説明

極低温容器およびタンクの断熱のための方法およびシステム

溝−隆起の協働アセンブリ構造、および、流体絶縁材料をパネル内に注入するための溝を備える少なくとも二重層の絶縁パネルを有する極低温容器およびタンク用の絶縁システムが、これらの容器およびタンクの絶縁の改良を実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極低温容器およびタンクの断熱のための方法およびシステム、ならびに、そのような絶縁システムおよび方法に使用されるのに適した絶縁プレートに関する。
【背景技術】
【0002】
多くが低沸点を有しそのため標準状態(20℃、760mmHg)下で気体状態で存在する、例えば、液体アンモニア、ヘリウム、水素、酸素、窒素、メタン、エタン、プロパンなど液体状態のガスなど、低沸点流体を輸送するとき、液体は同じ質量の気体状態にあるときに比べてかなり小さい容積しか必要としないことから、これらの流体を液体形態にするために可能な限り低温まで冷却して、それにより、それらを大量に輸送するのを容易にすることが有利である。しかし、このような輸送での問題は、輸送容器の絶縁状態があまり良好でない場合に大部分の流体がいわゆる「蒸発損」を介して消失してしまうことであり、そのため、それらの容器およびタンクをかなり良好に熱的に絶縁することが非常に重要である。これらの極低温流体に対しての温度間隔は、−50℃から−273℃の間、好ましくは−100℃から−250℃の間、より好ましくは−125℃から−200℃の間にある。これらのタンクに保管されることができる関連する流体に対する輸送温度は、上で説明したように、それらの流体の沸点以下である。容器に近づいて面しいている表面においては関連する流体の沸点にかなり近い温度になり、容器から離れて面している表面においては周囲温度に近い温度になることから、このような絶縁用に使用される絶縁材料は、非常に急な温度勾配に対応できさらにそれに対して耐性がなければならない。加えて、このような絶縁材料は、容器の周囲に連続する層を有して、周囲への/周囲からの温度伝達の部位を可能な限り少なくすることを実現しなければならない。
【0003】
圧力を考慮し、ただし、さらに、最も好適な容積対表面比を考慮すると、上述したこれらの流体を球形の容器で輸送することが有利である(ただし、円筒形、角柱形および回転楕円形、あるいはさらには立方体などの他の形状の容器も該当してよいことから、本発明による方法およびシステムは必ずしもこの形状に限定されない)。容器のこのような幾何学的設計の問題は、絶縁体が、3次元において湾曲する表面に対して適合可能でなければならないことである。(ただし、円筒形の側面は2次元において湾曲し、立方体の側面は平坦である。)したがって、上で説明した極低温容器用の絶縁システムは、これらの幾何学形状のすべてのタイプに対しても適合可能でなければならない。
(従来技術)
関連する従来技術のなかでは、米国特許第3,948,406号明細書から、絶縁材料から作られたセルの母体と、さらに母体セル間の連結部内の好ましくはポリウレタンの絶縁材料とからなる熱的絶縁ライニング材を用いた、氷点下の温度での液化ガスの保管用の保管容器が知られている。米国特許第3,948,406号明細書はまた、そのようなライニング材を形成する方法を開示している。この従来技術によるライニング材は、選択された熱的絶縁材料の複数のブロックが配置されるときにそれらのブロックの下および間および上に重合可能なまたは硬化可能な重合体組成物を加えることによりライニング材が構成されるときに、その部位に層が形成されることにより、この重合可能な組成物は、その後にその部位で重合されるおよび/または硬化させられる一種のモルタルを構成する。
【0004】
米国特許第3,420,396号明細書から、波形壁と、容器の外壁の内向きの方向の起伏部内に当接する方式で嵌合される絶縁ブロックとから構成される熱的に絶縁されたタンクが知られている。
【0005】
日本の特許では、円筒形タンクの半球形部分とそのタンクの円筒形体との境界の近傍に
位置されるスタッドブロックに作用する最大曲げモーメントを介して曲げモーメントの合計を低下させる円筒形極低温タンク用の熱絶縁構造体を開示している。その構造体は、外見上、積層された層の間の中間位置のワイヤネットを用いて積層される方式で配置されさらにバインダとして合成発泡樹脂体を備える絶縁材料の当接部分によって形成される。
【0006】
以前は、球形容器の周囲に連続して巻着されるストリップの形態の熱絶縁材料を増設することが一般的であり、このことにより、絶縁材料が容器(上記参照)の表面上で確実に一続きになるようするために、このストリップの各巻着部の間の接合領域が、端部領域の互いの残部で固着または溶接される必要があった。
【0007】
これを図1に示す。
このストリップは、通常、単一層の容器の表面上に配置される。この絶縁材料の素材は、通常、一般的に断熱用の材料として使用されるポリスチレンであり、その理由は、ポリスチレンが軽量で製造するのが容易だからである。しかし、本発明は、この絶縁材料に限定されるものではない。
【0008】
また、絶縁材料のプレートは、極低温容器を絶縁するために、単一のプレート層の形態で使用されてきた。従来技術の絶縁プレートによる手法を図2に示す。この手法には、プレートの製造において公差に対しての高度な要求を伴う(小さい公差)。挿入時のプレートの接合では、鋳型の使用が必要となり、表面には、塑造/鋳造に続いての後処理が必要となる。
【0009】
しかし、低沸点流体の輸送に関する、より厳格な規定のために、単一の層のこのような絶縁材料ではもはや十分であると見なされない。上で説明したように、ストリップの形態でもう1つの単層の絶縁材料を単独で追加することは、経済的に実現可能ではなく、その結果、これらの極低温容器およびタンクの適切な絶縁に関しての問題が発生する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、1つの側面からこの問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による、極低温容器を絶縁するためのシステムおよび方法では、例えば展伸または押出し加工されたポリスチレン(EPS)のプレートが使用されるが、ただし、絶縁フォーム材の製造において絶縁性および/または気泡性を有する他の材料も可能である。このような材料の例として、発泡ポリエチレン、展伸されたポリスチレン、および発泡ポリウレタンがある。これらのプレートは、平坦な表面体として存在する場合、これらのプレートから極低温容器の表面までの距離が15mmを超えるべきではないことから、絶縁される表面の曲率に適合されたサイズにあり、好ましくは、これらのプレートは容器の壁に対して平坦に重なる。空気が良好な絶縁材料であることから、この距離は、すべて同一に限定されることはない。これらのプレートは、これらのプレートが取り付けられる表面に対して適合された曲率を有するように製造されることもできるが、これにより、プレートの価格が上がり、これらのプレートの製造がより複雑になることから、これは好ましくない。したがって、プレートを平坦にすることがより好ましく、ただし、覆われる容器の寸法が小さい場合は、プレートの寸法も小さい方がより好ましい。
【0012】
本発明によるシステムの一実施形態を示している図3に典型的なクリア距離を示す。図中の数値をすべてmm単位で示している。また、図中の絶縁体の構造は、任意のタンク半径に適用可能である。
【0013】
本発明による絶縁システムのプレートの一実施形態を図4〜8に示す。また、これらの図では、固定ブラケットと、結合部と、絶縁パネルの間の空間に対して考えられる絶縁材料とを含む、本発明による絶縁システムの構造体を示す(絶縁材料は、圧力下で空間に注入されるポリウレタンなどの発泡絶縁材料であることが好ましい)。示すように、本発明による絶縁システムを用いて、溝−隆起システムの補助を介して一体に接合された少なくとも2つの層の絶縁プレートを有する絶縁体が得られる。
【0014】
このシステム内の絶縁プレートの層の数は、2層を超えて、さらに3層、4層、または5層を含んでもよいが、層の最少の数は2である。
本発明による絶縁システムおよび方法で使用されるように適合される有利なおよび好適な絶縁プレートアセンブリを図9に示す。このプレートアセンブリは、プレートアセンブリの一方の側に中間の溝/傾斜とプレートアセンブリの他方の側に突出する隆起部とを形成するために互いにずらされた構成で一体に固着または溶接された3層の絶縁プレート(EPS)を有して示されている。図4および図5にも示すように、アセンブリの中間層はさらに、アセンブリ内で底部プレートおよび上部プレートとの2つの隣接する側面に対して変位させられて/ずらされてよく、プレートアセンブリの隣接する2つの側面で突出する隆起部とプレートアセンブリの隣接する残りの2つの側面で溝とを有する、アセンブリのプレート構造体の4つのすべての側面の周囲で溝/隆起システムを形成する。
【0015】
上述したように、本発明による絶縁システムは、少なくとも2層の絶縁プレートを有し、したがって、絶縁プレートのアセンブリは、最低でも2層の絶縁プレートを含むことができる。しかし、互いにずらされた構成に配置される2層の絶縁プレートが1つのアセンブリ構造を形成し、その場合、プレートアセンブリが固定された構造体を形成するが、3層構造体に関連して上で説明した中間の溝−隆起システムを形成しない。これは、容器の周囲を覆う連続した絶縁表面を形成するための発泡体を付加することが、結果として、発泡体が構造体の上面全体にわたって支障なく展伸されることであることを意味する(アセンブリの少なくとも1つのプレートを切断することにより溝が形成され、それにより、関連するプレートの製造コストが増大することがない限りにおいて)。したがって、上で説明した、本発明による絶縁システムのための3層アセンブリ構造を採用することがより好適であり、ただし、好適ではないが2層のシステムも実現可能である。
【0016】
図9に示すように、3層プレートアセンブリはまた、本発明によるプレートアセンブリの絶縁プレート層の少なくとも2つの、好ましくは3つのすべての層の間に以下で開示するタイプのクラックバリアを含む。
【0017】
本開示で「固着」材料および「発泡絶縁材料」に言及するときは、それらの材料は互いに異なっていてよいが、単一で同じ材料を含むことが好ましい。そのような材料の一例として、EPSに対して良好な接着性を有しそのため「固着」を構成する発泡ポリウレタンがあり、発泡ポリウレタンはまた、良好な絶縁性を有しており、そのため「発泡絶縁材料」を構成する。
