説明

樹脂組成物及びその硬化物

【課題】高い屈折率を有し、なおかつ低透湿性に優れた硬化物(樹脂硬化物)を形成でき、硬化収縮が小さい樹脂組成物(硬化性樹脂組成物)を提供する。
【解決手段】下記式(1)で表される化合物(A)と、フェノール類とアルデヒドの縮合物、芳香族炭化水素とアルデヒドの縮合物、石油樹脂、スチレン化フェノール、及びロジンからなる群より選択された少なくとも1種の化合物(B)と、重合開始剤(C)とを含むことを特徴とする樹脂組成物。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物及びその硬化物に関する。より具体的には、特に、高い屈折率を有し、なおかつ低透湿性に優れた封止材が要求される、有機エレクトロルミネッセンス装置、発光ダイオード装置(LED装置)、ディスプレイなどの電子デバイス用途に好ましく使用される樹脂組成物及びその硬化物、上記樹脂組成物を含む封止剤及びシール剤、並びに、上記樹脂組成物の硬化物を含む有機エレクトロルミネッセンス装置、LED装置、ディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、有機エレクトロルミネッセンス装置、発光ダイオード装置(LED装置)、ディスプレイ(液晶表示装置やタッチパネルなど)などの様々な電子デバイスが広く利用されている。これらの電子デバイスにおいては、デバイス内部に水分が浸入して電子素子の劣化、電気回路の短絡、電極の腐食などを生じ、製品としての信頼性が低下することを防ぐため、低透湿性の樹脂材料(封止材、シール材)による電子素子や電気回路等の封止がなされている。これらの電子デバイスの中でも、特に有機エレクトロルミネッセンス装置においては、有機エレクトロルミネッセンス素子が水分に対して脆弱であるため、特に透湿性の低い封止材やシール材の使用が求められている。
【0003】
有機エレクトロルミネッセンス素子用封止材を形成するための封止剤として、脂肪族環状骨格を有するエポキシ化合物を20〜80重量部、及び、芳香族環を有するエポキシ化合物を80〜20重量部と光カチオン重合開始剤とを含有する樹脂組成物が提案されている(特許文献1参照)。具体的には、脂肪族環状骨格を有するエポキシ化合物、芳香族環を有するエポキシ化合物として、それぞれ両末端にエポキシ基を有する化合物が開示されている。しかしながら、上記樹脂組成物の硬化物は、85℃、85%RH条件下で55g/m2・24h以上の透湿度を示し、十分な低透湿性を有するものとはいえなかった。
【0004】
また、有機エレクトロルミネッセンス装置等の素子パッケージ用接着剤として、(A)エポキシ化合物、(B)ノボラック樹脂、(C)光カチオン重合開始剤、及び(D)フィラーを含有する樹脂組成物が提案されている(特許文献2参照)。しかしながら、十分な低透湿性を得るためには、上記樹脂組成物へのフィラーの配合が必須であり、フィラーを配合しない場合の上記樹脂組成物の硬化物の透湿度は、60℃、90%RH条件下で60g/m2・24hであり、十分な低透湿性を発揮できるものではなかった。
【0005】
一方、上述の電子デバイス中には、例えば、有機エレクトロルミネッセンス装置における電極やパッシベーション膜のように、屈折率の高い部材(高屈折率部材)が多く使用されている。このため、これらの電子デバイスに使用される封止材には、上述の低透湿性に加え、上記高屈折率部材に接するように配置された場合であっても、該高屈折率部材との界面で光の反射を生じにくくするため、高い屈折率を有することが求められている。
【0006】
例えば、低吸水性に優れ、高屈折率を有する樹脂を製造するための硬化性樹脂組成物として、硫黄原子を含む特定構造のビニルオリゴマー100〜5重量%、及び、該ビニルオリゴマーと共重合可能である化合物0〜95重量%により構成された硬化性樹脂組成物が知られている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−46035号公報
【特許文献2】特開2010−24364号公報
【特許文献3】特開平8−183816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献3に開示された硬化性樹脂組成物の硬化物は、比較的低い吸水性を示すものの、十分な低透湿性を有するものではなかった。特に、上記硬化物は、有機エレクトロルミネッセンス装置用の封止材に要求される低透湿性を満足することは困難であった。このように、高い屈折率を有し、なおかつ透湿性が十分に低い、特に有機エレクトロルミネッセンス装置用の封止材として好ましく使用できる材料は、未だ得られていないのが現状である。
【0009】
さらに、上記電子デバイスにおける封止材は、通常、樹脂組成物(硬化性樹脂組成物)を所定の型内に注型し、これを加熱又は光照射によって硬化させることによって形成される。このような樹脂組成物には、電子デバイスの品質向上の観点から、硬化の際の収縮(硬化収縮)が小さいことが求められている。
【0010】
従って、本発明の目的は、高い屈折率を有し、なおかつ低透湿性に優れた硬化物(樹脂硬化物)を形成でき、硬化収縮が小さい樹脂組成物(硬化性樹脂組成物)を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、高い屈折率を有し、なおかつ低透湿性に優れた硬化物を提供することにある。
さらに、本発明の他の目的は、高い屈折率を有し、なおかつ低透湿性に優れた封止材又はシール材を形成でき、硬化収縮が小さい封止剤又はシール剤を提供することにある。
さらにまた、本発明の他の目的は、電子素子等が上記硬化物により封止され、硬化収縮や水分(湿気)による悪影響が生じにくく、上記硬化物の高い屈折率による高い品質を有する有機エレクトロルミネッセンス装置、LED装置、及びディスプレイを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、分子内に2つの反応性官能基、2以上の芳香環、及び3以上の硫黄原子を有する特定構造の化合物と、フェノール類とアルデヒドの縮合物、芳香族炭化水素とアルデヒドの縮合物、石油樹脂、スチレン化フェノール、及びロジンからなる群より選択された少なくとも1種の化合物と、重合開始剤とを含有する樹脂組成物は硬化収縮が小さく、該樹脂組成物の硬化物が高い屈折率を有し、なおかつ優れた低透湿性を有することを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
すなわち、本発明は、下記式(1)で表される化合物(A)と、フェノール類とアルデヒドの縮合物、芳香族炭化水素とアルデヒドの縮合物、石油樹脂、スチレン化フェノール、及びロジンからなる群より選択された少なくとも1種の化合物(B)と、重合開始剤(C)とを含むことを特徴とする樹脂組成物を提供する。
【化1】

(式(1)中、Raは、それぞれ独立に、反応性官能基を示す。R1は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基、ハロアルキル基、アリール基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシアルキル基、保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、保護基で保護されていてもよいスルホ基、ニトロ基、シアノ基、又は保護基で保護されていてもよいアシル基を示す。R2は単結合又は連結基を示す。mは、それぞれ独立に、0〜4の整数を示す。nは、0〜10の整数を示す。)
【0013】
さらに、前記化合物(A)が、下記式(1’)で表される化合物である前記の樹脂組成物を提供する。
【化2】

