説明

樹脂組成物、プリプレグおよび積層板

【課題】 密着性や耐熱性を維持しつつ、誘電率、誘電正接に優れた樹脂組成物、プリプレグおよび積層板を提供する。
【解決手段】 回路基板に用いられる樹脂組成物であって、エポキシ樹脂と、分子内に、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル基を2つ以上有する化合物とを含有し、当該樹脂組成物の硬化物の、1GHzにおける誘電率が、3.3以下、2.3以上であり、前記分子内に3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル基を2つ以上有する化合物の含有量が、樹脂組成物100重量部中に、5重量部以上、30重量部以下であることを特徴とする樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板に用いられる樹脂組成物、プリプレグおよび積層板に関する。
【背景技術】
【0002】
ノート型パーソナルコンピューターや携帯電話等の情報処理機器は高速化が要求されておりCPUクロック周波数が高くなっている。そのため信号伝搬速度の高速化が要求されており、高速化に誘電率および誘電正接の低いプリント板であることが必要とされる。
【0003】
エポキシ樹脂は優れた耐熱性や電気絶縁性や密着性を有するが、硬化後に水酸基を生じるため誘電率や誘電正接がやや大きい欠点がある。誘電率や誘電正接を低減するために、ポリスチレンやポリブタジエンなどの非極性ポリマーをエポキシ樹脂に混合する手法がとられている。しかしながら、誘電率や誘電正接は小さくなる一方、密着性や耐熱性が悪くなるという問題があった(例えば特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特開平7−188516号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、密着性や耐熱性を維持しつつ、誘電率、誘電正接に優れた樹脂組成物、プリプレグおよび積層板を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による回路基板に用いられる樹脂組成物は、エポキシ樹脂と、分子内に、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル基を2つ以上有する化合物とを含有するとともに、硬化物の、1GHzにおける誘電率が、2.3以上、3.3以下であることを特徴とする。また、硬化物の、1GHzにおける誘電正接が0.009以上、0.018以下であることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、分子内に、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル基を2つ以上有する化合物を原料として含んでいる。これにより、分子の占める体積が大きい3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル基を複数有することにより、密度が低下するため、誘電率、誘電正接を小さくすることが可能な樹脂組成物を提供することができる。
【0008】
また、樹脂組成物を基材に含浸させて回路基板用のプリプレグとすることができる。さらに、このプリプレグを、1枚以上積層成形して回路基板用の積層板とすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、密着性や耐熱性を維持しつつ、誘電率、誘電正接に優れた樹脂組成物、プリプレグおよび積層板を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の樹脂組成物は、エポキシ樹脂と、分子内に3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル基を2つ以上有する化合物を含有し、当該樹脂組成物の硬化物の、1GHzにおける誘電率が、2.3以上、3.3以下である。
また、本発明のプリプレグは、上述の樹脂組成物を基材に含浸させてなることを特徴とするものである。
また、本発明の積層板は、上述のプリプレグを1枚以上成形してなることを特徴とするものである。
【0011】
まず、本発明の樹脂組成物について説明する。
【0012】
本発明の樹脂組成物は、エポキシ樹脂を含む。これにより、積層板の耐熱性を向上させることができ、密着性を有する。
【0013】
本発明の樹脂組成物で用いられるエポキシ樹脂としては特に限定されないが、ビスフェノールAエポキシ樹脂、ビスフェノールFエポキシ樹脂、フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラックエポキシ樹脂、ナフタレン変性エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性エポキシ樹脂、アラルキル変性エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン変性エポキシ樹脂などがあげられる。また難燃性を発現させるためにこれらのエポキシ樹脂をハロゲン化したものもあげられる。
【0014】
本発明のエポキシ樹脂はこれらに限定されないが、1種類もしくは2種類以上を組み合わせて使用できる。
【0015】
本発明の樹脂組成物は、分子内に3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル基を2つ以上有する化合物を含む。これにより、密着性や耐熱性を維持したまま、硬化物の、1GHzにおける誘電率が、2.3以上、3.3以下であること、また、硬化物の、1GHzにおける誘電正接が0.009以上、0.018以下とすることができる樹脂組成物を提供できる。
