説明

本態性動脈性高血圧症を発症する危険度を測定する方法とキット

高血圧症(HT)に対する疾患感受性や素因と関連する遺伝子、SNPマーカー及びハプロタイプを開示する。HTリスク遺伝子に存在する多型を用いた診断方法、及び臨床経過やHTに対する治療の効果を予測するための方法も開示する。本発明の遺伝子、遺伝子産物及び薬剤は、HTの予防や治療の効果をモニタリングするのにも有用である。HTの診断、治療の選択及び予後判定を行うためのキットも提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動脈性高血圧症(HT)などの心血管障害(CVD)の診断の分野に関する。より詳細には、本発明は、HTの素因、発症傾向や感受性を診断又は判定するための方法を提供する。特に本発明は、試験する対象生物から得た生物学的サンプルを提供し、そして生物学的サンプルから、ゲノム上の1種又は数種の一塩基多型(SNP)マーカーの存在又は不存在を検出することを包含する方法に焦点を当てたものである。更に本発明は、HTを発症する確率を提供するスコアを構築するために、遺伝的情報及び表現型の情報に加えて、アンケートで得られた情報をも使用する。また、本発明は、この方法を実施するためのキットを提供する。このキットは、治療的及び予防的介入(例えば、食事についての助言)を行う対象を決めるためのみならず、治験薬や他の介入方法に関する臨床試験の対象を層化するための、病因論に基づくHTの診断に使用することができる。
【背景技術】
【0002】
公衆衛生におけるCVDとHTの重要性
心血管障害(CVD)(ICD/10コード I00−I99、Q20−Q28)には、他の疾患と共に、虚血性(冠動脈)心疾患(IHD、CHD)、高血圧症、脳血管性疾患(脳卒中)及びリュウマチ熱/リュウマチ性心疾患が含まれる(AHA, 2004)。HT(ICD/10 I10−I15)は、収縮期血圧が140mmHg以上、拡張期血圧が90mmHg以上、又は抗高血圧薬の投薬を受けている状態と定義する(AHA, 2004)。CVDそのものを発症していなくとも、HTは、IHD、脳卒中や鬱血性心不全(CHF)などのCVDの危険因子である。1回目の心臓麻痺を発症したヒトの約半数と1回目の脳卒中を発症したヒトの3分の2の血圧(BP)は、160/95mmHgよりも高い。症例の91%において、HTはCHFに先んじて発症する。
【0003】
HT患者の90〜95%は、その根本的病因が未だ分らない本態性HTである。異質な遺伝的及び環境的要因による持続的な血圧の上昇を本態性HTと呼ぶ。その有病率は、診断に用いるBPの測定法や実行閾値に関係なく、年齢と共に上昇する。HTは、腹部肥満度、脂質代謝異常、グルコース不耐性、高インスリン血症や高尿酸血症などと共に心血管障害危険因子とされているが、これは根本的病因が共通するためかもしれない(Salonen JT et al, 1981, 1998、Staessen JA et al, 2003)。
【0004】
2001年には、推定1,660万人 −即ち地球上の全死亡者数の三分の一− が色々な形のCVD(720万人がHT、550万人が脳血管障害、そして更に390万人が高血圧性の又は他の心臓の病態)によって死亡した。少なくとも年間2千万人が心臓麻痺や脳卒中から生還し、その中のかなりの人数が高額な臨床介護を必要とし、長期介護財源に大きな負担を課す。CVDは男性、女性そして子供にとって、破壊的な疾患であることを認識する必要がある(AHA, 2004)。
【0005】
全世界のCVD死亡者の約80%が、発展途上の低所得国及び中所得国で生じた。2010年までには、CVDは先進国と発展途上国の両方で主な死因となることが推定される。CVD発症率の上昇は、工業化、都市化、経済発展及び食糧市場のグローバリゼーションに伴う、世界中での食習慣、運動量及びタバコ消費量の著しい変化を反映している(WHO, 2004)。これにより、比較的最近の環境危険因子及び行動危険因子の役割が強調される。しかし、人種間に見られるCVDの発病率と罹患率の差及び家系間に見られるCVD発症率の偏りは、遺伝性の危険因子が主要な役割を担うことを示唆している。
【0006】
障害調整生存年数(DALY)によって障害を計測すると、CVDは、全世界のDALYの9.7%、先進国のDALYの20.4%、そして発展途上国のDALYの8.3%をもたらした。HTは、全世界のDALYの1.4%、先進国のDALYの4.7%、そして発展途上国のDALYの0.9%をもたらした(Murray CJL and Lopez AD, 1997)。
【0007】
NHANES III 研究(1988〜1994)からのデータに基づくと、2001年には、何らかの形態のCVD罹患者数はアメリカ人で6,440万人と推定され、これは有病率22.6%(男性が21.5%、女性が22.4%)に相当する。このうち、5,000万人がHTを発症していた(有病率は20%)。HTを患う患者のうち、30%はHTの自覚がなく、34%は治療によってHTを抑制しており、25%は治療中であるがHTは抑制されておらず、11%は治療を受けていない(AHA, 2004)。HTは発展途上国においても公衆衛生問題であり、このような国では、有病率が10%以上であることが珍しくなく、多くの場合は、HTの自覚、治療、及び血圧抑制のレベルの低さと関連している(Fuentes RM et al, 2000)。
【0008】
アメリカ合衆国において2004年にCVDに係った費用は、推定3,684億ドル(HTが1,332億ドル、脳卒中が536億ドル、高血圧症が555億ドル)である。この額には、健康維持に係った費用(直接損害額)及び疾病と死亡に伴う生産性の低下(間接損害額)が含まれている(AHA, 2004)。
【0009】
本態性HTの病態生理学
循環器内の血液を動かすのに必要な圧力は、心臓のポンプ機能[心拍出量(CO)]と動脈の柔軟性[末梢抵抗(PR)]によって供給される。一方、血圧(BP)を決めるこのような一次決定因子は、いずれも複雑な一連の因子の間の相互作用によって決まる。
【0010】
心拍出量に影響を与える因子
心拍出量(CO)の増加は、過動循環を示すことのある、境界域高血圧症の若年患者の一部で見られる症状である。これがHTの原因であるならば、論理的には、以下の2つの過程のいずれかによってCOの増加が生じたと考えられる: 体液量(前負荷)の増加又は心臓の神経刺激による収縮性の増加。しかし、COの増加がHTの発症に関与していたとしても、COの増加が持続するとは考えられない。慢性的なHTにおける典型的な血行動態的所見は、上昇したPRと正常なCOである(Cowley AW, 1992)。
【0011】
心拍数の増加は、単純に過動循環を反映したり、交感神経性活動の増加の指標となったりするものではないが、心拍数の増加は、HT発症の独立した予測因子であることが複数の疫学的調査によって示されている(Palatini P and Julius S, 1999)。
【0012】
左室肥大は、血管抵抗の増加に対する代償機構と一般的に考えられている。しかしながら、繰り返される神経刺激に対する一次応答を反映するものとも考えられ、それ故に、HT発症メカニズム(Julius S et al., 1991c)のみならず、動脈硬化によるBP上昇を補うためにCOを増幅させる現象(Segers P et al., 2000)とも考えられる。
【0013】
CO増加によってHTを誘導する他のメカニズムとしては、循環体液量(前負荷)の増加が挙げられる。しかし、大部分の研究において、BPの高い対象生物の血液量と総交換性ナトリウム量は正常対象生物よりも低い(Harrap SB et al., 2000)。血液総量が増大していなくとも、より大きな末梢血管収縮によって、より多くの血液が中央領域又は心肺領域に行き渡るように血液を再分配することができる(Schobel HP et al., 1993)。その結果、心臓への静脈還流量は増加し、COの増加を仲介することが可能となる。
【0014】
過剰なナトリウム摂取は、体液量と前負荷を増加することでCOを増加し、その結果、HTを誘導する(Chobanian AV and Hill M, 2000)。実験データ(Tobian L, 1991)と疫学的証拠(Stamler J et al., 1997)の両方が、ヒトにおけるHTと高ナトリウム/カリウム比との密接な関連性を支持している。工業社会におけるほぼ全員が高ナトリウム食を摂取しているものの、その約半数のみがHTを発症するという事実は、ナトリウムに対するBPの感受性の程度の多様性を示唆している(Weinberger MH, 1996)。
【0015】
健常者においては、BPが上昇すると、腎臓によるナトリウムと水分の排泄が増加して体液量が低下し、BPが正常値に戻る。この現象を、圧依存性利尿という。動物実験とコンピューターモデルによると、腎臓による体液量の調節は、BPの長期制御において支配的な機構であると考えられる(Guyton AC 1961, 1992)。従って、HTを発症した場合、圧依存性利尿(pressure-natriuresis)による調節機構に何らかの異常があるはずであり、そうでなければBPは正常に戻るはずである(Cowley AW and Roman RJ, 1996)。一次HTの患者においては、血圧−ナトリウム排泄曲線をリセットすることは、BPが正常値に戻ることを妨げる(Palmer BF, 2001)。体液バランスを維持するための圧依存性利尿への転換には、BPの上昇が必要である。血圧と利尿作用との関係は、レニン−アンジオテンシン系(RAS)、交換神経活動、心房性ナトリウム利尿因子、アラキドン酸代謝産物や腎内酸化窒素などの神経性因子や液性因子によって変えることができる(Moreno C et al., 2001、Majid DS et al., 2001)。主な調節因子はRAS(Hall JE et al., 1999; van Paassen P et al., 2000)である可能性が高く、これは末梢血管収縮に必要なよりもはるかに低い濃度のアンジオテンシンIIによって、腎臓によるナトリウム再吸収を増加させる。アンジオテンシンIIは血管平滑筋と副腎皮質に作用するのみならず、心臓、腎臓、中枢神経系と自律神経系にも作用する。これらの作用は、アンジオテンシンIIの抹消血管系に対する体液量貯留効果と血管収縮効果を増幅するので、COとPRの両方に影響を与える。更にアンジオテンシンIIは、BPに対する効果とは独立して、細胞増殖と肥大を誘導する(Su EJ et al., 1998)。又、アンジオテンシンIIは、転写因子κ−B(Luft FC, 2001)と接着分子−1の発現(Tummala PE et al., 1999)の活性化によって、血管平滑筋細胞の炎症性応答(Kranzhofer R et al., 1999)を誘導するとも考えられ、これはアテローム性動脈硬化症への直接的な連鎖となる可能性がある。
【0016】
ストレスは交感神経系(SNS)を直接活性化することができ、一方、SNSの過剰活性は、高ナトリウム摂取、RASやインシュリン抵抗性を含む他の可能なメカニズムと相互作用することができる。相当な量の証拠によって、初期HTにおけるSNS活性の増加が裏付けられており(Esler M et al., 2001)、更に印象的なことに、このことは高血圧症の親を持つ子において見受けられ、また、正常血圧を維持していても、高血圧症の親を持つ子の大部分がHTを発症する可能性が高い。HTの病因論におけるSNS活性の特定の役割が何であれ、SNS活性は、高血圧患者において心血管に関する疾病率と死亡率が早朝の時間帯に増加する現象に関与すると考えられる。目覚めと共にエピネフリンレベルの上昇が開始し、起き上がるとノルエピネフリンが急激に上昇する(Dodt C et al., 1997)。増加したSNS活性の結果として、BPが突然に著しく上昇し、このBP上昇が、早朝の突然死、心臓麻痺及び脳卒中の原因の少なくとも一部を担っている。交感神経活性の増加は、以前は心血管疾病率に関連すると思われていた、高血圧症患者の多くに見られる心拍数の増加にも関与するであろう。
【0017】
末梢抵抗に影響を与える因子
HTは、主として動脈の管腔の大きさ(即ち半径)の低下によるPRの増加によって維持される。ポアズイユの法則によると、血管抵抗は、血液の粘度と動脈系の長さの両方に比例し、管腔の半径の三乗に反比例する。血液の粘度と動脈系の長さは変化したとしてもわずかであり、管腔の半径の小さな変化でさえ大きな効果をもたらすので、慢性的なHTに見られる血管抵抗の増加は、抵抗値の小さな動脈や小動脈の内径の変化を反映していることは明らかである(Folkow B et al., 1970)。血管壁の厚みと管腔直径の比が増加しているために、抵抗性静脈が刺激されると、高い血管壁圧力と管腔内圧力が発生する。
【0018】
HTにおいては、小さな動脈は機能的、構造的且つ機械的な変化生じ、その結果、管腔の大きさが低下し、抹消抵抗が増加する(Mulvany MJ, 2002、Intengan HD and Schiffrin EL, 2001)。機能的変化には、反応性の増加と応力緩和性(relaxation)の減退が含まれ、興奮収縮連関の変化、血管平滑筋細胞の電気的性質の変化、又は内皮系の機能不全を反映する(Johns DG et al, 2000、Feldman RD and Gros R, 1998)。主な構造変化には細胞増殖の増加による再構築、細胞外マトリックスの沈着と炎症が含まれる(Mulvany MJ, 2002、Intengan HD and Schiffrin EL, 2001、Brasier AR, 2002)。血管平滑筋細胞はこれら事象の中心にあり、HTで生じる変化の基となる動的なプロセスにおいて基礎的な役割を担う。
【0019】
HTにおける血管の変化は、シグナル伝達を調節する液性因子と機械的因子に関連し、その結果、中膜の細胞成分の機能と成長の異常をもたらす(Touyz RM, 2000、Koller A, 2002)。HTにおいて動脈を調節する液性因子としては、アンジオテンシンII、エンドセリン−1、カテコールアミン、バソプレシンなどの血管収縮作用物質;酸化窒素、内皮由来過分極因子、ナトリウム利尿ペプチドなどの血管拡張作用物質;インシュリン様増殖因子−1、血小板由来増殖因子(PDGF)、表皮成長因子(EGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子などの増殖因子;及びトランスフォーミング成長因子β、腫瘍壊死因子、インターロイキンなどのサイトカインが挙げられる(Touyz RM, 2000)。HTにおいて脈管構造に影響を与える機械的因子としては、ずり応力、壁体応力、と圧力そのものによる直接的な作用が挙げられる(Touyz RM, 2000、Koller A, 2002)。これら因子の他には、細胞内及び細胞間伝達分子として機能する活性酸素種(ROS)も血管の柔軟性と構造を調節するという証拠があり、証拠は増加している(Wilcox CS, 2002; Berry C et al, 2001)。
【0020】
アンジオテンシンIIのシグナル伝達に関する分野における最近の発展は、その血管収縮特性に加えて、アンジオテンシンIIは、強力な分裂促進様及び炎症誘発様の特性を有するという報告がある。これらの作用は、非受容体型チロシンキナーゼと受容体型チロシンキナーゼの両方のリン酸化によって仲介される(Touyz RM, 2003)。HTにおける異常な血管機能の基となる多くのシグナル伝達事象は、細胞内酸化還元状態の変化の影響を受けるということがますます明らかになってきた。特に、ROSの生物学的利用率の増加は、増殖性シグナル伝達経路を刺激し、炎症誘発遺伝子の発現を誘導し、興奮収縮連関を変化させ、内皮の機能を妨害する(Touyz RM, 2003)。
【0021】
HTの原因となる種々の機能及び構造変化と協調して、動脈は硬くなる、即ち、弾性が低下する。血管の硬化は年齢と共に進行的に増加し(Slotwiner DJ et al., 2001)、拡張期血圧と比較して収縮期血圧の進行的な増加をもたらし、今では心血管性危険度の主な決定因子と認識されている、脈圧の典型的な上昇をもたらす(Beltran A et al., 2001)。硬さと弾性の測定値は、HT発症に関する独立した予測因子(Liao D et al., 1999)及びHT患者における心血管性危険度のマーカー(Blacher J et al., 1999)であることが示されている。BP脈波形に反映される大動脈の物理的特徴の変化は、BPと脈圧のみならず、心筋の運動と性能を変化させる。
【0022】
BPの上昇に繋がる病態生理学的メカニズムは複雑であるため、いかなる高血圧患者においても、選択的な、メカニズムに基づく抗高血圧治療がほとんど不可能である。HTは中年と高齢者の間で広く蔓延しており、これら個体におけるBP制御の成功率は低い。治療のための現行のガイドラインでは、通常、HTを治療するための一般的な治療を推奨しており、BP上昇の裏に潜んだ病態生理学に基づく治療の選択についてはわずかな重点しか置かれていない(Chobanian AV et al, 2003、ESH/ESC, 2003)。特定の原因に関する認識の増加と共に、副作用の少ない、個別の病態生理学的メカニズムに対して選択的な治療法の開発が可能となり、それによってBPのより効果的な低下がもたらされる。遺伝学、ジェノミクス及びプロテオミクスの強力な新技術を応用生理学と集団研究と統合して使用することにより、今後数十年の内に、HTの治療や更には予防のためのより選択的且つ効果的な取り組みが可能となる(Oparil S et al, 2003)。
【0023】
本態性HT: 多遺伝子性疾患
核家族の研究によって、家族内の方が家族間よりもBPの類似性が高いことが示され、遺伝率推定値は0.20〜0.46の範囲内である(Fuentes RM, 2003)。双子に関する研究は、二卵性双生児よりも一卵性双生児においてBPの一致性が高いことを示し、最も高い遺伝率推定値は0.48〜0.64である(Fuentes RM, 2003)。養子研究は、同じ家庭に暮らす養子を含む兄弟よりも生物学的な兄弟においてBPの一致性が高いことを示し、遺伝率推定値は0.45〜0.61である(Fuentes RM, 2003)。
【0024】
高血圧と低血圧がメンデル遺伝学的な形を取ることは稀であるため、単一遺伝子がBPに主要な効果をもたらすことも考えられる(Lifton RP et al, 2001)。同定可能な単一遺伝子変異が原因となるHTはわずか数パーセントであるが、このような稀な疾患の研究は、より一般的な形のHTにかかりやすくする病態生理学的メカニズムを解明し、新規な治療的手法を示唆するかもしれない(Lifton RP et al, 2001)。今日までに、メンデル型のヒトHTをもたらす10個の遺伝子の変異と低血圧症をもたらす9個の遺伝子の変異が報告されている(Lifton RP et al, 2001、Wilson FH et al, 2001)。これらの変異は、腎臓による塩分の処理を変化させることでBPに影響を与えるが、これはHTの発症が、塩・水分貯留をもたらす、遺伝的に決定された腎臓の機能不全に依存するという仮説を強化するものである(Guyton AC, 1991)。重要なことに、今日までに同定された全ての単遺伝子性HT症候群は、腎性塩貯留をもたらす障害によるものであり、一方、全ての低血圧症候群は、腎臓の過剰な塩排泄という機構を共有している(Hopkins PN and Hunt SC, 2003)。
【0025】
HTの単一遺伝子性の原因の中で最も良く研究されているのはリドル症候群である。リドル症候群は、上皮ナトリウムチャンネルの構成的な活性化が、重症且つ治療耐性的なHTを発症しやすくする、稀であるが臨床的に重要な疾患である(Shimkets RA et al, 1994)。上皮ナトリウムチャンネルの活性化は、チャンネルのβ又はγサブユニットの変異に遡ることができ、この変異の結果として、腎臓の集合管の段階での不適切な塩貯留が起こる。リドル症候群の患者は典型的な症状として、容量依存性の、低レニン・低アルドステロン性HTを発症する。
【0026】
大部分の症例において、HTは遺伝因子、環境因子及び人口統計学的因子の複雑な相互作用の結果である。遺伝子解析方法、特に候補遺伝子関連研究とゲノムワイドな連鎖研究(ゲノムワイドスキャン、GWS)、の技術発展は、一次HTの発症に寄与する遺伝子を集団から探索することを可能にした。
【0027】
