説明

有機ELパネルにおける吸湿部材の塗布装置および吸湿部材の塗布方法

【課題】 本発明は、生産性に優れ、かつ封止部材の接着工程前において、封止部材の収納部の底壁部に簡単に吸湿部材を塗布することのできる有機ELパネルを提供すること。
【解決手段】 本発明による有機ELパネルにおける吸湿部材の塗布装置あるいは塗布方法においては、有機EL素子9および吸湿部材8を収容する空間部からなる収納部7Bを備えた封止部材7によって気密的に覆う有機ELパネル1において、封止部材7の収納部7Bに設けられた底壁部7Cの幅方向に沿って粘性を有する吸湿部材8を吐出可能とする吐出孔23を設けたニードル部21を備えた吸湿部材供給機構22を配置することによって、比較的広いエリアの封止部材7に設けられた収納部7Bの底壁部7Cの領域に幅広く吸湿部材8を塗布することができるため、生産効率を高めつつ安定した吸湿部材8の塗布作業を行うことが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一方が透光性の一対の電極により挟持され所定の発光をなす有機EL素子(有機エレクトロルミネッセンス素子)を備えた有機ELパネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の有機ELパネルでは、少なくとも発光層を有する有機層を一対の電極で挟持した有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子を透光性の支持基板(ガラス基板)上に配設し、この有機EL素子を覆うように凹部形状の空間部による収納部を一体に備えるガラス材料からなる封止部材(封止キャップ)によって前記有機EL素子を前記支持基板上に紫外線硬化型の接着剤を介して気密的に封止して構成するとともに、気密的に封止される有機ELパネルの支持基板と封止部材との空間部による収納部内部には、吸湿部材を配設することが知られている。(たとえば、特許文献1を参照)
【0003】
この場合、気密的に封止される有機ELパネルの支持基板と封止部材との空間部による収納部内部に有機EL素子を収容するように配設するとともに、たとえばフッ素系オイルからなる不活性液体中に固体の吸着剤を所定の割合で混合することによって得られるクリーム状の吸湿部材を封止部材の空間部による収納部の底壁部に薄く均一的に塗布するように構成しており、吸湿部材によって気密状態の空間部内の水分を吸収するようにしている。
【特許文献1】特開2003−163076号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところでこの種の有機ELパネルにおいては、たとえば自動車用の表示装置やその他の民生機器などの表示装置では、マルチインフォメーション表示が望まれている近年において、表示部が大型化し、それに伴い前記有機ELパネルも大型化しつつある。これらの有機ELパネルにおける封止部材の空間部による収納部も自ずと大きくなる傾向にあり、吸湿剤を塗布する際に、従来構造においては吸湿部材を塗布するためのディスペンスポンプによって吸湿部材を送り出しニードル部に設けられた吐出孔から吐出しながら平行移動させて封止部材の収納部の底壁部に塗布するようにしている。しかしながら有機ELパネルの幅寸法に対して吸湿部材を塗布するニードル部の吐出孔の幅寸法が小さいために収納部の幅に合わせて移動させながら繰り返して所定の領域に吸湿部材が平均的に塗布されるようにしている。このため、吸湿部材の塗布工程作業において手間を要してしまうという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、従来の問題点に着目し、生産性に優れ、かつ封止部材の接着工程前において、封止部材の収納部の底壁部に極力簡単に吸湿部材を塗布することのできる有機ELパネルを提供することを目的とするとともに、均一的に簡単に吸湿部材を塗布する方法を提供するものであって、少なくとも発光層を含む有機層を一対の電極により狭持してなる有機EL素子を透光性の支持基板上に配設し、前記有機EL素子を空間部からなる収納部を備えた封止部材によって気密的に覆うとともに、前記収納部内に吸湿部材を配設する有機ELパネルにおける吸湿部材の塗布装置において、前記収納部に設けられた底壁部の幅方向に沿って粘性を有する吸湿部材を吐出可能とする吐出孔を設けたニードル部を備えた吸湿部材供給機構を配置し、前記封止部材に設けられた収納部の底壁部と所定の間隔に前記ニードル部の先端部を接近作動させた後、前記吸湿部材の塗布を開始し、かつ前記収納部の底壁部に沿って平行移動した後に前記吸湿部材の塗布作動を停止するように設定してなることを特徴とする有機ELパネルにおける吸湿部材の塗布装置である(請求項1)。