【0016】
本発明によれば、分子内に、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル基を2つ以上有する化合物を原料として含んでいる。これにより、分子の占める体積が大きい3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル基を複数有することにより、密度が低下するため、誘電率、誘電正接を小さくするこ誘電率や誘電正接を低減することができる。
【0017】
ポリスチレンやポリブタジエンなどの非極性ポリマーは、分極作用がないため誘電率、誘電正接が優れている。このため、エポキシ樹脂に添加することで誘電率、誘電正接を低減することができる。
【0018】
しかしながら、ポリスチレンやポリブタジエンなどの非極性ポリマーをエポキシ樹脂に混合すると、密着性や耐熱性が悪化する。
【0019】
これに対して本発明の樹脂組成物は、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル基を2つ以上有する化合物を使用することで密着性や耐熱性を低下させることなく誘電正接を低減することができる。
3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル基は、非常に大きな置換基であり、分子の占める体積が大きい。特に3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル基を2つ以上含有する化合物はt−ブチル基の立体反発により分子の占める体積が非常に大きい。このため誘電率や誘電正接が低減する。また、ヒドロキシ部分は2つのt−ブチル基の作用により、分極が小さく、誘電率や誘電正接を悪化させない。またこのヒドロキシ基により密着性が悪化しない。また、本発明の樹脂組成物は、エポキシ樹脂を使用した場合においても、その耐熱性、密着性とともに、積層板の誘電率、誘電正接を低減することができるものである。
【0020】
本発明で用いられる3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル基を2つ以上有する化合物としては、特に限定されないが、一般式(1)で表される、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−S−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン、もしくは、一般式(2)で表される、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンであることが、分子の対称性が高く、また分子量も大きいため誘電率、誘電正接低減の効果が大きく好ましい。
【0021】
【化1】

【0022】
【化2】

【0023】
特に1,3,5−トリス(3、5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−S−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオンは分子中に窒素原子を含むため密着性が高く好ましい。
【0024】
3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル基を2つ以上有する化合物の含有量は、樹脂全体の5〜30重量%であることが好ましい。含有量が前記下限値未満であると誘電率や誘電正接低減の効果が低下し、前記上限値を超えると耐熱性が悪化する場合がある。
【0025】
本発明の樹脂組成物は、上述したエポキシ樹脂と、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル基を2つ以上有する化合物を必須成分として含有するが、本発明の目的に反しない範囲において、その他の樹脂、硬化剤、イミダゾール化合物などの硬化促進剤、カップリング剤、フィラー、その他の成分を添加することは差し支えない。
【0026】
本発明の樹脂組成物の硬化物の、JISC6481による288℃での半田耐熱性が120秒以上である。これにより、鉛フリーはんだの使用にも耐える樹脂組成物とすることができる。
【0027】
本発明の樹脂組成物の硬化物の、1GHzにおける誘電正接が0.009以上、0.018以下であってもよい。
【0028】
樹脂組成物の硬化物の作成方法としては、50〜100μm厚さのアルミニウム箔もしくは銅箔などの金属箔を用い、樹脂組成物を溶媒に溶解して樹脂ワニスを調製したものをコンマコーターにて塗工し、150〜180℃で乾燥させ、溶剤を除去し、樹脂厚100μmの樹脂つき金属箔を得て、これを2枚重ね合わせた後に、150〜200℃で2〜3時間、2.5〜4MPaでプレス成形することで、熱硬化させ、金属箔を除去することで、得ることができる。
【0029】
次に、プリプレグについて説明する。
【0030】
本発明のプリプレグは、上述の樹脂組成物を基材に含浸させてなるものである。これにより、耐熱性等の各種特性に優れたプリプレグを得ることができる。
本発明のプリプレグで用いる基材としては、例えばガラス繊布、ガラス不繊布等のガラス繊維基材、あるいはガラス以外の無機化合物を成分とする繊布又は不繊布等の無機繊維基材、芳香族ポリアミド樹脂、ポリアミド樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂等の有機繊維で構成される有機繊維基材等が挙げられる。これら基材の中でも強度、吸水率の点でガラス織布に代表されるガラス繊維基材が好ましい。
【0031】
