説明

機能性皮膜被覆物品、その製造方法及び機能性皮膜形成用塗工材料

基材と、前記基材表面に微小凹凸を有した下地層が被覆され、さらにその上に機能性層が被覆された物品であって、前記微小凹凸は、微粒子が不均一に堆積されてなる部分を有する機能性皮膜被覆物品であり、微小凹凸と透明性を両立させた珪素酸化物を主成分とする下地層を用いた機能性皮膜被覆物品である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、機能性皮膜被覆物品、その製造方法及び機能性皮膜形成用塗工材料に関する。特に、微小凹凸が形成された珪素酸化物を主成分とする下地層を用いた撥水性皮膜被覆物品、あるいは防汚性皮膜被覆物品、その製造方法及びこれらの機能性皮膜形成用の塗工材料に関する。
【背景技術】
ガラス、樹脂やその他の基材の表面に、撥水性や親水性を持たせるためには、その表面に凹凸を形成させるとよい。
一般に固体表面の濡れ性は、表面の粗度によって影響を受ける。すなわち、固体表面が親水的な場合には粗表面の親水性は向上し、逆に疎水的な場合には粗表面の撥水性は向上する。この現象は、表面がフラクタル構造を持つ場合に顕著に現れ、その結果、フラクタル表面はその材質によって、超撥水表面あるいは超親水表面となり得る、とされる。
なお、水の接触角度が150度を超えるような撥水性の状態は、一般に超撥水性と呼ばれている。また、水の接触角度の測定が困難なほどの親水性の状態は、超親水性と呼ばれている。
ガラス、樹脂やその他の基材の表面に凹凸を形成させ、撥水性を有する膜を形成する種々の方法が知られており、例えば、プラスチックフィルムの表面にプラズマ処理によって微小な突起を形成し、その後にフッ素化合物を化学吸着させる方法(特開平6−25449号公報)、金属アルコキシドの重縮合物、金属酸化微粒子、及び、フルオロアルキル基を有するシラン化合物を含む処理液をガラス表面に塗布し乾燥させることで、その表面に微細な凹凸構造を形成させる方法(特開平11−286784号公報)、トリアルコキシシランの重縮合物を含む塗布液を基板上に塗布し熱処理することにより、表面に凹凸を形成させる方法(特開2000−144116号公報)、アルミニウム化合物を含む溶液を基体に塗布して皮膜を形成し、温水に浸漬することにより、表面に微細な凹凸を形成させる方法(特開2001−17907号公報)、金属アルコキシドと、溶媒中でこれらと分相し、かつ室温から700℃までの温度で分解、燃焼、昇華する特性を有する物質が溶剤に添加された溶液を基材に塗布して、熱処理することにより、平均孔径100nm〜2μmの微小多孔層を形成させる方法(特開2001−207123号公報)等が挙げられる。
しかしながら、上述した特開平6−25449号公報、特開平11−286784号公報及び特開2001−207123号公報に開示された方法では、膜の膜厚及び/又は凹凸が大きい。このため、透過光が散乱し、ヘイズ(haze)値が上がるので、皮膜の透明性が低くなってしまう。
また特開2000−144116号公報及び特開2001−207123号公報に開示された技術では、塗布液を基材に塗布した後、高温で熱処理する必要があるため、基材は耐熱性の高い材料に限られる。また熱処理が必要となってしまう。
さらに、特開平6−25449号公報に開示された方法では、プラズマ処理で凹凸を形成させるため、このための処理装置が必要となってしまう。
また、特開2001−17907号公報に開示された方法では、温水浸漬で凹凸を形成させるため、温水の供給装置が必要となってしまう。
例えば疎水性を示す基材において、表面に凹凸を形成し、その表面の粗さを大きくすればするほど、水の接触角は大きくなる。この接触角が150度を超えると、水滴がその表面に留まることが困難になるほどの超撥水性を示すようになる。このような超撥水性を発現させるためには、表面凹凸と水滴の間に空気を多く保持できる形状が必要である、といわれている。
しかし表面に、例えば数百nm以上の大きな凹凸が存在すると、光が散乱を起こし、透明基材の場合、ヘイズが発生し透明性が損なわれる問題がある。
そこで本発明は、上記問題点を解決すべく、微小凹凸と透明性を両立させた珪素酸化物を主成分とする下地層を用いた機能性皮膜被覆物品を提供することを目的とする。さらに本発明は、微小凹凸を有する珪素酸化物を主成分とする下地層の機能を損なわず、その下地層上に機能性層を形成することによって、特徴のある機能性皮膜被覆物品を製造する方法、及び該機能性皮膜を形成するための塗工材料を提供することを目的とする。
【発明の開示】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、
(1)基材と、該基材表面に被覆された微小凹凸を有する下地層と、さらにその上に被覆された機能性層を含む物品であって、該微小凹凸は、微粒子が不均一に堆積されてなる部分を有することを特徴とする機能性皮膜被覆物品、
(2)前記下地層は、珪素酸化物を主成分とするものである上記(1)に記載の機能性皮膜被覆物品、
(3)前記下地層と前記機能性層からなる機能性皮膜の平均膜厚(H)が30nm以上200nm以下であり、かつ該機能性皮膜表面における最大高さ(Ry)と平均膜厚(H)の差が50nm以上である上記(1)又は(2)に記載の機能性皮膜被覆物品、
(4)前記微粒子の直径は5〜100nmである上記(1)に記載の機能性皮膜被覆物品、
(5)前記下地層と前記機能性層からなる機能性皮膜の表面粗さは、算術平均粗さ(Ra)で少なくとも10nmであり、かつ該機能性皮膜のヘイズ値は1%以下である上記(1)に記載の機能性皮膜被覆物品、
(6)前記機能性層は、撥水性皮膜あるいは防汚性皮膜である上記(1)に記載の機能性皮膜被覆物品、
(7)前記撥水性皮膜は、フルオロアルキル基及び/又はアルキル基を含有する有機皮膜である上記(6)に記載の機能性皮膜被覆物品、
(8)前記アルキル基がオクチル基、デシル基およびドデシル基から選ばれる少なくとも1種を含むものである上記(7)に記載の機能性皮膜被覆物品、
(9)前記撥水性皮膜の表面に、2mgの水滴を滴下して測定した水の接触角が少なくとも145度である上記(6)に記載の機能性皮膜被覆物品、
(10)前記防汚性皮膜は、ポリアルキレンオキシ基を含有する有機皮膜である上記(6)に記載の機能性皮膜被覆物品、
(11)前記基材は、透明なガラス板、樹脂板又は樹脂フィルムのいずれかである上記(1)に記載の機能性皮膜被覆物品、
(12)基材表面に、珪素酸化物を主成分とし、かつ珪素酸化物微粒子が不均一に堆積されてなる部分を有する下地層を形成し、さらに機能性層を形成するための塗工材料であって、珪素酸化物微粒子を含む溶液と機能性層形成溶液との組合せからなる機能性皮膜形成用塗工材料、
(13)基材表面に、珪素酸化物を主成分とし、かつ珪素酸化物微粒子が不均一に堆積されてなる部分を有する下地層を形成し、さらに機能性層を形成するための塗工材料であって、珪素酸化物微粒子と機能性材料を含む溶液からなる機能性皮膜形成用塗工材料、
