説明

機能性膜の製造方法

【課題】ダミー領域、バンク等の新たな部材を必要とせず、膜厚及び膜形状が均一な機能性膜を同一基板内に複数個、同時に製造する方法を提供する。
【解決手段】基板1上に、機能性膜2の形成材料を含む第1の液体3を付与し、乾燥させて機能性膜前駆体4を形成し、次いで、第1の液体3の溶媒成分を含む第2の液体5を機能性膜前駆体4上に付与して該機能性膜前駆体4を溶解させ、再乾燥させて膜形状を変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所望の機能を発現する機能性膜を同一基板内の複数個所に同じ形状で製造する製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板上に機能性膜を形成する機能性膜の形成方法には、蒸着法やスパッタ法を用い、機能性膜の形成材料を加熱により蒸発させ基板上に成膜する手法や、スピンコート法を用いて基板上に成膜する手法が一般的に知られている。また、この他にもスクリーン印刷やオフセット印刷等の印刷方法を用いて基板上に成膜する手法、インクジェット方式を用いた成膜方法も知られている。中でもインクジェット法によれば、直接基板上に任意のパターンを形成できるため、製造装置の簡略化、ランニングコストの低減等の観点から有力な手法とされており、機能性膜の製造方法として有望視されている。
【0003】
しかしながら、インクジェット法を用い、基板上に吐出、塗布された液滴は、表面張力や雰囲気の温度、湿度の影響を受け、乾燥後の機能性膜の断面形状、周縁部の形状にバラツキを生じる場合がある。そのため、インクジェット法により基板内に複数個の機能性膜を製造する場合、図4に示すように、基板内の機能性膜の形成領域によって膜形状にばらつきが発生する。即ち、図4(a)に示すように、基板1上に複数の機能性膜2を形成した場合、基板中央部41、中間部42、端部43において機能性膜2の断面形状が図4(b)に示すように、凸型(A)、凹型(B)、高さの差が大きい凹型(C)のように異なってしまう。つまり、機能性膜2の形成領域によって断面形状が異なる上、機能性膜2内における膜厚むらも大きい。
【0004】
特許文献1には、基板上のバンクで画される塗布領域に、膜の形成材料を溶媒または分散液に溶解または分散させた第1の液状体を液滴吐出ヘッドで塗布し、さらに、該第1の液状体の上に第2の液状体を付与する方法が開示されている。係る方法では、第2の液状体を付与して第1の液状体中の膜形成材料を沈降させる第2の工程を経ることで、平坦で均一な厚さの膜を形成する。しかしながら、この手法では、基板上に予め液状体を保持するための、隔壁またはバンクが必要となり、隔壁、バンクが必要のないパターンには対応できなかった。
【0005】
そこで、特許文献2には、インクジェット法を用いた有機ELの製造方法において、表示画素領域の周囲に、表示画素と同じダミー画素を設けた方法が開示されている。係る方法は、周囲にダミー画素を設けることで、表示画素領域内における、膜の形成材料を含むインクの吐出、塗布、乾燥時の雰囲気(温度、湿度)を一様にし、膜形状を均一にするものである。しかしこの手法では、基板上にダミー領域を設けるための領域が必要であり、膜の形成材料も余分に必要であり、より効率的な製造方法が望まれている。
【0006】
【特許文献1】特開2005−285616号公報
【特許文献2】特開2005−259719号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ダミー領域、バンク等の新たな部材を必要とせず、膜厚及び膜形状が均一な機能性膜を同一基板内に複数個、同時に製造する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1は、基板上に複数の機能性膜を製造する方法であって、
機能性膜の形成材料を含む第1の液体を基板上に複数個所付与し、乾燥させて複数の機能性膜前駆体を形成する工程と、
