説明

樹脂組成物およびそれからなる成形品

【課題】 加水分解性、機械特性および耐熱性に優れる熱可塑性樹脂組成物およびそれからなる成形品を提供する。
【解決手段】(A)ポリ乳酸樹脂ならびに芳香族ポリカーボネート樹脂、スチレン系共重合体、芳香族ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂およびセルロースエステル樹脂から選ばれる少なくとも一種の熱可塑性樹脂との混合物100重量部に対し、(B−1)エポキシ化合物0.01〜0.75重量部と、(B−2)カルボジイミド化合物0.01〜0.75重量部を配合してなる樹脂組成物であり、かつ(B−1)と(B−2)の配合比率は(B−1)20〜80重量%、(B−2)80〜20重量%の重量比率で含有されている樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ乳酸樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂にエポキシ化合物とカルボジイミド化合物の混合物を配合してなり、加水分解性、機械特性および耐熱性に優れる熱可塑性樹脂組成物およびそれからなる成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地球環境保全の見地から、土中、水中に存在する微生物の作用により自然環境下で分解される生分解性ポリマーが注目され、様々な生分解性ポリマーが開発されている。これら生分解性ポリマーのうちで、溶融成形が可能な生分解性ポリマーとしては、例えば、ポリヒドロキシブチレート、ポリカプロラクトン、コハク酸やアジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸成分とエチレングリコールやブタンジオールなどのグリコール成分とからなるポリエチレンサクシネートやポリブチレンアジペート、およびポリ乳酸樹脂などの脂肪族ポリエステル樹脂が知られている。
【0003】
上記脂肪族ポリエステル樹脂の中でも、特にポリ乳酸樹脂は、比較的コストが安く、融点もおよそ170℃を有していることから、溶融成形可能な植物由来の生分解性ポリマーとして期待されている。また、最近では、モノマーである乳酸が微生物を利用した発酵法により安価に製造されるようになり、より一層低コストでポリ乳酸樹脂を生産できるようになってきたため、生分解性ポリマーとしてだけではなく、植物由来の汎用ポリマーとしての利用についても検討されるようになってきた。しかし、その一方で、ポリ乳酸樹脂は、加水分解性に劣るため汎用ポリマーとしての耐久性に課題があり、その改良が望まれていた。
【0004】
この問題を改良する方法として、特許文献1には、生分解性プラスチックスにポリイソシアネートを用いることが提案されている。
【0005】
また、特許文献2には、生分解性プラスチックスにカルボジイミド化合物を用いることが提案されている。
【0006】
しかしながら、上記の特許文献1と特許文献2の提案は、加水分解性を高める効果を有するが、機械的性質を低下させる課題があった。
【0007】
さらに、ポリ乳酸樹脂の耐熱性を向上させることにより、自動車部品、電気・電子機器の筐体や部品など活用範囲の広い汎用ポリマー成形品として利用することができる。
【0008】
この問題を改良する方法として、特許文献3には、ポリ乳酸樹脂とポリイソシアネートにポリカーボネート、ポリスチレンおよびポリエチレンテレフタレートから選ばれる非晶性樹脂を用いることが提案されている。しかしながら、上記の特許文献3の提案は、耐熱性を高める効果と加水分解性を高める効果を有するが、ポリイソシアネートを配合するため機械的性質を低下させる課題があった。
【特許文献1】特開平11−80522号公報(第2−3頁)
【特許文献2】国際公開第99/21915号パンフレット(第2−4頁)
【特許文献3】特開2000−17038号公報(第2−3頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものである。
【0010】
従って、本発明は、加水分解性、機械特性および耐熱性に優れるポリ乳酸樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂からなる熱可塑性樹脂、およびそれからなる成形品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、ポリ乳酸樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂からなる熱可塑性樹脂組成物にエポキシ化合物とカルボジイミド化合物を特定の割合で配合することにより、加水分解性、機械特性および耐熱性に優れる熱可塑性脂組成物が得られることを見い出し、本発明に到達した。
【0012】
すなわち、本発明は、
(1)(A)ポリ乳酸樹脂ならびに芳香族ポリカーボネート樹脂、スチレン系共重合体、芳香族ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂およびセルロースエステル樹脂から選ばれる少なくとも一種の熱可塑性樹脂との混合物100重量部に対し、(B−1)エポキシ化合物0.01〜0.75重量部と、(B−2)カルボジイミド化合物0.01〜0.75重量部を配合してなる樹脂組成物であり、かつ(B−1)と(B−2)の配合比率が、(B−1)と(B−2)の合計に対して、(B−1)20〜80重量%、(B−2)80〜20重量%である樹脂組成物、
(2)さらに(C)充填剤を配合してなる(1)に記載の樹脂組成物、
(3)さらに(D)難燃剤を配合してなる(1)または(2)に記載の樹脂組成物、
(4)さらに(E)フッ素系樹脂を配合してなる(1)〜(3)のいずれかに記載の樹脂組成物、
(5)(1)〜(4)のいずれかに記載の樹脂組成物からなる成形品、
(6)前記成形品が、自動車部品または電気・電子機器の筐体もしくは部品である(5)に記載の成形品である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の樹脂組成物は、加水分解性、機械特性および耐熱性に優れる樹脂組成物である。また、この樹脂組成物から得られる成形品は、上記の加水分解性と機械特性を活かして、土木資材、建材、家具部材、遊技機用資材および各種日用品などの汎用の成形品、上記の加水分解性、機械特性および耐熱性を活かして自動車部品、電気・電子機器の筐体や部品などに利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0015】
本発明では、ポリ乳酸樹脂ならびに芳香族ポリカーボネート樹脂、スチレン系共重合体、芳香族ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂およびセルロースエステル樹脂から選ばれる少なくとも一種の熱可塑性樹脂との混合物を使用する。以下(A)ポリ乳酸樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂組成物という。
【0016】
本発明に用いられる(A)ポリ乳酸樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂組成物に配合されるポリ乳酸樹脂とは、L−乳酸とD−乳酸からなるポリマーであるが、耐熱性や成形性の観点から、乳酸成分の光学純度が高いポリ乳酸樹脂を用いることが好ましい。すなわち、L−乳酸とD−乳酸の成分(モル比の割合%)が100〜80/0〜20もしくは0〜20/100〜80からなるポリマーが好ましく用いられ、とくに100〜90/0〜10もしくは0〜10/100〜90が好ましく、さらには100〜95/0〜5もしくは0〜5/100〜95が射出成形性の観点から最も好ましい。
【0017】
また、前記(A)ポリ乳酸樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂組成物に配合されるポリ乳酸樹脂としては、乳酸成分の他の共重合成分を含んでいてもよい。他のモノマー単位としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘプタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオ−ル、デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ビスフェノ−ルA、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびポリテトラメチレングリコールなどのグリコール化合物、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、マロン酸、グルタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4´−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムイソフタル酸などのジカルボン酸、グリコール酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸、およびカプロラクトン、バレロラクトン、プロピオラクトン、ウンデカラクトン、1,5−オキセパン−2−オンなどのラクトン類を挙げることができる。このような共重合成分は、全単量体成分中、通常0〜30モル%の含有量とするのが好ましく、0〜10モル%であることが好ましい。
【0018】
(A)ポリ乳酸樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂組成物に配合されるポリ乳酸樹脂の融点は、特に制限されるものではないが、150℃以上であることが好ましく、特に160℃以上であることが好ましい。ポリ乳酸樹脂の融点は、通常乳酸成分の光学純度を高くすることにより高くなり、融点が150℃以上のポリ乳酸樹脂は、L−乳酸が95%以上含まれるかあるいはD−乳酸が95%以上含まれることにより得ることができる。なお、本発明においてポリ乳酸樹脂の融点は、示差走査熱量計(DSC)により昇温速度20℃/分で測定した値である。
【0019】
