説明

末端変性アルカリ溶解性ポリイミド及び該ポリイミドを含む感光性樹脂組成物

【課題】熱安定性が良好であり、かつ良好な現像性を示す末端変性アルカリ溶解性ポリイミド、該ポリイミドを含有するポジ型感光性組成物及び該感光性樹脂組成物からなる感光性フィルムを提供すること。
【解決手段】本発明のアルカリ溶解性ポリイミドは、ポリマー主鎖末端に、カルボキシル基、芳香族性水酸基、スルホン酸基から選ばれる官能基を少なくとも一つ有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、末端変性ポリイミド、プリント配線板のカバーレイに好適な感光性樹脂組成物及びそれを用いた感光性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
耐熱性に優れた絶縁材料、特に半導体工業における固体素子の絶縁層や保護層として、ポリイミド等の高耐熱性樹脂が注目されている。一般に、ポリイミドは300℃以上の耐熱性と優れた機械特性を有しており、かつ低誘電率や高絶縁性などの電気特性にも優れている。
【0003】
一般的なポリイミド材料を微細加工する際には、フォトレジストを使用したエッチング処理が行われるため、多くの工程数を必要とする。そこで、絶縁層であるポリイミド自体に直接パターンを形成することのできる感光性ポリイミド材料が注目されてきている。なかでも、作業時の安全性や環境への影響に対する配慮から、アルカリ水溶液での現像処理が可能な感光性樹脂組成物への要望が強くなってきている。一般にネガ型の場合は、その現像液により露光部の膨潤が起こり、高解像度の微細加工を行うことが難しい。そのため、ポジ型の感光システムによる微細加工が強く望まれている。特に、イミド化のための熱工程の不要な、アルカリ溶解性ポリイミドが強く望まれている。
【0004】
また、従来のスクリーン印刷では溶媒除去のプロセスや両面加工の際には2回のプロセスになる等の問題があるため、工業プロセスの観点から感光性樹脂組成物をドライフィルム化することが望まれている。
【0005】
ポジ型の感光性樹脂組成物において、ベースポリマーのアルカリ溶解性は現像性に極めて重要である。特許文献1には、アルカリ溶解性官能基を導入したポリイミドについて開示がある。また、特許文献2には、ポリマー主鎖末端に酸性基を導入した感光性樹脂組成物が開示されている。
【特許文献1】特開2007−100078号公報
【特許文献2】特開2002−221794号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、熱安定性及び現像性に優れたアルカリ溶解性ポリイミド、該ポリイミドを含有する感光性樹脂組成物及び該感光性樹脂組成物からなる感光性フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ポリマー主鎖末端に、カルボキシル基、芳香族性水酸基、及びスルホン酸基からなる群から選ばれた官能基を少なくとも一つ有するアルカリ溶解性ポリイミドが、上記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明のアルカリ溶解性ポリイミドは、ポリマー主鎖末端に、カルボキシル基、芳香族性水酸基及びスルホン酸基からなる群より選ばれた官能基を少なくとも一つ有することを特徴とする。
【0009】
本発明のアルカリ溶解性ポリイミドにおいては、アルカリ溶解性ポリイミドが、下記一般式(1)で表されることが好ましい。(式中、R、Rは4価の有機基を表し、同じであっても異なっていても良い。R4、は炭素数1以上30以下の炭化水素基を表す。R2はアルカリ溶解性官能基を少なくとも一つ以上有する2価の有機基を表す。nは、1≦n≦30を満たす。x+y=100かつ0.1≦x/(x+y)≦0.9である。A及び/又はBは末端にカルボキシル基、芳香族性水酸基、スルホン酸基から選ばれる官能基を少なくとも一つ有する有機基である。)
【化1】

【0010】
本発明の感光性樹脂組成物は、上記アルカリ溶解性ポリイミドと、感光剤と、を含有することを特徴とする。この場合、上記感光剤が、キノンジアジド構造を有することが好ましい。
【0011】
本発明の感光性樹脂組成物においては、リン化合物を含有することが好ましい。この場合、上記リン化合物が、リン酸エステル構造及び/又はホスファゼン構造を有することが好ましい。
【0012】
本発明の感光性フィルムは、上記感光性樹脂組成物から構成されることを特徴とする。
【0013】
本発明の積層フィルムは、キャリアフィルムと、前記キャリアフィルム上に設けられた上記感光性フィルムと、を具備することを特徴とする。この場合、前記感光性フィルム上に形成されたカバーフィルムを具備することが好ましい。
【0014】
本発明のプリント配線板は、配線を有する基材と、前記配線を覆うように前記基材上に形成され、上記感光性フィルム又は積層フィルムから構成されたカバーレイと、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明のアルカリ溶解性ポリイミドは、ポリマー主鎖末端に、カルボキシル基、芳香族性水酸基、及びスルホン酸基からなる群から選ばれた官能基を少なくとも一つ有するので、熱安定性及び現像性に優れたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明について、以下具体的に説明する。
ポリアミド酸等のポリイミド前駆体は、熱履歴により著しく分子量が低下することが知られており、該ポリアミド酸部位を実質上イミド化することにより熱安定性を向上させることができる。しかしながら、ポリイミド部位ではアルカリ溶解性が発現しない。そこで、アルカリ溶解性部位を有する単量体を用いることによりアルカリ溶解性を発現させ得るが、上記アルカリ溶解性部位を有する単量体をポリマー中に導入すると、Tgや弾性率が向上する傾向にあり、ドライフィルム化する際に反り易くなる。このため、本発明においては、末端に本発明における官能基を導入して、ドライフィルム化した際に反りが軽減されたまま、アルカリ溶解性を飛躍的に向上させている。
【0017】
本発明における末端変性アルカリ溶解性ポリイミドは、ポリマー主鎖末端に、カルボキシル基、芳香族性水酸基、及びスルホン酸基からなる群より選ばれた官能基を少なくとも一つ有していれば限定されない。その中で、一般式(1)で表されるアルカリ溶解性ポリイミドであることが好ましい。(式中、R、Rは4価の有機基を表し、同じであっても異なっていても良い。Rは炭素数1以上20以下の炭化水素基を表す。Rはアルカリ溶解性官能基を少なくとも一つ以上有する2価の有機基を表す。x+y=100かつ0.1≦x/(x+y)≦0.9である。A及び/又はBは末端にカルボキシル基、芳香族性水酸基、スルホン酸基から選ばれる官能基を少なくとも一つ有する有機基である。)
【化2】

【0018】
本発明における末端変性アルカリ溶解性ポリイミドは、一般式(2)、一般式(3)で表される酸二無水物と一般式(4)で表されるアルカリ溶解性官能基を有するジアミン、一般式(5)で表されるシリコーンジアミンを重合、環化させてなるポリイミドである。
【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【0019】
一般式(1)におけるR及びRは、それぞれ一般式(2)及び(3)で表される酸二無水物に由来する4価の有機基であって、同じであっても異なっていても良い。
【0020】