少なくとも一部の機能性膜前駆体に、該機能性膜前駆体を溶解させる第2の液体を付与する工程と、
前記第2の液体が付与された機能性膜前駆体を乾燥させる再乾燥工程とを有することを特徴とする機能性膜の製造方法である。
【0009】
上記本発明の機能性膜の製造方法においては、下記の構成を好ましい態様として含む。
前記第2の液体は、第1の液体に含まれる溶媒成分を少なくとも一種含んでいる。
前記第2の液体は、純水、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、メタノール、エチルアルコールのうちの少なくとも一種を含んでいる。
前記第1の液体の付与は、インクジェット法により行われる。
前記第1の液体及び前記第2の液体の付与は、インクジェット法により行われる。
前記第2の液体の付与に先立って、機能性膜前駆体の膜形状を計測し、その結果に基づいて第2の液体を付与する機能性膜前駆体を決定する。
前記機能性膜前駆体の膜形状の計測結果に基づいて、第2の液体を付与する機能性膜前駆体毎に、第2の液体の付与量を制御する。
前記機能性膜前駆体の膜形状の計測結果に基づいて、第2の液体を付与する機能性膜前駆体毎に、第2の液体の成分を制御する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、各機能性膜内における膜厚むらを解消すると同時に、機能性膜の形成領域毎の膜の断面形状の差を解消することができ、基板内の機能性膜の膜形状を均一化させることが可能となる。
【0011】
本発明においては、膜形状の変化(修正)が必要な機能性膜前駆体のみを選択して第2の液体を付与することができる。よって、第2の液体が必要最小限の量ですむため、効率よく機能性膜を製造することができる。また、機能性膜前駆体の再乾燥工程における乾燥速度を制御し、より効率よく膜形状を変化させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の製造方法によって形成される機能性膜とは、熱、電気、光等の何らかのエネルギー入力によって、所望の機能を発現する膜である。具体的には、例えば、表面伝導型電子放出素子の電極や電子放出膜(素子膜)、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光層などが好ましく挙げられる。また、各種表示装置に搭載されるカラーフィルタや配線材料、絶縁層、有機半導体などにも本発明は好ましく適用される。
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態を例示的に詳しく説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、その相対配置などは、特に特定な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態の機能性膜の製造工程示す断面模式図である。
【0015】
先ず、基板1を用意する〔図1(a)〕。製造する機能性膜2が表面伝導型電子放出素子の電子放出膜や電極である場合には、基板1は、石英ガラス、Na等の不純物含有量を低減させたガラス、青板ガラス、SiO2を表面に堆積させたガラス基板、アルミナ等のセラミックス基板等を用いることができる。
【0016】
基板1上に機能性膜2の形成材料を含む第1の液体3を付与する〔図1(b)〕。機能性膜2が電子放出素子の電子放出膜である導電性膜を構成する材料は、Pd、Pt、Ru、Ag、Au、Ti、Cr、Ta等の金属、PdO、SnO2、PbO、等の酸化物であり、抵抗値や必要な機能によって材料を選択する必要がある。尚、機能性膜2の形成材料としてはこれらに限定されるものではない。第1の液体3は、機能性膜2の形成材料を溶解或いは分散させる溶媒に該形成材料を溶解、分散させて調整する。係る溶媒としては、純水、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、メタノール、エタノールが好ましく用いられる。また、機能性膜の形成材料の分散を容易にさせるため、該形成材料表面をコーティングする方法や、錯体等を溶解する方法も可能である。
