説明

材料処理装置およびその応用

本発明では、材料を処理するのに用いることができる材料処理装置が開示される。本発明の材料処理装置は、円筒形状の処理部および駆動部を有して成る。処理部は、第1要素、および第1要素内に配置された第2要素を有して成る。第1要素と第2要素との間の隙間には、処理すべき材料が含まれる収容チャンバーが形成されている。駆動部によって第2要素が駆動されることによって、第2要素が第1要素に対して相対的に回転する。第2要素の収容チャンバー側の面は、第1要素の軸に対して平行な方向の力を生じさせることが可能な分散部が設けられている。かかる第2要素に起因して、本発明の装置では、収容チャンバーにおける材料保持時間を制御することができ、混合されないブラインド領域へと材料が供されるのを防止できるので、全ての材料を十分に処理することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料を処理するための装置およびその応用に関する。
【背景技術】
【0002】
食品産業および化学産業にとって、あるいは、抽出技術等にとって、材料の混合プロセスは非常に重要な工程である。混合プロセスによって、例えば以下のようなことが可能となる:
可溶性固形分、液体または気体を溶媒内に十分に混合させることができるので、均一な溶液を得ることができる。
不溶性固形粒子、気体または液体を一時的に溶媒内に分散させることができるので、懸濁液を得ることができる。
僅かに可溶性を有する液体を液滴として溶媒内に分散させることができるのでエマルションを得ることができる。
十分な混合により、反応原系同士の対流現象が促進されるので局所的な濃度差を減じることができる。
溶液内で対流を促進させて局所的な温度差を減じることができるので、熱放出を均一にすることができ、温度を一定に維持することができる。
現在、混合プロセスにおいて使用される方法が数多く存在している。
【0003】
最も直接的な混合は、容器内で材料を高速に攪拌する方法である。数多くの攪拌機(またはスターラー)が市販されている。最も一般的な攪拌法は、ある程度の長い時間、容器内に設けられた1つ以上の攪拌棒を迅速に作動させて液体を混合する方法である。例えば、長く攪拌を行うと、油と水との混合物は、適当なエマルション状態の液体となる。
【0004】
攪拌棒に対して十分なスペース(または空間)を確保するためには、容量の大きい容器が必要とされる。しかしながら、そのような大きい容器は、マイクロスケールで液体を混合するのに適していないだけでなく、気体と液体との混合にも適していない。更に、混合物が飛び散る(又ははじき飛ばされる)のでミキサーの速度(または攪拌速度)は制限されており、あまり速い速度にすることができない。複数の混合プロセスの自動化および効率化の程度は、各々の混合工程の後に洗浄が必要となるので低いといえる。また、混合に際してガスが発生する場合では、発生したガスを大きな容器で回収するのは好都合ではない。また、反応プロセスにおいて混合物の加熱または冷却が必要な場合では、かかる大きな容器内を均一に加熱または冷却するのは容易ではなく、反応が不均一となってしまう。それゆえ、容器内での材料混合に攪拌棒を使用する方法は、混合率が良いとはいえない。
【0005】
別の方法としては、ステーター(stator)と同軸になるようにステーターの円筒形状ホール内に配置された円筒形ローターを用いる方法がある。ステーターとローターとの2つの対向する円筒形面によって、狭い環状チャンバーが形成される。流体を環状チャンバー内に注入した後、ローターを高速に回転させると、スターターとローターとの相対的な運動によって流体に大きな剪断力がもたらされるので混合を行うことができる。回転速度が或る値に達すると、ローターの遠心力によって流体内にクエット流(Coutte)が形成される。クエット流が生じると混合効率が非常に高くなる(特に種々の非混和性流体に対する混合率が高い)。なぜなら、クエット流によって、非混和性流体が小さい粒状体へと分散されるので、流体間の接触面積が増大するからである。
【0006】
しかしながら、ローター面の回転速度が或る程度大きくなると、環状チャンバー内の流体が不安定化してテイラー渦(またはテイラー渦流)が発生することになる。個々のテイラー渦内では独立した微小な循環流れ(microcirculation)が形成され、その外側の他の渦の流体との物質交換は行われない。更に、各々の渦内の層の間における相対速度または全体的な速度は小さい。そのため、テイラー渦が発生すると混合効率が低くなる。テイラー渦は、ローターのシャフトの横断方向にて環状チャンバー内に挟まれるように存在するので、環状チャンバー内の流体の速度は低くなる。更に、テイラー渦は、多量のエネルギーを消費するので、エネルギー節約の点から好ましいものではない。
【0007】
上述のような問題を解決するために、環状チャンバーのサイズ、面特性およびローターの回転速度を相互に適当に調整してテイラー渦の発生を回避すると共にクエット流を発生させて流体の混合を行う方法が存在している。かかる方法は、米国特許第6471392号および同6742774号にそれぞれ開示されている。米国特許第6471392号および同6742774号では、以下の2つのファクターによってテイラー渦の発生を回避している:
環状チャンバー厚さがローターおよびステーターの表面における流体層全体の厚さ以下となっている(即ち、ローターとステーターとの隙間が、テイラー渦を回避すべく十分に小さくなっている)。
ローターおよびステーターの円筒形状面が、テイラー渦の発生を阻止すべく円滑になっている。
【0008】
しかしながら、テイラー渦理論に基づくと、回転速度、環状チャンバーの半径および流体粘度から求められるテイラー係数の値が臨界値を越えてしまうと、環状チャンバーの隙間がどのような厚さ(または大きさ)であれ、テイラー渦が生じることになる。例えば、流体特性および環状チャンバー・サイズが一定の場合、回転速度が十分に大きいと、テイラー渦が発生する可能性がある。それゆえ、米国特許第6471392号および同6742774号に基づいて製造された環状チャンバーでは、或る限定された回転速度および流体粘度においてのみクエット流を発生できるにすぎない。つまり、回転速度が或る値を上回り、流体粘度が或る値を下回ると、テイラー渦が発生してしまう。
【0009】
尚、流体粘度が臨界値未満の条件では、回転速度が臨界値を越えるような速度で環状チャンバーを運転しなければならず、テイラー渦の発生を回避することができない。つまり、「テイラー渦をもたらす回転速度の増加」と「混合効率」とが相反する結果となる。従って、既存の混合法の条件下では、「回転速度の増加」とテ「イラー渦発生回避」との間で妥協点を見つけなければならない。
【0010】
図1を参照して説明する。既存のローターが回転する場合、不完全な混合状態の流体が、重力の影響を受けて環状チャンバー底部の出口から流出することになり、混合率および反応率に悪影響がもたらされ得る。かかる流体の流出を防止するために、一般的には底部の出口にバルブを設ける。しかしながら、バルブと環状チャンバーとの間には、参照番号900で示すように「混合されないブラインド領域(または淀み領域,blind area)」が必然的に多少なりとも形成されてしまい、かかるブラインド領域では流体の十分な混合が行われないので無駄な流体が発生し、原料が無駄となってしまう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
それゆえ、従来技術の上記問題点を解決できるような新規な材料処理装置の提供が望まれている。
【0012】
本発明は、材料を十分に処理することができる材料処理装置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の目的を達成するため、本発明では、処理部(または「材料処理を行うように機能する部分」,working part)および駆動部を有して成る材料処理装置が提供される。かかる本発明の材料処理装置では、処理部が、第1要素、および第1要素内に配置された第2要素を有して成り、
第1要素と第2要素との間の隙間には、処理すべき材料が含まれる収容チャンバー(containing chamber)が形成されており、
駆動部によって第2要素が駆動されることによって、第2要素が第1要素に対して相対的に回転し、
第1要素または第2要素の収容チャンバー側の面(または表面)が非平滑(non-smooth)となっている。尚、材料の処理としては、混合、乳化、マイクロ乳化、重合、抽出、反応および調製ならびにそれらの組合せ等を挙げることができる。第2要素が第1要素に対して相対的に回転する際、第2要素の非平滑な面は第1要素に接触しないようになっている。
【0014】
ある態様では、第1要素および第2要素の双方の収容チャンバー側の面が非平滑となっている(又は滑らかになっていない)。
【0015】
ある態様では、第1要素の収容チャンバー側の非平滑な面が、第1要素の軸に対して平行な方向に軸力(axial force)を生じさせることが可能な分散部(または分配部, distributing part)を有して成る。
【0016】
ある態様では、第2要素の収容チャンバー側の非平滑な面が、第1要素の軸に対して平行な方向に軸力を生じさせることが可能な分散部を有している。
【0017】
従来技術と比べて、本発明の材料処理装置の非平滑な面または第2要素の分散部は、テイラー渦を分散させる機能を有している。その結果、混合効率を上げることができ、また、収容チャンバー内の流体の保持時間(または滞留時間)を制御することができ、更には、液体が「ブラインド領域」へと流れ込むことを防止して流体の全てを十分に混合することができる。従って、本発明の装置では材料の十分な混合を行うことができ、収容チャンバー内の材料の保持時間を制御することができ、全ての材料の混合または反応等を十分に行うことができる。
【0018】
ある態様では、第1要素15が静止した(または固定された)ステーターであり、第2要素16が高速で回転可能なローターである。ある態様では、第1要素15および第2要素16が円筒形状を有している。この場合、第1要素15は、その軸方向に沿うように円筒形状ホール(cylindrical hole)を有しており、第2要素16が第1要素15と同軸となるように第1要素15の円筒形状ホール内に配置されている。
【0019】
ある態様では、第1要素と第2要素との隙間に形成される収容チャンバーの少なくとも1つの寸法は、ミクロンオーダー(μmオーダー)となっている。例えば、収容チャンバー17の厚さ(または幅)は、数十ミクロン〜数千ミクロンのミクロンオーダーとなっている。より具体的には、収容チャンバー17の厚さ(または幅)は、50〜80ミクロン、80〜120ミクロン(例えば100ミクロン)、120〜130ミクロン、130〜200ミクロン(例えば200ミクロン)、200〜350ミクロン、約350ミクロン、約1000ミクロン、約2000ミクロン、約3000ミクロンなどに設定されている。収容チャンバー17の厚さが非常に小さくなっていると共に、第2要素16の収容チャンバー側の面が非平滑となっているにもかかわらず、第2要素16が第1要素15に対して相対的に回転する際、第2要素16と第1要素15が相互に接触しないようになっている。
【0020】
ある態様では、図3および図4に示すように、第2要素16の収容チャンバー17側の非平滑面が分散部160として構成されている。かかる分散部160は、微細加工、電食、フォトエッチング(もしくは写真食刻)などによって第2要素16の面に一体的に形成することができる。あるいは、電気メッキ、強力な接着剤などによって第2要素16の面に分散部160を取り付けることができる。分散部160は、その回転に際して第1要素の軸に対して平行な軸力を供することができるものであれば、いずれの形態であってもよい。しかしながら、分散部160がどのような形態であろうと、また、収容チャンバー17に対してどのように突出した形態を有していようとも、第2要素16が第1要素15に対して相対的に回転する際に第2要素16と第1要素15が相互に接触することはない。即ち、分散部160の配置がどのようなものであっても、分散部160は収容チャンバー17内に位置することになる。
【0021】
ある態様では、分散部160は、第2要素16の面にて凸形状を有していてもよいし、凹形状を有していてもよい。ある態様では、分散部160の凸部または凹部は、収容チャンバー17の平均厚さの約1%〜300%である。例えば、収容チャンバーの厚さが100ミクロンに設定される場合、第2要素160の半径方向において最も突出している箇所と最も凹んでいる箇所と間の長さが、約1〜300ミクロンである。ある態様では、分散部160の凸部または凹部は、収容チャンバー17の平均厚さの約5%〜100%である。また、ある態様では、分散部160の凸部または凹部は、収容チャンバー17の平均厚さの約10%〜30%である。尚、第2要素の面における分散部160の凸部および/または凹部の程度は、同じであってもよいし、あるいは、異なっていてもよい。
【0022】
ある態様では、第2要素15に設けられている分散部160は、第2要素15の面の50%未満を占めている。好ましい態様では、分散部160が第2要素15の面の10%〜40%未満を占めている。
【0023】
ある態様では、分散部160は、複数のドット(または点、dot)の配列、連続的なストライプ(もしくは連続的なストライプ模様もしくは連続的な縞模様、continuous stripes)または不連続なストライプ(もしくは不連続なストライプ模様、もしくは不連続な縞模様、discontinuous stripe)であり、あるいは、そのようなドットとストライプとの組合せである。ある態様では、分散部160は第2要素16の面に不規則に又は規則正しく設けられている。ある態様では、各ストライプの方向は、第2要素16の軸方向に対して垂直または平行でない限り、不規則であってよい。ある態様では、ストライプ状の分散部160が、第2要素16の底部から頂部まで連続的または不連続に設けられている。ある態様では、ストライプの間隔が、等間隔(equi-spaced)または非等間隔(unequi-spaced)となっており、ストライプが互いに交差していてもよい。ある態様では、特に制限するわけではないが、分散部160は図4に示すような連続的で等間隔なストライプを有して成る。
【0024】
