説明

検出装置および電流センサ

【課題】増幅率が予め定められた増幅率であるかを判定することができる検出装置および電流センサを提供する。
【解決手段】実施の形態に係る検出装置1は、主に、検出対象の変化を検出して検出信号を出力するホールセンサ2と、ホールセンサ2から出力された検出信号を増幅して第1の増幅信号を出力する増幅部3と、増幅部3に入力して第2の増幅信号として出力される基準電圧を増幅部3に供給する基準電圧供給部4と、入力する制御信号に基づいてホールセンサ2と増幅部3との接続、または増幅部3と基準電圧供給部4との接続を切り替える切替部5と、増幅部3に予め定められた増幅率と、第2の増幅信号から得られる増幅率と、を比較した結果を比較信号として出力する比較部6と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出装置および電流センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術として、空隙を有するリング状とされ、該リング状の中心部に挿入された被測定対象を流れる被測定電流によって発生した磁束を集束する磁性体コアと、磁性体コアの空隙に配置され、磁束に応じた電気信号を出力するホール素子と、所定の検査電流を流すことで発生する所定の磁束をホール素子に印加する検査導線と、ホール素子から出力されるホール信号を増幅する増幅器と、を有する電流センサ装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この電流センサ装置は、被測定対象に被測定電流が流れていなく、検査導線に検査電流を流した状態とした時に、ホール素子から出力され、増幅器で増幅されたホール信号に基づいて、ホール素子の故障が判断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−133737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の電流センサ装置は、正しい増幅率でホール素子のホール信号を増幅しているのかを確認できないため、予定されたホール信号が出力されなかったとき、ホール素子の故障なのか、増幅器の増幅率が予め設定された増幅率と異なるためなのか、を判断することができない問題があった。
【0006】
従って、本発明の目的は、増幅率が予め定められた増幅率であるかを判定し、感度の異常を検出することができる検出装置および電流センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、検出対象の変化を検出して検出信号を出力する検出部と、検出部から出力された検出信号を増幅して第1の増幅信号を出力する増幅部と、増幅部に入力して第2の増幅信号として出力される基準電圧を増幅部に供給する基準電圧供給部と、入力する制御信号に基づいて検出部と増幅部との接続、または増幅部と基準電圧供給部との接続を切り替える切替部と、増幅部に予め定められた増幅率と、第2の増幅信号から得られる増幅率と、を比較した結果を比較信号として出力する比較部と、を備えた検出装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、増幅率が予め定められた増幅率であるかを判定し、感度の異常を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、第1の実施の形態に係る検出装置のブロック図である。
【図2】図2は、第2の実施の形態に係る検出装置のブロック図である。
【図3】図3(a)は、第3の実施の形態に係る電流センサと三相モータの関係を示す概略図であり、(b)は、三相モータの3つの電流と三相モータの回転角の関係を示す概略図であり、(c)は、比較例1に係る電流センサと三相モータの関係を示す概略図であり、(d)は、比較例2に係る電流センサと三相モータの関係を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施の形態の要約]
実施の形態に係る検出装置は、検出対象の変化を検出して検出信号を出力する検出部と、検出部から出力された検出信号を増幅して第1の増幅信号を出力する増幅部と、増幅部に入力して第2の増幅信号として出力される基準電圧を増幅部に供給する基準電圧供給部と、入力する制御信号に基づいて検出部と増幅部との接続、または増幅部と基準電圧供給部との接続を切り替える切替部と、増幅部に予め定められた増幅率と、第2の増幅信号から得られる増幅率と、を比較した結果を比較信号として出力する比較部と、を備える。
