樹脂ベース基板用離型材およびその製造方法
【課題】樹脂ベース基板の製造に使用された際に、樹脂ベース基板から容易に剥がすことが可能な剥離性に優れた樹脂ベース基板用離型材およびその製造方法を提供する。
【解決手段】樹脂ベース基板の製造に用いられる離型材1Aであって、アルミニウム箔2と、アルミニウム箔2の片面または両面に形成され、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂およびシリコーンとからなる樹脂塗膜3とを備え、樹脂塗膜3の樹脂ベース基板に対する接着強度が1〜200g/cmであることを特徴とする。
【解決手段】樹脂ベース基板の製造に用いられる離型材1Aであって、アルミニウム箔2と、アルミニウム箔2の片面または両面に形成され、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂およびシリコーンとからなる樹脂塗膜3とを備え、樹脂塗膜3の樹脂ベース基板に対する接着強度が1〜200g/cmであることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂ベース基板を製造する際に使用する樹脂ベース基板用離型材およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
樹脂ベース基板の1つとして樹脂ベースプリント基板があり、その製造は、以下のようにして行われている。まず、ガラスクロス、紙等に樹脂を含浸させてから、乾燥して半硬化させたシート(以下、プリプレグと称す)を作製する。このプリプレグと、銅箔と、ステンレス製の鏡面板とを積層したものを複数個積み重ねてから、その上下に熱板を設置して加圧する。次に、熱板、鏡面板を取り除き、積層物を解体することにより、樹脂が硬化したプリプレグと、その表面に接着された銅箔とからなる樹脂ベースプリント基板が製造される。なお、このとき、樹脂ベースプリント基板の平坦度も整えられる。また、銅箔を積層せずに製造されたプリプレグのみのものも樹脂ベースプリント基板として使用されている。
【0003】
前記の製造においては、鏡面板とプリプレグ(樹脂ベースプリント基板)とが加熱加圧によって接着し、積層物を解体した際に、製造された樹脂ベースプリント基板から鏡面板が剥がれ難くなるという問題がある。この問題を解決するために、鏡面板とプリプレグとの間に離型材を配置して積層物を構成することが行われている。そして、特許文献1では、離型材として、エポキシ系樹脂に剥離剤としてシリコーンを混合したコート剤、または、必要に応じて表面粗化剤をさらに混合したコート剤がアルミニウム箔の片面または両面に設けられたものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平4−9号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の離型材を用いた場合には、鏡面板とプリプレグとの接着は防止できるが、製造された樹脂ベースプリント基板と離型材とが強く接着して、離型材が樹脂ベースプリント基板から剥がれ難くなるという問題がある。
また、樹脂ベース基板の1つである樹脂フィルムの溶液流延法を用いた製造においても、同様に、樹脂フィルムの支持体として用いた離型材が樹脂フィルムから剥がれ難くなるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、このような問題を解決すべく創案されたもので、その課題は樹脂ベース基板の製造に使用された際に、樹脂ベース基板から容易に剥がすことが可能な剥離性に優れた樹脂ベース基板用離型材およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明に係る樹脂ベース基板用離型材は、樹脂ベース基板の製造に用いられ、アルミニウム箔と、前記アルミニウム箔の片面または両面に形成され、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂およびシリコーンとからなる樹脂塗膜とを備え、前記樹脂塗膜の前記樹脂ベース基板に対する接着強度が1〜200g/cmであることを特徴とする。
【0008】
前記構成によれば、樹脂塗膜が、主剤としてのエポキシ系樹脂と、硬化剤としてのメラミン系樹脂と、剥離剤としてのシリコーンとからなり、樹脂ベース基板に対する接着強度が所定範囲であることによって、樹脂ベース基板用離型材の剥離性が向上し、樹脂ベース基板用離型材が樹脂ベース基板から容易に剥離する。
また、熱が効率よく伝達されるため、樹脂ベース基板の生産性が向上する。さらに、樹脂ベースプリント基板用として用いた場合には、静電気の発生が少ないため、離型材への異物付着が少なく、樹脂ベース基板の清浄度が向上する。さらに、アルミニウム箔を備えることによって、樹脂ベース基板の製造の際に発生するガスによる汚れ等を防止できる。
【0009】
本発明に係る樹脂ベース基板用離型材は、前記樹脂塗膜の膜厚が、0.5〜5μmであることが好ましい。
前記構成によれば、樹脂塗膜の膜厚が所定範囲であることによって、樹脂塗膜の接着強度を所定範囲に調整しやすくなり、樹脂ベース基板用離型材の剥離性がさらに向上する。
【0010】
本発明に係る樹脂ベース基板用離型材は、前記樹脂塗膜が、エポキシ系樹脂100質量部に対して、シリコーンが0.07〜3質量部であることが好ましい。
前記構成によれば、樹脂塗膜の組成が所定範囲であることによって、樹脂塗膜の接着強度を所定範囲に調整しやすくなり、樹脂ベース基板用離型材の剥離性がさらに向上する。
【0011】
本発明に係る樹脂ベース基板用離型材は、前記樹脂塗膜中に、SiO2、MgO、Al2O3、BaSO4およびMg(OH)2から選択される1種以上の表面粗化粒子をさらに含有することが好ましい。
前記構成によれば、前記樹脂塗膜中に表面粗化粒子をさらに含有することによって、樹脂皮膜の表面が凹凸になり、その凹凸によって樹脂ベース基板の表面が凹凸になり、艶消し表面となる。
【0012】
本発明に係る樹脂ベース基板用離型材は、前記表面粗化粒子の粒子径が、15nm〜4μmであることが好ましい。
前記構成によれば、表面粗化粒子の粒子径が所定範囲であることによって、樹脂ベース基板の表面の凹凸量が調整される。
【0013】
本発明に係る樹脂ベース基板用離型材は、前記樹脂ベース基板が樹脂ベースプリント基板であることが好ましい。
本発明の樹脂ベース基板用離型材は、樹脂ベースプリント基板の製造に用いられた際に、剥離性等の顕著な向上が見られる。
【0014】
本発明に係る製造方法は、前記樹脂ベース基板用離型材の製造方法であって、アルミニウム箔の片面または両面に、主剤としてのエポキシ系樹脂と、硬化剤としてのメラミン系樹脂と、剥離剤としてのシリコーンとからなる樹脂塗料を塗布して樹脂塗膜を形成する塗布工程と、前記樹脂塗膜に125〜240℃で0.5〜60秒間の焼付け処理を施す焼付け工程とを含むことを特徴とする。
【0015】
前記手順によれば、所定組成を有する樹脂塗膜に所定条件の焼付け処理を施す焼付け工程を行うことによって、所定範囲の接着強度を有する樹脂塗膜がアルミニウム箔の片面または両面に形成される。
【0016】
本発明に係る製造方法は、前記樹脂ベース基板用離型材の製造方法であって、アルミニウム箔の片面または両面に、主剤としてのエポキシ系樹脂と、硬化剤としてのメラミン系樹脂と、剥離剤としてのシリコーンと、SiO2、MgO、Al2O3、BaSO4およびMg(OH)2から選択される1種以上の表面粗化粒子とからなる樹脂塗料を塗布して樹脂塗膜を形成する塗布工程と、前記樹脂塗膜に125〜240℃で0.5〜60秒間の焼付け処理を施す焼付け工程とを含むことを特徴とする。
【0017】
前記手順によれば、表面粗化粒子をさらに含有する所定組成を有する樹脂塗膜に所定条件の焼付け処理を施す焼付け工程を行うことによって、所定範囲の接着強度を有し、かつ、樹脂ベース基板の表面を凹凸にする樹脂塗膜がアルミニウム箔の片面または両面に形成される。
【0018】
本発明に係る製造方法は、前記塗布工程において、アルミニウム箔の片面または両面に、前記樹脂塗料をグラビアコート法で塗布することが好ましい。
前記手順によれば、グラビアコート法で塗布することによって、樹脂塗膜の膜厚が均一となる。
【0019】
本発明に係る製造方法は、前記樹脂ベース基板が樹脂ベースプリント基板であることが好ましい。本発明に係る製造方法は、樹脂ベースプリント基板の製造に用いられた際に、好適となる接着強度等を有する樹脂塗膜がアルミニウム箔の片面または両面に形成される。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る樹脂ベース基板用離型材によれば、樹脂ベース基板の製造に使用された際に、樹脂ベース基板から容易に剥がすことが可能な優れた剥離性を有すると共に、耐熱性に優れ、樹脂ベース基板の清浄度、生産性が向上する。また、本発明に係る樹脂ベース基板用離型材によれば、樹脂ベース基板を製造する際の作業性に優れ、樹脂ベース基板の表面形状を調整することができる。特に、本発明に係る樹脂ベース基板用離型材は、樹脂ベース基板の1つである樹脂ベースプリント基板の製造に使用された際に好適な剥離性等を有する。
