説明

機密保護要素

本発明は、機密保護文章の分野において、より詳述すれば、機密保護要素の分野において、印刷(違法複製)及び偽造に対して機密保護文章を保護することを意図する。本発明は、光で、特にUV光で照射後にその外観を変化し、かつ数秒以内で原状に戻る、被覆層を有する機密保護要素を開示している。前記機密保護要素を有する機密保護文章、並びに該機密保護要素の製造方法も開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機密保護文書の分野において、より詳述すれば、機密保護要素の分野において、印刷(違法複製)及び偽造に対して機密保護文書を保護することを意図する。本発明は、光で、特にUV光で照射後にその外観を変化し、かつ数秒以内で原状に戻る、被覆層を有する機密保護要素を開示している。前記機密保護要素を有する機密保護文書、及び該機密保護要素の製造方法も開示されている。
【0002】
視覚依存の外観を呈する被覆、印刷及び標識("光学可変装置"、OVDs)は、銀行券及び機密保護文書に対する十分なコピー防止法として使用される("Optical Document Security", ed. R. L. van Renesse; 2nd edition, 1998, Artech House, Londonを参照)。OVDsの中で、光学可変インク(OVI(登録商標)、EP−A−0227424号)は、1987年において銀行券に対して最初に使用されてから、"明白な"機密保護要素として顕著な位置を維持している。光学可変インクは、光学可変インク(OVPs)、有利にはUS4,434,010号;US5,084,351号;US5,171,363号;EP−A−227423号において、及び関連文献において開示されている薄膜光学干渉装置のフレークを基礎として配合される。
【0003】
DE102004049734号は、1つ以上の発光着色剤並びに1つ以上の透明な及び/又は半透明の効果顔料を含む着色されたプラスチックを開示している。DE102004049734号において好適である発光着色剤は、蛍光又はリン光を呈する、当業者に公知の、全て有機もしくは無機の発光染料又は顔料である。実施例1において、暗闇で赤い発光を呈する昼光下で、金色のマストーンを有する光沢のある注入成形は、熱可塑性ポリプロピレン、Lumilux(登録商標)Effect Red N 100(Riedel de Haen)並びにIriodin(登録商標)355(二酸化チタン及び酸化鉄で被覆された雲母)の混合物を注入成形することによって製造される。
【0004】
WO2004101890号は、一方は可視スペクトル領域で、他方は光の紫外スペクトル領域で検査されうる、2つの異なる機密保護要素を含む平坦な二重機密保護マークに関する。該機密保護マークは、UV光の作用下で裸眼で個々の粒子として認識することができる低濃度で、平面型効果顔料、及び発光、特に蛍光顔料を含有する。本発明は、該機密保護マークの製造方法に、及びその使用にも関する。
【0005】
JP2002285061号は、市販のカラーコピー機械によって偽造が非常に難しい印刷を提供する。偽造を防ぐ印刷の中で、印刷範囲の少なくとも一部分が、真珠顔料及び蛍光顔料を含有する偽造を防ぐためのインクで印刷され、かつ同時に、少なくとも一部分が、偽造を防ぐためのインクのために使用される真珠顔料を使用するインクで印刷される。
【0006】
WO2008067887号は、偽作に対する目的物を保護手段するための光学的に可視の機密保護要素に、このタイプの機密保護要素の製造方法に、及び該要素の使用に関する。
【0007】
WO2008067887号の実施例2において、機密保護の配合物が、
a)赤から金へのカラーフロップ(colour flop)を有する雲母を基礎とする多層干渉顔料、及び蛍光緑を示す顔料からなる内側の円形表面;
a)金から赤へのカラーフロップを有する雲母を基礎とする多層干渉顔料、及び蛍光赤を示す顔料からなる外側の隣接円
を含有することを記載している。
【0008】
鉛直観察で、前記の内側の円形表面は赤色を示し、かつ外側の隣接円は金色を示す。視覚に依存して、内側の円形表面の色は金に変化し、かつ外側の隣接円は赤に変化する。UV光での照射に対して、内側の円形表面は蛍光緑を示し、かつ外側の隣接円は蛍光赤を示す。
【0009】
機密保護文書上の印刷された光学可変要素は、主に、該要素のスペクトル反射特性の、すなわち2つ以上の種々の視角で、少なくとも近直交で、及び文書の平面に関する近いグレージング視野(grazing view)での色の使用者検査によって、ヒトの肉眼で機密保護文書の"明白な"認証のために使用される。前記の角度依存の色は、本物の光学可変機密保護要素の源を入手することなしに複写されることができず、かつ"一般人"によって容易に確認されうる、"本物であることの単純なメッセージ"である。
【0010】
EP1584647号は、吸収層又は拡散性散乱層、及び光学可変顔料を含有する層を含む光学可変効果を有する膜材料を記載している。
【0011】
EP1669213号は、ある視角では透明に見える被覆層を有し、根本的な情報の入手を許すが、他の視角では不透明である("Venetian Blind効果")、機密保護要素を開示している。価値、権利、同一性のある文書、機密保護ラベル又は前記機密保護要素を有するブランド品、及び該機密保護要素を製造する方法も開示されている。好適な下地表面、光学可変及び他の角度依存可視効果の使用を、実現することができる。
【0012】
EP1719636号は、銀行券、価値、権利もしくは同一性のある文書、券、ラベル、ブランド品識別子、又は税帯封(tax banderole)のための機密保護要素を開示している。該要素は、実質的な視覚依存の色の変化を有する少なくとも1つの光学可変顔料(P)を含有する被覆と、少なくとも1つの選択的スペクトル吸収材料(A)との組合せを含み、直交入射で光学可変顔料(P)によって反射される可視スペクトル構成要素を遮断する。前記機密保護要素は、直交入射角で見た場合に黒く、かつグレージング角で見た場合に有色であるように見える。
【0013】
US2005035331号は、リン光体配合物であって、
実質的な質量配合の割合で、800nm未満及び400nmより大きい波長範囲において放出する持続性自己成長材料の少なくとも1つのタイプ、
実質的な質量配合の割合で、前記自己成長材料の効果を高める、より高い反射性の機能顔料の少なくとも1つのタイプ、
実質的な質量配合の割合で、該配合物を結合する支持複合材料の少なくとも1つのタイプ
を含むリン光体配合物に関する。
【0014】
本発明の目的は、先行技術の欠点を克服する、すなわち、より明らかな可視変色を示し、かつ"一般人"によって容易に確認されることができる機密保護要素を提供することであった。
【0015】
従って、本発明は、価値、権利、同一性のある文書のための、機密保護ラベル又はブランド品のための、下地を含む機密保護要素に関し、その表面で、又はその表面上で、並びに
