説明

樹脂封止装置及び樹脂封止方法

【課題】樹脂の量の少ない樹脂封止厚みの薄い場合でも樹脂封止不良を回避し、更に樹脂封止のための時間を短縮可能とする。
【解決手段】基板102上に搭載された半導体チップ104を樹脂106と共に金型114のキャビティに配置させて、金型114の減圧・加熱を行い半導体チップ104に圧縮圧力を加え樹脂封止する樹脂封止装置100において、最低速切換位置Y5から加速位置Y6への駆動速度V5を、金型114の型締めにおいて最も遅くし、ファーストタッチ位置Y3から低速切換位置Y4への駆動速度V3、低速切換位置Y4から最低速切換位置Y5への駆動速度V4、及び加速位置Y6から保圧位置Y7への駆動速度V6を、最低速切換位置Y5から加速位置Y6への駆動速度V5よりも速くしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂封止装置及び樹脂封止方法の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1において、基板上に搭載された被成形品(半導体チップとそれに伴うボンディングワイヤなど)を熱硬化性の樹脂と共に金型のキャビティに配置させて、該金型の減圧・加熱を行い該被成形品に圧縮圧力を加え樹脂封止する樹脂封止装置が提案されている。なお、この樹脂封止装置は、第1の金型と該第1の金型に対して相対的に接近・離反可能な第2の金型とを備える金型を有している。
【0003】
ここで、熱硬化性の樹脂は平板形状(固体)とされている。このため、この樹脂は、加熱により固体から一旦軟化して低粘度の液体となり再び硬化して固体に戻る。即ち、樹脂封止装置は、樹脂が固体から液体に変わり再び固体に戻るまでの時間(ゲルタイムと称する)以内で、型締めにおける金型の移動が完了するように制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−186439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1で示すような樹脂封止装置において、例えば被成形品のボンディングワイヤが細い場合に、少ない樹脂の量に対して従来の制御で樹脂封止を行うと次のような問題が生じることを発明者は見出した。それは、薄い樹脂封止厚みに樹脂封止すると、ボンディングワイヤの変形量が大きくなり、樹脂封止不良が生ずることがあるということである。
【0006】
そこで、ボンディングワイヤへかかる樹脂の圧力を低減すべく、発明者は、樹脂封止の際の第1の金型に対する第2の金型の駆動速度(接近速度)を、互いの距離が短くなるにつれ遅くし、金型の型締めを行い樹脂封止することを試みた。そして、その際にも金型の移動はゲルタイム内で完了するようにした。しかし、そのような制御を行っても樹脂封止不良が生じていた。同時に、樹脂封止のための時間が長くなってしまうという問題も出ていた。
【0007】
そこで、本発明は、前記問題点を解決するべくなされたもので、樹脂の量の少ない樹脂封止厚みの薄い場合でも樹脂封止不良を回避し、更に樹脂封止のための時間を短縮可能な圧縮成形装置及び圧縮成形方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、第1の金型と、駆動源により該第1の金型に対して相対的に接近・離反可能な第2の金型とを備える金型を有し、基板上に搭載された被成形品を熱硬化性の樹脂と共に前記金型のキャビティに配置させて、該金型の減圧・加熱を行い該被成形品に圧縮圧力を加え樹脂封止する樹脂封止装置において、それぞれ、前記基板の厚みと前記被成形品の樹脂封止厚みとの和が前記キャビティを構成する前記第1の金型の表面と第2の金型の表面との間の距離に相当する該第1の金型に対する前記第2の金型の前記駆動源による指標位置を基準位置とし、前記樹脂と被成形品とが前記第1の金型と第2の金型にそれぞれ配置され加熱された状態で該樹脂と被成形品とが非接触であって接触直前である該第1の金型に対する該第2の金型の前記指標位置を第1の位置とし、前記第1の金型に対して前記第1の位置よりも近いが、前記基準位置よりも遠くて前記圧縮圧力が立ち上がる直前である該第1の金型に対する前記第2の金型の前記指標位置を第2の位置とし、前記第1の金型に対して前記基準位置よりも近く、前記圧縮圧力が立ち上がった直後である該第1の金型に対する前記第2の金型の前記指標位置を第3の位置とし、前記第1の金型に対して前記基準位置よりも近く、前記圧縮圧力が前記被成形品にかける最大圧縮圧力となる該第1の金型に対する前記第2の金型の前記指標位置を第4の位置とし、前記第2の位置から第3の位置への前記第1の金型に対する前記第2の金型の前記駆動源による駆動速度を、前記金型の型締めにおいて最も遅くすると共に、前記第1の位置から該第2の位置への該駆動速度及び該第3の位置から前記第4の位置への該駆動速度を該第2の位置から該第3の位置への該駆動速度よりも速くする制御手段を備えることで、上記課題を解決するものである。
【0009】
本発明は、熱硬化性の樹脂の粘度変化の解釈に新たな見識を取り入れ、樹脂封止の際の第1の金型に対する第2の金型の駆動速度を、段階的に変更したものである。図3(B)を用いてその新たな見識を以下に説明する。
【0010】
図3(B)では、一定時間で熱硬化性の樹脂(単に樹脂とも称する)を加熱した際の時間tに対する樹脂の粘度Vsの変化の様子を概略的に示している。当初発明者が推定していた樹脂の粘度を表すグラフはGvで表されている。この場合、第1の金型に対する第2の金型の駆動速度を互いの距離が短くなるにつれ遅くしても、ゲルタイムTgの広い範囲BRで樹脂が低粘度を保っているので、樹脂封止不良を回避することも可能と思われる。しかし、発明者の新たな見識から、樹脂の粘度を表すグラフはGv1と想定される。即ち、たとえゲルタイムTg内であっても、樹脂の低粘度の領域は狭く、樹脂の最低粘度の状態はゲルタイムの前半の早いタイミングで訪れる。そして、樹脂はその最低粘度となった時点tvから粘度が徐々に上昇して硬化が進むというものである。このため、単に当該駆動速度を遅くしただけでは、樹脂の粘度上昇の影響によりボンディングワイヤへの負荷が大きくなって樹脂封止不良が生ずると考えられる。特に、ボンディングワイヤの細線化に対しては僅かな樹脂の粘度上昇でも大きく影響を与えてしまう。