【0011】
[第1の実施の形態]
(検出装置の構成)
図1は、第1の実施の形態に係る検出装置のブロック図である。この検出装置1は、例えば、増幅率が予め定められた増幅率であるかを判定し、感度の異常を検出する。なお、本実施の形態に係る検出装置1は、車両に搭載されているものとするが、これに限定されない。
【0012】
この検出装置1は、主に、検出対象の変化を検出して検出信号を出力する検出部としてのホールセンサ2と、ホールセンサ2から出力された検出信号を増幅して第1の増幅信号を出力する増幅部3と、増幅部3に入力して第2の増幅信号として出力される基準電圧を増幅部3に供給する基準電圧供給部4と、入力する制御信号に基づいてホールセンサ2と増幅部3との接続、または増幅部3と基準電圧供給部4との接続を切り替える切替部5と、増幅部3に予め定められた増幅率と、第2の増幅信号から得られる増幅率と、を比較した結果を比較信号として出力する比較部6と、を備えて概略構成されている。
【0013】
また、検出装置1は、例えば、制御部7と、メモリ8と、を備えている。さらに、検出装置1は、例えば、2つのモードを有している。第1のモードは、例えば、増幅部3の増幅率から感度の異常を検出するモードである。第2のモードは、例えば、ホールセンサ2からの出力を増幅して出力するモードである。
【0014】
ホールセンサ2は、ホール効果を利用した磁気センサであり、例えば、図1に示すように、4つの端子20〜端子23を有する。このホールセンサ2は、例えば、定電流駆動され、印加された磁場に基づく電圧の変化を出力するように構成されている。また、ホールセンサ2は、例えば、磁場が印加される検出面を有する。このホールセンサ2は、例えば、端子20と端子21の中心を結ぶ直線が、端子22と端子23の中心を結ぶ直線と直交し、さらに、この2つの直線で作る平面が、検出面を構成している。
【0015】
端子20は、例えば、入力端子10と電気的に接続され、定電流Iccが供給されている。端子21は、例えば、GND端子11と電気的に接続されている。このGND端子11は、例えば、接地されている。
【0016】
端子22は、例えば、スイッチ50と電気的に接続されている。端子23は、例えば、スイッチ51と電気的に接続されている。
【0017】
このホールセンサ2は、例えば、検出面に印加された磁場の検出面に垂直な成分により、端子22側に発生した電位(分圧V12)、および端子23側に発生した電位(分圧V34)を、端子22および端子23を介して出力するように構成されている。なお、一般的なホールセンサは、磁場が印加されていない状態、または磁場が検出できないほど小さい状態であっても端子22および端子23にゼロではない不平衡電圧(オフセット電圧)が生じるが、本実施の形態に係るホールセンサ2は、磁場が印加されていない状態、または磁場が検出できないほど小さい状態であっても、オフセット電圧がゼロとなるように構成されているものとする。なお、検出装置1の初期状態とは、例えば、ホールセンサ2に磁場が印加されていない状態、または磁場が検出できないほど小さい状態を示し、分圧V12および分圧V34を差動増幅した増幅信号がゼロとなる状態であるものとする。
【0018】
増幅部3は、例えば、オペアンプ30と、入力抵抗31と、帰還抵抗32と、を備えている。オペアンプ30の反転入力端子(−)は、例えば、入力抵抗31が電気的に接続されている。また、オペアンプ30の非反転入力端子(+)は、例えば、後述する切替部5のスイッチ51およびスイッチ53が電気的に接続されている。この入力抵抗31は、例えば、抵抗値がRである。帰還抵抗32は、例えば、抵抗値がRである。よって、増幅部3の増幅率は、R/Rである。
【0019】
オペアンプ30の反転入力端子(−)は、例えば、切替部5のスイッチ50がオン状態にあるとき、分圧V12が、スイッチ50および入力抵抗31を介して入力する。また、オペアンプ30の非反転入力端子(+)は、例えば、切替部5のスイッチ51がオン状態にあるとき、分圧V34が、スイッチ51を介して入力する。
【0020】
オペアンプ30の出力端子は、例えば、切替部5のスイッチ54および出力端子12に電気的に接続されている。
【0021】