【0018】
本発明による絶縁システムの一実施例を示している図5では、「互いにずらされた固着結合部」ならびに「グラスウール結合部」が示されており、また、本発明による絶縁システムで使用されることができる他の材料も示されている。この実施形態では、グラスウール(あるいは、さらにはロックウールまたは他の繊維質不活性絶縁材料)が、プレート結合部の間に吹き込まれることができ、ポリウレタンが、固着材料として結合部/注入溝(以下を参照)内に注入されることができる。
【0019】
本発明による複層(2層以上)絶縁熱バリアを配置するとき、通常、最初に絶縁プレート(または絶縁プレートアセンブリ)を極低温容器の上部から配置する(しかし、このこ
とは、断熱プレートの配置は容器の表面上における任意の位置で開始されてよいことから、厳密に必要というわけではない)。複数のプレート/単一のプレートアセンブリは、容器の壁に等間隔で釘着/ボルト固定されて、システムにおいて不可欠な固定を確実にする。この釘着/ボルト固定は、原理的には、可能性としての熱橋に相当するが、これらは、特に絶縁プレートの第2の層を通じて絶縁される(あるいは、釘着/ボルト固定の位置が決定されて、プレートアセンブリの底部層内で釘着/ボルト固定のための孔が形成されると、釘着/ボルト固定は、本発明による最後の絶縁構造体への発泡絶縁材料(ポリウレタン)の注入により熱的に絶縁される)。例えば、容器の壁にこれらのプレートを固着することなど、これらのプレートを固定するための他の形態も可能である。
【0020】
次に、複数のパネルが、プレート/パネルアセンブリの側端部内の溝−隆起システムの補助を介して連続的に互いに掛着される。可能性としての1つの代替の溝−隆起システムでは、床パネル内または床用の積層プレート内に存在するシステムと同様の自己固定式の「クリックシステム」を備えるプレートを装備することが考えられる。図6に示すように、絶縁プレートの間の接合領域は、絶縁プレートの一部分が配置された後に結合部に注入される絶縁材料のポリウレタンを接合/固着するための展伸トンネルを備える。この絶縁および展伸材料は、圧力下で注入されることにより、流出して、本発明による絶縁プレート間の緊密でない端部領域をすべて密封する。
【0021】
絶縁プレートのこの第1の層が配置、固定、および密封された後、この層の上に、合成または天然材料のネット、シート、または布の形態でクラックバリアが配置され、これは、あるいは、第1の絶縁層の上で硬化して、第1の層の上に同様の方式で配置される絶縁プレートの第2の層のための土台を形成する高分子シール材が含浸されてよい。クラックバリアの一例として、ポリウレタンが含浸された0.01〜100mmの範囲内のメッシュサイズのポリエチレンまたはポリスチレンのシートまたはネットが考えられる。
【0022】
本発明による容器/タンク絶縁体が、上で説明したようなあらかじめ作られたプレートアセンブリで構成されている場合、1つまたは複数のクラックバリアを含む層、および、タンク絶縁体のための他の構造体(例えば、ボルト/釘用の抜き取り具の形態の固定スポット、絶縁接着剤用の溝など)の形成は、あらかじめ作られたアセンブリに包含される(例えば、図9を参照されたい)。クラックバリアは、絶縁システムが耐えなければならない急な温度勾配が理由で絶縁層が分離するのを防止する。
【0023】
図7および図8に、本発明による絶縁システムの構造体の一実施形態の図を示す。
また、本発明による絶縁プレート/アセンブリの配置の方法を図10〜18に示す。
特に、本発明による個別の絶縁プレートのそれぞれの製造方法を図16に示す。図18はまた、図8に示す絶縁アセンブリの層形成に関連して参照されることができる。
【0024】
本発明の絶縁体プレートの重要な特徴、および、本発明による絶縁体構造の全体の挿入/組立処理を介して密封性が向上された材料の重要な特徴は、絶縁プレートの溝−隆起アセンブリ形態上の隆起/溝の結合端部内の高分子物質(例えば、ポリウレタン)のための展伸トンネル61を設けることである(図6を参照)。このトンネル61は絶縁プレート内に設けられて、展伸する絶縁/固着材料が充填される連続体のウェブを形成する。また、図6に示すように、本発明による絶縁プレートの溝−隆起アセンブリのこの特徴は、絶縁プレート用に使用される平坦なまたは半平坦なプレートに関連する下にあるタンクの任意の曲率を収容する。さらに、プレートの間の結合部の隆起または溝の一部分は、展伸トンネル61用の密封/嵌合端部を形成する高い端部62を備える。絶縁プレートは、好ましくは、軟質のまたは柔軟な材料(例えば、発泡ポリエチレンまたは発泡ポリスチレン)から作れられることから、プレートは、展伸トンネルの結合領域内の一部の応力を吸収する。この半弾性効果は、絶縁プレートの間の結合部ための主にまたは完全に緊密な展伸ト
ンネルを確実にする。また、絶縁構造体の下の容器表面の曲率のために、展伸トンネルの周囲の結合端部は、互いに対して押し付けられて、展伸トンネルを形成する端部の緊密な結合をさらに確実にする。
【0025】
絶縁プレートの絶縁材料の半軟質/柔軟な性質により、プローブ/注入針を容器/極低温タンクの周囲の間隙の位置で展伸トンネル内に挿入することが可能になり、あるいは、注入ポートを選択された絶縁プレートに固有の間隔で設けて、展伸トンネルへの通路を形成してもよい。
【0026】
一実施形態では、上で説明した絶縁プレートを組み立てた後で、連続する絶縁構造体が展伸トンネル61内に展伸(ポリウレタン)発泡体を確実に注入するのを可能にする。
さらに図6に示すように、隣接する絶縁プレート間の垂直方向での結合の割れ目が、互いに対してずれることができ、その結果、展伸トンネル61が、絶縁プレートの水平方向および垂直方向の両方の結合端部に設けられる。
【0027】
本発明による絶縁アセンブリの別の実施例が以下に続く。それらの絶縁性も示している。
【実施例】
【0028】
(導入部)
LNGタンク用の絶縁パネルで試験を行った。
この試験の目的は、展伸されてさらに部分的に伸張性のポリスチレンから作られた絶縁パネルの単位面積当たりの熱コンダクタンスの値を確認することであり、ならびに、これらの温度の絶縁システムの実際のケースで発生する引張力を試験パネルに作用させることである。熱コンダクタンス(以下、Kvalueと称する)を、約20℃の温度の温かい側および約−160℃の温度の冷たい側の水平位置および垂直位置で測定した。また、−162℃から10℃の間で変化する試験パネルの冷たい側の温度範囲内で、引き続き、5度の温度変動後に測定した。これらの温度変化は、実際のケースで試験パネルの内部に引張力を発生させる。
(試験装置)
大型の保護熱板装置の2×3mの試験区間で試験を行った。温かいプレートおよび冷たいプレートの配置を図1に示す。
【0029】
試験パネル内に引張力をシミュレートするために、周囲絶縁体の内側の合板枠を温かいプレートおよび冷たいプレートのアルミニウム側面内に挿入する。
(試験絶縁体)
絶縁試験片を可撓性材料の領域を有する展伸されたポリスチレンのスラブから作り、スタッドボルトを用いて0.005mのアルミニウムシートに取り付けた(図2)。
【0030】
試験片を、装置に取り付けられるように準備された状態で、Ticon Isolering ASより取り寄せた。試験片のサイズは、2×3×0.265mである。
(装置内の試験パネルの挿入)
試験装置の対流のない周囲絶縁体を、Styrofoam(スチロフォーム)RMスラブおよびファイバーグラス布を接着剤を用いて一体に接合して構成する。角部分は、二方可撓性伸張性Styrofoam(スチロフォーム)から作られる。
【0031】
試験片を試験領域に挿入して、Ticon Isolering A/Sより入手したポリウレタン接着剤を用いて周囲絶縁体に密閉した。
周囲絶縁体を、空気を通さないように密封して、シール剤を用いて装置のアルミニウム試験プレートに強固に結合させた。周囲絶縁体の断面図を図3に示す。
(計測)
絶縁パネルの温かい表面上および冷たい表面上の温かいプレートおよび冷たいプレートで、銅−コンタンタン熱電対を用いて温度を測定した。
【0032】
絶縁体の温かい側の温度をアルミニウム箔防湿材上で測定し、冷たい側の温度をアルミニウムシート上で測定する。
追加の熱電対を、絶縁体パネルの内側の8つの異なる領域および4つの異なる断面に取り付けた(図19)。
【0033】
すべての温度を400チャンネルのデータ収集システムに記録して、処理用のローカルコンピュータに転送した。
装置の主熱板の枝分かれ部分へ入力される電力を、精密な抵抗器および精密な電圧計によって測定して、精密な電力計によって制御した。
(熱コンダクタンスの計算)
対流のない周囲絶縁体を通しての熱漏洩の測定を、74kg/mの密度でロックウールが充填された試験空洞を用いて、装置の対流のない水平方向の位置で事前に行った。この材料の熱伝導率を、水平方向に保護された熱板装置内で測定した。試験パネルの挿入後、水平位置および垂直位置の装置を用いて総熱流量を測定した。こられの2つの位置での試験パネルに対する装置の見掛熱コンダクタンスを以下のように計算した。
value=Q/(F×T;)
value:試験パネルの単位面積当たりの見掛熱コンダクタンス(W/mK)
:試験パネルを通る熱流量(W)
F:テストパネルの面積(m
:試験パネルの両端の温度差(K)
=Q−Q
:総熱流量(W)
:周囲絶縁体を通る熱流量(W)
=C×T
:較正試験によって求められた周囲絶縁体の熱コンダクタンス(W/K)
:周囲絶縁体の両端の温度差(K)
対流の影響は、水平位置および垂直位置で測定された見掛熱コンダクタンスを比較することによって推定される。
【0034】
測定値の精度は、実際値に対して±71%より高いと推定される。
(試験結果)
1回のクーリングダウン後、対流のない水平位置(試験190)で、ならびに垂直位置(試験191)で熱コンダクタンスを測定した。同一の平均温度に調整されて水平位置で測定された値と比較して、kvalueの約3%の増加が測定された。これは、十分に装置の精度範囲内にあり、この差異の大部分は、おそらく試験片内の対流によるものではない。
【0035】
次いで5回のクーリングダウン後、再度、垂直位置(試験192)および水平位置(試験193)で熱コンダクタンスを測定した。これらの試験と試験190および191との間で有意な差は見られなかった。
【0036】
試験結果を表Iに示す。
【0037】
【表1】