これまでのところ、候補遺伝子アプローチは、連鎖アプローチよりも多くの、BPに影響を与えると見られる変異型遺伝子の例を提供してきた。考慮するに値する候補遺伝子には、BPの調節に関与することが知られる生理学的システムに関与する遺伝子と、マウスモデルにおいてBPに影響を与えることが知られる遺伝子が含まれる。今日までに、80以上の候補遺伝子がHTについて評価されている(Fuentes RM, 2004、未出版の報告)。しかし、HTとの関連が広く再現されている遺伝子は次の3種のみである: アンジオテンシノーゲン前駆体(AGT)、アデューシン1(ADD1)とグアニンヌクレオチド結合タンパク質β−3サブユニット(GNB3)(Hopkins PN and Hunt SC, 2003)。HT治療に影響を与える遺伝子−環境相互作用が、AGT、ADD1と塩摂取の低下との間(Hunt SC et al, 1998、Hunt SC et al, 1999、Cusi D et al, 1997)及びADD1、GNB3と利尿薬治療との間(Cusi D et al, 1997、Turner ST et al, 2001)で見られた。HT危険度の発生に影響を与える遺伝子−遺伝子相互作用が、ADD1とACE遺伝子のI/D多型との間に見られた(Staessen JA et al, 2001)。候補遺伝子研究から今日までに明らかになった問題点としては、多くの研究において統計処理能力の限界によって生じた解析不足、集団間に見られる予想通りの多様性、研究対象生物のより詳細なフェノタイピングの必要性、集団のHT有病率に対して研究遺伝子の影響が比較的小さいこと、そして遺伝型に基づいて治療法を推奨するにたる充分な確実性がこれまでの遺伝子研究で得られた因果関係には欠けていることが挙げられる(Hopkins PN and Hunt SC, 2003)。
【0028】
これまでに、BP/HTの遺伝子座を特定するために、30件を超えるGWS研究が報告されている(Fuentes RM, 2004、未出版の報告)。いくつかの研究は家族を使用し、その他の研究は共に発症した兄弟/姉妹又は一方だけが発症した兄弟/姉妹を用いていた。少なくとも暗示的なLODスコアを示す、BP/HTと連鎖した遺伝子座が、全ての染色体に見られた。しかし、最も驚くべきことは、一貫して連鎖を示す遺伝子座がないことである。Koivukoski L et al, 2004 は、出版済みの、白色人種に関する9件のゲノムワイドスキャン(BPに関するもの5件とHTに関するもの4件)に対してゲノムサーチ・メタ解析(GSMA)を行い、個別の研究においては連鎖の程度が中庸か有意ではないと判断された染色体 2p12-q22.1と3p14.1-q12.3 が、BP/HT感受性領域である証拠を見つけた。この結果は、ヒトHTの不均質性に加えて、異なる方法を用いた研究を比較するという試みに存在しうる問題を説明している。
【0029】
集団遺伝学の機会
HTの遺伝的病因学に関連した過去の医学的研究は、その大部分が後向きの対照研究とヒトの家族研究、及び遺伝子組み換え動物に関する研究に基づいている。つい最近になって分ったことであるが、後向きの対照研究は生存率と選択率の偏りが起きやすく、このような研究は、多数の候補遺伝子に関して無数の偏った知見を生み出した。一般的に用いられる手法は、罹患したヒトと罹患していないヒトとの間で遺伝子発現を比較することである。しかし、大部分が横断研究による遺伝子発現研究では、原因と結果を分けることはできない。ヒトの病態生理学は独特なので、HTについて動物モデルから得られた知見をヒトに対して一般化することはできない。ヒト疾病の遺伝的病因学を明確にするための最も重要な手法が遺伝的疫学的研究である理由は、動物研究が不適切であるためである。
【0030】
ヒトにおける前向きコホート研究はこのような問題を解決する。GWS、シークエンシング技術及びデータ解析方法の発展によって、複雑且つ多因子性の性質に係る罹病性遺伝子を特定し、この疾病における遺伝的素因及び環境/生活習慣因子の役割を新たな精密さをもって分析する試みが今では可能となった。遺伝的効果及び環境効果は一生の間に変化し、遺伝子情報データセットにおける縦断研究のみがこのような効果の研究を可能にする。疾病遺伝子の発見において集団遺伝学的手法が他の方法よりも優れる主な利点は、ヒトにおいて有効な診断マーカーが得られる点である。
【0031】
HTのような主要な公衆衛生問題を引き起こす遺伝子の同定は、以下に示す分子生物学、集団遺伝学及びバイオインフォマティクスにおける最近の発展によって、今では可能になった: 1.操作コストの低下とスループットの増加に劇的な変化をもたらす、新しいジェノタイピング・プラットフォームの入手可能性; 2.高密度マーカー地図を用いたゲノムスキャンの応用; 3.ハプロタイプ共有分析を用いた、連鎖不平衡を試験するための新しい強力な統計学的手法によるデータ解析;そして 4.遺伝的に均一な集団におけるゲノムスキャンには、従来考えられていたよりも少数の遺伝子マーカーで充分であるという認識。
【0032】
マイクロサテライトマーカーと連鎖解析を用いた古典的なGWSは、一般的な疾病の原因となる遺伝子の発見には成功していない。失敗の一因はGWSに用いた遺伝子マーカーの数があまりにも少なかったことであり、他の一因は研究した集団があまりにも不均一だったことである。ヒトゲノムプロジェクトとジェノタイピング技術の発展により、全ヒトゲノムのマッピングのために、初めての高密度マーカー地図が最近入手可能となった。ユリラブ社(Jurilab)の使用したマイクロアレイは100,000個以上の一塩基多型(SNP)マーカーのためのプローブを含有する。これらのSNPは、HTの原因となる疾病遺伝子の大部分を発見するのに充分に密集した、全ゲノムを網羅するマーカー地図を始めて形成する。
【0033】
東フィンランド創始者集団における遺伝的均一性
フィンランド人は、約4,000年前と約2,000年前に起きた2つのヒト移民群を先祖とする。Y−染色体ハプロタイプとミトコンドリア配列の両方が、フィンランド人の遺伝的多様性は他のヨーロッパ集団と比べて低いことを示し、フィンランドが長い間孤立していたことを裏付ける(Sajantila A et al, 1996)。400年以上前のグスタヴ・ヴァーサ王の時代(1523年〜1560年)には、後期移住地域(late settlements)と呼ばれる、地域的な孤立集団(regional subisolates)が内部移住によって形成された(Peltonen L et al, 1999)。この中でも最も孤立していた地域が東フィンランドである。
【0034】
東フィンランドの人口は、効果的な遺伝子発見プログラムを実施するのに充分な大きさを有する、現在知られる遺伝的に最も均一な隔離集団である。均一性の理由は、人口の年齢が若いこと(世代数が少ない);創始者が少ないこと;長期に渡る地理的な隔離;そして戦争、飢餓と致死病の流行のよる人口増加の妨害が生じたことである。
【0035】
東フィンランド人口の遺伝的均一性故に、重要な疾病素因遺伝子に含まれる変異は少なく、罹患した個体は類似した遺伝的背景を共有している。より強力な連鎖不平衡(LD)故に、他の集団と比べてGWSに必要なSNPと対象者はより少数である。
【0036】
発明の概要
本発明は、HTに対する危険度の変化に関連する一塩基多型(SNP)マーカー、これらマーカーの組み合わせ及びハプロタイプ、並びに該マーカーやハプロタイプが位置する遺伝子座が内部又は近傍に存在する、HTに関連する遺伝子に関する。該SNPマーカーは、HTを発症する危険度の上昇又はHTを発症する危険度の低下、即ち、HTに対する防御、のいずれかに関連する。ここで「予測」又は危険度とは、危険度の上昇又は低下を含意する。
【0037】
従って本発明は、HT関連SNPマーカー、SNPマーカーの組み合わせ、HT関連遺伝子領域に含まれるハプロタイプ、公知の遺伝子ではあるがHTとの関連は知られていない遺伝子、そしてHTリスク遺伝子に存在する多型を用いた、HTに対する疾患感受性又は素因を推定するための方法のみならず、HTの治療の臨床経過及び効果を予測するための方法を提供する。更に本発明は、本願で開示するHT関連SNPマーカー、SNPマーカーの組み合わせ、ハプロタイプ及び遺伝子に基づく、新規な方法及び組成物を提供する。
【0038】
更に本発明は、HTに対する個体の疾患感受性や素因を推定するための方法であって、SNPマーカーとハプロタイプの存在を検出するか、表2〜8に示したHTリスク遺伝子の発現の変化や、HTリスク遺伝子のコードするポリペプチドの変化を検出することを包含する方法に関する。変化は、量的変化、質的変化又はその両方である。
【0039】
更に本発明は、HTに対する個体の疾患感受性や素因を推定するための方法に関する。HTに対する個体の疾患感受性や素因を推定するための該方法は、個体の核酸配列に存在する、危険性を示すハプロタイプの検出を包含する。
【0040】
更に本発明は、HTに対する個体の疾患感受性を推定するためのキットであって、その全体又は一部として、SNPマーカーを含有する核酸断片を増幅するための増幅試薬、SNPマーカーのジェノタイピング用の検出試薬、及びデータ解析と危険度の評価のためのソフトウエアを包含する試験キットに関する。
【0041】
1つの態様において本発明は、HTに対する素因を診断するための方法に関する。HTに対する個体の素因を診断するための該方法には、HTを予測するSNPマーカーの存在の検出みならず、該マーカーに関連する遺伝子の発現の変化の検出も含まれる。変化は、量的変化、質的変化又はその両方である。
【0042】
本発明の更なる目的は、対象生物の生物学的サンプルからSNPマーカーを検出することで、HTに対する危険度を同定するための方法である。この方法によって得られた情報は、個体に関する他の情報、例えば、血液検査の結果、臨床検査の結果及びアンケートの結果、と組み合わせることができる。血液検査の結果としては、血漿又は血清のコレステロール値及び高比重リポタンパク質コレステロール値が挙げられるが、これらに限定されるものではない。アンケートによって集める情報には、性別、年齢、家族歴や病歴、例えばHTと糖尿病の家族歴に関する情報が含まれる。検査によって集める臨床情報には、例えば、身長、体重、ウエストとヒップのサイズ、収縮期と拡張期のBP及び心拍数が含まれる。
【0043】
本発明の方法は、疾病発症前又は発症後のHTの正確な診断を可能とし、HTによる衰弱効果を減少又は最小化する。この方法は、臨床症状やHTの兆候を示さない者、HTを既に発症した者、HTの家族歴を有する者、あるいはHTに対する危険因子のレベルが上昇している者に適用することができる。
【0044】
更に本発明は、HTに対する個体の疾患感受性を診断するための方法を提供する。この方法は、一般的な集団と比べてHT感受性の個体により高頻度で存在する、HTを予測するための危険性を示すハプロタイプのスクリーニングを行うことを包含し、危険性を示すハプロタイプの存在をHTに対する疾患感受性の指標とする。「危険性を示すハプロタイプ」は、HTに対する危険度の上昇ではなく、危険度の低下と関連してもよい。「危険性を示すハプロタイプ」は、HTと高い関連性を示すマーカーと共に、本願で開示するハプロタイプの1種又は組み合わせを包含する。HTに対する個体の疾患感受性を診断するためのキットも開示する。
【0045】
当業者は、個体の核酸配列に存在する、1種又は数種の本発明のSNPマーカーに含まれるヌクレオチドの解析は、多型部位に存在するヌクレオチドを決定することのできる方法や技術によって行うことができることを容易に理解する。当業界では明らかなように、SNPマーカーに存在するヌクレオチドは、いずれかの核酸鎖又は両方の核酸鎖から検出することができる。
【0046】
本発明の主な利用法には、HTを発症する危険性の高い者を予測することが含まれる。HTに寄与する遺伝的因子を特定する診断試験は、単独で使用するか、又は一般的な集団に対する個体の危険度を定義するための公知の臨床危険因子と組み合わせて使用することができる。HTを発症する危険性を有する個体を同定するためのより良い方法は、より良い予防的及び治療的な養生法につながると考えられ、養生法には、以下に示す、HTの余病に関する現在の臨床危険因子に対するより積極的な管理が含まれる:喫煙、高コレステロール血症、上昇したLDLコレステロール値、低いHDLコレステロール値、HTとBP上昇、糖尿病、グルコース不耐性、インシュリン耐性、メタボリック症候群、肥満、運動不足、及びC反応性タンパク質レベルや他の炎症性マーカーの上昇によって反映される炎症性成分。遺伝的危険度に関する情報は、特定の患者に生活習慣の調整(例えば、禁煙、カロリー摂取量の削減、運動量の増加)を医師が説得するために使用することもできる。最後に、体重、塩分摂取量やアルコール摂取量の減少といった、血圧低下を目標とした予防的処置の実施に関して、HTの分子副診断に基づいて患者の意欲を高めたり、具体的な方法を選択したりすることができる。
【0047】
本発明の更なる目的は、薬物の抗高血圧効果を試験するための対象となるヒトを選択するための方法を提供することにある。
【0048】
本発明の更なる目的は、抗高血圧薬を試験するための臨床試験の対象を選択するための方法を提供することにある。
【0049】
本発明の更なる目的は、HTリスク遺伝子に存在する多型を用いた、HTの治療の臨床経過及び効果を予測するための方法を提供することにある。本発明の遺伝子、遺伝子産物及び薬物は、HTの治療、治療効果のモニタリング、及び薬物の開発にも有用である。HTの診断、治療及び予後判定のためのキットも提供する。
【0050】
発明の詳細な説明
典型的な標的集団
HTを発症する危険がある個体とは、例えば以下に挙げるHT危険因子の少なくとも1つを有する個体である:HTの家族歴、中心性肥満や他の肥満、運動不足、高いナトリウム摂取量、高い飽和脂肪酸摂取量、低いカリウム及び/又はマグネシウム摂取量、低いHDLコレステロール値、糖尿病、ブドウ糖不耐性、インシュリン耐性、メタボリック症候群、炎症性マーカーの上昇、及び1種又は数種のHTリスクSNPマーカーを含む、危険性を示すアレルやハプロタイプ。
【0051】
本発明の別の態様において、HTを発症する危険性がある個体とは、HTリスク遺伝子内にリスク増加アレルが存在する個体であり、多型の存在は、HT感受性が高いことを示す。本明細書で使用する「遺伝子」という用語は、ポリペプチドコード配列内のエレメントのみならず、その上流と下流に位置する調節エレメントの両方を含み、更にmRNAの5’及び3’非翻訳領域と、遺伝子の全てのエクソン配列とイントロン配列(更に選択的スプライシングが行われるエクソンとイントロン)を含有する全長ポリペプチドコード配列を含む全体の総称である。
【0052】
危険性を示すアレルと危険性を示すハプロタイプの評価
遺伝子マーカーは、HTと関連する「多型部位」に存在する特定の「アレル」である。集団の中に複数の配列をもたらしうるヌクレオチドの位置を、本明細書では「多型部位」と称する。多型部位の長さが1ヌクレオチドの場合は、SNPと称する。例えば、特定の染色体位置のヌクレオチドが、集団に属するある個体ではアデニンであり、同じ集団の別の個体ではチミンの場合、この位置は多型部位であり、より詳細には、この多型部位はSNPである。多型部位は、挿入、欠失、変換又は転座によってその長さが数ヌクレオチドであってもよい。多型部位に見られる各種の配列を、本明細書では、多型部位の「アレル」と称する。従って、上記の例では、SNPとしてアデニンアレルとチミンアレルの両方が存在する。
【0053】
典型的には、特定の遺伝子について参照ヌクレオチド配列に参照する。参照配列と異なるアレルを、「変異型(variant)」アレルと称する。参照ヌクレオチド配列のコードするポリペプチドは、特定の参照アミノ酸配列を有する「参照」ポリペプチドであり、変異型アレルのコードするポリペプチドを、変異型アミノ酸配列を有する「変異型」ポリペプチドと称する。
【0054】
変異型ヌクレオチド配列は、ポリペプチドの特性に作用する変化をもたらすことがある。参照ヌクレオチド配列との比較により示されるこうした配列差としては、挿入、欠失、変換及び置換が挙げられ、具体例としては、変異型ポリペプチドを生成するフレームシフトをもたらすことのある、挿入、欠失又は変換;中途終止コドン、アミノ酸の変化又は異常なmRNAスプライシングをもたらすことがある、少なくとも1つのヌクレオチドの置換;ヌクレオチドのコードする1種又は数種のアミノ酸の欠失をもたらすことがある、いくつかのヌクレオチドの欠失;読み枠中のコード配列の中断をもたらすことがある、不均等な組み換えや遺伝子変換などの、いくつかのヌクレオチドの挿入;配列の全て又は一部の重複;トランスポジション;又は詳しく上記したような、ヌクレオチド配列の再編成が挙げられる。このような配列の変化は、HT感受性遺伝子のコードするポリペプチドを変化させる。例えば、対応するポリペプチドのアミノ酸配列に変化をもたらす遺伝子内のヌクレオチドの変化は、ポリペプチドの生理学的特性を変化させ、その結果、生物学的活性/機能、分布又は安定性の変化したポリペプチドをもたらすことができる。
【0055】
あるいはまた、変異型ヌクレオチド配列は、遺伝子の転写又はそのmRNAの翻訳に影響する変化をもたらすことがある。遺伝子の調節領域に存在する多型部位は、組織特異性、転写率、転写因子への応答などの変化によって、遺伝子の転写に変化をもたらすことがある。mRNAに対応する遺伝子領域に存在する多型部位は、安定した二次構造をmRNAに誘導し、mRNAの安定性に影響を与えることなどによって、mRNAの翻訳に変化をもたらすことがある。こうした配列の変化は、HT感受性遺伝子の発現を変化させることがある。
【0056】
本明細書に記載する「ハプロタイプ」とは、例えば、表3、4、5、7及び8に示したような、遺伝子マーカー(「アレル」)の全ての組み合わせを意味する。またハプロタイプは、2個以上のアレルを含んでいてもよい。
【0057】
当業者には認知されているように、ハプロタイプを定義するアレルを異なる鎖から求めることによって、同じハプロタイプであっても、異なった形で記載されることがある。例えば、本明細書に記載したハプロタイプ rs2221511、rs4940595、rs1522723、rs1395266(A T C C)は、全てのアレルをもう一方の鎖から決定したハプロタイプ rs2221511、rs4940595、rs1522723、rs1395266(T A G G)や、1番目のアレルのみをもう一方の鎖から決定したハプロタイプ rs2221511、rs4940595、rs1522723、rs1395266(T T C C)と同じである。
【0058】
例えば、表3、4、5、7及び8に示したような、本発明で開示するハプロタイプは、HTではない個体よりも、HTの個体においてより頻繁に見られるものである。従って、これらのハプロタイプは、個体におけるHT又はHT感受性を検出するための予測力を有する。多型部位に存在する配列を検出するための公知の方法によって、ハプロタイプの検出を行うことができる。
【0059】
本発明で開示する、危険性を示すHT関連アレルと危険性を示すHT関連ハプロタイプは、本発明のHT関連遺伝子に存在する他の「多型部位」と関連してもよいことが理解されよう。こうした他のHT関連多型部位は、遺伝子マーカーと同等に有用か、あるいは危険性を示す本発明のアレルとハプロタイプについて観察されるHTとの関連を説明する、原因性変異型(causative variations)としてより有用である。
【0060】
本明細書で説明したいくつかの方法においては、HTを発症する危険性のある個体とは、危険性を示すアレル又は危険性を示すハプロタイプが同定された個体である。1つの態様においては、危険性を示すアレル又は危険性を示すハプロタイプは、HTの有意な危険度を示すものである。1つの態様においては、アレル又はハプロタイプと関連する有意性はオッズ比で測定する。更に別の態様においては、有意性は百分率で測定する。1つの態様においては、有意な危険度を示すオッズ比は少なくとも約1.2であり、具体的にはオッズ比が0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.5、3.0、4.0、5.0、10.0、15.0、20.0、25.0、30.0及び40.0の場合が挙げられるが、これらに限定されるものではない。更に別の態様においては、危険度の有意な増加と低下は少なくとも約20%であり、具体的には、約25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%及び98%が挙げられるが、これらに限定されるものではない。更に別の態様においては、危険度の有意な増加は少なくとも約50%である。しかし、危険度が医学的に有意か否かの判定は、特定の疾患、アレルやハプロタイプ、そして屡々環境因子を含む、多様な因子にも依存し得ることが理解されよう。
【0061】
HTリスク遺伝子又はその所定の部位に存在する、リスクを示すハプロタイプとは、健康な個体(対照者)に存在する頻度と比べて、HTを発症する危険性のある個体(HT感受性保持者(affected))に存在する頻度の方がより高いハプロタイプであり、ハプロタイプの存在が、HTの存在又はHTに対する疾患感受性の指標となるものである。