(14)前記珪素酸化物微粒子は、三次元的に結合した形状を含み、珪素酸化物微粒子を含む溶液の溶媒又は珪素酸化物微粒子と機能性材料を含む溶液の溶媒は、該珪素酸化物微粒子が分散できる溶媒であることを特徴とする上記(12)又は(13)に記載の機能性皮膜形成用塗工材料、
(15)前記珪素酸化物微粒子は、直径5〜100nmの球状の微粒子が30〜300nmの長さで三次元的に結合した形状を含む上記(14)に記載の機能性皮膜形成用塗工材料、
(16)前記珪素酸化物微粒子は、前記球状の微粒子が環状に結合した形状を含むことを特徴とする上記(15)に記載の機能性皮膜形成用塗工材料、
(17)前記珪素酸化物微粒子は、一次元から三次元的に結合した形状を含み、珪素酸化物微粒子を含む溶液の溶媒又は珪素酸化物微粒子と機能性材料を含む溶液の溶媒は、該珪素酸化物微粒子が分散できる溶媒と分散できない溶媒の混合溶媒であることを特徴とする上記(12)又は(13)に記載の機能性皮膜形成用塗工材料、
(18)前記珪素酸化物微粒子は、直径5〜100nmの球状の微粒子が30〜300nmの長さで一次元から三次元に結合した形状を含む上記(17)に記載の機能性皮膜形成用塗工材料、
(19)前記珪素酸化物微粒子は、前記球状の微粒子が鎖状及び/又は環状に結合した形状を含む上記(18)に記載の機能性皮膜形成用塗工材料、
(20)前記珪素酸化物微粒子が分散できる溶媒は、親水性溶媒を含むものである上記(14)又は(17)に記載の機能性皮膜形成用塗工材料、
(21)前記親水性溶媒は、アルコール系溶媒である上記(20)に記載の機能性皮膜形成用塗工材料、
(22)前記珪素酸化物微粒子が分散できない溶媒は、非水系溶媒である上記(17)に記載の機能性皮膜形成用塗工材料、
(23)前記非水系溶媒は、炭化水素系溶媒及び/又はシリコーン系溶媒である上記(22)に記載の機能性皮膜形成用塗工材料、
(24)前記混合溶媒は、珪素酸化物微粒子が分散できない溶媒より、分散できる溶媒の方が揮発しやすいことを特徴とする上記(17)に記載の機能性皮膜形成用塗工材料、
(25)前記珪素酸化物微粒子を含む溶液又は前記珪素酸化物微粒子と機能性材料を含む溶液にさらに金属化合物を添加することを特徴とする上記(12)又は(13)に記載の機能性皮膜形成用塗工材料、
(26)前記珪素酸化物微粒子と機能性材料を含む溶液は0.01〜3質量%の水と0.00001〜0.1質量%の触媒を含むものである上記(13)に記載の機能性皮膜形成用塗工材料、
(27)前記機能性層は、撥水性皮膜あるいは防汚性皮膜である上記(12)又は(13)に記載の機能性皮膜形成用塗工材料、
(28)前記撥水性皮膜は、フルオロアルキル基及び/又はアルキル基を含有する有機皮膜である上記(27)に記載の機能性皮膜形成用塗工材料、
(29)前記アルキル基がオクチル基、デシル基およびドデシル基から選ばれる少なくとも1種を含むものである上記(28)に記載の機能性皮膜形成用塗工材料、
(30)基材と、該基材表面に被覆された微小凹凸を有する下地層と、さらにその上に被覆された機能性層を含む物品の製造方法であって、基材表面に珪素酸化物微粒子を含む溶液を塗布する工程と、珪素酸化物微粒子が基材表面に不均一に堆積されることにより、微小凹凸を有する下地層が形成される工程と、さらに下地層上に機能性層形成溶液を塗布する工程を含むことを特徴とする機能性皮膜被覆物品の製造方法。
(31)前記珪素酸化物微粒子を含む溶液を塗布した後、常温で塗布溶液を自然乾燥する上記(30)に記載の機能性皮膜被覆物品の製造方法、
(32)前記珪素酸化物微粒子は、一次元から三次元的に結合した形状を含み、珪素酸化物微粒子を含む溶液の溶媒は、珪素酸化物微粒子が分散できる溶媒と分散できない溶媒の混合溶媒であり、珪素酸化物微粒子を含む溶液を塗布する工程において、少なくとも珪素酸化物微粒子が分散できる溶媒が揮発するまで、基材表面を、珪素酸化物微粒子を含む溶液で濡らした状態に維持する上記(30)に記載の機能性皮膜被覆物品の製造方法、
(33)前記珪素酸化物微粒子を含む溶液に金属化合物を添加し、該珪素酸化物微粒子を含む溶液を塗布した後、常温で塗布溶液を自然乾燥し、さらに150〜650℃で焼成する上記(30)記載の機能性皮膜被覆物品の製造方法、
(34)前記機能性層形成溶液を、前記下地層に機械的に接触することなく塗布することを特徴とする上記(30)に記載の機能性皮膜被覆物品の製造方法、
(35)基材と、該基材表面に被覆された微小凹凸を有する下地層と、さらにその上に被覆された機能性層を含む物品の製造方法であって、前記基材表面に、珪素酸化物微粒子と機能性材料を含む溶液を塗布する工程と、前記珪素酸化物微粒子が基材表面に不均一に堆積されることにより、微小凹凸を有する下地層が形成され、その下地層上に機能性層が形成される工程を含むことを特徴とする機能性皮膜被覆物品の製造方法、
(36)前記珪素酸化物微粒子と機能性材料を含む溶液を塗布した後、常温で塗布溶液を自然乾燥する上記(35)記載の機能性皮膜被覆物品の製造方法、
(37)前記珪素酸化物微粒子と機能性材料を含む溶液に金属化合物を添加し、該珪素酸化物微粒子と機能性材料を含む溶液を塗布した後、常温で塗布溶液を自然乾燥し、さらに150〜350℃で焼成する上記(35)記載の機能性皮膜被覆物品の製造方法、
を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
図1は、撥水処理ガラス板の表面形状を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明の機能性皮膜被覆物品は、基材と該基材表面に下地層を被覆し、さらにその上に機能性層を被覆した物品である。
本発明の機能性皮膜被覆物品における下地層は、例えばシリカ等の珪素酸化物を主成分とした微粒子を、不均一でランダムに堆積させた構造を有している。さらに、この下地層は、その高さを不均一とすることで、表面粗さを大きくするとともに、微粒子の間の微小な空間に空気を保持できる構造としている。
本発明では、微粒子一つの大きさを直径5〜100nmの範囲とすることが好ましく、さらに10〜100nmの範囲、特には10〜50nmの範囲とすることが好ましい。微粒子の大きさが直径5nm未満であると、有効な凹凸が得られない場合があり、一方、徴粒子の大きさが100nmを超えると、皮膜の透明性が損なわれ、ヘイズ値が上がる場合がある。
また本発明では、下地層と機能性層からなる機能性皮膜全体の平均膜厚(H)は30nm以上200nm以下であることが好ましく、かつ、該機能性皮膜における最大高さ(Ry)と該平均膜厚(H)の差が50nm以上であることが好ましい。このことにより反射色調がニュートラルであり、かつヘイズ値が低くなり好適である。機能性皮膜の平均膜厚(H)が30nm以上であると、撥水性が低下することがなく、機能性皮膜の平均膜厚(H)が200nm以下であると反射が虹色に見え、反射色が目立つ等の不都合がない。以上の観点から、機能性皮膜の平均膜厚(H)は30nm以上100nm以下であることがさらに好ましい。