一般式(2)及び(3)で表される酸二無水物の具体例としては、無水ピロメリット酸、オキシジフタル酸二無水物(以下ODPAと略称する)、ビフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ジフェニルスルホン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、4,4’−(2,2−ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物、メタ−ターフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、シクロブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、1−カルボキシメチル−2,3,5−シクロペンタトリカルボン酸−2,6:3,5−二無水物、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、エチレングリコールビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)(以下、TMEGと略称する)、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)などが挙げられる。
【0021】
これらの中で、得られるポリイミド前駆体の低Tgの観点から、ODPA、TMEG、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物が好ましい。
【0022】
一般式(1)におけるR、R及びnは、一般式(5)で表されるシリコーンジアミンに由来する有機基及び1≦n≦30を満たす整数である。
【0023】
一般式(5)において、Rは炭素数1以上30以下の炭化水素基を表し、同じであっても異なっていても良い。
【0024】
炭素数1以上30以下の炭化水素基(R)としては、脂肪族飽和炭化水素基、脂肪族不飽和炭化水素基、環状構造を含む官能基、及びそれらを組み合わせた基などが挙げられる。
【0025】
上記脂肪族飽和炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などの第一級炭化水素基、イソブチル基、イソペンチル基などの第二級炭化水素基、t−ブチル基などの第三級炭化水素基などが挙げられる。
【0026】
上記脂肪族不飽和炭化水素基としては、ビニル基、アリル基などの二重結合を含む炭化水素基、エチニル基などの三重結合を含む炭化水素基などが挙げられる。
【0027】
上記環状構造を含む官能基としては、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロデシル基、シクロオクチル基などの単環式官能基;ノルボルニル基、アダマンチル基などの多環式官能基;ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、テトラヒドロフラン、ジオキサン構造を有する複素環式官能基;ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環構造を含む芳香族炭化水素基などが挙げられる。
【0028】
前記炭素数1以上30以下の炭化水素基(R)は、ハロゲン原子、ヘテロ原子及び金属原子を含むことができる。本発明におけるハロゲン原子には、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。また、本発明におけるヘテロ原子には、酸素、硫黄、窒素、リンが挙げられる。また、本発明における金属原子には、ケイ素及びチタンが挙げられる。
【0029】
また、炭素数1以上30以下の炭化水素基(R)がヘテロ原子及び/又は金属原子を含む場合、Rは結合するヘテロ原子及び/又は金属原子に直接結合していても、ヘテロ原子及び/又は金属原子を介して結合していても良い。
【0030】
一般式(5)のRの炭素数は、難燃性を考慮して、1以上20以下が好ましい。生成するポリイミドの溶媒溶解性の観点から、炭素数は1以上10以下が特に好ましい。
【0031】
本発明に係るポリイミド前駆体において、溶媒溶解性とは、ポリイミド前駆体がγ−ブチロラクトン、1−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドから選ばれる少なくとも1種類の有機溶媒に、5重量%以上の濃度で溶媒に溶解する性質を意味する。
【0032】
一般式(5)のRは、炭素数1以上30以下である2価の有機基であれば限定されない。これらの中で、難燃性の観点から、CH、C、C、C、などで表される炭素数10以下の脂肪族飽和炭化水素に由来する2価の有機基が好ましい。
【0033】
一般式(5)のnは、1以上30以下を満たす整数であれば限定されない。この中で、難燃性の観点から、1以上25以下が好ましく、1以上20以下が特に好ましい。
【0034】
一般式(1)におけるRは、一般式(4)で表されるアルカリ溶解性官能基を有するジアミンである。
【0035】
本発明で用いられるアルカリ溶解性官能基を有するジアミンについて説明する。アルカリ溶解性官能基とは、カルボキシル基、芳香族性水酸基、スルホン酸基などの公知のアルカリに溶解する官能基であれば、限定されない。その中で、未露光部の溶解抑止の観点から、カルボキシル基、芳香族性水酸基が好ましい。本発明における芳香族性水酸基とは、水酸基が直接芳香環に結合している化合物に由来する官能基である。具体的には、フェノール、カテコール、レソルシノール、ヒドロキノン、1−ナフトール、2−ナフトールなどベンゼン環に水酸基が直接結合した化合物に由来する官能基などが挙げられる。
【0036】
芳香族性水酸基を有するジアミンとしては、1,2−ジアミノ−4−ヒドロキシベンゼン、1,3−ジアミノ−5−ヒドロキシベンゼン、1,3−ジアミノ−4−ヒドロキシベンゼン、1,4−ジアミノ−6−ヒドロキシベンゼン、1,5−ジアミノ−6−ヒドロキシベンゼン、1,3−ジアミノ−4,6−ジヒドロキシベンゼン、1,2−ジアミノ−3,5−ジヒドロキシベンゼン、4−(3,5−ジアミノフェノキシ)フェノール、3−(3,5−ジアミノフェノキシ)フェノール、2−(3,5−ジアミノフェノキシ)フェノール、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3−アミノフェニル)ケトン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−アミノフェニル)スルフィド、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−アミノフェニル)エーテル、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−アミノフェニル)スルホン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−アミノフェニル)メタン、4−[(2,4−ジアミノ−5−ピリミジニル)メチル]フェノール、p−(3,6−ジアミノ−s−トリアジン−2−イル)フェノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−アミノフェニル)ジフルオロメタン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)ケトン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)スルフィド、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)エーテル、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)ジフルオロメタンなどが挙げられる。