【0062】
好ましい態様においては、この方法は、HTリスク遺伝子又はその所定の部位におけるSNPの存在又は出現頻度を個体について検出することを包含し、健常対照個体と比べて、過剰なSNP又はその出現頻度の上昇は、HTを発症しているかHT感受性が高いことを示す。スクリーニング用のツールとして使用することのできるハプロタイプを構成することのできるSNPについては、例えば、表3、4、5、7及び8を参照。危険性を示すハプロタイプからこのようなSNPマーカーを同定することができる。例えば、危険性を示すハプロタイプには、表3、4、5、7及び8に示したようなマイクロサテライトマーカー及び/又はSNPが含まれる。ハプロタイプの存在は、HTの存在又は、HTに対する疾患感受性が高いことを示すので、本明細書で説明する治療法の標的集団に該当する個体の指標となる。
【0063】
従って、本発明の方法は特に、HTの指標となる、危険性を示す以下のハプロタイプを定義する、1種又は数種のSNPマーカーの検出に関するものである。
【0064】
1) ハプロタイプ“ACG”を定義する、rs4845303 (A/T) (配列番号980)、
rs6428195 (C/G) (配列番号1030) と rs1935659 (A/G) (配列番号637);
2) ハプロタイプ“AGC”を定義する、rs1997454 (A/G) (配列番号656)、
rs2139502 (A/G) (配列番号709) と rs1519991 (A/C) (配列番号542);
3) ハプロタイプ“ACT”を定義する、rs1521409 (A/G) (配列番号544)、
rs10511365 (C/T) (配列番号316) と rs10511366 (C/T) (配列番号317);
4) ハプロタイプ“CGA”を定義する、rs7679959 (C/G) (配列番号1178)、
rs10517338 (C/G) (配列番号381) と rs959297 (A/T) (配列番号1338);
5) ハプロタイプ“GCAGG”を定義する、rs2278677 (A/G) (配列番号749)、
rs3886091 (C/G) (配列番号899)、rs1998167 (A/G) (配列番号657)、
rs1998168 (A/G) (配列番号658) と rs2235280 (A/G) (配列番号740);
【0065】
6) ハプロタイプ“AACG”を定義する、rs10521062 (A/C) (配列番号404)、
rs10512296 (A/G) (配列番号331)、rs1924001 (C/G) (配列番号633) と
rs2417359 (A/G) (配列番号784);
7) ハプロタイプ“GGA”を定義する、rs10508933 (C/G) (配列番号289)、
rs10509071 (A/G) (配列番号295) と rs10490967 (A/G) (配列番号94);
8) ハプロタイプ“TCCC”を定義する、rs10508771 (A/T) (配列番号286)、
rs3006608 (C/T) (配列番号854)、rs10508773 (C/T) (配列番号287) と
rs950132 (C/T) (配列番号1325);
9) ハプロタイプ“CAGT”を定義する、rs1386486 (C/T) (配列番号472)、
rs1386485 (A/C) (配列番号471)、rs1386483 (A/G) (配列番号470) と
rs7977245 (C/T) (配列番号1212);
10) ハプロタイプ“AA”を定義する、rs276002 (A/G) (配列番号814) と
rs274460 (A/G) (配列番号810);
【0066】
11) ハプロタイプ“GCTTC”を定義する、rs1245383 (A/G) (配列番号430)、
rs2133829 (C/T) (配列番号707)、rs2173738 (C/T) (配列番号722)、
rs2050528 (C/T) (配列番号677) と rs202970 (C/T) (配列番号671);
12) ハプロタイプ“TAC”を定義する、rs1395266 (C/T) (配列番号476)、
rs931850 (A/G) (配列番号1303) と rs1522722 (C/T) (配列番号547);
13) ハプロタイプ“ATCC”を定義する、rs2221511 (A/G) (配列番号733)、
rs4940595 (G/T) (配列番号986)、rs1522723 (C/T) (配列番号548) と
rs1395266 (C/T) (配列番号476);及び
14) ハプロタイプ“ATGGA”を定義する、rs2825555 (A/G) (配列番号819)、
rs2825583 (C/T) (配列番号820)、rs2825601 (A/G) (配列番号821)、
rs2825610 (G/T) (配列番号822) と rs1489734 (A/G) (配列番号532)。
【0067】
治療の経過のモニタリング
本発明は、1種又は数種のHTリスク遺伝子の発現(例えば、相対的又は絶対的な発現)に対する、HT治療の効果をモニタリングするための方法に関する。HT感受性遺伝子のmRNA、それがコードするポリペプチド、又はコードするポリペプチドの生物活性は、末梢血又はそこから誘導した細胞のサンプルから測定することができる。ポリペプチドの発現や生物活性のレベルは、HT治療剤による治療を行う前と治療中に評価することができる。
【0068】
また、HT治療の効果は、表6に示したHTリスク遺伝子のコードする1種又は数種のポリペプチドに関連する生物学的ネットワーク及び/又は代謝経路のモニタリングによって追跡することができる。生物学的ネットワーク及び/又は代謝経路のモニタリングは、例えば、治療開始の前と後に、血漿プロテオーム中の1種又は数種のポリペプチドの測定、及び/又は血漿メタボローム中の1種又は数種の代謝産物の測定によって行うことができる。HT治療薬による処置に続く生物学的ネットワーク及び/又は代謝経路の変化を観察した結果を、入手可能な健常対象者に関するデータと比較することで治療の効果を評価する。
【0069】
例えば、本発明の1つの態様においては、標的集団の一員である個体について、HT阻害剤による治療に対する応答を評価する。評価は、末梢血、あるいは末梢血中の総細胞副画分又は特定の細胞副画分、あるいは細胞副画分の組み合わせにおける、HTリスク遺伝子のコードするポリペプチドの生物活性、あるいはHTリスク遺伝子のコードするポリペプチド又はmRNAの絶対的及び/又は相対的なレベルを測定することで行う。
【0070】
更に、HTリスク遺伝子の内部又は近傍(1〜数百kbの範囲内)に見られるハプロタイプや変異などの変異型は、HTやその合併症を予防したり治療したりするための医薬製剤(pharmaceutical agent)に関して行う臨床試験の効力や効率を高めるために、HTを発症する危険性の高い個体を同定するのに用いることができる。ハプロタイプやその他の変異型は、他の経路が関与するHTを発症している患者を排除するか分別することで、試験する治療法に適した経路の関与する患者を集め、臨床試験の効力と感受性を増加させるために用いることもできる。このような変異型は、個体のための医薬製剤の選択を手引きする薬理遺伝学的試験(pharmacogenetic test)に用いることもできる。
【0071】
プライマー、プローブ及び核酸分子
「プローブ」や「プライマー」は、塩基特異的な形式で核酸分子の相補鎖にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドである。「塩基特異的な形式」とは、プライマーやプローブがハイブリダイズするのに十分な程度のヌクレオチド相補性を2つの配列が有していることを意味する。従って、プライマーやプローブの配列は、テンプレートの配列に対して完全に相補的である必要はない。塩基置換がハイブリダイゼーションを阻害しない限り、非相補的な塩基や修飾塩基がプライマーやプローブ中に散在していてもよい。核酸テンプレートは、プライマーやプローブに対して種々の相補性を示す「非特異的プライミング配列」又は「非特異的配列」を更に包含してもよい。このようなプローブとプライマーとしては、ポリペプチド核酸(polypeptide nucleic acid)が挙げられる(Nielsen PE et al, 1991)。
【0072】
プローブやプライマーは、本発明の核酸の中の連なった少なくとも約15ヌクレオチド、例えば約20〜25ヌクレオチド、特定の態様においては約40、50又は75ヌクレオチド(例えば、連続した核酸の配列)にハイブリダイズする核酸領域を包含する。
【0073】
好ましい態様においては、プローブやプライマーは、100個以下のヌクレオチドを包含し、特定の態様においては6〜50ヌクレオチド、例えば12〜30ヌクレオチドを包含する。別の態様においては、プローブやプライマーは、連続した核酸の配列又はその相補鎖と少なくとも70%同一であり、例えば、少なくとも80%同一、特定の態様においては少なくとも90%同一、別の態様においては少なくとも95%同一である。あるいはプローブやプライマーは、連続した核酸配列又はその相補鎖に選択的にハイブリダイズすることさえ可能である。プローブやプライマーは、屡々、ラジオアイソトープ、蛍光化合物、酵素又は酵素の補因子などの標識を更に包含する。
【0074】
本発明のアンチセンス核酸分子は、公知のヌクレオチド配列、例えば、表6に示した、ジーンバンク(GenBank)データベースのHT関連遺伝子や、表2〜5と7〜11に列挙した多型部位を含有するヌクレオチド配列、に基づいて設計することができる。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、公知の方法を用いて、化学合成及び酵素による連結反応によって構築することができる。例えば、アンチセンス核酸分子(アンチセンスオリゴヌクレオチドなど)は、自然界に見られるヌクレオチドや、もしくは、分子の生物学的安定性の増加や、アンチセンス核酸とセンス核酸の間で形成される2本鎖の物理的安定性の増加を目的として設計された種々の修飾ヌクレオチド(例えばホスホロチオエート誘導体やアクリジン置換ヌクレオチド)を用いて化学合成することができる。また、アンチセンス核酸分子は、アンチセンスの方向に核酸分子がサブクローニングされた(つまり、挿入した核酸分子から転写したRNAが、目的の標的核酸に対してアンチセンスの方向になるようにした)発現ベクターを用いて生物学的に製造することもできる。
【0075】
本発明で開示する表6のHT関連遺伝子の核酸配列は、患者の内在性DNA配列と比較することで遺伝的障害(HT素因又は感受性など)を同定するために用いることができ、また、プローブとして用い、関連するDNA配列とハイブリダイズして発見したり、公知の配列をサンプルから抽出したりすることができる。核酸配列は更に、遺伝子フィンガープリント法のためのプライマーの誘導、DNA免疫法を用いた抗ポリペプチド抗体の産生、及び抗DNA抗体の産生や免疫応答の誘発のための抗原として用いることができる。本願で同定したヌクレオチド配列(及び対応する完全な遺伝子配列)の一部、即ち断片は、ポリヌクレオチド試薬として種々の用途に用いることができる。例えば、これらの配列は、(i)各配列に対応する遺伝子を染色体上にマッピングすることによる、遺伝性疾患に関連する遺伝子領域の位置の特定;(ii)微小な生物学的サンプルからの個体の同定(組織タイピング);そして(iii)生物学的サンプルの法医学的な同定の補助に用いることができる。加えて、本発明のヌクレオチド配列は、解析、特徴づけ又は治療用途に用いるための組み換えポリペプチドの同定と発現に用いたり、対応するポリペプチドが恒常的に、又は組織分化の際に、又は疾患状態で発現される組織のためのマーカーとして使用したりすることができる。加えて核酸配列は、本発明で開示するスクリーニング及び/又は診断アッセイのための試薬として用いることができ、また本発明で開示するスクリーニング及び/又は診断アッセイに使用するキット(例えば試薬キット)の構成成分として含めることができる。
【0076】
ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体
遺伝子産物の1つの形態には特異的に結合するが、遺伝子産物の他の形態には結合しないポリクローナル抗体及び/又はモノクローナル抗体を提供する。変異型遺伝子産物又は参照遺伝子産物のいずれかの、1種又は数種の多型部位を含む部分に結合する抗体も提供する。本明細書に記載される「抗体」とは、免疫グロブリン分子、及び免疫グロブリン分子の免疫学的活性部位(即ち、ある抗原に特異的に結合する抗原結合部位を含む分子)の総称である。本発明のポリペプチドに特異的に結合する分子は、該ポリペプチドやその断片には結合するが、サンプル(例えば、天然に該ポリペプチドを含む生物学的サンプル)の中の他の分子とは実質的に結合しない分子である。免疫グロブリン分子の免疫学的活性部位の例としては、ペプシンなどの酵素で抗体を処理することによって得られるF(ab) 断片とF(ab’)断片が挙げられる。本発明は、本発明のポリペプチドと結合するポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体を提供する。本明細書に記載される「モノクローナル抗体」や「モノクローナル抗体組成物」とは、本発明のポリペプチドの特定のエピトープと免疫反応可能な抗原結合部位の内の1種のみを含む一群の抗体分子の総称である。従って、典型的なモノクローナル抗体組成物は、この組成物が免疫反応を示す特定の本発明のポリペプチドに対して、1つの結合親和性のみを提示する。
【0077】
ポリクローナル抗体は、当業者に公知の方法、即ち、適切な対象生物を所望の免疫原(例えば、本発明のポリペプチド又はその断片)で免疫することによって製造することができる。免疫した対象生物における抗体力価は、例えば、固定したポリペプチドを用いる酵素免疫測定法(ELISA)などの標準的な方法で、経時的にモニタリングすることができる。所望であれば、ポリペプチドに対する抗体分子を哺乳動物(例えば、その血液)から単離し、更にプロテインAクロマトグラフィー法などの公知の処理方法で精製して、IgG画分を得ることができる。免疫後の適当な時点(例えば、抗体力価が最大値に達した時点)で抗体産生細胞を対象生物から採取し、それを用いて、ハイブリドーマ法(Kohler G and Milstein C, 1975)、ヒトB細胞ハイブリドーマ法(Kozbor D et al, 1982)、EBV−ハイブリドーマ法(Cole SP et al, 1994)又はトリオーマ法(Hering S et al, 1988)などの標準的な技術でモノクローナル抗体を製造することができる。ハイブリドーマを製造するためには、不死化細胞株(典型的には骨髄腫)を、上記の免疫原で免疫した哺乳動物に由来するリンパ球(典型的には脾細胞)に融合し、得られたハイブリドーマ細胞の培養上清のスクリーニングを行って、本発明のポリペプチドと結合するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを同定する。
【0078】
リンパ球と不死化細胞株の融合に用いる公知のプロトコルのどれでも、本発明のポリペプチドに対するモノクローナル抗体の産生に適用することができる(Bierer B et al, 2002)。更に、当業者であれば、同じように有用な、上記の方法のバリエーションがたくさん存在することを理解できよう。
【0079】
モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを調製する代わりに、ポリペプチドで組み換え免疫グロブリンコンビナトリアルライブラリー(例えば、抗体ファージディスプレーライブラリー)のスクリーニングを行い、ポリペプチドに結合する免疫グロブリンライブラリーのメンバーを単離することで、本発明のポリペプチドに対するモノクローナル抗体を同定して単離することができる(Hayashi N et al, 1995;Hay BN et al, 1992;Huse WD et al, 1989;Griffiths AD et al, 1993)。ファージディスプレーライブラリーを産生し、スクリーニングするためのキットは市販されている。
【0080】
加えて、通常の組み換えDNA法を用いた製造が可能な、ヒト化キメラモノクローナル抗体などの、ヒト由来の部分とヒトに由来しない部分を包含する組み換え抗体も本発明の範囲内に含まれる。こうしたヒト化キメラモノクローナル抗体は、公知の組み換えDNA技術によって製造することができる。
【0081】
一般的に、本発明の抗体(例えばモノクローナル抗体)は、アフィニティークロマトグラフィー法又は免疫沈降法などの標準的な技術で本発明のポリペプチドを単離するために用いることができる。ポリペプチド特異的抗体は、細胞からの天然ポリペプチドの精製と、宿主細胞で発現される、組み換えによって産生されたポリペプチドの精製を容易にする。更に、本発明のポリペプチドに特異的な抗体は、ポリペプチドの発現量と発現パターンを評価するために、(例えば、細胞溶解物、細胞上清又は組織サンプル中の)ポリペプチドの検出に用いることができる。抗体は、HT感受性を予測するための試験の一部、あるいは臨床試験の手順の一部(例えば、養生法の有効性を決めるための手順)として、組織(例えば血液)に存在するタンパク質のレベルを診断目的でモニタリングするために用いることができる。検出は、抗体を検出可能物質にカップリングさせることによって容易になる。検出可能物質としては、種々の酵素、補欠分子族、蛍光材料、発光材料、生物発光材料及び放射性材料が挙げられる。好適な酵素の具体例としては、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ及びアセチルコリンエステラーゼが挙げられ;好適な補欠分子族複合体の具体例としては、ストレプトアビジン/ビオチン及びアビジン/ビオチンが挙げられ;好適な蛍光材料の具体例としては、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリド及びフィコエリトリンが挙げられ;好適な発光材料としては、ルミノールが挙げられ;好適な生物発光材料としては、ルシフェラーゼ、ルシフェリン及びエクオリンが挙げられ;好適な放射性材料としては、125I、131I、35S及び3Hが挙げられる。
【0082】
診断アッセイ
本発明で開示するプローブ、プライマー及び抗体は、HT又はHT感受性の診断方法のみならず、HT、HT感受性やHT関連疾患や病態に対する感受性の診断に有用なキットにも用いることができる。
【0083】
本発明の1つの態様においては、本発明で開示する危険性を示す1種又は数種のアレル、ハプロタイプ、又はそれらの組み合わせを、本発明で開示するように、対象生物の核酸から検出することによって、HT又はHT感受性の診断(もしくはHT関連疾患や病態又はHT関連疾患や病態に対する感受性の診断)を行う。
【0084】
本発明の1つの態様においては、本発明で開示する危険性を示すアレル及び/又はハプロタイプに関連する1種又は数種の多型部位を対象生物の核酸から検出することによって、HT又はHT感受性の診断(もしくはHT関連疾患や病態又はHT関連疾患や病態に対する感受性の診断)を行う。診断において最も有用な多型部位は、フレームシフト、中途終止コドン、アミノ酸の変化又は異常なmRNAスプライシングによって、HT関連遺伝子のポリペプチド構造を変化させる多型部位である。多くの場合、対応するポリペプチドのアミノ酸配列に変化をもたらす遺伝子内のヌクレオチドの変化は、生物学的活性/機能、分布又は安定性が変化したポリペプチドをもたらすことによって、ポリペプチドの生理学的特性を変化させることができる。診断において有用な他の多型部位としては、組織特異性の変化、転写率の変化、生理学的状態に対する応答の変化、mRNAの翻訳効率の変化、及びmRNAの安定性の変化によって、HT関連遺伝子の転写又はそのmRNAの翻訳に影響を与える多型部位である。HT関連遺伝子のポリペプチド構造の変化や、HT関連遺伝子の発現の変化を伴う変異型ヌクレオチド配列の存在によって、HT感受性を有すると診断することができる。
【0085】
診断用途においては、機能的多型と連鎖不平衡の状態にある、疾患危険度を予測するための有益な多型を用いてもよい。こうした機能的多型は、スプライシング部位の変化や、mRNAの安定性又は輸送の変化を伴うか、あるいは核酸の転写と翻訳の変化を伴う。機能的多型に関連する変異型ヌクレオチド配列の存在によって、HT感受性を有すると診断することができる。
【0086】