【0017】
第1の液体3を付与する方法としては、特に限定されないが、インクジェット法を用いることが好ましい。
【0018】
図2に、本発明に用いられるインクジェット装置の一例を模式的に示す。図2において、X軸駆動ステージ18、Y軸駆動ステージ19上の基板1の上方に吐出用のインクジェット(IJ)ヘッド10が設置されており、該IJヘッド10に設けられた吐出ノズルから、第1の液体3を液滴状態で吐出し、基板1上に付着させる。尚、液滴塗布に使用する吐出ノズルは1つでも複数でも可能である。IJヘッド10及びX,Y軸駆動ステージ18、19には、ヘッド駆動制御系12、ステージ駆動制御系13が設けられており、ステージ18、19に設けられた位置検出機構及びステージ駆動機構と連動して液滴を吐出する。これにより、基板1上の目的位置に液滴を付着させることが出来る。
【0019】
基板1上に付与される第1の液体3のパターンは、任意であり、円形、正方形、直線パターン等あるが、パターンはいずれであっても良い。また、基板全面にパターンを形成しても良いし、一部に形成しても良い。この時、基板上のパターンを形成する領域を決定できれば良く、必ずしも所望する膜厚パターンでなくても良い。さらには各パターンの膜厚にばらつきがあっても良い。
【0020】
基板1上に付与された第1の液体3は乾燥処理が施され、機能性膜前駆体4が形成される〔図1(c)〕。
【0021】
必要に応じて、機能性膜前駆体4の膜形状を計測する。機能性膜前駆体4の膜形状の計測方法としては、光干渉式膜厚計、レーザー膜厚計等の光学式の計測手法を用いるのが好ましいが、接触式の膜厚計でも良く、計測手法はこれに限定されるものではない。
【0022】
次に、機能性膜前駆体4の膜形状を変化させるため、第2の液体5を付与し、機能性膜前駆体4を溶解させる〔図1(e)〕。第2の液体5は、機能性膜前駆体4を溶解させうるものであり、好ましくは第1の液体3の溶媒成分を少なくとも一種含んでいる。よって、純水、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、メタノール、エタノールのうちの少なくとも一種が好ましく用いられる。尚、機能性膜前駆体4を溶解させるとは、当該機能性膜前駆体4を完全に溶解させる場合と、その一部、例えばその表面のみを溶解させる場合とを含む。また、第2の液体5を付与する方法としては、特に限定されないが、インクジェット法を用いることが好ましい。
【0023】
ここで、先に機能性膜前駆体4の膜形状を計測した場合には、計測結果に基づいて、膜形状の変化が必要な機能性膜前駆体4のみを選択して第2の液体5を付与する。また、第2の液体5を付与する機能性膜前駆体4の膜形状に応じて、第2の液体5の付与量や成分を制御することにより、溶解した機能性膜前駆体6の乾燥時間を制御することが可能となる。その結果、均一な膜形状を形成するための乾燥パラメーターを制御することが可能となる。
【0024】
液滴乾燥において、一般に、その乾燥の初期段階では、液滴の縁で溶媒が急速に蒸発し、固形分濃度が上昇する傾向がある。この時、液滴の縁における固形分濃度が飽和濃度に達すると、その縁において固形分が局所的に析出し、その析出した固形分によって液滴の縁が固定され、乾燥に伴う液滴の外形の収縮が抑制される。一旦液滴の縁が固定されると、液滴の中央部と縁では縁の方が液体の蒸発速度が高くなるため、液滴内には液滴の中央部から縁に向かう流れができ、溶質成分は液滴縁部において固化される。また、乾燥しやすい溶媒を用いると、液滴の中央部と縁での蒸発速度の差が大きくなり、液滴内には液滴の中央部から縁に向かう流れが早くなり、液滴の縁において膜厚が厚くなり易くなる。逆に乾燥しにくい溶媒を用いると、上記効果が得られなくなる。また、第2の液体5は成分の数が少ない方が、乾燥制御が容易となる。
