説明

樹脂材料、無端ベルト、ロール、画像定着装置、および画像形成装置

【課題】表面の傷を修復する特性が熱によって変化しにくい定着部材、転写部材およびそれを用いた画像形成装置を提供する。
【解決手段】基材2の表面に、ヒドロキシル基を有する側鎖を含むアクリル樹脂とイソシアネートとの重合体であるポリウレタンと、ポリイミドと、の反応物及び混合物の少なくとも一方を含む樹脂材料を表面層3として設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂材料、無端ベルト、ロール、画像定着装置、および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ポリイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂およびポリエーテルケトン樹脂から選択された樹脂中に、導電性無機微粉末および低表面エネルギー樹脂微粉末を分散してなる樹脂組成物より形成された中間転写体であって、該低表面エネルギー樹脂微粉末が、中間転写体の内部よりも表面に多く分散されていることを特徴とする中間転写体が開示されている。
【0003】
特許文献2には、ローラ状基材の外面に、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)と、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含有するフッ素樹脂混合物を形成してなる定着ローラが開示されている。
【0004】
特許文献3には、芯金と、この芯金の外周に塗布されたプライマー層と、このプライマー層の外周に塗布されたフッ素樹脂製のトップ層とを具備し、前記プライマー層及びトップ層の少なくとも一方には、ガラス粒子が混入されていることを特徴とする定着用ローラが開示されている。
【0005】
特許文献4には、アクリル樹脂とポリイソシアナートプレポリマーを必須とし、ポリラクトンポリオールを特定量含み、アクリル樹脂が有する短側鎖ヒドロキシル基と長側鎖ヒドロキシル基の比率が特定の範囲である塗料組成物が開示されている。
【0006】
特許文献5には、熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂と、熱可塑性樹脂を含有することを特徴とする硬化性粘着性樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−231684号公報
【特許文献2】特開平10−142990号公報
【特許文献3】特開2001−183935号公報
【特許文献4】特開2007−31690号公報
【特許文献5】特開平2−279710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、表面の傷を修復する特性が熱によって変化しにくい樹脂材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、以下の本発明により達成される。
すなわち請求項1に係る発明は、
ヒドロキシル基を有する側鎖を含むアクリル樹脂とイソシアネートとの重合体であるポリウレタンと、ポリイミドと、の反応物及び混合物の少なくとも一方を含む樹脂材料である。
【0010】
請求項2に係る発明は、
前記アクリル樹脂が、フッ素原子を有する側鎖を含む、請求項1に記載の樹脂材料である。
【0011】
請求項3に係る発明は、
前記ポリイミドが溶媒可溶性ポリイミドであり、前記反応物及び混合物の少なくとも一方が、前記ポリイミドの存在下において前記アクリル樹脂と前記イソシアネートとを重合して得られたものである、請求項1又は請求項2に記載の樹脂材料である。
【0012】
請求項4に係る発明は、
ベルト状の基材上に、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の樹脂材料を有する無端ベルトである。
【0013】
請求項5に係る発明は、
円筒状の基材上に、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の樹脂材料を有するロールである。
【0014】
請求項6に係る発明は、
第1の回転体と、
前記第1の回転体に接触して記録媒体を挟み込む挟込領域を形成する第2の回転体と、を有し、
前記第1の回転体および前記第2の回転体の少なくとも一方が、請求項4に記載の無端ベルトまたは請求項5に記載のロールである画像定着装置である。
【0015】
請求項7に係る発明は、
静電潜像保持体と、
前記静電潜像保持体表面上に静電潜像を形成する静電潜像形成装置と、
前記静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置と、
前記トナー像を記録媒体に転写する転写装置と、
前記記録媒体に前記トナー像を定着する請求項6に記載の画像定着装置と、
を備える画像形成装置である。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明によれば、前記ポリウレタンとポリイミドとの反応物及び混合物の少なくとも一方を含まず、前記ポリウレタンをそのまま含む場合に比べて、表面の傷を修復する特性が熱によって変化しにくい。
【0017】
請求項2に係る発明によれば、前記ポリウレタンとポリイミドとの反応物及び混合物の少なくとも一方を含まず、前記ポリウレタンをそのまま含む場合に比べて、表面の離型性が熱によって変化しにくい。
【0018】
請求項3に係る発明によれば、前記反応物及び混合物の少なくとも一方の代わりに、ポリイミドが存在しない状態でアクリル樹脂とイソシアネートとが重合されて得られたものを用いた場合に比べて、表面の傷を修復する特性が熱によって変化しにくい。
【0019】
請求項4及び請求項5に係る発明によれば、樹脂材料が前記ポリウレタンとポリイミドとの反応物及び混合物の少なくとも一方を含まず、前記ポリウレタンをそのまま含む場合に比べて、表面の傷を修復する特性が熱によって変化しにくい。
【0020】
請求項6に係る発明によれば、樹脂材料が前記ポリウレタンとポリイミドとの反応物及び混合物の少なくとも一方を含まず、前記ポリウレタンをそのまま含む場合に比べて、定着部材表面の傷が修復されやすくなる。
【0021】
請求項7に係る発明によれば、樹脂材料が前記ポリウレタンとポリイミドとの反応物及び混合物の少なくとも一方を含まず、前記ポリウレタンをそのまま含む場合に比べて、画像定着装置における部材表面の傷に起因する画像欠陥が生じにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施形態に係る無端ベルトの概略構成を示す斜視図である。
【図2】本実施形態に係る無端ベルトの断面図である。
【図3】本実施形態に係る無端ベルトを用いた画像形成装置を示す概略構成図である。
【図4】本実施形態に係る無端ベルトを用いた画像定着装置を示す概略構成図である。
【図5】本実施形態に係る無端ベルトを用いた他の画像定着装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[樹脂材料]
本実施形態に係る樹脂材料は、ヒドロキシル基を有する側鎖を含むアクリル樹脂とイソシアネートとの重合体であるポリウレタンと、ポリイミドと、の反応物及び混合物の少なくとも一方(以下、「ポリウレタン−ポリイミド材料」と称する場合がある。)を含むことを特徴とする。
本実施形態の樹脂材料は、上記構成であることにより、前記ポリウレタン−ポリイミド材料を含まず、前記ポリウレタンをそのまま含む場合に比べて、表面の傷を修復する特性が熱によって変化しにくい。その理由は定かではないが、以下のように推測される。
【0024】
ヒドロキシル基を有する側鎖を含むアクリル樹脂とイソシアネートとの重合体であるポリウレタンを含む樹脂材料は、特定の温度範囲において、樹脂材料の表面についた傷が修復される特性(自己修復性)が良好である。
しかしながら上記樹脂材料においては、特に上記ポリウレタンをそのまま含む場合、自己修復性が良好である上記温度範囲よりも高い温度下にさらすと、上記温度範囲における自己修復性が低下する場合がある。具体的には、例えば、上記温度範囲よりも高い温度下に樹脂材料をさらすことで、上記温度範囲のうち特に高温側における自己修復性が低下することにより、自己修復性が良好な温度範囲が狭くなってしまうことが考えられる。
【0025】
一方本実施形態の樹脂材料は、上記ポリウレタン−ポリイミド材料を含むものである。よって、樹脂材料が上記温度範囲よりも高い温度下にさらされた場合でも、上記ポリウレタンの成分の周囲に耐熱性の良好なポリイミドの成分が存在することで、上記ポリウレタンの成分の構造が変化しにくい結果、樹脂材料の自己修復性が変化しにくいものと推測される。
【0026】
本実施形態では、前記アクリル樹脂がフッ素原子を有する側鎖を含む形態であってもよい。前記アクリル樹脂がフッ素原子を有する側鎖を含む形態において、前記ポリウレタン−ポリイミド材料を含むことにより、前記ポリウレタンをそのまま含む場合に比べて、表面の離型性が熱によって変化しにくい。その理由は定かではないが、以下のように推測される。
