説明

樹脂封止装置

【課題】簡単な構成で安価な小型の樹脂封止装置を提供する。
【解決手段】少なくとも上金型21と下金型23とを備え、前記上金型21と前記下金型23との間で基板およびフィルムを挟持するとともに、前記基板とフィルムとの間に充填した樹脂材料で基板に実装した電子部品を樹脂封止する樹脂封止装置であり、前記下金型23を、前記上金型21に対向する成形位置と、前記上金型21の一方側の側方に位置し、かつ、前記フィルムを供給するフィルム供給ユニット30の直下に位置するフィルム供給位置Fと、前記上金型21の他方側の側方に位置する基板供給位置Eとに移送する移送手段と、前記下金型23単体でフィルム供給位置Fに移送できる一方、前記中間金型22を載置したままの状態で前記下金型23を基板供給位置Eに移送できる制御手段と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は基板に実装した半導体素子等の電子部品を樹脂材料で封止する樹脂封止装置、特に、フィルム供給ユニットを備えた樹脂封止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂封止装置としては、例えば、樹脂封止金型に対して離型フィルムを供給する離型フィルム供給機構であって、ロール状に巻回された前記離型フィルムを所定の長さの短冊状フィルムに切断する切断装置を有し、該切断装置が、ロール状に巻回された離型フィルムを送り出す送り出し部と、該送り出された離型フィルムが案内される案内プレートと、該案内プレート上に送り出された離型フィルムを前記ロール状に巻回された離型フィルムから切り離し可能なカッター部と、を備え、前記案内プレートの表面には、前記送り出される離型フィルムに向けてエアを噴出可能なエア噴出機構が備わっていることを特徴とする離型フィルム供給機構を備えたものがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−302550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述の樹脂封止装置では、短冊状に切り出したフィルムを、フィルム搬送機構(基板用ローダ、アンローダ)を上下金型の間に進入させ、前記フィルムを下金型に供給する機構となっている。このため、前記フィルム搬送機構を必須とし、制御装置,制御システムが複雑化になるとともに、コストアップを招いていた。
また、フィルム搬送機構を使用するためには、下金型と上金型との間に大きな作業空間を必要とするので、装置全体の高さ寸法が大きくなり、小型化できないという問題点がある。
【0005】
そこで、本発明は、フィルム供給ユニットを備え、かつ、簡単な構造で安価な小型の樹脂封止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る樹脂封止装置は、少なくとも上金型と下金型とを備え、前記上金型と前記下金型との間で基板およびフィルムを挟持するとともに、前記基板とフィルムとの間に充填した樹脂材料で基板に実装した電子部品を樹脂封止する樹脂封止装置であって、
前記下金型を、前記上金型に対向する成形位置と、前記上金型の一方側の側方に位置し、かつ、前記フィルムを供給するフィルム供給ユニットの直下に位置するフィルム供給位置と、前記上金型の他方側の側方に位置する基板供給位置とに移送する移送手段と、
前記下金型をフィルム供給位置に移送できるとともに、基板供給位置に移送できる制御手段と、を備えた構成としてある。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、下金型がフィルム供給ユニットの直下に移送され、フィルムを供給される。このため、従来例のようなフィルム搬送機構が不要となり、構造,制御システムが簡単で、安価な樹脂封止装置が得られる。
また、下金型を単体で、上金型の一方側の側方に位置するフィルム供給位置の直下に移送してフィルムを供給できる。このため、上金型と下金型との間に大きな作業空間を必要とせず、高さ寸法の小さい小型の樹脂封止装置が得られるとともに、上金型と下金型との型開き量を小さくできる。この結果、金型の駆動機構を小型化でき、生産コストを削減できるとともに、上金型と下金型の開閉に要する時間を短縮でき、樹脂封止装置全体のサイクルタイムを短縮でき、生産効率の高い樹脂封止装置が得られる。
【0008】
本発明の実施形態としては、上金型と、貫通孔を有する中間金型と、前記上金型とで前記中間金型を挟持する下金型とを備え、前記上金型と前記中間金型とで電子部品を実装した基板を挟持するとともに、前記中間金型と前記下金型とでフィルムを挟持する一方、前記中間金型の貫通孔内に配置された前記電子部品を、前記中間金型と前記フィルムとの間に充填した樹脂材料で樹脂封止する構成としてもよい。