ポリ乳酸樹脂の分子量や分子量分布については、実質的に成形加工が可能であれば、特に制限されるものではないが、重量平均分子量としては、通常1万以上、好ましくは4万以上、さらに8万以上であることが望ましい。上限としては特に制限はないが、成形性の観点から好ましくは、50万以下である。ここでいう重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリメチルメタクリレート(PMMA)換算の分子量をいう。また、異なる分子量のポリ乳酸樹脂を混合して用いても良い。
【0020】
ポリ乳酸樹脂は、変性したものを用いてもよく、例えば、無水マレイン酸変性ポリ乳酸樹脂、エポキシ変性ポリ乳酸樹脂、アミン変性ポリ乳酸樹脂などを用いることにより、耐熱性だけでなく、機械特性も向上する傾向にあり好ましい。
【0021】
ポリ乳酸樹脂の製造方法としては、公知の重合方法を用いることができ、乳酸からの直接重合法、およびラクチドを介する開環重合法などを挙げることができる。
【0022】
本発明では、ポリ乳酸樹脂に芳香族ポリカーボネート樹脂、スチレン系共重合体、芳香族ポリエステル樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂およびセルロースエステル樹脂から選ばれる少なくとも一種の熱可塑性樹脂を混合して用いるが、それらは溶融成形可能な熱可塑性樹脂であり、中でも、耐熱性、成形性、流動性および機械特性の点で、芳香族ポリカーボネート樹脂、スチレン系共重合体、または芳香族ポリエステル樹脂がより好ましい。また、これらは1種でもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
【0023】
前記の好ましく用いられる芳香族ポリカーボネート樹脂とは、芳香族二価フェノール系化合物とホスゲン、または炭酸ジエステルとを反応させることにより得られる芳香族ホモまたはコポリカーボネートなどの芳香族ポリカーボネートが挙げられ、前記の芳香族二価フェノール系化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジエチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジエチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1−フェニル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等が使用でき、これら単独あるいは混合物として使用することができる。
【0024】
前記の好ましく用いられるスチレン系共重合体とは、スチレンあるいはαーメチルスチレンに芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、およびマレイミド系単量体から選択される一種以上の単量体を重合してなる樹脂、あるいは、ポリブタジエン系ゴムなどのゴム系成分にこれら単量体をグラフト重合したもの、あるいは、共重合したものなどが挙げられる(以下これらを「共重合体」と総称することがある)。
【0025】
上記芳香族ビニル化合物としては、ビニルトルエン、および、ジビニルベンゼンなどが挙げられ、シアン化ビニル化合物としてはアクリロニトリル、およびメタクリロニトリルなどが挙げられ、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸nーブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸nーブチル、およびアクリル酸ステアリルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられ、マレイミド系単量体としては、マレイミド、Nーメチルマレイミド、Nーエチルマレイミド、Nーフェニルマレイミド、Nーシクロヘキシルマレイミド、およびその誘導体などのN−置換マレイミドなどが挙げられる。さらに、スチレン系共重合体と共重合が可能な下記の成分との共重合体も本発明に含まれる。かかる共重合が可能な成分の具体例としては、ジエン化合物、マレイン酸ジアルキルエステル、アリルアルキルエーテル、不飽和アミノ化合物、およびビニルアルキルエーテルなどが挙げられる。また、不飽和酸無水物あるいはエポキシ基含有ビニル系単量体をグラフト重合もしくは共重合されたスチレン系共重合体も本発明に含まれる。
【0026】
スチレン系共重合体の好ましい共重合体の例としては、メタクリル酸メチル/アクリロニトリル/スチレン樹脂、アクリロニトリル/スチレン樹脂(AS樹脂)、スチレン/ブタジエン樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン樹脂(ABS樹脂)、アクリレート/アクリロニトリル/スチレン樹脂(AAS樹脂)、塩素化ポリエチレン/アクリロニトリル/スチレン樹脂(ACS樹脂)、アクリロニトリル/エチレン/スチレン樹脂(AES樹脂)、スチレン/Nーフェニルマレイミド樹脂、スチレン/アクリロニトリル/Nーフェニルマレイミド樹脂、メタクリル酸メチル/ブタジエン/スチレン樹脂(MBS樹脂)、メタクリル酸メチル/アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン樹脂(MABS樹脂)およびハイインパクト−ポリスチレン樹脂(HI−PS樹脂)などが挙げられ、それらは二種以上の混合物として用いても良く、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン樹脂(ABS樹脂)、メタクリル酸メチル/ブタジエン/スチレン樹脂(MBS樹脂)、メタクリル酸メチル/アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン樹脂(MABS樹脂)およびハイインパクト−ポリスチレン樹脂(HI−PS樹脂)が好ましく用いられる(/は共重合を示す)。
【0027】
前記の好ましく用いられる芳香族ポリエステル樹脂としては、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリシクロヘキサンテレフタレート樹脂およびポリエステルエラストマーなどが挙げられ、それらの樹脂中に共重合可能な成分を共重合した物であってもよい。
【0028】
また、(A)ポリ乳酸樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂組成物のポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂の配合量は、ポリ乳酸樹脂と、その他の熱可塑性樹脂の合計を100重量%として、ポリ乳酸樹脂85〜15重量%に対し、その他の熱可塑性樹脂15〜85重量%が好ましく、ポリ乳酸樹脂80〜20重量%に対し、その他の熱可塑性樹脂20〜80重量%であることが好ましく、ポリ乳酸樹脂70〜30重量%に対し、その他の熱可塑性樹脂30〜70重量%であることが特に好ましい。前記その他の熱可塑性樹脂の配合量を15重量%以上とすることで耐熱性を改良する効果が発現できるため好ましく、また、85重量%以下とすることで、植物由来のポリ乳酸樹脂成分を使用することができ、地球環境保全の見地から好ましい。
【0029】
本発明では、(B)加水分解防止剤として、(B−1)エポキシ化合物と、(B−2)カルボジイミド化合物を特定割合で配合することが重要である。(B)加水分解防止剤は、発明樹脂組成物の優れた機械特性を維持しながら加水分解性と耐熱性を大きく向上させる物である。
【0030】
本発明の加水分解防止剤を構成する(B−1)エポキシ化合物としては、単官能のエポキシ化合物であっても2官能以上のエポキシ化合物であってもよいが、グリシジル基を有するエポキシ化合物であることが好ましく、例えばグリシジルエステル化合物、グリシジルエーテル化合物、およびグリシジルエステルエーテル化合物が挙げられる。これらのエポキシ化合物は1種以上で用いることができる。前記のグリシジルエステル化合物としては、限定されるものではないが、具体例として、安息香酸グリシジルエステル、tBu−安息香酸グリシジルエステル、P−トルイル酸グリシジルエステル、シクロヘキサンカルボン酸グリシジルエステル、ペラルゴン酸グリシジルエステル、ステアリン酸グリシジルエステル、ラウリン酸グリシジルエステル、パルミチン酸グリシジルエステル、ベヘン酸グリシジルエステル、バーサティク酸グリシジルエステル、オレイン酸グリシジルエステル、リノール酸グリシジルエステル、リノレイン酸グリシジルエステル、ベヘノール酸グリシジルエステル、ステアロール酸グリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、ナフタレンジカルボン酸ジグリシジルエステル、ビ安息香酸ジグリシジルエステル、メチルテレフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、コハク酸ジグリシジルエステル、セバシン酸ジグリシジルエステル、ドデカンジオン酸ジグリシジルエステル、オクタデカンジカルボン酸ジグリシジルエステル、トリメリット酸トリグリシジルエステル、ピロメリット酸テトラグリシジルエステルなどが挙げられ、これらは1種または2種以上を用いることができる。
【0031】
また、前記のグリシジルエ−テル化合物としては、限定されるものではないが、具体例として、フェニルグリシジルエ−テル、P−フェニルフェニルグリシジルエ−テル、1,4−ビス(β,γ−エポキシプロポキシ)ブタン、1,6−ビス(β,γ−エポキシプロポキシ)ヘキサン、1,4−ビス(β,γ−エポキシプロポキシ)ベンゼン、1−(β,γ−エポキシプロポキシ)−2−エトキシエタン、1−(β,γ−エポキシプロポキシ)−2−ベンジルオキシエタン、2,2−ビス−[р−(β,γ−エポキシプロポキシ)フェニル]プロパンおよびビス−(4−ヒドロキシフェニル)メタンなどのその他のビスフェノールとエピクロルヒドリンの反応で得られるジグリシジルエーテルなどが挙げられ、これらは1種または2種以上を用いることができる。
【0032】
また、好ましく用いられる(B−1)エポキシ化合物としては、単官能のグリシジルエステル化合物とグリシジルエーテル化合物を併用したエポキシ化合物あるいは単官能のグリシジルエステル化合物、さらに好ましくは、単官能のグリシジルエステル化合物が得られる組成物の粘度安定性と耐加水分解性のバランスに優れている。