【0027】
ヒドロキシル基を有する側鎖及びフッ素原子を有する側鎖を含むアクリル樹脂とイソシアネートとの重合体であるポリウレタンを含む樹脂材料は、上記自己修復性が良好であることに加えて、樹脂材料表面の離型性も良好である。
しかしながら上記樹脂材料においては、特に上記ポリウレタンをそのまま含む場合、自己修復性が良好である上記温度範囲よりも高い温度下にさらすと、その離型性が低下する場合がある。具体的には、例えば、上記温度範囲よりも高い温度下に樹脂材料をさらすことで、樹脂材料表面における接触角が下がってしまうことが考えられる。
【0028】
一方本実施形態の樹脂材料は、上記と同様に、上記ポリウレタン−ポリイミド材料を含むものであるため、樹脂材料が上記温度範囲よりも高い温度下にさらされた場合でも、上記ポリウレタンの成分の構造が変化しにくく、樹脂材料表面の離型性が変化しにくいものと推測される。
【0029】
上記本実施形態の樹脂材料としては、例えば、前記ポリイミドが溶媒可溶性ポリイミドであり、前記ポリウレタン−ポリイミド材料が、前記ポリイミドの存在下において前記アクリル樹脂と前記イソシアネートとが重合して得られたものが挙げられる。上記方法により得られた前記ポリウレタン−ポリイミド材料を用いることにより、ポリイミドが存在しない状態でアクリル樹脂とイソシアネートとが重合されたもの(例えば別々に重合されたポリウレタンとポリイミドとを後から混合したもの等)を用いる場合に比べて、表面の傷を修復する特性が熱によって変化しにくい。
【0030】
その理由は定かではないが、前記ポリウレタン−ポリイミド材料が上記方法により得られたものであることにより、例えばポリウレタンの架橋部にポリイミドの成分が入り込むなど、ポリウレタンの成分の周囲に耐熱性の良好なポリイミドの成分が存在しやすくなると考えられる。そのため、上記ポリウレタンの成分の構造が熱によって変化しにくくなり、樹脂材料の自己修復性も熱によって変化しにくいものと推測される。
以下、前記ポリウレタン−ポリイミド材料を構成する成分について説明する。
【0031】
<ポリウレタン>
前記ポリウレタンは、上記の通り、ヒドロキシル基を有する側鎖(以下「側鎖ヒドロキシル基」と称する場合がある)を含むアクリル樹脂とイソシアネートとの重合体であり、上記アクリル樹脂に由来する構成単位及び上記イソシアネートに由来する構成単位の他に、その他の添加剤に由来する構成単位を含んでもよい。
【0032】
・アクリル樹脂
上記アクリル樹脂は、少なくとも側鎖ヒドロキシル基を有するものである。そして上記アクリル樹脂の製造には、少なくともヒドロキシル基を有するモノマー及びカルボキシ基を有するモノマーの少なくとも一種が用いられ、その他に必要に応じてヒドロキシル基を有さないモノマーを併用してもよい。
【0033】
ヒドロキシル基を有するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ) アクリル酸ヒドロキシブチル、N−メチロールアクリルアミン等のヒドロキシ基を有するエチレン性モノマー等が挙げられる。
カルボキシ基を有するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸等のカルボキシ基を有するエチレン性モノマーが挙げられる。
【0034】
ヒドロキシル基を有さないモノマーとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸n−ドデシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル等のエチレン性モノマーが挙げられる。
【0035】
尚、アクリル樹脂としては、炭素数が10以上である側鎖ヒドロキシル基(以下「長側鎖ヒドロキシル基」と称する場合がある)を含むものであってもよい。長側鎖ヒドロキシル基を含むアクリル樹脂の製造に用いるモノマーとしては、例えば、3モル以上5モル以下のε−カプロラクトンを1モルの(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチルに付加したもの等が挙げられる。
【0036】
アクリル樹脂は、上記の通り、側鎖ヒドロキシル基に加えて、フッ素原子を有する側鎖をさらに含むアクリル樹脂(以下「フッ素化アクリル樹脂」と称する場合がある)であってもよい。フッ素化アクリル樹脂の製造においては、ヒドロキシル基を有するモノマー及びカルボキシ基を有するモノマーの少なくとも一種と、フッ素原子を有するモノマーと、が用いられ、その他に必要に応じてヒドロキシル基及びフッ素原子を有さないモノマーを併用してもよい。
【0037】
フッ素原子を有するモノマーは、フッ素原子を含むものであれば特に限定されない。フッ素原子を有するモノマーに由来する構成単位としては、例えば側鎖の炭素数が1以上20以下のものが挙げられ、側鎖の炭素数が2以上10以下の範囲であってもよい。またフッ素原子を有するモノマーに由来する構成単位の側鎖における炭素鎖は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。
フッ素原子を有するモノマー1分子に含まれるフッ素原子数は特に限定されないが、例えば1以上40以下が挙げられ、3以上30以下であってもよく、5以上20以下であってもよい。
【0038】
フッ素原子を有するモノマーの具体例としては、例えば、2−(パーフルオロブチル)エチルアクリレート、2−(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレート、ヘキサフルオロ−2−プロピルアクリレート、ヘプタフルオロ−2−プロピルアクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルアクリレート、1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチルアクリレート、2−(パーフルオロブチル)エチルメタクリレート、2−(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート、ヘキサフルオロ−2−プロピルアクリレート、パーフルオロヘキシルエチレン等が挙げられる。
フッ素化アクリル樹脂中を構成する構成単位のうち、フッ素原子を有するモノマーに由来する構成単位の含有量としては、例えば0.1以上0.7以下(モル比)が挙げられ、0.2以上0.5以下(モル比)であってもよい。
【0039】
上記アクリル樹脂の合成方法としては、例えば、前述のモノマーを混合し、ラジカル重合やイオン重合等を行った後、精製する方法が挙げられる。
アクリル樹脂は1種のみ用いてもよいし2種以上用いてもよい。
【0040】
・イソシアネート
前記イソシアネートは、前記アクリル樹脂同士、又は後述する添加剤を用いる場合は前記アクリル樹脂と添加剤若しくは添加剤同士、を架橋する架橋剤として機能する。
イソシアネートとしては、特に制限されるものではないが、例えば、メチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が挙げられる。またイソシアネートは1種のみであってもよいし2種以上であってもよい。
尚、上記イソシアネートの添加量としては、添加されるイソシアネート基のモル数(C)が、前記アクリル樹脂のヒドロキシル基のモル数と後述する添加剤のヒドロキシル基のモル数との合計モル数に対し、0.5倍量以上3倍量以下の範囲が挙げられる。
【0041】
・添加剤
添加剤としては、例えば、複数のヒドロキシル基を有するポリオールが挙げられる。ポリオールは特に限定されないが、例えば、複数のヒドロキシル基を有し且つその全てのヒドロキシル基同士が炭素数(ヒドロキシル基同士を結ぶ直鎖の部分における炭素数)6以上の鎖によって連結されるポリオール(以下「長鎖ポリオール」と称する場合がある)や、フッ素原子を有するポリオール(以下「フッ素化ポリオール」と称する場合がある)が挙げられる。
【0042】
長鎖ポリオールの具体例としては、例えば、下記一般式(1)で表される化合物等の2官能ポリカプロラクトンジオール類、下記一般式(2)で表される化合物等の3官能ポリカプロラクトントリオール類、その他4官能ポリカプロラクトンポリオール等が挙げられる。長鎖ポリオールは1種のみでもよいし2種以上であってもよい。
【0043】
【化1】




【0044】
(式(1)中、Rは、C、COC、C(CH(CHのいずれかであり、mおよびnは4以上35以下の整数である。)
【0045】
【化2】




【0046】
(式(2)中、Rは、CHCHCH、CHC(CH、CHCHC(CHのいずれかであり、l+m+nは3以上30以下の整数である。)
【0047】
前記長鎖ポリオールとしては、官能基数が2以上5以下のものが挙げられ、官能基数2以上3以下であってもよい。
【0048】
フッ素化ポリオールは、例えば、炭素数1以上20以下のものが挙げられ、フッ素化ポリオールの炭素鎖は直鎖状であっても分岐状であってもよい。
フッ素化ポリオールとしては、例えば下記一般式に示される化合物が挙げられる。