本発明による顔料組成物、又は
(a)部分的に又は完全に無機リン光体顔料を含有する被覆層、及び
(b)透明着色剤、特に透明な有機もしくは無機顔料を含有する被覆層
を含む少なくとも1つの前記下地表面上で、表示又は他の見える特徴を含んでよい。
【0016】
有利には、機密保護要素は、(a)部分的に又は完全に無機リン光体顔料を含有する被覆層、及び(b)透明着色剤、特に透明な有機もしくは無機顔料を含有する被覆層を含む。通常、透明着色剤を含有する被覆層は、無機リン光体顔料を含有する被覆層の上層上に適用される。すなわち、この場合において、機密保護要素は、次を含む:
− 下地
− 無機リン光体顔料を含有する被覆層、及び
− 透明着色剤を含有する被覆層。
【0017】
本発明の機密保護要素の操作の形式は、着色剤としての透明有機顔料及び無機リン光体下地を基礎に記載されているが、それらに制限されない。
【0018】
下地の少なくとも一部分は、無機リン光体下地を含有する層(第一層)で被覆される。第一層の上層上に、透明有機顔料を含有する第二層を被覆する。
【0019】
無機リン光体下地を含有する被覆は、形を有しうる。該形は、例えば、符号、ストライプ、幾何形状、飾り紋章、書込み、英数字、対象の記述、又はそれらの一部であってよい。
【0020】
前記リン光体無機下地がUV光によって励起される場合に、該リン光体無機下地及び透明着色剤を含有する系の外観は、該リン光体無機下地のリン光のために変化する。数秒以内で、その外観は、元の状態に戻る。前記の変色は、ヒトの肉眼で確認されうる"本物であることの単純なメッセージ"である。
【0021】
第一層の一部のみをUV光によって励起する場合に、より良好な効果を得る。その一部は、その外観を変化するのに対して、残りの部分の外観は変化しない。その変色は、ヒトの肉眼で、第一層の単純な被覆部分によって、例えば母指及びUV光での照射で、確認することができる。母指で覆われた部分は、変化しないままであるが、残りの部分は、その外観を変化する。母指の移動によって、外観において励起された部分と異なる、第一層の変化していない残りの部分が見える。この効果は、視覚的に検出可能である。
【0022】
第一層がUV−A光によって励起される場合に、第二層の一部は、UV−A吸収体で被覆されうる。UV−A吸収体で覆われた第二層の一部は、UV−A光で励起される場合に、その外観を変化しない。
【0023】
本発明の特に好ましい一実施態様において、UV−A吸収体は、第二層上でロゴの形で被覆され、かつそのロゴは、UV−A光で励起した場合に、見えるようになる。
【0024】
無機リン光体化合物が、第一層の一部でのみ含まれる場合に、ロゴも形成するように、同様の効果を得ることができる。そのロゴは、UV−A光で励起した場合に、見えるようになる。
【0025】
無機リン光体化合物が第一層の一部でのみ含まれる場合に、第一層の残りの部分は、本発明の機密保護要素が均一な外観を有するように、無機リン光体化合物と構造異性である化合物を含有する必要があってよい。
【0026】
この系の外観の変化は、実際には、次の方法の一つで達せられうる:i)透明着色剤を、リン光体無機物質の組成物、例えば該リン光体無機物質を含有するインクに添加することによって、ii)リン光体被覆を、透明着色剤を含有する第二被覆組成物でオーバープリント/被覆することによって、又はiii)前記リン光体被覆を覆って、透明着色剤を含有する箔もしくは転写マークを適用することによって。
【0027】
リン光体無機顔料及び透明着色剤のそれぞれの量は、所望の光学効果によって選択されるが、しかしながら本発明を基礎とする可視変色が観察できるままである。使用されるべき典型的な量は、リン光体無機顔料及び透明着色剤の量に対して、前記リン光体無機顔料80〜99.99質量%、有利には90〜99.99質量%、並びに透明有機着色剤0.01〜20質量%、有利には0.01〜10質量%の範囲内である。使用されるべき透明無機着色剤の典型的な量は、10〜40質量%の範囲内である。
【0028】
本明細書に記載されている機密保護要素の偽装抵抗をさらに増加するために、被覆及び/又は前記の箔もしくは転写マークは、追加の特性、例えば磁性、赤外吸収などを呈させることができる。これは、磁性材料、及び赤外吸収材料からなる群から選択される少なくとも1つの材料を、該機密保護要素の少なくとも一部に添加することによって得られうる。
【0029】
本発明の体色変化する機密保護要素を使用する他の方法は、リン光体無機下地の励起後に感知された体色変化が高められように見えるように、リン光無機下地の励起前に同様の外観を有する色ずれのない要素に接近して適用することである。
【0030】
さらに、本発明による機密保護要素は、あらゆるタイプの表示の形と合され、又は該形で適用されうる。前記表示は、印刷、レーザー捺印、磁気定位などによって製造されてよい。
【0031】
本明細書の被覆は、当業者に公知の印刷方法、例えば銅版刷鋼板(凹版)印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、凸版印刷、又はフレキソ印刷を使用して適用されうる。箔又は転写マークを適用するために、熱又は冷却スタンピングの一般に公知の方法を使用することができる。
【0032】
機密保護要素を適用する価値のある目的物は、例えば機密保護用紙、機密保護文書、織物ガーネット、或いは製品パッケージであってよい。機密保護タイプの保護を必要とする他の価値のある目的物は、もちろん、本発明の機密保護要素で提供されてもよい。前記機密保護文書は、有利には、銀行券、価値、権利又は同一性のある文書、ラベル、ブランド品識別子、及び税帯封からなる文書の群から選択される。
【0033】
前記機密保護要素は、
a)表面が表示又は他の可視特性を含有してよい表面を有する下地を提供する工程、
b)少なくとも一部の該下地表面上に、無機リン光体顔料(物質)、透明着色剤及び硬化性透明バインダーを含有する被覆を適用する工程、並びに
(c)前記被覆層を硬化する工程、又は
a)表面が表示又は他の可視特性を含有してよい表面を有する下地を提供する工程、
b)少なくとも一部の該下地表面上に、無機リン光体顔料(物質)及び(硬化性)透明バインダーを含有する被覆を適用する工程、
b1)場合により、該被覆層(b)を硬化する工程、
b2)前記の該被覆表面(b)上に、透明着色剤及び硬化性透明バインダーを含有する被覆を適用する工程、並びに
(c)前記被覆層を硬化する工程
を含む方法によって製造される。
【0034】
前記被覆層は、有利には、スクリーン印刷、グラビア/フレキソ印刷、オフセット印刷、又はローラー塗布から選択された方法によって適用される。
【0035】
該被覆層は、さらに、追加の機密保護要素、例えば赤外発光化合物、赤外吸収化合物、及び磁性物質を含有してよい。
【0036】
前記表示は、凹版印刷、凸版印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、グラビア/フレキソ印刷、レーザー印刷、レーザー捺印、染料昇華、及びインクジェット印刷からなる群から選択される方法によって前記下地表面上に適用されうる。