【0038】
ブリッジまたは対流電流のために複数の熱電対を絶縁パネルの内側に配置した。表IIおよび図20、図21、図22および図23を参照されたい。試験パネルの温かい側および冷たい側の測定された温度の検査を、図20、図21、図22および図23に示す。
(試験パネルの検査)
冷たい側を低い温度(−162°0)にして、水平位置の温かい側から試験パネルを視覚的に検査した。この場合、試験パネルには、冷たいプレートの低い温度によって発生する引張力が部分的に作用し、試験パネル内部で、クラック、損傷、開口部、またはチャネルを観察することが容易になる。
【0039】
開口部が試験パネル内に形成されて、内部の不具合またはクラックが露見される。
予想されたように、構造内で、損傷部、不具合または欠陥部は見られなかった。
冷たい側が−162℃である試験片を装置から取り外し、冷たい側から検査した。絶縁体の冷たい側で適切な観察を行うために、冷たい側のアルミニウムシートを取り外した。チャネル、不具合または欠陥部は見られなかった。
(結論)
試験パネル構造の見掛熱コンダクタンスの水平位置から垂直位置へのわずかな増加は、おそらく、試験パネル内部で対流電流がない、あるいは、非常に小さな対流電流があることを示す。試験後の完全な検査により、パネルの取付けの間の適切な作業、ならびに、パネル内部にクラックまたは損傷がないことが示される。
【0040】
試験パネル構造は、測定された温度において適正値の見掛熱コンダクタンスを有し、適切な方式においてはこの試験の間に作用した引張力には耐えると見られる。
【0041】
【表2】

