説明

木製フェンス

【課題】 木製材料を容易に交換でき、安価に構築できかつ傾斜地においても構築し得る木製フェンスを提供する。
【解決手段】 支柱30によって横ビーム10が所定の高さに配置され、この横ビームに木製の縦材20を固定してフェンスFを構築する。横ビームは、適宜間隔で穿設された複数の貫通孔13を有し、この複数の貫通孔のうち任意の貫通孔を挿通する支持部材40を介して支柱に支持される。縦材は、横ビームの貫通孔に挿通された固定部材50により固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面の主たる構成部分を木製にしてなる木製フェンスに関し、特に、間伐材を利用してなるものに関するものである。
【背景技術】
【0002】
道路の路側に設けられる防護用フェンスや丘陵地における小動物の侵入防止フェンスは、金属製の支柱に金網を張設するものが一般的であり、その強度や耐用期間を重点としたものであった。そして、高速道路においては、道路の両側にこれらのフェンスが連続して設けられることがあり、決して景観の良い環境ではなかった。また、コンクリート塀に色彩を加え、景観を良くする工夫がされている場合もあるが、いずれにしても無機質で人工的な印象が強くならざるを得なかった。
【0003】
そこで、最近では、木製ビームを使用する防護柵(特許文献1)や表面に木質材を被覆部材とする防護柵(特許文献2)などが開発されている。前者の技術は、道路の路側に沿って立設される支柱の内側にビーム支持用ブラケットが設けられ、かつ、このブラケットには相隣り合う支柱に向けて開口する筒状カバーが設けられており、各支柱からそれぞれ延伸された木材ビームの端部を相互に突き合わせた状態で上記筒状カバーが端部を覆うように連結する構成であって、木材ビームの先端が筒状カバーに嵌装された状態でボルトが挿通され、ナットとの締着によって固定されるものであった。また、後者の技術は、所定の間隔で配置された支柱の間に、上中下3段の横梁が連結され、この横梁のうち上下について縦桟が連結されて格子状に構成されているものであって、各部材(支柱、横梁および縦桟)の表面には、いずれも木質材が接着されているものである。
【0004】
他方、環境面においては、炭素固定による地球温暖化の防止や、再生産が可能な資源として循環型社会の形成へ貢献するために、木材の利用が注目されており、木材の利用が積極的に推奨されつつある。その一環として植林事業において間伐材の使用も優先され、公共事業においても優先的に利用する計画がなされるようになっている(非特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−100384号公報(4−5頁、図1−図3)
【特許文献2】特開平8−302631号公報(2−3頁、図1)
【非特許文献1】平成16年3月愛知県発行「あいち木づかいプラン−木材利用促進に向けた取組計画(平成16年度〜18年度)」(1頁・14−15頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の従来技術は、いずれも防護柵であるために十分な強度が要求され、その取付構造が複雑なものとならざるを得ないものであった。特に、前者の従来技術にあっては、木製ビームを各支柱に固定する構成であるため、木製ビームの寸法に所定の精度が要求され、後者の従来技術にあっては、各部材に木質材が接着されているため、これらを除去することは、すなわち、各部材を交換することを意味し、横梁、縦桟のみならず支柱をも交換することは非常に煩瑣であった。従って、これらの防護柵は、木製部分の交換を予定したものではなかった。しかし、使用する材料が木製であるため、長期間の使用により腐食し、または虫食いにより荒廃するものであり、防虫効果や防腐効果を有する塗装を施したとしても、金属製部材ほどの長期間の耐用年数を得ることができず、結局のところ、これらを木製ビームまたは木質材を取り外すことは難しく、交換するとすれば、時間と労力を要するものとなっていた。そこで、交換を容易になし得る構造のフェンスが切望されている。
【0006】
また、上記従来技術は、いずれも防護柵としての利用が前提であることから、木製部材をビームまたは横梁として用いるものである。しかし、景観を良くするためには、縦材として使用することが好ましく、しかも、所定の高さのフェンスを構築する場合は、木製ビームや横梁の数を増加せざるを得ず、この場合の交換作業は一層の時間と労力を要するものとなっていた。さらに、木製フェンスを設置すべき場所が傾斜地である場合には、その勾配に沿って設置できる設計をしなければならなかった。
【0007】
なお、公共工事において間伐材が使用されている例の中には、眩光防止柵とするものがあったが、この場合、杭のように地中に打ち込む方法によるか、または、構築された基礎に固定的に立設される方法によるものと予想されるところ、その交換は容易ではなく、また、固定作業に長時間を要し、広範囲に設けることは難しいものであった。