また、機能性皮膜の最大高さ(Ry)と機能性皮膜の平均膜厚(H)の差が50nm以上であると、超撥水性を発現させるに十分な微小凹凸構造を構成し得るため好ましい。機能性皮膜の最大高さ(Ry)と機能性皮膜の平均膜厚(H)の差を50nm以上とするには、下地層の最大高さと下地層の平均膜厚(H)の差が大きくなるように、例えばその差が50nm以上となるように、微粒子を堆積させ、下地層を形成する。
さらに、前記微粒子は基材表面にランダムに堆積させることが好ましく、下地層表面の最低点と最高点では、微粒子の数で少なくとも2個分、さらに好ましくは3個分以上の差があることが好ましく、機能性皮膜全体の最大高さ(Ry)として、100nm以上とすることがさらに好ましい。
また、前記微粒子が基材表面に堆積されている部分と堆積されていない部分が形成されていることが好ましい。このことにより、下地層表面の最低点と最高点の差を大きくすることができ、超撥水性を発現させるに十分な微小凹凸構造となり、かつ微粒子が堆積されていない面積が大きくなるほど皮膜のヘイズ値が低くなり好適である。上記効果を十分達成するためには、微粒子が堆積されている部分の面積割合が30〜90%の範囲であることが好ましく、さらには50〜80%の範囲であることが好ましい。
なお、本明細書において、最大高さ(Ry)とは、JIS B 0601(1994)によって定義される値である。
このような構成とすることにより、超撥水性の礎となる微小な凹凸構造と皮膜の透明性を両立することができる。
なお、これらの数値は、後述するように、走査型電子顕微鏡での皮膜の表面形状を観察測定した結果、およびその皮膜の撥水性に基づいて決定したものである。
さらに、「主成分」なる用語は、50質量%以上を占める成分を意味する用語として用いる。
従来技術では、一度平滑な表面を形成した後に、プラズマや温水処理、高温焼成等で表面に凹凸を形成させる方法がよく用いられていた。しかし、これらの方法では、設備のコストが非常に高くかかるだけでなく、凹凸を形成する基材にも制限があった。例えば、自動車に取り付けられた状態のガラス板に、これらの方法を適用することは実質上不可能である。
一方、本発明によれば、基材表面にコーティング溶液を塗布し、その溶液を乾燥させればよいので、基材やその状態を選ぶことがない。
また本発明による珪素酸化物を主成分とする下地層の表面粗さは、算術平均粗さ(Ra)で少なくとも10nmであり、かつ該下地層のヘイズ値は1.0%以下であることが好ましく、0.5%以下であることがさらに好ましい。このように、本発明による珪素酸化物を主成分とする下地層は、透明性にも優れている。
上述のように一般に表面粗さが大きいほど、撥水性能を向上させることができる。しかし、従来の技術で形成された凹凸表面は、表面粗さが大きくなるにつれ、皮膜のヘイズ値も大きくなり、撥水性能と透明性を両立することが困難であった。
なお、下地層の表面粗さの上限は、特に限定されないが、ヘイズ値が1.0%以下である表面粗さであることが好ましい。
従来の技術に対して、本発明による珪素酸化物を主成分とする下地層は、その表面の微粒子による凹凸の効果で表面粗さを大きくしており、かつその間に空気を保持できる微小な凹凸構造を有している。珪素酸化物を主成分とする下地層は基本的に親水性であるので、本発明による珪素酸化物を主成分とする下地層は、微小な凹凸構造と相まって超親水性を示すことになる。さらにこの珪素酸化物を主成分とする下地層は、超撥水性や防汚性を示す機能性層の下地層とすることができる。
本発明において、下地層は、珪素酸化物を主成分とし、さらに他の成分、例えばチタン酸化物、アルミニウム酸化物、ジルコニウム酸化物等の金属酸化物を含んでいてもよい。また珪素酸化物を主成分とする下地層を、シリカ下地膜と呼ぶことがある。
本発明における珪素酸化物を主成分とする下地層の形成方法においては、基材表面に微粒子をランダムに堆積させることが最も重要である。従来技術では、例えば、球状のシリカ微粒子を溶媒に分散させ、そこにバインダーとしてシリカ材料を添加した溶液を基材表面に塗布していた。しかし、この従来技術の方法では、微粒子が比較的均一に積層しやすいため、得られた皮膜は超撥水性を発現させる程度の凹凸は形成されなかった。
そこで本発明では、基材表面に微粒子をランダムに堆積させる方法として、珪素酸化物微粒子とその微粒子を分散させる溶媒の組み合わせに着目し、次の2通りの組み合わせが好ましいことを見いだした。
(第1の方法)
第1の方法では、三次元に結合した形状を含む珪素酸化物微粒子とこの微粒子を分散できる溶媒を組み合わせることがポイントである。このときの微粒子は、直径5〜100nm、好ましくは10〜100nmの球状の微粒子が30〜300nmの長さで三次元的に結合したものが好ましく、さらに、直径10〜50nmの球状の微粒子が40〜200nmの長さで三次元的に結合したものが好ましく用いられる。また、三次元的に結合した形状とは、例えば、三次元の環状が挙げられる。
この方法では、三次元的に結合した形状の微粒子を使用することに特徴がある。この微粒子を含有する溶液を基材表面に塗布すると、三次元的に結合した形状の微粒子同士が絡み合って基材表面に積層するため、形成された皮膜は、微粒子が不均一でランダムに堆積された形状になると考えられる。
このときの溶媒は、前記微粒子が分散できる溶媒であれば、特に限定されないが、例えば親水性溶媒を含むものを用いることができ、親水性溶媒のなかでは取り扱いに優れるアルコール系溶媒が好ましく用いられる。
また、揮発性の異なる2種類以上の混合溶媒を用いることが好ましく、特に高湿環境下で成膜する場合には、成膜時のヘイズ(白化)の発生を防止することができ、好ましい。溶液を基材板に塗布するに際し、溶媒が乾燥するときに基板表面は溶媒の気化熱で冷却され、空気中の水分が基材表面に結露しやすくなる、特に高湿環境下での成膜では結露量が多くなり、その結果としてヘイズ値の上昇につながると考えられる。これに対し、揮発性の異なる2種類以上の混合溶媒を用いることによって乾燥を多段階とすると、1液目が乾燥する際にも2液目以降の溶媒が残るために、結露の影響が抑制されたものになると考えられる。
この第1の方法では、前記溶液を基材表面に塗布した後、塗布溶液を自然乾燥させる。溶液が乾燥すれば、特に塗布から乾燥の環境条件は限定されず、常温でもかまわない。
(第2の方法)
第2の方法では、一次元から三次元に結合した形状を含む珪素酸化物微粒子と、この微粒子が分散できる溶媒と、分散できない溶媒の混合溶媒を組み合わせることがポイントである。このときの微粒子は、直径5〜100nm、好ましくは10〜100nmの球状の微粒子が30〜300nmの長さで一次元から三次元的に結合したものが好ましく、さらに、直径10〜50nmの球状の微粒子が40〜200nmの長さで一次元から三次元的に結合したものが好ましく用いられる。ここで、一又は二次元に結合した形状とは、例えば、一又は二次元の鎖状が挙げられ、三次元的に結合した形状とは、例えば、三次元の環状が挙げられる。
この方法では、前記第1の方法と異なり、珪素酸化物微粒子の形状が一又は二次元に結合したものでもかまわない。これは、微粒子を分散させる溶媒を、微粒子が分散できる溶媒と分散できない溶媒の混合溶媒とすることに特徴があるためである。