我々は限られた数のSNPマーカーについてジェノタイピングを行い、それらを本願の実施例に記載したが、本発明で同定したHTリスク遺伝子のいずれかにおいて、上述したような機能的変異、調節的変異又は他の変異のいずれかが見られる場合、HT危険度の予測が可能であると期待される。
【0087】
診断アッセイにおいては、1種又は数種の本発明のHT関連SNPマーカーに存在するヌクレオチドのみならず、本発明のHT関連SNPマーカーと関連する多型部位も個体の核酸から検出するが、この検出は、多型部位に存在するヌクレオチドを正確に検出することが可能ないかなる方法や技術で行ってもよい。数多くの好適な方法が当業界では報告されており(Kwok P-Y, 2001;Syvanen A-C, 2001)、そのような方法としては、ハイブリダイゼーションアッセイ、連結反応アッセイ、プライマー伸長アッセイ、酵素開裂アッセイ、化学的開裂アッセイ及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。アッセイは、PCR、固相固定工程、修飾オリゴヌクレオチド、標識プローブ又は標識ヌクレオチドを含んでいても、含んでいなくてもよく、アッセイはマルチプレックスでもシングルプレックスでもかまわない。当業界では自明であるように、多型部位に存在するヌクレオチドは、核酸の2本鎖の内の1本又は両方から検出することができる。
【0088】
本発明の別の態様においては、HT感受性の診断を、1種又は数種のHT関連遺伝子の転写の検査によって行うことが可能である。転写の変化は、ハイブリダイゼーション法、酵素開裂アッセイ、RT−PCRアッセイ及びマイクロアレイなどの、当業界で報告されている多様な方法で解析することができる。個体から試験サンプルを採取し、サンプル中に含まれるRNAからHT関連遺伝子の転写の変化を評価する。転写の変化によって、HT感受性を有すると診断することができる。
【0089】
本発明の別の態様においては、HT感受性の診断は、HT感受性ポリペプチドの発現及び/又は構造及び/又は機能の検査によっても行うことが可能である。個体から得た試験サンプルについて、HTリスク遺伝子のコードするポリペプチドの発現及び/又は構造及び/又は機能の変化の存在、あるいはHTリスク遺伝子のコードする特定の変異型ポリペプチド(例えばイソフォーム)の存在のいずれかを評価する。HTリスク遺伝子のコードするポリペプチドの発現の変化とは、例えば、ポリペプチド発現の量的変化(即ち、産生ポリペプチド量の変化)であり、HTリスク遺伝子のコードするポリペプチドの構造及び/又は機能の変化とは、ポリペプチド発現の質的変化(例えば、変異型HT感受性ポリペプチド、異なるスプライシング変異体やイソフォームの発現)である。好ましい態様においては、HTリスク遺伝子のコードする特定のスプライシング変異体、又はスプライシング変異体の特定のパターンの検出によって、HTに関連する疾患や病態、又はHTに関連する疾患や病態に対する感受性を診断することが可能となる。
【0090】
HT感受性ポリペプチドの発現及び/又は構造及び/又は機能の変化は、当業界でよく知られる多様な方法、例えば、クロマトグラフィー法、分光法、比色分析法、電気泳動法、等電点電気泳動法、特異的開裂法、免疫学的手法、及び生物活性の測定に基づくアッセイや、種々のアッセイの組み合わせによって測定することができる。本明細書において、ポリペプチドの発現又は組成における「変化」とは、対照サンプルにおけるHTリスク遺伝子によるポリペプチドの発現や、ポリペプチドの組成と比較した際に、試験サンプルに見られる発現と組成の変化である。対照サンプルとは、試験サンプルに対応するサンプル(即ち、同じ種類の細胞から得たもの)であって、HTを発症していない(not affected)個体から得たものである。対照サンプルと比べて変化した、試験サンプルにおけるポリペプチドの発現と組成は、HTに対する感受性が高いことを示す。
【0091】
変異型HTリスク遺伝子のコードするポリペプチドに特異的に結合する上記の抗体、変異していない遺伝子のコードするポリペプチドに特異的に結合する抗体、又はHTリスク遺伝子のコードする特定のスプライシング変異体に特異的に結合する抗体を用いたウエスタンブロット法によって、試験サンプルにおける、特定のスプライシング変異体やイソフォーム、又は多型HTリスク遺伝子や変異型HTリスク遺伝子のコードするポリペプチドの存在、あるいは特定のスプライシング変異体やイソフォーム、又は多型ではない遺伝子や変異していない遺伝子のコードするポリペプチドの不存在を検出することができる。HTリスク遺伝子のコードする特定のスプライシング変異体の存在(又は不存在)と同様に、多型遺伝子や変異型遺伝子のコードするポリペプチドの存在、又は多型でない遺伝子や変異していない遺伝子のコードするポリペプチドの不存在によって、HT感受性を有すると診断することができる。
【0092】
上記方法の1つの態様においては、試験サンプル中のHTリスク遺伝子のコードするポリペプチドのレベル又は量を、対照サンプル中のHTリスク遺伝子のコードするポリペプチドのレベル又は量と比較する。試験サンプル中のポリペプチドのレベル又は量が、対照サンプル中のポリペプチドのレベル又は量よりも高いか低く、この差が統計的に有意である場合には、試験サンプル中のポリペプチドのレベル又は量は、HTリスク遺伝子のコードするポリペプチドの発現の変化を示し、これによってHT感受性を有すると診断することができる。上記方法に代わる方法としては、試験サンプル中のHTリスク遺伝子のコードするポリペプチドの組成を、対照サンプル中のHTリスク遺伝子のコードするポリペプチドの組成(例えば、種々のスプライシング変異体の存在)と比較する。試験サンプル中のポリペプチドの組成と対照サンプル中のポリペプチドの組成の違いによって、HT感受性を有すると診断することができる。更に別の態様においては、ポリペプチドのレベルや量と組成の両方を試験サンプルと対照サンプルにおいて評価することができる。試験サンプルと対照サンプルとの比較から明らかなポリペプチドの量やレベルの違い、組成の違い、又は量やレベルの違いと組成の違いの両方が、HTに対する感受性が高いことを示す。
【0093】
別の態様においては、HTリスク遺伝子の多型又は変異型がコードするポリペプチドのスプライシング変異体やイソフォームを評価することができる。この評価は、直接的に(例えば、ポリペプチドそのものの検査によって)又は間接的に(例えば、mRNAのプロファイリングなどによる、ポリペプチドをコードするmRNAの検査によって)行うことができる。例えば、本発明で開示するプローブやプライマーは、標準的な方法によって、HTリスク遺伝子のmRNAがどのスプライシング変異体やイソフォームをコードしているのかを決定することができる。
【0094】
HT又はHT危険度に関連する特定のスプライシング変異体やイソフォームの試験サンプルにおける存在、又はHT又はHT危険度と関連のない特定のスプライシング変異体やイソフォームの試験サンプルにおける不存在によって、HTリスク遺伝子に関連する疾患や病態、又はHTリスク遺伝子に関連する疾患や病態に対する感受性を有すると診断することができる。同様に、HT又はHT危険度に関連する特定のスプライシング変異体やイソフォームの試験サンプルにおける不存在、又はHT又はHT危険度に関連のない特定のスプライシング変異体やイソフォームの試験サンプルにおける存在によって、HTリスク遺伝子に関連する疾患や病態ではない、又はHTリスク遺伝子に関連する疾患や病態に対する感受性を有していないと診断することができる。
【0095】
更に本発明は、HTリスク遺伝子に存在する危険性を示すアレル又は危険性を示すハプロタイプを同定することによって、個体におけるHT感受性の診断と同定を行うための方法に関する。1つの態様においては、この危険性を示すアレル又は危険性を示すハプロタイプは、ハプロタイプの存在によってHTの危険度が有意に増加するアレル又はハプロタイプである。危険度が有意か否かの判定は、特定の疾患、ハプロタイプ、そして屡々環境因子を含む多様な因子に依存すると理解すべきであるが、有意性はオッズ比又は百分率で求めることができる。更に別の態様においては、有意性は百分率で求める。1つの態様においては、有意な危険度とはオッズ比が0.8以下又は少なくとも約1.2の場合であり、具体的にはオッズ比が0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.5、3.0、4.0、5.0、10.0、15.0、20.0、25.0、30.0及び40.0の場合が挙げられるが、これらに限定されるものではない。更に別の態様においては、オッズ比が少なくとも1.2の場合を有意とする。更に別の態様においては、オッズ比が少なくとも約1.5の場合を有意とする。更に別の態様においては、危険度の有意な増加又は低下とは、オッズ比が少なくとも約1.7の場合である。更に別の態様においては、危険度の有意な増加とは少なくとも約20%の増加であり、具体的には、約25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%及び98%の増加が挙げられるが、これらに限定されるものではない。更に別の態様においては、危険度の有意な増加又は低下は少なくとも約50%の変化である。しかし、危険度が医学的に有意か否かの判定は、特定の疾患、アレルやハプロタイプ、そして屡々環境因子を含む多様な因子に依存することが理解されよう。
【0096】
本発明はまた、個体におけるHT又はHT感受性を診断する方法であって、健常個体(対照)と比較して、HTに対して感受性の高い(発症している(affected))個体において存在頻度が高まっている、HTリスク遺伝子に含まれる危険性を示すハプロタイプのスクリーニングを包含し、ハプロタイプの存在が、HT又はHTに対する感受性を意味することを特徴とする方法に関する。スクリーニング用のツールとして使用することのできるハプロタイプを構成するSNPマーカーについては、例えば、表3、4、6、7及び8を参照。これ等の表に列挙したSNPマーカーは危険性を示すハプロタイプを表し、HTに対する感受性を決定するための診断試験の設計に用いることができる。
【0097】
診断方法に有用なキット(試薬キットなど)は、本明細書で説明したいかなる方法においても有用な構成成分を包含しており、そのような成分としては、例えば、以下のものが挙げられる:PCRプライマー、本明細書で説明したハイブリダイゼーション用のプローブやプライマー(標識したプローブやプライマーなど)、SNPマーカーのジェノタイピングのための試薬、標識分子を検出するための試薬、(RFLP分析などのための)制限酵素、アレル特異的なオリゴヌクレオチド、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、標識用酵素、変化した又は変化していない(天然の)HT感受性ポリペプチドと結合する抗体、1種又は数種のHTリスク遺伝子を包含する核酸を増幅する手段、1種又は数種のHTリスク遺伝子の核酸配列を分析するための手段、又は1種又は数種のHT感受性ポリペプチドのアミノ酸配列を分析するための手段。1つの態様においては、HTに対する感受性を診断するためのキットは、HTに対する感受性の高い個体において存在頻度が高まっている、危険性を示すハプロタイプを含むHTリスク遺伝子領域の核酸増幅を行うためのプライマーを包含してもよい。このようなプライマーは、HTの指標となるSNPに隣接する核酸の一部を用いて設計することができる。
【0098】
本発明は、1回又は少数回のジェノタイピングを行い、HTを予測する能力に基づいて、タイピングする変異型配列を選択するという原理に基づいている。従って、ゲノムDNAサンプル中の変異型配列のジェノタイピングはいかなる方法を用いてもよい。
【0099】
本発明の検出方法は、検出工程で得られた指標を確認するために、本発明の方法(クレーム1参照)の工程b)で得られた結果を、対象生物の年齢;性別;HT、糖尿病や高コレステロール血症に関する家族歴、及びCVDや糖尿病の治療歴に関する情報と組み合わせる工程を更に包含してもよい。このような情報には、家族内での高コレステロール血症、喫煙状況、家族内でのHT、CVDの家族歴、家族内での肥満、及びウエスト/ヒップ比(waist-to-hip circumference ratio)(cm/cm)が含まれていてもよい。
【0100】
本発明の検出方法は、血液、血清又は血漿中の、コレステロール、HDLコレステロール、LDLコレステロール、トリグリセリド、アポリポタンパクBとAI、フィブリノーゲン、フェリチン、トランスフェリン受容体、C反応性タンパク質、あるいは血清又は血漿インシュリン濃度を測定する工程を更に包含してもよい。
【0101】
HTを発症する確率を予測するスコアは、多変量故障時間モデル(multivariate failure time model)又はロジスティック回帰式を用いて計算することができる。上述した、本発明の方法に付加する更なる工程で得られる結果によって、HTを発症する確率を以下のロジスティック回帰式で計算する工程が可能となる。
【0102】
HTを発症する確率 =1/[1+e(−(−a+Σ(bi×Xi))]
式中、eはネーピアの定数であり、XiはHTに関連した変数であり、biは上記変数のロジスティック関数における係数であり、aはロジスティック関数の定数項であるが、但し、a値とbi値は、この方法を実施する対象の属する集団から求められる値であることが好ましく、Xi値は、この方法を実施する対象の属する集団で測定した変数から選ばれる値であることが好ましい。bi値は−20と20の間であることが好ましく、i値は0(ゼロ)と100,000の間であることが好ましい。bi値が負の係数であるということは、このマーカーが危険度の低下を示すことを意味し、正の係数であるということは、このマーカーが危険度の増加を示すことを意味する。
【0103】
i値は、SNPマーカーのように0又は1と表されるかコード化される2値変数である。加えてこのモデルには、変数Xiのいかなる相互作用(積)や項(例えば、bii)が含まれてもよい。1年、2年、5年、10年又は20年以内にHTを発症する危険度を百分率で示す単純な予測を行うために、情報を組み合わせるアルゴリズムも開発されている。
【0104】
これに代わる統計学的モデルとしては、コックスの比例ハザードモデル、他の反復モデル及びニューラルネットワークモデルなどの故障時間モデルが挙げられる。
【0105】
この試験は、スクリーニング又は素因の試験として、HTを発症する危険度を試験するために健常者に実施することもできるし、また高リスク患者(即ち、HTの家族歴、中心性肥満や他の肥満、運動不足、高いナトリウム摂取量、高い飽和脂肪酸摂取量、低いカリウム及び/又はマグネシウム摂取量、低いHDLコレステロール値、糖尿病、グルコース不耐性、インシュリン耐性及びメタボリック症候群、炎症性マーカーの上昇、あるいはこれらの組み合わせ、あるいは他のHTリスク因子の上昇のいずれかを示す者)に実施することもできる。
【0106】
この方法は、成人におけるHTの予測又は早期診断、臨床試験のための対象者の層化と選択、及び/又は予防的及び治療的な集中介入を行う対象者の層化と選択に用いることができる。その目的は、治験薬の臨床試験及び健康管理のコスト削減である。
【0107】
医薬組成物
本発明は、本願に記載した薬剤(agent)、特にHTリスク遺伝子内のヌクレオチド及び/又はHTリスク遺伝子のコードする他のスプライシング変異体を包含する薬剤;及び/又は本願に記載したように、HTリスク遺伝子の発現又はHT感受性遺伝子ポリペプチドの活性を変化(例えば、増強又は阻害)する薬剤を包含する医薬組成物に関する。例えば、ポリペプチド、タンパク質(例えば、受容体)、HTリスク遺伝子の発現を変化させる薬剤、HT感受性ポリペプチド結合性物質や結合パートナー、それらの断片、融合タンパク質やプロドラッグ、あるいは本発明のヌクレオチドを包含するヌクレオチド又は核酸構築物(ベクター)、あるいはHT感受性遺伝子ポリペプチド活性を変化させる薬剤を、生理的に許容される担体や賦形剤と共に処方し、医薬組成物を調製することができる。担体と組成物は滅菌することができる。処方は投与方法に適したものでなければならない。
【0108】
好ましい態様においては、医薬組成物は、本発明のHT関連遺伝子(表6)に関連した生物学的ネットワーク及び/又は代謝経路における、HTに関連した変化の少なくとも一部を逆転させる薬剤を包含する。
【0109】
本発明に適した薬学的に許容される担体に特に限定はなく、水、塩溶液(例えば、NaCl)、生理食塩水、緩衝化生理食塩水、アルコール類、グリセロール、エタノール、アラビアガム、植物油、ベンジルアルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、炭水化物(乳糖、アミロース、デンプンなど)、デキストロース、マグネシウムステアレート、タルク、珪酸、粘性パラフィン、香油、脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドンや、これ等の組み合わせなどが挙げられる。所望により医薬組成物は、有効成分と有害な反応を起こさない付加的な成分、例えば、潤滑剤、保存料、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧を調整するための塩類、緩衝剤、着色剤、調味料及び/又は香料などと混合してもかまわない。
【0110】
所望により組成物は更に、微量の浸潤剤か乳化剤又はpH調節剤を含有してもよい。組成物は、溶液、懸濁液、乳状液、錠剤、丸剤、カプセル、徐放性製剤又は粉剤とすることができる。組成物は、古典的なバインダーや担体であるトリグリセリドなどと共に、座薬として処方することもできる。経口製剤は、標準的な担体、例えば、医薬用のマニトール、ラクトース、デンプン、マグネシウムステアレート、ポリビニルピロリドン、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどを含んでいてもよい。
【0111】
上記の組成物を生体に導入する方法に特に限定はなく、皮内、筋肉内、腹膜内、眼内、静脈内、皮下、局所、経口及び鼻腔内への投与が挙げられる。他の適した導入方法としては、(以下で説明する)遺伝子療法、再充填可能か生体分解可能な機構、粒子加速化装置(“ジーンガン”)及び薬物徐放型高分子機構が挙げられる。本発明の医薬組成物は、他の成分と共に、コンビナトリアル療法の一部として投与することもできる。
【0112】
医薬組成物は、慣例的な手順に従って処方し、ヒトへの投与に適合した医薬組成物とすることができる。例えば、典型的な静脈注射用の組成物は、滅菌済みの等張水性緩衝液の溶液である。必要な場合には、医薬組成物は更に可溶化剤と、注射する部位の痛みを低減するための局所麻酔剤を含んでもよい。一般的に、処方材料はそれぞれ個別に供給するか、投与単位形式に混合したもの(例えば、有効成分の量を表示したアンプルや小袋などの容器に密封した、凍結乾燥品の乾燥粉末又は水を含まない濃縮物)として供給する。医薬組成物を点滴で投与する場合には、医薬組成物は、医薬用の滅菌水、生理食塩水又はデキストロース/水の入った点滴用ビンに分配することができる。医薬組成物を注射によって投与する場合には、投与前に処方材料を混合できるように、注射用の滅菌水又は生理食塩水の入ったアンプルを提供することができる。
【0113】
局所投与のためには、局所投与に適合し、好ましくは水よりも力学的粘性率の高い担体を包含する、非スプレー形態あるいは粘性〜半固体又は固体の形態を用いることができる。適当な処方に特に限定はないが、溶液、懸濁液、乳液、クリーム、軟膏、粉末、浣腸、ローション、ゾル、塗布剤、膏薬、エアゾールなどが挙げられ、これらは、所望により、滅菌してもよいし、また補助剤(例えば、保存料、安定化剤、湿潤剤、浸透圧を調整するための塩類や緩衝剤など)と混合してもかまわない。薬剤は化粧品処方剤に導入してもよい。局所投与にはスプレー可能なエアゾール製剤も適しており、この場合は有効成分を、好ましくは固体状又は液状の不活性担体と共にスクィーズボトルに梱包したり、加圧した揮発性の、通常は気体状の噴射剤(例えば、圧縮空気)と更に混合して梱包したりすることも好適である。
【0114】
本願に記載した薬剤は、中性の形態でも、塩の形態でも処方することができる。薬学的に許容される塩類としては、塩酸、リン酸、酢酸、蓚酸、酒石酸などから誘導した、遊離アミノ基を有するもの、及びナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどから誘導した、遊離カルボキシル基を有するものが挙げられる。
【0115】
