説明

樹脂多層デバイス

【課題】高性能なバランスフィルタを実現でき、かつ簡単でコンパクトな構成のバランスフィルタを有する樹脂多層デバイスを提供する。
【解決手段】基板10上に、GND層40、基板10又はGND層40上に設けられた第1樹脂層22、第1導電パターン群130、第2樹脂層24、第2導電パターン群150、第3樹脂層26を順に積層し、バランスフィルタのバラン110は、第1導電パターン群130の第1平衡信号伝送路30および第2平衡信号伝送路35と、第2導電パターン群150の不平衡信号伝送路50とを有し、第1平衡信号伝送路30および第1不平衡信号伝送路部50cは内周に第1スペースE1を有し、第2平衡信号伝送路35および第2不平衡信号伝送路部50dは内周に第2スペースE2を有し、バランスフィルタのフィルタ120は、第1スペースE1内および/または第2スペースE2内に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信機器等の高周波回路に用いられるバランスフィルタを有する樹脂多層デバイスに関し、特に、ウェハレベルチップサイズパッケージ(WLCSP:Wafer Level Chip Size/Scale Package)技術により形成された積層型のバランスフィルタを有する樹脂多層デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信機器では、高周波信号処理ICから出力された平衡信号(差動信号)を、バランにおいて不平衡信号(単一信号)に変換し、バンドパスフィルタ(BPF)またはローパスフィルタ(LPF)で不要信号を除去して、アンテナから送信する。また、アンテナで受信された不平衡信号を、BPFに通して周波数帯域を選択し、バランにおいて平衡信号に変換して、高周波信号処理ICに入力する(例えば特許文献1,2参照)。
【0003】
このように、無線通信回路では、バランとフィルタとがセットで、高周波信号処理ICとアンテナの間に設けられるため、バランとフィルタとを一体化した様々なバランスフィルタが開発されている(例えば特許文献1〜3参照)。
【0004】
積層型のバランスフィルタは、積層型バランと、積層型フィルタとによって構成されている。積層型バランは、不平衡信号伝送路と、2つの平衡信号伝送路とが、誘電体層を介して積層配置された構成になっている。積層型バランの製造技術としては、低温同時焼成セラミックス(LTCC:Low Temperature Co-fired Ceramics)技術をベースとしたもの(例えば特許文献4参照)、多層プリント基板製造技術をベースとしたもの(例えば特許文献5参照)、半導体加工技術をベースとしたもの(例えば、特許文献6、非特許文献1参照)、誘電体層として樹脂層を用いたもの(例えば特許文献3,7参照)がある。なお、積層型フィルタの製造技術は、積層型バランと同様である。
【0005】
バランは、不平衡信号出入力側のインピーダンス、および平衡信号入出力側のインピーダンスが設計仕様のインピーダンス値であることを要求される。これらのインピーダンス仕様を満たすためのパラメータは、伝送路の幅、伝送路の厚さ、伝送路間の絶縁層の厚さ(伝送路間の距離)および誘電率、下側伝送路の下層の絶縁層の厚さおよび誘電率、ならびに上側伝送路の上層の絶縁層の厚さおよび誘電率である(例えば特許文献5参照)。
【0006】
一方、近年、WLCSPという技術が提案されている(例えば特許文献8参照)。WLCSPは、ウェハ上に、樹脂層形成プロセスと厚膜銅パターン群等の導電パターン群形成プロセスによって樹脂多層デバイスを作り込み、そのあとにチップにダイシングする技術である。つまり、ウェハのまま、パッケージングまでする製法である。なお、WLCSP技術によって製造されたパッケージを、ウェハレベルパッケージ(WLP:Wafer LevelPackage)とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−260903号公報
【特許文献2】特開2005−244848号公報
【特許文献3】特開2005−198241号公報
【特許文献4】特開2002−050910号公報
【特許文献5】特開2006−121313号公報
【特許文献6】特開2004−172284号公報
【特許文献7】特開2005−130376号公報
【特許文献8】特開2007−281230号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Yeong J.Yoon,「Design and characterization of Multilayer Spiral Transmission-Line Baluns」,IEEE TRANSACTIONS ON MICROWAVE THEORY AND TECHNIQUES,VOL.47,No.9,SEPTEMBER,1999
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記LTCC技術をベースとして製造されたバランスフィルタでは、GND層(接地層)や信号入力のためのレイヤ等、多数のレイヤを必要とするため、構成および製造手順が複雑になるという課題があった。さらに、バランの下側伝送路と上側伝送路の位置合せ精度が悪く、インピーダンスが設計値からずれるという課題があった。
【0010】
また、上記多層プリント基板製造技術をベースとして製造されたバランスフィルタでは、プリント基板に伝送路やキャパシタ、インダクタを形成するため、微細加工ができず、サイズが大きくなるという課題があった。また、高精度な加工ができないため、バランの下側伝送路と上側伝送路の位置合せ精度が悪く、伝送路のインピーダンスが設計値からずれるという課題があった。
【0011】
また、上記半導体加工技術をベースとして製造されたバランスフィルタでは、微細加工および高精度な加工は可能であるが、バランの伝送路やフィルタのインダクタを、抵抗値の大きなアルミパターンで形成すること、およびシリコン基板からの影響を受けることにより、バランの挿入損失が大きくなるとともに、Q値の高いインダクタを得ることができないので、フィルタの周波数特性が悪いという課題があった。
【0012】
さらに、上記WLCSP製造技術による場合には、上記LTCC技術による場合よりも誘電体層の比誘電率が低くなるので、バランの伝送路を長くする必要があり、このバランとフィルタとを単に配置した場合には、大きな面積が必要になるという課題があった。
【0013】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであり、高精度なインピーダンスと低挿入損失のバランおよび優れた周波数特性のフィルタを実現でき、かつ簡単でコンパクトな構成のバランスフィルタを有する樹脂多層デバイスを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の請求項1に記載の樹脂多層デバイスは、バランスフィルタを有する樹脂多層デバイスであって、基板と、前記基板上に形成されたGND層と、前記基板又は前記GND層上に設けられた第1樹脂層と、前記第1樹脂層上に設けられた第1導電パターン群と、前記第1樹脂層上および前記第1導電パターン群上に形成された第2樹脂層と、前記第2樹脂層上に設けられた第2導電パターン群と、前記第2樹脂層上および前記第2導電パターン群上に形成された第3樹脂層と、を備え、前記バランスフィルタのバランは、前記第1導電パターン群の導電パターンとして電気的に互いに独立して設けられた第1平衡信号伝送路および第2平衡信号伝送路と、前記第2導電パターン群の導電パターンとして前記2つの平衡信号伝送路に対向して設けられた不平衡信号伝送路と、を有し、前記第1平衡信号伝送路およびこれに対向する前記不平衡信号伝送路の第1不平衡信号伝送路部は、内周に第1スペースを有する平面スパイラル型に配置され、前記第2平衡信号伝送路およびこれに対向する前記不平衡信号伝送路の第2不平衡信号伝送路部は、内周に第2スペースを有する平面スパイラル型に配置されており、前記バランスフィルタのフィルタは、前記第1導電パターン群の導電パターンと、前記第2導電パターン群の導電パターンと、を有し、前記第1スペース内および/または前記第2スペース内に配置されていて、前記GND層は、前記フィルタと重なる領域を除いた領域に形成されていることを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項2に記載の樹脂多層デバイスは、請求項1において、前記第1スペース及び前記第2スペースにおいて、前記GND層の内縁を成す端部が、前記バランを構成する最内周の部位より内側に延伸して配された距離をA、前記GND層の上面と前記第2導電パターン群の下面との距離をBとした場合、前記Aは前記Bの5倍以上であることを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項3に記載の樹脂多層デバイスは、バランスフィルタを有する樹脂多層デバイスであって、基板と、前記基板上に形成された第1樹脂層と、前記第1樹脂層上に設けられた第1導電パターン群と、前記第1樹脂層上および前記第1導電パターン群上に形成された第2樹脂層と、前記第2樹脂層上に設けられた第2導電パターン群と、前記第2樹脂層上および前記第2導電パターン群上に形成された第3樹脂層と、を備え、前記バランスフィルタのバランは、前記第1導電パターン群の導電パターンとして電気的に互いに独立して設けられた第1平衡信号伝送路および第2平衡信号伝送路と、前記第2導電パターン群の導電パターンとして前記2つの平衡信号伝送路に対向して設けられた不平衡信号伝送路と、を有し、前記第1平衡信号伝送路およびこれに対向する前記不平衡信号伝送路の第1不平衡信号伝送路部は、内周に第1スペースを有する平面スパイラル型に配置され、前記第2平衡信号伝送路およびこれに対向する前記不平衡信号伝送路の第2不平衡信号伝送路部は、内周に第2スペースを有する平面スパイラル型に配置されており、前記バランスフィルタのフィルタは、前記第1導電パターン群の導電パターンと、前記第2導電パターン群の導電パターンと、を有し、前記第1スペース内および/または前記第2スペース内に配置されていることを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項4に記載の樹脂多層デバイスは、請求項1〜3のいずれか一項において、それぞれ前記第2導電パターン群の導電パターンとして、前記第1平衡信号伝送路の一端に接続された第1平衡信号電極パッドと、前記第2平衡信号伝送路の一端に接続された第2平衡信号電極パッドと、前記第1スペース内に配置された不平衡信号電極パッドと、前記第1スペース内に配置された第1フィルタ電極パッドと、前記第2スペース内に配置された第2フィルタ電極パッドと、をさらに備え、前記フィルタは、前記第1スペース内に配置され、一端が前記不平衡信号電極パッドに接続され、他端が前記第1フィルタ電極パッドに接続された第1フィルタ部と、前記第2スペース内に配置され、一端が前記第2フィルタ電極パッドに接続され、他端が前記第2不平衡信号伝送路部の内周端に接続された第2フィルタ部と、を有し、前記第1フィルタ電極パッドと前記第2フィルタ電極パッドとが、ボンディングワイヤによって接続されていることを特徴とする。
【0018】
本発明の請求項5に記載の樹脂多層デバイスは、請求項1〜3のいずれか一項において、それぞれ前記第2導電パターン群の導電パターンとして、前記第1平衡信号伝送路の一端に接続された第1平衡信号電極パッドと、前記第2平衡信号伝送路の一端に接続された第2平衡信号電極パッドと、前記第1スペース内に配置された不平衡信号電極パッドと、前記第1スペース内に配置された第1フィルタ電極パッドと、前記第2スペース内に配置された第2フィルタ電極パッドと、をさらに備え、前記フィルタは、前記第1スペース内に配置され、一端が前記不平衡信号電極パッドに接続され、他端が前記第1フィルタ電極パッドに接続された第1フィルタ部と、前記第2スペース内に配置され、一端が前記第2フィルタ電極パッドに接続され、他端が前記第2不平衡信号伝送路部の内周端に接続された第2フィルタ部と、を有し、前記第1フィルタ電極パッドと前記第2フィルタ電極パッドとが、前記第3樹脂層上に設けられた導電パターンによって接続されていることを特徴とする。
【0019】
本発明の請求項6に記載の樹脂多層デバイスは、請求項4または5において、前記フィルタは、複数のインダクタと複数のキャパシタとによって構成されており、前記インダクタおよび前記キャパシタが、前記第1フィルタ部と前記第2フィルタ部とに、対称となるように振り分けられて配置されていることを特徴とする。
【0020】
本発明の請求項7に記載の樹脂多層デバイスは、請求項4または5において、前記フィルタはバンドパスフィルタであり、前記第1フィルタ部はハイパスフィルタであり、前記第2フィルタ部はローパスフィルタであることを特徴とする。
【0021】
本発明の請求項8に記載の樹脂多層デバイスは、請求項1〜3のいずれか一項において、それぞれ前記第2導電パターン群の導電パターンとして、前記第1平衡信号伝送路の一端に接続された第1平衡信号電極パッドと、前記第2平衡信号伝送路の一端に接続された第2平衡信号電極パッドと、前記第1スペース内に配置された不平衡信号電極パッドと、をさらに備え、前記フィルタは、前記第1スペース内に配置され、一端が前記不平衡信号電極パッドに接続され、他端が前記第2不平衡信号伝送路部の内周端に接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、基板上に、GND層、第1樹脂層、第1導電パターン群、第2樹脂層、第2導電パターン群、第3樹脂層を順に積層した構成によって、バランスフィルタを有するWLPとしたことにより、WLCSP技術では、CMOS半導体加工技術と同様の高い精度で樹脂層および銅めっき等による低抵抗の導電パターンを形成することができるので、高精度なインピーダンスと低挿入損失のバランおよび周波数特性に優れたフィルタによるバランスフィルタを有する樹脂多層デバイスを得ることができるとともに、バランの平面スパイラル型の伝送路内周に確保されたスペース内にフィルタを配置したことにより、ほぼ2つの平面スパイラル伝送路が占有する面積に積層型のフィルタを作製できるので、簡単でコンパクトな構成のバランスフィルタを有する樹脂多層デバイスを得ることができるという効果がある。さらに、前記GND層は、前記フィルタと重なる領域以外の領域に形成されているので、前記フィルタを構成するインダクタ及びキャパシタに干渉することがなく、該フィルタの優れた周波数特性が保たれる。
【0023】
ここで、前記スペースにおいて、前記GND層の内縁を成す端部が、前記バランを構成する最内周の部位より内側に延伸して配されており、その延伸された距離をA、前記GND層の上面と前記第2導電パターン群の下面との距離をBとした場合、前記Aは前記Bの5倍以上であると、前記GND層と前記第1導電パターン群との間の電気力線、及び前記GND層と前記第2導電パターン群との間の電気力線が伸びやかに形成されるため、前記GND層が形成されていない領域があることによるバラン動作への悪影響を防ぐことができる。
【0024】
また、本発明によれば、基板上に、第1樹脂層、第1導電パターン群、第2樹脂層、第2導電パターン群、第3樹脂層を順に積層した構成によって、バランスフィルタを有するWLPとしたことにより、WLCSP技術では、CMOS半導体加工技術と同様の高い精度で樹脂層および銅めっき等による低抵抗の導電パターンを形成することができるので、高精度なインピーダンスと低挿入損失のバランおよび周波数特性に優れたフィルタによるバランスフィルタを有する樹脂多層デバイスを得ることができるとともに、バランの平面スパイラル型の伝送路内周に確保されたスペース内にフィルタを配置したことにより、ほぼ2つの平面スパイラル伝送路が占有する面積に積層型のバランスフィルタを作製できるので、簡単でコンパクトな構成のバランスフィルタを有する樹脂多層デバイスを得ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態1の樹脂多層デバイスの構成例を説明する斜視図である。
【図2】本発明の実施形態1の樹脂多層デバイスにおけるGND層の配置の一例を説明する上面図である。
【図3】本発明の実施形態1の樹脂多層デバイスにおけるバランの構成を説明する上面図である。
【図4】図3においてのG−G間の断面図である。
【図5】図3においてのH−H間の断面図である。
【図6】図3においてのI−I間の断面図である。
【図7】本発明の実施形態1の樹脂多層デバイスにおけるバランの動作を説明する模式回路図である。
【図8】本発明の実施形態1の樹脂多層デバイスにおけるフィルタの構成を説明する上面図である。
【図9】図8におけるJ−J間の断面図である。
【図10】図8におけるK−K間の断面図である。
【図11】本発明の実施形態1の樹脂多層デバイスにおけるフィルタの回路構成図である。
【図12】本発明の実施形態2の樹脂多層デバイスにおけるフィルタの回路構成図である。
【図13】本発明の実施形態3の樹脂多層デバイスの構成例を説明する上面図である。
【図14】本発明の実施形態3の樹脂多層デバイスにおいてのフィルタの回路構成図である。
【図15】本発明の実施形態4の樹脂多層デバイスの構成例を説明する上面図である。
【図16】本発明の実施形態4の樹脂多層デバイスにおいてのフィルタの回路構成図である。