【0025】
また、第2の液体5の付与量を制御することで、溶解した機能性膜前駆体6の溶媒成分と溶質成分の成分比を制御することができ、この成分比によって基板1上の液滴の粘性係数を変化させることができる。即ち、液滴中央部から縁に向かう流れのスピードを制御することができる。
【0026】
第2の液体5により溶解させた機能性膜前駆体6を再び乾燥させ、必要に応じて焼成等の処理を施して機能性膜2を得る〔図1(f)〕。
【実施例】
【0027】
(実施例1)
機能性膜として、表面伝導型電子放出素子の電子放出膜(導電性膜)を形成した。
【0028】
(a)絶縁性の基板としてガラス基板を用い、洗浄後、120℃で乾燥させた。この基板上に、Pt膜により、電極幅500μm、電極間ギャップ20μmの一対の素子電極を形成し、各素子電極に各々配線を接続した。この配線としては、列方向配線と行方向配線とを層間絶縁層を介して交差配置したマトリクス配線とした。前記基板をアルカリ洗浄にて洗浄後、撥水処理剤を用いて表面処理を行った。その後、前記基板を、温度25℃、湿度50%に設定された恒温湿チャンバー内に置かれた基板ステージ上に吸着させ、液体付与位置の位置調整を行った。
【0029】
(b)IJヘッドに、第1の液体をインクとして注入した。第1の液体としては、純水80%、イソプロピルアルコール19%、パラジウム1%(重量比)の組成の液体を使用した。基板ステージをスキャンニングさせながら、位置検出機構及びインクジェット吐出制御・駆動機構により、基板上の素子電極間に液滴が着弾できる吐出タイミングで吐出信号を送って、液体を吐出させた。これにより、基板上の素子電極間に、ドット径が100μmであるパラジウムを含有する第1の液体を付与した。
【0030】
(c)第1の液体を基板上で常温乾燥させ、導電性膜前駆体を得た。基板上の導電性膜前駆体の膜厚を光干渉式膜厚計を用いて計測した。この時、膜厚の評価は、膜の端部から5μmの範囲を有効エリア外とし、残りの部分の平均膜厚を計算し、膜厚の対平均誤差を算出した。上記のようにして形成した導電性膜前駆体の有効エリアは90μmであり、平均膜厚は3μmであり、各導電性膜前駆体の膜厚のばらつきは3.0μm±20%であった。
【0031】
(d)IJヘッドに、第2の液体をインクとして注入した。第2の液体としては、純水80%、エチルアルコール20%(重量比)の組成の液体を使用した。基板ステージをスキャンニングさせながら、位置検出機構及びインクジェット吐出制御・駆動機構により、吐出ノズルに設計上の吐出タイミングで吐出信号を送って、液体を各々の導電性膜前駆体上に液滴量10plで1回ずつ吐出させた。これにより、導電性膜前駆体を第2の液体にて溶解させた。
【0032】
(e)その後、第2の液体を乾燥させ、膜厚が均一な導電性膜前駆体を得た。上記の工程を経た導電性膜前駆体の有効エリアは90μmであり、平均膜厚は3.0μmであり、各導電性膜前駆体の膜厚のばらつきは3.0μm±5%であった。
【0033】
その後、基板を350℃で30分間加熱し、酸化パラジウムからなる導電性膜を得た。さらに、水素を含む雰囲気中での導電性膜への通電、及び、有機化合物を含む雰囲気中での導電性膜への通電を経て、上記導電性膜に電子放出部を形成した。こうして作成された電子源基板に、フェースプレート及び支持枠等を組み合わせて表示パネルを作成し、更に、駆動回路を接続して画像表示装置を作成したところ、画像表示装置を歩留まりよく得ることができた。
【0034】
(実施例2)
実施例1(a)〜(c)と同様にして導電性膜前駆体を形成し、膜厚を計測した。その結果、有効エリアは90μmであり、平均膜厚は3.1μmであり、各導電性膜前駆体の膜厚のばらつきは3.1μm±20%であった。
【0035】
(d)第2の液体として純水を用い、実施例1の(d)と同様にして、各々の導電性膜前駆体上に液滴量10plで2回ずつ吐出させた。これにより、導電性膜前駆体を第2の液体にて溶解させた。