薬剤は、治療効果を発揮する量を投与する。特定の疾患又は病態を治療する上で治療効果を発揮する量は、疾患や病態の性質に依存し、標準的な臨床技術で決定することができる。更に、最適投与範囲の同定を助けるために、in vitro又はin vivoのアッセイを所望により用いてもよい。製剤に用いる厳密な量は投与経路及びHTの病状の重症度にも依存するので、医療従事者の判断と各患者の状況とに基づいて決定しなければならない。効果的な投与量は、in vitroの試験システム又は動物モデルの試験システムから得られた用量−反応曲線から外挿することもできる。
【0116】
治療方法
本発明は、HT治療剤を用いた、HT又はHTに対する感受性を有する個体、例えば、本願明細書で開示した標的集団に属する個体、を治療するための方法(予防法及び/又は療法)を包含する。「HT治療剤」とは、HTリスク作用性のポリペプチド(の酵素活性又は量)及び/又は本願明細書で開示したHTリスク遺伝子の発現を変化(例えば、増加又は低下)させる薬剤(例えば、HTのアゴニスト又はアンタゴニスト)である。HT治療剤は、以下に例示する種々の方法でHT感受性ポリペプチドの活性又はHT核酸の発現を変化させることができる:付加的なHT感受性ポリペプチドの提供、あるいはHTリスク遺伝子の転写又は翻訳の上方制御;HT感受性ポリペプチドの翻訳後プロセシングの変更;HTリスク遺伝子のスプライシング変異体の転写の変更;HT感受性ポリペプチド活性への(例えば、HT感受性ポリペプチドに結合することによる)干渉;HTリスク遺伝子の転写又は翻訳の下方制御;あるいはHT感受性ポリペプチドの排除の阻害又は向上。
【0117】
特に本発明は、HT又はHTに対する感受性(例えば、本願明細書で開示した、危険性を示す集団に属する個体)を治療する方法のみならず、HTの症状発現やサブタイプの治療方法に関する。
【0118】
HT治療剤の代表例としては、以下のものが挙げられる
本願で開示した核酸、その断片又は誘導体、特に本願で開示したポリペプチドをコードするヌクレオチドや、このような核酸(例えば、遺伝子、cDNA及び/又はmRNA;2本鎖干渉RNA;HT感受性ポリペプチド、その活性断片や誘導体、又はオリゴヌクレオチド、例えば、表2〜8、をコードする核酸)を包含するベクター;
他のポリペプチド(例えば、HT感受性受容体);HT感受性ポリペプチドに対する結合性物質;模倣ペプチド;上記ポリペプチドの融合タンパク質やプロドラッグ、抗体(例えば、上述したような、HT感受性ポリペプチド変異体に対する抗体、変異体ではないHT感受性ポリペプチドに対する抗体、HTリスク遺伝子のコードする特定のスプライシング変異体に対する抗体);リボザイム;他の低分子;
HTリスク遺伝子の発現又はポリペプチドの活性を変える(例えば、阻害又は拮抗する)薬剤、HTリスク遺伝子のスプライシング変異体の転写を調節する薬剤(例えば、どのスプライシング変異体が発現されるかに影響を与える薬剤や、発現されるそれぞれのスプライシング変異体の量に影響を与える薬剤)などの他の薬剤;及び
HTリスク遺伝子の発現又はポリペプチドの活性を変える(例えば、誘導又はアゴナイズする)薬剤、HTリスク遺伝子のスプライシング変異体の転写を調節する薬剤(例えば、どのスプライシング変異体が発現されるかに影響を与える薬剤や、発現されるそれぞれのスプライシング変異体の量に影響を与える薬剤)などの他の薬剤。
【0119】
所望により、1種を超えるHT治療剤を同時に使用することもできる。
【0120】
核酸であるHT治療剤は、HTの治療に用いられる。本願において「治療」という用語は、疾患に関連した症状を改善することだけでなく、疾患の発症を予防又は遅らせることも意味し、更には、疾患に伴う症状の重症度や頻度を減少させること、疾患又は病態の再発を予防又は遅らせること及び/又は疾患又は病態に伴う症状の重症度や頻度を減少させることも意味する。アテローム性動脈硬化症の場合、「治療」は、更にプラーク発生の最小化又は退縮も意味する。治療法は、個体におけるHTポリペプチドの活性を変化(例えば、阻害又は増加)、置換又は補足するように設計する。例えば、HT治療剤は、HTリスク遺伝子やHT感受性遺伝子の特定のスプライシング変異体の発現や存在量を上方制御又は増加させるために投与することができ、あるいはそれとは反対に、HTリスク遺伝子やHTリスク遺伝子の特定のスプライシング変異体の発現や存在量を下方制御又は低下させるために投与することもできる。本来のHTリスク遺伝子やその特定のスプライシング変異体の発現や存在量の上方制御又は増加は、欠陥遺伝子や別のスプライシング変異体の発現や活性に干渉したり、補ったりすることができる。又、本来のHTリスク遺伝子やその特定のスプライシング変異体の発現や存在量の下方制御又は低下は、欠陥遺伝子や別のスプライシング変異体の発現や活性を最小化することで、欠陥遺伝子や特定のスプライシング変異体の影響を最小化することができる。
【0121】
HT治療剤は、治療効果を発揮する量(即ち、疾患に関連した症状を改善する、疾患の発症を予防又は遅らせる、及び/又は疾患に伴う症状の重症度や頻度を減少させたりすることで、疾患を治療するのに充分な量)を投与する。特定の個体の有する障害又は病状を治療する上で治療効果を発揮する量は、疾患に伴う病状や重症度に依存し、標準的な臨床技術で決定することができる。更に、最適投与範囲の同定を助けるために、in vitro又はin vivoのアッセイを所望により用いてもよい。製剤に用いる厳密な量は投与経路及び疾患又は障害の重症度にも依存するので、医療従事者の判断と各患者の状況とに基づいて決定しなければならない。効果的な量は、in vitroの試験システム又は動物モデルの試験システムから得られた用量−反応曲線から外挿することもできる。
【0122】
1つの態様においては、本発明の核酸(例えば、表6の、HT感受性ポリペプチドをコードする核酸であり、所望により表2〜11に示した少なくとも1種の多型を包含するもの);又はHT感受性ポリペプチドをコードする他の核酸、そのスプライシング変異体、誘導体又は断片を、それぞれ単独で、又は上述した医薬組成物として用いることができる。例えば、HTリスク遺伝子又はHT感受性ポリペプチドをコードするcDNAは、単独で又はベクターに入れた形態で細胞に(in vitro又はin vivoで)導入し、細胞に本来のHT感受性ポリペプチドを産生させる。必要であれば、遺伝子、cDNA、又は遺伝子かcDNAを含むベクターで形質転換した細胞を、疾患に罹患した個体に導入(又は再導入)することができる。こうすることで、天然では本来のHTリスク遺伝子の発現及び活性を失っているか、HTリスク遺伝子変異体の発現又は活性を有するか、又は疾患関連HTリスク遺伝子のスプライシング変異体を発現する細胞を、HT感受性ポリペプチド、あるいはHT感受性ポリペプチド(又はHT感受性ポリペプチドの別の変異型)の活性断片を発現するように操作することができる。好ましい態様においては、HT感受性ポリペプチドをコードする核酸、その活性断片又は誘導体を発現ベクター(例えば、ウイルスベクター)に導入し、得られたベクターを動物内の適切な細胞に導入することができる。ウイルス性導入システムと非ウイルス性導入システムを含む他の遺伝子導入システムも用いることができる。また、リン酸カルシウム共沈殿法や機械的技法(例えば、マイクロインジェクション)などの非ウイルス性導入システム、膜融合リポソームによる導入(membrane fusion-mediated transfer)、又はDNAの直接取り込みも用いることができる。
【0123】
本発明の他の態様においては、上記方法の代わりに、本発明の核酸、本発明の核酸に相補的な核酸、又はこのような核酸の一部(例えば、後述するオリゴヌクレオチド)を「アンチセンス」療法に使用する。この場合は、HTリスク遺伝子のmRNA及び/又はゲノムDNAに特異的にハイブリダイズする核酸(例えば、オリゴヌクレオチド)を投与するか又はin situで産生する。mRNA及び/又はDNAに特異的にハイブリダイズするアンチセンス核酸は、例えば、翻訳及び/又は転写を阻害することで、HT感受性ポリペプチドの発現を阻害する。アンチセンス核酸の結合は、型どおりの相補的塩基対の結合によるものでもよいし、あるいは、例えば、2本鎖DNAへの結合のように、二重らせんの主溝との特異的な相互作用によるものでもよい。
【0124】
本発明のアンチセンス構築物は、例えば、上述した発現プラスミドとして送達することができる。細胞内でプラスミドが転写されると、mRNA及び/又はDNAのHT感受性ポリペプチドをコードする部分と相補的なRNAを産生する。また、アンチセンス構築物は、ex vivoで作製して細胞に導入したオリゴヌクレオチドプローブでもよく、これはHTリスク遺伝子のmRNA及び/又はゲノムDNAとハイブリダイズすることで発現を阻害する。1つの態様において、オリゴヌクレオチドプローブは、in vivoで安定になるように、内在性のヌクレアーゼ(例えば、エキソヌクレアーゼ及び/又はエンドヌクレアーゼ)に耐性の修飾オリゴヌクレオチドである。アンチセンスオリゴヌクレオチドとして用いる核酸分子の具体例としては、DNAのホスホロアミデートアナログ、ホスホチオエートアナログ及びメチルホスホネートアナログが挙げられる。更に、アンチセンス療法に有用なオリゴマーを構築するための一般的な方法が、van der Krol AR et al, 1988とStein CA and Cohen JS, 1988に記載されている。アンチセンスDNAについては、翻訳開始部位(例えば、HTリスク遺伝子配列の−10〜+10の領域)から誘導したオリゴデオキシリボヌクレオチドが好ましい。
【0125】
アンチセンス療法を実施するために、HT感受性ポリペプチドをコードするmRNAに相補的なオリゴヌクレオチド(mRNA、cDNA又はDNA)を設計する。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、HT感受性のmRNA転写産物に結合し、翻訳を防止する。絶対的な相補性が好ましいものの、必ずしも必要ない。本明細書で述べるような、RNAのある部分に「相補的」な配列とは、RNAにハイブリダイズし、安定な2本鎖を形成するのに充分な相補性を有している配列である。2本鎖アンチセンス核酸の場合には、2本鎖DNAの1本鎖を試験するか、又は3本鎖の形成をアッセイする。ハイブリダイズする能力は、上記で詳細に説明したようなアンチセンス核酸の有する相補性の程度と長さの両方に依存する。一般的に、ハイブリダイズする核酸が長いほど、そこに含まれる、RNAに対してミスマッチな塩基の数が増えても、安定な2本鎖(場合によっては3本鎖)を形成することができる。当業者は、標準的な方法を用いて許容されるミスマッチの程度を確認することができる。
【0126】
アンチセンス療法に用いるオリゴヌクレオチドは、DNA、RNA、又はそれらのキメラ混合物、誘導体又は修飾したものであり、1本鎖でも2本鎖でもよい。オリゴヌクレオチドは、例えば、分子やハイブリダイゼーションの安定性を高めるために、その塩基成分、糖成分又はリン酸骨格が修飾されていてもよい。オリゴヌクレオチドには、他の付加的な基が含まれていてもよく、(例えば、in vivoで宿主細胞の受容体のターゲティングを行うための)ペプチドや、細胞膜の通過を容易にする物質(Letsinger RL et al, 1989; Lemaitre M et al, 1987)や血液脳関門の通過を容易にする物質(Jaeger LB and Banks WA, 2004)、更にはハイブリダイゼーションに伴って開裂を引き起こす試薬(hybridization-triggered cleavage agent)(van der Krol AR et al, 1988)やインターカレーション試薬(Zon G, 1988)が含まれていてもよい。そのためにオリゴヌクレオチドは他の分子(例えば、ペプチド、ハイブリダイゼーションに伴って架橋を引き起こす試薬(hybridization triggered cross-linking agent)、輸送試薬、又はハイブリダイゼーションに伴って開裂を引き起こす試薬)に結合していてもよい。
【0127】
アンチセンス分子は、in vivoでHTリスク遺伝子を発現する細胞に送達される。アンチセンスDNA又はRNAの細胞への送達には数々の方法を用いることができ、例えば、アンチセンス分子を組織部位に直接注射したり、目的の細胞を標的とするように修飾したアンチセンス分子(例えば、標的細胞の表面に発現されている受容体や抗原に特異的に結合するペプチド又は抗体に連結したアンチセンス分子)を全身に投与したりすることができる。又、好ましい態様においては、アンチセンスオリゴヌクレオチドが強力なプロモーター(例えば、pol III又はpol II)の制御下におかれている組み換えDNA構築物を利用する。患者の中の標的細胞をトランスフェクトするためにこのような構築物を使用すると、内在性HTリスク遺伝子転写産物と相補的な塩基対を形成するのに充分な量の1本鎖RNAが転写され、HT感受性mRNAの翻訳を防止する。例えば、細胞がベクターを取り込み、アンチセンスRNAの転写を誘導するように、ベクターをin vivoで導入することもできる。このようなベクターは、転写されて目的アンチセンスRNAを産生する限り、エピソームのままでも、染色体に組み込まれてもかまわない。このようなベクターは、上述した標準的な組み換えDNA工学的手法で構築することができる。例えば、プラスミド、コスミド、YAC又はウイルスベクターを用いて組み換えDNA構築物を調製し、調製した構築物を組織部位に直接導入することができる。又、目的の組織に選択的に感染するウイルスベクターを用いて、他の投与経路(例えば、全身的な投与経路)で投与を達成することもできる。
【0128】
標的化相同組み換えによってHTリスク遺伝子又はそのプロモーターを不活化又は「ノックアウト」することで、内在性のHTリスク遺伝子の発現を減少させることもできる(Smithies O et al, 1985; Thomas KR and Capecchi MR, 1987;Thompson S et al, 1989)。例えば、内在性HTリスク遺伝子(即ち、HTリスク遺伝子のコード領域又は調節領域)に相同なDNAが隣接した、非機能的なHTリスク遺伝子の変異体(又は全く関係のないDNA配列)を、単独あるいは選択マーカー及び/又は負の選択マーカーと共に用い、HTリスク遺伝子をin vivoで発現する細胞にトランスフェクトする。標的化相同組み換えによるDNA構築物の挿入は、HTリスク遺伝子の不活化をもたらす。組み換えDNA構築物は、直接投与するか、又は上述したような適切なベクターを用いることで、必要な部位にin vivoでターゲティングすることができる。代わりに、以下の類似した方法を用いて、変異体ではないHTリスク遺伝子の発現を増加させることもできる: 変異体ではない機能的なHTリスク遺伝子(例えば、表6に示したいずれかの遺伝子であって、所望により、表2〜11に示した少なくとも1種の多型を包含するもの)又はその部分配列を包含するDNA構築物を、標的化相同組み換えを用いて、上述したような細胞の有するHTリスク遺伝子変異体と置き換わるように挿入する。他の態様においては、細胞に存在するものとは異なる変異型HT感受性ポリペプチドをコードする核酸を包含するDNA構築物を、標的化相同組み換えを用いて挿入する。
【0129】
又、HTリスク遺伝子の調節領域(即ち、HTリスク遺伝子のプロモーター及び/又はエンハンサー)に相補的なデオキシリボヌクレオチド配列のターゲティングを行い、体内の標的細胞において、HTリスク遺伝子の転写を防止する三重らせん構造を形成することで、内在性HTリスク遺伝子の発現を減少することもできる(Helene C, 1991;Helene C et al, 1992;Maher LJ, 1992)。同様に、本願明細書に開示したアンチセンス構築物は、HTタンパク質の1つの正常な生物活性と拮抗することで、in vivoの組織とex vivoの培養組織の両方において、組織の操作(例えば、組織分化)に用いることができる。更にアンチセンス技術(例えば、アンチセンス分子のマイクロインジェクション、又は転写産物がHTmRNA又は遺伝子配列のアンチセンスとなるプラスミドのトランスフェクション)は、成体組織におけるHTリスク遺伝子の正常細胞機能のみならず、発生段階におけるHTリスク遺伝子の役割を研究するために用いることができる。このような技術は、細胞培養に利用することができ、トランスジェニック動物の作製にも使用することができる。
【0130】
本発明の別の態様においては、本明細書に開示した他のHT治療剤もHTの治療又は予防に用いることができる。治療剤は、上述したような組成物の形態で送達するか、又は治療剤そのものを送達することができる。治療剤は全身的に投与するか、又は特定の組織にターゲティングすることができる。治療剤は、化学合成、組み換え体による産生、in vivoでの産生(例えば、トランスジェニック動物による産生(Meade H et al, 1990))などの種々の方法で製造し、本願明細書に記載したような標準的な方法で単離することができる。
【0131】
上記の治療方法のいかなる組み合わせ(例えば、変異体ではないHT感受性ポリペプチドの投与と、HT感受性mRNA変異体を標的とするアンチセンス療法の組み合わせ;又はHTリスク遺伝子のコードする第1のスプライシング変異体の投与と、HTリスク遺伝子のコードする第2のスプライシング変異体を標的とするアンチセンス療法の組み合わせ)も使用することができる。
【0132】
本発明を、以下の実施例によって更に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。本明細書で参照する文献の教示の全てが、参照することによって組み込まれたものとする。
【0133】
実施例
フィンランド東部のHT患者とその表現型の特徴づけ
クオピオ虚血性心疾患危険因子研究(Kuopio Ischaemic Heart Disease Risk Factor Study;KIHD)、即ち、HTやCVDを含む、中年男性に見られる慢性疾患の危険因子を調査するために進行中の、前方視的な集団群研究(prospective population-based study)の参加者を被験者とした(Salonen JT 1988、Salonen JT et al 1998, 1999、Tuomainen T-P et al 1999)。研究対象となる集団は、基礎検査を実施した1984年〜1989年の時点で42歳、48歳、54歳又は60歳であったフィンランド東部在住の男性から無作為に抽出した年齢別サンプルである。1984年〜1989年の間に合計2682人の男性を検査した。男性コホートの11年目の追跡調査期間に当たる1998年〜2001年に最初の検査を実施した、人口から無作為に抽出した920人の女性によって、男性コホートを補完した。被験者の募集と検査方法については、既に詳細に報告した(Salonen JT 1988)。この研究は、クオピオ大学研究倫理委員会(University of Kuopio Research Ethics Committee)の承認済みである。全ての参加者から書面による同意を得ている。
【0134】
解析は、同じKIHDコホートから選んだ、HT(SBPが140mmHg以上、DBPが90mmHg以上、又は抗高血圧薬の投与を受けている状態)を発症しており、兄弟/姉妹又は親がHT患者である81人からなる症例群と、HTもHTの家族歴もない82人からなる対照群に関するロジスティックモデリングに基づく。対象者の内の3人(2人は症例群、1人は対象群)は女性で、160人は男性だった。症例群の81人中38人は、KIHD基礎検査におけるBP測定時には、抗高血圧薬を投薬していた。
【0135】
HTは、収縮期BP(SBP)が140mmHg以上又は拡張期BP(DBP)が90mmHg以上、又は抗高血圧薬の投与を受けている状態と定義した。いずれのBPも、朝に看護師によってランダムゼロ水銀血圧計で測定した。測定用プロトコルには、あおむけの状態で3回、立った状態で1回、座った状態で2回の測定を5分間隔で行うことが含まれる。6回の測定の平均値をSBPとDBPとして使用した(Salonen JT et al, 1998)。研究対象者の父親、母親、兄弟/姉妹のいずれかが高血圧症の病歴又は高血圧症状を報告した場合に、HTの家族歴を陽性とした。
【0136】
【表1】

【0137】
表1に症例群と対照群について選択した特徴をまとめた。年齢と喫煙量は、インタビューワーの監督下で、自己記入式のアンケートに記入されたものである。空腹時血糖値は、トリクロロ酢酸でタンパク質を沈殿させた後にグルコースデヒドロゲナーゼ法を用いて測定した。血清インシュリンはNovo Biolabsラジオイムノアッセイキット(Novo Nordisk製)で測定した。HDL画分は、超遠心分離と沈殿の組み合わせによって新鮮血清から分離した。リポタンパク質画分のコレステロール含量と血清トリグリセリドは、酵素を用いて測定した。フィブリノーゲンは、希釈血漿の過剰トロンビンによる凝固に基づいて測定した。