【0037】
ある実施態様、例えば使用中の高い機械又は化学装填量にさらされる機密保護要素において、機密保護要素に保護層を提供することが適切である。前記保護層は、機密保護要素を覆って積層された箔、又は保護ラッカー層でありうる。前記保護ラッカー層は、全体的な、又は部分的な範囲で適用されうる。ラッカー系のためには、例えば、UVラッカー、ハイブリッドラッカー、オレオグラフィックラッカー、又は一成分もしくは二成分タイプの分散ラッカーを使用することができる。該保護ラッカー層は、有利には、例えばフレキソ印刷又はオフセット印刷によって印刷される。
【0038】
リン光体層は、種々のリン光体色を有する多数の無機リン光体顔料を有してもよい。種々のリン光体色を有する種々の無機リン光体顔料を含有する多数のリン光体層のリン光体層を有することも同様に可能である。
【0039】
本発明の機密保護要素において使用される顔料組成物又は顔料混合物は、新しい。
【0040】
従って、本発明は、
(A)無機リン光体顔料(物質)、及び
(B)透明着色剤、特に有機又は無機顔料
を含有する、顔料組成物又は顔料混合物にも関する。
【0041】
リン光体無機顔料及び透明着色剤のそれぞれの量は、所望の光学効果によって選択されるが、しかしながら本発明を基礎とする可視変色が観察できるままである。使用されるべき典型的な量は、リン光体無機顔料及び透明着色剤の量に対して、前記リン光体無機顔料80〜99.99質量%、有利には90〜99.99質量%、並びに透明有機着色剤0.01〜20質量%、有利には0.01〜10質量%の範囲内である。使用されるべき透明無機着色剤の典型的な量は、10〜40質量%の範囲内である。
【0042】
前記の二成分A及びBを混合して、顔料組成物(物理的混合物)を形成してよい。
【0043】
代わりに、成分Aを被覆してもよく、又は成分B上に堆積してよい。
【0044】
顔料混合物(構成顔料)を、噴霧乾燥を含む方法によって、成分A及びBの離散性粒子からなる水性分散液を製造してもよい(US5562763号参照)。
【0045】
前記成分Bを、有機溶剤、例えばエチレングリコール又はイソプロパノール中で、成分Bのスラリーに添加してよい。得られたスラリーを、5分〜2時間超音波で処理し、濾過し、そして乾燥する。最終生成物を、焼成してよく、そしてさらに、例えば保護層、例えばSiO2で被覆してもよい。例えばUS5,407,746号を参照できる。成分Bは、金属酸化物層、例えば酸化ケイ素、又は酸化アルミニウム層中で閉じこめられてよく、さらに成分A上で堆積される。かかる粒子の製造方法は、成分Bの存在で、成分A上への金属酸化物の沈澱を含む。
【0046】
顔料混合物を、水及び/又はアルコール中での成分B及び高分子量有機化合物の懸濁液又は溶液と、水及び/又はアルコール中での高分子量有機化合物の溶液での成分Aの懸濁液とを混合することによって、US4772331号において記載されているように製造することもでき、その際、前記成分Bは、前記成分Aの表面上に堆積され、かつ前記高分子量有機化合物によってそれらに結合される。
【0047】
代わりに、成分Bによって改質した表面を有する成分Aを、固定化LCST及び/もしくはUCSTポリマーの1つ又はいくつかの層中で成分Bを閉じこめることによって、WO2005/056696号において記載されているように得てよい。
【0048】
LCST(LCST=下臨界溶液温度)ポリマーは、ポリアルキレンオキシド誘導体、オレフィン改質PEO−PPO−コポリマー、ポリメチルビニルエーテル、ポリ−N−ビニルカプロラクタム、エチル−(ヒドロキシエチル)−セルロース、ポリ−(N−イソプロピルアクリルアミド)及びポリシロキサン、並びにそれらの混合物から選択されてよい。
【0049】
UCST(UCST=上臨界溶液温度)ポリマーは、ポリスチロール、ポリスチロール−コポリマー及びポリエチレンオキシド−コポリマー、並びにそれらの混合物から選択されてよい。
【0050】
前記物質を、UCST特性を有するポリマーからの溶液と接触させ、そして層を、ポリマー溶液の温度を下げることによって下地の表面上に堆積させる(WO03014229号)。
【0051】
本発明の記載内容において、"透明"は、"ヒトの目を少なくとも可視スペクトルのいくらかの部分で見ることを可能にすること"の意味で使用される。
【0052】
他の観点において、本発明は、
(a)本発明による顔料組成物を含有する層、その際該顔料組成物は、前記層の少なくとも一部に存在し、又は
(a)無機リン光体顔料を含有する層、その際該無機リン光体顔料は、前記層の少なくとも一部に存在し、及び
(b)透明着色剤、特に透明な有機もしくは無機顔料を含有する層
を含む、被覆又は膜材料に関する。
【0053】
溶剤を使用しない発光インクを構成する全体の組成物中のリン光体物質の含有率は、1〜60質量%、有利には1〜40質量%である。溶剤を使用しない発光インクを構成する全体の組成物中の透明有機物質の含有率は、0.01〜20質量%、有利には0.01〜10質量%である。溶剤を使用しない発光インクを構成する全体の組成物中の透明無機物質の含有率は、1〜40質量%である。溶剤を使用しない発光インクを構成する全体の組成物中の顔料混合物の含有率は、1〜60質量%、有利には1〜40質量%である。
【0054】
本発明によるリン光体インクは、通常の印刷インクの場合におけるように、リン光体無機物質、付形剤、助剤等を含有する。
【0055】
さらに、リン光体物質の特性(隠蔽力、着色能力、油吸収能力、耐久性等)を改良するために、リン光体物質に表面処理を適用することが好ましい。無機リン光体物質を使用する場合において、それらに表面処理を適用して、親油性ポリマーに対するその親和力を改良することが好ましい。それというのも、その表面が親水性であり、かつ従って親油性ポリマーに対する乏しい親和力であるからである。かかる方法は、例えば、次の方法を含む。
【0056】
(a)被覆:一種の界面活性剤としての被覆機能。例えば、脂肪酸及び低分子量又は高分子量の脂肪酸を含む分散剤、蝋の分散剤等を使用してよい。
【0057】
(b)カップリング剤:カップリング剤は、リン光体物質と緊密に結合し、さらにポリマーと反応する。例えば、シラン化合物、チタン化合物、金属キレート化合物等を使用してよい。
【0058】
(c)重合可能なモノマー:低分子量モノマー又はオリゴマーを、リン光体物質の表面と反応させて、不可逆性の層を形成する。例えば、重合可能な有機酸、又は反応性オリゴマーを使用してよい。
【0059】