【0006】
また、請求項1に記載の有機ELパネルにおける吸湿部材の塗布装置において、前記吸湿部材供給機構に備えられたニードル部側には、前記封止部材の収納部に設けられた底壁部との隙間間隔を設定するための位置調整駒部を設けてなることを特徴とするものである(請求項2)。
【0007】
また、請求項1または請求項2に記載の有機ELパネルにおける吸湿部材の塗布装置において、前記ニードル部には前記収納部の底壁部の幅方向に沿って長孔状の吐出孔を設けてなることを特徴とするものである(請求項3)。
【0008】
また、請求項1または請求項2の記載の有機ELパネルにおける吸湿部材の塗布装置において、前記ニードル部には前記収納部の底壁部の幅方向に沿って複数個の吐出孔を設けてなることを特徴とするものである(請求項4)。
【0009】
また、前記請求項1から請求項4に記載の有機ELパネルにおける吸湿部材の塗布装置において、前記封止部材に設けられた収納部の底壁部と所定の間隔に前記ニードル部の先端部を接近作動する工程と、この接近移動による工程後に、前記吸湿部材の塗布を開始する工程と、この塗布開始工程後に前記収納部の底壁部に沿って平行移動する工程と、この平行移動完了した後に前記吸湿部材の塗布作動を停止した後に元の位置に復帰する工程とからなることを特徴とする有機ELパネルにおける吸湿部材の塗布方法(請求項5)。
【発明の効果】
【0010】
本発明による有機ELパネルにおける吸湿部材の塗布装置あるいは塗布方法においては、有機EL素子を収容する空間部からなる収納部を備えた封止部材によって気密的に覆う有機ELパネルであって、前記収納部に設けられた底壁部の幅方向に沿って粘性を有する吸湿部材を吐出可能とする吐出孔を設けたニードル部を備えた吸湿部材供給機構を配置し、前記封止部材に設けられた収納部の底壁部と所定の間隔に前記ニードル部の先端部を接近作動させた後、前記吸湿部材の塗布を開始し、かつ前記収納部の底壁部に沿って平行移動した後に前記吸湿部材の塗布作動を停止するように設定してなることにより、比較的広いエリアの封止部材に設けられた収納部の底壁部の領域に幅広く吸湿部材を塗布することができるため、生産効率を高めつつ安定した吸湿部材の塗布作業を行うことが可能となるものであり、これにより初期の目的を達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明では、少なくとも発光層を含む有機層を一対の電極により狭持してなる有機EL素子を透光性の支持基板上に配設し、前記有機EL素子を空間部からなる収納部を備えた封止部材によって気密的に覆うとともに、前記収納部内に吸湿部材を配設する有機ELパネルにおける吸湿部材の塗布装置において、前記収納部に設けられた底壁部の幅方向に沿って粘性を有する吸湿部材を吐出可能とする吐出孔を設けたニードル部を備えた吸湿部材供給機構を配置し、前記封止部材に設けられた収納部の底壁部と所定の間隔に前記ニードル部の先端部を接近作動させた後、前記吸湿部材の塗布を開始し、かつ前記収納部の底壁部に沿って平行移動した後に前記吸湿部材の塗布作動を停止するように設定してなることを特徴とする有機ELパネルにおける吸湿部材の塗布装置である。このように構成することによって、吸湿部材供給機構のニードル部に設けられた吐出孔を収納部に設けられた底壁部の幅方向に沿って形成することにより、従来に比べて幅広く吸湿部材を塗布することができ、生産効率を高めつつ安定した吸湿部材の塗布作業を行うことができる。
【0012】