一般式 : HO−CH−(CF−CH−OH
ここで上記一般式中、aは1以上20以下の整数を表す。
またフッ素化ポリオールの具体例としては、例えば、1H,1H,9H,9H−Perfluoro−1,9−nonanediol,Fluorinated tetraethylene glycol,1H,1H,8H,8H−Perfluoro−1,8−octanediol等が挙げられる。
【0049】
上記添加剤は、1種のみ用いてもよく、2種以上併用してもよい。
上記添加剤の添加量としては、例えば、重合に用いられる全ての前記アクリル樹脂に含有されるヒドロキシル基の総モル量(A)と、重合に用いられる全ての添加剤に含有されるヒドロキシル基の総モル量(B)との比率(B/A)が0.1以上10以下となる量が挙げられ、1以上4以下となる量であってもよい。
【0050】
<ポリイミド>
上記ポリイミドは、イミド結合を有するものであれば特に限定されず、例えば、テトラカルボン酸二無水物と、ジアミンまたはトリアミン化合物と、が溶媒中で重合して得られるポリアミック酸を前駆体とし、そのポリアミック酸がイミド化して得られたものが挙げられる。
ポリイミドとしては、例えば、上記のように溶媒可溶性ポリイミドが挙げられる。溶媒可溶性ポリイミドとしては、例えば、原料モノマーの分子構造及び重合後のポリマー骨格に、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル結合、ビスフェノールA構造、フルオレン構造等の屈曲構造、又は極性基(例えばカルボキシル基、ヒドロキシ基等)の導入、分岐構造などの導入により、ポリマー分子の構造対称性を下げ、ポリイミド化しても溶媒に溶解するようにした材料が挙げられる。
なお、上記溶媒可溶性ポリイミドとは、後述する有機極性溶媒100質量部に対して、10質量部以上100質量部以下溶解するポリイミド樹脂のことを意味する。
【0051】
・テトラカルボン酸二無水物
上記テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、脂肪族環状構造をもつテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
脂肪族環状構造をもつテトラカルボン酸二無水物としては、具体的には、例えば、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシノルボナン−2−酢酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、等が挙げられる。
【0052】
また、上記テトラカルボン酸二無水物として、分子中に屈曲構造を有する芳香族テトラカルボン酸無水物を使用してもよい。
分子中に屈曲構造を有する芳香族テトラカルボン酸無水物としては、具体的には、例えば、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、ビス3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、等が挙げられる。
これらのテトラカルボン酸二無水物は、単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0053】
・ジアミンまたはトリアミン化合物
ジアミンまたはトリアミン化合物としては、例えば、芳香族系ジアミンまたはトリアミン化合物、脂肪族系ジアミンまたはトリアミン化合物が挙げられる。また、カルボキシル基、ヒドロキシ基などの極性基を含んでも良い。
芳香族系ジアミンまたはトリアミン化合物としては、具体的には、例えば、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジクロロベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、1,5−ジアミノナフタレン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,3’−ジメチル4,4’−ビフェニルジアミン、3,3’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、2,4−ビス(β−アミノ第三ブチル)トルエン、ビス(p−β−アミノ−第三ブチルフェニル)エーテル、ビス(p−β−メチル−δ−アミノフェニル)ベンゼン、ビス−p−(1,1−ジメチル−5−アミノ−ベンチル)ベンゼン、1−イソプロピル−2,4−m−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、3,5−ジアミノ安息香酸、3,3‘−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノフフェニルメタン、2,4,4’−ビフェニルトリアミン、ピリジン−2,3,6−トリアミン、1,3,5−トリアミノベンゼン等が挙げられる。
【0054】
脂肪族ジアミンまたはトリアミン化合物としては、例えば、1,1−メタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、4,4−ジアミノヘプタメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、イソフォロンジアミン、テトラヒドロジシクロペンタジエニレンジアミン、ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダニレンジメチレンジアミン、トリシクロ[6,2,1,02.7]−ウンデシレンジメチルジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、ペンタン−1,2,5−トリアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン等の脂肪族ジアミンまたはトリアミン及び脂環式ジアミン等が挙げられる。
上記ジアミンまたはトリアミン化合物は、単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0055】
・ポリイミドの合成
ポリイミドの合成は、先に例示したテトラカルボン酸二無水物と、ジアミンまたはトリアミン化合物とを等当量溶媒中で反応させることで得られるポリアミック酸を、加熱処理等によって脱水閉環反応させてイミド化処理することで得られる。
【0056】
上記溶媒としては、例えば、溶媒可溶性ポリイミド樹脂を溶解させる溶媒が挙げられ、具体的には、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、及びN,N−ジメチルホルムアミドの少なくとも1種を50質量%以上含む溶媒が挙げられる。
その他溶媒(すなわち、前記N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、及びN,N−ジメチルホルムアミドの少なくとも1種と混合される溶媒)としては、例えば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒や、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール溶媒や、メチルエチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒が挙げられる。
【0057】
上記イミド化処理としては、例えば熱イミド化方法及び化学イミド化方法が挙げられる。
熱イミド化方法としては、例えば、ポリアミック酸溶液を100℃から250℃に加熱する方法が挙げられる。
一方、化学イミド化方法としては、例えば、ポリアミック酸溶液に3級アミンなどの触媒と、無水酢酸等の脱水剤を添加する方法が挙げられる。上記化学イミド化方法を用いる場合、反応は室温(例えば25℃)でも進行するが、化学反応促進のため、60℃から150℃で反応を行ってもよい。また反応後、触媒及び脱水剤を除去してもよいが、そのまま共存させたまま使用しても良い。触媒及び脱水剤を除去する方法としては、例えば、反応液を減圧・加熱して除去する方法や、反応液を貧溶媒中に加えてポリイミド樹脂を再沈殿させて除去する方法が挙げられる。
【0058】
<ポリウレタン−ポリイミド材料の製造方法>
ポリウレタン−ポリイミド材料の製造方法としては、例えば、ポリイミドの存在下において前記アクリル樹脂と前記イソシアネートと必要に応じて前記添加剤とを重合してウレタン結合を形成し、ポリウレタン−ポリイミド材料を得る方法が挙げられる。
具体的には、例えば、ポリイミドとして前記溶媒可溶性ポリイミドを用い、溶媒可溶性ポリイミドが溶媒に溶解した溶媒可溶性ポリイミド溶液中に、ポリウレタンの原料である前記アクリル樹脂、前記イソシアネート、及び必要に応じて前記添加剤を加えて混合して混合溶液を調整する工程と、得られた混合溶液を必要に応じて減圧下で脱泡したのち、基材上に塗布する工程と、基材(例えば厚みが90μmのポリイミドのフィルム)の表面に塗布された状態の前記混合溶液を加熱(例えば80℃で60分、160℃で1時間加温)する加熱工程と、を有するポリウレタン−ポリイミド材料の製造方法が挙げられる。