本発明による発光インクの付形剤に関して、リン光体物質を励起する紫外光の波長範囲において、及び可視光の波長範囲において吸収帯を実質的に有さない物が好ましい。付形剤の主な構成成分であるバインダー樹脂に関して、例えば、ポリエチレンを基礎としたポリマー[ポリエチレン(PE)、エチレン−ビニルアセテートコポリマー(EVA)、ビニルクロリド−ビニルアセテートコポリマー]、ポリプロピレン(PP)、ビニルを基礎としたポリマー[ポリ(ビニルクロリド)(PVC)、ポリ(ビニルブチラル)(PVB)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリ(ビニリデンクロリド)(PVdC)、ポリ(ビニルアセテート)(PVAc)、ポリ(ビニルホルマール)(PVF)]、ポリスチレンを基礎としたポリマー[ポリスチレン(PS)、スチレン−アクリロニトリルコポリマー(AS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンポリマー(ABS)]、アクリルを基礎としたポリマー[ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、MMA−スチレンコポリマー]、ポリカーボネート(PC)、セルロース[エチルセルロース(EC)、セルロースアセテート(CA)、プロピルセルロース(CP)、セルロースアセテートブチレート(CAB)、セルロースニトレート(CN)]、フッ素を基礎としたポリマー[ポリクロロフルオロエチレン(PCTFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロエチレンコポリマー(FEP)、ポリ(ビニリデンフルオリド)(PVdF)]、ウレタンを基礎としたポリマー(PU)、ナイロン[6型、66型、610型、11型]、ポリエステル(アルキル)[ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)]、ノボラックタイプのフェノール樹脂等を含む熱可塑性樹脂を使用してよい。さらに、熱硬化性樹脂、例えばレゾールタイプのフェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル等、及び天然樹脂、例えばタンパク質、ゴム、シェラック、コパール、デンプン及び松ヤニを使用してもよい。
【0060】
さらに、前記樹脂は、水性ペイントにおいて使用するためのエマルション形であってよい。水性ペイントにおける使用のためのエマルションは、例えば、ビニルアセテート(ホモポリマー)エマルション、ビニルアセテート−アクリルエステルコポリマーエマルション、ビニルアセテート−エチレンコポリマーエマルション(EVAエマルション)、ビニルアセテート−ビニルベルサテート(versatate)コポリマー樹脂エマルション、ビニルアセテート−ポリビニルアルコールコポリマー樹脂エマルション、ビニルアセテート−ビニルクロリドコポリマー樹脂エマルション、アクリルエマルション、アクリルシリコーンエマルション、スチレン−アクリレートコポリマー樹脂エマルション、ポリスチレンエマルション、ウレタンポリマーエマルション、ポリオレフィンクロリドエマルション、エポキシ−アクリレート分散液、SBRラテックス等を含む。
【0061】
さらに、付形剤に、印刷膜の可撓性及び強度を安定化するための可塑剤、並びに粘度及びそれらの乾燥特性を調整するための溶剤を、それらの要求に従って添加してよい。約100℃の低沸点の溶剤、及び250℃以上の高沸点の石油系溶剤を、印刷方法のタイプによって使用してよい。アルキルベンゼン等は、例えば、低沸点の溶剤として使用されてよい。
【0062】
さらに、乾燥特性、粘度、及び分散性を改良するための種々の反応剤を含む助剤を適切に添加してよい。該助剤は、インクの性能を調整することであり、かつ、例えば、インク表面の耐摩耗性を改良する化合物及びインクの乾燥を促進する乾燥剤等を使用してよい。
【0063】
溶剤を使用しない、光重合−硬化性樹脂又は電子ビーム硬化性樹脂を、付形剤の主成分であるバインダー樹脂として使用してもよい。それらの例は、アクリル樹脂を含み、かつ市販のアクリルモノマーの特定の例を以下に示す。
【0064】
使用されてよい一官能性アクリレートモノマーは、例えば2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシル−EO付加アクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート−カプロラクトン付加物、2−フェノキシエチルアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、ノニルフェノール−EO付加アクリレート、(ノニルフェノール−EO付加)−カプロラクトン付加アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フルフリルアルコール−カプロラクトン付加アクリレート、アクリロイルモルホリン、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、(4,4−ジメチル−1,3−ジオキサン)−カプロラクトン付加アクリレート、(3−メチル−5,5−ジメチル−1,3−ジオキサン)−カプロラクトン付加アクリレート等を含む。
【0065】
使用してよい多官能性アクリレートモノマーは、ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートジアクリレート、(ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレート)−カプロラクトン付加ジアクリレート、(1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル)−アクリル酸付加物、(ヒドロキシピバルアルデヒド−トリメチロールプロパンアセタール)ジアクリレート、2,2−ビス[4−(アクリロイルオキシジエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(アクリロイルオキシジエトキシ)フェニル]メタン、水素化ビスフェニルA−エチレンオキサイド付加ジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、(トリメチロールプロパン−プロピレンオキシド)付加トリアクリレート、グリセリン−プロピレンオキシド付加トリアクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサアクリレートとペンタアクリレートとの混合物、ジペンタエリトリトール及び低脂肪酸及びアクリル酸のエステル、ジペンタエリトリトール−カプロラクトン付加アクリレート、トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、2−アクリロイルオキシエチルホスフェート等を含む。
【0066】
前記樹脂を含有するインクは、溶剤を有さず、かつ電子ビーム又は電磁波による照射に対する連鎖反応で重合するように構成される。
【0067】
前記インクの中の紫外線照射タイプのインクに関して、光重合開始剤、及びそれらのための要求に依存して、増感剤、並びに助剤、例えば重合開始剤及び連鎖移動剤等をそれらに添加してよい。