本実施形態によれば、上中下の3枚金型を備えた樹脂封止装置であっても、構造,制御システムが簡単で、安価な小型の樹脂封止装置が得られる。
【0009】
本発明の別の実施形態としては、フィルム供給ユニットが、引き出した長尺な樹脂フィルムを吸着プレートの下面に吸着,保持し、かつ、所定の長さに切断して得た樹脂フィルムを、直下に移動してきた下金型の上面に供給するものであってもよい。
本実施形態によれば、長尺な樹脂フィルムから切り出した所定の長さの樹脂フィルムを連続的,自動的に供給できるので、生産性の高い樹脂封止装置が得られる。
【0010】
本発明の他の実施形態としては、複数枚の吸着プレートを備えていてもよい。
本実施形態によれば、下金型が複数に分割され、かつ、それぞれの下金型の高さ位置にばらつきがあっても、そのばらつきを吸着プレート毎の位置調整で吸収でき、良好なフィルム供給が可能になる。
また、フィルムを必要とする領域に合わせてフィルムを最適な大きさに切断できるので、必要最低限のフィルムを供給することにより、フィルムの無駄を削減できる。
【0011】
本発明の異なる実施形態としては、基板がリードフレームであってもよく、また、電子部品がLEDであってもよい。
本実施形態によれば、多種多様な基板,電子部品を樹脂封止できる樹脂封止装置が得られるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本願発明に係る全自動の樹脂封止装置の第1実施形態を示す平面図である。
【図2】図1に示した樹脂封止装置の正面図である。
【図3】図2に示した金型セットの拡大正面図である。
【図4】図3に示した金型セットの平面図である。
【図5】図2に示した金型セットの側面図である。
【図6】図3に示した金型セットのVI−VI部分断面図である。
【図7】本願発明に係る中間金型保持ユニットが最下位に位置し、上クランプ部材を開いた状態を示す図4のVII−VII線部分断面図である。
【図8】本願発明に係る中間金型保持ユニットが最下位から中間位置に上昇し、上クランプ部材を閉じる途中を示す部分断面図である。
【図9】本願発明に係る中間金型保持ユニットが中間位置に位置し、上クランプ部材を閉じた状態を示す部分断面図である。
【図10】本願発明に係る中間金型保持ユニットが最上位に位置し、上クランプ部材を閉じた状態を示す部分断面図である。
【図11】本願発明に係る中間金型保持ユニット,下金型が最上位に位置し、上クランプ部材を閉じた状態を示す部分断面図である。
【図12】図1に示したフィルム供給ユニットの平面図である。
【図13】図12に図示したフィルム供給ユニットの正面図である。
【図14】図13のXIV−XIV線断面図である。
【図15】図12に図示したフィルム供給ユニットの右側面である。
【図16】図13のXVI−XVI線断面図である。
【図17】図1に示したフィルム供給ユニットの動作を説明するための図13のXVII−XVII線断面図である。
【図18】図1に示したフィルム供給ユニットの動作を説明するための図17に続く断面図である。
【図19】図1に示したフィルム供給ユニットの動作を説明するための図18に続く断面図である。
【図20】図1に示したフィルム供給ユニットの動作を説明するための図19に続く断面図である。
【図21】図1に示したフィルム供給ユニットの動作を説明するための図20に続く断面図である。
【図22】図1に示したフィルム供給ユニットの動作を説明するための図21に続く断面図である。
【図23】図1に示したフィルム供給ユニットの動作を説明するための図22に続く断面図である。
【図24】本願発明に係る半自動の樹脂封止装置の第2実施形態を示す平面図である。
【図25】本願発明に係る樹脂封止装置の第3実施形態を示す部分断面拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
第1実施形態に係る樹脂封止装置は、図1および図2に示すように、大略、供給ユニット1と、成形ユニット2と、排出ユニット3とを備えている。なお、各図面は説明の便宜上、概略的に図示してある。
【0014】
供給ユニット1は、図1および図2に示すように、基板供給装置10と、配列装置11と、インローダ12と、樹脂供給装置13とを備えている。
【0015】