(式(1’)中、Ra、R1、mは、前記に同じ。)
【0014】
さらに、無機フィラー(D)を含む前記の樹脂組成物を提供する。
【0015】
さらに、シランカップリング剤(E)を含む前記の樹脂組成物を提供する。
【0016】
さらに、前記重合開始剤(C)が、光若しくは熱カチオン重合開始剤、又は、光若しくは熱ラジカル重合開始剤である前記の樹脂組成物を提供する。
【0017】
また、本発明は、前記の樹脂組成物を硬化してなる硬化物を提供する。
【0018】
また、本発明は、前記の樹脂組成物を含むことを特徴とする封止剤を提供する。
【0019】
また、本発明は、前記の樹脂組成物を含むことを特徴とするシール剤を提供する。
【0020】
また、本発明は、前記の硬化物を含む有機エレクトロルミネッセンス装置を提供する。
【0021】
また、本発明は、前記の硬化物を含むLED装置を提供する。
【0022】
また、本発明は、前記の硬化物を含むディスプレイを提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明の樹脂組成物は上記構成を有するため、硬化収縮が小さく、硬化させることにより、高い屈折率を有し、かつ低透湿性に優れた硬化物を形成することができる。このため、本発明の樹脂組成物は、特に、有機エレクトロルミネッセンス装置、LED装置、ディスプレイなどの電子デバイスにおける封止材又はシール材を形成するための封止剤又はシール剤として好ましく使用できる。本発明の樹脂組成物を用いて電子素子等を封止して得られた電子デバイスは、樹脂組成物の硬化収縮による悪影響や、デバイス内部への水分の浸入による悪影響が最小限に抑えられ、優れた耐久性を有する。さらに、上記電子デバイスは、本発明の樹脂組成物の硬化物(封止材)が高い屈折率を有することに起因して、例えば、封止材と高屈折率部材との界面における光の反射が抑制されるなど、高い品質を有する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物は、下記式(1)で表される化合物(A)と、フェノール類とアルデヒドの縮合物、芳香族炭化水素とアルデヒドの縮合物、石油樹脂、スチレン化フェノール、及びロジンからなる群より選択された少なくとも1種の化合物(B)と、重合開始剤(C)とを必須成分として含む組成物(樹脂組成物)である。
【化3】

【0025】
[化合物(A)]
本発明の樹脂組成物を構成する化合物(A)は、上記式(1)で表される化合物である。上記式(1)中のRa(2つのRa)は、それぞれ独立に、反応性官能基(重合性官能基)を示す。即ち、式(1)中の2つのRaは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。特に、Raとしては、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、エポキシ基、グリシジル基、オキセタニル基が好ましく、より好ましくはビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基である。
【0026】
上記式(1)中のR1(式(1)に示された複数のR1)は、それぞれ独立に(同一でもよいし、異なっていてもよい)、ハロゲン原子、アルキル基、ハロアルキル基、アリール基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシアルキル基、保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、保護基で保護されていてもよいスルホ基、ニトロ基、シアノ基、又は保護基で保護されていてもよいアシル基を示す。また、mが2〜4の整数である場合、同一の芳香環に結合した2〜4個のR1が互いに結合して、芳香環を構成する炭素原子とともに4員以上の環を形成していてもよい。なお、mが2〜4の整数である場合、同一の芳香環に結合した2〜4個のR1は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0027】
上記R1におけるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。上記R1におけるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のC1-10アルキル基(好ましくはC1-5アルキル基)などが挙げられる。上記ハロアルキル基としては、例えば、クロロメチル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基等のC1-10ハロアルキル基(好ましくはC1-5ハロアルキル基)などが挙げられる。上記R1におけるアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。なお、上記アリール基の芳香環は、例えば、フッ素原子などのハロゲン原子、メチル基などのC1-4アルキル基、トリフルオロメチル基などのC1-5ハロアルキル基、ヒドロキシル基、メトキシ基等のC1-4アルコキシ基、アミノ基、ジアルキルアミノ基、カルボキシル基、メトキシカルボニル基などのアルコキシカルボニル基、ニトロ基、シアノ基、アセチル基等のアシル基等の置換基を有していてもよい。
【0028】
上記ヒドロキシアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル基などのC1-10アルキル基が有する水素原子の少なくとも1つがヒドロキシル基で置換されたC1-10ヒドロキシアルキル基(好ましくはC1-5ヒドロキシアルキル基)などが挙げられる。上記R1におけるヒドロキシル基の保護基、ヒドロキシアルキル基の保護基としては、有機合成の分野で慣用の保護基、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、t−ブチル基などのC1-4アルキル基など);アルケニル基(例えば、アリル基など);シクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基など);アリール基(例えば、2,4−ジニトロフェニル基など);アラルキル基(例えば、ベンジル基など);置換メチル基(例えば、メトキシメチル基、メチルチオメチル基、ベンジルオキシメチル基、t−ブトキシメチル基、2−メトキシエトキシメチル基など)、置換エチル基(例えば、1−エトキシエチル基など)、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基、1−ヒドロキシアルキル基(例えば、1−ヒドロキシエチル基など)などのヒドロキシル基とアセタール又はヘミアセタール基を形成可能な基;アシル基(例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基などのC1-6脂肪族アシル基;アセトアセチル基;ベンゾイル基などの芳香族アシル基など);アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基等のC1-4アルコキシ−カルボニル基など);アラルキルオキシカルボニル基;置換又は無置換カルバモイル基;置換シリル基(例えば、トリメチルシリル基など);分子内にヒドロキシル基やヒドロキシメチル基が2以上存在するときには置換基を有していてもよい二価の炭化水素基(例えば、メチレン基、エチリデン基、イソプロピリデン基、シクロペンチリデン基、シクロヘキシリデン基、ベンジリデン基など)などが挙げられる。
【0029】
上記R1におけるアミノ基の保護基としては、有機合成の分野で慣用の保護基、例えば、上記ヒドロキシル基の保護基として例示したアルキル基、アラルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基などが挙げられる。
【0030】
上記R1におけるカルボキシル基の保護基、スルホ基の保護基としては、有機合成の分野で慣用の保護基、例えば、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などのC1-6アルコキシ基など)、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、トリアルキルシリルオキシ基、置換基を有していてもよいアミノ基、ヒドラジノ基、アルコキシカルボニルヒドラジノ基、アラルキルカルボニルヒドラジノ基などが挙げられる。
【0031】
上記R1におけるアシル基としては、例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基などのC1-6脂肪族アシル基、アセトアセチル基、ベンゾイル基などの芳香族アシル基などが挙げられる。上記アシル基の保護基としては、有機合成の分野で慣用の保護基を使用できる。上記アシル基が保護された形態としては、例えば、アセタール(ヘミアセタールを含む)などが挙げられる。
【0032】
上記R1が芳香環1つあたりに2つ以上結合している場合(即ち、式(1)中のmが2〜4の場合)、これらが互いに結合して式(1)中の芳香環を構成する炭素原子と共に形成する4員以上の環としては、例えば、5員の脂環式炭素環、6員の脂環式炭素環、2以上の脂環式炭素環(単環)の縮合環などの脂環式炭素環;5員のラクトン環、6員のラクトン環などのラクトン環などが挙げられる。
【0033】
上記式(1)中のR2は、単結合又は連結基(1以上の原子を有する二価の基)を示す。上記連結基としては、例えば、二価の炭化水素基、カルボニル基、エーテル基(エーテル結合)、チオエーテル基(チオエーテル結合)、エステル基(エステル結合)、カーボネート基(カーボネート結合)、アミド基(アミド結合)、又はこれらが複数個連結した基などが挙げられる。上記連結基は、水酸基、カルボキシル基などの置換基を有していてもよく、このような連結基としては、例えば、1以上の水酸基を有する二価の炭化水素基などが挙げられる。
【0034】
上記二価の炭化水素基としては、炭素数が1〜18の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基、二価の脂環式炭化水素基等が挙げられる。炭素数が1〜18の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基等が挙げられる。二価の脂環式炭化水素基としては、例えば、1,2−シクロペンチレン基、1,3−シクロペンチレン基、シクロペンチリデン基、1,2−シクロヘキシレン基、1,3−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキシレン基、シクロヘキシリデン基等の二価のシクロアルキレン基(シクロアルキリデン基を含む)などが挙げられる。
【0035】
上記式(1)中の複数のm(それぞれの芳香環上の置換基R1の数)は、それぞれ独立に(同一であってもよいし、異なっていてもよい)、0〜4の整数を示す。また、n(nが付された括弧内の構造単位の繰り返し数)は、0〜10の整数を示す。
【0036】
中でも、上記式(1)中のnは、樹脂組成物の粘度、性状の観点で、0〜3が好ましく、より好ましくは0である。即ち、化合物(A)としては、特に、上記式(1)中のnが0である、下記式(1’)で表される化合物が好ましい。
【化4】

