説明

検査装置

【課題】検被検査体を簡便に検査することができる放射線検査装置を提供する。
【解決手段】基板表面検出部38は、基板および電子部品を含む被検査体の断面画像を画像解析し、前記断面画像の中から基板表面を映し出す表面画像を特定する。疑似断面画像生成部40は、前記表面画像を基準として前記断面画像に映し出されている前記基板と前記電子部品とを接合するはんだの領域を特定し、前記はんだを映し出す前記断面画像を積み上げることにより擬似的に撮像範囲に厚みを持たせた疑似断面画像を生成する。検査部42は、前記表面画像に映し出された前記はんだの領域および前記疑似断面画像に映し出された前記はんだの領域を画像解析することにより、前記はんだの接合状態の良否を推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は被検査体の検査装置に関し、特に放射線を照射することにより得られる被検査体の透過画像を利用して被検査体を検査する検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品が実装された基板(以下「基板」という。)には、BGA(Ball Grid Array)やLGA(Land Grid Array)が実装されているものがある。これらの基板では、部品の電気接続部である端子は基板と部品との間に位置し、カメラを用いた従来の外観検査装置では部品と基板とを接合するはんだの状態を観察することが困難である。このため、基板に複数の異なる方向からX線を照射し、その透過画像に基づいて接合部分のはんだの立体形状を画像に再構成し、そこから任意断面を切り出した断面画像を用いて検査する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−226875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1等の技術によれば、接合部分のはんだの立体形状が複数の断層画像として得られるが、それらから基板とはんだとの接合状態を都度オペレータが判断する必要があり、検査工数が増加し得るという問題がある。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、検被検査体を簡便に検査することができる放射線検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様は検査装置に関する。この装置は、基板および電子部品を含む被検査体の断面画像を画像解析し、前記断面画像の中から基板表面を映し出す表面画像を特定する基板表面検出部と、前記表面画像を基準として前記断面画像に映し出されている前記基板と前記電子部品とを接合するはんだの領域を特定し、前記はんだを映し出す前記断面画像を積み上げることにより擬似的に撮像範囲に厚みを持たせた疑似断面画像を生成する疑似断面画像生成部と、前記表面画像に映し出されてた前記はんだの領域および前記疑似断面画像に映し出された前記はんだの領域を画像解析することにより、前記はんだの接合状態の良否を推定する検査部とを含む。
【0007】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせ、本発明の表現を方法、装置、システム、コンピュータプログラム、データ構造、記録媒体等の間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、被検査体を簡便に検査することができる放射線検査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態にかかる放射線検査装置の構成を模式的に示す図である。
【図2】図1のPCが処理する各機能ブロックを図示したものである。
【図3】BGA検査の流れを説明するフローチャートである。
【図4】多層基板において層間の回路を接続するためのスルーホールとその断面画像の関係を模式的に示した図である。
【図5】BGAはんだを含むようにスライス厚が設定された疑似透過画像の一部を模式的に示した図である。
【図6】溶融状態検査部の内部構成を模式的に示した図である。
【図7A】はんだの溶融状態が良好で、基板と部品とがはんだによって十分に接合されている場合の、基板表面におけるBGAの断面画像を模式的に示した図である。
【図7B】はんだの溶融状態が悪く、基板と部品とがはんだによって十分に接合されていない場合の、基板表面におけるBGAはんだの断面画像を模式的に示した図である。