【0021】
本発明に係る製造方法によれば、剥離性、耐熱性に優れ、樹脂ベース基板の清浄度、生産性を向上させることが可能な樹脂ベース基板用離型材を製造できる。また、本発明に係る製造方法によれば、樹脂ベース基板の表面形状を調整できる樹脂ベース基板用離型材を製造できる。特に、本発明に係る製造方法は、樹脂ベース基板の1つである樹脂ベースプリント基板の製造に使用される樹脂ベース基板用離型材を好適に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る樹脂ベース基板用離型材の構成を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る樹脂ベース基板用離型材の他の構成を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る樹脂ベース基板用離型材の製造方法を示す工程フローである。
【図4】塗布方法の1つであるグラビアコート法を示す模式図である。
【図5】樹脂ベース基板の製造方法を示す模式図である。
【図6】図1の離型材の使用方法を示す熱板での加熱加圧後の模式図である。
【図7】図2の離型材の使用方法を示す熱板での加熱加圧後の模式図である。
【図8】図1の離型材の他の使用方法を示す熱板での加熱加圧後の模式図である。
【図9】図2の離型材の他の使用方法を示す熱板での加熱加圧後の模式図である。
【図10】図1の離型材の他の使用方法を示し、(a)は熱板での加熱加圧前、(b)は加熱加圧後の模式図である。
【図11】溶液流延法を用いた樹脂フィルムの製造方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<樹脂ベース基板用離型材>
本発明に係る樹脂ベース基板用離型材(以下、離型材と称す)の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
離型材は、樹脂ベース基板の製造の際に用いられるものである。本発明において、樹脂ベース基板とは、電子部品を固定して配線するために用いられる樹脂ベースプリント基板(以下、プリント基板と称す)、または、溶液流延法で製造される樹脂フィルム等である。また、離型材の形状は、コイル状またはシート状であって、使用の際には所定長さに切断される。なお、離型材の使用方法の詳細については後記する。
【0024】
図1、図2に示すように、離型材1A、1Bは、アルミニウム箔2と、アルミニウム箔2の片面または両面に形成された樹脂塗膜3とを備え、樹脂塗膜3の樹脂ベース基板に対する接着強度が所定範囲であることを特徴とする。
以下、各構成について説明する。なお、樹脂ベース基板の1つであるプリント基板11A、11B(図5〜図9参照)の製造に用いられる離型材1A、1Bを例に挙げて説明するが、樹脂ベース基板の1つである樹脂フィルム11D(図11参照)の製造に用いられる離型材1A、1Bにおいても同様である。
【0025】
(アルミニウム箔)
アルミニウム箔2を構成するアルミニウム(アルミニウム合金を含む)の合金種は、特に限定されるものではないが、アルミニウム箔2の耐力が140〜270MPaとなるような合金種を選択することが好ましい。このような合金種としては、JIS規定の1000系、3000系合金等が挙げられる。また、アルミニウム箔2の耐力が140MPa未満であると、プリント基板を製造する際の作業性が低下し易く、耐力が270MPaを超えると、離型材1A、1Bの製造コストが高くなり易い。また、アルミニウム箔2の箔厚は、作業性および製造コストを考慮して、200μm未満が好ましく、20〜50μmがさらに好ましい。なお、アルミニウム箔2は、アルミニウムと銅の線膨張係数の違いから、プリント基板の銅箔の引張りシワを防止する作用もある。
【0026】
(樹脂塗膜)
樹脂塗膜3は、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂およびシリコーンとからなる。そして、樹脂塗膜3は、1〜200g/cmの接着強度を有する。接着強度は、後記する離型材1A、1Bの製造方法において、所定組成を有する樹脂塗膜3に所定条件の焼付け処理を行うことによって達成される。
【0027】
エポキシ系樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、アミン型エポキシ樹脂、可撓性エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、臭素化フェノキシ樹脂等が挙げられる。
【0028】
メラミン系樹脂としては、メチルエーテル化メラミン樹脂、ブチル化尿素メラミン樹脂、ブチル化メラミン樹脂、メチル化メラミン樹脂、ブチルアルコール変性メラミン樹脂等が挙げられる。また、メラミン系樹脂は、前記樹脂とブチル化尿素樹脂、ブチル化ベンゾグアナミン樹脂等との混合樹脂であってもよい。
【0029】
なお、エポキシ系樹脂の数平均分子量は2000〜3000、メラミン系樹脂の数平均分子量は500〜1000であることが好ましい。このような数平均分子量を有することによって、樹脂の塗料化が可能になると共に、樹脂塗膜の接着強度を所定範囲に調整し易くなる。
【0030】
シリコーンとしては、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、変性ジメチルポリシロキサン、これらの混合物等が挙げられる。ここで、変性とは、例えば、エポキシ変性、アルキル変性、アミノ変性、カルボキシル変性、アルコール変性、フッ素変性、アルキルアラルキルポリエーテル変性、エポキシポリエーテル変性、ポリエーテル変性、アルキル高級アルコールエステル変性、ポリエステル変性、アシロキシアルキル変性、ハロゲン化アルキルアシロキシアルキル変性、ハロゲン化アルキル変性、アミノグリコール変性、メルカプト変性、水酸基含有ポリエステル変性等が挙げられる。
【0031】
樹脂塗膜3の接着強度は、離型材1A、1B(樹脂塗膜3)をプリント基板11A、11B(プリプレグ12)の表面から引き剥がすのに要する力(最大強さ)を単位長さ(1cm)あたりで表したものである。そして、その試験方法は、JISC6481−1996の図6に記載された引き剥がし方法に準じて行い、具体的には離型材1A、1B(樹脂塗膜3)を、プリント基板11A、11B(プリプレグ12)の表面に対して、90度の角度で上方に引き剥がした。なお、引き剥がし速度は50mm/minとし、引き剥がしは室温で行った。
【0032】
接着強度が1g/cm未満である場合には、積層体を解体する際に、既に離型材1A、1Bが剥がれた状態になり、作業性が悪化する。接着強度が200g/cmを超える場合には、樹脂塗膜3(離型材1A、1B)の剥離性が低下し、離型材1A、1Bをプリプレグ12(プリント基板11A、11B)から剥離することが困難となる。
【0033】
樹脂塗膜3は、その膜厚が0.5〜5μmであることが好ましい。膜厚が0.5μm未満である場合には、樹脂塗膜3が薄膜すぎて形成が困難であるため、生産性が低下し易い。また、膜厚が5μmを超える場合には、樹脂塗膜3の剥離性のさらなる向上は見られず、樹脂塗膜3(離型材1A、1B)の製造コストが高くなり易い。また、樹脂塗膜3の膜厚は、後記する離型材1A、1Bの製造方法において、樹脂塗料を所定塗布量で塗布することによって達成される。
【0034】
樹脂塗膜3は、エポキシ系樹脂100質量部に対して、シリコーンが0.07〜3質量部であることが好ましい。シリコーンは樹脂塗膜3の剥離剤として機能する。シリコーンが0.07質量部未満である場合には、樹脂塗膜3の接着強度が大きくなるため、樹脂塗膜3の剥離性が低下し易い。シリコーンが3質量部を超える場合には、樹脂塗膜3の接着強度が小さくなるため、剥離時の作業性が悪化する。
【0035】
樹脂塗膜3は、エポキシ系樹脂100質量部に対して、メラミン系樹脂が40〜55質量部であることがさらに好ましい。メラミン系樹脂は硬化剤として機能する。メラミン系樹脂が40質量部未満である場合には、樹脂塗膜3の硬度が低くなり、接着強度が大きくなるため、樹脂塗膜3の剥離性が低下し易い。メラミン系樹脂が55質量部を超える場合には、樹脂塗膜3の硬化不足により、接着強度が大きくなるため、剥離時の作業性が悪化する。
【0036】
樹脂塗膜3は、前記エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂およびシリコーンに加えて、SiO2、MgO、Al2O3、BaSO4およびMg(OH)2から選択される1種以上の表面粗化粒子をさらに含有することが好ましい。樹脂塗膜3が表面粗化粒子を含有することによって、樹脂塗膜3の表面が凹凸となる。その凹凸によって、プリプレグ12(プリント基板11A、11B)の表面が凹凸となり、艶消し表面となる。表面粗化粒子の含有量は、樹脂塗膜3が凹凸化されれば特に限定されないが、エポキシ系樹脂100質量部に対して、1〜10質量部が好ましい。
【0037】
