半導体層25と、が設けられたものである。
【0075】
p型半導体層24は、公知の材質で形成してもよく、上記の本発明に係る有機薄膜としてもよい。n型半導体層25を前記有機薄膜とする場合には、p型半導体層24は、親水性基等の第一の有機分子が結合できる部位を有していればよい。
p型半導体層24の膜厚は、5〜500nmであることが好ましい。
【0076】
n型半導体層25は、上記の本発明に係る有機薄膜としてもよい。n型半導体層25を公知の材質で形成する場合、好ましい材質としては、フラーレン;[6,6]−フェニルC61酪酸メチルエステル(PCBM)等のフラーレン誘導体;フタルイミド環を構成している一つ以上の水素原子がフッ素原子で置換されたフッ素化フタロシアニン等が例示できる。前記フッ素化フタロシアニンは、フタルイミド環を構成しているすべての水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい。
n型半導体層25の膜厚は、5〜500nmであることが好ましい。
【0077】
p型半導体層24及びn型半導体層25のいずれか一方は、公知のものであってもよい。そして、前記有機薄膜であるp型半導体層24及び/又はn型半導体層25は、薄膜を構成する第一及び第二の有機分子の配向性が制御され、十分な機能を有する。
【0078】
p型半導体層24を前記有機薄膜とする場合には、アノード電極22は、第一の有機分子が良好に化学結合できるように、例えば、シランカップリング剤を構成するアルコキシシラン、ハロゲノシラン等の基(例えば、有機ケイ素化合物(I)において、一般式「−SiX1X2X3」で表される基)との反応性に優れる水酸基等の反応性基を、少なくとも表面に有することが好ましい。このような材質としては、透明電極であるITO等が例示できる。
アノード電極22の膜厚は、10〜500nmであることが好ましい。
【0079】
カソード電極23の材質としては、銀、アルミニウム等が例示できる。
カソード電極23の膜厚は、10〜500nmであることが好ましい。
【0080】
本発明に係る太陽電池は、例えば、以下の方法で製造できる。
図12は、太陽電池2Aの製造方法を説明するための概略断面図である。
まず、図12(a)に示すように、ガラス基板21上にアノード電極22を形成する。アノード電極22の形成方法としては、スパッタリング法が例示できる。
【0081】
次いで、図12(b)に示すように、アノード電極22上にp型半導体層24を形成する。p型半導体層24の形成方法としては、p型半導体層24が前記有機薄膜である場合には、上記の有機薄膜の製造方法が例示でき、前記有機薄膜でない場合には、真空蒸着法が例示できる。
【0082】
次いで、図12(c)に示すように、p型半導体層24上にn型半導体層25を形成する。n型半導体層25の形成方法としては、n型半導体層25が前記有機薄膜である場合には、上記の有機薄膜の製造方法が例示でき、前記有機薄膜でない場合には、真空蒸着法が例示できる。
【0083】
次いで、図12(d)に示すように、n型半導体層25上にカソード電極23を形成する。カソード電極23の形成方法としては、真空蒸着法が例示できる。
上記工程を行うことで、図11に示す太陽電池2Aが得られる。
【0084】
<有機発光素子>
本発明に係る有機発光素子は、基材上に一対の電極を備え、前記一対の電極間に、少なくともキャリア輸送層及び発光層を備えた有機発光素子であって、前記第一及び第二の有機分子が有機半導体分子である前記有機薄膜を、前記キャリア輸送層として備えたことを特徴とする。そして、かかるキャリア輸送層を備えたこと以外は、従来の有機発光素子と同様の構成とすることができる。本発明に係る有機発光素子は、前記有機薄膜を備えたことで、キャリア輸送特性が向上し、良好な発光特性が得られる。
前記有機薄膜は、例えば、先に例示した第一及び第二の有機分子を用いた場合、主にp型半導体層として利用されるが、上記のようにフッ素原子等の電子吸引性が強い置換基が導入された有機分子を用いた場合や、電極の材料の選択によっては、n型半導体層(電子輸送層)として機能させることも可能である。
以下、図面を参照しながら説明する。
【0085】
図13は、本発明に係る有機発光素子の要部を例示する概略断面図である。
ここに示す有機発光素子3Aは、ガラス基板31上に、アノード電極32、有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機ELと略記する)部34及びカソード電極33がこの順に積層され、概略構成されている。すなわち、ガラス基板31上に、アノード電極32及びカソード電極33からなる一対の電極と、該一対の電極間に挟持された有機EL部34と、が設けられたものである。
【0086】
アノード電極32及びカソード電極33は、それぞれ、上記の太陽電池におけるアノード電極及びカソード電極と同様のものである。
【0087】
有機EL部34は、アノード電極32側からカソード電極33側へかけて、キャリア(正孔)注入層34a、キャリア輸送層34b、発光層34c、電子輸送層34d及び電子注入層34eがこの順に積層され、概略構成されている。
キャリア注入層34a、キャリア輸送層34b、発光層34c、電子輸送層34d、電子注入層34eは、それぞれ単層構造及び多層構造のいずれであってもよい。
【0088】
キャリア輸送層34bは、上記の本発明に係る有機薄膜である。
キャリア輸送層34bの膜厚は、5〜500nmであることが好ましい。