【図8】部品と基板とを接合するBGAはんだの疑似透過画像およびその断面の位置を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態の概要を述べる。実施の形態は、検査対象である基板上のはんだの接合状態を含む断面画像、およびその断面画像を積み上げて擬似的に厚みを持たせた疑似断面画像を画像解析することにより、はんだの接合状態を判断する。はんだの接合状態として、はんだ間のブリッジの有無、はんだの溶融状態、はんだ内のボイドの有無の検査が含まれる。
【0011】
図1は実施の形態にかかる放射線検査装置100を模式的に表した図である。放射線検査装置100は、PC(Personal Computer)10、モニタ12、および撮像部32を含む。撮像部32はさらに、線質変更部14、放射線発生器駆動部16、基板保持部駆動部18、検出器駆動部20、放射線発生器22、基板保持部24、および検出器26を含む。
【0012】
放射線発生器22はX線等の放射線を発生させる部分であり、これは例えば加速させた電子をタングステンやダイアモンド等のターゲットに衝突させることで放射線を発生する。
【0013】
基板保持部24は被検査体である基板を保持する。基板保持部24に保持された基板に放射線発生器22で発生させた放射線を照射し、基板を透過した放射線を検出器26で画像として撮像する。以下、検出器26で撮像された基板の放射線透過画像を「透過画像」という。
【0014】
透過画像はPC10に送られ、例えばフィルタ補正逆投影法(Filtered−Backprojection法、FBP法)等の既知の技術を用いて、接合部分のはんだの立体形状を含む画像に再構成される。再構成された画像や透過画像は、PC10内のストレージや、図示しない外部のストレージに記憶される。以下、透過画像に基づいて接合部分のはんだの立体形状を含む3次元画像に再構成された画像を「再構成画像」という。また、再構成画像から任意の断面を切り出した画像を「断面画像」という。再構成画像および断面画像はモニタ12に出力される。なお、モニタ12は再構成画像や断面画像のみならず、後述するはんだの接合状態の検査結果等も表示する。
【0015】
線質変更部14は放射線発生器22で発生される放射線の線質を変更する。放射線の線質は、ターゲットに衝突させる電子を加速するために印加する電圧(以下「管電圧」という)や、電子の数を決定する電流(以下「管電流」という)によって定まる。線質変更部14は、これら管電圧と管電流とを制御する部分である。これは変圧器や整流器等、既知の技術を用いて実現できる。
【0016】
ここで、放射線の線質は、放射線の輝度と硬さ(放射線のスペクトル分布)とで定まる。管電流を大きくすればターゲットに衝突する電子の数が増え、発生する放射線の光子の数も増える。その結果、放射線の輝度が大きくなる。例えばコンデンサ等の部品の中には他の部品と比較して厚みがあるものもあり、これらの部品の透過画像を撮像するには輝度の大きな放射線を照射する必要がある。このような場合に管電流を調整することで放射線の輝度を調整する。また、管電圧を高くするとターゲットに衝突する電子のエネルギーが大きくなり、発生する放射線のエネルギー(スペクトル)が大きくなる。一般に、放射線のエネルギーが大きいほど物質の貫通力が大きくなり、物質に吸収されにくくなる。そのような放射線を用いて撮像した透過画像はコントラストは低くなる。このため、管電圧は透過画像のコントラストを調整するのに利用できる。
【0017】
放射線発生器駆動部16は図示しないモータ等の駆動機構を有しており、放射線発生器22をその焦点を通る軸に沿って上下に移動することができる。これにより放射線発生器22と基板保持部24に保持される被検査対象との距離を変えて照射野を変更し、検出器26に撮像される透過画像の拡大率を変更することが可能となる。
【0018】
検出器駆動部20も図示しないモータ等の駆動機構を有しており、検出器回転軌道30に沿って検出器26を回転移動する。また、基板保持部駆動部18も図示しないモータ等の駆動機構を有しており、基板回転軌道28が張る平面上を、基板保持部24を平行移動させる。基板保持部24は、検出器26の回転移動と連動して、基板回転軌道28上を回転移動する構成となっている。これにより、基板保持部24が保持する基板と放射線発生器22との相対的な位置関係を変更させながら透過画像を撮像することが可能となる。
【0019】
ここで、基板回転軌道28と検出器回転軌道30との回転半径は固定ではなく、自由に変更できる構成となっている。これにより、基板に配置される部品に照射する放射線の照射角度を変更することが可能となる。
【0020】
PC10は、上記の放射線検査装置100の全動作を制御する。なお、図示されていないが、PC10にはキーボードやマウス等の入力装置が接続されている。
【0021】