【図17】本発明の実施形態1の樹脂多層デバイスにおけるフィルタの構成を説明する別の上面図である。
【図18】本発明の実施の形態5の樹脂多層デバイスの構成の一例を説明する斜視図である。
【図19】本発明の実施の形態5の樹脂多層デバイスにおいてのバランの構成の一例を説明する上面図である。
【図20】図19においてのA−A間の断面図である。
【図21】図19においてのB−B間の断面図である。
【図22】本発明の実施の形態5の樹脂多層デバイスにおいてのバランの動作を説明する模式回路図である
【図23】本発明の実施の形態5の樹脂多層デバイスにおいてのフィルタの構成を説明する上面図である。
【図24】図23においてのD−D間の断面図である。
【図25】図23においてのE−E間の断面図である。
【図26】本発明の実施の形態5の樹脂多層デバイスにおいてのフィルタの回路構成図である。
【図27】本発明の実施の形態6の樹脂多層デバイスにおいてのフィルタの回路構成図である。
【図28】本発明の実施の形態7の樹脂多層デバイスの構成の一例を説明する上面図である。
【図29】本発明の実施の形態7の樹脂多層デバイスにおいてのフィルタの回路構成図である。
【図30】本発明の実施の形態8の樹脂多層デバイスの構成の一例を説明する上面図である。
【図31】本発明の実施の形態8の樹脂多層デバイスにおいてのフィルタの回路構成図である。
【図32】本発明の実施の形態5の樹脂多層デバイスの構成の別の例を説明する斜視図である。
【図33】本発明の実施の形態5の樹脂多層デバイスにおいてのバランの構成の別の例を説明する上面図である。
【図34】図33においてのP−P間の断面図である。
【図35】本発明の実施の形態7の樹脂多層デバイスの構成の別の例を説明する上面図である。
【図36】本発明の実施の形態8の樹脂多層デバイスの構成の別の例を説明する上面図である。
【図37】本発明の実施の形態5の樹脂多層デバイスにおいてのフィルタの構成を説明する別の上面図である。
【図38】図37においてのQ−Q間の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を、図面を参照して詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。なお、以下の説明に用いる図面は、模式的なものであって、実際のインダクタ、キャパシタ等の占有面積は以下の図面とは異なる。
【0027】
<実施形態1>
図1は、本発明の実施形態1の樹脂多層デバイスの構成例を説明する斜視図である。この実施形態1の樹脂多層デバイス100は、基板10と、GND層40と、第1樹脂層22と、第1導電パターン群130と、第2樹脂層24と、第2導電パターン群150と、第3樹脂層26と、2つの平衡信号端子部60(第1平衡信号端子部)および65(第2平衡信号端子部)と、6つの接地部(第1接地部70x、第3接地部70y、第5接地部70z;第2接地部75x、第4接地部75y、第6接地部75z)と、2つのフィルタ端子部80(第1フィルタ端子部)および85(第2フィルタ端子部)と、不平衡信号端子部90と、ボンディングワイヤ160とを備えて構成されたWLPである。
【0028】
[基板10]
基板10は、例えば、シリコン基板等の半導体基板、ガラス基板、あるいはGaAs等の絶縁性基板である。
【0029】
[GND層40]
GND層40は、前記基板10上に形成された導電性金属からなる接地層(グランド層)である。該導電性金属としては、例えば、銅(Cu)、アルミ(Al)等の金属を用いる。基板上にGND層40を設ける方法としては、めっき法、スパッタ法等が適用できる。
【0030】
GND層40は、後述のフィルタを構成するインダクタ及びキャパシタと重なる領域を除いた領域に形成されている。すなわち、図2において、基板10を図面の上方から見たとき、前記インダクタ及びキャパシタと重なる基板10の領域上には、GND層40は形成されていない。基板10上において、GND層40の形成されていない領域には、後述の第1樹脂層22が形成されている。
【0031】
[多層樹脂体20]
第1樹脂層22と、第2樹脂層24と、第3樹脂層26とは、多層樹脂体20を構成している。第1樹脂層22は、基板10又はGND層40上に形成されている。すなわち、GND層40上の他に、GND層40の形成されていない基板10の上にも第1樹脂層22が形成されている。この第1樹脂層22としては、例えば、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、四フッ化エチレン等のフッ素系樹脂、BCB(ベンゾシクロブテン)等の感光性樹脂を用いる。
【0032】
また、第2樹脂層24は、第1平衡信号伝送路30および第2平衡信号伝送路35を含む第1導電パターン群130が設けられた第1樹脂層22上に形成されている。この第2樹脂層24としては、例えば、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、四フッ化エチレン等のフッ素系樹脂、BCB(ベンゾシクロブテン)等の感光性樹脂を用いる。
【0033】
また、第3樹脂層26は、不平衡信号伝送路50の2つの不平衡信号伝送路部50c(第1不平衡信号伝送路部)および50d(第2不平衡信号伝送路部)を含む第2導電パターン群150が設けられた第2樹脂層24上に形成されている。この第3樹脂層26としては、例えば、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、四フッ化エチレン等のフッ素系樹脂、BCB(ベンゾシクロブテン)等の感光性樹脂を用いる。
【0034】
これらの第1樹脂層22、第2樹脂層24、および第3樹脂層26は、同じ材料を用いて同じ手法で形成する等により、同じ比誘電率を有することが望ましい。
【0035】
樹脂多層デバイス100には、積層型のバラン110と、積層型のフィルタ120とを一体化したバランスフィルタが作り込まれている。
【0036】
[バラン110]
バラン110は、第1樹脂層22と、2本の平衡信号伝送路30(第1平衡信号伝送路)および35(第2平衡信号伝送路)と、第2樹脂層24と、不平衡信号伝送路50と、第3樹脂層26とによって構成されている。また、バラン110は、内周に第1スペースE1を有するように平面スパイラル型に配置された第1バラン部110aと、内周に第2スペースE2を有するように平面スパイラル型に配置された第2バラン部110bとを備えて構成されている。第1バラン部110aは、第1平衡信号伝送路30と、これに対向する第1不平衡信号伝送路部50cとを有する。第2バラン部110bは、第2平衡信号伝送路35と、これに対向する第2不平衡信号伝送路部50dとを有する。
【0037】
図2は、樹脂多層デバイス100におけるGND層40の配置の一例を説明する上面図である。第1スペースE1において、GND層40の内縁を成す端部42aは、第1バラン部110aの最内周の部位44aより内側に距離Aで延伸して配されている。第2スペースE2において、GND層40の内縁を成す端部42bは、第2バラン部110bの最内周の部位44bより内側に距離Axで延伸して配されている。
【0038】
また、図2において、樹脂多層デバイス100の上面に対して垂直に見下ろしたとき、第1スペースE1におけるGND層40の形成されていない領域E3の形状は、第1スペースE1の形状と相似形であってもよく、相似形でなくてもよい。同様に、第2スペースE2におけるGND層40の形成されていない領域E4は、第2スペースE2と相似形であってもよく、相似形でなくてもよい。領域E3と領域E4は、バランスフィルタの動作を良好にする観点から、同一の形状であることが好ましい。なお、図2に示した領域E3及び領域E4の長方形の形状は一例であり、必ずしもこの形状である必要はない。
【0039】
図3はバラン110の構成を説明する上面図である。また、図4は図3においてのG−G間の断面図、図5は図3においてのH−H間の断面図、図6は図3においてのI−I間の断面図である。ただし、図3〜図6では、バラン110を判り易く説明するために、内周に第1スペースE1を有する平面スパイラル型の第1平衡信号伝送路30と、内周に第2スペースE2を有する平面スパイラル型の第2平衡信号伝送路35と、内周に第1スペースE1を有する平面スパイラル型の第1不平衡信号伝送路部50cおよび内周に第2スペースE2を有する平面スパイラル型の第2不平衡信号伝送路部50dを含んで構成された不平衡信号伝送路50とを、それぞれストレート型の伝送路に展開して描いてある。
【0040】
[第1平衡信号伝送路30、第2平衡信号伝送路35]
第1平衡信号伝送路30および第2平衡信号伝送路35は、第1導電パターン群130の導電パターン(第1導電パターン群130に属するあるいは第1導電パターン群130を構成する導電パターン)として、電気的に互いに独立して第1樹脂層22上に形成されている。第1平衡信号伝送路30は、内周に第1スペースE1を有する平面スパイラル型に配置された伝送路である。同様に、第2平衡信号伝送路35も、内周に第2スペースE2を有する平面スパイラル型に配置された伝送路である。
【0041】
平面スパイラル型の第1平衡信号伝送路30の外周端(一端)30aと、同様に平面スパイラル型の第2平衡信号伝送路35の外周端(一端)35aとは、間隔gをもって配置されている。これらの第1平衡信号伝送路30の一端30aおよび第2平衡信号伝送路35の一端35aは、それぞれ平衡信号(差動信号)が入出力される信号端である。また、第1平衡信号伝送路30の内周端(他端)30bおよび第2平衡信号伝送路35の内周端(他端)35bは、それぞれ接地端になっている。
【0042】
第1平衡信号伝送路30の接地端は、内周端30bから引き出された配線32の端部においてビア33を介してGND層40に電気的に接続された第1接地部70xにつなげられている(図3,6参照)。また、第2平衡信号伝送路35の接地端は、内周端35bから引き出された配線37の端部においてビア38を介してGND層40に電気的に接続された第2接地部75xにつなげられている(図3参照)。
【0043】
ビア33及びビア38は、フォトリソグラフィ等によって第1樹脂層22を貫通するように設けられたビア・ホールに金属材料が埋め込まれて、又はビア・ホールの内壁を沿うようにめっきして、形成されている。該金属材料は第1平衡信号伝送路30及び第2平衡信号伝送路35と同じ材料によって形成されることが望ましく、例えば銅めっき等のめっき金属が挙げられる。
【0044】
第1平衡信号伝送路30および第2平衡信号伝送路35は、第1導電パターン群130の導電パターンとして、同じ金属材料によって同時に形成され、例えば銅めっき等のめっき金属からなる。また、第1平衡信号伝送路30の伝送路長L1と第2平衡信号伝送路35の伝送路長L2とは、同じ長さ(L1=L2)となるように形成されることが望ましい。また、第1平衡信号伝送路30と第2平衡信号伝送路35とは、同じ幅Wおよび同じ厚さTとなるように形成されることが望ましい。なお、第1平衡信号伝送路30および第2平衡信号伝送路35の下面とGND層40上面との間隔(第1樹脂層22の層厚)はh1xである(図4参照)。
【0045】
[不平衡信号伝送路50]
不平衡信号伝送路50は、第2導電パターン群150の導電パターンとして、第2樹脂層24上に形成されている。この不平衡信号伝送路50は、その下面が第1平衡信号伝送路30の上面に対向するように設けられて内周に第1スペースE1を有する平面スパイラル型の第1不平衡信号伝送路部50cと、その下面が第2平衡信号伝送路35の上面に対向するように設けられて内周に第2スペースE2を有する平面スパイラル型の第2不平衡信号伝送路部50dとの外周端同士を一体に接続(電気的に接続)した1本の伝送路である。
【0046】
不平衡信号伝送路50の一端(第2不平衡信号伝送路部50dの内周端)50aは不平衡信号が出入力される信号端になっており、不平衡信号伝送路50の他端(第1不平衡信号伝送路部50cの内周端)50bは開放端になっている。
【0047】
不平衡信号伝送路50は、第2導電パターン群150の導電パターンとして、例えば銅めっき等のめっき金属からなる。この不平衡信号伝送路50は、第1平衡信号伝送路30および第2平衡信号伝送路35と同じ形成手法によって同じ金属材料で形成されていることが望ましい。
【0048】
不平衡信号伝送路50は、その長さLが、第1平衡信号伝送路30の伝送路長L1と、第2平衡信号伝送路35の伝送路長L2と、第1平衡信号伝送路30の信号端30aと第2平衡信号伝送路35の信号端35aの間隔gとの合計の長さと同じになるように形成されていることが望ましい。また、不平衡信号伝送路50は、第1平衡信号伝送路30および第2平衡信号伝送路35と同じ幅Wおよび同じ厚さTとなるように形成されていることが望ましい。
【0049】
なお、第2樹脂層24を介して対向配置された不平衡信号伝送路50下面と、第1平衡信号伝送路30上面および第2平衡信号伝送路35上面との間隔はdである。また、不平衡信号伝送路50上面から第3樹脂層60上面までの間隔はh2である(図4参照)。
【0050】
[バランスフィルタの動作]
図7はバランスフィルタ110の動作を説明する模式回路図である。図7において、SD1は、平衡信号(差動信号)の内、第1平衡信号伝送路30の信号端30aに入力される(または信号端30aから出力される)信号、SD2は、上記平衡信号の内、第2平衡信号伝送路35の信号端35aに入力される(または信号端35aから出力される)信号、SSは、不平衡信号伝送路50の信号端50aからフィルタ120を介して出力される(またはフィルタ120を介して信号端50aに入力される)不平衡信号(単一信号)をそれぞれ表している。
【0051】
また、図7において、ZD1は第1平衡信号伝送路30の入力インピーダンス(または出力インピーダンス)、ZD2は第2平衡信号伝送路35の入力インピーダンス(または出力インピーダンス)、ZSは不平衡伝送路50の出力インピーダンス(または入力インピーダンス)をそれぞれ表している。
【0052】
バラン110は、第1平衡信号伝送路30および第2平衡信号伝送路35と不平衡信号伝送路50とを、第2樹脂層24(図1等参照)を介して近接配置することにより、第1平衡信号伝送路30および第2平衡信号伝送路35と不平衡信号伝送路50との間に電磁結合を生じる回路である。
【0053】
このバラン110において、第1平衡信号伝送路30および第2平衡信号伝送路35の信号端30a,35aに平衡信号SD1,SD2を入力すると、これらの平衡信号SD1,SD2は不平衡信号に変換され、不平衡信号伝送路50の信号端50aから出力される。この不平衡信号は、フィルタ120に入力され、高調波成分の除去等のフィルタ処理をされた不平衡信号SSが、フィルタ120から出力される。
【0054】
また、これとは逆に、バラン110において、フィルタ120を介して不平衡信号SSを不平衡信号伝送路50の信号端50aに入力すると、この不平衡信号は平衡信号に変換され、第1平衡信号伝送路30および第2平衡信号伝送路35の信号端30a,35aから平衡信号SD1,SD2が出力される。
【0055】
ここで、伝送する信号(変換する信号)の波長をλとすると、第1平衡信号伝送路30の伝送路長L1および第2平衡信号伝送路35の伝送路長L2がそれぞれλ/4となり、不平衡信号伝送路50の内の第1不平衡信号伝送路部50cと第2不平衡信号伝送路部50dの合計の伝送路長(=L1+L2=L−g)がλ/2となるように、それぞれの伝送路を設けることが望ましい。
【0056】
また、GND層40の内縁を成す端部42aが、第1バラン部110aの最内周の部位44aより内側に延伸された距離は距離A以上であることが好ましく、該距離Aは、GND層40の上面と第2導電パターン群150である不平衡信号伝送路50の下面との距離Bの5倍(以上)である。ここで、該距離Bは、図4において、h1x+T+dで示される距離である。同様に、GND層40の内縁を成す端部42bが、第2バラン部110bの最内周の部位44bより内側に延伸された距離は距離Ax以上であることが好ましく、該距離Axは、前記距離Bの5倍(以上)である。
【0057】
さらに、バラン110は、インピーダンスを変換するトランスとしての機能も兼ね備えている。インピーダンス変換については、不平衡信号側のインピーダンスZS、および平衡信号側のインピーダンスZD1,ZD2が設計仕様のインピーダンス値であることが要求される。例えば、不平衡信号側のインピーダンスZS=50Ω、平衡信号側のインピーダンスZD1+ZD2=100,150,200Ωである。
【0058】
このようなバランスフィルタは、アンテナで受信した高周波不平衡信号を復調するために平衡信号に変換する必要があり、逆に変調された高周波平衡信号をアンテナから送信するために不平衡信号に変換する必要がある無線通信機器では、不可欠な回路である。
【0059】
無線通信機器においては、高周波信号処理ICの入出力インピーダンスとアンテナの出入力インピーダンスとは必ずしも整合していない。このため、両者のインピーダンスを整合させるためにも、インピーダンス変換機能を有するバランスフィルタは不可欠である。上記両者の間にバランスフィルタを挿入しないと、あるいは挿入してもバランスフィルタのインピーダンスが設計値からずれていると、別のインピーダンス変換器が必要になる。
【0060】