【0033】
また、(B−1)エポキシ化合物のエポキシ当量は、500未満のエポキシ化合物が好ましく、さらにはエポキシ当量400未満のエポキシ化合物が特に好ましい。ここで、エポキシ当量とは、1グラム当量のエポキシ基を含むエポキシ化合物のグラム数であり、エポキシ化合物をピリジンに溶解し、0.05N塩酸を加え45℃で加熱後、指示薬にチモールブルーとクレゾールレッドの混合液を用い、0.05N苛性ソーダで逆滴定する方法により求めることができる。
【0034】
本発明の(B)加水分解防止剤を構成する(B−2)カルボジイミド化合物としては、分子内に少なくともひとつの(−N=C=N−)で表されるカルボジイミド基を有する化合物であり、製造例としては適当な触媒の存在下に、有機イソシアネートを加熱し、脱炭酸反応で製造できる。また、分子内にイソシアネートが残存する化合物であってもよい。
【0035】
また、(B−2)カルボジイミド化合物の具体例としては、ジフェニルカルボジイミド、ジ−シクロヘキシルカルボジイミド、ジ−2,6−ジメチルフェニルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジオクチルデシルカルボジイミド、ジ−o−トルイルカルボジイミド、ジ−p−トルイルカルボジイミド、ジ−p−ニトロフェニルカルボジイミド、ジ−p−アミノフェニルカルボジイミド、ジ−p−ヒドロキシフェニルカルボジイミド、ジ−p−クロルフェニルカルボジイミド、ジ−o−クロルフェニルカルボジイミド、ジ−3,4−ジクロルフェニルカルボジイミド、ジ−2,5−ジクロルフェニルカルボジイミド、p−フェニレン−ビス−o−トルイルカルボジイミド、p−フェニレン−ビス−ジシクロヘキシルカルボジイミド、p−フェニレン−ビス−ジ−p−クロルフェニルカルボジイミド、2,6,2′,6′−テトライソプロピルジフェニルカルボジイミド、ヘキサメチレン−ビス−シクロヘキシルカルボジイミド、エチレン−ビス−ジフェニルカルボジイミド、エチレン−ビス−ジ−シクロヘキシルカルボジイミド、N,N´−ジ−o−トリイルカルボジイミド、N,N´−ジフェニルカルボジイミド、N,N´−ジオクチルデシルカルボジイミド、N,N´−ジ−2,6−ジメチルフェニルカルボジイミド、N−トリイル−N´−シクロヘキシルカルボジイミド、N,N´−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−2,6−ジ−tert−ブチルフェニルカルボジイミド、N−トルイル−N´−フェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−p−ニトロフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−p−アミノフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−p−ヒドロキシフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−シクロヘキシルカルボジイミド、N,N´−ジ−p−トルイルカルボジイミド、N,N′−ベンジルカルボジイミド、N−オクタデシル−N′−フェニルカルボジイミド、N−ベンジル−N′−フェニルカルボジイミド、N−オクタデシル−N′−トリルカルボジイミド、N−シクロヘキシル−N′−トリルカルボジイミド、N−フェニル−N′−トリルカルボジイミド、N−ベンジル−N′−トリルカルボジイミド、N,N′−ジ−o−エチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−p−エチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−o−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−p−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−o−イソブチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−p−イソブチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2,6−ジエチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2−エチル−6−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2−イソブチル−6−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2,4,6−トリメチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2,4,6−トリイソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2,4,6−トリイソブチルフェニルカルボジイミドなどのモノ又はジカルボジイミド化合物、ポリ(1,6−ヘキサメチレンカルボジイミド)、ポリ(4,4′−メチレンビスシクロヘキシルカルボジイミド)、ポリ(1,3−シクロヘキシレンカルボジイミド)、ポリ(1,4−シクロヘキシレンカルボジイミド)、ポリ(4,4′−ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(3,3′−ジメチル−4,4′−ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(ナフチレンカルボジイミド)、ポリ(p−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(m−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリルカルボジイミド)、ポリ(ジイソプロピルカルボジイミド)、ポリ(メチル−ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリエチルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)などのポリカルボジイミドなどが挙げられる。なかでもN,N´−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド、2,6,2′,6′−テトライソプロピルジフェニルカルボジイミドが好ましい。さらには、前記したカルボジイミド化合物と熱可塑性樹脂との混合物、カルボジイミド化合物と熱可塑性樹脂の末端と反応している混合物あっても良く、一種以上で用いても良い。
【0036】
(B−1)エポキシ化合物と、(B−2)カルボジイミド化合物の混合物からなる(B)加水分解防止剤の配合量は、(A)成分100重量部に対し、(B−1)0.01〜0.75重量部、(B−2)0.01〜0.75重量部であり、かつ(B−1)と(B−2)の配合比率は(B−1)と(B−2)の合計に対して、(B−1)20〜80重量%、(B−2)80〜20重量%の重量比率で含有されていることが機械特性を維持しながら加水分解性と耐熱性を大きく向上させる観点から必要である。さらに、(A)成分100重量部に対し、(B−1)0.05〜0.7重量部、(B−2)0.05〜0.7重量部であり、かつ(B−1)と(B−2)の配合比率は(B−1)と(B−2)の合計に対して、(B−1)20〜80重量%、(B−2)80〜20重量%の重量比率で含有されていることがより好ましく、さらには、(A)成分100重量部に対し、(B−1)0.1〜0.5重量部、(B−2)0.1〜0.5重量部であり、かつ(B−1)と(B−2)の配合比率は(B−1)と(B−2)の合計に対して、(B−1)20〜80重量%、(B−2)80〜20重量%の重量比率で含有されていることがとくに好ましい。(B−1)と(B−2)が0.01重量部未満の場合は加水分解を抑制する効果が小さく、0.75重量部を超える場合は機械的性質を低下させるため好ましくない。また、(B−1)と(B−2)の配合比率が(B−1)20〜80重量%、(B−2)80〜20重量%の範囲に含有されていない場合は、加水分解性、機械特性および耐熱性のいずれかあるいは複数の性能を低下させるため好ましくない。
【0037】
本発明では、組成物にさらに(C)充填剤を配合することができる。本発明における(C)充填剤とは、本発明の樹脂組成物の成形品外観、耐熱性、摺動性、抗菌性および結晶化速度の一部以上を向上させる効果がある。(C)充填剤としては、例えば板状、針状、繊維状および粒状の充填剤、摺動性および抗菌性に効果のある充填剤、環境負荷低減に効果のある天然由来の有機充填剤および有機結晶核剤などが挙げられ、(A)成分中で均一に分散可能な充填剤が好ましく、珪酸鉱物、珪酸塩鉱物や種々の鉱物類を粉砕などの加工により微粉化した板状、針状、および粒状ものが好ましく用いられる。具体例としては、ベントナイト、ドロマイト、モンモリロナイト、バーライト、微粉ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、酸化ケイ素、ドーソナイト、シラスバルーン、クレー、セリサイト、長石粉、カオリン、ゼオライト(合成ゼオライトも含む)、滑石、マイカ、合成マイカおよびワラステナイト(合成ワラステナイトも含む)、ガラスフレーク、ガラスビーズ、ハイドロタルサイトおよびシリカなどが挙げられ、滑石やシリカは得られる成形品の白色性が高く好ましく用いられ、脂肪酸、シランカッフプリング剤などの有機物で修飾されてても良い。また、滑石、カオリン、モンモリロナイト、合成マイカ、クレー、ゼオライト、シリカなどの充填剤は、無機系結晶核剤としても有用であり、(A)ポリ乳酸樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂組成物の結晶化速度を促進する効果がある。
【0038】
また、前記の板状、粒状無機充填剤の平均粒径は、10μm以下であることが機械的性質の低下が少なく、より好ましくは5μm以下であることが好ましい。下限としては、製造時のハンドリング性の点から0.5μm以上の平均粒径であることが好ましく、1μm以上の平均粒径であることがより好ましい。また、平均粒径はレーザー回折散乱法の粒度分布測定装置で測定された体積基準累積分布から求めた50%値を平均粒径とした。