珪素酸化物微粒子が分散できない溶媒に珪素酸化物微粒子を添加すると、微粒子は沈殿してしまう。そこでこの第2の方法では、微粒子が分散できる溶媒と、分散できない溶媒の混合溶媒に微粒子を分散した。溶液中の微粒子は、微粒子が分散できる溶媒に分散された状態で存在し、本溶液を基材表面に塗布すると、先に微粒子が分散できる溶媒が揮発することで、基材表面には微粒子が分散できない溶媒だけが残り、微粒子は分散できなくなって、ガラス基板に堆積する仕組みである。このとき、溶液中から押し出される様に微粒子が基材表面に堆積されるため、微粒子は不均一でランダムに堆積されると考えている。
したがって第2の方法では、一又は二次元に結合した珪素酸化物微粒子でも超撥水性を発現する凹凸を形成することが可能となった。
ここで、微粒子が分散できる溶媒と、分散できない溶媒の混合比率については、珪素酸化物微粒子が分散されていれば特に限定されないが、微粒子が分散できる溶媒/徴粒子が分散できない溶媒の比で、0.3〜10であることが好ましく、さらには0.6〜5が好ましい。該混合比率が0.3以上であると、混合溶媒中に微粒子が十分に分散され、沈殿することがなく好ましい。一方、該混合比率が10以下であると、微粒子が不均一で、かつランダムに堆積されやすく、好適である。
また、第2の方法における混合溶媒は、前述の通り、微粒子が分散できない溶媒より、分散できる溶媒の方が揮発しやすくすることが好ましい。上記のように、微粒子が分散できる溶媒の揮発性が高いと、不均一でランダムな微粒子の積層が得やすいためである。
このときの微粒子が分散できる溶媒は、例えば親水性溶媒を含むものが挙げられ、取り扱いに優れるアルコール系溶媒を含むものが好ましく用いられる。また、微粒子が分散できない溶媒は、前記微粒子が分散できる溶媒と混合できる溶媒であれば、特に限定されないが、例えば、炭化水素系溶媒及び/又はシリコーン系溶媒等の非水系溶媒が挙げられる。
第2の方法では、前記溶液を基材表面に塗布した後、少なくとも微粒子が分散できる溶媒が揮発するまで、前記基材表面を前記溶液で濡らした状態を維持することが好ましい。溶液を塗らした状態で維持する時間が短いと、微粒子が基材表面に十分堆積できない場合があり、好ましくない。
本発明における機能性層の形成方法は、前記形成させた珪素酸化物を主成分とする下地層の上に機能性層形成溶液を塗布する方法(以下「2液塗布法」という)を用いてもよいし、前記下地層を形成する溶液に機能性材料を添加し、1コートで基材表面に下地層を形成させ、その上に機能性層を形成させる方法(以下「1液塗布法」という)も可能である。
すなわち、塗工材料としては、珪素酸化物微粒子を含む溶液と、後に詳述する機能性層形成溶液との組合せからなる機能性皮膜形成用塗工材料(2液塗布法)、又は珪素酸化物微粒子と後に詳述する機能性材料を含む溶液からなる機能性皮膜形成用塗工材料(1液塗布法)を用い、これを基材表面に塗布して、珪素酸化物を主成分とし、かつ珪素酸化物微粒子が不均一に堆積されてなる部分を有する下地層を形成し、さらに機能性層を形成するものである。
ここで、下地層を形成する溶液に機能性材料を添加した溶液の水分含有量は、0.01〜3質量%の範囲であることが好ましく、0.1〜1.5質量%の範囲であることがさらに好ましい。これは特に上記1液塗布法においては、機能性材料を下地層に結合させるために、加水分解および縮重合反応を必要とする場合があるからである。水分含有量が0.01質量%未満であると十分な加水分解が起こらない場合があり、一方3質量%を超えると機能性皮膜に水分が残存し、外観が悪化する場合があって好ましくない。また該加水分解を促進するために触媒を添加することが好ましい。触媒としては加水分解を促進するものであれば、特に限定されないが、取り扱いやすさ等を考慮すると酸触媒、特に塩酸を使用することが好ましい。酸触媒の添加量としては、効果を発揮する範囲内で特に限定されないが、通常0.00001〜0.1質量%の範囲であり、好ましくは0.001〜0.01質量%の範囲である。触媒量が0.00001質量%未満であると、機能性材料が下地層に結合しにくくなり、撥水性等の機能が低下したり、超撥水性等の機能を発現するまでの時間がかかる場合がある。一方触媒量が0.1質量%を超えると、下地層が緻密になりすぎて、下地層に超撥水性等の機能を発揮するための凹凸を形成し難くなる場合があり、好ましくない。
また、最終的な溶液の水分含有量を少なくするために、機能性材料だけを触媒と水を含む溶媒中であらかじめ加水分解させ、加水分解された機能性材料を、下地層を形成する溶液に添加することも好適な方法である。
さらに、珪素酸化物微粒子が水に分散される場合には、水分含有量を減らすために水分散された珪素酸化物微粒子を溶媒で希釈した後、モレキュラーシーブ等を用いて脱水処理を行なうことが好ましい。
また、上記1液塗布法においては、機能性材料の少なくとも1部が溶液中で珪素酸化物粒子に結合していることが好ましい。溶液中で機能性材料と珪素酸化物微粒子を結合させることにより、本溶液を基材表面に塗布した後、超撥水性等の機能が発現されるまでの時間を短縮することが可能となる。
溶液中で機能性材料を珪素酸化物微粒子と結合させる方法としては、溶媒に機能性材料、珪素酸化物微粒子、水および触媒を加え、溶液中で共加水分解、縮重合反応させる方法がある。この際、機能性材料と珪素酸化物微粒子を高濃度で加え、20〜80℃の温度で数時間〜数日反応させた後、適当な濃度に希釈することが好ましい。
次に、下地層を形成するための珪素酸化物微粒子を含む溶液又は下地層を形成する溶液に機能性材料を添加した溶液には、さらに金属化合物及び/又は水ガラスを添加することが好ましい。金属化合物及び/又は水ガラスを添加することで、これらがバインダーの役割を果たし本発明の機能性皮膜被覆物品の耐久性が向上する。
金属化合物として用いる金属としては、珪素、ジルコニウム、アルミニウム、セリウム又はチタニウムが好ましく、これらの金属の塩化物、アルコキシド又はアセチルアセナートを用いることが好ましい。これらのうち特に珪素の塩化物又は珪素のアルコキシドが好ましい。
上記金属化合物を用いる場合において、2液塗布法においては、下地層を塗布し、常温で自然乾燥し、さらに150℃〜650℃で焼成した後に機能性層形成溶液を塗布することが好ましい。
一方、1液塗布法においては、常温で塗布溶液を自然乾燥した後、150℃〜350℃で焼成することが好ましい。
また、1液塗布法における珪素酸化物微粒子と機能性材料を含む溶液の溶媒については、上述した珪素酸化物微粒子とその微粒子を分散させる溶媒の組み合わせがそのままあてはまる。
すなわち、第1の方法として詳述したように、三次元に結合した形状を含む珪素酸化物微粒子とこの微粒子を分散できる溶媒を組み合わせたものである。このときの微粒子は、前述と同様に直径5〜100nm、好ましくは10〜100nmの球状の微粒子が30〜300nmの長さで三次元的に結合したものが好ましく、さらに、直径10〜50nmの球状の微粒子が40〜200nmの長さで三次元的に結合したものが好ましい。また溶媒についても、前述と同様に親水性溶媒を含むもの、特にアルコール系溶媒を含むものが好ましい。さらに、揮発性の異なる2種類以上の混合溶媒を用いることが好ましいことも同様である。