【0011】
このため、本発明は、ゲルタイムTg内のなるべく早い時期に、つまり駆動速度を遅くしても熱硬化性の樹脂がなるべく低い粘度のうちに、型締めにおける金型の移動を完了させるようにしている。
【0012】
具体的に、本発明は、第1の金型に対する第2の金型の位置(駆動源による指標位置)について、それぞれ、基準位置、第1の位置から第4の位置を特定している。そして、圧縮圧力が立ち上がる直前である第2の位置から圧縮圧力が立ち上がった直後である第3の位置への駆動速度を、金型の型締めにおいて最も遅くしている。同時に、樹脂と被成形品とが接触直前である第1の位置から当該第2の位置への駆動速度及び第3の位置から圧縮圧力が最大圧縮圧力となる第4の位置への駆動速度を、第2の位置から第3の位置への駆動速度よりも速くしている。
【0013】
即ち、本発明は、圧縮圧力が立ち上がる際だけ、金型の型締めにおいて最も駆動速度を遅くしている。そして、特に圧縮圧力が立ち上がった直後からは、従来の発想とは逆に駆動速度を速めているので、樹脂の粘度が低いうちに型締めにおける金型の移動を完了させることが可能となる。このため、これらの相乗効果により、熱硬化性の樹脂が実質的に被成形品(の例えばボンディングワイヤ)に与える影響を最小限としている。即ち、樹脂の量の少ない樹脂封止厚みの薄い場合でも樹脂封止不良を回避することができる。同時に、樹脂封止のための時間も短縮することができる。
【0014】
なお、前記第1の金型に対して前記第2の金型の位置を特定するための駆動源による「指標位置」に関する具体的なパラメータは特に限定されない。しかし、該駆動源による指標位置を、例えば、前記駆動源が回転駆動源であり、該回転駆動源に取付けられたロータリーエンコーダによって確定される位置(回転数)から得られるようにすると、低コストで再現性のある指標位置が得られる。
【0015】
なお、前記第3の位置から前記第4の位置への前記駆動速度は、前記第2の位置から第3の位置への該駆動速度よりも速くされているものの、数値的には特に限定されない。しかし、例えば、前記第3の位置から前記第4の位置への前記駆動速度が、前記第2の位置から第3の位置への該駆動速度の3倍以上とされているとしてもよい。この場合には、型締めにおける金型の移動完了の時期を従来よりも速めることができ、樹脂封止不良を回避すると共に樹脂封止のための時間を従来よりも大きく短縮することができる。或いは、互いに数値で、前記第2の位置から第3の位置への前記駆動速度が、前記第2の金型の前記第1の金型への無負荷時の接近速度に換算して最大で0.2mm/secとされ、且つ、前記第3の位置から前記第4の位置への該駆動速度が、該無負荷時の接近速度に換算して1mm/sec以上とされていてもよい。
【0016】
なお、前記第3の位置における圧縮圧力が、1MPaから2MPaの間とされている場合には、樹脂の量に実際的な誤差があっても、第2の位置から第3の位置に至るまでの駆動速度の最も遅い間にキャビティ全体にほぼ樹脂を行き渡らせることができる。このため、樹脂封止の時間を短縮しながら、樹脂封止不良を最も安定して回避することができる。
【0017】
なお、前記第1の位置における前記駆動源による指標位置から求められる前記第1の金型の表面と前記第2の金型の表面との距離は、前記基板の厚みと前記樹脂封止厚みの4倍以上の値との和とされていることがより好ましい。なお、この数値は必ずしも厳密性が要求されるものではない。
【0018】
なお、更に、前記制御手段が、前記第1の位置と第2の位置との間の前記指標位置を第5の位置とし、該第5の位置から第2の位置への前記駆動速度を前記第3の位置から第4の位置への前記駆動速度よりも遅くする場合には、第2の位置において被成形品の一部(例えば、ボンディングワイヤの一部など)が樹脂と接触している状態ならばそこに至る駆動速度を遅くすることが可能となる。即ち、熱硬化性の樹脂が被成形品に与える影響を更に低減することが可能となり、より樹脂封止不良の発生を低減することができる。
【0019】
なお、前記第5の位置における前記駆動源による指標位置から求められる前記第1の金型の表面と前記第2の金型の表面との距離は、前記基板の厚みと前記樹脂封止厚みの1.8倍以上の値との和とされていることが好ましい。なお、この数値は必ずしも厳密性が要求されるものではない。
【0020】
なお、前記金型が所定の温度に加熱され、前記キャビティに前記樹脂が搭載されてから前記第2の金型が前記第3の位置に移動するまでの時間が、前記温度における前記樹脂のゲルタイムの20%から40%の間とされている場合には、樹脂が固体の状態であっても軟化・溶融して確実に樹脂の粘度を低くした状態にして、圧縮圧力を立ち上げることができる。同時に、従来よりも型締めにおいて金型の移動完了までを確実に短くできるので、更に樹脂封止不良を回避できるようになると共に樹脂封止のための時間も短縮することができる。
【0021】