【0036】
(e)その後、第2の液体を乾燥させ、膜厚が均一な導電性膜前駆体を得た。上記の工程を経た導電性膜前駆体の有効エリアは90μmであり、平均膜厚は3.1μmであり、各導電性膜前駆体の膜厚のばらつきは3.1μm±5%であった。
【0037】
その後、基板を350℃で30分間加熱し、酸化パラジウムからなる導電性膜を得た。さらに、水素を含む雰囲気中での導電性膜への通電、及び、有機化合物を含む雰囲気中での導電性膜への通電を経て、上記導電性膜に電子放出部を形成した。こうして作成された電子源基板に、フェースプレート及び支持枠等を組み合わせて表示パネルを作成し、更に、駆動回路を接続して画像表示装置を作成したところ、画像表示装置を歩留まりよく得ることができた。
【0038】
(実施例3)
実施例1の(a)と同様にして、基板上に素子電極と配線を形成した。
【0039】
(b)第1の液体として、純水80%、イソプロピルアルコール15%、エチレングリコール4%、パラジウム1%(重量比)の組成の液体を使用する以外は実施例1の(b)と同様にして第1の液体を基板上の素子電極間に付与した。
【0040】
(c)第1の液体を基板上で常温乾燥させ、導電性膜前駆体を得た。基板上の導電性膜前駆体の膜厚を光干渉式膜厚計を用いて計測した。その結果、導電性膜前駆体の有効エリアは90μmであり、平均膜厚は3.0μmであり、各導電性膜前駆体の膜厚のばらつきは3.0μm±15%であった。
【0041】
(d)第2の液体として純水95%、エチレングリコール5%(重量比)の組成の液体を使用し、実施例1の(d)と同様にして、各々の導電性膜前駆体上に液滴量15plで1回ずつ吐出させた。これにより、導電性膜前駆体を第2の液体にて溶解させた。
【0042】
(e)その後、第2の液体を乾燥させ、膜厚が均一な導電性膜前駆体を得た。上記の工程を経た導電性膜前駆体の有効エリアは90μmであり、平均膜厚は3.0μmであり、各導電性膜前駆体の膜厚のばらつきは3.0μm±5%であった。
【0043】
その後、基板を350℃で30分間加熱し、酸化パラジウムからなる導電性膜を得た。さらに、水素を含む雰囲気中での導電性膜への通電、及び、有機化合物を含む雰囲気中での導電性膜への通電を経て、上記導電性膜に電子放出部を形成した。こうして作成された電子源基板に、フェースプレート及び支持枠等を組み合わせて表示パネルを作成し、更に、駆動回路を接続して画像表示装置を作成したところ、画像表示装置を歩留まりよく得ることができた。
【0044】
(実施例4)
実施例3(a)〜(c)と同様にして導電性膜前駆体を形成し、膜厚を計測した。その結果、有効エリアは90μmであり、平均膜厚は3.0μmであり、各導電性膜前駆体の膜厚のばらつきは基板中央部では3.0μm±10%であり、基板中央部と端部との中間部では3.0μm±12%であり、基板端部では3.0μm±15%であった。
【0045】
(d)第2の液体として、純水95%、エチレングリコール5%(重量比)の組成の液体を使用し、実施例1と同様にして、導電性膜前駆体に第2の液体を付与した。但し、基板中央部の導電性膜前駆体上には10plずつ、基板端部の導電性膜前駆体上には15plずつ、基板中央と端部の中間部の導電性膜前駆体上には12.5plずつ吐出させた。吐出の方法として、インクジェットヘッドの駆動電圧を制御することにより吐出する液滴量を制御した。これにより、導電性膜前駆体を第2の液体にて溶解させた。
【0046】
(e)その後、第2の液体を乾燥させ、膜厚が均一な導電性膜前駆体を得た。上記の工程を経た導電性膜前駆体の有効エリアは90μmであり、平均膜厚は3.0μmであり、各導電性膜前駆体の膜のばらつきはいずれの領域も3.0μm±5%であった。
【0047】