本発明で得られる樹脂組成物を基材に含浸させる方法には、例えば、樹脂組成物を溶媒に溶解して樹脂ワニスを調製し、基材を樹脂ワニスに浸漬する方法、各種コーター装置により樹脂ワニスを基材に塗布する方法、樹脂ワニスをスプレー装置により基材に吹き付ける方法等が挙げられる。これらの中でも、基材を樹脂ワニスに浸漬する方法が好ましい。これにより、基材に対する樹脂組成物の含浸性を向上させることができる。なお、基材を樹脂ワニスに浸漬する場合、通常の含浸塗布装置を使用することができる。
【0032】
前記樹脂ワニスに用いられる溶媒は、前記樹脂組成物に対して良好な溶解性を示すことが望ましいが、悪影響を及ぼさない範囲で貧溶媒を使用しても構わない。良好な溶解性を示す溶媒としては、例えばシクロヘキサノン等が挙げられる。
前記樹脂ワニス中の固形分は、特に限定されないが、前記樹脂組成物の固形分40〜80重量%が好ましく、特に50〜65重量%が好ましい。これにより、樹脂ワニスの基材への含浸性を更に向上できる。
前記基材に前記樹脂組成物を含浸させ、所定温度、例えば80〜200℃で乾燥させることによりプリプレグを得ることができる。
【0033】
次に、積層板について説明する。
【0034】
本発明の積層板は、上述のプリプレグを少なくとも1枚成形してなるものである。積層板の、1GHzにおける誘電率が、3.0以上、4.5以下であり、また、積層板の、1GHzにおける誘電正接が、0.001以上、0.01以下であることが好ましい。これにより、優れた耐熱性と密着性を有し、誘電率や誘電正接が低い積層板を得ることができる。
プリプレグ1枚のときは、その上下両面もしくは片面に金属箔あるいはフィルムを重ねる。
また、プリプレグを2枚以上積層することもできる。プリプレグ2枚以上積層するときは、積層したプリプレグの最も外側の上下両面もしくは片面に金属箔あるいはフィルムを重ねる。
次に、プリプレグと金属箔等とを重ねたものを加熱、加圧して成形することで積層板を得ることができる。
前記加熱する温度は、特に限定されないが、120〜220℃が好ましく、特に150〜200℃が好ましい。
また、前記加圧する圧力は、特に限定されないが、2〜5MPaが好ましく、特に2.5〜4MPaが好ましい。
【実施例】
【0035】
以下、本発明を実施例及び比較例により説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0036】
(実施例1)
(1)樹脂ワニスの調製
ジシクロペンタジエンエポキシ樹脂(エポキシ当量280、大日本インキ化学工業社製HP−7200H)70.0重量部、フェノールノボラック樹脂(水酸基当量105、住友ベークライト社製PR−51470)23.8重量部、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−s−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン6.1重量部、2−メチルイミダゾール0.1重量部にジメチルホルムアミドを加え、不揮発分濃度55重量%となるように樹脂ワニスを調製した。
【0037】
(2)樹脂組成物の硬化物の作成
上述の樹脂ワニスを用いて、50μm厚さのアルミニウム箔(サンアルミニウム社製)にコンマコーターにて塗工し、180℃で2分乾燥させ、溶剤を除去し、樹脂厚100μmの樹脂つきアルミニウム箔を得た。これを2枚重ね合わせた後に、180℃で2時間、3MPaでプレス成形したのちにアルミニウム箔を除去することで、樹脂硬化物を得た。
【0038】
(3)プリプレグの製造
上述の樹脂ワニスを用いて、ガラス繊布(厚さ0.18mm、日東紡績社製)100重量部に対して、樹脂ワニスを固形分で80重量部含浸させて、150℃の乾燥炉で5分間乾燥させ、樹脂含有量44.4重量%のプリプレグを作製した。
【0039】
(3)積層板の製造
上記プリプレグを6枚重ね、上下に厚さ35μmの電解銅箔を重ねて、圧力4MPa、温度200℃で150分間加熱加圧成形を行い、厚さ1.2mmの両面銅張積層板を得た。
【0040】
(実施例2)
ジシクロペンタジエンエポキシ樹脂(エポキシ当量280、大日本インキ化学工業社製HP−7200H)64.5重量部、フェノールノボラック樹脂(水酸基当量105、住友ベークライト社製PR−51470)16.6重量部、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−s−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン18.8重量部、2−メチルイミダゾール0.1重量部とした他は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ及び積層板を得た。
【0041】
(実施例3)
ジシクロペンタジエンエポキシ樹脂(エポキシ当量280、大日本インキ化学工業社製HP−7200H)60.3重量部、フェノールノボラック樹脂(水酸基当量105、住友ベークライト社製PR−51470)11.3重量部、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−s−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン28.2重量部、2−メチルイミダゾール0.1重量部とした他は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ及び積層板を得た。
【0042】
(実施例4)
ジシクロペンタジエンエポキシ樹脂(エポキシ当量280、大日本インキ化学工業社製HP−7200H)64.5重量部、フェノールノボラック樹脂(水酸基当量105、住友ベークライト社製PR−51470)16.6重量部、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン18.8重量部、2−メチルイミダゾール0.1重量部とした他は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ及び積層板を得た。