(式(1’)中、Ra、R1、mは、前記に同じ。)
【0037】
本発明の樹脂組成物における化合物(A)(上記(1)で表される化合物)の具体例としては、例えば、下記式で示される化合物などが挙げられる。
【化5】

【0038】
【化6】

なお、上記式におけるRは、水素原子又はメチル基である。
【0039】
なお、本発明の樹脂組成物において化合物(A)は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0040】
本発明の樹脂組成物(100重量%)における化合物(A)の含有量(配合量)は、特に限定されないが、5〜95重量%が好ましく、より好ましくは20〜95重量%、さらに好ましくは40〜90重量%である。化合物(A)の含有量を上記範囲に制御することにより、樹脂組成物の塗布性が向上し、さらには、硬化物の屈折率を高くし、低透湿性を向上させやすい傾向がある。
【0041】
化合物(A)の製造方法としては、特に限定されず、公知乃至慣用の方法を適用することができる。例えば、式(1)中のRaが水素原子である化合物(例えば、4,4’−チオビスベンゼンチオールなど)を原料とし、これにハロゲン化ビニル、ハロゲン化アリル、(メタ)アクリル酸のハロゲン化物、エピハロヒドリンなどを塩基の存在下で反応させる方法などによって、製造できる。また、式(1)中のRaがビニル基である化合物については、例えば、式(1)中のRaが水素原子である化合物(例えば、4,4’−チオビスベンゼンチオールなど)とジハロエタンとを反応させ、続いて、脱ハロゲン化水素する方法などによっても製造できる。
【0042】
[化合物(B)]
本発明の樹脂組成物を構成する化合物(B)は、フェノール類とアルデヒドの縮合物、芳香族炭化水素とアルデヒドの縮合物、石油樹脂、スチレン化フェノール、及びロジンからなる群より選択された少なくとも1種の化合物(樹脂)である。
【0043】
化合物(B)におけるフェノール類とアルデヒドの縮合物(以下、「フェノール類−アルデヒド樹脂」と称する場合がある)は、フェノール類とアルデヒドとを縮合させることにより得られる化合物(樹脂)である。上記フェノール類としては、例えば、フェノール、置換フェノール(例えば、クレゾールなどのアルキル置換フェノール)、レゾルシノール、置換レゾルシノールなどが挙げられる。上記アルデヒドとしては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フルフラールなどが挙げられる。上記フェノール類とアルデヒドとの縮合反応は、例えば、酸触媒又はアルカリ触媒の存在下、必要に応じて加熱することによって実施することができる。
【0044】
上記フェノール類−アルデヒド樹脂としては、例えば、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂などのフェノール樹脂;ノボラック型クレゾール樹脂、レゾール型クレゾール樹脂などのクレゾール樹脂;ノボラック型ビフェニルフェノール樹脂、レゾール型ビフェニルフェノール樹脂などのビフェニル構造を有するフェノール樹脂などが挙げられる。また、上記フェノール類−アルデヒド樹脂としては、上記例示のフェノール類−アルデヒド樹脂を変性したもの(例えば、ロジン変性体、テルペン変性体、マレイン酸変性体、エチレンオキシド付加体、ポリオール変性体など)を使用することもできる。
【0045】
上記フェノール類−アルデヒド樹脂としては、上記の中でも、ノボラック型フェノール樹脂、ノボラック型クレゾール樹脂、ノボラック型ビフェニルフェノール樹脂が好ましい。
【0046】
上記フェノール類−アルデヒド樹脂としては、例えば、商品名「SAP−X」(旭有機材工業(株)製;p−クレゾールノボラック樹脂)、商品名「MEH 7851−M」(明和化成(株)製;フェノール−ビフェニルホルムアルデヒド縮合物)などの市販品を使用することもできる。
【0047】
上記フェノール類−アルデヒド樹脂は、特に限定されないが、化合物(A)との相溶性の観点で、25℃以下において液状であること、又は、25〜200℃(より好ましくは25〜180℃、さらに好ましくは25〜150℃)に軟化点を有することが好ましい。なお、軟化点は、例えば、JIS K7234に記載の環球法に準拠する方法により測定できる。
【0048】
上記フェノール類−アルデヒド樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、化合物(A)との相溶性の観点で、100〜10000が好ましく、より好ましくは150〜5000、さらに好ましくは150〜2000である。なお、上記重量平均分子量は、例えば、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定される標準ポリスチレン換算の分子量より算出できる。
【0049】
上記フェノール類−アルデヒド樹脂の水酸基価は、特に限定されないが、化合物(A)との相溶性の観点で、10〜1000mgKOH/gが好ましく、より好ましくは10〜500mgKOH/g、さらに好ましくは10〜100mgKOH/gである。上記水酸基価は、例えば、JIS K0070に記載の中和滴定法に準拠して測定することができる。
【0050】
本発明の樹脂組成物における化合物(B)としての芳香族炭化水素とアルデヒドの縮合物(以下、「芳香族炭化水素−アルデヒド樹脂」と称する場合がある)は、芳香族炭化水素とアルデヒドとを縮合させることにより得られる化合物(樹脂)である。上記芳香族炭化水素としては、例えば、アルキル置換ベンゼン(例えば、トルエン、キシレンなど)、アルキル置換ナフタレン(例えば、メチルナフタレン、ジメチルナフタレンなど)などが挙げられる。上記アルデヒドとしては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フルフラールなどが挙げられる。上記芳香族炭化水素とアルデヒドとの縮合反応は、例えば、酸触媒又はアルカリ触媒の存在下、必要に応じて加熱することによって実施することができる。
【0051】
上記芳香族炭化水素−アルデヒド樹脂としては、例えば、キシレン樹脂、トルエン樹脂、アルキルナフタレン樹脂などが挙げられる。また、上記芳香族炭化水素−アルデヒド樹脂としては、上記例示の芳香族炭化水素−アルデヒド樹脂を変性したもの(例えば、ロジン変性体、テルペン変性体、マレイン酸変性体、エチレンオキシド付加体、ポリオール変性体など)を使用することもできる。
【0052】
上記芳香族炭化水素−アルデヒド樹脂としては、上記の中でも、キシレン樹脂が好ましい。
【0053】
上記芳香族炭化水素−アルデヒド樹脂としては、例えば、商品名「レジタックス A−2」(エスジーケミカル(株)製;モノメチルナフタレンホルムアルデヒド縮合物)、商品名「ニカノール Y−50」、「ニカノール Y−1000」、「ニカノール G」(以上、フドー(株)製;キシレン樹脂)などの市販品を使用することもできる。
【0054】
上記芳香族炭化水素−アルデヒド樹脂は、特に限定されないが、化合物(A)との相溶性の観点で、25℃以下において液状であること、又は、25〜200℃(より好ましくは25〜180℃、さらに好ましくは25〜150℃)に軟化点を有することが好ましい。
【0055】
上記芳香族炭化水素−アルデヒド樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、化合物(A)との相溶性の観点で、100〜10000が好ましく、より好ましくは150〜5000、さらに好ましくは150〜2000である。なお、上記重量平均分子量は、例えば、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定される標準ポリスチレン換算の分子量より算出できる。
【0056】
本発明の樹脂組成物における化合物(B)としての石油樹脂は、灯油、ナフサなどの留分を水蒸気分解する際に副生する高級不飽和炭化水素(C5留分やC9留分など)をカチオン重合して得られる化合物(樹脂)である。上記石油樹脂としては、例えば、ピペリレン(シスピペリレン、トランスピペリレン)、イソプレン、2−メチルブテンなどの不飽和脂肪族炭化水素を必須の(又は主たる)モノマー成分とする脂肪族石油樹脂;インデン、メチルインデン、スチレン、メチルスチレン、ビニルトルエン、クマロンなどの不飽和芳香族炭化水素を必須の(又は主たる)モノマー成分とする芳香族石油樹脂;上記不飽和脂肪族炭化水素と上記不飽和芳香族炭化水素の両方を必須の(又は主たる)モノマー成分とする脂肪族/芳香族混成樹脂;上述の脂肪族石油樹脂、芳香族石油樹脂、脂肪族/芳香族混成樹脂における不飽和結合及び/又は芳香環(不飽和結合及び芳香環のいずれか一方又は両方)が水素化された水素化石油樹脂(例えば、脂環族石油樹脂など)、上述の各種石油樹脂の変性体(例えば、フェノール類により変性したフェノール変性体、アルコール類により変性したアルコール変性体、ロジン変性体、テルペン変性体、マレイン酸変性体など)などが挙げられる。
【0057】
上記石油樹脂は、公知乃至慣用の方法により製造することができる。また、上記石油樹脂としては、例えば、商品名「ネオポリマー L−90」、「ネオポリマー S」(以上、JX日鉱日石エネルギー(株)製;石油樹脂)などの市販品を使用することもできる。また、上記石油樹脂の市販品としては、その他、例えば、商品名「SC−100」(エスジーケミカル(株)製;フェノール変性石油樹脂)「ネオポリマー E−100」(JX日鉱日石エネルギー(株)製;フェノール変性石油樹脂)「ネオポリマー 160」(JX日鉱日石エネルギー(株)製;無水マレイン酸変性石油樹脂)などを使用することもできる。
【0058】
上記石油樹脂は、特に限定されないが、化合物(A)との相溶性の観点で、25℃以下において液状であること、又は、25〜200℃(より好ましくは25〜180℃、さらに好ましくは25〜150℃)に軟化点を有することが好ましい。
