説明

樹脂組成物

【課題】 樹脂本来の透明性を維持しつつ高度な耐候性を付与した芳香族含有樹脂組成物を提供する。
【解決手段】
一般式(1)
SiX(4−a) (1)
(式中、Rは炭素数1〜18の1価の有機基、Xは加水分解性基をあらわす。RおよびXがそれぞれ複数個ある場合は、それらは同一であっても異なっていてもよい。aは1、2、または3である。)
であらわされるシラン化合物で表面修飾された、酸化亜鉛部分の数平均粒子径が0.5〜20nmの酸化亜鉛微粒子(A)と芳香族含有樹脂(B)とを含有する樹脂組成物であり、酸化亜鉛微粒子(A)の含有量が0.1〜30重量%である樹脂組成物。該樹脂組成物は、透明性を維持しつつ優れた耐候性を持つ樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化亜鉛により優れた耐候性を付与した芳香族含有樹脂組成物に関する。詳しくは、含有する酸化亜鉛の粒子径が特定の範囲内にある微粒子であり、かつ、その表面が高度に修飾されており、紫外線吸収剤としての機能を保持しつつ光触媒活性が抑制されており、また、添加しても本来の透明性を維持している芳香族含有樹脂組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの樹脂は、太陽光中の紫外領域の光を吸収することにより励起し、その後、結合の開裂などを引き起こし、結果として劣化する。光劣化を抑える手段としては、一般的に、樹脂に紫外線吸収剤を混入する方法、または樹脂の表層に紫外線吸収剤を塗布する方法が知られている。用いられる紫外線吸収剤としては、大きく分けて有機系と無機系の2種類があり、例えば有機系ではベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、トリアジン系、シアノアクリレート系、サリシレート系の紫外線吸収剤などがあり、無機系では酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウムなどがこれまでに開発されてきている。
【0003】
しかし有機系の紫外線吸収剤では紫外線のカット能力が不十分であり、かつ長期間経過する間に樹脂成型体からブリードアウトし、紫外線吸収能が減衰するという問題があった。また、有機系紫外線吸収剤の分解による着色のため、ポリカーボネート樹脂やポリエステル樹脂など成形温度の高い樹脂に対しては適用することが難しかった。さらにその分解生成物の安全性なども問題視されている。
【0004】
一方、無機系の紫外線吸収剤は、有機系に比べて紫外線のカット能力が高く、かつ樹脂成形体からブリードアウトしにくいといった利点があるが、それ自体が高い光触媒活性を有しているため、紫外線の照射により、逆に樹脂の劣化を促進し、むしろ耐候性を悪化させてしまう場合がある。また、無機系では紫外線を効率良く吸収するために、その粒子径が100nm以下の場合が殆どであるが、互いに凝集しやすく、樹脂などに混錬した際に透明性が失われてしまう。そのため、無機系の紫外線吸収剤の凝集を防止したり、光触媒活性をコントロールする方法として、種々の化合物で表面修飾する技術が提案されている。
【0005】
例えば特許文献1には表面が水酸化された半導体微粒子について記載されている。しかしこの方法では得られる半導体微粒子表面の水酸基同士が互いに引き合うために凝集を防止することができず、さらに疎水性有機溶媒や疎水性樹脂などに均一分散させることができなかった。また、特許文献2には表面処理された金属酸化物の樹脂組成物について記載されているが、実施例では有機系の紫外線吸収剤と併用しなければ、満足した耐候性が得られておらず、また、透明性の点でも満足なものではない。
【特許文献1】特開2004−51863号公報
【特許文献2】特開2004−331679号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記現状に鑑み、樹脂本来の透明性を維持しつつ高度な耐候性を付与した芳香族含有樹脂組成物およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の粒子径を有し、かつ、高度に表面修飾された酸化亜鉛微粒子を用いることにより、優れた耐候性と透明性を有する樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明は以下の構成を有するものである。
【0008】
1). 一般式(1)
SiX(4−a) (1)
(式中、Rは炭素数1〜18の1価の有機基、Xは加水分解性基をあらわす。RおよびXがそれぞれ複数個ある場合は、それらは同一であっても異なっていてもよい。aは1、2、または3である。)
であらわされるシラン化合物で表面修飾された、酸化亜鉛部分の数平均粒子径が0.5〜20nmの酸化亜鉛微粒子(A)と芳香族含有樹脂(B)とを含有する樹脂組成物であり、酸化亜鉛微粒子(A)の含有量が0.1〜30重量%である樹脂組成物。
【0009】
2). 加水分解性基Xが炭素数3以下のアルコキシ基であり;炭素数1〜18の1価の有機基Rがメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、シクロヘキシルメチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、フェニル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基、ナフチル基、ベンジル基、スチリル基、ビニル基、3−メタクリロキシプロピル基、3−アクリロキシプロピル基、3−アミノプロピル基、3−グリシドキシプロピル基、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、アリル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、2−シアノエチル基からなる群より選ばれる1種以上の有機基であり;aが1または2である、1)に記載の樹脂組成物。