【0068】
光重合開始剤に関して、(1)アリールアルキルケトン、オキシムケトン、アクリルホスフィンオキシド等を含む直接光分解タイプの開始剤、(2)ベンゾフェノン誘導体、チオキサントン誘導体等を含むラジカル重合反応タイプの開始剤、(3)アリールジアゾニウム塩、アリールイオジニウム塩、アリールスルホニウム塩、及びアリールアセトフェノン塩等を含むカチオン重合反応タイプの開始剤、さらに(4)エネルギー移動タイプの開始剤、(5)光酸化還元タイプの開始剤、(6)電子移動タイプの開始剤等がある。電子ビームで硬化可能なタイプのインクに関して、光重合開始剤は必須でなく、かつ紫外線照射タイプのインクの場合におけるようないくつかのタイプの樹脂を使用することができ、かつ種々の助剤を、それらのための要求によってそれらに添加してよい。
【0069】
本発明の他の観点は、無機リン光体顔料(物質)を、並びに該下地上にリン光体画像形成層を、又は該下地上にリン光体画像形成層及び着色された透明層を含有する下地上に透明着色剤を印刷することによって形成されたリン光体画像に関し、その際、
前記リン光体画像形成層は、無機リン光体顔料(物質)、及び場合により透明着色剤を含有し、かつ
前記着色された透明層は、透明着色剤を含有する。
【0070】
本発明によるリン光体画像から形成された製品は、当業者に公知の種々の方法によってリン光体インクを使用して下地上にリン光体画像を形成する層を形成することによって得られうる。例えば、凸版印刷法、凹版印刷法、グラビア印刷法、オフセット印刷タイプの平板印刷法、スクリーン(多孔板)印刷法、レリーフタイプの印刷方法、例えばフレキソ又は凸版印刷等を使用してよい。さらに、熱転写法又はインクジェット印刷法も同様に使用してよい。熱転写法を使用した場合において、少なくとも6μm以下の蛍光画像を形成する層の厚さを維持することによって、光の十分な量を維持することが好ましく、従って、バインダー又は蝋、例えばカルバナ(carbana)蝋を、画像形成層に添加することが好ましい。インクの表面を熱融解することが好ましいために、付形剤の主な成分である、バインダー樹脂として熱可塑性樹脂を使用することが好ましい。
【0071】
リン光体画像形成層の厚さは、およそ1〜200μmでありうる。
【0072】
前記の膜材料は、有利には転写膜材料である。転写膜材料は、下地に転写させる接着層を有する。転写膜材料は、データ処理媒体、価値、権利、同一性のある文書、ブランド品等のための機密保護ラベルの製造のために使用されうる。
【0073】
下地材料として、例えば
− いくつかの他の方法でラッカー塗り又は被覆されてもよい、セルロース含有材料、例えば紙、合成紙、厚紙、木及び木製材料、
− いくつかの他の方法でラッカー塗り又は被覆されてもよい、金属材料、例えばアルミニウム、鉄、銅、銀、金、亜鉛もしくはそれらの金属の合金の箔、薄板又は加工物、
− 同様に被覆されてよい、シリケート材料、例えばガラス、磁気、及びセラミック、
− あらゆる種類のポリマー材料、例えばポリスチレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン、プリプロピレン、メラミン樹脂、ポリアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリビニルクロリド及び対応するコポリマー並びにブロックコポリマー、
− 織物材料、例えば、ポリエステルのもしくは改質ポリエステルの繊維、糸、より糸、編物、織物、不織物及び完成品、ポリエステル配合物、セルロース含有材料、例えば綿、綿配合物、黄麻、亜麻、大麻及び苧麻、ビスコース、ウール、シルク、ポリアミド、ポリアミド配合物、ポリアクリロニトリル、トリアセテート、アセテート、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリビニルクロリド、ポリエステルマイクロファイバー、及びガラスファイバー織物、
− 皮革、平滑仕上げの形で、皮革天然皮革及び合成皮革、ナパ皮革、又はベロア皮革
が挙げられてよい。
【0074】
透明顔料は、色を含む、透明有機顔料又は無機顔料、及び/又は効果顔料、導電性顔料、蛍光顔料、充填剤、ナノ粒子、及びそれらの組合せからなる群から選択される。
【0075】
本発明の好ましい一実施態様において、透明有機顔料は、透明有機顔料又は透明有機着色顔料である。
【0076】
前記透明顔料は、有利には、0.2μm未満、有利には0.1μm未満の平均粒子サイズを有する透明無機顔料である。特に興味深い有機透明顔料は、それらのマゼンダ及び赤色での透明キナクリドン、イソインドリノン又は黄色キナクリドン/キナクリドンキノン固溶体のような透明黄色顔料、透明銅フタロシアニンブルー及びハロゲン化銅フタロシアニングリーン、又は高飽和透明ジケトンピロロピロールもしくはジオキサジン顔料、特に透明キナクリドン顔料又は透明ジケトピロロピロール顔料を含む。
【0077】
市販の製品の例は、MICROLITH DPP Red B−K、IRGAZIN DPP Red BTR、CROMOPHTAL Yellow GR、CROMOPHTAL Orange GP、CROMOPHTAL DPP Rot BP、CROMOPHTAL Violet GP、CROMOPHTAL Blue A3R、IRGAZIN Green 2180及びORASOL Black RLI(Ciba Specialty Chemicals)である。
【0078】
"無機充填剤"の表現は、実質的に透明な無機顔料を意味する。例えば、雲母、カオリン、タルク、珪灰石及び天然又は合成シリカ、例えばガラスが、本発明の顔料組成物における使用に好適である、よく知られた無機充填剤である。タルク、白雲母及びカオリンは、より高い好適な無機充填剤である。タルク及び透明雲母が、特に好適である。雲母の中で、白雲母、金雲母、ブロライト(brolite)及び合成雲母が最も好適である。
【0079】
本発明の他の好ましい実施態様において、前記透明顔料は、効果顔料である。
【0080】
干渉色を導く多層構造は、しばしば特殊効果顔料、光輝顔料又は真珠光沢顔料と言われ、及び当業者によく知られており、Xymara(登録商標)(Ciba Specialty Chemicals Inc.)、Iriodin(登録商標)、Colorstream(登録商標)、Xyrralic(登録商標)等のような商標下で市販されている。
【0081】
原則として、成分Bは、全ての小板状透明効果顔料、例えば着色された又は無色の金属酸化物、例えば天然又は合成雲母で被覆された小板状材料、他の積層シリケート、例えばタルク、カオリン又は絹雲母、又はガラス小板を含んでよい。例えば、US−A−3,087,828号及び3,087,829号において開示されている金属酸化物で被覆された雲母フレークが、下地として特に好ましい。金属酸化物は、双方無色の、高い屈折金属酸化物、例えば特に二酸化チタン及び/又は二酸化ジルコニウム、並びに着色された金属酸化物、例えば酸化クロム、酸化ニッケル、酸化銅、酸化コバルト、及び特に酸化鉄、例えばFe23、又はかかる金属酸化物の混合物である。かかる金属酸化物/雲母顔料は、Xymara(登録商標)、Afflair(登録商標)及びIriodin(登録商標)の商標下で市販されている。