【0039】
また、繊維状充填剤の例としては、ガラス繊維、アスベスト繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、金属繊維、チタン酸カリウムウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、マグネシウム系ウイスカー、珪素系ウイスカー、スラグ繊維、石膏繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化ホウ素繊維、窒化硅素繊維及びホウ素繊維などの無機繊維状充填剤、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、再生セルロース繊維、アセテート繊維、ケナフ、ラミー、木綿、ジュート、麻、サイザル、亜麻、リネン、絹、マニラ麻、さとうきび、木材パルプ、紙屑、古紙及びウールなどの有機繊維状充填剤などが挙げられ、繊維状充填剤は、熱変形温度を高める効果があり、高温で使用される成形品に有用な充填剤である。とくにガラス繊維やケナフが好ましく用いられ、ケナフは植物由来の繊維としても有用である。
【0040】
また、前記の繊維状充填剤には、エチレン/酢酸ビニル共重合体やポリウレタン、およびエポキシ樹脂などの樹脂で被覆または集束処理されていてもよく、アミノシランやエポキシシランなどのカップリング剤などで処理されていても良い。
【0041】
また、摺動性を改良する充填剤としては、グラファイト、摺動性改良用のフッ素樹脂などが挙げられ、抗菌性を改良する充填剤としては、銀を含む公知の充填剤が挙げられる。
【0042】
また、天然由来の有機充填剤としては、籾殻、おから、古紙粉砕材、衣料粉砕材などのチップ状のもの、紙粉、木粉、竹粉、セルロース粉末、籾殻粉末、果実殻粉末、キチン粉末、キトサン粉末、タンパク質、澱粉などが挙げられる。
【0043】
また、有機系結晶核剤としては安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸カルシウム、安息香酸マグネシウム、テレフタル酸リチウム、テレフタル酸ナトリウム、シュウ酸カルシウム、ラウリン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸マグネシウム、モンタン酸ナトリウム、モンタン酸カルシウムなどの有機カルボン酸金属塩、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、スルホイソフタル酸ナトリウムなどの有機スルホン酸塩、ステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、パルチミン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、トリメシン酸トリス(t−ブチルアミド)などの有機カルボン酸アミド、エチレン−アクリル酸またはメタクリル酸コポリマーのナトリウム塩などのカルボキシル基を有する重合体のナトリウム塩またはカリウム塩(いわゆるアイオノマー)、ベンジリデンソルビトールおよびその誘導体、ナトリウム−2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェートなどのリン化合物金属塩等が挙げられる。なお、前記の有機系結晶核剤は後で述べる離型剤としても活用できる。また、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンなどの顔料も有機系結晶核剤として用いることができる。
【0044】
また、(C)充填剤の配合量は、(A)ポリ乳酸樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂組成物100重量部に対し、1〜150重量部が好ましく、より好ましくは2〜120重量部、とくに好ましくは3〜100重量部であり、成形品外観と耐熱性の観点から1重量部以上が好ましく、成形時の流動性の観点から150重量部以下が好ましい。
【0045】
本発明では、組成物にさらに(D)難燃剤を配合することができる。本発明における(D)難燃剤とは、樹脂に難燃性を付与する目的で添加される物質であれば特に限定されるものではなく、具体的には、臭素系難燃剤、リン系難燃剤、窒素化合物系難燃剤、シリコーン系難燃剤、およびその他の無機系難燃剤などが挙げられ、これらは少なくとも一種以上を選択して用いることができる。
【0046】
本発明で用いられる臭素系難燃剤の具体例としては、デカブロモジフェニルオキサイド、オクタブロモジフェニルオキサイド、テトラブロモジフェニルオキサイド、テトラブロモ無水フタル酸、ヘキサブロモシクロドデカン、ビス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)エタン、エチレンビステトラブロモフタルイミド、ヘキサブロモベンゼン、1,1−スルホニル[3,5−ジブロモ−4−(2,3−ジブロモプロポキシ)]ベンゼン、ポリジブロモフェニレンオキサイド、テトラブロムビスフェノール−S、トリス(2,3−ジブロモプロピル−1)イソシアヌレート、トリブロモフェノール、トリブロモフェニルアリルエーテル、トリブロモネオペンチルアルコール、ブロム化ポリスチレン、ブロム化ポリエチレン、テトラブロムビスフェノール−A、テトラブロムビスフェノール−A誘導体、テトラブロムビスフェノール−A−エポキシオリゴマーまたはポリマー、テトラブロムビスフェノール−A−カーボネートオリゴマーまたはポリマー、ブロム化フェノールノボラックエポキシなどのブロム化エポキシ樹脂、テトラブロムビスフェノール−A−ビス(2−ヒドロキシジエチルエーテル)、テトラブロムビスフェノール−A−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロムビスフェノール−A−ビス(アリルエーテル)、テトラブロモシクロオクタン、エチレンビスペンタブロモジフェニル、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート、ポリ(ペンタブロモベンジルポリアクリレート)、オクタブロモトリメチルフェニルインダン、ジブロモネオペンチルグリコール、ペンタブロモベンジルポリアクリレート、ジブロモクレジルグリシジルエーテル、N,N′−エチレン−ビス−テトラブロモフタルイミドなどが挙げられる。なかでも、テトラブロムビスフェノール−A−エポキシオリゴマー、テトラブロムビスフェノール−A−カーボネートオリゴマー、ブロム化エポキシ樹脂が好ましい。
【0047】
本発明で用いられるリン系難燃剤は特に限定されることはなく、通常一般に用いられるリン系難燃剤を用いることができ、代表的にはリン酸エステル、ポリリン酸塩などの有機リン系化合物や赤リンが挙げられる。
【0048】
上記の有機リン系化合物におけるリン酸エステルの具体例としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリス(フェニルフェニル)ホスフェート、トリナフチルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、ジフェニル(2−エチルヘキシル)ホスフェート、ジ(イソプロピルフェニル)フェニルホスフェート、モノイソデシルホスフェート、2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、メラミンホスフェート、ジメラミンホスフェート、メラミンピロホスフェート、トリフェニルホスフィンオキサイド、トリクレジルホスフィンオキサイド、メタンホスホン酸ジフェニル、フェニルホスホン酸ジエチル、レゾルシノールポリフェニルホスフェート、レゾルシノールポリ(ジ−2,6−キシリル)ホスフェート、ビスフェノールAポリクレジルホスフェート、ハイドロキノンポリ(2,6−キシリル)ホスフェートならびにこれらの縮合物などの縮合リン酸エステルを挙げることができる。市販の縮合リン酸エステルとしては、例えば大八化学社製PX−200、PX−201、PX−202、CR−733S、CR−741、CR747などを挙げることができる。
【0049】
また、リン酸、ポリリン酸と周期律表IA族〜IVB族の金属、アンモニア、脂肪族アミン、芳香族アミンとの塩からなるリン酸塩、ポリリン酸塩を挙げることもできる。ポリリン酸塩の代表的な塩として、金属塩としてリチウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、鉄(II)塩、鉄(III)塩、アルミニウム塩など、脂肪族アミン塩としてメチルアミン塩、エチルアミン塩、ジエチルアミン塩、トリエチルアミン塩、エチレンジアミン塩、ピペラジン塩などがあり、芳香族アミン塩としてはピリジン塩、トリアジン塩、メラミン塩、アンモニウム塩などが挙げられる。
【0050】
また、上記の他、トリスクロロエチルホスフェート、トリスジクロロプロピルホスフェート、トリス(β−クロロプロピル)ホスフェート)などの含ハロゲンリン酸エステル、また、リン原子と窒素原子が二重結合で結ばれた構造を有するホスファゼン化合物、リン酸エステルアミド、ポリリン酸メラミンなどを挙げることができる。
【0051】
また、赤リンとしては、未処理の赤リンのみでなく、熱硬化性樹脂被膜、金属水酸化物被膜、金属メッキ被膜から成る群より選ばれる1種以上の化合物被膜により処理された赤リンを好ましく使用することができる。熱硬化性樹脂被膜の熱硬化性樹脂としては、赤リンを被膜できる樹脂であれば特に制限はなく、例えば、フェノール−ホルマリン系樹脂、尿素−ホルマリン系樹脂、メラミン−ホルマリン系樹脂、アルキッド系樹脂などが挙げられる。金属水酸化物被膜の金属水酸化物としては、赤リンを被膜できるものであれば特に制限はなく、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、水酸化チタンなどを挙げることができる。金属メッキ被膜の金属としては、赤リンを被膜できるものであれば特に制限はなく、Fe、Ni、Co、Cu、Zn、Mn、Ti、Zr、Alまたはこれらの合金などが挙げられる。さらに、これらの被膜は2種以上組み合わせて、あるいは2種以上に積層されていてもよい。