基準電圧供給部4は、例えば、第1の基準電圧としての基準電圧Vおよび第2の基準電圧としての基準電圧Vを生成し、切替部5を介して増幅部3に供給するように構成されている。基準電圧供給部4は、一例として、オペアンプ30の反転入力端子(−)側には、基準電圧Vを供給し、非反転入力端子(+)側には、基準電圧Vを供給するように構成されている。
【0022】
検出装置1が第1のモードであるとき、基準電圧供給部4は、一例として、5vの基準電圧V、および0vの基準電圧Vを生成する。
【0023】
切替部5は、例えば、スイッチ50〜スイッチ54を備えている。切替部5は、例えば、後述する制御部7から出力されるスイッチ制御信号により、オン状態とオフ状態とを切り替えられるように構成されている。
【0024】
スイッチ50は、例えば、一端がホールセンサ2の端子22に電気的に接続され、他端が増幅部3の入力抵抗31とスイッチ52と、に電気的に接続されている。
【0025】
スイッチ51は、例えば、一端がホールセンサ2の端子23に電気的に接続され、他端がオペアンプ30の非反転入力端子(+)とスイッチ53と、に電気的に接続されている。
【0026】
スイッチ52は、例えば、一端がスイッチ50と入力抵抗31と、の間に電気的に接続され、他端が基準電圧供給部4に電気的に接続されている。
【0027】
スイッチ53は、例えば、一端がスイッチ51とオペアンプ30の非反転入力端子(+)と、の間に電気的に接続され、他端が基準電圧供給部4に電気的に接続されている。
【0028】
スイッチ54は、例えば、一端がオペアンプ30の出力端子と検出装置1の出力端子12と、の間に電気的に接続され、他端が比較部6に電気的に接続されている。
【0029】
比較部6は、例えば、切替部5のスイッチ54がオン状態にあるとき、スイッチ54を介して増幅部3の出力端子と電気的に接続される。
【0030】
この比較部6は、第1のモードのとき、一例として、基準電圧Vおよび基準電圧Vに基づいて差動増幅された増幅電圧Vと、増幅部3に予め定められた増幅率により基準電圧Vおよび基準電圧Vに基づいて差動増幅されて得られる予定の増幅電圧と、を比較する。
【0031】
具体的には、比較部6は、一例として、オペアンプを備え、オペアンプの反転入力端子(−)には、増幅部3から出力された増幅電圧Vが入力し、非反転入力端子(+)には、増幅部3に予め定められた増幅率によって増幅した場合の増幅電圧が、比較される電圧として入力するように構成されている。比較部6は、例えば、第1のモードにおいて、この2つの電圧を比較し、一致しない場合に増幅率が異なるとする比較信号を出力する。
【0032】
制御部7は、例えば、制御端子13を介して入力する制御信号、およびメモリ8に格納されている切替情報80に基づいて切替部5を制御するように構成されている。また、制御部7は、例えば、比較部6を制御するように構成されている。
【0033】
メモリ8は、例えば、切替情報80を格納している。この切替情報80は、例えば、第1のモードおよび第2のモードに応じてスイッチ50〜スイッチ54を切り替えるための情報である。
【0034】
制御部7は、第1のモードのとき、スイッチ50およびスイッチ51をオフ状態とし、スイッチ52、スイッチ53およびスイッチ54をオン状態とするスイッチ制御信号を生成して切替部5に出力する。制御部7は、第2のモードのとき、スイッチ50およびスイッチ51をオン状態とし、スイッチ52、スイッチ53およびスイッチ54をオフ状態とするスイッチ制御信号を生成して切替部5に出力する。
【0035】
第1のモードは、例えば、車両の主電源の投入をトリガとして実行されるモードであり、比較信号を出力するモードである。第2のモードは、例えば、ホールセンサ2による検出信号を出力するモードである。なお、車両の主電源の投入とは、例えば、車両に搭載された電子機器が操作可能となる状態にすることである。
【0036】
以下に、本実施の形態に係る検出装置1の動作について説明する。
【0037】
(動作)
まず、乗員が、車両の主電源を投入すると、制御端子13から制御信号が、入力する。
【0038】
制御部7は、入力した制御信号に基づいて切替部5を第1のモードに応じて切り替え、基準電圧供給部4、増幅部3および比較部6を電気的に接続させる。
【0039】