また本発明の有機ELパネルにおける吸湿部材の塗布装置において、前記吸湿部材供給機構に備えられたニードル部側には、前記封止部材の収納部に設けられた底壁部との隙間間隔を設定するための位置調整駒部を設けてなることにより、吸湿部材の塗布時において位置調整駒部と収納部の底壁部との隙間による寸法に合わせて吸湿部材を塗布する厚み寸法を設定することができ、決められた一定の厚みの状態にて吸湿部材を塗布することができる。
【0013】
また本発明の有機ELパネルにおける吸湿部材の塗布装置において、前記ニードル部には前記収納部の底壁部の幅方向に沿って長孔状の吐出孔を設けてなることにより、長孔状の吐出孔の寸法にほぼ合わせて幅広く吸湿部材を塗布することができるものであり、生産効率を高めつつ良好な吸湿部材の塗布作業を行うことができるという効果がある。
【0014】
また本発明の有機ELパネルにおける吸湿部材の塗布装置において、前記ニードル部には前記収納部の底壁部の幅方向に沿って複数個の吐出孔を設けてなることにより、複数個の吐出孔によって収納部の底壁部の幅方向に沿って幅広く吸湿部材を塗布することができるとともに、生産効率を従来に比べて高めることができ良好な吸湿部材の塗布作業を行うことができるという効果がある。
【0015】
また前述したように有機ELパネルにおける吸湿部材の塗布装置において、前記封止部材に設けられた収納部の底壁部と所定の間隔に前記ニードル部の先端部を接近作動する工程と、この接近移動による工程後に、前記吸湿部材の塗布を開始する工程と、この塗布開始工程後に前記収納部の底壁部に沿って平行移動する工程と、この平行移動完了した後に前記吸湿部材の塗布作動を停止した後に元の位置に復帰する工程とからなることを特徴とする有機ELパネルにおける吸湿部材の塗布方法を採用することにより、一連の吸湿部材の塗布動作として連続的に行うことが可能となるため、作業効率を高めつつ安定した吸湿部材の塗布作業を行うことができるという効果がある。
【実施例1】
【0016】
以下、本発明に係る有機ELパネルの構造として、セグメント型の有機ELパネルを例にして添付図面を参照にして説明する。
【0017】
図1と図2を用いて第1実施例の有機ELパネルの構造について説明する。有機ELパネル1は、透光性の支持基板(ガラス基板)2,透明電極3,絶縁層4,有機層5,背面電極6と封止部材(封止キャップ)7および吸湿部材8とから構成されている。
【0018】
透光性の支持基板2は、長方形形状からなるガラス基板によって形成されている。
【0019】
透明電極3は、ガラス基板からなる透光性の支持基板2上にITO等の導電性材料によって構成され、日の字型の表示セグメント部3Aと、個々の表示セグメント3Aからそれぞれ引き出し形成されたリード部3Bと、リード部3Bの終端部に設けられる電極部3Cとを備えている。電極部3C群は、支持基板2の一辺に集中的に配設されている。
【0020】
絶縁層4は、ポリイミド系などの絶縁材料からなり、表示セグメント部3Aに対応した窓部4Aと、背面電極6の後述する電極部に対応する切り欠き部4Bとを有し、発光領域の輪郭を鮮明に表示するため、透明電極3の表示セグメント部3Aの周縁部と若干重なるように窓部4Bが形成され、また、透明電極3と背面電極6の絶縁を確保するためにリード部3B上を覆うように配設されている。
【0021】
有機層5は、少なくとも発光層を有するものであれば良いが、本発明の実施例においては正孔注入層,正孔輸送層,発光層および電子輸送層を順次積層して形成してなるものである。有機層5は、絶縁層4における窓部4Aの形成箇所に対応するように所定の大きさをもって配設されている。
【0022】
背面電極6は、アルミ等の非透光性の導電性材料から構成され、有機層5上に配設される。背面電極6は、透明電極3における各電極部3Cが形成されるガラス基板からなる支持基板2の一辺に設けられるリード部6Aと電気的に接続される。なお、リード部6Aの終端部には、電極部6Bが設けられ、背面電極6のリード部6Aおよび電極部6Bは透明電極3と同材料により形成されている。
【0023】
以上のように、支持基板2上に前述した透明電極3と絶縁層4と有機層5と背面電極6とを順次積層し積層体を形成することによって有機EL素子9が構成される。
【0024】
