説明

未架橋ポリロタキサンを用いるケラチン物質のメイクアップまたは手入れのための方法

本発明の主題は、爪、皮膚、唇、またはまつげから選択されたケラチン物質のメイクアップのためのまたは非治療的手入れのための美容方法であり、その方法は、a.少なくとも1つの第1未架橋ポリロタキサンおよび少なくとも1つの第2未架橋ポリロタキサンを含む少なくとも1つの第1組成物の少なくとも1つの層を前記ケラチン物質に堆積させる段階と、b.前記組成物にその塗布と同時にまたは塗布に続いて少なくとも1つの化学的、物理化学的および/または力学的刺激を加える段階とである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、ケラチン物質のメイクアップまたは手入れのための方法であり、その方法は前記ケラチン物質に少なくとも1つの未架橋ポリロタキサンおよび前記ケラチン物質に架橋する少なくとも1つの第2未架橋ポリロタキサンを塗布することである。
【0002】
本発明による組成物は、ケラチン物質、特に皮膚、爪、唇およびケラチン繊維、特にまつげのメイクアップまたは手入れのための組成物、好ましくはメイクアップ組成物であり得る。
【0003】
それぞれの組成物は、粉末パウダーまたは圧縮パウダー、ファンデーション、フェイスパウダー、アイシャドウ、コンシーラー、ほお紅、リップスティック、リップバルム、リップグロス、リップペンシル、アイペンシル、マスカラ、アイライナー、ネイルワニスであり、または身体をメイクアップするためのもしくは皮膚を着色するための製品でもあり得る。
【0004】
手入れ用組成物は、まつげ、爪または唇を手入れするための製品、身体および顔の皮膚を手入れするための製品、特に日焼け止め製品、または皮膚を着色するための製品(セルフタンニング製品など)であり得る。
【背景技術】
【0005】
消費者は、メイクアップしたいと思うケラチン物質のボリューム感の増加を得ることができる美容製品を探し求めている。特に、マスカラにはまつげにボリューム感を出すかまたは充実感を持たせる効果が望まれており、グロスおよびリップスティックにはふっくら感が望まれており、ファンデーションおよびリップスティックの使用者には顔をモデリングする性質および皮膚の欠陥(しわ、小じわ、色素沈着の欠陥、唇の退色、酒さ)をマスキングする性質が要求されている。
【0006】
加えて、これらの美容組成物は、得られた美観効果が維持されるように、良好な保持時間を示さなければならない。
【0007】
現在、顔または身体のある部分の整形およびボリュームの増加は、シリコーンゲルなどの物質の注入によって得られている。この種の整形は一般に局所麻酔下で行われる。加えて、この種の整形は長期にわたり、退屈で費用が高い。
【0008】
さらに、効果的なボリュームは明るい色合いおよび濃い色合いを並べて塗布することによって実現され、明るい色合いは強調したい領域に塗布され得ることが知られている。この効果を実現するためには従来2つの異なる組成物の使用を必要とし、かつこれらを塗布する個人の適性に依存する。この技法は唇のメイクアップに使用するにはさらに難しい。
【0009】
観察する角度または光の入射角によって、組成物が塗布される身体の部分のボリューム感を変更するための光学的エフェクト顔料(ゴニオクロマチック顔料または干渉顔料)の使用も、例えば欧州特許第0953330号、国際公開第01/51015号または欧州特許第1382323号の文献から知られている。
【0010】
マスカラの場合は、ケラチン繊維に材料を提供しかつそれ故にボリュームまたは装着量が多少とも与えられたメイクアップ結果を得るために、一般に高い固体含有量を有する組成物が使用される。
【0011】
それにもかかわらず、ワックス、充填剤または顔料などの固体含有量の増加は、得られる製品の固さの増加をもたらしかつそれ故に、組成物は濃厚で粘性であり、堆積層に粒状で滑らかでない外見を与え、かつ困難を伴って不均一な様相で固まって堆積されるので、問題がありかつ困難な繊維への塗布をもたらす。
【0012】
熱の作用下で膨潤する能力があるポリマーのマスカラにおける使用も、欧州特許第1525876号の文献に記載されている。
【0013】
米国特許第6045783号および欧州特許第1195157号の文献も、水に関して超吸収性であるポリマーを含む美容組成物を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】欧州特許第0953330号
【特許文献2】国際公開第01/51015号
【特許文献3】欧州特許第1382323号
【特許文献4】欧州特許第1525876号
【特許文献5】米国特許第6045783号
【特許文献6】欧州特許第1195157号
【特許文献7】特許第09216815号
【特許文献8】特許第09315937号
【特許文献9】欧州特許出願第1283218号
【特許文献10】欧州特許出願公開第847752号
【特許文献11】仏国特許出願公開第2792190号
【特許文献12】仏国特許出願公開第2232303号
【特許文献13】米国特許第5162410号
【特許文献14】国際公開第2004/073626号
【特許文献15】米国特許第5874069号
【特許文献16】米国特許第5919441号
【特許文献17】米国特許第6051216号
【特許文献18】米国特許第5981680号
【特許文献19】欧州特許第1411069号
【特許文献20】国際公開第04/028488号
【特許文献21】国際公開第04/055081号
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】M. Asakawa et al.、Angewandte Chemie International、37(3)巻、333〜337頁(1998年)
【非特許文献2】M. Asakawa et al.、European Journal of Organic Chemistry、5巻、985〜994頁(1999年)
【非特許文献3】「Supramolecular Polymers」、L. Brunsveld、B. J. B. Folmer、E.W. MeijerおよびR. P. Sijbesma、Chemical Reviews、2001年、4071〜4098頁
【非特許文献4】Supramolecular Chemistry、JM Lehn、VCH、1995年
【非特許文献5】K. Ichimura et al.、Journal of Polymer Science、ポリマーの化学版、20巻、1411〜1432頁(1982年)
【非特許文献6】「Microemulsions Theory and Practice」、L.M. Prince編、Academic Press(1977年)、21〜32頁
【非特許文献7】「Encyclopedia of Chemical Technology、Kirk-Othmer」、第22巻、333〜432頁、第3版、1979年、Wiley
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、ケラチン物質上で架橋し、かつ前記ケラチン物質上で、保持時間の良好な性質および皮膚、唇またはまつげ上に快適な堆積物を有するボリュームを与える堆積層を生成する能力がある美容組成物の製剤のための新規な経路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、かかる性質を、より良好にケラチン物質に接着するように、in situで架橋する化合物を含む系を使用することによって、得ることが可能であることを発見した。加えて、これらの化合物は、一旦ケラチン物質に塗布されると、水を吸収し、それ故に堆積層の容積の増加をもたらす。したがって、ケラチン物質は、より厚く、より豊かまたはそれらの荒い縁を埋めることによってより滑らかである印象を与える。
【0018】
より具体的には、本発明の主題は、爪、皮膚、唇またはまつげから選択されるケラチン物質をメイクアップするためのまたは非治療的手入れのための美容方法であり、その方法は以下の段階である。
a.前記ケラチン物質上に少なくとも1つの第1未架橋ポリロタキサンおよび少なくとも1つの第2未架橋ポリロタキサンを含む少なくとも1つの第1組成物の少なくとも1つの層を堆積させる段階、
b.前記組成物に、塗布と同時にまたは塗布に続いて、少なくとも1つの化学的、物理化学的および/または力学的刺激を与える段階。
【0019】
同一であるかまたは異なるこの第1未架橋ポリロタキサンおよびこの第2未架橋ポリロタキサンは、刺激、すなわちこれらを含む組成物に加えられる、例えば化学的、物理化学的、または力学的作用などの作用、を受けると重合する能力がある。
【0020】
一実施形態によれば、刺激は少なくとも1つの架橋剤を含む。これは、一代替形態によれば、本発明の主題が、爪、皮膚、唇またはまつげから選択されるケラチン物質をメイクアップするためのまたは非治療的手入れのための美容方法であり、その方法が前記ケラチン物質上に
a.少なくとも1つの第1未架橋ポリロタキサンを含む第1組成物の少なくとも1つの層と、
b.架橋剤を含む第2組成物の少なくとも1つの層と、
を堆積させ、第1組成物および/または第2組成物は少なくとも1つの第2未架橋ポリロタキサンを含むことが理由である。
【0021】
好ましくは、第2未架橋ポリロタキサンは第1組成物中に存在する。
【0022】
別の実施形態によれば、架橋剤が第1および/または第2のポリロタキサンにグラフトされている。
【0023】
これは、本発明のさらなる主題が、爪、皮膚、唇またはまつげから選択されるケラチン物質をメイクアップするためのまたは非治療的手入れのための美容方法であり、その方法が前記ケラチン物質に少なくとも1つの第1未架橋ポリロタキサンおよび少なくとも1つの第2未架橋ポリロタキサンを含む第1組成物の少なくとも1つの層を堆積させ、第1未架橋ポリロタキサンおよび/または第2未架橋ポリロタキサンが架橋剤でグラフトされていることが理由である。
【0024】
本発明のさらなる主題は、爪、皮膚、唇またはまつげから選択されるケラチン物質をメイクアップするためのまたは非治療的手入れのための美容方法であり、その方法は前記ケラチン物質に
少なくとも1つの第1未架橋ポリロタキサンを含む第1組成物の少なくとも1つの層、
少なくとも1つの第2未架橋ポリロタキサンを含む第2組成物の少なくとも1つの層
を堆積させ、第1および/または第2未架橋ポリロタキサンの少なくとも一方は架橋剤でグラフトされていることである。
【0025】
第1および第2の組成物という用語は、決して前記組成物のケラチン物質への塗布の順序を条件として設けるものではない。第2組成物を第1組成物に塗布することができ、その逆も可能である。
【0026】
一実施形態によれば、第1組成物の少なくとも1層をケラチン物質に塗布し、次いで第2組成物の少なくとも1層を第1層の全体または部分に塗布する。
【0027】
第1および第2の組成物それぞれのいくつかの層を交互にケラチン物質に塗布することもできる。
【0028】
別の代わりの形態によれば、本発明のさらなる主題は、爪、皮膚、唇またはまつげから選択されるケラチン物質をメイクアップするためのまたは非治療的手入れのための美容方法であり、
a.使用時に、
化粧品として許容される媒体および少なくとも1つの第1未架橋ポリロタキサンを含む少なくとも1つの第1組成物、および
架橋剤を含む少なくとも1つの第2組成物
[第1組成物および/または第2組成物は少なくとも1つの第2未架橋ポリタキサンを含む]を混合する段階と、
b.次いで前記混合物の少なくとも1つの層を爪、皮膚、唇またはまつげに塗布する段階と
である。
【0029】
別の態様によれば、本発明の別の主題は、爪、皮膚、唇またはまつげから選択されるケラチン物質をメイクアップするためのまたは非治療的手入れのためのキットであり、
i)少なくとも1つの第1未架橋ポリロタキサンを含む少なくとも1つの第1組成物と、
ii)架橋剤を含む少なくとも1つの第2組成物と
を含み、第1組成物および/または第2組成物は少なくとも1つの第2未架橋ポリロタキサンを含む。
【0030】
好ましくは、本発明によるメイクアップキットは、第1および第2の組成物を別々の包装中に含む。
【発明を実施するための形態】
【0031】
それぞれの組成物は同じ包装用物品中に別々に、例えば2つの区画に分かれたペンに包装することができ、下塗り用組成物がペンの一方の端から供給され、上塗り用組成物はペンのもう一方の端から供給され、それぞれの端は特に洩れないようにキャップによって閉じられる。
【0032】
あるいは、それぞれの組成物は異なる包装用物品中に包装することができる。
【0033】
接触させた後は、第1および第2のポリロタキサンは一緒に架橋して良好な保持力を有する堆積層がケラチン物質上に得られ、この堆積層は流体の存在下でのゲルの形成によって容積が増大する能力がある。この流体は、好ましくは親水性であり、例えば、汗、唾液、涙、皮膚、唇、爪および/もしくはまつげの残留水、周囲の水分または何らかの他の天然もしくは人工の液体であり得る。それは外部の供給源、例えば組成物塗布の前後にケラチン物質を湿らすことよって(例えばスプレー、天然または人工的な涙で)提供されてもよい。流体はまた、極性の溶媒、例えばプロピレングリコールまたはエチレングリコールなどであってもよい。
【0034】
流体、特に水は、未架橋ポリロタキサンまたはポリロタキサンを含む組成物に直接塗布前に加えることもできる。
【0035】
一実施形態によれば、水性媒体を含み第1および/または第2の組成物の層に塗布される少なくとも1つの第3組成物の少なくとも1つの追加の層によって流体を提供して架橋ポリロタキサンの膨潤を起こさせることができる。
【0036】
容積が膨張する能力があるこれらの組成物は、ケラチン物質の外見の欠陥(染み、目の下の影、しわ、くぼみ、薄肌)を持続して隠すことを可能にし、かつ爪、皮膚、まつげまたは唇に増大した容積を与えることができることもある。
【0037】
これらは、ケラチン物質上に、良好な保持力および満足な力学的またはレオロジー的性質、例えば組成物の使用のために適した心地よいテクスチャーおよびケラチン物質上に快適な堆積層を得ることを可能にする満足な弾性、を示す堆積層を得ることを可能にする。
【0038】
加えて着色料または活性成分を第1および/または第2の組成物中に組み入れることが可能であり、これは前記活性成分または前記着色料を、堆積層の膨潤後にケラチン物質上に形成されたゲル中に効率的に捕捉することを可能にする。
【0039】
さらに、これらの組成物は、それらの水吸収能力の故に、したがって汗の故に、ファンデーションまたはマットクリームの分野において特有の用途を有することができる。加えて、水で膨潤した堆積層(ゲル)は、皮膚の脱水ならびに不快な感触および窮屈な感触を防ぐことを可能にする。
【0040】
一実施形態によれば、第1および/または第2の組成物の塗布および次いで水で膨潤後のケラチン物質上に得られる堆積層を熱源に当てる。加熱は次いでゲル中に存在する水の部分的または完全な蒸発およびケラチン物質上のフィルムの収縮およびそれ故にフィルムの緊張効果をもたらす。したがって、マスカラの場合は、まつげに対して曲げ効果、皮膚の手入れまたはメイクアップ用製品の場合は、皮膚を滑らかにする効果ならびにしわおよび小じわを低減する効果を得ることが可能である。
【0041】
未架橋ポリロタキサン
ポリロタキサンは包接化合物群の部分を形成しており、包接化合物群はその中に第2の化学種の分子的実体が収容されている限定されたサイズの空洞を形成している第1の分子的実体を含む。
【0042】
ノエビア社の特許第09216815号(1997年)および資生堂社の特許第09315937号(1997年)は、擬ポリロタキサンを含む美容製品を記載している。
【0043】
「擬ポリロタキサン」という用語は、少なくとも1つの線状分子および前記線状分子に沿って数珠つなぎになっている少なくとも2つの環状分子を含む超分子構造物質を意味すると解釈され、線状分子と環状分子は共有結合によって結合されてはおらず、その結果環状分子は線状分子に沿って自由に移動することができる。
【0044】
これらの文献に記載されている分子は、その上に環状分子(シクロデキストリン)が含まれている軸(backbone)を含む。しかし、それらの組成物は、ケラチン物質に塗布されたときに容積が十分には増大せず、かつそれらの保持時間は貧弱である。加えて、環状分子は擬ポリロタキサンを溶解させると数珠つなぎが外れる傾向がある。
【0045】
「ポリロタキサン」は擬ポリロタキサンから得られ、それには、線状分子のそれぞれの末端に、適切な場合は、環状分子と線状分子が離れることを防止する「封鎖」分子構造が取り付けられる。
【0046】
本発明による方法において使用される組成物は、少なくとも1つの第1未架橋ポリロタキサンおよび少なくとも1つの第2未架橋ポリロタキサン、すなわち互いに結合されておらず、刺激を受けると第1ポリロタキサンの環状分子および第2ポリロタキサンの少なくとも1つの環状分子の間の化学的または物理的でよい少なくとも1つの結合の形成によって互いに架橋結合して架橋ポリロタキサンを形成する能力がある化合物を含む。