【0042】
(導入部)
Sunpor SE(剛性および可撓性のポリスチレン)の試験を、3つの温度レベル、20℃、−70℃、および−153℃で行った。合計で8回の異なる試験を行ったが、3つ温度レベルで両方の材料に対してすべての試験を行ったわけではない。
【0043】
低い温度での試験に対して規格は作られていない。試験の基準として、現行の規格(ISOまたはASTM)を採用する。
各試験に対して、現行の規格に合わせてなされた修正を記載している。
【0044】
低い温度の試験をPhilips cryogeneratorによって冷却されたコールドボックス内で行う。空気流中の熱電対を用いて温度を測定する。コールドボックスの見取図を図24に示す。
【0045】
一部の試験では、伸びなどの値は、試験片の試験中に記録される。これは、試験片がコールドボックス内に配置される場合では非常に困難である。これらのタイプの試験では、ビデオテープに記録を取るが、これは、後に適切な精度で値を読み取ることを意味する。(試験プログラム)
各材料および各温度レベルに対して行った、試験を説明する試験プログラムの調査を、剛性材料に対しては表2.1に、可撓性材料に対しては表2.2に示す。試験片の数はクライアントによって決定される。
【0046】
【表3】

【0047】
【表4】

【0048】
(試験方法の説明)
(試験 1/2:圧縮試験/ヤング率)
この試験はISO844−1978:「Compression test for rigid materials」に記載されている。
【0049】
採用した試験方法は以下の通りである。
2片の合板の間に試験片を固着する。下側部分を試験枠に固定する。合板プレートの上側に、移動可能な金属バーを用いて三角形の合板プレートを固定する。この三角形のプレートを、2つのホイールにわたって延びているロープに接続する。タンクに水を充填することによりこのロープを緊張させて、材料を圧縮する。力の関数としての変位を、ダイヤルゲージ圧縮試験により記録する。
【0050】
使用される試験片は、以下に示す55×55×40mmの寸法を有する。合計4つの試験片を各温度レベルで試験した。
圧縮強度σ10(kPa)は、以下の式より求められる。
【0051】
【数1】