図2は、PC10が処理する各機能ブロックを図示したものである。PC10は、記録部34、断面画像生成部36、基板表面検出部38、疑似断面画像生成部40、および検査部42を含む。なお、図示はしないが、PC10は線質変更部14、放射線発生器駆動部16、基板保持部駆動部18、および検出器駆動部20を制御する撮像制御部も含む。
【0022】
記録部34は、基板の透過画像や再構成断面画像、および後述する検査部42の検査結果等を記憶する。
【0023】
断面画像生成部36は、記録部34から取得した複数の透過画像に基づいて、断面画像を生成する。これは、例えばFBP法や最尤推定法等、既知の技術を用いて実現できる。再構成アルゴリズムが異なると、得られる再構成画像の性質や再構成に要する時間も異なる。そこで、あらかじめ複数の再構成アルゴリズムやアルゴリズムに用いられるパラメータを用意しておき、ユーザに選択させる構成としてもよい。これにより、再構成に要する時間が短くなることを優先したり、時間はかかっても画質のよさを優先したりするなどの選択の自由度をユーザに提供することができる。生成した断面画像は記録部34に出力し、記録部34に記録される。
【0024】
基板表面検出部38は、断面画像生成部36が生成した複数の断面画像の中から、基板の表面を映し出している断面画像を特定する。以後、基板の表面を映し出している断面画像を「表面画像」という。表面画像の検出方法についての詳細は後述する。
【0025】
疑似断面画像生成部40は、断面画像生成部36が生成した断面画像について、連続する所定枚数の断面画像を積み上げることにより、断面画像よりも厚い基板の領域を画像化する。積み上げる断面画像の枚数は、断面画像が映し出す基板の領域の厚さ(以後、「スライス厚」という。)と、疑似画像のスライス厚とによって定める。例えば、断面画像のスライス厚が50μmで、疑似画像としてBGAのはんだボール(以後単に「はんだ」という。)の高さ(例えば500μm)をスライス厚としようとするならば、500/50=10枚の断面画像を積み上げればよい。この際、はんだの位置を特定するために、基板表面検出部38が特定した表面画像が用いられる。
【0026】
検査部42は、断面画像生成部36が生成した断面画像、基板表面検出部38が特定した表面画像、および疑似断面画像生成部40が生成した疑似断面画像に基づいて、はんだの接合状態を検査する。基板と部品とを接合するはんだは基板表面付近にあるので、表面画像および表面画像に対して放射線発生器22側の領域を映し出している断面画像を検査することで、はんだが基板と部品とを適切に接合しているか否かが判断できる。
【0027】
ここで、「はんだの接合状態」とは、基板と部品とがはんだにより接合し、適切な導電経路が生成されているか否かのことをいう。はんだの接合状態の検査には、ブリッジ検査、溶融状態検査、およびボイド検査が含まれる。「ブリッジ(bridge)」とは、はんだが接合することにより生じた導体間の好ましくない導電経路のことをいう。また、「溶融状態」とは、はんだの溶融不足により、基板と部品との間の接合が不足しているか否かの状態、いわゆる「浮き」か否かの状態をいう。「ボイド(void)」とは、はんだ接合部内の気泡によるはんだ接合の不具合のことをいう。したがって検査部42は、ブリッジ検査部44、溶融状態検査部46、およびボイド検査部48を含む。
【0028】
ブリッジ検査部44、溶融状態検査部46、およびボイド検査部48の動作の詳細は後述するが、ブリッジ検査部44およびボイド検査部48は、疑似断面画像生成部40が生成した疑似断面画像に基づいてそれぞれブリッジおよびボイドの検査をし、溶融状態検査部46は基板表面検出部38が特定した表面画像に基づいてはんだの溶融状態を検査する。なお、ブリッジ検査部44、溶融状態検査部46、およびボイド検査部48における検査結果は記録部34に記録される。
【0029】
以上の各機能ブロックは、各種演算処理を実行するCPU、データの格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用されるRAMなどのハードウェア、およびソフトウェアの連携によって実現される。したがって、これらの機能ブロックはハードウェアおよびソフトウェアの組み合わせによって様々な形で実現することができる。
【0030】
図3は表面画像の特定から、はんだの接合状態を検査するまでの流れを示したフローチャートである。本フローチャートにおける処理は、例えば断面画像生成部36が断面画像を生成したときに開始する。
【0031】