また封止部材7の材料としては、ガラス材料から構成されるもので、長方形形状の封止部材7には、支持基板2と当接する外郭周縁位置に設けられた当接部7Aと、この当接部7Aの内側に位置して有機EL素子9を収納するための空間部からなる収納部7Bとが備えられており、透明電極3の電極部3Cと背面電極6の電極部6Bとが封止部材7側から露出するように支持基板2よりも若干小さい大きさに設定されて形成されるともに、この封止部材7の当接部7A箇所が、紫外線硬化型の接着剤10を介して支持基板2と接着固定され、有機EL素子9が密封状態にて維持される。
【0025】
また吸湿部材8は、支持基板2上に配設された有機EL素子9と対向する面である封止部材7の空間部からなる収納部7Bの底壁部7C側に配設される。この場合、吸湿部材8としては、たとえば活性アルミナ,モレキュラーシーブス,酸化カルシウムおよび酸化バリウムなどの物理的あるいは化学的に水分を吸着する吸着剤を有するもので、吸着剤が流動しない程度の粘性を有するクリーム状部材あるいはゲル状部材であり、前述したように有機EL素子9を支持基板2と封止部材7によって密封保持する際に、有機EL素子9と対向して配置される吸湿部材8の厚みが接触しない程度の寸法となるように設定される。
【0026】
次に、クリーム状あるいはゲル状の吸湿部材8を塗布する方法および塗布する装置について、図3から図5を用いて説明する。図3は支持基板2側に配設される有機EL素子9と対向して設けられる封止部材7に塗布される吸湿部材8を略均一な厚さとなるように形成するための塗布装置20(後述するニードル部を備えた吸湿部材供給機構)を示すものであり、この実施例による塗布装置20としては、ニードル部21を備えた吸湿部材供給機構22(ディスペンスポンプ)を配置して構成している。
【0027】
塗布装置20には、粘性を有する吸湿部材8を所定量吐出するための吸湿部材供給機構22を備えるとともに、この吸湿部材供給機構22には、吸湿部材8を吐出する吐出孔23を設けたニードル部21を備えており、この実施例においては、封止部材7に設けられた収納部7Bの底壁部7Cの幅方向に沿い、その塗布幅の幅寸法に合わせて長孔状の吐出孔23を設けて構成している。
【0028】
また、塗布装置20の吸湿部材供給機構22は、図示はしないがアクチュエータやサーボモータなどから構成されるX−Y−Z移動手段によって横(X),縦(Y)および高さ(Z)方向に移動できるように構成されている。なお、塗布装置20は真空引きされエアが混入しないように設けられるものであり、かつ窒素雰囲気中となる吸湿部材塗布室内に配設されて吸湿部材8の塗布工程が行われる。
【0029】
図4および図5は、封止部材7に設けられた収納部7Bの底壁部に塗布装置20を用いて吸着部材8を塗布する状態を示すものである。塗布装置20の吸湿部材供給機構22に設けられたニードル部21の底面側には、封止部材7の収納部7Bの底壁部7Cに対応した平坦面部21Aを有し、この平坦面部21Aの略中央位置には前述したように吸湿部材8を吐出する長孔状の吐出孔23が設けられている。またこの実施例では、吸湿部材供給機構22のニードル部21側には、封止部材7の収納部7Bに設けられた底壁部7Cとの隙間S間隔を設定するための位置調整駒部24が設けられている。この場合、位置調整駒部24が封止部材7の収納部7Bの底壁部7Cと突き当て配置された際に、位置調整駒部24の移動時においてニードル部21が浮き上がって隙間S間隔が変動してしまうことを防ぐためにスプリング25Aによって収納部7Bの底壁部7C側に押圧する押圧手段25が設けられている。
【0030】
上述した構成からなる第1実施例では、有機ELパネル1の製造過程において、吸湿部材8の塗布工程として、まず、吸湿部材供給機構22は、前記X−Y−Z移動手段によって、まず封止部材7の収納部7Bの底壁部7C側に吸湿部材供給機構22を下降させて、ニードル部21の平坦面部21A部分と収納部7Bの底壁部7Cとの距離を所定の隙間S間隔となるようにニードル部21を底壁部7Cに近接配置させる。次に、ニードル部21の吐出孔23から粘性を有する吸湿部材8を吐出させ平坦面部21Aと収納部7Bの底壁部7Cとの隙間Sに吸湿部材8を供給するとともに、前記X−Y−Z移動手段によって、ニードル部21を収納部7Bの底壁部7Cに対してX方向に終点まで平行移動させることによって、吸湿部材8をニードル部21の平坦面部21Aによって平らにならしながら収納部7Bの底壁部7Cに隙間Sの厚さを一定に保つように塗布することができ、ほぼ平坦状でかつ薄く形成することができる。
