説明

有機/無機ハイブリッドポリマーをベースにする光防護添加物、その製造方法及びその使用

化学基本構造:式(I)を有する、ゾル−ゲルプロセスによって製造される多分岐有機/無機ハイブリッドポリマーをベースとする光防護添加物及びその製造方法。式中、R1〜R4は水素、置換されていない飽和若しくは不飽和C1〜C24アルキル、置換された飽和若しくは不飽和アルキル、置換された若しくは置換されていないアリール、ハロゲン、ヒドロキシル、置換された若しくは置換されていないアミン、脂肪族若しくは芳香族カルボニル等の基の中から選択されるか、又は、R1〜R4は酸類、アルコール類、フェノール類、アミン類、アルデヒド類若しくはエポキシド類等の1種以上の化学組成物の縮合生成物若しくは付加生成物の中から選択される。R1〜R4は存在する芳香族環とともにフェニルより大きい環構造を形成する置換された若しくは置換されていない芳香族環構造を形成してもよく、M、Zは、酸素、窒素及び硫黄の元素中から選択される。本発明は更に、このような添加物、このような添加物を含む熱可塑性材料、並びにこれらの製品の使用に関する。
式(I):


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機/無機ハイブリッドポリマーをベースにした光防護添加物及びこのような光防護添加物を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
有機材料の分解工程は一般に酸化による分解に基づいており、退色(黄化)又は機械的特性の変化、例えば、脆化若しくは強度低下をもたらしうる。酸化による分解の他の結果として、不快な臭気や美観の低下に関係しうる望ましくない低分子量化合物の放出もあり得る。酸化による分解は一般に、それさえなければ好適な材料や組成物の応用性を制限する。特に材料産業に於いては、それらの寿命の間に著しい劣化が生じない材料が強く求められている。使用後最初の数年間に生じる製品の色変化は、通常、消費者に受け入れられない。このような製品の例として、ボートや高級家具に使用される塗料が挙げられる。
【0003】
光防護添加物は、光の影響による有機化合物の分解を抑制するために、有機化合物に添加される。非特許文献1はポリマー材料用の光防護添加物について幅広く概説している。光防護添加物としては一般に、UV吸収特性を有する添加物が使用される(非特許文献1)。
【0004】
ポリマー材料中に使用されるUV吸収剤は、三つの重要な基準を満たさなくてはならない。第一に、UV吸収剤は、300〜400nmの波長範囲において十分に良好な吸収を有していなくてはならない。第二に、UV吸収剤のUV吸収能が時間の経過と共に減少しないために、関連用途に於いて十分な安定性を有していなくてはならない。第三に、UV吸収剤は、それが用いられる材料や組成物中に容易に混合することができなくてはならない。
【0005】
使用期間中良好な安定性を有し、300〜400nmの波長範囲内で良好な吸収を示すUV吸収剤の例としては、例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7及び特許文献8に記載されているトリフェニルトリアジンをベースとした化合物が挙げられる。また、使用期間中良好な安定性を有し、300〜400nmの波長範囲で良好な吸収を示すUV吸収剤の他の例としては、例えば、特許文献9、特許文献10及び特許文献11に記載されているベンゾトリアゾールをベースとした化学化合物が挙げられる。このようなUV吸収剤をポリマー及び組成物を形成するポリマー、例えば、熱可塑性プラスチック、熱硬化性プラスチック及び皮膜形成組成物の中に混合できるようにするためには、通常、配合工程が必要とされる。
【0006】
このような配合工程を回避する一つの手段として、UV吸収性化学化合物を、分枝構造を有する有機ポリマー分子に化学的に結合させることがある。このようなポリマーは、その分枝構造によって、あらゆる種類のポリマー、特に熱硬化性プラスチック及び皮膜形成組成物と容易に組み合わせることができる。
【0007】
純粋なポリマー材料に加えて、無機材料と有機材料との間のハイブリッドといい表すことのできる材料(これらの材料が無機コア及び有機枝を有してよい巨大分子であることを意味する)をベースにする製品も開発されている。
【0008】
分枝構造を有する有機ポリマー分子は、特に新規な材料中の成分として、非常に大きい経済的成長可能性を秘めている。完全に枝分かれした構造を有する所謂デンドリマーは、統計的に進行する枝分かれを有するハイパーブランチポリマー(hyperbranched polymer)とともにこれらのポリマー分子の重要な例である。デンドリマーとハイパーブランチポリマーとはともにデンドリティックポリマーと称される。デンドリティック(ギリシャ語:「dendron」=樹木から)は、ほぼ完全な進行性枝分かれの原理の特徴を示している(非特許文献2)。式1は、線状ポリマーとデンドリティックポリマー(ハイパーブランチポリマー及びデンドリマー)との間の原理差異を示す。
【0009】
【化1】

K=起源(ポリマー分子の開始)
D=デンドリティック分枝
L=線状成長
T=停止(ポリマー分子の終端)
【0010】
デンドリティックポリマーは、そのT単位が機能性基を有してよく、利用可能な機能性基のポリマーの重量又は体積単位当たりの密度が線状ポリマーの場合よりも遙かに高いため、特に興味深い。機能性を有するT基は、特許文献12に記載されているように、酸化防止剤、UV吸収剤又はラジカルスカベンジャーのような機能を材料に付与するために用いることができる。
【0011】
あるいは、T基をエポキシ樹脂やポリウレタンのような有機材料の非常に有効な架橋剤としてや、熱可塑性樹脂用の架橋剤として用いることもできる。デンドリティックポリマーとこれらの有機化合物との間の高い架橋度のために、デンドリティックポリマーは従来のポリアミン類、ポリアルコール類又は多官能性アクリラート類等の架橋剤と比較して優れた架橋剤である。架橋された熱可塑性樹脂のような有機材料の架橋度が高いということは、耐薬品性、耐候性及び耐磨耗性等の特性を改良し、材料をより高温下における用途に用いることができるようにする(非特許文献3)。T基はまた、デンドリティックポリマーをネットワーク状に組織化するために使用することもできる。従って、デンドリティックポリマーを材料中の成分として、改良されたバリヤー特性を誘導することができる。あるいは、このようなデンドリティックポリマーは、バインダーや熱硬化性プラスチック中の成分として使用することもできる。
【0012】
デンドリマーは、通常、幾つかの工程を含む比較的複雑かつ高コストな合成によって製造される。この際のプロセス条件は、完全な進行性分枝構造を得るために、非常に正確に維持されなくてはならない。このため、デンドリマーの工業的応用は限られている。
【0013】
ハイパーブランチポリマーの製造の一般的手段は、Floryによって早くに記載された(非特許文献4)。AはBと反応することができるが、AとAとの間及びBとBとの間の反応は妨げられるようにして重合したAB2モノマーからハイパーブランチポリマーが得られる。
【0014】
ハイパーブランチポリマーを製造する他の手段として、開始剤を有する反応性モノマー、所謂「イニマー(inimer)」を利用する手法がある。その一つの例は、式2によって示されるような、イニマーグリシドールと起源(germ)トリメチロールプロパンとの間の塩基触媒作用反応である。
【0015】
【化2】