表面粗化粒子の粒子径は、15nm〜4μmであることが好ましい。ここで、粒子径は、走査電子顕微鏡(SEM)写真等から測定した平均粒子径(最大粒子径と最小粒子径の平均値)を意味する。表面粗化粒子の粒子径が前記範囲であることによって、樹脂塗膜3の表面の凹凸量が調整し易くなり、結果的にプリプレグ12の表面の凹凸量が調整し易くなる。具体的には、プリプレグ12の表面の凹凸量は、JIS規定の最大高さ粗さRyで4.0μm程度となる。
【0038】
<離型材の製造方法>
次に、離型材の製造方法について、説明する。
図3に示すように、離型材の製造方法は、塗布工程S1と、焼付け工程S2とを含むものである。以下、各工程について説明する。なお、樹脂ベース基板の1つであるプリント基板11A、11B(図5〜図9参照)の製造に用いられる離型材を例に挙げて説明するが、樹脂ベース基板の1つである樹脂フィルム11D(図11参照)の製造に用いられる離型材においても同様である。また、離型材の構成は、図1、図2を参照する。
【0039】
(塗布工程:S1)
塗布工程S1は、アルミニウム箔2の片面または両面に、主剤としてのエポキシ系樹脂と、硬化剤としてのメラミン系樹脂と、剥離剤としてのシリコーンとからなる樹脂塗料を塗布して樹脂塗膜3を形成する工程である。樹脂塗料は、アルコール等の有機溶媒にエポキシ系樹脂およびメラミン系樹脂を溶解した樹脂溶液にシリコーンを添加したものである。また、樹脂塗料における配合量(添加量)は、エポキシ系樹脂100質量部に対して、メラミン系樹脂が40〜55質量部、シリコーンが0.07〜3質量部であることが好ましい。
【0040】
塗布工程S1における塗布方法としては、樹脂塗膜3が形成できれば特に限定されるものではないが、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、カーテンフローコート法、静電塗装機を用いる方法等が用いられ、樹脂塗膜3の均一性、および、作業の簡便性からグラビアコート法が好ましい。また、塗布量としては、樹脂塗膜3が好ましい膜厚:0.5〜5μmとなるように、樹脂量として1.0〜2.0g/m2が好ましい。
【0041】
グラビアコート法は、ロール表面に設けられた凹部(セル)に満たされた樹脂塗料をアルミニウム箔に転写させることによって、アルミニウム箔2の表面に樹脂塗膜3を形成させる方法である。具体的には、図4に示すように、表面にセル23が設けられた下側ロール22の下部を樹脂塗料中に浸漬し、下側ロール22の回転によってセル23内に樹脂塗料を汲み上げる。そして、下側ロール22と、下側ロール22の上側に配置された上側ロール21との間にアルミニウム箔2を配置し、上側ロール21でアルミニウム箔2を下側ロール22に押し付けながら、下側ロール22および上側ロール21を回転させることによって、アルミニウム箔2が搬送されると共に、セル23内に汲み上げられた樹脂塗料がアルミニウム箔2の片面に転写(塗布)される。
【0042】
また、アルミニウム箔2の搬入側に、下側ロール22の表面に接触するようにドクターブレード24を配置することによって、セル23以外のロール表面に汲み上げられた過剰な樹脂塗料が取り除かれ、アルミニウム箔2の表面に所定量の樹脂塗料が塗布される。なお、セル23の番手(大きさおよび深さ)が大きい場合、または、樹脂塗料の粘度が高い場合には、アルミニウム箔2の片面に形成される樹脂塗膜3が平滑になり難くなる。したがって、アルミニウム箔2の搬出側にスムージングロール25を配置して、樹脂塗膜3の平滑度を維持してもよい。
【0043】
なお、アルミニウム箔2の両面に樹脂塗膜を3形成させる場合には、アルミニウム箔2の片面に樹脂塗膜3を形成させた後に、アルミニウム箔2を裏返して、再度、下側ロール22と上側ロール21との間に配置する。そして、前記と同様に、下側ロール22のセル23内の樹脂塗料をアルミニウム箔2の裏面に転写(塗布)する。
【0044】
(焼付け工程:S2)
焼付け工程S2は、前記工程S1で形成された樹脂塗膜3に125〜240℃(焼付け温度)で0.5〜60秒間(焼付け時間)の焼付け処理を施す工程である。このように、所定配合量の樹脂塗料で形成された樹脂塗膜に所定条件の焼付け処理を施すことによって、樹脂塗膜3のプリント基板11A、11B(プリプレグ12)に対する接着強度が所定範囲に制御される。本発明において、焼付け温度はアルミニウム箔2の到達温度である。また、焼付け処理に使用される加熱手段としては、従来公知の装置を使用する。
【0045】
焼付け温度が125℃未満、または、焼付け時間が0.5秒未満である場合には、樹脂塗膜3が硬化不足となり、樹脂塗膜3の接着強度が200g/cmを超え、剥離性が低下する。また、焼付け温度が240℃を超える場合には、樹脂塗膜3が劣化して、接着強度が200g/cmを超え、剥離時の作業性が悪化する。また、焼付け時間が60秒を超える場合には、生産性が悪化する。
【0046】
本発明に係る製造方法においては、前記塗布工程の樹脂塗料が、主剤としてのエポキシ系樹脂と、硬化剤としてのメラミン系樹脂と、剥離剤としてのシリコーンと、SiO2、MgO、Al2O3、BaSO4およびMg(OH)2から選択される1種以上の表面粗化粒子とからなるものであってもよい。
【0047】
具体的には、樹脂塗料は、前記したシリコーン添加樹脂溶液に表面粗化粒子をさらに添加したものである。このような表面粗化粒子を樹脂塗料にさらに添加することによって、樹脂塗膜3の表面が凹凸となり、この凹凸によってプリント基板11A、11B(プリプレグ12)が凹凸となり、艶消し表面となる。そして、このような艶消し表面を有するプリント基板11A、11Bを得るためには、樹脂塗料における表面粗化粒子の配合量(添加量)が、エポキシ系樹脂100質量部に対して、1〜10質量部であることが好ましい。また、表面粗化粒子の粒子径が15nm〜4μmであることがさらに好ましい。
【0048】
本発明に係る製造方法は、以上説明したとおりであるが、本発明を行うにあたり、前記各工程に悪影響を与えない範囲において、前記各工程の間あるいは前後に、他の工程を含めてもよい。例えば、塗布工程S1の前にアルミニウム箔2の表面を洗浄する洗浄工程を行ってもよい。
【0049】
<離型材の使用方法>
次に、離型材の使用方法について、樹脂ベース基板の1つであるプリント基板の製造の一例を挙げて説明する。
銅箔付きプリント基板は、以下の手順で製造される。
【0050】
図5に示すように、ガラスクロスまたは紙等に、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリイミド系樹脂等を含浸させ、乾燥させた半硬化したプリプレグ12を準備する。この半硬化したプリプレグ12の一面に対面するように銅箔13を配置する。そして、プリプレグ12の他面に本発明に係る離型材1Aの樹脂塗膜3が対面するように配置する。また、銅箔13、および、離型材1Aのアルミニウム箔2に対面するように鏡面板4(例えば、ステンレス板)をそれぞれ配置して、積層物を構成する。この積層物を複数個積み重ねてから、その上下に熱板5を配置する。
【0051】
次いで、この熱板5に150〜300℃で30kg/cm2以上の圧力を1時間以上加える。その結果、プリプレグ12の樹脂が硬化すると共に、一面に銅箔13が接着し、他面に樹脂塗膜3を介して離型材1Aが接着される(図6参照)。なお、一般的には、銅箔13の大きさが半硬化したプリプレグ12より大きく設定されているため、加熱加圧によるプリプレグ12の樹脂の外側への染み出しが防止される。
【0052】
加熱加圧終了後、熱板5および鏡面板4を取り除いて積層物を解体し、硬化したプリプレグ12に接着している離型材1A(樹脂塗膜3)を剥離することによって、銅箔付きのプリント基板11Aが複数製造される。なお、離型材1Aの剥離は、作業者が手作業で行ってもよいし、ロボット等を用いて行ってもよい。
【0053】
前記では、アルミニウム箔2の片面に樹脂塗膜3が形成された離型材1A(図1参照)を用いた例について説明したが、アルミニウム箔2の両面に樹脂塗膜3が形成された離型材1B(図2参照)を用いる場合について、一例として以下に説明する。
【0054】
図7に示すように、離型材1Bの両側に、半硬化したプリプレグ12、銅箔13、鏡面板4をこの順にそれぞれ配置して積層物を構成する。その積層物を複数個積み重ね、前記と同様に加熱加圧することによって、離型材1B(樹脂塗膜3)の両側に、樹脂が硬化すると共に銅箔13が接着したプリプレグ12が接着されたものが製造される。前記と同様にして積層物を解体し、プリプレグ12から離型材1B(樹脂塗膜3)を剥離することによって、銅箔付きのプリント基板11Aが複数製造される。
【0055】
次に、銅箔を有しないプリント基板の製造について説明する。
図8に示すように、半硬化したプリプレグ12の両側に、樹脂塗膜3がプリプレグ12に対面するように離型材1A、鏡面板4をこの順にそれぞれ配置して積層物を構成する。その積層物を複数個積み重ね、前記と同様に加熱加圧することによって、硬化したプリプレグ12の両側に離型材1A(樹脂塗膜3)が接着されたものが製造される。前記と同様にして積層物を解体し、プリプレグ12から離型材1A(樹脂塗膜3)を剥離することによって、プリプレグ12のみで構成されたプリント基板11Bが複数製造される。