なお、本発明は、第1の金型と、駆動源による該第1の金型に対して相対的に接近・離反可能な第2の金型とを備える金型を用いて、基板上に搭載された被成形品を熱硬化性の樹脂と共に前記金型のキャビティに配置し、該金型の減圧・加熱を行い該被成形品に圧縮圧力を加え樹脂封止する樹脂封止方法において、それぞれ、前記基板の厚みと前記被成形品の樹脂封止厚みとの和が前記キャビティを構成する前記第1の金型の表面と第2の金型の表面との間の距離に相当する該第1の金型に対する前記第2の金型の前記駆動源による指標位置を基準位置とし、前記樹脂と被成形品とが前記第1の金型と第2の金型にそれぞれ配置され加熱された状態で該樹脂と被成形品とが非接触であって接触直前である該第1の金型に対する該第2の金型の前記指標位置を第1の位置とし、前記第1の金型に対して前記第1の位置よりも近いが、前記基準位置よりも遠くて前記圧縮圧力が立ち上がる直前である該第1の金型に対する前記第2の金型の前記指標位置を第2の位置とし、前記第1の金型に対して前記基準位置よりも近く、前記圧縮圧力が立ち上がった直後である該第1の金型に対する前記第2の金型の前記指標位置を第3の位置とし、前記第1の金型に対して前記基準位置よりも近く、前記圧縮圧力が前記被成形品にかける最大圧縮圧力となる該第1の金型に対する前記第2の金型の前記指標位置を第4の位置とし、前記第2の位置から第3の位置への前記第1の金型に対する前記第2の金型の前記駆動源による駆動速度を、前記金型の型締めにおいて最も遅くして行う工程と、前記第1の位置から該第2の位置への該駆動速度及び該第3の位置から前記第4の位置への該駆動速度を、該第2の位置から該第3の位置への該駆動速度よりも速くして行う工程と、を含むことを特徴とする樹脂封止方法とも捉えることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、樹脂の量の少ない樹脂封止厚みの薄い場合でも樹脂封止不良を回避し、更に樹脂封止のための時間を短縮可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係わる樹脂封止装置の一例を示す模式図
【図2】同じく樹脂封止装置の一部動作を示すフローチャートを示す図
【図3】同じく樹脂封止装置の一部動作を示す動作線図(図3(A))と樹脂の粘度変化を模式的に示す図(図3(B))
【図4】図3の動作線図の更に一部を詳細に示した模式図
【図5】図4の動作線図の一部と圧縮圧力との関係を示す模式図
【図6】図4の動作線図において、代表的な上型と下型との位置関係を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の実施形態の一例について詳細に説明する。
【0025】
最初に、本発明の実施形態に係わる樹脂封止装置の概略構成について、図1を用いて説明する。なお、「基板102」は、PCB基板やリードフレームといった半導体チップを支持するものの代表例として示したものである。また、「半導体チップ104」は、被成形品に含まれる。なお、本実施形態では、被成形品に、基板102と半導体チップ104とを接続するボンディングワイヤなども含まれている。また、「樹脂106」は、熱硬化性の樹脂を示し、本実施形態では、予め成形された平板形状(固体)とされている。なお、「樹脂106」の厚みは、後述する樹脂封止厚みh1とほぼ同一とされている。
【0026】
樹脂封止装置100は、図1に示す如く、上型120(第1の金型)と、図示せぬ駆動源により上型120に対して相対的に接近・離反可能な下型130(第2の金型)とを備える金型114を有している。樹脂封止装置100は、基板102上に搭載された半導体チップ104を樹脂106と共に金型114のキャビティに配置させて、金型114の減圧・加熱を行い半導体チップ104に圧縮圧力を加え樹脂封止する。なお、図示せぬ駆動源は後述するモータ(回転駆動源)とされている。
【0027】
以下、具体的に構成要素について説明を行う。
【0028】
金型114は、図1に示す如く、上型120と下型130とを備える。上型120は、上圧縮金型122と上枠124とを備える。上圧縮金型122は、金型114の固定プラテン110に取付けられ固定されている。そして、上圧縮金型122には減圧機構116が設けられ、金型114の型締めの際に生じる閉じられた空間が減圧可能とされている。また、上圧縮金型122には吸着機構118が設けられ、上圧縮金型122の表面に基板102を吸着・保持することが可能とされている。上枠124は、上圧縮金型122の外周を囲む枠形状であり、ばね126を介して上圧縮金型122に取付けられている。このため、上枠124は、上圧縮金型122に対して相対的に移動可能とされている。上枠124の下型130に対向する面には、密封部材(Oリングなど)124Aが設けられている。なお、上圧縮金型122と上枠124との摺動面にも図示せぬ密封部材が設けられている。
【0029】
下型130は、下圧縮金型132と下枠134とを備える。下圧縮金型132は、金型114の可動プラテン112に取付けられている。このため、下型130は、図1の上下方向にて上型120に対して相対的に接近・離反可能とされている。下枠134は、下圧縮金型132の外周を囲む枠形状であり、ばね136を介して下圧縮金型132に取付けられている。このため、下枠134は下圧縮金型132に対して相対的に移動可能とされている。上型120と下型130とが接近した際には、下枠134は上圧縮金型122と共に基板102を挟持(クランプ)することができる。同時に下枠134は、上枠124と下枠フィルム108を介して当接可能とされている。なお、下型130には、下圧縮金型132に対する下枠134の上下動を制御するための下枠駆動機構138が設けられている。このため、下枠駆動機構138により、樹脂封止工程において適宜下枠134の位置を制御することができる。
【0030】
また、下型130には図示せぬフィルム吸着機構が設けてあり、下型130の表面に敷設される下枠フィルム108を吸着・保持することができる。下枠フィルム108は、伸縮自在であり、加熱されても下型130及び樹脂封止後の成形品からの剥離性を良好としている。
【0031】