【0016】
K=起源(ポリマー分子の開始)
L=線状成長
【0017】
この方法によって製造されたハイパーブランチポリマーは、対応するデンドリマーと極めて類似する特性を有する(非特許文献5)。これは、ポリマーの粘度が同等数の自由に利用可能なHO基を有する線状ポリマーのそれよりも遙かに低いことを示唆している。この製造プロセスに於ける特徴的な点は、イニマーグリシドールを、起源に対して極めてゆっくりと、非常に薄く希釈した状態で添加しなくてはならないことである。従って、このプロセスの費用効率は激しく低下し、これが工業的応用に於けるハイパーブランチポリマーの有用性を制約する理由となっている。
【0018】
ハイパーブランチポリマーのT基について或る種の改質を施すことが以前より知られている。非特許文献6には、リンを含有するデンドリマーを官能化する方法が記載されている。T基の官能化は、同一/類似の化学基又は異なる化学基を用いて行うことができる。
【0019】
特許文献13では、環式チオエステルとの反応によって変性された、表面に官能基を有するデンドリマーについて論じられている。この反応は、アミド又はアミン結合によってデンドリマーに結合されたチオール基を有するデンドリマー表面に至る。この生成物は、酸化防止剤として有用である。記載されているデンドリマーは、ポリアミドアミン系のデンドリマー(PAMAMデンドリマー)である。PAMAMデンドリマーは、第四級アンモニウム塩又はアミンオキシドに転化した後に比較的容易に分解し得る第三級アミンを含む(非特許文献7、非特許文献8、非特許文献9)。アミン系デンドリマーからの第四級アンモニウム塩又はアミンオキシドは、アミン系デンドリマーの添加物が熱可塑性樹脂の中に含有/配合され、続いて熱可塑性樹脂が加工(例えば、フィルムブローイング、押出、流延)される際に形成されうる。このような分解は、デンドリマーコアの部分的劣化に至ったり、漏出によってポリマー製品の表面品質を低下させ得る分解生成物の生成に至ったりする。更に、第三級アミンは、熱可塑性樹脂を加工する間にヒドロペルオキシドの分解によりフリーラジカルを生成し得る(非特許文献10)。それによって、第三級アミンを含有するデンドリマー及びハイパーブランチポリマーは、熱可塑性樹脂の加工、貯蔵又は使用の際に意図しない分解を誘導し得る。
【0020】
特許文献14では、第三級アミンを含有するコア構造をベースとした、熱酸化的分解に対する多官能性安定剤について論じられている。上述のように、これは、(この)熱可塑性樹脂の加工、貯蔵又は使用の際の、コア構造の意図しない分解に至り得る。特許文献14に従って製造された典型的な安定剤のモル重量は、1246g/モルである。
【0021】
特許文献15では、ポリマー材料中で有用な、ポリマー添加物及び変性されたデンドリマーの組合について論じられている。特許文献15に例示されているデンドリマーは、第三、第四及び第五世代のポリプロピレンイミン(PPI)をベースとし、それにより16、32及び64の末端アミン基を含んでいる。コア構造は、熱可塑性樹脂の加工、貯蔵又は使用の際のコア構造の意図しない分解に至り得る第三級アミンを含有している。多官能性脂肪酸アミドを形成するための脂肪酸によるPPIデンドリマーの変性は、適切な溶媒中で加熱することによって実施することができる。このデンドリマーのコア構造中の第三級アミン基及びデンドリマー表面の第一級アミン基は、酸素の存在下でデンドリマー構造の部分的分解に寄与し得る。上記で説明したように、ヒドロペルオキシドの分解によってフリーラジカルが形成され得る。このような部分的分解は、特許文献15中の実施例I、XI及びXIIに於けるように、変性されたPPIデンドリマーが淡い褐色又は黄色を呈することによって示される。特許文献15中の変性されたPPIデンドリマーの典型的な分子量は、10,000〜40,000g/モルの範囲内である。特許文献12では、少なくとも1個の追加の基とハイパーブランチコア又はデンドリティックコアとを含む、永続的又は表面が活性化されたハイパーブランチ又はデンドリティック安定剤について論じられている。特許文献12の例示では、2,2−ビス−(ヒドロキシメチル)−プロピオン酸をベースにするデンドリティックコアのみが使用されている。デンドリティックコア及びそれによる追加の基への結合は、主としてエステル結合に基づいており、これによって安定剤が加水分解に対して敏感になっている。更に、特許文献12の例示では、ゲル浸透クロマトグラフィーによって決定される調製された安定剤の分子は1,000〜1,500グラム/モルである。この安定剤がUV吸収剤として機能するとき、ハイパーブランチコア又はデンドリティックコアに化学的に結合している追加の基は、常に、製造された安定剤とほぼ同じくらい良好なUV吸収剤である。追加の基がハイパーブランチコア又はデンドリティックコアに結合する様式は、製造された安定剤のUV吸収特性に殆どあるいは全く影響を及ぼさない。
【0022】
ハイパーブランチポリマーの特性に相当する特性を有する粒子状ポリマーの一つの型として、Si原子当たり1個のT基を有する無機Six(1.5)x−コアを含み、POSS(多面体オリゴシルセスキオキサン)として知られるものがある。この種の最も一般的な化合物は、x=8であり実質的な立方体構造を有するPOSSである(非特許文献11)。POSSの製造は、高コストであり(非特許文献12及び特許文献16)、従って、それらの工業的応用は限られている。
【0023】
ハイパーブランチポリマーの特性に相当する特性を有する粒子状ポリマーの他の型としては、Si原子当たり1個のT基を有する無機Six(1.5)xコアからなり下記構造を有するものが挙げられ、これはシランの制御された加水分解及び縮合によるゾル−ゲルプロセスに於いて製造することができる。
X−B−Si(−Y)3
(式中、Yは加水分解性残基の中から選択され、X−Bは基本的にT基に相当する)
このプロセスは、例えば、特許文献17に記載されている。ゾル−ゲルプロセスは費用効率がよいため、工業的規模で、好適な原材料から穏和な条件下で、即ち、高圧力又は高温度の使用や極端な希釈のような特別の予防措置等無しに実施することができる。従って、ゾルゲルプロセスによって製造されたハイパーブランチポリマーの特性に相当する特性を有する粒子状ポリマーは、多くの分野で工業的に応用可能である。
【0024】
ポリマー製品に於けるゾルゲル製品の利用として、多くの例が知られている(特許文献18、特許文献19)。通常その主眼はナノメートル範囲内のサイズを有する無機Six(1.5)xコアに、ひいては無機ナノ粒子としてのゾル−ゲル製品に置かれている。特許文献18及び特許文献20を参照。無機残基X−Bは、有機マトリックス中にゾルゲル製品を固定するために典型的に使用される。特許文献20参照。
【0025】
X−B基が1個以上のアミド基を含有する、シランの加水分解及び縮合を含むゾルゲルプロセスは、外部触媒が不要であり、環境温度又は適度の加熱下で実施できるために特に簡便である。一つの例としては、本件特許出願人自身の特許出願である特許文献17に記載されているγ−アミノプロピルトリアルコキシシランの制御された加水分解及び縮合が挙げられる。X−B基が1個以上のアミド基を含有する、シランの制御された加水分解及び縮合によれば、一般に多数のほぼ遊離したアミン基をT基に有するハイパーブランチポリマー生成物に匹敵する有機/無機構造(ハイブリッドポリマー)を有する粒子状ポリマー生成物を含むゾルが得られる。このような有機/無機ハイブリッドポリマーは、その重量及び/又は体積の割に比較的多数の官能性T基を示す。同時に、線状ポリマーの構造に比べてコンパクトなその構造により、低粘度並びに熱硬化性プラスチックや熱可塑性プラスチックとの良好な混合特性のような望ましい特性が確保される。ハイパーブランチポリマーに相当する特性を有する有機/無機ハイブリッドポリマーの一例は、下記式3によって示される。
【0026】
【化3】