【0059】
上記石油樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、化合物(A)との相溶性の観点で、100〜10000が好ましく、より好ましくは150〜5000、さらに好ましくは150〜2000である。なお、上記重量平均分子量は、例えば、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定される標準ポリスチレン換算の分子量より算出できる。
【0060】
本発明の樹脂組成物における化合物(B)としてのロジンとしては、公知乃至慣用の各種ロジン類を使用することができる。具体的には、上記ロジンとしては、例えば、ウッドロジン、ガムロジン、トール油ロジンなどの未変性ロジン;上記未変性ロジンを水素化した水素化ロジン(水添ロジン)、上記未変性ロジンを不均化した不均化ロジン、上記未変性ロジンを重合した重合ロジン、上記未変性ロジンをフェノール類で変性したフェノール変性ロジン、上記未変性ロジンをマレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸,クロトン酸、アクリル酸等の不飽和カルボン酸で変性した不飽和カルボン酸変性ロジン(例えば、マレイン化ロジンやアクリル化ロジンなど)、上記未変性ロジンとアルコール類(多価アルコールなど)とを反応させたロジンエステル、上記未変性ロジンをホルマリン処理したホルミル化ロジンなどの変性ロジン(ロジン誘導体)が挙げられる。上記ロジンには、その他、分子内にロジン骨格と水酸基とを各々2個有するロジン含有ジオール(ロジンジオール)なども含まれる。
【0061】
上記ロジンは、公知乃至慣用の方法により製造することができる。また、上記ロジンとしては、「KR−85」(荒川化学工業(株)製)などの市販品を使用することもできる。また、上記ロジンの市販品としては、その他、商品名「KE−100」、(荒川化学工業(株)製:ロジンエステル)「D−6011」、(荒川化学工業(株)製:ロジン含有ジオール)、「ハイペールCH」、(荒川化学工業(株)製:水素化ロジン)などを使用することもできる。
【0062】
上記ロジンは、特に限定されないが、化合物(A)との相溶性の観点で、25℃以下において液状であること、又は、25〜200℃(より好ましくは25〜180℃、さらに好ましくは25〜150℃)に軟化点を有することが好ましい。
【0063】
上記ロジンの重量平均分子量は、特に限定されないが、化合物(A)との相溶性の観点で、100〜10000が好ましく、より好ましくは150〜5000、さらに好ましくは150〜2000である。なお、上記重量平均分子量は、例えば、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定される標準ポリスチレン換算の分子量より算出できる。
【0064】
本発明の樹脂組成物における化合物(B)としてのスチレン化フェノールは、触媒の存在下、フェノールに芳香族ビニル化合物を反応させて得られる化合物(フェノールに対し芳香族ビニル化合物が付加した化合物)である。上記スチレン化フェノールとしては、フェノール1モルに対して芳香族ビニル化合物1モルが付加したモノスチレン化フェノール、フェノール1モルに対して芳香族ビニル化合物1〜2モルが付加したモノ・ジスチレン化フェノール、フェノール1モルに対して芳香族ビニル化合物2〜3モルが付加したジ・トリスチレン化フェノール、フェノール1モルに対して芳香族ビニル化合物3モルが付加したトリスチレン化フェノールなどが挙げられる。上記芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、ビニルナフタレンなどが挙げられる。中でも、上記芳香族ビニル化合物としては、スチレンが好ましい。上記触媒としては、例えば、パラトルエンスルホン酸、硫酸、三塩化アルミニウムなどの酸触媒が挙げられる。
【0065】
上記スチレン化フェノールは、公知乃至慣用の方法により製造することができる。また、上記スチレン化フェノールとしては、例えば、商品名「ニットレジンPH−25」(以上、日塗(株)製;スチレン化フェノール)などの市販品を使用することもできる。
【0066】
上記の中でも、化合物(B)としては、硬化物の透湿性と屈折率の観点で、ノボラック型フェノール樹脂、ノボラック型クレゾール樹脂、ノボラック型ビフェニルフェノール樹脂、キシレン樹脂、石油樹脂、フェノール変性石油樹脂、スチレン化フェノール、及びロジンからなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物が好ましい。
【0067】
化合物(B)の20℃における波長589nmの光(ナトリウムD線)に対する屈折率は、特に限定されないが、1.500〜1.900が好ましく、より好ましくは1.550〜1.850、さらに好ましくは1.580〜1.820である。なお、化合物(B)の屈折率は、例えば、JIS K0062に準拠する方法により測定することができる。
【0068】
なお、本発明の樹脂組成物において化合物(B)は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0069】
化合物(B)の含有量(配合量)は、特に限定されないが、化合物(A)100重量部に対して、1〜120重量部が好ましく、さらに好ましくは5〜100重量部、さらに好ましくは10〜90重量部である。化合物(B)の含有量を上記範囲に制御すると、硬化物の屈折率を高い値に保持しながら、透湿性をいっそう低下させることが容易となる傾向がある。
【0070】
本発明の樹脂組成物は、上記化合物(A)に加えて化合物(B)を必須成分として含有させることにより、該樹脂組成物の硬化物に対して高い屈折率を保持させながら、同時にその透湿性を著しく低下させることができる。さらに、化合物(B)を含有させることによって、硬化の際の硬化収縮を著しく抑制することができる。
【0071】
[重合開始剤(C)]
本発明の樹脂組成物を構成する重合開始剤(C)としては、特に限定されず、周知慣用の重合開始剤を使用することができる。具体的には、例えば、重合開始剤(C)として、光カチオン重合開始剤若しくは熱カチオン重合開始剤(光若しくは熱カチオン重合開始剤)、又は、光ラジカル重合開始剤若しくは熱ラジカル重合開始剤(光若しくは熱ラジカル重合開始剤)を好ましく使用できる。なお、重合開始剤(C)は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0072】
(光カチオン重合開始剤)
上記光カチオン重合開始剤としては、例えば、サイラキュアUVI−6970、サイラキュアUVI−6974、サイラキュアUVI−6990、サイラキュアUVI−950(以上、米国ユニオンカーバイド社製、商品名)、イルガキュア250、イルガキュア261、イルガキュア264(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名)、SP−150、SP−151、SP−170、オプトマーSP−171(以上、(株)ADEKA製、商品名)、CG−24−61(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名)、DAICATII((株)ダイセル製、商品名)、UVAC1590、UVAC1591(ダイセル・サイテック(株)製、商品名)、CI−2064、CI−2639、CI−2624、CI−2481、CI−2734、CI−2855、CI−2823、CI−2758、CIT−1682(以上、日本曹達(株)製品、商品名)、PI−2074(ローディア社製、商品名、ペンタフルオロフェニルボレートトルイルクミルヨードニウム塩)、FFC509(3M社製品、商品名)、BBI−102、BBI−101、BBI−103、MPI−103、TPS−103、MDS−103、DTS−103、NAT−103、NDS−103(ミドリ化学(株)製、商品名)、CD−1010、CD−1011、CD−1012(米国、Sartomer社製、商品名)、CPI−100P、CPI−101A(サンアプロ(株)製、商品名)などの市販品に代表されるジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、セレニウム塩、オキソニウム塩、アンモニウム塩等を使用できる。
【0073】
(熱カチオン重合開始剤)
上記熱カチオン重合開始剤としては、例えば、サンエイドSI−45、同左SI−47、同左SI−60、同左SI−60L、同左SI−80、同左SI−80L、同左SI−100、同左SI−100L、同左SI−110L、同左SI−145、同左SI−150、同左SI−160、同左SI−110L、同左SI−180L(以上、三新化学工業(株)製品、商品名)、CI−2921、CI−2920、CI−2946、CI−3128、CI−2624、CI−2639、CI−2064(以上、日本曹達(株)社製品、商品名)、PP−33、CP−66、CP−77((株)ADEKA製品、商品名)、FC−509、FC−520(3M社製品、商品名)などに代表されるジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、セレニウム塩、オキソニウム塩、アンモニウム塩等を使用できる。さらに、アルミニウムやチタンなどの金属とアセト酢酸若しくはジケトン類とのキレート化合物とトリフェニルシラノール等のシラノールとの化合物、又は、アルミニウムやチタンなどの金属とアセト酢酸若しくはジケトン類とのキレート化合物とビスフェノールS等のフェノール類との化合物であってもよい。
【0074】
本発明の樹脂組成物(100重量%)における光カチオン重合開始剤若しくは熱カチオン重合開始剤の含有量(配合量)は、特に限定されないが、0.01〜15重量%が好ましく、より好ましくは0.01〜10重量%、さらに好ましくは0.05〜5重量%、特に好ましくは0.1〜3重量%である。光若しくは熱カチオン重合性開始剤を上記範囲内で使用することにより、低透湿性に優れた硬化物を得ることができる。