【0052】
本発明で用いられる窒素化合物系難燃剤としては、脂肪族アミン化合物、芳香族アミン化合物、含窒素複素環化合物、シアン化合物、脂肪族アミド、芳香族アミド、尿素、チオ尿素などを挙げることができる。なお、上記リン系難燃剤で例示したようなポリリン酸アンモニウムなど含窒素リン系難燃剤はここでいう窒素化合物系難燃剤には含まない。脂肪族アミンとしては、エチルアミン、ブチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、ブチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,2−ジアミノシクロオクタンなどを挙げることができる。芳香族アミンとしては、アニリン、フェニレンジアミンなどを挙げることができる。含窒素複素環化合物としては、尿酸、アデニン、グアニン、2,6−ジアミノプリン、2,4,6−トリアミノピリジン、トリアジン化合物などを挙げることができる。シアン化合物としては、ジシアンジアミドなどを挙げることができる。脂肪族アミドとしては、N,N−ジメチルアセトアミドなどを挙げることができる。芳香族アミドとしては、N,N−ジフェニルアセトアミドなどを挙げることができる。
【0053】
上記において例示したトリアジン化合物は、トリアジン骨格を有する含窒素複素環化合物であり、トリアジン、メラミン、ベンゾグアナミン、メチルグアナミン、シアヌル酸、メラミンシアヌレート、メラミンイソシアヌレート、トリメチルトリアジン、トリフェニルトリアジン、アメリン、アメリド、チオシアヌル酸、ジアミノメルカプトトリアジン、ジアミノメチルトリアジン、ジアミノフェニルトリアジン、ジアミノイソプロポキシトリアジンなどを挙げることができる。
【0054】
メラミンシアヌレートまたはメラミンイソシアヌレートとしては、シアヌール酸またはイソシアヌール酸とトリアジン化合物との付加物が好ましく、通常は1対1(モル比)、場合により1対2(モル比)の組成を有する付加物を挙げることができる。また、公知の方法で製造されるが、例えば、メラミンとシアヌール酸またはイソシアヌール酸の混合物を水スラリーとし、良く混合して両者の塩を微粒子状に形成させた後、このスラリーを濾過、乾燥後に一般には粉末状で得られる。また、上記の塩は完全に純粋である必要は無く、多少未反応のメラミンないしシアヌール酸、イソシアヌール酸が残存していても良い。また、樹脂に配合される前の平均粒径は、成形品の難燃性、機械的強度、表面性の点から100〜0.01μmが好ましく、更に好ましくは80〜1μmであり、平均粒径はレーザー回折散乱法の粒度分布測定装置で測定された体積基準累積分布から求めた50%値を平均粒径とした。
【0055】
窒素化合物系難燃剤の中では、含窒素複素環化合物が好ましく、中でもトリアジン化合物が好ましく、さらにメラミンシアヌレートが好ましい。
【0056】
また、上記窒素化合物系難燃剤の分散性が悪い場合には、トリス(β−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートなどの分散剤やポリビニルアルコール、金属酸化物などの公知の表面処理剤などを併用してもよい。
【0057】
本発明で用いられるシリコーン系難燃剤としては、シリコーン樹脂、シリコーンオイルを挙げることができる。前記シリコーン樹脂は、SiO、RSiO/2、RSiO、RSiO1/2の構造単位を組み合わせてできる三次元網状構造を有する樹脂などを挙げることができる。ここで、Rはメチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、または、フェニル基、ベンジル基等の芳香族基、または上記置換基にビニル基を含有した置換基を示す。前記シリコーンオイルは、ポリジメチルシロキサン、およびポリジメチルシロキサンの側鎖あるいは末端の少なくとも1つのメチル基が、水素元素、アルキル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、アミノ基、エポキシ基、ポリエーテル基、カルボキシル基、メルカプト基、クロロアルキル基、アルキル高級アルコールエステル基、アルコール基、アラルキル基、ビニル基、またはトリフロロメチル基の選ばれる少なくとも1つの基により変性された変性ポリシロキサン、またはこれらの混合物、あるいはこれらが共重合された樹脂などを挙げることができる。
【0058】
また、ポリジメチルシロキサンなどのシロキサン化合物を共重合した熱可塑性樹脂でも良く、例えばポリカーボネート樹脂にシロキサン化合物を共重合した熱可塑性樹脂などが挙げられる。
【0059】
本発明で用いられるその他の無機系難燃剤としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ソーダ、ヒドロキシスズ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、メタスズ酸、酸化スズ、酸化スズ塩、硫酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化第一鉄、酸化第二鉄、酸化第一錫、酸化第二スズ、ホウ酸亜鉛、ホウ酸カルシウム、ホウ酸アンモニウム、オクタモリブデン酸アンモニウム、タングステン酸の金属塩、タングステンとメタロイドとの複合酸化物酸、スルファミン酸アンモニウム、臭化アンモニウム、ジルコニウム系化合物、グアニジン系化合物、黒鉛、膨潤性黒鉛などを挙げることができる。中でも、水酸化アルミニウム、ホウ酸亜鉛、膨潤性黒鉛が好ましく、公知の表面処理剤などで処理されていても良い。
【0060】
前記(D)難燃剤は、1種で用いても、2種以上併用して用いてもかまわない。
【0061】
前記(D)難燃剤の中では、ハロゲンを全く含有しないリン系難燃剤、窒素化合物系難燃剤、シリコーン系難燃剤およびその他の無機系難燃剤から選択される少なくとも1種または2種以上を組み合わせて用いることが好ましい。上記において難燃剤を2種以上併用する場合、リン系難燃剤と他の難燃剤を併用することが好ましい。リン系難燃剤と併用する窒素化合物系難燃剤としては、含窒素複素環化合物が好ましく、中でもトリアジン化合物が好ましく、さらにメラミンシアヌレートが好ましい。また、リン系難燃剤と併用するシリコーン系難燃剤としては、シリコーン樹脂が好ましい。また、リン系難燃剤と併用するその他の無機系難燃剤としては、水酸化アルミニウム、ホウ酸亜鉛および膨潤性黒鉛が好ましい。また、リン系難燃剤との配合比率は任意の量を組み合わせることができ、とくに難燃剤100重量%中のリン系難燃剤の量は5重量%以上であることが好ましく、5〜95重量%であることがより好ましい。
【0062】
さらに好ましい難燃剤としては、前記(D)難燃剤の中で、ハロゲン化合物とリン化合物とを全く含有しない窒素化合物系難燃剤、シリコーン系難燃剤およびその他の無機系難燃剤から選択される少なくとも1種または2種以上を組み合わせて用いることがとくに好ましい。
【0063】
また、(D)難燃剤の配合量は、(A)ポリ乳酸樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂組成物100重量部に対して、1〜100重量部であり、さらには2〜90重量部が好ましく、とくに好ましくは3〜80重量部であり、1重量部以上とすることで難燃性を与えることができるので好ましく、100重量部以下とすることで機械的性質が低下しないため好ましい。
【0064】
また、前記の(D)難燃剤に(E)フッ素系樹脂を組み合わせて用いることにより、燃焼時のドリップを改善する効果があり、より高度な難燃性を得ることができる。(E)フッ素系樹脂とは、物質分子中にフッ素を含有する樹脂であり、具体的には、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン/エチレン共重合体、ヘキサフルオロプロピレン/プロピレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、ビニリデンフルオライド/エチレン共重合体などが挙げられるが、中でもポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン/エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライドが好ましく、特にポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン/エチレン共重合体が好ましく、さらにはポリテトラフルオロエチレンが好ましく、ポリテトラフルオロエチレン粒子と有機系重合体とからなるポリテトラフルオロエチレン含有混合粉体も好ましく用いられる。ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂の分子量は10万〜1000万の範囲のものが好ましく、とくに10万〜100万の範囲のものがより好ましく、本発明の押出成形性と難燃性にとくに効果がある。ポリテトラフルオロエチレンの市販品としては、三井・デュポンフロロケミカル(株)製の“テフロン(登録商標)”6−J、“テフロン(登録商標)”6C−J、“テフロン(登録商標)”62−J、旭アイシーアイフロロポリマーズ(株)製の“フルオン”CD1やCD076などが市販されている。また、ポリテトラフルオロエチレン粒子と有機系重合体とからなるポリテトラフルオロエチレン含有混合粉体の市販品としては、三菱レイヨン(株)から、“メタブレン(登録商標)”Aシリーズとして市販され、“メタブレン(登録商標)”A−3000、“メタブレン(登録商標)”A−3800などが市販されている。また、ポリテトラフルオロエチレンの“テフロン(登録商標)”6−Jなどは凝集し易いため、他の樹脂組成物と共にヘンシェルミキサーなどで機械的に強く混合すると凝集により塊が生じる場合があり、混合条件によってはハンドリング性や分散性に課題がある。一方、ポリテトラフルオロエチレン粒子と有機系重合体とからなるポリテトラフルオロエチレン含有混合粉体は前記のハンドリング性や分散性に優れ、とくに好ましく用いられる。前記のポリテトラフルオロエチレン粒子と有機系重合体とからなるポリテトラフルオロエチレン含有混合粉体とは、限定されるものではないが、特開2000−226523号公報で開示されているポリテトラフルオロエチレン粒子と有機系重合体とからなるポリテトラフルオロエチレン含有混合粉体などが挙げられ、前記の有機系重合体としては芳香族ビニル系単量体、アクリル酸エステル系単量体、およびシアン化ビニル系単量体を10重量%以上含有する有機系重合体などであり、それらの混合物でもよく、ポリテトラフルオロエチレン含有混合粉体中のポリテトラフルオロエチレンの含有量は0.1重量%〜90重量%であることが好ましい。また、(E)フッ素系樹脂の配合量は、(A)ポリ乳酸樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂組成物100重量部に対して、0.01〜5重量部であり、好ましくは0.02〜4重量部が好ましく、より好ましくは0.03〜3重量部が好ましく、フッ素系樹脂の配合量が3重量部以下とすることで本発明の流動性や難燃性が低下しないため好ましく、0.01重量部以上とすることで難燃性が向上するので好ましい。