【0010】
3). 酸化亜鉛微粒子(A)の数平均粒子径が1〜10nmである、1)または2)のいずれかに記載の樹脂組成物。
【0011】
4). 酸化亜鉛1モルに対するシラン化合物の修飾量が0.01〜5モルの範囲にある、1)〜3)のいずれかに記載の樹脂組成物。
【0012】
5). 芳香族含有樹脂(B)が芳香族ポリカーボネート系樹脂、芳香族ポリエステル系樹脂、スチレン系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種である、1)〜4)のいずれかに記載の樹脂組成物。
【0013】
6). シラン化合物で表面修飾された酸化亜鉛微粒子(A)が25℃、1気圧の条件で液体である、1)〜5)のいずれかに記載の樹脂組成物。
【0014】
7). 膜厚300〜500μmのフィルムにしたときのヘイズが15%以下である、1)〜6)のいずれかに記載の樹脂組成物。
【0015】
8). 膜厚300〜500μmのフィルムとし、50MJ/mのエネルギー量でキセノンランプを照射した場合のヘイズの値が照射前のヘイズ値+10以下である、1)〜7)のいずれかに記載の樹脂組成物。
【0016】
9). 有機系酸化防止剤、有機系紫外線吸収剤、帯電防止剤、および難燃剤からなる群より選ばれる化合物1種以上をさらに含有する、1)〜8)のいずれかに記載の樹脂組成物。
【0017】
10). (1)アルカリ金属水酸化物のアルコール溶液にカルボン酸亜鉛化合物を添加し、酸化亜鉛微粒子を製造する工程;
(2)工程(1)で得られた酸化亜鉛微粒子のアルコール分散液にシラン化合物を添加し、シラン化合物で表面修飾された酸化亜鉛微粒子(A)を製造する工程;
(3)シラン化合物で表面修飾された酸化亜鉛微粒子(A)をアルコールから分離し、洗浄および乾燥する工程;
(4)工程(3)で単離せしめた酸化亜鉛微粒子(A)と芳香族含有樹脂(B)とを混合する工程、
を含むことを特徴とする、1)〜9)のいずれかに記載の樹脂組成物の製造方法。
【0018】
11). 工程(1)において、カルボン酸亜鉛化合物の濃度が0.01〜0.5mol/Lであることを特徴とする、10)に記載の製造方法。
【0019】
12). 工程(1)において、アルカリ金属水酸化物の使用量がカルボン酸亜鉛化合物1モルに対して1.5〜4モルの範囲である、10)または11)のいずれかに記載の製造方法。
【0020】
13). 工程(2)の反応を80〜300℃かつ0.2〜20MPaの条件で実施する、10)〜12)のいずれかに記載の製造方法。
【0021】
14). 工程(4)の混合方法が溶融混練である、10)〜13)のいずれかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明中におけるシラン化合物で修飾された酸化亜鉛微粒子を芳香族含有樹脂に含有させることにより、透明性及び耐候性に優れた芳香族含有樹脂組成物を提供することができる。このような耐候性樹脂組成物は、工業的に非常に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の樹脂組成物は一般式(1)
SiX(4−a) (1)
(式中、Rは炭素数1〜18の1価の有機基、Xは加水分解性基をあらわす。RおよびXがそれぞれ複数個ある場合は、それらは同一であっても異なっていてもよい。aは1、2、または3である。)
であらわされるシラン化合物で表面修飾された、数平均粒子径0.5〜20nmの酸化亜鉛微粒子(A)と芳香族含有樹脂(B)とを含有する樹脂組成物であり、酸化亜鉛微粒子(A)の含有量が0.1〜30重量%である。
【0024】
本発明において用いるシラン化合物は酸化亜鉛微粒子の表面修飾剤として作用する。上記一般式(1)において、炭素数1〜18の1価の有機基Rとしては限定されないが、入手性および価格の点でメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、シクロヘキシルメチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、フェニル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基、ナフチル基、ベンジル基、スチリル基、ビニル基、3−メタクリロキシプロピル基、3−アクリロキシプロピル基、3−アミノプロピル基、3−グリシドキシプロピル基、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、アリル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、2−シアノエチル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、シクロヘキシルメチル基、オクチル基、デシル基、フェニル基、メチルフェニル基、ベンジル基、ビニル基、3−メタクリロキシプロピル基、3−アクリロキシプロピル基、アリル基がより好ましい。
【0025】