ある態様では、分散部160の断面は、特に制限するわけではないが、三角形、台形、正方形、多角形、半円形、半楕円形またはそれらを組み合せたような形状を有している。図4には断面が三角形の分散部160が示されている。
【0025】
ある態様では、図4に示すように、分散部160は連続的なストライプを成している。第2要素16が回転する際、分散部160の連続的ストライプと第2要素16の面の接平面とが交差するポイント(または交点)が連続的に流れることになる。かかる交点の流れ方向は、対応するストライプのトレンド方向(または傾斜方向、trend direction)である。分散部160のトレンド方向は、その一般的な回転方向が第2要素16の回転方向と反対または同じである限り、不規則となり得る。全て又は大部分のストライプが同じトレンド方向となる場合、流体に対してトレンド方向に沿う衝撃力(impulse force)が加えられる。かかる衝撃力は、第1要素15の軸に平行な方向の力を成し得るので、流体が第2要素16の回転シャフトまたは軸方向に沿って流れることになる。分散部のトレンド方向は、第2要素16の回転方向に相当する。第2要素が回転する際、分散部の回転方向とトレンド方向との関係に応じて、分散部160が入口31および/または32に向かう方向へと力を生じるので、収容チャンバー17内の流体の保持時間を長くすることができる。尚、分散部は出口に向かう方向にも力を生じることができるので、その場合には、収容チャンバー17内の流体の保持時間を短くできる。
【0026】
ある態様では、図5および図6に示すように、第2要素16の断面は多角形または楕円形であってよい。この場合、第2要素が高速で回転すると、収容チャンバー17内の或る位置が回転に伴って変化することになる。従って、収容チャンバー17内の流体には不均一な力が加えられ、流体が十分に混合される。当然のことであるが、第2要素16の断面は、他の形状であってもよく、図5の楕円形または図6の多角形は例示にすぎない。
【0027】
ある態様では、図7に示すように、第2要素16の軸と第1要素15の軸とがずれていてもよい(または非同軸であってもよい)。この場合、収容チャンバー17内の流体には不均一な力が加えられ、流体が十分に混合される。
【0028】
ある態様では、第1要素と第2要素との位置関係を入れ替えてもよい。即ち、第2要素16が静止した(または固定された)ステーターであり、第1要素15が高速で回転できるローターであってよい。ある態様では、第1要素15と第2要素16とが相対的に反対方向に回転する回転要素であってもよい(この場合、回転速度は互いに異なっていてもよい)。第1要素15と第2要素16との間に流体のための収容チャンバー17が形成される限り、第1要素15および第2要素16はいずれの形状を有していてもよく、相互に接近した形態でもよい(例えば相互に接近したパッチなどの形状であってよい)。ある態様では、第1要素15および/または第2要素16に分散部が設けられ得る。
【0029】
ある態様では、第1要素の内面(即ち、第1要素の収容チャンバー側の面)に第1分散部が設けられ、第2要素の外側(即ち、第2要素の収容チャンバー側の面)に第2分散部が設けられる。ある態様では、第1要素に設けられた第1分散部と、第2要素に設けられた第2分散部とが同じトレンド方向を成している。あるいは、第1要素に設けられた第1分散部は、第2要素に設けられた第2分散部とは逆または反対のトレンド方向を有している。
【0030】
ある態様では、収容チャンバー17の頂部には、材料を収容チャンバー17内に供するための入口が2つ(30,31)設けられている一方、収容チャンバー17の底部には出口18が設けられている。必要に応じて、入口30,31および出口18は他の位置に設けてよい。尚、入口30,31および出口18は収容チャンバー17と連通状態となっている。入口30,31および出口18は、収容チャンバー17内に材料を供給した後、かかる収容チャンバー17から材料を排出できるものであれば、いずれの要素であってよく、例えばパイプまたはバルブである。ある態様では、入口30,31および出口18は、同じ要素もしくはデバイスであってよく、あるいは、相互に異なる要素もしくはデバイスであってもよい。
【0031】
ある態様において、処理すべき材料が混合流体である場合、本発明の処理装置に設ける入口は1つであってよい。また、ある態様において、処理(混合および/または反応)すべき材料が複数である場合、本発明の処理装置に複数の入口を設けてもよい。更に、ある態様において、反応時に必要とされる材料を供するために、予め複数の入口を設けておいてもよい。
【0032】
処理される材料は、入口30および31を介して環状収容チャンバー17内に供給される。そして、高剪断力、大きい遠心力および軸力などの作用を第2要素16から受けることになるので、供給された材料の迅速かつ均一な混合が達成される。材料同士が反応する場合、材料の十分な混合により十分な反応を達成することができる。
【0033】
本発明の装置において、収容チャンバー17内の流体の流れ状態は、層流であっても、乱流であってもよい。第2要素16の高速回転によって生じる力によって、層流状態の流体は複数の流体薄層物(lamella)へと分けられることになる。環状収容チャンバーの半径方向では、流体薄層物の流速が相互に異なるので、流体薄層物が相互に迅速に緊密な状態となり、迅速に拡散する。これによって、流体の十分な混合が行われる。テイラー・クエット流の理論に基づくと、次のことが言える。あるサイズの処理部を製作した後に、かかる処理部に応じて収容チャンバー17のギャップ幅が決められる。ローターの種々の回転速度の条件下、種々の粘度の流体について、クエット流れが生じるか、あるいはテイラー渦が生じるかは、テイラー係数に依存している。ローターの回転が低速の場合、流体は収容チャンバー17内を層流状態で流れることになり、かかる条件では混合効率が比較的良いものの、低い回転速度に起因して、供給される流体の流速を大きくすることができない。仮に、供給される流体の流速を大きくすると、流体が収容チャンバー17内をその軸方向に迅速に流れ去ることになり、高い混合効率を得ることができない。好ましい混合効率および大きい流速の条件で流体を混合するには、ローターの回転速度を上げる必要があるが、ローターの回転速度を上げてしまうと、テイラー渦が生じてしまい混合効率が低下してしまう。本発明の処理装置では、上述したように、第2要素16に設けられた分散部160に起因した軸力が生じる。その結果、第2要素16の軸方向において、垂直方向に配列されたテイラー渦が乱さると共に、テイラー渦によって形成された「閉鎖形態の流体セル」が破壊されることになる。それゆえ、渦の内側と外側とで流体の物質交換が相互に交換されることになり、混合効率が向上する。また、分散部160によって、各渦内の独立したマイクロ循環(microcirculation)が乱されるので、かかるマイクロ循環内の流体の攪拌および混合が促進される。このように、第2要素に分散部160が存在することによって、本発明の処理装置の混合効率は、供給流速および回転速度の影響を受けないようになっている。また、本発明の処理装置を流れる混合流体の粒子は非常に小さく、その半径はナノメーター・オーダーである。従って、混合効率および/または反応効率は大きく向上することになる。
【0034】
テイラー渦を乱し、混合効率を向上させることに加えて、分散部160は、収容チャンバー17内の流体の保持時間を制御する機能も有している。分散部160のトレンド方向は、第2要素16の回転方向と逆方向または反対方向であってよいが、この場合、第2要素16が高速に回転すると、第2要素16によって上方向の軸力がもたらされるので、収容チャンバー17内の流体の降下が抑制される。この結果、全ての流体が収容チャンバー17内に制限されることになり、混合および反応に必要な時間が十分に確保されると共に、流体が「ブラインド領域」へと流れ込むことが防止され収容チャンバー17内の全ての液体が十分な混合および/または反応に付されることになる。混合および/または反応が行われた後では、収容チャンバー17の上部に圧力を加えることによって、または、第2要素16を反対方向に回転させることによって(即ち、分散部160のトレンド方向と第2要素16の回転方向とを同じにすることによって)、流体を下降させて出口18から排出させることができる。尚、分散部160のトレンド方向と第2要素16の回転方向とを同じにすると、上方向の軸力が分散部160によってもたらされ、収容チャンバー17内の流体の出口18方向下方への移動が促進される。
【0035】
同様の理論により、処理部を逆に配置しなければならない場合であっても、分散部160は上述したような機能を有している。
【0036】
分散部160による軸力によって、流れ状態をある程度制御することができる。かかる制御として、制限するわけではないが、処理部内の流体の保持時間の制御、処理部からの流体の排出(または流出)の促進、処理部から排出される流体の流速の変更、または、処理部に供給された材料の滞留時間の増減を挙げることができる。
【0037】
ある態様において、本発明の処理装置は、第2要素16に連結された相互接続部13およびシャフトブロック11を更に有して成る。具体的には、第2要素16は、相互接続部13を介して駆動部12のシャフトと接続されている。第2要素16は、シャフトブロック11を通過しており、第1要素15と共に、環状収容チャンバー17を形成している。
【0038】
ある態様では、本発明の処理装置は、駆動部12と第2要素16とを相互に接続する相互接続部13を有し得、それによって、駆動部12が第2要素16を回転させることができる。駆動部13は、第2要素16の駆動に必要なエネルギーを供することができる電気モーターまたは他のデバイスであり得る。第2要素16の最大回転速度は、駆動部12のパワーおよびトルク(モーメント力)によって決められる。通常、パワーおよびトルク(モーメント力)が最大になると、回転速度が最大になる。ある態様では、第2要素16の最大回転速度は、10350rpmである。種々の流体の種々の特性に応じて回転速度を適切に又はより大きく選択することができ、それによって、現実に必要とされる混合効率および/もしくは反応効率、あるいは、より好ましい混合効率および/もしくは反応効率を達成することができる。第2要素16の回転速度が3000rpm以上(例えば3000rpm、5000rpm、6000rpm、8000rpm、9000rpmなど)の場合、生成物の粒子半径が、マイクロメーターまたはナノメーターとなり得る。必要に応じて適切な駆動部12を選択することによって、回転速度をより速くすることができる。処理部の温度は、−150℃〜300℃(例えば、−150℃〜50℃、−50℃〜100℃、20℃〜250℃、150℃〜300℃など)に設定することができる。
【0039】
ある態様において、本発明の処理装置は、少なくとも1つの第1温度制御部14を更に有して成る。かかる第1温度制御部14は、収容チャンバー14の周囲の一部又は周囲全体に設けてよく、あるいは、処理部の他の場所に設けてもよい。第1温度制御部14は、例えばバルブまたはパイプなどの開口部32,33を備えている。かかる開口部32,33を介して、第1温度制御部14内を流体で満たすことができ、それによって、処理部の温度を迅速に変えることができる。ある態様では、混合反応に起因して発熱または吸熱が生じる。従って、開口部32を介して処理部の第1温度制御部14内へと流体を供給し、かかる流体が熱を放出または吸収する熱交換を経た後に、開口部33を介して処理部の第1温度制御部14から流体を排出させるように流体循環を行う必要がある。第2要素16が高速に回転する場合、剪断摩擦力に起因して、収容チャンバー17内の流体には多量の熱が発生する。かかる熱が混合効率に悪影響を与えないように、第1温度制御部14に低温流体を循環させる。つまり、開口部32を介して第1温度制御部14内へと低温流体を供給し、かかる流体と収容チャンバー17との熱交換を行った後、開口部33を介して第1温度制御部14から流体を排出する。尚、収容チャンバー17内で行われる化学反応が熱を必要とする場合(摩擦に起因した熱で不十分な場合)では、収容チャンバー17を加熱すべく高温流体を第1温度制御部14に循環させる。収容チャンバー17および第1要素の壁は非常に薄いので、ある温度の循環流体と混合反応プロセスの流体との熱交換が迅速に行われることになり、混合反応プロセスの流体の温度と循環流体の温度とが略等しくなる。更に、収容チャンバー17は非常に狭く、そのチャンバー内の流体が容易に均一化できるので、反応を均一に行うのに適している。第1温度制御部14を用いることによって、収容チャンバー17内の温度を設定でき、また、かかる温度を一定にすることができるので、ある混合反応で必要とされる特殊な温度条件も満たすことができる。
【0040】
ある態様では、本発明の処理装置は、少なくとも1つの第2温度制御部を更に有して成り得る。かかる第2温度制御部は、シャフトブロック11に設けられる。第2温度制御部は、例えばバルブまたはパイプなどの開口部34,35を備えている。第2温度制御部の開口部34,35を介して、シャフトブロック11をシャフトベアリング・オイル(軸受油)または水などの流体で満たすことができ、それによって、シャフトブロック11の温度を迅速に変えることができる。ある態様において、第2要素16が高速に回転すると、シャフトブロック11内のシャフトベアリング(軸受)が加熱される。従って、熱を除去してシャフトベアリングを潤滑にすべく、開口部34からシャフトベアリングオイルまたは水などの流体をシャフトブロック11内に供給した後、開口部35を介してかかる流体を排出させる。ある態様では、シャフトブロック11内にて延在する第2要素の上部に起因して、第2温度制御部によって第2要素16の温度を付加的に制御することができる。収容チャンバー17の選択された温度に応じて、第2温度制御部の温度を適切に設定することができ、それによって、第2要素16の上部の温度と、収容チャンバー17内の第2要素底部温度とを同じにすることができる。このようにして、第2要素16の上部と底部との温度差に起因する熱交換であって、収容チャンバー17に熱損失または過剰熱を引き起こす熱交換が防止される。
【0041】