前記基板供給装置10は、複数枚の基板4を積み重ねた状態で収納するマガジン14を位置Aから位置Bに移送する。そして、図示しないプルユニットで、位置Bのマガジン14から基板4を1枚ずつ位置Cの配列装置11へ引き出す。前記配列装置11は、内蔵するヒータ(図示せず)で基板4を予熱しつつ、位置Cから位置Dまでガイドレール15に沿って移動した後、位置Dでインローダ12に基板4を渡す。前記インローダ12は前記基板4の両端を保持できるチャック爪(図示せず)を備え、位置Dで受け取った基板4を成形ユニット2の基板供給位置Eで待機する中間金型22へ搬送する。
【0016】
なお、前記インローダ12は樹脂供給装置13を併設しており、前記樹脂供給装置13内に設けた2つのタンク(図示せず)から異なる液状樹脂材料が、後述する下金型23のポット部23a(図23)に混合されて供給される。
【0017】
成形ユニット2は、上金型21、中間金型22および下金型23からなる金型セット20と、フィルム供給ユニット30と、クリーナ31とを備えている。
【0018】
前記金型セット20の上金型21は、平面方形の下プラテン32(図6)の隅部に立設したタイバー33の上端部に架け渡した上プラテン34の下面に固定されている。そして、図3,4に図示するように、前記上プラテン34の対向する両側面に取り付けたガイドレール35,35を介し、中間金型保持ユニット40が上下動可能に取り付けられている。
【0019】
前記中間金型保持ユニット40は一対の断面略L字形状の取付板41,41からなり、前記取付板41,41は前記上プラテン34のガイドレール35に沿って上下にスライド移動可能に取り付けられている。また、前記取付板41,41の上端部は連結バー42で連結されているとともに、前記連結バー42は前記上プラテン34の上面中央に配置した上下駆動用シリンダ43によって上下動可能に支持されている。
一方、前記取付板41の外側面には、クランプ用シリンダ44の一端部が回動可能に取り付けられているとともに、前記クランプ用シリンダ44に組み込まれたピストン45の先端が、異形の上クランプ部材46の一端部に回動可能に取り付けられている。そして、前記上クランプ部材46の他端部は前記取付板41にヒンジ支持されている。さらに、前記取付板41の下端部に、前記上クランプ部材46の係合爪46aとで中間金型22を挟持する下クランプ部47を突設してある。前記下クランプ部47には中間金型22を位置決めするための位置決めピン47aを突設してある。
【0020】
中間金型22は、その上面に基板,リードフレーム等を位置決めできる位置決めピン(図示せず)を設けてあるとともに、後述する下金型23のキャビティに対応する位置に、前記基板,リードフレームに実装したLED,電子素子等を配置できる貫通孔を設けてある。
【0021】
下金型23は、その上面に複数のキャビティ、ランナー、ゲート(図示せず)を配置するとともに、前記キャビティにランナー、ゲートを介して連通するポット部23a(図23)を形成してある。そして、前記下金型23はガイドレール37を介して基板供給位置Eとフィルム供給位置Fとの間を往復移動可能に配置されている。
【0022】
フィルム供給ユニット30は、図12ないし図14に示すように、成形品の離型性の向上、樹脂漏れ、金型の汚れを防止すべく、断面H字形状のベース60の一端側に回動可能に支持したフィルムローラ70と、前記ベース60の外側面に取り付けたフィルム引き出しブロック80と、を備えている。
【0023】
前記フィルム供給ユニット30は、前記フィルム供給位置Fで下金型23の上面に後述するフィルム71(図13)を供給するとともに、下金型23のポット部23a内に前記フィルムを押し込んで押し込み型を付ける押し込み用ピン69(図17)を備えている。なお、前記フィルム供給ユニット30は図1に示す位置から左側に往復移動可能である。
【0024】
前記ベース60は、図13に示すように、その略中央に押圧シリンダ61を取り付けてあり、前記押圧シリンダ61から伸縮する押圧ピストン62の先端に押圧プレート63を取り付けてある。前記押圧プレート63は前記ベース60に挿通された4本の第1ガイド軸64によって支持されている。一方、前記押圧プレート63は、その下面に第2ガイド軸65を介して一対の枠状第1,第2吸着プレート66,67を厚さ方向に出し入れ可能に組み付けてある。さらに、前記押圧プレート63と枠状第1,第2吸着プレート66,67との間には、前記枠状第1,第2吸着プレート66,67を下方側に付勢するためのコイルバネ68を設けてある。また、前記押圧プレート63の下面には押し込みピン69を所定のピッチで植設してある。そして、前記枠状第1,第2吸着プレート66,67は、図17に示すように、その下面に沿って相互に連通する吸着孔66a,67aを所定のピッチで設けてあるとともに、同一方向側の一辺の下面に沿って切り欠き溝66b,67bを設けてある。