キャリア輸送層34bは、上記のように、薄膜を構成する第一及び第二の有機分子の配向性が制御され、十分な機能を有する。
【0089】
キャリア注入層34aにおいて、キャリア注入材料は、有機EL用又は有機光導電体用として公知のものでよい。好ましいキャリア注入材料としては、酸化バナジウム(V2O5)、酸化モリブデン(MoO2)等の酸化物や無機p型半導体材料;ポリアニリン(PANI)、ポリアニリン−樟脳スルホン酸(PANI−CSA)、3,4−ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンサルフォネイト(PEDOT/PSS)、ポリ(トリフェニルアミン)誘導体(Poly−TPD)、ポリビニルカルバゾール(PVCz)、ポリ(p−フェニレンビニレン)(PPV)、ポリ(p−ナフタレンビニレン)(PNV)等の高分子材料等が例示できる。
また、キャリア注入層34aに適用する材料としては、陽極からのキャリアの注入・輸送をより効率よく行う観点から、キャリア輸送層34bに適用するキャリア注入輸送材料よりも、最高被占分子軌道(HOMO)のエネルギー準位が低い材料が好ましい。
キャリア注入層34aの膜厚は、1〜500nmであることが好ましい。
【0090】
発光層34cの材質は、有機EL用の公知のものでよく、例えば、低分子発光材料及び高分子発光材料等に分類できる。
前記低分子発光材料の好ましいものとしては、4,4’−ビス(2,2’−ジフェニルビニル)−ビフェニル(DPVBi)等の芳香族ジメチリデン化合物;5−メチル−2−[2−[4−(5−メチル−2−ベンゾオキサゾリル)フェニル]ビニル]ベンゾオキサゾール等のオキサジアゾール化合物;3−(4−ビフェニルイル)−4−フェニル−5−t−ブチルフェニル−1,2,4−トリアゾール(TAZ)等のトリアゾール誘導体;1,4−ビス(2−メチルスチリル)ベンゼン等のスチリルベンゼン化合物;フルオレノン誘導体等の蛍光性有機材料等が例示できる。
前記高分子発光材料の好ましいものとしては、ポリ(2−デシルオキシ−1,4−フェニレン)(DO−PPP)等のポリフェニレンビニレン誘導体;ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン)(PDAF)等のポリスピロ誘導体等が例示できる。
発光層34cの膜厚は、5〜500nmであることが好ましい。
【0091】
電子輸送層34d及び電子注入層34eにおいて、電子注入輸送材料は、有機EL用又は有機光導電体用として公知のものでよい。好ましい電子注入輸送材料としては、n型半導体である無機材料、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、チオピラジンジオキシド誘導体、ベンゾキノン誘導体、ナフトキノン誘導体、アントラキノン誘導体、ジフェノキノン誘導体、フルオレノン誘導体、ベンゾジフラン誘導体等の低分子材料;ポリ(オキサジアゾール)(Poly−OXZ)、ポリスチレン誘導体(PSS)等の高分子材料が例示できる。特に、電子注入材料としては、フッ化リチウム(LiF)、フッ化バリウム(BaF2)等のフッ化物;酸化リチウム(Li2O)等の酸化物等が例示できる。
また、電子注入層34eに適用する材料としては、陰極からの電子の注入・輸送をより効率よく行う観点から、電子輸送層34dに適用する電子注入輸送材料よりも、最低非占有分子軌道(LUMO)のエネルギー準位が高い材料が好ましい。そして、電子輸送層34dに適用する材料としては、電子注入層34eに適用する電子注入輸送材料よりも、電子の移動度が高い材料が好ましい。
電子輸送層34dの膜厚は、5〜500nmであることが好ましい。また、電子注入層34eの膜厚は、0.1〜100nmであることが好ましい。
【0092】
本発明に係る有機発光素子は、図13に示すものに限定されず、その構成の一部が変更されたものでもよい。例えば、有機EL部34の構成を以下のようにしたものが挙げられる。
(i)アノード電極32側からカソード電極33側へかけて、キャリア輸送層、発光層及び電子輸送層がこの順に積層された有機EL部。
(ii)アノード電極32側からカソード電極33側へかけて、キャリア注入層、キャリア輸送層、発光層及び電子輸送層がこの順に積層された有機EL部。
(iii)アノード電極32側からカソード電極33側へかけて、キャリア注入層、キャリア輸送層、発光層、キャリア防止層及び電子輸送層がこの順に積層された有機EL部。
(iv)アノード電極32側からカソード電極33側へかけて、キャリア注入層、キャリア輸送層、発光層、キャリア防止層、電子輸送層及び電子注入層がこの順に積層された有機EL部。
(v)アノード電極32側からカソード電極33側へかけて、キャリア注入層、キャリア輸送層、電子防止層、発光層、キャリア防止層、電子輸送層及び電子注入層がこの順に積層された有機EL部。
【0093】
前記キャリア防止層及び電子防止層は、有機EL用として公知のものでよく、それぞれ単層構造及び多層構造のいずれであってもよい。
【0094】
本発明に係る有機発光素子は、例えば、以下の方法で製造できる。
図14は、有機発光素子3Aの製造方法を説明するための概略断面図である。
まず、図14(a)に示すように、ガラス基板31上にアノード電極32を形成する。アノード電極32の形成方法としては、スパッタリング法が例示できる。
【0095】