【0027】
D=SiO1.5をベースにするデンドリティック枝分かれ
T=停止(官能性T−基)
3個よりも少ないD単位に結合しているD−基は、加水分解した及び/又は縮合した置換基を有していない
【0028】
ハイパーブランチポリマーのそれに相当する特性を有する有機/無機ハイブリッドポリマーは、例えば、熱硬化性プラスチック用の添加物や、ラッカー及びその他の表面保護用塗料等に用いることができる。このようなハイブリッドポリマーを適切な量及び粒子サイズで使用することにより、プラスチック材料、ラッカーその他の当該製品の特性、特に、耐磨耗性/耐引掻性及び/又は耐候性の実質的な改良に寄与し得る。
【0029】
ゾル−ゲルプロセスの領域に於ける先行技術は、幾つかの実施例又は刊行物を参照して以下に更に詳細に説明するように、四つの主なカテゴリに大まかに分類できる。
【0030】
第一のカテゴリは、加水分解されていないアミン含有シラン(特許文献21、特許文献22、特許文献23、特許文献19)の、典型的に二官能性エポキシ化合物(例えば、特許文献24記載のもの)による変性、及び塗料に於けるそれらの使用に関する。幾つかの実施形態では、加水分解及び縮合は、対象の熱可塑性樹脂又は塗料に添加する前に行われる。一般にこの方法は、不明確な分子サイズ分布および多数の大型分子を伴う。これはとりわけ水が大型分子の全ての部位に到達することが容易でないために、次の加水分解が容易に起こらないことを意味する。加水分解が低い程度でしか起こらないということは、製品の耐引掻性及び耐候性がそれだけ低いということを示唆している。この方法の別の欠点は、分子の有機部分の存在下で加水分解に用いられる水が、有機部分上の活性基と望ましくない方法で反応する可能性があるということである。熱可塑性樹脂又は熱硬化性プラスチック材料中の加水分解されていないアルコキシシラン化合物の利用は、続くシラン化合物のソウ(sow)加水分解の間、即ち、熱可塑性樹脂又は熱硬化性プラスチックが水分に曝露された後のエタノール及び/又はメタノール等のアルコールの生成に結びつく。これは、熱可塑性樹脂又は塗料の機械的特性の弱化に至り得る。更に、エタノール及び/又はメタノール等のアルコールの生成は、添加物の移動及び/又は熱可塑性材料若しくは塗料の表面の分解を引き起こし、表面品質を著しく低下させ得る。
【0031】
第二のカテゴリは、アミン基が直接に関与しない(非特許文献13)又は重要でない(特許文献25)化学反応による、窒素含有ゾル−ゲル生成物の変性に関する。後者の特許は、a)シラン及びモノマーの酸を触媒とした加水分解及び縮合と、b)シランモノマーと相溶性のある機能を含む有機ポリマーの重合された溶液と、の組合せによって得られる塗料組成物に関する。この塗料は、光反射に使用される。
【0032】
第三のカテゴリは、SiO2粒子、即ち、ゾル−ゲルプロセスによって製造可能又は製造不可能なシリカ粒子の、単独の表面変性に関する。(加水分解されていない)シランが一般にこれらの粒子を変性するために用いられ、粒子上にブラチ(braches)を形成する。この形式の変性には、変性のための反応性部位としてアミン基が関与しない。特許文献26には、特に硬度を増加させるために用いられる、各種ポリマー中にシリカ粒子を分散してなる水性分散液が記載されている。
【0033】
特許文献27及び特許文献28は、酸化物粒子の表面変性をシラン化(silanization)により実施する、この公知の技術に関する。ある場合において、この酸化物粒子は加水分解したシランから作ることができる。これらの粒子は充填材として、並びにポリマー及び箔の変性のために用いられる。このような粒子を含む生成物の欠点は、これらは硬化後に融解できず、従ってハイパーブランチポリマーとしての使用が限定されることである。この技術の欠点は、それぞれのシランが、お互い及び同じ粒子に必ずしも結合しない幾つかの官能基を有することである。シランが2個の異なる粒子に結合する場合、又は結合する時は、望ましくない粒子の凝集に寄与する。これは一度にまたは時間をかけて生じ、システムが不安定であることを意味する。更に、シランのサイズのために、限られた数の官能基のみが各粒子に結合できる、即ち、ハイパーブランチの程度が比較的低いことに留意すべきである。特許文献29には、水分により硬化する性質を有し、a)多官能性アクリラートと、b)少なくとも1個のアルコキシ官能性有機金属成分(TEOS)又はヒドロキシラートと、c)少なくとも1個のトリアルコキシアミノシランと、を含む組成物が記載されている。
【0034】
第四のカテゴリは、加水分解されたシランをベースとし、有機モノマー、プレポリマー又はポリマーによる変性が関与するゾル−ゲルプロセスによって構成されている。
【0035】
特許文献20には、全体的に又は部分的に加水分解されたシランをベースとしたゾルの存在下で有機モノマーを重合することによって得られた有機/無機ハイブリッドポリマーが記載されている。特許文献20に記載されている典型的な例は、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランを用いて製造されたゾルの存在下での、メタクリル酸メチルの重合である。得られる組成物は、耐磨耗性塗料としての使用が意図されている。
【0036】
特許文献30は、a)エポキシド含有シランと、b)有機アミノ官能性シランと、c)アクリラートモノマー、エポキシモノマー、オルガノシランから選択される2成分のコポリマー及び/又は前記3成分のターポリマーと、d)硬化触媒と、e)多官能性アクリラートと、f)ラジカル重合用の開始剤と、の加水分解生成物/縮合生成物を含む皮膜形成組成物を教示している。この組成物は非常に複雑であり、多分岐有機/無機ハイブリッドポリマーを形成するためのアミン基の化学的転化については記載されていない。
【0037】
特許文献31は、ポリスチレン等のポリマー鎖に結合している加水分解されたシラン、所謂無機コアをベースとしたポリマーがまず作製される方法に関する。シランの加水分解は、Si−OH基同士の間の縮合が実際に妨げられるように実施される。その後、加水分解された金属酸化物又はシランは加水分解されたシランに添加され、1,000〜100,000g/モルの範囲内の分子量を有するハイパーブランチポリマーのそれに相当する特性を有する、有機/無機ハイブリッドポリマーが得られる。ここでのシランは窒素を含有しておらず、ゾル中の遊離アミン基の意図的な化学転化については特許文献31中に記載されていない。
【0038】
特許文献32は、加水分解された、独立した塗料を製造することができる、オルガノシラン(イミダゾールを有する)及び金属酸化物を含有するゾルの製造を教示している。
【0039】
特許文献33は、各種の多分岐無機/有機ハイブリッドポリマーの製造方法に関する。この方法は、多分岐無機/有機ハイブリッドポリマー内の1個のアミン基と、適切な一官能性化学化合物との間の化学反応に基づいている。多分岐無機/有機ハイブリッドポリマー内の2個以上のアミン基と、多官能性化学化合物との間の反応は、多分岐無機/有機ハイブリッドポリマーの微粒子特性の損失を生じる。UV吸収特性を有する多分岐無機/有機ハイブリッドポリマーの製造については検討されていない。
【0040】
特許文献34、特許文献35、特許文献36及び特許文献37には、UV吸収基への化学結合を有するシリコーン系ポリマー及びオリゴマーについて記載されている。
【0041】
特許文献38、特許文献39、特許文献40及び特許文献41のいずれにも、UV吸収化学化合物によるアミン及びポリマーアミン化合物の化学的転化によって製造されたUV吸収材料が記載されている。このUV吸収は、通常は<350nmの波長で強く、通常は波長範囲350〜400nm内で強い。従って、これらのUV吸収材料は、300〜400nmの全波長範囲のための光防護材料としては用途が限られている。
【0042】
特許文献42、特許文献43、特許文献44及び特許文献45には、材料からの漏洩及び所謂「ブルーミング」が低い傾向を示すUV吸収剤並びにこれらを用いた組成物が記載されている。漏洩及びブルーミングは、UV吸収剤の脂肪溶解度の改良により、又はUV吸収剤を材料若しくは材料組成物中の成分に化学的に結合させることにより減少させることができる。
【0043】
特許文献46及び特許文献47には、水性配合物中に使用されるためのUV吸収剤が記載されている。
【0044】
【特許文献1】国際特許出願公開第97/36880号
【特許文献2】欧州特許第434608号
【特許文献3】欧州特許第520,938号
【特許文献4】米国特許第4,619,956号
【特許文献5】欧州特許第483,488号
【特許文献6】欧州特許第500,496号
【特許文献7】欧州特許第502,816号
【特許文献8】欧州特許第506,615号
【特許文献9】米国特許第5,977,219号
【特許文献10】米国特許第5,607,987号
【特許文献11】米国特許第5,516,914号
【特許文献12】国際特許出願公開第02/092668号
【特許文献13】仏国特許第2761691号
【特許文献14】国際特許出願公開第01/48057号
【特許文献15】国際特許出願公開第97/19987号
【特許文献16】国際特許出願公開第01/10871号
【特許文献17】国際特許出願公開第0208343号
【特許文献18】独国特許第199 33 098号
【特許文献19】欧州特許第666 290号
【特許文献20】欧州特許第486 469号
【特許文献21】独国特許第2023968号
【特許文献22】国際特許出願公開第03/029361号
【特許文献23】欧州特許第0253770号
【特許文献24】JP第2001192485号
【特許文献25】米国特許第5744243号
【特許文献26】特許出願第9603174−5号
【特許文献27】国際特許出願公開第9407948号
【特許文献28】国際特許出願公開第00/22039号
【特許文献29】欧州特許第0786499号
【特許文献30】米国特許第5,674,941号
【特許文献31】米国特許第5,096,942号
【特許文献32】米国特許第5,110,863号
【特許文献33】国際特許出願公開第2005 100450号
【特許文献34】JP第07267842号
【特許文献35】米国特許出願公開第2005249690
【特許文献36】JP第2006225358号
【特許文献37】欧州特許第138590号
【特許文献38】欧州特許第275719号
【特許文献39】欧州特許第955288号
【特許文献40】米国特許出願公開第2005180933号
【特許文献41】国際特許出願公開第2005025491号
【特許文献42】米国特許出願公開第2005023268号
【特許文献43】独国特許第19649191号
【特許文献44】JP第10212469号
【特許文献45】欧州特許第744632号
【特許文献46】独国特許第20 2006 007 976 U1号
【特許文献47】仏国特許030 4650号
【特許文献48】国際特許出願公開第2004094516号
【特許文献49】国際特許出願公開第2006043827号
【非特許文献1】Hans Zweifel(編)、「プラスチック添加物ハンドブック(Plastic additives handbook)」、Hanser、ミュンヘン、2000年
【非特許文献2】G.R.Newkome、C.N.Moorefield、F.Vogtle、“Dendrimers and Dendrons:Concepts,Syntheses,Applications”、Wiley−VCH、Weinheim、(2001)
【非特許文献3】Hans Zweifel(編)、「プラスチック添加物ハンドブック(Plastics Additives Handbook)」、Carl Hanser Verlag、ミュンヘン、(2001)、第725−811頁
【非特許文献4】P.J.Flory、Principles of Polymer Chemistry、Cornell University、(1953)
【非特許文献5】A.Sunder、R.Hanselmann、H.Frey、R.Muhlhaupt;Macromolecules、(1998)、第32巻、第4240頁
【非特許文献6】J.−P.Majoral、A.−M.Caminade及びR.Kraemer、Anales de Quimica Int.Ed.、(1997)、第93巻、第415−421頁
【非特許文献7】A.W.Hofmann、Justus Liebigs Ann.Chem.(1851)、第78巻、第253−286頁
【非特許文献8】A.C.Cope、E.R.Trumbull、Org.React.(1960)、第11巻、第317−493頁
【非特許文献9】A.C.Cope、T.T.Foster、p.H.Towle、J.Am.Chem.Soc.(1949)、第71巻、第3929−3935頁
【非特許文献10】A.V.Tobolsky、R.B.Mesrobian、Organic Peroxides、(1954)、Interscience Publishers、ニューヨーク、第104−106頁
【非特許文献11】C.Sanchez、G.J.de A.A.Soler−Illia、F.Ribot、T.Lalot、C.R.Mayer、V.Cabuil;Chem.Mater.、(2001)、第13巻、第3066頁
【非特許文献12】M.C.Gravel、C.Zhang、M.Dinderman、R.M.Laine;Appl.Organometal.Chem.、(1999)、第13巻、第329−336頁
【非特許文献13】S.kar、P.Joly、M.Granier、O.Melnyk、J.−O.Durand、Eur.J.Org.Chem.;(2003)、第4132−4139頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0045】
本発明のひとつの目的は、特別の配合工程無しに、ポリマー及びポリマー形成組成物、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性プラスチック及び皮膜形成組成物の中に容易に混合することができる、粒子状多分岐無機/有機ハイブリッドポリマーをベースとした光防護添加物の製造方法を提供することである。
【0046】
別の目的は、光防護添加物が波長範囲300〜400nm内で良好な吸収を有する、上記に定義した方法を提供することである。
【0047】
更に別の目的は、光防護添加物が波長範囲300〜400nm内で良好な吸収を有し、UV吸収基に加えて、光防護特性を有する他の基が多分岐無機/有機ハイブリッドポリマーに結合している、上記に定義した方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0048】
上記の目的は、請求項1によって定義されたような、多分岐有機/無機ハイブリッドポリマーの製造方法として達成される。
【0049】
他の態様によれば、本発明は、請求項9によって定義される光防護添加物を提供する。
【0050】
別の態様によれば、本発明は、請求項11、16、17、18及び19によって定義される光防護添加物の各種の使用を提供する。
【0051】
更に他の態様によれば、本発明は、請求項20によって定義される熱可塑性材料を提供する。
【0052】
更に他の態様によれば、本発明は、請求項21、23、25、27及び29によって定義される熱可塑性材料の製品を提供する。
【0053】
本発明の好ましい実施形態は、従属請求項により開示されている。
【0054】
当業者は、基X−Bが、本発明に従った方法に関連する条件で加水分解性ではないように選択されることを理解するであろう。
【0055】
本明細書中において「プロトン供与能力を有する基」とは、プロトンと対応するアニオンとに解離する能力を有する基を意味する。このような基としては、これらに限定されないが、−OH、−NH2、置換された−NH2、−SHが挙げられる。
【0056】
遊離アミン基は、シランの加水分解及び縮合の完了後の適切な化学反応によって変性される。適切な化学反応は、T基内の遊離アミン基と、ほぼ遊離したアミン基と好ましく定量的に反応する反応性化合物との間で、470Kよりも低い温度で、一般に0.3MPaよりも低い圧力のもとで行われる。
【0057】
特に注目すべきは、加水分解及び縮合の完了後の1以上の次工程に於いて、シランの加水分解及び縮合のために使用したのと同じ反応器装置を使用してT基を化学的に変性することができるゾル−ゲルプロセスである。このようなバッチプロセスは、多数の異なるT基を含みうる粒子状有機/無機多分岐ポリマーの費用効率の極めてよい製造の基礎を形成し、従って多くのさまざまな工業的応用に有用である。
【0058】
「第一級及び第二級アミンの典型的な反応」とは、これらに限定されないが、エポキシ基、イソシアネート基、反応性二重結合、置換可能な基及びプロトン供与基等の適切な反応剤による付加反応、置換反応及びこのような反応の組合せを意味する。
【0059】
本明細書中において「制御された加水分解及び縮合」とは、適切なシラン化合物を用いた加水分解及び縮合を意味する。
【0060】
第一工程は、適切なシラン化合物、R’−Si(OR)n(式中、R’基は、加水分解反応又は縮合反応に関与しない)の加水分解である。アルコキシドリガンドは、ヒドロキシル基によって置換される。
Si−OR + H−OH Si−OH + ROH
【0061】
この工程の間に、制御された量の水及び制御された量のグリコール性溶媒が添加される。反応温度及び反応時間も制御される。
【0062】
第二工程は、上記ヒドロキシル基が、他のケイ素中心からのヒドロキシル基又はアルコキシ基と反応してそれぞれSi−O−Si結合及び水又はアルコールを生成可能な縮合である。
Si−OH + HO−Si = Si−O−Si + H2
又は
Si−OR + HO−Si = Si−O−Si + ROH
【0063】
所望の粒子サイズを有する粒子を製造するためには、上記の二つの反応、即ち、縮合及び加水分解の動力学の間の正しい平衡が確実に得られる化学的条件を確立することが必要である。縮合は(個々の)モノマーからのポリマー鎖の生成に寄与し、一方加水分解は多結晶性沈殿又はオキソヒドロキシド沈殿に寄与する。アミノ官能性シランの組合せ及び強リガンドによるアルコキシド基の交換は、縮合反応に比較して加水分解反応を遅め、これにより上述のポリマー鎖が長くなりすぎずにオリゴマーのサイズ内に留まることを確実にする。実際に、これは粒子が典型的に数ナノメートルサイズ、更に典型的には10nm未満であることを意味する。加水分解及び縮合、並びに続く変性の間の反応剤及び反応生成物の酸化による分解を避けるために、適切な安定剤が一般に反応組成物に添加される。得られる溶液は、溶媒中に分散された無機ポリマー粒子を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0064】
本発明による方法の好ましい実施形態に於いて、芳香族カルボン酸誘導体は、下記式の中から選択される。
【0065】
【化4】