上記一般式(1)において加水分解性基Xとしては限定されず、アルコキシ基、オキシム基、オキシカルボニル基、ハロゲン原子、水素原子などを挙げることができるが、酸化亜鉛微粒子表面を修飾する際の反応がマイルドである点でアルコキシ基、オキシム基、オキシカルボニル基が好ましく、入手性および価格の点でアルコキシ基がより好ましく、炭素数3以下のアルコキシ基がさらに好ましい。また上記一般式(1)においてaは1、2、または3をあらわすが、入手性および価格の点でaは1または2であることが好ましい。
【0026】
本発明で使用する上記一般式(1)であらわされるシラン化合物の好ましい例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、シクロヘキシルメチルトリメトキシシラン、シクロヘキシルメチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、2−メチルフェニルトリメトキシシラン、2−メチルフェニルトリエトキシシラン、3−メチルフェニルトリメトキシシラン、3−メチルフェニルトリエトキシシラン、4−メチルフェニルトリメトキシシラン、4−メチルフェニルトリエトキシシラン、ベンジルトリメトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ジビニルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシランなどを挙げることができる。一般式(1)のシラン化合物は単独で使用してもよく、複数を組み合わせて使用してもよい。
【0027】
本発明において使用する酸化亜鉛微粒子(A)の酸化亜鉛部分の数平均粒子径は、0.5〜20nmである。この範囲のサイズの酸化亜鉛微粒子はフォトルミネッセンス、エレクトロルミネッセンス、紫外線遮蔽能などの量子効果が発現する上、樹脂に分散させた場合透明な組成物が得られる。これら量子効果が顕著である点および樹脂中に分散させた際の透明性に優れる点で、数平均粒子径は1〜10nmの範囲がより好ましい。
【0028】
なお酸化亜鉛微粒子の数平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)分析により90〜110個程度の粒子径を測定し、その和を粒子数で除して平均することによって求めることができる。
【0029】
本発明において使用する酸化亜鉛微粒子(A)の酸化亜鉛と表面修飾剤の比率としては限定されないが、酸化亜鉛微粒子の凝集を防止して溶媒や樹脂中に容易に均一分散できる点および酸化亜鉛微粒子の触媒活性をコントロールできる点で、酸化亜鉛1モルに対するシラン化合物の修飾量が0.01〜5モルの範囲にあることが好ましく、0.2〜4モルの範囲にあることがより好ましい。
【0030】
また、本発明において使用するシラン化合物で修飾された酸化亜鉛微粒子(A)は、他の元素を若干量含む、いわゆるドーピングされたものであってもよい。
【0031】
シラン化合物で修飾された酸化亜鉛微粒子(A)の添加量は、芳香族含有樹脂(B)100重量部に対して、0.1〜30重量部であり、物性の発現及び経済的な面から、0.2〜20重量部が好ましく、0.4〜15重量部がより好ましい。添加量が0.1重量部未満では耐候性が不十分である場合があり、30重量部を超えると物性面での問題は特にないが、より経済性が求められる。
【0032】
本発明で使用する芳香族含有樹脂(B)は、その構造中にベンゼン環やナフタレン環などの芳香族構造を有する樹脂である。このような芳香族含有樹脂としては特に限定されないが、例えばビスフェノールA型ポリカーボネートなどの芳香族ポリカーボネート系樹脂:ポリオキシベンゾイルエステル(POB)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、不飽和ポリエステル樹脂などの芳香族ポリエステル系樹脂:ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体(SAN樹脂)、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、塩素化ポリエチレン−アクリロニトリル−スチレン共重合体(ACS樹脂)、アクリレート−スチレン−アクリロニトリル共重合体(ASA樹脂)、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体(MS樹脂)、スチレン系熱可塑性エラストマーなどのスチレン系樹脂:アルキド樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ビスマレイミド−トリアジン樹脂(BT樹脂)、ジアリルフタレート(DAP)樹脂、ビスフェノールAを含有するエポキシ樹脂、液晶ポリマー(LCP)、フェノール樹脂、芳香族系ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアリレート、ポリアリルスルホン、ポリベンゾイミダゾール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルニトリル、ポリエーテルスルホン、ポリチオエーテルスルホン、ポリイミド、ポリアミノビスマレイミド、ポリアリルケトン、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、芳香族ポリウレタン、キシレン−ホルムアルデヒド樹脂などを挙げることができる。
【0033】