次いで、図14(b)に示すように、アノード電極32上にキャリア注入層34aを形成する。キャリア注入層34aの形成方法としては、スピンコート法が例示できる。
【0096】
次いで、図14(c)に示すように、キャリア注入層34a上にキャリア輸送層34bを形成する。キャリア輸送層34bの形成方法は、上記の有機薄膜の製造方法で説明した通りである。
【0097】
次いで、図14(d)に示すように、キャリア輸送層34b上に発光層34cを形成する。発光層34cの形成方法としては、真空蒸着法が例示できる。
【0098】
次いで、図14(e)に示すように、発光層34c上に電子輸送層34dを形成する。電子輸送層34dの形成方法としては、真空蒸着法が例示できる。
【0099】
次いで、図14(f)に示すように、電子輸送層34d上に電子注入層34eを形成する。電子注入層34eの形成方法としては、真空蒸着法が例示できる。
【0100】
次いで、図14(g)に示すように、電子注入層34e上にカソード電極33を形成する。カソード電極33の形成方法としては、真空蒸着法が例示できる。
上記工程を行うことで、図13に示す有機発光素子3Aが得られる。
【0101】
<表示装置用アレイ>
本発明に係る表示装置用アレイは、前記電界効果トランジスタをスイッチング素子として備えたことを特徴とする。そして、かかる電界効果トランジスタを備えたこと以外は、従来の表示装置用アレイと同様の構成とすることができる。本発明に係る表示装置用アレイは、前記電界効果トランジスタを備えたことで、高速動作が可能となる。
以下、図面を参照しながら説明する。
【0102】
図15は、本発明に係る表示装置用アレイの要部を例示する概略図であり、(a)は平面図、(b)は拡大平面図、(c)は(b)のC−C線における断面図、(d)は(b)のD−D線における断面図である。
ここに示す表示装置用アレイ4Aは、図6に示す電界効果トランジスタ1Bを備えた有機半導体装置42をマトリクス状に配置することで、画像表示装置の駆動用アレイとして用いたものである。
表示装置用アレイ4Aは、透明な基板11上に設けられたゲート配線40、ソース配線41、画素電極43、及びこれらに電気的に接続された電界効果トランジスタ1Bを備えた有機半導体装置42から概略構成されている。ゲート配線40は、図6におけるゲート電極12を構成するとともに、それへの接続配線ともなっている。
そして、ゲート配線40上にゲート絶縁膜13を介してソース電極14及びドレイン電極15が離間して設けられ、さらにソース電極14及びドレイン電極15間のゲート絶縁膜13上に、有機半導体層16が設けられている。また、ドレイン電極15は、画素電極43と接続され、駆動用アレイとして構成されている。
【0103】
有機半導体装置42は、例えば、ソース配線41及び画素電極43を形成する工程を有すること以外は、電界効果トランジスタ1Bの場合と同様の方法で製造できる。具体的には、以下の通りである。図16は、有機半導体装置42の製造方法を説明するための概略断面図である。
まず、図10(a)〜(c)を参照して説明した方法と同様の方法で、図16(a)〜(c)に示すように、基板11上にゲート配線40(ゲート電極12)、ゲート絶縁膜13を順次形成し、次に所定のパターンのフォトレジスト膜90を形成する。ゲート絶縁膜13は、ゲート配線40の表面を覆い、基板11上の全面を覆うように形成し、次いで所定のパターンにエッチングする。
次いで、図10(d)を参照して説明した方法と同様の方法で、図16(d)に示すように、ソース電極14及びドレイン電極15を形成する。さらに、ソース電極14に接触するようにソース配線41を、ドレイン電極15に接触するように画素電極43を、それぞれゲート絶縁膜13上に形成する。ソース配線41及び画素電極43は、例えば、銀(Ag)等の金属を材質とし、各種印刷法により形成できる。
次いで、図10(e)を参照して説明した方法と同様の方法で、図16(e)に示すように、ソース電極14及びドレイン電極15間のゲート絶縁膜13上に有機半導体層16を形成する。有機半導体層16の形成方法は、上記の有機薄膜の製造方法で説明した通りである。
上記工程を行うことで、有機半導体装置42が得られる。
そして、得られた有機半導体装置42は、マトリクス状に配置することで、表示装置用アレイ4Aが得られる。
【0104】
ここでは、電界効果トランジスタとして電界効果トランジスタ1Bを用いた例を示しているが、その他の電界効果トランジスタも用いることができ、その構成に応じて、有機半導体装置の構成を調節すればよい。
本発明に係る表示装置用アレイは、例えば、液晶表示装置や有機EL表示装置等の画像表示装置の駆動用として好適である。
【0105】
<表示装置>
本発明に係る表示装置は、画像信号を発生して出力する画像信号出力部と、前記画像信号に基づいて電流又は電圧を発生する駆動部と、発生した前記電流又は電圧により発光する発光部と、を備えた表示装置であって、前記発光部が、前記有機発光素子であることを特徴とする。そして、かかる有機発光素子を備えたこと以外は、従来の表示装置と同様の構成とすることができる。
本発明に係る表示装置は、前記有機発光素子を備えたことで、良好な発光特性が得られる。
以下、図面を参照しながら説明する。
【0106】
図17は、本発明に係る表示装置の要部を例示する概略図であり、(a)は平面図、(b)は1画素の等価回路図、(c)は1画素の平面図である。
ここに示す表示装置5Aは、本発明に係る有機発光素子3を有機EL表示装置の素子として用いた有機EL表示装置である。