【0047】
この結合は、特に金属結合、イオン結合、共有結合、電荷移動錯体の形成からもたらされる相互作用、水素結合の弱い相互作用、ファンデルワールス結合またはπ-π型結合、またはこれらが混合したものであり得る。
【0048】
したがって、ポリロタキサンは超分子集合体であり、その中には環状分子が線状分子によって「包接され」ている。環状分子が線状分子から外れることを防ぐために、線状分子の両末端は大きい基またはイオン性の基によって機能化されている(封鎖分子構造)。
【0049】
a)線状分子
本発明においては、「線状分子」という表現は、実質的に「線状」の分子を意味するものとする。これは、線状分子は、環状分子が線状分子の周りで回転できるまたはそれに沿って移動できるという条件の下に、1つまたは複数の分枝鎖を含むことができることを意味する。
【0050】
「線状」分子の長さは、環状分子自身が回転することまたは前記線状分子に沿って移動することを線状分子が可能にするという条件の下に、特定の長さには限定されない。
【0051】
第1ポリロタキサンの線状分子および/または第2ポリロタキサンの線状分子は、互いに独立に、特に以下のポリマーから選択することができる。
親水性ポリマー、例えばポリ(ビニルアルコール)、ポリビニルピロリドン、ポリ((メタ)アクリル酸)、セルロースから誘導されるポリマー(カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなど)、ポリアクリルアミド、ポリアルキレングリコール、例えばポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールなど、ポリテトラヒドロフラン、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ビニルメチルエーテル)、ポリアミン、ポリエチレンイミン、カゼイン、ゼラチン、デンプン、およびこれらのコポリマー、
疎水性ポリマー、例えばポリオレフィン、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソプレン、ポリイソブチレンまたはポリブタジエンなど;オレフィンのコポリマー、例えばエチレン/ブチレンコポリマーなど;ポリエステル、ポリジメチルシロキサン、ポリ(塩化ビニル)、ポリスチレン、アクリロニトリル/スチレンコポリマー、(メタ)アクリル酸エステルのポリマーおよびコポリマー、例えばポリ(メチルメタクリレート)またはアクリロニトリル/メチルアクリレートコポリマーなど;ポリカーボネート、ポリウレタン、塩化ビニル/酢酸ビニルコポリマーまたはポリ(ビニルブチラール)、
およびこれらの誘導体。
【0052】
これらの化合物のうちでは、ポリエチレングリコール、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリプロピレングリコール、ポリテトラヒドロフラン、ポリジメチルシロキサン、ポリエチレンおよびポリプロピレンが優先される。ポリエチレングリコールが特に好ましい。
【0053】
線状分子は好都合には、互いに独立に、350g/mol以上の、例えば350〜2000000に及ぶ、好ましくは1500〜1000000に及ぶ、より好ましくは2800〜800000に及ぶ、さらにより良好には7000〜700000に及ぶ、例えば10000〜600000または10000〜500000に及ぶ重量平均分子量を有する。
【0054】
線状分子は、好ましくはそれぞれの末端に反応性基を担持する。反応性の基を持っているということは、線状分子およびそれらが担持する環状分子の間の分離を防ぐことを意図する分子構造との反応を促進することを可能にする。
【0055】
反応性の基は、使用する封鎖分子構造に依存する。
【0056】
例としては、ヒドロキシル基、アミノ基、トシレート基、重合性基、活性エステル基、例えばN-ヒドロキシスクシンイミドエステル基、カルボキシル基、チオール基などを挙げることができる。
【0057】
b)環状分子
本発明においては、「環状分子」は、少なくとも1つの環状構造を含む分子を意味する。環状分子は、2つ以上の環状構造または複環を含むことができる。環状分子はシクロデキストリンなどの大員環であってもよい。
【0058】
第1および第2のポリロタキサンの環状分子は、互いに独立に、
シクロデキストリン、例えばα-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、ジメチルシクロデキストリンおよびグルコシルシクロデキストリン、ならびにこれらの誘導体、
クラウンエーテル、
ベンゾクラウンエーテル、ジベンゾクラウンエーテルおよびジシクロヘキサノクラウンエーテル、ならびにこれらの誘導体
から選択することができる。
【0059】
環状分子の内部の空洞のサイズは、選択される線状分子によって変わり得る。どんな場合でも、環状分子は線状分子に沿って数珠つなぎになり得るものから選択される。したがって、環状分子の空洞は、好ましくは線状分子が包接され得る最小の想像上の円筒の断面の直径よりも大きい直径を有する。
【0060】
使用することができる環状分子のうちでは、シクロデキストリンが優先される。
【0061】
一実施形態では、α-シクロデキストリンが環状分子として使用され、ポリエチレングリコールが線状分子として使用される。
【0062】
環状分子は、好ましくはそれらの空洞中には位置しない結合を生成する能力がある基を有する。これは、続いて環状分子を互いに化学的または物理的結合によって結合することを可能にする。環状分子の反応性基は、例えば、ヒドロキシル、アミノ、カルボキシルまたはチオール基を含むことができる。さらに、封鎖構造と線状分子の間の封鎖反応中に、前記封鎖構造とは反応しない反応性基を有する環状分子を選択することが好ましい。
【0063】
線状分子に沿って数珠つなぎになっている環状分子の数の、この線状分子に沿って数珠つなぎになり得る同じ性質の環状分子の最大量に対する比率は、0.001〜0.6、好ましくは0.01〜0.5、さらにより良好には0.05〜0.4であり得る。この比率は、「包接量(inclusion amount)」と呼ぶことができる。
【0064】
最大包接量は、1であるとして標準化される。それは線状分子が包接することを可能にする最大限度の環状分子の量に相当する。
【0065】
線状分子については環状分子の密集した積み重ねを示さないことが好ましい。この密集した積み重ね状態は1に等しい最大包接量に相当する。環状分子が密集していない積み重ねを創るということは、移動させることができる分子セグメントを保持することを可能にし、その結果、架橋されたポリロタキサンは高い破壊強度、高いエントロピー弾性、優れた拡張性および/または優れた復元性、および、所望であれば、高い吸収性または高い吸湿性を示す。
【0066】
一実施形態によれば、環状分子は、線状分子を包接した後で環化させることができる。より具体的には、文字「C」と類似の少なくとも1つの開口セグメントを有する環状分子の前駆体を使用することが可能である。
【0067】
この場合、「C」セグメントは、線状分子を包接した後でまたは封鎖基を用いて線状分子を封鎖した後で、閉じることができる。文字「C」と類似のセグメントを有する分子については、双方とも参照により本明細書に組み入れるM. Asakawa et al.、Angewandte Chemie International、37(3)巻、333〜337頁(1998年)、およびM. Asakawa et al.、European Journal of Organic Chemistry、5巻、985〜994頁(1999年)、を参照されたい。
【0068】
c)線状分子鎖末端に位置する分子構造:封鎖構造
封鎖構造は、環状分子を線状分子に沿って数珠つなぎに保たなければならない。
【0069】
これらの封鎖構造は、それらの大きい立体容積の故に、環状分子が線状分子から分離することを防ぐことができる。
【0070】
それぞれの線状分子のそれぞれの末端に置かれた封鎖構造は、特定のイオン電荷を示すことによって環状分子が線状分子から錯体分解することを防ぐこともできる。
【0071】
「分子構造」という表現は、本明細書では分子、高分子または固体支持体を意味する。
【0072】
高分子または固体支持体は、いくつかの封鎖部位を含むことができる。高分子の封鎖構造は、主鎖中または側鎖中に存在することができる。
【0073】
封鎖構造が高分子Aである場合は、高分子Aはマトリックスを構成することができ、その一部分は擬ポリロタキサンを含み、または反対に擬ポリロタキサンがマトリックスを構成することができ、その一部分は高分子Aを含む。
【0074】
封鎖分子構造は、
ジニトロフェニル基、例えば2,4-および3,5-ジニトロフェニル基など、
シクロデキストリン
アダマンタン基、
トリチル基、
フルオレセイン、
ピレン、
ナフタルイミド、および
これらの組合せ
から選択することができる。
【0075】
一実施形態によれば、線状分子がポリエチレングリコールである場合は、環状分子はα-シクロデキストリン、ジニトロフェニル基、例えば2,4-および3,5-ジニトロフェニル基など、アダマンタン基、トリチル基、フルオレセイン、ピレンおよびこれらの組合せから選択することができる。
【0076】
d)架橋
第1および/または第2ポリロタキサンは、それらが刺激を受けたときに、未架橋ポリロタキサンの少なくとも1つの環状分子の間で、少なくとも1つの化学的結合または少なくとも1つの物理的結合(好ましくは少なくとも2つの物理的結合)の形成によって、架橋する能力がある。
【0077】
上記の通り、刺激は作用、例えば第1組成物および/または第2組成物に及ぼされる化学的、物理化学的または力学的作用であり得る。
【0078】
したがって、架橋は、熱的に、光化学的に、化学的におよび/または力学的に、架橋剤の存在下または不在下で行うことができる。
【0079】
それは、例えば、皮膚の温度で、または特に加熱することを意図されていない手段、例えば熱い物体(カップまたはホットドリンク)などを使用することによって行うことができる。組成物は、特に加熱専用の手段、例えば熱風を吹き出す手段、ヘアドライヤーなど、または加熱器具、例えば加熱式塗布器などを使用して加熱することもできる。
【0080】
一実施形態によれば、第1および第2のポリロタキサンは、単純な結合によってまたは異なる原子または分子を含む結合によって形成され得る化学的または物理的結合によって架橋する。前記結合は前記2つの環状分子と架橋剤または光架橋剤との反応によって得ることができる。
【0081】
「架橋剤」という用語は、2つ以上の分子の間に少なくとも1つの化学結合(共有結合)または物理的結合(イオン結合、水素結合、π-π相互作用またはファンデルワース力)を創る能力がある化合物を意味するものと解釈する。
【0082】
環状分子は、上記の通り、好ましくは核の外部に1つまたは複数の反応性の基を有する。特に、封鎖されたポリロタキサン分子の形成後に、異なるポリロタキサンのいくつかの環状分子が架橋剤によって互いに架橋されることが好ましい。この反応は、温度のまたはpH変化の作用の下に行うことができる。この場合、架橋反応の条件は、その条件下で封鎖されたポリロタキサンの封鎖基が除去されない条件でなければならない。
【0083】
一実施形態によれば、第1組成物および/または第2組成物は、少なくとも1つの架橋剤を単独でまたは未架橋ポリロタキサンとの組合せで含む。
【0084】
代わりの一形態によれば、架橋剤は、以後に記載するものなどの充填剤にまたは着色料にグラフトさせることができる。
【0085】
一実施形態によれば、架橋剤は、第1および/または第2の未架橋ポリロタキサンに、特に前記未架橋ポリロタキサンの環状セグメントにグラフトされる。
【0086】
一実施形態によれば、第1組成物または第2組成物は、少なくとも1つの架橋剤をさらに含む。
【0087】
好ましくは、架橋剤を含む組成物は未架橋ポリロタキサンを含まず、特に、本発明による方法において使用される第1組成物は架橋剤を含まない。
【0088】
架橋剤として、先行技術において周知の架橋剤を使用することができる。
【0089】
例えば、以下のものを使用することができる。
i)少なくとも2つの重合性二重結合を有する化合物、例えば、
ジ-またはポリビニル化合物、例えばジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、ジビニルエーテル、ジビニルケトン、ジビニルスルホンまたはトリビニルベンゼンなど、
不飽和モノ-またはポリカルボン酸とポリオール、例えば(メタ)アクリル酸のジ-またはトリエステルと、例えば、エチレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコールおよびこれらの混合物から選択されるポリオールとの反応から得られるジ-またはポリエステル;上述のポリオールのいずれか1つと不飽和(またはエチレン性)カルボン酸、例えば、マレイン酸などとの反応から得られるポリエステル;ポリエポキシドと(メタ)アクリル酸との反応から得られるエステル、
ビス(メタ)アクリルアミド、例えばN,N-メチレンビスアクリルアミドなど、
ポリイソシアネート(トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、1,1'-カルボニルジイミダゾールまたはかかるジイソシアネートと活性水素原子を含む化合物とを反応させることによって得られるNCO基を含むプレポリマーなど)とヒドロキシル基を含むモノマーとの反応から得られる「カルバミル」エステル;例えば、上述のジイソシアネートとヒドロキシエチルアクリレート(メタクリレート)との反応によって得られる(メタ)アクリル酸のジカルバミルエステルを特に挙げることができる、
ジ-またはポリアリル(メタリル)エーテルまたはポリオール、例えば、アルキレングリコール、グリセリン、ポリアルキレングリコール、ポリオキシアルキレンポリオールなどまたはカーボハイドレート、例えばポリエチレングリコール、ジアリルエーテル、アリル化デンプンおよびアリル化セルロースなど、
ポリカルボン酸のジ-またはポリアリルエステル、例えばジアリルフタレートまたはジアリルアジペートなど、
不飽和モノ-またはポリカルボン酸とポリオールのモノアリル(メタリル)エーテルとのエステル、例えばポリエチレングリコールのモノアリルエーテルの(メタ)アクリル酸エステルなど、
ii)少なくとも1つの重合性二重結合および未架橋ポリロタキサンと反応する少なくとも1つの官能基を有する化合物、特にカルボキシル、無水カルボキシ、ヒドロキシル、アミンまたはアミド基と反応する少なくとも1つの基を含む不飽和エチレン性化合物。例えば、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、グリシジルアクリレート(メタクリレート)およびこれらの混合物を挙げることができる。
iii)未架橋ポリロタキサンまたはポリロタキサンと反応する少なくとも2つの官能基を有する化合物、特にカルボキシル、無水カルボキシ、ヒドロキシル、アミンまたはアミド基と反応する基を含むジ-または多官能性化合物である。グリオキサル、ポリカルボン酸、例えばフタル酸またはアジピン酸など、ポリオール、例えばエチレングリコールなど、ポリアミン、例えばアルキレンジアミン(例えば、エチレンジアミン)またはポリアルキレンポリアミン、ビス-またはポリエポキシド、例えばグリシジルエポキシド、脂環式エポキシド(例えば、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシ化植物油、例えばエポキシ化大豆油またはアマニ油、ポリエチレンオキシド-グルタル酸スクシンイミジル、例えばポリエチレンオキシド-グルタル酸テトラスクシンイミジル、ビスエポキシブタンまたはグリシジルエーテル、例えばビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスヒドラジド、トリス-またはポリヒドラジド、カルボジイミド、ジアルデヒド(例えば、PEG-ジアルデヒド)、およびこれらの混合物を挙げることができる。
【0090】
架橋剤の他の例としては、塩化シアヌル、塩化トリメソイル、塩化テレフタロイル、エピクロロヒドリン、ジブロモベンゼン、グルタルアルデヒド、ビス(酸クロリド)(例えば、セバコイルジクロリド)、トリ(酸クロリド)などを挙げることができる。
【0091】
架橋剤はシランカップリング剤(例えば、アルコキシシラン)および/またはチタン系カップリング剤(例えば、アルコキシチタン化合物)から選択することができる。
【0092】
架橋剤としては、それらの間で、少なくとも2つの物理的結合(特に水素結合)を形成する能力のある架橋剤も使用することができ、これらの架橋剤は互いに独立に、未架橋ポリロタキサンによって保持されているかまたは第1および/または第2の組成物のいずれかの中に存在しているかのどちらかであることが可能である。かかる剤の例としては、2,6-ジアミノピリジンおよびウラシルの対、バルビツル酸およびトリアミノピリジンの対、または互いに架橋するウレイドピリミジノン、ウレイドトリアジンもしくはシアヌル酸誘導体も挙げることができる。