これらのうち透明性が高く成形加工が容易である点で、芳香族ポリカーボネート系樹脂、芳香族ポリエステル系樹脂、スチレン系樹脂が好ましく、ビスフェノールA型ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリスチレンがさらに好ましい。本発明の芳香族含有樹脂(B)は単独で使用してもよく、複数を組み合わせて使用してもよい。また、本発明の効果を損なわない範囲であれば、上記以外の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂とのアロイにすることも可能である。
【0034】
本発明においてシラン化合物で修飾された酸化亜鉛微粒子(A)としては、固体または液体状態のものを使用する。樹脂中に容易に分散させることができ、得られる樹脂組成物の透明性も高いことから、25℃、1気圧の条件で液体であることが好ましい。このような液体状態の表面修飾酸化亜鉛微粒子(A)は、上記一般式(1)で表されるシラン化合物として好ましくは炭素数が10〜18の長鎖アルキル基含有シラン化合物を用いることにより得ることができ、特にデシルトリメトキシシランおよびデシルトリエトキシシランが好ましい。
【0035】
また、このような条件下において、上記一般式(1)で表されるシラン化合物として長鎖アルキル基含有シラン化合物の一部を芳香族基含有シラン化合物に置き換えることにより、芳香族含有樹脂(B)との相溶性はさらに向上し、得られる樹脂組成物の透明性も向上する。この際に用いる芳香族基含有シラン化合物としては、特にフェニルトリメトキシシランおよびフェニルトリエトキシシランが好ましい。長鎖アルキル基含有シラン化合物と芳香族基含有シラン化合物の比率としては、有機基Rのモル比で、(長鎖アルキル基):(芳香族基)=100:0〜10:90で、好ましくは100:0〜20:80で、より好ましくは100:0〜30:70である。
【0036】
本発明の樹脂組成物は、酸化亜鉛微粒子(A)の粒子径が微細であることと樹脂中での分散性が非常に優れるために高い透明性を有する。具体的には、膜厚300〜500μmのフィルムにしたときのヘイズが15%以下であることが望まれる。尚、ここでいうヘイズとは、市販の濁度計を用い、JIS K7105に記載の方法により求めることができる。
【0037】
また本発明の樹脂組成物は、酸化亜鉛微粒子(A)が紫外線吸収剤として作用するために高い耐候性を有する。耐候性を評価する尺度としては、樹脂組成物を膜厚300〜500μmのフィルムにし、50MJ/mのエネルギー量でキセノンランプを照射した場合のヘイズの値が照射前のヘイズ値+10以下であることが望まれる。また、キセノンランプの照射は、市販のキセノンウェザーメーターを用い、JIS K7350−2に記載の方法により行うことができる。
【0038】
本発明の樹脂組成物をより高性能な物にするため、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、離型剤、可塑剤、紫外線吸収剤、光安定剤、顔料、染料、帯電防止剤、導電性付与剤、分散剤、相溶化剤、透明核剤、抗菌剤、難燃剤等の添加剤を、単独又は2種類以上併せて使用することができる。特に、有機系酸化防止剤、有機系紫外線吸収剤、帯電防止剤、および難燃剤を添加することにより、該樹脂組成物の用途が広がるために好ましい。有機系酸化防止剤の例としては、フェノール系、ヒンダードフェノール系、チオエーテル系、およびホスファイト系のものが挙げられ、好ましくは、ヒンダードフェノール系とホスファイト系のものを併用添加して用いる場合、該樹脂組成物の特性低下が起こりにくい。
【0039】
有機系紫外線吸収剤の例としては、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、トリアジン系、シアノアクリレート系、サリシレート系、ホルムアミジン系、およびオキザニリド系のものが挙げられる。
【0040】
帯電防止剤の例としては、ノニオン型界面活性剤、カチオン型界面活性剤、アニオン型界面活性剤、両性イオン型界面活性剤などの低分子型のもの、ポリエーテルエステルアミド、ポリオレフィンとポリエーテルのブロックコポリマー、幹ポリマーがポリアミド、枝ポリマーがポリアルキレンエーテルとポリエステルとのブロックポリマーからなるグラフトポリマー、カプロラクタム、イミド環を形成しうる多価カルボン酸成分、有機ジイソシアネート及びポリエチレングリコールとの共重合体、α−オレフィンと無水マレイン酸とポリアルキレンアリルエーテルとの共重合体、ポリエチレンエーテル、イソシアネート及びグリコールからなるポリマー等の高分子型のもの、その他、カーボンブラック、導電性ポリマー、導電性フィラーなどを用いることができる。
【0041】
また、難燃剤の例としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジイソプロピルフェニルホスフェート、トリス(クロロエチル)ホスフェート、アルコキシ置換ビスフェノールAビスホスフェート、ヒドロキノンビスホスフェート、レゾルシンビスホスフェート、トリオキシベンゼントリホスフェート等のポリホスフェート等のリン酸エステル化合物、テトラブロモビスフェノールA、デカブロモジフェニルオキサイド、ヘキサブロモシクロドデカン、オクタブロモジフェニルエーテル、ビストリブロモフェノキシエタン、エチレンビステトラブロモフタイルイミド、トリブロモフェノール、ハロゲン化ビスフェノールAとエピハロヒドリンとの反応によって得られる各種ハロゲン化エポキシオリゴマー、ハロゲン化ビスフェノールAを構成成分とするカーボネートオリゴマー、ハロゲン化ポリスチレン、塩素化ポリオレフィン及びポリ塩化ビニル等のハロゲン含有化合物、シリコーン油、フュームドシリカ、シリカゲル、シリコーン樹脂、シリコーンオリゴマー等のシリコーン系難燃剤、金属水酸化物、金属酸化物、スルファミン酸化合物などを用いることができる。