表示装置5Aにおいては、複数の走査線(ゲート配線)50と、複数の信号線(ソース配線)51とが縦横に配されたマトリクスが形成されており、それぞれの交差部に1つの画素が設けられた画素アレイが形成されている。画素アレイの周囲領域には、走査線50に接続された走査線駆動回路(ゲートドライバ)55と、信号線51に接続された信号線駆動回路(ソースドライバ)56が、それぞれ配置されている。そして、前記走査線駆動回路55及び信号線駆動回路56には、画像表示を行うためのタイミング信号やRGB輝度信号等の画像信号を供給するためのコントローラ57が接続され、さらに走査線50及び信号線51に与える信号電圧を供給するための電源回路59が接続されている。コントローラ57には、表示装置5Aに対して外部より水平・垂直同期信号や画像信号を与えるための外部処理装置58が接続されている。
表示装置5Aを構成する画素アレイの1画素は、図17(b)に示すように、走査線50及び信号線51に接続されたスイッチング用トランジスタ52、画素を駆動するための駆動用トランジスタ53、並びに保持容量54を備え、駆動用トランジスタ53に有機発光素子3(有機EL素子)からなる画素部が接続されている。有機発光素子3は、駆動電流又は電圧により発光する。
スイッチング用トランジスタ52及び駆動用トランジスタ53は、例えば、一般的な多結晶シリコンを半導体として用いたトランジスタ等で構成できる。以上により表示装置5Aが構成されている。
有機発光素子3としては、図13に示す有機発光素子3Aをはじめとして、本発明に係る素子であれば、いずれも用いることができる。
【実施例】
【0107】
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0108】
<有機半導体薄膜の製造>
[実施例1]
厚さ300nmの酸化シリコン膜(SiO2)を表面に有するSi基板(厚さ:1mm)において、UVオゾン処理によって、前記酸化膜表面を親水化処理した。次いで、不活性ガス雰囲気下において、前記式(3)の関係に基づいて決定された濃度のクォーターチオフェントリクロロシラン(前記一般式(I)−102で表される有機ケイ素化合物において、X1、X2及びX3が塩素原子であるもの)の無水トルエン溶液(濃度:1×10−3μmol/L)に、親水化処理した前記Si基板を1分間浸漬し、ゆっくりと引き上げ、溶媒洗浄を行い、Si基板上にクォーターチオフェンを結合させた。
次いで、クォーターチオフェンが結合した前記Si基板に、スピンコート法(回転数1500rpm)でクォーターチオフェン(第二の有機分子)のクロロホルム飽和溶液を塗布し、有機半導体薄膜を形成した。得られた有機半導体薄膜の膜厚は約2nmであった。
この薄膜を原子間力顕微鏡(AFM)により観察したところ、有機分子の配向性が制御され、グレインのない均一な薄膜であることが確認できた。
【0109】
<電界効果トランジスタの製造>
[実施例2]
図9を参照して説明した製造方法により、図5に示す電界効果トランジスタ1Aを製造した。より具体的には、以下の通りである。
基板11としては、ガラス基板(コーニング社製、Eagle2000、厚さ:0.5mm)を用いた。
ゲート電極12の材質は、アルミニウム(Al)に対して10%のシリコン(Si)を添加したAlSi合金とした。そして、このAlSi合金からなる金属ターゲットを用いたスパッタリング法により、基板11上に、AlSi合金からなる膜厚40nmの金属膜を形成した。この金属膜のパターンニングは、フォトリソグラフィー及びエッチングで行った。
ゲート絶縁膜13の材質は、酸化シリコン(SiO2)とし、スパッタリング法により、膜厚300nmの酸化シリコン膜を形成した。
有機半導体層16は、実施例1と同様の材質及び方法で形成した。有機半導体層16の膜厚は2nmであった。
ソース電極14及びドレイン電極15の材質は金(Au)とし、金属マスクを介して真空蒸着法により、膜厚40nmのAu膜を形成した。この時、ソース電極14及びドレイン電極15間の間隔(チャネル長)は50μmであり、対向する電極の長さ(チャネル幅)は1000μmであった。
得られた電界効果トランジスタ1Aについて、電界効果移動度を測定したところ、8×10−2cm2/Vsであった。実施例1と同様の方法で作製した有機半導体薄膜を有機半導体層としたことにより、高い特性の電界効果トランジスタが得られた。
【0110】
[実施例3]
図10を参照して説明した製造方法により、図6に示す電界効果トランジスタ1Bを製造した。より具体的には、以下の通りである。
基板11としては、ガラス基板(コーニング社製、Eagle2000、厚さ:0.5mm)を用いた。
ゲート電極12の材質は、アルミニウム(Al)に対して10%のシリコン(Si)を添加したAlSi合金とした。そして、このAlSi合金からなる金属ターゲットを用いたスパッタリング法により、基板11上に、AlSi合金からなる膜厚40nmの金属膜を形成した。この金属膜のパターンニングは、フォトリソグラフィー及びエッチングで行った。
ゲート絶縁膜13の材質は、酸化シリコン(SiO2)とし、スパッタリング法により、膜厚300nmの酸化シリコン膜を形成した。
フォトレジスト膜90は、膜厚を4μmとし、リフトオフプロセス用のネガ型フォトレジスト(日本ゼオン社製、ZPN1150)を用いて、スピンコート法により成膜した後、フォトリソグラフィー法で形成した。