【0052】
上式で、
は、到達した最大力(ニュートン)、
は、試験片の断面の初期面積(mm)である。
【0053】
10%の相対変形での圧縮応力σ10(kPa)は、以下に式より定義される。
【0054】
【数2】

【0055】
上式で、
10は、10%の相対変形に対応する力(N)、
は、試験片の断面の初期面積(mm)である。
(試験 3/4:最大引張応力/ヤング率)
この試験はISO1926:「Standard test method for Cellular plastics−Determination of tensile properties of rigid materials」に記載されている。
【0056】
この規格では、合計5片の試験を規定している。使用した試験片は、以下で示す形状および寸法を有する。
この試験片は、規格で規定されている試験片より多少小さい。こうすることにより、コールドボックス内で試験を行うことが可能になる。
【0057】
標準のエポキシ系接着剤を用いて試験片を2片の合板に固着した。下側部分を試験枠の底部に固定する。上側部分には、2つのホイールにわたって延びるロープを固定する。ロープの他方の端部にタンクを固定する。タンクに水を充填することにより、材料を圧縮する。作用する力に対応する伸びを5kg間隔で記録する。
【0058】
3〜6分の間に割れ目が得られるように水の充填速度を調整する。
キロパスカルで表される最大引張応力σは、以下の式より求められる。
【0059】
【数3】

【0060】
上式で、
は、試験中に試験片に作用する最大力(N)、
lは、試験片の狭小区間の平行する長さ部分の元の幅(mm)、
hは、試験片の狭小区間の平行する長さ部分の元の厚さ(mm)である。
【0061】
ヤング率は、力の関数としての伸びの曲線の傾斜角として定義される。
【0062】
【数4】

【0063】
上式で、
δは、引張応力(N/mm)、
Δlは、δでの材料の伸び、
は、試験片の長さである。
(試験5 剛性率)
試験方法は、ISO規格1922−1981:「Cellular plastics−determination of shear strength of rigid materials」に記載されている。
【0064】
4つの試験片を各温度レベルで試験した。規格では、5つの試験片を規定している。
規格では、以下の寸法(長さ−幅−厚さ)を有する試験片を規定している:254mm×50mm×25mm。
【0065】
コールドボックス内で試験を行うことを可能にするために、これらの試験ではより小さい試験片を使用した。以下の寸法(長さ−幅−厚さ)を使用した:100mm×40mm×25mm。
【0066】
始めは、いくつかの大きな試験片で試験したが、丈夫な物質であることから、サイズを縮小して、割れ目を得るために必要な力を低減した。試験装置は、最初使用した試験片に割れ目を発生させるのに必要な重量に耐えることができなかった。
【0067】
エポキシ系接着剤を用いて試験片を2片の合板に固着した。一方の合板部片を試験枠に固定したので、他方部分は移動可能である。移動可能部分に、2つのホイールにわたって延びてさらに他方端部にタンクを備えるロープを固定した。タンクに水を充填することにより、材料を圧縮して、移動可能な合板部片および試験片を上方に移動させる。
【0068】
移動可能な合板部片に約1センチメートルの間隔で線を引く。定規を試験枠の底部に固定する。この定規は試験の間は動かない。このシステムでは、材料の伸びを確認することが可能になる。
【0069】
割れ目が得られるまでタンクに水を充填する。試験結果をビデオテープに記録し、後で伸びを読み取る。
試験装置を図27に示す。
(試験6 熱膨張)
この試験は、ISO4897−1985;「Cellular plastics−Determination of the coefficient of linear thermal expansion of rigid materials at sub−ambient temperatures」に記載されている。
【0070】
規格では、以下の寸法の計5つの試験片の試験を規定している。
長さ:900÷0−20mm
幅:100から300mm
厚さ:25から50mm
この試験で使用される材料は以下の寸法を有する。
長さ:244.5mm
幅:43.5mm
厚さ:42.0mm
各材料で計4つの試験片を試験する。
【0071】
試験片を2片の合板の間に固着する。下側部分を試験枠に固定する。上側合板プレートの中心に、ステンレス鋼ロッドを固定する。このロッドを、コールドボックスの外側に位置するダイヤルゲージに連結する。材料の冷却または加熱の間の異なる温度で材料の圧縮/膨張を記録する。
【0072】
平均線膨張係数(−63℃から20℃)の計算:
【0073】
【数5】

【0074】
上式で、
αは、平均線膨張係数(ケルビン度の逆数)、
は、選択された高い温度(ケルビン度)、
ΔLは、TとTとの温度間での試験片の長さの変化(ミリメートル)、
は、23±2℃における試験片の元の長さ(ミリメートル)。
(試験7 熱伝導率)
この試験は、ASTM規格C177−85:「Standard test method for Steady−State Heat Flux Measurements and Thermal Transmission Properties by Means of the Guarded−Hot−Plate Apparatus」に従って行われる。
(試験8 ポアソン比)
この試験を規定する規格はない。ポアソン比μは、引張応力を加える間における材料の伸びと縮みの比として定義される。
【0075】
【数6】

【0076】
上式で、
Δbは、幅の変化(mm)
は、元の幅(mm)
Δlは、長さの変化(mm)
は、元の長さ(mm)。
【0077】
試験片は、試験3および4で使用される試験片と同一の形状および寸法を有し、試験は、同様の方法で行われる。
(試験結果)
平均値(x)および標準偏差(s)を各試験の表に記載する。
(剛性材料)
(試験1/2 圧縮試験/ヤング率)
【0078】
【表5】