【0042】
本発明の樹脂組成物の製造方法としては特に限定されないが、粒子径と粒子径分布がコントロールされた酸化亜鉛微粒子が凝集することなく樹脂中に均一分散した組成物が得られる点で、以下の工程(1)〜(4)を含むことが好ましい。すなわち、
(1)アルカリ金属水酸化物のアルコール溶液にカルボン酸亜鉛化合物を添加し、酸化亜鉛微粒子を製造する工程;
(2)工程(1)で得られた酸化亜鉛微粒子のアルコール分散液にシラン化合物を添加し、シラン化合物で表面修飾された酸化亜鉛微粒子(A)を製造する工程;
(3)シラン化合物で表面修飾された酸化亜鉛微粒子(A)をアルコールから分離し、洗浄および乾燥する工程;
(4)工程(3)で単離せしめた酸化亜鉛微粒子(A)と芳香族含有樹脂(B)とを混合する工程;
という4つの工程を含む。
【0043】
上記工程(1)において使用するアルカリ金属水酸化物としては限定されないが、入手性と反応性の点でNaOHあるいはKOHが好ましい。
【0044】
上記工程(1)において使用するアルコールとしては限定されないが、反応が効率よく進行する点、及び、酸化亜鉛微粒子と表面修飾剤の両方を分散あるいは溶解させることができる点、および容易に再利用できる点で沸点100℃以下のアルコールが好ましく、炭素数3以下の脂肪族アルコールがより好ましい。ここで使用する溶媒としては、酸化亜鉛微粒子と表面修飾剤とを反応させる際の溶媒と同一であるものが、工程簡略化できる点で好ましい。すなわち、アルコール溶媒中アルカリ金属水酸化物とカルボン酸亜鉛化合物とを反応させて酸化亜鉛微粒子を製造し、溶媒置換を経ることなく連続して工程(2)へと進み、表面修飾剤と反応させることが可能となる。
【0045】
上記工程(1)において使用するカルボン酸亜鉛化合物としては限定されず、酢酸亜鉛、プロピオン酸亜鉛、ラウリル酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、アジピン酸亜鉛、ヒドロキシ酢酸亜鉛などを挙げることができる。これらは水和物であってもよく、無水物であってもよい。入手性および経済性の点で酢酸亜鉛および酢酸亜鉛二水和物が好ましい。
【0046】
上記工程(1)においてアルカリ金属水酸化物とカルボン酸亜鉛化合物とを反応させる際、反応が効率よく進行する点でまずアルカリ金属水酸化物のアルコール溶液を調製しておき、そこにカルボン酸亜鉛化合物を添加する方法が好ましい。カルボン酸亜鉛化合物は単体で加えてもよく、アルコール溶液として加えてもよいが、反応がスムーズに進行する点でアルコール溶液として加えることが好ましい。カルボン酸亜鉛化合物の濃度については特に限定されないが、添加後の濃度で0.01〜0.5mol/Lであることが好ましく、0.01〜0.3mol/Lであることがより好ましく、0.02〜0.25mol/Lであることがさらに好ましい。
【0047】
濃度が低すぎると得られる酸化亜鉛微粒子の量が少ないため経済的でなく、濃度が高すぎると酸化亜鉛微粒子同士の凝集が起こりやすくなる。アルカリ金属水酸化物の使用量としては特に限定されないが、酸化亜鉛微粒子の収率および純度の点で、カルボン酸亜鉛化合物1モルに対して1.5〜4モルとなる範囲が好ましく、1.8〜3モルとなる範囲がより好ましい。反応温度は特に限定されないが、経済性と酸化亜鉛微粒子の品質の点で0〜80℃が好ましく、20〜60℃の範囲がより好ましい。反応時間については特に限定されないが、以下に示すように反応液の見かけ上の変化から決定することができる。
【0048】
アルカリ金属水酸化物のアルコール溶液にカルボン酸亜鉛化合物を添加すると、最初は白色の濁りが生じるがしばらくすると無色透明となる。そのまま攪拌を続けると再び濁りが生じる。この無色透明段階の後に表れる濁りは酸化亜鉛微粒子同士の凝集に起因するものであるため、反応液が無色透明の状態で次の工程(2)に移るのが好ましい。濃度や反応温度に左右されるため一概に言うことは困難であるが、一般的に3分〜5時間の範囲が好ましく、5分から3時間の範囲がより好ましい。
【0049】
上記工程(2)における酸化亜鉛微粒子と表面修飾剤であるシラン化合物の反応温度は、80〜300℃が好ましく、製造効率と経済性の兼ね合いから80〜250℃がより好ましく、100〜200℃がさらに好ましい。
【0050】
また上記工程(2)における酸化亜鉛微粒子と表面修飾剤であるシラン化合物の反応圧力は、0.2〜20MPaが好ましく、効率と経済性の兼ね合いから0.3〜10MPaがより好ましく、0.3〜2MPaがさらに好ましい。
【0051】
上記工程(3)においてシラン化合物で表面修飾された酸化亜鉛微粒子(A)をアルコールから分離する方法としては特に限定されず、ろ過、遠心分離、蒸留など一般的に知られている方法を適用できる。さらに単離された酸化亜鉛微粒子(A)は水やアルコールなどの溶媒で洗浄してもよく、この際に、超音波装置など洗浄効果を高めるものを用いてもよい。洗浄された酸化亜鉛微粒子(A)を乾燥させる方法としては特に限定されず、例えば、ロータリーエバポレーターを用いた減圧乾燥、真空乾燥、Nまたはエアブロー、オーブン等を用いた各種乾燥方法が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いてもよい。いったん乾燥させた場合でも、本発明の製造方法により得られる酸化亜鉛微粒子(A)は効率よくかつ強固に表面修飾されているために凝集することがなく、溶媒や樹脂中へ均一分散させることが可能である。