【0066】
(式中、R1〜R4は、水素、置換されていない飽和若しくは不飽和C1〜C24−アルキル、置換された飽和若しくは不飽和C1〜C24−アルキル、置換された若しくは置換されていないアリール、ハロゲン、ヒドロキシル、置換された若しくは置換されていないアミン、脂肪族若しくは芳香族カルボニル等の基の中から選択され、前記化合物の炭素鎖中の1個以上の炭素原子は、酸素、窒素、硫黄、リン、ケイ素及びホウ素の中から選択される1個以上の元素によって置換されていてよく、又は、R1〜R4は1種以上の化学組成物、例えば、酸類、アルコール類、フェノール類、アミン類、アルデヒド類若しくはエポキシド類の縮合生成物若しくは付加生成物の中から選択され、R1〜R4は、存在する芳香族環とともにフェニルより大きい環構造を形成する置換された若しくは置換されていない芳香族環構造を形成してよく、M、Zは、O、N、Sの中から選択され、R5〜R7は、R1−O、R12N又はR1−Sの中から選択される)
【0067】
前記カルボン酸又はカルボン酸誘導体は、光防護添加物として好適な多分岐有機/無機ハイブリッドポリマーが水分散性であるように選択されることが更に好ましい。
【0068】
前記R1〜R4の2個以上は、前記芳香族構造を6個よりも多いπ電子を有する芳香族構造に拡大するのに寄与できるようにそのサイズ、形状及び構造に関して選択されることができ、場合により好ましい。例として、2−ヒドロキシ安息香酸(サリチル酸)[69−72−7](6個のπ電子を有する)に関して、2−ヒドロキシ−1−ナフチル酸[2283−08−1](10個のπ電子を有する)が挙げられる。
【0069】
好ましい実施形態に於いて、本発明に従った方法は、時系列的に定義される少なくとも2つの工程を含むゾル−ゲルプロセスであって、
i)第一工程に於いて、コアが、下記構造を有するシランの制御された加水分解及び縮合によって調製され、
NH2−B−Si(−Y)3
(式中、Bは、飽和又は不飽和のC1〜C18アルキレン、置換された又は置換されていないアリーレンの中から選択される結合基であり、前記化合物の炭素鎖は、可能であれば1個以上の枝を含有し、1個以上の炭素原子は、酸素、窒素、硫黄、リン、ケイ素及びホウ素の元素によって置換されていてよく、Yは加水分解性基である)
ii)少なくとも1つの次工程に於いて、2個の−B−NH2基をカルボン酸又は下記の化学構造の一つを含むカルボン酸誘導体と反応させることによってUV吸収有機枝を発生させるプロセスを提供する。
【0070】
【化5】

