説明

機能性繊維成形体の製造方法

【課題】植物性繊維を主材料とする機能性繊維成形体において、簡易な方法によって機能性粉粒体を適度に分散させて含有させ得る機能性繊維成形体の製造方法を提供する。
【解決手段】植物性繊維11を主材料とし、機能性粉粒体13を含有した機能性繊維成形体16を製造する方法であって、前記植物性繊維に、前記機能性粉粒体を散布して、これら植物性繊維及び機能性粉粒体を分散させながら、気流を発生させることで、これらを混合し、その混合した状態で堆積させることで、該機能性粉粒体を内部に分散させて含有させた後、成形して機能性繊維成形体を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物性繊維を主材料とし、機能性粉粒体を含有した機能性繊維成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような植物性繊維を主材料とし、機能性粉粒体を含有した機能性繊維成形体は、住居等の建物の内壁材、天井材若しくは床下材または断熱材などの内装建材として使用されたり、各種家具等の家具材として使用されたりしている。
このような機能性繊維成形体は、例えば、吸放湿性を有する吸放湿材(調湿材)や消臭剤、抗菌剤等の種々の機能性を有した粒状(粒子状)の機能性粉粒体を、植物性繊維に添加して成形される。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、植物から得られるリグノセルロース繊維同士をバインダーで接着して形成されるとともに、内部に調湿材を保持させた調湿性植物繊維ボードが提案されている。
この特許文献1には、上記調湿材をボード中に分散させて保持させる方法として、調湿材を分散させた液体状のバインダーをリグノセルロース繊維にスプレーしたり含浸させたりする方法や、調湿材をリグノセルロース繊維に分散させた後、バインダーを含有させる方法、リグノセルロース繊維、バインダー、調湿材を同時に混合する方法などが挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−173834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1では、上記調湿材をボード中に適度に分散させて含有させる具体的な態様についての開示はなく、例えば、上記したスプレーしたり含浸させたりする方法では、調湿材の局所的な偏りが生じることが考えられる。また、上記した調湿材をリグノセルロース繊維に分散させた後、バインダーを含有させる方法や、リグノセルロース繊維、バインダー、調湿材を同時に混合する方法においても、ボード中にどのようにして調湿材が適度に分散して含有されるのかについて、具体的には開示されておらず、更なる改善が望まれていた。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、植物性繊維を主材料とする機能性繊維成形体において、簡易な方法によって機能性粉粒体を適度に分散させて含有させ得る機能性繊維成形体の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明に係る機能性繊維成形体の製造方法は、植物性繊維を主材料とし、機能性粉粒体を含有した機能性繊維成形体を製造する方法であって、前記植物性繊維に、前記機能性粉粒体を散布して、これら植物性繊維及び機能性粉粒体を分散させながら、気流を発生させることで、これらを混合し、その混合した状態で堆積させることで、該機能性粉粒体を内部に分散させて含有させた後、成形して機能性繊維成形体を製造することを特徴とする。
ここに、上記機能性粉粒体は、吸放湿性や消臭性、防虫性、抗菌性等の種々の機能性を有した粉粒体であって、粒状、細片状、粒子状、微粒子状及び粉状のものも含む。
【0008】
本発明に係る前記機能性繊維成形体の製造方法においては、前記機能性粉粒体の散布を、前記植物性繊維にバインダーとなる合成樹脂繊維を添加して解繊した綿状の解繊混合綿に対して行うようにしてもよい。
上記機能性粉粒体の散布を、上記解繊混合綿に対して行う態様とした機能性繊維成形体の製造方法においては、前記機能性粉粒体を内部に分散させて含有させた後、加熱加圧してボード状に硬化させて成形するようにしてもよい。
【0009】
本発明に係る前記いずれかの機能性繊維成形体の製造方法においては、前記機能性粉粒体を散布する前に、前記植物性繊維に液体を散布し、該植物性繊維の表面を濡らした状態で、該機能性粉粒体を散布するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る前記機能性繊維成形体の製造方法によれば、前記植物性繊維に、前記機能性粉粒体を散布して、これら植物性繊維及び機能性粉粒体を分散させながら、気流を発生させることで、これらを混合し、その混合した状態で堆積させることで、該機能性粉粒体を内部に分散させて含有させるようにしているので、簡易な方法によって、機能性粉粒体を適度に分散させて含有させた機能性繊維成形体を製造することができる。すなわち、従来、一般的には、例えば、清水中に繊維と粉粒体とを分散させて混合する、いわゆる湿式抄造法や、植物性繊維によってマット状に形成した表裏層の間に、機能性粉粒体を挟みこむように介在させる方法が採用されていた。前者では、後の工程において長時間の乾燥工程が必要となったり、湿式であるために製造工程において機能性繊維成形体に含有されなかった機能性粉粒体(製造ロス分)を分離して再利用することが困難であったりする等の問題があった。また、後者では、機能性繊維成形体の厚み内において機能性粉粒体が偏在する結果、機能性繊維成形体に局所的な密度差や厚み差等が生じ、強度が低下する問題があった。