無線通信機器の信号送信部においては、高周波信号処理ICから出力された送信平衡信号(送信差動信号)は、バランに入力されて不平衡信号に変換される。この送信不平衡信号は、ローパスフィルタ(LPF)またはバンドパスフィルタ(BPF)において高調波成分を除去され、電力増幅器(PA)において増幅され、アンテナスイッチ(TDD方式の場合)を通ってアンテナから送信される。電力増幅器は差動化が進んでおらず不平衡信号によって動作しているため、平衡信号によって動作している高周波信号処理ICとの間に、バランとLPFまたはBPFを一体化したバランスフィルタが必要になる。
【0061】
この実施形態1のバランスフィルタを上記無線通信機器の信号送信部に適用する場合には、バラン110の第1平衡信号伝送路30および第2平衡信号伝送路35の信号端30a,35aが信号入力側になり、フィルタ120が信号出力側になる。従って、信号端30a,35aにそれぞれ接続されている第1平衡信号端子部60および第2平衡信号端子部65を、上記高周波信号処理ICの送信信号出力端子にそれぞれ接続し、フィルタ120の出力側に接続された不平衡信号端子部90を、上記電力増幅器の入力端子に接続することになる。
【0062】
また、無線通信機器の信号受信部においては、アンテナで受信された受信不平衡信号は、アンテナスイッチを通って低雑音増幅器(LNA)において増幅され、BPFにおいて所望の周波数帯域成分が選択されたあと、バランに入力されて平衡信号に変換される。そして、この受信平衡信号が高周波信号処理ICに入力される。高周波信号処理ICは、平衡信号によって動作しているため、不平衡信号を出力する低雑音増幅器との間に、BPFとバランを一体化したバランスフィルタが必要になる。
【0063】
この実施形態1のバランスフィルタを上記無線通信機器の信号受信部に適用する場合には、上記信号送信部に適用する場合とは逆に、フィルタ120が信号入力側、バラン110の第1平衡信号伝送路30および第2平衡信号伝送路35の信号端30a,35aが信号出力側になる。従って、フィルタ120の入力側に接続された不平衡信号端子部90を、上記低雑音増幅器の出力端子に接続し、信号端30a,35aにそれぞれ接続されている第1平衡信号端子部60および第2平衡信号端子部65を、上記高周波信号処理ICの受信信号入力端子にそれぞれ接続することになる。なお、この実施形態1のフィルタ120はLPFとして構成されているため、上記信号受信部に適用する場合には、フィルタ120をBPFとして構成する必要がある。
【0064】
[フィルタ120]
図8はフィルタ120の構成を説明する上面図である。また、図9は図8においてのJ−J間の断面図、図10は図8においてのK−K間の断面図である。さらに、図11はフィルタ120の回路構成図である。
【0065】
フィルタ120は、5次のチェビシェフ型LPFであり、積層型のキャパシタC11,C12,C13,C14と、インダクタL11,L12によって構成されている。また、フィルタ120は、第1スペースE1内に設けられた第1フィルタ部120aと、第2スペースE2内に設けられた第2フィルタ部120bとを有する。第1フィルタ部120aの一端は不平衡信号端子部90に接続され、他端は第1フィルタ端子部80に接続されている。第2フィルタ部120bの一端は不平衡信号伝送路50の信号端50aに接続され、他端は第2フィルタ端子部85に接続されている。
【0066】
第1フィルタ部120aには、キャパシタC13,C14、およびインダクタL12が配置されており、第2フィルタ部120bには、キャパシタC11,C12、およびインダクタL11が配置されている。
【0067】
キャパシタC11の一端は不平衡信号伝送路50の信号端50aに接続されており、他端は第4接地部75yによって接地されている(図8参照)。第4接地部75yは、第2接地部75xと同様に、ビアを介して該他端とGND層40を接続している。
インダクタL11の一端は信号端50aに接続されており、他端は第2フィルタ端子部85に接続されている。
キャパシタC12の一端は第2フィルタ端子部85に接続されており、他端は第6接地部75zによって接地されている(図8参照)。第6接地部75zは、第2接地部75xと同様に、ビアを介して該他端とGND層40を接続している。
【0068】
また、キャパシタC13の一端は第1フィルタ端子部80に接続されており、他端は第3接地部70yによって接地されている(図8参照)。第3接地部70yは、第1接地部70xと同様に、ビアを介して該他端とGND層40を接続している。
インダクタL12の一端は第1フィルタ端子部80に接続されており、他端は不平衡信号端子部90に接続されている。
キャパシタC14の一端は不平衡信号端子部90に接続されており、他端は第5接地部70zによって接地されている(図8参照)。第5接地部70zは、第1接地部70xと同様に、ビアを介して該他端とGND層40を接続している。
なお、第1フィルタ端子部80と第2フィルタ端子部85とは、ボンディングワイヤ160によって接続されている。
【0069】
なお、図8の上面図は、図17の上面図に示す構成とすることもできる。図17では、領域E3および領域E4の形状が長方形でない場合を示している。ここで、図17において、図8と同様のものには同じ符号を付してある。
【0070】
キャパシタC11は、第1導電パターン群130の導電パターンである下部電極131と、第2導電パターン群150の導電パターンである上部電極151とを有する。下部電極131は、第1導電パターン群130の配線パターンを介して、第4接地部75yのビア39に接続されて、GND層40につながれている(図9参照)。ここで、キャパシタC11を構成する下部電極131及び上部電極151と重なる基板10上の領域には、GND層40は形成されていない(図9参照)。また、上部電極151は、第2導電パターン群150の配線パターンを介して不平衡信号伝送路50の信号端50aに接続されている。
なお、第4接地部75yのビア39は、前述の第2接地部75xのビア38と同様に形成されている。
【0071】
インダクタL11は、第2導電パターン群150の導電パターンである平面スパイラル型のコイルパターン152と、第1導電パターン群130の導電パターンであるアンダーパスパターン132とを有する。コイルパターン152の内周端は、アンダーパスパターン132および第2導電パターン群150の配線パターンを介して、不平衡信号伝送路50の信号端50aに接続されている。また、コイルパターン152の外周端は、第2導電パターン群150の配線パターンを介して、同じく第2導電パターン群150のフィルタ電極パッド154に接続されている(図10参照)。ここで、インダクタL11を構成するコイルパターン152及びアンダーパスパターン132と重なる基板10上の領域には、GND層40は形成されていない(図10参照)。
【0072】
キャパシタC12は、第1導電パターン群130の導電パターンである下部電極133と、第2導電パターン群150の導電パターンである上部電極153とを有する。下部電極133は、第1導電パターン群130の配線パターンを介して、第6接地部75zのビアに接続されて、GND層40につながれている。ここで、キャパシタC12を構成する下部電極133及び上部電極153と重なる基板10上の領域には、GND層40は形成されていない。また、上部電極153は、第2導電パターン群150の配線パターンを介して、同じく第2導電パターン群150のフィルタ電極パッド154に接続されている。
なお、第6接地部75zのビアは、前述の第2接地部75xのビア38と同様に形成されている。
【0073】
キャパシタC13は、第1導電パターン群130の導電パターンである下部電極136と、第2導電パターン群150の導電パターンである上部電極156とを有する。下部電極136は、第1導電パターン群130の配線パターンを介して、第3接地部70yのビアに接続されて、GND層40につながれている。ここで、キャパシタC13を構成する下部電極136及び上部電極156と重なる基板10上の領域には、GND層40は形成されていない。また、上部電極156は、第2導電パターン群150の配線パターンを介して、同じく第2導電パターン群150のフィルタ電極パッド155に接続されている。
なお、第3接地部70yのビアは、前述の第1接地部70xのビア33と同様に形成されている。
【0074】
インダクタL12は、第2導電パターン群150の導電パターンである平面スパイラル型のコイルパターン157と、第1導電パターン群130の導電パターンであるアンダーパスパターン137とを有する。コイルパターン157の内周端は、アンダーパスパターン137および第2導電パターン群150の配線パターンを介して、第2導電パターン群150のフィルタ電極パッド155に接続されている。また、コイルパターン157の外周端は、第2導電パターン群150の配線パターンを介して、同じく第2導電パターン群150の不平衡信号電極パッド59に接続されている。ここで、インダクタL12を構成するコイルパターン157及びアンダーパスパターン137と重なる基板10上の領域には、GND層40は形成されていない。
【0075】
キャパシタC14は、第1導電パターン群130の導電パターンである下部電極138と、第2導電パターン群150の導電パターンである上部電極158とを有する。下部電極138は、第1導電パターン群130の配線パターンを介して、第5接地部70zのビアに接続されて、GND層40につながれている。ここで、キャパシタC14を構成する下部電極138及び上部電極158と重なる基板10上の領域には、GND層40は形成されていない。また、上部電極158は、第2導電パターン群150の配線パターンを介して、同じく第2導電パターン群150の不平衡信号電極パッド59に接続されている。
なお、第5接地部70zのビアは、前述の第1接地部70xのビア33と同様に形成されている。
【0076】
このように、フィルタ120では、キャパシタとインダクタとを、第1フィルタ部120aと第2フィルタ部120bに、対称に配置した構成としている。フィルタ120は、5次のチェビシェフ型LPFであるため、一般には、キャパシタC12とC13とは1つのキャパシタとなる。しかし、これを分割して第1フィルタ部120aと、第2フィルタ部120bにそれぞれ配置することにより、第1スペースE1と第2スペースE2の対称性を確保でき、バランス性に優れた回路配置とすることができる。
【0077】
特に、インダクタを第1フィルタ部120aと第2フィルタ部120bに、均等に割り振って対称配置することにより、インダクタの特性を向上させることができる。優れた特性のフィルタを得るには、インダクタのQ値を高くする必要があるが、一般に、インダクタのQ値は、コイルパターンの内径対外径比が大きいほど高くできる。このため、インダクタのQ値を高くするには、インダクタの占有面積を大きくする必要がある。フィルタ120は、2つのインダクタL11,L12を有するので、第1フィルタ部120aと第2フィルタ部120bに、つまり第1スペースE1における領域E3と第2スペースE2における領域E4に、インダクタを1つずつ配置することにより、それぞれのインダクタを大きくすることが可能となる。
【0078】
この実施形態1では、基板10上に、WLCSP技術によって、GND層40、第1樹脂層22、第1導電パターン群130、第2樹脂層24、第2導電パターン群150、第3樹脂層26を順に積層して、バランスフィルタを形成することにより、CMOS半導体加工技術と同様の高い精度で樹脂層および銅めっき等による低抵抗の伝送路を形成することができるとともに、銅めっき等による高いQ値のインダクタを形成することができる。
【0079】
[第1平衡信号端子部60、第2平衡信号端子部65]
第1平衡信号端子部60は、第3樹脂層26の開口部26a内に、第2導電パターン群150の平衡信号電極パッド51を設けたものである。平衡信号電極パッド51は、第2導電パターン群150の配線パターンおよび第1導電パターン群130の配線パターンを介して、第1平衡信号伝送路30の信号端30aに接続されている。
【0080】
同様に、第2平衡信号端子部65は、第3樹脂層26の開口部26c内に、第2導電パターン群150の平衡信号電極パッド56を設けたものである。平衡信号電極パッド56は、第2導電パターン群150の配線パターンおよび第1導電パターン群130の配線パターンを介して、第2平衡信号伝送路35の信号端35aに接続されている。
【0081】
[第1接地部70x、第2接地部75x、第3接地部70y、第4接地部75y、第5接地部70z、第6接地部75z]
第1接地部70xは、第1樹脂層を貫通するビア33を介して、第1平衡信号伝送路30(第1導電パターン群130)をGND層40に電気的に接続するものである。
同様に、第2接地部75xは、第1樹脂層を貫通するビア38を介して、第2平衡信号伝送路35(第1導電パターン群130)をGND層40に電気的に接続するものである。
【0082】
また、第3接地部70y、第4接地部75y、第5接地部70z、及び第6接地部75zは、第1樹脂層を貫通する個別のビアを介して、キャパシタC11、キャパシタC12、キャパシタC13、及びキャパシタC14を、ぞれぞれGND層40に電気的に接続するものである。該ビアは、前述のビア33及びビア38と同様に、各キャパシタの下部電極から引き出された配線パターン(第一導電パターン群130)に接続されて設けられている。
【0083】
[第1フィルタ端子部80、第2フィルタ端子部85]
第1フィルタ端子部80は、第3樹脂層26の開口部26g内に、第2導電パターン群150のフィルタ電極パッド155を設けたものである。フィルタ電極パッド155は、第2導電パターン群150の配線パターンを介して、キャパシタC13の上部電極156およびインダクタL12のコイルパターン157に接続されている。また、第2フィルタ端子部85は、第3樹脂層26の開口部26f内に、第2導電パターン群150のフィルタ電極パッド154を設けたものである。フィルタ電極パッド154は、第2導電パターン群150の配線パターンを介して、キャパシタC12の上部電極153およびインダクタL11のコイルパターン152に接続されている。そして、フィルタ電極パッド154と155とは、ボンディングワイヤ160によって接続されている。
【0084】
これらの第1フィルタ端子部80と、第2フィルタ端子部85とは、第1フィルタ部120aのキャパシタC13の上部電極156と、第2フィルタ部120bのキャパシタC12の上部電極153とを、ボンディングワイヤ160によって接続して、5次のチェビシェフ型LPFであるフィルタ120を完成させるためのものである。
【0085】
このように、第1フィルタ端子部80と第2フィルタ端子部85とを、ボンディングワイヤ160で接続することにより、第1導電パターン群130による導電層と第2導電パターン群150による導電層の2層構造で、積層型バランスフィルタを実現できる。
【0086】
なお、第3樹脂層26上に導電パターンを設けて、第1フィルタ端子部80と第2フィルタ端子部85を接続した構成とすることも可能である。この場合には、上記導電パターン上に、さらに樹脂層を形成することが望ましい。第1フィルタ端子部80と第2フィルタ端子部85を、上記のようにボンディングワイヤ160で接続すれば、工数を削減することができる。
【0087】
[不平衡信号端子部90]
不平衡信号端子部90は、第3樹脂層26の開口部26e内に、第2導電パターン群150の不平衡信号電極パッド59を設けたものである。不平衡信号電極パッド59は、第2導電パターン群150の配線パターンを介して、フィルタ部120のキャパシタC14の上部電極158およびインダクタL12のコイルパターン157に接続されている。
【0088】
この実施形態1では、第1フィルタ部120a、第1接地部70x、第3接地部70y、第5接地部70z、第1フィルタ端子部80、および不平衡信号端子部90は、第1バラン部110aの内周に確保された第1スペースE1内に配置されている。また、第2フィルタ部120b、第2接地部75x、第4接地部75y、第6接地部75z、および第2フィルタ端子部85は、第2バラン部110bの内周に確保された第2スペースE2内に配置されている。なお、第1平衡信号端子部60および第2平衡信号端子部65は、これらの第1スペースE1および第2スペースE2の外側に配置されている。従って、この実施形態1では、ほぼ2つの平面スパイラル型伝送路が占有する面積に、2層の導電層構造でバランスフィルタを作製することができる。
【0089】
なお、樹脂多層デバイス100を実装基板にフリップチップ実装する場合には、ボンディングワイヤ160を設けず、平衡信号電極パッド51,56上、不平衡信号電極パッド59上、およびフィルタ電極パッド154,155上にそれぞれ、はんだバンプを設ける。この場合、第1フィルタ端子部80と第2フィルタ端子部85とは、実装基板に設けられた導電パターンを介して接続されることになる。
【0090】
[製造手順]
図1〜図11を参照して、樹脂多層デバイス100の製造手順を以下に説明する。以下の説明において、基板10は、シリコン(Si)ウェハであるものとする。樹脂多層デバイス100は、WLPであるから、シリコンウェハ上に樹脂層形成プロセスと厚膜銅パターン群等の導電パターン群形成プロセスによってバランスフィルタを作り込み、そのあとにチップにダイシングするWLCSP技術によって製造される。
【0091】
まず、シリコンウェハである基板10上にGND層40を、例えば銅めっき、アルミ膜、銅膜によって形成する。つづいて、基板10上に均一に形成されたGND層40のうち、領域E3及び領域E4と重なる領域のGND層はエッチング法によって除去する。GND層40は、後で樹脂多層デバイス100を実装する基板のGNDに導通される。