【0008】
本発明は、上記諸点にかんがみてなされたものであって、その目的とするところは、木製材料を容易に交換でき、安価に構築できかつ傾斜地においても構築し得る木製フェンスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明は、所定の高さに配置される横ビームに木製の縦材を固定してなるフェンスであって、横ビームは、適宜間隔で穿設された複数の貫通孔を有し、この複数の貫通孔のうち任意の貫通孔を挿通する支持部材を介して支柱に支持されてなる横ビームであり、縦材は、上記横ビームの貫通孔に挿通された固定部材により固定されてなる縦材であることを特徴とする木製フェンスを要旨としている。この構成により、支柱に支持される横ビームの貫通孔に挿通された固定部材によって縦材を固定することにより、フェンス表面を木製の縦材で構成することができ、しかも、支柱は、横ビームの貫通孔のうち任意のものを選択して支持部材によって支持されることから、支柱との連結を予定する貫通孔を予め横ビームに穿設する必要がない。また、固定部材は、横ビームの貫通孔の全部に装着されるものではなく、適宜間隔を有して選択された貫通孔に固定部材を装着することができ、この固定部材によって固定される縦材は、所望の間隔を有して配置することができる。
【0010】
上記発明において、支持部材を、支柱および横ビームを同時に貫通できる貫通ボルトと、この貫通ボルトに螺合するナットとで構成された支持部材とすることができる。この構成によれば、横ビームは上記貫通ボルトによって支柱に支持されることとなり、支柱の軸線方向と横ビームの軸線方向が直交する状態で支持するのみならず、鋭角に支持することも可能となる。
【0011】
また、上記各発明において、横ビームは、少なくとも一つの面を鉛直平面に沿って配置されてなる断面略L字形または略コ字形の長尺な横ビームであり、前記貫通孔は、横ビームの長手方向に一または二以上に整列して上記一つの面に穿設してなる貫通孔群である構成とすることができる。この場合、鉛直平面に沿った横ビームの面に縦材を当接させることにより、縦材の固定状態を一定にすることができ、その面に整列される貫通孔から、所望の間隔に合致したものを選択することにより、縦材の間隔を調整することができる。
【0012】
さらに、横ビームは、横ビーム本体と、この横ビーム本体を連結する継手部材とで構成された横ビームであり、上記横ビーム本体は、断面略L字形または略コ字形の金属製部材で構成され、少なくとも両端付近において上記金属部材の各面に穿設された連結用貫通孔を有する横ビーム本体であり、上記継手部材は、上記金属部材の各面に当接する相似形の金属部材で構成され、その各面に複数穿設された連結用貫通孔を有する短尺の継手部材であり、連結すべき2つの横ビーム本体の両端付近の貫通孔と継手部材の貫通孔とを同時にボルトで連結してなる構成とすることができる。このような構成によれば、複数の横ビーム本体を連結することで長尺な横ビームを構成することができ、その連結が簡易なものとなる。なお、この場合、横ビーム本体は、鉛直平面に沿って配置される面に前記固定用貫通孔を除く複数の貫通孔が一または二以上に整列して穿設してなる貫通孔群を有する横ビーム本体である構成とすることにより、横ビーム本体を連結するための貫通孔とは異なる貫通孔によって縦材を固定することができ、その固定は上述のように所望の間隔を有する状態とすることができる。
【0013】
また、本発明は、鉛直方向に立設される複数の支柱と、この複数の支柱の間にブラケットを介して所定の高さに配置される横ビームと、この横ビームに木製の縦材を固定してなるフェンスであって、横ビームは、断面略L字形または略コ字形の長尺な金属製部材で構成され、該金属部材の直交する2つの面に複数の貫通孔を有する横ビームであり、ブラケットは、貫通孔を有する上記横ビームの2面のうち片方の面に当接しつつ連結される横ビーム連結部と、上記支柱の表面に当接しつつ連結される支柱連結部とを備えたブラケットであり、縦材は、上記横ビームの貫通孔に挿通された固定部材により固定されてなる縦材であり、ブラケットが横ビームを連結するとき、貫通孔を有する該横ビームの2面のうちブラケットが連結されていない他方の面が鉛直平面に沿った向きとなるように配置され、この貫通孔に固定部材が挿通されて上記縦材が固定されてなることを特徴とする木製フェンスを要旨としている。上記のような構成によれば、横ビームを構成する金属部材の上記片方の面を使用し、ブラケットを介して支柱に当該横ビームを支持することができるとともに、他方の面に縦材を固定することができることから、ブラケットの装着位置すなわち支柱に支持される個所に影響を受けることなく、縦材を横ビームに固定することができる。
【0014】
