説明

樹脂被覆管の管端連結位置検出装置および方法

【課題】連結部の段差の発生による検出位置の誤差を補正可能な管端連結部検出装置の提供。
【解決手段】樹脂被覆後の管端連結部4を渦電流を用いて検出する渦流検出器1と、管端連結部4前後に発生する管端の段差量5を計測する段差量計測器2と、前記段差量5の計測結果が一定量以上の場合にのみ前記管端連結部4の検出位置信号に補正を加える補正演算器8とを有する、樹脂被覆管3の管端連結位置検出装置とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂被覆管の製造工程において、樹脂被覆後における管端連結部の切断位置のずれを低減して、切離しの失敗による長さ不良材の発生や設備停止を減少させる歩留りが良好で能率良く被覆管を製造する分野に関わる。
【背景技術】
【0002】
従来の樹脂被覆管の製造において、使用する樹脂の歩留りや鋼管製造の直行率の向上、または設備停止頻度の最小化による製造能率の向上は極めて重要な課題である。歩留りや直行率の阻害要因として、樹脂被覆後に行う管端連結部の切断における位置ずれがある。管端連結部の位置検出の方法として、従来は渦流検出装置によってこれを行っている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭52−067084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の渦流検出装置による管端連結位置検出方法では、検出位置にずれが生じる問題点があった。これは、渦電流の特性として、管端連結部などの不連続部に段差が発生していた場合、よりセンサに近い段差の高い方の部位に電流が流れ易い性質があるためである。例として、先行管の管端が後続管の管端に対して鉛直方向に下側の場合、渦流方式の検出装置では実際の連結位置に対して先行管側に寄った位置を連結位置として検出する傾向が強く、逆に先行管の管端が後続管の管端に対して鉛直方向に上側の場合では後続管側に寄った位置を連結位置として検出する傾向が強く、そのため実際の管端より管内部側にずれた位置を切断することになり歩留り低下を来たしていた。このように樹脂被覆管の製造において、管端連結部の段差による切断位置ずれの課題を解決することは重要であり、強く望まれていた。
【0005】
上述のとおり、従来の渦電流の原理を用いた管端連結部検出装置では連結部の段差の発生により検出位置に誤差が生じ歩留りが低下するという未解決の課題があった。そこで、本発明は、この課題を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するために以下の手段をとった。すなわち、本発明は、
(1) 樹脂被覆管製造時に用いる管端連結位置検出装置であって、樹脂被覆後の管端連結部を渦電流を用いて検出する渦流検出器と、管端連結部前後に発生する管端の段差量を計測する段差量計測器と、前記段差量の計測結果が一定量以上の場合にのみ前記管端連結部の検出位置信号に補正を加える補正演算器とを有することを特徴とする樹脂被覆管の管端連結位置検出装置であり、また、
(2) 前記段差量計測器がレーザ距離計であることを特徴とする(1)に記載の樹脂被覆管の管端連結位置検出装置であり、また、
(3) 樹脂被覆管製造時において、樹脂被覆後の管端連結部を渦電流を用いて検出し、かつ、管端連結部前後に発生する管端の段差量を計測し、かつ、前記段差量の計測結果が一定量以上の場合にのみ前記管端連結部の検出位置信号に補正を加えることを特徴とする樹脂被覆管の管端連結位置検出方法であり、また、
(4) 前記管端連結部前後に発生する管端の段差量をレーザ距離計により計測することを特徴とする(3)に記載の樹脂被覆管の管端連結位置検出方法
である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、従来の渦流検出技術で問題となっていた管端連結部の段差による位置検出誤差を、著しく低減させ、切断位置のずれ量を大幅に低減させることができて、不良材発生を減少でき、能率良く樹脂被覆管を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態の一例を示す概略断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明において、渦流検出器は従来と同様のものを用いうる。一方、段差量計測器としては、次の理由からレーザ距離計が好ましい。すなわち、樹脂被覆管の管端連結部付近における段差量の範囲は数mmから十数mmであり、また樹脂被覆管の製造ライン速度等の操業条件は管のサイズや製造品種によって大きく異なる。こうした条件を考慮すると、段差量計測器としてレーザ距離計を採用することは、レーザ距離計の特性である高い応答性と高精度な非接触測距性とにより、樹脂で被覆された管表面においても高精度の変位計測を可能にするからである。
【0010】
本発明の好適な実施形態では、渦流検出器で管端連結部を検出し、その検出位置信号を得る一方でレーザ距離計を用いて前記管端連結部前後の先行管と後続管の段差量を計測し、この計測値が一定量以上であった場合に渦流検出器の検出位置信号に補正を加えることで、より高精度に切断位置を決定することが可能となる。なお、前記計測値が一定量未満であった場合は前記補正を加えることはしない。
【0011】
具体的な管端連結位置の検出方法として、図1に一例を示すように、樹脂被覆管3の管端連結部4が渦流検出器1およびレーザ距離計2の下方を通過する際、渦流検出器1では管端連結部4による渦電流の乱れを検知し、レーザ距離計2では先行管と後続管の段差量5を計測する。この計測した段差量が、事前に設定した渦流探傷による位置精度不良に繋がる限界段差量を超えた場合において、渦流検出器1の検出位置信号に対して補正を加える。この補正を加える手段として補正演算器8を備えた。このときの補正値は、検出位置と実際の管端連結位置との差異についての実績データおよび/または実験データに基づき、段差量や操業条件により設定するものである。
【0012】
なお、図1は、樹脂被覆管3のライン進行方向7に沿って渦流検出器1、レーザ距離計2の順に配置した例であるが、本発明はこれにこだわらず、レーザ距離計2、渦流検出器1の順でもよく、これらを一体化させた装置でもよい。
【実施例】
【0013】
表1は、外径6インチの樹脂被覆管の製造時における、本発明の装置(図1に示したもの)を適用した場合と、従来の装置(渦流検出器のみ有する)で検出した場合の結果である。ここで、本発明の装置の補正演算器8に設定する前記限界段差量を3mm、実際の段差量計測値が前記限界段差量を超えた場合の管長手方向検出位置に対する補正値を10mmとした。また、表2には同様に外径12インチの樹脂被覆管の製造時における、本発明の装置(図1に示したもの)を適用した場合と、従来の装置(渦流検出器のみ有する)で検出した場合の結果である。ここで、本発明の装置の補正演算器8に設定する前記限界段差量を5mm、実際の段差量計測値が前記限界段差量を超えた場合の管長手方向検出位置に対する補正値を15mmとした。これらより、本発明により切断位置のずれ量6の低減が図られ、良好な結果が得られたことが分かる。
【0014】
【表1】