真空蒸着法によって、膜厚2nmのクロム(Cr)からなる密着層、及び膜厚40nmの金(Au)からなる金属膜を順次成膜し、アセトン等の有機溶媒中に基板11を浸漬するリフトオフ法により、フォトレジスト膜90及びその上に形成された不要なAu膜/Cr膜を除去して、ソース電極14及びドレイン電極15を形成した。この時、ソース電極14及びドレイン電極15間の間隔(チャネル長)は20μmであり、対向する電極の長さ(チャネル幅)は1000μmであった。
有機半導体層16は、第一の有機分子としてクォーターチオフェントリクロロシランに代えて2−トリクロロシリルペンタセンを、第二の有機分子としてクォーターチオフェンに代えてペンタセンをそれぞれ使用し、ペンタセンをスピンコート法に代えて蒸着法で導入したこと以外は、実施例1と同様の方法で形成した。有機半導体層16の膜厚は3nmであった。
得られた電界効果トランジスタ1Bについて、実施例2と同様の方法で電界効果移動度を測定したところ、6×10−2cm2/Vsであった。実施例1と同様の方法で作製した有機半導体薄膜を有機半導体層としたことにより、高い特性の電界効果トランジスタが得られた。
【0111】
<太陽電池の製造>
[実施例4]
図12を参照して説明した製造方法により、図11に示す太陽電池2Aを製造した。より具体的には、以下の通りである。
ガラス基板21としては、「コーニング社製、Eagle2000、厚さ:0.5mm」を用いた。
アノード電極22としては、膜厚150nmのITO膜を、スパッタリング法によりガラス基板21上に形成した。
p型半導体層24は、第一の有機分子としてクォーターチオフェントリクロロシランに代えてキンクエチオフェントリクロロシラン(前記一般式(I)−103で表される有機ケイ素化合物において、X1、X2及びX3が塩素原子であるもの)を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で形成した。p型半導体層24の膜厚は10nmであった。
n型半導体層25としては、膜厚20nmのパーフルオロフタロシアニンからなる膜を、真空蒸着法により形成した。
カソード電極23としては、膜厚100nmのAl膜を、真空蒸着法により形成した。
得られた太陽電池2Aについて、AM1.5の擬似太陽光を照射し、正極−負極間の電圧−電流特性を評価し、変換効率を算出したところ、0.1%であり、光電変換することを確認できた。
【0112】
<有機発光素子の製造>
[実施例5]
図14を参照して説明した製造方法により、図13に示す有機発光素子3Aを製造した。より具体的には、以下の通りである。
ガラス基板31としては、「コーニング社製、Eagle2000、厚さ:0.5mm」を用いた。
アノード電極32としては、膜厚150nmのITO膜を、スパッタリング法によりガラス基板31上に形成した。
キャリア注入層34aは、PEDOT/PSS(Bytron−P、バイエル社製)をスピンコート法(回転数1500rpm)でアノード電極32上に載せることで形成し、膜厚を約50nmとした。
キャリア輸送層34bは、第一の有機分子としてクォーターチオフェントリクロロシランに代えてターチオフェントリクロロシラン(前記一般式(I)−101で表される有機ケイ素化合物において、X1、X2及びX3が塩素原子であるもの)を、第二の有機分子としてクォーターチオフェンに代えてターチオフェンをそれぞれ使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で形成した。キャリア輸送層34bの膜厚は2nmであった。
発光層34cは、キャリア輸送層34b上に、4,4’−N,N’−ジカルバソル−ビフェニル(CBP)及びトリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(Ir(PPY)3)を、それぞれ異なる蒸着源から共蒸着させる真空蒸着法によって形成した。形成した発光層34c中のIr(PPY)3の濃度は、6.5質量%であった。また、膜厚は30nmであった。
電子輸送層34dは、発光層34c上にトリス(8−ヒドロキシキノリンアルミニウム)(A1q3)を真空蒸着させることで形成し、膜厚を40nmとした。
電子注入層34eは、電子輸送層34d上に酸化リチウム(Li2O)を真空蒸着させることで形成し、膜厚を0.5nmとした。
カソード電極33は、電子注入層34e上にアルミニウム(Al)を真空蒸着させることで形成し、膜厚を150nmとした。
得られた有機発光素子3Aについて、陽極−陰極間に電圧を印加し、発光スペクトルを評価したところ、Ir(PPY)3からの発光が観測された。
【0113】
<表示装置用アレイの製造>
[実施例6]
図16を参照して説明した製造方法により、図15に示す表示装置用アレイ4Aを製造した。より具体的には、以下の通りである。
基板11としては、ガラス基板(コーニング社製、Eagle2000、厚さ:0.5mm)を用いた。
ゲート配線40の材質は、アルミニウム(Al)に対して10%のシリコン(Si)を添加したAlSi合金とした。そして、このAlSi合金からなる金属ターゲットを用いたスパッタリング法により、基板11上に、AlSi合金からなる膜厚40nmの金属膜を形成した。この金属膜のパターンニングは、フォトリソグラフィー及びエッチングで行った。
ゲート絶縁膜13の材質は、酸化シリコン(SiO2)とし、スパッタリング法により、膜厚300nmの酸化シリコン膜を形成した。