上記発明において、横ビームは、前記金属部材の2つの面のうち、少なくとも鉛直平面に沿って配置される面に、適宜間隔で長手方向に整列する貫通孔群が一列または二列以上穿設された横ビームである構成とすることができる。この構成によれば、縦材は上記貫通孔群の任意の貫通孔を使用することにより、縦材を所望の間隔で固定することができる。
【0015】
この場合、上記貫通孔群を、前記横ビームの長手方向に連続する単一の長孔で構成された貫通孔群とすることができる。このような構成によれば、縦材を固定する位置を自由に選択することができる。
【0016】
上記のいずれかの発明において、固定部材を、縦材および横ビームを同時に貫通できる貫通ボルトと、この貫通ボルトに螺合するナットとで構成された固定部材とすることができる。この構成によれば、横ビームに穿設される貫通孔は、上記ボルトが挿通できる単なる丸孔または長孔であればよく、その構成が簡略なものとなる。また、ボルトとナットの螺合操作によって縦材の固定およびその解除ができる。
【0017】
また、上記発明において、固定部材を、前記縦材を貫通する線状材と、この線状材の挿通を許容する挿通孔を有しかつ先端に雄ネジが刻設されたボルトと、このボルトに螺合するナットとで構成された固定部材とすることができる。この構成によれば、個々の縦材をそれぞれ固定部材で固定する必要がなく、数本分を一括して横ビームに固定することができる。さらに、上記に代えて、前記縦材の表面側を係止するとともに、両端に雄ネジが刻設された係止部材と、この係止部材の雄ネジに螺合するナットとで構成された固定部材とすることによっても同様に、数本分を一括して横ビームに固定することができる。なお、この場合、固定部材は、係止部材の挿通を許容する挿通孔を有しかつ先端に雄ネジが刻設されたボルト、および、このボルトに螺合するナットを備えた固定部材であることが好ましい。すなわち、係止部材は両端のみでなく、その中間の位置においても横ビームと連結することが可能となり、固定部材による縦材の固定を強化し得る。
【0018】
上記のように、複数の縦材を一括して固定する場合には、その縦材は、前記線状材または前記係止部材によって複数を同時に貫通または係止された縦材とする構成としてもよい。これは、複数の縦材を一つの塊状と考えた場合、その塊ごとに横ビームとの固定および離脱を可能にし、木製フェンスの構築または縦材の交換などの各作業を容易にするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、支柱によって支持される横ビームに木製の縦材を固定することによって容易に木製フェンスを構築できる。また、当該フェンスに使用される木製部材すなわち縦材は、横ビームとの固定を解除することによって容易に取り外されることとなるため、腐食等により交換すべき縦材を適宜かつ個別に交換することができる。さらに、横ビームには複数の貫通孔が穿設されており、この複数の貫通孔を選択することにより、任意の位置に縦材を固定できるので高い寸法精度が要求されることはない。
【0020】
また、傾斜地に木製フェンスを構築する場合には、傾斜地の適当な場所に支柱を立設することで、この支柱に支持される横ビームを傾斜地の勾配に沿って斜状に設けることができ、横ビームを斜状に構成した状態において縦材を鉛直方向に固定することができ、これにより、傾斜地においても平坦地と同様の木製フェンスを構築することができることとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本発明の第1の本実施形態は、図1に示すように、木製フェンスFは、横ビーム10に木製の縦材20が固定されたものである。この横ビーム10は、適宜間隔で立設された支柱30によって支持されており、この図のように、平坦な場所において構築されるフェンスFにあっては、横ビーム10は、長手方向を水平方向にして上下2本が平行して支持されている。また、縦材20は、上記2本の横ビーム10の両方に接続するように固定され、長手方向を鉛直方向にして設けられるものである。本実施形態のフェンスFは、縦材20のみが木製材料で構成され、横ビーム10および支柱30はいずれも金属製材料で構成されている。なお、フェンスFの表面側のほとんどが縦材20によって構成されることから、横ビーム10および支柱30を金属製材料で構成したとしても全体として木製のフェンスFであると認識し得るものである。また、支柱30は、鋼管を使用することで軽量化が可能であり、その表面を木製部材に類似する色の塗料によって着色することによって、木製の縦材と違和感を生じさせないことも可能となる。
【0022】