【0082】
それらの(多層)構造は、しばしば、天然の雲母状酸化鉄(例えばWO 99/48634号におけるような)、合成及びドープド雲母状酸化鉄(例えばEP−A 0 068 311号におけるような)、雲母(白雲母、金雲母、フルオロ金雲母、合成フルオロ金雲母、タルク、カオリン)、塩基性鉛カーボネート、フレーク状バリウムスルフェート、SiO2、Al23、TiO2、ガラス、ZnO、ZrO2、SnO2、BiOCl及びフレーク状MgOのコアから形成される。特に好ましいコアは、雲母、SiO2フレーク、Al23フレーク、TiO2フレーク、BiOClフレーク及びガラスフレークである。
【0083】
透明真珠箔顔料(流動床条件下で、又は亜酸化物等に還元することによって窒素、オキシニトリドと反応した物を含む)は、例えば、EP−A−0948571号、U.S.特許番号第6,773,499号、第6,508,876号、第5,702,519号、第5,858,078号、WO98/53012号、WO97/43348号、US−B−6,165,260号、DE−A−1519116号、WO97/46624号及びEP−A−0509352号において記載されている。透明真珠箔多層顔料は、例えば、EP−A−0948572号、EP−A−0882099号、US−A−5,958,125号、6,139,613号において記載されている。透明な被覆された、又は未被覆のSiO2球体は、例えばEP−A−0803550号、EP−A−1063265号、JP−A−11322324号、EP−A−0803550号、EP−A−1063265号及びJP−A−11322324号から公知である。
【0084】
本発明の目的のためのガラスフレークコアは、公知のグレード、例えばA−ガラス、E−ガラス(高抵抗が電子積層に好適なE−ガラスを製造する)、C−ガラス及びECR−ガラス(腐食グレードガラス)材料のいずれかを含む。
【0085】
例えば、成分B粒子は、小板状(多層)構造、例えば
【表1】

であってよく、その際、TRASUBは、天然又は合成雲母、他の層状シリケート、ガラス、Al23及びSiO2からなる群から選択された低い屈折率を有する透明下地である。
【0086】
前記の(多層)顔料は、追加の層として吸収顔料を含んでもよい。例えば、干渉顔料に対するプルシアンブルー又は赤カーミンでのさらなる被覆が、顕著な色効果のために可能である。
【0087】
使用した効果顔料がゴニオクロマチック(goniochromatic)である場合に、本発明の機密保護要素は、いわゆるフィリップ−フィロップ効果、すなわち視角に依存する色変化も示す。
【0088】
透明無機顔料の例は、透明黄色酸化鉄[C.I. Pigment Yellow 42:77 492]、透明赤色酸化鉄[C.I. Pigment Red 101:77 491]、透明コバルトブルー[C.I. Pigment Blue 28:77 346]、透明コバルトグリーン[C.I. Pigment Green 19:77 335]である。
【0089】
市販品の例は、BAYFERROX 3920、BAYFERROX 920、BAYFERROX 645T、BAYFERROX 303T、BAYFERROX 110、BAYFERROX 110M、CHROMOXIDGRUEN GN、及びCHROMOXIDGRUEN GN−Mである。
【0090】
原則として、あらゆる無機リン光体物質を、本発明によって使用することができる。好ましい物質の例を以下に示す。無機リン光体物質の崩壊時間は、有利には、数秒の範囲であるべきである。前記崩壊時間は、該物質の粒子サイズ及び粒子サイズ分布に依存することに注意すべきである。
【0091】
可視光を放射する無機リン光物質は、例えばEP−A1−0622440号において記載されている。
【0092】
それらに記載されている無機リン光体物質は、式MAl24[式中、Mはカルシウム、ストロンチウム又はバリウムである]で示されるマトリックス、又は式(M’xM’’y)Al24[式中、x+y=1であり、かつ異なるM’及びM’’は、それぞれカルシウム、バリウム、ストロンチウム及びマグネシウムから選択された金属である]で示されるマトリックスを含む。該マトリックスは、活性剤としてユーロピウムを含む。該マトリックスは、共活性剤として、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、マンガン、スズ及びビスマスから選択される少なくとも1つの元素である。
【0093】
該マトリックスは、該マトリックス中の1つ又は複数の金属に対して、0.001〜10mol%の量でユーロピウムを含有する。前記共活性剤は、該マトリックス中の1つ又は複数の金属に対して、0.001〜10mol%の量でユーロピウムを含有する。
【0094】
本発明によって有利に使用されうるリン光体無機材料のリストを、以下に示す:
【表2−1】

【表2−2】

【表2−3】

【0095】
無機リン光体下地は、可視光又は紫外光での照射中、又は照射後に、激しいリン光を呈する。
【0096】
実際に、可視光、長い波長UV(365nmもしくは395nm)又は短い波長UV(254nm)が、一般的に、リン光を誘発するために使用される。リン光は、三重項励起状態の一重項基底状態への放射崩壊を示し、この遷移は、禁じられており、かつ三重項状態は、比較的長い寿命、すなわち約300ミリ秒の崩壊時間を有する。
【0097】
リン光体無機顔料の粒子サイズは、それらがインク又は塗料中に組み込まれる場合に、リン光のその特徴、例えば明度、崩壊時間及び印刷適性のために極めて重要なサイズである。使用されるべきリン光体無機顔料粒子に関して、粒子(D90)の直径の90%は、25μm以下であり、かつ0.5μm以上である。
【0098】
無機リン光体物質の崩壊時間は、該物質の粒子サイズ及び粒子サイズ分布に依存している。該崩壊時間は、有利には、数秒の範囲であるべきである。
【0099】
リン光体無機物質は、UV光によって、又は可視光によって励起される。リン光体無機物質及び透明着色剤を含有する系の外観は、リン光体無機物質のリン光によって変化する。数秒以内で、その外観は、元の状態に戻る。
【0100】
従って、本発明は、色ずれが光での照射に対して存在するかどうかを確認する工程を含む、価値、権利、同一性のある目的物、機密保護ラベル、ブランド品を試験するための方法にも関する。
【0101】
本発明の種々の特徴及び観点を、以下の実施例においてさらに説明する。それらの実施例は、本発明の範囲内でどのように操作するかを当業者が示すことを示し、かかる範囲が特許請求の範囲においてのみ定義される本発明の範囲に対する制限として機能するものではない。次の実施例及び明細書において、及び特許請求の範囲において示されていない限り、全ての部及び百分率は、質量であり、温度は摂氏度であり、かつ圧力は大気又は大気付近である。
