説明

機能拡張可能な無線通信モジュール及び移動通信端末

【課題】特定の機能を有する外部媒体を挿入することによる機能の拡張が可能な無線通信モジュール及びそのような無線通信モジュールを利用した移動通信端末を提供する。
【解決手段】無線通信モジュールは本体装置とともに移動通信端末として動作し、本体装置インターフェースと接続可能な第1のインターフェース、第1のインターフェースの所定のデータ信号線を介して本体装置制御部との間でデータ信号を送受信するモジュール制御部、モジュール制御部との間でデータ信号を送受信し且つ第1のインターフェースを介して本体装置の音声符号化/復号化部との間で符号化された音声信号を送受信する無線通信回路、アンテナ、及び外部媒体接続用の第2のインターフェースを具備するスロットからなる。データ信号線を介したデータ信号の送受信方式はインターフェースの所定の信号線上の制御信号に応じて複数の方式から選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無線通信モジュール及び移動通信端末に関し、より詳細には、外部記憶媒体等、特定の機能を有する外部媒体を挿入することによる機能の拡張が可能な無線通信モジュール及びそのような無線通信モジュールを利用した移動通信端末に関する。
【背景技術】
【0002】
PHS(Personal Handyphone System)端末や携帯電話端末等、電話機能及び電子メール機能等を有する移動通信端末は世の中に広く一般に普及している。
【0003】
従来の移動通信端末においては、端末の各構成要素は一つの筐体内に一体的に組み込まれていた。すなわち、全ての端末が、アンテナ、送受信部、変復調部、音声用トランスコーダ等の無線通信要素を具備する必要があった。このような無線通信に関わる構成要素の開発は、端末メーカーの開発コスト増大及び開発期間長期化の要因となっていた。また、移動通信端末の性能試験を、開発した機器毎に行なう必要があった。また、端末用の各種ソフトウェアの開発技術を持つ反面、無線通信技術を有していないメーカーにとって、自社のオリジナルの移動通信端末を開発することは困難であった。
【0004】
また、同一のユーザが複数の移動通信端末を使用する場合、各端末が固有の電話番号を有している必要があった。従って、複数の端末を所有するユーザにとって、これらの端末の管理が煩雑となるという不都合が生じていた。このような問題点は、多種多様な形態や機能を有する多くの移動通信端末を自由に使用することを困難にしていた。
【0005】
また、移動通信端末のライフサイクル(ある機種の発売から新機種の発売までの日程)は早く、故障等に関わらず新機種を購入することが頻繁に行われている。そして、ユーザが新機種の端末を購入して契約を更新すると、当該ユーザはそれまで使用していた端末を使用できなくなるという問題があった。さらに、移動通信端末の機種変更の際には、それまで使用していた端末から電話番号を消去し、新しい端末に当該電話番号を再登録する作業が発生していた。
【0006】
さらに、データ通信専用のPHS通信端末と携帯情報端末(PDA)との接続において、従来の携帯電話同様に音声通信を行いたいというニーズも存在していた。
【0007】
これらの問題を解決すべく、出願人は、従来の移動通信端末内に組み込まれていた無線通信要素を別個の小型モジュールとして独立させた無線通信モジュールと、当該無線通信モジュールに対応した端末(以下、「ジャケット」又は「本体装置」という)の組み合わせからなる移動通信端末を既に提案している(例えば、特願2005−303392参照)。
【0008】
そのような移動通信端末1の構成の一例を図1に示す。移動通信端末1はPHS通信端末として動作するものである。移動通信端末1は、従来のPHS通信端末内に組み込まれていた無線通信要素を別個の小型モジュールとして独立させた無線通信モジュール100と、無線通信モジュール100に対応したインターフェースを有するジャケット(本体装置)200とからなる。無線通信モジュール100をジャケット200に設けられたスロットに挿入して当該インターフェースに接続することにより、両者は全体として移動通信端末1として機能する。無線通信モジュール100は、アンテナ102、アンテナ・スイッチ104、送信部106及び受信部108、変調部110及び復調部112、TDMA(時分割多元接続)符号化部114及びTDMA復号化部116、ADPCMトランスコーダ等の音声用トランスコーダ118、モジュール制御部120、ROM122、RAM124、電源126、インターフェース部128からなる。アンテナ102は、好ましくは、例えば誘電体チップアンテナ等の短縮型アンテナである。アンテナ・スイッチ104、送信部106及び受信部108、変調部110及び復調部112、TDMA符号化部114及びTDMA復号化部116からなる無線通信モジュール100の無線通信回路は、通常のPHS通信端末における無線通信に関わる部分である。このように、無線通信モジュール100は無線通信に関わる各構成要素を含んでおり、また、例えばROM122に電話帳等のデータを格納することができるなど、汎用性のある多機能通信モジュールである。
【0009】
ジャケット200は、PCMコーデック202等の音声符号化/復号化部、マイク204及びスピーカ206等の音声入出力部、ジャケット制御部208、キーパッド210及びディスプレイ212等のデータ入出力部、電源214及びインターフェース部216からなる。
【0010】
無線通信モジュール100をジャケット200に接続して通信を行う場合の移動通信端末1の動作は以下のようになる。
【0011】