【0043】
(実施例5)
ジシクロペンタジエンエポキシ樹脂(エポキシ当量280、大日本インキ化学工業社製HP−7200H)63.0重量部、フェノールノボラック樹脂(水酸基当量105、住友ベークライト社製PR−51470)16.2重量部、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン20.7重量部、2−メチルイミダゾール0.1重量部とした他は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ及び積層板を得た。
【0044】
(実施例6)
ジシクロペンタジエンエポキシ樹脂(エポキシ当量280、大日本インキ化学工業社製HP−7200H)66.9重量部、フェノールノボラック樹脂(水酸基当量105、住友ベークライト社製PR−51470)17.2重量部、ビス−(2,4−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン15.8重量部、2−メチルイミダゾール0.1重量部とした他は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ及び積層板を得た。
【0045】
ジシクロペンタジエンエポキシ樹脂(エポキシ当量280、大日本インキ化学工業社製HP−7200H)73.1重量部、4,4−ジアミノジフェニルメタン9.7重量部、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−s−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン17.1重量部、2−メチルイミダゾール0.1重量部とした他は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ及び積層板を得た。
【0046】
(実施例8)
クレゾールノボラックエポキシ樹脂(エポキシ当量220、大日本インキ化学工業社製N−690)58.7重量部、フェノールノボラック樹脂(水酸基当量105、住友ベークライト社製PR−51470)19.3重量部、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−s−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン21.9重量部、2−メチルイミダゾール0.1重量部とした他は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ及び積層板を得た。
【0047】
(比較例1)
分子内に3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル基を2つ以上有する化合物を用いずに表1の配合量とした以外は実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ及び積層板を得た。
【0048】
(比較例2)
分子内に3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル基を2つ以上有する化合物を用いずにポリスチレン樹脂を用い、表1の配合量とした以外は実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ及び積層板を得た。
【0049】
(比較例3)
分子内に3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル基を2つ以上有する化合物を用いずにポリブタジエン樹脂を用い、表1の配合量とした以外は実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ及び積層板を得た。
【0050】
(比較例4)
分子内に3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル基を2つ以上有する化合物を用いずに、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールを用い、表1の配合量とした以外は実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ及び積層板を得た。
【0051】
(比較例5)
分子内に3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル基を2つ以上有する化合物を用いずに表1の配合量とした以外は実施例7と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ及び積層板を得た。
【0052】
(比較例6)
分子内に3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル基を2つ以上有する化合物を用いずに表1の配合量とした以外は実施例8と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ及び積層板を得た。
【0053】
各実施例および比較例により得られた積層板について、次の各評価を行った。各評価を、評価方法と共に以下に示す。得られた結果を表1に示す。
【0054】
【表1】

【0055】
表の注
1.原材料
(1)ジシクロペンタジエンエポキシ樹脂(エポキシ当量280、商品名:大日本インキ化学工業社製HP−7200H)
(2)クレゾールノボラックエポキシ樹脂(エポキシ当量220、商品名:大日本インキ化学工業社製N−690)