【0025】
前記フィルムローラ70は、図13に示すように、長尺な樹脂フィルム71を巻回してあり、フィルムローラ用モータ72およびタイミングベルト73(図17)を介して回動量を調整可能である。そして、前記フィルムローラ70から引き出された樹脂フィルム71はテンションローラ74およびガイドローラ75を介して後述するフィルム引き出しブロック80に供給される。前記ガイドローラ75は、図15に図示するガイドローラ用シリンダ76を介して上下動する。また、テンションローラ74は自重で図中下方向に樹脂フィルム71を押し下げることにより、樹脂フィルム71の弛みを防止する。
【0026】
フィルム引き出しブロック80は、前記ベース60の外側面に設けたガイドレール81に組み付けられており、引き出しブロック用モータ82、プーリ83a,83b、およびタイミングベルト84を介し、前記ガイドレール81に沿って往復移動させることができる。
そして、図14に示すように、前記フィルム引き出しブロック80のプーリ83b側の側面に設けたガイドレール80aに沿って引き出しアーム部85を上下可能に支持してあり、引き出しアーム部85は、引き出しアーム用シリンダ80bを介して上下動する。そして、前記引き出しアーム部85には樹脂フィルム71を吸着するための吸着孔85aを所定のピッチで設けてある。また、前記引き出しアーム部85には、樹脂フィルム71を切断するためのカッター86をカッター用シリンダ87を介して往復移動可能に取り付けてある。
【0027】
なお、前記フィルム供給ユニット30はクリーナ31(図1)を併設している。前記クリーナ31は、回転動作する掃除用ブラシを中間金型22の下面に押し当て、金型表面に残留する樹脂カスを除去,吸引するためのものである。そして、前記フィルム供給ユニット30とともに、図1に示す位置から左側に移動してガイドレール37の上方で停止した後、前記ガイドレール37に沿って上プラテン34の直下まで往復移動可能である。
【0028】
排出ユニット3は、図1および図2に示すように、アンローダ50と、受取装置51と、マガジン52を収納した基板排出装置53と、を備えているとともに、制御装置54を配置してある。
【0029】
アンローダ50は、前記インローダ12と同様、基板4を保持するチャック爪を備えているとともに、使用済みフィルムを吸引,除去するための吸引保持装置を備えている。また、前記アンローダ50は、成形ユニット2の基板供給位置Eと排出ユニット3の位置Gとの間を往復移動可能であり、成形ユニット2の基板供給位置Eで成形品である基板4を中間金型22から受け取り、排出ユニット3の位置Gへ移動する。そして、前記アンローダ50は、位置Gまでガイドレール55を介して移動して来た受取装置51に成形品を載置する。前記受取装置51は、ガイドレール55を介して位置Hまで移動した後、成形済みの成形品である前記基板4を図示しないプッシャーで基板排出装置53のマガジン52に収納する。ついで、前記マガジン52が満杯になった場合には、前記マガジン52は位置Jまで移動する。
【0030】
前記構成の樹脂封止装置では、制御装置54によって供給ユニット1、成型ユニット2、排出ユニット3が制御される。
【0031】
次に、前述の構成からなる樹脂封止装置の動作について説明する。
(準備工程)
配列装置11を位置Cにおいて所定の温度に加熱しておく。
また、成形ユニット2において中間金型22の両側縁部を上クランプ部材46と下クランプ部47とで挟持し、上下駆動用シリンダ43を駆動することにより、上金型21の下面に前記中間金型22を当接させて保持しておく。一方、下金型23をフィルム供給ユニット30の直下に位置するフィルム供給位置Fまで移送しておく。
さらに、排出ユニット3において受取装置51を位置Gまで移送しておく。
【0032】
フィルム供給ユニット30は、図17ないし図23に示すように、第1,第2吸着プレート66,67に樹脂フィルム71をそれぞれ供給する。
すなわち、フィルムロール70からテンションローラ74およびガイドローラ75を介して引き出された樹脂フィルム71の先端縁部が、フィルム引き出しブロック80の引き出しアーム部85の吸着孔85aに吸着,保持されている(図17)。このとき、フィルムローラ用モータ72を制御することにより、また、テンションローラ74により、樹脂フィルム71が弛むことはない。
【0033】