下型130が取付けられた可動プラテン112には図示せぬモータ(回転駆動源)が連結されている。そして、当該モータにはその回転量を検出するための図示せぬロータリーエンコーダが設けられている。このため、下型130はモータにより上型120に対して接近・離反可能とされ、モータに取付けられたロータリーエンコーダにより、上型120に対する下型130の位置を特定するための「(駆動源による)指標位置」を求めることができる。このロータリーエンコーダに基づく「指標位置」は、下型130が基板102と樹脂106と下枠フィルム108とを介して上型120に接触するまで(後述する基準位置Ystに至るまで)は、下型130の上型120に対する実際の距離(あるいは駆動速度)と相関がある。そして、下型130が基板102と樹脂106と下枠フィルム108とを介して上型120に接触した後は、圧縮圧力(あるいは圧縮圧力の増大速度)と相関がある。しかも、この再現性が高いことから、モータに取付られたロータリーエンコーダによって確定される位置を「指標位置」とすることが、本実施形態では最適である。なお、以下の説明で示される各指標位置間の駆動速度の具体的な値は、下型130の上型120への無負荷時の速度に換算されている。なお、当該圧縮圧力は、図示せぬ圧力を検出する機構により検出される。
【0032】
なお、符号128は、上型120に設けられた移動可能な突状部材である。下圧縮金型132に対する下枠134の移動に応じて、下枠134上の凹部134Aに突状部材128を突出させることで、下枠フィルム108の伸縮変形量を最小限にしている。また、図1では図示されていないが、上型120と下型130には複数のヒータが埋め込まれている。当該ヒータにより、金型114が樹脂封止のための所定の温度(例えば175度)に加熱されている。
【0033】
樹脂封止装置100の一連の操作は、図示せぬ操作画面から行われる。操作画面からの操作に基づいて図示せぬ処理装置(制御手段)で、金型114等の動作が制御される。
【0034】
次に、樹脂封止装置100の動作について、図2〜図6を用いて説明する。なお、図3、図4のグラフの縦軸Yは、モータに取付けられたロータリーエンコーダによって確定される下圧縮金型132(若しくは可動プラテン112)の指標位置(以降、単に指標位置若しくは下型130の指標位置と称する)を示している。即ち、指標位置Yが大きいほど、上型120に対して下型130をより接近させようとする駆動がなされていることを示している。なお、図3、図4のグラフGjは従来の制御によるものであり、グラフGhが本実施形態によるものである。また、図6(C)に示す如く、基板102の厚みhと半導体チップ104の樹脂封止厚みh1との和がキャビティを構成する上型120の上圧縮金型122の表面と下型130の下圧縮金型132の表面との間の距離に相当する。このときの上型120に対する下型130の指標位置Yを基準位置Ystとしておく。
【0035】
まず、上型120と下型130が離反された型開き状態において、基板102が図示せぬ搬送機構により、上圧縮金型122に吸着・固定される。そして、図示せぬ樹脂搭載ハンドが金型114内に移動する(図3で時間t0)。また、下枠フィルム108が下型130上に配置されて吸着される。このとき、下枠駆動機構138により、下枠134の上面と下圧縮金型132の上面の位置はそれぞれ同一とされている。なお、金型114は圧縮封止する際の一定の温度(例えば175度)に加熱されている。
【0036】
次に、可動プラテン112を上昇させて、下型130の指標位置YをY0からY1とする。そして、樹脂106を下枠フィルム108上に搭載する(図3で時間t1)。そして、可動プラテン112を下降させて、下型130の指標位置Yを位置Y0に戻す(図2でステップS2、図3で時間t2)。そして、樹脂搭載ハンドを金型114の領域から外部へ退避させる(図2でステップS4)。
【0037】
次に、可動プラテン112を上方に移動させて下型130を上型120に接近させていく。そして、下型130の指標位置Yが位置Y2(減圧位置)になった段階(図2でステップS6、図3で時間t3)で可動プラテン112の上昇を止めて、金型114に対して減圧動作を開始する(減圧時間の開始)。なお、この時点で、下型130上の樹脂106と上型120に吸着された基板102とは接触していない。
【0038】
次に、可動プラテン112を上方に移動させて下型130の指標位置Yを減圧位置Y2からモータによる駆動速度V2(例えば44mm/s以下)で再び上昇させる(図3、図4で時間t4)。そして、下型130の指標位置Yを、樹脂106とボンディングワイヤ及び基板102とが上型120と下型130にそれぞれ配置され加熱された状態で樹脂106とボンディングワイヤ及び半導体チップ104とが非接触であって接触直前である位置(ファーストタッチ位置)Y3にする(図2でステップS8、図3、図4で時間t5、図6(A)の状態)。そして、ファーストタッチ位置Y3から駆動速度V2を駆動速度V3と遅くする(例えば2mm/s程度)。そして、下枠駆動機構138により下枠134の上昇を開始させる。なお、ファーストタッチ位置Y3以前において、突状部材128は突出して図1に示す如く下枠フィルム108を凹部134Aに押し込む。そして、上枠124が下枠フィルム108を介して下枠134と当接状態となり、下枠フィルム108が固定される。即ち、この当接状態により、ファーストタッチ位置Y3以前に上型120と下型130とによる閉じられた空間(図6(A)の状態)は密封状態となり、減圧が行われている。そして、下枠134の上昇が終了する段階で減圧が終了する(減圧時間の終了と圧縮時間の開始)。
【0039】