ある態様では、本発明の処理装置は、少なくとも1つの第3温度制御部を更に有して成り得る。かかる第2温度制御部は駆動部12に設けられる。第3温度制御部は、例えばバルブまたはパイプなどの開口部36,37を備えている。第3温度制御部の開口部36,37を介して駆動部12を流体で満たすことができ、それによって、駆動部12の温度を迅速に変えることができる。駆動部12から熱を除去すべく、開口部36から流体を駆動部12内に供給した後、開口部37を介して流体を排出させる。例えば、駆動部12が高速に回転すると大量の熱が発生するので、駆動部12の温度を下げるべく水冷却システムが用いられる。
【0042】
ある態様では、本発明の処理装置は、支持デバイスを介して作業台(workbench)に設けてもよい。設置態様として、本発明の処理装置を垂直または水平に設けてもよく、作業台の角度はいずれの角度でもよい。支持デバイスは、基礎部9(または土台9)および支持フレーム10を有して成る。基礎部9が作業台の上に設けられる。支持フレーム10は、駆動部12および処理部を基礎部9に固定するのに用いられる。
【0043】
ある態様では、本発明の処理装置に用いられる要素または部品は、同じ材料または異なる材料から形成されていてもよい。処理される材料の特性、生成物の特性、混合条件および/または反応条件、コストならびに他のファクターに応じて、本発明の処理装置の要素を、鋳鉄、ステンレス、合金、アルミニウムまたは他の金属材料から形成してよい。また、本発明の処理装置の要素を、プラスチック、ガラス、石英ガラスまたは他の有機材料から形成してもよい。更には、本発明の処理装置の要素を、セラミック材料または無機材料から形成してもよい。具体的にいうと、本発明の処理装置で腐食性の高い材料が処理できるように、例えば、第1要素15および第2要素16がステンレスから形成される。
【0044】
本発明は、上述した本発明の処理装置の応用にも関している。即ち、処理装置の他に、本発明は、材料を処理する方法にも関している。かかる方法は、
少なくとも2種類の材料を用意する工程、
収容チャンバーを供する工程、および
材料を処理すべく収容チャンバーに材料を供給する工程
を含んで成る。ここで、収容チャンバーは、第1要素および第1要素内に配置された第2要素から形成されており、第2要素が外力の作用で第1要素に対して相対的に回転することができるようになっている。第1要素または第2要素の収容チャンバー側の面は非平滑となっている。
【0045】
更に、本発明の材料処置装置の応用には、材料の均一化、分散、乳化、マイクロ乳化、抽出、反応および調製が含まれる。ある態様では、更に、生成物を分析する工程が含まれる。以下では、本発明をより詳細に説明するが、本発明を制限する意図はないことに留意されたい。
【0046】
1.2種類以上の液体の迅速な混合、均一化および分散
本発明の装置は、2種類以上の液体の迅速な混合、均一化および分散に使用することができる。用いられる液体としては、ポリマー、コーティング剤、顔料、染料、インク、塗料、接着剤、潤滑油、接着剤、界面活性剤、乳化剤、グリセリン、ガソリン、原油、ディーゼル油、重油、水、有機溶剤、イオン性液体、パラフィン油、食料品または飼料などを挙げることができる。流体は、通常は溶液形態であるものの、エマルション、マイクロエマルション、コロイドまたは他の液体形態であってよい。尚、処理される有機混合材料が固体形態である場合では、かかる固体を溶媒に溶解させたり、固体を加熱して溶融させたりしたうえで用いてよい。
【0047】
更に、処理された材料(または試料もしくはサンプル)を分析する手法は、光学顕微鏡画像分析(OM)、走査電子顕微鏡画像分析(SEM)、原子間力顕微鏡画像分析(AFM)および透過電子顕微鏡画像分析(TEM)から選択される少なくとも1種類以上の分析である。一般的に、これらの分析手法は、混合物の均一性および分散度の測定、ならびに混合物中の液滴または粒子のサイズの測定に用いられる。
【0048】
混合、均一化および分散は、混合物の質を評価する上で重要なファクターであるのみならず、処理システムの混合性能を評価する上で主要なパラメーターとなる。ある場合、2種類以上の材料の均一な混合および分散によって、材料の物理的性質が大きく向上する。例えば、密度、分子量、粘度、pH値などが変化する。それゆえ、本発明の混合プロセス、均一化プロセスおよび分散プロセスは、より広範な混合プロセスに適用することができる。例えば、無機物質と無機物質との混合/均一化/分散、有機物質と有機物質との混合/均一化/分散、有機物質と無機物質との混合/均一化/分散、粘度の低い物質と粘度の低い物質との混合/均一化/分散、中程度の粘度を有する物質と中程度の粘度を有する物質との混合/均一化/分散、粘度の高い物質と粘度の高い物質との混合/均一化/分散、粘度の異なる物質間の混合/均一化/分散に適用できる。有機物質または無機物質の溶液形態であってよい。あるいは、有機物質または無機物質の形態は、エマルション、マイクロエマルション、コロイドもしくは他の液体形態であってよい。混合される出発物質が固体である場合には、かかる固体を溶媒に溶解させたり、固体を加熱して溶融させたりしたうえで用いてよい。本発明の均一化および分散は、異なる液相混合物系に特に適している。
【0049】
2.液体の乳化
通常の相乳化、即ち、O/W乳化プロセス(水中に油が存在する乳化プロセス)によってエマルションを調製することができる。また、転相乳化、即ち、W/O乳化プロセス(油中に水が存在する乳化プロセス)によってもエマルションを調製することができる。更には、三相乳化(例えば、油溶媒/乳化剤/水乳化プロセス)および四相乳化(例えば、油溶媒/乳化剤/共乳化剤/水プロセス)によって、エマルションを調製することができる。
【0050】
乳化系のオイル溶媒は、通常C〜CアルカンまたはC〜Cシクロアルカンである。一般的な乳化剤は、イオン性界面活性剤または非イオン性界面活性剤を含んで成る。典型的なカチオン性界面活性剤としては、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム(DTAC)、塩化ジオクトデシルアンモニウム(DODMAC)および臭化セチルピリジニウム(CPB)等を挙げることができる。また、アニオン性界面活性剤としては、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ジ(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム(AOT)ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDBS)およびドデシルポリオキシエチレンエーテル硫酸ナトリウム(AES)等を主に挙げることができる。非イオン性界面活性剤としては、ポリビニルアルコール、ドデカノイルエタノールアミン、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテルおよびアルキルフェノールポリオキシエチレンエーテル等を主に挙げることができる(例えば、TX−6、AEO、AEO、AEO、AEO12、トリトンX−100、Span系およびTween系など)。尚、上述した界面活性剤は、単独で用いてもよいし、あるいは、それらの2種類以上を組み合わせて用いてもよい。一般的な共乳化剤としては、n−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール、n−ヘプタノール、n−オクタノール、n−デカノール、n−ドデカノールおよび他の脂肪アルコールを挙げることができる。
【0051】
本発明の装置による乳化は幅広く種々の製造に対して適用できる。例えば、牛乳、クリーム、アイスクリームおよび他の食材; バニシングクリーム、洗顔乳液および他の化粧品;ならびに、エマルションペイント、金属機械用液体、繊維補助剤およびエマルション(重油、ディーゼル油およびガソリンなどの分野で用いられるエマルション)などを製造できるだけでなく、触媒、接着剤、印刷インク、コーティング、染料、顔料、セラミック染料、磁性材料、液晶材料、ポリマーおよび他の無機化合物および有機化合物を製造できる。
【0052】
尚、上述した乳化プロセスから得られるエマルションの分析は、OM、SEM、AFMまたはTEMなどの手法によって行うことができる。かかる分析手法は、エマルションの均一性および分散度、ならびにエマルション中の液滴または粒子のサイズを測定するのに一般に用いられる。
【0053】
本発明の装置を用いた乳化プロセスの技術的な効果としては、エマルション粒子(粒子サイズは1μm未満)の均一性および分散度が高いことであり、エマルションが変色または分離することなく数週間安定に存在することである。
【0054】
3.マイクロエマルションへの適用
本発明の装置を用いたマイクロエマルション調製法は、マイクロ分散系だけでなく、マイクロ反応系に対しても適している。マイクロエマルション系の生成プロセスでは、それぞれ異なる量の2種類の非混和性液体またはマイクロエマルションが材料処理装置に供給されることになり、大きい剪断力および大きい遠心力が作用して、得られる混合物において無数の微小液滴が乳化剤に囲まれて存在することになる。これにより、液体中への分散が均一になり、マイクロエマルション系が形成される。高い脂向性および液滴表面の表面張力に起因して、マイクロエマルション系中の液滴同士の結合は容易に起こらない。マイクロエマルション系中の溶媒が蒸発した後に得られる、液滴中のナノメーター固体粒子は、水相中に均一に分散することができ、凝集または沈殿することなく一定に維持される。
【0055】
マイクロエマルション系の生成プロセスでは、ある液体またはマイクロエマルションと別の液体またはマイクロエマルションとが個々に高剪断力ミキサーに注入され、高い剪断力および高い遠心力を受けることになるので、無数の微小液滴が形成される。かかる液滴は、「マイクロリアクター」とみなすことができ、或る条件(例えば、照射、温度などの条件)の下で化学反応(例えば、重合、レドックス反応(酸化還元反応)、加水分解反応、錯体反応など)を迅速に行うことができる。マイクロリアクターとして機能するマイクロエマルションの液滴を用いて反応生成物の成長を制御することによって、種々のナノメーター材料を製造することができる。
【0056】
通常のマイクロ相乳化プロセス(即ち、O/Wマイクロ乳化プロセス)によってマイクロエマルションを調製することができる。また、マイクロ転相乳化プロセス(即ち、W/Oマイクロ乳化プロセス)によってもマイクロエマルションを調製することができる。更には、三相マイクロ乳化プロセス(例えば、油溶媒/乳化剤/水)および四相マイクロ乳化プロセス(例えば、油溶媒/乳化剤/共乳化剤/水)によって、マイクロエマルションを調製することができる。
【0057】
マイクロエマルション系のオイル溶媒は、通常C〜CアルカンまたはC〜Cシクロアルカンである。常套の乳化剤はイオン性界面活性剤および非イオン性界面活性剤を含んで成る。典型的なカチオン性界面活性剤としては、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム(DTAC)、塩化ジオクトデシルアンモニウム(DODMAC)および臭化セチルピリジニウム(CPB)等を挙げることができる。また、アニオン性界面活性剤としては、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ジ(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム(AOT)ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDBS)およびドデシルポリオキシエチレンエーテル硫酸ナトリウム(AES)等を主に挙げることができる。非イオン性界面活性剤としては、ポリビニルアルコール、ドデカノイルエタノールアミン、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテルおよびアルキルフェノールポリオキシエチレンエーテル等を主に挙げることができる(例えば、TX−6、AEO、AEO、AEO、AEO12、トリトンX−100、Span系およびTween系など)。尚、上述した界面活性剤は、単独で用いてもよいし、あるいは、それらの2種類以上を組み合わせて用いてもよい。一般的な共乳化剤としては、n−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール、n−ヘプタノール、n−オクタノール、n−デカノール、n−ドデカノールおよび他の脂肪アルコールを挙げることができる。
【0058】
本発明の装置によるマイクロ乳化は幅広く種々の調製に適用できる。例えば、種々の触媒、染料、顔料、セラミック染料、半導体、超電導体、磁性材料、液晶材料、ポリマー、他のナノメーター粒子(例えば、金属元素、合金、酸化物、硫化物などから成る粒子)、他の無機化合物およびナノメーター有機ポリマーを製造することができる。また、本発明の装置を用いたマイクロ乳化による調製では、自己集合したナノメーター粒子、ナノメーター粉末結晶、ナノメーターの非結晶粉末を得ることができる。このようなナノメーター粉末は、粒径範囲が狭く、粒子径が非常に小さいものであり、例えば、100nm未満となるように容易に制御することができる。
【0059】
また、マイクロ乳化による調製は、種々の無機ナノメーター材料または有機ナノメーター材料を製造するのに幅広く用いることができる。
【0060】
更に、本発明の装置におけるマイクロ乳化法で得られるマイクロエマルションの分析は、光学顕微鏡画像分析(OM)、走査電子顕微鏡画像分析(SEM)、原子間力顕微鏡画像分析(AFM)、透過電子顕微鏡画像分析(TEM)またはX線回折分析(XRD)によって行うことができる。これらの分析手法は、一般的に、マイクロエマルションの形成、液滴または粒子の均一性および分散度、ならびに、粒子サイズを測定するのに用いられる。
【0061】
本発明の装置を用いたマイクロ乳化プロセスの技術的な効果としては、次のとおりである:
・マイクロエマルションが好ましい透明性を有している
・粒子の均一性および分散度が高い
・粒子サイズが100nmである
・固形分含量が多い
・マイクロエマルションが変色または分離することなく長期間安定に存在する
【0062】
4.物質抽出への適用
本発明の抽出は、溶剤抽出だけでなく、錯体抽出にも適用することができる。また、本発明の抽出は、抽出剤または抽出相としてイオン性液体を用いた抽出にも適用することができる。
【0063】