【0093】
1つまたは複数のイオン結合を形成構成する能力がある架橋剤としては、イオン性架橋を形成する多価金属化合物、例えば、アルカリ土類金属(例えば、カルシウムまたはマグネシウム)、亜鉛またはアルミニウムの酸化物、ヒドロキシドおよび弱酸塩(例えば、炭酸塩、酢酸塩など)、などを挙げることができ、例えば、酸化カルシウム、二酢酸亜鉛または硫酸アルミニウムを挙げることができる。
【0094】
かかる架橋剤(「シントン」という名前でも知られている)は、例えば、次の参照文献に記載されている。「Supramolecular Polymers」、L. Brunsveld、B. J. B. Folmer、E.W. MeijerおよびR. P. Sijbesma、Chemical Reviews、2001年、4071〜4098頁またはSupramolecular Chemistry、JM Lehn、VCH、1995年。
【0095】
他の例としては、ソフトコンタクトレンズのために設計された材料のために使用されている様々な光架橋剤、例えばスチルバゾリウム塩系光架橋剤、例えばホルミルスチリルピリジニウム塩(参照により本明細書に組み込むK. Ichimura et al.、Journal of Polymer Science、ポリマーの化学版、20巻、1411〜1432頁(1982年)を参照されたい)、および他の光架橋剤、例えば光二量体化による光架橋剤、具体的には桂皮酸、アントラセン、チミンなどを挙げることができる。
【0096】
架橋剤は、好ましくは2000未満、好ましくは1000未満、さらにより良好には600未満、非常に特別には400未満の重量平均分子量を有する。
【0097】
環状分子としてα-シクロデキストリンが使用されかつ架橋剤がそれを架橋するために使用される場合は、架橋剤の例として、塩化シアヌル、トリレン2,4-ジイソシアネート、1,1'-カルボニルジイミダゾール、塩化トリメソイル、塩化テレフタロイル、アルコキシシラン、例えばテトラメトキシシランおよびテトラエトキシシラン、脂環式エポキシド、例えば3,4-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ポリエチレンオキシド-グルタル酸スクシンイミジル、例えばポリエチレンオキシド-グルタル酸テトラスクシンイミジル、ビスヒドラジドなど、およびこれらの混合物を挙げることができる。特に、α-シクロデキストリンを環状分子としておよび塩化シアヌルを架橋剤として使用することが好ましい。
【0098】
未架橋ポリロタキサンの調製
本発明による化合物は、架橋段階を除いて欧州特許出願第1283218号の教示に従って調製することができる。
【0099】
まず、環状分子が線状分子に沿って数珠つなぎになった擬ポリロタキサンを調製するために、環状分子および線状分子を混合する。次に、環状分子の脱落を防止するために線状分子のそれぞれの末端を封鎖基で封鎖することによって、ポリロタキサンを調製する。
【0100】
本発明の一実施形態によれば、環状分子としてα-シクロデキストリンが使用され、線状分子としてポリエチレングリコールが使用され、2,4-ジニトロフェニル基が封鎖基として使用され、かつ架橋剤として塩化シアヌルが使用される。
【0101】
まず、引き続いて封鎖基をポリエチレングリコールの末端に取り付けてポリロタキサンを形成することができるように、ポリエチレングリコールのそれぞれの末端がアミノ基に転化される。代わりの形態では、HuntsmanによってJeffamineという商品名で販売されているジアミン末端を有するPEG/PPOコポリマーを使用することができる。
【0102】
引き続いて、α-シクロデキストリンおよびアミノ化されたポリエチレングリコール誘導体を混合して擬ポリロタキサンを調製する。ポリエチレングリコール誘導体に対するα-シクロデキストリンの包接量が0.001〜0.6にわたるように混合を続ける時間は、1〜48時間にわたり、混合温度は0〜100℃にわたる。
【0103】
一般に、20000の平均分子量を有するポリエチレングリコールは、最大で230個のα-シクロデキストリン分子を包接することを可能にする。230個の分子に相当する最大包接量が1に等しい。
【0104】
一実施形態によれば、平均で60〜65(63)個のα-シクロデキストリン分子が1つのポリエチレングリコール分子を覆って数珠つなぎになっており、これは最大包接量に対して0.26〜0.29(0.28)にわたる包接率に相当する。α-シクロデキストリンの包接量は、NMR、光吸収または元素分析によって決定することができる。
【0105】
得られた擬ポリロタキサンを、DMF中に溶解させた2,4-ジニトロフルオロベンゼンと反応させると未架橋ポリロタキサンを得ることができる。
【0106】
ポリロタキサンは、そのままでまたは部分的にもしくは完全に予備水和させて使用することができる。
【0107】
例えば、未架橋ポリロタキサンをあらかじめ塩基性水溶液、例えば水酸化ナトリウム溶液中に溶解させることが可能である。
【0108】
第1および第2の未架橋ポリロタキサンは、第1または第2の組成物それぞれの全重量に対して0.1〜80重量%、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは2〜30重量%にわたる含有量で存在することができる。
【0109】
特定の一実施形態によれば、本発明による第1および/または第2の組成物は、第1未架橋ポリロタキサンおよび/または第2未架橋ポリロタキサンに加えて、組成物中への導入に先立って架橋することによって得られた少なくとも1つの架橋ポリロタキサンならびに、上記の通り、少なくとも1つの第1未架橋ポリロタキサンおよび少なくとも1つの第2未架橋ポリロタキサンを含む。
【0110】
液体脂肪相
第1組成物および/または第2組成物は、好都合には液体脂肪相を含む。
【0111】
「液体脂肪相」という用語は、本特許出願の意味の範囲内では、周囲温度(25℃)および大気圧(760mmHg)において液体であり、周囲温度で液体である1つまたは複数の非水性脂肪物質で構成されており、油または有機溶媒としても知られている脂肪相を意味するものと解釈する。
【0112】
油は、揮発性の油および/または不揮発性の油、ならびにこれらの混合物から選択することができる。
【0113】
油は、本発明による組成物中に、組成物の全重量に対して1重量%〜80重量%、好ましくは5重量%〜50重量%にわたる含有量で存在することができる。
【0114】
「揮発性の油」という用語は、本発明の意味の範囲内では、ケラチン物質に接触したときに、周囲温度および大気圧で、1時間未満で蒸発する能力がある油を意味するものと解釈する。本発明の揮発性の有機溶媒および揮発性の油は、周囲温度で液体であり、周囲温度および大気圧でゼロではない、特に0.13Pa〜40000Pa(10-3〜300mmHg)にわたる、特に1.3Pa〜13000Pa (0.01〜100mmHg)にわたる、より特別には1.3Pa〜1300Pa(0.01〜10mmHg)にわたる蒸気圧を有する揮発性の化粧用有機溶媒および油である。
【0115】
「不揮発性の油」という用語は、周囲温度および大気圧で少なくとも数時間ケラチン物質上に留まり、かつ特に10-3mmHg(0.13Pa)未満の蒸気圧を有する油を意味するものと解釈する。
【0116】
これらの油は炭化水素油、シリコーン油、フッ素化油またはこれらの混合物であればよい。
【0117】
「炭化水素油」という用語は、主に水素および炭素原子を含み、かつ任意選択で酸素、窒素、イオウおよびリン原子を含む油を意味するものと解釈する。揮発性の炭化水素油は、8〜16個の炭素原子を有する炭化水素油、特にC8〜C16分枝鎖アルカン、例えば石油起源のC8〜C16イソアルカン(イソパラフィンとしても知られている)、例えばイソドデカン(2,2,4,4,6-ペンタメチルヘプタンとしても知られている)、イソデカンまたはイソヘキサデカン、例えばIsoparまたはPermethylの商標で販売されている油、分枝鎖C8〜C16エステル、イソヘキシルネオペンタノエート、およびこれらの混合物から選択することができる。他の揮発性炭化水素油、例えば石油留分、特にShellによってShell Soltの名称で販売されているものも使用することができる。好ましくは、揮発性溶媒は、8〜16個の炭素原子を有する揮発性炭化水素油およびこれらの混合物から選択される。
【0118】
揮発性の油としては、揮発性のシリコーン、例えば揮発性の線状または環状シリコーン油、特に粘度≦8センチストークス(8×10-6m2/s)を有しかつ特に2〜7個のケイ素原子を有するものも使用することができ、これらのシリコーンは任意選択で1〜10個の炭素原子を有するアルキルまたはアルコキシ基を含む。本発明において使用することができる揮発性のシリコーン油としては特に、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、ヘプタメチルヘキシルトリシロキサン、ヘプタメチルオクチルトリシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサンおよびこれらの混合物を挙げることができる。
【0119】
一般式(I)の揮発性直鎖アルキルトリシロキサン油も挙げることができる。
【0120】
【化1】

【0121】
式中、Rは、2〜4個の炭素原子含むアルキル基を表し、その1つまたは複数の水素原子はフッ素または塩素原子で置換されていてもよい。
【0122】
一般式(I)の油のうち、Rがそれぞれブチル基、プロピル基、またはエチル基である式(I)の油に相当する
3-ブチル-1,1,1,3,5,5,5-ヘプタメチルトリシロキサン、
3-プロピル-1,1,1,3,5,5,5-ヘプタメチルトリシロキサン、および
3-エチル-1,1,1,3,5,5,5-ヘプタメチルトリシロキサン、
を挙げることができる。
【0123】
揮発性のフッ素化溶媒、例えばノナフルオロメトキシブタンまたはパーフルオロメチルシクロペンタンなども使用することができる。
【0124】
第1組成物および/または第2組成物は、特に不揮発性炭化水素油および/またはシリコーン油および/またはフッ素化油から選択された少なくとも1つの不揮発性の油をも含むことができる。
【0125】
不揮発性の炭化水素油としては特に以下のものを挙げることができる。
植物起源の炭化水素油、例えば脂肪酸およびグリセリンのトリエステル、C4〜C24の様々な鎖長を有することができる脂肪酸など、これらの鎖は直鎖または分枝鎖および飽和または不飽和であり得る;これらの油は、特に麦芽油、ヒマワリ油、ブドウ種子油、ゴマ油、トウモロコシ油、アプリコット核油、ヒマシ油、シア油、アボカド油、オリーブ油、大豆油、スイートアーモンド油、パーム油、菜種油、綿実油、ヘーゼルナッツ油、マカダミア油、ホホバ油、アルファルファ油、ケシ油、カボチャ種子油、キュウリ油、ブラックカラント種子油、宵待草油、キビ油、大麦油、キノア油、ライ麦油、ベニバナ油、キャンドルナッツ油、パッションフラワーまたはマスクローズ油;またはカプリル/カプリン酸のトリグリセリド、例えばStearineries Duboisによって販売されているものまたはDynamit NobelによってMiglyol 810、812および818の名称で販売されているもの、
10〜40個の炭素原子を有する合成エーテル、
鉱物または合成起源の直鎖または分枝鎖炭化水素、例えば流動パラフィン、ポリデセン、水素化ポリイソブテン、例えばParleam oil、スクアラン、スクアレンおよびこれらの混合物、
合成エステル、例えば式R1COOR2の油、式中R1は1〜40個の炭素原子を含む直鎖または分枝鎖脂肪酸の残基を表し、R2は炭化水素鎖、特に1〜40個の炭素原子を含む分枝炭化水素鎖を表すが、R1+R2は≧10であるという条件があり、例えば、Purcellin油(セテアリルオクタノエート)、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、C12〜C15アルキル安息香酸、ラウリン酸ヘキシル、アジピン酸ジイソプロピル、イソノナン酸イソノニル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、イソステアリン酸イソステアリル、オクタン酸エステル、デカン酸エステルまたはアルコールまたは多価アルコールのリシノール酸エステル、例えばジオクタン酸プロピレングリコールなど;ヒドロキシ化エステル、例えば乳酸イソステアリルまたはマレイン酸ジイソステアリルなど;およびペンタエリスリトールエステル、
12〜26個の炭素原子を有する分枝鎖および/または不飽和の炭素鎖を含み周囲温度で液体である脂肪アルコール、例えばオクチルドデカノール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、2-ヘキシルデカノール、2-ブチルオクタノールまたは2-ウンデシルペンタデカノールなど、
高級脂肪酸、例えばオレイン酸、リノール酸またはリノレン酸など、
炭酸エステル、
アセタール、
クエン酸エステル
これらの混合物。
【0126】
本発明による組成物中で使用することができる不揮発性シリコーン油は、不揮発性であるポリジメチルシロキサン(PDMS)、ペンダントアルキルまたはアルコキシ基および/またはシリコーン鎖の末端にアルキルまたはアルコキシ基を含み、基はそれぞれ2〜24個の炭素原子を有するポリジメチルシロキサン、フェニル化シリコーン、例えばフェニルトリメチコーン、フェニルジメチコーン、フェニル(トリメチルシロキシ)ジフェニルシロキサン、ジフェニルジメチコーン、ジフェニル(メチルジフェニル)トリシロキサンまたは(2-フェニルエチル)トリメチルシロキシシリケートなどであり得る。
【0127】
本発明において使用することができるフッ素化油は、特にフルオロシリコーン油、フッ素化ポリエーテルまたはフッ素化シリコーン、例えば欧州特許出願公開第847752号の文献で開示されているものなどである。
【0128】
一実施形態によれば、脂肪相は、好都合にはエステル油を含む。このエステル油は、モノカルボン酸とモノアルコールおよびポリアルコールとのエステルから選択することができる。
【0129】
好都合には、前記エステルは、次式(I)に対応する。
R1-CO-O-R2 (I)
式中、R1は1〜40個の炭素原子、好ましくは7〜19個の炭素原子の直鎖または分枝鎖アルキル基を表し、任意選択で1つまたは複数のエチレン性二重結合を含みかつ任意選択で置換されている、
R2は1〜40個の炭素原子、好ましくは3〜30個の炭素原子、さらにより良好には3〜20個の炭素原子の直鎖または分枝鎖アルキル基を表し、任意選択で1つまたは複数のエチレン性二重結合を含みかつ任意選択で置換されている。
【0130】
「任意選択で置換されている」という用語は、R1および/またはR2が、例えば、O、NおよびSから選択された1つまたは複数のヘテロ原子を含む基、例えばアミノ、アミン、アルコキシまたはヒドロキシルから選択された1つまたは複数の置換基を有することができることを意味するものと解釈する。
【0131】
好ましくはR1+R2の炭素原子の合計数≧9である。
【0132】
R1は直鎖または好ましくは分枝鎖の1〜40個の、さらにより良好には7〜19個の炭素原子を含む脂肪酸、好ましくは高級脂肪酸の残基を表すことができ、R2は直鎖または好ましくは分枝鎖で1〜40個の、好ましくは3〜30個、さらにより良好には3〜20個の炭素原子を含む炭化水素鎖を表すことができる。やはり、好ましくは、R1+R2の炭素原子数≧9である。
【0133】
R1基の例は、酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプロン酸、カプリール酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノレン酸、リノール酸、エレオステアリン酸、アラキドン酸およびエルカ酸ならびにこれらの混合物からなる群から選択される脂肪酸から由来されるものである。
【0134】
エステルの例は、例えば、Purcellin油(オクタン酸セテアリル)、イソノナン酸イソノニル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、ステアリン酸2-オクチルドデシル、エルカ酸2-オクチルドデシル、イソステアリン酸イソステアリル、およびアルコールのまたは多価アルコールの、例えば脂肪アルコールのヘプタン酸エステル、オクタン酸エステル、デカン酸エステル、またはリシノール酸エステルである。
【0135】
好都合には、このエステルは、R1が炭素原子1〜40個、好ましくは炭素原子7〜19個の無置換で直鎖または分枝鎖の、任意選択で1つまたは複数のエチレン性二重結合を含む、アルキル基を表しかつR2が炭素原子1〜40個、好ましくは炭素原子3〜30個、さらにより良好には炭素原子3〜20個の無置換で直鎖または分枝鎖の、任意選択で1つまたは複数のエチレン性二重結合を含む、アルキル基を表す上記式(I)の化合物から選択される。