なお、ファーストタッチ位置Y3は、上型120に対する下型130の指標位置Yで言う第1の位置と特定される。本実施形態では、ファーストタッチ位置Y3においてモータによる指標位置Yから求められる上圧縮金型122の表面から下圧縮金型132の表面までの距離は、基板102の厚みhと樹脂封止厚みh1の4倍以上の値との和とすることが望ましい。正確に言えば、上記距離が基板102の厚みhと樹脂封止厚みh1の3倍以上の値と樹脂106の厚みとの和であり、且つ、樹脂封止厚みh1と樹脂106の厚みとがほぼ同一であることによる。これは、半導体チップ104の基板102との電気的な接続をするボンディングワイヤが、例えば半導体チップ104よりも下型側にある程度の高さで張り出す。そのような場合に、ボンディングワイヤと樹脂106との非接触状態を確保することが可能となる。なお、樹脂封止厚みh1は、図6(A)に示す如く、樹脂封止後の基板102を含めた成形品の厚みから基板102の厚みhを除いた値である。なお、本実施形態では、下圧縮金型132に対する下枠134の変位量が最大で4.5mmとされている。このため、ファーストタッチ位置Y3で規定される上圧縮金型122の表面から下圧縮金型132の表面までの最大の距離は、(4.5mm+基板102の厚みh)となる。
【0040】
次に、可動プラテン112を上方に移動させ下型130をファーストタッチ位置Y3から上型120に駆動速度V3で接近させていく。そして、下型130の指標位置Yを位置Y4(低速切替位置)とする(図2でステップS10、図4で時間t6、図6(B)の状態)。低速切換位置Y4で駆動速度V3から低速の駆動速度V4(例えば0.5mm/s程度)へ変更する。低速切換位置Y4では、図6(B)に示す如く、下枠134の上昇が終了し、下枠134と上圧縮金型122とで基板102を挟持する態様となる。このため、基板102がしっかり固定される。低速切換位置Y4は、上型120に対する下型130の位置で言う第5の位置と特定される。本実施形態では、低速切換位置Y4においてモータによる指標位置Yから求められる上圧縮金型122の表面から下圧縮金型132の表面までの距離は、基板102の厚みhと樹脂封止厚みh1の1.8倍以上の値との和とされていることが望ましい。正確に言えば、上記距離が、基板102の厚みhと樹脂封止厚みh1の0.8倍以上の値と樹脂106の厚みとの和であり、且つ樹脂封止厚みh1と樹脂106の厚みとがほぼ同一であることによる。或いは、上圧縮金型122の表面から下圧縮金型132の表面までの距離は、基板102の厚みhと樹脂封止厚みh1と半導体チップ104の厚みh0との和とされていてもよい。なお、必要に応じてファーストタッチ位置Y3と低速切換位置Y4との間の位置で、駆動速度を変更してもよい。
【0041】
次に、可動プラテン112を上方に移動させ下型130を低速切換位置Y4から上型120に駆動速度V4で接近させていく。そして、下型130の指標位置Yを、上型120に対してファーストタッチ位置Y3(第1の位置)と低速切換位置Y4(第5の位置)よりも近いが、基準位置Ystよりも遠くて圧縮圧力が立ち上がる直前である位置Y5(最低速切替位置)とする(図2でステップS12、図3、図4で時間t7)。最低速切換位置Y5で駆動速度V4から最低速の駆動速度V5(例えば0.05mm/sec程度で最大でも0.2mm/sec)へ変更する。最低速切換位置Y5は、上型120に対する下型130の位置で言う第2の位置と特定される。本実施形態では、最低速切換位置Y5においてモータによる指標位置Yから求められる上圧縮金型122の表面から下圧縮金型132の表面までの距離は、基板102の厚みhと樹脂封止厚みh1と0.1mmから0.3mmの間の値との和とされていることが望ましい。
【0042】
次に、可動プラテン112を上方に移動させ下型130を最低速切換位置Y5から上型120に駆動速度V5で接近させていく。そして、下型130の指標位置Yを、上型120に対して基準位置Ystよりも近く、圧縮圧力が立ち上がった直後である位置Y6(加速位置)とする(図2でステップS14、図4で時間t8)。加速位置Y6で、駆動速度V5から加速された速度の駆動速度V6(例えば1mm/sec以上)へ変更する。加速位置Y6は、上型120に対する下型130の位置で言う第3の位置と特定される。本実施形態では、加速位置Y6においてモータによる指標位置Yから求められる上圧縮金型122の表面から下圧縮金型132の表面までの距離は、基板102の厚みhと樹脂封止厚みh1と(−0.05mmから−0.15mm)の間の値との和とされていることが望ましい。なお、加速位置Y6(第3の位置)では、図5に示す如く、1MPaから2MPaの圧縮圧力が生じている。また、本実施形態では、キャビティを構成する下型130に樹脂106が搭載されてから下型130が加速位置Y6(第3の位置)に移動するまでの時間(時間t1から時間t8までの時間)は、図3(B)に示す如く、ゲルタイムTgの20%(Tg1)から40%(Tg2)の間とされている。即ち、本実施形態によれば、発明者の新たな見識に基づいたグラフGv1にあっても樹脂106の低粘度領域ARで金型114の移動を完了させることができる。なお、可動プラテン112を上方に移動させ下型130を最低速切換位置Y5から上型120に駆動速度V5で接近させていく過程において、図6(C)の状態が生じている。
【0043】
次に、可動プラテン112を上方に移動させ下型130を加速位置Y6から上型120に駆動速度V6で接近させていく。そして、下型130の指標位置Yを、上型120に対して基準位置Ystよりも近く、圧縮圧力が半導体チップ104にかける最大圧縮圧力となる位置Y7(保圧位置)とする(図2でステップS16、図3、図4で時間t9)。保圧位置Y7で駆動速度V6から駆動速度をゼロにする(圧縮時間の終了とキュア時間の開始)。保圧位置Y7は、上型120に対する下型130の指標位置Yで言う第4の位置と特定される。なお、最大圧縮圧力が保圧圧力となる。保圧圧力は、キュア(硬化)の際に成形品に「ひけ(樹脂の硬化収縮による成形異常)」を生じさせないように定められ、本実施形態では8MPaから12MPaの間に設定されている。