【0092】
次に、GND層40及びGND層40が除かれた領域(E3,E4)の基板10上に第1樹脂層22を形成する。第1樹脂層22としては、比誘電率Erの感光性の絶縁樹脂を用いる。この感光性樹脂の流体樹脂材料をスピンコート法によって基板10のGND層40が除かれた領域及びGND層40上にコーティングし、GND層40上における厚さ寸法がh1xとなるように感光性樹脂層を形成する。そして、この感光性樹脂層にフォトリソグラフィー法によって、前記ビアを形成するためのビア・ホール(貫通孔)を形成する。なお、GND層40が除かれた領域において基板10上に形成された第1樹脂層22の厚さ寸法は「h1x+GND層40の厚み」である。
【0093】
次に、第1樹脂層22上に、内周に第1スペースE1を有する平面スパイラル型の第1平衡信号伝送路30、内周に第2スペースE2を有する平面スパイラル型の第2平衡信号伝送路35、前記ビア、キャパシタC11,C12,C13,C14の下部電極131,133,136,138、インダクタL11,L12のアンダーパスパターン132,137等を含む第1導電パターン群130を設ける。
【0094】
第1導電パターン群130としては、銅めっきを用いる。第1樹脂層22上及び前記ビア・ホール内にシード層を形成した後、レジストを形成しパターニングした後、銅めっきを施し、幅寸法W,厚さ寸法T,長さ寸法L1の第1平衡信号伝送路30、および幅寸法W,厚さ寸法T,長さ寸法L2(=L1)の第2平衡信号伝送路35を含む第1導電パターン群130を形成する。この際、前記ビア・ホール内を銅めっき等することにより、第1導電パターン群130とGND層40とを電気的に接続するビア33及びビア38を形成する。なお、キャパシタの(下部)電極は、スパッタでも良い。
【0095】
次に、第1導電パターン群130を設けた第1樹脂層22上に、第2樹脂層24を形成し、この第2樹脂層24に、上記第1導電パターン群130の導電パターンを第2導電パターン群150の導電パターンにコンタクトさせるための開口部を設ける。第2樹脂層24としては、第1樹脂層22と同じ比誘電率Erの感光性の絶縁樹脂を用いる。この感光性樹脂の流体樹脂材料をスピンコート法によって、第1導電パターン群130を設けた第1樹脂層22上にコーティングし、第1平衡信号伝送路30上面および第2平衡信号伝送路35上面からの厚さ寸法dの感光性樹脂層を形成する。そして、この感光性樹脂層にフォトリソグラフィー法によって上記開口部を設ける。
【0096】
次に、第2樹脂層24上に、不平衡信号伝送路50、キャパシタC11,C12,C13,C14の上部電極151,153,156,158、インダクタL11,L12のコイルパターン152,157、平衡信号電極パッド51,56、不平衡信号電極パッド59、フィルタ電極パッド154,155等を含む第2導電パターン群150を設ける。
【0097】
平衡信号電極パッド51は、第1平衡信号伝送路30の信号端30aを第1平衡信号端子部60に導くための電極パッドである。平衡信号電極パッド56は、第2平衡信号伝送路35の信号端35aを第2平衡信号端子部65に導くための電極パッドである。フィルタ電極パッド154は、第2フィルタ部120bの他端を第2フィルタ端子部85に導く電極パッドである。フィルタ電極パッド155は、第1フィルタ部120aの他端を第1フィルタ端子部80に導くための電極パッドである。そして、不平衡信号電極パッド59は、フィルタ120の信号出入力端(第1フィルタ部120aの一端)を不平衡信号端子部90に導くための電極パッドである。
【0098】
第2導電パターン群150としては、第1導電パターン群130と同じ銅めっきを用いる。第2樹脂層24上にシード層を形成した後、レジストを形成しパターニングした後、銅めっきを施し、幅寸法W、厚さ寸法T、長さ寸法Lの不平衡信号伝送路50を含む第2導電パターン群150を形成する。なお、キャパシタの(上部)電極は、スパッタでも良い。
【0099】
次に、第2導電パターン群150を設けた第2樹脂層24上に、封止樹脂層となる第3樹脂層26を形成し、この第3樹脂層26に、電極パッド51,56,59,154,155をそれぞれ露出させる開口部26a,26c,26e,26f,26gを設ける。第3樹脂層26としては、第1樹脂層22および第2樹脂層24と同じ比誘電率Erの感光性の絶縁樹脂を用いる。この感光性樹脂の流体樹脂材料をスピンコート法によって、第2導電パターン群150を設けた第2樹脂層24上にコーティングし、不平衡信号伝送路50上面からの厚さ寸法h2の感光性樹脂層を形成する。そして、この感光性樹脂層にフォトリソグラフィー法によって開口部26a,26c,26e,26f,26gを形成する。
【0100】
以上の手順を完了したあと、シリコンウェハである基板10をダイシングして、WLPの樹脂多層デバイス100を得る。
【0101】
以上のように実施形態1によれば、基板上に、GND層40、第1樹脂層22、第1導電パターン群130、第2樹脂層24、第2導電パターン群150、第3樹脂層26を順に積層した構成によって、バランスフィルタを有するWLPとしたことにより、WLCSP技術では、CMOS半導体加工技術と同様の高い精度で樹脂層および銅めっき等による低抵抗の導電パターンを形成することができるので、高精度なインピーダンスと低挿入損失のバランおよび周波数特性に優れたフィルタによるバランスフィルタを有する樹脂多層デバイスを得ることができる。
【0102】
さらに、この実施形態1では、バラン110の平面スパイラル型の伝送路内周に確保されたスペースE1における領域E3,E2における領域E4内にフィルタ120を配置したことにより、ほぼ2つの平面スパイラル型の伝送路が占有する面積に2層の導電層でバランスフィルタを作製できるので、簡単でコンパクトな構成のバランスフィルタを有する樹脂多層デバイスを得ることができる。
【0103】
また、GND層40は、フィルタ120と重なる領域E3及びE4以外の領域に形成されているので、フィルタ120を構成するインダクタ及びキャパシタに干渉することがなく、該フィルタの優れた周波数特性が保たれる。
【0104】
さらに、スペースE1及びE2において、GND層40の内縁を成す端部42a及び42bが、前記バランを構成する最内周の部位44a及び44bより内側に延伸して配された距離をA及びAx、GND層40の上面と前記第2導電パターン群150の下面との距離をBとした場合、前記A及びAxは前記Bの5倍以上であると、GND層40と第1導電パターン群130との間の電気力線、及びGND層40と第2導電パターン群150との間の電気力線が伸びやかに形成されるため、前記GND層が形成されていない領域があることによるバラン動作への悪影響を防ぐことができる。
【0105】
<実施形態2>
図12は本発明の実施形態2の樹脂多層デバイスにおいてバランスフィルタを構成するフィルタの回路構成図である。なお、図12において、図1または図11等と同様のものには同じ符号を付してある。
【0106】
この実施形態2の樹脂多層デバイスは、上記実施形態1の樹脂多層デバイス100(図1等参照)において、バランスフィルタを構成するフィルタ120(図11等参照)を、図12のフィルタ220としたものである。
【0107】
[フィルタ220]
フィルタ220は、5次の楕円関数型LPFであり、積層型のキャパシタC21,C22,C23,C24,C25,C26と、インダクタL21,L22によって構成されている。また、フィルタ220は、第1スペースE1における領域E3内に設けられた第1フィルタ部220aと、第2スペースE2における領域E4内に設けられた第2フィルタ部220bとを有する。
【0108】
第1フィルタ部220aには、キャパシタC24,C25,C26、およびインダクタL22が配置されており、第2フィルタ部220bには、キャパシタC21,C22,C23、およびインダクタL21が配置されている。
【0109】
キャパシタC21の一端は不平衡信号伝送路50に接続されており、他端は接地されている。インダクタL21とキャパシタC22は並列接続されており、この並列回路の一端は不平衡信号伝送路50に接続されており、他端は第2フィルタ端子部85に接続されている。キャパシタC23の一端は第2フィルタ端子部85に接続されており、他端は接地されている。
【0110】
また、キャパシタC24の一端は第1フィルタ端子部80に接続されており、他端は接地されている。インダクタL22とキャパシタC25は並列接続されており、この並列回路の一端は第1フィルタ端子部80に接続されており、他端は不平衡信号端子部90に接続されている。キャパシタC26の一端は不平衡信号端子部90に接続されており、他端は接地されている。なお、第1フィルタ端子部80と第2フィルタ端子部85とは、ボンディングワイヤ160によって接続されている。
【0111】
キャパシタC21,C22,C23,C24,C25,C26は、上記実施形態1のフィルタ120を構成するキャパシタC11,C12,C13,C14(図8〜図11参照)と同様に、それぞれ第1導電パターン群130の導電パターンである下部電極と、第2導電パターン群150の導電パターンである上部電極とを有している。
【0112】
また、インダクタL21,L22も、上記実施形態1のフィルタ120を構成するインダクタL11,L12(図8〜図11参照)と同様に、それぞれ第2導電パターン群150の導電パターンである平面スパイラル型のコイルパターンと、第1導電パターン群130の導電パターンであるアンダーパスパターンとを有している。
【0113】
この実施形態2のフィルタ220では、上記実施形態1のフィルタ120(図8〜図11参照)と同様に、第1フィルタ部220aと、第2フィルタ部220bとに、キャパシタとインダクタとを対称に配置した構成としている。フィルタ220は、5次の楕円関数型LPFであるため、一般には、キャパシタC23とC24とは1つのキャパシタとなる。しかし、これを分割して第1フィルタ部220aと、第2フィルタ部220bにそれぞれ配置することにより、第1スペースE1と第2スペースE2の対称性を確保でき、バランス性に優れた回路配置とすることができる。
【0114】
特に、インダクタを第1フィルタ部220aと第2フィルタ部220bに、均等に割り振って対称配置することにより、インダクタの特性を向上させることができる。優れた特性のフィルタを得るには、インダクタのQ値を高くする必要があり、インダクタのQ値を高くするには、インダクタの占有面積を大きくする必要がある。フィルタ220は、2つのインダクタL21,L22を有するので、第1フィルタ部220aと第2フィルタ部220bに、つまり第1スペースE1における領域E3と第2スペースE2における領域E4に、インダクタを1つずつ配置することにより、それぞれのインダクタを大きくすることが可能となる。
【0115】
また、第1フィルタ端子部80と第2フィルタ端子部85とを、ボンディングワイヤ160で接続することにより、第1導電パターン群130による導電層と第2導電パターン群150による導電層の2層構造で、積層型バランスフィルタを実現できる。
【0116】
なお、第3樹脂層26上に導電パターンを設けて、第1フィルタ端子部80と第2フィルタ端子部85を接続した構成とすることも可能である。この場合には、上記導電パターン上に、さらに樹脂層を形成することが望ましい。第1フィルタ端子部80と第2フィルタ端子部85を、上記のようにボンディングワイヤ160で接続すれば、工数を削減することができる。
【0117】
また、この実施形態2の樹脂多層デバイスを実装基板にフリップチップ実装する場合には、ボンディングワイヤ160を設けず、それぞれの電極パッド上にはんだバンプを設ける。この場合、第1フィルタ端子部80と第2フィルタ端子部85とは、実装基板に設けられた導電パターンを介して接続されることになる。
【0118】
この実施形態2の樹脂多層デバイスの製造手順は、上記実施形態1の樹脂多層デバイス100と同様である。
【0119】
以上のように実施形態2によれば、上記実施形態1と同様に、CMOS半導体加工技術と同様の高い精度で樹脂層および銅めっき等による低抵抗の導電パターンを形成することができるので、高精度な入出力インピーダンスと低挿入損失のバランおよび周波数特性に優れたフィルタによるバランスフィルタを有する樹脂多層デバイスを得ることができるとともに、ほぼ2つの平面スパイラル型の伝送路が占有する面積に2層の導電層でバランスフィルタを作製できるので、簡単でコンパクトな構成のバランスフィルタを有する樹脂多層デバイスを得ることができる。
【0120】
また、GND層40は、フィルタ220と重なる領域E3及びE4以外の領域に形成されているので、フィルタ220を構成するインダクタ及びキャパシタに干渉することがなく、該フィルタの優れた周波数特性が保たれる。
【0121】
さらに、スペースE1及びE2において、GND層40の内縁を成す端部42a及び42bが、前記バランを構成する最内周の部位44a及び44bより内側に延伸して配された距離をA及びAx、GND層40の上面と前記第2導電パターン群150の下面との距離をBとした場合、前記A及びAxは前記Bの5倍以上であると、GND層40と第1導電パターン群130との間の電気力線、及びGND層40と第2導電パターン群150との間の電気力線が伸びやかに形成されるため、前記GND層が形成されていない領域があることによるバラン動作への悪影響を防ぐことができる。
【0122】
<実施形態3>
図13は本発明の実施形態3の樹脂多層デバイスの構成例を説明する上面図である。
図13において、図1と同様のものには同じ符号を付してある。また、図14は実施形態3の樹脂多層デバイス300においてバランスフィルタを構成するフィルタの回路構成図である。なお、図14において、図1または図11等と同様のものには同じ符号を付してある。
【0123】
この実施形態3の樹脂多層デバイス300は、基板10と、GND層40と、第1樹脂層22と、第1導電パターン群130と、第2樹脂層24と、第2導電パターン群150と、第3樹脂層26と、2つの平衡信号端子部60(第1平衡信号端子部)および65(第2平衡信号端子部)と、6つの接地部(第1接地部70x、第7接地部73x、第8接地部73y;第2接地部75x、第4接地部75y、第6接地部75z)と、2つのフィルタ端子部80(第1フィルタ端子部)および85(第2フィルタ端子部)と、不平衡信号端子部90と、フィルタ部接続導電パターン170とを備えて構成されたWLPである。
【0124】
つまり、実施形態3の樹脂多層デバイス300は、上記実施形態1の樹脂多層デバイス100(図1等参照)において、第3樹脂層26上に、第1フィルタ端子部80と第2フィルタ端子部85を接続するフィルタ部接続導電パターン170を設けるとともに、バランスフィルタを構成するフィルタ120(図11等参照)を、図13のフィルタ320としたものである。このフィルタ部接続導電パターン170としては、例えば第1導電パターン群130および第2導電パターン群150と同じ導電性材料を使用することができる。なお、フィルタ部接続導電パターン170上には、さらに樹脂層を形成することが望ましい。
【0125】
[フィルタ320]
フィルタ320は、BPFであり、積層型のキャパシタC31,C32,C33と、インダクタL31,L32,L33によって構成されている。また、フィルタ320は、第1スペースE1における領域E3内に設けられた第1フィルタ部320aと、第2スペースE2における領域E4内に設けられた第2フィルタ部320bとを有する。
【0126】
第1フィルタ部320aには、キャパシタC33、およびインダクタL32,L33が配置されている。この第1フィルタ部320aは、ハイパスフィルタ(HPF)を構成している。また、第2フィルタ部320bには、キャパシタC31,C32、およびインダクタL31が配置されている。この第2フィルタ部320bは、LPFを構成している。
そして、第1フィルタ部320aのHPFと、第2フィルタ部320bのLPFとを直列接続することにより、BPFが構成されている。
【0127】
キャパシタC31の一端は不平衡信号伝送路50に接続されており、他端は第4接地部75yによって接地されている。第4接地部75yは、前述の実施形態1の第4接地部75yと同様に、ビアを介して該他端とGND層40を接続している。
インダクタL31の一端は不平衡信号伝送路50に接続されており、他端は第2フィルタ端子部85に接続されている。
キャパシタC32の一端は第2フィルタ端子部85に接続されており、他端は第6接地部75zによって接地されている。第6接地部75zは、前述の実施形態1の第6接地部75zと同様に、ビアを介して該他端とGND層40を接続している。
【0128】
また、インダクタL32の一端は第1フィルタ端子部80に接続されており、他端は接地されている。キャパシタC33の一端は第1フィルタ端子部80に接続されており、他端は不平衡信号端子部90に接続されている。インダクタL33の一端は不平衡信号端子部90に接続されており、他端は接地されている。そして、第1フィルタ端子部80と第2フィルタ端子部85とは、フィルタ部接続導電パターン170によって接続されている。
【0129】
キャパシタC31,C32,C33は、上記実施形態1のフィルタ120を構成するキャパシタC11,C12,C13,C14(図8〜図11参照)と同様に、それぞれ第1導電パターン群130の導電パターンである下部電極と、それぞれ第2導電パターン群150の導電パターンである上部電極とを有している。