【0136】
好ましくは、R1は炭素原子4〜14個、好ましくは炭素原子8〜10個の無置換で分枝鎖のアルキル基であり、かつR2は炭素原子5〜15個、好ましくは炭素原子9〜11個の無置換で分枝鎖のアルキル基である。好ましくは、式(I)において、R1-CO-およびR2は同数の炭素原子を有しかつ同じ基、好ましくは無置換で分枝鎖のアルキル、例えばイソノニルに由来する、すなわち、好都合にはこのエステル油の分子は対称形である。
【0137】
エステル油は、好ましくは次の化合物から選択される。
イソノナン酸イソノニル
オクタン酸セテアリル
ミリスチン酸イソプロピル
パルミチン酸2-エチルヘキシル
ステアリン酸2-オクチルドデシル
エルカ酸2-オクチルドデシル
イソステアリン酸イソステアリル
【0138】
組成物が唇に塗布されることが意図される場合は、特に「粘性」の油、すなわち25℃で好都合には200cSt以上の、特には500cSt以上の、実に1000cSt以上もの粘度を有する油が使用され得る。粘性油は好都合には600g/mol以上の、例えば700以上の、実に800もの、実に900g/molもの分子量を示す。
【0139】
粘性油の25℃における動的粘度は、Mettler RM 180回転粘度計で測定することができ、cStへの変換を行う際には油の密度を考慮に入れる。
【0140】
Mettler RM 180装置(Rheomat)は、測定したい粘度の高さの程度(桁数)によって様々なスピンドルを備えることができる。0.18〜4.02Pa・sの間の粘度に対してはこの装置にスピンドル3を備え、1〜24Pa・sの間の粘度に対してはこの装置にスピンドル4を備え、8〜122Pa・sの間の粘度に対してはこの装置にスピンドル5を備える。粘度は装置上で偏差の単位(DU)で読み取る。続いて測定装置と共に提供されたグラフを参照して対応するポアズでの値を得て、次いでストークスへの変換を行う。
【0141】
スピンドルの回転速度は200回転/分(rpm)である。
【0142】
スピンドルが一定の課された回転速度(この場合は200rpm)での回転に落ち着いたときから、油の粘度値は時間と共に変化し得る。測定値が一定になるまで一定の時間間隔で測定する。経時的に一定になった粘度の値が、粘性油の動的粘度の値として選択される値である。
【0143】
この油は以下のものから選択することができる。
a)シリコーン油、例えば
任意選択で、C3〜C40アルキルまたはC3〜C40アルコキシ鎖またはフェニル基を含むポリジメチルシロキサン(PDMS)、フェニルトリメチコーンから選択することができるフェニル化された基を含むポリジメチルシロキサン、
任意選択でフッ素化されたポリアルキルメチルシロキサン、例えばポリメチルトリフルオロプロピルジメチルシロキサンなど、
官能基、例えばヒドロキシル、チオールおよび/またはアミン基などによって置換されたポリアルキルメチルシロキサン、
脂肪酸、脂肪アルコールまたはポリオキシアルキレンによって修飾されたポリシロキサン、
これらの混合物、など
b)非極性炭化水素油、例えばスクアレン、直鎖または分枝鎖炭化水素、例えばパラフィン、流動パラフィンおよびナフタレン油、水素化または部分水素化されたポリイソブテン、イソエイコサン、スクアラン、デセン/ブテンコポリマー、ポリブテン/ポリイソブテンコポリマー、特にIndopol L-14、ポリデセン、例えばPuresyn 10、およびこれらの混合物。
【0144】
脂肪相は、組成物の全重量に対して5〜80重量%、好ましくは10〜60重量%、さらにより好ましくは15〜50重量%に相当し得る。
【0145】
一実施形態によれば、本発明による方法において使用される第1組成物および/または第2組成物は無水である、すなわち一部の化合物によって持ち込まれる残留水以外の水を含まない。
【0146】
水性相
第1および/または第2の組成物は、水性相を含むことができる。
【0147】
水性相は基本的に水から成る。それはまた、水および水と混和性の溶媒(25℃で50重量%超の水中への混和性)、例えば1〜5個の炭素原子を有する低級モノアルコールなど、例えばエタノールまたはイソプロパノール、2〜8個の炭素原子を有するグリコール、例えばプロピレングリコール、エチレングリコール、1,3-ブチレングリコールまたはジプロピレングリコールなど、C3〜C4ケトン、C2〜C4アルデヒドおよびこれらの混合物を含むことができる。
【0148】
この場合、水性相はこれを含む組成物の全重量に対して5〜95重量%、好ましくは10〜85重量%に相当し得る。
【0149】
固体またはペースト状脂肪物質
本発明による組成物は、周囲温度で固体であり特にワックス、ペースト状脂肪物質およびこれらの混合物から選択される少なくとも1つの脂肪物質も含むことができる。これらの脂肪物質は、動物、植物、鉱物または合成起源のものであり得る。
【0150】
ワックス
本発明による組成物は、ワックスまたはワックスの混合物を含むことができる。
【0151】
本発明の状況下で考慮されるワックスは、一般に周囲温度(25℃)で固体であり、可逆的な固体/液体の状態変化を示しかつ30℃以上で120℃までにわたり得る融点を有する親油性化合物である。
【0152】
ワックスを液体状態にすると(溶融)、それを油と混和性にして顕微鏡的に均一な混合物を形成させることが可能であるが、この混合物の温度を周囲温度に戻すと、混合物の油中でワックスの再結晶化が起こる。
【0153】
特に、本発明のために適当なワックスは、約45℃よりも高い、特には55℃よりも高い融点を示し得る。
【0154】
ワックスの融点は、示差走査熱量計(DSC)、例えばMettlerによってDSC 30の名称で販売されている熱量計を使用して測定することができる。
【0155】
測定の手順は次の通りである。
製品のサンプル15mgをるつぼに入れて最初の昇温を0℃〜120℃にわたって10℃/分の加熱速度で行い、次いで120℃から0℃まで10℃/分の冷却速度で冷却し、最後に、2回目の昇温を0℃〜120℃にわたって5℃/分の加熱速度で行う。2回目の昇温の間に空のるつぼによっておよび製品のサンプルを含むるつぼによって吸収される電力の差の変化を温度の関数として測定する。化合物の融点は、吸収された電力の差の変化を温度の関数として表す曲線のピークの頂点に対応する温度の値である。
【0156】
本発明による組成物中で使用され得るワックスは、動物、植物、鉱物または合成起源のワックスおよびこれらの混合物で、周囲温度において変形可能なものまたは変形不可能な固体から選択される。
【0157】
ワックスは、0.05MPa〜30MPaにわたる、好ましくは6MPa〜15MPaにわたる硬度をも示し得る。硬度は、0.1mm/sの測定速度で変位させられて0.3mmの貫入深さまでワックスに貫入する直径2mmのステンレス鋼のシリンダーを備えた、RheoによってTA-TX2iの名称で販売されているテクスチャー測定器を使用して20℃で測定される圧縮力の測定によって決定される。
【0158】
測定の手順は次の通りである。
ワックスをワックスの融点に等しい温度+20℃に溶融する。溶融ワックスを30mmの直径および20mmの深さを有する容器中に流し込む。ワックスを周囲温度(25℃)で24時間再結晶化させ、次いでワックスを硬度測定の前に20℃で少なくとも1時間貯蔵する。硬度の値は、測定された最大圧縮力をテクスチャー測定器のシリンダーのワックスと接触する表面積で割ったものである。
【0159】
特に炭化水素ワックス、例えばビーズワックス、ラノリンワックス、虫白ワックス、米ヌカワックス、カルナバワックス、カンデリラワックス、オウリキュリーワックス、エスパルトワックス、コルクファイバーワックス、サトウキビワックス、漆ワックス、およびスマックワックス;モンタンワックス、微結晶ワックス、パラフィンワックスおよびオゾケライト;ポリエチレンワックス、フィッシャートロプシュ合成によって得たワックスおよびワックス状コポリマー、ならびにこれらのエステルを使用することができる。
【0160】
直鎖または分枝鎖のC8〜C32脂肪族鎖を有する動物または植物油の接触水素化によって得たワックスも挙げることができる。
【0161】
特にとりわけ水素化ホホバ油、異性化ホホバ油、例えばDesert WhaleによってIso-Jojoba-50(登録商標)の市販参照名で製造または販売されているトランス異性化部分水素化ホホバ油、水素化ヒマワリ油、水素化ヒマシ油、水素化ココナッツ油、水素化ラノリン油、Hetereneによって「Hest 2T-4S」の名称で販売されているジ(1,1,1-トリメチロールプロパン)テトラステアレート、またはHetereneによって「Hest 2T-4B」の名称で販売されているジ(1,1,1-トリメチロールプロパン)テトラベヘネートを挙げることができる。
【0162】
シリコーンワックス、例えば16〜45個の炭素原子を有するアルキルまたはアルコキシジメチコーンなど、またはフッ素化ワックスも挙げることができる。
【0163】
「Phytowax Olive 18L 57」の名称で販売されているステアリルアルコールとエステル化されたオリーブ油との水素化によって得たワックス、あるいはSophimによって「Phytowax castor 16L64」および「Phytowax castor 22L73」の名称で販売されているセチルアルコールとエステル化されたヒマシ油の水素化によって得たワックスも使用することができる。かかるワックスは、仏国特許出願公開第2792190号に記載されている。
【0164】
特定の一実施形態によれば、本発明による組成物は、「粘着性ワックス」として知られている、すなわち0.7N.s以上の粘着性(タック、tack)および3.5Mpa以下の硬度を有する少なくとも1つのワックスを含むことができる。
【0165】
粘着性ワックスの使用は、特にケラチン繊維に容易に塗布でき、ケラチン繊維への良好な付着性を有し、滑らかで均一な厚みのあるメイクアップの形成をもたらす美容組成物を得ることを可能にする。
【0166】
使用する粘着性ワックスは、特に0.7N.s〜30N.sにわたる、特に1N.s以上の、特に1N.s〜20N.sにわたる、特に2N.s以上の、特に2N.s〜10N.sにわたる、特に2N.s〜5N.sにわたる粘着性を有することができる。
【0167】
ワックスの粘着性は、アクリルポリマーで作成した45゜の角度を成す円錐形状のスピンドルを備えた、Rheoによって「TA-TX2i(登録商標)」の名称で販売されているテクスチャー測定器を使用する、20℃における時間の関数としての力(圧縮力または延伸力)の変化の測定によって決定する。
【0168】
測定の手順は次の通りである。
ワックスをワックスの融点に等しい温度+10℃で溶融する。溶融ワックスを25mmの直径および20mmの深さを有する容器中に流し込む。ワックスを周囲温度(25℃)で24時間再結晶化させ、その結果、ワックスの表面は平らかつ滑らかとなり、次いでワックスを粘着性測定の前に20℃で少なくとも1時間貯蔵する。
【0169】
テクスチャー測定器のスピンドルを0.5mm/sの速度で移動させ、次いでワックスに2mmの貫入深さまで貫入させる。スピンドルがワックスに2mmの深さまで貫入し終わったら、スピンドルを1秒間(緩和時間に相当する)固定して保ち、次いで0.5mm/sの速度で引き戻す。
【0170】
緩和時間の間に、力(圧縮力)は急速に0になるまで低減し、次いでスピンドルの引き戻しの間に、力(延伸力)は負になり続いて再び0の値に向かって増大する。粘着性は時間の関数としての力の曲線の、力(延伸力)の負の値に対応する曲線の部分についての積分値に相当する。粘着性の値はN.sで表される。
【0171】
一般的に使用することができる粘着性ワックスは、3.5MPa以下、特に0.01MPa〜3.5Mpaにわたる、特に0.05MPa〜3MPaにわたる、実にさらに0.1MPa〜2.5MPaにもわたる硬度を有する。
【0172】
硬度は上記の手順によって測定する。
【0173】
粘着性ワックスとしては、C20〜C40アルキル(ヒドロキシステアリルオキシ)ステアレート(このアルキル基は20〜40個の炭素原子を含む)を単独でまたは混合物として、特にC20〜C40アルキル12-(12'-ヒドロキシステアリルオキシ)ステアレートを使用することができる。
【0174】
かかるワックスは、特にKoster Keunenによって「Kester Wax K 82 P(登録商標)」および「Kester Wax K 80 P(登録商標)」の名称で販売されている。
【0175】
上述のワックスは、一般に45℃未満の当初の融点を示す。
【0176】
ワックスは水性ワックスミクロ分散体の形態で存在することができる。「水性ワックスミクロ分散体」という用語は、ワックス粒子のサイズが約1μm以下である前記ワックス粒子の水性分散体を意味するものと解釈する。
【0177】
ワックスミクロ分散体はコロイド状ワックス粒子の安定な分散体であり、「Microemulsions Theory and Practice」、L.M. Prince編、Academic Press(1977年)、21〜32頁に特に記載されている。
【0178】
特に、これらのワックスミクロ分散体は、ワックスを界面活性剤および任意選択で水の一部分の存在下で溶融し、次いで撹拌しながら徐々に熱水を加えることによって得ることができる。油中水型エマルジョンの中間形成、続いて相反転、最終的に水中油型ミクロエマルジョンが得られることが観察される。冷却すると、固体コロイド状ワックス粒子の安定なミクロ分散体が得られる。
【0179】
ワックスミクロ分散体は、ワックス、界面活性剤および水の混合物を、超音波、高圧ホモジナイザーまたはタービンミキサーなどの撹拌手段を用いて撹拌することによっても得ることができる。
【0180】
ワックスミクロ分散体の粒子は、好ましくは1μm未満の(特に0.02μm〜0.99μmにわたる)、好ましくは0.5μm未満の(特に0.06μm〜0.5μmにわたる)平均サイズを有する。
【0181】
これらの粒子は基本的にワックスまたはワックスの混合物から構成されている。しかし、これらは、より少ない比率の油状および/またはペースト状の脂肪質添加物、界面活性剤および/または従来の脂溶性添加物/活性成分を含むことができる。
【0182】
「ペースト状脂肪物質」という用語は、23℃の温度で液体画分および固体画分を含む親油性脂肪化合物を意味するものと解釈する。
【0183】
前記ペースト状化合物は、好ましくは20℃で0.001〜0.5MPa、好ましくは0.002〜0.4MPaにわたる硬度を有する。
【0184】
硬度は、サンプル化合物中へのプローブの貫入の方法によって、特に2mmの直径を有するステンレス鋼シリンダーを備えたテクスチャー測定器(例えば、RheoからのTA-XT2i)を使用して測定する。硬度測定は、20℃で5つのサンプルの中心で行う。シリンダーはそれぞれのサンプル中へ1mm/sの予備速度で、次いで0.1mm/sの測定速度で導入され、貫入の深さは0.3mmである。硬度として記録される値は、最大ピークの値である。
【0185】
23℃で測定されたペースト状化合物の液体画分は、好ましくは化合物の9〜97重量%に相当する。この23℃での液体画分は、好ましくは15重量%〜85重量%、より好ましくは40重量%〜85重量%に相当する。ペースト状化合物の23℃での液体の重量分率は、23℃で消費される溶融エンタルピーのペースト状化合物の溶融エンタルピーに対する比に等しい。
【0186】
ペースト状化合物の溶融エンタルピーは、固体状態から液体状態へ変化するために化合物によって消費されるエンタルピーである。ペースト状化合物は、その質量の全体が結晶性固体の形態であるときは「固体状態で」ある。ペースト状化合物は、その質量の全体が液体の形態であるときは「液体状態で」ある。
【0187】
ペースト状化合物の溶融エンタルピーは、示差走査熱量計(DSC)、例えばTA InstrumentによってMDSC 2920の名称で販売されている熱量計を使用して1分間当たりに5または10℃の温度上昇で、ISO標準11357-3: 1999によって得たサーモグラムの曲線下の面積に等しい。ペースト状化合物の溶融エンタルピーは、化合物を固体状態から液体状態まで変化させるのに必要なエネルギーの量である。これはJ/gで表す。
【0188】
23℃で消費される溶融エンタルピーは、固体状態からサンプルが23℃で示す液体画分および固体画分で構成されている状態まで変化するためにサンプルによって吸収されるエネルギーの量である。
【0189】
32℃で測定されたペースト状化合物の液体画分は、好ましくは化合物の30重量%〜100重量%、好ましくは80〜100%、より好ましくは化合物の90〜100重量%に相当する。32℃で測定されたペースト状化合物の液体画分が100%に等しいときは、ペースト状化合物の溶融範囲の終わりの温度は32℃以下である。