【0037】
カルボキシル基を有するジアミンとしては、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン(以下MBAAと略称する)、3,5−ジアミノ安息香酸などが挙げられる。これらの中でも、アルカリ溶解性及び反応の容易さなどからMBAA、3,5−ジアミノ安息香酸、1,3−ジアミノ−4,6−ジヒドロキシベンゼンが好ましい。
【0038】
本発明におけるアルカリ溶解性官能基を有するジアミンに由来する部位は、アルカリ溶解性ポリイミドを100重量%とすると、3重量%以上、50重量%以下であることが好ましい。3重量%以上であれば、十分なアルカリ溶解性を発現する傾向にあり、50重量%以下であれば、フィルム時の反りが十分に抑制される傾向にある。5重量%以上、30重量%以下がより好ましく、8重量%以上、20重量%以下が特に好ましい。
【0039】
本発明において、一般式(4)で表されるアルカリ溶解性官能基を有するジアミン、一般式(5)で表されるシリコーンジアミンの他に、得られるアルカリ溶解性ポリイミドの性能に悪影響を及ぼさない範囲で、その他ジアミンを含むことが出来る。
【0040】
このようなジアミンとして、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)アルカン、1,5−ビス(4−アミノフェノキシ)アルカン、1,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジアミノベンゼン、2,4−ジアミノトルエン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジメチルー4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、3,7−ジアミノ−ジメチルジベンゾチオフェン−5,5−ジオキシド、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、4,4’−ジアミノベンズアニリド、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)−2,2−ジメチルプロパン、1,2−ビス[2−(4−アミノフェノキシ)エトキシ]エタン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、5−アミノ−1−(4−アミノメチル)−1,3,3−トリメチルインダン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(以下、APBと略称する)、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4、4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、などが挙げられる。
【0041】
これらの中で、ポリイミド前駆体の低Tgの観点から、APBが好ましい。
【0042】
本発明におけるその他ジアミンの割合は、すべてのジアミンを100mol%とすると、10mol%以下である。
【0043】
本発明におけるA及び/又はBは、末端にカルボキシル基、芳香族性水酸基、スルホン酸基から選ばれる官能基を少なくとも一つ有する有機基であれば限定されない。これらの中で、現像性の観点からカルボキシル基、芳香族性水酸基が好ましい。
【0044】
本発明におけるカルボキシル基、芳香族性水酸基、スルホン酸基から選ばれる官能基を有するアルカリ溶解性ポリイミドは、アミン末端のアルカリ溶解性ポリイミドと分子構造中にカルボキシル基、芳香族性水酸基、スルホン酸基を有する酸無水物と反応させることによっても、酸無水物末端のアルカリ溶解性ポリイミドとカルボキシル基、芳香族性水酸基、スルホン酸基を有するアミン化合物を反応させることによっても、得ることができる。
【0045】
分子構造中にカルボキシル基、芳香族性水酸基、スルホン酸基を有する酸無水物としては、トリメリット酸無水物などのカルボキシル基含有酸無水物、などが挙げられる。
【0046】
分子構造中にカルボキシル基、芳香族性水酸基、スルホン酸基を有するアミン化合物としては、2−アミノ安息香酸、3−アミノ安息香酸、4−アミノ安息香酸などが挙げられる。
【0047】
ポリマー主鎖末端に、カルボキシル基、芳香族性水酸基、スルホン酸基から選ばれる官能基に由来する部位の導入率については、得られる末端アルカリ溶解性ポリイミド及び/又はポリイミド前駆体がフィルム化可能な重量平均分子量を有していれば限定されない。その中で、0.5mol%以上であれば、良好な現像性が発現し、10mol%以下であればフィルム化が可能な重量平均分子量を有する。特に1mol%以上、5mol%以下が好ましい。
【0048】
本発明のアルカリ溶解性ポリイミド及び/又はポリイミド前駆体の重量平均分子量は5000以上1000000以下であることが好ましい。ここで、重量平均分子量とは、既知の重量平均分子量のポリスチレンを標準として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定される分子量をいう。前記分子量はポリイミド膜の強度の観点から、5000以上であることが好ましい。またポリイミド含有樹脂組成物の粘度、成型性の観点から、1000000以下であることが好ましい。前記分子量は8000以上、500000以下がより好ましく、10000以上300000以下が特に好ましい。
【0049】
次に、本発明に係るアルカリ溶解性ポリイミドの製造方法について、ポリアミド酸を合成し、続いてアルカリ溶解性ポリイミドを合成する方法を例にあげて説明する。
【0050】
本発明に係るポリイミドは、酸二無水物とジアミンとを反応させ、ポリアミド酸を合成した後に、加熱(加熱イミド化)することによって得ることができる。また、酸二無水物とジアミンとを反応させ、ポリアミド酸を合成し、続いて触媒を添加した後にイミド化(化学的イミド化)させることによっても得ることができる。この中で、化学的イミド化が、より低温でイミド化を完結できる点で好ましい。
【0051】
次に、酸二無水物とジアミンとを反応させてポリアミド酸を合成する方法について説明し、続いて触媒を添加した後にイミド化させる方法を例にあげて、本発明に係るポリイミドの製造条件について説明する。
【0052】
ポリアミド酸を製造する方法は特に限定されず、公知の方法を適用することができる。より具体的には、以下の方法により得られる。まずジアミンを重合溶媒に溶解及び/又は分散し、これに酸二無水物粉末を徐々に添加し、メカニカルスターラーを用い、0.5〜96時間好ましくは0.5〜30時間攪拌する。この際モノマー濃度は0.5重量%以上95重量%以下、好ましくは1重量%以上90重量%以下である。このモノマー濃度範囲で重合を行うことにより、ポリアミド酸溶液を得ることができる。
【0053】