【0130】
また、インダクタL31,L32,L33も、上記実施形態1のフィルタ120を構成するインダクタL11,L12(図8〜図11参照)と同様に、それぞれ第2導電パターン群150の導電パターンである平面スパイラル型のコイルパターンと、それぞれ第1導電パターン群130の導電パターンであるアンダーパスパターンとを有している。
【0131】
インダクタL32の一端は第1フィルタ端子部80に接続されており、他端は第7接地部73xによって接地されている。第7接地部73xは、第1導電パターン群の配線(アンダーパスパターン)によって、ビアを介して該他端とGND層40を接続している。同様に、インダクタL33の一端は不平衡信号端子部90に接続されており、他端は第8接地部73yによって接地されている。第8接地部73yは、第1導電パターン群の配線(アンダーパスパターン)によって、ビアを介して該他端とGND層40を接続している。
【0132】
なお、この実施形態3の樹脂多層デバイス300においても、上記実施形態1の樹脂多層デバイス100(図1または図11等参照)のように、ボンディングワイヤ160によって、第1フィルタ端子部80と第2フィルタ端子部85を接続した構成とすることも可能である。
【0133】
また、この実施形態3の樹脂多層デバイス300を実装基板にフリップチップ実装する場合には、フィルタ部接続導電パターン170を設けず、それぞれの電極パッド上にはんだバンプを設ける。この場合、第1フィルタ端子部80と第2フィルタ端子部85とは、実装基板に設けられた導電パターンを介して接続されることになる。
【0134】
この実施形態3の樹脂多層デバイス300の製造手順は、上記実施形態1の樹脂多層デバイス100と同様である。
【0135】
以上のように実施形態3によれば、上記実施形態1と同様に、CMOS半導体加工技術と同様の高い精度で樹脂層および銅めっき等による低抵抗の導電パターンを形成することができるので、高精度なインピーダンスと低挿入損失のバランおよび周波数特性に優れたフィルタによるバランスフィルタを有する樹脂多層デバイスを得ることができるとともに、ほぼ2つの平面スパイラル型の伝送路が占有する面積に2層の導電層でバランスフィルタを作製できるので、簡単でコンパクトな構成のバランスフィルタを有する樹脂多層デバイスを得ることができる。
【0136】
また、GND層40は、フィルタ320と重なる領域E3及びE4以外の領域に形成されているので、フィルタ320を構成するインダクタ及びキャパシタに干渉することがなく、該フィルタの優れた周波数特性が保たれる。
【0137】
さらに、スペースE1及びE2において、GND層40の内縁を成す端部42a及び42bが、前記バランを構成する最内周の部位44a及び44bより内側に延伸して配された距離をA及びAx、GND層40の上面と前記第2導電パターン群150の下面との距離をBとした場合、前記A及びAxは前記Bの5倍以上であると、GND層40と第1導電パターン群130との間の電気力線、及びGND層40と第2導電パターン群150との間の電気力線が伸びやかに形成されるため、前記GND層が形成されていない領域があることによるバラン動作への悪影響を防ぐことができる。
【0138】
<実施形態4>
図15は本発明の実施形態4の樹脂多層デバイスの構成例を説明する上面図である。
図15において、図1と同様のものには同じ符号を付してある。また、図16は実施形態4の樹脂多層デバイス400においてバランスフィルタを構成するフィルタの回路構成図である。なお、図16において、図1または図11等と同様のものには同じ符号を付してある。
【0139】
この実施形態4の樹脂多層デバイス400は、上記実施形態1の樹脂多層デバイス100(図1等参照)において、バランスフィルタを構成するフィルタ120(図11等参照)を図16のフィルタ420とし、不平衡信号端子部90を第1スペースE1内ではなく第2スペースE2における領域E4内に設けるとともに、第1フィルタ端子部80、第2フィルタ端子部85、およびボンディングワイヤ160を設けない構成としたものである。
【0140】
つまり、この実施形態4では、第1スペースE1にフィルタが設けられておらず、これにより第1フィルタ端子部80、第2フィルタ端子部85、およびボンディングワイヤ160を設ける必要がないので、上記実施形態1の樹脂多層デバイス100よりも簡単な構成とすることができる。
【0141】
[フィルタ420]
フィルタ420は、LPFであり、積層型のキャパシタC41,C42と、インダクタL41によって構成されている。また、フィルタ420は、第2スペースE2における領域E4内に設けられており、第1スペースE1内には設けられていない。
【0142】
キャパシタC41の一端は不平衡信号伝送路50に接続されており、他端は第4接地部75yによって接地されている。第4接地部75yは、前述の実施形態1の第4接地部75yと同様に、ビアを介して該他端とGND層40を接続している。
インダクタL41の一端は不平衡信号伝送路50に接続されており、他端は第2スペースE2における領域E4内に設けられた不平衡信号端子部90に接続されている。
キャパシタC42の一端は不平衡信号端子部90に接続されており、他端は第6接地部75zによって接地されている。第6接地部75zは、前述の実施形態1の第6接地部75zと同様に、ビアを介して該他端とGND層40を接続している。
【0143】
キャパシタC41,C42は、上記実施形態1のフィルタ120を構成するキャパシタC11,C12,C13,C14(図8〜図11参照)と同様に、それぞれ第1導電パターン群130の導電パターンである下部電極と、それぞれ第2導電パターン群150の導電パターンである上部電極とを有している。
【0144】
また、インダクタL41も、上記実施形態1のフィルタ120を構成するインダクタL11,L12(図8〜図11参照)と同様に、第2導電パターン群150の導電パターンである平面スパイラル型のコイルパターンと、第1導電パターン群130の導電パターンであるアンダーパスパターンとを有している。
【0145】
なお、この実施形態4の樹脂多層デバイス400を実装基板にフリップチップ実装する場合には、それぞれの端子部の電極パッド上にはんだバンプを設ける。この実施形態4の樹脂多層デバイス400の製造手順は、上記実施形態1の樹脂多層デバイス100と同様である。
【0146】
以上のように実施形態4によれば、上記実施形態1と同様に、CMOS半導体加工技術と同様の高い精度で樹脂層および銅めっき等による低抵抗の導電パターンを形成することができるので、高精度な入出力インピーダンスと低挿入損失のバランおよび周波数特性に優れたフィルタによるバランスフィルタを有する樹脂多層デバイスを得ることができるとともに、ほぼ2つの平面スパイラル型の伝送路が占有する面積に2層の導電層でバランスフィルタを作製できるので、簡単でコンパクトな構成のバランスフィルタを有する樹脂多層デバイスを得ることができる。
【0147】
さらに、フィルタ420を第2スペースE2における領域E4にのみ設け、第1スペースE1には設けない構成としたことにより、上記実施形態1の樹脂多層デバイス100に設けられていた第1フィルタ端子部80、第2フィルタ端子部85、およびボンディングワイヤ160を設ける必要がないので、上記実施形態1よりもさらに簡単な構成にすることができる。
【0148】
また、GND層40は、フィルタ420と重なる領域E4以外の領域に形成されているので、フィルタ420を構成するインダクタ及びキャパシタに干渉することがなく、該フィルタの優れた周波数特性が保たれる。
【0149】
さらに、スペースE2において、GND層40の内縁を成す端部42bが、前記バランを構成する最内周の部位44bより内側に延伸して配された距離をAx、GND層40の上面と前記第2導電パターン群150の下面との距離をBとした場合、前記Axは前記Bの5倍以上であると、GND層40と第1導電パターン群130との間の電気力線、及びGND層40と第2導電パターン群150との間の電気力線が伸びやかに形成されるため、前記GND層が形成されていない領域があることによるバラン動作への悪影響を防ぐことができる。
【0150】
なお、上記各実施形態の説明では、2層配線構造の積層フィルタ(特にキャパシタ)を例として説明したが、本発明の樹脂多層デバイスでは、3層以上の配線層でフィルタを構成することも可能である。また、キャパシタ電極間の誘電体は、比誘電率Erのものだけでなく、比誘電率Erでない(特に比誘電率Erよりも大きい)ものを用いることも可能である。さらに、本発明の樹脂多層デバイスでは、フィルタは、LPF、あるいはLPFとHPFの組合せによるBPFに限らず、任意の形式のバンドパスフィルタ、例えば、チェビシェフ型、楕円関数型、バターワース型等のバンドパスフィルタを形成することが可能である。
【0151】
<実施の形態5>
図18は本発明の実施の形態5の樹脂多層デバイスの構成例を説明する斜視図である。図18において、図1と同様のものには同じ符号を付してある。
この実施の形態5の樹脂多層デバイス100Aは、基板10と、第1樹脂層22と、第1導電パターン群130と、第2樹脂層24と、第2導電パターン群150と、第3樹脂層26と、2つの平衡信号端子部60(第1平衡信号端子部)および65(第2平衡信号端子部)と、2つの接地端子部70(第1接地端子部)および75(第2接地端子部)と、2つのフィルタ端子部80(第1フィルタ端子部)および85(第2フィルタ端子部)と、不平衡信号端子部90と、ボンディングワイヤ160とを備えて構成されたWLPである。
なお、実施の形態5の樹脂多層デバイスの構成例として、図32に示す構成も挙げられる。図32において、図18と同様のものには同じ符号を付してある。
【0152】
[基板10]
基板10は、例えば、シリコン基板等の半導体基板、ガラス基板、あるいはGaAs等の絶縁性基板である。
【0153】
[多層樹脂体20]
第1樹脂層22と、第2樹脂層24と、第3樹脂層26とは、多層樹脂体20を構成している。第1樹脂層22は、基板10上に形成されている。この第1樹脂層22としては、例えば、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、四フッ化エチレン等のフッ素系樹脂、BCB(ベンゾシクロブテン)等の感光性樹脂を用いる。
【0154】
また、第2樹脂層24は、第1平衡信号伝送路30および第2平衡信号伝送路35を含む第1導電パターン群130が設けられた第1樹脂層22上に形成されている。この第2樹脂層24としては、例えば、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、四フッ化エチレン等のフッ素系樹脂、BCB(ベンゾシクロブテン)等の感光性樹脂を用いる。
【0155】
また、第3樹脂層26は、不平衡信号伝送路50の2つの不平衡信号伝送路部50c(第1不平衡信号伝送路部)および50d(第2不平衡信号伝送路部)を含む第2導電パターン群150が設けられた第2樹脂層24上に形成されている。この第3樹脂層26としては、例えば、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、四フッ化エチレン等のフッ素系樹脂、BCB(ベンゾシクロブテン)等の感光性樹脂を用いる。
【0156】
これらの第1樹脂層22、第2樹脂層24、および第3樹脂層26は、同じ材料を用いて同じ手法で形成する等により、同じ比誘電率を有することが望ましい。
【0157】
樹脂多層デバイス100Aには、積層型のバラン110Aと、積層型のフィルタ120Aとを一体化したバランスフィルタが作り込まれている。
【0158】
[バラン110A]
バラン110Aは、第1樹脂層22と、2本の平衡信号伝送路30(第1平衡信号伝送路)および35(第2平衡信号伝送路)と、第2樹脂層24と、不平衡信号伝送路50と、第3樹脂層26とによって構成されている。また、バラン110Aは、内周に第1スペースE1を有するように平面スパイラル型に配置された第1バラン部110aと、内周に第2スペースE2を有するように平面スパイラル型に配置された第2バラン部110bとを備えて構成されている。第1バラン部110aは、第1平衡信号伝送路30と、これに対向する第1不平衡信号伝送路部50cとを有する。第2バラン部110bは、第2平衡信号伝送路35と、これに対向する第2不平衡信号伝送路部50dとを有する。
【0159】
図19はバラン110Aの構成を説明する上面図である。図19において、図2と同様のものには同じ符号を付してある。
また、図20は図19においてのA−A間の断面図、図21は図19においてのB−B間の断面図である。ただし、図19〜図21では、バラン110Aを判り易く説明するために、内周に第1スペースE1を有する平面スパイラル型の第1平衡信号伝送路30と、内周に第2スペースE2を有する平面スパイラル型の第2平衡信号伝送路35と、内周に第1スペースE1を有する平面スパイラル型の第1不平衡信号伝送路部50cおよび内周に第2スペースE2を有する平面スパイラル型の第2不平衡信号伝送路部50dを含んで構成された不平衡信号伝送路50とを、それぞれストレート型の伝送路に展開して描いてある。
【0160】
上述のバラン110Aの構成を示す図19は、図33に示す上面図としてもよい。図33において、図19と同様のものには同じ符号を付してある。また、図34は図33においてのP−P間の断面図であり、図33においてのB−B間の断面図は図19である。図33においても、バラン110Aを判り易く説明するために、内周に第1スペースE1を有する平面スパイラル型の第1平衡信号伝送路30と、内周に第2スペースE2を有する平面スパイラル型の第2平衡信号伝送路35と、内周に第1スペースE1を有する平面スパイラル型の第1不平衡信号伝送路部50cおよび内周に第2スペースE2を有する平面スパイラル型の第2不平衡信号伝送路部50dを含んで構成された不平衡信号伝送路50とを、それぞれストレート型の伝送路に展開して描いてある。
【0161】
[第1平衡信号伝送路30、第2平衡信号伝送路35]
第1平衡信号伝送路30および第2平衡信号伝送路35は、第1導電パターン群130の導電パターン(第1導電パターン群130に属するあるいは第1導電パターン群130を構成する導電パターン)として、電気的に互いに独立して第1樹脂層22上に形成されている。第1平衡信号伝送路30は、内周に第1スペースE1を有する平面スパイラル型に配置された伝送路である。同様に、第2平衡信号伝送路35も、内周に第2スペースE2を有する平面スパイラル型に配置された伝送路である。
【0162】
平面スパイラル型の第1平衡信号伝送路30の外周端(一端)30aと、同様に平面スパイラル型の第2平衡信号伝送路35の外周端(一端)35aとは、間隔gをもって配置されている。これらの第1平衡信号伝送路30の一端30aおよび第2平衡信号伝送路35の一端35aは、それぞれ平衡信号(差動信号)が入出力される信号端である。また、第1平衡信号伝送路30の内周端(他端)30bおよび第2平衡信号伝送路35の内周端(他端)35bは、それぞれ接地端になっている。
【0163】
第1平衡信号伝送路30および第2平衡信号伝送路35は、第1導電パターン群130の導電パターンとして、同じ金属材料によって同時に形成され、例えば銅めっき等のめっき金属からなる。また、第1平衡信号伝送路30の伝送路長L1と第2平衡信号伝送路35の伝送路長L2とは、同じ長さ(L1=L2)となるように形成されることが望ましい。また、第1平衡信号伝送路30と第2平衡信号伝送路35とは、同じ幅Wおよび同じ厚さTとなるように形成されることが望ましい。なお、第1平衡信号伝送路30および第2平衡信号伝送路35の下面と基板10上面との間隔(第1樹脂層22の層厚)はh1である(図20参照)。
【0164】
[不平衡信号伝送路50]
不平衡信号伝送路50は、第2導電パターン群150の導電パターンとして、第2樹脂層24上に形成されている。この不平衡信号伝送路50は、その下面が第1平衡信号伝送路30の上面に対向するように設けられて内周に第1スペースE1を有する平面スパイラル型の第1不平衡信号伝送路部50cと、その下面が第2平衡信号伝送路35の上面に対向するように設けられて内周に第2スペースE2を有する平面スパイラル型の第2不平衡信号伝送路部50dとの外周端同士を一体に接続(電気的に接続)した1本の伝送路である。
【0165】
不平衡信号伝送路50の一端(第2不平衡信号伝送路部50dの内周端)50aは不平衡信号が出入力される信号端になっており、不平衡信号伝送路50の他端(第1不平衡信号伝送路部50cの内周端)50bは開放端になっている。
【0166】
不平衡信号伝送路50は、第2導電パターン群150の導電パターンとして、例えば銅めっき等のめっき金属からなる。この不平衡信号伝送路50は、第1平衡信号伝送路30および第2平衡信号伝送路35と同じ形成手法によって同じ金属材料で形成されていることが望ましい。
【0167】
不平衡信号伝送路50は、その長さLが、第1平衡信号伝送路30の伝送路長L1と、第2平衡信号伝送路35の伝送路長L2と、第1平衡信号伝送路30の信号端30aと第2平衡信号伝送路35の信号端35aの間隔gとの合計の長さと同じになるように形成されていることが望ましい。また、不平衡信号伝送路50は、第1平衡信号伝送路30および第2平衡信号伝送路35と同じ幅Wおよび同じ厚さTとなるように形成されていることが望ましい。
【0168】