【0079】
試験結果を図28および図29に示す。
(試験3/4 最大引張応力1ヤング率)
【0080】
【表6】

【0081】
【表7】

【0082】
試験結果を図32および図33に示す。
(試験6 熱膨張)
【0083】
【表8】

【0084】
試験結果を図34に示す。
(試験7 熱伝導率)
【0085】
【表9】

【0086】
試験結果を図35に示す。
(試験8 ポアソン比)
【0087】
【表10】

【0088】
(可撓性材料)
(試験1/2 圧縮試験/ヤング率)
【0089】
【表11】

【0090】
試験結果を図36および図37に示す。
【0091】
【表12】

【0092】
試験結果を図38および図39に示す。
(試験314 最大引張応力/ヤング率)
【0093】
【表13】

【0094】
試験結果を図40および図41に示す。
【0095】
【表14】

【0096】
試験結果を図42および図43に示す。
(試験5 剛性率)
【0097】
【表15】

【0098】
(x)=平均値、(s)=標準偏差
試験結果を図44および図45に示す。
【0099】
【表16】

【0100】
試験結果を図46および図47に示す。
(試験6 熱膨張)
【0101】
【表17】

【0102】
試験結果を図48に示す。
【0103】
【表18】

【0104】
試験片3および4を開始温度−163℃で試験した。温度は−60℃まで上昇した。その後、温気をコールドボックス内に吹きつけた。この空気供給が原因で鋼ロッドが試験片から跳んだため、試験を停止しなければならなかった。試験結果を図49に示す。
(試験7 熱伝導率)
【0105】
【表19】

【0106】
試験結果を図35に示す。
【0107】
【表20】

【0108】
試験結果を図35に示す。
(試験8 ポアソン比)
【0109】
【表21】

【0110】
【表22】

【0111】
(結論)
2方向の剛性の展伸されたポリスチレンおよび可撓性の展伸されたポリスチレンに対して、計8回の異なる試験を3つの温度レベル(−163℃、−70℃および20℃)で行う。
【0112】
コールドボックス内で試験を行うことを可能にするために、この試験を記載している現行の規格を修正する。
異なる複数の試験に対しての曲線上に示すように、試験結果のばらつきは有意である。特に剛性材料の場合、材料の伸びおよび縮みは最小であり、正確な値を記録することが困難であった。
(導入部)
LNGタンク用の絶縁パネルで試験を行った。
【0113】
この試験の目的は、間に伸張性材料(冷たい側)およびポリウレタン(温かい側)のストリップを備える展伸されたポリウレタンのスラブから作られた絶縁パネルの単位面積当たりの熱コンダクタンスの値を確認することであり、ならびに、これらの温度における絶縁システムの実際のケースで発生する引張力を試験パネルに作用させることである。熱コンダクタンス(以下、Kvalueと称する)を、約20℃の温度のパネルの温かい側および約−160℃の温度の冷たい側の水平位置および垂直位置で測定した。また、−162℃から10℃の間で変化する試験パネルの冷たい側の温度範囲内で、引き続き、5度の温度変動後に、温かい端部および冷たい端部で4時間の安定化期間を経て、Kvalueを測定した。これらの温度変化は、実際のケースで試験パネルの内部に引張力を発生させる。
(試験装置)
これらの試験用に特別に構築された大型の保護熱板装置の2×3mの試験区間で試験を行った。
【0114】
温かいプレートおよび冷たいプレートの配置を図1に示す。
実際に挿入されたときに試験パネル内に引張力を発生させるために、周囲絶縁体の内側の合板枠を温かいプレートおよび冷たいプレート内のアルミニウムプロフィール内に挿入する。
(試験絶縁体)
スラブの間の冷たい側に可撓性材料のストリップを備え温かい側にポリウレタンのスト
リップを備える展伸されたポリウレタンのスラブから絶縁試験片を作り、スタッドボルトを用いて0.005mのアルミニウムシートに取り付けた(図2)。試験片を、装置に取り付けられるように準備された状態で、UNITOR ASA,Marine Contractingより取り寄せた。
【0115】
試験片のサイズは約2.0×3.0×0.29mであった。
(試験パネルの装置内への挿入)
試験装置の対流のない周囲絶縁体を、接着剤を用いて一体に接合されたStyrofoam(スチロフォーム)RMスラブおよびファイバーグラス布から構築する。角部分は、二方可撓性伸張性Styrofoam(スチロフォーム)から作られる。
【0116】
試験片を試験領域に挿入して、UNITOR ASA,Marine Contractingより入手したポリウレタン接着剤を用いて周囲絶縁体に密閉した。
周囲絶縁体を、空気を通さないように密封して、シール剤を用いて装置のアルミニウム試験プレートに強固に結合させた。周囲絶縁体および絶縁パネルの一部の断面を図50に示す。
(計装)
絶縁パネルの温かい表面上および冷たい表面上の温かいプレートおよび冷たいプレートで、銅−コンスタンタン熱電対を用いて温度を測定した。この試験で使用される温度範囲用の国際温度目盛(ITS−90)でトレース可能な±0.3℃より高い精度で熱電対ワイヤを較正する。
【0117】
絶縁体の温かい側の温度をアルミニウム箔防湿層上で測定し、冷たい側の温度をアルミニウムシート上で測定する。
追加の熱電対を、絶縁体パネルの内側の10個の異なる領域および3つの異なる断面に取り付けた(図51)(温かい側、中間領域、および冷たい側)。
【0118】
すべての温度を400チャンネルのデータ収集システムに電圧として記録して、処理用のローカルコンピュータに転送した。
装置の主熱板の3つの区間へ入力される電力を、精密な抵抗器および較正された精密なデジタル電圧計によって測定して、較正された精密な電力計によって制御した。
(熱コンダクタンスの計算)
一部がポリウレタン接着剤の接合部である対流のない周囲絶縁体を通しての熱漏洩の測定を、70kg/mの密度でロックウールが充填された試験空洞を用いて、装置の対流のない水平方向の位置で事前に行った。この材料の熱伝導率を、水平方向に保護された熱板装置内で測定した。試験パネルの挿入後、水平位置および垂直位置の装置を用いて総熱流量を測定した。こられの2つの位置での試験パネルに対する装置の見掛熱コンダクタンスを以下のように計算した。
value=Q/(F×T
value:試験パネルの単位面積当たりの見掛熱コンダクタンス(W/mK)
:試験パネルを通る熱流量(W)
F:テストパネルの面積(m
:試験パネルの両端の温度差(K)
=Q−Q
:総熱流量(W)
:周囲絶縁体を通る熱流量(W)
=C×T
:較正試験によって求められた周囲絶縁体の熱コンダクタンス(W/K)
:周囲絶縁体の両端の温度差(K)
対流の影響は、水平位置および垂直位置で測定された見掛熱コンダクタンスを比較する
ことによって推定される。
【0119】
測定値の精度は、NIST Technical Note 1297(1993)に記載の方法に従って(NIST = National Institute of Standards and Technology、ゲーサーズバーグ、米国)、このような複雑な構成において可能な限り良好な状態で、実際値の±7%より高いと推定される。
(試験結果)
1回のクーリングダウン後、対流のない水平位置(試験198)で、ならびに垂直位置(試験199)で熱コンダクタンスを測定した。
【0120】
次いで5回の温度循環後、再度、垂直位置(試験200)および水平位置(試験201)で熱コンダクタンスを測定した。
水平方向試験(試験198)(第1の水平方向)と垂直方向試験(試験199)(第1の垂直方向)との間で、kvalueの約5.5%の増加が測定された。
【0121】
水平方向試験(試験198)(第1の水平方向)と垂直方向試験(試験200)(第2の垂直方向)との間で、kvalueの約9.5%の増加が測定された。
試験198(第1の水平方向)と201(第2の水平方向)との間で有意な差は測定されなかった。
【0122】
これらの差異は、測定方法の精度と比較して小さな差である。
水平位置の値と比較した場合の垂直位置のk値の増加は、おそらく、チャプタ8:「試験パネルの検査」に記載する試験パネルの端部で観察されるクラックに起因する。垂直方向試験(試験199)(第1の垂直方向)と垂直方向試験(試験200)(第2の垂直方向)との間でのk値の増加は温度循環の間におけるクラックの発生に起因すると説明することもできる。
【0123】
これらのクラックは、接着剤接合部に近傍の端部のみで観察され、おそらく、実際の絶縁パネルでは発生しない。
試験結果を表7.1に記載する。
【0124】
【表23】