一方、上記構成とされた本発明によれば、気流を発生させることで、これら植物性繊維及び機能性粉粒体を混合し、その混合した状態で堆積させることで、該機能性粉粒体を内部に分散させて含有させることができるので、簡易な方法で適度に機能性粉粒体を分散させて含有させることができ、また、乾式の製造方法で機能性繊維成形体を製造することができる。また、乾式の製造方法であるので、製造工程において発生する機能性粉粒体の製造ロス分を容易に再利用することもできる。
【0011】
本発明に係る前記機能性繊維成形体の製造方法において、前記機能性粉粒体の散布を、前記植物性繊維にバインダーとなる合成樹脂繊維を添加して解繊した綿状の解繊混合綿に対して行うようにすれば、比較的、直線性の強い植物性繊維を、合成樹脂繊維を添加して解繊することで、植物性繊維を絡み易い状態にできる。この結果、上記のように気流を発生させることで、内部に分散して含有される機能性粉粒体を、植物性繊維間に捕捉させ易くなり、該機能性粉粒体が後の工程において抜け落ちたり、飛散したりすることを低減できる。
【0012】
上記機能性粉粒体の散布を、上記解繊混合綿に対して行う態様とした機能性繊維成形体の製造方法において、前記機能性粉粒体を内部に分散させて含有させた後、加熱加圧してボード状に硬化させて成形するようにすれば、上記のように、機能性粉粒体を、内部に適度に分散させて含有させることができるので、加熱加圧してボード状に形成した場合にも、該ボードの厚み内や面域方向において、局所的な密度差や厚み差等が生じ難く、比較的、均質なボードを製造することができる。
【0013】
本発明に係る前記いずれかの機能性繊維成形体の製造方法において、前記機能性粉粒体を散布する前に、前記植物性繊維に液体を散布し、該植物性繊維の表面を濡らした状態で、該機能性粉粒体を散布するようにすれば、上記のように気流を発生させることで、内部に分散して含有される機能性粉粒体が植物性繊維に付着し易くなる。従って、製造工程において搬送等の際や種々の工程がなされる際に、機能性粉粒体が植物性繊維の間から抜け落ちたり、振動等によって飛散したりすることをより効果的に低減でき、簡易な方法によって機能性粉粒体の歩留まりを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る機能性繊維成形体の製造方法の一実施形態の一部を説明するための概念的な説明図である。
【図2】同製造方法の一部を説明するための概念的な説明図である。
【図3】同製造方法を用いて製造された機能性繊維成形体の実施例の一例と比較例とを評価試験の結果とともに示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
図1及び図2は、本実施形態に係る機能性繊維成形体の製造方法の一例を説明するための概念的な説明図である。図3は、同製造方法を用いて製造された機能性繊維成形体の実施例の一例と比較例とを評価試験の結果とともに示す表である。
【0016】
本実施形態に係る機能性繊維成形体の製造方法によって製造された機能性繊維成形体は、図2に示すように、ボード状(平板状)に形成された機能性繊維ボード16とされている。
上記機能性繊維ボード16は、図1に示すように、植物性繊維11を主材料とし、後記するように、該植物性繊維11に、バインダーとしての合成樹脂繊維12を添加して形成された解繊混合綿10に対して、機能性粉粒体13を散布し、後記する気流分散工程2において、これら各繊維11,12及び機能性粉粒体13を分散させながら、気流を発生させることで、これらを混合し、その混合した状態で堆積させることで、該機能性粉粒体13を内部に分散させて含有させた後、後記するように種々の工程を経て、加熱加圧してボード状に成形されている。
【0017】
上記機能性繊維ボード16の使用態様としては、引戸や折り戸、開き戸等の扉(ドアパネル)、内壁、間仕切り、棚、キッチンパネル、天井等の内装建材(表面建材)として使用したり、床下材や壁断熱材等として使用したり、キャビネットなどの収納家具の前板(扉)、天板、棚板、側板、底板、背板等の家具材等として使用したりする態様が挙げられる。
また、この機能性繊維ボード16の表面に、適宜、使用態様に応じて、表面仕上げのための通気性を有する化粧シートや壁紙等を更に貼着するようにしてもよい。
また、該機能性繊維ボード16の裏面に、適宜、使用態様に応じて、石膏ボードや木質ボード、樹脂ボードなどを更に貼着するようにしてもよい。
【0018】