フォトレジスト膜90は、膜厚を4μmとし、リフトオフプロセス用のネガ型フォトレジスト(日本ゼオン社製、ZPN1150)を用いて、スピンコート法により成膜した後、フォトリソグラフィー法で形成した。
真空蒸着法によって、膜厚2nmのクロム(Cr)からなる密着層、及び膜厚40nmの金(Au)からなる金属膜を順次成膜し、アセトン等の有機溶媒中に基板11を浸漬するリフトオフ法により、フォトレジスト膜90及びその上に形成された不要なAu膜/Cr膜を除去して、ソース電極14及びドレイン電極15を形成した。この時、ソース電極14及びドレイン電極15間の間隔(チャネル長)は20μmであり、対向する電極の長さ(チャネル幅)は1000μmであった。
ソース配線41及び画素電極43は、Agインクを反転印刷し、180℃で焼成することにより、厚さ50nmで所望のパターンに形成した。
有機半導体層16は、第一の有機分子としてクォーターチオフェントリクロロシランに代えて2−トリクロロシリルペンタセン(前記一般式(I)−303で表される有機ケイ素化合物において、X1、X2及びX3が塩素原子であるもの)を、第二の有機分子としてクォーターチオフェンに代えてペンタセンをそれぞれ使用し、ペンタセンをスピンコート法に代えて蒸着法で導入したこと以外は、実施例1と同様の方法で形成した。有機半導体層16の膜厚は3nmであった。
そして、得られた有機半導体装置42をマトリクス状に配置して、表示装置用アレイ4Aとした。
【0114】
<表示装置の製造>
[実施例7]
図13に示す有機発光素子3Aを有機EL表示装置の素子として用い、図17に示す表示装置5Aを製造した。有機発光素子3Aは、実施例5と同様の方法で製造した
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明は、電界効果トランジスタ、太陽電池、有機発光素子等の半導体デバイスに利用可能である。
【符号の説明】
【0116】
1A,1B・・・電界効果トランジスタ、11・・・基板、12・・・ゲート電極、13・・・ゲート絶縁膜、14・・・ソース電極、15・・・ドレイン電極、16・・・有機半導体層、2A・・・太陽電池、21・・・ガラス基板、22・・・アノード電極、23・・・カソード電極、24・・・p型半導体層、25・・・n型半導体層、3,3A・・・有機発光素子、31・・・ガラス基板、32・・・アノード電極、33・・・カソード電極、34b・・・キャリア輸送層、34c・・・発光層、4A・・・表示装置用アレイ、40・・・ゲート配線、5A・・・表示装置、55・・・走査線駆動回路(ゲートドライバ)、56・・・信号線駆動回路(ソースドライバ)、57・・・コントローラ、6・・・有機薄膜、60・・・基材、61・・・第一の有機分子、62・・・第二の有機分子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に設けられた有機薄膜の製造方法であって、
前記基材上に第一の有機分子を化学結合させて立設し、点在させる工程と、
前記基材上に第二の有機分子を導入し、前記第一の有機分子に対して前記第二の有機分子を配列させて、薄膜を形成する工程と、
を有することを特徴とする有機薄膜の製造方法。
【請求項2】
前記第一の有機分子に対して前記第二の有機分子を分子間相互作用により配列させることを特徴とする請求項1に記載の有機薄膜の製造方法。
【請求項3】
前記第一及び第二の有機分子が、π電子共役系を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の有機薄膜の製造方法。
【請求項4】
前記第一の有機分子が溶解された溶液を前記基材と接触させて、前記第一の有機分子を前記基材上に化学結合させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の有機薄膜の製造方法。
【請求項5】
前記第一の有機分子が溶解された溶液の濃度により、前記基材上に化学結合された前記第一の有機分子の密度を調節することを特徴とする請求項4に記載の有機薄膜の製造方法。
【請求項6】
前記第一の有機分子が溶解された溶液と前記基材との接触時間により、前記基材上に化学結合された前記第一の有機分子の密度を調節することを特徴とする請求項4又は5に記載の有機薄膜の製造方法。
【請求項7】
前記第二の有機分子が溶解された溶液を塗布することで、前記第二の有機分子を前記基材上に導入することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の有機薄膜の製造方法。
【請求項8】
前記第二の有機分子を蒸着させることで、前記基材上に導入することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の有機薄膜の製造方法。
【請求項9】
前記基材が親水性基を有し、前記第一の有機分子が、下記一般式(I)で表される有機ケイ素化合物であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の有機薄膜の製造方法。
【化1】
(式中、Rはπ電子共役系を有する有機基であり;X1、X2及びX3はそれぞれ独立して、これらが結合しているケイ素原子(Si)と前記親水性基との反応で離脱する基である。)
【請求項10】
基材上に設けられた有機薄膜であって、
前記基材上に、第一の有機分子が化学結合により立設及び点在され、
第二の有機分子が、前記第一の有機分子に対して配列されてなることを特徴とする有機薄膜。
【請求項11】