基板表面検出部38は、断面画像生成部36から断面画像を受け取り、その中から表面画像を特定する(S10)。ブリッジ検査部44は、疑似断面画像生成部40からはんだボールを映し出しているはんだボールと同程度のスライス厚の疑似断面画像を取得し、ブリッジの有無を検査する(S12)。ブリッジを検出しない場合には(S14N)、溶融状態検査部46は基板表面検出部38から表面画像を取得し、はんだが溶融しているか否かを検査する(S16)。はんだが溶融している場合には(S18Y)、ボイド検査部48は疑似断面画像生成部40からはんだボールを部分的に映し出している疑似断面画像を取得し、ボイドが存在するか否かを検査する(S20)。ボイドが見つからない場合には(S22N)、ボイド検査部48は、はんだの接合状態は正常と判断し(S24)、その旨を記録部34に出力する。ブリッジを検出した場合(S14Y)、はんだが溶融していない場合(S18N)、またはボイドが存在する場合には(S22Y)、それぞれブリッジ検査部44、溶融状態検査部46、およびボイド検査部48ははんだの接合状態は異常と判断して(S26)その旨を記録部34に出力する。はんだの状態が記録部34に出力されると、本フローチャートにおける処理は終了する。
【0032】
図4は、多層基板において層間の回路を接続するためのスルーホール56とその断面画像の関係を模式的に示した図であり、基板表面検出部38が基板表面を検出するための原理を説明するための図である。部品50と基板52とがはんだ54によって接合されている様子を拡大して模式的に図示している。
【0033】
基板52の内部を通る断面58d、基板表面を通る断面58c、基板の表側を通る断面58b、およびはんだ54のほぼ中心を通る断面58aにおいて、スルーホール56の断面を図示したものが、それぞれ第4の断面画像60d、第3の断面画像60c、第2の断面画像60b、および第1の断面画像60aである。
【0034】
基板表面検出部38は、第4の断面画像60dから第1の断面画像60aまで順番に、画像に映し出されているスルーホール56のエッジ強度を計算する。エッジ強度の計算には、例えばラプラシアンフィルタ等既知のエッジ抽出フィルタの出力値を利用すればよい。
【0035】
断面58bにおいてはスルーホール56は存在しないが、基板表面に近い断面においては、断面画像が基板に対して垂直な方向の分解能が低いことの影響により、スルーホール56が映し出される場合がある。そのため、第2の断面画像60bにおいても、スルーホール56が映し出されることはあり得る。しかしながら、第4の断面画像60dや第3の断面画像60cにおけるスルーホール56のエッジ強度と、第2の断面画像60bにおけるスルーホール56とのエッジ強度とを比較すると、前者は後者に比べて顕著に大きい。そこで、基板表面検出部38は、第4の断面画像60dから第1の断面画像60aまで順番に、画像に映し出されているスルーホール56のエッジ強度を計算し、エッジ強度が顕著に小さくなる直前の断面を表面画像として特定する。
【0036】
以上の方法により、基板表面検出部38は基板表面を特定できるのであるが、さらに特定の精度を上げる必要がある場合には、基板表面検出部38は、スルーホール56のエッジ強度を用いて基板表面として特定した断面を元にランドを検出することによって基板表面を特定することができる。ここで、「ランド」とは、基板表面上に存在する電導体である銅箔等の終端や中間に存在する丸や四角のパターン、あるいは銅箔そのもののパターンのことをいう。
【0037】
スルーホール56と比較してランドは薄いため、断面画像におけるコントラストが低く検出が難しい。しかし、上述の方法で特定した基板表面を検出の出発点とすることにより、基板表面に近い断面であることが保証されるので、高精度でランドを検出することが可能となる。ランドは基板表面に存在するため、ある断面においてランドが検出できれば、その断面が基板表面ということになる。
【0038】
以上説明したとおり、実施の形態にかかる基板表面検出部38は、断面画像のみに基づいて基板表面を特定することができる。レーザーを用いて基板表面を検出する手法など、断面画像以外の情報も利用することに基板表面を特定する場合に比べ、装置の小型化およびコストを削減できる点で有利である。特に、生産ラインの限られたスペースに検査装置を設置する場合には、装置が大型であることは時として導入の障害となることを考えると、装置の小型化は非常に重要である。また、レーザーを用いて基板表面を検出する場合には光学系の調整も必要となることと比較して、メインテナンスにかかるコストも抑えられる点で有利である。
【0039】
図5は、はんだを含むようにスライス厚が設定された疑似透過画像の一部66を模式的に示した図であり、ブリッジ検査部44がブリッジを検出する原理を説明するための図である。
【0040】