前記ポリアミド酸の製造の際に使用される反応溶媒としては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテルのような炭素数2以上6以下のエーテル化合物;アセトン、メチルエチルケトンのような炭素数2以上6以下のケトン化合物;ノルマルペンタン、シクロペンタン、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカリンのような炭素数5以上10以下の飽和炭化水素化合物;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリンのような炭素数6以上10以下の芳香族炭化水素化合物;酢酸メチル、酢酸エチル、γ−ブチロラクトンのような炭素数3以上6以下のエステル化合物;クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタンのような炭素数1以上10以下の含ハロゲン化合物;アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンのような炭素数2以上10以下の含窒素化合物;ジメチルスルホキシドのような含硫黄化合物が挙げられる。これらは必要に応じて1種、あるいは2種以上の混合物であっても良い。特に好ましい溶媒としては、炭素数3以上6以下のエステル化合物、炭素数6以上10以下の芳香族炭化水素化合物、炭素数2以上10以下の含窒素化合物が挙げられる。なお、これらは工業的な生産性、次反応への影響などを考慮して任意に選択可能である。
【0054】
ポリアミド酸の製造の際の反応温度は、反応開始や副反応の影響などを考慮して、0℃以上250℃以下が好ましい。反応温度は、好ましくは15℃以上220℃以下、さらに好ましくは20℃以上200℃以下である。
【0055】
ポリアミド酸の反応に要する時間は、目的あるいは反応条件によって異なるが、通常は96時間以内であり、特に好適には30分から30時間の範囲で実施される。
【0056】
次に、ポリアミド酸に触媒を添加し(化学的)イミド化し、本発明に係るアルカリ溶解性ポリイミドを得る方法について説明する。
【0057】
本発明に係るアルカリ溶解性ポリイミドを製造する際のイミド化触媒は特に制限されないが、無水酢酸のような酸無水物、γ−バレロラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−テトロン酸、γ−フタリド、γ−クマリン、γ−フタリド酸のようなラクトン化合物;ピリジン、キノリン、N−メチルモルホリン、トリエチルアミンのような三級アミンのなどが挙げられる。また、必要に応じて1種、あるいは2種以上の混合物であっても良い。この中でも特に、反応性の高さの観点からγ−バレロラクトンとピリジンの混合系が特に好ましい。
【0058】
イミド化触媒の添加量は、ポリアミド酸を100重量%とすると、50重量%以下が好ましく、30重量%以下がより好ましい。
【0059】
反応溶媒としては、ポリアミド酸の製造に使用したものと同じものを用いることができる。その場合、ポリアミド酸溶液をそのまま用いることができる。また、ポリアミド酸の製造に用いたものと異なる溶媒を用いてもよい。
【0060】
反応溶媒としては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテルのような炭素数2以上6以下のエーテル化合物;アセトン、メチルエチルケトンのような炭素数2以上6以下のケトン化合物;ノルマルペンタン、シクロペンタン、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカリンのような炭素数5以上10以下の飽和炭化水素化合物;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリンのような炭素数6以上10以下の芳香族炭化水素化合物;酢酸メチル、酢酸エチル、γ−ブチロラクトンのような炭素数3以上6以下のエステル化合物;クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタンのような炭素数1以上10以下の含ハロゲン化合物;アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンのような炭素数2以上10以下の含窒素化合物;ジメチルスルホキシドのような含硫黄化合物が挙げられる。必要に応じて1種、あるいは2種以上の混合物であっても良い。特に好ましい溶媒としては炭素数3以上6以下のエステル化合物、炭素数6以上10以下の芳香族炭化水素化合物、炭素数2以上10以下の含窒素化合物が挙げられる。なお、これらは工業的な生産性、次反応への影響などを考慮して任意に選択可能である。
【0061】
本発明に係るポリイミドの製造においては、反応温度は、反応開始や触媒の活性を考慮して、15℃以上250℃以下で実施することが好ましい。反応温度は、好ましくは20℃以上220℃以下、さらに好ましくは20℃以上200℃以下である。
【0062】
反応に要する時間は、目的あるいは反応条件によって異なるが、通常は96時間以内であり、特に好適には30分から30時間の範囲で実施される。
【0063】
製造終了後における、ポリイミドの回収は、反応溶液中の溶媒を減圧留去することに行うことができる。
【0064】
本発明に係るポリイミドの精製方法としては、反応溶液中の不溶解な酸二無水物及びジアミンを減圧濾過、加圧濾過などで除去する方法が挙げられる。また、反応溶液を貧溶媒に加え析出させる、いわゆる再沈精製法を実施することができる。更に特別に高純度なポリイミド前駆体が必要な場合は二酸化炭素超臨界法による抽出法も可能である。
【0065】
本発明に係るポリイミドを用いて、前記ポリイミドが均一に溶解及び/又は分散しうる溶媒とからなる樹脂組成物を得ることができる。
【0066】
本発明に係るポリイミドを含有する樹脂組成物を構成する溶媒は、本発明に係るポリイミドを均一に溶解及び/又は分散させうるものであれば限定されない。このような溶媒として、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテルのような炭素数2以上9以下のエーテル化合物;アセトン、メチルエチルケトンのような炭素数2以上6以下のケトン化合物;ノルマルペンタン、シクロペンタン、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカリンのような炭素数5以上10以下の飽和炭化水素化合物;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリンのような炭素数6以上10以下の芳香族炭化水素化合物;酢酸メチル、酢酸エチル、γ―ブチロラクトン、安息香酸メチルのような炭素数3以上9以下のエステル化合物;クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタンのような炭素数1以上10以下の含ハロゲン化合物;アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンのような炭素数2以上10以下の含窒素化合物;ジメチルスルホキシドのような含硫黄化合物が挙げられる。これらは必要に応じて1種、あるいは2種以上の混合物であっても良い。特に好ましい溶媒としては、炭素数2以上9以下のエーテル化合物、炭素数3以上9以下のエステル化合物、炭素数6以上10以下の芳香族炭化水素化合物、炭素数2以上10以下の含窒素化合物が挙げられる。また、必要に応じて、1種、あるいは2種以上の混合物であっても良い。ポリイミドの溶解性の観点から、トリエチレングリコールジメチルエーテル、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドが好ましい。
【0067】
本発明に係るアルカリ溶解性ポリイミドと溶媒とからなる樹脂組成物におけるアルカリ溶解性ポリイミドの濃度は、樹脂成型体が製造される濃度であれば、特に制限されない。作製する樹脂成型体の膜厚の観点からアルカリ溶解性ポリイミドの濃度が1重量%以上、樹脂成型体の膜厚の均一性からアルカリ溶解性ポリイミドの濃度が90重量%以下が好ましい。得られる樹脂成型体の膜厚の観点から、2重量%以上、80重量%以下がより好ましい。