前記第一の有機分子に対して前記第二の有機分子が分子間相互作用により配列されてなることを特徴とする請求項10に記載の有機薄膜。
【請求項12】
前記第一及び第二の有機分子が、π電子共役系を有することを特徴とする請求項10又は11に記載の有機薄膜。
【請求項13】
前記第一の有機分子が含まれる溶液と前記基材との接触により、前記第一の有機分子が前記基材上に化学結合されたことを特徴とする請求項10〜12のいずれか一項に記載の有機薄膜。
【請求項14】
前記第一の有機分子が含まれる溶液の濃度により、前記基材上に化学結合された前記第一の有機分子の密度が調節されたことを特徴とする請求項13に記載の有機薄膜。
【請求項15】
前記第一の有機分子が含まれる溶液と前記基材との接触時間により、前記基材上に化学結合された前記第一の有機分子の密度が調節されたことを特徴とする請求項13又は14に記載の有機薄膜。
【請求項16】
前記第二の有機分子が含まれる溶液の塗布により、前記第二の有機分子が前記基材上に導入され、配列されたことを特徴とする請求項10〜15のいずれか一項に記載の有機薄膜。
【請求項17】
前記第二の有機分子が蒸着により、前記基材上に導入され、配列されたことを特徴とする請求項10〜15のいずれか一項に記載の有機薄膜。
【請求項18】
前記基材が親水性基を有し、前記第一の有機分子が、下記一般式(I)で表される有機ケイ素化合物であることを特徴とする請求項10〜17のいずれか一項に記載の有機薄膜。
【化2】
(式中、Rはπ電子共役系を有する有機基であり;X1、X2及びX3はそれぞれ独立して、これらが結合しているケイ素原子(Si)と前記親水性基との反応で離脱する基である。)
【請求項19】
有機半導体層を備えた電界効果トランジスタであって、
請求項10〜18のいずれか一項に記載の有機薄膜において、前記第一及び第二の有機分子が有機半導体分子である有機薄膜を、前記有機半導体層として備えたことを特徴とする電界効果トランジスタ。
【請求項20】
ゲート電極、ゲート絶縁膜、ソース電極、ドレイン電極及び有機半導体層を備え、
前記有機半導体層が、前記ゲート絶縁膜を介して前記ゲート電極と対向するように設けられており、
前記ソース電極及びドレイン電極が、前記有機半導体層上に接するように設けられていることを特徴とする請求項19に記載の電界効果トランジスタ。
【請求項21】
ゲート電極、ゲート絶縁膜、ソース電極、ドレイン電極及び有機半導体層を備え、
前記有機半導体層が、前記ゲート絶縁膜を介して前記ゲート電極と対向するように設けられており、
前記ソース電極及びドレイン電極が、前記ゲート絶縁膜上に設けられていることを特徴とする請求項19に記載の電界効果トランジスタ。
【請求項22】
基材上に一対の電極を備え、前記一対の電極間に、少なくともキャリア輸送層及び発光層を備えた有機発光素子であって、
請求項10〜18のいずれか一項に記載の有機薄膜において、前記第一及び第二の有機分子が有機半導体分子である有機薄膜を、前記キャリア輸送層として備えたことを特徴とする有機発光素子。
【請求項23】
基材上に一対の電極を備え、前記一対の電極間に、p型半導体層及びn型半導体層を備えた太陽電池であって、
請求項10〜18のいずれか一項に記載の有機薄膜において、前記第一及び第二の有機分子が有機半導体分子である有機薄膜を、前記p型半導体層及び/又はn型半導体層として備えたことを特徴とする太陽電池。
【請求項24】
請求項19〜21のいずれか一項に記載の電界効果トランジスタをスイッチング素子として備えたことを特徴とする表示装置用アレイ。
【請求項25】
画像信号を発生して出力する画像信号出力部と、前記画像信号に基づいて電流又は電圧を発生する駆動部と、発生した前記電流又は電圧により発光する発光部と、を備えた表示装置であって、
前記発光部が、請求項22に記載の有機発光素子であることを特徴とする表示装置。
【請求項1】
基材上に設けられた有機薄膜の製造方法であって、
前記基材上に第一の有機分子を化学結合させて立設し、点在させる工程と、
前記基材上に第二の有機分子を導入し、前記第一の有機分子に対して前記第二の有機分子を配列させて、薄膜を形成する工程と、
を有することを特徴とする有機薄膜の製造方法。
【請求項2】
前記第一の有機分子に対して前記第二の有機分子を分子間相互作用により配列させることを特徴とする請求項1に記載の有機薄膜の製造方法。
【請求項3】
前記第一及び第二の有機分子が、π電子共役系を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の有機薄膜の製造方法。
【請求項4】
前記第一の有機分子が溶解された溶液を前記基材と接触させて、前記第一の有機分子を前記基材上に化学結合させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の有機薄膜の製造方法。
【請求項5】
前記第一の有機分子が溶解された溶液の濃度により、前記基材上に化学結合された前記第一の有機分子の密度を調節することを特徴とする請求項4に記載の有機薄膜の製造方法。
【請求項6】
前記第一の有機分子が溶解された溶液と前記基材との接触時間により、前記基材上に化学結合された前記第一の有機分子の密度を調節することを特徴とする請求項4又は5に記載の有機薄膜の製造方法。
【請求項7】
前記第二の有機分子が溶解された溶液を塗布することで、前記第二の有機分子を前記基材上に導入することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の有機薄膜の製造方法。