第1のウィンドウ62a、第2のウィンドウ62b、第3のウィンドウ62c、および第4のウィンドウ62dはそれぞれブリッジ検査用の検査ウィンドウであり、あらかじめオペレータ等によって設定されている。第1の輪郭64a、第2の輪郭64b、第3の輪郭64c、および第4の輪郭65dはそれぞれ、疑似スライス画像におけるBGAの輪郭である。第3の輪郭64cと第4の輪郭65dとのはんだは接合状態が正常であり、ほぼ円または楕円状の輪郭形状となっており、かつそれぞれの検査ウィンドウである第3のウィンドウ62c、および第4のウィンドウ62dの中に収まっている。
【0041】
第1の輪郭64aのはんだと第2の輪郭64bのはんだとが接合することにより、それぞれの間に好ましくない導電経路、すなわちブリッジが生じている。ブリッジが生じた場合、はんだの輪郭は検査ウィンドウからはみ出ることになる。図5において第1の輪郭64aは第1のウィンドウ62aからはみ出ている。
【0042】
輪郭が検査ウィンドウからはみ出たとき、輪郭と検査ウィンドウとの間にふたつの交点が生じる。検査ウィンドウの中心からそれらふたつの交点を見込んだ角度をαとすると、αの大きさによりはんだの輪郭が検査ウィンドウからはみ出ている量を推定することが可能である。そこで、ブリッジ検査部44は、疑似断面画像生成部40からはんだが映し出されている疑似断面画を取得して角度αを計算し、角度αが所定の角度を超えたときブリッジが生じたと判断する。ここで「所定の角度」とは、ブリッジが生じたか否かを判断するための基準の角度である。この角度はあらかじめ実験によって定めておけばよく、例えば5度程度とすればよい。所定の角度は0度よりも大きいことはあり得ることである。輪郭が検査ウィンドウをはみ出たとしても、必ずしもブリッジが形成されるわけではないからである。
【0043】
ブリッジ検査部44がブリッジを検出した場合、その時点ではんだの接合状態は異常であると判断できるので、溶融状態検査およびボイド検査は省略する。これにより、溶融状態検査およびボイド検査にかかる時間を省略することができる。
【0044】
図6は溶融状態検査部46の内部構成を模式的に示した図である。溶融状態検査部46は境界検出部68と、直径測定部70とを含む。
【0045】
図7Aは、はんだの溶融状態が良好で、基板と部品とがはんだによって十分に接合されている場合の、基板表面におけるはんだ72を模式的に示した図である。図7Bは、はんだの溶融状態が悪く、基板と部品とがはんだによって十分に接合されていない場合の、基板表面におけるはんだ72を模式的に示した図である。
【0046】
はんだの溶融状態が良好な場合には、図7Aに示すように、はんだ72の表面付近とその内部との間にコントラストの差が生じる。その結果、はんだの境界部分にリング状の縁74が出現する。一方、はんだの溶融状態が良好でない場合には、図7Bに示すように、はんだ72の表面付近とその内部との間にコントラストの差は生じにくく、はんだの溶融状態が良好な場合ほど顕著にはリング状の縁74生じない。リング状の縁74が生じたことの主な原因は、断面画像の再構成に用いる透過画像の枚数が少ないことが原因で生じたアーティファクトであるが、リング状の縁74ははんだの溶融状態を推定するための手がかりとなる。
【0047】
そこで、境界検出部68はリング状の縁74に基づいて、はんだの溶融状態を推定する。具体的には、基板表面におけるはんだ72に対してエッジ抽出処理を行い、所定の大きさ以上のエッジ強度を持つエッジを連結することにより、リング状の縁74の生成を試みる。この結果、例えば半周以上のリング状の縁74が生成された場合には、はんだの溶融状態は良好であると判断する。所定のエッジ強度やはんだの溶融状態の判断に際してのリング状の縁74の連結度合いなどは、基板や撮像装置の状態に応じて実験的に定めればよい。また、一度定めたエッジ強度や度合いは記録部34に格納しておき、そこから読み出して用いる構成としてもよい。
【0048】
以上の方法により、境界検出部68ははんだの溶融状態を推定することができるのであるが、さらに推定の精度を上げるために、基板表面におけるはんだ72の直径76を利用することもできる。
【0049】
はんだの溶融状態が良好な場合の基板表面におけるはんだ72と、良好でない場合における基板表面におけるはんだ72とを比較すると、前者は後者よりも基板表面上で広く分布している。例えば、はんだの溶融状態が極端に悪い場合には、基板表面にはんだが存在しない場合もあり得る。そこで、直径測定部70は、基板表面におけるはんだ72の直径76(はんだ72が楕円形状の場合にはその長径)を計測することにより、はんだの溶融状態を推定する。部品が決まればそのはんだボールの大きさも決まるため、基板表面におけるはんだ72の平均的な直径もあらかじめ調べることができる。直径測定部70はこの平均的な直径を基準として計測した直径76との比較をする。その結果、例えば計測した直径76が平均的な直径以上の長さがあればはんだの溶融状態は良好と判断する。