【0052】
上記工程(4)においてシラン化合物で表面修飾された酸化亜鉛微粒子(A)と芳香族含有樹脂(B)とを混合する方法としては、特に限定されないが、上記(A)、(B)成分、さらに必要に応じて各種添加剤等を溶融混練して製造する方法、樹脂と溶液中で混合する方法等を挙げることができる。また、これらの方法を用いて樹脂に高濃度の(A)成分を含有するマスターバッチとした後、マスターバッチと樹脂とを混合する方法でもよい。更には、これら方法を必要に応じて組み合わせてもよい。経済性と生産性の点で溶融混練により製造する方法が好ましい。
【0053】
溶融混練を行う装置としては、一般に実用されている混練機が適用でき、例えば、一軸又は多軸混練押出機、加熱ロールニーダー、バンバリーミキサー、プラストミル等を用いることができる。中でも、汎用性から減圧装置を装備した二軸押出機がより好ましい。尚、本発明で製造された樹脂組成物の成形加工法は、特に限定されるものではなく、熱可塑性樹脂について一般に用いられている成形法、例えば、射出成形、ブロー成形、押出成形、真空成形、プレス成形、カレンダー成形等が適用できる。
【実施例】
【0054】
以下に本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0055】
各種分析は、以下の方法にて測定した。
【0056】
<酸化亜鉛重量%の測定>
表面修飾酸化亜鉛微粒子(A)は、酸化亜鉛と表面修飾剤から構成されており、表面修飾剤はさらに側鎖Rとケイ素(Si)部分に分けられる。ここで、側鎖Rの割合が分かれば、ケイ素部分の割合も計算でき、結果として酸化亜鉛の割合も計算できる。計算値は以下に示す式により求めることが出来る。
【0057】
r(%)+s(%)+z(%)=100(%)
(rは側鎖Rの重量%、sはシリコーン残渣の重量%、zは酸化亜鉛の重量%をそれぞれ表す。)具体的な作業としては、表面修飾酸化亜鉛微粒子(A)をるつぼに秤取して電気炉にて620℃で1時間焼き、重量減少率(%)を求めこれをrとした。rと表面修飾剤の構造からsを求め、ついで酸化亜鉛重量%zを求めた。
【0058】
<酸化亜鉛の粒子径>
透過型電子顕微鏡(TEM)観察により90〜110個程度の粒子径を測定し、その和を粒子数で除して平均することによって、数平均粒子径として求めた。尚、TEM観察はJEM−1200EX(日本電子株式会社製)を用いて実施した。
【0059】
<サンプルシートの厚み測定>
得られたサンプルの厚みは、ピーコック直読デジタルリニアゲージ(株式会社尾崎製作所製D−20S)を用いて測定した。厚み測定の際、ダイヤルゲージスタンドとしては同社製SIS−6を、デジタルカウンタとしては同社製C−5Sを用いた。
【0060】
<サンプルシートの透明性>
得られたサンプルの透明性は、JIS K7105−1981記載の方法により、日本電色工業株式会社製濁度計NDH−300Aを用いて、温度23℃±2℃、湿度50%±5%の条件にてヘイズ(%)を測定した。
【0061】
<耐候性(耐光性)試験>
得られたサンプルシートを用いてキセノンウエザーメーターによる耐候性(耐光性)試験を以下の条件にて行った。
使用機器:スガ試験機株式会社製 スーパーキセノンウエザーメーター SX75
光源:7.5kW水冷キセノンアークランプ
放射照度:150W/m (測定波長域300−400nm)
総放射エネルギー:50MJ/m
温度:BPT83℃、湿度50%RH
回転速度:12rpm
その後、サンプルシートのヘイズを上記方法にて測定した。
【0062】
(製造例1)酸化亜鉛微粒子のメタノール分散液の製造
3Lの4つ口フラスコにKOH44.9gとメタノール1.6Lとを入れて攪拌し、完全に溶解させた。別の容器に酢酸亜鉛二水和物87.8gをとり、メタノール0.6Lを加えて溶解させた。この酢酸亜鉛のメタノール溶液をすばやくKOHのメタノール溶液に加え、35℃で10分間攪拌することにより透明な酸化亜鉛微粒子のメタノール分散液を得た。この分散液中の酸化亜鉛微粒子の濃度は0.2mol/Lである。TEM観察により酸化亜鉛微粒子の数平均粒子径が3nmであることを確認した。また、得られた酸化亜鉛微粒子のメタノール分散液にUV光(アズワン社製ハンディーUVランプ:波長365nm)を照射すると黄緑色に発光することが分かった。
【0063】
(製造例2)表面修飾酸化亜鉛微粒子(A1)の合成
製造例1で合成した酸化亜鉛微粒子のメタノール分散液200mL(酸化亜鉛0.04モル含有)をオートクレーブ(容量300mL;耐圧硝子工業株式会社製)に入れ、デシルトリメトキシシラン3.85g(製品名:LS−5258、信越化学工業株式会社製;酸化亜鉛1モルに対して0.37モルに相当)を加え、120℃/0.5MPaの条件下で2時間反応させた。反応液が2層に分離していたため上澄み液を取り除き、沈殿物にヘキサン50mLを加えた。少量の不溶物をろ過により除去した後ヘキサン溶液から溶媒を留去し、80℃で10時間減圧乾燥させることにより、デシルトリメトキシシランで表面修飾された酸化亜鉛微粒子(A1)5.3gを無色透明な粘稠性液体として得た。得られた酸化亜鉛微粒子(A1)中の酸化亜鉛の重量%は64%であり、収率は100%であった。また、得られた酸化亜鉛微粒子(A1)にUV光(波長365nm)を照射すると、表面修飾前と同様に黄緑色に発光することが分かった。
【0064】
(製造例3)表面修飾酸化亜鉛微粒子(A2)および(A3)の合成