上記機能性繊維ボード16に採用される上記植物性繊維11としては、例えば、植物の靭皮から採取される靭皮繊維(例えば、ケナフ、亜麻、ラミー、大麻、ジュート等の麻類植物の靭皮から採取される繊維)や、マニラ麻、サイザル麻等の麻類植物の茎又は端の筋から採取される繊維、油ヤシやココヤシ等のヤシ科植物から採取される繊維、パルプなどの木材繊維が挙げられる。
特に、近年、枯渇化が叫ばれている木材資源ではなく、非木材資源である麻類植物やヤシ科植物から得られる麻類植物繊維やヤシ科植物繊維を植物性繊維11として採用すれば、環境資源にも配慮した機能性繊維ボード16を製造することができる。また、そのような麻類植物やヤシ科植物から採取される繊維は、従来の繊維板に使用されている針葉樹や広葉樹から採取される繊維よりも引張強度が2倍〜14倍程度大きい。従って、これら麻類植物やヤシ科植物から採取される繊維を機能性繊維ボード16に採用することで、機能性繊維ボード16自体の強度をより効果的に高めることができ、内装建材や家具材等として好適なものとなる。
【0019】
尚、上記各種の繊維は、一種あるいは二種以上を組み合わせて採用してもよい。
また、上記植物性繊維11が主材料となるように配合比を調整すればよく、その他、ロックウールやスラグウール、ミネラルウール、グラスウールなどの人造鉱物繊維をさらに混合して配合するようにしてもよい。
【0020】
上記植物性繊維11としては、長繊維状のものとしてもよい。例えば、その繊維長が、6mm〜2000mm程度、好ましくは、10mm〜200mm程度、より好ましくは、20mm〜100mm程度のものとしてもよい。
上記植物性繊維11の繊維長が、上記の範囲より短いと、繊維同士の絡み合いが不足してボード自体の強度や通気性が低下する傾向があり、また、繊維長が、上記の範囲より長いと、後記するように植物性繊維11によってマット状中間成形体14を形成する際に所定の形状にし難くなる傾向がある。
上記植物性繊維11の平均繊維径は、20μm〜500μm、好ましくは、50μm〜200μm程度となるように解繊したものとしてもよい。
上記植物性繊維11の平均繊維径が、上記の範囲より小径であると、繊維間の接着面積が増加するためボード自体の強度は高くなるが、繊維間の空隙が小さくなり、通気性を阻害する傾向がある。また、平均繊維径が上記の範囲より大径であると、繊維間の空隙は大きくなり、通気性が高くなるが、繊維間の接着面積が少なくなりボード自体の強度が低下する傾向がある。
【0021】
上記機能性繊維ボード16に採用される合成樹脂バインダー(接着成分)としての上記合成樹脂繊維12としては、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等の熱可塑性樹脂からなる繊維や、ポリ乳酸樹脂からなる繊維等が挙げられる。尚、合成樹脂繊維12の繊維長及び繊維径は、上記植物性繊維11と同程度のものとしてもよい。また、上記各種の合成樹脂繊維12は、一種あるいは二種以上を組み合わせて採用してもよく、例えば、ポリエステル樹脂を芯部(芯成分)とし、ナイロンやポリエチレン、エチレン−ビニルアルコール樹脂等を鞘部(鞘成分)とした芯鞘構造の合成樹脂繊維12としてもよい。
このような合成樹脂繊維12をバインダーとした場合は、上記植物性繊維11と、互いに適度に絡み合わせ、熱プレスによって該合成樹脂繊維12を溶融させた後、硬化させることで、上記植物性繊維11同士を連結固化するバインダーとして機能する。このように、合成樹脂繊維12をバインダーとすることで、適度な空隙を保つことができる。
また、上記芯鞘構造の合成樹脂繊維12を採用した場合には、芯部が溶融しない温度で加熱することで、芯部を残して上記植物性繊維11同士を連結固化することができ、その芯部と植物性繊維11との絡み合いによって上記空隙をより効果的に確保することができる。
【0022】
本実施形態では、上記合成樹脂繊維12と上記植物性繊維11とは、互いに絡み合わせ易くするため、及び後記する機能性粉粒体13の絡み(捕捉性)を向上させるために、前処理として、植物性繊維束と合成樹脂繊維束とを同時に解繊するようにしている。このような解繊工程を、何段階か経ることで、適度にこれら植物性繊維11と合成樹脂繊維12とが解繊されながら混合され、綿状の解繊混合体(解繊混合綿10)が形成される。該解繊混合綿10を、後記するように、繊維分散機22aによって、該解繊混合綿10から植物性繊維(片)11及び合成樹脂繊維(片)12に分散させるようにしている。
また、上記合成樹脂バインダー(接着成分)としては、上記のように繊維状のものに限定されず、上記合成樹脂繊維12に代えて、または加えて、粉状の熱可塑性樹脂バインダーを採用するようにしてもよい。
さらに、上記した熱可塑性樹脂からなるものに限られず、ユリア樹脂や、メラミン樹脂、ユリア・メラミン共縮合樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂を含有する粉状のバインダーとしてもよい。
【0023】
上記植物性繊維11に対する上記合成樹脂バインダー(本実施形態では、合成樹脂繊維12)の配合割合(植物性繊維11と合成樹脂バインダーとを混合した状態における全重量に占める合成樹脂バインダーの割合)は、固形分で、10重量%〜60重量%程度、好ましくは、20重量%〜50重量%程度の割合となるようにしてもよい。これにより、通気性(透湿性)を阻害することなく、後記する機能性粉粒体13が有する機能性を十分に発揮できる機能性繊維ボード16を製造できるとともに、上記植物性繊維11同士の接着性を高めることができる。