【0068】
本発明における感光剤とは、光照射により構造が変化し、溶媒に対する溶解性が変化するものなどが挙げられる。このような化合物としては、キノンジアジド構造を含有する化合物、芳香族ジアゾニウム塩化合物、アジド構造を有する化合物などが挙げられる。溶解性コントラストの観点から、キノンジアジド構造を含有する化合物が好ましい。
【0069】
前記キノンジアジド構造を含有する化合物としては、1,2−ベンゾキノンジアジドスルホン酸エステル類、1,2−ベンゾキノンジアジドスルホン酸アミド類、1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル類、1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸アミド類が挙げられる。具体的には、例えば、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,4,6−トリヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,4,6−トリヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステルなどのトリヒドロキシベンゾフェノン類の1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル類;2,2’,4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,2’,4,3’−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,2’,4,3’−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,3,4,2’−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,3,4,2’−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,3,4,4’−テトラヒドロキシ−3’−メトキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,3,4,4’−テトラヒドロキシ−3’−メトキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステルなどのテトラヒドロキシベンゾフェノン類の1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル類;2,3,4,2’,6’−ペンタヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,3,4,2’,6’−ペンタヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステルなどのペンタヒドロキシベンゾフェノン類の1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル類;2,4,6,3’,4’,5’−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,4,6,3’,4’,5’−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、3,4,5,3’,4’,5’−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、3,4,5,3’,4’,5’−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステルなどのヘキサヒドロキシベンゾフェノン類の1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル類;ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、1,1,1−トリ(p−ヒドロキシフェニル)エタン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、1,1,1−トリ(p−ヒドロキシフェニル)エタン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,2’−ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)プロパン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,2’−ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)プロパン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、1,1,3−トリス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルプロパン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、1,1,3−トリス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルプロパン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、4,4’−[1−[4−[1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、4,4’−[1−[4−[1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインデン−5,6,7,5’,6’,7’−ヘキサノール−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインデン−5,6,7,5’,6’,7’−ヘキサノール−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,2,4−トリメチル−7,2’,4’−トリヒドロキシフラバン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,2,4−トリメチル−7,2’,4’−トリヒドロキシフラバン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステルなどの(ポリヒドロキシフェニル)アルカン類の1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル類などが挙げられる。溶解抑止能の観点から、1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル類が好ましく、1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル類、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル類が感光性コントラストの観点からより好ましい。なかでも一般式(6)で示す化合物B−1が特に好ましい。
【化7】

【化8】

【0070】