【0190】
32℃で測定されたペースト状化合物の液体画分は、32℃で消費される溶融エンタルピーのペースト状化合物の溶融エンタルピーに対する比に等しい。32℃で消費される溶融エンタルピーは、23℃で消費される溶融エンタルピーと同じ方法で計算される。
【0191】
ペースト状物質は、一般に炭化水素化合物、例えばラノリンおよびそれらの誘導体など、またはPDMSでもある。
【0192】
固体物質の性質および量は、望まれる力学的性質およびテクスチャーに依存する。目安としては、それぞれの第1または第2の組成物は、組成物の全重量に対して0.1〜70重量%、さらにより良好には1〜60重量%、なおさらにより良好には5〜40重量%のワックスを含むことができる。
【0193】
フィルム形成性ポリマー
第1および/または第2の組成物は、フィルム形成性のポリマーを含むことができる。本発明によれば、「フィルム形成性ポリマー」という用語は、単独でまたはフィルムを形成することができるさらなる剤の存在下で、支持体、特にケラチン物質に接着する連続したフィルムを形成する能力があるポリマーを意味するものと解釈する。
【0194】
フィルム形成性ポリマーは、本発明のそれぞれの組成物中に、組成物の全重量に対して0.1重量%〜30重量%、好ましくは0.5重量%〜20重量%、さらにより良好には1重量%〜15重量%の乾燥物質(または活性物質)含有量で存在することができる。
【0195】
本発明の組成物中で使用することができるフィルム形成性ポリマーのうちでは、ラジカル型のまたは重縮合型の合成ポリマー、天然起源のポリマー、およびこれらの混合物を挙げることができる。
【0196】
「ラジカルフィルム形成性ポリマー」という用語は、不飽和、特にエチレン性不飽和を有するモノマーで、それぞれ(重縮合物とは違って)ホモ重合する能力があるモノマーの重合によって得られるポリマーを意味するものと解釈する。
【0197】
ラジカル型フィルム形成性ポリマーは、特にビニルポリマーまたはコポリマー、特にアクリル系ポリマーであればよい。
【0198】
フィルム形成性ビニルポリマーは、少なくとも1つの酸基を有する、エチレン性不飽和を有するモノマーのおよび/またはこれらの酸性モノマーのエステルのおよび/またはこれらの酸性モノマーのアミドの重合から生じ得る。
【0199】
酸基を有するモノマーとしては、不飽和のα,β-エチレン性カルボン酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸またはイタコン酸などを使用することができる。好ましくは(メタ)アクリル酸およびクロトン酸、より優先的には(メタ)アクリル酸を使用する。
【0200】
酸性モノマーのエステルは、好都合には(メタ)アクリル酸のエステル(アクリレート(メタクリレート)としても知られている)、特にアルキルアクリレート(メタクリレート)、特にC1〜C30アルキルアクリレート(メタクリレート)、好ましくはC1〜C20アルキルアクリレート(メタクリレート)、アリールアクリレート(メタクリレート)、特にC6〜C10アリールアクリレート(メタクリレート)、ヒドロキシアルキルアクリレート(メタクリレート)、特にC2〜C6ヒドロキシアルキルアクリレート(メタクリレート)から選択される。
【0201】
アルキルアクリレート(メタクリレート)のうちでは、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレートまたはシクロヘキシルメタクリレートを挙げることができる。
【0202】
ヒドロキシアルキルアクリレート(メタクリレート)のうちでは、ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレートまたは2-ヒドロキシプロピルメタクリレートを挙げることができる。
【0203】
アリールアクリレート(メタクリレート)のうちでは、ベンジルアクリレートおよびフェニルアクリレートを挙げることができる。
【0204】
特に好ましい(メタ)アクリル酸のエステルは、アルキルアクリレート(メタクリレート)である。
【0205】
本発明によれば、エステルのアルキル基は、フッ素化されているかまたはペルフルオロ化されているかのどちらか、すなわちアルキル基の水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されていてもよい。
【0206】
酸性モノマーのアミドとしては、例えば(メタ)アクリルアミド、特にN-アルキル(メタ)アクリルアミド、特にN-(C2〜C12アルキル)(メタ)アクリルアミドを挙げることができる。N-アルキル(メタ)アクリルアミドのうちでは、N-エチルアクリルアミド、N-(t-ブチル)アクリルアミド、N-(t-オクチル)アクリルアミドおよびN-ウンデシルアクリルアミドを挙げることができる。
【0207】
フィルム形成性ビニルポリマーは、ビニルエステルおよびスチレンモノマーから選択されたモノマーのホモ重合からまたは共重合からも生じ得る。特に、これらのモノマーは、酸性モノマーおよび/またはそれらのエステルおよび/またはそれらのアミド、例えば上述したものなどと共に重合させることができる。
【0208】
ビニルエステルの例としては、酢酸ビニル、ネオデカン酸ビニル、ピバル酸ビニル、安息香酸ビニルおよびt-ブチル安息香酸ビニルを挙げることができる。
【0209】
スチレンモノマーとしては、スチレンおよびα-メチルスチレンを挙げることができる。
【0210】
フィルム形成性重縮合物のうちでは、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエステルアミド、ポリアミド、エポキシエステル樹脂またはポリウレタンを挙げることができる。
【0211】
ポリウレタンは、アニオン性、カチオン性、非イオン性または両性ポリウレタン、ポリウレタンアクリル、ポリウレタン-ポリビニルピロリドン、ポリエステル-ポリウレタン、ポリエーテル-ポリウレタン、ポリ尿素、ポリ尿素-ポリウレタン、およびこれらの混合物から選択することができる。
【0212】
ポリエステルは、特定のジオール中でのジカルボン酸とポリオールとの重縮合によって知られている方法で得ることができる。
【0213】
ジカルボン酸は、脂肪族、脂環式または芳香族であり得る。かかる酸の例としては、シュウ酸、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、2,2-ジメチルグルタル酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、ドデカンジオン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,5-ノルボルナンジカルボン酸、ジグリコール酸、チオジプロピオン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸または2,6-ナフタレンジカルボン酸を挙げることができる。これらのジカルボン酸モノマーは、単独でまたは少なくとも2つのジカルボン酸モノマーの組合せとして使用することができる。これらのモノマーのうちでフタル酸、イソフタル酸またはテレフタル酸が優先的に選択される。
【0214】
ジオールは、脂肪族、脂環式または芳香族ジオールから選択することができる。エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、シクロヘキサンジメタノール、または1,4-ブタンジオールから選択されたジオールが好んで使用される。他のポリオールと同じく、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトールまたはトリメチロールプロパンを使用することができる。
【0215】
ポリエステルアミドは、ポリエステルと類似の方法で、二塩基酸とジアミンまたはアミノアルコールとの重縮合によって得ることができる。ジアミンとしてはエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、メタ-フェニレンジアミンまたはパラ-フェニレンジアミン、を使用することができる。アミノアルコールとしては、モノエタノールアミンを使用することができる。
【0216】
ポリエステルは、加えて、少なくとも1つの-SO3M基を有する少なくとも1つのモノマーを含むことができ、Mは水素原子、NH4+アンモニウムイオンまたは、例えばNa+、Li+、K+、Mg2+、Ca2+、Cu2+、Fe2+またはFe3+イオンなどの金属イオンを表す。特にかかる-SO3M基を含む二官能性芳香族モノマーを使用することができる。
【0217】
上記の-SO3M基を加えて有する二官能性芳香族モノマーの芳香核は、例えばベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ジフェニル、オキシジフェニル、スルホニルジフェニルまたはメチレンジフェニル核から選択することができる。加えて-SO3M基を有する二官能性芳香族モノマーの例としては、スルホイソフタル酸、スルホテレフタル酸、スルホフタル酸または4-スルホナフタレン-2,7-ジカルボン酸を挙げることができる。
【0218】
イソフタレート/スルホイソフタレート系コポリマーおよびより特別にはジエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、イソフタル酸およびスルホイソフタル酸の縮合によって得られるコポリマーの使用が優先される。
【0219】
任意選択で修飾された天然起源のポリマーは、シェラック樹脂、サンダラックガム、ダマール、エレミス、コーパル、セルロースポリマーおよびこれらの混合物から選択することができる。
【0220】
本発明による組成物の第1実施形態によれば、フィルム形成性ポリマーは、水溶性ポリマーであってよく組成物の水性相中に存在することができ、したがってこのポリマーは組成物の水性相に溶解される。
【0221】
本発明による組成物のもう1つの代替の実施形態によれば、フィルム形成性ポリマーは、油または有機溶媒を含む液体脂肪相に溶解させたポリマー、例えば上記のもの(上記ではフィルム形成性ポリマーは脂溶性ポリマーとして記載した)などでよい。好ましくは、液体脂肪相は揮発性の油を、任意選択で不揮発性の油との混合物として、含み、この油は上述の油から選択することが可能である。
【0222】
脂溶性ポリマーの例としては、ビニルエステル(このビニル基は直接エステル基の酸素原子に接続されており、ビニルエステルはエステル基のカルボニルに結合している炭素原子1〜19個の、飽和した、直鎖または分枝鎖の炭化水素基を有している)および(すでに存在しているビニルエステル以外の)ビニルエステル、(8〜28個の炭素原子を有する)α-オレフィン、アルキルビニルエーテル(このアルキル基は2〜18個の炭素原子を有する)またはアリルもしくはメタリルエステル(エステル基のカルボニルに結合している炭素原子1〜19個の、飽和した、直鎖または分枝鎖の炭化水素基を有している)であり得る少なくとも1つの他のモノマーのコポリマーを挙げることができる。
【0223】
これらのコポリマーは、ビニル型のまたはアリルもしくはメタリル型のどちらかであり得る架橋剤、例えばテトラアリルオキシエタン、ジビニルベンゼン、ジビニルオクタンジオエート、ジビニルドデカンジオエートおよびジビニルオクタデカンジオエートを使用して架橋することができる。
【0224】
これらのコポリマーの例としては次のコポリマーを挙げることができる。酢酸ビニル/ステアリン酸アリル、酢酸ビニル/ラウリン酸ビニル、酢酸ビニル/ステアリン酸ビニル、酢酸ビニル/オクタデセン、酢酸ビニル/オクタデシルビニルエーテル、プロピオン酸ビニル/ラウリン酸アリル、プロピオン酸ビニル/ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル/1-オクタデセン、酢酸ビニル/1-ドデセン、ステアリン酸ビニル/エチルビニルエーテル、プロピオン酸ビニル/セチルビニルエーテル、ステアリン酸ビニル/酢酸アリル、2,2-ジメチルオクタン酸ビニル/ラウリン酸ビニル、2,2-ジメチルペンタン酸アリル/ラウリン酸ビニル、ジメチルプロピオン酸ビニル/ステアリン酸ビニル、ジメチルプロピオン酸アリル/ステアリン酸ビニル、0.2%のジビニルベンゼンで架橋されたプロピオン酸ビニル/ステアリン酸ビニル、0.2%のジビニルベンゼンで架橋されたジメチルプロピオン酸ビニル/ラウリン酸ビニル、0.2%のテトラアリルオキシエタンで架橋された酢酸ビニル/オクタデシルビニルエーテル、0.2%のジビニルベンゼンで架橋された酢酸ビニル/ステアリン酸アリル、0.2%のジビニルベンゼンで架橋された酢酸ビニル/1-オクタデセン、および0.2%のジビニルベンゼンで架橋されたプロピオン酸アリル/ステアリン酸アリル。
【0225】
脂溶性フィルム形成性ポリマーとしては、脂溶性コポリマー特に9〜22個の炭素原子を有するビニルエステルまたはアルキル基が10〜20個の炭素原子を有するアルキルアクリレートもしくはメタクリレートの共重合から得られるものも挙げることができる。
【0226】
かかる脂溶性コポリマーは、ポリ(ステアリン酸ビニル)のコポリマー、ジビニルベンゼン、ジアリルエーテルまたはフタル酸ジアリルを使用して架橋されたポリ(ステアリン酸ビニル)のコポリマー、ポリ(ステアリルアクリレート(メタクリレート))のコポリマー、ポリ(ラウリン酸ビニル)のコポリマー、ポリ(ラウリルアクリレート(メタクリレート))のコポリマーから選択することができ、これらのポリアクリレート(メタクリレート)はエチレングリコールジメタクリレートまたはテトラエチレングリコールジメタクリレートを使用して架橋することが可能である。
【0227】
上記で定義した脂溶性コポリマーは知られており、特に仏国特許出願公開第2232303号で開示されている。これらのコポリマーは2000〜500000、好ましくは4000〜200000にわたる重量平均分子量を有し得る。
【0228】
脂溶性ホモポリマー、特に9〜22個の炭素原子を有するビニルエステルまたはアルキル基が2〜24個の炭素原子を有するアルキルアクリレートもしくはメタクリレートのホモ重合から得られるものも挙げることができる。
【0229】
脂溶性ホモポリマーの例としては、特にポリ(ラウリン酸ビニル)およびポリ(ラウリルアクリレート(メタクリレート))を挙げることができ、これらのポリアクリレート(メタクリレート)はエチレングリコールジメタクリレートまたはテトラエチレングリコールジメタクリレートを使用して架橋することが可能である。
【0230】
好都合な一実施形態によれば、本発明による方法の第1組成物は、少なくとも1つのポリ(ラウリン酸ビニル)フィルム形成性ポリマーを含む。
【0231】
本発明において使用することができる脂溶性フィルム形成性ポリマーとしては、ポリアルキレン、特にC2〜C20アルケン、例えばポリブテンのコポリマー、飽和または不飽和で直鎖または分枝鎖のC1〜C8アルキル基を有するアルキルセルロース、例えばエチルセルロースおよびプロピルセルロース、ビニルピロリドン(VP)のコポリマー、特にビニルピロリドンとC2〜C40アルケン、さらにより良好にはC3〜C20アルケンとのコポリマーも挙げることができる。本発明において使用することができるVPコポリマーの例としては、VP/酢酸ビニル、VP/エチルメタクリレート、VP/エチルメタクリレート/メタクリル酸、VP/エイコセン、VP/ヘキサデセン、VP/トリアコンテン、VP/スチレンまたはVP/アクリル酸/ラウリルメタクリレートコポリマーあるいはブチル化ポリビニルピロリドン(PVP)を挙げることができる。
【0232】
一般的にシリコーン油中で可溶性または膨潤性で、架橋ポリオルガノシロキサンポリマーであるシリコーン樹脂も挙げることができる。シリコーン樹脂の命名法は「MDTQ」の名称で知られており、樹脂はそれが含む様々なシロキサンモノマー単位によって記載され、文字「MDTQ」のそれぞれが1種類の単位を表す。
【0233】
市販のポリメチルシルセスキオキサン樹脂の例としては、
WackerによってResin MKの参照名で販売されているもの、例えば、Belsil PMS MKなど、
信越によってKR-220Lの参照名で販売されているもの
を挙げることができる。
【0234】
シロキシシリケート樹脂としては、トリメチルシロキシシリケート(TMS)樹脂、例えばGeneral ElectricによってSR1000の参照名でまたはWackerによってTMS 803の参照名で販売されているものなどを挙げることができる。信越によって「KF-7312J」の名称でまたはDow Corningによって「DC 749」もしくは「DC 593」の名称でシクロメチコーンなどの溶媒中で販売されているトリメチルシロキシシリケート樹脂も挙げることができる。
【0235】