【0075】
(硬化促進剤)
本発明の樹脂組成物は、硬化促進剤を含んでいてもよい。上記硬化促進剤とは、本発明の樹脂組成物中の重合性化合物が光若しくは熱カチオン重合開始剤により硬化する際に、硬化速度を促進する機能を有する化合物である。上記硬化促進剤としては、周知慣用の硬化促進剤を使用することができ、例えば、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)、及びその塩(例えば、フェノール塩、オクチル酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ギ酸塩、テトラフェニルボレート塩);1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5(DBN)、及びその塩(例えば、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、4級アンモニウム塩、ヨードニウム塩);ベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミンなどの3級アミン;2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール;リン酸エステル、トリフェニルホスフィンなどのホスフィン類;テトラフェニルホスホニウムテトラ(p−トリル)ボレートなどのホスホニウム化合物;オクチル酸スズ、オクチル酸亜鉛などの有機金属塩;金属キレートなどが挙げられる。なお、硬化促進剤は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0076】
また、上記硬化促進剤としては、U−CAT SA 506、U−CAT SA 102、U−CAT 5003、U−CAT 18X、12XD(開発品)(以上、サンアプロ(株)製)、TPP−K、TPP−MK(以上、北興化学工業(株)製)、PX−4ET(日本化学工業(株)製)等の市販品を使用することもできる。
【0077】
本発明の樹脂組成物(100重量%)における硬化促進剤の含有量(配合量)は、特に限定されないが、0.05〜5重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜3重量%、さらに好ましくは0.2〜3重量%、特に好ましくは0.25〜2.5重量%である。硬化促進剤の含有量が0.05重量%未満であると、硬化促進効果が不十分となる場合がある。一方、硬化促進剤の含有量が5重量%を超えると、硬化物が着色して色相が悪化する場合がある。
【0078】
(光ラジカル重合開始剤)
上記光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、アセトフェノンベンジル、ベンジルジメチルケトン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ジメトキシアセトフェノン、ジメトキシフェニルアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ジフェニルジサルファイト、オルトベンゾイル安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル(日本化薬(株)製 カヤキュアEPA等)、2,4−ジエチルチオキサンソン(日本化薬(株)製 カヤキュアDETX等)、2−メチル−1−[4−(メチル)フェニル]−2−モルホリノプロパノン−1(チバガイギ−(株)製 イルガキュア907等)、2−ジメチルアミノ−2−(4−モルホリノ)ベンゾイル−1−フェニルプロパン等の2−アミノ−2−ベンゾイル−1−フェニルアルカン化合物、テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、ベンジル、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、4,4−ビスジエチルアミノベンゾフェノン等のアミノベンゼン誘導体、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾ−ル(保土谷化学(株)製 B−CIM等)等のイミダゾール化合物、2,6−ビス(トリクロロメチル)−4−(4−メトキシナフタレン−1−イル)−1,3,5−トリアジン等のハロメチル化トリアジン化合物、2−トリクロロメチル−5−(2−ベンゾフラン2−イル−エテニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のハロメチルオキサジアゾール化合物などが挙げられる。これらの光ラジカル重合開始剤は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。また、本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、光増感剤を加えることができる。上記光ラジカル重合開始剤としては、感度及び耐薬品性等の観点から、イミダゾール化合物とアミノベンゼン誘導体の組合せ、2−アミノ−2−ベンゾイル−1−フェニルアルカン化合物、ハロメチル化トリアジン化合物、ハロメチルオキサジアゾール化合物などが好ましい。
【0079】
(熱ラジカル重合開始剤)
上記熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、有機過酸化物類が挙げられる。上記有機過酸化物類としては、例えば、ジアルキルパーオキサイド、アシルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、ケトンパーオキサイド、パーオキシエステル等を使用することができる。有機過酸化物の具体例としては、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、2,5−ジメチルー2,5−ジ(2−エチルヘキサノイル)パーオキシヘキサン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジーt−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチルー2,5−ジブチルパーオキシヘキサン、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ジーt−ブチルパーオキシジーイソプロピルベンゼン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、メチルエチルケトンパーオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートなどが挙げられる。
【0080】
さらに、上記熱ラジカル重合開始剤とともに、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸マンガン、ナフテン酸亜鉛、オクテン酸コバルト等のナフテン酸やオクテン酸のコバルト、マンガン、鉛、亜鉛、バナジウムなどの金属塩を併用することができる。同様に、ジメチルアニリン等の3級アミンも使用することができる。
【0081】
上述の光若しくは熱ラジカル重合開始剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を任意の割合で組み合わせて使用してもよい。その使用量は、本発明の樹脂組成物(100重量%)において、0.01〜5重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜3重量%である。
【0082】
[無機フィラー(D)]
本発明の樹脂組成物は、さらに、無機フィラー(D)を含んでいてもよい。無機フィラー(D)としては、特に限定されないが、シリカ(ナノシリカなど)、アルミナ、マイカ、合成マイカ、タルク、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化ジルコニウム(ナノジルコニアなど)、酸化チタン(ナノチタニアなど)、チタン酸バリウム、カオリン、ベントナイト、珪藻土、窒化ホウ素、窒化アルミ、炭化ケイ素、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化セシウム、酸化マグネシウム、ガラスビーズ、ガラス繊維、グラファイト、カーボンナノチューブ、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、セルロースなどが挙げられる。なお、無機フィラー(D)は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0083】
これらの無機フィラー(D)は、例えば国際公開第96/31572号に記載されている火炎加水分解法や、火炎熱分解法、プラズマ法等の公知の方法で製造することができる。好ましい無機フィラー(D)としては、安定化されたコロイド状無機粒子のナノ分散ゾル類等を用いることができ、市販品としては、BAYER社製のシリカゾル、Goldschmidt社製のSnO2ゾル類、MERCK社製のTiO2ゾル類、Nissan Chemicals社製のSiO2、ZrO2、Al23およびSb23ゾルまたはDEGUSSA社製のAerosil分散物類などの市販品が入手可能である。
【0084】