【0056】
また、離型材1Bを用いる場合には、図9に示すように、離型材1Bの両側に、半硬化したプリプレグ12、樹脂塗膜3がプリプレグ12に対面するように離型材1A、鏡面板4をこの順にそれぞれ配置して積層物を構成する。その積層物を複数個積み重ね、前記と同様に加熱加圧することによって、硬化したプリプレグ12の一面に離型材1A(樹脂塗膜3)、他面に離型材1B(樹脂塗膜3)が接着されたものが製造される。前記と同様にして積層物を解体し、プリプレグ12から離型材1A(樹脂塗膜3)および離型材1B(樹脂塗膜3)を剥離することによって、プリプレグ12のみで構成されたプリント基板11Bが複数製造される。
【0057】
図10(a)、(b)に示すように、本発明に係る離型材1Aまたは離型材1B(図示せず)は、接着樹脂14を銅箔13に塗布した樹脂付き銅箔15をコア材16に接着して積層した多層プリント基板11Cの製造にも使用される。コア材16の両側に樹脂付き銅箔15、離型材1Aまたは離型材1B、鏡面板4をこの順にそれぞれ配置して積層物を構成する。その積層物を複数個積み重ね、前記と同様に加熱加圧し、その後、積層物を解体することによって、複数の多層プリント基板11Cが製造される。ここでは、離型材1Aまたは離型材1Bは、加熱加圧による樹脂付き銅箔15の接着樹脂14の外側への染み出しを受けるカバーとしての機能に加えて、離型材としての機能および銅箔13のシワを防止する作用も有する。
【0058】
以上、説明したように、離型材1Aまたは離型材1A、1Bを使用することで、平坦度が整えられたプリント基板11A、11B、11Cが、離型材1A、1Bがプリント基板11A、11B、11Cから剥がれ難くなるという問題を発生することなく、製造される。
【0059】
また、離型材の使用方法について、樹脂ベース基板の1つである樹脂フィルムの溶液流延法を用いた製造の一例を挙げて説明する。
溶液流延法は、樹脂フィルムの製法で一般的である溶融押出法では製造し難い、溶融分解が起こり易い樹脂、融点の高い樹脂、例えば、ポリエステル、ポリイミド、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリカーボネイト等で樹脂フィルムを製造する際に用いられる。そして、溶液流延法で製造された樹脂フィルムは、高分子の配向が起こらず強度や光学特性に方向性が生じないこと、厚み精度が高いこと、平滑性、透明性および光沢性に優れることから、偏光膜、偏光膜保護フィルム、位相フィルム等に使用される。
【0060】
溶液流延法では、図11に示すように、まず、複数の送入ローラ32によって送入された離型材1A(1B)の上に、樹脂を溶媒に溶かした樹脂溶液をホッパー31から流し込んで付着させる。すなわち、離型材1A(1B)を樹脂溶液の支持体として用いる。樹脂溶液が付着した離型材1A(1B)を、送入ローラ32によってオーブン等の加熱手段33の内部に送り入れる。加熱手段33の内部では、離型材1A(1B)上に流延した樹脂溶液の溶媒が蒸発し、離型材1A(1B)上で樹脂フィルム11Dが成形した積層体が製造される。次に、この離型材1A(1B)と樹脂フィルム11Dとからなる積層体を、複数の送出ローラ34で加熱手段33から送り出し、冷却する。冷却された積層体を巻取ドラム35で巻き取る。そして、巻き取られた積層体から離型材1A(1B)を剥離することによって、樹脂フィルム11Dが製造される。
【0061】
以上、説明したように、離型材1A(1B)を使用することによって、樹脂フィルム11Dが、離型材1A(1B)が樹脂フィルム11Dから剥がれ難くなるという問題を発生することなく、製造される。
【実施例】
【0062】
厚み:20μmのアルミニウム箔(1000系合金、耐力:140MPa)の片面に、
表1に示す樹脂塗料をバーコーターで塗布し、樹脂塗膜を形成した。その後、同表に示す条件で焼付け処理し離型材を作製した。
【0063】
作製した離型材(No.1〜16)について、下記の手順で剥離性試験を行い、プリント基板に対する樹脂塗膜(離型材)の接着強度を測定し、離型材の剥離性を評価した。その結果を表1に示す。
【0064】
(剥離性試験)
プリプレグの一面に対面するように銅箔(厚み:18μm)を配置し、プリプレグの他面に離型材の樹脂塗膜が対面するように配置する。また、銅箔および離型材のアルミニウム箔に対面するようにステンレス板(厚み:300μm)をそれぞれ配置し、積層物とする。そして、この積層物の上下に熱板を配置し、熱板に180℃で30kg/cm2の圧力を1時間加え、銅箔が接着したプリプレグからなるプリント基板を作製する。なお、プリプレグとしては、ガラスクロスにエポキシ系樹脂を含浸させたプリプレグ(日立化成工業製、商品名:GEA−67N)を用いた。
【0065】
次に、室温中で積層物を解体して、プリント基板のプリプレグ側に接着している離型材を、プリプレグの表面に対して90度の角度で上方に50mm/minで引き剥がし(JISC6481の図6参照)、その時の引き剥がし強度を測定し、その最大値を離型材の接着強度とした。
なお、剥離性の評価基準としては、接着強度が1〜200g/cmのときに剥離性が良好(○)、接着強度が1g/cm未満または200g/cmを超えるときに剥離性が不良(×)とした。
【0066】
【表1】
【0067】
表1の結果から、実施例(No.1〜10)は、剥離性において、比較例(No.11〜16)に比べて優れていることが確認された。
また、前記実施例では樹脂塗料をバーコーターで塗布したが、グラビアコート法で塗布した場合でも剥離性において優れていた。
【符号の説明】
【0068】
1A、1B 離型材
2 アルミニウム箔
3 樹脂塗膜
4 鏡面板
5 熱板
11A、11B プリント基板
11C 多層プリント基板
11D 樹脂フィルム
12 プリプレグ
13 銅箔
14 接着樹脂
15 樹脂付き銅箔
16 コア材
S1 塗布工程
S2 焼付け工程
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂ベース基板を製造する際に使用する樹脂ベース基板用離型材およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
樹脂ベース基板の1つとして樹脂ベースプリント基板があり、その製造は、以下のようにして行われている。まず、ガラスクロス、紙等に樹脂を含浸させてから、乾燥して半硬化させたシート(以下、プリプレグと称す)を作製する。このプリプレグと、銅箔と、ステンレス製の鏡面板とを積層したものを複数個積み重ねてから、その上下に熱板を設置して加圧する。次に、熱板、鏡面板を取り除き、積層物を解体することにより、樹脂が硬化したプリプレグと、その表面に接着された銅箔とからなる樹脂ベースプリント基板が製造される。なお、このとき、樹脂ベースプリント基板の平坦度も整えられる。また、銅箔を積層せずに製造されたプリプレグのみのものも樹脂ベースプリント基板として使用されている。
【0003】
前記の製造においては、鏡面板とプリプレグ(樹脂ベースプリント基板)とが加熱加圧によって接着し、積層物を解体した際に、製造された樹脂ベースプリント基板から鏡面板が剥がれ難くなるという問題がある。この問題を解決するために、鏡面板とプリプレグとの間に離型材を配置して積層物を構成することが行われている。そして、特許文献1では、離型材として、エポキシ系樹脂に剥離剤としてシリコーンを混合したコート剤、または、必要に応じて表面粗化剤をさらに混合したコート剤がアルミニウム箔の片面または両面に設けられたものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平4−9号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の離型材を用いた場合には、鏡面板とプリプレグとの接着は防止できるが、製造された樹脂ベースプリント基板と離型材とが強く接着して、離型材が樹脂ベースプリント基板から剥がれ難くなるという問題がある。
また、樹脂ベース基板の1つである樹脂フィルムの溶液流延法を用いた製造においても、同様に、樹脂フィルムの支持体として用いた離型材が樹脂フィルムから剥がれ難くなるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、このような問題を解決すべく創案されたもので、その課題は樹脂ベース基板の製造に使用された際に、樹脂ベース基板から容易に剥がすことが可能な剥離性に優れた樹脂ベース基板用離型材およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明に係る樹脂ベース基板用離型材は、樹脂ベース基板の製造に用いられ、アルミニウム箔と、前記アルミニウム箔の片面または両面に形成され、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂およびシリコーンとからなる樹脂塗膜とを備え、前記樹脂塗膜の前記樹脂ベース基板に対する接着強度が1〜200g/cmであることを特徴とする。