具体的には、制御部7は、制御端子13から入力する制御信号に基づいて、メモリ8から切替情報80を取得し、取得した切替情報80に基づいて第1のモードに応じたスイッチ制御信号を生成する。続いて、制御部7は、生成したスイッチ制御信号を切替部5に出力する。切替部5は、スイッチ制御信号に基づいてスイッチ50およびスイッチ51をオフ状態とし、スイッチ52〜スイッチ54をオン状態とする。
【0040】
次に、基準電圧供給部4は、増幅部3に基準電圧Vおよび基準電圧Vを供給する。
【0041】
次に、増幅部3は、入力した基準電圧Vおよび基準電圧Vを差動増幅した増幅電圧Vを、スイッチ54を介して比較部6に出力する。
【0042】
具体的には、増幅部3は、入力抵抗31および帰還抵抗32に応じた増幅率で基準電圧Vおよび基準電圧Vを差動増幅する。
【0043】
次に、比較部6は、予め定められた増幅率で基準電圧Vおよび基準電圧Vを差動増幅した増幅電圧と、実際に出力された増幅電圧Vと、を比較する。
【0044】
次に、比較部6は、比較結果を比較信号として出力する。続いて、制御部7は、比較信号の出力がなされたと判断すると、切替部5を第2のモードに応じて切り替え、ホールセンサ2および増幅部3を電気的に接続する。
【0045】
ここで、例えば、ホールセンサおよび増幅部を備える検出装置を比較例とする。この比較例の増幅部は、正常に機能するとき、入力した電圧を予め定められた増幅率で増幅して出力することができる。しかし、比較例のホールセンサが正常に機能している場合であっても、ホールセンサから出力される電圧は、車両に発生する電磁ノイズ等の影響を受けることが考えられる。つまり、検出対象が基準の状態にあり、ホールセンサが基準となる基準出力を出力する場合、この基準出力を増幅した実際の増幅電圧と、当該出力を予め定められた増幅率により増幅した増幅電圧と、が一致したとしても、比較例の検出装置が正常に機能しているか否か、言い換えるなら、故障や感度ずれの判断は、上記の理由によりできない。
【0046】
一方、本実施の形態に係る検出装置1は、ホールセンサ2から出力される出力ではなく、基準電圧供給部4から供給される基準電圧Vおよび基準電圧Vを差動増幅した増幅電圧と、予め定められた増幅率により増幅された増幅電圧と、を比較するので、増幅部3が正常な増幅率で増幅しているかを示す比較信号を出力することができる。例えば、車両のECU(ElectronicControl Unit)は、検出装置1から出力された検出信号に基づいて、増幅部3が正常であるか否かを判定することが可能である。
【0047】
なお、検出装置1は、例えば、増幅部3が正常であると判定された後、ホールセンサ2の異常の検出を行うことができる。具体的には、第2のモードに切り替わった後、増幅部3が正常であると判定され、かつ検出装置1が初期状態にあるとき、スイッチ50、スイッチ51およびスイッチ54をオン状態とし、スイッチ52およびスイッチ53をオフ状態とする。続いて、比較部6は、ホールセンサ2から出力される分圧V12および分圧V34を差動増幅した増幅電圧と、予め定められた増幅率により増幅された増幅電圧と、を比較する。本実施の形態におけるホールセンサ2は、初期状態では、分圧V12および分圧V34がゼロとなるように構成されているので、比較部6は、増幅電圧Vがゼロを中心とした許容範囲内であるときは、正常であることを示す比較信号を出力し、それ以外のときは、ホールセンサ2の異常を示す比較信号を出力する。
【0048】
(効果)
本実施の形態に係る検出装置1によれば、増幅率が予め定められた増幅率であるかを判定し、感度の異常を検出することができる。検出装置1は、基準電圧供給部4から供給される基準電圧Vおよび基準電圧Vを差動増幅させた増幅電圧を用いて比較するので、電磁ノイズ等の影響が少なく、ホールセンサの出力を増幅させた増幅電圧を用いる場合と比べて、増幅部3が正常に機能しているか否かを示す比較信号を出力することができる。
【0049】
また、本実施の形態に係る検出装置1によれば、増幅部3が正常に機能しているとされた後にホールセンサ2が正常に機能しているか否かを示す比較信号を出力することができるので、増幅部の異常の検出を行わずに、ホールセンサ2の出力を増幅部で増幅した信号に基づいてホールセンサの異常の検出を行う場合と比べて、より正確な、ホールセンサ2が正常に機能しているか否かを示す、比較信号を出力することができる。