【0065】
前記(D)難燃剤および(D)難燃剤と(E)フッ素系樹脂を配合した樹脂組成物の難燃性は、アメリカUL規格サブジェクト94(UL−94規格)の難燃性規格において、厚み1.6mm(1/16インチ)以上の成形品でV−2、V−1、V−0の難燃性を持つ樹脂組成物を得ることが可能である。
【0066】
ここで、アメリカUL規格サブジェクト94(UL−94規格)の難燃性について説明すると、難燃性の試験方法には水平試験と垂直試験があり、水平試験をクリアする材料は難燃性ランクHBとして評価される。また、試験材料を垂直に固定して炎を材料の下部に当てて試験を行う垂直試験は水平試験より燃えやすくなるため、材料としては高度な難燃性が要求され、難燃性ランクとしてV−2、V−1、V−0が定められ、数字が小さい程難燃性に優れ、ここではV−0が最も高度な難燃性ランクとなる。
【0067】
本発明においては、本発明の性能を損なわない範囲でさらに(A)樹脂組成物に配合される、ポリ乳酸樹脂、芳香族ポリカーボネート樹脂、スチレン系共重合体、芳香族ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、セルローエステル樹脂以外の熱可塑性樹脂を配合することができる。配合することができる他の熱可塑性樹脂としては、耐衝撃性、表面外観性、成形性および柔軟性などの組成物に要求される特性を付与することができる熱可塑性樹脂であり、(A)成分に配合されない熱可塑性樹脂である。具体例としては、(A)成分以外のポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート/サクシネート樹脂、ポリブチレンサクシネート樹脂、脂肪族芳香族ポリエステル樹脂およびポリカプロラクトン樹脂など)、ポリエチレン樹脂およびポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリオレフィン系共重合体、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、熱可塑性澱粉樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、フェノキシ樹脂、熱可塑性フェノール樹脂、ポリ−4−メチルペンテン−1樹脂、コアシェルゴムおよびポリビニルアルコール樹脂などの熱可塑性樹脂を挙げることができ、上記の熱可塑性樹脂はグリシジル基、エポキシ基、酸無水物あるいは異なるポリマーの一種がグラフトあるいは共重合された熱可塑性樹脂であっても良い。
【0068】
中でも(A)成分以外のポリエステル樹脂、コアシェルゴムおよびグリシジル基、エポキシ基、酸無水物あるいは異なるポリマーの一種がグラフトあるいは共重合された熱可塑性樹脂から選ばれる少なくとも1種を配合することが好ましく、とくに耐衝撃性を向上させる観点からコアシェルゴムおよびグリシジル基、エポキシ基、酸無水物あるいは異なるポリマーの一種がグラフトあるいは共重合された熱可塑性樹脂から選ばれる少なくとも1種を配合することが好ましい。
【0069】
前記の好ましく用いられるコアシェルゴムとは、最外層のシェル層と2層以上の内層のコア層からなる多層構造体であり、例えばコア層がジメチルシロキサン/アクリル酸ブチル重合体などの軟質系の樹脂で最外層がスチレン系共重合体、ポリメタクリル酸メチルなどの熱可塑性樹脂さらには、いずれかの層がメタクリル酸グリシジルや酸無水物などで変性されている多層構造体である。また、多層構造体の粒子径については、特に限定されるものではないが、0.01μm以上、1000μm以下であることが好ましく、さらに、0.02μm以上、100μm以下であることがより好ましく、特に0.05μm以上、10μm以下であることが最も好ましい。また、多層構造体において、コアとシェルの重量比は、特に限定されるものではないが、多層構造体に対して、コア層が10重量部以上、90重量部以下であることが好ましく、さらに、30重量部以上、80重量部以下であることがより好ましい。
【0070】
また、多層構造体としては、前記した条件を満たす市販品を用いてもよく、また公知の方法により作製して用いることもできる。
【0071】
また、多層構造体の市販品としては、例えば、三菱レイヨン社製”メタブレン”、鐘淵化学工業社製”カネエース”、呉羽化学工業社製”パラロイド”、ロームアンドハース社製”アクリロイド”、武田薬品工業社製”スタフィロイド”およびクラレ社製”パラペットSA”などが挙げられる。
【0072】
前記の好ましく用いられるグリシジル基、エポキシ基、酸無水物あるいは異なるポリマーの一種がグラフトあるいは共重合された熱可塑性樹脂の具体例としては、エチレン/グリシジルメタクリレート、エチレン/アクリル酸メチル/グリシシルメタクリレート、エチレン/無水マレイン酸、エチレン/プロピレン/無水マレイン酸、エチレン/ブテン−1/無水マレイン酸、エチレン/エチルアクリレート−g−ポリスチレン、エチレン/グリシシルメタクリレート−g−ポリスチレン、エチレン/グリシシルメタクリレート−g−ポリメタクリル酸メチル、エチレン/エチルアクリート無水マレイン酸−g−ポリメタクリル酸メチル、エチレン/グリシシルメタクリレート−g−ポリスチレン/ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート−g−ポリスチレン、エチレン/エチルアクリレート/無水マレイン酸−g−ポリスチレン、ポリカーボネート−g−ポリスチレン/ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート−g−無水マレイン酸/ポリスチレン、ポリカーボネート−g−無水マレイン酸/ポリスチレン/ポリアクリロニトリルなどが挙げられ、本発明の性能を維持しながらさらに耐衝撃性に優れる樹脂組成物が得られる(/は共重合、−g−はグラフトを示す)。前記のグリシジル基、エポキシ基、酸無水物あるいは異なるポリマーの一種がグラフトあるいは共重合された熱可塑性樹脂の市販品としては、例えば、住友化学(株)製“ボンドファースト”や三井石油化学(株)製“アドマー”や“N−タフマー”、日本油脂(株)製“モディパー”などが挙げられる。
【0073】
また、(A)成分以外の熱可塑性樹脂の配合量は、(A)ポリ乳酸樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂組成物100重量部に対して、0.1〜30重量部が好ましく、0.3〜20重量部がさらに好ましく、0.1重量部以上とすることで耐衝撃性が改善するので好ましく、30重量部以下とすることで耐熱性を低下させないため好ましい。
【0074】
本発明においては、安定剤を配合することが好ましい。本発明で使用する安定剤としては、通常熱可塑性樹脂の安定剤に用いられるものを用いることができる。具体的には、酸化防止剤、光安定剤などを挙げることができる。これらを配合することで、機械特性、成形性、耐熱エージング性および耐久性に優れた成形品を得ることができる。
【0075】
本発明で使用する酸化防止剤としてはヒンダードフェノール系化合物、ホスファイト系化合物、チオエーテル系化合物などをあげることができる。
【0076】
ヒンダードフェノール系化合物の例としては、トリエチレングリコール‐ビス‐[3‐(3‐t‐ブチル‐5‐メチル‐4‐ヒドロキシフェニル)プロピオネート]及びテトラキス[メチレン‐3‐(3’,5’‐ジ‐t‐ブチル‐4’‐ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンである。
【0077】
ホスファイト系化合物としては、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンホスホナイトなどが好ましく使用できる。
【0078】
チオエーテル系化合物の具体的な例としては、ジラウリルチオジプロピオネート、ジトリデシルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ドデシルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−オクタデシルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ミリスチルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ステアリルチオプロピオネート)などが挙げられる。
【0079】
本発明で使用する光安定剤としては、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、芳香族ベンゾエート系化合物、蓚酸アニリド系化合物、シアノアクリレート系化合物及びヒンダードアミン系化合物などを挙げることができる。
【0080】
本発明において上記安定剤は、1種類で用いても良いし、2種類以上を組み合せて用いても良い。また、安定剤としてはヒンダードフェノール系化合物および/またはベンゾトリアゾール系化合物を用いることが好ましい
また、安定剤の配合量は、(A)ポリ乳酸樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂組成物100重量部に対して、0.01〜3重量部が好ましく、0.03〜2重量部がさらに好ましく、0.01重量部以上とすることで安定剤の効果が発現するので好ましく、3重量部以下とすることで機械的性質を低下させないため好ましい。