無機フィラー(D)は、表面の改質によりこれらの粘度挙動を変化させることができる。無機フィラー(D)の表面改質は、公知の表面改質剤を用いて行うことができる。このような表面改質剤としては、例えば、無機フィラー(D)の表面に存在する官能基と共有結合や錯形成等の相互作用が可能な化合物や、重合体マトリックスと相互作用可能な化合物を用いることができる。このような表面改質剤としては、例えば、分子内にカルボキシル基、(第1級、第2級、第3級)アミノ基、4級アンモニウム基、カルボニル基、グリシジル基、ビニル基、(メタ)アクリロキシ基、メルカプト基等の官能基を有する化合物等を用いることができる。このような表面改質剤としては、通常、標準温度および圧力条件下で液体であり、分子内の炭素数が15以下(より好ましくは炭素数が10以下、さらに好ましくは8以下)の低分子有機化合物で構成された表面改質剤が好ましい。上記低分子有機化合物の分子量は、特に限定されないが、500以下が好ましく、より好ましくは350以下、さらに好ましくは200以下である。
【0085】
上記表面改質剤としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、クエン酸、アジピン酸、コハク酸、グルタル酸、シュウ酸、マレイン酸およびフマル酸などの炭素数1〜12の飽和または不飽和モノおよびポリカルボン酸類(好ましくは、モノカルボン酸類);及びこれらのエステル類(好ましくはメタクリル酸メチル等のC1〜C4アルキルエステル類);アミド類;アセチルアセトン、2,4−ヘキサンジオン、3,5−ヘプタンジオン、アセト酢酸およびC1〜C4アルキルアセト酢酸類などのβ−ジカルボニル化合物等が挙げられる。また、特に限定されないが、公知慣用のシランカップリング剤を表面改質剤として使用することもできる。
【0086】
無機フィラー(D)の粒径は、特に限定されないが、0.01nm〜1μmが好ましく、より好ましくは0.1nm〜200nm、さらに好ましくは0.1nm〜100nmである。
【0087】
無機フィラー(D)の含有量(配合量)は、特に限定されないが、樹脂組成物中の化合物(A)および化合物(B)の総量(合計含有量)100重量部に対して、1〜2000重量部が好ましく、より好ましくは10〜500重量部である。また、樹脂組成物全量(100重量%)に対する無機フィラー(D)の含有量は、特に限定されないが、5〜95重量%が好ましく、より好ましくは10〜80重量%である。
【0088】
[シランカップリング剤(E)]
本発明の樹脂組成物は、基板等の被接着体に対する接着性を向上させるために、さらに、シランカップリング剤(E)を含んでいてもよい。シランカップリング剤(E)としては、特に限定されず、公知慣用のシランカップリング剤を使用できる。シランカップリング剤(E)としては、具体的には、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(メトキシエトキシシラン)、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどの、水溶液中で比較的安定なものの中から適宜選択して使用することができる。
【0089】
本発明の樹脂組成物(100重量%)におけるシランカップリング剤(E)の含有量(配合量)は、特に限定されないが、0.1〜20重量%が好ましく、より好ましくは0.3〜8重量%、さらに好ましくは0.5〜5重量%である。シランカップリング剤(E)の含有量が0.1重量%未満であると、シランカップリング剤(E)による樹脂の架橋効果が乏しく、したがって緻密な膜が得られにくい場合がある。また、金属基材へのカップリング効果が乏しく、密着性が劣り、望ましい耐アルカリ性と防錆力が得られにくい場合がある。シランカップリング剤(E)の含有量が20重量%を超えると、加水分解による耐水、耐アルカリ性等諸性能の低下が著しく、造膜性に問題が生じ、また経済性の点でも不利となる場合がある。
【0090】
[他の添加剤]
本発明の樹脂組成物は、必要に応じて、例えば、重合禁止剤、酸化防止剤、光安定剤、可塑剤、レベリング剤、消泡剤、顔料、有機溶剤、紫外線吸収剤、イオン吸着体、顔料、蛍光体、離型剤などの慣用の添加剤を含有していてもよい。
【0091】
<樹脂組成物の製造方法>
本発明の樹脂組成物は、上述の成分(A)、成分(B)、成分(C)、及び必要に応じて、成分(D)、成分(E)、その他の成分(添加剤など)を、均一に混合することにより得ることができる。本発明の樹脂組成物を得るにあたっては、各成分を自公転式攪拌脱泡装置、ホモジナイザー、プラネタリーミキサー、3本ロールミル、ビーズミル等の一般的に知られる混合用機器を使用してなるべく均一になるように、攪拌、溶解、混合、分散等を行うことが望ましい。なお、各成分は、同時に混合してもよいし、逐次混合してもよい。
【0092】
<硬化物>
本発明の樹脂組成物を光若しくは熱により硬化させることにより、硬化物(樹脂硬化物)を得ることができる。本発明の樹脂組成物を光(光照射)により硬化させる場合には、例えば、上記樹脂組成物に対して、水銀ランプ等で1000mJ/cm2以上の光を照射することで硬化させることができる。また、本発明の樹脂組成物を熱(加熱)により硬化させる場合には、例えば、上記樹脂組成物を、温度50〜200℃(より好ましくは50〜190℃、さらに好ましくは50〜180℃)で、10〜600分間(より好ましくは10〜480分間、さらに好ましくは15〜360分間)加熱することで硬化させることができる。加熱する温度(硬化温度)と時間(硬化時間)が上記範囲の下限値より低い場合は、樹脂組成物の硬化が不十分となることがあり、好ましくない場合がある。一方、硬化温度と硬化時間が上記範囲の上限値より高い場合、樹脂成分の分解が起きることがあり、好ましくない場合がある。本発明の樹脂組成物の硬化条件は、種々の条件に依存するが、硬化温度が高い場合は硬化時間を短く、硬化温度が低い場合は硬化時間を長くする等により、適宜調整することができる。本発明の樹脂組成物を硬化させることにより、屈折率が高く、なおかつ低透湿性に優れた硬化物を得ることができる。
【0093】
本発明の樹脂組成物を硬化してなる硬化物は、透湿性が低いため、防湿性に優れている。上記硬化物の透湿度は、JIS L1099およびJIS Z0208に準じて、厚み100μmの硬化物の透湿量を、60℃、90%RHの条件下で測定することにより算出することができる。本発明の硬化物は、特に限定されないが、上記の方法で測定した透湿度が、50g/m2・atm・day以下(例えば、0〜50g/m2・atm・day)であることが好ましく、より好ましくは30g/m2・atm・day以下(例えば、0〜30g/m2・atm・day)、さらに好ましくは25g/m2・atm・day以下(例えば、0〜25g/m2・atm・day)である。また、本発明の樹脂組成物に無機フィラー(D)を配合することにより、硬化物の透湿度を、例えば、20g/m2・atm・day以下(例えば、0〜20g/m2・atm・day)、特に好ましくは15g/m2・atm・day以下(例えば、0〜15g/m2・atm・day)と、さらに低減することができる。
【0094】
また、上記硬化物の20℃における波長589nmの光(ナトリウムD線)に対する屈折率は、特に限定されないが、1.550〜1.900が好ましく、より好ましくは1.600〜1.850、さらに好ましくは1.650〜1.820である。なお、硬化物の屈折率は、例えば、JIS K7142に準拠する方法や、プリズムカプラを用いる方法により測定することができる。
【0095】
<封止剤、シール剤>
本発明の樹脂組成物は硬化収縮が小さく、該樹脂組成物の硬化物は、高い屈折率を有し、なおかつ低透湿性に優れる。このため、本発明の樹脂組成物は、特に、有機エレクトロルミネッセンス装置、LED装置、ディスプレイ(例えば、タッチパネルなど)などの電子デバイスにおける封止材又はシール材を形成するための封止剤又はシール剤として好ましく使用できる。より具体的には、本発明の樹脂組成物を必須成分として含む封止剤又はシール剤を、特に高い屈折率と低透湿性の封止材又はシール材が求められる電子デバイス用の封止剤又はシール剤として使用できる。なお、上記封止剤又はシール剤を硬化させる際の条件としては、上述の硬化物を得る際と同様の条件を採用できる。また、本発明の樹脂組成物は、上記用途への使用に限定されず、例えば、接着剤としても使用できる。
【0096】
<有機エレクトロルミネッセンス装置、LED装置、ディスプレイなどの電子デバイス>
本発明の樹脂組成物を電子デバイスにおける封止剤やシール剤などとして使用することにより、硬化収縮や水分(湿度)による悪影響が最小限に抑えられ、なおかつ硬化物の高い屈折率に起因する高い品質が付与された電子デバイス(本発明の樹脂組成物の硬化物を含む電子デバイス)を得ることができる。上記電子デバイスとしては、例えば、有機エレクトロルミネッセンス装置、発光ダイオード装置(LED装置)、タッチパネルなどのディスプレイなどが挙げられる。特に、本発明の樹脂組成物を、特に高い屈折率を有し、なおかつ低透湿性に優れた封止材の使用が要求される有機エレクトロルミネッセンス装置に対して使用した場合には、より耐久性かつ品質の高い有機エレクトロルミネッセンス装置を得ることができる。
【実施例】
【0097】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0098】
製造例1
[ビス[4−(2−クロロエチル)チオフェニル]スルフィドの製造]
冷却管、攪拌器、温度計を備え付けた1Lの4口フラスコに、4,4’−チオビスベンゼンチオール50.6g(202.1mmol)、テトラブチルアンモニウムブロマイド[nBu4NBr]1.71g(5.30mmol)、及び1,2−ジクロロエタン410.3g(4146mmol)を入れ、ここに、室温で30wt%水酸化カリウム水溶液87.3g(466.8mmol)を滴下した。滴下終了後、反応液を2時間攪拌し、その後、水を加え、ブフナロートを用いて白色固体をろ別した。ろ別した白色固体を水で洗浄し、その後減圧乾燥して、下記式で表されるビス[4−(2−クロロエチル)チオフェニル]スルフィドを白色固体として得た(74.9g、収率99%)。
【化7】