溶剤抽出では、抽出相の抽出成分の溶解特性の違いに基づいて抽出および分離が行われる。常套の抽出相は、有機溶剤または水を主に含んで成る。本発明の溶剤抽出および分離は、幅広く適用することができ、例えば、無機化学、分析化学、放射線化学、核種の抽出および再利用に用いることができ、その他の分野にも用いることができる。
【0064】
錯体抽出は、次の工程を含んでいる。
・抽出成分と、錯化剤を含んだ抽出剤を接触させる工程
・錯化剤と抽出成分とを反応させて錯体を形成する工程
・錯体を抽出相に移動させる工程
溶質は逆反応によりリサイクルされ、抽出剤が再利用されることになる。溶剤抽出法と比較して、錯体抽出法は以下の2つの明確な利点を有している:
(a)低い溶質濃度の条件下でも高い分散係数が得られる。それゆえ、低濃度の条件でも極性有機物質を完全に分離することができる。
(b)溶質分離は錯体反応に依存するので、選択性が高い。
【0065】
本発明の錯体抽出では極性有機物質の抽出および分離を行うことができる。例えば、有機カルボン酸化合物、有機スルホン酸化合物、有機アミン化合物、有機硫黄化合物、および両性官能基を含んだ有機化合物の抽出および分離を行うことができる。この場合、錯化剤、共溶媒、希釈剤(およびそれらの異なる形態から成る組成物)を適切に選択することが重要となる。
【0066】
錯化剤は、少なくとも以下の要件を満たす必要がある:
(a)対応する官能基を有しており、かかる官能基と分離すべき溶質との結合エネルギーが所定量となっている。これにより、錯体化合物が容易に形成され、相間移動を行うことができる。
(b)結合エネルギーがあまり高くないこと。これにより、錯体化合物を第2工程にて容易に逆反応に付すことができ、錯化剤が容易に再生される。
(c)錯化反応および溶質分離のプロセスにおいて、錯化剤の水抽出量ができるだけ少ないか、あるいは、錯化剤によって水が溶剤から容易に除去されること。
(d)不可逆的損失を回避するために、錯体抽出において他の副反応がなく、錯化剤が熱的に安定しており、容易に分解および劣化しないこと。
【0067】
共溶媒および希釈剤は次の要件を満たす必要がある:
(a)錯化剤にとって好ましい溶剤となるように、溶剤が錯体化合物の形成を促進させ、相間移動を促進させること。
(b)液−液抽出が容易に達成できるように、粘度、密度を調整でき、また、抽出剤と混合された際の界面張力を調整できること。
(c)加えられる希釈剤によって水の抽出量を減じることができること。
【0068】
有機溶剤を用いた抽出法と比較して、イオン性液体を抽出相または抽出剤として用いる抽出法は、低い揮発度、不燃性、熱安定性および再使用性の点で特異な利点を有している。かかる利点によって、有機溶剤を使用する上で避けて通れない環境汚染が生じることがない。抽出相または抽出剤としてイオン性液体を用いる抽出法は、原油からの有機物質の抽出および廃水からの有機物質または金属イオンの抽出に適している。イオン性液体によって原油または水から有機物質を抽出するにあたっては、イオン性液体およびその組成を適切に選択することが重要となる。
【0069】
抽出される有機物質としては、油または廃水に存在する芳香族炭化水素、芳香族炭化水素の誘導体、有機カルボン酸化合物、有機スルホン酸化合物、有機硫黄化合物および有機アミン化合物を主に挙げることができる。関連する重金属としては、Ni2+、Cu2+、Ag、Au2+、Hg2+、Pt2+、Pb2+、Cr3+、Cd2+、Mn2+などの重金属イオンを挙げることができる。
【0070】
本発明のイオン性液体は、少なくとも以下の要件を満たす必要がある:
(a)常温で液体であって、空気中で安定性を有している。
(b)原油または水に対してできる限り低い溶解性を有している。これにより、クロスコンタミネーションが減じられる。
アニオンおよびカチオンを適切に選択することによって、また、種々の混合されたイオン液体を適切に選択することによって、イオン性液体の融点、安定性、溶解度および抽出効率を調整することができる。
【0071】
本発明における抽出物の分析としては、OM、SEM、AFM、TEM、FTIR、NMRおよびCEから成る群から選択される少なくとも1種類の分析が挙げられる。かかる分析は、均一性、分散度、液滴サイズ、抽出効率および抽出液体の他の性質を測定するのに一般的に使用される。
【0072】
本発明の装置で材料抽出を行う利点としては以下の事項を挙げることができる:
・均一性が高い
・液滴の分散度が高い
・液滴サイズがミクロンオーダーである
・時間をかければ、抽出液体を自然に分離できる
・抽出効率が高い
【0073】
5.物質反応への適用
本発明の装置の物質反応への適用として、気相反応系、液相反応系、気相−液相反応系、特に不均一相反応系を挙げることができる。更に、制限するわけではないが、反応としては、液−液反応、重合、酸化−脱硫反応などを挙げることができる。
【0074】
5.1 液−液反応への適用
液−液反応への適用において、液体は純粋な液体であってもよし、数種類の液体から成る混合物であってもよい(かかる混合物は予め混合または調製されていてもよい)。気相−液相反応系は、圧力制御バルブを介して圧力容器から供される少なくとも1種類の物質が気体である(かかる気体はミキサーの出口から排出されることになる)。
【0075】
液−液反応としては、加水分解反応、複分解反応、中和反応、イオン交換反応、レドックス反応、錯体生成反応(錯体化反応)、複合反応、キレート化反応、ハロゲン化反応、ニトロ化反応、シアネート化反応、エポキシ化反応、ジアゾ反応、アルキル化反応、エステル化反応、縮合反応、フリーデル−クラフト反応および重合を挙げることができる。気体−液体反応法では、気体が液体中に迅速に溶解するので、気体および液体の2種類以上の物質が相互に高速に反応することになる(場合によっては、従来技術で用いられている触媒および/または界面活性剤がなくても高速に反応する)。それゆえ、経済的に実施可能な反応速度を得ることができる。
【0076】
5.2 重合への適用
【0077】
本発明の装置は、アニオン重合のための活性流体を混合するのに適している。尚、かかる活性流体の少なくとも1つは、少なくとも1種類の(メタ)アクリル酸モノマーを含んでいる。
【0078】
(メタ)アクリル酸モノマーとしては、アクリル酸無水物、メタアクリル酸無水物、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸エチルヘキシル、アクリル酸ノニル、アクリル酸2−ジメチルアミノエチルを挙げることができる。
【0079】
本発明の液−液反応または気−液反応への適用としては、アルケンポリマーと有機モノマー含有開始剤とのグラフト反応が適当であり、その場合、少なくとも1種類の有機モノマーが、窒素、硫黄または酸素を含んだビニル化不飽和ヘテロ環モノマーである。
【0080】
アルケンポリマーとしては、ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ブタジエンゴム、ポリイソプレン、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体、ポリメタクリレート、ポリスチレン、ブダジエン−スチレン共重合体などを特に挙げることができる。
【0081】
窒素、硫黄または酸素を含んだビニル化不飽和ヘテロ環モノマーとしては、N−ビニルイミダゾール、1−ビニル−ピロリジン、C−ビニルイミダゾール、N−アルキルイミダゾール、1−ビニルピロリジン、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、N−メチル−N−ビニルアセトアミド、ジアリルホルムアミド、N−メチル−N−アリルホルムアミド、N−エチル−N−アリルホルムアミド、N−シクロヘキシル−N−アリルホルムアミド、4−メチル−5−エチルチアゾール、N−アリル−2−イソオクチルベンゾチアジン、2−メチル−1−ビニルイミダゾール、3−メチル−1−ビニルイミダゾール、N−ビニルピペラジン、N−ビニルスクシンイミド、ビニルピリジン、ビニルモルホリン、マレイン酸、アクリル酸、無水マレイン酸などを特に挙げることができる。
【0082】
開始剤としては、過酸化ジ−t−ブチル、過酸化ジクミル、過酸化−t−ブチルクミル、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−アミルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、過酸化ベンゾイル、t−ブチルモノペルオキシフタレート、過酸化水素、クメンヒドロペルオキシド、t−アミルパーオキシドなどが好ましい。
【0083】
グラフト重合では、迅速な反応および好ましい生成物性質を得るために、混合比、流速、混合温度、回転速度および他の実験パラメーターをシステム・ソフトウエアを介して調整してもよい。
【0084】
尚、グラフト重合は、本発明のミキサーの外側で行うこともできる。あるいは、グラフト重合を本発明のミキサーで開始させ、その後、グラフト重合をミキサーの外側で行ってもよい。
【0085】
本発明に関連する気−液反応は、ガス脱硫法に好適である。特に、少なくとも1種類のアルコールアミン化合物または水酸化物を含んだアルカリ性液体を用いて、酸性ガスとアルカリ液体との混合反応に適している。
【0086】
アルコールアミン化合物としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−プロピルジエタノールアミン、N−ブチルジエタノールアミンおよび他のアルカリ溶液が好ましい。より満足のいく脱硫効率が得られるように、アルコールアミン化合物と他の脱硫溶媒(例えばスルホラン)とを種々の体積比で混合してもよい。
【0087】
水酸化物としては、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化カルシウム(CaOH)、水酸化アンモニウムおよび他のアルカリ溶液が好ましい。
【0088】
気体としては、硫化水素、有機硫黄(チオール)、二酸化炭素などの不純物を含んだ天然ガス、精油所ガス、排ガス、合成ガスなどが好ましい。
【0089】
ガス脱硫反応プロセスで、迅速な脱硫反応および最適な脱硫効率を得るために、混合比、流速、混合温度、回転速度および他の実験パラメーターをシステム・ソフトウエアを介して調整してもよい。
【0090】
ガス脱硫反応は、本発明のミキサーの外側で行うこともできる。あるいは、ガス脱硫反応を本発明のミキサーで開始させ、その後、ガス脱硫反応をミキサーの外側で行ってもよい。
【0091】
本発明のガス脱硫法は、いずれの気−液反応にも適している。
【0092】
更に、本発明の液−液反応の適用は、ガス脱硫法に好適である。特に、酸性ガスとアルカリ液体(少なくとも1つのアルカリ液体が、少なくとも1種類のアルコールアミン化合物または水酸化物を含んでいる)との混合反応に適している。
【0093】
5.4 液相脱硫への適用
液相脱硫は、酸性媒体にオキシダント(または酸化体)を含んだ活性流体(少なくとも1つの活性流体が少なくとも1種類の硫黄含有化合物を含んでいる)のレドックス反応に適している。
【0094】
硫黄含有化合物としては、ジアルキル置換硫化物(またはジアルキル置換された硫化物)、ジアルキル置換チオフェン(ジアルキル置換されたチオフェン)、ジアルキル置換チオフェン誘導体(ジアルキル置換されたチオフェン誘導体)、アルキル置換ベンゾチオフェン(アルキル置換されたベンゾチオフェン)、アルキル置換ベンゾチオフェン誘導体(アルキル置換されたベンゾチオフェン誘導体)、アルキル置換ジベンゾチオフェン(アルキル置換されたジベンゾチオフェン)およびアルキル置換ジベンゾチオフェン誘導体(アルキル置換されたジベンゾチオフェン誘導体)を特に挙げることができる。アルキルとしては、メチル、エチル、プロピル、n−ブチル、t−ブチル、エチルヘキシルおよびノニルなどを挙げることができる。
【0095】
オキシダントは過酸化物および他の酸化物を含んで成る。特に、オキシダントは、H、O、NO、ClO、ClO、(CHCO、t−BuOOH、C11NO、ClO、HSO、およびIOなどを含んで成る。
【0096】
酸性媒体は、無機酸および有機酸を含んで成る。特に、酸性媒体は、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸、炭酸、メタン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸などを含んで成る。
【0097】
酸化−脱硫反応は、本発明のミキサーの外側で行うこともできる。あるいは、酸化−脱硫反応を本発明のミキサーで開始させ、その後、酸化−脱硫反応をミキサーの外側で行ってもよい。
【0098】
本発明の装置における物質反応(substance reaction)は、上述したものに限定されるものではなく、種々の有機化学反応が考えられる。例えば、水素化反応、ヒドロホルミル化反応、カルボニル化反応、オレフィンの二量体化、オレフィンのオリゴマー化、ディールス−アルダー反応、アシル化反応、ヘック反応、鈴木反応、スティルカップリング反応、辻−トロストカップリング反応、アリル化反応、求核置換反応、ベイリス−ヒルマン反応、ウィッティヒ反応、フリーラジカル付加環化反応、エポキシドの不斉開環反応、連続多段階反応、酵素触媒有機反応、不斉合成反応などが考えられる。それらの反応の反応原系は、常套的に必要とされる触媒がない場合であっても迅速に反応し得る。
【0099】
酸化−脱硫反応は、本発明の装置内で行うことができる。また、酸化−脱硫反応は、2つの滑らかな面を有する収容チャンバー内でも行うことができる。
【0100】
尚、本発明では、硫黄含有材料を脱硫する方法も供される。かかる方法は、
脱硫剤および硫黄含有材料を用意する工程、
収容チャンバーを供する工程、および
硫黄含有材料を処理すべく収容チャンバーに脱硫剤および硫黄含有材料を供給する工程
を含んで成る。脱硫剤は、第1要素および前記第1要素内に配置された第2要素から形成されており、尚、収容チャンバーでは、第2要素が外力の作用で第1要素に対して相対的に回転することができるようになっている。
【0101】
ある態様において、第1要素または第2要素の収容チャンバー側の面は平滑(もしくは滑らか)であってもよいし、あるいは、非平滑であってもよい。
【0102】
ある態様において、第1要素または第2要素の収容チャンバー側の面には分散部が設けられていてもよいし、そのような分散部が設けられていなくてもよい。