【0031】
この際、吸湿部材供給機構22による吸湿部材8の供給方法としては、ニードル部21のX方向移動における終点の手前で、ニードル部21の吐出孔23からの吸湿部材8の吐出(供給)を停止させ、この状態にてニードル部21を前記終点まで移動させた後、吸湿部材供給機構22(ニードル部21)を上昇させる。従ってクリーム状もしくはゲル状の吸湿部材8は、ニードル部21の終点である停止位置において、ニードル部21の平坦面部21Aの表面張力による糸引き現象を防止することが可能となるため、盛り上がりを抑制しつつ吸湿部材8をさらに均一的でかつ薄く形成することができる。
【0032】
また第1実施例では、有機ELパネル1に設けた封止部材7の底壁部7Cに塗布する吸湿部材8の塗布幅に合わせてニードル部21に設けた長孔状の吐出孔23を設定することにより、一サイクルの工程にて吸湿部材8を塗布することができるものであり、簡単な工程にて吸湿部材8の塗布作業を行うことができるものであり、場合によっては、有機ELパネルの塗布幅が広くなってしまった場合、吸湿部材8の供給作動を複数に分けて供給するようにしても良いものである
【0033】
なお、吸湿部材8を薄く形成することは、外部応力によって支持基板2および封止部材7が変形する場合があるが、このような場合において、吸湿部材8が有機EL素子9と接触しないレベルに設定してあれば良いものであり、この場合、吸湿部材8において前述した糸引き現象を未然に抑制することによって部分的に厚みが不均一とならないレベルであれば良い。
【実施例2】
【0034】
また図6は、本発明の第2実施例を示すものであり、この実施例では、塗布装置20におけるニードル部21には、有機ELパネル1に設けた封止部材7の底壁部7Cの幅方向に沿って複数個からなる吐出孔23Aが設けられるとともに、ニードル部21の底面側には、進行方向側に向けてテーパ状からなる平坦面部21Bが設けられている。
【0035】
このようなニードル部21を用いても吸湿部材8を前記底面に厚さが略均一でかつ薄く形成することができるものであり、しかも複数個からなる吐出孔3Aによって封止部材7の底壁部7Cの幅方向に沿って一挙に吸湿部材8を塗布することが可能となるため、塗布効率を高めることができ、塗布工程における作業能率を高めることが可能である。
【0036】
なお本発明は上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。たとえば第1実施例においては、ニードル部21には、有機ELパネル1に設けた封止部材7の底面部7Cの幅方向に沿って長孔状の吐出孔23を設けて幅広く吸湿部材8を塗布可能に形成しており、また第2実施例においては、ニードル部21には、有機ELパネル1に設けた収納部7Bの底壁部7Cの幅方向に沿って複数個からなる吐出孔23Aを設けて幅広く吸湿部材8を塗布可能に形成していたが、長孔形状と丸孔形状あるいは角穴形状からなる吐出孔の組み合わせによる吐出孔部を形成して吸湿部材8を塗布するように構成しても同様の効果を有するものであり、また有機ELパネル1の大きさ、すなわち吸湿部材8を塗布するエリアが広い場合などにあっては、その塗布領域に合わせて位置を変更しながら平らに塗布することができ、この一連の吸湿部材8の塗布動作として連続的に行うことが可能となるため、作業効率を高めつつ安定した吸湿部材8の塗布作業を行うことができる。
【0037】
なお、本発明の各実施例では、封止部材7としてガラス材料から構成するものであったが、金属製の封止部材を用いても良いものであり、また吸湿部材8の塗布量や塗布する厚み寸法あるいは塗布する面積など有機ELパネルの大きさに合わせて適宜設定すればよいものである。
【産業上の利用可能性】
【0038】