上記横ビーム10は、図2に示すように、断面略L字形の金属製部材で構成され、2つの面11,12を有するものである。この横ビーム10の片面11には、長手方向に一列に並んだ複数の貫通孔13が穿設されており(この貫通孔13の全体を貫通孔群と呼ぶ)、この貫通孔13を利用して縦材20および支柱30との連結を可能にしている。すなわち、横ビーム10と支柱30とは、支持部材40によって連結されるものであり、この支持部材40を構成する貫通ボルト41が、支柱30を貫通するとともに、一つの貫通孔13をも貫通したうえでナット42が螺合するものである。また、横ビーム10と縦材20とは、固定部材50によって固定されるものであり、この固定部材50を構成する貫通ボルト51が、縦材20を貫通するとともに、一つの貫通孔13をも貫通したうえでナット52が螺合するものである。なお、上記両ナット42,52には、横ビーム10の貫通孔13の周辺に締着力をさせるため座金43,53が使用されている。
【0023】
上記のような構成であるから、縦材20および支柱30は横ビーム10の正面(片面11)において、同一の垂直平面に沿って配置されることとなる。すなわち、支柱30を、その長手方向が鉛直方向となるように立設し、この支柱30の表面に横ビーム10の片面11を当接するようにして、当該横ビーム10と支柱30とを連結することにより、横ビーム10の片面11が鉛直平面に沿って配置される。この状態に配置された横ビーム10の片面11に、さらに縦材30を当接させつつ固定することにより、縦材30を上記片面11の表面に装着することができる。
【0024】
ここで、図3に示すように、2本の横ビーム10a,10bを上下二個所に平行に設け、この両横ビーム10a,10bにおいて縦材20を二個所で固定することにより、縦材20の長手方向を鉛直方向に向けて整列させることが可能となる。すなわち、支柱10によって支持される2本の横ビーム10a,10bは、上述のように、いずれも断面略L字形の片面11a,11bを鉛直平面に沿って配置されることから、その片面11a,11bに設けられる貫通孔13a,13bは、同一の鉛直平面に存在することとなり、その貫通孔13a,13bを使用することによって、縦材20を二個所で固定できることとなる。そして、両横ビーム10a,10bの貫通孔13a,13bのうち、鉛直方向に一致するものを選択することにより、縦材20の長手方向は鉛直方向となるのである。
【0025】
本実施形態は、上記のような構成であるから、フェンスFの強度は支柱30およびこれに支持される横ビーム10によって保持され、フェンス全体の外観は縦材20によって構成されることとなるから、優れた意匠性を有することとなる。しかも、横ビーム10の片面11a,11bを正面とすることにより、縦材20がフェンスFの正面側に整列されることとなるから、その意匠性は一層優れた者となる。さらに、上記縦材20としては、間伐材を使用することができ、当該フェンス構築により、多数の間伐材を使用することができる。また、これら間伐材を使用した木製の縦材20が腐食等により交換すべき場合には、横ビーム10a,10bとの固定を個別に解除することで取り外しが容易となり、それらの交換が簡便である。
【0026】
次に、上記構成のフェンスFを構築する方法について説明する。設置すべき場所が平坦である場合は、図4(a)に示すように、まず、所定間隔で支柱30を立設する。この支柱30の立設は、厳密な距離の間隔を設ける必要はなく、横ビーム10を支持するために必要となる程度の間隔を有する状態であればよい。なお、上記支柱30の立設は、杭を地中に圧入する方法によることもできるが、予め基礎部を構築し、当該基礎部によって支柱を固定する方法によることができる。いずれの場合においても本発明の内容を左右するものではない。
【0027】
支柱30が立設できれば、図4(b)に示すように、この支柱30に2本の横ビーム10a,10bを連結する。この連結は、上述の横ビーム10a,10bの片面11a,11bに穿設された貫通孔13a,13bを使用し(図3参照)、支持部材40(図2)によりなされる。また、2本の横ビーム10a,10bは、長手方向を水平にして両者が平行な状態で支持されるように上記連結がなされる。このようして支持された横ビーム10a,10bは、その片面11a,11bが鉛直平面に沿った状態で配置されることとなる。
【0028】
さらに、図4(c)に示すように、上記横ビーム10a,10bの片面11a,11bの貫通孔13a,13bを使用し、長手方向を鉛直方向となるようにして縦材20を固定する。このときの固定は、固定部材50が上記貫通孔13a,13bを貫通するようにしてなされる。そして、固定部材50が貫通される貫通孔13a,13bは、その全部が使用される場合に限らず、所定の間隔を有するように選択しつつ固定部材50を挿入することができる。
【0029】