【0099】
製造例2
[ビス(4−ビニルチオフェニル)スルフィド(MPV)の製造]
冷却管、攪拌器、温度計を備え付けた1Lの4口フラスコに、ビス[4−(2−クロロエチル)チオフェニル]スルフィド100.1g(266.8mmol)、テトラブチルアンモニウムブロマイド[nBu4NBr]4.51g(14.0mmol)、及びn−ヘプタン239.5gを入れ、ここに、85℃で50wt%水酸化ナトリウム水溶液107.0g(882.0mmol)を滴下した。滴下終了後、反応液を5時間攪拌し、その後、水を加え、分液ロートに移して分液を行った。さらに、有機層を2回水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水した後、溶媒を留去して液状の粗生成物を得た。上記粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=40/1)で精製し、その後、1.0mg/mlの2,6−ジ−tert−ブチルハイドロキシトルエンのヘキサン溶液11.0gを加え、減圧乾燥し、下記式で表されるビス(4−ビニルチオフェニル)スルフィド(MPV)を無色透明液体として得た(23.0g、収率28%)。
【化8】

1H−NMR(CDCl3,500MHz):δ5.39−5.40(m,4H)、6.52(dd,J=16.4、9.6Hz,2H)、7.27−7.30(m,8H)
【0100】
実施例1
製造例2で得たビス(4−ビニルチオフェニル)スルフィド70重量部、SC−100(エスジーケミカル(株)製)30重量部、及び熱カチオン重合開始剤(サンエイドSI−B3(三新化学工業(株)製))1重量部を、自公転式攪拌脱泡装置(型式:AR−250((株)シンキー製))内に投入し、攪拌、溶解、混合、分散を行い、樹脂組成物を調液した。得られた樹脂組成物を、厚み100μmのテフロン(登録商標)製のスペーサを用いた型に注型し、100℃の定温送風オーブンにて1時間加熱し、硬化させて硬化物を得た。
【0101】
実施例2〜19
表1〜3に示すように、化合物(A)、化合物(B)、重合開始剤(C)の種類及び配合量を変更したこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物及び硬化物を作製した。
なお、実施例6におけるアミルフェノールジサルファイド重合物は、サンセラーAP(三新化学工業(株)製、シリカ配合物)からアセトンにて抽出、乾燥することにより得た。
【0102】
比較例1
ビス(4−ビニルチオフェニル)スルフィド99重量部、及び熱カチオン重合開始剤(サンエイドSI−B3(三新化学工業(株)製))1重量部を、自公転式攪拌脱泡装置(型式:AR−250(シンキー(株)製))内に投入し、攪拌、溶解、混合、分散を行い、樹脂組成物を調液した。得られた樹脂組成物を、厚み100μmのテフロン(登録商標)製のスペーサを用いた型に注型し、100℃の定温送風オーブンにて1時間加熱し、硬化させて硬化物を得た。
【0103】
比較例2、3
表3に示すように、化合物(A)、重合開始剤(C)の種類及び配合量を変更したこと以外は、比較例1と同様にして樹脂組成物及び硬化物を作製した。
【0104】
<水蒸気透過率(透湿度)の測定>
実施例及び比較例で得られた100μm厚みの硬化物を透湿カップに取り付け、JIS L1099に従って、60℃、90%RHの条件にて、上記硬化物の水蒸気透過率を測定した。結果を表1〜3に示す。
【0105】
<屈折率の測定>
実施例及び比較例で得られた100μm厚みの硬化物について、Model 2010プリズムカプラ(メトリコン社製)を使用して、589nmの光の屈折率を測定した。結果を表1〜3に示す。
【0106】
<硬化収縮率の測定>
樹脂組成物を硬化させて硬化物を形成した際の硬化収縮率を、比重法により算出した。結果を表1〜3に示す。
【0107】
【表1】