【0008】
前記構成によれば、樹脂塗膜が、主剤としてのエポキシ系樹脂と、硬化剤としてのメラミン系樹脂と、剥離剤としてのシリコーンとからなり、樹脂ベース基板に対する接着強度が所定範囲であることによって、樹脂ベース基板用離型材の剥離性が向上し、樹脂ベース基板用離型材が樹脂ベース基板から容易に剥離する。
また、熱が効率よく伝達されるため、樹脂ベース基板の生産性が向上する。さらに、樹脂ベースプリント基板用として用いた場合には、静電気の発生が少ないため、離型材への異物付着が少なく、樹脂ベース基板の清浄度が向上する。さらに、アルミニウム箔を備えることによって、樹脂ベース基板の製造の際に発生するガスによる汚れ等を防止できる。
【0009】
本発明に係る樹脂ベース基板用離型材は、前記樹脂塗膜の膜厚が、0.5〜5μmであることが好ましい。
前記構成によれば、樹脂塗膜の膜厚が所定範囲であることによって、樹脂塗膜の接着強度を所定範囲に調整しやすくなり、樹脂ベース基板用離型材の剥離性がさらに向上する。
【0010】
本発明に係る樹脂ベース基板用離型材は、前記樹脂塗膜が、エポキシ系樹脂100質量部に対して、シリコーンが0.07〜3質量部であることが好ましい。
前記構成によれば、樹脂塗膜の組成が所定範囲であることによって、樹脂塗膜の接着強度を所定範囲に調整しやすくなり、樹脂ベース基板用離型材の剥離性がさらに向上する。
【0011】
本発明に係る樹脂ベース基板用離型材は、前記樹脂塗膜中に、SiO2、MgO、Al2O3、BaSO4およびMg(OH)2から選択される1種以上の表面粗化粒子をさらに含有することが好ましい。
前記構成によれば、前記樹脂塗膜中に表面粗化粒子をさらに含有することによって、樹脂皮膜の表面が凹凸になり、その凹凸によって樹脂ベース基板の表面が凹凸になり、艶消し表面となる。
【0012】
本発明に係る樹脂ベース基板用離型材は、前記表面粗化粒子の粒子径が、15nm〜4μmであることが好ましい。
前記構成によれば、表面粗化粒子の粒子径が所定範囲であることによって、樹脂ベース基板の表面の凹凸量が調整される。
【0013】
本発明に係る樹脂ベース基板用離型材は、前記樹脂ベース基板が樹脂ベースプリント基板であることが好ましい。
本発明の樹脂ベース基板用離型材は、樹脂ベースプリント基板の製造に用いられた際に、剥離性等の顕著な向上が見られる。
【0014】
本発明に係る製造方法は、前記樹脂ベース基板用離型材の製造方法であって、アルミニウム箔の片面または両面に、主剤としてのエポキシ系樹脂と、硬化剤としてのメラミン系樹脂と、剥離剤としてのシリコーンとからなる樹脂塗料を塗布して樹脂塗膜を形成する塗布工程と、前記樹脂塗膜に125〜240℃で0.5〜60秒間の焼付け処理を施す焼付け工程とを含むことを特徴とする。
【0015】
前記手順によれば、所定組成を有する樹脂塗膜に所定条件の焼付け処理を施す焼付け工程を行うことによって、所定範囲の接着強度を有する樹脂塗膜がアルミニウム箔の片面または両面に形成される。
【0016】
本発明に係る製造方法は、前記樹脂ベース基板用離型材の製造方法であって、アルミニウム箔の片面または両面に、主剤としてのエポキシ系樹脂と、硬化剤としてのメラミン系樹脂と、剥離剤としてのシリコーンと、SiO2、MgO、Al2O3、BaSO4およびMg(OH)2から選択される1種以上の表面粗化粒子とからなる樹脂塗料を塗布して樹脂塗膜を形成する塗布工程と、前記樹脂塗膜に125〜240℃で0.5〜60秒間の焼付け処理を施す焼付け工程とを含むことを特徴とする。
【0017】
前記手順によれば、表面粗化粒子をさらに含有する所定組成を有する樹脂塗膜に所定条件の焼付け処理を施す焼付け工程を行うことによって、所定範囲の接着強度を有し、かつ、樹脂ベース基板の表面を凹凸にする樹脂塗膜がアルミニウム箔の片面または両面に形成される。
【0018】
本発明に係る製造方法は、前記塗布工程において、アルミニウム箔の片面または両面に、前記樹脂塗料をグラビアコート法で塗布することが好ましい。
前記手順によれば、グラビアコート法で塗布することによって、樹脂塗膜の膜厚が均一となる。
【0019】
本発明に係る製造方法は、前記樹脂ベース基板が樹脂ベースプリント基板であることが好ましい。本発明に係る製造方法は、樹脂ベースプリント基板の製造に用いられた際に、好適となる接着強度等を有する樹脂塗膜がアルミニウム箔の片面または両面に形成される。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る樹脂ベース基板用離型材によれば、樹脂ベース基板の製造に使用された際に、樹脂ベース基板から容易に剥がすことが可能な優れた剥離性を有すると共に、耐熱性に優れ、樹脂ベース基板の清浄度、生産性が向上する。また、本発明に係る樹脂ベース基板用離型材によれば、樹脂ベース基板を製造する際の作業性に優れ、樹脂ベース基板の表面形状を調整することができる。特に、本発明に係る樹脂ベース基板用離型材は、樹脂ベース基板の1つである樹脂ベースプリント基板の製造に使用された際に好適な剥離性等を有する。
【0021】
本発明に係る製造方法によれば、剥離性、耐熱性に優れ、樹脂ベース基板の清浄度、生産性を向上させることが可能な樹脂ベース基板用離型材を製造できる。また、本発明に係る製造方法によれば、樹脂ベース基板の表面形状を調整できる樹脂ベース基板用離型材を製造できる。特に、本発明に係る製造方法は、樹脂ベース基板の1つである樹脂ベースプリント基板の製造に使用される樹脂ベース基板用離型材を好適に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る樹脂ベース基板用離型材の構成を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る樹脂ベース基板用離型材の他の構成を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る樹脂ベース基板用離型材の製造方法を示す工程フローである。
【図4】塗布方法の1つであるグラビアコート法を示す模式図である。
【図5】樹脂ベース基板の製造方法を示す模式図である。
【図6】図1の離型材の使用方法を示す熱板での加熱加圧後の模式図である。
【図7】図2の離型材の使用方法を示す熱板での加熱加圧後の模式図である。
【図8】図1の離型材の他の使用方法を示す熱板での加熱加圧後の模式図である。
【図9】図2の離型材の他の使用方法を示す熱板での加熱加圧後の模式図である。
【図10】図1の離型材の他の使用方法を示し、(a)は熱板での加熱加圧前、(b)は加熱加圧後の模式図である。
【図11】溶液流延法を用いた樹脂フィルムの製造方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<樹脂ベース基板用離型材>
本発明に係る樹脂ベース基板用離型材(以下、離型材と称す)の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
離型材は、樹脂ベース基板の製造の際に用いられるものである。本発明において、樹脂ベース基板とは、電子部品を固定して配線するために用いられる樹脂ベースプリント基板(以下、プリント基板と称す)、または、溶液流延法で製造される樹脂フィルム等である。また、離型材の形状は、コイル状またはシート状であって、使用の際には所定長さに切断される。なお、離型材の使用方法の詳細については後記する。
【0024】
図1、図2に示すように、離型材1A、1Bは、アルミニウム箔2と、アルミニウム箔2の片面または両面に形成された樹脂塗膜3とを備え、樹脂塗膜3の樹脂ベース基板に対する接着強度が所定範囲であることを特徴とする。
以下、各構成について説明する。なお、樹脂ベース基板の1つであるプリント基板11A、11B(図5〜図9参照)の製造に用いられる離型材1A、1Bを例に挙げて説明するが、樹脂ベース基板の1つである樹脂フィルム11D(図11参照)の製造に用いられる離型材1A、1Bにおいても同様である。
【0025】
(アルミニウム箔)
アルミニウム箔2を構成するアルミニウム(アルミニウム合金を含む)の合金種は、特に限定されるものではないが、アルミニウム箔2の耐力が140〜270MPaとなるような合金種を選択することが好ましい。このような合金種としては、JIS規定の1000系、3000系合金等が挙げられる。また、アルミニウム箔2の耐力が140MPa未満であると、プリント基板を製造する際の作業性が低下し易く、耐力が270MPaを超えると、離型材1A、1Bの製造コストが高くなり易い。また、アルミニウム箔2の箔厚は、作業性および製造コストを考慮して、200μm未満が好ましく、20〜50μmがさらに好ましい。なお、アルミニウム箔2は、アルミニウムと銅の線膨張係数の違いから、プリント基板の銅箔の引張りシワを防止する作用もある。
【0026】
(樹脂塗膜)