そして、図12に示すように、引き出しブロック用モータ82、プーリ83a,83bおよびタイミングベルト84を介して引き出しブロック80をガイドレール81に沿ってスライド移動させる。これにより、図18に示すように、引き出しアーム部85に吸着,保持した樹脂フィルム71を図中の左側一杯まで引き出す。さらに、ガイドローラ用シリンダ76および引き出しアーム用シリンダ80bを駆動して、ガイドローラ75および引き出しアーム部85を上昇させる。ついで、第1,第2吸着プレート66,67の吸着孔66a,67aを介して樹脂フィルム71を吸着,保持した後、引き出しアーム部85の吸着,保持を解除する。さらに、引き出しアーム用シリンダ80bを駆動して前記引き出しアーム部85をガイドレール80aに沿って下降させ、ガイドローラ用シリンダ76を駆動してガイドローラ75を下降させる。その後、引き出しブロック用モータ82を駆動し、カッター86が第1吸着プレート66の切り欠き溝66bに対応する位置までガイドレール81に沿ってスライド移動する。そして、引き出しアーム部85を上昇させ(図19)、その吸着孔85aで前記樹脂フィルム71の中間部を吸着,保持する。ついで、カッター用シリンダ87を駆動し、カッター86を切り欠き溝66bに沿って移動させることにより、樹脂フィルム71を切断する。
【0034】
次に、第2吸着プレート67の吸着を解除した後、引き出しアーム部85およびガイドローラ75を下降し、引き出しアーム部85を第2吸着プレート67の一辺の下面直下に対応する位置まで移動させた後、上昇させることにより(図20)、樹脂フィルム71の先端縁部を第2吸着プレート67の吸着孔67aに吸着,保持させる。これにより、樹脂フィルム71を無駄なく使用できる。なお、このときテンションローラ74により、樹脂フィルム71が弛むことはない。
【0035】
そして、図21に図示するように、前記引き出しアーム部85の吸着を解除した後、引き出しブロック80を下降し、第2吸着プレート67の切り欠き溝67bにカッター86が対応する位置までガイドレール81に沿って前記引き出しブロック80を移動させる。ついで、前記引き出しアーム部85を上昇させ、カッター86を切り欠き溝67bに沿ってスライドさせることにより、樹脂フィルム71を切断する。このとき、引き出しアーム部85は樹脂フィルム71を吸着,保持した状態を維持しており、テンションローラ74により、樹脂フィルム71が弛むことはない。さらに、図22に図示するように、引き出しアーム部85をガイドローラ75近傍まで移動し、ガイドローラ用シリンダ76および引き出しアーム用シリンダ80bを駆動して、ガイドローラ75および引き出しアーム部85を下降する。
【0036】
(供給工程)
そして、図23に示すように、成形ユニット2のフィルム供給位置Fに下金型23が移動する。その後、押圧用シリンダ61を駆動し、押圧ピストン62を介して押圧プレート63および第1,第2吸着プレート66,67が下降し、前記下金型23の上面に樹脂フィルム71が当接する。このため、樹脂フィルム71が下金型23と第1,第2吸着プレート66,67とで挟持される。さらに、押圧ピストン62が伸張し、押圧プレート63が押圧されると、コイルバネ68が圧縮され、押し込みピン69が下金型23のポット23a内に押し込まれ、樹脂フィルム71を押し込んで樹脂溜まりとなる凹所を形成する。ついで、第1,第2吸着プレート66,67の樹脂フィルム71に対する吸着,保持が解除される一方、下金型23の吸着孔(図示せず)が樹脂フィルム71を吸着,保持する。その後、押圧ピストン62が引き上げられ、第1,第2吸着プレート66,67が樹脂フィルム71から分離することにより、樹脂フィルム71の供給作業が完了する。以後、同様な作業を繰り返すことにより、樹脂フィルム71が連続的に供給される。
【0037】
さらに、前記下金型23をガイドレール37に沿って上プラテン34の直下まで移動させる。ついで、上下駆動用シリンダ43を駆動し、連結バー42を下降させて中間金型22を下金型23に載置した後、クランプ用シリンダ44を駆動し、前記上クランプ部材46を開いて中間金型22の保持状態を解除する。このとき、中間金型22の貫通孔と下金型23のキャビティとがフィルム71を介してそれぞれ対向する。さらに、前記上下駆動用シリンダ43を駆動し、中間金型保持ユニット40を最下位まで下降する(図7)。
さらに、前記中間金型22を載置した前記下金型23をガイドレール37に沿って基板供給位置Eまで移送する。
【0038】
一方、図1に示すように、供給ユニット1において位置Aのマガジン14を位置Bまで移送し、位置Bのマガジン14に収納した基板4を図示しないプルユニットで1枚ずつ引き出し、位置Cに位置する配列装置11に載置する。そして、前記配列装置11で基板4を加熱しつつ、前記配列装置11をガイドレール15を介して位置Dまで移送する。
【0039】