【0044】
次に、キュア時間の経過後、可動プラテン112を固定プラテン110から離反させる。そして、上型120と下型130の型開きをし、樹脂封止された基板102(単に成形品と称する)が、図示せぬ搬送装置にて取り出される。
【0045】
このように、本実施形態は、樹脂106の粘度変化の解釈に新たな見識を取り入れ、樹脂封止の際の上型120に対する下型130の駆動速度を段階的に変更したものである。図3(B)を用いてその新たな見識を以下に説明する。
【0046】
図3(B)では、一定時間で熱硬化性の樹脂106を加熱した際の時間tに対する樹脂106の粘度Vsの変化の様子を概略的に示している。当初発明者が推定していた樹脂106の粘度を表すグラフはGvで表されている。この場合、上型に対する下型の駆動速度を互いの距離が短くなるにつれ遅くしても、ゲルタイムTgの広い範囲BRで樹脂106が低粘度を保っているので、樹脂封止不良を回避することも可能と思われる。しかし、発明者の新たな見識から、樹脂106の粘度を表すグラフはGv1と想定される。即ち、たとえゲルタイムTg内であっても、樹脂106の低粘度の領域は狭く、樹脂106の最低粘度の状態はゲルタイムの前半の早いタイミングで訪れる。そして、樹脂106はその最低粘度となった時点tvから粘度が徐々に上昇して硬化が進むというものである。このため、単に当該駆動速度を遅くしただけでは、樹脂106の粘度上昇の影響によりボンディングワイヤへの負荷が大きくなって樹脂封止不良が生ずると考えられる。特に、ボンディングワイヤの細線化に対しては僅かな樹脂106の粘度上昇でも大きく影響を与えてしまう。
【0047】
このため、本実施形態は、ゲルタイムTg内のなるべく早い時に、つまり駆動速度を遅くしても樹脂106がなるべく低い粘度のうちに、型締めにおける金型114の移動を完了させるようにしている。
【0048】
具体的に、本実施形態は、最低速切換位置Y5(第2の位置)から加速位置Y6(第3の位置)への駆動速度V5を、金型114の型締めにおいて最も遅くしている。同時に、ファーストタッチ位置Y3(第1の位置)から低速切換位置Y4(第5の位置)への駆動速度V3、低速切換位置Y4(第5の位置)から最低速切換位置Y5(第2の位置)への駆動速度V4、及び加速位置Y6(第3の位置)から保圧位置Y7(第4の位置)への駆動速度V6を、最低速切換位置Y5(第2の位置)から加速位置Y6(第3の位置)への駆動速度V5よりも速くしている。
【0049】
即ち、本実施形態は、圧縮圧力が立ち上がる際だけ、金型114の型締めにおいて最も駆動速度V5を遅くしている。そして、特に圧縮圧力が立ち上がった直後からは、従来の発想とは逆に駆動速度V6を速めているので、樹脂106の粘度が低いうちに型締めにおける金型114の移動を完了させることが可能となる。このため、これらの相乗効果により、樹脂106が実質的に半導体チップ104のボンディングワイヤに与える影響を最小限としている。即ち、樹脂106の量の少ない樹脂封止厚みh1の薄い場合でも樹脂封止不良を回避することができる。同時に、樹脂封止のための時間も短縮することができる。実際に、本実施形態の条件においてボンディングワイヤ径20μmや18μmで半導体チップ上の樹脂厚み0.3mmであっても樹脂封止不良を回避することができる。
【0050】
また、可動プラテン112が取付けられている下型130の駆動源がモータであり、駆動源による指標位置Yがモータに取付けられたロータリーエンコーダによって確定される位置である。このため、低コストで再現性のある指標位置が得られる。より詳しく説明するならば、樹脂106の相変化による体積変化を伴いながらも下型130の実際の位置が同じ若しくは僅かにしか変化せずに、モータの回転量の大部分が圧縮圧力の増大を担う状態となる加速位置Y6(第3の位置)、保圧位置Y7(第4の位置)であっても、ロータリーエンコーダの出力、即ち、指標位置には連続性があり、高精度に且つ高い再現性で、下型130の位置情報および圧縮圧力情報を求めることができる。図5を参照して以下に説明する。
【0051】
図5に圧縮圧力と上型120に対する下型130の指標位置Yとの関係を示す。縦軸Pは圧縮圧力を示し、縦軸DYは上型120と下型130との指標位置ベースの距離を示す。図5に示す如く、圧縮圧力は、最低速切換位置Y5(第2の位置)までは生じずに、加速位置Y6(第3の位置)以降急激に上昇する。即ち、加速位置Y6(第3の位置)以降は、可動プラテン112の移動のためのモータの出力の大半が圧縮圧力を生じさせるのに用いられ、ロータリーエンコーダによる位置検出は実際の位置とはかけ離れることとなる。しかし、ロータリーエンコーダにおいては、その出力が連続で且つ高精度であるので、可動プラテン112による下型130の位置を高い精度で再現することができる。しかし、必ずしもロータリーエンコーダに限定されるものではない。例えば、トグルリンクで可動プラテンを移動させ、そのトグルリンクを駆動するボールねじの回転数を元に指標位置Yを求めてもよい。
【0052】
また、最低速切換位置Y5(第2の位置)から加速位置Y6(第3の位置)への駆動速度V5が下型130の上型120への無負荷時の接近速度に換算して最大で0.2mm/secとされ、且つ、加速位置Y6(第3の位置)から保圧位置Y7(第4の位置)への駆動速度V6が下型130の上型120への無負荷時の接近速度に換算して1mm/sec以上とされていている。加えて、加速位置Y6(第3の位置)から保圧位置Y7(第4の位置)への駆動速度V6は、最低速切換位置Y5(第2の位置)から加速位置Y6(第3の位置)への駆動速度V5の3倍以上ともされていている。このため、型締めにおける金型の移動完了の時期を従来よりも速めることができ、樹脂封止不良を回避すると共に樹脂封止のための時間を従来よりも大きく短縮することができる。