また、第2の方法として詳述したように、一次元から三次元に結合した形状を含む珪素酸化物微粒子と、この微粒子が分散できる溶媒と、分散できない溶媒の混合溶媒を組み合わせたものである。このときの微粒子は、やはり直径5〜100nm、好ましくは直径10〜100nmの球状の微粒子が30〜300nmの長さで一次元から三次元的に結合したものが好ましく、さらに、直径10〜50nmの球状の微粒子が40〜200nmの長さで一次元から三次元的に結合したものが好ましい。また、混合溶媒は、前述の通り、微粒子が分散できない溶媒より、分散できる溶媒の方が揮発しやすくすることが好ましく、微粒子が分散できる溶媒としては、例えばアルコール系溶媒等の親水性溶媒を含むもの、微粒子が分散できない溶媒としては、例えば、炭化水素系溶媒及び/又はシリコーン系溶媒等の非水系溶媒が挙げられる。
さらに、前述のようにこの方法では、前記溶液を基材表面に塗布した後、少なくとも微粒子が分散できる溶媒が揮発するまで、前記基材表面を前記溶液で濡らした状態を維持することが好ましく、また前記溶液を基材表面に塗布した後、自然乾燥することが好ましい。
以下、本発明の機能性層として、撥水性皮膜を前記下地層上に形成する場合について述べる。適用されうる撥水液としては、基材表面に結合する撥水材料を含むものであれば特に限定されない。なお一般的に、撥水材料を溶媒に溶解した溶液として使用する形態が好ましい。
撥水機能を発現する撥水基としては、フルオロアルキル基又はアルキル基を挙げることができる。撥水材料としては、このようなフルオロアルキル基及び/又はアルキル基を含有し、予め基材表面に形成される珪素酸化物を主成分とする下地層と相性のよい加水分解可能な基を含有するシラン化合物が好ましい。加水分解可能な基としては、アルコキシ基、アシロキシ基、塩素基などが挙げられる。これら加水分解可能な基を含有するシラン化合物が、部分的に加水分解した加水分解物や、縮重合した重合物を用いることも可能である。
撥水基としてフルオロアルキル基を選択する場合には、撥水性能の高いフルオロアルキル基を含有したシラン化合物が好ましい。
フルオロアルキル基含有シラン化合物としては、例えば、フルオロアルキル基を含有し、かつアルコキシ基,アシロキシ基,及び塩素基から選ばれる少なくとも1種を含有するシラン化合物であり、CF(CF(CHSi(OCH、CF(CF(CHSi(OCH、CF(CF(CHSiCl、CF(CF(CHSiCl、等を例示することができる。
これらのうち、特に反応性と撥水性の高い、CF(CF(CHSiClが好ましい。
これら撥水基としてフルオロアルキル基を用いた場合には、撥水性皮膜の表面に2mgの水滴を滴下して測定した水の接触角が150度以上であることが好ましい。
一方、撥水基としてアルキル基を使用する場合には、フルオロアルキル基を用いた場合より、水の接触角が小さくても超撥水性を示す点で好ましく、水の接触角は145度以上で十分な撥水性を示し、好適である。
これは、フルオロアルキル基よりもアルキル基のほうが水滴の転がり性能(転落角)が優れているためと考えられる。撥水性に影響する因子としては、水滴をはじく性能(接触角)と水滴を滑らす性能(転落角)の2つが考えられる。接触角が150度以上の場合には水滴をはじく性能(接触角)の因子が大きく影響し、超撥水性を示す基材表面に水をかけた際に、そのかけた水勢で水自体がはじかれ、水滴が基材表面に止まらず、超撥水性を示すものと考えられる。一方、接触角が145度〜150度の場合には、水滴を滑らす性能(転落角)の因子が大きく影響し、より転落角の小さいアルキル基がフルオロアルキル基を用いた場合よりも、撥水性能が高いと考えられる。
従って、撥水基としてアルキル基を用いた場合には、撥水性皮膜の表面に2mgの水滴を滴下して測定した水の接触角が145度以上であることが好ましい。
該アルキル基としては、水の接触角が大きいとの観点から、炭素数8〜12程度のアルキル基が好ましく、特にオクチル基、デシル基およびドデシル基から選ばれる少なくとも1種を含むものであることが好ましい。
また、1液塗布法を用いる場合には、撥水基として上記アルキル基を使用することによって外観品質がよいという利点がある。1液塗布法の場合には、下地層と撥水層を1度に形成するものであり、液が濡れた状態で完全に下地層と撥水層が層分離することが必要となる。撥水材料の一部が先に基材表面に結合すると、その周辺部分は液をはじきやすくなるため、その部分には下地層が形成されず、膜ムラが生じる場合がある。アルキル基はフルオロアルキル基等と比較して、撥水性および撥油性(接触角)が低いため、1液塗布法においては、アルキル基を用いることで、膜ムラが抑えられ、より外観品質が良好となる。なお、アルキル基に加えて、液はじきが発生しない程度のフルオロアルキル基を添加することによって、膜ムラがなく、より撥水性の高い皮膜を得ることができる。
次に、撥水材料を溶解する溶媒は、撥水材料が溶解すれば特に限定されず、親水性溶媒でも非水系溶媒でもかまわない。親水性溶媒としては、取り扱いに優れるアルコール系溶媒が好ましく、非水系溶媒としては、パラフィン系炭化水素やフロン系溶媒、シリコーン油を主成分とする溶媒等が挙げられる。
本発明の2液塗布法において、先に形成した下地層の微小凹凸を破壊しないために、前記下地層に機械的な接触なしに、機能性層形成溶液を塗布することが好ましい。具体的方法としては、例えばフローコーティング法、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、スピンコーティング法、スプレーコーティング法、バーコーティング法、浸漬吸着法などが挙げられる。効率よく塗布するためには、このうちフローコーティング法やスプレーコーティング法が好ましい。
またさらに本発明における機能性層として、防汚性皮膜を形成してもよい。この防汚性皮膜としては、ポリアルキレンオキシ基を含有する有機皮膜であることが好ましい。
本発明に用いられる基材としては、特に限定されないが、該基材の表面に親水性基を有するものが好ましく用いられる。具体的には、ガラス、セラミックス、プラスチックあるいは金属等を材料として挙げることができ、これらを用いた透明なガラス板、樹脂板又は樹脂フィルムのいずれかを用いることが好ましい。
また、これらの基材の表面に親水性基が少ない場合には、その表面を予め酸素を含むプラズマ又はコロナ雰囲気で処理して親水性化するとよい。あるいは、基材表面を、酸素を含む雰囲気中で、200〜300nm付近の波長の紫外線を照射して、親水性化処理を行った後に、本発明を適用するとよい。
また本発明における珪素酸化物を主成分とする下地層は、その低い屈折率と表面凹凸の効果で、低反射性も示す。
【実施例】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、この例によってなんら限定されるものではない。
【実施例1】