【0125】
熱橋または対流電流に関する情報を得るために複数の熱電対を絶縁パネルの内側に配置した。表9.1および図52、図53、図54、および図55を参照されたい(不都合にも、一部の熱電対は試験中に破損した)。
【0126】
試験パネルの温かい側および冷たい側の測定された温度の検査を、図52、図53、図
54、および図55に示す。
(試験パネルの検査)
(試験パネルの温かい側からの検査)
冷たい側を低い温度(−162℃)にして、水平位置の温かい側から試験パネルを視覚的に検査した。この場合、試験パネルには、冷たいプレートの低い温度によって発生する引張力が部分的に作用し、試験パネル内部で、クラック、損傷、開口部、またはチャネルを観察することが容易になる。
【0127】
アルミニウム防湿層の内側、または、ポリウレタンスラブ(図50を参照)の間のポリウレタン接合部上のシール剤(ERFO GUARD FP−VB)の内側にへこみまたはチャネルがあるかどうかを調べるために、温かい側を注意深く検査した。
【0128】
特にアルミニウム防湿層のへこみの周囲に損傷またはチャネルがあるかどうかを調べるために、ポリウレタンスラブの間で使用するシール剤(ERFO GUARD FP−VB)を非常に注意深く検査した。
【0129】
損傷、クラック、またはチャネルは全く見られず、アルミニウム箔および絶縁体への接着は非常に適切であるように見えた。このシーリング剤は、適切な形態で試験に耐えた。(試験パネルの内側からの検査)
開口部が試験パネル端部内に形成されて、内部の不具合またはクラックが露見される。
【0130】
アルミニウム防湿層およびシール剤(ERFO GUARD FP−VB)内のへこみを、特に不良な接着に対して内側から注意深く検査した。
内側には損傷またはチャネルは見られなかったことから、アルミニウム箔表面で観察されたへこみは、おそらく、温かい側の弱い圧縮により発生したものであり、測定値に対する影響はない。
【0131】
アルミニウム箔およびシール剤の絶縁体の内側への接着は、非常に適切であると見なされた。
いくつかの小さなクラックが、図56に示す試験装置の周囲絶縁体と試験パネルの間の境界部に近傍の試験パネル(2.0×3.0m)の端部領域で見られた。これらのクラックのほとんどは、スラブ間の接合部に近傍のポリウレタンスラブの中央に位置していた。クラックは、いずれの場所においても、冷たい側から温かい側へ達するようには見られない。
【0132】
より精密な検査では、クラックは、おそらく端部領域内のより可撓性の低い領域のために、試験パネルの端部と周囲絶縁体(接着接合部)との間の境界部で生じると見られることが示された。
【0133】
全般的なパネル設計に対して、温度分布、応力、および変形において実際の稼動条件を最も実際的にシミュレートする試験パネルの中央部分では、これらのクラックの兆候は見られず、他の欠陥部も観察されなかった。
【0134】
このこと、ならびに、試運転後の試験パネルから切断された部片の検査に基づいて、クラックは、おそらく、試験装置内に試験パネルを挿入するのに使用される接着接合部の境界部に近傍の望ましくない高い引張力に起因するに違いないと結論づけることができる。さらに、クラックは小さく、互いに連結することは一切ないが、このことにより、測定された熱コンダクタンスの小さな増加を説明することができる。
(試験パネルの冷たい側からの検査)
次に、試験パネル、および、冷たい側が−162℃の周囲絶縁体を、低温状態の冷たい
側から検査された装置補助から取り外した。
【0135】
冷たい側のアルミニウムシートを取り外して、絶縁システムの冷たい側の適切な全体像が得られた。
クラックを除いて、上述の端部領域には、チャネル、不具合、または欠陥部は見られなかった。
【0136】
一部のスタッドボルトをパネルから取り外して注意深く検査した。検査されたスタッドボルトには損傷または不具合はないように見られた。
(結論)
試験パネルの水平位置から垂直位置への見掛熱コンダクタンスの小さな増加は、おそらく試験パネル内部に非常に小さな対流電流があるに違いないことを示しており、これは、チャプタ8で言及した観察されたクラックにおそらく起因する。
【0137】
図51、および52から55、ならびに表9.1に示す試験パネル内部の温度の検査は、ポリスチレンスラブの間(例えば、図57のパネルIIとVIとの間)の垂直接合部の冷たい側上の可撓性材料内に小さな対流電流があると見られるが、熱コンダクタンスの測定された値に対する影響は非常に小さいと見られることを示す。
【0138】
試験後の注意深い検査では、パネルの取付けの間の適切な作業、ならびに、パネル内部に損傷または不具合がなく上述した小さなクラック(パネル構造に起因しない)のみが見られたことが示される。
【0139】
試験パネル構造は、測定された温度において適正値の見掛熱コンダクタンスを有し、適切な方式においてはこの試験の間に作用した引張力には耐えると見られる。さらに、端部領域の引張力を制御することが可能である場合には、おそらくクラックまたは不具合は見られない。
【0140】
【表24】