【0059】
上記ポリウレタン−ポリイミド材料の製造におけるポリイミドの添加量としては、例えば、前記アクリル樹脂100質量部に対し、0.1質量部以上100質量部以下の範囲が挙げられ、1質量部以上60質量部以下であってもよく、5質量部以上50質量部以下であってもよい。
【0060】
上記加熱工程における加熱温度及び加熱時間は、前記アクリル樹脂と前記イソシアネートと必要に応じて添加される添加剤とが重合してウレタン結合が形成されれば特に限定されず、用いる原料によって選択される。なお、加熱温度としては、例えば50℃以上250℃以下の範囲が挙げられ、加熱時間としては、例えば30分以上400分以下の範囲が挙げられる。上記加熱工程においては、上記のように異なる温度で2段階以上の段階を経て加熱を行ってもよい。
【0061】
<ポリウレタン−ポリイミド材料の特性>
・弾性率、戻り率、マルテンス硬度
本実施形態に係る樹脂材料の弾性率は、高い数値を得られる方が傷の修復速度が速く、例えば添加するポリオールの構造、量、架橋剤の種類などを制御することにより調整され、例えば50%以上100%以下の範囲が挙げられる。
【0062】
また、本実施形態に係る樹脂材料の戻り率は、上記樹脂材料の自己修復性(応力によってできた歪を応力の除荷時に復元する性質、即ち傷の修復の度合い)を示す指標であり、高い数値を得られる方が、自己修復性が高い。尚、上記戻り率は、側鎖ヒドロキシル基の炭素数及び量、添加するポリオールの炭素数及び添加量、並びに架橋剤(イソシアネート)の種類等を制御することにより調整される。即ち、炭素数の大きい側鎖ヒドロキシル基の量を多くし、且つ、ポリオールの量を多くすることによって戻り率は大きくなる傾向にあり、一方ポリオールの添加量を減らすことによって戻り率は小さくなる傾向にある。本実施形態の樹脂材料における戻り率としては、例えば80%以上100%以下の範囲が挙げられる。
【0063】
本実施形態に係る樹脂材料のマルテンス硬度は、利用用途にもよるが、例えば1N/mm以上40N/mm以下が挙げられ、2N/mm以上20N/mm以下であってもよい。なお、マルテンス硬度が低い樹脂材料の方が、傷を修復しやすい傾向がある。
尚、上記マルテンス硬度は、側鎖ヒドロキシル基の炭素数及び量、ポリオールの炭素数及び添加量、並びに架橋剤(イソシアネート)の種類を制御することにより調整される。炭素数の大きい側鎖ヒドロキシル基の量を多くすることによってマルテンス硬度は小さくなる傾向にある。
【0064】
・弾性率、戻り率、及びマルテンス硬度の測定方法
測定装置としてフィッシャースコープHM2000(フィッシャー社製)を用い、ポリイミドフィルムに塗布し重合して形成したサンプル樹脂層を、スライドガラスに接着剤で固定し、上記測定装置にセットする。サンプル樹脂層に室温(23℃)で0.5mNまで15秒間かけて荷重をかけていき0.5mNで5秒間保持する。その際の最大変位を(h1)とする。その後、15秒かけて0.005mNまで除荷していき、0.005mNで1分間保持したときの変位を(h2)として、戻り率〔(h1−h2)/h1〕を計算する。また、この際の荷重変位曲線から、マルテンス硬度と弾性率が求められる。
【0065】
・接触角
本実施形態に係る樹脂材料の接触角は、50度以上150度以下が挙げられ、70度以上150度以下であってもよい。上記接触角は、前記アクリル樹脂および前記長鎖ポリオールに含有されるフッ素原子の量を制御することにより調整される。
【0066】
・接触角の測定方法
上記接触角は、樹脂材料の固体表面に注射器で5μLの水滴をおとし、接触角計(協和界面科学社製、型番:CA−S−ルガタ)を用いて、樹脂材料と水の接触面における接触角を測定する。
【0067】
以上説明したポリウレタン−ポリイミド材料は、上記の通り、ポリウレタンとポリイミドとの反応物及び混合物の少なくとも一方を含むものであるが、樹脂材料がポリウレタンとポリイミドとの反応物を含むものが、より熱による特性の変化が起こりにくいと考えられる。
樹脂材料に含まれる上記ポリウレタン−ポリイミド材料が上記反応物を含むかどうか調べる方法としては、例えば、赤外分光法、固体NMR法などによりウレタン結合およびイミド結合を分析する方法が挙げられる。
【0068】
<樹脂材料の用途>
上記のようにして得られる本実施形態の樹脂材料は、例えば、画像形成装置に用いられる無端ベルトやロール、プラテン、感光体等の表面保護層として用いられる。本実施形態の樹脂材料は、特に、画像形成装置に用いられる定着装置の定着ベルトや定着ロール、転写ベルトなどの表面保護層として用いられる。
以下、本実施形態に係る樹脂材料を用いた部材及び装置について説明する。
【0069】
[無端ベルト]
図1は、本実施形態に係る無端ベルトを示す斜視図(一部、断面で表わしている)であり、図2は、図1において矢印Aの方向から見た、無端ベルトの端面図である。
図1および図2に示すように、本実施形態の無端ベルト1は、基材2と、基材2の表面に積層された表面層3と、を有する無端状のベルトである。
尚、上記表面層3としては、前述の本実施形態に係る樹脂材料が適用される。
【0070】
無端ベルト1の用途としては、例えば、画像形成装置内における定着ベルト、転写ベルト、記録媒体搬送ベルト等が挙げられる。
【0071】
以下、無端ベルト1を画像形成装置内における定着ベルトとして用いる場合について説明する。
基材2に用いられる材質としては、耐熱性の材料が挙げられ、具体的には、公知の各種プラスチック材料および金属材料のものの中から選択して使用される。
【0072】
プラスチック材料のなかでは一般にエンジニアリングプラスチックと呼ばれるものが適しており、例えばフッソ樹脂、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリサルフォン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルイミド(PEI)、全芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)などが挙げられる。また、この中でも機械的強度、耐熱性、耐摩耗性、耐薬品性等に優れる熱硬化性ポリイミド、熱可塑性ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、フッ素樹脂などが挙げられる。
【0073】
また、基材2に用いられる金属材料としては、特に制限は無く、各種金属や合金材料が使用され、例えばSUS、ニッケル、銅、アルミ、鉄などが好適に使用される。また、前記耐熱性樹脂や前記金属材料を複数積層してもよい。
【0074】
以下、無端ベルト1を中間転写ベルトまたは記録媒体搬送ベルトとして用いる場合について説明する。
【0075】
基材2に用いる素材としては、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。なお、基材は環状(無端状)であればつなぎ目があってもなくてもよく、また基材2の厚さとしては、例えば0.02から0.2mmが挙げられる。
【0076】
無端ベルト1を画像形成装置の中間転写ベルトや記録媒体搬送ベルトとして用いる場合、例えば、1×10Ω/□から1×1014Ω/□の範囲に表面抵抗率を、1×10から1×1013Ωcmの範囲に体積抵抗率を制御する。そのため前記のように必要に応じて、基材2や表面層3に、導電剤として、ケッチェンブラック、アセチレンブラックなどのカーボンブラック、グラファイト、アルミニウム、ニッケル、銅合金などの金属または合金、酸化スズ、酸化亜鉛、チタン酸カリウム、酸化スズ−酸化インジウムまたは酸化スズ−酸化アンチモン複合酸化物などの金属酸化物、ポリアニリン、ポリピロール、ポリサルフォン、ポリアセチレンなどの導電性ポリマーなどを添加してもよい(ここで、前記ポリマーにおける「導電性」とは体積抵抗率が10Ω・cm未満を意味する)。これら導電剤は、単独または2種以上が併用して使用される。
【0077】
ここで、上記表面抵抗率および体積抵抗率は、(株)ダイヤインスツルメント製ハイレスタUPMCP−450型URプローブを用いて、22℃、55%RHの環境下で、JIS−K6911に従い測定される。
【0078】
定着用途の場合において、無端ベルト1は、基材2と表面層3との間に弾性層を含んでもよい。弾性層の材料としては、例えば、各種ゴム材料が用いられる。各種ゴム材料としては、例えば、ウレタンゴム、エチレン・プロピレンゴム(EPM)、シリコーンゴム、フッ素ゴム(FKM)などが挙げられ、特に耐熱性、加工性に優れたシリコーンゴムが挙げられる。該シリコーンゴムとしては、例えば、RTVシリコーンゴム、HTVシリコーンゴムなどが挙げられ、具体的には、ポリジメチルシリコーンゴム(MQ)、メチルビニルシリコーンゴム(VMQ)、メチルフェニルシリコーンゴム(PMQ)、フルオロシリコーンゴム(FVMQ)などが挙げられる。
【0079】
電磁誘導方式の定着装置における定着ベルトとして無端ベルト1を用いる場合は、基材2と表面層3との間に、発熱層を設けてもよい。