上述したものなどのシリコーン樹脂のポリジメチルシロキサンとのコポリマー、例えばDow CorningによってBIO-PSAの参照名で販売され、米国特許第5162410号の文献で開示されている感圧接着剤コポリマーまたは上記のものなどのシリコーン樹脂および国際公開第2004/073626号の文献で開示されているものなどのジオルガノシロキサンの反応から得られるシリコーンコポリマーも挙げることができる。
【0236】
ポリオルガノシロキサン型のシリコーンポリアミド、例えば米国特許第5874069号、米国特許第5919441号、米国特許第6051216号および米国特許第5981680号の文献に記載されているものなども使用することができる。
【0237】
これらのシリコーンポリマーは、次の2つの群に属することができる。
水素相互作用を成立させる能力がある少なくとも2つの基を含むポリオルガノシロキサン、これら2つの基はポリマーの鎖中に位置しており、および/または
水素相互作用を成立させる能力がある少なくとも2つの基を含むポリオルガノシロキサン、これら2つの基はグラフトまたは分枝上に位置している。
【0238】
本発明の一実施形態によれば、フィルム形成性ポリマーは、フィルム形成性の直鎖でエチレン系のブロックポリマーであり、好ましくは異なるガラス転移温度(Tg)を有する少なくとも1つの第1ブロックおよび少なくとも1つの第2ブロックを含み、前記第1および第2のブロックは第1ブロックの少なくとも1つの構成モノマーおよび第2ブロックの少なくとも1つの構成モノマーを含む中間ブロックを介して互いに接続されている。
【0239】
好都合には、ブロックポリマーの第1および第2ブロックは、互いに非相溶性である。
【0240】
かかるポリマーは、例えば欧州特許第1411069号または国際公開第04/028488号の文献で開示されている。
【0241】
フィルム形成性ポリマーは、水性相中または非水性溶媒相中における分散体中の粒子の形態で本組成物中に存在することもでき、一般にラテックスまたは擬ラテックスという名称で知られている。これらの分散体の調製のための技法は当業者には周知である。
【0242】
水性フィルム形成性ポリマー分散体としては、アクリル系分散体、Avencia NeoresinsによってNeocryl XK-90(登録商標)、Neocryl A-1070(登録商標)、Neocryl A-1090(登録商標)、Neocryl BT-62(登録商標)、Neocryl A-1079(登録商標)、Neocryl A-523(登録商標)、Dow ChemicalによってDow Latex 432(登録商標)、大都化成工業によってDaitosol 5000 AD(登録商標)またはDaitosol 5000 SJ(登録商標)、InterpolymerによってSyntran 5760(登録商標)、Rohm & HaasによってAllianz OPTの各名称で販売されている;アクリル系またはスチレン/アクリル系ポリマーの水性分散体、Johnson PolymerによってJoncryl(登録商標)の商標で販売されている;あるいはポリウレタンの水性分散体、Avencia-NeoresinsによってNeorez R-981(登録商標)およびNeorez R-974(登録商標)、GoodrichによってAvalure UR-405(登録商標)、Avalure UR-410(登録商標)、Avalure UR-425(登録商標)、Avalure UR-450(登録商標)、Sancure 875(登録商標)、Sancure 861(登録商標)、Sancure 878(登録商標)およびSancure 2060(登録商標)、BayerによってImpranil 85(登録商標)、HydromerによってAquamere H-1511(登録商標)の各名称で販売されている;スルホポリエステル、Eastman Chemical ProductsによってEastman AQ(登録商標)の商標で販売されている;ビニル分散体、例えばChimexからのMexomer PAM(登録商標)など、ならびにこれらの混合物を使用することができる。
【0243】
フィルム形成性ポリマーの非水性分散体の例としては、イソドデカン中のアクリル系分散体、例えばChimexからのMexomer PAP(登録商標);グラフトされたエチレン系ポリマーの粒子の分散体、好ましくは液体脂肪相中のアクリル系ポリマーであって、このエチレン系ポリマーは好都合には粒子表面に追加の安定剤なしで分散されており、例えば特に国際公開第04/055081号の文献で開示されているものなど、を挙げることができる。
【0244】
本発明による組成物は、フィルム形成性ポリマーを用いるフィルムの形成に有利な可塑剤を含むことができる。かかる可塑剤は、所望の役割を果たす能力がある当業者には知られているどの化合物からでも選択することができる。
【0245】
着色料
本発明による方法において使用される第1および第2の組成物は、例えば、顔料、真珠光沢剤、染料、効果材料およびこれらの混合物から選択される少なくとも1つの着色料を含むことができる。
【0246】
これらの着色料は、第1および第2の組成物それぞれの重量に対して、0.01〜50重量%、好ましくは0.01〜30重量%にわたる含有量で存在することができる。
【0247】
本発明において有用な顔料は、顔料のペーストまたは粉末の形態で提供されることができる。
【0248】
「染料」という用語は、少なくとも1つの油中にまたは1つの水性/アルコール性相中に可溶である化合物、一般には有機化合物を意味すると解釈するべきである。
【0249】
「顔料」という用語は、白色または有色で無機または有機の粒子であり、水性媒体中には不溶であり、得られるフィルムを着色および/または不透明化することを意図される粒子を意味すると解釈するべきである。
【0250】
「真珠光沢剤」または「真珠光沢顔料」という用語は、玉虫色または玉虫色でない任意の形状の着色粒子であり、特にある種の貝によってその殻中に生成されまたは合成されかつ色彩光学的干渉の効果を示すものを意味すると解釈するべきである。
【0251】
顔料はそれらの製品中に分散化剤によって分散させることができる。
【0252】
分散化剤は、分散された粒子を凝集またはフロック化から保護する。この分散化剤は、界面活性剤、オリゴマー、ポリマーまたはこれらのいくつかの混合物であって、分散される粒子の表面に対する強い親和性を有する1つまたは複数の官能基を持っているものであればよい。特に、これらは顔料の表面に物理的にまたは化学的に結合されるようになることができる。これらの分散化剤は、加えて少なくとも1つの連続媒体中に適合的な、または可溶性の官能基を示す。特に12-ヒドロキシステアリン酸のエステル、特に、C8〜C20脂肪酸とポリオール、例えばグリセリンまたはジグリセリンとのエステル、例えば約750g/molの分子量を有するポリ(12-ヒドロキシステアリン酸)のステアレート、例えばAveciaによってSolsperse 21000の名称で販売されているもの、HenkelによってDehymyls PGPHの参照名で販売されているポリグリセリル-2ジポリヒドロキシステアレート(CTFA名)、またはポリヒドロキシステアリン酸、例えばUniqemaによってArlacel P100の参照名で販売されているものなど、およびこれらの混合物が使用される。
【0253】
本発明の組成物中で使用することができる他の分散化剤としては、重縮合脂肪酸の第四級アンモニウム誘導体、例えばAveciaによって販売されているSolsperse 17000、またはポリジメチルシロキサン/オキシプロピレン混合物、例えばDow CorningによってDC2-5185またはDC2-5225 Cの参照名で販売されているものを挙げることができる。
【0254】
ポリジヒドロキシステアリン酸および12-ヒドロキシステアリン酸のエステルは、好ましくは炭化水素またはフッ素化媒体用を意図するものであり、オキシエチレン/オキシプロピレン化ジメチルシロキサン混合物は好ましくはシリコーン媒体用を意図するものである。
【0255】
無機顔料のうちでは、任意選択で表面を処理した二酸化チタン、酸化ジルコニウムまたは酸化セリウム、また、酸化亜鉛、酸化鉄(黒、黄色または赤)または酸化クロム、マンガン紫、ウルトラマリンブルー、クロム水和物およびフェリックブルー、および金属粉末、例えばアルミニウム粉末または銅粉末を挙げることができる。
【0256】
有機顔料のうちでは、カーボンブラック、コチニールカルミン系D&C型顔料およびレーキ、バリウム、ストロンチウム、カルシウムまたはアルミニウムを挙げることができる。
【0257】
エフェクト顔料、例えば有機または無機の天然または合成基材など、例えばガラス、アクリル系樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、セラミックまたはアルミナを含む粒子も挙げることができ、前記基材は金属物質、例えばアルミニウム、金、銀、白金、銅もしくは青銅、または金属酸化物、例えば二酸化チタン、酸化鉄もしくは酸化クロムなど、およびこれらの混合物で被覆されているかまたは被覆されていない。
【0258】
真珠光沢顔料は、酸化チタンでまたはビスマスオキシクロリドでカバーされたマイカ、酸化鉄でカバーされた酸化チタンをコートされたマイカ、特にフェッリックブルーまたは酸化クロムでカバーされた酸化チタンをコートされたマイカ、上記の種類の有機顔料でカバーされた酸化チタンをコートされたマイカ、および同様にビスマスオキシクロリド系真珠光沢顔料から選択することができる。干渉顔料、特に液晶または多層顔料も使用することができる。
【0259】
本発明による組成物は、少なくとも1つの充点剤を、それぞれの組成物の全重量に対して、特に0.01重量%〜50重量%にわたる、好ましくは0.01重量%〜30重量%にわたる含有量で含むことができる。充填剤は、無機でも有機でもまたいかなる形状、小板、球または長方形でも、どの結晶学的形態(例えば、板状晶、立方晶、六方晶、斜方晶など)でもよい。タルク、マイカ、シリカ、カオリン、ポリアミド(ナイロン(登録商標))から形成された粉末(AtochemからのOrgasol(登録商標))、ポリ-β-アラニンおよびポリエチレン、テトラフルオロエチレンポリマー(Teflon(登録商標))で形成された粉末、ラウロイルリジン、デンプン、窒化ホウ素、中空ポリマーミクロスフェア、例えばポリ(塩化ビニリデン)/アクリロニトリル、例えばExpancel(登録商標)(Nobel Industry)またはアクリル酸コポリマー(Dow CorningからのPolytrap(登録商標))およびシリコーン樹脂マイクロビーズ、(例えば東芝からのTospearls(登録商標))、ポリオルガノシロキサンエラストマーで形成された粒子、沈降炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ヒドロキシアパタイト、中空シリカミクロスフェア(MaprecosからのSilica Beads(登録商標))、ガラスまたはセラミックのミクロカプセル、または8〜22個の炭素原子、好ましくは12〜18個の炭素原子を有する有機カルボン酸から誘導された金属石鹸、例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸リチウム、ラウリン酸亜鉛またはミリスチン酸マグネシウムを挙げることができる。
【0260】
本発明による組成物は、化粧品中で普通に使用される成分、例えばビタミン、増粘剤、親油性または親水性ゲル化剤、痕跡元素、柔軟剤、金属イオン封鎖剤、香料、塩基性化剤もしくは酸性化剤、保存料、日焼け止め剤、界面活性剤、酸化防止剤、繊維、手入れ用剤またはこれらの混合物も含むことができる。
【0261】
本発明による組成物中で使用することができるゲル化剤は、ポリマーのまたは分子の、有機のまたは無機の、および親水性のまたは親油性のゲル化剤であり得る。
【0262】
無機の親油性ゲル化剤としては、任意選択で修飾された粘土、例えばC10〜C22脂肪酸アンモニウムクロリドによって修飾されたヘクトライト、例えばジステアリルジメチルアンモニウムクロリドによって修飾されたヘクトライト、例えばElementisによって「Bentone 38V(登録商標)」の名称で販売されているものなどを挙げることができる。
【0263】
任意選択で表面を疎水性に処理された焼成シリカでその粒子のサイズが1μm未満であるものも挙げることができる。これは、シリカの表面を化学反応によって化学的に修飾することが可能であり、その結果シリカ表面のシラノール基の数が減少するからである。特にシラノール基を疎水性の基で置換することが可能であり、したがって疎水性のシリカが得られる。疎水性の基は、以下のものであり得る。
トリメチルシロキシ基、これは特に焼成シリカのヘキサメチルジシラザンの存在下での処理によって得られる。こうして処理されたシリカはCTFA(6版、1995年)によれば「シリカシリレート」と命名される。これらは、例えば、Degussaによって「Aerosil R812(登録商標)」の参照名でおよびCabotによって「Cab-O-Sil TS-530(登録商標)」が販売されている。
ジメチルシリルオキシまたはポリジメチルシロキサン基、これは特に焼成シリカのポリジメチルシロキサンまたはジメチルジクロロシランの存在下での処理によって得られる。こうして処理されたシリカはCTFA(6版、1995年)によれば「シリカジメチルシリレート」と命名される。これらは、例えば、Degussaによって「Aerosil R972(登録商標)」および「Aerosil R974(登録商標)」の参照名でおよびCabotによって「Cab-O-Sil TS-610(登録商標)」および「Cab-O-Sil TS-720(登録商標)」が販売されている。
【0264】
疎水性焼成シリカは、特にナノメートル〜マイクロメートルであり得る、例えば約5〜200nmにわたる粒子サイズを示す。
【0265】
ポリマーの有機親油性ゲル化剤は、例えば、部分的または全体的に架橋された3次元構造のオルガノポリシロキサンエラストマー、例えば信越によって「KSG6(登録商標)」、「KSG16(登録商標)」および「KSG18(登録商標)」、Dow Corningによって「Trefil E-505C(登録商標)」および「Trefil E-506C(登録商標)」、Grant Industriesによって「Gransil SR-CYC(登録商標)」、「SR DMF 10(登録商標)」、「SR-DC556(登録商標)」、「SR 5CYC gel(登録商標)」、「SR DMF 10 gel(登録商標)」および「SR DC 556 gel(登録商標)」、General Electricによって「SF 1204(登録商標)」および「JK 113(登録商標)」の各名称で販売されているものなど;エチルセルロース、例えばDow Chemicalによって「Ethocel(登録商標)」の名称で販売されているものなど;飽和または不飽和のアルキル鎖によって置換されているモノサッカリド当たりに1〜6個、特に2〜4個のヒドロキシル基を含むガラクトマンナン、例えばC1〜C6アルキル鎖、特にC1〜C3アルキル鎖でアルキル化されているグアーガム、およびこれらの混合物;ポリスチレン/ポリイソプレンまたはポリスチレン/ポリブタジエン型の「ジブロック」もしくは「トリブロック」型ブロックコポリマー、例えばBASFによって「Luvitol HSB(登録商標)」の名称で販売されているものなど、ポリスチレン/コポリ(エチレン-プロピレン)型の「ジブロック」もしくは「トリブロック」型ブロックコポリマー、例えばShell Chemical Co.によって「Kraton(登録商標)」の名称で販売されているものなど、あるいはポリスチレン/コポリ(エチレン-ブチレン)型の「ジブロック」もしくは「トリブロック」型ブロックコポリマーである。
【0266】
本発明による組成物中で使用することができる親油性ゲル化剤のうちでは、デキストリンおよび脂肪酸のエステル、例えばパルミチン酸デキストリン、特にChiba Flourによって「Rheopearl TL(登録商標)」または「Rheopearl KL(登録商標)」の名称で販売されているものなども挙げることができる。
【0267】
親油性ゲル化剤は、本発明による組成物中に、それぞれの組成物の全重量に対して0.05〜40重量%、好ましくは0.5〜20重量%、さらにより良好には1〜15重量%の含有量で存在することができる。
【0268】
親水性または水溶性のゲル化剤としては、以下のものを挙げることができる。
アクリル酸またはメタクリル酸のホモ-もしくはコポリマーあるいはこれらの塩およびエステル、特にAllied Colloidによって「Versicol F」または「Versicol K」、Ciba-Geigyによって「Ultrahold 8」の名称で販売されている製品、Synthalen K型のポリ(アクリル酸)、
アクリル酸とアクリルアミドとのコポリマー、Herculesによって「Reten」の名称でこれらのナトリウム塩の形態で販売されている、ポリ(メタクリル酸ナトリウム)、Vanderbiltによって「Darvan No. 7」の名称で販売されている、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)のナトリウム塩、Henkelによって「Hydagen F」の名称で販売されている、