【0053】
又、加速位置Y6(第3の位置)における圧縮圧力が、1MPaから2MPaの間とされているので、樹脂106の量に実際的な誤差(±100mg程度)があっても、最低速切替位置Y5(第2の位置)から加速装置Y6(第3の位置)に至るまでの最も駆動速度の遅いV5の間にキャビティ全体にほぼ樹脂106を行き渡らせることができる。このため、樹脂封止の時間を短縮しながら樹脂封止不良を最も安定して回避することができる。しかし、必ずしもこれに限定されない。
【0054】
また、ファーストタッチ位置Y3(第1の位置)におけるモータによる指標位置Yから求められる上型120(の上圧縮金型122)の表面と下型130(の下圧縮金型132)の表面との距離は、基板102の厚みhと前記樹脂封止厚みh1の4倍以上の値との和とされているが必ずしも厳密性が要求されるものではない。また、必ずしもこれに限定されない。
【0055】
また、更に、処理装置(制御手段)が、ファーストタッチ位置Y3(第1の位置)と最低速切換位置Y5(第2の位置)との間の位置を低速切換位置Y4(第5の位置)とし、低速切換位置Y4(第5の位置)から最低速切換位置Y5(第2の位置)への駆動速度V4を加速位置Y6(第3の位置)から保圧位置Y7(第4の位置)への駆動速度V6よりも遅くしている。このため、最低速切換位置Y5(第2の位置)において半導体チップ104における例えば、ボンディングワイヤの一部などが樹脂106と接触している状態ならばそこに至る駆動速度を遅くすることが可能となる。即ち、熱硬化性の樹脂106が半導体チップ104やボンディングワイヤなどに与える影響を更に低減することが可能となり、より樹脂封止不良の発生を低減することができる。しかし、必ずしもこれに限定されない。
【0056】
また、低速切換位置Y4(第5の位置)におけるモータによる指標位置Yから求められる上型120の表面と下型130の表面との距離は、基板102の厚みhと樹脂封止厚みh1の1.8倍以上の値との和とされていたが、必ずしもこれに限定されない。また、この数値は必ずしも厳密性が要求されるものではない。
【0057】
また、金型114が所定の温度(175度)に加熱され、キャビティに樹脂106が搭載されてから下型130が加速位置Y6(第3の位置)に移動するまでの時間(時間t1から時間t8まで)が、図3(B)に示す如く、所定の温度における樹脂106のゲルタイムの20%から40%の間とされている。このため、樹脂106を固体の状態から軟化・溶融して確実に樹脂106の粘度を低くした状態にして、圧縮圧力を立ち上げることがでできる。同時に、従来よりも型締めにおいて金型114の移動完了までを確実に短くできるので、更に樹脂封止不良を回避できるようになると共に樹脂封止のための時間も短縮することができる。
【0058】
本実施形態では、実際に従来の制御で20秒かかっていた圧縮時間を10秒以下に短縮すると共に、ボンディングワイヤ変形量が3%以上あったものを1〜2%程度に改善できた。
【0059】
即ち、本実施形態によれば、樹脂106の量の少ない樹脂封止厚みh1の薄い場合でも樹脂封止不良を回避し、更に樹脂封止のための時間を短縮可能となる。
【0060】
本発明について本実施形態を挙げて説明したが、本発明は本実施形態に限定されるものではない。即ち本発明の要旨を逸脱しない範囲においての改良並びに設計の変更が可能なことは言うまでも無い。
【0061】
例えば、本実施形態においては、ボンディングワイヤが存在していたが、本発明はこれに限定されず、ボンディングワイヤのない半導体チップのフリップチップボンディングなどの場合でもよい。また、樹脂封止厚みの比較的厚い場合であってもよい。いずれであっても、本発明は相応に樹脂封止不良を回避し、更に樹脂封止のための時間が短縮可能となる。
【0062】
又、本実施形態においては、樹脂106が予め成形された平板形状とされていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、粉状や粒状の樹脂であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の樹脂封止装置は、特に半導体チップにボンディングワイヤなどがあり、樹脂の量の少ない樹脂封止厚みの薄い場合において顕著な効果を有するが、これらに限らず、その利用可能性を更に広げることができる。
【符号の説明】
【0064】
100…樹脂封止装置
102…基板
104…半導体チップ
106…樹脂
108…下枠フィルム
110…固定プラテン
112…可動プラテン
114…金型
116…減圧機構
118…吸着機構
120…上型
122…上圧縮金型
124…上枠
126、136…ばね
128…突状部材
130…下型
132…下圧縮金型
134…下枠
138…下枠駆動機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の金型と、駆動源により該第1の金型に対して相対的に接近・離反可能な第2の金型とを備える金型を有し、
基板上に搭載された被成形品を熱硬化性の樹脂と共に前記金型のキャビティに配置させて、該金型の減圧・加熱を行い該被成形品に圧縮圧力を加え樹脂封止する樹脂封止装置において、
それぞれ、前記基板の厚みと前記被成形品の樹脂封止厚みとの和が前記キャビティを構成する前記第1の金型の表面と第2の金型の表面との間の距離に相当する該第1の金型に対する前記第2の金型の前記駆動源による指標位置を基準位置とし、
前記樹脂と被成形品とが前記第1の金型と第2の金型にそれぞれ配置され加熱された状態で該樹脂と被成形品とが非接触であって接触直前である該第1の金型に対する該第2の金型の前記指標位置を第1の位置とし、