【0050】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態は、検出部としてMR(Magneto Resistance)センサ2aを用い、増幅部3の増幅率の異常の検出に加え、MRセンサ2aの異常の検出を行う点で、第1の実施の形態と異なっている。なお、以下の実施の形態において、第1の実施の形態と同様の機能および構成を有する部分については、共通の符号を付し、その説明は省略するものとする。
【0051】
図2は、第2の実施の形態に係る検出装置のブロック図である。本実施の形態に係るMRセンサ2aは、例えば、図2に示すように、4つの磁気センサ素子(磁気抵抗素子24〜磁気抵抗素子27)により、ブリッジ回路が形成されている。
【0052】
磁気抵抗素子24(第1の磁気センサ素子)は、例えば、抵抗値がRである。磁気抵抗素子25(第2の磁気センサ素子)は、例えば、抵抗値がRである。磁気抵抗素子24の一方端部は、磁気抵抗素子26の一方端部に電気的に接続されるとともに入力端子10と電気的に接続されている。また、磁気抵抗素子24の他方端部は、磁気抵抗素子25の一方端部に電気的に接続されている。磁気抵抗素子25の他方端部は、GND端子11に電気的に接続されている。なお、MRセンサ2aには、入力端子10を介して電圧Vccが供給されている。本実施の形態に係る電圧Vccは、一例として、5vである。
【0053】
磁気抵抗素子26(第3の磁気センサ素子)は、例えば、抵抗値がRである。磁気抵抗素子27(第4の磁気センサ素子)は、例えば、抵抗値がRである。磁気抵抗素子26の他方端部は、磁気抵抗素子27の一方端部に電気的に接続されている。磁気抵抗素子27の他方端部は、磁気抵抗素子25の他方端部と電気的に接続されるとともにGND端子11と電気的に接続されている。なお、MRセンサ2aは、磁場の強さに応じて抵抗値R〜抵抗値Rが変化する。また、磁気抵抗素子24〜磁気抵抗素子27は、例えば、検出装置1が初期状態にある場合、同じ抵抗値となるように構成されている。つまり、MRセンサ2aは、例えば、初期状態では、磁気抵抗素子24と磁気抵抗素子25との第1の分圧としての分圧V12と、磁気抵抗素子26と磁気抵抗素子27との第2の分圧としての分圧V34と、が等しくなるように構成されている。本実施の形態に係る分圧V12および分圧V34は、一例として、2.5vである。なお、初期状態とは、例えば、分圧V12および分圧V34を差動増幅した増幅信号がゼロとなる状態であるものとする。
【0054】
本実施の形態に係る検出装置1の切替情報80は、例えば、第1の実施の形態における第1のモードおよび第2のモードに加えて、MRセンサ2aの異常を検出する第3のモードに関する情報を含んでいる。この第3のモードは、例えば、以下の表1に示すように、第1のフェーズおよび第2のフェーズを有する。
【表1】

第1のフェーズは、MRセンサ2aの磁気抵抗素子24または磁気抵抗素子25の異常を検出するものである。第2のフェーズは、MRセンサ2aの磁気抵抗素子26または磁気抵抗素子27の異常を検出するものである。
【0055】
第1のフェーズは、例えば、表1に示すように、スイッチ50がオン状態、スイッチ51がオフ状態、スイッチ52がオフ状態、スイッチ53がオン状態およびスイッチ54がオン状態となる。従って、増幅部3のオペアンプ30の反転入力端子(−)には、分圧12が入力し、非反転入力端子(+)には、基準電圧供給部4から出力された基準電圧Vが入力する。
【0056】
第2のフェーズは、例えば、表1に示すように、スイッチ50がオフ状態、スイッチ51がオン状態、スイッチ52がオン状態、スイッチ53がオフ状態およびスイッチ54がオン状態となる。従って、増幅部3のオペアンプ30の反転入力端子(−)には、基準電圧供給部4から出力された基準電圧Vが入力し、非反転入力端子(+)には、分圧34が入力する。なお、第3のモードは、例えば、第1のモードに続いて実行され、さらに、第1のフェーズに続いて第2のフェーズが実行されるものとする。
【0057】
検出装置1が第3のモードであるとき、基準電圧供給部4は、一例として、2.5vの基準電圧V、および基準電圧Vを生成する。これは、検出装置1が初期状態にある場合、MRセンサ2aが正常に機能している場合の分圧12および分圧34は、例えば、2.5vであるからである。
【0058】
比較部6は、第1のフェーズにおいて、一例として、分圧V12と基準電圧Vとを差動増幅した増幅電圧Vと、増幅部3に予め定められた増幅率により、初期状態にあるMRセンサ2aの出力に基づいて差動増幅されて得られる予定の増幅電圧と、を比較する。第1のフェーズにおいて、比較部6は、例えば、当該増幅電圧Vが0v以外であるとき、磁気抵抗素子24または磁気抵抗素子25の異常を検出したことを示す比較信号を出力する。