【0102】
実施例
実施例1(スクリーン印刷):
赤に着色された濃縮物を、赤色顔料(MICROLITH DPP Red B−K)12部と、ビニルクロリド/ビニルアセテートコポリマー(VYHH, Union Carbide)12.3部、エトキシプロパノール8.8部及びメチル−エチル−ケトン66.9部とを混合することによって製造し、そして15分間2000rpmでDispermat装置で撹拌した。
【0103】
フォトクロミックインクを、SrAl24:緑のリン光及び平均粒子サイズ約3μmを有するEu2+蛍光体40部、PRINTCOLORバインダー(320−05系列)52部、及び前記の製造された赤色濃縮物8部を混合することによって製造した。従って、スクリーン印刷(Heinrich Mantel, Monolen, 54/67)によって得られたインクの適用は、UV光下で発光する対比用紙上に赤色の均一な印刷を提供した。赤色から緑色へのフォトクロミック効果を、UV光下で、印刷表面の部分的なUV照射によって、続いて照射されていない表面の未被覆によって観察する。
【0104】
実施例2(オフセット印刷)
赤に着色された濃縮物を、CROMOPHTAL DPP Red BP0.5部と、E−25736(Epple社製のバインダー)9.50部とを混合すること、及び50回転数で2回、及び2kgの圧力でEngelsmann装置中で分散することによって製造した。
【0105】
フォトクロミックインクを、SrAl24:緑のリン光及び平均粒子サイズ約3μmを有するEu2+蛍光体25部と、前記の製造された赤色濃縮物75部とを混合することによって製造し、そして分散を、50回転数で2回、及び2kgの圧力でEngelsmann装置中でさらに行った。
【0106】
従って、オフセット印刷(Pruefbau, 800N, 1 m/s)によって得られたインクの適用は、UV光で強く発光する赤い均一な印刷として対比用紙上に、1.5g/m2の転写を示した。赤色から緑色へのフォトクロミック効果を、UV光下で、印刷表面の部分的なUV照射によって、続いて照射されていない表面の未被覆によって観察する。
【0107】
実施例3(オフセット印刷):
緑に着色された濃縮物を、オレイン酸0.5部と、Chromoxidgruen GN−M 5部及びE−25736(Epple社製のバインダー)4.5部とを混合すること、及び2回、50回転数で、及び2kgの圧力でEngelsmann装置中で分散することによって製造した。
【0108】
フォトクロミックインクを、SrAl24:緑のリン光及び平均粒子サイズ約3μmを有するEu2+蛍光体0.5部、及び前記の製造された緑色濃縮物2部を混合することによって製造し、そして分散を、50回転数で2回、及び2kgの圧力でEngelsmann装置中でさらに行った。
【0109】
従って、オフセット印刷(Pruefbau, 800N, 1 m/s)によって得られたインクの適用は、UV光で強く発光する緑色の均一な印刷として対比用紙上に、2.1g/m2の転写を示した。濃い緑から明るい緑色へのフォトクロミック効果を、UV光下で、印刷表面の部分的なUV照射によって、続いて照射されていない表面の未被覆によって観察した。
【0110】
実施例4(オフセット印刷):
黒く着色された濃縮物を、オレイン酸0.5部と、Chromoxidgruen GN−M 5部及びE−25736(Epple社製のバインダー)4.5部とを混合すること、及び50回転数で2回、及び2kgの圧力でEngelsmann装置中で分散することによって製造した。
【0111】
フォトクロミックインクを、SrAl24:緑のリン光及び平均粒子サイズ約3μmを有するEu2+蛍光体0.5部、及び前記の製造された黒色濃縮物2部を混合することによって製造し、そして分散を、50回転数で2回、及び2kgの圧力でEngelsmann装置中でさらに行った。
【0112】
従って、オフセット印刷(Pruefbau, 800N, 1 m/s)によって得られたインクの適用は、UV光で強く発光する黒い均一な印刷として対比用紙上に、2.5g/m2の転写を示した。黒色から緑色へのフォトクロミック効果を、UV光下で、印刷表面の部分的なUV照射によって、続いて照射されていない表面の未被覆によって観察した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料組成物であって、
(A)無機リン光体顔料(物質)、及び
(B)透明着色剤、特に有機又は無機顔料
を含有する顔料組成物。
【請求項2】
被覆又は膜材料であって、
(a)請求項1に記載の顔料組成物を含有する層、その際該顔料組成物は、前記層の少なくとも一部に存在し、又は
(a)無機リン光体顔料を含有する層、その際該無機リン光体顔料は、前記層の少なくとも一部に存在し、及び
(b)透明着色剤、特に透明な有機もしくは無機顔料を含有する層
を含む、被覆又は膜材料。
【請求項3】
価値、権利、同一性のある文書のための、機密保護ラベル又はブランド品のための、下地を含む機密保護要素であって、その表面で、又はその表面上で、並びに
請求項1に記載の顔料組成物、又は
(a)部分的に又は完全に無機リン光体顔料を含有する被覆層、及び
(b)透明着色剤、特に透明な有機もしくは無機顔料を含有する被覆層
を含む前記下地表面の少なくとも1部分上で、表示又は他の見える特徴を含んでよい、機密保護要素。
【請求項4】
請求項1、2又は3のいずれか1項に記載の顔料組成物、被覆、膜材料、又は機密保護要素であって、前記無機リン光体顔料が、CaO:Eu3+、CaO:Tb3+、SrO:Pb2+、SrO:Eu3+、SrO:Tb3+、BaO:Eu3+、Y22S:Ti4+、Mg2+(Y2-x-yTixMgy)O2S、Y22S:Sm2+、Ti4+、Mg2+、Y22S:Eu3+、Ti4+、Mg2+、Y22S:Tm3+、Ti4+、Mg2+、Y22S:Yb3+、Ti4+、Mg2+、Y22S:Eu3+、Ti4+、Y22S、Y22S:RE3+(RE:Lu/Gd)、Y22S:Tb3+、Sr2+及び/又はZr4+、Y22S:Tm3+、Gd22S:Er3+、Ti4+、CaS:Eu2+、Ce3+、CaS:Eu2+、Sm3+、CaS:Eu2+、Tm3+、CaS:Eu2+、Tm3+、Ce3+、(Ca、Sr)S:Bi3+、CaGa24:Eu2+、Ho3+、CaGa24:Eu2+、RE3+(RE:Y/Ce/Pr/Gd/Tb/Ho)、SrS:Eu2+、Y3+、Ce3+、ZnS:Cu、ZnS:Cu、Co、Zn4O(BO26、CaAl227:Eu2+、Nd3+、MgAl24:Ce3+、CaAl24:Mn2+、Ce3+、CaAl24:Eu2+、Nd3+、Ca1-x-yAl24:Eux2+、Ndy3+、(0≦x≦0.045;0≦y≦0.0037)、opt.:x=0.00125;y=0.0025、CaAl24:Eu2+、Nd3+、CaAl24:Eu2+、Nd