【0081】
本発明においては、離型剤を配合することが好ましい。本発明で使用する離型剤としては、通常熱可塑性樹脂の離型剤に用いられるものを用いることができる。具体的には、脂肪酸、脂肪酸金属塩、オキシ脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪族部分鹸化エステル、パラフィン、低分子量ポリオレフィン、脂肪酸アミド、アルキレンビス脂肪酸アミド、脂肪族ケトン、脂肪酸低級アルコールエステル、脂肪酸多価アルコールエステル、脂肪酸ポリグリコールエステル、変成シリコーンなどを挙げることができる。これらを配合することで、機械特性、成形性、耐熱性および耐久性に優れた成形品を得ることができる。
【0082】
脂肪酸としては、炭素数6〜40のものが好ましく、具体的には、オレイン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、ベヘン酸、アラキドン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸およびこれらの混合物などが挙げられる。脂肪酸金属塩としては、炭素数6〜40の脂肪酸のアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩が好ましく、具体的にはステアリン酸カルシウム、モンタン酸ナトリウム、モンタン酸カルシウムなどが挙げられ、これらは前に述べた有機結晶核剤としても活用できる。オキシ脂肪酸としては1,2−オキシステアリン酸などが挙げられ、脂肪酸エステルとしては、ステアリン酸エステル、オレイン酸エステル、リノール酸エステル、リノレン酸エステル、アジピン酸エステル、ベヘン酸エステル、アラキジン酸エステル、モンタン酸エステル、イソステアリン酸エステル、重合酸のエステル、脂肪族部分鹸化エステルとしてはモンタン酸部分鹸化エステルなどが挙げられる。パラフィンとしては、炭素数18以上のものが好ましく、流動パラフィン、天然パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタムなどが挙げられ、低分子量ポリオレフィンとしては、例えば粘度法で測定される分子量が20000以下のものが好ましく、具体的にはポリエチレンワックス、塩素化ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどが挙げられ、脂肪酸アミドとしては、炭素数6以上のものが好ましく、具体的にはオレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘン酸アミドなどが挙げられ、アルキレンビス脂肪酸アミドとしては、 炭素数6以上のものが好ましく、具体的にはメチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ステアリン酸アミドなどが挙げられ、脂肪族ケトンとしては、高級脂肪族ケトンなどが挙げられ、脂肪酸低級アルコールエステルとしては、 炭素数6以上のものが好ましく、エチルステアレートブチルステアレート、エチルベヘネート、ライスワックスなどが挙げられ、脂肪酸多価アルコールエステルとしては、グリセリンモノステアレート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールアジピン酸ステアレート、ジペンタエリスリトールアジピン酸ステアリン酸、ソルビタンモノベヘネートなどが挙げられ、脂肪酸ポリグリコールエステルとしては、ポリエチレングリコール脂肪酸エステルやポリプロピレングリコール脂肪酸エスエルが挙げられ、変成シリコーンとしては、チルスチリル変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、高級脂肪酸アルコキシ変性シリコーン、高級脂肪酸含有シリコーン、高級脂肪酸エステル変性シリコーン、メタクリル変性シリコーン、フッ素変性シリコーンなどを挙げることができる。
【0083】
上記のうち、脂肪酸、脂肪酸金属塩、オキシ脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸部分鹸化エステル、パラフィン、低分子量ポリオレフィン、脂肪族アミド、アルキレンビス脂肪酸アミドが好ましく、脂肪酸部分鹸化エステルおよび/またはアルキレンビス脂肪酸アミドがより好ましい。なかでも、モンタン酸エステル、モンタン酸部分鹸化エステル、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ソルビタン脂肪酸エステル、エルカ酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミドが好ましく、特にモンタン酸部分鹸化エステル、エチレンビスステアリン酸アミドが好ましい。本発明において上記の離型剤は、1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合せて用いてもよい。
【0084】
また、離型剤の配合量は、(A)ポリ乳酸樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂組成物100重量部に対して、0.01〜3重量部が好ましく、0.03〜2重量部がさらに好ましく、0.01重量部以上とすることで離型剤の効果が発現するので好ましく、3重量部以下とすることで機械的性質を低下させないため好ましい。
【0085】
本発明においては、制電性を付与できるという点で、さらに帯電防止剤を配合することが好ましい。本発明で使用する帯電防止剤としては、公知のものをいずれも用いることができ、そのイオン性は特に限定されるものではなく、カチオン性、アニオン性、両性イオン性、非イオン性のいずれを用いてもよいが、(A)ポリ乳酸樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂組成物の熱分解を抑制できるという点で、両性イオン性、非イオン性が好ましく、非イオン性がより好ましい。
【0086】
上記の帯電防止剤の配合量は、(A)ポリ乳酸樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂組成物100重量部に対して、0.05〜25重量部が好ましく、0.1〜20重量部がさらに好ましく、0.05重量部以上とすることで帯電防止の効果が発現するので好ましく、25重量部以下とすることで機械的性質を低下させないため好ましい。
【0087】
本発明においては、さらに、カーボンブラック、酸化チタン、弁柄、群青、焼成イエローおよびシアニン系着色剤さらに種々の色の顔料や染料を1種以上配合することにより種々の色に樹脂を調色、耐候(光)性、および導電性を改良することも可能である。
【0088】
また、前記のカーボンブラックとしては、限定されるものではないが、チャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、アントラセンブラック、油煙、松煙、および、黒鉛などが挙げられ、平均粒径10μm以下、ジブチルフタレート吸油量50〜400cm3/100gのカーボンブラックが好ましく用いられ、処理剤として酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、ポリオール、シランカップリング剤などで処理されていても良い。
【0089】
また、前記の酸化チタンとしては、ルチル形、あるいはアナターゼ形などの結晶形を持ち、平均粒子径5μm以下の酸化チタンが好ましく用いられ、処理剤として酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、ポリオール、シランカップリング剤などで処理されていても良い。また、上記のカーボンブラック、酸化チタン、および種々の色の顔料や染料は、本発明の樹脂組成物との分散性向上や製造時のハンドリング性の向上のため、種々の熱可塑性樹脂と溶融ブレンドあるいは単にブレンドした混合材料として用いても良い。とくに、前記の熱可塑性樹脂としては、ポリ乳酸樹脂および(A)ポリ乳酸樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂組成物に用いられるポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂が好ましく用いられる。
【0090】
また、前記のシアニン系着色剤は、ポリ乳酸樹脂の結晶核剤として有用である。
【0091】
また、顔料や染料の配合量は、(A)ポリ乳酸樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂組成物100重量部に対し、0.01〜10重量部、好ましくは0.02〜9重量部、より好ましくは0.03〜8重量部であり、0.01重量部以上とすることで調色、耐候(光)性、および導電性を改良する効果が発現するので好ましく、10重量部以下とすることで機械的性質を低下させないため好ましい。
【0092】
本発明においては、さらに層状珪酸塩を配合することができ、成形性の改質が可能である。また、層状珪酸塩は層間に存在する交換性陽イオンが有機オニウムイオンで交換された層状珪酸塩を配合することがさらに好ましい。本発明における層間に存在する交換性陽イオンが有機オニウムイオンで交換された層状珪酸塩とは、交換性の陽イオンを層間に有する層状珪酸塩の交換性の陽イオンを、有機オニウムイオンで置き換えた包接化合物である。
【0093】
交換性の陽イオンを層間に有する層状珪酸塩は、幅0.05〜0.5μm、厚さ6〜15オングストロームの板状物が積層した構造を持ち、その板状物の層間に交換性の陽イオンを有している。そのカチオン交換容量は0.2〜3meq/gのものが挙げられ、好ましくはカチオン交換容量が0.8〜1.5meq/gのものである。
【0094】