1次粒径10〜15nmの球状コロイダルシリカが、三次元に結合したパールスライク(パールネックレス状)コロイダルシリカ(PS−SO:日産化学工業(株)製)1.15gをエタノール98.85gに添加し、5分間撹拌して、下地層用の塗布溶液を得た。
次いで、ヘプタデカフルオロデシルトリクロロシラン(CF(CF(CHSiCl)2gを、デカメチルシクロペンタシロキサン98gに撹拌しながら添加し、撥水処理剤を得た。
この下地層用の塗布溶液を、洗浄したガラス基板の表面上に、相対湿度30%、室温下でフローコート法にて塗布し、自然乾燥させ、その上から撥水処理剤をフローコート法にて塗布し、1分間撥水処理剤でガラス基板表面を濡らしたまま静置させ、その後、エタノールで表面の撥水処理剤を完全に洗い流して自然乾燥させ、撥水処理ガラス板を得た。
こうして得られた撥水処理ガラス板の表面形状を、走査型電子顕微鏡(「S−4700型」、日立製作所(株)製)を用いて、加速電圧5kV、エミッション電流10μA、傾斜角度10度、観察倍率10万倍の条件で観察した。その結果を図1に示す。図1の結果より、撥水処理ガラス板の表面は、微粒子が不均一に堆積されている形状であることが確認できた。
こうして得られた撥水処理ガラス板の表面粗さについて、電子間力顕微鏡(「SPI3700」、セイコー電子(株)製)を用いて、サイクリックコンタクトモードで、平均粗さRaを測定した。このRaの値が大きいほど、皮膜表面の凹凸が大きいことを表している。
さらに撥水処理ガラス板について、その撥水性能を水の接触角で評価した。接触角計(「CA−DT」、協和界面科学(株)製)を用い、2mgの質量の水滴をガラス板表面に滴下して、静的接触角を測定した。なおこの接触角の値が大きいほど、静的な撥水性が優れていることを表している。
また、得られた撥水処理ガラス板について、その膜の透明性を曇価で評価した。曇価は、直読ヘイズコンピューター(「HGM−2DM」、スガ試験機(株)製)を用いて測定した。なおこの曇価の値が小さいほど、皮膜の透明性が高いことを表している。
【実施例2】
実施例1で用いたパールスライクコロイダルシリカ1.15gと、粒径40〜50nmの球状コロイダルシリカ(ST−OL:日産化学工業(株)製)0.00042gを、エタノール98.85gに添加し、5分間撹拌して、下地層用の塗布溶液を得た。
この下地層用の塗布溶液を、洗浄したガラス基板の表面上に、相対湿度30%、室温下でフローコート法にて塗布し、自然乾燥させ、その上から実施例1と同様に作製した撥水処理剤をフローコート法にて塗布し、1分間撥水処理剤でガラス基板表面を濡らしたまま静置させ、その後、エタノールで表面の撥水処理剤を完全に洗い流して自然乾燥させ、撥水処理ガラス板を得た。
【実施例3】
1次粒径10〜20nmの球状コロイダルシリカが、40〜100nmの長さで一次元から二次元に結合した鎖状コロイダルシリカ(ST−OUP:日産化学工業(株)製)1.15gを、エタノール40.0gとデカメチルシクロペンタシロキサン(KF−995:信越シリコーン製)58.85gの混合溶媒に添加し、5分間撹拌して、下地層用の塗布溶液を得た。
この下地層用の塗布溶液を、洗浄したガラス基板の表面上に、相対湿度30%、室温下でフローコート法にて塗布し、1分間この溶液でガラス基板表面を濡らしたまま静置させた。その後、その上から実施例1と同様に作製した撥水処理剤をフローコート法にて塗布し、1分間撥水処理剤でガラス基板表面を濡らしたまま静置させ、その後、エタノールで表面の撥水処理剤を完全に洗い流して自然乾燥させ、撥水処理ガラス板を得た。
【実施例4】
実施例3において、デカメチルシクロペンタシロキサンをイソパラフィン系炭化水素(アイソゾール300:日本石油化学(株)製)に変更した以外は、実施例3と同様にして撥水処理ガラス板を得た。
【実施例5】
ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン(CF(CF(CHSi(OCH:信越シリコーン製)1.0gを、エタノール98.0gに撹拌しながら添加し、さらに0.1規定の塩酸1.0gを加えて2時間撹拌して、フッ素系撥水材料の加水分解物を得た。
このフッ素系撥水材料の加水分解物20.0gを、エタノール78.85gに添加し、さらに実施例1で用いたパールスライクコロイダルシリカ1.15gを加えて、5分間撹拌して撥水処理用溶液を得た。
この撥水処理用溶液を、洗浄したガラス基板の表面上に、相対湿度30%、室温下でフローコート法にて塗布し、自然乾燥させ、撥水処理ガラス板を得た。
【実施例6】
実施例5で得られたフッ素系撥水材料の加水分解物20.0gを、エタノール20.0gと、イソパラフィン系炭化水素58.85gの混合溶媒に添加し、さらに実施例3で用いた鎖状コロイダルシリカ1.15gを加えて、5分間撹拌して撥水処理用溶液を得た。
この撥水処理用溶液を、洗浄したガラス基板の表面上に、相対湿度30%、室温下でフローコート法にて塗布し、自然乾燥させ、撥水処理ガラス板を得た。
【実施例7】
イソプロピルアルコール97.77gに、実施例1で用いたパールスライクコロイダルシリカ1.15gとデシルトリメトキシシラン(CH(CHSi(OCH:信越シリコーン製)0.08gを加えて5分間攪拌し、さらに0.1規定の塩酸1.0gを加えて5分間攪拌して撥水処理用溶液を得た。
この撥水処理用溶液を洗浄したガラス基板の表面上に、相対湿度30%、室温下でフローコート法にて塗布し、自然乾燥させ、撥水処理ガラス板を得た。
【実施例8】
イソプロピルアルコール97.53gに、実施例1で用いたパールスライクコロイダルシリカ1.15gと実施例7で用いたデシルトリメトキシシラン0.08g、およびテトラエトキシシラン(Si(OCHCH:信越シリコーン製)0.24gを加えて、5分間攪拌し、さらに0.1規定の塩酸1.0gを加えて5分間攪拌して撥水処理用溶液を得た。
この撥水処理用溶液を洗浄したガラス基板の表面上に、相対湿度30%、室温下でフローコート法にて塗布し、自然乾燥させ、撥水処理ガラス板を得た。
【実施例9】
イソプロピルアルコール8.7gに、実施例7で用いたデシルトリメトキシシラン1.0gを加えて、5分間攪拌し、さらに0.1規定の塩酸0.3gを加えて1時間攪拌してアルキルシランの加水分解物を得た。
次いで、イソプロピルアルコール98.05gに、実施例1で用いたパールスライクコロイダルシリカ1.15gと前記アルキルシランの加水分解物0.8gを加えて、5分間攪拌して撥水処理用溶液を得た。
この撥水処理用溶液を洗浄したガラス基板の表面上に、相対湿度30%、室温下でフローコート法にて塗布し、自然乾燥させ、撥水処理ガラス板を得た。
【実施例10】
イソプロピルアルコール294.0gに、実施例1で用いたパールスライクコロイダルシリカ6.0gを加えて5分間攪拌し、さらにモレキュラーシーブ(ビーズ径2mm、穴径0.3mm;関東化学(株)製)50gを加えて、5分間攪拌した後、8日間静置して、シリカ微粒子分散液の脱水処理物を得た。
得られたシリカ微粒子分散液の脱水処理物の水分量をカールフィッシャー法で測定したところ、脱水処理前の水分量が1.78質量%であったのに対し、脱水処理後の水分量は0.14質量%であり、脱水されていることが確認できた。