上記合成樹脂バインダーの割合が上記より小さくなれば、後記するように合成樹脂繊維12が溶融して硬化することによる上記植物性繊維11の連結固化が十分になされない傾向があり、植物性繊維11がばらけたり、表面硬度が低くなり、剥離が生じたりする傾向がある。また、上記合成樹脂バインダーの割合が上記より大きくなれば、植物性繊維11同士の接着性は高められるが、ボード自体の通気性(透湿性)が阻害される傾向があるとともに、後記する機能性粉粒体13を繊維間に捕捉させるための空隙も十分に確保され難くなる傾向がある。
【0024】
上記機能性繊維ボード16に採用される上記機能性粉粒体13としては、吸放湿性を有した調湿材や、消臭性を有した消臭剤、防虫性を有した防虫剤、抗菌性を有した抗菌剤、或いは触媒、または天然素材等が挙げられ、粒状、細片状、粒子状、微粒子状及び粉状のものなどどのようなものでもよい。
上記調湿材としては、例えば、木炭、竹炭などの炭類、タルク、ゼオライト、珪藻土、シリカゲル(好ましくはB型シリカゲル)、モンモリロナイト、セピオライトなどの粘土鉱物、アルミナ、シリカなどの無機物等が挙げられる。或いは、調湿材としては、粒子状の高分子吸放湿材(有機系ポリマー吸放湿材)としてもよい。この高分子吸放湿材は、可逆的な吸湿機能、放湿機能を有するもので、例えば、アクリル酸、メタクリル酸などを主成分として重合した重合体、アクリロニトリルを主成分とした重合体のニトリル基を加水分解させたものなどで架橋構造を有するアクリル系樹脂等が挙げられる。
【0025】
上記機能性粉粒体13の粒径は、2.0mm以下、好ましくは、500μm以下としてもよい。
本実施形態のように、ボード状の機能性繊維成形体を製造する場合においては、一般的に、2.0mm程度〜12mm程度の板厚とされており、上記機能性粉粒体13の粒径を、大きくすれば、局所的な密度差や厚み差等が生じ易くなる傾向があり、ボードの強度が低減することも考えられる。また、上記機能性粉粒体13の粒径を、大きくすれば、後記する気流分散工程2において、分散性が低減する傾向がある。
特に、上記機能性粉粒体13の粒径を、500μm以下のものとすれば、例えば、2.0mm〜5.0mm程度の比較的、板厚の薄いボードを製造する際にも、局所的な密度差や厚み差等が生じ難くなり、比較的、均質なボードを製造することができる。
尚、上記機能性粉粒体13の粒径としては、特に下限はないが、取扱い性やコスト的な観点から、10μm以上のものとしてもよい。また、上記各種の機能性粉粒体13は、一種あるいは二種以上を組み合わせて採用してもよい。
また、平均粒径の異なる機能性粉粒体13、例えば、比較的、粒子径の大きいシリカゲルと、微粉状の消臭剤や抗菌剤等を混合して採用するような態様としてもよい。
【0026】
次に、本実施形態に係る機能性繊維成形体の製造方法の一例について、図1〜図2に基づいて説明する。
<機能性粉粒体散布工程1>
この機能性粉粒体散布工程1では、図1に示すように、供給機20から供給された解繊混合綿10を、ベルトコンベア21aを介して搬送しながら、該解繊混合綿10に対して、その上方から機能性粉粒体13を、粉粒体散布機21によって散布する。
上記粉粒体散布機21は、上記解繊混合綿10に対して略定量の機能性粉粒体13が散布できるものとすることが好ましい。
このような粉粒体散布機21としては、例えば、振動フィーダやスクリューフィーダ等、公知の粉粒体の定量供給装置を適用するようにしてもよい。
【0027】
尚、上記機能性粉粒体13の散布量は、機能性繊維成形体の使用態様や、後記するように分散される解繊混合綿10の目付け等に応じて、適宜、設定可能であるが、後記するように加熱加圧して、ボード状に硬化させて成形した機能性繊維ボード16とする場合には、上記合成樹脂繊維12による植物性繊維11の連結固化を阻害することがないような散布量とすることが好ましい。例えば、50g/m〜1000g/m程度としてもよい。
【0028】
また、上記機能性粉粒体13を散布する前に、上記植物性繊維11を含む解繊混合綿10に対して、液体17を散布するようにしてもよい(液体散布工程)。この液体17を散布する液体散布機27としては、上記液体17を、霧状にして散布するスプレータイプの噴霧機としてもよい。
また、上記液体17は、水等の液体状のものであれば、どのようなものでもよい。或いは、水その他の溶媒に、粘着剤を溶解または分散させた粘着剤含有溶液17としてもよい。このような粘着剤含有溶液としては、アクリル系エマルション等の加熱前に粘着性があり、後記するように加熱により乾燥、硬化するものが好ましい。また、粘着剤含有溶液としては、その他、水性エマルションや、加工澱粉等を溶解させた澱粉溶液、水性糊の希釈液等としてもよい。
或いは、上記したような粘着剤含有溶液17に代えて、または加えて、調湿性を向上させる(または付与する)ために、シリカゾル液を散布するようにしてもよい。
【0029】