【0015】
【表2】

【符号の説明】
【0016】
1 渦流検出器
2 段差量計測器(例:レーザ距離計)
3 樹脂被覆管
4 管端連結部(段差有り)
5 段差量
6 切断位置のずれ量
7 ライン進行方向
8 補正演算器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂被覆管製造時に用いる管端連結位置検出装置であって、樹脂被覆後の管端連結部を渦電流を用いて検出する渦流検出器と、管端連結部前後に発生する管端の段差量を計測する段差量計測器と、前記段差量の計測結果が一定量以上の場合にのみ前記管端連結部の検出位置信号に補正を加える補正演算器とを有することを特徴とする樹脂被覆管の管端連結位置検出装置。
【請求項2】
前記段差量計測器がレーザ距離計であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂被覆管の管端連結位置検出装置。
【請求項3】
樹脂被覆管製造時において、樹脂被覆後の管端連結部を渦電流を用いて検出し、かつ、管端連結部前後に発生する管端の段差量を計測し、かつ、前記段差量の計測結果が一定量以上の場合にのみ前記管端連結部の検出位置信号に補正を加えることを特徴とする樹脂被覆管の管端連結位置検出方法。
【請求項4】
前記管端連結部前後に発生する管端の段差量をレーザ距離計により計測することを特徴とする請求項3に記載の樹脂被覆管の管端連結位置検出方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−43406(P2011−43406A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−191773(P2009−191773)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】