なお、第2樹脂層24を介して対向配置された不平衡信号伝送路50下面と、第1平衡信号伝送路30上面および第2平衡信号伝送路35上面との間隔はdである。また、不平衡信号伝送路50上面から第3樹脂層60上面までの間隔はh2である(図20参照)。
【0169】
[バランスフィルタの動作]
図22はバラン110Aの動作を説明する模式回路図である。図22において、SD1は、平衡信号(差動信号)の内、第1平衡信号伝送路30の信号端30aに入力される(または信号端30aから出力される)信号、SD2は、上記平衡信号の内、第2平衡信号伝送路35の信号端35aに入力される(または信号端35aから出力される)信号、SSは、不平衡信号伝送路50の信号端50aからフィルタ120Aを介して出力される(またはフィルタ120Aを介して信号端50aに入力される)不平衡信号(単一信号)をそれぞれ表している。
【0170】
また、図22において、ZD1は第1平衡信号伝送路30の入力インピーダンス(または出力インピーダンス)、ZD2は第2平衡信号伝送路35の入力インピーダンス(または出力インピーダンス)、ZSは不平衡伝送路50の出力インピーダンス(または入力インピーダンス)をそれぞれ表している。
【0171】
バラン110Aは、第1平衡信号伝送路30および第2平衡信号伝送路35と不平衡信号伝送路50とを、第2樹脂層24(図18等参照)を介して近接配置することにより、第1平衡信号伝送路30および第2平衡信号伝送路35と不平衡信号伝送路50との間に電磁結合を生じる回路である。
【0172】
このバラン110Aにおいて、第1平衡信号伝送路30および第2平衡信号伝送路35の信号端30a,35aに平衡信号SD1,SD2を入力すると、これらの平衡信号SD1,SD2は不平衡信号に変換され、不平衡信号伝送路50の信号端50aから出力される。この不平衡信号は、フィルタ120Aに入力され、高調波成分の除去等のフィルタ処理をされた不平衡信号SSが、フィルタ120Aから出力される。
【0173】
また、これとは逆に、バラン110Aにおいて、フィルタ120Aを介して不平衡信号SSを不平衡信号伝送路50の信号端50aに入力すると、この不平衡信号は平衡信号に変換され、第1平衡信号伝送路30および第2平衡信号伝送路35の信号端30a,35aから平衡信号SD1,SD2が出力される。
【0174】
ここで、伝送する信号(変換する信号)の波長をλとすると、第1平衡信号伝送路30の伝送路長L1および第2平衡信号伝送路35の伝送路長L2がそれぞれλ/4となり、不平衡信号伝送路50の内の第1不平衡信号伝送路部50cと第2不平衡信号伝送路部50dの合計の伝送路長(=L1+L2=L−g)がλ/2となるように、それぞれの伝送路を設けることが望ましい。
【0175】
さらに、バラン110Aは、インピーダンスを変換するトランスとしての機能も兼ね備えている。インピーダンス変換については、不平衡信号側のインピーダンスZS、および平衡信号側のインピーダンスZD1,ZD2が設計仕様のインピーダンス値であることが要求される。例えば、不平衡信号側のインピーダンスZS=50Ω、平衡信号側のインピーダンスZD1+ZD2=100,150,200Ωである。
【0176】
このようなバランスフィルタは、アンテナで受信した高周波不平衡信号を復調するために平衡信号に変換する必要があり、逆に変調された高周波平衡信号をアンテナから送信するために不平衡信号に変換する必要がある無線通信機器では、不可欠な回路である。
【0177】
無線通信機器においては、高周波信号処理ICの入出力インピーダンスとアンテナの出入力インピーダンスとは必ずしも整合していない。このため、両者のインピーダンスを整合させるためにも、インピーダンス変換機能を有するバランスフィルタは不可欠である。上記両者の間にバランスフィルタを挿入しないと、あるいは挿入してもバランスフィルタのインピーダンスが設計値からずれていると、別のインピーダンス変換器が必要になる。
【0178】
無線通信機器の信号送信部においては、高周波信号処理ICから出力された送信平衡信号(送信差動信号)は、バランに入力されて不平衡信号に変換される。この送信不平衡信号は、ローパスフィルタ(LPF)またはバンドパスフィルタ(BPF)において高調波成分を除去され、電力増幅器(PA)において増幅され、アンテナスイッチ(TDD方式の場合)を通ってアンテナから送信される。電力増幅器は差動化が進んでおらず不平衡信号によって動作しているため、平衡信号によって動作している高周波信号処理ICとの間に、バランとLPFまたはBPFを一体化したバランスフィルタが必要になる。
【0179】
この実施の形態5のバランスフィルタを上記無線通信機器の信号送信部に適用する場合には、バラン110Aの第1平衡信号伝送路30および第2平衡信号伝送路35の信号端30a,35aが信号入力側になり、フィルタ120Aが信号出力側になる。従って、信号端30a,35aにそれぞれ接続されている第1平衡信号端子部60および第2平衡信号端子部65を、上記高周波信号処理ICの送信信号出力端子にそれぞれ接続し、フィルタ120Aの出力側に接続された不平衡信号端子部90を、上記電力増幅器の入力端子に接続することになる。
【0180】
また、無線通信機器の信号受信部においては、アンテナで受信された受信不平衡信号は、アンテナスイッチを通って低雑音増幅器(LNA)において増幅され、BPFにおいて所望の周波数帯域成分が選択されたあと、バランに入力されて平衡信号に変換される。そして、この受信平衡信号が高周波信号処理ICに入力される。高周波信号処理ICは、平衡信号によって動作しているため、不平衡信号を出力する低雑音増幅器との間に、BPFとバランを一体化したバランスフィルタが必要になる。
【0181】
この実施の形態5のバランスフィルタを上記無線通信機器の信号受信部に適用する場合には、上記信号送信部に適用する場合とは逆に、フィルタ120Aが信号入力側、バラン110Aの第1平衡信号伝送路30および第2平衡信号伝送路35の信号端30a,35aが信号出力側になる。従って、フィルタ120Aの入力側に接続された不平衡信号端子部90を、上記低雑音増幅器の出力端子に接続し、信号端30a,35aにそれぞれ接続されている第1平衡信号端子部60および第2平衡信号端子部65を、上記高周波信号処理ICの受信信号入力端子にそれぞれ接続することになる。なお、この実施の形態5のフィルタ120AはLPFとして構成されているため、上記信号受信部に適用する場合には、フィルタ120AをBPFとして構成する必要がある。
【0182】
[フィルタ120A]
図23はフィルタ120Aの構成を説明する上面図である。図23において、図8と同様のものには同じ符号を付してある。また、図24は図23においてのD−D間の断面図、図25は図23においてのE−E間の断面図である。さらに、図26はフィルタ120Aの回路構成図である。
【0183】
フィルタ120Aは、5次のチェビシェフ型LPFであり、積層型のキャパシタC11,C12,C13,C14と、インダクタL11,L12によって構成されている。また、フィルタ120Aは、第1スペースE1内に設けられた第1フィルタ部120aと、第2スペースE2内に設けられた第2フィルタ部120bとを有する。第1フィルタ部120aの一端は不平衡信号端子部90に接続され、他端は第1フィルタ端子部80に接続されている。第2フィルタ部120bの一端は不平衡信号伝送路50の信号端50aに接続され、他端は第2フィルタ端子部85に接続されている。
【0184】
第1フィルタ部120aには、キャパシタC13,C14、およびインダクタL12が配置されており、第2フィルタ部120bには、キャパシタC11,C12、およびインダクタL11が配置されている。
【0185】
キャパシタC11の一端は不平衡信号伝送路50の信号端50aに接続されており、他端は接地されている(第2接地端子部75に接続されている)。インダクタL11の一端は信号端50aに接続されており、他端は第2フィルタ端子部85に接続されている。キャパシタC12の一端は第2フィルタ端子85に接続されており、他端は接地されている(第2接地端子部75に接続されている)。
【0186】
また、キャパシタC13の一端は第1フィルタ端子部80に接続されており、他端は接地されている(第1接地端子部70に接続されている)。インダクタL12の一端は第1フィルタ端子部80に接続されており、他端は不平衡信号端子部90に接続されている。
キャパシタC14の一端は不平衡信号端子部90に接続されており、他端は接地されている(第1接地端子部70に接続されている)。なお、第1フィルタ端子部80と第2フィルタ端子部85とは、ボンディングワイヤ160によって接続されている。
【0187】
図23では、第1導電パターン群130の配線パターンを2通りの場合で併記している。図23に示す構成においては、配線パターン180及び182、又は配線パターン181及び183のいずれか一方が備えられていればよい。また、これらの配線パターン上に示した「X」又は「X」の位置に、第1接地端子部70又は第2接地端子部と同様な接地端子部(図示略)を設けてもよい。
【0188】
さらに、図23では、第2接地端子部75にキャパシタC11及び12が接続されているが、キャパシタC11及び12はそれぞれ第2接地端子部75及び「X」の位置に設けられた接地端子部(図示略)に独立して接続される構成であってもよい。このとき、キャパシタC11とC12とは、第1導電パターン群130の配線パターン180(又は181)を介して互いに接続されている必要はない。
【0189】
同様に、図23では、第1接地端子部70にキャパシタC13及び14が接続されているが、キャパシタC13及び14はそれぞれ第1接地端子部70及び「X」の位置に設けられた接地端子部(図示略)に独立して接続される構成であってもよい。このとき、キャパシタC13とC14とは、第1導電パターン群130の配線パターン182(又は183)を介して互いに接続されている必要はない。
【0190】
以下に、キャパシタC11〜14及びインダクタL11〜12の構成をさらに詳細に説明する。
キャパシタC11は、第1導電パターン群130の導電パターンである下部電極131と、第2導電パターン群150の導電パターンである上部電極151とを有する。下部電極131は、第1導電パターン群130の配線パターンおよび第2導電パターン群150の配線パターンを介して、第2導電パターン群150の接地電極パッド57に接続されている。また、上部電極151は、第2導電パターン群150の配線パターンを介して不平衡信号伝送路50の信号端50aに接続されている。
【0191】
インダクタL11は、第2導電パターン群150の導電パターンである平面スパイラル型のコイルパターン152と、第1導電パターン群130の導電パターンであるアンダーパスパターン132とを有する。コイルパターン152の内周端は、アンダーパスパターン132および第2導電パターン群150の配線パターンを介して、不平衡信号伝送路50の信号端50aに接続されている。また、コイルパターン152の外周端は、第2導電パターン群150の配線パターンを介して、同じく第2導電パターン群150のフィルタ電極パッド154に接続されている。
【0192】
キャパシタC12は、第1導電パターン群130の導電パターンである下部電極133と、第2導電パターン群150の導電パターンである上部電極153とを有する。下部電極133は、第1導電パターン群130の配線パターンおよび第2導電パターン群150の配線パターンを介して、第2導電パターン群150の接地電極パッド57に接続されている。また、上部電極153は、第2導電パターン群150の配線パターンを介して、同じく第2導電パターン群150のフィルタ電極パッド154に接続されている。
【0193】
キャパシタC13は、第1導電パターン群130の導電パターンである下部電極136と、第2導電パターン群150の導電パターンである上部電極156とを有する。下部電極136は、第1導電パターン群130の配線パターンおよび第2導電パターン群150の配線パターンを介して、第2導電パターン群150の接地電極パッド52に接続されている。また、上部電極156は、第2導電パターン群150の配線パターンを介して、同じく第2導電パターン群150のフィルタ電極パッド155に接続されている。
【0194】
インダクタL12は、第2導電パターン群150の導電パターンである平面スパイラル型のコイルパターン157と、第1導電パターン群130の導電パターンであるアンダーパスパターン137とを有する。コイルパターン157の内周端は、アンダーパスパターン137および第2導電パターン群150の配線パターンを介して、第2導電パターン群150のフィルタ電極パッド155に接続されている。また、コイルパターン157の外周端は、第2導電パターン群150の配線パターンを介して、同じく第2導電パターン群150の不平衡信号電極パッド59に接続されている。
【0195】
キャパシタC14は、第1導電パターン群130の導電パターンである下部電極138と、第2導電パターン群150の導電パターンである上部電極158とを有する。下部電極138は、第1導電パターン群130の配線パターンおよび第2導電パターン群150の配線パターンを介して、第2導電パターン群150の接地電極パッド52に接続されている。また、上部電極158は、第2導電パターン群150の配線パターンを介して、同じく第2導電パターン群150の不平衡信号電極パッド59に接続されている。
【0196】
また、図23に示す構成に代えて図37に示す構成としてもよい。図37において、図23と同様のものには同じ符号を付してある。図38は図37においてのQ−Q間の断面図である。
図37の構成は、キャパシタC11の上部電極151、キャパシタC12の上部電極153、キャパシタC13の上部電極156、及びキャパシタC14の上部電極158に、それぞれ開口部27a、27b、27c、及び27dを設けて、これらの開口部をそれぞれ接地電極パッド58a、58b、58c、及び58dとする構成である。この構成であることにより、第1接地端子部70及び第2接地端子部75(接地電極パッド57及び52)を設ける必要がなくなる。
【0197】
このように、フィルタ120Aでは、キャパシタとインダクタとを、第1フィルタ部120aと第2フィルタ部120bに、対称に配置した構成としている。フィルタ120Aは、5次のチェビシェフ型LPFであるため、一般には、キャパシタC12とC13とは1つのキャパシタとなる。しかし、これを分割して第1フィルタ部120aと、第2フィルタ部120bにそれぞれ配置することにより、第1スペースE1と第2スペースE2の対称性を確保でき、バランス性に優れた回路配置とすることができる。
【0198】
特に、インダクタを第1フィルタ部120aと第2フィルタ部120bに、均等に割り振って対称配置することにより、インダクタの特性を向上させることができる。優れた特性のフィルタを得るには、インダクタのQ値を高くする必要があるが、一般に、インダクタのQ値は、コイルパターンの内径対外径比が大きいほど高くできる。このため、インダクタのQ値を高くするには、インダクタの占有面積を大きくする必要がある。フィルタ120Aは、2つのインダクタL11,L12を有するので、第1フィルタ部120aと第2フィルタ部120bに、つまり第1スペースE1と第2スペースE2に、インダクタを1つずつ配置することにより、それぞれのインダクタを大きくすることが可能となる。
【0199】
この実施の形態5では、基板10上に、WLCSP技術によって、第1樹脂層22、第1導電パターン群130、第2樹脂層24、第2導電パターン群150、第3樹脂層26を順に積層して、バランスフィルタを形成することにより、CMOS半導体加工技術と同様の高い精度で樹脂層および銅めっき等による低抵抗の伝送路を形成することができるとともに、銅めっき等による高いQ値のインダクタを形成することができる。
【0200】
[第1平衡信号端子部60、第2平衡信号端子部65]
第1平衡信号端子部60は、第3樹脂層26の開口部26a内に、第2導電パターン群150の平衡信号電極パッド51を設けたものである。平衡信号電極パッド51は、第2導電パターン群150の配線パターンおよび第1導電パターン群130の配線パターンを介して、第1平衡信号伝送路30の信号端30aに接続されている。
【0201】
同様に、第2平衡信号端子部65は、第3樹脂層26の開口部26c内に、第2導電パターン群150の平衡信号電極パッド56を設けたものである。平衡信号電極パッド56は、第2導電パターン群150の配線パターンおよび第1導電パターン群130の配線パターンを介して、第2平衡信号伝送路35の信号端35aに接続されている。
【0202】
[第1接地端子部70、第2接地端子部75]
第1接地端子部70は、第3樹脂層26の開口部26b内に、第2導電パターン群150の接地電極パッド52を設けたものである。接地電極パッド52は、第2導電パターン群150の配線パターンおよび第1導電パターン群130の配線パターンを介して、第1平衡信号伝送路30の接地端30b、およびキャパシタC13の下部電極136、キャパシタC14の下部電極138に接続されている。
【0203】
同様に、第2接地端子部75は、第3樹脂層26の開口部26d内に、第2導電パターン群150の接地電極パッド57を設けたものである。接地電極パッド57は、第2導電パターン群150の配線パターンおよび第1導電パターン群130の配線パターンを介して、第2平衡信号伝送路35の接地端35b、およびキャパシタC11の下部電極131、キャパシタC12の下部電極133に接続されている。