【0059】
また、比較部6は、第2のフェーズにおいて、一例として、基準電圧Vと分圧V34とを差動増幅した増幅電圧Vと、増幅部3に予め定められた増幅率により、初期状態にあるMRセンサ2aの出力に基づいて差動増幅されて得られる予定の増幅電圧と、を比較する。第2のフェーズにおいて、比較部6は、例えば、当該増幅電圧Vが0v以外であるとき、磁気抵抗素子26または磁気抵抗素子27の異常を検出したことを示す比較信号を出力する。
【0060】
以下に、本実施の形態に係る検出装置1の動作を説明する。
【0061】
(動作)
まず、乗員が、車両の主電源を投入すると、制御端子13から制御信号が、入力する。
【0062】
制御部7は、入力した制御信号に基づいて切替部5を第1のモードに応じて切り替え、基準電圧供給部4、増幅部3および比較部6を電気的に接続させる。
【0063】
次に、基準電圧供給部4は、増幅部3に基準電圧Vおよび基準電圧Vを供給する。
【0064】
次に、増幅部3は、入力した基準電圧Vおよび基準電圧Vを差動増幅した増幅電圧Vを、スイッチ54を介して比較部6に出力する。
【0065】
次に、比較部6は、予め定められた増幅率で基準電圧Vおよび基準電圧Vを差動増幅した増幅電圧と、実際に出力された増幅電圧Vと、を比較する。
【0066】
次に、比較部6は、比較結果を比較信号として出力する。
【0067】
次に、検出装置1の制御部7は、取得した比較信号に基づいて、第1のモードにおいて、増幅部3の増幅率の異常が検出されない場合、第3のモードを実行する。
【0068】
制御部7は、切替部5を第3のモードの第1のフェーズに応じて切り替え、磁気抵抗素子24および磁気抵抗素子25と増幅部3、基準電圧供給部4と増幅部3、および増幅部3と比較部6を電気的に接続させる。
【0069】
次に、基準電圧供給部4は、増幅部3に基準電圧Vを供給する。
【0070】
次に、増幅部3は、ホールセンサ2から出力された分圧V12、および基準電圧供給部4から出力された基準電圧V、を差動増幅した増幅電圧Vを、スイッチ54を介して比較部6に出力する。
【0071】
次に、比較部6は、予め定められた増幅率で分圧V12および基準電圧Vを差動増幅した増幅電圧と、実際に出力された増幅電圧Vと、を比較する。
【0072】
次に、制御部7は、比較結果に基づいて異常が検出されなければ、続いて、第2のフェーズを実行する。なお、異常が検出された場合、比較部6は、MRセンサ2aの異常を示す比較信号を出力する。
【0073】
次に、制御部7は、切替部5を第3のモードの第2のフェーズに応じて切り替え、磁気抵抗素子26および磁気抵抗素子27と増幅部3、基準電圧供給部4と増幅部3、および増幅部3と比較部6を電気的に接続させる。
【0074】
次に、基準電圧供給部4は、増幅部3に基準電圧Vを供給する。
【0075】
次に、増幅部3は、基準電圧供給部4から出力された基準電圧V、およびMRセンサ2aから出力された分圧V34、を差動増幅した増幅電圧Vを、スイッチ54を介して比較部6に出力する。
【0076】
次に、比較部6は、予め定められた増幅率で基準電圧Vおよび分圧V34を差動増幅した増幅電圧と、実際に出力された増幅電圧Vと、を比較する。
【0077】
次に、制御部7は、比較結果に基づいて異常が検出されなければ、続いて、第2のモードを実行する。なお、異常が検出された場合、比較部6は、MRセンサ2aの異常を示す比較信号を出力する。
【0078】
(効果)
本実施の形態に係る検出装置1によれば、MRセンサ2aの異常を検出することができる。また、この検出装置1によれば、基準電圧供給部4により、初期状態における分圧V12および分圧V34に対応した基準電圧Vおよび基準電圧Vを増幅部3に供給することができるので、ホールセンサの出力から異常を検出する場合と比べて、正確に異常の検出を行うことができる。
【0079】
[第3の実施の形態]
第3の実施の形態は、第1の実施の形態に係る検出装置1を電流センサとして用いた点で、上記の各実施の形態と異なっている。
【0080】