発熱層に用いられる材料としては、例えば非磁性金属が挙げられ、具体的には、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、亜鉛、錫、鉛、ビスマス、ベリリュウム、アンチモン、およびこれらの合金(これらを含む合金)等の金属材料が挙げられる。
発熱層の膜厚としては、例えば5から20μmの範囲が挙げられ、7から15μmの範囲であってもよく、8から12μmの範囲であってもよい。
【0080】
[ロール]
ついで、本実施形態に係るロールについて説明する。本実施形態のロールは、基材と、基材の表面に積層された表面層と、を有する円筒状のロールである。
尚、上記表面層としては、前述の本実施形態に係る樹脂材料が適用される。
【0081】
上記円筒状のロールの用途としては、例えば、画像形成装置内における定着ロール、記録媒体搬送ロール等が挙げられる。
【0082】
以下、円筒状ロールを画像形成装置内における定着ロールとして用いる場合について説明する。
図4に示す定着部材としての定着ロール610としては、その形状、構造、大きさ等について特に制限はなく、円筒状のコア611上に表面層613を備えてなる。また、図4に示す通り、コア611と表面層613との間に弾性層612を有していてもよい。
【0083】
円筒状のコア611の材質としては、例えば、アルミニウム(例えば、A−5052材)、SUS、鉄、銅等の金属、合金、セラミックス、FRMなどが挙げられる。本実施形態の定着装置72では外径φ25mm、肉厚0.5mm、長さ360mmの円筒体で構成されている。
【0084】
弾性層612の材質としては、公知の材質の中から選択されるが、耐熱性の高い弾性体が挙げられ、特にゴム硬度が15から45°(JIS−A)程度のゴム、エラストマー等が挙げられ、具体的には、例えば、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどが挙げられる。
【0085】
本実施形態においては、これらの材質の中でも、表面張力が小さく、弾性に優れるものとしてシリコーンゴムが挙げられる。該シリコーンゴムとしては、例えば、RTVシリコーンゴム、HTVシリコーンゴムなどが挙げられ、具体的には、ポリジメチルシリコーンゴム(MQ)、メチルビニルシリコーンゴム(VMQ)、メチルフェニルシリコーンゴム(PMQ)、フルオロシリコーンゴム(FVMQ)などが挙げられる。
【0086】
なお、弾性層612の厚みとしては、例えば3mm以下が挙げられ、0.5から1.5mmの範囲であってもよい。第1実施形態の定着装置72では、ゴム硬度が35°(JIS−A)のHTVシリコーンゴムを72μmの厚さでコアに被覆している。
【0087】
表面層613の厚みとしては、例えば5から50μmが挙げられ、10から30μmであってもよい。
【0088】
定着ロール610を加熱する加熱源としては、上述のように、例えばハロゲンランプ660が用いられ、上記コア611の内部に収容する形状、構造のものであれば特に制限はなく、目的に応じて選択される。ハロゲンランプ660により加熱された定着ロール610の表面温度は、定着ロール610に設けられた感温素子690により計測され、制御手段によりその温度が制御される。感温素子690としては、特に制限はなく、例えば、サーミスタ、温度センサなどが挙げられる。
【0089】
[画像形成装置、画像定着装置]
<第1実施形態>
次に、本実施形態の無端ベルトおよび本実施形態のロールを用いた第1実施形態の画像形成装置について説明する。図3は、本実施形態に係る無端ベルトを定着装置の加圧ベルトとして備え、且つ本実施形態に係るロールを定着装置の定着ロールとして備えたタンデム式の、画像形成装置の要部を説明する模試図である。
【0090】
具体的には、画像形成装置101は、感光体79(静電潜像保持体)と、感光体79の表面を帯電する帯電ロール83と、感光体79の表面を露光し静電潜像を形成するレーザー発生装置78(静電潜像形成手段)と、感光体79表面に形成された潜像を、現像剤を用いて現像し、トナー像を形成する現像器85(現像手段)と、現像器85により形成されたトナー像が感光体79から転写される中間転写ベルト86(中間転写体)と、トナー像を中間転写ベルト86に転写する1次転写ロール80(一次転写手段)と、感光体79に付着したトナーやゴミ等を除去する感光体清掃部材84と、中間転写ベルト86上のトナー像を記録媒体に転写する2次転写ロール75(二次転写手段)と、記録媒体上のトナー像を定着する定着装置72(定着手段)と、を含んで構成されている。感光体79と1次転写ロール80は、図3に示すとおり感光体79直上に配置していてもよく、感光体79直上からずれた位置に配置していてもよい。
【0091】
さらに、図3に示す画像形成装置101の構成について詳細に説明する。
画像形成装置101においては、感光体79の周囲に、反時計回りに帯電ロール83、現像器85、中間転写ベルト86を介して配置された1次転写ロール80、感光体清掃部材84が配置され、これら1組の部材が、1つの色に対応した現像ユニットを形成している。また、この現像ユニット毎に、現像器85に現像剤を補充するトナーカートリッジ71がそれぞれ設けられており、各現像ユニットの感光体79に対して、帯電ロール83の(感光体79の回転方向)下流側であって現像器85の上流側の感光体79表面に画像情報に応じたレーザー光を照射するレーザー発生装置78が設けられている。
【0092】
4つの色(例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)に対応した4つの現像ユニットは、画像形成装置101内において水平方向に直列に配置されており、4つの現像ユニットの感光体79と1次転写ロール80との転写領域を挿通するように中間転写ベルト86が設けられている。中間転写ベルト86は、その内面側に以下の順序で反時計回りに設けられた、支持ロール73、支持ロール74、および駆動ロール81により張架され、ベルト張架装置90を形成している。なお、4つの1次転写ロールは支持ロール73の(中間転写ベルト86の回転方向)下流側であって支持ロール74の上流側に位置する。また、中間転写ベルト86を介して駆動ロール81の反対側には中間転写ベルト86の外周面を清掃する転写清掃部材82が駆動ロール81に対して接触するように設けられている。
【0093】
また、中間転写ベルト86を介して支持ロール73の反対側には用紙供給部77から用紙経路76を経由して搬送される記録用紙の表面に、中間転写ベルト86の外周面に形成されたトナー像を転写するための2次転写ロール75が、支持ロール73に対して接触するように設けられている。
【0094】
また、画像形成装置101の底部には記録媒体を収容する用紙供給部77が設けられ、用紙供給部77から用紙経路76を経由して2次転写部を構成する支持ロール73と2次転写ロール75との接触部を通過するように、記録媒体が供給される。この接触部を通過した記録媒体は、更に定着装置72の接触部を挿通するように不図示の搬送手段により搬送され、最終的に画像形成装置101の外へと排出される。
【0095】
次に、図3に示す画像形成装置101を用いた画像形成方法について説明する。トナー像の形成は各現像ユニット毎に行なわれ、帯電ロール83により反時計方向に回転する感光体79表面を帯電した後に、レーザー発生装置78(露光装置)により帯電された感光体79表面に潜像(静電潜像)を形成し、次に、この潜像を現像器85から供給される現像剤により現像してトナー像を形成し、1次転写ロール80と感光体79との接触部に運ばれたトナー像を矢印C方向に回転する中間転写ベルト86の外周面に転写する。なお、トナー像を転写した後の感光体79は、その表面に付着したトナーやゴミ等が感光体清掃部材84により清掃され、次のトナー像の形成に備える。
【0096】
各色の現像ユニット毎に現像されたトナー像は、画像情報に対応するように中間転写ベルト86の外周面上に順次重ね合わされた状態で、2次転写部に運ばれ2次転写ロール75により、用紙供給部77から用紙経路76を経由して搬送されてきた記録用紙表面に転写される。トナー像が転写された記録用紙は、更に定着装置72の接触部を通過する際に加圧加熱されることにより定着され、記録媒体表面に画像が形成された後、画像形成装置外へと排出される。
【0097】
―定着装置(画像定着装置)―
図4は、本実施形態に係る画像形成装置101内に設けられた定着装置72の概略構成図である。図4に示す定着装置72は、回転駆動する回転体としての定着ロール610と、無端ベルト620(加圧ベルト)と、無端ベルト620を介して定着ロール610を加圧する圧力部材である圧力パッド640とを備えて構成されている。なお、圧力パッド640は、無端ベルト620と定着ロール610とが相対的に加圧されていればよい。従って、無端ベルト620側が定着ロール610に加圧されても良く、定着ロール610側が無端ベルト620に加圧されても良い。
【0098】
定着ロール610の内部には、挟込領域において未定着トナー像を加熱する加熱手段の一例としてのハロゲンランプ660が配設されている。加熱手段としては、ハロゲンランプに限られず、発熱する他の発熱部材を用いてもよい。