【0071】
(式中、R1〜R4は、水素、置換されていない飽和若しくは不飽和C1〜C24アルキル、置換された飽和若しくは不飽和C1〜C24アルキル、置換された若しくは置換されていないアリール、ハロゲン、ヒドロキシル、置換された若しくは置換されていないアミン、脂肪族若しくは芳香族カルボニルのような基の中から選択され、前記鎖中の1個以上の炭素原子は、酸素、窒素、硫黄、リン、ケイ素及びホウ素の元素によって置換されていてよく、又は、R1〜R4は、酸類、アルコール類、フェノール類、アミン類、アルデヒド類若しくはエポキシド類等の1種以上の化学化合物の縮合生成物若しくは付加生成物の中から選択され、R1〜R4は、存在する芳香族環とともにフェニルより大きい芳香族環構造を形成する置換された若しくは置換されていない芳香族環構造を形成することができ、M、Zは、O、N、Sの中から選択され、R5〜R7は、R1−O、R12N又はR1−Sの中から選択される)
【0072】
本発明に従った方法に於いて、幾つかの−B−NH2基は対になってカルボン酸又はカルボン酸誘導体と反応し、一方、残りの−B−NH2基は、全体的に又は部分的に独立してカルボン酸又はカルボン酸誘導体と反応する。
【0073】
本発明の方法の好ましい幾つかの実施形態に於いて、−B−NH2基は、カルボン酸又はカルボン酸誘導体と部分的にのみ化学的に反応し、一方、残りの−B−NH2基は、全体的に又は部分的にそれ自体公知の付加又は置換反応で反応して、少なくとも1種の安定剤を多分岐微粒子有機/無機ハイブリッドポリマーに結合する。このような反応に於いては、これらに限定されないが、エポキシド類、環式及び非環式酸誘導体類、ブロックされた及びブロックされていないイソシアネート類、反応性二重結合を有する化合物類、アルデヒド類、ケトン類、並びにこれらに限定されないが、(これらに限定されないが、フェノール、2,6−置換フェノール、2,6,6,6−テトラメチルピペリジンを含む化合物を含む)酸化防止剤及び/又はラジカルスカベンジャーを含む適切な安定剤及び安定化基を含むかこれらに結合されたプロトン供与化合物を含む反応的化合物が使用され、任意の2個以上の−B−NH2基が一定の安定剤に結合している。
【0074】
本発明の特に好ましい実施形態よれば、Bはプロピレンであり、Zは酸素であり、R1〜R4は水素である。
【0075】
本発明の光防護添加物は、ゾル−ゲル生成物が全体的に又は部分的に下記化学的基本構造によって構成されるゾル−ゲルプロセスによって製造できる多分岐有機/無機ハイブリッドポリマーをベースにしている。
【0076】
【化6】