次いで、イソプロピルアルコール42.2gに前記シリカ微粒子分散液の脱水処理物57.0gと実施例9で得られたアルキルシランの加水分解物0.8gを加えて、5分間攪拌して撥水処理用溶液を得た。
この撥水処理用溶液、洗浄したガラス基板の表面上に、相対湿度30%、室温下でフローコート法にて塗布し、自然乾燥させ、撥水処理ガラス板を得た。
【実施例11】
イソプロピルアルコール9.8gに、実施例5で用いたヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン0.1gを加えて、5分間攪拌し、さらに0.1規定の塩酸0.1gを加えて1時間攪拌してフルオロアルキルシランの加水分解物を得た。
次いで、イソプロピルアルコール40.8gに、実施例10で得られたシリカ微粒子分散液の脱水処理物57.0gと実施例9で得られたアルキルシランの加水分解物0.8gと、前記フルオロアルキルシランの加水分解物0.4gを加えて、5分間攪拌し、さらにその後0.1規定の塩酸0.1gを加えて、5分間攪拌し、撥水処理用溶液を得た。
この撥水処理用溶液、洗浄したガラス基板の表面上に、相対湿度30%、室温下でフローコート法にて塗布し、自然乾燥させ、撥水処理ガラス板を得た。
【実施例12】
実施例9と同様にして得られた撥水処理用溶液を、洗浄したガラス基板の表面上に、相対湿度50%、室温下でフローコート法にて塗布し、自然乾燥させ、撥水処理ガラス板を得た。
【実施例13】
実施例11と同様にして得られた撥水処理用溶液を、洗浄したガラス基板の表面上に、相対湿度70%、室温下でフローコート法にて塗布し、自然乾燥させ、撥水処理ガラス板を得た。
【実施例14】
イソプロピルアルコール9.8gに、実施例5で用いたヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン0.1gを加えて、5分間攪拌し、さらに0.1規定の塩酸0.1gを加えて1時間攪拌してフルオロアルキルシランの加水分解物を得た。
次いで、イソパラフィン(「アイソゾール200」日本石油化学(株)製)40.8gに、実施例10で得られたシリカ微粒子分散液の脱水処理物57.0gと実施例9で得られたアルキルシランの加水分解物0.8gと、前記フルオロアルキルシランの加水分解物0.4gを加えて、5分間攪拌し、さらにその後0.1規定の塩酸0.1gを加えて、5分間攪拌し、撥水処理用溶液を得た。
この撥水処理用溶液、洗浄したガラス基板の表面上に、相対湿度70%、室温下でフローコート法にて塗布し、自然乾燥させ、撥水処理ガラス板を得た。
【実施例15】
イソプロピルアルコール20.72gに、実施例1で用いたパールスライクコロイダルシリカ3.75g、実施例7で用いたデシルトリメトキシシラン0.27gおよび実施例5で用いたヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン0.013gを加えて、5分間攪拌し、さらに1規定の塩酸0.25gを加えて50℃で2日間攪拌して撥水材料と珪素酸化物微粒子の共加水分解・縮重合物を得た。この共加水分解・縮重合物3.88gをイソプロピルアルコール96.08gに加え、5分間攪拌し、さらにその後1規定の塩酸0.049gを加えて、5分間攪拌し、撥水処理用溶液を得た。
この撥水処理用溶液を、洗浄したガラス基板の表面上に、相対湿度50%、室温下でフローコート法にて塗布し、自然乾燥させ、撥水処理ガラス板を得た。
実施例1〜15で得られた撥水処理ガラス板は、走査型電子顕微鏡を用いてその表面形状を観察したところ、全ての皮膜で微粒子が不均一でランダムに堆積されている形状であることを確認した。
また、実施例1〜15で得られた撥水処理ガラス板の表面粗さは、電子間力顕微鏡を用いて測定したところ、全ての皮膜でRa=15nm以上と、10nm以上であることが確認でき、皮膜表面の表面粗さが大きいことが確かめられた。
上述した実施例1〜15に関する以下の特性(・表面粗さ、・初期接触角、・曇価)について、表1にまとめた。
さらに実施例1〜15で得られた撥水処理ガラス板は、超撥水性を有することが確認できた。また、曇価は、1.0%以下であり、透明性が高く、また、透過色調、反射色調ともにニュートラルであり、外観上の問題もないことが確認された。
また実施例1〜15で得られた撥水処理ガラス板は、反射もよく抑えられていた。これは、シリカを主成分とする下地層の低屈折率と表面凹凸の効果によるものと考えられる。
比較例1
実施例1において、パールスライクコロイダルシリカを実施例3で用いた鎖状コロイダルシリカに変更した以外は、実施例1と同様にして撥水処理ガラス板を得た。
得られた撥水処理ガラス板を実施例1〜15と同様に評価した結果を表1に示す。初期接触角が140度であり、撥水性能に劣ることが確認された。
比較例2
実施例3において、鎖状コロイダルシリカを実施例2で用いた球状コロイダルシリカに変更した以外は、実施例3と同様にして撥水処理ガラス板を得た。
得られた撥水処理ガラス板を実施例1〜15と同様に評価した結果を表1に示す。初期接触角が112度であり、撥水性能に劣ることが確認された。

【産業上の利用可能性】
以上説明してきたように、本発明では、基材と該基材表面に下地層を被覆し、さらにその上に機能性層を被覆した機能性皮膜被覆物品において、その下地層は微粒子が不均一に堆積されてなることによって、微小凹凸と透明性を両立させている。その結果、機能性皮膜として透明性を有しながら、優れた撥水性や防汚性を有する機能をもった機能性皮膜物品の提供を可能としたものである。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、該基材表面に被覆された微小凹凸を有する下地層と、さらにその上に被覆された機能性層を含む物品であって、該微小凹凸は、微粒子が不均一に堆積されてなる部分を有することを特徴とする機能性皮膜被覆物品。
【請求項2】
前記下地層は、珪素酸化物を主成分とするものである請求項1に記載の機能性皮膜被覆物品。
【請求項3】
前記下地層と前記機能性層からなる機能性皮膜の平均膜厚(H)が30nm以上200nm以下であり、かつ該機能性皮膜表面における最大高さ(Ry)と平均膜厚(H)の差が50nm以上である請求項1又は2に記載の機能性皮膜被覆物品。
【請求項4】
前記微粒子の直径は5〜100nmである請求項1に記載の機能性皮膜被覆物品。
【請求項5】
前記下地層と前記機能性層からなる機能性皮膜の表面粗さは、算術平均粗さ(Ra)で少なくとも10nmであり、かつ該機能性皮膜のヘイズ値は1%以下である請求項1に記載の機能性皮膜被覆物品。
【請求項6】
前記機能性層は、撥水性皮膜あるいは防汚性皮膜である請求項1に記載の機能性皮膜被覆物品。
【請求項7】
前記撥水性皮膜は、フルオロアルキル基及び/又はアルキル基を含有する有機皮膜である請求項6に記載の機能性皮膜被覆物品。
【請求項8】
前記アルキル基がオクチル基、デシル基およびドデシル基から選ばれる少なくとも1種を含むものである請求項7に記載の機能性皮膜被覆物品。