ポリ(アクリル酸)とPemulenタイプのアルキルアクリレートとのコポリマー、
AMPS (アンモニア水で部分的に中和され高度に架橋されたポリ(アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸))、Clariantによって販売されている、
SepigelまたはSimugelタイプのAMPS/アクリルアミドコポリマー、Seppicによって販売されている、および
ポリオキシエチレン化されたAMPSとアルキルメタクリレートとのコポリマー(架橋または未架橋)、ならびに
これらの混合物。
【0269】
水溶性ゲル化ポリマーの他の例としては、以下のものを挙げることができる:
タンパク質、例えば植物起源のタンパク質、例えば小麦または大豆タンパク質;動物起源のタンパク質、例えばケラチン、例えばケラチン加水分解物およびスルホニックケラチン;
アニオン性、カチオン性、両性もしくは非イオン性キチンまたはキトサンポリマー;
セルロースポリマー、例えばヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースおよび第四級化されたセルロース誘導体;
ビニルポリマー、例えばポリビニルピロリドン、メチルビニルエーテルと無水リンゴ酸とのコポリマー、酢酸ビニルとクロトン酸とのコポリマー、ビニルピロリドンと酢酸ビニルとのコポリマー、ビニルピロリドンとカプロラクタムとのコポリマー、またはポリ(ビニルアルコール);
会合性ポリウレタン、例えばServo DeldenからのC16-OE120-C16ポリマー(SER AD FX1100の名称で販売されているウレタン官能基を含み1300の重量平均分子量を有する分子)、OEはオキシエチレン単位である、尿素官能基を含むRheolate 205、Rheoxによって販売されている、または同じくRheolate 208もしくは204(これらのポリマーは純粋な形態で販売されている)あるいはRohm & HaasからのC20アルキル鎖を含み、ウレタン結合を含み、水中に固体含有量20%で販売されているDE1206B。これらの会合性ポリウレタンの、特に水中もしくは水性/アルコール性媒体中の溶液または分散液も使用することができる。かかるポリマーの例としては、Servo DeldenからのSER AD FX1010、SER AD FX1035およびSER AD 1070ならびにRheoxによって販売されているRheolate 255、Rheolate 278およびRheolate 244を挙げることができる。Rohm & HaasからのDW 1206FおよびDW 1206J、および同じくAcrysol RM 184またはAcrysol 44あるいはBorchersからのBorchigel LW 44の製品も使用することができる;
任意選択で修飾された天然起源のポリマー、例えば
アラビアガム、グアーガム、キサンタン誘導体またはカラヤガム;
アルギン酸塩およびカラギーナン;
グリコサミノグリカン、ヒアルロン酸およびその誘導体;
シェラック樹脂、サンダラックガム、ダマール、エレミスまたはコーパル;
デオキシリボ核酸;
ムコ多糖、例えばヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、およびこれらの混合物。
【0270】
親水性ゲル化剤は、本発明による組成物中に、それぞれの組成物の全重量に対して、0.05〜20重量%、好ましくは0.5〜10重量%、さらにより良好には0.8〜5重量%にわたる含有量で存在することができる。
【0271】
本発明による組成物は、それぞれの組成物の全重量に対して特に0.1〜30重量%、さらにより良好には1〜15重量%、さらにより良好には2〜10重量%にわたる比率で存在する乳化用界面活性剤を含むことができる。これらの界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、非イオン性、両性界面活性剤から選択され得る。界面活性剤の性質および機能(乳化)の定義については文献「Encyclopedia of Chemical Technology、Kirk-Othmer」、第22巻、333〜432頁、第3版、1979年、Wiley、を参照、特にアニオン性および非イオン性界面活性剤についてはこの参考文献の347〜377頁を参照することができる。
【0272】
本発明による組成物中で好ましく使用される界面活性剤は、以下のものから選択される:
a)単独でまたは混合物として使用される25℃で8以上のHLBを有する非イオン性界面活性剤;特に次のものを挙げることができる。
グリセリンのオキシエチレン化および/またはオキシプロピレン化された(1〜150個のオキシエチレンおよび/またはオキシプロピレン基を含むことができる)エーテル;
脂肪アルコール(特にC8〜C24、好ましくはC12〜C18アルコール)のオキシエチレン化および/またはオキシプロピレン化された(1〜150個のオキシエチレンおよび/またはオキシプロピレン基を含むことができる)エーテル、例えばセテアリルアルコールのオキシエチレン化された30個のオキシエチレン基を含むエーテル(CTFA名「セテアレス-30」)およびC12〜C15脂肪アルコール混合物のオキシエチレン化された7個のオキシエチレン基を含むエーテル(CTFA名「C12〜15パレス-7」)、Shell Chemicalsによって「Neodol 25-7(登録商標)」の名称で販売されている;
脂肪酸(特にC8〜C24、好ましくはC16〜C22の酸)とポリエチレングリコールとの(1〜150個のエチレングリコール単位を含むことができる)エステル、例えばICI UniquemaによってMyrj 52Pの名称で販売されているステアリン酸PEG-50およびモノステアリン酸PEG-40;
脂肪酸(特にC8〜C24、好ましくはC16〜C22の酸)とオキシエチレン化されたおよび/またはオキシプロピレン化されたグリセリンエーテルとの(1〜150個のオキシエチレンおよび/またはオキシプロピレン基を含むことができる)エステル、例えばSeppicによって「Simulsol 220 TM」の名称で販売されているPEG-200モノステアリン酸グリセリン;30個のエチレンオキシド基を含むポリエトキシ化されたステアリン酸グリセリン、例えばGoldschmidtによって販売されている製品Tagat S、30個のエチレンオキシド基を含むポリエトキシ化されたオレイン酸グリセリン、例えばGoldschmidtによって販売されている製品Tagat O、30個のエチレンオキシド基を含むポリエトキシ化されたグリセリンココエート、例えばSherexによって販売されている製品Varionic LI 13、30個のエチレンオキシド基を含むポリエトキシ化されたイソステアリン酸グリセリン、例えばGoldschmidtによって販売されている製品Tagat L、30個のエチレンオキシド基を含むポリエトキシ化されたラウリン酸グリセリン、例えばGoldschmidtの製品Tagat I;
脂肪酸(特にC8〜C24、好ましくはC16〜C22の酸)とオキシエチレン化されたおよび/またはオキシプロピレン化されたソルビトールエーテルとの(1〜150個のオキシエチレンおよび/またはオキシプロピレン基を含むことができる)エステル、例えばUniquemaによって「Tween 60」の名称で販売されているポリソルベート60;
ジメチコーンコポリオール、例えばDow Corningによって「Q2-5220」の名称で販売されているもの;
安息香酸ジメチコーンコポリオール(FintexからのFinsolv SLB 101および201);
プロピレンオキシドとエチレンオキシドとのコポリマー、EO/PO重縮合物としても知られている、例えばポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコール/ポリエチレングリコールトリブロック重縮合物、「Synperonic」の名称で販売されており、例えばICIによる「Synperonic PE/L44」および「Synperonic PE/F127」、およびこれらの混合物;
およびこれらの混合物。
b)25℃で8未満のHLBを有する非イオン性界面活性剤、任意選択で上述したものなどの25℃で8を超えるHLBを有する1つまたは複数の非イオン性界面活性剤との組合せ、例えば
単糖のエステルおよびエーテル、例えば蔗糖ステアレート、蔗糖ココエート、ソルビタンステアレートおよびこれらの混合物など、例えばICIによって販売されているArlatone 2121など、
脂肪酸(特にC8〜C24、好ましくはC16〜C22の酸)とポリオールとのエステル、特にグリセリンまたはソルビトールのエステル、例えばステアリン酸グリセリン、例えばGoldschmidtによってTegin Mの名称で販売されている製品など、ラウリン酸グリセリン、例えばHulsによってImwitor 312の名称で販売されている製品、ポリグリセリル2-ステアレート、ソルビタントリステアレートまたはリシノール酸グリセリン;
Dow Corningによって「Q2-3225C」の名称で販売されているシクロメチコーン/ジメチコーンコポリオール混合物、
c)アニオン性界面活性剤、例えば
C16〜C30脂肪酸の塩、特にアミンに由来するもの、例えばステアリン酸トリエタノールアミン;
ポリオキシエチレン化された脂肪酸の塩、特にアミンまたはアルカリ金属塩から得られるもの、およびこれらの混合物;
リン酸エステルおよびそれらの塩、例えば「オレス-10リン酸DEA」(CrodaからのCrodafos N 10N)またはリン酸セチル(DSM Nutritional ProductsからのAmphisol K);
スルホコハク酸塩、例えば「クエン酸PEG-5ラウリルスルホコハク酸二ナトリウム」および「リシノールアミドMEAスルホコハク酸二ナトリウム」など;
アルキルエーテル硫酸塩、例えばラウリルエーテル硫酸ナトリウムなど;
イセチオン酸塩;
アシルグルタミン酸塩、例えば「水素化タロウグルタミン酸二ナトリウム」(味の素によって販売されているAmisoft HS-21R)など、およびこれらの混合物。
【0273】
好ましくは、水中油または水中ワックスのエマルジョンを得ることを可能にする界面活性剤を使用する。
【0274】
「繊維」という用語は、長さLおよび直径Dを有し、LがDよりもずっと大きく、Dは繊維の断面が囲い込まれる円の直径である物体を意味すると解釈するものとする。特に、L/Dの比(すなわちアスペクト比)は、3.5〜2500、好ましくは5〜500、さらにより良好には5〜150の範囲内で選択する。
【0275】
繊維は、特に織物の製造において使用される繊維、具体的にはシルク、コットン、ウールまたはフラックス繊維、特に木材、植物もしくは藻類から取り出されたセルロースの繊維、レーヨン、ポリアミド(Nylon(登録商標))、ビスコース、アセテート、特にアセテートレーヨン、ポリ(p-フェニレンテレフタルアミド)(すなわちアラミド)、特にKevlar(登録商標)、アクリル系ポリマー、特にポリ(メチルメタクリレート)またはポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリオレフィン特にポリエチレンまたはポリプロピレン、ガラス、シリカ、カーボン、特にグラファイト形態のカーボン、ポリテトラフルオロエチレン(Teflon(登録商標)など)、不溶性コラーゲン、ポリエステル、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、キトサン、ポリウレタン、またはポリエチレンフタレートの各繊維、あるいは上述のものなどのポリマーの混合物から形成された繊維、例えばポリアミド/ポリエステル繊維であり得る。
【0276】
もちろん、当業者は、これらの任意選択の付加的化合物および/またはそれらの量を、対応する本発明による組成物の好都合な性質が、想定されている添加によって悪い方向に影響されない、あるいは大きくは影響されないように選択する配慮をするであろう。
【0277】
本発明による第1、第2および任意選択で追加される組成物のそれぞれは、具体的には懸濁液、分散液、溶液、ゲル、エマルジョン、特に水中油(O/W)、水中ワックスまたは油中水(W/O)または多重(W/O/Wまたはポリオール/O/WまたはO/W/O)エマルジョン、クリーム、発泡体、小胞の分散体、特にイオン性または非イオン性の脂質、二相または多相エマルジョン、スプレー、粉末またはペースト、特にソフトペーストの形態で提供することができる。それぞれの組成物は、好ましくは洗い流さない(leave-in)組成物である。
【0278】
本発明による方法は、使用する成分の性質に応じて、爪および/または皮膚および/または唇および/またはまつげをメイクアップするために好都合に使用することができる。詳しくは、第1、第2および任意選択で第3の組成物は、独立に、固形ファンデーション、リップスティックまたはペースト、コンシーラーまたは目のアウトライン用製品、アイライナー、マスカラ、アイシャドウ、身体のメイクアップ用製品または皮膚の着色用製品の形態で提供することができる。
【0279】
一実施形態によれば、第1、第2および任意選択で第3の組成物は、リップスティック組成物である。
【0280】
もう1つの実施形態によれば、第1、第2および任意選択で第3の組成物は、まつげ、眉または頭髪以外の毛髪などのケラチン繊維をコーティングするための組成物、より特定的にはマスカラである。
【0281】
もう1つの実施形態によれば、第1、第2および任意選択で第3の組成物は、ファンデーション組成物である。
【0282】
当業者は、適切な配合、およびその調製の方法を、自身の一般的知識に基づき、一方で使用する成分の性質、特に支持体への溶解性を、他方ではそれぞれの組成物について想定される用途を考慮に入れて選択することができる。
【0283】
本発明は、以下に記載する実施例によってより詳細に例示される。別途に指示のない限り、示されている量は重量パーセントとして表されている。
【実施例】
【0284】
[実施例1]
未架橋ポリロタキサンの調製
HOOC-PEG-COOH(1.2×10-3mol、M 33000) 40.0gおよびα-シクロデキストリン 160g(0.16mol)を熱い状態で水1.35lに溶解させ、次いで混合物を4℃まで16時間で冷却する。白色の錯体を取り出して凍結乾燥する。乾燥錯体30gをアダマンタンアミン 0.34g(2.2×10-3mol)、(ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP試薬) 1.0g(2.3×10-3mol)、および脱水DMF 200mlに溶解させたエチルジイソプロピルアミン(EDIPA) 0.40mlと混合する。反応混合物を4℃で16時間放置して反応させ、次いで混合物をDMF/メタノール(1:1) 400mlで2回、メタノール250mlで2回遠心分離によって洗浄する。
【0285】
生成物をDMSO 170mlに溶解させて水800mlから沈殿させ、次いで遠心分離によって水500mlで2回洗浄する。洗浄後、生成物を真空乾燥して白色粉末17.6gを得る。
【0286】
[実施例2]
未架橋ポリロタキサンの調製
Flukaによって販売されているポリエチレングリコールビスアミン(PEG-BAと略記) 0.9gおよびα-シクロデキストリン3.6gを、水30mlに80℃で溶解させ、混合物を5℃に一晩保って包接錯体の白色ペーストを得た。
【0287】
ペーストを乾燥し、過剰の2,4-ジニトロフルオロベンゼン(2.4ml)を、ジメチルホルムアミド10mlと同時に加え、次いで混合物を窒素雰囲気下の周囲温度で一晩撹拌した。反応混合物をDMSO 50mlに溶解させ0.1%塩化ナトリウム水溶液(800ml)から2回沈殿させて黄色の生成物を得た。生成物を集めて水およびメタノールで洗浄し(それぞれ3回)、乾燥してポリロタキサン(1.25g)を得た。
【0288】
[実施例3]
架橋剤によって機能化されたポリロタキサンの調製
実施例1によるポリロタキサン10gを1N NaOH溶液70mlに溶解させた。続いて1N NaOH溶液5mlに溶解させた塩化シアヌルの溶液0.5gを5℃で混合物に加えた。反応混合物を5℃で8時間反応させ、生成物を凍結乾燥によって集めた。
【0289】
[実施例4]
マスカラ
1)第1組成物
【0290】
【表1】

【0291】
手順
ポリロタキサンを水に入れ、次いで相Aの他の成分を加える。相Bの成分(ワックス、乳化剤およびあらかじめ磨砕した顔料)をウオーターバス上で撹拌しながら加熱し、次いで相Aを急速撹拌しながら加えてエマルジョンを生成させる。
【0292】
2)第2組成物
【0293】
【表2】

【0294】
相Bの成分(ワックスおよび乳化剤)をウオーターバス上で撹拌しながら加熱し、次いで相Aを急速撹拌しながら加えてエマルジョンを生成させる。
【0295】