【0103】
硫黄含有材料は、硫黄含有ガスおよび/または硫黄含有液体を含んで成る。硫黄含有ガスとしては天然ガスを挙げることができる。また、硫黄含有液体としては、硫黄含有原油を挙げることができる。脱硫剤としては、従来技術のいずれの種類の脱硫剤を用いてもよい。
【0104】
ある態様において、収容チャンバーの厚さは、ミクロンオーダーとなっている。
【0105】
6.材料調製への適用
イオン性液体の調製への適用
ある態様では、イオン性液体の調製は、以下の一般反応式で表すことができる。
【0106】

式中、Rは、メチル(CH)、エチル(C)、プロピル(C)、ブチル(C)または炭素数1〜20の他の直鎖アルキルもしくは分岐アルキルであるか、あるいは、メトキシ基、エトキシ基、プロピル基、ブトキシ基または炭素数1〜20の他の直鎖アルコキシもしくは分岐アルコキシであり、
およびRは、それぞれ、メチル(CH)、エチル(C)、プロピル(C)、ブチル(C)または炭素数1〜20の他の直鎖アルキルもしくは分岐アルキルであり、
は、水素(H)、メチル(CH)、エチル(C)、プロピル(C)、ブチル(C)または炭素数1〜20の他の直鎖アルキルもしくは分岐アルキルであり、
Xは、塩素元素(Cl)、臭素元素(Br)またはヨウ素元素(I)等であり、
Yは、PF、BF、CHSO、CHCOまたはN(SOCF等であり、
Mは、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、銀(Ag)またはアンモニウムイオン(NH)であり、
Hは、水素原子であり、また
Nは、窒素原子である。
【0107】
反応式(I)および反応式(II)において、RがHである場合、RおよびRが個々に置換され又は一体的に作用して種々の環を形成する。この場合、得られる環の構造は、以下の5員ヘテロ環およびそのベンゾヘテロ環である:

(式中、Rは、水素(H)、メチル(CH)、エチル(C)または炭素数1〜10の他の直鎖アルキルもしくは分岐アルキルであり、Rはそれぞれ同一種類もしくは異なる種類であり、隣接するR基同士は、別個に置換されて又は一体的に種々の環を形成する)
あるいは、得られる環の構造は、以下の6員ヘテロ環およびそのベンゾヘテロ環である:

(式中、Rは、水素(H)、メチル(CH)、エチル(C)または炭素数1〜10の他の直鎖アルキルもしくは分岐アルキルであり、Rはそれぞれ同一種類もしくは異なる種類であり、隣接するR基同士は、別個に置換されて又は一体的に種々の環を形成する)
【0108】
反応式(I)および反応式(II)に関して、温度範囲は、室温(RT)〜ミキサーの最大温度(Tmax:通常は約150℃)である。回転速度の範囲は、0〜ミキサーの最大回転速度(Vmax:通常は約10000rpm)である。
【0109】
イオン性液体の調製は、本発明の装置内で行うことができる。また、イオン性液体の調製は、2つの滑らかな面を有する収容チャンバー内でも行うことができる。
【0110】
更に、本発明では、イオン性液体を処理する方法も供される。かかる方法は、
少なくとも2種類のイオン性液体を用意する工程、
収容チャンバーを供する工程、および
イオン性液体を処理すべく前記収容チャンバーにイオン性液体供給する工程、
を含んで成る。尚、収容チャンバーは、第1要素および第1要素内に配置された第2要素から形成されており、第2要素が外力の作用で第1要素に対して相対的に回転することができるようになっている。
【0111】
ある態様において、第1要素または第2要素の収容チャンバー側の面は平滑(もしくは滑らか)であってもよいし、あるいは、非平滑であってもよい。
【0112】
ある態様において、第1要素または第2要素の収容チャンバー側の面には分散部が設けられていてもよいし、そのような分散部が設けられていなくてもよい。
【0113】
ある態様では、収容チャンバーの厚さはミクロンオーダーである。
【0114】
更に、本発明の装置は、溶媒もしくは触媒としてのイオン性液体との化学反応もしくは未反応状態の化学反応に用いることができる。また、本発明の方法は、無機物質、有機物質、薬剤、触媒および高分子ポリマーなどの調製にも用いることができる。
【0115】
上述の化学反応または未反応状態の化学反応の系には、水素化反応、ヒドロホルミル化反応、カルボニル化反応、オレフィンの二量体化、オレフィンのオリゴマー化、ディールス−アルダー反応、アシル化反応、ヘック反応、鈴木反応、スティルカップリング反応、辻−トロスト反応、アリル化反応、求核置換反応、ベイリス−ヒルマン反応、ウィ;ツティヒ反応、フリーラジカル付加環化反応、エポキシドの不斉開環反応、連続多段階反応、酵素触媒有機反応および不斉合成反応などが含まれる。
【0116】
更に、本発明の装置は、製薬業(特に、外用または内服用の注入可能な薬剤の製造)で用いることができる。
【0117】
本発明の装置によって調製される材料は、均一液体反応系、不均一気体−液体反応系、不均一液体−液体反応系が適当である。
【0118】
更に、本発明の装置をより良く用いるために、本発明の装置をコンピューター・ソフトウエア・システムに接続してもよく、それによって、装置全体を制御することができる。従って、連続式またはバッチ式の材料調製を迅速・正確・自動的に行うことができる。本発明の装置とコンピューター・ソフトウエア・システムとの接続には、従来技術のいずれの手段を用いてもよい。
【0119】
尚、コンピューター・ソフトウエア・システムを用いた本発明の装置における材料処理は、以下の工程を含んで成る:
(a)原料を調製する工程、
(b)入口30,31を介して原料を収容チャンバーへと供給する工程、
(c)原料の混合、生成物の回収、反応系の洗浄および乾燥に関連した操作を設計する工程、
(d)原料の混合比、2つの入口における原料の流速、リアクター温度、シャフトベアリング温度(軸受温度)、回転速度および回収量に関連したパラメーターを設定する工程、
(e)種々の条件の混合成分の調整が望ましい場合、工程(c)および工程(d)を繰り返し、望ましい値となるようにパラメーターを変化させる工程、
(f)操作を実施する工程(自己診断システムがうまく機能することによって、操作が自動的かつ逐次的に行われることになり、種々の混合成分が得られる)
(g)操作を終了する工程、
(h)得られた材料を処理して分析する工程、
(i)全工程を終了する工程。
【0120】
上述の工程に関連した液体の原料は、単一の物質であってよいし、あるいは、2種類以上の物質から成る混合物であってもよい。かかる混合物は、自動液体ディストリビューターによって自動的に調製してもよいし、あるいは、本発明の装置の入口の上流側に接続したマルチチャンネル液体供給システムによって調製してもよい。
【0121】
上述の操作は、システム・ソフトウエアによってプログラム化されている。かかる操作の順番は、必要に応じて調整することができる。例えば、混合、回収、洗浄および乾燥という順で行うことができるし、あるいは、洗浄、乾燥、混合、回収、洗浄および乾燥の順で行うこともできる。乾燥は、不活性ガスを吹き付けることによって行うことができる。パラメーターは、以下の事項のように選択または調整することができる。
・2つの入口を介して供給される原料の量は、1ml、5ml、10ml、20ml、25mlまたは50mlなどになるように調整することができる。
・混合比は、モル比、体積比または重量比となるように選択することができる。
・回転速度は、0〜12000rpm(回転/分)の範囲で調整することができる。
・流速は、0〜10ml/minの範囲で調整することができる。
・供給手段の温度は、室温〜100℃の範囲で調整することができる。
・リアクター温度は、室温〜250℃の範囲で調整することができる。
・シャフトベアリングの温度は、室温〜80℃の範囲で調整することができる。
【0122】
操作に関連する洗浄溶剤(または洗浄溶媒)は、混合される原料および生成物の溶解度に応じて選択される。かかる洗浄溶剤は、単一成分から成るものであってもよいし、あるいは、混合物の形態であってもよい。一般的な洗浄溶剤としては、n−ヘキサン、二塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ベンゼン、トルエン、テトラヒドロフラン、アセトン、酢酸エチル、アセトニトリル、メタノール、エタノールおよび水などを挙げることができる。
【0123】
操作に関連する試料処理には、溶剤抽出、遠心分離、濾過、真空乾燥、カラムクロマトグラフィー分離などが含まれる。溶剤抽出に用いられる一般的な溶剤は、生成物に対して不溶性を有している一方、原料に対して溶解性を有している溶剤である。一般的な有機溶媒としては、n−ヘキサン、二塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ベンゼン、トルエン、テトラヒドロフラン、アセトン、酢酸エチル、アセトニトリル、メタノール、エタノールなどを挙げることができる。カラムクロマトグラフィー分離は、生成物を粗分離するために用いられる。カラムクロマトグラフィー分離としては、一般的に、吸収クロマトグラフィー分離、ゲル浸透クロマトグラフィー分離およびイオン交換クロマトグラフィー分離などを挙げることができる。尚、用いられる充填物としては、シリコーンゲル、アルミナ、アルキルシリコーン系ゲル、セルロースまたはポリアミドなどを挙げることができる。
【0124】
操作に関連する材料処理としては、キャピラリー電気泳動(CE)、ガスクロマトグラフィー(GC)、液体クロマトグラフィー(LC)、誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP)、質量分析(MSまたはQMS)、フーリエ変換赤外分光分析(FTIR)、核磁気共鳴(NMR)、X線回折分析(XRD)、光学顕微鏡画像分析(OM)、走査電子顕微鏡画像分析(SEM)、原子間力顕微鏡画像分析(AFM)および透過電子顕微鏡画像分析(TEM)を主として挙げることができる。CE、GCおよびLCは、混合生成物の分離分析、定性分析、定量分析に適している。IPCは、混合生成物の金属成分の定性分析および定量分析に適している。MS、FTIRおよびNMRは、混合生成物の分子量、構造および官能基を分析するのに適している。OM、SEM、AFM、TEMおよびXRDは、色、粒径および均一性などの形状および形態の検査に適している。本発明に関連する分析は、個別に行ってもよいし、CE(またはHPLCもしくはGC)とMSとの組合せ及びCE(またはHPLCもしくはGC)とFTIRとの組合せのように組み合せて行ってもよい。このように幾つかの分析手法を組み合せると、混合生成物の分析が迅速かつ正確に行えるようになるので好ましい。
【0125】
現存する技術と比べて、本発明の材料処理システムは次のような利点を有している:
1.連続性:流れ注入法と高速剪断混合法との組合せによって材料調製を行うので、全体的な調製工程(原料注入〜生成物の排出)を乱すことなく、連続性が達成されるだけでなく、連続式およびバッチ式の工業生産にとって好ましい。このことは、従来の「ワンポット反応(one-pot reaction)」の固定された態様とは明らかに異なる。
2.迅速性:高速剪断ミキサーが用いられているので、反応原系が初期の時点から迅速かつ効率的に混合される。その結果、十分に均一となる混合が達成されたり、あるいは、反応が完全に完了できる。更に、連続流れの条件でプロセスが進行することになるので、混合時間または反応時間が大幅に短縮される。一般的に、数分〜約10分で全プロセスを終了できる。これは、従来技術の攪拌混合の場合よりも迅速である。
3.自動化:流れ注入法は自動化の1つの形態である。流れ注入法と高速剪断混合法とを接続して材料調製に用いる場合、反応時間および速度などを含めた調製プロセス全体が一定のシステム・ソフトウエアでもって制御することができる。このように容易に制御および操作でき、調製プロセスを視覚化を行うことができる。更に、効率が向上するので工業化が容易となる。
4.精度:全てのサンプリングおよび反応条件をソフトウエアで制御することができる。これにより、結果の再現性が向上するだけでなく、結果の精度も向上する。
【0126】
本発明の詳細な説明
本発明の材料処理システムと比べて、本発明の材料処理装置は簡易なものであるので、以下では、本発明の材料処理システムを中心に説明を行う。尚、供給モードは、2つの供給デバイスを用いて入口から原料が供給される態様を例示的に採用している。
【0127】
1.蜂蜜(honey)とアクリルとの混合への適用
(1)蜂蜜とアクリルをそれぞれ乾燥供給デバイスAおよびBに供給する。
(2)混合、回収、洗浄および乾燥に関連する操作を設定する。洗浄溶剤はアセトンおよび水である。乾燥は、窒素ガスを吹き付けることによって行う。回収ボトルの容量は5mlである。操作は2つに分けて設定される。
(3)第1の操作のパラメーターを次のように設定する。
・供給デバイスの温度:80℃
・リアクター温度:80℃
・シャフトベアリング温度:50℃
・回転速度:8000rpm
・蜂蜜とアクリルとの体積比: 1:1
・全流速:0.5ml/min
・洗浄時間:5分間
第2の操作のパラメーターは、回転速度が10000rpmおよび全流速が0.2ml/minであること以外は第1の操作のパラメーターの値と同じである。
(4)操作を実施する(自己診断システムがうまく機能することによって、混合が開始され、混合が中断されることなく行われる)。
(5)流出してくる混合物を回収する。
(6)調製を終了する。
(7)回収された混合物を2枚のガラス・スライドの間に少量供給した後、かかる2枚のガラス・スライドを押圧して混合物をできる限り押し広げる。そして、光学顕微鏡を用いて混合物の混合特性を観察する。
【0128】
2.PMMAポリマーの乳化への適用
(1)溶液を調製する。100gのクロロホルム溶媒に対して5gのPMMAを添加して十分溶解させることによって、クロロホルム中にPMMAが溶解した溶液を得る;また、100gの水に対して0.5gの界面活性剤を加えて十分溶解させることによって、水中にSDSが溶解した溶液を得る。
(2)25mlの「クロロホルム中にPMMAが溶解した溶液」および25mlの「水中にSDSが溶解した溶液」を供給デバイスAおよびBに供給する。
(3)混合、回収、洗浄および乾燥に関連する操作を設定する。洗浄溶剤はクロロホルムおよび水である。乾燥は、窒素ガスを吹き付けることによって行う。回収ボトルの容量は5mlである。操作は5つに分けて設定される。