【0141】
【表25】

【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】

【図20】

【図20−2】

【図21】

【図21−2】

【図22】

【図22−2】

【図23】

【図23−2】

【図24】

【図25】

【図26】

【図27】

【図28】

【図29】

【図30】

【図31】

【図32】

【図33】

【図34】

【図35】

【図36】

【図37】

【図38】

【図39】

【図40】

【図41】

【図42】

【図43】

【図44】

【図45】

【図46】

【図47】

【図48】

【図49】

【図50】

【図51】

【図52】

【図53】

【図54】

【図55】

【図56】

【図57】

【図58】

【図59】

【図60】

【図61】

【図62】

【図63】

【図64】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁材料のプレートを有する極低温タンクまたは容器用の絶縁構造であって、前記プレートが、それらの側面端部に相互に協働する固定構造体を備えてそれらのアセンブリを介して絶縁材料の主に一続きの層を形成し、前記絶縁プレートの前記固定領域が、アセンブリ内の各絶縁プレートの間の任意選択のクラックあるいは割れ目および/または開口部を充填するために、重合性の絶縁材料を圧力下で付加するための少なくとも1つの溝を追加的に有する、絶縁構造。
【請求項2】
前記絶縁プレートが、展伸されたあるいは押出し加工されたポリスチレン(EPS)製である、請求項1に記載の絶縁構造。
【請求項3】
前記重合性の絶縁材料が、絶縁パネルの間連する前記溝内に注入される液体材料である、請求項1または2に記載の絶縁構造。
【請求項4】
前記絶縁液体が、ポリウレタンである、請求項3に記載の絶縁構造。
【請求項5】
前記極低温タンク/容器が、−50℃から−273℃の間、好ましくは−100℃から−250℃の間、より好ましくは−125℃から−200℃の間の温度の範囲内で冷却された液体を輸送するように適合される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の絶縁構造。
【請求項6】
互いの上面に配置されてさらにプレートの間の接触表面に天然材料の合成品のネット、シートまたは布の形態のクラックバリアを含む少なくとも2つの絶縁パネルを有し、前記パネルアセンブリに液体発泡絶縁材料を供給するために前記パネルアセンブリの少なくとも1つの端部内に溝を有する絶縁パネルアセンブリ。
【請求項7】
絶縁パネルの数が3であり、前記アセンブリの少なくとも1つの層が、他の層のパネルの位置決めに関連して配置される、請求項6に記載の絶縁パネルアセンブリ。
【請求項8】
前記アセンブリの少なくとも2つの側面端部に隆起−溝構造を形成するために、前記アセンブリの中間の前記層が、上部層および底部層に関連して配置される、請求項7に記載の絶縁パネルアセンブリ。
【請求項9】
前記アセンブリの4つのすべての側面端部に隆起−溝構造を形成するために、前記中間層が、前記上部層および前記底部層に関連して配置される、請求項8に記載の絶縁パネルアセンブリ。
【請求項10】
球形の極低温容器/タンクを熱的に絶縁するための、請求項6〜9のいずれか一項に記載の絶縁パネルアセンブリの使用。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の絶縁構造を増設する方法であって、前記極低温タンクの表面上に土台材料(SCRIM)の層を付加し、その材料の上に接着剤材料を含む第1の絶縁層を付加し、前記接着剤材料に請求項6〜9のいずれか一項に記載の少なくとも1つの絶縁パネルまたは絶縁パネルアセンブリを付加し、さらに加えて、前記絶縁パネルまたは前記絶縁パネルアセンブリ内の関連する注入溝に発泡質で液体の絶縁材料を圧力下で付加し、前記液体絶縁材料が、連続する絶縁層を形成するように前記関連する注入溝内で硬化することができ、絶縁パネルアセンブリが使用されない場合、主に前記第1の層に対応する絶縁パネルの第2の層が上に付加されたクラックバリアが前記絶縁層に付加され、この層形成処理が任意選択的に任意の回数繰り返され、前記絶縁構造の上に任意選択的に放射線反射材料の箔が付加される、方法。
【請求項12】
前記絶縁パネルが、展伸されたあるいは押出し加工されたポリスチレンのパネルを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記注入溝に付加される前記絶縁液体発泡材料が、ポリウレタンを含む、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の絶縁層または絶縁パネルアセンブリの前記絶縁パネルの一部またはすべてが、前記容器/タンクの壁に釘着/ボルト固定される、請求項11〜13のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2008−542651(P2008−542651A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−514576(P2008−514576)
【出願日】平成18年5月30日(2006.5.30)
【国際出願番号】PCT/NO2006/000203
【国際公開番号】WO2006/130019
【国際公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(507395326)
【Fターム(参考)】