位置Dに到達した前記配列装置11から基板4をインローダ12のチャック爪で保持し、樹脂供給装置13と共に、インローダ12を成形ユニット2の基板供給位置Eまで移送し、前記中間金型22の上方に位置決めする。
【0040】
そして、インローダ12を制御することにより、そのチャック爪を開いて中間金型22の上面の凹所に基板4を載置,位置決めすることにより、前記基板4に実装したLED等の電子部品(図示せず)を貫通孔内に位置決めする。したがって、前記電子部品は中間金型22の貫通孔内に位置するとともに、フィルム71を介して下金型23のキャビティに対向する。
【0041】
ついで、前記下金型23をガイドレール37に沿って上プラテン34の直下に搬送する。そして、上下駆動用シリンダ43を駆動して連結バー42を引き上げ、下クランプ部47で中間金型21の縁部を係止するとともに(図8)、クランプ用シリンダ44を駆動し、中間金型22の両側縁部を上クランプ部材46と下クランプ部47とで挟持する(図9)。さらに、前記上下駆動用シリンダ43を駆動し、中間金型保持ユニット40を上昇させることにより、上金型21の下面と中間金型22の上面とで基板4を挟持する(図10)。
【0042】
なお、下金型23に中間金型22を載置したままの状態で側方に移動できるだけでなく、前記中間金型22に基板4を載置できるので、上金型21と中間金型22との間に大きな作業空間を必要としない。このため、上下駆動用シリンダ43には比較的ストロークの短い、すなわち、小型のものを採用できるので、コスト削減が可能になるという利点がある。
【0043】
一方、下金型23だけをガイドレール37に沿って基板供給位置Eまで移送し、事前に移送されて待機する樹脂供給ユニット13の直下に位置決めした後、前記下金型23のポット部23aに液状樹脂を注入する。そして、前記下金型23をガイドレール37を介して上プラテン34の直下に移送し、前記下金型23を押し上げ、上金型21とで中間金型22を型締めする(図11)。このとき、基板4に実装した電子部品はフィルム71を介して下金型23のキャビティに対向する。
そして、金型セット20内の空気を吸引して真空状態にするとともに、下金型23のポット部23a内のプランジャを押し上げることにより、前記ポット部23a内の液状樹脂をフィルム71を介して押し上げる。これにより、液状樹脂はフィルム71の上面に沿って押し出され、ランナー,ゲートを通過して下金型23のキャビティに流入して充填される。このため、液状樹脂が各キャビティを被覆するフィルム71の一部を下金型23のキャビティ側に膨らませ、前記電子部品を樹脂封止する。
【0044】
そして、前記液状樹脂が硬化した後、下金型23を下降してゲートブレークを行い、再度、下金型23を上昇させて中間金型22に当接させる。そして、上クランプ部材46を開いた後、中間金型保持ユニット40を最下位まで下降させる一方、中間金型22および下金型23を同時に下降させる。そして、前記下金型23を中間金型22と一緒にガイドレール37に沿って基板供給位置Eまで移送する。
【0045】
なお、ゲートブレークする場合、中間金型22を上金型21に保持した状態で下金型23を下降させたとき、中間金型22は下金型23に大きな力で引っ張られる。しかし、中間金型22は下クランプ部47によって上金型21に保持されている。このため、クランプ用シリンダ44には大きな引張力が直接作用しないので、クランプ用シリンダ44を小型のものにでき、ユニットの小型化、コスト削減が可能になるという利点がある。
【0046】
ついで、成形ユニット2の基板供給位置Eに排出ユニット3のアンローダ50を移送し、前記中間金型22の上方に位置決めする。そして、前記アンローダ50のチャック爪で成形品である基板4の両側縁部を係合して持ち上げ、中間金型22から成形品を分離した後、前記アンローダ50を排出ユニット3の位置Gまで搬送する。さらに、位置Gに移送した成形品を、アンローダ50のチャック爪を開いて受取装置51に載置する。
【0047】
前記受取装置51に載置された基板4の成形品は、ガイドレール55を介して位置Hまで移動した後、基板排出装置53内のマガジン52に1枚ずつ収納される。そして、前記マガジン52が満杯になった後は前記マガジン52を位置Jまで移送し、空マガジン(図示せず)と交換する。
【0048】
一方、前記下金型23を中間金型22と同時に上プラテン34の直下まで移送した後、上下駆動用シリンダ43を駆動し、下クランプ部47を中間金型22の両側縁部に係止し、上クランプ部材46と下クランプ部47とで中間金型22を挟持して持ち上げる。その後、下金型23をガイドレール37に沿って基板供給位置Eまで移動し、下金型22の上面に残存する使用済みのフィルム71への吸着を解除するとともに、アンローダ50で吸引,保持する。ついで、前記アンローダ50を排出ユニット3側に移動し、成形ユニット2と排出ユニット3との境界近傍に設けた廃棄孔36から使用済みフィルム71を廃棄する。