【0138】
成人期の社会経済状況(SES)は、教育、職業、収入及び物質的な生活状態の評価を包含する指標である。この基準は逆関数であり、低いスコアが高いSESに対応する。これらのデータは自己記入式のアンケートで集めた。
【0139】
血清フェリチンは、市販の2重抗体ラジオイムノアッセイ(英国、アマシャム、Amersham International製)で測定した。高比重リポタンパク質(HDL)と低比重リポタンパク質(LDL)を含むリポタンパク質は、新鮮血清サンプルから、超遠心分離とそれに続く超低比重リポタンパク質(VLDL)の直接的な除去とLDL沈殿によって分離した(Salonen et al 1991)。その後、酵素を用いてコレステロール濃度を測定した。血清C反応性タンパク質は、市販の高感度イムノメトリックアッセイ(Immulite 高感度CRアッセイ;ロサンジェルス、DPC製)で測定した。
【0140】
ゲノムDNAの単離と質的試験
高分子量ゲノムDNAサンプルを、凍結した静脈全血から標準的な方法を用いて抽出し、標準的なTEバッファーに溶解した。各DNAサンプルの量と純度は、260nmと280nmの吸光度を測定することで評価し、単離したDNAサンプルの完全性は、0.9%アガロースゲル電気泳動とエチジウムブロマイド染色によって評価した。A260/A280比が1.7以上であり、アガロースゲル電気泳動で得た単離DNAの平均サイズが20kbを超えた場合に、サンプルはゲノムワイドスキャン(GWS)に使用可能であると判断した。GWS解析の前には、サンプルの濃度が50ng/μlとなるように還元型EDTA−TEバッファー(TEKnova)で希釈した。
【0141】
ゲノムワイドスキャン
Affymetrix GeneChipR ヒト マッピング100Kシステム(Affymetrix GeneChipR human mapping 100k system)の技術アクセスバージョンを用いて、SNPマーカーのジェノタイピングを行った。このアッセイは2つのアレイ、即ち、XbaとHindからなり、これらを用いて各DNAサンプルから126,000個を超えるSNPマーカーのジェノタイピングを行った。アッセイは、製造者の提供する説明書に従って実施した。合計250ngのゲノムDNAをそれぞれのアッセイに付した。DNAサンプルは、Xba I又はHind III(New England Biolabs(NEB)製)で消化した。具体的には、NEバッファー2(1×;NEB製)、ウシ血清アルブミン(1×;NEB製)、及びXba I又はHind III(0.5U/μl;NEB製)からなる混合溶液中で消化反応を+37℃で2時間行い、続いて酵素の不活化を+70℃で20分間行った。Xba Iアダプター又はHind IIIアダプター(0.25μM;Affymetrix製)、T4 DNAリガーゼバッファー(1×;NEB製)及びT4 DNAリガーゼ(250U;NEB製)を消化したDNAサンプルに加えることで、Xba Iアダプター又はHind IIIアダプターをサンプルに連結した。連結反応を+16℃で2時間行い、続いて+70℃で20分間インキュベートした。連結したDNAサンプルを75μlの分子生物学用の水(BioWhittaker Molecular Applications/Cambrex製)で希釈した。
【0142】
10μl等量のDNAサンプルをPfx 増幅バッファー(Pfx Amplification Buffer)(1×;Invitrogen製)、PCRエンハンサー(1×;Invitrogen製)、MgSO4(1mM;Invitrogen製)、dNTP(各300μM;Takara製)、PCRプライマー(1μM;Affymetrix製)及びPfx ポリメラーゼ(0.05U/μl;Invitrogen製)と共に使用することで、希釈した連結DNAサンプルを100μl容のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に同じ条件下で4回付した。PCRを+94℃で3分間進行させた後に、+94℃で15秒、+60℃で30秒、+68℃で60秒のサイクルを30回行い、そして+68℃で7分の最後の伸長反応を実施した。PCRの性能は、1×TBEバッファー中での標準的な2%アガロースゲル電気泳動を120Vで1時間行うことで確認した。
【0143】
PCR産物の精製は、Affymetrixのマニュアルに従い、MinElute 96 UF PCR精製キット(MinElute 96 UF PCR Purification kit)(Qiagen製)を用い、それぞれのサンプルについて得られた4個のPCR産物をまとめて1回の精製反応に付すことで行った。精製したPCR産物は、40μlのEBバッファー(Qiagen製)で溶出し、産物の収率を260nmの吸光度で測定した。合計40μgの各PCR産物を、0.2U/μlの断片化試薬(Affymetrix製)と1×断片化バッファー(Fragmentation Buffer)からなる断片化反応に付した。断片化反応は+37℃で35分間行い、続いて+95℃で15分間インキュベートすることで酵素を不活化した。断片化したPCR産物について、1×TBEバッファー中での4%アガロースゲル電気泳動(BMA Reliant製のプレキャストゲル使用)を120Vで30〜45分間行うことで、断片化が完全であるかどうかを確認した。
【0144】
断片化したPCR産物は、次に1×ターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(Terminal Deoxinucleotidyl Transferase)(TdT)バッファー(Affymetrix製)、GeneChip DNA標識試薬(GeneChip DNA Labeling Reagent)(0.214mM; Affymetrix製)とTdT(1.5U/μl; Affymetrix製)を用いて、標識反応を+37℃で2時間行い、続いて+95℃で15分間インキュベートした。標識したDNAサンプルを、0.056MのMES溶液(Sigma製)、5%のDMSO(Sigma製)、2.5×デンハルト溶液(Sigma製)、5.77mMのEDTA(Ambion製)、0.115mg/mlのニシン精子DNA(Promega製)、1×オリゴヌクレオチドコントロール試薬(Oligonucleotide Control reagent)(Affymetrix製)、11.5μg/mlのヒトCot−1(Invitrogen製)、0.0115%のTween-20(Pierce製)及び2.69Mの塩化テトラメチルアンモニウム(Sigma製)からなるハイブリダイゼーションバッファーと混合した。DNA−ハイブリダイゼーションバッファー混合物は、対応するXba又はHind GeneChipRアレイとのハイブリダイゼーションを行う前に、+95℃で10分間変性処理し、10秒間氷冷してから、+48℃で2分間インキュベートした。ハイブリダイゼーションは、60rpm、+48℃の Affymetrix GeneChip ハイブリダイゼーションオーブンに16〜18時間入れることで完了した。ハイブリダイゼーションに続いて、アレイの染色と洗浄をGeneChip Fluidics Station 450の中で、推奨されるプロトコルであるMapping 10Kv1_450に従って行った。アレイはGeneChip 3000スキャナーでスキャンし、アレイ上の各SNPマーカーに対するジェノタイプコール(genotype call)は、Affymetrix ジェノタイピングツール(Genotyping Tools)(GTT)ソフトウエアを用いて作製した。SNPコールアルゴリズムにおける信頼スコアを0.20に調整した。
【0145】
統計解析のためのSNPの初期選択
統計解析を行う前に、SNPの質を次の3つの値に基づいて判定した:コール頻度(call rate)(CR)、マイナーアレル頻度(minor allele frequency)(MAF)及びハーディワインバーグ平衡(Hardy-Weinberg equilibrium)(H−W)。コール頻度は、ジェノタイピングの成功したサンプルの比率を示す。この値は、遺伝型が正しいかどうかは考慮しない。コール頻度は、以下の式で求めた:CR=ジェノタイプコールが得られたサンプルの数/サンプルの合計数。マイナーアレル頻度(MAF)は、研究対象サンプルにより低い頻度で出現するアレルの頻度である。MAFは以下の式で求めた:MAF=min(p, q)[但し、pはSNPアレル‘A’の頻度であり、qはSNPアレル‘B’の頻度であり、p=(遺伝型‘AA’を有するサンプルの数+0.5×遺伝型‘AB’を有するサンプルの数)/ジェノタイプコールが得られたサンプルの数であり、q=1−pである]。ホモ接合型(MAF=0)のSNPは遺伝子解析に用いることができないので取り除いた。ハーディワインバーグ(H−W)平衡は、対照のために試験した。この試験は、適合度を求めるための標準的なχ二乗検定に基づいている。観察された遺伝型の分布を、H−W平衡の元で予想される遺伝型分布と比較する。2つのアレルの場合、‘AA’、‘AB’と‘BB’という遺伝型に対する分布はそれぞれp2、2pqとq2である。SNPがH−W平衡にない場合には、それはジェノタイピングの誤り又は未知のポピュレーションダイナミクス(例えば、機会的浮動や選択)によるものと考えられる。
【0146】
CR>50%であり、MAF>1%であり、更にH−W平衡にある(χ二乗検定の統計値<23.93である)SNPのみを統計解析に使用した。合計で107,895個のSNPが上記の基準を満たし、統計解析に含まれた。
【0147】
統計的手法
単一SNP解析
発症例と対照例との間のアレル分布の差を、全107,895個のSNPについてスクリーニングした。スクリーニングは、df=1とした標準的なχ二乗独立検定(アレル分布、2×2のテーブル)で行った。P値が0.005未満(df=1のχ2分布が7.88以上)のSNPを統計的に有意とみなし、更なる解析のために選択した。この条件を満たすSNPが529個あった。
【0148】
ハプロタイプ解析
データのセットは、HPM−Gソフトウエア(Sevon P et al, 2004)又はHPMソフトウエア(Toivonen HT et al, 2000)を用いた、ハプロタイプパターンマイニング(pattern mining)のアルゴリズムて解析した。HPMソフトウエアを用いる場合には、ジェノタイプのフェーズが分っていなければならない、即ち、母から受け継いだアレルと父から受け継いだアレルを判別しなければならない。家族データがない場合は、フェーズを集団データに基づいて推定しなければならない。我々は、フェーズを推定するためにHaploRecプログラム(Eronen L et al, 2004)を用いた。HPM−GとHPMは非常に高速で、1回の処理で大量のSNPを扱うことができる。
【0149】
HPMとHPM−Gとの違いは、HPM−Gはフェーズの分らないジェノタイプデータを扱うことが可能であり、HPMはフェーズの分っている(又はHaploRecや同様のプログラムでフェーズを推定した)データを用いる点である。HPM−Gは、遺伝型構造(genotype configuration)の一致する全てのハプロタイプパターンを検出する。フェーズの分っているデータについて、HPMは、フェーズ構造(phase configuration)の合致する全てのハプロタイプパターンを検出する。ハプロタイプパターンの長さは色々ある。例えば、4個のSNPがあり、個体がSNP1についてアレルはA/T、SNP2についてアレルはC/C、SNP3についてアレルはC/G、そしてSNP4についてアレルはA/Cの場合、HPM−Gは、(長さが4個のSNPの)ハプロタイプパターンは: ACCA、TCGC、TCCA、ACGC、ACGA、TCCC、TCGA、ACCCと判定する。一方、HPMは(HaploRecで)推定したフェーズと合致するハプロタイプパターンのみを考慮する。推定したフェーズが(母/父からの)ACGAと(父/母からの)TCCCの場合、HPMは、(長さが4個のSNPの)たった2つのハプロタイプパターン:ACGA とTCCCを考慮する。
【0150】
SNPのスコア付けは、症例群と対照群との間で異なるハプロタイプパターンにSNPが含まれる回数に基づいて行われる(χ二乗値の閾値はユーザーが選択することができる)。スコア値の有意性は、順列検定に基づいて評価する。
【0151】
HPM−GプログラムとHPMプログラムにおいて変更することのできるパラメーターとしては、χ二乗閾値(−x)、最大ハプロタイプパターン長さ(−l)、ハプロタイプパターンに含めることのできるワイルドカードの最大数(−w)、及びP値を推定するための順列検定の回数(−p)が挙げられる。ワイルドカードはハプロタイプ内にギャップが存在することを可能にする。HPM−Gプログラムは、パラメーターを次のように設定して実行した:5個のSNPによるハプロタイプ解析(−x9 −l5 −w1 −p10000)。HaploRec+HPMプログラムは、パラメーターを次のように設定して実行した:5個のSNPによるハプロタイプ解析(−x9 −l5 −w1 −p10000)。HPM−G解析は、dbSNP122に示されたSNPの順番に基づき、そしてHaploRec+HPMは、dbSNP123に示されたSNPの順番に基づいていた。10,000回の反復(−p10000)に基づき、HPM−Gは、P値が0.005未満の時に570個のSNPが有意であると解析し、HPM解析では642個のSNPが有意であるという結果が得られた。
【0152】
ハプロタイプ解析結果で使用する用語の定義
「ハプロタイプゲノム領域」や「ハプロタイプ領域」という用語は、ハプロタイプ解析(HPM、HPMG又は同様の統計的方法/プログラム)によって、有意であると判定されたゲノム領域である。ハプロタイプ領域は、統計解析(ハプロタイプ解析)に含まれた、最初/最後のSNPの物理的な位置から100Kbp上流/下流の領域であり、統計的に有意と判定された領域と定義する。この領域は、ゲノムビルド(genome build)に基づく塩基対、例えば、NCBIのヒトゲノムビルド35(NCBI Human Genome Build 35)に従ったSNPの物理的位置(塩基対の位置)として得られる。
【0153】
本明細書に記載される「ハプロタイプ」という用語は、任意のアレルの組み合わせを意味し、例えば、ある遺伝子マーカー(例えば、rs2221511, rs4940595, rs1522723, rs1395266)に存在するA T C C である。定義したハプロタイプは遺伝子マーカー(SNPのdbSNP rs−id)とそのアレルに名前を与える。当業者には認知されているように、ハプロタイプを定義するアレルを異なる鎖から求めることによって、同じハプロタイプであっても、異なった形で記載されることがある。例えば、本明細書に記載したハプロタイプ rs2221511、rs4940595、rs1522723、rs1395266 (A T C C) は、全てのアレルをもう一方の鎖から決定したハプロタイプ rs2221511、rs4940595、rs1522723、rs1395266 (T A G G) や、1番目のアレルのみをもう一方の鎖から決定したハプロタイプ rs2221511、rs4940595、rs1522723、rs1395266 (T T C C) と同じである。
【0154】
本願に記載したハプロタイプ、例えば、表3、4、5、7と8に示したマーカーを有するものは、HTに罹患していない個体よりも、HTに罹患している個体においてより頻繁に見出される。従ってこれらのハプロタイプは、個体からHTやHTに対する感受性を検出する上で予測的な価値を有する。ハプロタイプの検出は、多型部位に存在する配列を検出するために当業界で使用される方法で実施することができる。
【0155】
本発明で開示した、HT関連リスクを示すアレルとハプロタイプは、本発明のHT関連遺伝子に位置する他の「多型部位」と関連してもよい。他のHT関連多型部位は、遺伝子マーカーとして同等に有用であるか、あるいはリスク示す本発明のアレルやハプロタイプとHTとの間に見られる関連性を説明する、病因となる変異としてより有用である。
【0156】
多変量モデリング
2値の結果を得る高血圧症のモデリングを行うために、個別のSNP解析で得られた最も強力な予測性SNPマーカー734個とHPM解析で得られた最も強力なハプロタイプ14個をモデルへのエントリーのために検定した。これらを、メジャーアレルのホモ接合体の場合は0、ヘテロ接合体の場合は1、そしてマイナーアレルのホモ接合体を2を記録した。多変量2値ロジスティック回帰分析は、a)HTの予測性が最も高いSNPを発見し、そしてb)最も強力にHTを予測する多変量モデルを構築するために用いた。前向きのステップアップモデル構築体(forward step-up model construction)を、入力するp値を0.01、モデルから除外するp値を0.02として使用した。モデルの予測性は、以下の2つの方法で推定した: NagelkerkeのR2値と、構築したロジスティックモデルに基づく、症例群と対照群に含まれる対象者の再分類。カットオフ値として使用した予測確率は0.5だった。データ還元解析は、ステップダウン及びステップアップロジスティックモデルで実施した。
【0157】
平均収縮期血圧及び平均拡張期血圧を定量的性質とした時に、それらと最も強力な関連性を示すSNPマーカーを同定するために、多変量最小二乗直線回帰モデリングを用いた。前向きのステップアップモデル構築体は、入力するp値を0.001、モデルから除外するp値を0.005として使用した。
【0158】
使用した統計処理ソフトウエアはウインドウズ用のSPSS、バージョン11.5である。
【0159】
結果
表2には、個別のマーカー解析(n=529)において、HTと最も強力な関連性が見出されたSNPマーカーの特徴をまとめた。SNP登録番号は、NCBI dbSNPデータベース ビルド124(NCBI db SNP database build 124)に基づく。SNPマーカーの物理的位置は、NCBI ヒト ゲノム ビルド35(NCBI Human Genome Build 35)に基づく。遺伝子座は、NCBI dbSNP データベース ビルド124で報告されたものである。SNP隣接配列は、Affymetrix “csv” 一般アクセス可能なヒトマッピング100Kアレイ アノテーションファイル(Affymetrix “csv” commercial access Human Mapping 100K array annotation files)の提供するものである。
【0160】
表3には、5個のSNPを用いたHPM−G解析において、HTと最も強力な関連性が見出されたハプロタイプゲノム領域の特徴をまとめた。SNP登録番号は、NCBI dbSNP データベース ビルド124に基づく。SNPマーカーの物理的位置は、NCBIヒトゲノム ビルド35に基づく。関連遺伝子は、NCBIヒトゲノム ビルド35に基づいて、NCBIマップビューワー(NCBI MapViewer)で見出したハプロタイプゲノム領域の両側に位置するSNPの物理的位置から、100Kbp上流/下流の領域内に位置する遺伝子である。SNP隣接配列は、Affymetrix “csv” 一般アクセス可能なヒトマッピング100Kアレイ アノテーションファイルの提供するものである。
【0161】
表4には、5個のSNPを用いたHaploRec+HPM解析において、HTと最も強力な関連性が見出されたハプロタイプゲノム領域の特徴をまとめた。SNP登録番号は、NCBI dbSNP データベース ビルド124に基づく。SNPマーカーの物理的位置は、NCBIヒトゲノム ビルド35に基づく。関連遺伝子は、NCBIヒトゲノム ビルド35に基づいて、NCBIマップビューワーで見出したハプロタイプゲノム領域の両側に位置するSNPの物理的位置から、100Kbp上流/下流の領域内に位置する遺伝子である。SNP隣接配列は、Affymetrix “csv” 一般アクセス可能なヒトマッピング100Kアレイ アノテーションファイルの提供するものである。
【0162】
表5には、HaploRec+HPM解析(n=14)において、HTと最も強力な関連性が見出されたハプロタイプブロックを列挙した。SNP登録番号は、NCBI dbSNP データベース ビルド124に基づく。
【0163】
表6には、点別の解析及びハプロタイプ解析(n=722)によって、HTとの関連性が見出された全ての遺伝子を列挙した。遺伝子の名称は、HUGOの遺伝子専門用語委員会(HUGO Gene Nomenclature Committee)(HGNC)に従った。