3+、La3+、CaAl4O7:Eu2+、Nd3+、Ca1−xSrxAl24:Eu2+、Nd3+、La3+、SrAl24:Ce3+、SrAl24:Eu2+、SrAl24:Eu2+、B3+、SrAl24:Eu2+、Nd3+、SrAl24:Eu2+、Dy3+、MAl24:Eu2+、Dy3+M:Sr、(Ba/Ca)又はM:Sr、Ba、Ca、Sr4Al1425:Eu2+、RE3+RE:Dy/Pr/Ho/Nd及び/又はSm、Sr4Al1425:Cr3+、Eu2+、Dy3+、Sr5Al27S:Eu2+、Y3Ga512:Cr3+、MgSiO3:Mn2+、Eu2+、Dy3+、SrSiO3:Dy3+、CdSiO3:In3+、CdSiO3:Pb2+、CdSiO3:Pr3+、CdSiO3:Sm3+、CdSiO3:RE3+RE:Y/La/Gd/Lu、CdSiO3:RE3+、CdSiO3:RE13+、RE23+、CdSiO3:Mn2+、RE3+RE:Y/La/Gd/Lu、Ba2SiO4:Eu2+、Ba3SiO5:Eu2+、MO−M’O−SiO2:Eu2+、M:Ca/Sr/Ba、M’:Mg/Zn/Cd、又は、MO−M’O−SiO2:Eu2+、RE、M:Ca/Sr/Ba、M’:Mg/Zn/Cd、BaMg2Si27:Mn2+、Eu2+、Dy3+、BaMg2Si27:Mn2+、Eu2+(Ba−Defizit)、AMg2Si27:Eu2+、Mn2+、A=Ba、A=Sr、A=Ca、Ca2MgSi27:Eu2+、Dy3+、Sr0.5Ca1.5MgSi27:Eu2+、Dy3+、(Ca、Sr)2MgSi27:Eu2+、Dy3+、(Sr、Ca)MgSi27:Eu2+、Dy3+、Sr2-xCaxMgSi27:Eu2+、Dy3+、x=0、x=0.5、x=1、x=1.5、x=2、x=0、x=0.8、x=1.2、Sr2MgSi27:Dy3+、Sr2MgSi27:Eu2+、Nd3+、Sr2MgSi27:Eu2+、Dy3+、Sr2MgSi27:Eu2+、Dy3+、Sr2-xBaxMgSi27:Eu2+、Dy3+/Nd3+、Cl-(0≦x≦2)、Sr3MgSi28:Eu2+、Nd3+、Cl-、Ca2Al2SiO7:Mn2+、Ce3+、Ca0.5Sr1.5Al2SiO7:Ce3+、Tb3+、Sr3Al10SiO20:Eu2+、RE3+、(CaO−CaBr2−SiO2):Eu2+、NaGdGeO4:Tb3+、Zn2GeO4:Mn2+、Cd3Al2Ge312:RE3+RE:Pr/Tb/Dy、Mg2SnO4:Mn2+、Zn3(PO42:Mn2+、M3+M:Al、Ga、Zn3(PO42:Mn2+、Ga3+、Zn3(PO42:Mn0.0522+、Ga3+、Zn3(PO42:Mn2+、Zr4+、Zn3(PO42:Mn2+、Sm3+、Ba2TiP29、CaTiO3:Pr3+、Ca0.8Zn0.2TiO3:Pr3+、Ca2Zn4Ti1536:Pr3+、並びにY1-yNbO2.0+1.5y:Bi3+(不定比性)から選択される、請求項1、2又は3のいずれか1項に記載の顔料組成物、被覆、膜材料、又は機密保護要素。
【請求項5】
請求項1、2又は3のいずれか1項に記載の顔料組成物、被覆、膜材料、又は機密保護要素であって、前記透明着色剤が、無機顔料、例えば、透明黄色酸化鉄[C.I. Pigment Yellow 42:77 492]、透明赤色酸化鉄[C.I. Pigment Red 101:77 491]、透明コバルトブルー[C.I. Pigment Blue 28:77 346]、透明コバルトグリーン[C.I. Pigment Green 19:77 335]及び透明酸化クロムグリーンである、請求項1、2又は3のいずれか1項に記載の顔料組成物、被覆、膜材料、又は機密保護要素。
【請求項6】
請求項1、2又は3のいずれか1項に記載の顔料組成物、被覆、膜材料、又は機密保護要素であって、前記透明顔料が、有機顔料、例えばマゼンダ及び赤色での透明キナクリドン、イソインドリノン又は黄色キナクリドン/キナクリドンキノン固溶体のような透明黄色顔料、透明銅フタロシアニンブルー及びハロゲン化銅フタロシアニングリーン、又は高飽和透明ジケトンピロロピロールもしくはジオキサジン顔料、特に透明キナクリドン顔料又は透明ジケトピロロピロール顔料である、請求項1、2又は3のいずれか1項に記載の顔料組成物、被覆、膜材料、又は機密保護要素。
【請求項7】
請求項1、2又は3のいずれか1項に記載の顔料組成物、被覆、膜材料、又は機密保護要素であって、前記透明顔料が、酸化クロムグリーン、又はジケトピロロピロール顔料であり、かつ前記無機リン光体顔料が、SrAl24:緑のリン光及び平均粒子サイズ約3μmを有するEu2+蛍光体である、請求項1、2又は3のいずれか1項に記載の顔料組成物、被覆、膜材料、又は機密保護要素。
【請求項8】
請求項3に記載の機密保護要素の製造方法であって、
a)表面が表示又は他の可視特性を含有してよい表面を有する下地を提供する工程、
b)少なくとも一部の該下地表面上に、無機リン光体顔料、透明着色剤及び硬化性透明バインダーを含有する被覆を適用する工程、並びに
(c)前記被覆層を硬化する工程、又は
a)表面が表示又は他の可視特性を含有してよい表面を有する下地を提供する工程、
b)少なくとも一部の該下地表面上に、無機リン光体顔料及び硬化性透明バインダーを含有する被覆を適用する工程、
b1)場合により、該被覆層(b)を硬化する工程、
b2)該被覆表面(b)上に、無機リン光体顔料(物質)及び硬化性透明バインダーを含有する被覆を適用する工程、並びに
(c)前記被覆層を硬化する工程
を含む、製造方法。
【請求項9】
無機リン光体顔料を、並びに下地上にリン光体画像形成層を、又は下地上にリン光体画像形成層及び着色された透明層を含有する下地上に透明着色剤を印刷することによって形成されたリン光体画像であって、その際、
前記リン光体画像形成層は、無機リン光体顔料、及び場合により透明着色剤を含有し、かつ
前記着色された透明層は、透明着色剤を含有する、リン光体画像。
【請求項10】
請求項3に記載の機密保護要素を含む、価値、権利、同一性のある文書、機密保護ラベル、ブランド品。
【請求項11】
偽造又は複製を防ぐための、価値、権利、同一性のある文書、機密保護ラベル又はブランド品に対する、請求項3に記載の機密保護要素の使用。
【請求項12】
色ずれが、光の照射に対して存在するかどうかを確認する工程を含む、価値、光、同一性のある目的物、機密保護ラベル、ブランド品を試験するための方法。

【公表番号】特表2011−504520(P2011−504520A)
【公表日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−530443(P2010−530443)
【出願日】平成20年10月22日(2008.10.22)
【国際出願番号】PCT/EP2008/064290
【国際公開番号】WO2009/053391
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】