【0049】
また、使用済みフィルム71を廃棄する間に、前記フィルム供給ユニット30と共に前記クリーナ31を左側に移動してガイドレール37の上部で停止した後、前記クリーナ31をガイドレール37に沿って上プラテン34の直下に移動し、前記クリーナ31の回転するブラシで中間金型22の下面を擦り、残留する樹脂カスを吸引,除去する。そして、フィルム供給ユニット30,クリーナ31を所定の位置に復帰させた後、前記下金型23をガイドレール37を介してフィルム供給位置Fに移動し、フィルム供給ユニット30から前述と同様に下金型23にフィルム71を供給する。その後、前記下金型23を上プラテン34の直下に移送し、上下駆動用シリンダ43を駆動し、中間金型22を下降させて前記下金型23に載置し、上クランプ部材46を開くとともに、中間金型保持ユニット40を最下位まで下降する。
以後、前述と同一の動作を繰り返すことにより、基板4に実装した電子部品を連続的に樹脂封止できる。
【0050】
本実施形態によれば、下金型23のガイドレール37に沿って行われる往復移動、および、中間金型保持ユニット40の上下駆動用シリンダ43による上下移動およびクランプ用シリンダ44による開閉動作によって成形作業を行うことができる。このため、構造が簡単で、複雑な制御を必要としないので、コストを低減できる。
また、上金型21と下金型23との間に大きな作業空間を必要としないので、背の低い小型の樹脂封止装置が得られるとともに、上金型と下金型との型開き量を小さくできる。この結果、金型の駆動機構を小型化でき、生産コストを削減できるとともに、上金型と下金型の開閉に要する時間が短縮され、樹脂封止装置全体のサイクルタイムを短縮できるので、生産効率が高いという利点がある。
【0051】
第2実施形態は、図24に図示するように、前述の実施形態が全自動の樹脂封止装置に適用した場合であるのに対し、半自動の樹脂封止装置に適用した場合である。
すなわち、下金型23にフィルム供給装置30でフィルムを自動供給するとともに、樹脂供給装置13で液状樹脂を自動供給する。一方、中間金型への基板4の供給、成形品の取り出し、使用済みフィルムの廃棄および金型の清掃は作業者が行う。なお、供給ユニット1の樹脂供給装置13は成形ユニット2の基板供給位置Eまで往復移動可能である。
他は前述の第1実施形態と同様であるので、同一部分に同一番号を附して説明を省略する。
【0052】
本実施形態によれば、設置面積が小さいとともに、多品種少量生産に適した樹脂封止装置が得られるという利点がある。
【0053】
第3実施形態は、図25に図示するように、2枚金型の樹脂封止装置に適用した場合である。
すなわち、4本のタイバー33で支持された上プラテン34の下面に上金型21を固定する一方、下金型23を水平方向および上下方向にスライド移動可能に配置してある。
【0054】
前記上金型21は、その下面に電子部品5を実装した基板4を吸着保持可能な構造としてある。一方、前記下金型23は、その上面に設けたキャビティ23bの隅部に吸着孔23cを設けてあるとともに、前記キャビティ23bの開口縁部にフィルム71の縁部を吸着保持するための吸着孔23dを設けてある。
所定の長さに切断されたフィルム71は前述の第1実施形態と同様、フィルム供給ユニット30で供給されるので、詳細な説明は省略する。
【0055】
本実施形態では、下金型23の吸着孔23c,23dでフィルム71を吸引することにより、フィルム71をキャビティ23bの内周面に密着させた後、ポット部23a(図23参照)に液状樹脂を供給する。ついで、下金型23を上昇させることにより、前記下金型23と前記上金型21とで基板4およびフィルム71を挟持した後、前記ポット部23a内の図示しないプランジャを突き出し、ポット部23a内の液状樹脂をフィルム71を介して押し上げる。これにより、前記液状樹脂は、フィルム71の上面に沿って押し出され、図示しないランナー、ゲートを通過し、前記キャビティ23b内に流入して充填,加圧され、前記電子部品5を樹脂封止する。そして、下金型23を下降し、樹脂封止された基板4をキャビティ23bから取り出し、個々に切断することにより、チップ化した電子部品5を使用できる。
【0056】