【0108】
【表2】

【0109】
【表3】

【0110】
表1〜3に示すように、本発明の樹脂組成物(実施例)は、硬化時の硬化収縮が小さく、さらに、その硬化物は高い屈折率を有し、かつ低透湿性に優れており、これらの特性をバランス良く備えるものであった。一方、本発明の規定を満たさない樹脂組成物(比較例)は、特に、硬化物の透湿性が高く、上述の特性をバランス良く備えるものではなかった。
【0111】
実施例及び比較例で用いた化合物は、以下の通りである。
[化合物(A)]
MPV:ビス(4−ビニルチオフェニル)スルフィド
MPSMA(東京化成工業(株)製):ビス(4−メタクリロイルチオフェニル)スルフィド
[化合物(B)]
SC−100(エスジーケミカル(株)製):フェノール変性石油樹脂
レジタックスA−2(エスジーケミカル(株)製):モノメチルナフタレンホルムアルデヒド縮合物
SAP−X(旭有機材工業(株)製):p−クレゾールノボラック樹脂
MEH 7851−M(明和化成(株)製):フェノール−ビフェニルホルムアルデヒド縮合物
ニットレジンPH−25(日塗化学(株)製):スチレン化フェノール
ネオポリマーL−90、ネオポリマーS(JX日鉱日石エネルギー(株)製):石油樹脂
ニカノールY−50、ニカノールY−1000、ニカノールG(フドー(株)製):キシレン樹脂
KE−100(荒川化学工業(株)製):ロジンエステル
[化合物(C)]
SI−B3(三新化学工業(株)製):4−ヒドロキシフェニルベンジルメチルスルホニウム=テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート
パーブチルO(日油(株)製):t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物(A)と、フェノール類とアルデヒドの縮合物、芳香族炭化水素とアルデヒドの縮合物、石油樹脂、スチレン化フェノール、及びロジンからなる群より選択された少なくとも1種の化合物(B)と、重合開始剤(C)とを含むことを特徴とする樹脂組成物。
【化1】

(式(1)中、Raは、それぞれ独立に、反応性官能基を示す。R1は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基、ハロアルキル基、アリール基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシアルキル基、保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、保護基で保護されていてもよいスルホ基、ニトロ基、シアノ基、又は保護基で保護されていてもよいアシル基を示す。R2は単結合又は連結基を示す。mは、それぞれ独立に、0〜4の整数を示す。nは、0〜10の整数を示す。)
【請求項2】
前記化合物(A)が、下記式(1’)で表される化合物である請求項1に記載の樹脂組成物。
【化2】

(式(1’)中、Ra、R1、mは、前記に同じ。)
【請求項3】
さらに、無機フィラー(D)を含む請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
さらに、シランカップリング剤(E)を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記重合開始剤(C)が、光若しくは熱カチオン重合開始剤、又は、光若しくは熱ラジカル重合開始剤である請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含むことを特徴とする封止剤。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含むことを特徴とするシール剤。
【請求項9】
請求項6に記載の硬化物を含む有機エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項10】
請求項6に記載の硬化物を含むLED装置。
【請求項11】
請求項6に記載の硬化物を含むディスプレイ。

【公開番号】特開2013−91743(P2013−91743A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235690(P2011−235690)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000002901)株式会社ダイセル (1,236)
【Fターム(参考)】