また、前述した実施例においては、セグメント型の有機ELパネルを例にして封止部材の補強部の実装構造を説明したが、マトリクス型の有機ELパネルであっても実施可能であり、また有機ELの発光色も適宜設定することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の第1実施例における有機ELパネルを示す分解斜視図である。
【図2】図2は、図1の有機ELパネルの実装構造を示す断面図である。
【図3】図3は、有機ELパネルの封止部材と吸湿部材の塗布装置とを示す正面図である。
【図4】図4は、図3の塗布装置による吸湿部材の塗布状態を示す概要図である。
【図5】図5は、図4の塗布装置のニードル部と封止部材の要部を示す側面図である。
【図6】本発明の第2実施例における有機ELパネルの封止部材と吸湿部材の塗布装置との要部を示す側面図と底面図である。
【符号の説明】
【0040】
S 隙間
1 有機ELパネル(表示パネル)
2 支持基板(ガラス基板)
3 透明電極
3A 表示セグメント部
3B リード部
3C 電極部
4 絶縁層
5 有機層
6 背面電極
6A リード部
6B 電極部
7 封止部材
7A 当接部
7B 収納部
7C 底壁部
8 吸湿部材
9 有機EL素子
10 接着剤
20 塗布装置
21 ニードル部
21A 平坦面部
22 吸湿部材供給機構
23 吐出孔
24 位置調整駒部
25 押圧手段
25A スプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも発光層を含む有機層を一対の電極により狭持してなる有機EL素子を透光性の支持基板上に配設し、前記有機EL素子を空間部からなる収納部を備えた封止部材によって気密的に覆うとともに、前記収納部内に吸湿部材を配設する有機ELパネルにおける吸湿部材の塗布装置において、前記収納部に設けられた底壁部の幅方向に沿って粘性を有する吸湿部材を吐出可能とする吐出孔を設けたニードル部を備えた吸湿部材供給機構を配置し、前記封止部材に設けられた収納部の底壁部と所定の間隔に前記ニードル部の先端部を接近作動させた後、前記吸湿部材の塗布を開始し、かつ前記収納部の底壁部に沿って平行移動した後に前記吸湿部材の塗布作動を停止するように設定してなることを特徴とする有機ELパネルにおける吸湿部材の塗布装置。
【請求項2】
前記吸湿部材供給機構に備えられたニードル部側には、前記封止部材の収納部に設けられた底壁部との隙間間隔を設定するための位置調整駒部を設けてなることを特徴とする請求項1に記載の有機ELパネルにおける吸湿部材の塗布装置。
【請求項3】
前記ニードル部には前記収納部の底壁部の幅方向に沿って長孔状の吐出孔を設けてなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の有機ELパネルにおける吸湿部材の塗布装置。
【請求項4】
前記ニードル部には前記収納部の底壁部の幅方向に沿って複数個の吐出孔を設けてなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の有機ELパネルにおける吸湿部材の塗布装置。
【請求項5】
前記請求項1から請求項4に記載の有機ELパネルにおける吸湿部材の塗布装置において、前記封止部材に設けられた収納部の底壁部と所定の間隔に前記ニードル部の先端部を接近作動する工程と、この接近移動による工程後に、前記吸湿部材の塗布を開始する工程と、この塗布開始工程後に前記収納部の底壁部に沿って平行移動する工程と、この平行移動完了した後に前記吸湿部材の塗布作動を停止した後に元の位置に復帰する工程とからなることを特徴とする有機ELパネルにおける吸湿部材の塗布方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−48944(P2006−48944A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−223913(P2004−223913)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(000231512)日本精機株式会社 (1,561)
【Fターム(参考)】