【0204】
[第1フィルタ端子部80、第2フィルタ端子部85]
第1フィルタ端子部80は、第3樹脂層26の開口部26g内に、第2導電パターン群150のフィルタ電極パッド155を設けたものである。フィルタ電極パッド155は、第2導電パターン群150の配線パターンを介して、キャパシタC13の上部電極156およびインダクタL12のコイルパターン157に接続されている。また、第2フィルタ端子部85は、第3樹脂層26の開口部26f内に、第2導電パターン群150のフィルタ電極パッド154を設けたものである。フィルタ電極パッド154は、第2導電パターン群150の配線パターンを介して、キャパシタC12の上部電極153およびインダクタL11のコイルパターン152に接続されている。そして、フィルタ電極パッド154と155とは、ボンディングワイヤ160によって接続されている。
【0205】
これらの第1フィルタ端子部80と、第2フィルタ端子部85とは、第1フィルタ部120aのキャパシタC13の上部電極156と、第2フィルタ部120bのキャパシタC12の上部電極153とを、ボンディングワイヤ160によって接続して、5次のチェビシェフ型LPFであるフィルタ120Aを完成させるためのものである。
【0206】
このように、第1フィルタ端子部80と第2フィルタ端子部85とを、ボンディングワイヤ160で接続することにより、第1導電パターン群130による導電層と第2導電パターン群150による導電層の2層構造で、積層型バランスフィルタを実現できる。
【0207】
なお、第3樹脂層26上に導電パターンを設けて、第1フィルタ端子部80と第2フィルタ端子部85を接続した構成とすることも可能である。この場合には、上記導電パターン上に、さらに樹脂層を形成することが望ましい。第1フィルタ端子部80と第2フィルタ端子部85を、上記のようにボンディングワイヤ160で接続すれば、工数を削減することができる。
【0208】
[不平衡信号端子部90]
不平衡信号端子部90は、第3樹脂層26の開口部26e内に、第2導電パターン群150の不平衡信号電極パッド59を設けたものである。不平衡信号電極パッド59は、第2導電パターン群150の配線パターンを介して、フィルタ部120AのキャパシタC14の上部電極158およびインダクタL12のコイルパターン157に接続されている。
【0209】
この実施の形態5では、第1フィルタ部120a、ならびに第1接地端子部70、第1フィルタ端子部80、および不平衡信号端子部90は、第1バラン部110aの内周に確保された第1スペースE1内に配置されている。また、第2フィルタ部120b、ならびに第2接地端子部75および第2フィルタ部85は、第2バラン部110bの内周に確保された第2スペースE2内に配置されている。なお、第1平衡信号端子部60および第2平衡信号端子部65は、これらの第1スペースE1および第2スペースE2の外側に配置されている。従って、この実施の形態5では、ほぼ2つの平面スパイラル型伝送路が占有する面積に、2層の導電層構造でバランスフィルタを作製することができる。
【0210】
なお、樹脂多層デバイス100Aを実装基板にフリップチップ実装する場合には、ボンディングワイヤ160を設けず、平衡信号電極パッド51,56上、接地電極パッド52,57上、不平衡信号電極パッド59上、およびフィルタ電極パッド154,155上にそれぞれ、はんだバンプを設ける。この場合、第1フィルタ端子部80と第2フィルタ端子部85とは、実装基板に設けられた導電パターンを介して接続されることになる。
【0211】
[製造手順]
図18〜図26を参照して、樹脂多層デバイス100Aの製造手順を以下に説明する。以下の説明において、基板10は、シリコン(Si)ウェハであるものとする。樹脂多層デバイス100Aは、WLPであるから、シリコンウェハ上に樹脂層形成プロセスと厚膜銅パターン群等の導電パターン群形成プロセスによってバランスフィルタを作り込み、そのあとにチップにダイシングするWLCSP技術によって製造される。
【0212】
まず、シリコンウェハである基板10上に第1樹脂層22を形成する。第1樹脂層22としては、比誘電率Erの感光性の絶縁樹脂を用いる。この感光性樹脂の流体樹脂材料をスピンコート法によってウェハ基板10上にコーティングし、厚さ寸法h1の感光性樹脂層を形成する。
【0213】
次に、第1樹脂層22上に、内周に第1スペースE1を有する平面スパイラル型の第1平衡信号伝送路30、内周に第2スペースE2を有する平面スパイラル型の第2平衡信号伝送路35、キャパシタC11,C12,C13,C14の下部電極131,133,136,138、インダクタL11,L12のアンダーパスパターン132,137等を含む第1導電パターン群130を設ける。
【0214】
第1導電パターン群130としては、銅めっきを用いる。第1樹脂層22上にシード層を形成した後、レジストを形成しパターニングした後、銅めっきを施し、幅寸法W,厚さ寸法T,長さ寸法L1の第1平衡信号伝送路30、および幅寸法W,厚さ寸法T,長さ寸法L2(=L1)の第2平衡信号伝送路35を含む第1導電パターン群130を形成する。なお、キャパシタの(下部)電極は、スパッタでも良い。
【0215】
次に、第1導電パターン群130を設けた第1樹脂層22上に、第2樹脂層24を形成し、この第2樹脂層24に、上記第1導電パターン群130の導電パターンを第2導電パターン群150の導電パターンにコンタクトさせるための開口部を設ける。第2樹脂層24としては、第1樹脂層22と同じ比誘電率Erの感光性の絶縁樹脂を用いる。この感光性樹脂の流体樹脂材料をスピンコート法によって、第1導電パターン群130を設けた第1樹脂層22上にコーティングし、第1平衡信号伝送路30上面および第2平衡信号伝送路35上面からの厚さ寸法dの感光性樹脂層を形成する。そして、この感光性樹脂層にフォトリソグラフィー法によって上記開口部を設ける。
【0216】
次に、第2樹脂層24上に、不平衡信号伝送路50、キャパシタC11,C12,C13,C14の上部電極151,153,156,158、インダクタL11,L12のコイルパターン152,157、平衡信号電極パッド51,56、接地電極パッド52,57、不平衡信号電極パッド59、フィルタ電極パッド154,155等を含む第2導電パターン群150を設ける。
【0217】
平衡信号電極パッド51は、第1平衡信号伝送路30の信号端30aを第1平衡信号端子部60に導くための電極パッドである。接地電極パッド52は、第1平衡信号伝送路30の接地端30bを第1接地端子部70に導くための電極パッドである。平衡信号電極パッド56は、第2平衡信号伝送路35の信号端35aを第2平衡信号端子部65に導くための電極パッドである。接地電極パッド57は、第2平衡信号伝送路35の接地端35bを第2接地端子部75に導くための電極パッドである。フィルタ電極パッド154は、第2フィルタ部120bの他端を第2フィルタ端子部85に導く電極パッドである。フィルタ電極パッド155は、第1フィルタ部120aの他端を第1フィルタ端子部80に導くための電極パッドである。そして、不平衡信号電極パッド59は、フィルタ120Aの信号出入力端(第1フィルタ部120aの一端)を不平衡信号端子部90に導くための電極パッドである。
【0218】
第2導電パターン群150としては、第1導電パターン群130と同じ銅めっきを用いる。第2樹脂層24上にシード層を形成した後、レジストを形成しパターニングした後、銅めっきを施し、幅寸法W、厚さ寸法T、長さ寸法Lの不平衡信号伝送路50を含む第2導電パターン群150を形成する。なお、キャパシタの(上部)電極は、スパッタでも良い。
【0219】
次に、第2導電パターン群150を設けた第2樹脂層24上に、封止樹脂層となる第3樹脂層26を形成し、この第3樹脂層26に、電極パッド51,52,56,57,59,154,155をそれぞれ露出させる開口部26a,26b,26c,26d,26e,26f,26gを設ける。第3樹脂層26としては、第1樹脂層22および第2樹脂層24と同じ比誘電率Erの感光性の絶縁樹脂を用いる。この感光性樹脂の流体樹脂材料をスピンコート法によって、第2導電パターン群150を設けた第2樹脂層24上にコーティングし、不平衡信号伝送路50上面からの厚さ寸法h2の感光性樹脂層を形成する。そして、この感光性樹脂層にフォトリソグラフィー法によって開口部26a,26b,26c,26d,26e,26f,26gを形成する。
【0220】
以上の手順を完了したあと、シリコンウェハである基板10をダイシングして、WLPの樹脂多層デバイス100Aを得る。
【0221】
以上のように実施の形態5によれば、基板上に、第1樹脂層22、第1導電パターン群130、第2樹脂層24、第2導電パターン群150、第3樹脂層26を順に積層した構成によって、バランスフィルタを有するWLPとしたことにより、WLCSP技術では、CMOS半導体加工技術と同様の高い精度で樹脂層および銅めっき等による低抵抗の導電パターンを形成することができるので、高精度なインピーダンスと低挿入損失のバランおよび周波数特性に優れたフィルタによるバランスフィルタを有する樹脂多層デバイスを得ることができる。
【0222】
さらに、この実施の形態5では、バラン110Aの平面スパイラル型の伝送路内周に確保されたスペースE1,E2内にフィルタ120Aを配置したことにより、ほぼ2つの平面スパイラル型の伝送路が占有する面積に2層の導電層でバランスフィルタを作製できるので、簡単でコンパクトな構成のバランスフィルタを有する樹脂多層デバイスを得ることができる。
【0223】
<実施の形態6>
図27は本発明の実施の形態6の樹脂多層デバイスにおいてバランスフィルタを構成するフィルタの回路構成図である。なお、図27において、図18または図26等と同様のものには同じ符号を付してある。
【0224】
この実施の形態6の樹脂多層デバイスは、上記実施の形態5の樹脂多層デバイス100A(図18等参照)において、バランスフィルタを構成するフィルタ120A(図26等参照)を、図27のフィルタ220Aとしたものである。
【0225】
[フィルタ220A]
フィルタ220Aは、5次の楕円関数型LPFであり、積層型のキャパシタC21,C22,C23,C24,C25,C26と、インダクタL21,L22によって構成されている。また、フィルタ220Aは、第1スペースE1内に設けられた第1フィルタ部220aと、第2スペースE2内に設けられた第2フィルタ部220bとを有する。
【0226】
第1フィルタ部220aには、キャパシタC24,C25,C26、およびインダクタL22が配置されており、第2フィルタ部220bには、キャパシタC21,C22,C23、およびインダクタL21が配置されている。
【0227】
キャパシタC21の一端は不平衡信号伝送路50に接続されており、他端は接地されている。インダクタL21とキャパシタC22は並列接続されており、この並列回路の一端は不平衡信号伝送路50に接続されており、他端は第2フィルタ端子部85に接続されている。キャパシタC23の一端は第2フィルタ端子部85に接続されており、他端は接地されている。
【0228】
また、キャパシタC24の一端は第1フィルタ端子部80に接続されており、他端は接地されている。インダクタL22とキャパシタC25は並列接続されており、この並列回路の一端は第1フィルタ端子部80に接続されており、他端は不平衡信号端子部90に接続されている。キャパシタC26の一端は不平衡信号端子部90に接続されており、他端は接地されている。なお、第1フィルタ端子部80と第2フィルタ端子部85とは、ボンディングワイヤ160によって接続されている。
【0229】
キャパシタC21,C22,C23,C24,C25,C26は、上記実施の形態5のフィルタ120Aを構成するキャパシタC11,C12,C13,C14(図23〜図26参照)と同様に、それぞれ第1導電パターン群130の導電パターンである下部電極と、第2導電パターン群150の導電パターンである上部電極とを有している。
【0230】
また、インダクタL21,L22も、上記実施の形態5のフィルタ120Aを構成するインダクタL11,L12(図23〜図26参照)と同様に、それぞれ第2導電パターン群150の導電パターンである平面スパイラル型のコイルパターンと、第1導電パターン群130の導電パターンであるアンダーパスパターンとを有している。
【0231】
この実施の形態6のフィルタ220Aでは、上記実施の形態5のフィルタ120A(図23〜図26参照)と同様に、第1フィルタ部220aと、第2フィルタ部220bとに、キャパシタとインダクタとを対称に配置した構成としている。フィルタ220Aは、5次の楕円関数型LPFであるため、一般には、キャパシタC23とC24とは1つのキャパシタとなる。しかし、これを分割して第1フィルタ部220aと、第2フィルタ部220bにそれぞれ配置することにより、第1スペースE1と第2スペースE2の対称性を確保でき、バランス性に優れた回路配置とすることができる。
【0232】
特に、インダクタを第1フィルタ部220aと第2フィルタ部220bに、均等に割り振って対称配置することにより、インダクタの特性を向上させることができる。優れた特性のフィルタを得るには、インダクタのQ値を高くする必要があり、インダクタのQ値を高くするには、インダクタの占有面積を大きくする必要がある。フィルタ220Aは、2つのインダクタL21,L22を有するので、第1フィルタ部220aと第2フィルタ部220bに、つまり第1スペースE1と第2スペースE2に、インダクタを1つずつ配置することにより、それぞれのインダクタを大きくすることが可能となる。
【0233】
また、第1フィルタ端子部80と第2フィルタ端子部85とを、ボンディングワイヤ160で接続することにより、第1導電パターン群130による導電層と第2導電パターン群150による導電層の2層構造で、積層型バランスフィルタを実現できる。
【0234】
なお、第3樹脂層26上に導電パターンを設けて、第1フィルタ端子部80と第2フィルタ端子部85を接続した構成とすることも可能である。この場合には、上記導電パターン上に、さらに樹脂層を形成することが望ましい。第1フィルタ端子部80と第2フィルタ端子部85を、上記のようにボンディングワイヤ160で接続すれば、工数を削減することができる。
【0235】
また、この実施の形態6の樹脂多層デバイスを実装基板にフリップチップ実装する場合には、ボンディングワイヤ160を設けず、それぞれの電極パッド上にはんだバンプを設ける。この場合、第1フィルタ端子部80と第2フィルタ端子部85とは、実装基板に設けられた導電パターンを介して接続されることになる。
【0236】
この実施の形態6の樹脂多層デバイスの製造手順は、上記実施の形態5の樹脂多層デバイス100Aと同様である。
【0237】
以上のように実施の形態6によれば、上記実施の形態5と同様に、CMOS半導体加工技術と同様の高い精度で樹脂層および銅めっき等による低抵抗の導電パターンを形成することができるので、高精度なインピーダンスと低挿入損失のバランおよび周波数特性に優れたフィルタによるバランスフィルタを有する樹脂多層デバイスを得ることができるとともに、ほぼ2つの平面スパイラル型の伝送路が占有する面積に2層の導電層でバランスフィルタを作製できるので、簡単でコンパクトな構成のバランスフィルタを有する樹脂多層デバイスを得ることができる。
【0238】
<実施の形態7>
図28は本発明の実施の形態7の樹脂多層デバイスの構成例を説明する上面図である。
図28において、図18と同様のものには同じ符号を付してある。また、図29は実施の形態7の樹脂多層デバイス300Aにおいてバランスフィルタを構成するフィルタの回路構成図である。なお、図29において、図18または図26等と同様のものには同じ符号を付してある。
また、実施の形態7の樹脂多層デバイスの構成例として、図35に示す構成も挙げられる。図35において、図28と同様のものには同じ符号を付してある。
【0239】
この実施の形態7の樹脂多層デバイス300Aは、基板10と、第1樹脂層22と、第1導電パターン群130と、第2樹脂層24と、第2導電パターン群150と、第3樹脂層26と、2つの平衡信号端子部60(第1平衡信号端子部)および65(第2平衡信号端子部)と、2つの接地端子部70(第1接地端子部)および75(第2接地端子部)と、2つのフィルタ端子部80(第1フィルタ端子部)および85(第2フィルタ端子部)と、不平衡信号端子部90と、フィルタ部接続導電パターン170とを備えて構成されたWLPである。
【0240】
つまり、実施の形態7の樹脂多層デバイス300Aは、上記実施の形態5の樹脂多層デバイス100A(図18等参照)において、第3樹脂層26上に、第1フィルタ端子部80と第2フィルタ端子部85を接続するフィルタ部接続導電パターン170を設けるとともに、バランスフィルタを構成するフィルタ120A(図26等参照)を、図28のフィルタ320Aとしたものである。このフィルタ部接続導電パターン170としては、例えば第1導電パターン群130および第2導電パターン群150と同じ導電性材料を使用することができる。なお、フィルタ部接続導電パターン170上には、さらに樹脂層を形成することが望ましい。
【0241】
[フィルタ320A]
フィルタ320Aは、BPFであり、積層型のキャパシタC31,C32,C33と、インダクタL31,L32,L33によって構成されている。また、フィルタ320Aは、第1スペースE1内に設けられた第1フィルタ部320aと、第2スペースE2内に設けられた第2フィルタ部320bとを有する。