【0164】
表7には、多変量ロジスティックモデルにおいて、家族性HTの危険度を最も確実に予測するSNPマーカーとハプロタイプを列挙した。SNP登録番号は、NCBI dbSNP データベース ビルド124に基づく。8変量モデルは家族性HTの91.4%を正しく予測する。統計は、KIHD基礎検査において高血圧症(SBPが140mmHg以上、DBPが90mmHg以上、又は抗高血圧薬の投与を受けている状態)と診断され、兄弟/姉妹又は親がHTである81人のKIHD参加者と、KIHD基準値のHTもHTの家族歴もない82人のKIHD参加者に基づいている。対照群は、年齢が症例群と一致するようにした。
【0165】
表8には、多変量ロジスティックモデルにおいて、家族性HTの危険度を最も確実に予測するSNPマーカー、ハプロタイプと表現型のデータを列挙した。SNP登録番号は、NCBI dbSNP データベース ビルド124に基づく。2個のハプロタイプ、5個のSNPマーカーと2つの表現型変数を含む12変量モデルは、家族性HTの87.1%を正しく予測した。多変量ロジスティックモデルにおいて特定された最も強力な遺伝子座は、SERPINのB3、B4、B7とB11及びEPC1、OR1J4、並びにLOC401406、439953、441550と441551である。
【0166】
表9には、平均収縮期血圧と平均拡張期血圧を予測する最も強力なSNPマーカーの多変量回帰モデルを示した。表10と11には、単変量単一SNP解析、ハプロタイプ解析及び多変量解析の全てにおいて最も強力にBPを予測した最も強力なSNPマーカーの遺伝型に対する、平均収縮期血圧(表10)と平均拡張期血圧(表11)のそれぞれの平均値と標準偏差を示した。マーカーの順位付けは、拡張期血圧との関連性の強度に基づいている。定量的特性としてのBPに関連する遺伝子の中で、最も強力な遺伝子として特定されたものは、SERPINのB3、B7とB11、A100A7、S100A6、FARS1、SPOCK3とTLL1である。
【0167】
推測と考察
我々は、家族性の症例群と家族歴のない健康な対照群からなる、集団に基づく集合体において、HT及び/又は血圧の危険度と関連する1365個のSNPマーカーを見出した。これらの内、529個を個別のSNPの解析で同定し、1080個をハプロタイプパターンマイニング又はハプロタイプ解析で同定した。1365個のマーカーの内、244個は両方の統計解析でHTを予測した。我々は更に多変量ロジスティックモデルにおいて、実質的に完全にHTの発症を予測するSNPマーカーを同定した。
【0168】
点別の解析とハプロタイプ解析の結果によって、HTと関連する合計722個の遺伝子が同定され、この内、330個の遺伝子には、1365個のSNPマーカーの内の少なくとも1個が物理的に結合していた。
【0169】
こうして我々は、その遺伝子マーカーがいずれもHTの予測に用いることのできる、合計722個のHT遺伝子を同定した。従って、これらのマーカーは、HT素因に対する分子診断試験の一部として用いることができる。更に我々は、HT予測性の1365個のSNPマーカーのセットを開示した。これらマーカーは、抗高血圧性の薬剤や化合物の効果や副作用を予測する薬理遺伝学試験の一部として用いることができる。発見した遺伝子は、新しいHT治療法、例えば薬物、の標的となる。他の治療法としては、遺伝子導入を含む分子導入が挙げられる。新しい遺伝子は、抗高血圧性の薬剤や化合物を研究するための新規なトランスジェニック動物の開発と製造にも使用することができる。
【0170】
本発明をその好ましい態様に参照しながら具体的に開示し説明したが、当業者は、請求の範囲で定義した本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、本発明の形態及びその細部に変更を加えることが可能であることを理解するであろう。
【0171】
【表2−1】

【0172】
【表2−2】

【0173】
【表2−3】

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【表8−2】

【0245】
【表9】

【0246】
【表10−1】

【0247】
【表10−2】

【0248】
【表11−1】

【0249】
【表11−2】

【0250】
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
高血圧症(HT)を発症する危険度やHTに対する疾患感受性が変化した個体を同定するための方法であって、
a)個体から得た生物学的サンプルを提供し、
b)該個体の個人情報及び臨床情報を集め、
c)表2〜5及び7〜11に示した1種又は数種の多型部位に含まれるヌクレオチドを該個体の核酸配列から検出して、SNP(一塩基多型)マーカーに関するデータを得、そして
d)SNPマーカーに関するデータを個人情報及び臨床情報と組み合わせて、個体がHTを発症する危険度を評価する
ことを包含する方法。
【請求項2】
危険度の変化が、HTを発症する危険度の上昇であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
危険度の変化が、HTを発症する危険度の低下であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
多型部位が、表3、4、5、7及び8に示したハプロタイプに存在するものであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
多型部位が、表2〜5及び7〜11に示したSNPマーカーに関連することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
多型部位が、表2〜5及び7〜11に示したSNPマーカーと完全な連鎖不平衡状態にあることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
多型部位が、該方法を実施する集団において完全な連鎖不平衡状態にあることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
HTを発症する危険度やHTに対する疾患感受性が変化した個体を同定するための方法であって、
a)個体から得た生物学的サンプルを提供し、
b)表2〜5及び7〜11に示した1種又は数種の多型部位に含まれるヌクレオチドを該個体の核酸配列から検出して、SNPマーカーに関するデータを得、そして
c)SNPマーカーに関するデータを組み合わせて、個体がHTを発症する危険度を評価する
ことを包含する方法。
【請求項9】
危険度の変化が、HTを発症する危険度の上昇であることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
危険度の変化が、HTを発症する危険度の低下であることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
多型部位が、表3、4、5、7及び8に示したハプロタイプに存在するものであることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
多型部位が、表2〜5及び7〜11に示したSNPマーカーに関連することを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
多型部位が、表2〜5及び7〜11に示したSNPマーカーと完全な連鎖不平衡状態にあることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
多型部位が、該方法を実施する集団において完全な連鎖不平衡状態にあることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
該1種又は数種の多型部位が、表6に示したHTリスク遺伝子内に存在するものであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
HTリスク遺伝子が、ハプロタイプパターンマイニングによって定義されるゲノム領域に存在し、該遺伝子は、表3、4、5、7及び8に示したものであるすることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
多型部位が、ハプロタイプ領域、ハプロタイプ、又は表3、4、5、7及び8に示したハプロタイプを定義するSNPマーカーに関連することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
多型部位が、ハプロタイプ領域、ハプロタイプ、又は表3、4、5、7及び8に示したハプロタイプを定義するSNPマーカーと完全な連鎖不平衡状態にあることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
多型部位が、該方法を実施する集団において完全な連鎖不平衡状態にあることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
1種又は数種のSNPマーカーが、以下のハプロタイプ及び個々のSNPからなる群より選ばれることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
a)ハプロタイプ“ACT”(又はその相補鎖のヌクレオチド)を定義する、rs1521409
(A/G) (配列番号544)、rs10511365 (C/T) (配列番号316) と rs10511366
(C/T) (配列番号317);
b)ハプロタイプ“TCCC”(又はその相補鎖のヌクレオチド)を定義する、rs10508771
(A/T) (配列番号286)、rs3006608 (C/T) (配列番号854)、rs10508773 (C/T)
(配列番号287) と rs950132 (C/T) (配列番号1325);
c)ハプロタイプ“ATCC”(又はその相補鎖のヌクレオチド)を定義する、rs2221511
(A/G) (配列番号733)、rs4940595 (G/T) (配列番号986)、rs1522723 (C/T)
(配列番号548) と rs1395266 (C/T) (配列番号476);
d)リスクアレル“G”を定義する、rs1992906 (A/G) (配列番号655);
e)リスクアレル“G”を定義する、rs10270360 (A/G) (配列番号10);
f)リスクアレル“G”を定義する、rs1318392 (A/G) (配列番号438);
g)リスクアレル“A”を定義する、rs2209672 (A/G) (配列番号730);及び
h)リスクアレル“G”を定義する、rs503208 (C/G) (配列番号989)。
【請求項21】
1種又は数種のSNPマーカーが、以下のハプロタイプ及び個々のSNPからなる群より選ばれることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
a)ハプロタイプ“ACT”(又はその相補鎖のヌクレオチド)を定義する、rs1521409
(A/G) (配列番号544)、rs10511365 (C/T) (配列番号316) と rs10511366
(C/T) (配列番号317);
b)ハプロタイプ“ATCC”(又はその相補鎖のヌクレオチド)を定義する、rs2221511
(A/G) (配列番号733)、rs4940595 (G/T) (配列番号986)、rs1522723 (C/T)
(配列番号548) と rs1395266 (C/T) (配列番号476);
c)リスクアレル“G”を定義する、rs1997454 (A/G) (配列番号656);
d)リスクアレル“G”を定義する、rs10270360 (A/G) (配列番号10);
e)リスクアレル“G”を定義する、rs1318392 (A/G) (配列番号438):
f)リスクアレル“A”を定義する、rs2209672 (A/G) (配列番号730);及び
g)リスクアレル“G”を定義する、rs503208 (C/G) (配列番号989)。
【請求項22】
1種又は数種のSNPマーカーが、以下のハプロタイプからなる群より選ばれることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
a)ハプロタイプ“ACG”(又はその相補鎖のヌクレオチド)を定義する、rs4845303
(A/T) (配列番号980)、rs6428195 (C/G) (配列番号1030) と rs1935659
(A/G) (配列番号637);
b)ハプロタイプ“AGC”(又はその相補鎖のヌクレオチド)を定義する、rs1997454
(A/G) (配列番号656)、rs2139502 (A/G) (配列番号709) と rs1519991 (A/C)
(配列番号542);
c)ハプロタイプ“ACT”(又はその相補鎖のヌクレオチド)を定義する、rs1521409
(A/G) (配列番号544)、rs10511365 (C/T) (配列番号316) と rs10511366
(C/T) (配列番号317);
d)ハプロタイプ“CGA”(又はその相補鎖のヌクレオチド)を定義する、rs7679959
(C/G) (配列番号1178)、rs10517338 (C/G) (配列番号381) と rs959297
(A/T) (配列番号1338);
e)ハプロタイプ“GCAGG”(又はその相補鎖のヌクレオチド)を定義する、rs2278677
(A/G) (配列番号749)、rs3886091 (C/G) (配列番号899)、rs1998167 (A/G)
(配列番号657)、rs1998168 (A/G) (配列番号658) と rs2235280 (A/G)
(配列番号740);
f)ハプロタイプ“AACG”(又はその相補鎖のヌクレオチド)を定義する、rs10521062
(A/C) (配列番号404)、rs10512296 (A/G) (配列番号331)、rs1924001 (C/G)
(配列番号633) と rs2417359 (A/G) (配列番号784);
g)ハプロタイプ“GGA”(又はその相補鎖のヌクレオチド)を定義する、rs10508933
(C/G) (配列番号289)、rs10509071 (A/G) (配列番号295) と rs10490967
(A/G) (配列番号94);
h)ハプロタイプ“TCCC”(又はその相補鎖のヌクレオチド)を定義する、rs10508771
(A/T) (配列番号286)、rs3006608 (C/T) (配列番号854)、rs10508773 (C/T)
(配列番号287) と rs950132 (C/T) (配列番号1325);
i)ハプロタイプ“CAGT”(又はその相補鎖のヌクレオチド)を定義する、rs1386486
(C/T) (配列番号472)、rs1386485 (A/C) (配列番号471)、rs1386483 (A/G)
(配列番号470) と rs7977245 (C/T) (配列番号1212);
j)ハプロタイプ“AA”(又はその相補鎖のヌクレオチド)を定義する、rs276002 (A/G)
(配列番号814) と rs274460 (A/G) (配列番号810);
k)ハプロタイプ“GCTTC”(又はその相補鎖のヌクレオチド)を定義する、rs1245383
(A/G) (配列番号430)、rs2133829 (C/T) (配列番号707)、rs2173738 (C/T)
(配列番号722)、rs2050528 (C/T) (配列番号677) と rs202970 (C/T)
(配列番号671);
l)ハプロタイプ“TAC”(又はその相補鎖のヌクレオチド)を定義する、rs1395266
(C/T) (配列番号476)、rs931850 (A/G) (配列番号1303) と rs1522722 (C/T)
(配列番号547);
m)ハプロタイプ“ATCC”(又はその相補鎖のヌクレオチド)を定義する、rs2221511
(A/G) (配列番号733)、rs4940595 (G/T) (配列番号986)、rs1522723 (C/T)
(配列番号548) と rs1395266 (C/T) (配列番号476);及び
n)ハプロタイプ“ATGGA”(又はその相補鎖のヌクレオチド)を定義する、rs2825555
(A/G) (配列番号819)、rs2825583 (C/T) (配列番号820)、rs2825601 (A/G)
(配列番号821)、rs2825610 (G/T) (配列番号822) と rs1489734 (A/G)
(配列番号532)。
【請求項23】
個体が有する、HTに対する疾患感受性や素因を評価するための方法であって、表6に示した1種又は数種の遺伝子について、個体における発現レベルの変化を検出することを包含し、発現レベルの変化を、HTに対する疾患感受性の指標として評価することを特徴とする方法。
【請求項24】
表6に示した1種又は数種の遺伝子について、個体における転写レベルを評価することによって、遺伝子発現レベルの変化を検出することを特徴とする、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
表6に示した1種又は数種の遺伝子がコードするmRNAについて、個体における翻訳を評価することによって、遺伝子発現レベルの変化を検出することを特徴とする、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
個体が有する、HTに対する疾患感受性や素因を評価するための方法であって、表6に示した1種又は数種の遺伝子がコードする1種又は数種のポリペプチドについて、個体における生物活性の変化を検出することを包含し、1種又は数種のポリペプチドの生物活性の変化を、HTに対する疾患感受性の指標とすることを特徴とする方法。
【請求項27】
表6に示した1種又は数種の遺伝子がコードする1種又は数種のポリペプチドについて、その構造を個体から求めることによって、生物活性の変化を検出することを特徴とする、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
表6に示した1種又は数種の遺伝子がコードするポリペプチドの1種又は数種の代謝産物について、個体に存在する量を評価することによって、生物活性の変化を検出することを特徴とする、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
該個体の個人情報及び臨床情報、即ち、非遺伝学的情報が、年齢;性別;行動パターンと習慣;生化学検査の結果;臨床検査の結果;肥満度;HT、脳血管障害、他の心血管障害、高コレステロール血症、肥満及び糖尿病の家族歴;ウエスト/ヒップ比(cm/cm);社会経済的状態;精神的性向と精神状態;並びに対象生物の治療歴に関するものであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
該行動パターンと習慣に、喫煙;運動;食事による栄養摂取、アルコール摂取とその消費パターン;並びにコーヒーの消費量とその質が含まれることを特徴とする、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
該生化学検査の結果に、VLDL、LDL、HDL又は総コレステロール又はトリグリセリド、アポリポタンパク(A)、フィブリノーゲン、フェリチン、トランスフェリン受容体、C反応性タンパク質、グルコース、あるいはインシュリンの血液、血清又は血漿濃度が含まれることを特徴とする、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
非遺伝学的情報が、表8に示したものであることを特徴とする、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
非遺伝学的情報に、対象生物のBMIとその家族における肥満の病歴が含まれることを特徴とする、請求項29に記載の方法。
【請求項34】
下記ロジスティック回帰式を用いて、HTの危険度を計算する工程を更に包含する、請求項29に記載の方法。
HTの危険度 =[1+e-(a+Σ(bi×Xi)-1
式中、eはネーピアの定数であり、XiはHTの危険度に関連した変数であり、biは上記変数のロジスティック関数における係数であり、aはロジスティック関数の定数項である。
【請求項35】
a値とbi値が、この方法を実施する集団から求められる値であることを特徴とする、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
i値が、この方法を実施する集団で測定した変数から選ばれる値であることを特徴とする、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