そこで、横ビーム10に設けられた貫通孔13と固定部材50との関係を説明すれば、図5(a)に示すように、貫通孔13は、一列に等間隔で整列して設けられ貫通孔群が形成されており、相隣接する2個の貫通孔13c,13dの間隔をL1が縦材20の幅寸法よりも短く構成されている場合には、一つの貫通孔13cを使用して縦材20を固定したとき、これに隣接する貫通孔13dを使用して縦材20を固定することができないこととなる。この場合、中間に1個の貫通孔13fを挟んで両側の貫通孔13e,13gを使用することができる。さらに、縦材20の幅寸法が、上記両側の貫通孔13e,13gの間隔L2よりも大きい場合には、中間に2個の貫通孔13i,13jを挟んだ両側の貫通孔13h,13kを使用することができるのである。この場合、上記両側の貫通孔13i,13jの間隔L3よりも縦材20の幅寸法が小さければ、設置が可能となる。なお、横ビーム10に固定された際、隣接する縦材20の間隔を調整する場合にも、使用すべき貫通孔13が適宜選択されることとなる。
【0030】
また、図5(b)に示すように、長手方向に沿って二列の貫通孔群を有する横ビーム10を使用することも可能である。個々の貫通孔群には、それぞれ等間隔で丸孔の貫通孔13が穿設されている。これにより、一列のみの貫通孔群とした場合(図5(a))よりも、使用すべき貫通孔13の間隔を細かく調整でき、縦材20の幅寸法に応じて、または、周囲の景観とのバランスによって、異なる間隔で縦材20を固定することができる。
【0031】
上述したような構築方法によれば、個々の部材を順次連結することにより、フェンスFを構築することが可能となる。また、個々の部材の連結は特殊な器具を必要とするものではないから、安価かつ容易に構築することが可能となる。ここで、上記構築方法は、構築現場における構築方法であるが、横ビーム10a,10bに縦材20を予め構成したものを構成し、これを構築現場に立設した支柱30に支持させる方法も可能である。この場合、構築現場では、立設された支柱30に対して横ビーム10a,10bを連結する工程のみが行われることとなるものである。
【0032】
次に、傾斜地におけるフェンスFの構築方法について説明する。基本的な構築手順は、上述の平坦な場所におけると同様である。すなわち、図6に示すように、傾斜地の適宜位置に支柱30を立設し(図6(a))、この支柱30によって横ビーム10a,10bを支持させ(図6(b))、最後に、横ビーム10a,10bに縦材30を固定することによって(図6(c))、全体として木製のフェンスFが構築される。上記のように傾斜地に構築する場合は、支柱30の長手方向に対し、横ビーム10a,10bの長手方向は直交方向よりも鋭角な方向となる。しかしながら、横ビーム10a,10bは、同じ方向に平行に配置されることとなるから、縦材20を上下方向に配置される2本の横ビーム10a,10bによって固定することで、図示のように、縦材20をその長手方向を鉛直方向に向けた状態で固定することができる。この場合、同じ長さの縦材20を使用すれば、横ビーム10a,10bの傾斜と同じ角度で傾斜するフェンスを構築することができることとなる。
【0033】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態は、支柱30に対する横ビーム10の支持にブラケット60を使用するものである。このブラケット60は、図7(a)に示すように、L字形の金属製部材で構成され、直交する2片61,62のそれぞれに貫通孔63,64が穿設されている。上記2片61,62のうち、一方61は横ビーム連結部であり、他方62は支柱連結部として機能するものである。このブラケット60の横ビーム連結部61には、複数の貫通孔63を穿設する構成であってもよい。この場合、図7(b)に示すように、横ビーム連結部61は、横ビーム10の長手方向に長尺な構成とすることで、当該長手方向に整列する複数の貫通孔63を設けることができる。
【0034】
上記のような各構成とすることにより、図7(c)に示すように、ブラケット60を介在させて横ビーム10を支柱30に支持させることができる。ここで、横ビーム10を構成する両面11,12に、それぞれ複数の貫通孔13,14を設けることにより、いずれか一方の面を選択し、その面12をブラケット60に連結すれば、他方の面11に縦材20を連結し得ることとなる。そして、ブラケット60に横ビーム10を連結する際には、横ビーム連結部61に横ビーム10の一方の面12を当接した状態でボルト65およびナット66により連結されるものである。なお、図7(b)に示したブラケット60を使用する場合には、横ビーム10との連結の際、横ビーム10に穿設された貫通孔14との位置を調整しながらブラケット60との連結を行うことができる。また、横ビーム10の一方の面12に複数の貫通孔14が穿設されれば、横ビーム10とブラケット60を連結すべき位置が自由に選択し得ることとなる。
【0035】