【請求項9】
前記撥水性皮膜の表面に、2mgの水滴を滴下して測定した水の接触角が少なくとも145度である請求項6に記載の機能性皮膜被覆物品。
【請求項10】
前記防汚性皮膜は、ポリアルキレンオキシ基を含有する有機皮膜である請求項6に記載の機能性皮膜被覆物品。
【請求項11】
前記基材は、透明なガラス板、樹脂板又は樹脂フィルムのいずれかである請求項1に記載の機能性皮膜被覆物品。
【請求項12】
基材表面に、珪素酸化物を主成分とし、かつ珪素酸化物微粒子が不均一に堆積されてなる部分を有する下地層を形成し、さらに機能性層を形成するための塗工材料であって、珪素酸化物微粒子を含む溶液と機能性層形成溶液との組合せからなる機能性皮膜形成用塗工材料。
【請求項13】
基材表面に、珪素酸化物を主成分とし、かつ珪素酸化物微粒子が不均一に堆積されてなる部分を有する下地層を形成し、さらに機能性層を形成するための塗工材料であって、珪素酸化物微粒子と機能性材料を含む溶液からなる機能性皮膜形成用塗工材料。
【請求項14】
前記珪素酸化物微粒子は、三次元的に結合した形状を含み、珪素酸化物微粒子を含む溶液の溶媒又は珪素酸化物微粒子と機能性材料を含む溶液の溶媒は、該珪素酸化物微粒子が分散できる溶媒であることを特徴とする請求項12又は13に記載の機能性皮膜形成用塗工材料。
【請求項15】
前記珪素酸化物微粒子は、直径5〜100nmの球状の微粒子が30〜300nmの長さで三次元的に結合した形状を含む請求項14に記載の機能性皮膜形成用塗工材料。
【請求項16】
前記珪素酸化物微粒子は、前記球状の微粒子が環状に結合した形状を含むことを特徴とする請求項15に記載の機能性皮膜形成用塗工材料。
【請求項17】
前記珪素酸化物微粒子は、一次元から三次元的に結合した形状を含み、珪素酸化物微粒子を含む溶液の溶媒又は珪素酸化物微粒子と機能性材料を含む溶液の溶媒は、該珪素酸化物微粒子が分散できる溶媒と分散できない溶媒の混合溶媒であることを特徴とする請求項12又は13に記載の機能性皮膜形成用塗工材料。
【請求項18】
前記珪素酸化物微粒子は、直径5〜100nmの球状の微粒子が30〜300nmの長さで一次元から三次元に結合した形状を含む請求項17に記載の機能性皮膜形成用塗工材料。
【請求項19】
前記珪素酸化物微粒子は、前記球状の微粒子が鎖状及び/又は環状に結合した形状を含む請求項18に記載の機能性皮膜形成用塗工材料。
【請求項20】
前記珪素酸化物微粒子が分散できる溶媒は、親水性溶媒を含むものである請求項14又は17に記載の機能性皮膜形成用塗工材料。
【請求項21】
前記親水性溶媒は、アルコール系溶媒である請求項20に記載の機能性皮膜形成用塗工材料。
【請求項22】
前記珪素酸化物微粒子が分散できない溶媒は、非水系溶媒である請求項17に記載の機能性皮膜形成用塗工材料。
【請求項23】
前記非水系溶媒は、炭化水素系溶媒及び/又はシリコーン系溶媒である請求項22に記載の機能性皮膜形成用塗工材料。
【請求項24】
前記混合溶媒は、珪素酸化物微粒子が分散できない溶媒より、分散できる溶媒の方が揮発しやすいことを特徴とする請求項17に記載の機能性皮膜形成用塗工材料。
【請求項25】
前記珪素酸化物微粒子を含む溶液又は前記珪素酸化物微粒子と機能性材料を含む溶液に、さらに金属化合物及び/又は水ガラスを添加することを特徴とする請求項12又は13に記載の機能性皮膜形成用塗工材料。
【請求項26】
前記珪素酸化物微粒子と機能性材料を含む溶液は0.01〜3質量%の水と0.00001〜0.1質量%の触媒を含むものである請求項13に記載の機能性皮膜形成用塗工材料。
【請求項27】
前記機能性層は、撥水性皮膜あるいは防汚性皮膜である請求項12又は13に記載の機能性皮膜形成用塗工材料。
【請求項28】
前記撥水性皮膜は、フルオロアルキル基及び/又はアルキル基を含有する有機皮膜である請求項27に記載の機能性皮膜形成用塗工材料。
【請求項29】
前記アルキル基がオクチル基、デシル基およびドデシル基から選ばれる少なくとも1種を含むものである請求項28に記載の機能性皮膜形成用塗工材料。
【請求項30】
基材と、該基材表面に被覆された微小凹凸を有する下地層と、さらにその上に被覆された機能性層を含む物品の製造方法であって、基材表面に珪素酸化物微粒子を含む溶液を塗布する工程と、珪素酸化物微粒子が基材表面に不均一に堆積されることにより、微小凹凸を有する下地層が形成される工程と、さらに下地層上に機能性層形成溶液を塗布する工程を含むことを特徴とする機能性皮膜被覆物品の製造方法。
【請求項31】
前記珪素酸化物微粒子を含む溶液を塗布した後、常温で塗布溶液を自然乾燥する請求項30に記載の機能性皮膜被覆物品の製造方法。
【請求項32】
前記珪素酸化物微粒子は、一次元から三次元的に結合した形状を含み、珪素酸化物微粒子を含む溶液の溶媒は、珪素酸化物微粒子が分散できる溶媒と分散できない溶媒の混合溶媒であり、珪素酸化物微粒子を含む溶液を塗布する工程において、少なくとも珪素酸化物微粒子が分散できる溶媒が揮発するまで、基材表面を、珪素酸化物微粒子を含む溶液で濡らした状態に維持する請求項30に記載の機能性皮膜被覆物品の製造方法。
【請求項33】
前記珪素酸化物微粒子を含む溶液に金属化合物及び/又は水ガラスを添加し、該珪素酸化物微粒子を含む溶液を塗布した後、常温で塗布溶液を自然乾燥し、さらに150〜650℃で焼成する請求項30記載の機能性皮膜被覆物品の製造方法。
【請求項34】
前記機能性層形成溶液を、前記下地層に機械的に接触することなく塗布することを特徴とする請求項30記載の機能性皮膜被覆物品の製造方法。
【請求項35】
基材と、該基材表面に被覆された微小凹凸を有する下地層と、さらにその上に被覆された機能性層を含む物品の製造方法であって、前記基材表面に、珪素酸化物微粒子と機能性材料を含む溶液を塗布する工程と、前記珪素酸化物微粒子が基材表面に不均一に堆積されることにより、微小凹凸を有する下地層が形成され、その下地層上に機能性層が形成される工程を含むことを特徴とする機能性皮膜被覆物品の製造方法。
【請求項36】
前記珪素酸化物微粒子と機能性材料を含む溶液を塗布した後常温で塗布溶液を自然乾燥する請求項35記載の機能性皮膜被覆物品の製造方法。
【請求項37】
前記珪素酸化物微粒子と機能性材料を含む溶液に金属化合物及び/又は水ガラスを添加し、該珪素酸化物微粒子と機能性材料を含む溶液を塗布した後、常温で塗布溶液を自然乾燥し、さらに150〜350℃で焼成する請求項35記載の機能性皮膜被覆物品の製造方法。

【国際公開番号】WO2004/052640
【国際公開日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【発行日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−502370(P2005−502370)
【国際出願番号】PCT/JP2003/015813
【国際出願日】平成15年12月10日(2003.12.10)
【出願人】(000004008)日本板硝子株式会社 (853)
【Fターム(参考)】