一般式(6)において、Qは一般式(7)で表される構造又は水素原子である。本発明に係る感光性樹脂組成物における感光剤として、化合物B−1は、一般式(6)における3個のQのうち、平均2.3個が一般式(7)で表される構造になっているものを指す。
【0071】
本発明に係る感光性樹脂組成物における感光剤の量としては、本発明に係る末端変性アルカリ溶解性ポリイミドの量を100重量%とした場合、感光性コントラストの観点から、1重量%以上50重量%以下が好ましく、より好ましくは5重量%以上30重量%以下である。1重量%以上であれば、未露光部の溶解抑止が充分である傾向にあるため好ましい。50重量%未満であれば、感度が充分に高い傾向にあるため好ましい。
【0072】
本発明におけるリン化合物とは、構造中にリン原子を含む化合物であれば限定されない。このような化合物として、リン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物などが挙げられる。
【0073】
リン酸エステル化合物としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリイソブチルホスフェート、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェートなどの脂肪族炭化水素基を置換基とするリン酸エステル、トリス(ブトキシエチル)ホスフェート(以下、TBXPと略称する)などの酸素原子を含む脂肪族有機基を置換基とするリン酸エステル、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)などの芳香族有機基を置換基とするリン酸エステル化合物などが挙げられる。
【0074】
これらの中で、現像性及びキュア後の反りの観点からTBXP、トリイソブチルホスフェートが好ましい。
【0075】
ホスファゼン化合物としては、一般式(8)、一般式(9)で表される構造などが挙げられる。
【化9】

【化10】

【0076】
一般式(8)及び一般式(9)で表されるホスファゼン化合物におけるR、R、R、Rは、炭素数1以上20以下の有機基であれば限定されない。炭素数1以上であれば、難燃性が発現する傾向にあるため好ましい。炭素数20以下であれば、ポリイミドと相溶する傾向にあるため好ましい。この中で、難燃性発現の観点から、炭素数6以上18以下の芳香族性化合物に由来する官能基が特に好ましい。このような官能基として、フェニル基、2−ヒドロキシフェニル基、3−ヒドロキシフェニル基、4−ヒドロキシフェニル基、2−シアノフェニル基、3−シアノフェニル基、4−シアノフェニル基などのフェニル基を有する官能基、1−ナフチル基、2−ナフチル基などのナフチル基を有する官能基、ピリジン、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾールなどの含窒素複素環化合物に由来する官能基、などが挙げられる。これらの化合物は、必要に応じて1種類でも2種類以上の組み合わせで用いても良い。この中で、入手の容易さからフェニル基、4−ヒドロキシフェニル基、4−シアノフェニル基、を有する化合物が好ましい。
【0077】
本発明における一般式(8)で表されるホスファゼン化合物におけるaは、3以上25以下であれば限定されない。3以上であれば、難燃性を発現し、25以下であれば、有機溶剤に対する溶解性が高い。この中で特に、入手の容易さからaが3以上10以下であることが好ましい。
【0078】
本発明における一般式(9)で表されるホスファゼン化合物におけるbは、3以上10000以下であれば限定されない。3以上であれば、難燃性を発現し、10000以下であれば、有機溶剤に対する溶解性が高い。この中で特に、入手の容易さから3以上100以下が好ましい。
【0079】
本発明における一般式(9)で表されるホスファゼン化合物におけるD及びEは、炭素数3以上30以下の有機基であれば限定されない。この中で、Dは−N=P(OC、−N=P(OC、(OCOH)、−N=P(OC)(OCOH)、−N=P(OCOH)、−N=P(O)OC、−N=P(O)(OCOH)が好ましい。Eは−P(OC、−P(OC(OCOH)、−P(OC(OCOH)、−P(OC)(OCOH)、−P(OCOH)、−P(O)(OC、−P(O)(OCOH)、−P(O)(OC)(OCOH)などが好ましい。
【0080】
本発明におけるリン化合物は、1種類でも2種類以上の組み合わせで用いても良い。
【0081】
本発明に係る感光性樹脂組成物においてリン化合物の添加量は、末端変性アルカリ溶解性ポリイミドの量を100重量%とした場合、感光性などの観点から、50重量%以下が好ましい。硬化体の難燃性の観点から、45重量%以下が好ましく、40重量%以下がより好ましい。
【0082】
本発明に係る感光性樹脂組成物には、必要に応じて末端変性アルカリ溶解性ポリイミド、感光剤、及び/またはリン化合物が均一に溶解及び/又は分散しうる溶媒を含むことができる。溶媒としては、前述の末端変性アルカリ溶解性ポリイミド樹脂組成物に用いる溶媒を使用することができる。
【0083】
本発明の感光性樹脂組成物は感光性フィルムに好適に用いることができる。感光性フィルムを製造するという観点からは、感光性樹脂組成物における末端変性アルカリ溶解性ポリイミドの濃度は、1重量%以上、90重量%以下が好ましい。末端変性アルカリ溶解性ポリイミドの濃度は、感光性フィルムの膜厚の観点から1重量%以上が好ましく、感光性樹脂組成物の粘度、膜厚の均一性の観点から90重量%以下が好ましい。得られる感光性フィルムの膜厚の観点から、2重量%以上、80重量%以下がより好ましい。
【0084】
次に、本発明に係る感光性フィルムの製造方法について説明する。
まず、本発明に係る感光性樹脂組成物を基材にコートする。前記基材としては、感光性ドライフィルム形成の際に損傷しない基材であれば、限定されない。このような基材としては、シリコンウエハ、ガラス、セラミック、耐熱性樹脂、キャリアフィルムなどが挙げられる。本発明におけるキャリアフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルムや金属フィルムが挙げられる。取扱いの良さから、耐熱性樹脂及びキャリアフィルムが好ましく、基板圧着後の剥離性の観点から、ポリエチレンテレフタレートフィルムが特に好ましい。
【0085】
コート方法としてはバーコート、ローラーコート、ダイコート、ブレードコート、ディップコート、ドクターナイフ、スプレーコート、フローコート、スピンコート、スリットコート、はけ塗り、などが例示できる。コート後、必要に応じてホットプレートなどによりプリベークと呼ばれる加熱処理を行っても良い。
【0086】
このように、本発明の感光性樹脂組成物で構成された感光性フィルムを用いる場合は、感光性樹脂組成物の溶液を任意の方法で任意の基材上に塗布後乾燥し、ドライフィルム化し、例えばキャリアフィルムと感光性フィルムとを有する積層フィルムとする。
【0087】
また、感光性フィルム上に、任意の防汚用や保護用のカバーフィルムを少なくとも一層設けて積層フィルムとしても良い。本発明に係る積層フィルムおいて、カバーフィルムとしては、低密度ポリエチレンなど感光性フィルムを保護するフィルムであれば限定されない。
【0088】
次いで、本発明の感光性フィルムを、配線を有する基材に前記配線を覆うように圧着し、アルカリ現像を行い、焼成を行うことによりプリント配線板を得ることができる。
【0089】
本発明に係るプリント配線板における配線を有する基材としては、ガラスエポキシ基板、ガラスマレイミド基板などのような硬質基材、あるいは銅張積層板などのフレキシブルな基板などが挙げられる。この中で、折り曲げ可能の観点からフレキシブルな基板が好ましい。