【0077】
(式中、R1〜R4は、水素、置換されていない飽和若しくは不飽和C1〜C24アルキル、置換された飽和若しくは不飽和C1〜C24アルキル、置換された若しくは置換されていないアリール、ハロゲン、ヒドロキシル、置換された若しくは置換されていないアミン、脂肪族若しくは芳香族カルボニルのような基の中から選択され、前記鎖中の1個以上の炭素原子は、酸素、窒素、硫黄、リン、ケイ素及びホウ素の元素によって置換されていてよく又は、R1〜R4は、酸類、アルコール類、フェノール類、アミン類、アルデヒド類若しくはエポキシド類等の1種以上の化学組成物の縮合生成物若しくは付加生成物の中から選択され、R1〜R4は、存在する芳香族環とともにフェニルより大きい芳香族環構造を形成する置換された若しくは置換されていない芳香族環構造を形成することができ、M、Zは、酸素、窒素及び硫黄の元素の中から選択される)
【0078】
特に好ましくは、Bがプロピレンであり、Zが酸素であり、R1〜R4が全て水素である。請求項1に従って製造された多分岐有機/無機ハイブリッドポリマー又は請求項9によって定義された光防護添加物は、熱可塑性樹脂、熱硬化性プラスチック又は組成物中の機能性添加物として有用である。このような使用には、他の機能性添加物、それ自体公知の種及び種類の典型的な添加物、例えば、酸化防止剤、ラジカルスカベンジャー、UVフィルター、プロセス安定剤、染料との組合せが含まれてよい。
【0079】
多分岐有機/無機ハイブリッドポリマーを含有する熱可塑性樹脂、熱硬化性プラスチック又は組成物は、多分岐有機/無機ハイブリッドポリマーを含まない対応する熱可塑性樹脂、熱硬化性プラスチック又は組成物よりもその成分又は分解生成物の漏洩が少ない。漏洩が減少した成分は、液体保護添加物として適している。
【0080】
熱可塑性樹脂、熱硬化性プラスチック又は材料組成物から漏洩し得る成分には、例えば、ポリマー添加物、例えば、安定剤、ラジカルスカベンジャー、プロセス促進剤(process facilitators)及び染料が含まれる。
【0081】
本発明の第一態様に従って製造された多分岐有機/無機ハイブリッドポリマー又は本発明の第二態様に従った光防護添加物は、任意で分解促進剤(prodegradant)と組み合わせて、ポリオレフィン中の機能性添加物として有用である。
【0082】
本発明の第一態様に従って製造された多分岐有機/無機ハイブリッドポリマー又は本発明の第二態様に従った光防護添加物は、日焼けローション又は他の化粧品中の成分として有用である。
【0083】
本発明の第一態様に従って製造された多分岐有機/無機ハイブリッドポリマー又は本発明の第二態様に従った光防護添加物は、接着剤製品、ラッカー及び皮膜形成製品中の成分として有用である。
【0084】
本発明の第一態様に従って製造された多分岐有機/無機ハイブリッドポリマー又は本発明の第二態様に従った光防護添加物は、溶媒又は分散剤として水が含まれている組成物中で有用である。
【0085】
本発明の第二態様に従った光防護添加物又は本発明の第一態様に従って製造された多分岐有機/無機ハイブリッドポリマーを含む熱可塑性材料もまた本発明の一部である。このような熱可塑性材料によって製造された、フィルム又は箔で、フィルムブローイング又は箔押出により加工された最終製品又は中間製品、下記の二配向フィルムもそうである。このような製品には、典型的に、ショッピングバッグ、集光箔、農業目的に使用される他の種類の箔、食品包装、他の包装並びに他の種類のバッグ及びサックが含まれる。
【0086】
本発明の一部として、射出成形によって加工される、射出成形された上記の熱可塑性樹脂の最終又は中間製品も含まれる。このような製品には、一般に食品包装、その他の包装、家庭用若しくは工業用の又は食品及び若しくは飲料とともに使用するための使い捨て物品が含まれる。
【0087】
本発明の一部として、熱成形によって加工される、熱成形された上記の熱可塑性樹脂の最終又は中間製品が更に含まれる。このような製品には、一般に食品包装、その他の包装、家庭用若しくは工業用の又は食品及び/若しくは飲料とともに使用するための使い捨て物品が含まれる。
【0088】
本発明の一部として、押出成形によって加工される、押出成形された上記の熱可塑性樹脂の最終又は中間製品も含まれる。このような製品には、一般に工業用目的、建設目的、下記の輸送、建築工業のための製品、繊維状製品、バンド状製品、その下位の織物製品及び不織製品が含まれる。
【0089】
最後に、吹込成形によって加工される、吹込成形された上記の熱可塑性材料の最終又は中間製品も本発明の一部として含まれる。このような製品には、一般に食品包装、その他の包装、家庭用若しくは工業用の又は食品若しくは飲料とともに使用するための使い捨て物品が含まれる。
【実施例】
【0090】
実施例1
5リットルの反応器内でのゾル−ゲルプロセスによる、光防護添加物として適している、多分岐有機/無機ハイブリッドポリマーの製造(全プロセスの第一工程)。
【0091】
温度調節可能な加熱ジャケットと、攪拌機と、温度計と、滴下漏斗と、還流及び蒸留の急速な交換のためのカラムヘッドを有する縦型冷却器と、真空連結(膜ポンプ)とを有する、t5リットルの反応器(NORMAG Labor.−und Prozesstechnik、ドイツ国、Imenau)内に、2801グラム(12.7モル)のγ−アミノプロピルトリエトキシシラン(DYNASYLAN(登録商標)AMEO、Degussa AG、ドイツ国)を入れる。821グラム(7.6モル)の2−ブトキシエタノール(DOWANOL EB、Dow Chemical、米国)及び296グラム(16.4モル)の水及び6グラムの2,2,6,6−テトラメチルピペリジン(Adrich、ノルウェー国)を添加した。得られた混合物を還流で45分間加熱した。次いで揮発性反応生成物又は反応剤を、真空蒸留によって、110℃〜160℃の反応混合物中の温度で、約1000ミリバールから20ミリバール未満までの真空勾配で除去した。丸底フラスコ内の圧力が20ミリバール以下に10分間達したとき、蒸留を終了させる。約2334mLの留出物を採取した。この反応生成物は、ガードナーカラー=1(ガードナーカラースケール/ASTM D1544)を有する、透明無色の液体である。
【0092】
実施例2
上記全プロセスの第一工程(実施例1)より得られた中間体生成物の芳香族カルボン酸誘導体との反応による、光防護添加物として好適な多分岐有機/無機ハイブリッドポリマーの製造(全プロセスの更なる工程)
【0093】
600グラムのジエチレングリコールモノブチルエーテル[112−34−5]を、600グラムの実施例1より得られた生成物に添加した。この混合物を70℃に加熱する。次いで、480グラムのサリチル酸メチル[119−36−8]を添加し、この反応混合物を90℃に3時間加熱した。冷却後の生成物は粘稠なゲルである。
【0094】
実施例3
上記全プロセスの第一工程(実施例1)より得られた中間体生成物の芳香族カルボン酸誘導体との反応による、光防護添加物として好適な多分岐有機/無機ハイブリッドポリマーの製造(全プロセスの追加的な2工程(工程2及び3))
【0095】
122グラムの3,5ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸ヘキサデシルエステル[067845−93−6]を、1000グラムのメタノール中に溶解する。375グラムの実施例1より得られた生成物を添加する。この混合物を70℃に加熱する。次いで、181グラムのサリチル酸メチルを添加し、この反応混合物を90℃に3時間加熱する。冷却後に生成した白色結晶をメタノールで洗浄し、乾燥する。
【0096】
実施例4
上記全プロセスの第一工程(実施例1)より得られた中間体生成物の芳香族カルボン酸誘導体との反応による、光防護添加物として好適な多分岐有機/無機ハイブリッドポリマーの製造(全プロセスの工程2)
【0097】
18.1グラムのサリチル酸メチルを、加熱ジャケットと、温度計と、還流/蒸留冷却器と、滴下漏斗とを備えた500mLの三つ口丸底フラスコの中に導入した。200グラムの2−ブトキシエタノールをこの丸底フラスコに添加し、その内容物を120℃に加熱した。140グラムの実施例1より得られた生成物を14.0グラムのキシレン中に分散させ、滴下漏斗を経て丸底フラスコに10分間以内に添加した。この反応混合物を120℃で1時間撹拌した。次いで、この反応混合物を180〜200℃に加熱し、メタノール及び2−ブトキシエタノールを留去した。丸底フラスコ内の生成物は黄色の塊であり、これは冷却により凝固し、2−ブトキシエタノール中に完全に可溶性であった。
【0098】
実施例5
上記全プロセスの第一工程(実施例1)より得られた中間体生成物の芳香族カルボン酸誘導体との反応による、光防護添加物として好適な多分岐有機/無機ハイブリッドポリマーの製造(全プロセスの工程2)
【0099】
20.0グラムの4−メトキシサリチル酸メチルエステルを、加熱ジャケットと、温度計と、還流/蒸留冷却器と、滴下漏斗とを備えた500mLの三つ口丸底フラスコの中に導入した。200グラムの2−ブトキシエタノールをこの丸底フラスコに添加し、その内容物を120℃に加熱した。14.0グラムの実施例1より得られた生成物を、14.0グラムのキシレン中に分散させ、滴下漏斗を経て丸底フラスコに10分間以内に添加した。この反応混合物を120℃で1時間撹拌した。次いで、この反応混合物を180〜200℃に加熱し、メタノール及び2−ブトキシエタノールを留去した。丸底フラスコ内の生成物は黄色の塊であり、これは冷却により凝固し、2−ブトキシエタノール中に完全に可溶性であった。
【0100】
実施例6
上記全プロセスの第一工程(実施例1)より得られた中間体生成物の芳香族カルボン酸誘導体との反応による、光防護添加物として好適な多分岐有機/無機ハイブリッドポリマーの製造(全プロセスの工程2)
【0101】
54.0グラムのサリチル酸メチルを、加熱ジャケットと、温度計と、還流/蒸留冷却器と、滴下漏斗とを備えた500mLの三つ口丸底フラスコの中に導入した。120グラムの2−ブトキシエタノールをこの丸底フラスコに添加し、その内容物を120℃に加熱した。26.8グラムの実施例1より得られた生成物を8.0グラムのキシレン、8.0グラムのエタノール及び42グラムの2−ブトキシエタノール中に分散させ、滴下漏斗を経て丸底フラスコに10分間以内に添加した。この反応混合物を120℃で1時間撹拌した。次いで、この反応混合物を180〜200℃に加熱し、メタノール及び2−ブトキシエタノールを留去した。揮発性成分の残りを180〜200℃及び20ミリバールで真空蒸留によって除去した。丸底フラスコ内の生成物は黄色の塊であり、これは冷却により約1mm厚さ及び20cm長さの針状物質に凝固した。
【0102】
実施例7
UVフィルター効果(UV吸収効果)の特性
【0103】
光防護添加物として好適な多分岐有機/無機ハイブリッドポリマーのUVフィルター効果を、100グラムの2−ブトキシエタノールに8グラムの多分岐有機/無機ハイブリッドポリマーを溶解して得た溶液の波長範囲300〜400nm内の全透過率を測定することによって解析した。ダイオードアレイ検出器を備えたUV−VIS分光光度計(Hewlett Packard HP8453)を使用した。この溶液を、10mm石英キュベット内で測定した。空気を充填した10mm石英キュベットを測定してUV−VIS分光光度計をゼロにリセットした。UV−VIS分光光度計により、1nm解像度での0%から100%までの数値として透過率が示される。全透過率は、300〜400nmにおける全ての数値の合計値とした。石英キュベット内の内容物が光防護添加物として有用である場合、この合計値は10,000よりも著しく小さい数字となる。石英キュベット内の内容物が光防護添加物としてあまり適していない場合、この合計は10,000にかなり近い数字となる。
【0104】
光防護添加物として好適な多分岐有機/無機ハイブリッドポリマーに加えて、反応剤、溶媒及び参照物質についても測定を行った。これらの結果を表1に示す。
【0105】
【表1】

【0106】
上記の結果は、光防護添加物として好適な多分岐有機/無機ハイブリッドポリマーが、良好なUVフィルター効果を有し得ることを示している。実施例4で製造された光防護添加物として好適な多分岐有機/無機ハイブリッドポリマーは、市販のUVフィルターであるキマソルブ(Chimasorb)81に匹敵するUVフィルター効果を示す。
【0107】
実施例4で製造された光防護添加物として好適な多分岐有機/無機ハイブリッドポリマーは、出発物質である実施例1で製造された多分岐有機/無機ハイブリッドポリマー及びサリチル酸メチルよりも著しく良いUVフィルター効果を示す。これは、UVフィルター効果が、出発物質に於けるUVフィルター効果によって説明することができないことを示している。UVフィルター効果は、主として全プロセスの工程2に於いて形成される。
【0108】
実施例4で製造された光防護添加物として好適な多分岐有機/無機ハイブリッドポリマーは、参照のサリチルアミドよりも著しく良いUVフィルター効果を示す。これは、UVフィルター効果が、出発物質である実施例1で製造された多分岐有機/無機ハイブリッドポリマー中の官能性アミノ基がサリチルアミド基へ転化することによって説明することができないことを示している。
【0109】
実施例8
1H−NMR分光法による、実施例4で製造された光防護添加物として好適な多分岐有機/無機ハイブリッドポリマー。NMR分光器は、型式Gemini300MHz(Varian Inc.、米国)であった。溶媒として、重水素化クロロホルムを使用した。
【0110】
1H−NMRスペクトルは、クロロホルム中に溶解したポリマー化合物に典型的にみられる広い共鳴ピークを有している。この共鳴ピークは、6.6ppm−8ppm(芳香族1H共鳴)及び0.5ppm−3.4ppm(脂肪族1H共鳴)の範囲内にある。
【0111】
実施例4で行われた反応は、下記の構造要素に至り得る。
【0112】
【化7】