【0099】
一方、定着ロール610の表面には感温素子690が接触して配置されている。この感温素子690による温度計測値に基づいて、ハロゲンランプ660の点灯が制御され、定着ロール610の表面温度が設定温度(例えば、150℃)に維持される。
【0100】
無端ベルト620は、内部に配置された圧力パッド640とベルト走行ガイド630と、図示しないエッジガイドによって回転自在に支持されている。そして、挟込領域Nにおいて定着ロール610に対して加圧された状態で接触して配置されている。
【0101】
圧力パッド640は、無端ベルト620の内側において、無端ベルト620を介して定着ロール610に加圧される状態で配置され、定着ロール610との間で挟込領域Nを形成している。圧力パッド640は、幅の広い挟込領域Nを確保するためのプレ挟込部材641を挟込領域Nの入口側に配置し、定着ロール610に歪みを与えるための剥離挟込部材642を挟込領域Nの出口側に配置している。
【0102】
さらに、無端ベルト620の内周面と圧力パッド640との摺動抵抗を小さくするために、プレ挟込部材641および剥離挟込部材642の無端ベルト620と接する面に低摩擦シート680が設けられている。そして、圧力パッド640と低摩擦シート680とは、金属製のホルダ650に保持されている。
【0103】
さらに、ホルダ650にはベルト走行ガイド630が取り付けられ、無端ベルト620がスムーズに回転するように構成されている。すなわち、ベルト走行ガイド630は、無端ベルト620内周面と摺擦するため、静止摩擦係数の小さな材質で形成されている。また、ベルト走行ガイド630は、無端ベルト620から熱を奪い難いように熱伝導率の低い材質で形成されている。
【0104】
そして定着ロール610は、図示しない駆動モータにより矢印C方向に回転し、この回転に従動して無端ベルト620は、定着ロール610の回転方向と反対の方向へ回転する。すなわち、定着ロール610が図4における時計方向へ回転するのに対して、無端ベルト620は反時計方向へ回転する。
【0105】
未定着トナー像を有する用紙Kは、定着入口ガイド560によって導かれて、挟込領域Nに搬送される。そして、用紙Kが挟込領域Nを通過する際に、用紙K上のトナー像は挟込領域Nに作用する圧力と、定着ロール610から供給される熱とによって定着される。
【0106】
上記定着装置72では、定着ロール610の外周面に倣う凹形状のプレ挟込部材641により挟込領域Nが確保される。
【0107】
また、本実施形態に係る定着装置72では、定着ロール610の外周面に対し突出させて剥離挟込部材642を配置することにより、挟込領域Nの出口領域において定着ロール610の歪みが局所的に大きくなるように構成されている。この構成により、定着後の用紙Kが定着ロール610から剥離する。
【0108】
また、剥離の補助手段として、定着ロール610の挟込領域Nの下流側に、剥離部材700が配設されている。剥離部材700は、剥離バッフル710が定着ロール610の回転方向と対向する向き(カウンタ方向)に定着ロール610と近接する状態でホルダ720によって保持されている。
【0109】
以下、本実施形態に係る定着装置72に使用される無端ベルト620および定着ロール610以外の部材について詳細に説明する。
【0110】
無端ベルト620の内部に配置された圧力パッド640は、上述したように、プレ挟込部材641と剥離挟込部材642とで構成され、バネや弾性体によって定着ロール610を、例えば32kgfの荷重で押圧するようにホルダ650に支持されている。定着ロール610側の面は、定着ロール610の外周面に倣う凹状曲面で形成されている。また、それぞれの材質は耐熱性を具備するもので構成してもよい。
【0111】
なお、無端ベルト620の内部に配置された圧力パッド640は、無端ベルト620を介して定着ロール610を加圧し、無端ベルト620と定着ロール610との間に、未定着トナー像を保持する用紙Kが通過する挟込領域Nが形成する機能を有していれば形状や材質に特に制限はなく、さらには圧力パッド640に加え、定着ロール610に対して加圧しつつ回転する加圧ローラなどを並設してもよい。
【0112】
プレ挟込部材641には、シリコーンゴムやフッ素ゴム等の耐熱性エラストマーや板バネ等の弾性体が用いられ、これらの材質の中でも、弾性に優れる点ものとしてシリコーンゴムが挙げられる。該シリコーンゴムとしては、例えば、RTVシリコーンゴム、HTVシリコーンゴムなどが挙げられ、具体的には、ポリジメチルシリコーンゴム(MQ)、メチルビニルシリコーンゴム(VMQ)、メチルフェニルシリコーンゴム(PMQ)、フルオロシリコーンゴム(FVMQ)などが挙げられる。硬度の点からJIS−A硬度10から40°のシリコーンゴムが好適に用いられる。弾性体の形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、目的に応じて選択される。本実施形態の定着装置72では、幅10mm、厚さ5mm、長さ320mmのシリコーンゴムを用いている。
【0113】
剥離挟込部材642は、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、ポリイミド、ポリエステル、ポリアミド等の耐熱性を有する樹脂、または鉄、アルミニウム、SUS等の金属で形成されている。剥離挟込部材の形状としては、挟込領域Nにおける外面形状が一定の曲率半径を有する凸状曲面に形成されている。そして、本実施の形態の定着装置72では、無端ベルト620は、圧力パッドにより定着ロール610に40°の巻き付き角度でラップされ、8mm幅の挟込領域Nを形成している。
【0114】
低摩擦シート680は、無端ベルト620内周面と圧力パッド640との摺動抵抗(摩擦抵抗)を低減するために設けられ、摩擦係数が小さく、耐摩耗性・耐熱性に優れた材質が適している。
【0115】
この低摩擦シート680の材質としては、金属、セラミックス、樹脂等各種材料が採用されるが、具体的には、耐熱性樹脂であるフッ素樹脂、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、液晶ポリマー(LCP)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の他、6−ナイロンあるいは6,6−ナイロンのナチュラル材や、これらにカーボンやガラス繊維等を添加した材料が用いられる。
【0116】
この中でも無端ベルト620との接触面側が、無端ベルト620内面との摺動抵抗が小さくかつ潤滑剤が保持される表面に微細な凹凸形状を有するフッ素樹脂シートが挙げられる。
【0117】
具体的には、シンタード成型したPTFE樹脂シート、テフロン(登録商標)を含浸させたガラス繊維シート、またガラス繊維にフッ素樹脂からなるスカイブフィルムシートを加熱融着サンドした積層シートやあるいはフッ素樹脂シートに筋状の凹凸を設けたもの等が用いられる。
【0118】
なお、低摩擦シート680は、プレ挟込部材641や剥離挟込部材642と別体に構成しても、プレ挟込部材641や剥離挟込部材642と一体的に構成しても、いずれでもよい。
【0119】
さらに、ホルダ650には、定着装置72の長手方向に亘って潤滑剤塗布部材670が配設されている。潤滑剤塗布部材670は、無端ベルト620内周面に対して接触するように配置され、潤滑剤を適量供給する。これにより、無端ベルト620と低摩擦シート680との摺動部に潤滑剤を供給し、低摩擦シート680を介した無端ベルト620と圧力パッドとの摺動抵抗をさらに低減して、無端ベルト620の円滑な回転を図っている。また、無端ベルト620の内周面や低摩擦シート680表面の摩耗を抑制する効果も有している。
【0120】
潤滑剤としてはシリコーンオイルが挙げられ、シリコーンオイルとしてはジメチルシリコーンオイル、有機金属塩添加ジメチルシリコーンオイル、ヒンダードアミン添加ジメチルシリコーンオイル、有機金属塩およびヒンダードアミン添加ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、有機金属塩添加アミノ変性シリコーンオイル、ヒンダードアミン添加アミノ変性シリコーンオイル、カルボキシ変性シリコーンオイル、シラノール変性シリコーンオイル、スルホン酸変性シリコーンオイル等が用いられるが、濡れ性に優るアミノ変性シリコーンオイルを用いてもよい。
なお、本実施形態の画像定着装置72では、潤滑剤塗布部材670により無端ベルト620内周面に潤滑剤を供給しているが、潤滑剤塗布部材および潤滑剤を用いない形態としてもよい。
【0121】
また、メチルフェニルシリコーンオイルあるいはフッ素オイル(パーフルオロポリエーテルオイル、変性パーフルオロポリエーテルオイル)などを使用することも好適である。なお、シリコーンオイル中に酸化防止剤を添加してもよい。その他固形物質と液体とを混合させた合成潤滑油グリース、例えばシリコーングリス、フッ素グリス等、さらにはこれらを組み合わせたものも用いられる。本実施形態の定着装置72では、粘度300csのアミノ変性シリコーンオイル(KF96:信越化学(株)製)を用いている。