【0090】
前記プリント配線板の形成方法においては、前記感光性フィルムが配線を覆うように基材に形成されれば、限定されない。このような形成方法としては、前記配線を有する基材の配線側と本発明の感光性フィルムを接触させた状態で、熱プレス、熱ラミネート、熱真空プレス、熱真空ラミネート等を行う方法などが挙げられる。この中で、配線間への感光性フィルムの埋め込みの観点から、熱真空プレス、熱真空ラミネートが好ましい。
【0091】
前記配線を有する基材上に感光性フィルムを積層する際の加熱温度は、感光性フィルムが基材に密着しうる温度であれば限定されない。基材への密着の観点や感光性フィルムの分解や副反応の観点から、30℃以上、400℃以下が好ましい。より好ましくは、50℃以上、150℃以下である。
【0092】
本発明に係る感光性フィルムは、光照射後、光照射部位をアルカリ現像にて溶解することにより、ポジ型のフォトリソグラフィーが可能である。この場合において、光照射に用いる光源は、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、蛍光灯、タングステンランプ、アルゴンレーザー、ヘリウムカドミウムレーザーなどが挙げられる。この中で、高圧水銀灯、超高圧水銀灯が好ましい。
【0093】
現像に用いるアルカリ水溶液としては、光照射部位を溶解しうる溶液であれば限定されない。このような溶液として、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液などが挙げられる。現像性の観点から、炭酸ナトリウム水溶液及び水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。現像方法としては、スプレー現像、浸漬現像、パドル現像などが挙げられる。
【0094】
次いで、本発明の感光性フィルムを圧着したプリント配線板を焼成することによりプリント配線板を形成する。焼成は、溶媒の除去の観点や副反応や分解などの観点から、30℃以上、400℃以下の温度で実施することが好ましい。より好ましくは、100℃以上、300℃以下である。
【0095】
前記焼成における反応雰囲気は、空気雰囲気下でも不活性ガス雰囲気下でも実施可能である。前記プリント配線板の製造において、前記焼成に要する時間は、反応条件によって異なるが、通常は24時間以内であり、特に好適には1時間から8時間の範囲で実施される。
【0096】
本発明に係る末端変性アルカリ溶解性ポリイミド及び感光性樹脂組成物は、良好な熱安定性を示し、かつ現像性も良好であり、硬化体とした際に耐薬品性を示すことから、エレクトロニクス分野で各種電子機器の操作パネル等に使用されるプリント配線板や回路基板の保護層形成、積層基板の絶縁層形成、半導体装置に使用されるシリコンウエハ、半導体チップ、半導体装置周辺の部材、半導体搭載用基板、放熱板、リードピン、半導体自身などの保護や絶縁及び接着に使用するための電子部品への膜形成用途に利用される。このように、シリコンウエハ、銅張積層板、プリント配線板などの上に形成された配線を保護する保護膜をカバーレイという。
【0097】
[実施例]
<試薬>
実施例及び比較例において、用いた試薬であるシリコーンジアミン(KF−8010)(信越化学工業社製)、ODPA(和光純薬工業社製)、TMEG(新日本理化社製)、APB(三井化学社製)、MBAA(和歌山精化社製)、化合物B−1、TBXP(大八化学社製)、トリメリット酸無水物(東京化成社製)、トルエン(和光純薬工業社製、有機合成用)、γ―ブチロラクトン(和光純薬工業社製、特級)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(和光純薬工業社製)ピリジン(和光純薬工業社製、有機合成用)、γ―バレロラクトン(和光純薬工業社製、一級)、炭酸ナトリウム(和光純薬工業社製)、は特別な精製を実施せずに、反応に用いた。
【0098】
<重量平均分子量測定>
重量平均分子量の測定法であるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)は、下記の条件により測定を行った。溶媒としてN、N−ジメチルホルムアミド(和光純薬工業社製、高速液体クロマトグラフ用)を用い、測定前に24.8mmol/Lの臭化リチウム一水和物(和光純薬工業社製、純度99.5%)及び63.2mmol/Lのリン酸(和光純薬工業社製、高速液体クロマトグラフ用)を加えたものを使用した。
カラム:Shodex KD−806M(昭和電工社製)
流速:1.0mL/分
カラム温度:40℃
ポンプ:PU−2080Plus(JASCO社製)
検出器:RI−2031Plus(RI:示差屈折計、JASCO社製)
UV―2075Plus(UV−VIS:紫外可視吸光計、JASCO社製)
【0099】
また、前記分子量を算出するための検量線は、スタンダードポリスチレン(東ソー社製)を用いて作成した。
【0100】
<膜厚測定>
硬化体の膜厚測定は、膜厚計(Mitutoyo社製、ID−C112B)を用いて行った。
【0101】
<ドライフィルム製造方法>
本発明における感光性樹脂組成物のコート方法は、FILMCOATER(TESTER SANGYO社製、PI1210)を用いるドクターブレード法により行った。易剥離PETフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム社製、DIAFOIL、T100H25)に前記感光性樹脂組成物を滴下し、クリアランス150μmでコートを行った。コートした前記フィルムを、乾燥器(ESPEC社製、SPHH−10l)を用いて95℃で30分間乾燥することにより、感光性ドライフィルムを得た。
【0102】
<ラミネート条件>
本発明におけるラミネートは、真空プレス機(名機製作所製)を用いて行った。プレス温度110℃、プレス圧2.0MPa、プレス時間2分間にて行った。
【0103】
<現像性評価>
現像性評価は、銅張積層板上に、感光性ドライフィルム(感光層の厚さ約18μm)を用いて、上記のラミネート条件でラミネートした後に、ポジ型マスクを用いて照射量1.0J/cmにて露光を行い、続いて炭酸ナトリウム水溶液によるアルカリ現像処理と水によるリンスを行い、乾燥後にパターンを光学顕微鏡にて評価することにより行った。マスクには100μm径の円形パターン(間隔100μmピッチ)を用いた。現像により、露光部で銅面が現れるまでの時間を測定し、120秒以下のものを○、それより現像時間が長いものを×とした。
【0104】
<熱安定性評価>
本発明における熱安定性評価は、ポリイミドを上記のドライフィルム製造方法にて製造し、得られたドライフィルムを易剥離PETフィルムから剥がし、上記のGPC測定溶媒に溶解させた後にGPCを測定し、加熱していないポリイミドの分子量からの変化率を求めることにより行った。
【0105】
[実施例1]
窒素雰囲気下、セパラブルフラスコに、MBAA(5.0mmol)、シリコーンジアミン(KF−8010、15.0mmol)、γ―ブチロラクトン(28.0g)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(12.0g)を入れ、続いてODPA(21.3mmol)を加え、80℃で2時間撹拌した。続いて、トルエン(15.0g)、ピリジン(11.8mmol)、γ―バレロラクトン(7.5mmol)を加え、ディーンシュタルク装置及び還流器をつけ、180℃で2時間加熱撹拌した。80℃まで冷却した後に、APB(3.0mmol)、MBAA(5.0mmol)を加え、10分間撹拌した後に、トリメリット酸無水物(1.6mmol)、TMEG(6.2mmol)を加え、80℃で2時間加熱撹拌した。続いて、トルエン(10.0g)を加え、180℃で1時間加熱撹拌した。140℃まで冷却し、ポリマー固形分濃度25重量%となるようにγ―ブチロラクトンを加え、室温まで冷却することにより、ポリイミド(1)の溶液を得た。重量平均分子量は38000であった。