(4)第1の操作のパラメーターを次のように設定する。
・供給デバイスの温度:25℃
・リアクター温度:25℃
・シャフトベアリング温度:50℃
・回転速度:8000rpm
・「水中にSDSが溶解した溶液」に対する「クロロホルム中にPMMAが溶解した溶液」の体積比: 1:9
全流速:1ml/min
回収体積:2ml
水に対するクロロホルムの体積比:1:1
全流速:0.5ml/min
洗浄時間および乾燥時間:それぞれ5分間
第2の操作のパラメーターは、「水中にSDSが溶解した溶液」に対する「クロロホルム中にPMMAが溶解した溶液」の体積比が1:4および全流速が0.5ml/minであること以外は第1の操作のパラメーターの値と同じである。
第3の操作のパラメーターは、「水中にSDSが溶解した溶液」に対する「クロロホルム中にPMMAが溶解した溶液」の体積比が1:4であること以外は第1の操作のパラメーターの値と同じである。
第4の操作のパラメーターは、全流速が0.5ml/minであること以外は第1の操作のパラメーターの値と同じである。
第5の操作のパラメーターは、「水中にSDSが溶解した溶液」に対する「クロロホルム中にPMMAが溶解した溶液」の体積比が1:15および全流速が0.8ml/minであること以外は第1の操作のパラメーターの値と同じである。
(5)操作を実施する(自己診断システムがうまく機能することによって、混合が開始され、混合が中断されることなく行われる)
(6)流出してくる混合物を回収する。回収された混合物にはそれぞれ異なる番号(051013−4、051013−5、051013−6、051013−7および051013−8)を付す。
(7)調製を終了する。
(8)回収された混合物を2枚のガラス・スライドの間に少量供給した後、かかる2枚のガラス・スライドを押圧して混合物をできる限り押し広げる。そして、光学顕微鏡を用いて混合物の混合特性を観察する。
【0129】
2.PCポリマーの乳化への適用
(1)溶液を調製する。100gのクロロホルム溶媒に対して5gのPCを添加して十分溶解させることによって、クロロホルム中にPCが溶解した溶液を得る;また、100gの水に対して0.5gの界面活性剤を加えて十分溶解させることによって、水中にSDSが溶解した溶液を得る。
(2)25mlの「クロロホルム中にPCが溶解した溶液」および25mlの「水中にSDSが溶解した溶液」を供給デバイスAおよびBに供給する。
(3)混合、回収、洗浄および乾燥に関連する操作を設定する。洗浄溶剤はクロロホルムおよび水である。乾燥は、窒素ガスを吹き付けることによって行う。回収ボトルの容量は5mlである。操作は3つに分けて設定される。
(4)第1の操作のパラメーターを次のように設定する。
・供給デバイスの温度:25℃
・リアクター温度:25℃
・シャフトベアリング温度:50℃
・回転速度:8000rpm
・「水中にSDSが溶解した溶液」に対する「クロロホルム中にPCが溶解した溶液」の体積比: 1:9
全流速:1ml/min
回収体積:2ml
水に対するクロロホルムの体積比:1:1
全流速:0.5ml/min
洗浄時間および乾燥時間:それぞれ5分間
第2の操作のパラメーターは、「水中にSDSが溶解した溶液」に対する「クロロホルム中にPCが溶解した溶液」の体積比が1:4および全流速が0.5ml/minであること以外は第1の操作のパラメーターの値と同じである。
第3の操作のパラメーターは、「水中にSDSが溶解した溶液」に対する「クロロホルム中にPCが溶解した溶液」の体積比が1:4であること以外は第1の操作のパラメーターの値と同じである。
(5)操作を実施する(自己診断システムがうまく機能することによって、混合が開始され、混合が中断されることなく行われる)
(6)流出してくる混合物を回収する。回収された混合物にはそれぞれ異なる番号(051013−1、051013−2および051013−3)を付す。
(7)調製を終了する。
(8)回収された混合物を2枚のガラス・スライドの間に少量供給した後、かかる2枚のガラス・スライドを押圧して混合物をできる限り押し広げる。そして、光学顕微鏡を用いて混合物の混合特性を観察する。
【0130】
4.酸性条件下でのジベンゾチオフェンおよびHの酸化−脱硫実験
(1)溶液を調製する。ジベンゾチオフェン(DBT)のヘプタン濃度は2500ppmである。 ;Hの酸性溶液は、30%Hと氷酢酸とを体積比1:1で混合することによって調製する。
(2)25mlの「DBTのヘプタン溶液」および25mlの「Hの酸性溶液」を供給デバイスAおよびBに供給する。
(3)混合、回収、洗浄および乾燥に関連する操作を設定する。洗浄溶剤はヘプタンおよび水である。乾燥は、窒素ガスを吹き付けることによって行う。回収ボトルの容量は5mlである。操作は4つに分けて設定される。
(4)第1の操作のパラメーターを次のように設定する。
・供給デバイスの温度:25℃
・リアクター温度:70℃
・シャフトベアリング温度:50℃
・回転速度:8000rpm
・「Hの酸性溶液」に対する「DBTのヘプタン溶液」の体積比: 10:1
全流速:1ml/min
回収体積:2ml
水に対するヘプタンの体積比:1:1
全流速:0.5ml/min
洗浄時間および乾燥時間:それぞれ5分間
第2の操作パラメーターは、「Hの酸性溶液」に対する「DBTのヘプタン溶液」の体積比が5:1であること以外は第1の操作のパラメーターの値と同じである。
第3の操作のパラメーターは、リアクター温度が95℃であること以外は第1の操作のパラメーターの値と同じである。
第4の操作のパラメーターは、リアクター温度が95℃および「Hの酸性溶液」に対する「DBTのヘプタン溶液」の体積比が5:1であること以外は第1の操作のパラメーターの値と同じである。
(5)操作を実施する(自己診断システムがうまく機能することによって、混合が開始され、混合が中断されることなく行われる)
(6)流出してくる混合物を回収する。
(7)調製を終了する。
【0131】
5.抽出への適用
(1)「3−ブチル−1−メチルイミダゾリウム・ヘキサフルオロホスフェートのイオン性液体」および「1種類の原油」を供給デバイスAおよびBに供給する。
(2)混合、回収、洗浄および乾燥に関連する操作を設定する。洗浄溶剤はn−ヘキサンである。乾燥は、窒素ガスを吹き付けることによって行う。回収ボトルの容量は5mlである。操作は3つに分けて設定される。
(3)第1の操作のパラメーターを次のように設定する。
・供給デバイスの温度:25℃
・リアクター温度:25℃
・シャフトベアリング温度:50℃
・回転速度:8000rpm
・「原油」に対する「イオン性液体」の体積比: 1:10
全流速:1.0ml/min
回収体積:2ml
n−ヘキサンの全流速:0.5ml/min
洗浄時間:5分間
第2の操作のパラメーターは、「原油」に対する「イオン性液体」の体積比が1:1であること以外は第1の操作のパラメーターの値と同じである。
第3の操作のパラメーターは、「原油」に対する「イオン性液体」の体積比が10:1であること以外は第1の操作のパラメーターの値と同じである。
(4)操作を実施する(自己診断システムがうまく機能することによって、混合が開始され、混合が中断されることなく行われる)
(5)流出してくる混合物を回収する。
(6)調製を終了する。
(7)回収された混合物を2枚のガラス・スライドの間に少量供給した後、かかる2枚のガラス・スライドを押圧して混合物をできる限り押し広げる。そして、光学顕微鏡を用いて混合物の混合特性を観察する。
【0132】
6.エチレン−プロピレン・ゴムと2−ビニルピリデン・グラフト・コポリマーの合成への適用

原料:エチレン−プロピレン・ゴム(ジリン・ペトリファクション社(Jilin Petrifaction Company)、J−0050)
2−ビニルピリデン(アルドリッチ社(Aldrich))
t−ブチルパーオキシベンゾエート
1,2−ジクロロベンゼン(シャンハイ・エクスペリメンタル・リージェント社(Shanghai experimental reagent Co., Ltd.)、バッチNo.20051016)

合成方法
a)90gの1,2−ジクロロベンゼンを250mlフラスコに仕込み、混合物を80℃に加熱する。その後、10gのエチレン−プロピレン・ゴムを加えて30分間攪拌することによって、10%エチレン−プロピレン・ゴム溶液を調製する。
b)95gの1,2−ジクロロベンゼンおよび5gの2−ビニルピリデンを250mlフラスコに加えて、−20℃での冷貯用5%モノマー溶液を形成する。
c)99.5gの1,2−ジクロロベンゼンおよび0.5gのブチルパーオキシベンゾエートを250mlフラスコに加えて、−20℃での冷貯用0.5%開始剤溶液を形成する。
d)25mlの10%エチレン−プロピレン・ゴム溶液を高速ミキサーの供給デバイス1に注入し、5mlの5%モノマー溶液と5mlの0.5%開始剤溶液とを高速ミキサーの供給デバイス1に注入する。
e)リアクター・パラメーターを設定する。
i.流速1に対する流速2の比:0.4
ii.流れの合計:7ml
iii.温度:140℃
iv.回転速度:2000rpm
f)操作を実施し、生成物を回収する

生成物の精製
工程f)で得られる生成物をn−ヘプタンに溶解させ、得られる混合物を濾過する。濾液を200mlアセトン中に滴下により加え、沈殿物が生じるまで攪拌する。次いで、生成物をアセトンで3回洗浄した後、60℃で12時間および150℃で0.5時間の条件の真空乾燥に生成物を付す。

グラフト比の測定
80.9mgの精製された生成物を20mlのn−ヘプタンに加えて、得られる混合物を振揺に付して生成物を溶解させる。ANTEK9000硫黄および窒素分析デバイスを用いて溶液の窒素含量を測定する。

実験結果
生成物の窒素含量:10.6ppm(g/ml)
グラフト比の計算:窒素含量/サンプリングされた生成物の濃度/ピリデン中の窒素の割合
生成物のグラフト比:0.49重量%
【0133】
7.3−ブチル−1−メチルイミダゾリウム臭化物のイオン性液体の調製
(1)1−メチルイミダゾールおよび1−ブロモブダンを乾燥させ、乾燥供給デバイスAおよびBにそれぞれ供給する。
(2)リアクター温度を105℃、シャフトベアリング温度を50℃および回転速度を10000rpmに調整する。
(3)供給デバイスAおよびBにおける流速をそれぞれ1ml/minに設定して、1分間運転することによって、ミキサーの正面側パイプを原料で満たす。
(4)供給デバイスAの流速を0.37ml/minに再設定し、供給デバイスBの流速を0.6ml/minに再設定し、混合を開始する。混合を中断することなく行う。
(5)粗生成物を回収する。
(6)調製を終了し、反応系を水およびアセトンを別個に用いて洗浄する。
(7)生成物の上層の未反応相を除去し、酢酸エチルを加えて液体の下層を洗浄し、未反応原料を除去する。生成物の色が乳白色または「むぎわら色(straw yellow)」になるまで3回繰り返す。
(8)洗浄された生成物を120℃の温度で5時間の真空乾燥に付す。
収率は89%である。
【0134】
8.3−ブチル−1−イミダゾリウム塩化物のイオン性液体の調製
(1)1−メチルイミダゾールおよび1−クロロブタンを乾燥させ、それぞれ乾燥供給デバイスAおよびBに供給する。
(2)リアクター温度を120℃、シャフトベアリング温度を50℃および回転速度を8000rpmに調整する。
(3)上記7の(3)と同じ。
(4)供給デバイスAの流速を0.36ml/minに再設定し、供給デバイスBの流速を0.6ml/minに再設定し、混合を開始する。混合を中断することなく行う。
(5)上記7の(5)と同じ。
(6)上記7の(6)と同じ。
(7)上記7の(7)と同じ。
(8)洗浄された生成物を100℃の温度で5時間の真空乾燥に付す。収率は75%である。
【0135】
9.3−デカニル−1−メチルイミダゾリウム臭化物のイオン性液体の調製
(1)1−メチルイミダゾールおよび1−ブロモデカンを乾燥させ、それぞれ乾燥供給デバイスAおよびBに供給する。
(2)リアクター温度を115℃、シャフトベアリング温度を50℃および回転速度を5000rpmに調整する。
(3)上記7の(3)と同じ。
(4)供給デバイスAの流速を0.23ml/minに再設定し、供給デバイスBの流速を0.6ml/minに再設定し、混合を開始する。混合を中断することなく行う。
(5)上記7の(5)と同じ。
(6)上記7の(6)と同じ。
(7)上記7の(7)と同じ。
(8)洗浄された生成物を80℃の温度で10時間の真空乾燥に付す。収率は80%である。
【0136】
10.3−デカニル−1−メチルイミダゾリウムヨウ化物のイオン性液体の調製
(1)1−メチルイミダゾールおよび1−ヨードブタンを乾燥させ、それぞれ乾燥供給デバイスAおよびBに供給する。
(2)リアクター温度を150℃、シャフトベアリング温度を50℃および回転速度を8000rpmに調整する。
(3)上記7の(3)と同じ。
(4)供給デバイスAの流速を0.33ml/minに再設定し、供給デバイスBの流速を0.5ml/minに再設定し、混合を開始する。混合を中断することなく行う。
(5)上記7の(5)と同じ。
(6)上記7の(6)と同じ。
(7)上記7の(7)と同じ。
(8)洗浄された生成物を120℃の温度で10時間の真空乾燥に付す。収率は80%である。
【0137】
11.3−デカニル−1−メチルイミダゾリウム・ヘキサフルオロフォスフェートのイオン性液体の調製
(1)「メチルイミダゾリウム臭化物」および「ある濃度のヘキサフルオロリン酸カリウム水溶液」をそれぞれ乾燥供給デバイスAおよびBに供給する。
(2)リアクター温度を80℃、シャフトベアリング温度を50℃および回転速度を8000rpmに調整する。
(3)上記7の(3)と同じ。
(4)供給デバイスAの流速を0.5ml/minに再設定し、供給デバイスBの流速を0.6ml/minに再設定し、混合を開始する。混合を中断することなく行う。
(5)上記7の(5)と同じ。
(6)上記7の(6)と同じ。
(7)生成物の上層の水を除去し、多量の水を加えて下層液体を洗浄して、過剰のFPF6を除去する。これを3回繰り返す。
(8)洗浄された生成物を80℃の温度で10時間の真空乾燥に付す。収率は56%である。
【0138】
12.9,9−ジエチルヘキシルポリフルオレンのナノメーター粒子の調製
(1)原料を用意する。具体的には、9,9−ジエチルヘキシルポリフルオレン(PF)濃度が3.0重量%のクロロホルム溶液、および、SDS濃度が0.3%の水溶液を用意する。