図3(a)は、第3の実施の形態に係る電流センサと三相モータの関係を示す概略図であり、(b)は、三相モータの3つの電流と三相モータの回転角の関係を示す概略図であり、(c)は、比較例1に係る電流センサと三相モータの関係を示す概略図であり、(d)は、比較例2に係る電流センサと三相モータの関係を示す概略図である。図3(b)に示す左側の図のx−y座標は、三相モータ9の回転中心を原点としている。図3(b)に示す右側の図は、電流I(縦軸)と三相モータ9の回転角θ(横軸)の関係を示している。
【0081】
電流センサ1aは、例えば、図3(a)に示すように、三相モータ9のU相の電源ライン上に設けられている。また、電流センサ1bは、例えば、図3(a)に示すように、三相モータ9のW相の電源ライン上に設けられている。電流センサ1aおよび電流センサ1bは、第1の実施の形態に係る検出装置1と、その構成は同じであるものとする。
【0082】
三相モータ9は、例えば、図3(b)に示すように、ハイブリッド車両等の駆動源として用いられるものであり、120°ずつ位相が異なるU相の電流I、V相の電流I、およびW相の電流Iが流れる。
【0083】
電流センサ1aおよび電流センサ1bは、この三相モータ9に流れる電流を検出する。なお、本実施の形態に係る電流センサ1aおよび電流センサ1bは、電流Iの検出を行わないが、それは、次の理由による。図3(b)に示すように、電流I、電流I、および電流Iは、120°ずつ位相がずれており、また、三相モータ9の時間tの回転角θにおける3つの電流の合計は、ゼロとなる。従って、三相モータ9に流れる電流の検出は、3つの電流I、電流I、および電流Iのうち、少なくとも2つの電流値を検出することにより、残りの電流値を算出することができるので、2つの電流を検出することで行われる。
【0084】
電流センサ1aおよび電流センサ1bは、例えば、車両に搭載されたECU90に検出信号を出力する。
【0085】
ECU90は、例えば、電流センサ1aおよび電流センサ1bから出力される2つの検出信号に基づいて電流Iの電流値を算出し、三相モータ9に正しく電流が供給されているかを判定するように構成されている。また、ECU90は、例えば、車両の電源が投入された後に出力される電流センサ1aおよび電流センサ1bから出力される2つの比較信号に基づいて電流センサ1aおよび電流センサ1bの感度ずれ等の故障診断を行う。
【0086】
一方、図3(c)に示す比較例1では、U相の電源ライン上に電流センサ901および電流センサ902、W相の電源ライン上に電流センサ903および電流センサ904を備えている。この電流センサ901〜電流センサ904は、周知の電流センサである。
【0087】
この比較例1では、電流センサ901〜電流センサ904のいずれかが故障した場合を想定して、1つの電源ライン上に2つの電流センサを取り付けて冗長性を持たせている。
【0088】
また、図3(d)に示す比較例2では、U相の電源ライン上に電流センサ905、V相の電源ライン上に電流センサ906、およびW相の電源ライン上に電流センサ907を備えている。この電流センサ905〜電流センサ907は、周知の電流センサである。
【0089】
この比較例2では、U相、V相およびW相のいずれか2つの電流値から残りの電流値を算出することができることから、電流センサ905〜電流センサ907のいずれかが故障した場合を想定して、それぞれの電源ライン上に電流センサを取り付けて冗長性を持たせている。
【0090】
しかし、第1の実施の形態に係る検出装置1を電流センサとして用いた場合、電源の投入をトリガとして、感度ずれ等の故障診断が行われることから、冗長性を持たせる必要がなくなり、比較例1および比較例2と比べて、電流センサの数を減らすことができる。
【0091】
(効果)
本実施の形態に係る電流センサによれば、ホールセンサおよび増幅部の感度ずれ等の故障を判定することができる比較信号を出力するので、ホールセンサと増幅部の故障を別々に判定することができない検出装置と比べて、配置する電流センサの数が少なくなり、本実施の形態に係る電流センサが搭載される電子機器のコストを下げることができる。
【0092】
以下に、上記の各実施の形態の変形例を示す。
【0093】
(変形例1)
増幅部3の帰還抵抗32は、例えば、外部からの操作により、抵抗値を変化させる可変抵抗であっても良い。
【0094】
(変形例2)
増幅部3の帰還抵抗32は、例えば、複数の抵抗と、複数の抵抗と同数のスイッチと、から構成され、スイッチの切替により、増幅部3の増幅率の変更が可能な構成であっても良い。
【0095】