【0242】
第1フィルタ部320aには、キャパシタC33、およびインダクタL32,L33が配置されている。この第1フィルタ部320aは、ハイパスフィルタ(HPF)を構成している。また、第2フィルタ部320bには、キャパシタC31,C32、およびインダクタL31が配置されている。この第2フィルタ部320bは、LPFを構成している。
そして、第1フィルタ部320aのHPFと、第2フィルタ部320bのLPFとを直列接続することにより、BPFが構成されている。
【0243】
キャパシタC31の一端は不平衡信号伝送路50に接続されており、他端は接地されている。インダクタL31の一端は不平衡信号伝送路50に接続されており、他端は第2フィルタ端子部85に接続されている。キャパシタC32の一端は第2フィルタ端子部85に接続されており、他端は接地されている。
【0244】
また、インダクタL32の一端は第1フィルタ端子部80に接続されており、他端は接地されている。キャパシタC33の一端は第1フィルタ端子部80に接続されており、他端は不平衡信号端子部90に接続されている。インダクタL33の一端は不平衡信号端子部90に接続されており、他端は接地されている。そして、第1フィルタ端子部80と第2フィルタ端子部85とは、フィルタ部接続導電パターン170によって接続されている。
【0245】
キャパシタC31,C32,C33は、上記実施の形態5のフィルタ120Aを構成するキャパシタC11,C12,C13,C14(図23〜図26参照)と同様に、それぞれ第1導電パターン群130の導電パターンである下部電極と、それぞれ第2導電パターン群150の導電パターンである上部電極とを有している。
【0246】
また、インダクタL31,L32,L33も、上記実施の形態5のフィルタ120Aを構成するインダクタL11,L12(図23〜図26参照)と同様に、それぞれ第2導電パターン群150の導電パターンである平面スパイラル型のコイルパターンと、それぞれ第1導電パターン群130の導電パターンであるアンダーパスパターンとを有している。
【0247】
なお、この実施の形態7の樹脂多層デバイス300Aにおいても、上記実施の形態5の樹脂多層デバイス100A(図18または図26等参照)のように、ボンディングワイヤ160によって、第1フィルタ端子部80と第2フィルタ端子部85を接続した構成とすることも可能である。
【0248】
また、この実施の形態7の樹脂多層デバイス300Aを実装基板にフリップチップ実装する場合には、フィルタ部接続導電パターン170を設けず、それぞれの電極パッド上にはんだバンプを設ける。この場合、第1フィルタ端子部80と第2フィルタ端子部85とは、実装基板に設けられた導電パターンを介して接続されることになる。
【0249】
この実施の形態7の樹脂多層デバイス300Aの製造手順は、上記実施の形態5の樹脂多層デバイス100Aと同様である。
【0250】
以上のように実施の形態7によれば、上記実施の形態5と同様に、CMOS半導体加工技術と同様の高い精度で樹脂層および銅めっき等による低抵抗の導電パターンを形成することができるので、高精度なインピーダンスと低挿入損失のバランおよび周波数特性に優れたフィルタによるバランスフィルタを有する樹脂多層デバイスを得ることができるとともに、ほぼ2つの平面スパイラル型の伝送路が占有する面積に2層の導電層でバランスフィルタを作製できるので、簡単でコンパクトな構成のバランスフィルタを有する樹脂多層デバイスを得ることができる。
【0251】
<実施の形態8>
図30は本発明の実施の形態8の樹脂多層デバイスの構成例を説明する上面図である。
図30において、図18と同様のものには同じ符号を付してある。また、図31は実施の形態8の樹脂多層デバイス400Aにおいてバランスフィルタを構成するフィルタの回路構成図である。なお、図31において、図18または図26等と同様のものには同じ符号を付してある。
また、実施の形態8の樹脂多層デバイスの構成例として、図36に示す構成も挙げられる。図36において、図30と同様のものには同じ符号を付してある。
【0252】
この実施の形態8の樹脂多層デバイス400Aは、上記実施の形態5の樹脂多層デバイス100A(図18等参照)において、バランスフィルタを構成するフィルタ120A(図26等参照)を図31のフィルタ420Aとし、不平衡信号端子部90を第1スペースE1内ではなく第2スペースE2内に設けるとともに、第1フィルタ端子部80、第2フィルタ端子部85、およびボンディングワイヤ160を設けない構成としたものである。
【0253】
つまり、この実施の形態8では、第1スペースE1にフィルタが設けられておらず、これにより第1フィルタ端子部80、第2フィルタ端子部85、およびボンディングワイヤ160を設ける必要がないので、上記実施の形態5の樹脂多層デバイス100Aよりも簡単な構成とすることができる。
【0254】
[フィルタ420A]
フィルタ420Aは、LPFであり、積層型のキャパシタC41,C42と、インダクタL41によって構成されている。また、フィルタ420Aは、第2スペースE2内に設けられており、第1スペースE1内には設けられていない。
【0255】
キャパシタC41の一端は不平衡信号伝送路50に接続されており、他端は接地されている。インダクタL41の一端は不平衡信号伝送路50に接続されており、他端は第2スペースE2内に設けられた不平衡信号端子部90に接続されている。キャパシタC42の一端は不平衡信号端子部90に接続されており、他端は接地されている。
【0256】
キャパシタC41,C42は、上記実施の形態5のフィルタ120Aを構成するキャパシタC11,C12,C13,C14(図23〜図26参照)と同様に、それぞれ第1導電パターン群130の導電パターンである下部電極と、それぞれ第2導電パターン群150の導電パターンである上部電極とを有している。
【0257】
また、インダクタL41も、上記実施の形態5のフィルタ120Aを構成するインダクタL11,L12(図23〜図26参照)と同様に、第2導電パターン群150の導電パターンである平面スパイラル型のコイルパターンと、第1導電パターン群130の導電パターンであるアンダーパスパターンとを有している。
【0258】
なお、この実施の形態8の樹脂多層デバイス400Aを実装基板にフリップチップ実装する場合には、それぞれの端子部の電極パッド上にはんだバンプを設ける。この実施の形態8の樹脂多層デバイス400Aの製造手順は、上記実施の形態5の樹脂多層デバイス100Aと同様である。
【0259】
以上のように実施の形態8によれば、上記実施の形態5と同様に、CMOS半導体加工技術と同様の高い精度で樹脂層および銅めっき等による低抵抗の導電パターンを形成することができるので、高精度なインピーダンスと低挿入損失のバランおよび周波数特性に優れたフィルタによるバランスフィルタを有する樹脂多層デバイスを得ることができるとともに、ほぼ2つの平面スパイラル型の伝送路が占有する面積に2層の導電層でバランスフィルタを作製できるので、簡単でコンパクトな構成のバランスフィルタを有する樹脂多層デバイスを得ることができる。
【0260】
さらに、フィルタ420Aを第2スペースE2にのみ設け、第1スペースE1には設けない構成としたことにより、上記実施の形態5の樹脂多層デバイス100Aに設けられていた第1フィルタ端子部80、第2フィルタ端子部85、およびボンディングワイヤ160を設ける必要がないので、上記実施の形態5よりもさらに簡単な構成にすることができる。
【0261】
なお、上記実施の形態の説明では、2層配線構造の積層フィルタ(特にキャパシタ)を例として説明したが、本発明の樹脂多層デバイスでは、3層以上の配線層でフィルタを構成することも可能である。また、キャパシタ電極間の誘電体は、比誘電率Erのものだけでなく、比誘電率Erでない(特に比誘電率Erよりも大きい)ものを用いることも可能である。さらに、本発明の樹脂多層デバイスでは、フィルタは、LPF、あるいはLPFとHPFの組合せによるBPFに限らず、任意の形式のバンドパスフィルタ、例えば、チェビシェフ型、楕円関数型、バターワース型等のバンドパスフィルタを形成することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0262】
本発明は、あらゆる高周波回路に利用可能であり、特に、無線LAN、Bluetooth(登録商標)、WiMAX(登録商標)等の無線通信機器を構成する回路に利用可能である。
【符号の説明】
【0263】
10 基板、 20 多層樹脂体、 22 第1樹脂層、 24 第2樹脂層、 26 第3樹脂層、 26a,26b,26c,26d,26e,26f,26g 開口部、 27a,27b,27c,27d 開口部、 30 第1平衡信号伝送路、 30a 信号端、 30b 接地端、 35 第2平衡信号伝送路、 35a 信号端、 35b 接地端、40 GND層、 50 不平衡信号伝送路、 50a 信号端、 50b 開放端、 50c 第1不平衡信号伝送路部、 50d 第2不平衡信号伝送路部、 51 平衡信号電極パッド、 52 接地電極パッド、 56 平衡信号電極パッド、 57 接地電極パッド、58a,58b,58c,58d 接地電極パッド、 59 不平衡信号電極パッド、 60,65 平衡信号端子部、 70,75 接地端子部、 70x,70y,70z,73x,73y,75x,75y,75z 接地部、80,85 フィルタ端子部、 90 不平衡信号端子部、 100,100A 樹脂多層デバイス、 110,110A バラン、 110a 第1バラン部、 110b 第2バラン部、 120,120A フィルタ、 120a 第1フィルタ部、 120b 第2フィルタ部、 130 第1導電パターン群、 131 下部電極、 132 アンダーパスパターン、 133 下部電極、 136 下部電極、 137 アンダーパスパターン、 138 下部電極、 150 第2導電パターン群、 151 上部電極、 152 コイルパターン、 153 上部電極、 154,155 フィルタ電極パッド、 156 上部電極、 157 コイルパターン、 158 上部電極、 160 ボンディングワイヤ、 170 フィルタ部接続導電パターン、180,181,182,183 配線パターン、 220,220A フィルタ、 220a 第1フィルタ部、 220b 第2フィルタ部、 300,300A 樹脂多層デバイス、 320,320A フィルタ、 320a 第1フィルタ部、 320b 第2フィルタ部、 400,400A 樹脂多層デバイス、 420,420A フィルタ。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
バランスフィルタを有する樹脂多層デバイスであって、
基板と、前記基板上に形成されたGND層と、前記基板又は前記GND層上に設けられた第1樹脂層と、前記第1樹脂層上に設けられた第1導電パターン群と、前記第1樹脂層上および前記第1導電パターン群上に形成された第2樹脂層と、前記第2樹脂層上に設けられた第2導電パターン群と、前記第2樹脂層上および前記第2導電パターン群上に形成された第3樹脂層と、を備え、
前記バランスフィルタのバランは、前記第1導電パターン群の導電パターンとして電気的に互いに独立して設けられた第1平衡信号伝送路および第2平衡信号伝送路と、前記第2導電パターン群の導電パターンとして前記2つの平衡信号伝送路に対向して設けられた不平衡信号伝送路と、を有し、
前記第1平衡信号伝送路およびこれに対向する前記不平衡信号伝送路の第1不平衡信号伝送路部は、内周に第1スペースを有する平面スパイラル型に配置され、前記第2平衡信号伝送路およびこれに対向する前記不平衡信号伝送路の第2不平衡信号伝送路部は、内周に第2スペースを有する平面スパイラル型に配置されており、
前記バランスフィルタのフィルタは、前記第1導電パターン群の導電パターンと、前記第2導電パターン群の導電パターンと、を有し、前記第1スペース内および/または前記第2スペース内に配置されていて、
前記GND層は、前記フィルタと重なる領域を除いた領域に形成されている
ことを特徴とする樹脂多層デバイス。
【請求項2】
前記第1スペース及び前記第2スペースにおいて、
前記GND層の内縁を成す端部が、前記バランを構成する最内周の部位より内側に延伸して配された距離をA、
前記GND層の上面と前記第2導電パターン群の下面との距離をBとした場合、前記Aは前記Bの5倍以上である
ことを特徴とする請求項1に記載の樹脂多層デバイス。
【請求項3】
バランスフィルタを有する樹脂多層デバイスであって、
基板と、前記基板上に形成された第1樹脂層と、前記第1樹脂層上に設けられた第1導電パターン群と、前記第1樹脂層上および前記第1導電パターン群上に形成された第2樹脂層と、前記第2樹脂層上に設けられた第2導電パターン群と、前記第2樹脂層上および前記第2導電パターン群上に形成された第3樹脂層と、を備え、
前記バランスフィルタのバランは、前記第1導電パターン群の導電パターンとして電気的に互いに独立して設けられた第1平衡信号伝送路および第2平衡信号伝送路と、前記第2導電パターン群の導電パターンとして前記2つの平衡信号伝送路に対向して設けられた不平衡信号伝送路と、を有し、
前記第1平衡信号伝送路およびこれに対向する前記不平衡信号伝送路の第1不平衡信号伝送路部は、内周に第1スペースを有する平面スパイラル型に配置され、前記第2平衡信号伝送路およびこれに対向する前記不平衡信号伝送路の第2不平衡信号伝送路部は、内周に第2スペースを有する平面スパイラル型に配置されており、
前記バランスフィルタのフィルタは、前記第1導電パターン群の導電パターンと、前記第2導電パターン群の導電パターンと、を有し、前記第1スペース内および/または前記第2スペース内に配置されていることを特徴とする樹脂多層デバイス。
【請求項4】
それぞれ前記第2導電パターン群の導電パターンとして、前記第1平衡信号伝送路の一端に接続された第1平衡信号電極パッドと、前記第2平衡信号伝送路の一端に接続された第2平衡信号電極パッドと、前記第1スペース内に配置された不平衡信号電極パッドと、前記第1スペース内に配置された第1フィルタ電極パッドと、前記第2スペース内に配置された第2フィルタ電極パッドと、をさらに備え、
前記フィルタは、前記第1スペース内に配置され、一端が前記不平衡信号電極パッドに接続され、他端が前記第1フィルタ電極パッドに接続された第1フィルタ部と、前記第2スペース内に配置され、一端が前記第2フィルタ電極パッドに接続され、他端が前記第2不平衡信号伝送路部の内周端に接続された第2フィルタ部と、を有し、
前記第1フィルタ電極パッドと前記第2フィルタ電極パッドとが、ボンディングワイヤによって接続されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂多層デバイス。
【請求項5】
それぞれ前記第2導電パターン群の導電パターンとして、前記第1平衡信号伝送路の一端に接続された第1平衡信号電極パッドと、前記第2平衡信号伝送路の一端に接続された第2平衡信号電極パッドと、前記第1スペース内に配置された不平衡信号電極パッドと、前記第1スペース内に配置された第1フィルタ電極パッドと、前記第2スペース内に配置された第2フィルタ電極パッドと、をさらに備え、
前記フィルタは、前記第1スペース内に配置され、一端が前記不平衡信号電極パッドに接続され、他端が前記第1フィルタ電極パッドに接続された第1フィルタ部と、前記第2スペース内に配置され、一端が前記第2フィルタ電極パッドに接続され、他端が前記第2不平衡信号伝送路部の内周端に接続された第2フィルタ部と、を有し、
前記第1フィルタ電極パッドと前記第2フィルタ電極パッドとが、前記第3樹脂層上に設けられた導電パターンによって接続されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂多層デバイス。
【請求項6】
前記フィルタは、複数のインダクタと複数のキャパシタとによって構成されており、
前記インダクタおよび前記キャパシタが、前記第1フィルタ部と前記第2フィルタ部とに、対称となるように振り分けられて配置されていることを特徴とする請求項4または5に記載の樹脂多層デバイス。
【請求項7】
前記フィルタはバンドパスフィルタであり、前記第1フィルタ部はハイパスフィルタであり、前記第2フィルタ部はローパスフィルタであることを特徴とする請求項4または5に記載の樹脂多層デバイス。
【請求項8】
それぞれ前記第2導電パターン群の導電パターンとして、前記第1平衡信号伝送路の一端に接続された第1平衡信号電極パッドと、前記第2平衡信号伝送路の一端に接続された第2平衡信号電極パッドと、前記第1スペース内に配置された不平衡信号電極パッドと、をさらに備え、
前記フィルタは、前記第1スペース内に配置され、一端が前記不平衡信号電極パッドに接続され、他端が前記第2不平衡信号伝送路部の内周端に接続されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂多層デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【公開番号】特開2010−154517(P2010−154517A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−264024(P2009−264024)
【出願日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】