樹脂塗膜3は、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂およびシリコーンとからなる。そして、樹脂塗膜3は、1〜200g/cmの接着強度を有する。接着強度は、後記する離型材1A、1Bの製造方法において、所定組成を有する樹脂塗膜3に所定条件の焼付け処理を行うことによって達成される。
【0027】
エポキシ系樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、アミン型エポキシ樹脂、可撓性エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、臭素化フェノキシ樹脂等が挙げられる。
【0028】
メラミン系樹脂としては、メチルエーテル化メラミン樹脂、ブチル化尿素メラミン樹脂、ブチル化メラミン樹脂、メチル化メラミン樹脂、ブチルアルコール変性メラミン樹脂等が挙げられる。また、メラミン系樹脂は、前記樹脂とブチル化尿素樹脂、ブチル化ベンゾグアナミン樹脂等との混合樹脂であってもよい。
【0029】
なお、エポキシ系樹脂の数平均分子量は2000〜3000、メラミン系樹脂の数平均分子量は500〜1000であることが好ましい。このような数平均分子量を有することによって、樹脂の塗料化が可能になると共に、樹脂塗膜の接着強度を所定範囲に調整し易くなる。
【0030】
シリコーンとしては、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、変性ジメチルポリシロキサン、これらの混合物等が挙げられる。ここで、変性とは、例えば、エポキシ変性、アルキル変性、アミノ変性、カルボキシル変性、アルコール変性、フッ素変性、アルキルアラルキルポリエーテル変性、エポキシポリエーテル変性、ポリエーテル変性、アルキル高級アルコールエステル変性、ポリエステル変性、アシロキシアルキル変性、ハロゲン化アルキルアシロキシアルキル変性、ハロゲン化アルキル変性、アミノグリコール変性、メルカプト変性、水酸基含有ポリエステル変性等が挙げられる。
【0031】
樹脂塗膜3の接着強度は、離型材1A、1B(樹脂塗膜3)をプリント基板11A、11B(プリプレグ12)の表面から引き剥がすのに要する力(最大強さ)を単位長さ(1cm)あたりで表したものである。そして、その試験方法は、JISC6481−1996の図6に記載された引き剥がし方法に準じて行い、具体的には離型材1A、1B(樹脂塗膜3)を、プリント基板11A、11B(プリプレグ12)の表面に対して、90度の角度で上方に引き剥がした。なお、引き剥がし速度は50mm/minとし、引き剥がしは室温で行った。
【0032】
接着強度が1g/cm未満である場合には、積層体を解体する際に、既に離型材1A、1Bが剥がれた状態になり、作業性が悪化する。接着強度が200g/cmを超える場合には、樹脂塗膜3(離型材1A、1B)の剥離性が低下し、離型材1A、1Bをプリプレグ12(プリント基板11A、11B)から剥離することが困難となる。
【0033】
樹脂塗膜3は、その膜厚が0.5〜5μmであることが好ましい。膜厚が0.5μm未満である場合には、樹脂塗膜3が薄膜すぎて形成が困難であるため、生産性が低下し易い。また、膜厚が5μmを超える場合には、樹脂塗膜3の剥離性のさらなる向上は見られず、樹脂塗膜3(離型材1A、1B)の製造コストが高くなり易い。また、樹脂塗膜3の膜厚は、後記する離型材1A、1Bの製造方法において、樹脂塗料を所定塗布量で塗布することによって達成される。
【0034】
樹脂塗膜3は、エポキシ系樹脂100質量部に対して、シリコーンが0.07〜3質量部であることが好ましい。シリコーンは樹脂塗膜3の剥離剤として機能する。シリコーンが0.07質量部未満である場合には、樹脂塗膜3の接着強度が大きくなるため、樹脂塗膜3の剥離性が低下し易い。シリコーンが3質量部を超える場合には、樹脂塗膜3の接着強度が小さくなるため、剥離時の作業性が悪化する。
【0035】
樹脂塗膜3は、エポキシ系樹脂100質量部に対して、メラミン系樹脂が40〜55質量部であることがさらに好ましい。メラミン系樹脂は硬化剤として機能する。メラミン系樹脂が40質量部未満である場合には、樹脂塗膜3の硬度が低くなり、接着強度が大きくなるため、樹脂塗膜3の剥離性が低下し易い。メラミン系樹脂が55質量部を超える場合には、樹脂塗膜3の硬化不足により、接着強度が大きくなるため、剥離時の作業性が悪化する。
【0036】
樹脂塗膜3は、前記エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂およびシリコーンに加えて、SiO2、MgO、Al2O3、BaSO4およびMg(OH)2から選択される1種以上の表面粗化粒子をさらに含有することが好ましい。樹脂塗膜3が表面粗化粒子を含有することによって、樹脂塗膜3の表面が凹凸となる。その凹凸によって、プリプレグ12(プリント基板11A、11B)の表面が凹凸となり、艶消し表面となる。表面粗化粒子の含有量は、樹脂塗膜3が凹凸化されれば特に限定されないが、エポキシ系樹脂100質量部に対して、1〜10質量部が好ましい。
【0037】
表面粗化粒子の粒子径は、15nm〜4μmであることが好ましい。ここで、粒子径は、走査電子顕微鏡(SEM)写真等から測定した平均粒子径(最大粒子径と最小粒子径の平均値)を意味する。表面粗化粒子の粒子径が前記範囲であることによって、樹脂塗膜3の表面の凹凸量が調整し易くなり、結果的にプリプレグ12の表面の凹凸量が調整し易くなる。具体的には、プリプレグ12の表面の凹凸量は、JIS規定の最大高さ粗さRyで4.0μm程度となる。
【0038】
<離型材の製造方法>
次に、離型材の製造方法について、説明する。
図3に示すように、離型材の製造方法は、塗布工程S1と、焼付け工程S2とを含むものである。以下、各工程について説明する。なお、樹脂ベース基板の1つであるプリント基板11A、11B(図5〜図9参照)の製造に用いられる離型材を例に挙げて説明するが、樹脂ベース基板の1つである樹脂フィルム11D(図11参照)の製造に用いられる離型材においても同様である。また、離型材の構成は、図1、図2を参照する。
【0039】
(塗布工程:S1)
塗布工程S1は、アルミニウム箔2の片面または両面に、主剤としてのエポキシ系樹脂と、硬化剤としてのメラミン系樹脂と、剥離剤としてのシリコーンとからなる樹脂塗料を塗布して樹脂塗膜3を形成する工程である。樹脂塗料は、アルコール等の有機溶媒にエポキシ系樹脂およびメラミン系樹脂を溶解した樹脂溶液にシリコーンを添加したものである。また、樹脂塗料における配合量(添加量)は、エポキシ系樹脂100質量部に対して、メラミン系樹脂が40〜55質量部、シリコーンが0.07〜3質量部であることが好ましい。
【0040】
塗布工程S1における塗布方法としては、樹脂塗膜3が形成できれば特に限定されるものではないが、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、カーテンフローコート法、静電塗装機を用いる方法等が用いられ、樹脂塗膜3の均一性、および、作業の簡便性からグラビアコート法が好ましい。また、塗布量としては、樹脂塗膜3が好ましい膜厚:0.5〜5μmとなるように、樹脂量として1.0〜2.0g/m2が好ましい。
【0041】
グラビアコート法は、ロール表面に設けられた凹部(セル)に満たされた樹脂塗料をアルミニウム箔に転写させることによって、アルミニウム箔2の表面に樹脂塗膜3を形成させる方法である。具体的には、図4に示すように、表面にセル23が設けられた下側ロール22の下部を樹脂塗料中に浸漬し、下側ロール22の回転によってセル23内に樹脂塗料を汲み上げる。そして、下側ロール22と、下側ロール22の上側に配置された上側ロール21との間にアルミニウム箔2を配置し、上側ロール21でアルミニウム箔2を下側ロール22に押し付けながら、下側ロール22および上側ロール21を回転させることによって、アルミニウム箔2が搬送されると共に、セル23内に汲み上げられた樹脂塗料がアルミニウム箔2の片面に転写(塗布)される。
【0042】
また、アルミニウム箔2の搬入側に、下側ロール22の表面に接触するようにドクターブレード24を配置することによって、セル23以外のロール表面に汲み上げられた過剰な樹脂塗料が取り除かれ、アルミニウム箔2の表面に所定量の樹脂塗料が塗布される。なお、セル23の番手(大きさおよび深さ)が大きい場合、または、樹脂塗料の粘度が高い場合には、アルミニウム箔2の片面に形成される樹脂塗膜3が平滑になり難くなる。したがって、アルミニウム箔2の搬出側にスムージングロール25を配置して、樹脂塗膜3の平滑度を維持してもよい。
【0043】
なお、アルミニウム箔2の両面に樹脂塗膜を3形成させる場合には、アルミニウム箔2の片面に樹脂塗膜3を形成させた後に、アルミニウム箔2を裏返して、再度、下側ロール22と上側ロール21との間に配置する。そして、前記と同様に、下側ロール22のセル23内の樹脂塗料をアルミニウム箔2の裏面に転写(塗布)する。
【0044】
(焼付け工程:S2)