(2)25mlの「PFのクロロホルム溶液」および25mlの「SDSの水溶液」を供給デバイスAおよびBに供給する。
(3)混合、回収、洗浄および乾燥に関連する操作を設定する。洗浄溶剤はクロロホルムおよび水である。乾燥は、窒素ガスを吹き付けることによって行う。回収ボトルの容量は5mlである。操作は3つに分けて設定される。
(4)第1の操作のパラメーターを次のように設定する。
・供給デバイスの温度:25℃
・リアクター温度:25℃
・シャフトベアリング温度:50℃
・回転速度:8000rpm
・「SDSの水溶液」に対する「PFのクロロホルム溶液」の体積比: 1:5
全流速:1ml/min
回収体積:2ml
水に対するクロロホルムの体積比:1:1
全流速:0.5ml/min
洗浄時間:5分間
第2の操作のパラメーターは、「SDSの水溶液」に対する「PFのクロロホルム溶液」の体積比が1:1および全流速が0.5ml/minであること以外は第1の操作のパラメーターの値と同じである。
第3の操作のパラメーターは、「SDSの水溶液」に対する「PFのクロロホルム溶液」の体積比が1:3であること以外は第1の操作のパラメーターの値と同じである。
(5)操作を実施する(自己診断システムがうまく機能することによって、混合が開始され、混合が中断されることなく行われる)
(6)流出してくる混合物をそれぞれ回収する。
(7)調製を終了する。
このような調製で得られる混合物の粒子サイズは100nm未満であり、ポリマー含量は5%よりも多い。
【0139】
13.ポリ(ブチルアクリレート)のマイクロ乳化−重合による調製
(1)原料を用意する。具体的には、ブチルアクリレートのマイクロエマルションおよび3重量%アゾ開始剤VA−086溶液を用意する。ブチルアクリレートのマイクロエマルションは、次のように用意する。まず、ブチルアクリレート(モノマー)、ヘキサデカン(補助安定剤)および有機溶剤をある割合で混合する。混合物に対して、アルカリ(Morez101、5重量%、pH=8.3)に可溶性を有する樹脂溶液を滴下して加えると共に、混合物が透明または半透明になるまで超音波を付す。混合物が透明または半透明になることにより、マイクロエマルションの形成が示唆される。
(2)25mlの「マイクロエマルション」および25mlの「開始剤溶液」を供給デバイスAおよびBに供給する。
(3)混合、回収、洗浄および乾燥に関連する操作を設定する。洗浄溶剤はクロロホルムおよび水である。乾燥は、窒素ガスを吹き付けることによって行う。回収ボトルの容量は5mlである。操作は3つに分けて設定される。
(4)第1の操作のパラメーターを次のように設定する。
・供給デバイスの温度:25℃
・リアクター温度:25℃
・シャフトベアリング温度:50℃
・回転速度:6000rpm
・「開始剤溶液」に対する「マイクロエマルション」の体積比: 10:1
全流速:1ml/min
回収体積:2ml
水に対するクロロホルムの体積比:1:1
全流速:0.5ml/min
洗浄時間および乾燥時間:それぞれ5分間
第2の操作のパラメーターは、「開始剤溶液」に対する「マイクロエマルション」の体積比が20:1および全流速が0.5ml/minであること以外は第1の操作のパラメーターの値と同じである。
第3の操作のパラメーターは、「開始剤溶液」に対する「マイクロエマルション」の体積比が5:1であること以外は第1の操作のパラメーターの値と同じである。
(5)操作を実施する(自己診断システムがうまく機能することによって、混合が開始され、混合が中断されることなく行われる)
(6)流出してくる混合物をそれぞれ回収する。
(7)調製を終了する。
このような調製で得られる混合物の粒子サイズは300nmよりも大きく、ポリマー含量は50%よりも多い。
【0140】
14.スルフィノール法(sulfinol method)のガス脱硫反応
(1)原料を用意する。具体的には、原料1および原料2を用意する。
原料1:シクロブチルスルホンおよびメチルジエタノールアミンの水溶液を脱硫剤として用いた。かかる脱硫剤の主成分は、メチルジエタノールアミン、シクロブチルスルホンおよび水である(質量比はそれぞれ45:40:15である)。
原料2:CHを75.17%、HSを36g/m、硫黄(チオール)を500mg/mおよび他のガスを22.28%含んだ天然ガス
(2)流れ注入供給システムの供給デバイスAに原料1を仕込み、供給デバイスBに原料2を仕込む。
(3)操作を設定する。第1の操作のパラメーターは次のように設定する。
・供給デバイスの温度:25℃
・リアクター温度:25℃
・シャフトベアリング温度:50℃
・回転速度:8000rpm
ガスに対する液体の体積比:1:10
全流速:0.5ml/min
第2の操作のパラメーターは、ガスに対する液体の体積比が1:5および全流速が0.5ml/minであること以外は第1の操作のパラメーターの値と同じである。
第3の操作のパラメーターは、ガスに対する液体の体積比が1:3であること以外は第1の操作のパラメーターの値と同じである。
(5)操作を実施する(自己診断システムがうまく機能することによって、混合が開始され、混合が中断されることなく行われる)
(6)流出してくるガスをそれぞれ回収し、MSで定量分析を行う。
(7)調製を終了する。
脱硫剤として用いたシクロブチルスルホンおよびメチルジエタノールアミンの水溶液は、化学吸収および物理吸収の2つの特徴を有している。シクロブチルスルホンおよびメチルジエタノールアミンの水溶液は、有機硫化物を部分的に除去することができる(チオールの平均除去率:75%以上)。メチルジエタノールアミンは、満足のいくHS選択的吸収特性を有している。かかる方法では、HSの濃度(質量基準)を7mg/mにまで減じることができ、また、チオールの濃度(質量基準)を16mg/mにまで減じることができる。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】図1は、従来技術の処理装置の模式図である。
【図2】図2は、本発明の装置の構造を示した模式図である。
【図3】図3は、本発明の装置の構造を部分的に示した模式図である。
【図4】図4は、本発明における第2要素の構造を示した模式図である。
【図5】図5は、本発明の或る態様の処理部の断面を示した模式図である。
【図6】図6は、本発明の或る態様の処理部の断面を示した模式図である。
【図7】図7は、本発明の或る態様の処理部の断面を示した模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理部および駆動部を有して成る材料処理装置であって、
前記処理部は、第1要素および前記第1要素内に配置された第2要素を有して成り、
前記第1要素と前記第2要素との隙間には、処理すべき材料が含まれる収容チャンバーが形成されており、
前記駆動部によって前記第2要素が駆動されることによって、前記第2要素が前記第1要素に対して相対的に回転し、
前記第1要素または前記第2要素の前記収容チャンバー側の面が非平滑となっていることを特徴する、材料処理装置。
【請求項2】
前記第1要素または前記第2要素の非平滑な面は、前記第1要素の軸に平行な力を生じさせることが可能な分散部を有して成る、請求項1に記載の材料処理装置。
【請求項3】
前記分散部は、前記第1要素または前記第2要素の面と一体的に形成されている、または、前記第1要素または前記第2要素の面に取り付けられている、請求項2に記載の材料処理装置。
【請求項4】
前記分散部は凸形状または凹形状を有している、請求項2に記載の材料処理装置。
【請求項5】
前記第1要素が回転可能となっている、請求項2に記載の材料処理装置。
【請求項6】
前記分散部は、少なくとも1つの連続的な等間隔のストライプを有して成る、請求項2に記載の材料処理装置。
【請求項7】
前記分散部は、少なくとも1つの連続的なストライプ、複数のドットの配列、および、少なくとも1つの不連続なストライプから成る群から選択されるストライプおよび/または配列を有して成る、請求項2に記載の材料処理装置。
【請求項8】
前記分散部の断面は、三角形、台形、正方形、多角形、半円形および半楕円形から成る群から選択される少なくとも1つの形状を有している、請求項2に記載の材料処理装置。
【請求項9】
前記分散部は、前記第2要素の面に不規則に又は規則正しく設けられた、連続的なストライプ、複数のドットの配列および不連続なストライプから成る群から選択されるストライプおよび/または配列を有して成る、請求項2に記載の材料処理装置。
【請求項10】
前記分散部は、少なくとも1つの等間隔のストライプ、複数の等間隔のドット、少なくとも1つの非等間隔のストライプ、および、複数の非等間隔のドットから成る群から選択されるストライプおよび/またはドットを有して成る、請求項2に記載の材料処理装置。
【請求項11】
前記第1要素または前記第2要素の面の前記分散部の凸部または凹部は、前記収容チャンバーの平均厚さの1%〜300%である、請求項4に記載の材料処理装置。
【請求項12】
前記分散部の凸部または凹部は、前記収容チャンバーの平均厚さの5%〜100%である、請求項11に記載の材料処理装置。
【請求項13】
前記分散部は、前記第1要素または前記第2要素の面の全面積の50%未満を占めている、請求項2に記載の材料処理装置。
【請求項14】
前記分散部は、前記第1要素または前記第2要素の面の全面積の10%〜40%を占めている、請求項13に記載の材料処理装置。
【請求項15】
前記分散部のトレンド方向と前記第1要素または前記第2要素の軸とが交差している、請求項2に記載の材料処理装置。
【請求項16】
前記収容チャンバーの厚さは、1000ミクロン、2000ミクロンまたは3000ミクロンである、請求項1に記載の材料処理装置。
【請求項17】
前記収容チャンバーの厚さは、50〜80ミクロンまたは80〜120ミクロンである、請求項1に記載の材料処理装置。
【請求項18】
前記収容チャンバーの厚さは、120〜130ミクロンまたは130〜200ミクロンである、請求項1に記載の材料処理装置。
【請求項19】
前記収容チャンバーの厚さは、200〜350ミクロンまたは350ミクロンである、請求項1に記載の材料処理装置。
【請求項20】
前記第2要素の回転速度は、3000rpm以上である、請求項1に記載の材料処理装置。
【請求項21】
前記収容チャンバー内に供される被処理流体は流動性を有している、請求項1に記載の材料処理装置。
【請求項22】
処理部および駆動部を有して成る材料処理装置であって、
前記処理部は、第1要素および前記第1要素内に配置された第2要素を有して成り、
前記第1要素と前記第2要素との隙間には、処理すべき材料が含まれる収容チャンバーが形成されており、
前記駆動部によって前記第1要素が駆動されることによって、前記第1要素が前記第2要素に対して相対的に回転し、
前記第1要素または前記第2要素の前記収容チャンバー側の面が非平滑となっていることを特徴する、材料処理装置。
【請求項23】
材料を処理するための方法であって、
少なくとも2種類の材料を用意する工程、
収容チャンバーを供する工程、および
前記材料を処理すべく前記材料を前記収容チャンバーに供給する工程
を含んで成り、
前記収容チャンバーは、第1要素および前記第1要素内に配置された第2要素から形成されており、外力の作用で前記第2要素が前記第1要素に対して相対的に回転することができ、また、前記第1要素または前記第2要素の前記収容チャンバー側の面が非平滑となっている、方法。
【請求項24】
前記材料の全てが流動性を有している、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記処理には、材料の均一化、分散、乳化、マイクロ乳化、抽出、反応および調製から成る群から選択される少なくとも1つの処理が含まれる、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記乳化として、通常の相乳化プロセスおよび転相乳化プロセスから成る群から選択される少なくとも1種類のプロセスが行われる、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記乳化に用いられる乳化系には、3相乳化系および4相乳化系から成る群から選択される少なくとも1種類の乳化系が含まれる、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記乳化系に使用される油溶媒がC〜CアルカンまたはC〜Cシクロアルカンから選択される油溶媒を含んで成り、前記乳化系に使用される乳化剤がイオン性界面活性剤および非イオン性界面活性剤から成る群から選択される少なくとも1種類以上の界面活性剤を含んで成る、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記マイクロ乳化として、通常のマイクロ相乳化プロセスおよびマイクロ転相乳化プロセスから成る群から選択される少なくとも1種類のプロセスが行われる、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記マイクロ乳化に用いられるマイクロ乳化系には、3相乳化系および4相乳化系から成る群から選択される少なくとも1種類の乳化系が含まれる、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
前記マイクロ乳化系に使用される油溶媒がC〜CアルカンまたはC〜Cシクロアルカンから選択される油溶媒を含んで成り、前記マイクロ乳化系に使用される乳化剤がイオン性界面活性剤および非イオン性界面活性剤から成る群から選択される少なくとも1種類以上の界面活性剤を含んで成る、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記抽出として、溶媒抽出および錯体抽出から成る群から選択される少なくとも1種類のプロセスが行われる、請求項25に記載の方法。
【請求項33】
前記錯体抽出に使用される錯化剤は、下記(a)〜(d)の少なくとも1つの要件を満たしている、請求項32に記載の方法:
(a)錯体化合物が容易に形成されて相間移動が達成できるように、対応する官能基を有し、かつ、分離される溶剤と結合するための結合エネルギーが所定量であること、
(b)第2工程で錯体化合物の逆反応を行って、錯化剤を容易に再生できるように、結合エネルギーが高すぎないこと、