【0113】
構造Bは、出発物質である実施例1で製造された多分岐有機/無機ハイブリッドポリマー中の官能性アミノ基の一つと、サリチル酸メチル中のカルボン酸エステル基との間の反応によって形成される。構造Bは、出発物質である実施例1で製造された多分岐有機/無機ハイブリッドポリマー中の他の官能性アミノ基が構造Bのカルボン酸アミド基と反応すると、構造Aに転化しうる。
【0114】
構造A及び構造Bの1H−NMRスペクトルは、1H−NMRプレディクター(Advanced Chemistry Development Inc.、カナダ国トロント、http://www.acdlabs.com)によって計算した。
【0115】
構造A中の芳香族1H共鳴は、6.8ppmと8.0ppmとの間にある。構造B中の芳香族1H共鳴は、6.8ppmと7.5ppmとの間にある。これは、構造Aが、実施例4で製造された光防護添加物として好適な多分岐有機/無機ハイブリッドポリマー中に存在することを示している。芳香族1H共鳴及び脂肪族1H共鳴における面積の比較は、実施例4で製造された光防護添加物として好適な多分岐有機/無機ハイブリッドポリマーが、一般に50%の構造Aと50%の構造Bとによって構成されていることを示唆する。アミジン型の化学構造を有する構造Aは、構造B中の対応するアミド型の化学構造よりも低い、300nmから400nmまでの全透過を有する(非特許文献1)。従って、実施例7の結果は、実施例4で製造された光防護添加物として好適な多分岐有機/無機ハイブリッドポリマー中に構造Aが存在するという結論を支持している。
【0116】
実施例9
ポリプロピレン及び光防護添加物として好適な多分岐有機/無機ハイブリッドポリマーをベースにするマスターバッチの製造
【0117】
57.0グラムの実施例6で製造された光防護添加物として好適な多分岐有機/無機ハイブリッドポリマー、30.8グラムのBrij76(Aldrich、ノルウェー国)、5.6グラムのマスターバッチ9−9241(Nor−X Industry AS、ノルウェー国)及び650グラムの非安定化ポリプロピレンランダムコポリマーR305(Nor−X Industry AS、ノルウェー国)を、二軸スクリュー押出機(Clextral)内で、200℃及び60〜70秒の滞留時間で押し出した。得られた生成物をMB0とした。
【0118】
MB0について押出しおよび粒状化をもう一度行い、この生成物をMB1とした。
348グラムのMB0を、28グラムの市販の光防護添加物であるサイアソルブ(Cyasorb)UV−3529(Cytec Inc.、米国)と混合した。この混合物について押出しおよび粒状化を行い、得られた生成物をMB2とした。
【0119】
実施例10
ポリプロピレン引張ロッドの製造
【0120】
Tipplen K948 ポリプロピレンブロックコポリマー TVK、ハンガリー国
MB1 光防護添加物を含むマスターバッチ 実施例9
MB2 光防護添加物を含むマスターバッチ 実施例9
9−9233/9−9241 分解促進剤を含むマスターバッチ Nor−X Industry AS、ノルウェー国
【0121】
9−9233/9−9241のような分解促進剤を含むマスターバッチは、熱可塑性樹脂の急速な光誘導分解に寄与する(特許文献48、特許文献49)。
【0122】
【表2】

【0123】
表2の成分をドライブレンドし、射出成形した試験ロッドをASTM D3641に従って製造した。続いて、この試験ロッドを引張強度試験に使用した。
【0124】
実施例11
ポリエチレン箔の製造
【0125】
FA6220 LDPE(低密度ポリエチレン) Borealis、ノルウェー国
MB1 光防護添加物を含むマスターバッチ 実施例9
MB2 光防護添加物を含むマスターバッチ 実施例9
9−9233/9−9241 分解促進剤を含むマスターバッチ Nor−X Industry AS、ノルウェー国
【0126】
【表3】

【0127】
表3の成分をドライブレンドし、フィルムをフィルムブローイング機で吹込成形した。得られたフィルムは10〜20μmの厚さを有した。
【0128】
実施例12
ポリプロピレン試験ロッドの老化促進及び機械的試験
【0129】
実施例10で製造された試験ロッドを、UVA340蛍光灯を取り付けたAtlas UVCONウェザロメーター(Atlas Inc.、米国)内で、ISO 4892−3に従った老化促進に付した。試験サイクルは、70℃への乾燥加熱を伴うUV照射を4時間、10〜12℃での水噴霧を30分間、及び50℃での凝縮を3時間30分間からなった。
【0130】
この試験ロッドについて、ASTM D638に従った引張強度に関する試験を種々の時点で行った。引張強度試験の結果を最大引張強度[MPa]の形で記載する。表4に、この試験の結果を示す。
【0131】
【表4】

【0132】
上記の結果は、本発明に従って製造された多分岐有機/無機ハイブリッドポリマーが、単独で又は他の光防護添加物との組合せによって、熱可塑性樹脂用の光防護添加物として好適に用いられることを示している。
【0133】
上記の結果はまた、本発明に従って製造された多分岐有機/無機ハイブリッドポリマーが、1種以上の分解促進剤を含有する熱可塑性樹脂の分解速度を減少させるための光防護添加物として好適であることを示している。
【0134】
実施例13
ポリエチレン箔の老化促進及び機械的試験
【0135】
実施例11で製造されたフィルムを、箔吹込方向に対して平行に10mm幅の細片に切断した。このフィルム細片を、UVA−340蛍光灯を取り付けたAtlas UVCONウェザロメーター(Atlas Inc.、米国)内で、ISO4892−3に従った老化促進に付した。試験サイクルは、70℃への乾燥加熱を伴うUV照射を4時間、10〜12℃での水噴霧を30分間、及び50℃での凝縮を3時間30分間からなった。
【0136】
このフィルム細片について、引張強度に関する試験を種々の時点で行った。引張強度試験の結果を最大引張強度[MPa]の形で記載する。表5に、これらの引張強度試験の結果を示す。
【0137】
【表5】

【0138】
上記の結果は、本発明に従って製造された多分岐有機/無機ハイブリッドポリマーが、単独で又は他の光防護添加物との組合せによって、熱可塑性樹脂のための光防護添加物として好適に用いられることを示している。
【0139】
上記の結果はまた、本発明に従って製造された多分岐有機/無機ハイブリッドポリマーが、1種以上の分解促進剤を含有する熱可塑性樹脂の分解速度を減少させるための光防護添加物として好適であることを示している。
【0140】
実施例14
光防護添加物として好適な多分岐有機/無機ハイブリッドポリマーを有する水含有混合物
【0141】
実施例6で製造された光防護添加物として好適な多分岐有機/無機ハイブリッドポリマーの2−ブトキシエタノール溶液(18.7%v/v)2.04グラムに水滴を添加した。1.0グラムの水を添加した時点の溶液はまだ透明であった。この溶液の実施例7に記載した方法で測定した全透過は139であった。
【0142】
これは、本発明に従った光防護添加物として好適な多分岐有機/無機ハイブリッドポリマーが、水性組成物中のUV吸収剤として有用であることを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
官能性アミノ基を有する加水分解性金属化合物を加水分解及び縮合によって反応させるゾル−ゲルプロセスを含む全プロセス内で、光防護添加物として好適な多分岐有機/無機ハイブリッドポリマーを製造する方法であって、前記全プロセスが、前記官能性アミノ基の1個以上を、プロトン供与能力を有する基をカルボン酸誘導体基に対してオルト位に含む芳香族カルボン酸誘導体と反応させる少なくとも1つの追加工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記芳香族カルボン酸誘導体が以下から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【化1】

(式中、R1〜R4は水素、置換されていない飽和若しくは不飽和C1〜C24−アルキル、置換された飽和若しくは不飽和C1〜C24−アルキル、置換された若しくは置換されていないアリール、ハロゲン、ヒドロキシル、置換された若しくは置換されていないアミン、脂肪族若しくは芳香族カルボニル等の基の中から選択され、前記化合物の炭素鎖中の1個以上の炭素原子は酸素、窒素、硫黄、リン、ケイ素及びホウ素の中から選択される1個以上の元素によって置換されていてよく、又は、R1〜R4は酸類、アルコール類、フェノール類、アミン類、アルデヒド類若しくはエポキシド類等の1種以上の化学組成物の縮合生成物若しくは付加生成物の中から選択され、R1〜R4は存在する芳香族環とともにフェニルよりも大きい環構造を形成する置換された若しくは置換されていない芳香族環構造を形成してもよく、M、ZはO、N、Sの中から選択され、R5〜R7はR1−O、R12N又はR1−Sの中から選択される)
【請求項3】
前記カルボン酸又はカルボン酸誘導体が、前記光防護添加物として好適な多分岐有機/無機ハイブリッドポリマーが水分散性であるように選択されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記R1〜R4の2個以上が、前記芳香族環構造を6個より多いπ電子を有する環構造に拡大することに寄与できることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記ゾル−ゲルプロセスが、下記の時系列順に定義される少なくとも2工程を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
i)下記式のシランと制御された加水分解及び縮合下でコアを形成する第一工程
NH2−B−Si(−Y)3
(式中、Bは飽和又は不飽和のC1〜C18アルキレンあるいは置換された又は置換されていないアリーレンの中から選択される結合基であり、該結合基の炭素鎖は1個以上の枝を含んでよく、及び/又は該結合基の1個以上の炭素原子は酸素、窒素、硫黄、ケイ素及びホウ素の元素によって置換されていてよく、Yは加水分解性残基である)
ii)2個のB−NH2基を、1個のカルボン酸又は下記化学構造のいずれかを含むカルボン酸誘導体と反応させることによってUV吸収枝を発生させる1以上の次工程
【化2】