(変形例3)
検出装置1は、比較部6から出力された比較信号に基づいて検出部および増幅部3の異常を判定する判断部を備えても良い。
【0096】
(変形例4)
検出装置1の検出部は、例えば、静電容量の変化を検出する加速度センサ等であっても良い。
【0097】
(変形例5)
上記の第3の実施の形態において、電流センサ1aおよび電流センサ1bは、一例として、三相モータの電流を検出する電流センサとしているが、これに限定されず、他の電子機器の電流を検出する電流センサとして用いても良い。
【0098】
以上、本発明のいくつかの実施の形態および変形例を説明したが、これらの実施の形態および変形例は、一例に過ぎず、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。これら新規な実施の形態および変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更等を行うことができる。また、これら実施の形態および変形例の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない。さらに、これら実施の形態および変形例は、発明の範囲及び要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0099】
1…検出装置、1a、1b…電流センサ、2…ホールセンサ、2a…MRセンサ、3…増幅部、4…基準電圧供給部、5…切替部、6…比較部、7…制御部、8…メモリ、9…三相モータ、10…入力端子、11…GND端子、12…出力端子、13…制御端子、20〜23…端子、24〜27…磁気抵抗素子、30…オペアンプ、31…入力抵抗、32…帰還抵抗、50〜54…スイッチ、80…切替情報、90、900…ECU、901〜907…電流センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象の変化を検出して検出信号を出力する検出部と、
前記検出部から出力された前記検出信号を増幅して第1の増幅信号を出力する増幅部と、
前記増幅部に入力して第2の増幅信号として出力される基準電圧を前記増幅部に供給する基準電圧供給部と、
入力する制御信号に基づいて前記検出部と前記増幅部との接続、または前記増幅部と前記基準電圧供給部との接続を切り替える切替部と、
前記増幅部に予め定められた増幅率と、前記第2の増幅信号から得られる増幅率と、を比較した結果を比較信号として出力する比較部と、
を備えた検出装置。
【請求項2】
前記検出部は、磁気センサである請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記磁気センサは、第1の磁気センサ素子乃至第4の磁気センサ素子により構成されたブリッジ回路を含み、
前記基準電圧供給部は、初期状態における、前記第1の磁気センサ素子と前記第2の磁気センサ素子との第1の分圧に対応する第1の基準電圧、および前記第3の磁気センサ素子と前記第4の磁気センサ素子との第2の分圧に対応する第2の基準電圧、を生成する請求項2に記載の検出装置。
【請求項4】
前記比較部は、前記第1の分圧と前記第2の分圧とを前記増幅部により差動増幅した第3の増幅信号と、前記第1の分圧と前記第2の基準電圧とを前記増幅部により差動増幅した第4の増幅信号と、を比較し、比較信号を出力する請求項3に記載の検出装置。
【請求項5】
前記比較部は、前記第3の増幅信号と、前記第1の基準電圧と前記第2の分圧とを前記増幅部により差動増幅した第5の増幅信号と、を比較し、比較信号を出力する請求項4に記載の検出装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の検出装置を用いた電流センサ。
【請求項7】
三相モータの少なくとも2つの相に設けられた請求項6に記載の電流センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−247341(P2012−247341A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120195(P2011−120195)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【出願人】(504322161)メレキシス エヌ ヴィ (2)
【Fターム(参考)】