製造例1で合成した酸化亜鉛微粒子のメタノール分散液200mL(酸化亜鉛0.04モル含有)をオートクレーブ(容量300mL;耐圧硝子工業株式会社製)に入れ、デシルトリメトキシシラン22.1g(製品名:LS−5258、信越化学工業株式会社製;酸化亜鉛1モルに対して2.1モルに相当)を加え、120℃/0.5MPaの条件下で2時間反応させた。反応液が2層(共に液体)と反応器下部の1層(粘稠性液体)の合計3層に分かれていた。まず、上層の2層をまとめてデカンテーションにより得て、そのまま遠心分離にかけた後、そのうちの下層部を単離した(UV照射により、上層は変化せず下層は黄緑色に発光したため)。単離した下層部にはヘキサン50mLを加えて撹拌した後、ろ過により不溶物を除去した。
【0065】
得られたヘキサン溶液から溶媒を留去し、80℃で10時間減圧乾燥させることにより、デシルトリメトキシシランで表面修飾された酸化亜鉛微粒子(A2)7.7gを無色透明液体として得た。得られた酸化亜鉛微粒子(A2)中の酸化亜鉛の重量%は17%であった。反応器下部の粘稠性液体についても同様に、ヘキサン50mLを加えて撹拌した後、ろ過により不溶物を除去し、得られたヘキサン溶液から溶媒を留去し、80℃で10時間減圧乾燥させることにより、デシルトリメトキシシランで表面修飾された酸化亜鉛微粒子(A3)3.2gを無色透明な粘稠性液体として得た。得られた酸化亜鉛微粒子(A3)中の酸化亜鉛の重量%は62%であった。また、表面修飾酸化亜鉛微粒子(A2)、(A3)を合わせた収率は100%であり、共にUV光(波長365nm)を照射すると、表面修飾前と同様に黄緑色に発光することが分かった。
【0066】
(製造例4)表面修飾酸化亜鉛微粒子(A4)の合成
製造例1で合成した酸化亜鉛微粒子のメタノール分散液200mL(酸化亜鉛0.04モル含有)をオートクレーブ(容量300mL;耐圧硝子工業株式会社製)に入れ、デシルトリメトキシシラン1.87g(製品名:LS−5258、信越化学工業株式会社製;酸化亜鉛1モルに対して0.18モルに相当)およびフェニルトリメトキシシラン1.42g(製品名:LS−2750、信越化学工業株式会社製;酸化亜鉛1モルに対して0.18モルに相当)を加え、120℃/0.5MPaの条件下で2時間反応させた。反応液が2層に分離していたため上澄み液を取り除き、沈殿物にヘキサン50mLを加えた。
【0067】
少量の不溶物をろ過により除去した後ヘキサン溶液から溶媒を留去し、80℃で10時間減圧乾燥させることにより、デシルトリメトキシシランおよびフェニルトリメトキシシランで表面修飾された酸化亜鉛微粒子(A4)4.8gを無色透明な粘稠性液体として得た。
得られた酸化亜鉛微粒子(A4)中の酸化亜鉛の重量%は65%であり、収率は100%であった。また、得られた酸化亜鉛微粒子(A4)にUV光(波長365nm)を照射すると、表面修飾前と同様に黄緑色に発光することが分かった。
【0068】
(実施例1)PS/表面修飾酸化亜鉛微粒子(A1)組成物
市販ポリスチレン(PS)45g(製品名:GPPS HF77、PSジャパン株式会社製)と表面修飾酸化亜鉛微粒子(A1)0.71g(樹脂組成物中に酸化亜鉛が1重量%になる)、並びに、リン系安定剤及びフェノール系酸化防止剤としてそれぞれアデカスタブHP−10(製品名)及びAO−60(製品名、いずれも株式会社ADEKA製)各0.09gを190℃に設定したラボプラストミル(株式会社東洋精機製作所製)を用いて5分間溶融混練し樹脂組成物を得た。
【0069】
得られた樹脂組成物を設定温度230℃で熱プレス成形し、厚さ350μmのシート状の成形体サンプルを得た。得られたサンプルのヘイズは、12%であった。次に、このサンプルについて上記耐候性試験を行った後、ヘイズを測定した結果、20%であった。
【0070】
(実施例2)PS/表面修飾酸化亜鉛微粒子(A2)組成物
表面修飾酸化亜鉛微粒子(A2)を2.8g(樹脂組成物中に酸化亜鉛が1重量%になる)用いた以外は、上記実施例1と同様にして厚さ350μmのシート状の成形体サンプルを得た後、耐候性試験を行った。ヘイズは、試験前が9%で試験後は14%であった。
【0071】
(実施例3)PS/表面修飾酸化亜鉛微粒子(A3)組成物
表面修飾酸化亜鉛微粒子(A3)を0.74g(樹脂組成物中に酸化亜鉛が1重量%になる)用いた以外は、上記実施例1と同様にして厚さ350μmのシート状の成形体サンプルを得た後、耐候性試験を行った。ヘイズは、試験前が10%で試験後は17%であった。
【0072】
(実施例4)PS/表面修飾酸化亜鉛微粒子(A4)組成物
表面修飾酸化亜鉛微粒子(A4)を0.70g(樹脂組成物中に酸化亜鉛が1重量%になる)用いた以外は、上記実施例1と同様にして厚さ350μmのシート状の成形体サンプルを得た後、耐候性試験を行った。ヘイズは、試験前が7%で試験後は14%であった。
【0073】
(比較例1)PS単独
表面修飾酸化亜鉛微粒子を添加しなかったこと以外は、上記実施例1と同様にして厚さ350μmのシート状の成形体サンプルを得た後、耐候性試験を行った。ヘイズは、試験前が6%で試験後はサンプルが劣化に耐えられず破れてしまい測定できなかった。
【0074】
(比較例2)PS/市販酸化亜鉛微粒子組成物
酸化亜鉛微粒子(シグマアルドリッチジャパン株式会社製、1次粒子径が50〜70nm)を0.45g(樹脂組成物中に酸化亜鉛が1重量%になる)用いた以外は実施例1と同様にして厚さ350μmのシート状の成形体サンプルを得た後、耐候性試験を行った。得られた市販酸化亜鉛微粒子を含有したシートは、白色不透明であり、酸化亜鉛微粒子が樹脂中で凝集していることが目視により確認できた。ヘイズは、試験前が73%で、試験後はサンプルが劣化に耐えられず破れてしまい測定できなかった。