前記の層状珪酸塩の具体例としてはモンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイトなどのスメクタイト系粘土鉱物、バーミキュライト、ハロイサイト、カネマイト、ケニヤイト、燐酸ジルコニウム、燐酸チタニウムなどの各種粘土鉱物、Li型フッ素テニオライト、Na型フッ素テニオライト、Na型四珪素フッ素雲母、Li型四珪素フッ素雲母等の膨潤性雲母等が挙げられ、天然のものであっても合成されたものであっても良い。これらのなかでもモンモリロナイト、ヘクトライトなどのスメクタイト系粘土鉱物やNa型四珪素フッ素雲母、Li型フッ素テニオライトなどの膨潤性合成雲母が好ましい。
【0095】
本発明においては、さらに可塑剤を配合することができる。本発明で使用する可塑剤としては、一般にポリマーの可塑剤として用いられる公知のものを特に制限なく用いることができ、例えばポリエステル系可塑剤、グリセリン系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、ポリアルキレングリコール系可塑剤およびエポキシ系可塑剤などを挙げることができる。
【0096】
本発明の樹脂組成物の製造方法は、本発明で規定する要件を満たす限り特に限定されるものではないが、例えば、(A)ポリ乳酸樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂組成物、(B)加水分解防止剤(B−1)エポキシ化合物と、(B−2)カルボジイミド化合物、必要に応じて(C)充填剤、(D)難燃剤、(E)フッ素系樹脂、さらに必要に応じてその他の添加剤を予めブレンドした後、(A)ポリ乳酸樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂組成物に配合される熱可塑性樹脂の中で最も高い融点を持つ熱可塑性樹脂の融点以上において、単軸またはニ軸押出機で、均一に溶融混練する方法や、溶液中で混合した後に溶媒を除く方法などが好ましく用いられる。なお、溶融混練温度が270℃を超すと(A)成分中のポリ乳酸樹脂が熱分解を起こしやすく好ましくない。
【0097】
本発明の樹脂組成物は、加水分解性、機械特性および耐熱性に優れる汎用ポリマーとして射出成形、ブロー成形、押出成形、シート成形、フィルム成形および未延伸糸、延伸糸、超延伸糸など各種繊維への紡糸などの方法によって、各種製品形状に加工され、機械機構部品、電気・電子部品、自動車部品、光学機器、建築部材および日用品など各種用途の成形品として利用することができる。とくに、より耐久性が必要な自動車部品あるいは電気・電子機器筐体や部品として好ましく用いられる。
【0098】
また、本発明の成形品は、植物由来の(A)ポリ乳酸樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂組成物であることから、石油由来の樹脂と比較すると自然環境保護という観点からも有用な成形品として好適に使用できる。
【0099】
また、(C)充填剤として滑石を配合した樹脂組成物は、成形品に光沢と艶があり成形品外観に優れる成形品が得られ、成形品外観が必要とされる成形品として有用である。さらに、(C)充填剤としてガラス繊維を配合した樹脂組成物は特異的に熱変形温度の高い成形品が得られ、高温雰囲気下で用いられる成形品や高温で熱変形を起こし難い成形品として好適に使用できる。
【0100】
また、(D)難燃剤、(E)特定のフッ素系樹脂をさらに配合した樹脂組成物は、アメリカUL規格サブジェクト94(UL94)の垂直燃焼試験の規格を満たすことが可能であることから、難燃性が必須とされるハウジングや電気製品の筐体などの成形品として好適に使用できる。
【実施例】
【0101】
次に、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
【0102】
[実施例1〜8]、[比較例1〜9]、[実施例9〜15]
(A)ポリ乳酸樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂のポリ乳酸樹脂として、D体の含有量が1.2%であり、PMMA換算の重量平均分子量が17万であるポリL乳酸樹脂を用い、表1〜表3に示す(A)ポリ乳酸樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂のポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂、加水分解防止剤、および必要に応じて、充填剤および難燃剤を表1〜表3に示した割合で混合し、30mm径の2軸押出機(日本製鋼所製TEX−30)で、シリンダー温度250℃、回転数150rpmの条件で溶融混練を行い、樹脂組成物を得た。
【0103】
得られた樹脂組成物について、東芝機械製IS55EPN射出成形機を用い、シリンダー温度250℃、金型温度40℃で射出成形を行い、種々の射出成形品を得た。得られた射出成形品を用い、下記の(1)〜(6)に示す性能評価を行い、結果を配合表と同じく表1〜表3に示した。なお、(A)成分のポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂を配合した材料はシリンダー温度250℃で射出成形した。
【0104】
(1)機械特性
射出成形により作製したASTM1号ダンベルをASTMD−638に従って、引張降伏応力と引張破断伸びを測定した。
【0105】
(2)加水分解性
射出成形により作製した3mm厚みのASTM1号ダンベル試験片をタバイエスペック(株)製“ヒューミディキャビネット”LHL−112の恒温高湿漕に投入した。なお、恒温高湿漕の温度と湿度および処理時間の条件は、60℃×95%RH×200hで行い、ASTM法D638に従い引張試験を行い、次式より引張強度保持率を求め、加水分解性の指標とした。
引張強度保持率(%)=(処理後の引張強度÷未処理品の引張強度)×100
【0106】
(3)耐熱性
射出成形により作製した約3mm厚みの曲げ試験片を用い、ASTMD−648に従って荷重0.45MPaの条件で熱変形温度を測定した。
【0107】
(4)成形品外観
射出成形により作製したASTM1号ダンベルの外観を目視観察し、光沢や艶のある成形品に対し、成形品外観○と判定した。
【0108】
(5)難燃性
射出成形により作製した127mm×12.7mm×厚み1.6mm(5インチ×1/2インチ×厚み1/16インチ)の試験片を用いて、明細書中に記載のアメリカUL規格サブジェクト94(UL94)の垂直燃焼試験法に従って燃焼試験を行い、難燃性ランクを求めた。前記の難燃性ランクに合格しなかった材料は規格外とした。
【0109】
(6)耐衝撃性
射出成形により作製した約3mm厚みのノッチを入れないアイゾット衝撃試験片を用い、ASTMD−256に従ってアイゾット衝撃を測定した。
【0110】
【表1】

【0111】
【表2】

【0112】
【表3】

【0113】
表1の実施例1〜8から、本発明のエポキシ化合物とカルボジイミド化合物の混合物を配合した樹脂組成物は、単独での多量添加よりも大幅に加水分解性と機械特性および耐熱性に優れる材料であることがわかる。
【0114】
表2の比較例1〜9から、ポリ乳酸樹脂単体、ポリ乳酸樹脂にエポキシ化合物とカルボジイミド化合物を併用した樹脂組成物および(A)ポリ乳酸樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂組成物にエポキシ化合物とカルボジイミド化合物を配合しない樹脂組成物と本発明の範囲外の配合量のエポキシ化合物とカルボジイミド化合物を配合した樹脂組成物は、加水分解性と機械特性および耐熱性のいずれかに劣る材料であることがわかる。
【0115】
また、エポキシ化合物とカルボジイミド化合物を併用しない樹脂組成物からは、加水分解性と機械特性および耐熱性に優れる材料が得られないことがわかる。
【0116】
さらに、表3の実施例9〜15から、本発明の性能を維持しながら、(C)充填剤の滑石の配合によりとくに成形品外観に優れる材料が得られ、(C)充填剤のガラス繊維を配合した樹脂組成物は特異的に高い熱変形温度を示すことがわかる。
【0117】
また、(D)難燃剤の配合により難燃性が付与された成形品が得られ、とくに、難燃剤と(E)フッ素系樹脂を併用した場合は、より高度な難燃性を示す成形品が得られることがわかる。
【0118】
また、本発明(A)成分以外の熱可塑性樹脂の脂肪族ポリエステル樹脂のポリブチレンサクシネート樹脂、エチレン/グリシジルメタクリレート樹脂およびエチレン/ブテン−1/無水マレイン酸樹脂をさらに配合した樹脂組成物は、本発明の性能を維持しながら、高度な難燃性と高い衝撃強度を持つ樹脂組成物が得られることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリ乳酸樹脂ならびに芳香族ポリカーボネート樹脂、スチレン系共重合体、芳香族ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂およびセルロースエステル樹脂から選ばれる少なくとも一種の熱可塑性樹脂との混合物100重量部に対し、(B−1)エポキシ化合物0.01〜0.75重量部と、(B−2)カルボジイミド化合物0.01〜0.75重量部を配合してなる樹脂組成物であり、かつ(B−1)と(B−2)の配合比率が、(B−1)と(B−2)の合計に対して、(B−1)20〜80重量%、(B−2)80〜20重量%である樹脂組成物。
【請求項2】
さらに(C)充填剤を配合してなる請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
さらに(D)難燃剤を配合してなる請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
さらに(E)フッ素系樹脂を配合してなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂組成物からなる成形品。
【請求項6】
前記成形品が、自動車部品または電気・電子機器の筐体もしくは部品である請求項5に記載の成形品。

【公開番号】特開2008−266432(P2008−266432A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−110087(P2007−110087)
【出願日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】