【0050】
上記でははんだ72の基板表面上での分布をその直径を用いて推定する場合について説明したが、直径測定部70は面積等、はんだ72の基板表面上での分布状態を表す他の情報を用いてもよい。
【0051】
境界検出部68および直径測定部70がともにはんだの溶融状態が良好であると判断した場合、溶融状態検査部46として、はんだの溶融状態は良好であると判断する。このように、リング状の縁74の検出と直径76とのふたつの異なる観点からはんだの溶融状態を推定し、そのいずれもが良好であると推定された場合にはんだの溶融状態は良好であると判断する。このため、はんだの溶融状態が良好でない場合の見落としが少なくなる点で有利である。もし、境界検出部68および直径測定部70の推定精度が十分に高い場合には、いずれか一方のみを用いてもよい。その場合推定にかかる時間が省けるため、全体としての検査効率を上げられる点で有利である。
【0052】
溶融状態検査部46がはんだの溶融状態が悪いと判断した場合、その時点ではんだの接合状態は異常であると判断できるので、ボイド検査は省略する。これにより、ボイド検査にかかる時間を省略することができる。
【0053】
図8は、部品50と基板52とを接合するはんだ54の疑似透過画像およびその断面の位置を模式的に示した図である。はんだ54を上部(記号78a)、中部(記号78b)、下部(記号78c)の3つに分割し、対応する疑似透過画像がそれぞれ上部疑似透過画像80a、中部疑似透過画像80b、下部疑似透過画像80cである。疑似透過画像作成に際し、はんだ54を上部78a、中部78b、下部78cに分割するのは、上部78aまたは下部78cに存在するボイドははんだの接合状態としては異常であるが、中部78bに存在するボイドははんだの接合状態としては正常と判断できる場合もあるからである。
【0054】
ボイドは気泡(空気)であり、はんだと比較して放射線の吸収率が低い。したがって、放射線の吸収率を画像化したものである疑似透過画像において、はんだの中にボイドが存在するとその領域の画素値に明確な差が現れる。例えば、放射線の吸収率が大きいほど画素値が低くなるように画像化した場合には、ボイドの画素値は大きくなり、明るい領域として描画される。
【0055】
そこで、ボイド検査部48は、上部疑似透過画像80a、中部疑似透過画像80b、下部疑似透過画像80cそれぞれについて画素値が小さく暗い領域であるはんだの中から明るい領域の検出を試みる。その結果、上部疑似透過画像80aまたは下部疑似透過画像80cから所定の面積以上の明るい領域が検出された場合、あるいは所定の個数以上の明るい領域が検出された場合には、ボイド検査部48は、ボイドが存在すると判断し、はんだの接合状態が異常であると判断する。図8においては、上部疑似透過画像80a中の空白領域(記号82a)、中部疑似透過画像80b中の空白領域(記号82b)、下部疑似透過画像80c中の空白領域(記号82c)がそれぞれボイド領域を表す。
【0056】
ここで所定の面積とは、ボイド検査部48がはんだの中にボイドが存在するか否かを特定するための基準面積である。また所定の個数とは、ボイド検査部48がはんだの中にボイドが存在するか否かを特定するためのボイド領域の個数である。基準面積やボイド領域の個数は、マウスやキーボード等の図示しない入力装置を介して、オペレータが自由に設定できる。また、一度設定した値は記録部34に格納され、そこから読み出して設定することもできる。
【0057】
基準面積としては、複数のボイド領域が検出された場合にはその領域の合計面積としてもよいし、その中の最大面積としてもよい。また、中部疑似透過画像80bでボイドが検出された場合には、はんだの接合状態が異常であるとは判断しないが、中部疑似透過画像80bでボイドが検出された旨をモニタ12に表示し、オペレータに知らせるようにしてもよい。
【0058】
前述したとおり、ブリッジ検査部44、溶融状態検査部46、ボイド検査部48の検査結果は記録部34に格納され、モニタ12に表示される。オペレータはモニタ12の表示を確認することにより、はんだの接合状態を確認することができる。ブリッジ検査部44、溶融状態検査部46、ボイド検査部48におけるそれぞれの検査結果は定量化されているため、閾値やそれに基づく判断等のアルゴリズムを導入することにより、はんだの接合状態を自動で確認することも可能となる。
【0059】
以上の構成による動作は以下のとおりである。まず生産ライン中で、断面画像生成部36は検査対象となる基板の断面画像を生成し、疑似断面画像生成部40は疑似断面画像を生成する。検査部42ははんだの接合状態を判断する。オペレータが検査部42の判断結果を確認するようにしてもよいし、検査部42の判断結果に基づいて自動的にはんだの接合状態を判別するようにしてもよい。