本実施形態は、上記のとおりであるから、横ビーム10を構成する断面略L字形部材のうち、支柱30による支持を可能とするためのブラケット60を連結する部分と、縦材20を固定すべき部分とを異ならせることができ、予め立設した支柱30の位置に関係なく縦材20を固定することができる。従って、地盤の状態や周辺構築部の存在などにより、適当な場所に支柱30を立設できない場合であっても、横ビーム10を支持することができれば、フェンスの構築が可能となるものである。なお、本実施例の構築方法は、ブラケット60を介して支柱30に横ビーム10を支持される工程を除いて第1の実施形態と同様である。
【0036】
本発明の実施形態は以上のとおりであるが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態をとることができる。例えば、横ビーム10は、単一部材により所定の長さに加工してなる構成とすることができるが、図8に示すように、継手部材70を使用して、比較的短尺な横ビーム本体80を連続させることによって長尺な1本の横ビームを構成することができる。上記継手部材70は、その全体が断面略L字形に構成された金属部材であり、この継手部材70を連続すべき横ビーム本体80,80の両端に重ねるように装着することで、当該横ビーム本体80,80を連続することができるものである。上記装着には、ボルトおよびナットが使用され、継手部材70には、このボルトが挿通できる貫通孔が穿設されている。なお、横ビーム本体80,80は、上述の横ビーム10と同様の構成であり、片面81には、複数の貫通孔83が穿設され、実施形態に応じて他方82にも貫通孔が穿設されている。しかし、上記横ビーム本体80,80の両端付近には、少なくとも上記継手部材70と装着するための貫通孔が両面81,82に穿設されている必要がある。
【0037】
また、上記各実施形態では、縦材20の固定は、個々に固定部材50を使用してなされるもののみを示したが、この固定方法は、種々変更することができる。例えば、図9および図10に示すように、線状材90により複数の縦材20を同時に貫通し、この線状材90を横ビーム10に固定する方法(図9)、または、係止部材100により複数の縦材20を同時に係止しつつ、この係止部材100を横ビーム10に固定する方法(図10)がある。
【0038】
線状材90を使用する場合(図9)には、当該線状材90を挿通するために貫通孔が縦材20に設けられ、さらに、当該線状材90を横ビーム10に固定するための特殊なボルト91が使用される。この特殊なボルト91は、線状材90が挿通できる挿通孔92を有する頭部93と、この頭部93から突出するネジ部94とで構成され、ネジ部94には通常のボルトネジと同種の雄ネジが刻設されている。従って、頭部93の挿通孔92に上記線状材90を挿通させたうえで、ネジ部94を横ビーム10の貫通孔13に挿通し、このネジ部94にナット95を螺合させることによって、特殊ボルト91が横ビーム10から突出する状態で固定されることとなる。そして、縦材20は、上記特殊ボルト91の固定により、線状材90を介して横ビーム10に押圧され、この押圧によって固定的に配置されることとなる。なお、相隣接する縦材20の間隔は、上記押圧によって維持されるが、この間隔を安定的に維持するためにスペーサ96を線状材90に挿通することも可能である。また、線状材90は、変形が容易なものでなければ材質を問うことはなく、場合によっては、径の大きな棒状部材を使用することも可能である。
【0039】
他方、係止部材100を使用する場合(図10)には、縦材20に当該係止部材100による係止を可能にするための被係止用溝部21が設けられ、当該係止部材100は略コ字形に折曲してなる構成とされたものが使用される。さらに、係止部材100は、その両端101,102に雄ネジ103,104が刻設された構成となったものが使用される。従って、上記係止部材100を縦材20の被係止用溝部21に当てつつ、その両端101,102を横ビーム10の貫通孔13に挿入し、さらに、この先端101,102の先端の雄ネジ103,104にナット105を螺合することにより、係止部材100が縦材20を係止することとなる。このとき、係止部材100が横ビーム10に固定されることによって、縦材20は横ビーム10に押圧され、この押圧により各縦材20は固定的に配置されることとなる。なお、上記押圧力が不足することがある場合には、上述の特殊ボルト91を係止部材100に挿通させることによって、上記押圧力を補足することができる。
【0040】
次に、横ビーム10に穿設する貫通孔13(または貫通孔群)についても他の態様をとることができる。すなわち、上記の実施形態では、貫通孔13は、個々に穿設した丸孔を所定の間隔で整列させたもののみを説明または図示し、これらを整列した構成を貫通孔群としていたが、この貫通孔群は、長孔によって構成することも可能である。例えば、図11(a)に示すように、相隣接する丸孔を連続してなる状態の長孔113とすることができる。この場合、独立した丸孔による貫通孔13に比較して、固定部材50を挿通すべき位置を細かく調整することができる。また、図11(b)に示すように、同じ幅寸法の長孔213を穿設することによって、固定部材50を挿通すべき位置を自在に選択することも可能となる。上記二形態の横ビーム110,210では、上記両長孔113,213が、横ビーム110,210の長手方向に沿って連続することにより、それ自体が貫通孔群を構成するものである。