前記第1の金型に対して前記第1の位置よりも近いが、前記基準位置よりも遠くて前記圧縮圧力が立ち上がる直前である該第1の金型に対する前記第2の金型の前記指標位置を第2の位置とし、
前記第1の金型に対して前記基準位置よりも近く、前記圧縮圧力が立ち上がった直後である該第1の金型に対する前記第2の金型の前記指標位置を第3の位置とし、
前記第1の金型に対して前記基準位置よりも近く、前記圧縮圧力が前記被成形品にかける最大圧縮圧力となる該第1の金型に対する前記第2の金型の前記指標位置を第4の位置とし、
前記第2の位置から第3の位置への前記第1の金型に対する前記第2の金型の前記駆動源による駆動速度を、前記金型の型締めにおいて最も遅くすると共に、前記第1の位置から該第2の位置への該駆動速度及び該第3の位置から前記第4の位置への該駆動速度を該第2の位置から該第3の位置への該駆動速度よりも速くする制御手段を備える
ことを特徴とする樹脂封止装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記駆動源が回転駆動源であり、該駆動源による指標位置が該回転駆動源に取付けられたロータリーエンコーダによって確定される位置である
ことを特徴とする樹脂封止装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記第3の位置から前記第4の位置への前記駆動速度は、前記第2の位置から第3の位置への該駆動速度の3倍以上とされている
ことを特徴とする樹脂封止装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかにおいて、
前記第2の位置から第3の位置への前記駆動速度が前記第2の金型の前記第1の金型への無負荷時の接近速度に換算して最大で0.2mm/secとされ、且つ、
前記第3の位置から前記第4の位置への該駆動速度が該無負荷時の接近速度に換算して1mm/sec以上とされている
ことを特徴とする樹脂封止装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、
前記第3の位置における圧縮圧力は、1MPaから2MPaの間とされている
ことを特徴とする樹脂封止装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかにおいて、
前記第1の位置における前記駆動源による指標位置から求められる前記第1の金型の表面と前記第2の金型の表面との距離は、前記基板の厚みと前記樹脂封止厚み4倍以上の値との和とされている
ことを特徴とする樹脂封止装置。
【請求項7】
請求項1乃至6いずれかにおいて、更に、
前記制御手段は、前記第1の位置と第2の位置との間の前記指標位置を第5の位置とし、
該第5の位置から第2の位置への前記駆動速度を前記第3の位置から第4の位置への前記駆動速度よりも遅くする
ことを特徴とする樹脂封止装置。
【請求項8】
請求項7において、
前記第5の位置における前記駆動源による指標位置から求められる前記第1の金型の表面と前記第2の金型の表面との距離は、前記基板の厚みと前記樹脂封止厚みの1.8倍以上の値との和とされている
ことを特徴とする樹脂封止装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかにおいて、
前記金型が所定の温度に加熱され、
前記キャビティに前記樹脂が搭載されてから前記第2の金型が前記第3の位置に移動するまでの時間が、前記温度における前記樹脂のゲルタイムの20%から40%の間とされている
ことを特徴とする樹脂封止装置。
【請求項10】
第1の金型と、駆動源による該第1の金型に対して相対的に接近・離反可能な第2の金型とを備える金型を用いて、
基板上に搭載された被成形品を熱硬化性の樹脂と共に前記金型のキャビティに配置し、該金型の減圧・加熱を行い該被成形品に圧縮圧力を加え樹脂封止する樹脂封止方法において、
それぞれ、前記基板の厚みと前記被成形品の樹脂封止厚みとの和が前記キャビティを構成する前記第1の金型の表面と第2の金型の表面との間の距離に相当する該第1の金型に対する前記第2の金型の前記駆動源による指標位置を基準位置とし、
前記樹脂と被成形品とが前記第1の金型と第2の金型にそれぞれ配置され加熱された状態で該樹脂と被成形品とが非接触であって接触直前である該第1の金型に対する該第2の金型の前記指標位置を第1の位置とし、
前記第1の金型に対して前記第1の位置よりも近いが、前記基準位置よりも遠くて前記圧縮圧力が立ち上がる直前である該第1の金型に対する前記第2の金型の前記指標位置を第2の位置とし、
前記第1の金型に対して前記基準位置よりも近く、前記圧縮圧力が立ち上がった直後である該第1の金型に対する前記第2の金型の前記指標位置を第3の位置とし、
前記第1の金型に対して前記基準位置よりも近く、前記圧縮圧力が前記被成形品にかける最大圧縮圧力となる該第1の金型に対する前記第2の金型の前記指標位置を第4の位置とし、
前記第2の位置から第3の位置への前記第1の金型に対する前記第2の金型の前記駆動源による駆動速度を、前記金型の型締めにおいて最も遅くして行う工程と、
前記第1の位置から該第2の位置への該駆動速度及び該第3の位置から前記第4の位置への該駆動速度を、該第2の位置から該第3の位置への該駆動速度よりも速くして行う工程と、
を含むことを特徴とする樹脂封止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−230423(P2011−230423A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−104382(P2010−104382)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】