【0122】
また、ベルト走行ガイド630は、上述したように、無端ベルト620の内周面と摺擦するため、摩擦係数が低く、かつ、無端ベルト620から熱を奪い難いように熱伝導率が低い材質が適しており、PFAやPPS等の耐熱性樹脂が用いられる。
【0123】
<第2実施形態>
第2実施形態の画像形成装置は、上記第1実施形態の画像形成装置101内に備えられた定着装置72の代わりに、加熱源を備えた定着ベルト(本実施形態の無端ベルト)と加圧ロール(本実施形態のロール)と備えた定着装置を用いた形態である。なお、定着装置が異なること以外の事項については、上記と同様であるため説明を省略する。
【0124】
―定着装置(画像定着装置)―
図5は、本実施形態の定着装置の概略構成図である。具体的には、図5は、本実施形態に係る無端ベルトを定着ベルトとして備え、且つ本実施形態に係るロールを加圧ロールとして備えた定着装置である。なお、第1実施形態に係る定着装置と同様な構成については、同様の符号を用い、ここではその詳細な説明を省略する。
【0125】
図5に示すように、第2実施形態に係る定着装置900は、無端ベルトとしての定着ベルト920と、回転駆動する回転体の一例としての加圧ロール910とを備えて構成されている。定着ベルト920は、上述した無端ベルト620と同様に構成されている。
【0126】
そして、定着ベルト920が用紙Kのトナー像保持面側に配置されるとともに、定着ベルト920の内側には、加熱手段の一例としての抵抗発熱体であるセラミックヒータ820が配設され、セラミックヒータ820から挟込領域Nに熱を供給するように構成している。
【0127】
セラミックヒータ820は、加圧ロール910側の面がフラットに形成されている。そして、定着ベルト920を介して加圧ロール910に加圧される状態で配置され、挟込領域Nを形成している。したがって、セラミックヒータ820は圧力部材としても機能している。挟込領域Nを通過した用紙Kは、挟込領域Nの出口領域(剥離挟込部)において定着ベルト920の曲率の変化によって定着ベルト920から剥離される。
【0128】
さらに、定着ベルト920内周面とセラミックヒータ820との間には、定着ベルト920の内周面とセラミックヒータ820との摺動抵抗を小さくするため、低摩擦シート680が配設されている。この低摩擦シート680は、セラミックヒータ820と別体に構成しても、セラミックヒータ820と一体的に構成してもよい。
【0129】
一方、加圧ロール910は定着ベルト920に対向するように配置され、図示しない駆動モータにより矢印D方向に回転し、この回転に従動して定着ベルト920が回転するように構成されている。加圧ロール910は、コア(円柱状芯金)911と、コア911の外周面に被覆した耐熱性弾性層912と、さらに耐熱性樹脂被覆または耐熱性ゴム被覆による離型層913とが積層されて構成され、必要に応じて各層はトナーのオフセット対策としてカーボンブラックなどの添加により半導電性化されている。
【0130】
また、剥離の補助手段として、定着ベルト920の挟込領域Nの下流側に、剥離部材700を配設してもよい。剥離部材700は、剥離バッフル710が定着ベルト920の回転方向と対向する向き(カウンタ方向)に定着ベルト920と近接する状態でホルダ720によって保持されている。
【0131】
未定着トナー像を有する用紙Kは、定着入口ガイド560によって導かれて、定着装置900の挟込領域Nに搬送される。用紙Kが挟込領域Nを通過する際には、用紙K上のトナー像は、挟込領域Nに作用する圧力と、定着ベルト920側のセラミックヒータから供給される熱とによって定着される。
【0132】
ここで、本実施形態の定着装置900においては、加圧ロール910は、両端部の外径が中央部の外径よりも大きい逆クラウン形状(フレア形状)に形成されるとともに、定着ベルト920も、内面に凹凸形状を有し、この凹凸形状は挟込領域においては前記加圧ロール910の表面形状に沿った形状に広がり変形するように構成されている。このように構成することによって、用紙が挟込領域を通過するに際して、加圧ロール910による用紙への中央部から両端部に向かって幅方向に引張力が作用することによって用紙が伸びるのとともに定着ベルト920の表面幅方向の長さも伸びる。
【0133】
このため、本実施形態の定着装置900でも、中央部から両端部に亘る全領域において、定着ベルト920は用紙Kに対してスリップを抑制される。
【0134】
なお、加熱源としてはセラミックヒータ820以外に、定着ベルト920内部に設けたハロゲンランプであったり、あるいは定着ベルト920内部あるいは外部に設けた電磁誘導コイルによる電磁誘導発熱を利用したものであったりしてもかまわない。
【0135】
また、定着ベルト920内部にフラットな圧力部材に加え加圧ロール910に対して加圧しつつ回転する加圧ローラなどを並設してもよい。
【実施例】
【0136】
以下、実施例を交えて本発明を詳細に説明するが、以下に示す実施例のみに本発明は限定されるものではない。尚、以下において「部」および「%」は、特に断りのない限り質量基準である。
【0137】
[サンプル調製方法]
(実施例1)
<アクリル樹脂プレポリマー溶液1の調整>
・2−ヒドロキシエチルメタクリレート:60部
・2−(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレート:40部
・アゾビスイソブチロニトリル(AIBN、重合開始剤):6部
・メチルエチルケトン:100部
上記成分を滴下ロートに入れ、窒素還流下で80℃に昇温したメチルエチルケトン100部中に、攪拌下3時間かけて滴下し重合した。さらにメチルエチルケトン50部とAIBN2部とからなる液を1時間かけて滴下、更に1時間攪拌して反応を完結させた。尚、反応中は80℃に保持して攪拌し続けた。反応液を濃縮して濃度を40%に調整してアクリル樹脂プレポリマーが溶媒に溶解したアクリル樹脂プレポリマー溶液1を合成した。
【0138】
<樹脂層サンプルA1の形成>
・アクリル樹脂プレポリマー溶液1:100部
・ポリイミド溶液1(DIC社製、品名:ユニディックV−8000、濃度:40%):30部
・イソシアネート溶液1(旭化成ケミカルズ社製、品名:デュラネートTPA−B80E、有効NCO%:12.5%):62部
上記成分のうち、まずアクリル樹脂プレポリマー溶液とポリイミド溶液とを混合したのち、イソシアネート溶液1をさらに加え10分間減圧下で脱泡した。それを90μm厚のポリイミドフィルムにキャストして、80℃で1時間、さらに150℃で60分硬化して40μmの膜厚の樹脂層サンプルA1を得た。上記方法により、得られた樹脂層サンプルがポリウレタンとポリイミドとの反応物を含むことが確認された。
【0139】
(実施例2)
<樹脂層サンプルA2の形成>
・アクリル樹脂プレポリマー溶液1:100部
・ポリイミド溶液2DIC社製、品名:ユニディックV−8003、濃度:40%):30部
・イソシアネート溶液1(旭化成ケミカルズ社製、品名:デュラネートTPA−B80E、有効NCO%:12.5%):62部
上記成分を用いた以外は、実施例1と同様にして、40μmの膜厚の樹脂層サンプルA2を得た。上記方法により、得られた樹脂層サンプルがポリウレタンとポリイミドとの反応物を含むことが確認された。
【0140】
(実施例3)
<アクリル樹脂プレポリマー溶液2の調整>
・2−ヒドロキシエチルメタクリレート:50部
・2−(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレート:35部
・アゾビスイソブチロニトリル(AIBN、重合開始剤):6部
・メチルエチルケトン:100部
上記成分を滴下ロートに入れ、窒素還流下で80℃に昇温したシリコーンマクロモノマー(チッソ社製、品名:FM−0721)15部、およびメチルエチルケトン100部中に、攪拌下3時間かけて滴下し重合した。さらにメチルエチルケトン50部とAIBN2部とからなる液を1時間かけて滴下、更に1時間攪拌して反応を完結させた。尚、反応中は80℃に保持して攪拌し続けた。反応液を濃縮して濃度を40%に調整してアクリル樹脂プレポリマーが溶媒に溶解したアクリル樹脂プレポリマー溶液2を合成した。
【0141】
<樹脂層サンプルA3の形成>
・アクリル樹脂プレポリマー溶液2:100部
・ポリイミド溶液1(DIC社製、品名:ユニディックV−8000、濃度:40%):30部
・イソシアネート溶液1(旭化成ケミカルズ社製、品名:デュラネートTPA−B80E、有効NCO%:12.5%):52部
上記成分のうち、まずアクリル樹脂プレポリマー溶液とポリイミド溶液とを混合したのち、イソシアネート溶液1をさらに加え10分間減圧下で脱泡した。それを90μm厚のポリイミドフィルムにキャストして、80℃で1時間、さらに150℃で60分硬化して40μmの膜厚の樹脂層サンプルA3を得た。上記方法により、得られた樹脂層サンプルがポリウレタンとポリイミドとの反応物を含むことが確認された。
【0142】