焼付け工程S2は、前記工程S1で形成された樹脂塗膜3に125〜240℃(焼付け温度)で0.5〜60秒間(焼付け時間)の焼付け処理を施す工程である。このように、所定配合量の樹脂塗料で形成された樹脂塗膜に所定条件の焼付け処理を施すことによって、樹脂塗膜3のプリント基板11A、11B(プリプレグ12)に対する接着強度が所定範囲に制御される。本発明において、焼付け温度はアルミニウム箔2の到達温度である。また、焼付け処理に使用される加熱手段としては、従来公知の装置を使用する。
【0045】
焼付け温度が125℃未満、または、焼付け時間が0.5秒未満である場合には、樹脂塗膜3が硬化不足となり、樹脂塗膜3の接着強度が200g/cmを超え、剥離性が低下する。また、焼付け温度が240℃を超える場合には、樹脂塗膜3が劣化して、接着強度が200g/cmを超え、剥離時の作業性が悪化する。また、焼付け時間が60秒を超える場合には、生産性が悪化する。
【0046】
本発明に係る製造方法においては、前記塗布工程の樹脂塗料が、主剤としてのエポキシ系樹脂と、硬化剤としてのメラミン系樹脂と、剥離剤としてのシリコーンと、SiO2、MgO、Al2O3、BaSO4およびMg(OH)2から選択される1種以上の表面粗化粒子とからなるものであってもよい。
【0047】
具体的には、樹脂塗料は、前記したシリコーン添加樹脂溶液に表面粗化粒子をさらに添加したものである。このような表面粗化粒子を樹脂塗料にさらに添加することによって、樹脂塗膜3の表面が凹凸となり、この凹凸によってプリント基板11A、11B(プリプレグ12)が凹凸となり、艶消し表面となる。そして、このような艶消し表面を有するプリント基板11A、11Bを得るためには、樹脂塗料における表面粗化粒子の配合量(添加量)が、エポキシ系樹脂100質量部に対して、1〜10質量部であることが好ましい。また、表面粗化粒子の粒子径が15nm〜4μmであることがさらに好ましい。
【0048】
本発明に係る製造方法は、以上説明したとおりであるが、本発明を行うにあたり、前記各工程に悪影響を与えない範囲において、前記各工程の間あるいは前後に、他の工程を含めてもよい。例えば、塗布工程S1の前にアルミニウム箔2の表面を洗浄する洗浄工程を行ってもよい。
【0049】
<離型材の使用方法>
次に、離型材の使用方法について、樹脂ベース基板の1つであるプリント基板の製造の一例を挙げて説明する。
銅箔付きプリント基板は、以下の手順で製造される。
【0050】
図5に示すように、ガラスクロスまたは紙等に、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリイミド系樹脂等を含浸させ、乾燥させた半硬化したプリプレグ12を準備する。この半硬化したプリプレグ12の一面に対面するように銅箔13を配置する。そして、プリプレグ12の他面に本発明に係る離型材1Aの樹脂塗膜3が対面するように配置する。また、銅箔13、および、離型材1Aのアルミニウム箔2に対面するように鏡面板4(例えば、ステンレス板)をそれぞれ配置して、積層物を構成する。この積層物を複数個積み重ねてから、その上下に熱板5を配置する。
【0051】
次いで、この熱板5に150〜300℃で30kg/cm2以上の圧力を1時間以上加える。その結果、プリプレグ12の樹脂が硬化すると共に、一面に銅箔13が接着し、他面に樹脂塗膜3を介して離型材1Aが接着される(図6参照)。なお、一般的には、銅箔13の大きさが半硬化したプリプレグ12より大きく設定されているため、加熱加圧によるプリプレグ12の樹脂の外側への染み出しが防止される。
【0052】
加熱加圧終了後、熱板5および鏡面板4を取り除いて積層物を解体し、硬化したプリプレグ12に接着している離型材1A(樹脂塗膜3)を剥離することによって、銅箔付きのプリント基板11Aが複数製造される。なお、離型材1Aの剥離は、作業者が手作業で行ってもよいし、ロボット等を用いて行ってもよい。
【0053】
前記では、アルミニウム箔2の片面に樹脂塗膜3が形成された離型材1A(図1参照)を用いた例について説明したが、アルミニウム箔2の両面に樹脂塗膜3が形成された離型材1B(図2参照)を用いる場合について、一例として以下に説明する。
【0054】
図7に示すように、離型材1Bの両側に、半硬化したプリプレグ12、銅箔13、鏡面板4をこの順にそれぞれ配置して積層物を構成する。その積層物を複数個積み重ね、前記と同様に加熱加圧することによって、離型材1B(樹脂塗膜3)の両側に、樹脂が硬化すると共に銅箔13が接着したプリプレグ12が接着されたものが製造される。前記と同様にして積層物を解体し、プリプレグ12から離型材1B(樹脂塗膜3)を剥離することによって、銅箔付きのプリント基板11Aが複数製造される。
【0055】
次に、銅箔を有しないプリント基板の製造について説明する。
図8に示すように、半硬化したプリプレグ12の両側に、樹脂塗膜3がプリプレグ12に対面するように離型材1A、鏡面板4をこの順にそれぞれ配置して積層物を構成する。その積層物を複数個積み重ね、前記と同様に加熱加圧することによって、硬化したプリプレグ12の両側に離型材1A(樹脂塗膜3)が接着されたものが製造される。前記と同様にして積層物を解体し、プリプレグ12から離型材1A(樹脂塗膜3)を剥離することによって、プリプレグ12のみで構成されたプリント基板11Bが複数製造される。
【0056】
また、離型材1Bを用いる場合には、図9に示すように、離型材1Bの両側に、半硬化したプリプレグ12、樹脂塗膜3がプリプレグ12に対面するように離型材1A、鏡面板4をこの順にそれぞれ配置して積層物を構成する。その積層物を複数個積み重ね、前記と同様に加熱加圧することによって、硬化したプリプレグ12の一面に離型材1A(樹脂塗膜3)、他面に離型材1B(樹脂塗膜3)が接着されたものが製造される。前記と同様にして積層物を解体し、プリプレグ12から離型材1A(樹脂塗膜3)および離型材1B(樹脂塗膜3)を剥離することによって、プリプレグ12のみで構成されたプリント基板11Bが複数製造される。
【0057】
図10(a)、(b)に示すように、本発明に係る離型材1Aまたは離型材1B(図示せず)は、接着樹脂14を銅箔13に塗布した樹脂付き銅箔15をコア材16に接着して積層した多層プリント基板11Cの製造にも使用される。コア材16の両側に樹脂付き銅箔15、離型材1Aまたは離型材1B、鏡面板4をこの順にそれぞれ配置して積層物を構成する。その積層物を複数個積み重ね、前記と同様に加熱加圧し、その後、積層物を解体することによって、複数の多層プリント基板11Cが製造される。ここでは、離型材1Aまたは離型材1Bは、加熱加圧による樹脂付き銅箔15の接着樹脂14の外側への染み出しを受けるカバーとしての機能に加えて、離型材としての機能および銅箔13のシワを防止する作用も有する。
【0058】
以上、説明したように、離型材1Aまたは離型材1A、1Bを使用することで、平坦度が整えられたプリント基板11A、11B、11Cが、離型材1A、1Bがプリント基板11A、11B、11Cから剥がれ難くなるという問題を発生することなく、製造される。
【0059】
また、離型材の使用方法について、樹脂ベース基板の1つである樹脂フィルムの溶液流延法を用いた製造の一例を挙げて説明する。
溶液流延法は、樹脂フィルムの製法で一般的である溶融押出法では製造し難い、溶融分解が起こり易い樹脂、融点の高い樹脂、例えば、ポリエステル、ポリイミド、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリカーボネイト等で樹脂フィルムを製造する際に用いられる。そして、溶液流延法で製造された樹脂フィルムは、高分子の配向が起こらず強度や光学特性に方向性が生じないこと、厚み精度が高いこと、平滑性、透明性および光沢性に優れることから、偏光膜、偏光膜保護フィルム、位相フィルム等に使用される。
【0060】
溶液流延法では、図11に示すように、まず、複数の送入ローラ32によって送入された離型材1A(1B)の上に、樹脂を溶媒に溶かした樹脂溶液をホッパー31から流し込んで付着させる。すなわち、離型材1A(1B)を樹脂溶液の支持体として用いる。樹脂溶液が付着した離型材1A(1B)を、送入ローラ32によってオーブン等の加熱手段33の内部に送り入れる。加熱手段33の内部では、離型材1A(1B)上に流延した樹脂溶液の溶媒が蒸発し、離型材1A(1B)上で樹脂フィルム11Dが成形した積層体が製造される。次に、この離型材1A(1B)と樹脂フィルム11Dとからなる積層体を、複数の送出ローラ34で加熱手段33から送り出し、冷却する。冷却された積層体を巻取ドラム35で巻き取る。そして、巻き取られた積層体から離型材1A(1B)を剥離することによって、樹脂フィルム11Dが製造される。
【0061】
以上、説明したように、離型材1A(1B)を使用することによって、樹脂フィルム11Dが、離型材1A(1B)が樹脂フィルム11Dから剥がれ難くなるという問題を発生することなく、製造される。
【実施例】
【0062】
厚み:20μmのアルミニウム箔(1000系合金、耐力:140MPa)の片面に、
表1に示す樹脂塗料をバーコーターで塗布し、樹脂塗膜を形成した。その後、同表に示す条件で焼付け処理し離型材を作製した。
【0063】