上記液体17の散布量は、後記するように分散される解繊混合綿10の目付け等に応じて、適宜、設定可能であるが、少なくとも解繊混合綿10の上面に露出する各繊維11,12の表面が十分に濡れる程度の量としてもよく、また、後記する加熱圧締工程3において乾燥、硬化する程度の量としてもよい。例えば、5g/尺角(45g/m)程度〜40g/尺角(360g/m)程度としてもよい。
上記のように、液体17を、機能性粉粒体13を散布する前に、植物性繊維11(本実施形態では、合成樹脂繊維12も含む)に散布して、表面を濡らした状態とすることで、散布される機能性粉粒体13が各繊維11,12に付着し易くなる。従って、後記する各工程を実行する際や搬送時における振動等に起因する該機能性粉粒体13の抜け落ちや飛散を防止することができる。
【0030】
<気流分散工程2>
次いで、上記のように機能性粉粒体13が散布された解繊混合綿10を、気流分散装置22に導入する。この気流分散装置22は、大略的に、繊維分散機22aと、気流発生マット形成部とを備えている。該気流発生マット形成部は、ブロアやファン等からなる一対の送風機22b,22bと、その下流側(繊維分散機22aの下方)に設けられたメッシュ状コンベア22cと、該メッシュ状コンベア22cの下方に配されたブロア等の吸引機(不図示)を有した吸引ライン22dとを有している。
上記繊維分散機22aでは、上記のように機能性粉粒体13が散布された解繊混合綿10を、多数の掻き取り刃が周面に設けられたローラ体を回転させることで、上記植物性繊維11、上記合成樹脂繊維12及び機能性粉粒体13を吹き飛ばすようにして分散させて落下供給する。
【0031】
上記のように、分散されて落下供給される上記植物性繊維11、上記合成樹脂繊維12及び機能性粉粒体13は、上記気流発生マット形成部において、気流作用によって混合されながら堆積、積層されてマット状に形成される。すなわち、上記繊維分散機22aによって分散されて落下供給される上記植物性繊維11、上記合成樹脂繊維12及び機能性粉粒体13は、上記一対の送風機22b,22bの間に導入される。上記繊維分散機22aの下流側には、これら一対の送風機22b,22bによる送風作用と、下方の吸引ライン22dによる吸引作用とによって、略水平方向内側向き及び下方向きの気流が生じる。この気流によって、上記植物性繊維11、上記合成樹脂繊維12及び機能性粉粒体13が混合されながら、上記メッシュ状コンベア22cに堆積、積層されることで、マット状中間成形体14が形成される。この際、形成されたマット状中間成形体14に厚みムラ等ができないように、幅方向(コンベア搬送方向に直交する方向)に均一となるように上記気流を発生させるようにしている。
このように、上記気流による混合と堆積とがなされることによって、該マット状中間成形体14の内部には、上記機能性粉粒体13が上記各繊維11,12間に捕捉されるようにして適度に、ほぼ均一に分散して含有された状態となる。
【0032】
尚、上記マット状中間成形体14に含まれる各繊維11,12の目付けは、本製造工程において製造される機能性繊維ボード16(図2参照)の密度や厚み等に応じて適宜、設定可能である。
また、上記吸引ライン22dの吸引によって、上記メッシュ状コンベア22cを通過した少量の機能性粉粒体13及び上記各繊維11,12を、循環ライン22eを介して、上記ベルトコンベア21aに、循環供給するようにしてもよい。
或いは、上記吸引ライン22dの吸引によって、上記メッシュ状コンベア22cを通過した少量の機能性粉粒体13及び上記各繊維11,12を、集塵フィルタ(集塵サイクロン)等で集塵した後、振動ふるい等を用いたり、または分級機等を用いたりして、機能性粉粒体13と、各繊維11,12とを分離させて、これらをそれぞれ再利用するようにしてもよい。
本実施形態では、上記のように、気流作用によってマット状中間成形体14を形成するようにしているので、上記のような製造ロス分を、容易に循環供給したり、再利用したりすることができる。
【0033】
<加熱圧締工程3>
上記のように、内部に機能性粉粒体13を適度に分散させて含有させたマット状中間成形体14を、メインコンベア28によって搬送しながら、図2に示すように、加熱圧締機23に導入する。この加熱圧締機23では、上記合成樹脂繊維12を溶融させて、植物性繊維11同士を連結固化させる。この加熱圧締機23は、上記マット状中間成形体14を、ある程度の保形性のあるものとするために、予備的に比較的、低圧で圧締し得るとともに、加熱して上記合成樹脂繊維12を溶融し得るものであれば、どのようなものでもよい。
<通気冷却工程4>
上記加熱圧締機23において加熱圧締されて該加熱圧締機23から導出されたマット状中間成形体14を、メッシュ状コンベア24aを搬送させながら、下方からブロア等の吸引機(不図示)を配した吸引手段24によって吸引することで、該マット状中間成形体14に、常温の空気を通気させて冷却する。これにより、上記のように溶融した合成樹脂繊維12が硬化し、機能性繊維マット15が形成される。この状態では、持ち運び可能な程度まで硬化した状態となる。
<予備切断工程5>