その後、基板を350℃で30分間加熱し、酸化パラジウムからなる導電性膜を得た。さらに、水素を含む雰囲気中での導電性膜への通電、及び、有機化合物を含む雰囲気中での導電性膜への通電を経て、上記導電性膜に電子放出部を形成した。こうして作成された電子源基板に、フェースプレート及び支持枠等を組み合わせて表示パネルを作成し、更に、駆動回路を接続して画像表示装置を作成したところ、画像表示装置を歩留まりよく得ることができた。
【0048】
(実施例5)
実施例3(a)〜(c)と同様にして導電性膜前駆体を形成し、膜厚を計測した。その結果、導電性膜前駆体の有効エリアは90μmであり、平均膜厚は3.0μmであり、各導電性膜前駆体の膜厚のばらつきは3.0μm±15%であった。
【0049】
(d)第2の液体として、導電性膜前駆体の形成領域毎に組成を変えたものを用い、実施例1と同様にして、各導電性膜前駆体上に液適量が10plで1回ずつ吐出した。第2の液体の組成は重量比で、基板中央部の導電性膜前駆体には純水95%、エチレングリコール5%、基板端部の導電性膜前駆体には純水85%、エチレングリコール15%、基板中央と端部の中間部においては、純水90%、エチレングリコール10%とした。これにより、導電性膜前駆体を第2の液体にて溶解させた。
【0050】
(e)その後、第2の液体を乾燥させ、膜厚が均一な導電性膜前駆体を得た。上記の工程を経た導電性膜前駆体の有効エリアは90μmであり、平均膜厚は3.0μmであり、各導電性膜前駆体の膜厚のばらつきは3.0μm±5%であった。
【0051】
その後、基板を350℃で30分間加熱し、酸化パラジウムからなる導電性膜を得た。さらに、水素を含む雰囲気中での導電性膜への通電、及び、有機化合物を含む雰囲気中での導電性膜への通電を経て、上記導電性膜に電子放出部を形成した。こうして作成された電子源基板に、フェースプレート及び支持枠等を組み合わせて表示パネルを作成し、更に、駆動回路を接続して画像表示装置を作成したところ、画像表示装置を歩留まりよく得ることができた。
【0052】
(実施例6)
図3に示す工程に従って、機能性膜として有機EL表示体の正孔注入膜を製造した。
【0053】
(a)基板1としてガラス基板上にスパッタ法によりITOからなる第1電極29を形成した。次に、有機ELの各画素を形成する隔壁30をスクリーン印刷を用いて形成した〔図3(a)〕。その後、前記基板1を、温度25℃、湿度50%に設定された恒温湿チャンバー内に置かれた基板ステージ上に吸着させ、液体付与位置の位置調整を行った。
【0054】
(b)吐出ヘッド10に、第1の液体3をインクとして注入した。第1の液体3としては、正孔注入材料としてトリフェニルアミン6量体(TPA−6:分子量1461、融点277℃、Tg156℃)をトルエン、イソプロピルアルコールに溶解した液体を使用した。基板ステージをスキャンニングさせながら、位置検出機構及びインクジェット吐出制御・駆動機構により、各画素に液滴が着弾できる吐出タイミングで吐出信号を送って、液体を吐出させた。これにより、第1電極29上の各画素に、トリフェニルアミン6量体を含有する第1の液体3を付与した〔図3(b)〕。
【0055】
(c)第1の液体3を基板1上で常温乾燥させ、正孔注入膜前駆体34を得た〔図3(c)〕。基板上の正孔注入膜前駆体34を光学式膜厚計を用いて、各膜の膜厚を計測した。この際、膜厚の評価は、各画素の端部から5μmの範囲を有効エリア外とし、残りの部分の平均膜厚を計算し、膜厚の対平均誤差を算出した。上記のようにして形成した正孔注入膜前駆体34の有効エリアは90μm角であり、平均膜厚は1.2μmであり、各膜の膜厚のばらつきは1.2μm±25%であった。
【0056】
(d)IJヘッドに、第2の液体5として、メタノール5%、イソプロピルアルコール95%(重量比)の組成の液体をインクとして注入した。基板ステージをスキャンニングさせながら、位置検出機構及びインクジェット吐出制御・駆動機構により、吐出ノズルに設計上の吐出タイミングで吐出信号を送って、第2の液体5を各々の正孔注入膜前駆体(4)上に吐出させた。吐出量は、液滴量10plで1回ずつとした〔図3(d)〕。