(実施例4)
<アクリル樹脂プレポリマー溶液3の調整>
・2−ヒドロキシエチルメタクリレート:50部
・n−ブチルメタクリレート:50部
・アゾビスイソブチロニトリル(AIBN、重合開始剤):2部
・酢酸ブチル:100部
上記成分を滴下ロートに入れ、窒素還流下で110℃に昇温した酢酸ブチル100部中に、攪拌下3時間かけて滴下し重合した。さらに酢酸ブチル50部とAIBN2部とからなる液を1時間かけて滴下、更に1時間攪拌して反応を完結させた。尚、反応中は110℃に保持して攪拌し続けた。反応液を濃縮して濃度を40%に調整してアクリル樹脂プレポリマーが溶媒に溶解したアクリル樹脂プレポリマー溶液3を合成した。
【0143】
<樹脂層サンプルA4の形成>
・アクリル樹脂プレポリマー溶液3:100部
・ポリイミド溶液1(DIC社製、品名:ユニディックV−8000、濃度:40%):30部
・イソシアネート溶液1(旭化成ケミカルズ社製、品名:デュラネートTPA−100、有効NCO%:23%):27部
上記成分のうち、まずアクリル樹脂プレポリマー溶液とポリイミド溶液とを混合したのち、イソシアネート溶液1をさらに加え10分間減圧下で脱泡した。それを90μm厚のポリイミドフィルムにキャストして、80℃で1時間、さらに130℃で60分硬化して40μmの膜厚の樹脂層サンプルA4を得た。上記方法により、得られた樹脂層サンプルがポリウレタンとポリイミドとの反応物を含むことが確認された。
【0144】
(実施例5)
<樹脂層サンプルA5の形成>
・アクリル樹脂プレポリマー溶液2:100部
・ポリイミド溶液1(DIC社製、品名:ユニディックV−8000、濃度:40%):10部
・イソシアネート溶液1(旭化成ケミカルズ社製、品名:デュラネートTPA−B80E、有効NCO%:12.5%):10部
上記成分を用いた以外は、実施例1と同様にして、40μmの膜厚の樹脂層サンプルA5を得た。上記方法により、得られた樹脂層サンプルがポリウレタンとポリイミドとの反応物を含むことが確認された。
【0145】
(実施例6)
<樹脂層サンプルA6の形成>
・アクリル樹脂プレポリマー溶液2:100部
・ポリイミド溶液1(DIC社製、品名:ユニディックV−8000、濃度:40%):50部
・イソシアネート溶液1(旭化成ケミカルズ社製、品名:デュラネートTPA−B80E、有効NCO%:12.5%):50部
上記成分を用いた以外は、実施例1と同様にして、40μmの膜厚の樹脂層サンプルA6を得た。上記方法により、得られた樹脂層サンプルがポリウレタンとポリイミドとの反応物を含むことが確認された。
【0146】
(比較例1)
<樹脂層サンプルB1の形成>
・アクリル樹脂プレポリマー溶液1:100部
・イソシアネート溶液1(旭化成ケミカルズ社製、品名:デュラネートTPA−B80E、有効NCO%:12.5%):62部
上記成分を混合したのち、10分間減圧下で脱泡した。それを90μm厚のポリイミドフィルムにキャストして、80℃で1時間、さらに150℃で60分硬化して40μmの膜厚の樹脂層サンプルB1を得た。
【0147】
(比較例2)
<樹脂層サンプルB2の形成>
・アクリル樹脂プレポリマー溶液3:100部
・イソシアネート溶液1(旭化成ケミカルズ社製、品名:デュラネートTPA−100、有効NCO%:23%):27部
上記成分を混合したのち、10分間減圧下で脱泡した。それを90μm厚のポリイミドフィルムにキャストして、80℃で1時間、さらに130℃で60分硬化して40μmの膜厚の樹脂層サンプルB2を得た。
【0148】
[評価]
・戻り率の測定
上記実施例および比較例で得られた樹脂層サンプルについて、初期の戻り率を測定した。なお、上記戻り率の測定は160℃で行った。
また、得られた樹脂層サンプルを200℃において200時間加熱した後に上記と同様の測定を行い、加熱後における戻り率の測定を行った。結果を表1に示す。
【0149】
戻り率の測定においては、測定装置としてフィッシャースコープHM2000(フィッシャー社製)を用い、サンプル樹脂層をスライドガラスに接着剤で固定し、上記測定装置にセットした。サンプル樹脂層に、上記それぞれの測定温度で0.5mNまで15秒間かけて荷重をかけていき0.5mNで5秒間保持した。その際の最大変位を(h1)とした。その後、15秒かけて0.005mNまで除荷していき、0.005mNで1分間保持したときの変位を(h2)として、戻り率〔(h1−h2)/h1〕×100(%)を計算した。
【0150】
・傷の修復の速さ試験
以下の方法により、初期の樹脂層サンプル及び200℃において200時間加熱した後の樹脂層サンプルについて、傷の修復の速さを評価した。
具体的には、樹脂層サンプルが形成されたポリイミドフィルムを、加熱したホットプレート上に置き、金属ピンセットの先端で傷をつけて、傷が修復するまでの時間を測定した。なお、上記評価は、100℃、および160℃で行った。評価基準は以下の通りであり、結果を表1に示す。
【0151】
G1:傷修復せず
G2:1時間以上で傷修復
G3:30分以内で傷修復
G4:1分以内で傷修復
【0152】
・接触角の測定
上記実施例および比較例で得られた樹脂層サンプルのうち、フッ素原子を含むものについて、初期の接触角を測定した。なお、上記接触角の測定は20℃において行った。
また、得られた樹脂層サンプルを200℃において200時間加熱した後に上記と同様の測定を行い、加熱後における接触角の測定を行った。結果を表2に示す。
なお接触角の測定は、接触角計(協和界面科学社製、型番:CA−S−ルガタ)を用いて行った。
【0153】
・離型性試験
以下の方法により、初期の樹脂層サンプル及び200℃において200時間加熱した後の樹脂層サンプルについて離型性を評価した。
具体的には、樹脂層サンプルが形成されたポリイミドフィルムを、定着機の定着ロール表面にはりつけ、黒の未定着ベタ画像を通紙して定着性を確認した。なお、上記定着機として富士ゼロックス社製の商品名:DocuCentre C2101を用いた。評価基準は以下の通りであり、結果を表2に示す。
【0154】
G1:樹脂層サンプルの全面にトナー付着
G2:樹脂層サンプルの半分にトナー付着
G3:樹脂層サンプルの8割にトナー付着
G4:樹脂層サンプルにトナー付着なし
【0155】
【表1】

【0156】
【表2】

【0157】
上記表1の結果より、実施例では比較例に比べ、表面の傷を修復する特性が熱によって変化しにくいことがわかった。
また上記表2の結果より、実施例では比較例に比べ、表面の離型性が熱によって変化しにくいことがわかった。
【符号の説明】
【0158】
1 無端ベルト
2 基材
3 表面層
72 定着装置
75 2次転写ロール
78 レーザー発生装置
79 感光体
80 1次転写ロール
83 帯電ロール
85 現像器
86 中間転写ベルト
101 画像形成装置
610 定着ロール
620 無端ベルト
900 定着装置
910 加圧ロール
920 定着ベルト
K 用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシル基を有する側鎖を含むアクリル樹脂とイソシアネートとの重合体であるポリウレタンと、ポリイミドと、の反応物及び混合物の少なくとも一方を含む樹脂材料。
【請求項2】
前記アクリル樹脂が、フッ素原子を有する側鎖を含む、請求項1に記載の樹脂材料。
【請求項3】
前記ポリイミドが溶媒可溶性ポリイミドであり、前記反応物及び混合物の少なくとも一方が、前記ポリイミドの存在下において前記アクリル樹脂と前記イソシアネートとを重合して得られたものである、請求項1又は請求項2に記載の樹脂材料。
【請求項4】
ベルト状の基材上に、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の樹脂材料を有する無端ベルト。
【請求項5】
円筒状の基材上に、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の樹脂材料を有するロール。
【請求項6】
第1の回転体と、
前記第1の回転体に接触して記録媒体を挟み込む挟込領域を形成する第2の回転体と、を有し、
前記第1の回転体および前記第2の回転体の少なくとも一方が、請求項4に記載の無端ベルトまたは請求項5に記載のロールである画像定着装置。
【請求項7】
静電潜像保持体と、
前記静電潜像保持体表面上に静電潜像を形成する静電潜像形成装置と、
前記静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置と、
前記トナー像を記録媒体に転写する転写装置と、
前記記録媒体に前記トナー像を定着する請求項6に記載の画像定着装置と、
を備える画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−158724(P2012−158724A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21174(P2011−21174)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】