上記のようにある程度、硬化した機能性繊維マット15を、後記する熱プレス工程6の熱プレス機26への導入が可能な程度の形状とするために、裁断機25によって所定の大きさに裁断する。
【0034】
<熱プレス(加熱加圧)工程6>
次いで、上記機能性繊維マット15を、一対のプレス板を備えた熱プレス機(ホットプレス機)26に導入して、熱プレス(加熱加圧)を行う。この熱プレス時の条件、すなわち、プレス圧、プレス時間、及びプレス型面温度は、上記機能性繊維マット15に含まれる各繊維11,12の目付けや、成形後の機能性繊維ボード16の密度や板厚、上記合成樹脂バインダーの種類(溶融温度、硬化温度等)や含有量等により適宜、設定可能である。
また、上記熱プレス時に、成形後の機能性繊維ボード16の密度が、500kg/m以上、1200kg/m以下となるように熱プレスをするようにしてもよい。これにより、成形後の機能性繊維ボード16の強度を高められるとともに、その通気性を阻害するようなことがないので、含有された機能性粉粒体13の機能性を十分に発揮できる機能性繊維ボード16を製造できる。
【0035】
上記機能性繊維ボード16の密度が500kg/m未満であると、機能性繊維ボード16の表面硬度や強度等が低下する傾向があるとともに、釘や木ネジ等の保持力が低下する傾向がある。また、上記機能性繊維ボード16の密度が1200kg/m超であると、機能性繊維ボード16の通気性が低くなる傾向がある。
上記のように熱プレスをした後、脱型し、適宜、所定の大きさに裁断して、上記機能性繊維ボード16の製造がなされる。このように成形された機能性繊維ボード16は、上記のように合成樹脂繊維12によって連結固化された植物性繊維11の絡み合いによって通気性のある多孔質(マトリクス)状態となり、また、その絡み合った植物性繊維11間に、上記のように機能性粉粒体13が適度に分散され、捕捉されて含有された機能性繊維ボード16となる。
【0036】
以上のように、本実施形態に係る機能性繊維成形体の製造方法によれば、気流を発生させることで、上記植物性繊維11、合成樹脂繊維12及び機能性粉粒体13を混合し、その混合した状態で堆積させることで、該機能性粉粒体13を内部に分散させて含有させることができるので、簡易な方法で適度に機能性粉粒体13を分散させて含有させることができ、また、乾式の製造方法で機能性繊維ボード16を製造することができる。
さらに、本実施形態では、上記機能性粉粒体13の散布を、上記植物性繊維11にバインダーとなる合成樹脂繊維12を添加して解繊した綿状の解繊混合綿10に対して行うようにしているので、比較的、直線性の強い植物性繊維11を、合成樹脂繊維12を添加して解繊することで、植物性繊維11を絡み易い状態にできる。この結果、上記のように気流を発生させることで、内部に分散して含有される機能性粉粒体13を、植物性繊維11間に捕捉させ易くなり、該機能性粉粒体13が後の工程において抜け落ちたり、飛散したりすることを低減できる。
さらにまた、上記のように、機能性粉粒体13を、内部に適度に分散させて含有させることができるので、加熱加圧して機能性繊維ボード16を形成した場合に、該機能性繊維ボード16の厚み内や面域方向において、局所的な密度差や厚み差等が生じ難く、比較的、均質なボード16を製造することができる。
【0037】
尚、上記各工程では、中間成形物を、メインコンベア28等の各コンベア及び各機器によって搬送しながら連続的に処理、成形する態様を例示しているが、例えば、静止状態とされた各中間成形物に対して、各機器を移動させて各工程を実行するような態様としてもよい。この場合は、順次、次の工程に向けてコンベアまたはその他の移送手段によって搬送または移送させるようにしてもよい。
また、上記気流分散工程2において、植物性繊維11に合成樹脂繊維12を混合した解繊混合綿10と機能性粉粒体13とを分散、堆積させてマット状中間成形体14を形成する態様、すなわち、バインダーを合成樹脂繊維12とする態様に代えて、または加えて、上述の粉状のバインダーを植物性繊維11に添加、混合するようにしてもよい。この場合は、上記機能性粉粒体13に粉状のバインダーを予め添加しておき、機能性粉粒体散布工程1において、機能性粉粒体13とともに粉状バインダーを散布するような態様としてもよい。このような態様によっても、その後の気流分散工程2において、植物性繊維11と混合されながら堆積、積層されることで、粉状バインダー及び機能性粉粒体13が内部に適度に分散して含有されたマット状中間成形体14を形成することができる。
或いは、上記のような合成樹脂バインダーを含有させずに、例えば、常温プレスによって機能性繊維ボード16を製造するような態様としてもよい。
【0038】
さらに、本実施形態では、上記気流分散工程2において、一対の送風機22b,22bによって、略水平方向内側向きの送風気流を発生させて、上記各繊維11,12及び機能性粉粒体13を混合しながら、下方の吸引ライン22dによって生じた吸引気流による吸引作用によって、これらを混合した状態で堆積、積層する態様を例示しているが、このような態様に限られない。例えば、下方の吸引ライン22dを設けずに、一対の送風機22b,22bによって、略水平方向内側向きの送風気流を発生させて、上記各繊維11,12及び機能性粉粒体13を混合した後、自重落下により堆積、積層させて上記マット状中間成形体14を形成するような態様としてもよい。