(c)錯化反応および溶質分離に際して、錯化剤による水抽出量ができるだけ少ないこと、または、錯化剤に起因して水が溶媒から容易に除去されること、
(d)不可逆的損失が回避されるように、錯体抽出において他の副反応が生じず、錯化剤が熱的に安定し、容易に分解または劣化しないこと。
【請求項34】
前記錯体抽出に使用される共溶剤および希釈剤は、下記(a)〜(c)の少なくとも1つの要件を満たしている、請求項32に記載の方法:
(a)錯化剤にとって好ましい溶剤として、共溶剤および希釈剤が、錯体化合物の形成および相間移動を促進すること、
(b)液−液抽出が容易に行われるように、共溶剤および希釈剤が、混合される抽出剤の粘度、密度および界面張力を調整できること、
(c)希釈剤が、水抽出量を減じることができること。
【請求項35】
前記抽出に使用される抽出相または抽出剤が、イオン性液体を含んで成る、請求項25に記載の方法。
【請求項36】
抽出相または抽出剤としてイオン性液体を用いる前記抽出が、原油から有機物質を抽出するのに適している又は廃水から有機物質もしくは金属イオンを抽出するのに適している、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
抽出される前記有機物質には、原油または廃水に存在する芳香族炭化水素、芳香族炭化水素の誘導体、有機カルボン酸化合物、有機スルホン酸化合物、有機硫黄化合物、有機アミン化合物から成る群から選択される少なくとも1種類以上が含まれ、
前記金属イオンが、Ni2+、Cu2+、Ag、Au2+、Hg2+、Pt2+、Pb2+、Cr3+、Cd2+、Mn2+のうちの少なくとも1種類以上を含んだ重金属イオンである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記イオン性液体は、下記(a)および(b)の少なくとも1つの要件を満たしている、請求項35に記載の方法:
(a)常温で液体状態であり、空気中で安定性を有していること、
(b)原油または水に対する溶解性ができる限り低いこと。
【請求項39】
前記反応には、液−液反応、気−液反応、重合および酸化−脱硫反応から成る群から選択される少なくとも1種以上の反応が含まれる、請求項25に記載の方法。
【請求項40】
前記液−液反応の2種類の液体は、純粋な液体または数種類の液体から成る混合物である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記液−液反応が、加水分解反応、複分解反応、中和反応、イオン交換反応、レドックス反応、錯体生成反応、複合反応、キレート化反応、ハロゲン化反応、ニトロ化反応、シアネート化反応、エポキシ化反応、ジアゾ反応、アルキル化反応、エステル化反応、縮合反応、フリーデル−クラフト反応および重合から成る群から選択される少なくとも1種以上の反応を伴う、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記重合には、活性流体を混合してアニオン重合を行うことが含まれており、前記活性流体の少なくとも1つには、少なくとも1種類以上の(メタ)アクリル酸モノマーが含まれている、請求項39に記載の方法。
【請求項43】
前記酸化−脱硫反応には、酸性媒体にオキシダントを含んだ活性流体のレドックス反応が含まれており、前記活性流体の少なくとも1つには、少なくとも1種類以上の硫黄含有化合物が含まれている、請求項39に記載の方法。
【請求項44】
前記硫黄含有化合物が、ジアルキル置換硫化物、ジアルキル置換チオフェン、ジアルキル置換チオフェン誘導体、アルキル置換ベンゾチオフェン、アルキル置換ベンゾチオフェン誘導体、アルキル置換ジベンゾチオフェンおよびアルキル置換ジベンゾチオフェン誘導体から成る群から選択される化合物であって、前記アルキルが、メチル、エチル、プロピル、n−ブチル、t−ブチル、エチルヘキシルおよびノニルから成る群から選択されるアルキルであり、
前記オキシダントが、過酸化物および他の酸化物から成る群から選択される1種類のオキシダントであり、また
前記酸性媒体が、無機酸および有機酸から成る群から選択される1種以上の酸性媒体である、
請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記オキシダントには、H、O、NO、ClO、ClO−、(CHCO、t−BuOOH、C11NO、ClO−、HSO−、およびIO−から成る群から選択される少なくとも1種類以上が含まれる、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
前記酸性媒体には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸、炭酸、メタン酸、酢酸およびトリフルオロ酢酸から成る群から選択される少なくとも1種類以上が含まれる、請求項43に記載の方法。
【請求項47】
前記反応には、水素化反応、ヒドロホルミル化反応、カルボニル化反応、オレフィンの二量体化、オレフィンのオリゴマー化、ディールス−アルダー反応、アシル化反応、ヘック反応、鈴木反応、スティルカップリング反応、辻−トロストカップリング反応、アリル化反応、求核置換反応、ベイリス−ヒルマン反応、ウィッティヒ反応、フリーラジカル付加環化反応、エポキシドの不斉開環反応、連続多段階反応、酵素触媒有機反応および不斉合成反応から成る群から選択される少なくとも1種類以上の反応が含まれる、請求項25に記載の方法。
【請求項48】
前記調製が、イオン性液体の調製である、請求項25に記載の方法。
【請求項49】
前記イオン性液体の前記調製に対する一般反応式は次のとおりである、請求項48に記載の方法。

(式中、Rは、メチル(CH)、エチル(C)、プロピル(C)、ブチル(C)または炭素数1〜20の他の直鎖アルキルもしくは分岐アルキルであるか、あるいは、メトキシ基、エトキシ基、プロピル基、ブトキシ基または炭素数1〜20の他の直鎖アルコキシもしくは分岐アルコキシであり、
およびRは、メチル(CH)、エチル(C)、プロピル(C)、ブチル(C)または炭素数1〜20の他の直鎖アルキルもしくは分岐アルキルであり、
は、水素(H)、メチル(CH)、エチル(C)、プロピル(C)、ブチル(C)または炭素数1〜20の他の直鎖アルキルもしくは分岐アルキルであり、
Xは、塩素元素(Cl)、臭素元素(Br)またはヨウ素元素(I)であり、
Yは、PF、BF、CHSO、CHCOまたはN(SOCFであり、
Mは、Na、K、AgまたはNHであり、
Hは、水素原子であり、また
Nは、窒素原子である)
【請求項50】
反応式(I)および反応式(II)において、RがHである場合、RおよびRが個々に置換され又は一体的に作用して種々の環を形成し、得られる環の構造が、以下の5員ヘテロ環およびそのベンゾヘテロ環

(式中、Rは、水素(H)、メチル(CH)、エチル(C)または炭素数1〜10の他の直鎖アルキルもしくは分岐アルキルであり、Rはそれぞれ同一種類もしくは異なる種類であり、隣接するR基は、別個に置換される又は一体的に種々の環を形成する)
または、以下の6員ヘテロ環およびそのベンゾヘテロ環、

(式中、Rは、水素(H)、メチル(CH)、エチル(C)または炭素数1〜10の他の直鎖アルキルもしくは分岐アルキルであり、Rはそれぞれ同一種類もしくは異なる種類であり、隣接するR基は、別個に置換される又は一体的に種々の環を形成する)
である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記調製には、溶媒もしくは触媒としてのイオン性液体との化学反応もしくは未反応状態の化学反応による材料の調製、ならびに、無機物質の調製、有機物質の調製、薬剤の調製、触媒の調製および高分子ポリマーの調製から成る群から選択される少なくとも1種以上の調製が含まれる、請求項25に記載の方法。
【請求項52】
前記化学反応または未反応状態の化学反応の系には、水素化反応、ヒドロホルミル化反応、カルボニル化反応、オレフィンの二量体化、オレフィンのオリゴマー化、ディールス−アルダー反応、アシル化反応、ヘック反応、鈴木反応、スティルカップリング反応、辻−トロスト反応、アリル化反応、求核置換反応、ベイリス−ヒルマン反応、ウィ;ツティヒ反応、フリーラジカル付加環化反応、エポキシドの不斉開環反応、連続多段階反応、酵素触媒有機反応および不斉合成反応から成る群から選択される少なくとも1種類以上の反応が含まれる、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記処理には、溶剤抽出、遠心分離、濾過、真空乾燥またはカラムクロマトグラフィー分離のいずれかが含まれる、請求項23に記載の方法。
【請求項54】
前記カラムクロマトグラフィー分離には、吸収クロマトグラフィー分離、ゲル浸透クロマトグラフィー分離およびイオン交換クロマトグラフィー分離から選択されるカラムクロマトグラフィー分離が含まれ、
用いられる充填物が、シリコーンゲル、アルミナ、アルキルシリコーン系ゲル、セルロースまたはポリアミドのいずれかを含んで成る、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
生じた生成物を分析する工程を更に含んで成る、請求項23に記載の方法。
【請求項56】
前記生じた生成物の分析には、キャピラリー電気泳動(CE)、ガスクロマトグラフィー(GC)、液体クロマトグラフィー(LC)、誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP)、質量分析(MSまたはQMS)、フーリエ変換赤外分光分析(FTIR)、核磁気共鳴(NMR)、X線回折分析(XRD)、光学顕微鏡画像分析(OM)、走査電子顕微鏡画像分析(SEM)、原子間力顕微鏡画像分析(AFM)および透過電子顕微鏡画像分析(TEM)から成る群から選択される少なくとも1種類の分析が含まれる、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記第1要素または前記第2要素の前記非平滑な面は、前記第1要素の軸に対して平行な力を生じさせることが可能な分散部を有して成る、請求項23に記載の方法。
【請求項58】
前記分散部は、凸形状、凹形状、連続的な等間隔のストライプ、連続的なストライプ、複数のドットの配列、不連続なストライプ、等間隔のストライプ、複数の等間隔のドット、非等間隔のストライプおよび複数の非等間隔のドットから成る群から選択される少なくとも1つを有して成る、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記収容チャンバーの厚さはミクロンオーダーである、請求項23に記載の方法。
【請求項60】
イオン性液体を処理する方法であって、
少なくとも2種類のイオン性液体を用意する工程、
収容チャンバーを供する工程、および
前記イオン性液体を処理すべく前記イオン性液体を前記収容チャンバーに供給する工程を含んで成り、
前記収容チャンバーは、第1要素および前記第1要素内に配置された第2要素から形成されており、外力の作用で前記第2要素が前記第1要素に対して相対的に回転することができる、方法。
【請求項61】
前記処理には、イオン性液体の抽出、イオン性液体の反応およびイオン性液体の調製の少なくとも1つが含まれる、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記収容チャンバーの厚さはミクロンオーダーである、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
硫黄含有材料を脱硫する方法であって、
脱硫剤および硫黄含有材料を用意する工程、
収容チャンバーを供する工程、および
前記硫黄含有材料を処理すべく前記収容チャンバーに前記脱硫剤および前記硫黄含有材料を供給する工程
を含んで成り、
前記収容チャンバーは、第1要素および前記第1要素内に配置された第2要素から形成されており、外力の作用で前記第2要素が前記第1要素に対して相対的に回転することができる、方法。
【請求項64】
前記硫黄含有材料は、硫黄含有ガス、硫黄含有液体または硫黄含有原油である、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記脱硫剤がオキシダントを含んで成る、請求項63に記載の方法。
【請求項66】
前記オキシダントが、過酸化物および他の酸化物を含んで成る、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記オキシダントが、H、O、NO、ClO、ClO、(CHCO、t−BuOOH、C11NO、ClO、HSO、およびIOから成る群から選択される少なくとも1種類以上を含んで成る、請求項65に記載の方法。
【請求項68】
前記硫黄含有材料が酸性ガスを含んで成り、前記脱硫剤がアルカリ性液体を含んで成る、請求項65に記載の方法。
【請求項69】
前記アルカリ性液体が、少なくとも1種類のアルコールアミン化合物または水酸化物を含んで成る、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記アルコールアミン化合物が、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−プロピルジエタノールアミンまたはN−ブチルジエタノールアミンのいずれかであり、前記水酸化物が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムまたは水酸化アンモニウムのいずれかである、請求項69に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−522817(P2008−522817A)
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−545819(P2007−545819)
【出願日】平成17年12月13日(2005.12.13)
【国際出願番号】PCT/CN2005/002177
【国際公開番号】WO2006/063516
【国際公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(507196686)亜申科技研發中心(上海)有限公司 (1)
【出願人】(507196077)アクセラジー・コーポレイション (1)
【氏名又は名称原語表記】ACCELERGY CORPORATION
【Fターム(参考)】