【0075】
上記結果より、本発明における表面修飾酸化亜鉛微粒子を含む樹脂組成物が、優れた透明性と耐候性を併せ持つことが容易に理解できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
SiX(4−a) (1)
(式中、Rは炭素数1〜18の1価の有機基、Xは加水分解性基をあらわす。RおよびXがそれぞれ複数個ある場合は、それらは同一であっても異なっていてもよい。aは1、2、または3である。)
であらわされるシラン化合物で表面修飾された、酸化亜鉛部分の数平均粒子径が0.5〜20nmの酸化亜鉛微粒子(A)と芳香族含有樹脂(B)とを含有する樹脂組成物であり、酸化亜鉛微粒子(A)の含有量が0.1〜30重量%である樹脂組成物。
【請求項2】
加水分解性基Xが炭素数3以下のアルコキシ基であり;炭素数1〜18の1価の有機基Rがメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、シクロヘキシルメチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、フェニル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基、ナフチル基、ベンジル基、スチリル基、ビニル基、3−メタクリロキシプロピル基、3−アクリロキシプロピル基、3−アミノプロピル基、3−グリシドキシプロピル基、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、アリル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、2−シアノエチル基からなる群より選ばれる1種以上の有機基であり;aが1または2である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
酸化亜鉛微粒子(A)の数平均粒子径が1〜10nmである、請求項1または2のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項4】
酸化亜鉛1モルに対するシラン化合物の修飾量が0.01〜5モルの範囲にある、請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項5】
芳香族含有樹脂(B)が芳香族ポリカーボネート系樹脂、芳香族ポリエステル系樹脂、スチレン系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項6】
シラン化合物で表面修飾された酸化亜鉛微粒子(A)が25℃、1気圧の条件で液体である、請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項7】
膜厚300〜500μmのフィルムにしたときのヘイズが15%以下である、請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項8】
膜厚300〜500μmのフィルムとし、50MJ/mのエネルギー量でキセノンランプを照射した場合のヘイズの値が照射前のヘイズ値+10以下である、請求項1〜7のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項9】
有機系酸化防止剤、有機系紫外線吸収剤、帯電防止剤、および難燃剤からなる群より選ばれる化合物1種以上をさらに含有する、請求項1〜8のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項10】
(1)アルカリ金属水酸化物のアルコール溶液にカルボン酸亜鉛化合物を添加し、酸化亜鉛微粒子を製造する工程;
(2)工程(1)で得られた酸化亜鉛微粒子のアルコール分散液にシラン化合物を添加し、シラン化合物で表面修飾された酸化亜鉛微粒子(A)を製造する工程;
(3)シラン化合物で表面修飾された酸化亜鉛微粒子(A)をアルコールから分離し、洗浄および乾燥する工程;
(4)工程(3)で単離せしめた酸化亜鉛微粒子(A)と芳香族含有樹脂(B)とを混合する工程、
を含むことを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項11】
工程(1)において、カルボン酸亜鉛化合物の濃度が0.01〜0.5mol/Lであることを特徴とする、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
工程(1)において、アルカリ金属水酸化物の使用量がカルボン酸亜鉛化合物1モルに対して1.5〜4モルの範囲である、請求項10または11のいずれかに記載の製造方法。
【請求項13】
工程(2)の反応を80〜300℃かつ0.2〜20MPaの条件で実施する、請求項10〜12のいずれかに記載の製造方法。
【請求項14】
工程(4)の混合方法が溶融混練である、請求項10〜13のいずれかに記載の製造方法。

【公開番号】特開2008−297396(P2008−297396A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−143512(P2007−143512)
【出願日】平成19年5月30日(2007.5.30)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】