さらにまた、本実施形態では、上記気流分散工程2において、繊維分散機22aによって、上記機能性粉粒体13が散布された解繊混合綿10を分散させる態様を例示しているが、このような態様に限られない。例えば、予め繊維片状に分散させた植物性繊維11及び合成樹脂繊維12に対して、機能性粉粒体13を散布した後、または機能性粉粒体13を散布しながら、上記気流発生マット形成部に、これらを落下供給するような態様としてもよい。
【0039】
また、上記のように解繊混合綿10を気流分散工程2において、分散、堆積させて上記マット状中間成形体14を形成した後、上記加熱圧締工程3の前に、該マット状中間成形体14をニードルパンチ機に導入してニードルパンチング処理を施すようにしてもよい。これにより、該マット状中間成形体14に含まれる各繊維11,12同士をより絡み合わせる(交絡させる)ことができ、成形後の機能性繊維成形体の強度を向上させることができる。尚、このようにニードルパンチング処理を施す場合には、内部に分散して含有された機能性粉粒体13が抜け落ちたり、飛散したりし易くなることが考えられるので、上記液体散布工程を実行するようにしてもよい。これにより、各繊維11,12に対する機能性粉粒体13の付着性が高められるので、ニードルパンチング処理のような激しい振動が加えられた場合にも、該機能性粉粒体13の抜け落ちや飛散等を効果的に低減することができる。
【0040】
さらに、本実施形態では、上記のように機能性繊維マット15を形成した後、加熱加圧することで、ボード状に成形するようにした態様を例示しているが、例えば、ボード状のものに限られず、凹凸や曲面などのある非ボード状の成形体を製造するようにしてもよい。
さらにまた、加熱加圧せずに、例えば、比較的、密度の低いマット状の成形体、すなわち、上記機能性繊維マット15を機能性繊維成形体として把握するようにしてもよい。
また、本実施形態では、加熱圧締工程3及び通気冷却工程4を経た機能性繊維マット15を予備切断工程5において裁断して、熱プレス機26に導入し、加熱加圧する態様を例示しているが、これら加熱圧締工程3、通気冷却工程4及び予備切断工程5を介さずに、例えば、上記マット状中間成形体14を、加熱加圧ローラに導入し、該加熱加圧ローラによって、連続的に加熱加圧工程を実行するような態様としてもよい。
【0041】
次に、本実施形態に係る機能性繊維成形体の製造方法を用いて製造された機能性繊維成形体の実施例の一例と、比較例とを評価試験の結果とともに、図3に基づいて説明する。
尚、図3に示す各例では、植物性繊維11として、ジュートを採用し、合成樹脂繊維12として、鞘部分の溶融温度が110℃の芯鞘構造のポリエステル繊維を採用し、これらをそれぞれ50重量%づつ配合した上記解繊混合綿10を使用した。
また、図3に示す各例では、機能性粉粒体13として、調湿材としてのB型シリカゲルを採用し、平均粒径が30μmのものを使用した。
また、図3に示す各例では、上記加熱加圧工程10におけるプレス条件を、プレス型間(スペーサー(ディスタンスバー)厚)が2.5mm、プレス温度が150℃、プレス圧が25kg/cm(約2.45MPa)、プレス時間が180秒として設定し、成形後のボードの比重が0.65程度、厚さが2.5mmとなるように設定した。
【0042】
(実施例1)
上記解繊混合綿10に対して、上記シリカゲルを200g/m程度の散布量で上記機能性粉粒体散布工程1を実行し、次いで、上記気流分散工程2を実行し、上記繊維11,12全体の目付けが1500g/m程度となるように、上記マット状中間成形体14を形成した後、上記各工程3〜6を経て、実施例1に係るボードを得た。
(実施例2)
上記実施例1の工程に加えて、上記機能性粉粒体散布工程1の前に、上記液体散布工程を実行した。該液体散布工程においては、上記液体散布機27による液体(水)17の散布量を、150g/m程度の散布量とした。
【0043】
(比較例1)
上記解繊混合綿10を、上記繊維分散機22aのみによって、すなわち、上記気流発生マット形成部の気流発生を生じさせない状態で、分散、堆積させて、目付けが1500g/m程度となるように、マット体とし、このマット体を、厚み方向に2分割して、その上下のマット体層の間に、上記シリカゲルを挟みこむように散布した。該シリカゲルは、散布量が200g/m程度となるように略均一に散布した。
次いで、このシリカゲルを挟みこんだマット体に対して、上記各工程3〜6を実行し、比較例1に係るボードを得た。
【0044】
上記実施例1及び実施例2、並びに比較例1のボードに対して、以下の評価試験を行った。
(評価試験)1)粉粒体歩留まり測定試験
上記実施例1及び実施例2におけるボードの製造ラインにおいて、それぞれ散布したシリカゲルの散布量に対するシリカゲルの回収量(抜け落ちや飛散等により落下したシリカゲルの回収量)の割合を、各製造ラインにおけるロス率として算出し、このロス率から粉粒体歩留まり率をそれぞれ算出した。
結果は、図3の表に示す通りである。