【0057】
(e)正孔注入膜前駆体34を第2の液体5に溶解させ、液滴状態の正孔注入膜前駆体36を形成した〔図3(e)〕。
【0058】
(f)その後、第2の液体を乾燥させ、膜厚が均一な正孔注入膜32を得た〔図3(f)〕。上記の工程を経た正孔注入膜32の有効エリアは90μm角であり、平均膜厚は1.2μmであり、各正孔注入膜32の膜厚のばらつきは1.2μm±10%であった。
【0059】
次に、発光材料としてトリス(8−キノリノール)アルミニウム(アルミキノリン錯体)に代表される8−ヒドロキシキノリン金属錯体を物理蒸着法によって正孔注入膜32上に成膜し、発光層を形成した。さらに、第1電極29のパターンに対応する貫通孔を有するマスクを用い、電子注入層としてのAl−Liを物理蒸着法によって成膜し、続いてAl電極を物理蒸着法によって成膜した。最後に、封止缶によって、有効表示領域を封止し、有機EL表示体を得た。得られた有機EL表示体は、各画素の発光特性が均一であった。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の一実施形態の工程を模式的に示す図である。
【図2】本発明で用いられるインクジェット装置の一例を模式的に示す図である。
【図3】本発明の実施例6の工程を模式的に示す図である。
【図4】従来の機能性膜の製造方法における膜形状のむらを示す図である。
【符号の説明】
【0061】
1 基板
2 機能性膜
3 第1の液体
4 機能性膜前駆体
5 第2の液体
6 機能性膜前駆体
10 IJヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に複数の機能性膜を製造する方法であって、
機能性膜の形成材料を含む第1の液体を基板上に複数個所付与し、乾燥させて複数の機能性膜前駆体を形成する工程と、
少なくとも一部の機能性膜前駆体に、該機能性膜前駆体を溶解させる第2の液体を付与する工程と、
前記第2の液体が付与された機能性膜前駆体を乾燥させる再乾燥工程とを有することを特徴とする機能性膜の製造方法。
【請求項2】
前記第2の液体は、第1の液体に含まれる溶媒成分を少なくとも一種含んでいる請求項1に記載の機能性膜の製造方法。
【請求項3】
前記第2の液体は、純水、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、メタノール、エチルアルコールのうちの少なくとも一種を含んでいる請求項1又は2に記載の機能性膜の製造方法。
【請求項4】
前記第1の液体の付与は、インクジェット法により行われる請求項1乃至3のいずれかに記載の機能性膜の製造方法。
【請求項5】
前記第1の液体及び前記第2の液体の付与は、インクジェット法により行われる請求項1乃至3のいずれかに記載の機能性膜の製造方法。
【請求項6】
前記第2の液体の付与に先立って、機能性膜前駆体の膜形状を計測し、その結果に基づいて第2の液体を付与する機能性膜前駆体を決定する請求項1乃至5のいずれかに記載の機能性膜の製造方法。
【請求項7】
前記機能性膜前駆体の膜形状の計測結果に基づいて、第2の液体を付与する機能性膜前駆体毎に、第2の液体の付与量を制御する請求項6に記載の機能性膜の製造方法。
【請求項8】
前記機能性膜前駆体の膜形状の計測結果に基づいて、第2の液体を付与する機能性膜前駆体毎に、第2の液体の成分を制御する請求項6に記載の機能性膜の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−726(P2008−726A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−174873(P2006−174873)
【出願日】平成18年6月26日(2006.6.26)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】