作製した離型材(No.1〜16)について、下記の手順で剥離性試験を行い、プリント基板に対する樹脂塗膜(離型材)の接着強度を測定し、離型材の剥離性を評価した。その結果を表1に示す。
【0064】
(剥離性試験)
プリプレグの一面に対面するように銅箔(厚み:18μm)を配置し、プリプレグの他面に離型材の樹脂塗膜が対面するように配置する。また、銅箔および離型材のアルミニウム箔に対面するようにステンレス板(厚み:300μm)をそれぞれ配置し、積層物とする。そして、この積層物の上下に熱板を配置し、熱板に180℃で30kg/cm2の圧力を1時間加え、銅箔が接着したプリプレグからなるプリント基板を作製する。なお、プリプレグとしては、ガラスクロスにエポキシ系樹脂を含浸させたプリプレグ(日立化成工業製、商品名:GEA−67N)を用いた。
【0065】
次に、室温中で積層物を解体して、プリント基板のプリプレグ側に接着している離型材を、プリプレグの表面に対して90度の角度で上方に50mm/minで引き剥がし(JISC6481の図6参照)、その時の引き剥がし強度を測定し、その最大値を離型材の接着強度とした。
なお、剥離性の評価基準としては、接着強度が1〜200g/cmのときに剥離性が良好(○)、接着強度が1g/cm未満または200g/cmを超えるときに剥離性が不良(×)とした。
【0066】
【表1】
【0067】
表1の結果から、実施例(No.1〜10)は、剥離性において、比較例(No.11〜16)に比べて優れていることが確認された。
また、前記実施例では樹脂塗料をバーコーターで塗布したが、グラビアコート法で塗布した場合でも剥離性において優れていた。
【符号の説明】
【0068】
1A、1B 離型材
2 アルミニウム箔
3 樹脂塗膜
4 鏡面板
5 熱板
11A、11B プリント基板
11C 多層プリント基板
11D 樹脂フィルム
12 プリプレグ
13 銅箔
14 接着樹脂
15 樹脂付き銅箔
16 コア材
S1 塗布工程
S2 焼付け工程
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂ベース基板の製造に用いられる樹脂ベース基板用離型材であって、
アルミニウム箔と、
前記アルミニウム箔の片面または両面に形成され、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂およびシリコーンとからなる樹脂塗膜とを備え、
前記樹脂塗膜の前記樹脂ベース基板に対する接着強度が1〜200g/cmであることを特徴とする樹脂ベース基板用離型材。
【請求項2】
前記樹脂塗膜の膜厚は、0.5〜5μmであることを特徴とする請求項1に記載の樹脂ベース基板用離型材。
【請求項3】
前記樹脂塗膜は、エポキシ系樹脂100質量部に対して、シリコーンが0.07〜3質量部であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の樹脂ベース基板用離型材。
【請求項4】
前記樹脂塗膜中に、SiO2、MgO、Al2O3、BaSO4およびMg(OH)2から選択される1種以上の表面粗化粒子をさらに含有することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の樹脂ベース基板用離型材。
【請求項5】
前記表面粗化粒子の粒子径は、15nm〜4μmであることを特徴とする請求項4に記載の樹脂ベース基板用離型材。
【請求項6】
前記樹脂ベース基板は、樹脂ベースプリント基板であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の樹脂ベース基板用離型材。
【請求項7】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の樹脂ベース基板用離型材の製造方法であって、
アルミニウム箔の片面または両面に、主剤としてのエポキシ系樹脂と、硬化剤としてのメラミン系樹脂と、剥離剤としてのシリコーンとからなる樹脂塗料を塗布して樹脂塗膜を形成する塗布工程と、
前記樹脂塗膜に125〜240℃で0.5〜60秒間の焼付け処理を施す焼付け工程とを含むことを特徴とする樹脂ベース基板用離型材の製造方法。
【請求項8】
請求項4または請求項5に記載の樹脂ベース基板用離型材の製造方法であって、
アルミニウム箔の片面または両面に、主剤としてのエポキシ系樹脂と、硬化剤としてのメラミン系樹脂と、剥離剤としてのシリコーンと、SiO2、MgO、Al2O3、BaSO4およびMg(OH)2から選択される1種以上の表面粗化粒子とからなる樹脂塗料を塗布して樹脂塗膜を形成する塗布工程と、
前記樹脂塗膜に125〜240℃で0.5〜60秒間の焼付け処理を施す焼付け工程とを含むことを特徴とする樹脂ベース基板用離型材の製造方法。
【請求項9】
前記塗布工程において、アルミニウム箔の片面または両面に、前記樹脂塗料をグラビアコート法で塗布することを特徴とする請求項7または請求項8に記載の樹脂ベース基板用離型材の製造方法。
【請求項10】
前記樹脂ベース基板は、樹脂ベースプリント基板であることを特徴とする請求項7ないし請求項9のいずれか一項に記載の樹脂ベース基板用離型材の製造方法。
【請求項1】
樹脂ベース基板の製造に用いられる樹脂ベース基板用離型材であって、
アルミニウム箔と、
前記アルミニウム箔の片面または両面に形成され、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂およびシリコーンとからなる樹脂塗膜とを備え、
前記樹脂塗膜の前記樹脂ベース基板に対する接着強度が1〜200g/cmであることを特徴とする樹脂ベース基板用離型材。
【請求項2】
前記樹脂塗膜の膜厚は、0.5〜5μmであることを特徴とする請求項1に記載の樹脂ベース基板用離型材。
【請求項3】
前記樹脂塗膜は、エポキシ系樹脂100質量部に対して、シリコーンが0.07〜3質量部であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の樹脂ベース基板用離型材。
【請求項4】
前記樹脂塗膜中に、SiO2、MgO、Al2O3、BaSO4およびMg(OH)2から選択される1種以上の表面粗化粒子をさらに含有することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の樹脂ベース基板用離型材。
【請求項5】
前記表面粗化粒子の粒子径は、15nm〜4μmであることを特徴とする請求項4に記載の樹脂ベース基板用離型材。
【請求項6】
前記樹脂ベース基板は、樹脂ベースプリント基板であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の樹脂ベース基板用離型材。
【請求項7】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の樹脂ベース基板用離型材の製造方法であって、
アルミニウム箔の片面または両面に、主剤としてのエポキシ系樹脂と、硬化剤としてのメラミン系樹脂と、剥離剤としてのシリコーンとからなる樹脂塗料を塗布して樹脂塗膜を形成する塗布工程と、
前記樹脂塗膜に125〜240℃で0.5〜60秒間の焼付け処理を施す焼付け工程とを含むことを特徴とする樹脂ベース基板用離型材の製造方法。
【請求項8】
請求項4または請求項5に記載の樹脂ベース基板用離型材の製造方法であって、
アルミニウム箔の片面または両面に、主剤としてのエポキシ系樹脂と、硬化剤としてのメラミン系樹脂と、剥離剤としてのシリコーンと、SiO2、MgO、Al2O3、BaSO4およびMg(OH)2から選択される1種以上の表面粗化粒子とからなる樹脂塗料を塗布して樹脂塗膜を形成する塗布工程と、
前記樹脂塗膜に125〜240℃で0.5〜60秒間の焼付け処理を施す焼付け工程とを含むことを特徴とする樹脂ベース基板用離型材の製造方法。
【請求項9】
前記塗布工程において、アルミニウム箔の片面または両面に、前記樹脂塗料をグラビアコート法で塗布することを特徴とする請求項7または請求項8に記載の樹脂ベース基板用離型材の製造方法。
【請求項10】
前記樹脂ベース基板は、樹脂ベースプリント基板であることを特徴とする請求項7ないし請求項9のいずれか一項に記載の樹脂ベース基板用離型材の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−111150(P2012−111150A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262727(P2010−262727)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(390030786)サン・アルミニウム工業株式会社 (7)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(390030786)サン・アルミニウム工業株式会社 (7)
【Fターム(参考)】
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