(式中、R1〜R4は水素、置換されていない飽和若しくは不飽和C1〜C24−アルキル、置換された飽和若しくは不飽和C1〜C24−アルキル、置換された若しくは置換されていないアリール、ハロゲン、ヒドロキシル、置換された若しくは置換されていないアミン、脂肪族若しくは芳香族カルボニル等の基の中から選択され、前記化合物の炭素鎖中の1個以上の炭素原子は酸素、窒素、硫黄、リン、ケイ素及びホウ素の中から選択される1個以上の元素によって置換されていてよく、又は、R1〜R4は酸類、アルコール類、フェノール類、アミン類、アルデヒド類若しくはエポキシド類等の1種以上の化学組成物の縮合生成物若しくは付加生成物の中から選択され、R1〜R4は存在する芳香族環とともにフェニルより大きい環構造を形成する置換された若しくは置換されていない芳香族環構造を形成してもよく、M、ZはO、N、Sの中から選択され、R5〜R7はR1−O、R12N又はR1−Sの中から選択される)
【請求項6】
一部の−B−NH2基が対になってカルボン酸又はカルボン酸誘導体と反応し、残りの−B−NH2基が全体的に又は部分的に、独立にカルボン酸又はカルボン酸誘導体と反応することを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
2個の−B−NH2基がカルボン酸又はカルボン酸誘導体と化学的に反応するように前記−B−NH2基が部分的にのみ反応すること、残りの−B−NH2基がそれ自体公知の付加及び/又は置換反応により全体的に又は部分的に反応して少なくとも1種の安定剤を多分岐構造を有する粒子状の有機/無機ハイブリッドポリマーに結合させること、並びに上記反応に於いて、これらに限定されないが、エポキシド類、環式及び非環式酸誘導体類、ブロックされた及びブロックされていないイソシアネート類、反応性二重結合を有する化合物類、アルデヒド類、ケトン類、および適切な安定剤及び安定化基を含む又はこれに結合したプロトン供与性化合物類等から選択されうる化合物が使用される(これらに限定されないが、これらに限定されないフェノール類、2,6−置換フェノール類、2,6,6,6−テトラメチルピペリジンを含む化合物類を含む酸化防止剤及び/又はラジカルスカベンジャーを含む)こと、並びに、場合によって2個以上の−B−NH2基が特定の安定剤に結合できることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
Bがプロピレンであり、Zが酸素であり、R1〜R4が水素であることを特徴とする、請求項4〜7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
ゾル−ゲルプロセスによって製造される多分岐有機/無機ハイブリッドポリマーをベースとしており、該ゾル−ゲルプロセスの生成物が全体的に又は部分的に下記の化学的基本構造を有することを特徴とする光防護添加物。
【化3】

(式中、Bは飽和又は不飽和C1〜C18アルキレンあるいは置換された又は置換されていないアリーレンの中から選択される結合基であり、前記結合基の炭素鎖は1個以上の枝を含んでよく、及び/又は1個以上の炭素原子は酸素、窒素、硫黄、リン、ケイ素及びホウ素の元素によって置換されてよく、R1〜R4は水素、置換されていない飽和若しくは不飽和C1〜C24アルキル、置換された飽和若しくは不飽和アルキル、置換された若しくは置換されていないアリール、ハロゲン、ヒドロキシル、置換された若しくは置換されていないアミン、脂肪族若しくは芳香族カルボニル等の基の中から選択され、前記炭素原子の1個以上は酸素、窒素、硫黄、リン、ケイ素及びホウ素の元素によって置換されてよく、又は、R1〜R4は酸類、アルコール類、フェノール類、アミン類、アルデヒド類若しくはエポキシド類等の1種以上の化学組成物の縮合生成物若しくは付加生成物の中から選択され、R1〜R4は存在する芳香族環とともにフェニルより大きい環構造を形成する置換された若しくは置換されていない芳香族環構造を形成することができ、M、Zは酸素、窒素及び硫黄の元素の中から選択される)
【請求項10】
Bがプロピレンであり、Zが酸素であり、R1〜R4が水素であることを特徴とする、請求項8に記載の光防護添加物。
【請求項11】
熱可塑性樹脂、熱硬化性プラスチック又は材料組成物中の機能性添加物としての、請求項1に記載の方法に従って製造された多分岐有機/無機ハイブリッドポリマー又は請求項9に記載の光防護添加物の使用。
【請求項12】
他の機能性添加物と組み合わせた、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記他の機能性添加物が、酸化防止剤、ラジカルスカベンジャー、UVフィルター、プロセス安定剤及び染料の中から選択される、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記多分岐有機/無機ハイブリッドポリマーを含む前記熱可塑性樹脂、熱硬化性プラスチック又は材料組成物における成分又は分解生成物の漏洩が、該多分岐有機/無機ハイブリッドポリマーを含まない対応する熱可塑性樹脂、熱硬化性プラスチック又は材料組成物のそれよりも少ない、請求項11に記載の使用。
【請求項15】
前記漏洩が減少した成分が光防護添加物として好適である、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
1種以上の分解促進剤と組み合わせてもよいポリオレフィン中の機能性添加物としての、請求項1に記載の方法に従って製造された多分岐有機/無機ハイブリッドポリマー又は請求項9に記載の光防護添加物の使用。
【請求項17】
日焼けローション又は他の化粧品製品中の成分としての、請求項1に記載の方法に従って製造された多分岐有機/無機ハイブリッドポリマー又は請求項9に記載の光防護添加物の使用。
【請求項18】
接着剤配合物、ラッカー及び皮膜形成組成物中の成分としての、請求項1に記載の方法に従って製造された多分岐有機/無機ハイブリッドポリマー又は請求項9に記載の光防護添加物の使用。
【請求項19】
溶媒又は分散剤として水が存在する混合物における、請求項1に記載の方法に従って製造された多分岐有機/無機ハイブリッドポリマー又は請求項9に記載の光防護添加物の使用。
【請求項20】
請求項9に記載の光防護添加物又は請求項1に記載の方法に従って製造された多分岐有機/無機ハイブリッドポリマーを含むことを特徴とする、熱可塑性材料。
【請求項21】
フィルムブローイング又は箔押出により、最終製品又は中間製品としてのフィルム又は箔、下記の二配向フィルムに加工されたことを特徴とする、請求項20に記載の熱可塑性材料の製品。
【請求項22】
ショッピングバッグ、集光箔、農業用目的に使用されるその他の種類の箔、食品包装、その他の包装並びにその他の種類のバッグ及びサックの中から選択されることを特徴とする、請求項21に記載の製品。
【請求項23】
射出成形により、射出成形された最終又は中間製品に加工されたことを特徴とする、請求項20に記載の熱可塑性材料の製品。
【請求項24】
食品包装、その他の包装、家庭用の若しくは工業用の又は食品及び/若しくは飲料とともに使用する使い捨て物品の中から選択されることを特徴とする、請求項23に記載の製品。
【請求項25】
熱成形により、熱形成された最終又は中間製品に加工されたことを特徴とする、請求項20に記載の熱可塑性材料の製品。
【請求項26】
食品包装、その他の包装、家庭用の若しくは工業用の又は食品及び/若しくは飲料とともに使用する使い捨て物品の中から選択されることを特徴とする、請求項25に記載の製品。
【請求項27】
押出成形によって、押出成形された最終又は中間製品に加工されたことを特徴とする、請求項20に記載の熱可塑性材料の製品。
【請求項28】
工業用目的、建設目的、下記の輸送及び建築工業のための製品、繊維状製品、バンド状製品、下記の織物製品及び不織製品の中から選択されることを特徴とする、請求項27に記載の製品。
【請求項29】
吹込成形によって、吹込成形された最終又は中間製品に加工されたことを特徴とする、請求項20に記載の熱可塑性材料の製品。
【請求項30】
食品包装、その他の包装、家庭用の若しくは工業用の又は食品及び/若しくは飲料とともに使用する使い捨て物品の中から選択されることを特徴とする、請求項29に記載の製品。

【公表番号】特表2009−521534(P2009−521534A)
【公表日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−535485(P2008−535485)
【出願日】平成18年10月16日(2006.10.16)
【国際出願番号】PCT/NO2006/000359
【国際公開番号】WO2007/053024
【国際公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(308028245)
【Fターム(参考)】