【0060】
以上のように、実施の形態によれば、基板の断面画像からはんだの接合状態を簡便に判別することができる。
【0061】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0062】
上記の説明においては、ブリッジ検査部44、溶融状態検査部46、ボイド検査部48はこの順番で直列にはんだの接合状態を検査し、上流の検査結果によっては実行されないこともある場合について説明したが、上流の検査結果によらず、すべて実行することもできる。この場合、すべての検査対象について異なる観点から検査することになるため、検査の信頼性を高められる点で有利である。この場合、ブリッジ検査部44、溶融状態検査部46、ボイド検査部48は同時に並列に実行するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0063】
10 PC、 34 記録部、 36 断面画像生成部、 38 基板表面検出部、 40 疑似断面画像生成部、 42 検査部、 44 ブリッジ検査部、 46 溶融状態検査部、 48 ボイド検査部、 68 境界検出部、 70 直径測定部、 100 放射線検査装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板および電子部品を含む被検査体の断面画像を画像解析し、前記断面画像の中から基板表面を映し出す表面画像を特定する基板表面検出部と、
前記表面画像を基準として前記断面画像に映し出されている前記基板と前記電子部品とを接合するはんだの領域を特定し、前記はんだを映し出す前記断面画像を積み上げることにより擬似的に撮像範囲に厚みを持たせた疑似断面画像を生成する疑似断面画像生成部と、
前記表面画像に映し出された前記はんだの領域および前記疑似断面画像に映し出された前記はんだの領域を画像解析することにより、前記はんだの接合状態の良否を推定する検査部とを含むことを特徴とする検査装置。
【請求項2】
前記基板表面検出部は、前記断面画像を画像解析することで前記基板の表面またはその内部にのみ存在する電子部品の画像を検出し、当該電子部品の画像が映し出されているか否かを調べることで前記表面画像と特定することを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記検査部は、前記疑似断面画像を画像解析することにより、近隣のはんだ同士が接合することにより生じた導体間の導電経路であるブリッジの有無を特定するブリッジ検査部を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記検査部は、前記疑似断面画像を画像解析することにより、はんだ接合部内の気泡であるボイドが存在するか否かを特定するボイド検査部を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の検査装置。
【請求項5】
前記検査部は、前記表面画像を画像解析することにより、はんだの溶融不足によって基板と部品との間の接合が不足しているか否かを特定する溶融状態検査部を含むことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の検査装置。
【請求項6】
前記溶融状態検査部は、前記表面画像を画像解析することにより、前記表面画像に映し出されている前記はんだの領域を特定し、前記はんだの溶融状態が良好の場合に前記はんだの溶融状態が不良の場合と比較して前記領域の境界部分に顕著に出現するアーティファクトの有無を調べることにより、前記はんだの溶融状態を検査する境界検出部を含むことを特徴とする請求項5に記載の検査装置。
【請求項7】
前記溶融状態検査部は、前記表面画像を画像解析することにより、前記表面画像に映し出されている前記はんだの領域を特定し、前記はんだ領域の大きさがはんだの溶融状態の良否を判断するために定められた基準の大きさ以上であるか否かを測定することにより、前記はんだの溶融状態を検査する測定部を含むことを特徴とする請求項5または6に記載の検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−149737(P2011−149737A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−9343(P2010−9343)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【出願人】(595039014)株式会社サキコーポレーション (31)
【Fターム(参考)】