【0106】
ポリイミド(1)の熱安定性を、前述の熱安定性評価方法にて評価を行った。表1に示す。
【0107】
ポリイミド(1)100重量%に対して、化合物B−1(20重量%)、TBXP(10重量%)を混合し、感光性樹脂組成物を調整した。このようにして得られた感光性樹脂組成物を、前述のコート方法にて易剥離PETフィルムにコートし、95℃で30分間乾燥させることにより、感光性ドライフィルムを得た。
【0108】
上記の感光性フィルムを、銅張積層板上に前述のラミネート条件によりラミネートを行った。得られた積層体を、ポジ型マスクを用いて照射量1.0J/cmにて露光を行い、続いて1重量%炭酸ナトリウム水溶液によるアルカリ現像処理と水によるリンスを行い、乾燥後にパターンを光学顕微鏡にて観察した。結果を表2に示す。
【0109】
[比較例1]
窒素雰囲気下、セパラブルフラスコに、MBAA(5.0mmol)、シリコーンジアミン(KF−8010、15.0mmol)、γ―ブチロラクトン(28.0g)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(12.0g)を入れ、続いてODPA(21.3mmol)を加え、80℃で2時間撹拌した。続いて、トルエン(15.0g)、ピリジン(11.8mmol)、γ―バレロラクトン(7.5mmol)を加え、ディーンシュタルク装置及び還流器をつけ、180℃で2時間加熱撹拌した。80℃まで冷却した後に、APB(3.0mmol)、MBAA(5.0mmol)を加え、10分間撹拌した後に、TMEG(7.6mmol)を加え、80℃で2時間加熱撹拌した。続いて、トルエン(10.0g)を加え、180℃で1時間加熱撹拌した。140℃まで冷却し、ポリマー固形分濃度25重量%となるようにγ―ブチロラクトンを加え、室温まで冷却することにより、ポリイミドの溶液を得た。重量平均分子量は39000であった。実施例1と同様の方法で、熱安定性の評価を行った。表1に示す。
【0110】
ポリイミド100重量%に対して、化合物B−1(20重量%)及びTBXP(10重量%)を混合し、感光性樹脂組成物を調整した。前記感光性樹脂組成物を実施例1と同様の方法にてアルカリ現像性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0111】
[比較例2]
窒素雰囲気下、セパラブルフラスコに、MBAA(10.0mmol)、シリコーンジアミン(KF−8010、15.0mmol)、APB(3.0mmol)、γ―ブチロラクトン(28.0g)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(12.0g)を入れ、続いてODPA(21.3mmol)、トリメリット酸無水物(1.6mmol)、TMEG(6.2mmol)を加え、80℃で8時間撹拌した。ポリマー固形分濃度25重量%となるようにγ―ブチロラクトンを加え、室温まで冷却することにより、ポリアミド酸の溶液を得た。重量平均分子量は35000であった。実施例1と同様の方法で、熱安定性の評価を行った。表1に示す。
【0112】
該ポリアミド酸100重量%に対して、化合物B−1(20重量%)及びTBXP(10重量%)を混合し、感光性樹脂組成物を調整した。前記感光性樹脂組成物を実施例1と同様の方法にてアルカリ現像性の評価を行った。
【表1】

【表2】

【0113】
表1及び表2に示すように、本発明の末端変性アルカリ溶解性ポリイミドを用いることで、熱安定性及び現像性共にすぐれた感光性フィルムを得ることができる。また、本発明の末端変性アルカリ溶解性ポリイミドを用いることにより、現像時間が大幅に短縮され、工業的に極めて有用である。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明における末端変性アルカリ溶解性、該ポリイミドを含有する感光性樹脂組成物は、感光性フィルムとして良好な熱安定性を示し、かつ現像性も良好であることから、エレクトロニクス分野で各種電子機器の操作パネル等に使用されるフレキシブル配線板や回路基板の保護層形成、積層基板の絶縁層形成、半導体装置に使用されるシリコンウエハ、半導体チップ、半導体装置周辺の部材、半導体搭載用基板、放熱板、リードピン、半導体自身などの保護や絶縁及び接着に使用するための電子部品への膜形成用途に利用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー主鎖末端に、カルボキシル基、芳香族性水酸基及びスルホン酸基からなる群より選ばれた官能基を少なくとも一つ有するアルカリ溶解性ポリイミド。
【請求項2】
請求項1記載のアルカリ溶解性ポリイミドが、下記一般式(1)で表されることを特徴とするアルカリ溶解性ポリイミド。(式中、R、Rは4価の有機基を表し、同じであっても異なっていても良い。R4、は炭素数1以上30以下の炭化水素基を表す。R2はアルカリ溶解性官能基を少なくとも一つ以上有する2価の有機基を表す。nは、1≦n≦30を満たす。x+y=100かつ0.1≦x/(x+y)≦0.9である。A及び/又はBは末端にカルボキシル基、芳香族性水酸基、スルホン酸基から選ばれる官能基を少なくとも一つ有する有機基である。)
【化1】

【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のアルカリ溶解性ポリイミドと、感光剤と、を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項3記載の感光剤が、キノンジアジド構造を有することを特徴とする感光性樹脂組成物。
【請求項5】
リン化合物を含有することを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項5記載のリン化合物が、リン酸エステル構造及び/又はホスファゼン構造を有することを特徴とする感光性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項3から請求項6のいずれかに記載の感光性樹脂組成物から構成されることを特徴とする感光性フィルム。
【請求項8】
キャリアフィルムと、前記キャリアフィルム上に設けられた請求項7記載の感光性フィルムと、を具備することを特徴とする積層フィルム。
【請求項9】
前記感光性フィルム上に形成されたカバーフィルムを具備することを特徴とする請求項8記載の積層フィルム。
【請求項10】
配線を有する基材と、前記配線を覆うように前記基材上に形成され、請求項7から請求項9のいずれかに記載の感光性フィルム又は積層フィルムから構成されたカバーレイと、を具備することを特徴とするプリント配線板。

【公開番号】特開2009−269936(P2009−269936A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−118699(P2008−118699)
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【出願人】(397025417)株式会社ピーアイ技術研究所 (50)
【Fターム(参考)】