【請求項8】
前記第二の有機分子を蒸着させることで、前記基材上に導入することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の有機薄膜の製造方法。
【請求項9】
前記基材が親水性基を有し、前記第一の有機分子が、下記一般式(I)で表される有機ケイ素化合物であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の有機薄膜の製造方法。
【化1】
(式中、Rはπ電子共役系を有する有機基であり;X1、X2及びX3はそれぞれ独立して、これらが結合しているケイ素原子(Si)と前記親水性基との反応で離脱する基である。)
【請求項10】
基材上に設けられた有機薄膜であって、
前記基材上に、第一の有機分子が化学結合により立設及び点在され、
第二の有機分子が、前記第一の有機分子に対して配列されてなることを特徴とする有機薄膜。
【請求項11】
前記第一の有機分子に対して前記第二の有機分子が分子間相互作用により配列されてなることを特徴とする請求項10に記載の有機薄膜。
【請求項12】
前記第一及び第二の有機分子が、π電子共役系を有することを特徴とする請求項10又は11に記載の有機薄膜。
【請求項13】
前記第一の有機分子が含まれる溶液と前記基材との接触により、前記第一の有機分子が前記基材上に化学結合されたことを特徴とする請求項10〜12のいずれか一項に記載の有機薄膜。
【請求項14】
前記第一の有機分子が含まれる溶液の濃度により、前記基材上に化学結合された前記第一の有機分子の密度が調節されたことを特徴とする請求項13に記載の有機薄膜。
【請求項15】
前記第一の有機分子が含まれる溶液と前記基材との接触時間により、前記基材上に化学結合された前記第一の有機分子の密度が調節されたことを特徴とする請求項13又は14に記載の有機薄膜。
【請求項16】
前記第二の有機分子が含まれる溶液の塗布により、前記第二の有機分子が前記基材上に導入され、配列されたことを特徴とする請求項10〜15のいずれか一項に記載の有機薄膜。
【請求項17】
前記第二の有機分子が蒸着により、前記基材上に導入され、配列されたことを特徴とする請求項10〜15のいずれか一項に記載の有機薄膜。
【請求項18】
前記基材が親水性基を有し、前記第一の有機分子が、下記一般式(I)で表される有機ケイ素化合物であることを特徴とする請求項10〜17のいずれか一項に記載の有機薄膜。
【化2】
(式中、Rはπ電子共役系を有する有機基であり;X1、X2及びX3はそれぞれ独立して、これらが結合しているケイ素原子(Si)と前記親水性基との反応で離脱する基である。)
【請求項19】
有機半導体層を備えた電界効果トランジスタであって、
請求項10〜18のいずれか一項に記載の有機薄膜において、前記第一及び第二の有機分子が有機半導体分子である有機薄膜を、前記有機半導体層として備えたことを特徴とする電界効果トランジスタ。
【請求項20】
ゲート電極、ゲート絶縁膜、ソース電極、ドレイン電極及び有機半導体層を備え、
前記有機半導体層が、前記ゲート絶縁膜を介して前記ゲート電極と対向するように設けられており、
前記ソース電極及びドレイン電極が、前記有機半導体層上に接するように設けられていることを特徴とする請求項19に記載の電界効果トランジスタ。
【請求項21】
ゲート電極、ゲート絶縁膜、ソース電極、ドレイン電極及び有機半導体層を備え、
前記有機半導体層が、前記ゲート絶縁膜を介して前記ゲート電極と対向するように設けられており、
前記ソース電極及びドレイン電極が、前記ゲート絶縁膜上に設けられていることを特徴とする請求項19に記載の電界効果トランジスタ。
【請求項22】
基材上に一対の電極を備え、前記一対の電極間に、少なくともキャリア輸送層及び発光層を備えた有機発光素子であって、
請求項10〜18のいずれか一項に記載の有機薄膜において、前記第一及び第二の有機分子が有機半導体分子である有機薄膜を、前記キャリア輸送層として備えたことを特徴とする有機発光素子。
【請求項23】
基材上に一対の電極を備え、前記一対の電極間に、p型半導体層及びn型半導体層を備えた太陽電池であって、
請求項10〜18のいずれか一項に記載の有機薄膜において、前記第一及び第二の有機分子が有機半導体分子である有機薄膜を、前記p型半導体層及び/又はn型半導体層として備えたことを特徴とする太陽電池。
【請求項24】
請求項19〜21のいずれか一項に記載の電界効果トランジスタをスイッチング素子として備えたことを特徴とする表示装置用アレイ。
【請求項25】
画像信号を発生して出力する画像信号出力部と、前記画像信号に基づいて電流又は電圧を発生する駆動部と、発生した前記電流又は電圧により発光する発光部と、を備えた表示装置であって、
前記発光部が、請求項22に記載の有機発光素子であることを特徴とする表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−144456(P2012−144456A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2126(P2011−2126)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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