第1組成物の層をまつげに塗布し、次いで架橋剤(ポリエチレンオキシド-グルタル酸テトラスクシンイミジル)を含む第2組成物の層を続いて第1層に塗布する。
【0296】
良好な保持力を示し、同時に顔料がポリマーのマトリックス中に「捕捉されている」フィルムがまつげ上に得られる。
【0297】
[実施例5]
ファンデーション
1)第1組成物
【0298】
【表3】

【0299】
手順:
ポリロタキサンを水に溶解させ、次いで相Aの他の成分を加える。顔料は三段ロールミル(相B)を通過させる。
【0300】
相Cの成分はウオーターバス上で撹拌しながら65〜70℃で加熱する。
【0301】
続いて相Aと相Bを混合し、次いでまだ65〜70℃の相Cを急速撹拌しながら10分間で加えてエマルジョンを作成し、次いで周囲温度まで冷めさせる。
【0302】
2)第2組成物
【0303】
【表4】

【0304】
第1組成物の層を皮膚に塗布し、次いで架橋剤(塩化シアヌル)を含む第2組成物の層を第1層に塗布する。
【0305】
良好な保持力を示し、同時に顔料がポリマーマトリックス中に「捕捉されている」皮膚上の堆積層が得られる。
【0306】
[実施例6]
ファンデーション
1)第1組成物
【0307】
【表5】

【0308】
手順:
ポリロタキサンを水に溶解させ、次いで相Aの他の成分を加える。顔料は三段ロールミル(相B)を通過させる。
【0309】
相Cの成分はウオーターバス上で撹拌しながら65〜70℃で加熱する。
【0310】
続いて相Aと層Bを混合し、次いでまだ65〜70℃の相Cを急速撹拌しながら10分間で加えてエマルジョンを作成し、次いで周囲温度まで冷めさせる。
【0311】
2)第2組成物
【0312】
【表6】

【0313】
ポリロタキサンを周囲温度で水に溶解させ、他の成分を加える。
【0314】
第1組成物の層を皮膚に塗布し、次いで架橋剤(塩化シアヌル)を含む第2組成物の層を第1層に塗布する。良好な保持力を示す皮膚上の堆積層が得られる。
【0315】
[実施例7]
ファンデーション
架橋剤で機能化された未架橋ポリロタキサンを含む次の組成物を調製する。
【0316】
【表7】

【0317】
手順:
ポリロタキサンを周囲温度で水に溶解させ、次いで相Cの他の成分を加える。
【0318】
相Aの成分を、25℃を超えない温度で撹拌しながら混合し、次いであらかじめ三段ロールミルを通した顔料(相B)、および相Cも急速に撹拌しながら加えて25℃に留めたままでエマルジョンを得る。
【0319】
この組成物を皮膚に塗布すると、ポリロタキサンが皮膚の温度で架橋し、それが良好な保持力を有するフィルムを得ることを可能にする。
【0320】
[実施例8]
ファンデーション
上記実施例5の第1組成物と第2組成物は、使用時に50/50の比率で混合することができ、次いで前記混合物の少なくとも1つの層を皮膚に塗布することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
爪、皮膚、唇、またはまつげから選択されたケラチン物質のメイクアップのためのまたは非治療的手入れのための美容方法であって、
a.少なくとも1つの第1未架橋ポリロタキサンおよび少なくとも1つの第2未架橋ポリロタキサンを含む少なくとも1つの第1組成物の少なくとも1つの層を前記ケラチン物質に堆積させる段階と、
b.前記組成物にその塗布と同時にまたは塗布に続いて少なくとも1つの化学的、物理化学的および/または力学的刺激を加える段階と
である方法。
【請求項2】
前記刺激が、熱的、光化学的、化学的および/または力学的性質のものであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記刺激が、少なくとも1つの架橋剤を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
爪、皮膚、唇、またはまつげから選択されたケラチン物質のメイクアップのためのまたは非治療的手入れのための美容方法であって、前記方法は、前記ケラチン物質上に、
a.少なくとも1つの第1未架橋ポリロタキサンを含む第1組成物の少なくとも1つの層と、
b.架橋剤を含む第2組成物の少なくとも1つの層と
を堆積させることであり、第1組成物および/または第2組成物は少なくとも1つの第2未架橋ポリロタキサンを含む方法。
【請求項5】
爪、皮膚、唇、またはまつげから選択されたケラチン物質のメイクアップのためのまたは非治療的手入れのための美容方法であって、前記ケラチン物質上に、少なくとも1つの第1未架橋ポリロタキサンおよび少なくとも1つの第2未架橋ポリロタキサンを含み、第1未架橋ポリロタキサンおよび/または第2未架橋ポリロタキサンは架橋剤でグラフトされている、第1組成物の少なくとも1つの層を堆積させることである方法。
【請求項6】
爪、皮膚、唇、またはまつげから選択されたケラチン物質のメイクアップのためのまたは非治療的手入れのための美容方法であって、前記方法は、前記ケラチン物質上に、
少なくとも1つの第1未架橋ポリロタキサンを含む第1組成物の少なくとも1つの層と、
少なくとも1つの第2未架橋ポリロタキサンを含む第2組成物の少なくとも1つの層と
を堆積させることであり、第1または第2未架橋ポリロタキサンの少なくとも一方は架橋剤でグラフトされている方法。
【請求項7】
爪、皮膚、唇、またはまつげから選択されたケラチン物質のメイクアップのためのまたは非治療的手入れのための美容方法であって、
a.使用時に、
化粧品として許容される媒体および少なくとも1つの第1未架橋ポリロタキサンを含む少なくとも1つの第1組成物、および
架橋剤を含む少なくとも1つの第2組成物
[第1組成物または第2組成物は少なくとも1つの第2未架橋ポリロタキサンを含む]を混合する段階と、
b.次いで前記混合物の少なくとも1つの層を前記爪、皮膚、唇、またはまつげに塗布する段階と
である方法。
【請求項8】
第1および第2の未架橋ポリロタキサンが、それぞれ少なくとも1つの線状分子および少なくとも2つの環状分子を含むことを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
第1ポリロタキサンの線状分子および第2ポリロタキサンの線状分子が、互いに独立に、
親水性ポリマー、例えばポリ(ビニルアルコール)、ポリビニルピロリドン、ポリ((メタ)アクリル酸)、セルロースから誘導されるポリマー(カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなど)、ポリアクリルアミド、ポリアルキレングリコール、例えばポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールなど、ポリテトラヒドロフラン、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ビニルメチルエーテル)、ポリアミン、ポリエチレンイミン、カゼイン、ゼラチン、デンプン、およびこれらのコポリマー、
疎水性ポリマー、例えばポリオレフィン、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソプレン、ポリイソブチレンまたはポリブタジエンなど;オレフィンのコポリマー、例えばエチレン/ブチレンコポリマーなど;ポリエステル、ポリジメチルシロキサン、ポリ(塩化ビニル)、ポリスチレン、アクリロニトリル/スチレンコポリマー、(メタ)アクリル酸エステルのポリマーおよびコポリマー、例えばポリ(メチルメタクリレート)またはアクリロニトリル/メチルアクリレートコポリマーなど;ポリカーボネート、ポリウレタン、塩化ビニル/酢酸ビニルコポリマーまたはポリ(ビニルブチラール)、
およびこれらの誘導体
から選択されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
第1ポリロタキサンの線状分子および第2ポリロタキサンの線状分子が、互いに独立に、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールから選択されることを特徴とする、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
第1ポリロタキサンの線状分子および第2ポリロタキサンの線状分子が、350g/mol以上の、例えば350〜2000000に及ぶ、好ましくは1500〜1000000に及ぶ、より好ましくは2800〜800000に及ぶ、さらにより良好には7000〜700000に及ぶ、例えば10000〜600000または10000〜500000に及ぶ重量平均分子量を示すことを特徴とする、請求項8から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
第1および第2のポリロタキサンの環状分子が、互いに独立に、
シクロデキストリン、例えばα-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、ジメチルシクロデキストリンおよびグルコシルシクロデキストリン、ならびにこれらの誘導体、
クラウンエーテル、
ベンゾクラウンエーテル、ジベンゾクラウンエーテルおよびジシクロヘキサノクラウンエーテル、ならびにこれらの誘導体
から選択されることを特徴とする、請求項8から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
環状分子がα-シクロデキストリンであることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
それぞれのポリロタキサンの線状分子に沿って数珠つなぎになっている環状分子の数の、この線状分子に沿って数珠つなぎになり得る同じ性質の環状分子の最大量に対する比が、0.001〜0.6、好ましくは0.01〜0.5、さらにより良好には0.05〜0.4に及ぶことを特徴とする、請求項8から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
第1ポリロタキサンの線状分子および第2ポリロタキサンの線状分子が、それらの末端のそれぞれに、互いに独立に、封鎖分子構造を含み、前記分子構造は分子または高分子であることを特徴とする、請求項8から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記分子構造が、環状分子と線状分子が分離することを防ぐようなイオン電荷を担持するおよび/または容積を占めることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記分子構造が、
ジニトロフェニル基、例えば2,4-および3,5-ジニトロフェニル基など、
シクロデキストリン、
アダマンタン基、
トリチル基、
フルオレセイン、
ピレン、
ナフタルイミド、および
これらの組合せ
から選択されることを特徴とする、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
前記架橋剤が、少なくとも2つの重合性二重結合を有する化合物、少なくとも1つの重合性二重結合および未架橋ポリロタキサンと反応する少なくとも1つの官能基を有する化合物、未架橋ポリロタキサンと反応する少なくとも2つの官能基を有する化合物、塩化シアヌル、塩化トリメソイル、塩化テレフタロイル、エピクロロヒドリン、ジブロモベンゼン、グルタルアルデヒド、ビス(酸クロリド)、トリ(酸クロリド)など、イオン性架橋を形成する多価金属化合物、シランタイプのカップリング剤および/またはチタン系カップリング剤、光架橋剤およびこれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項3から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記架橋剤が、塩化シアヌル、トリレン2,4-ジイソシアネート、1,1'-カルボニルジイミダゾール、塩化トリメソイル、塩化テレフタロイル、アルコキシシラン、例えばテトラメトキシシランおよびテトラエトキシシラン、脂環式エポキシド、例えば3,4-エポキシシクロヘキシルメチル、3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ポリエチレンオキシド-グルタル酸スクシンイミジル、例えばポリエチレンオキシド-グルタル酸テトラスクシンイミジル、ビスヒドラジドなど、およびこれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第1および第2の未架橋ポリロタキサンが、第1または第2の組成物それぞれの全重量に対して0.1〜80重量%、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは2〜30重量%にわたる含有量で存在することを特徴とする、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記第1および/または第2の組成物が、揮発性油、不揮発性油およびこれらの混合物から選択された少なくとも1つの油または有機溶媒を含む液体脂肪相を含むことを特徴とする、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記液体脂肪相が、8〜16個の炭素原子を有する少なくとも1つの揮発性炭化水素油を含むことを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記油が、第1および/または第2の組成物の全重量に対して1重量%〜80重量%、好ましくは5重量%〜50重量%に相当することを特徴とする、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
前記第1および/または第2の組成物が、水性相を含むことを特徴とする、請求項1から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記水性相が、これを含む組成物の全重量に対して5〜95重量%、好ましくは10〜85重量%に相当することを特徴とする、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記第1および/または第2の組成物が、ワックス、ペースト状化合物およびこれらの混合物から選択された、周囲温度で固体またはペースト状である少なくとも1つの脂肪物質を含むことを特徴とする、請求項1から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記第1および/または第2の組成物が、組成物の全重量に対して0.1〜70重量%、さらにより良好には1〜60重量%、なおさらにより良好には5〜40重量%のワックスを含むことを特徴とする、請求項1から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記第1および/または第2の組成物が、少なくとも1つのフィルム形成性ポリマーを含むことを特徴とする、請求項1から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記フィルム形成性ポリマーが、組成物の全重量に対して0.1重量%〜30重量%、好ましくは0.5重量%〜20重量%、さらにより良好には1重量%〜15重量%の乾燥物質含有量で存在することを特徴とする、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記第1および/または第2の組成物が、ビタミン、増粘剤、親油性または親水性ゲル化剤、痕跡元素、柔軟剤、金属イオン封鎖剤、香料、塩基性化剤もしくは酸性化剤、保存料、日焼け止め剤、酸化防止剤、繊維、手入れ用剤またはこれらの混合物から選択された美容成分を含むことを特徴とする、請求項1から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
爪、皮膚、唇、またはまつげから選択されたケラチン物質のメイクアップのためのまたは非治療的手入れのためのキットであって、
i)少なくとも1つの第1未架橋ポリロタキサンを含む少なくとも1つの第1組成物と、
ii)架橋剤を含む少なくとも1つの第2組成物と
を含み、第1組成物および/または第2組成物は少なくとも1つの第2未架橋ポリロタキサンを含むキット。
【請求項32】
前記第1および第2の組成物が、同一の包装物品中に別々に包装されることを特徴とする、請求項31に記載のキット。

【公表番号】特表2009−545570(P2009−545570A)
【公表日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−522286(P2009−522286)
【出願日】平成19年8月3日(2007.8.3)
【国際出願番号】PCT/EP2007/058067
【国際公開番号】WO2008/015272
【国際公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(391023932)ロレアル (950)
【Fターム(参考)】