i値が、表2〜5及び7〜11のSNPマーカー、表3、4、5、7及び8のハプロタイプ領域とハプロタイプ、及び本発明の非遺伝学的変数から選ばれる値であることを特徴とする、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
下記条件の少なくとも一方を満足することを特徴とする、請求項34に記載の方法。
i値が−20〜20の範囲内である、及び
i値が、−99999〜99999の範囲以内であるか、0(ゼロ)又は1(一)とコード化される変数である。
【請求項39】
i値が0(即ち、なし)〜100,000の範囲内であることを特徴とする、請求項34に記載の方法。
【請求項40】
対象生物がHTを発症する短期危険度、中期危険度及び長期危険度の少なくとも1つを予測することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項41】
生存細胞において、化合物が、表6に示したHTリスク遺伝子のコードする1種又は数種のポリペプチドに関連した生体ネットワーク及び代謝経路の少なくとも一方に及ぼす影響を測定することを包含する、HTの予防や治療に有用な化合物を同定するための方法であって、生体ネットワーク及び代謝経路から選ばれる1種又は数種の活性を変化させる化合物を、HTの予防や治療に有用な化合物と評価する方法。
【請求項42】
生存細胞における化合物の影響を、表6に示したHTリスク遺伝子のコードする1種又は数種のポリペプチドの生物活性に及ぼす影響として測定し、ポリペプチドの生物活性を変化させる化合物を、HTの予防や治療に有用な化合物と評価することを特徴とする、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
HTを予防又は治療するための方法であって、
表6に示したHTリスク遺伝子のコードする1種又は数種のポリペプチドの生物活性を増強又は減退させる化合物、及び
該ポリペプチドに関連した生体ネットワーク及び代謝経路から選ばれる1種又は数種の活性を増強又は減退させる化合物
からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物の有効量を、薬学的に許容される担体と共に、治療を必要とする哺乳類である対象生物に投与することを特徴とする方法。
【請求項44】
表6に示した1種又は数種のHTリスク遺伝子の発現を増強又は減退させる化合物、及び
該HTリスク遺伝子のコードするポリペプチドに関連した生体ネットワーク及び代謝経路の少なくとも一方に含まれる1種又は数種の遺伝子の発現を増強又は減退させる化合物
からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物の有効量を、薬学的に許容される担体と共に、治療を必要とする哺乳類である対象生物に投与することを特徴とする、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
心血管障害に関与し、且つ表6に示したHTリスク遺伝子のコードするポリペプチドに関連する1種又は数種の病態生理学的経路について、その活性を増強又は減退させる化合物の有効量を、薬学的に許容される担体と共に、治療を必要とする哺乳類である対象生物に投与することを特徴とする、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
a)個体から得た生物学的サンプルを提供し、
b)遺伝子発現及び生物活性の少なくとも一方の変化に関連し、且つ、表6に示したHTリスク遺伝子に存在する、1種又は数種の多型部位に含まれるヌクレオチドを、該個体の核酸配列から検出してジェノタイプデータを得、そして
c)多型部位のジェノタイプデータを組み合わせて、対象生物にとって効果的なHTの治療法を選択する
ことを包含する、請求項43に記載の方法。
【請求項47】
a)個体から得た生物学的サンプルを提供し、
b)表6に示した1種又は数種のHTリスク遺伝子の発現、及び表6に示したHTリスク遺伝子のコードする1種又は数種のポリペプチドの生物活性の少なくとも一方を、該個体の生物学的サンプルから検出し、そして
c)発現と生物活性の少なくとも一方について得られたデータを組み合わせて、対象生物にとって効果的なHTの治療法を選択する
ことを包含する、請求項43に記載の方法。
【請求項48】
該治療が、遺伝子治療又は遺伝子導入であることを特徴とする、請求項43に記載の方法。
【請求項49】
該治療が、表6に示した1種又は数種のHTリスク遺伝子、その変異体、断片又は誘導体の導入を包含することを特徴とする、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
表6に示したHTリスク遺伝子、その変異体、断片又は誘導体が、HTの危険度の低下と関連することを特徴とする、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
該治療が、対象生物の体細胞の有する遺伝子調節領域及び遺伝子含有領域の少なくとも一方の処置を包含し、該遺伝子は、表6に示した1種又は数種のHTリスク遺伝子、その変異体、断片又は誘導体であることを特徴とする、請求項48に記載の方法。
【請求項52】
該治療が、幹細胞の有する遺伝子調節領域及び遺伝子含有領域の少なくとも一方の処置を包含し、該遺伝子は、表6に示した1種又は数種のHTリスク遺伝子、その変異体、断片又は誘導体であることを特徴とする、請求項48に記載の方法。
【請求項53】
該治療が、心血管障害を発症した組織中の幹細胞の有する遺伝子調節領域及び遺伝子含有領域の少なくとも一方の処置を包含し、該遺伝子は、表6に示した1種又は数種のHTリスク遺伝子、その変異体、断片又は誘導体であることを特徴とする、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
該化合物が、表6に示したHTリスク遺伝子、その変異体、断片又は誘導体のコードする組み換えポリペプチドであることを特徴とする、請求項43に記載の方法。
【請求項55】
該治療が、表6に示したHTリスク遺伝子に対するmRNA及びhnRNAの少なくとも一方とハイブリダイズするsiRNAに基づくことを特徴とする、請求項43に記載の方法。
【請求項56】
該治療が、mRNA及びhnRNAの少なくとも一方とハイブリダイズするsiRNAに基づき、mRNA及びhnRNAは、表6に示したHTリスク遺伝子のコードするポリペプチドに関連した生体ネットワーク及び代謝経路の少なくとも一方に含まれる1種又は数種の遺伝子に対するものであることを特徴とする、請求項43に記載の方法。
【請求項57】
該治療方法が、食餌療法又は予防接種であることを特徴とする、請求項43に記載の方法。
【請求項58】
表6に示したHTリスク遺伝子のコードする1種又は数種のポリペプチドの生物活性について、HTを発症していない健常対象生物と比べた時に見られる変化を、少なくとも部分的に修復する療法を包含することを特徴とする、請求項43に記載の方法。
【請求項59】
表6に示した1種又は数種のHTリスク遺伝子の発現について、HTを発症していない健常対象生物と比べた時に見られる変化を、少なくとも部分的に修復する療法を包含することを特徴とする、請求項43に記載の方法。
【請求項60】
対象生物となるヒトにおけるHT治療の効果を追跡するための方法であって、
対象生物から得た生物学的試料について、表6に示したHTリスク遺伝子のmRNAレベル、該HTリスク遺伝子のコードするポリペプチドのレベル、及び該HTリスク遺伝子のコードするポリペプチドの生物活性からなる群より選ばれる少なくとも1種を測定し、そして
治療後のmRNAレベル、ポリペプチドレベル又はポリペプチドの生物活性の変化を、治療効果の指標として評価する
ことを包含する方法。
【請求項61】
特定の個体において特定の療法がHTを予防又は治療する効果を予測するための方法であって、請求項15で定義したHTリスク遺伝子の1種又は数種の内に、HT関連SNPマーカー、ハプロタイプ又はハプロタイプ領域が存在するか否かをスクリーニングすることを包含する方法。
【請求項62】
特定の個体において特定の療法がHTを予防又は治療する効果を予測するための方法であって、
a)個体から得た生物学的サンプルを提供し、
b)表2〜5及び7〜11に示した1種又は数種の多型部位に含まれるヌクレオチドを該個体の核酸配列から検出して、SNPマーカーに関するデータを得、そして
c)SNPマーカーに関するデータを組み合わせて、個体において特定の療法がHTを予防又は治療する効果を予測する
ことを包含する方法。
【請求項63】
HTを発症した個体について、HTのサブタイプを診断するための方法であって、
a)個体から得た生物学的サンプルを提供し、
b)表2〜5及び7〜11に示した1種又は数種のSNPマーカーに含まれるヌクレオチドを該個体の核酸配列から検出して、SNPマーカーに関するデータを得、そして
c)SNPマーカーに関するデータを組み合わせて、個体のHTのサブタイプを評価する
ことを包含する方法。
【請求項64】
該1種又は数種のSNPマーカーが、表6に示したHTリスク遺伝子内に存在するものであることを特徴とする、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
HTリスク遺伝子が、ハプロタイプパターンマイニングによって定義されるゲノム領域に存在し、該遺伝子と領域は、表3、4、5、7及び8に示したものであることを特徴とする、請求項63に記載の方法。
【請求項66】
多型部位が、ハプロタイプ領域、ハプロタイプ、又は表3、4、5、7及び8に示したハプロタイプを定義するSNPマーカーに関連することを特徴とする、請求項63に記載の方法。
【請求項67】
多型部位が、ハプロタイプ領域、ハプロタイプ、又は表3、4、5、7及び8に示したハプロタイプを定義するSNPマーカーと完全な連鎖不平衡状態にあることを特徴とする、請求項63に記載の方法。
【請求項68】
多型部位が、該方法を実施する集団において完全な連鎖不平衡状態にあることを特徴とする、請求項63に記載の方法。
【請求項69】
非遺伝学的情報を、請求項44〜68のいずれかの方法で得られた結果と組み合わせる工程を更に包含する、請求項43と60〜63のいずれかに記載の方法。
【請求項70】
該非遺伝学的情報が、年齢;性別;行動パターンと習慣;生化学検査の結果;臨床検査の結果;肥満度;HT、脳血管障害、他の心血管障害、高コレステロール血症、肥満及び糖尿病の家族歴;ウエスト/ヒップ比(cm/cm);社会経済的状態;精神的性向と精神状態;並びに対象の治療歴に関するものであることを特徴とする、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
該行動パターンと習慣に、喫煙;運動;食事による栄養摂取、アルコール摂取とその消費パターン;並びにコーヒーの消費量とその質が含まれることを特徴とする、請求項69に記載の方法。
【請求項72】
該生化学検査の結果に、VLDL、LDL、HDL又は総コレステロール又はトリグリセリド、アポリポタンパク(A)、フィブリノーゲン、フェリチン、トランスフェリン受容体、C反応性タンパク質、グルコース、あるいはインシュリンの血液、血清又は血漿濃度の検査が含まれることを特徴とする、請求項69に記載の方法。
【請求項73】
非遺伝学的情報が、表8に示したものであることを特徴とする、請求項69に記載の方法。
【請求項74】
非遺伝学的情報に、対象生物のBMIとその家族における肥満の病歴が含まれることを特徴とする、請求項69に記載の方法。
【請求項75】
対象生物から得た生物学的サンプルについて、HTリスク遺伝子産物であるタンパク質の発現、産生又は濃度を測定するための方法であって、
a)個体から得た、試験に付すための生物学的サンプルを提供し、そして
b)該サンプルにおける該タンパク質の発現、産生又は濃度を検出し、発現、産生又は濃度の変化を該対象生物が心血管障害を発症する危険度の変化の指標とする
ことを包含し、該HTリスク遺伝子は表6に示したものであることを特徴とする方法。
【請求項76】
対象生物における、HTを発症する危険度やHTに対する疾患感受性の変化を検出するための、請求項1の方法に基づく試験キット。
【請求項77】
対象生物における、HTを発症する危険度の変化を検出するために、表2〜5及び7〜11に示した1種又は数種のSNPマーカーに含まれるヌクレオチドを、該個体の核酸配列から検出するための試験キット。
【請求項78】
対象生物における、HTを発症する危険度の変化を検出するために、表2〜5及び7〜11に示した1種又は数種のSNPマーカーに含まれるヌクレオチドを、該個体の核酸配列から検出するための試験キットであって、
a)表2〜5及び7〜11に示した1種又は数種のSNPマーカーに含まれるヌクレオチドを検出するための試薬及び材料、並びに
b)検出結果を解析するためのソフトウエア
を包含する試験キット。
【請求項79】
表2〜5及び7〜11に示した1種又は数種のSNPマーカーを含有する核酸断片を、対象生物の核酸配列から増幅するためのPCRプライマーのセットを更に包含する、請求項76に記載の試験キット。
【請求項80】
表2〜5及び7〜11に示したHT関連マーカー及びハプロタイプ領域に存在する1種又は数種のSNPマーカーに特異的に結合する捕捉用核酸プローブのセットを包含する、請求項76に記載の試験キット。
【請求項81】
ジェノタイプを評価するためのマイクロアレイ又はマルチウエルプレートを包含する、請求項76に記載の試験キット。
【請求項82】
年齢、性別、身長、体重、ウエストとヒップのサイズ、皮下脂肪や脂肪組織の厚み、体脂肪率、肥満や糖尿病に関する家族歴、及びHTの治療歴に関する個体情報及び臨床情報を集めるためのアンケートを包含する、請求項76に記載の試験キット。
【請求項83】
表6に示した1種又は数種のHTリスク遺伝子内のSNPマーカーを生物学的サンプルから検出するための試験キットであって、該SNPマーカーは、HTに対する疾患感受性を示さない対象生物から得た生物学的サンプルよりも、HTに対する疾患感受性を示す対象生物から得た生物学的サンプルにおいて、より高頻度で存在するものであり、
a)表6に示した1種又は数種のHTリスク遺伝子内のSNPマーカーを検出するための試薬及び材料、並びに
b)検出結果を解析するためのソフトウエア
を包含する試験キット。
【請求項84】
表6に示したHTリスク遺伝子内のSNPマーカーを含有する核酸断片を、対象生物の核酸から増幅するためのPCRプライマーのセットを更に包含する、請求項83に記載の試験キット。
【請求項85】
表6に示したHTリスク遺伝子内の1種又は数種のSNPマーカーに特異的に結合する捕捉用核酸プローブのセットを更に包含する、請求項83に記載の試験キット。
【請求項86】
ジェノタイプを評価するためのマイクロアレイ又はマルチウエルプレートを包含する、請求項83に記載の試験キット。
【請求項87】
年齢、性別、身長、体重、ウエストとヒップのサイズ、皮下脂肪や脂肪組織の厚み、体脂肪率、肥満や糖尿病に関する家族歴、及びHTの治療歴に関する個体情報及び臨床情報を集めるためのアンケートを包含する、請求項83に記載の試験キット。
【請求項88】
請求項46、47、60〜63及び75のいずれかの方法に基づく試験キット。
【請求項89】
表2〜5及び7〜11に示したHTリスク遺伝子内のSNPマーカーを含有する核酸断片を、対象生物の核酸から増幅するためのPCRプライマーのセットを包含する、請求項88に記載の試験キット。
【請求項90】
表2〜5及び7〜11に示したHTリスク遺伝子内の1種又は数種のSNPマーカーに特異的に結合する捕捉用核酸プローブのセットを包含する、請求項88に記載の試験キット。
【請求項91】
ジェノタイプを評価するためのマイクロアレイ又はマルチウエルプレートを包含する、請求項88に記載の試験キット。
【請求項92】
年齢、性別、身長、体重、ウエストとヒップのサイズ、皮下脂肪や脂肪組織の厚み、体脂肪率、肥満や糖尿病に関する家族歴、及びHTの治療歴に関する個体情報及び臨床情報を集めるためのアンケートを包含する、請求項88に記載の試験キット。
【請求項93】
個体の家系を評価するためのマーカーのセットを更に包含する、請求項76、83又は88に記載の試験キット。
【請求項94】
個体の家系を評価するためのSNPマーカーのセットを包含する、請求項93に記載の試験キット。
【請求項95】
個体の家系を評価するためのマイクロサテライトマーカーのセットを包含する、請求項93に記載の試験キット。
【請求項96】
個体の家系を評価するためのマーカーのセットを使用することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項97】
個体の家系を評価するためのSNPマーカーのセットを使用することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項98】
個体の家系を評価するためのマイクロサテライトマーカーのセットを使用することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項99】
1種又は数種のSNPマーカーが、以下の個々のSNPからなる群より選ばれることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
a)リスクアレル“A”を定義する、rs1860933 (AT) (配列番号1366);
b)リスクアレル“C”を定義する、rs4236780 (CG) (配列番号1367);
c)リスクアレル“C”を定義する、rs2000112 (CT) (配列番号660);
d)リスクアレル“A”を定義する、rs931850 (AG) (配列番号1303);
e)リスクアレル“G”を定義する、rs2192947 (AG) (配列番号728);
f)リスクアレル“A”を定義する、rs9328292 (AG) (配列番号1316);
g)リスクアレル“C”を定義する、rs1409367 (CT) (配列番号490);
h)リスクアレル“T”を定義する、rs1893814 (CT) (配列番号622);
i)リスクアレル“T”を定義する、rs2263356 (CT) (配列番号746);
j)リスクアレル“C”を定義する、rs6826647 (CT) (配列番号1368);及び
k)リスクアレル“C”を定義する、rs1913157 (CG) (配列番号630)。
【請求項100】
対象生物の高血圧薬治療に関する情報を対象生物の遺伝学的情報と組み合わせる工程を更に包含する、請求項99に記載の方法。
【請求項101】
1種又は数種のSNPマーカーが、以下の個々のSNPからなる群より選ばれることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
a)リスクアレル“C”を定義する、rs6826647 (CT) (配列番号1368);
b)リスクアレル“C”を定義する、rs1409367 (CT) (配列番号490);
c)リスクアレル“A”を定義する、rs9328292 (AG) (配列番号1316);
d)リスクアレル“T”を定義する、rs1395266 (CT) (配列番号476);
e)リスクアレル“T”を定義する、rs1893814 (CT) (配列番号622);
f)リスクアレル“A”を定義する、rs931850 (AG) (配列番号1303);
g)リスクアレル“A”を定義する、rs1860933 (AT) (配列番号1366);
h)リスクアレル“A”を定義する、rs1386483 (AG) (配列番号470);
i)リスクアレル“C”を定義する、rs4236780 (CG) (配列番号1367);
j)リスクアレル“C”を定義する、rs1913157 (CG) (配列番号630);
k)リスクアレル“T”を定義する、rs2263356 (CT) (配列番号746);及び
l)リスクアレル“C”を定義する、rs2000112 (CT) (配列番号660)。

【公表番号】特表2008−521392(P2008−521392A)
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−542026(P2007−542026)
【出願日】平成17年11月21日(2005.11.21)
【国際出願番号】PCT/FI2005/050429
【国際公開番号】WO2006/053955
【国際公開日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ウィンドウズ
【出願人】(502134580)
【Fターム(参考)】