実施例2については、上述のように、液体散布工程を実行して、水を散布したので、シリカゲル同士及び各繊維に対するシリカゲルの付着性が向上し、シリカゲルの回収量が少なくなり(すなわち、シリカゲルの抜け落ちや飛散量が少なくなり)、実施例1の歩留まり率(70%)を大きく上回る歩留まり率(82%)となった。
一方、実施例1においても、上記気流分散工程2において、シリカゲルがほぼ均一に内部に分散して含有された結果、各繊維11,12間に捕捉されて、搬送時における抜け落ちや飛散等はそれほど認められず、概ね良好な結果となった。
尚、比較例1については、マット体の上下層の間に、シリカゲルを挟みこむ態様としているので、シリカゲルの抜け落ちや飛散等は、ほぼ認められなかったため、当該粉粒体歩留まり測定試験については省略した。
【0045】
(評価試験)2)重量バラつき測定試験(均等性)
上記実施例1及び実施例2、並びに比較例1の各ボードを、小面積の試験片に裁断し、各試験片の重量を測定し、1平方メートル当りの重量差を、重量バラつきとして算出した。
結果は、図3の表に示す通りである。
実施例1及び実施例2については、上述のように、それぞれ気流分散工程2において、機能性粉粒体13がほぼ均一に分散されて含有されているので、成形されたボードの平面域方向において重量バラつきが比較的、小さくなり、良好な結果となった。
一方、比較例1については、上記のように、マット体の上下層の間に、シリカゲルを挟みこむ態様としているので、成形されたボードの平面域方向において局所的な密度差が発生したことが考えられ、重量バラつきが比較的、大きくなる結果となった。
【0046】
(評価試験)3)剥離強度試験
上記実施例1及び実施例2、並びに比較例1のボードから得られた各試験体に対して、JIS A5905(繊維板)に規定された方法に従って、剥離強度試験を行った。
結果は、図3の表に示す通りであり、実施例1及び実施例2については、いずれも建築材料として一般的なMDF(Medium Density Fiberboard(中密度繊維板))の品質としてJIS規格で定められた剥離強さの基準値である0.3MPa以上となった。
一方、比較例1については、上記のように、マット体の上下層の間に、シリカゲルを挟みこむ態様としているので、厚み内において物性が不均一となったことが考えられ、剥離強度が比較的、小さくなる結果となった。
【0047】
以上のように、本実施形態に係る機能性繊維成形体の製造方法によれば、簡易な方法によって、成形したボードの均等性を向上させることができるとともに、機能性粉粒体13を適度に分散させて内部に含有させることができるので、ボードの平面域方向及び厚み方向における均質性が向上され、強度を向上させることができた。
また、上記実施例2のように、液体散布工程を実行することで、製造ラインにおける機能性粉粒体13の抜け落ちや飛散等を効果的に低減することができ、簡易な方法によって機能性粉粒体13の歩留まりを向上することができた。
尚、上記実施例1及び実施例2は、それぞれ本実施形態に係る機能性繊維成形体の製造方法の一例を用いて製造した例を示しており、本実施形態に係る機能性繊維成形体の製造方法は、上述のように、種々の態様が可能であり、これらの例に限られるものではない。
【符号の説明】
【0048】
10 解繊混合綿
11 植物性繊維
12 合成樹脂繊維
13 機能性粉粒体
15 機能性繊維マット(機能性繊維成形体)
16 機能性繊維ボード(機能性繊維成形体)
17 液体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物性繊維を主材料とし、機能性粉粒体を含有した機能性繊維成形体を製造する方法であって、
前記植物性繊維に、前記機能性粉粒体を散布して、これら植物性繊維及び機能性粉粒体を分散させながら、気流を発生させることで、これらを混合し、その混合した状態で堆積させることで、該機能性粉粒体を内部に分散させて含有させた後、成形して機能性繊維成形体を製造することを特徴とする機能性繊維成形体の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記機能性粉粒体の散布は、前記植物性繊維にバインダーとなる合成樹脂繊維を添加して解繊した綿状の解繊混合綿に対して行うことを特徴とする機能性繊維成形体の製造方法。
【請求項3】
請求項2において、
前記機能性粉粒体を内部に分散させて含有させた後、加熱加圧してボード状に硬化させて成形することを特徴とする機能性繊維成形体の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項において、
前記機能性粉粒体を散布する前に、前記植物性繊維に液体を散布し、該植物性繊維の表面を濡らした状態で、該機能性粉粒体を散布することを特徴とする機能性繊維成形体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−228176(P2010−228176A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−76123(P2009−76123)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】