【0041】
上記長孔113,213は一列の貫通孔群を形成するが、横ビーム110,210の材質によって十分な強度を得られない場合には、図11(c),(d)に示すような二列の貫通孔群を構成することも可能である。この場合、相隣接する丸孔を連続させた長孔313a,313b(図11(c))は、丸孔を3〜5個程度連続させた構成である。そして、第一列目の貫通孔群において、長手方向に隣接する同種の長孔313a,313aとの中間に、第二列目の貫通孔群の貫通孔313bが位置するように設けられるのである。他方、同じ幅寸法の長孔413a,413b(図11(d))は、2cm〜5cm程度の長さ寸法を有して構成されたものである。この形態においても、第一列目の貫通孔群の長孔413a,413aの中間に第二列目の貫通孔群の長孔413bが配置されるものである。
【0042】
なお、上記貫通孔群は、三列または四列とすることも可能であるが、各横ビーム10,110,210,310,410の長さ方向または幅方向に対するそれぞれの曲げ応力に耐えることができるように、材質または肉厚などを考慮して決定することが要求される。
【0043】
最後に、横ビーム10,110,210,310,410の他の実施形態を例示する。図12(a)は、横ビームに関する各種態様を結合した構成であり、略L字形断面の横ビーム10において、片面11については、貫通孔13により二列の貫通孔群を設け、他面12には、貫通孔14により一列の貫通孔群が設けられたものである。このような構成により、ブラケット60(図7)を介在させて横ビーム10を支柱30に支持させる場合、当該ブラケット60の横ビーム連結部61を上記他面12に連結すれば、片面11は、縦材20の固定のための面となり、縦材20を固定する際の間隔を調整し得ることとなる。
【0044】
また、図12(b)に示すように、横ビーム510を断面略コ字形の金属部材で構成することも可能である。この場合、基本的には、略L字形断面と同様に、少なくとも鉛直平面に沿って配置される面511が縦材20を固定するための面となる。そして、ブラケット60を使用して支柱30に横ビーム510を支持する場合、鉛直平面に沿う面511に直交する他の面512をブラケット60に連結することとなる。この他の面512には、略L字形断面の場合と同様に貫通孔514が穿設されている。なお、この図12(b)には、残りの一面515に貫通孔を設けていないが、他の面512と同様の貫通孔を穿設する形態とすることができる。また、上記各実施形態において、略L字形断面による横ビーム10,110,210,310,410が例示されているが、これらのいずれについても上記コ字形断面とすることができる。この場合、各種貫通孔13,14は、その作用に応じて、上述のいずれかを選択した形態とすればよい。
【0045】
なお、上述のとおり、横ビーム10の断面形状は、特別な形態を除いて限定されるものではなく、上記実施形態に示した形状のほかに、例えばC型チャンネル鋼や四辺形の鋼管などを使用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の第1の実施形態の概略を示す説明図である。
【図2】第1の実施形態の詳細を示す説明図である。
【図3】横ビームと縦材の関係を示す説明図である。
【図4】フェンスの構築手順を示す説明図である。
【図5】貫通孔の詳細を示す説明図である。
【図6】フェンスの構築手順を示す説明図である。
【図7】(a)はブラケットの斜視図であり、(b)は第2の実施形態による支柱と横ビームとの関係を示す断面図である。
【図8】横ビームの他の形態を示す説明図である。
【図9】固定部材の他の形態を示す説明図である。
【図10】固定部材の他の形態を示す説明図である。
【図11】貫通孔の他の形態を示す説明図である。
【図12】横ビームの他の形態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0047】
10,10a,10b 横ビーム
11,11a,11b,12,12a,12b 横ビームの面
13,13a,13b 貫通孔
20 縦材
30 支柱
40 支持部材
41 貫通ボルト
42 ナット
43 座金
50 固定部材
51 貫通ボルト
52 ナット
53 座金
60 ブラケット
61 横ビーム連結部
62 支柱連結部
63,64 貫通孔
65 ボルト
66 ナット
70 継手部材
80 横ビーム本体
90 線状材
91 特殊ボルト
96 スペーサ
100 係止部材
113,213,313,413 長孔