なお、樹脂封止作業は、前述の作業工程だけでなく、例えば、下金型23の吸着孔23c,23dでフィルム71を吸引することにより、フィルム71をキャビティ23bの内周面に密着させた後、前記キャビティ23bを被覆するフィルム71の上面に液状樹脂を供給する。ついで、下金型23を上昇させ、前記下金型23と前記上金型21とで基板4およびフィルム71を挟持することにより、前記電子部品5を樹脂封止してもよい。
【0057】
本実施形態によれば、下金型23が水平方向に移動することにより、フィルム供給ユニット30でフィルム71を直接、供給できる。このため、フィルム搬送機構が不要となり、構造,制御システムが簡単で小型の樹脂封止装置を得られるという利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明に係る樹脂封止装置は、前述の実施形態に限らず、他の基板に実装した電子部品を樹脂封止するものに適用できることは勿論である。
【符号の説明】
【0059】
E:基板供給位置
F:フィルム供給位置
1:供給ユニット
2:成形ユニット
3:排出ユニット
4:基板
5:電子部品
10:基板供給装置
11:配列装置
12:インローダ
13:樹脂供給装置
14:マガジン
20:金型セット
21:上金型
22:中間金型
23:下金型
23a:ポット部
23b:キャビティ
23c,23d:吸着孔
30:フィルム供給ユニット
31:クリーナ
32:下プラテン
34:上プラテン
37:ガイドレール
40:中間金型保持ユニット
41:取付板
42:連結バー
43:上下駆動用シリンダ
44:クランプ用シリンダ
45:ピストン
46:上クランプ部材
46a:係合爪
47:下クランプ部
47a:位置決めピン
50:アンローダ
51:受取装置
52:マガジン
53:基板排出装置
54:制御装置
55:ガイドレール
60:ベース
63:押圧プレート
66,67:第1,第2吸着プレート
66a,67a:吸着孔
66b,67b:切り欠き溝
69:押し込みピン
70:フィルムローラ
71:樹脂フィルム
74:テンションローラ
75:ガイドローラ
80:フィルム引き出しブロック
85:引き出しアーム部
85a:吸着孔
86:カッター
87:カッター用シリンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも上金型と下金型とを備え、前記上金型と前記下金型との間で基板およびフィルムを挟持するとともに、前記基板とフィルムとの間に充填した樹脂材料で基板に実装した電子部品を樹脂封止する樹脂封止装置であって、
前記下金型を、前記上金型に対向する成形位置と、前記上金型の一方側の側方に位置し、かつ、前記フィルムを供給するフィルム供給ユニットの直下に位置するフィルム供給位置と、前記上金型の他方側の側方に位置する基板供給位置とに移送する移送手段と、
前記下金型をフィルム供給位置に移送できるとともに、基板供給位置に移送できる制御手段と、
を備えたことを特徴とする樹脂封止装置。
【請求項2】
上金型と、貫通孔を有する中間金型と、前記上金型とで前記中間金型を挟持する下金型とを備え、前記上金型と前記中間金型とで電子部品を実装した基板を挟持するとともに、前記中間金型と前記下金型とでフィルムを挟持する一方、前記中間金型の貫通孔内に配置された前記電子部品を、前記中間金型と前記フィルムとの間に充填した樹脂材料で樹脂封止することを特徴とする請求項1に記載の樹脂封止装置。
【請求項3】
フィルム供給ユニットが、引き出した長尺な樹脂フィルムを吸着プレートの下面に吸着,保持し、かつ、所定の長さに切断して得た樹脂フィルムを、直下に移動してきた下金型の上面に供給することを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂封止装置。
【請求項4】
複数枚の吸着プレートを備えていることを特徴とする請求項3に記載の樹脂封止装置。
【請求項5】
基板がリードフレームであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の樹脂封止装置
【請求項6】
電子部品がLEDであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の樹脂封止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2013−84709(P2013−84709A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222722(P2011−222722)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(592028846)第一精工株式会社 (94)
【Fターム(参考)】