(3)フェノールノボラック樹脂(水酸基当量105、商品名:住友ベークライト社製PR−51470)
(4)ポリスチレン樹脂(商品名:東洋スチレン社製H450)
(5)ポリブタジエン樹脂(商品名:出光興産社製R−45HT)
【0056】
2.評価方法
(1)樹脂の1GHzでの誘電特性測定
樹脂の1GHzでの誘電特性測定は、樹脂硬化物を、ネットワークアナライザ(アジレントテクノロジー社製HP8510C)、シンセサイズドスイーパー(アジレントテクノロジー社製HP83651A)を用いて、トリプレート線路共振器法で測定した。
【0057】
(2)積層板の1GHzでの誘電特性測定
積層板の1GHzでの誘電特性測定は、樹脂硬化物の測定と同様にトリプレート線路共振器法で測定した。
【0058】
(3)半田耐熱性
半田耐熱性は、JIS C 6481に準拠して測定した。測定は、煮沸2時間の吸湿処理を行った後、288℃の半田槽に120秒間浸漬した後で外観の異常の有無を調べた。
【0059】
(4)ピール強度
ピール強度は、JIS C 6481に準拠して測定した。
【0060】
表から明らかなように、実施例1〜3は、エポキシ樹脂と、分子内に3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル基を2つ以上有する化合物を含有する本発明の樹脂組成物を用いた積層板であり、耐熱性、密着性に優れており、誘電率、誘電正接も十分低い値であった。
これに対して比較例1、5、6はエポキシ樹脂のみを用いたが、十分に誘電率、誘電正接が低くならなかった。また、比較例2、3は分子内に3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル基を2つ以上有する化合物を用いず、ポリスチレン樹脂またはポリブタジエン樹脂を用いたので、密着性および耐熱性が劣る結果となった。また、比較例4は分子内に3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル基を2つ以上有する化合物を用いず、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル基を1つ有する化合物を用いたので、架橋密度が低下し、耐熱性が劣る結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の樹脂組成物、プリプレグ、積層板は、小型軽量化に対応でき、高度な耐熱性、密着性および信号伝搬速度の高速化に必要なプリント配線板に適する。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板に用いられる樹脂組成物であって、
エポキシ樹脂と、
分子内に、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル基を2つ以上有する化合物とを含有し、
当該樹脂組成物の硬化物の、1GHzにおける誘電率が、2.3以上、3.3以下であることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
前記分子内に3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル基を2つ以上有する化合物の含有量が、樹脂組成物100重量部中に、5重量部以上、30重量部以下である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記硬化物の、JISC6481による288℃での半田耐熱性が120秒以上である請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記硬化物の、1GHzにおける誘電正接が0.009以上、0.018以下である請求項3に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記分子内に3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル基を2つ以上有する化合物が、下記式(1)で表される、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−s−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオンである請求項1ないし4のいずれかに記載の樹脂組成物。
【化1】

【請求項6】
前記分子内に3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル基を2つ以上有する化合物が、下記式(2)で表される1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンである請求項1ないし4のいずれかに記載の樹脂組成物。
【化2】

【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の樹脂組成物を基材に含浸させて得られることを特徴とするプリプレグ。
【請求項8】
請求項7に記載のプリプレグを、1枚以上積層成形して得られることを特徴とする積層板。
【請求項9】
前記積層板の、1GHzにおける誘電率が、3.0以上、4.5以下である請求項8に記載の積層板。
【請求項10】
前記積層板の、1GHzにおける誘電正接が、0.001以上、0.01以下である請求項8に記載の積層板。

【公開番号】特開2009−91450(P2009−91450A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−263044(P2007−263044)
【出願日】平成19年10月9日(2007.10.9)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】