F フェンス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の高さに配置される横ビームに木製の縦材を固定してなるフェンスであって、横ビームは、適宜間隔で穿設された複数の貫通孔を有し、この複数の貫通孔のうち任意の貫通孔を挿通する支持部材を介して支柱に支持されてなる横ビームであり、縦材は、上記横ビームの貫通孔に挿通された固定部材により固定されてなる縦材であることを特徴とする木製フェンス。
【請求項2】
前記支持部材は、支柱および横ビームを同時に貫通できる貫通ボルトと、この貫通ボルトに螺合するナットとで構成された支持部材である請求項1記載の木製フェンス。
【請求項3】
前記横ビームは、少なくとも一つの面を鉛直平面に沿って配置されてなる断面略L字形または略コ字形の長尺な横ビームであり、前記貫通孔は、横ビームの長手方向に一または二以上に整列して上記一つの面に穿設してなる貫通孔群である請求項1または2記載の木製フェンス。
【請求項4】
前記横ビームは、横ビーム本体と、この横ビーム本体を連結する継手部材とで構成された横ビームであり、上記横ビーム本体は、断面略L字形または略コ字形の金属製部材で構成され、少なくとも両端付近において上記金属部材の各面に穿設された連結用貫通孔を有する横ビーム本体であり、上記継手部材は、上記金属部材の各面に当接する相似形の金属部材で構成され、その各面に複数穿設された連結用貫通孔を有する短尺の継手部材であり、連結すべき2つの横ビーム本体の両端付近の貫通孔と継手部材の貫通孔とを同時にボルトで連結してなる請求項1または2記載の木製フェンス。
【請求項5】
前記横ビーム本体は、鉛直平面に沿って配置される面に前記固定用貫通孔を除く複数の貫通孔が一または二以上に整列して穿設してなる貫通孔群を有する横ビーム本体である請求項4記載の木製フェンス。
【請求項6】
鉛直方向に立設される複数の支柱と、この複数の支柱の間にブラケットを介して所定の高さに配置される横ビームと、この横ビームに木製の縦材を固定してなるフェンスであって、横ビームは、断面略L字形または略コ字形の長尺な金属製部材で構成され、該金属部材の直交する2つの面に複数の貫通孔を有する横ビームであり、ブラケットは、貫通孔を有する上記横ビームの2面のうち片方の面に当接しつつ連結される横ビーム連結部と、上記支柱の表面に当接しつつ連結される支柱連結部とを備えたブラケットであり、縦材は、上記横ビームの貫通孔に挿通された固定部材により固定されてなる縦材であり、ブラケットが横ビームを連結するとき、貫通孔を有する該横ビームの2面のうちブラケットが連結されていない他方の面が鉛直平面に沿った向きとなるように配置され、この貫通孔に固定部材が挿通されて上記縦材が固定されてなることを特徴とする木製フェンス。
【請求項7】
前記横ビームは、前記金属部材の2つの面のうち、少なくとも鉛直平面に沿って配置される面に、適宜間隔で長手方向に整列する貫通孔群が一列または二列以上穿設された横ビームである請求項6記載の木製フェンス。
【請求項8】
前記貫通孔群は、前記横ビームの長手方向に連続する単一の長孔で構成された貫通孔群である請求項7記載の木製フェンス。
【請求項9】
前記固定部材は、縦材および横ビームを同時に貫通できる貫通ボルトと、この貫通ボルトに螺合するナットとで構成された固定部材である請求項1ないし8のいずれかに記載の木製フェンス。
【請求項10】
前記固定部材は、前記縦材を貫通する線状材と、この線状材の挿通を許容する挿通孔を有しかつ先端に雄ネジが刻設されたボルトと、このボルトに螺合するナットとで構成された固定部材である請求項1ないし8のいずれかに記載の木製フェンス。
【請求項11】
前記固定部材は、前記縦材の表面側を係止するとともに、両端に雄ネジが刻設された係止部材と、この係止部材の雄ネジに螺合するナットとで構成された固定部材である請求項1ないし8のいずれかに記載の木製フェンス。
【請求項12】
前記固定部材は、前記係止部材の挿通を許容する挿通孔を有しかつ先端に雄ネジが刻設されたボルト、および、このボルトに螺合するナットを備えた固定部材である請求項11記載の木製フェンス。
【請求項13】
前記縦材は、前記線状材または前記係止部材によって複数を同時に貫通または係止された縦材である請求項9ないし11のいずれかに記載の木製フェンス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−83669(P2006−83669A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−272291(P2004−272291)
【出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
【出願人】(504260737)有限会社創柵 (6)
【Fターム(参考)】