ユーザの音声はマイク204を介してPCMコーデック202へ入力されてパルス符号変調される。ジャケット200のインターフェース部216及び無線通信モジュール100のインターフェース部128は、18本のピン(信号線)を有する。ピン配置の一例を図2に示す。具体的には、UART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)シリアルインターフェースとして、制御用データおよびデータ通信時のデータの送受信のために、TXD(送信シリアルデータ)、RXD(受信シリアルデータ)、RTS(送信データレディ)、CTS(送信レディ)、DTR(受信レディ)、DCD(データキャリア検出)、RI(リングインジケータ)の7つのピンが使用される。音声用の各信号の送受信のために、PCMクロック信号(PCMCLK)、PCM同期信号(PCMSYNC)、PCM入力信号(PCMIN)及びPCM出力信号(PCMOUT)の4つのピンが使用される。INS(検出信号)ピンは無線通信モジュール100の挿入を認識する為に使用され、無線通信モジュールへの電源の供給およびアース用に、電源(Vcc)、グラウンド(GND)の2つのピンが使用される。電界強度用の各信号(DISP1、DISP2、DISP3)のためのピンが用意されており、ジャケットのLCDおよびLED等の外部表示デバイスに電界強度表示(アンテナ表示)を行う為に使用される。また、インターフェース通知用の信号(IF_SEL)は、現状でUART方式のデータ送受信に使用しているピンをUART以外の別のデータ転送方式のデータ送受信のために使用できるようにした場合において、UART方式なのか当該別の方式なのかを確認するために使用される。PCMコーデック202において符号化された音声データは上記音声用の4つのピンのうちの1つを介して無線通信モジュール100内のADPCMトランスコーダ118へ入力され、ADPCM変調されたデータへと変換される。ADPCMトランスコーダ118の出力信号は時分割多元接続(TDMA)用ベースバンド信号に符号変換され(114)、さらに変調部110及び送信部106において例えば1.9GHz帯の変調波に変換され、アンテナ・スイッチ104及びアンテナ102を介して基地局へと無線伝送される。
【0012】
一方、ユーザによりジャケット200のキーパッド210等の入力装置から入力されたデータはジャケット制御部208へと入力され、さらにインターフェース216及びインターフェース128のUARTシリアルインターフェース用のピン(TXD、RXD)を介してモジュール制御部120に入力される。当該データ信号はTDMA符号化部114に入力され、以降は音声信号と同様にして変調部110、送信部106、アンテナ・スイッチ104及びアンテナ102を介して基地局へと無線伝送される。
【0013】
アンテナ102において受信された信号は、アンテナ・スイッチ104により受信部108へ入力される。この受信信号(例えば、1.9GHz帯)は、受信部108において増幅及び周波数変換され、ついで復調部112でTDMAベースバンド信号に復調された後、TDMA復号化部116により復号化される。TDMA復号化部116から出力された音声信号は音声用トランスコーダ118へ入力されてPCM音声信号へ変換される。PCM音声信号は、さらにインターフェース部128及び218の音声信号用のピンを介してジャケット200側のPCMコーデック202に入力され、アナログ信号に変換されてスピーカ206を介して出力される。一方、TDMA復号化部116から出力されたデータ信号は、モジュール制御部120へと入力され、インターフェース部128及び218のUARTシリアルインターフェース用のピンを介してジャケット制御部208へ入力され、キーパッド210等を通じてジャケット制御部208に伝えられるユーザからの要求に応じてディスプレイ212を介して表示等される。
【0014】
無線通信モジュール100に内蔵されたROM122は無線通信モジュール100の電話番号、PIN(Personal Identify Number)、PUK(Personal Unblock Key)等の固有情報や電話帳等のデータを格納し、RAM124は制御データや送受信されるデータ等を一時的に保持するために使用される。
【0015】
このようなコンパクトなモジュールを活用することにより、通信機器を開発するメーカーは無線通信に関わる構成要素の開発の負担から解放される。これらのメーカは、ソフトウェア等の開発に専念することができ、開発期間を短縮することができ、端末(ジャケット)の高機能化に注力することが可能となる。また、無線通信技術を持たない企業も自社のオリジナルの端末(ジャケット)を開発することができる。また、従来の形態の端末に限らず、必要な構成要素を具備し本発明の無線通信モジュールに対応したスロットを有する家電製品、家具、車、ぬいぐるみ等をも移動通信端末として使用することが可能となる。
【0016】
さらに、ジャケットを複数台持っていても、そのような無線通信モジュールを挿し替えて使用することにより従来の移動通信端末の機種変更と同じ効果が得られ、専門の知識を持たないユーザであっても容易に機種変更ができる。従来、機種変更により使用できなくなった端末は不要品として廃棄処分されていたが、上述のような無線通信モジュールを標準品として共通利用することにより、そのような廃棄は不要となり、環境にも優しい商品と成りえる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
図1に示す移動通信端末1は、上述のとおり種々の有用な効果を奏するが、その構成上、無線通信モジュール100の機能を自由に拡張することができない。例えば、ユーザが無線通信モジュール100のメモリ容量を増やしてより多くの電話帳データ、画像データあるいは動画データを格納することを所望する場合、当該ユーザは、より大きな記憶容量のメモリを内蔵する無線通信モジュールを新たに購入し、これを現在使用している無線通信モジュールに代えてジャケット200に挿入して使用しなければならない。従って、ユーザ側の負担が増大する。
【0018】
また、無線通信モジュールのメーカは、このようなユーザ側の需要に対応するために、様々な記憶容量を持つモジュールを開発し、製品ラインアップに加えておく必要がある。従って、メーカ側の負担が増大する。
【0019】
さらに、無線LAN機能やGPS(global positioning system)機能等を有していない移動通信端末1のユーザがこれらの機能の利用を所望する場合、当該機能を内蔵する無線通信モジュールを新たに購入しなければならない。従って、ユーザ側の負担が増大する。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の無線通信モジュールは、本体装置に挿入されて当該本体装置とともに移動通信端末として動作するものであり、当該本体装置は、本体装置制御部と、音声符号化/復号化部と、本体装置制御部及び前記音声符号化/復号化部に接続された本体装置インターフェースとを具備する。無線通信モジュールは、本体装置インターフェースと接続可能な第1のインターフェースと、第1のインターフェースの所定のデータ信号線を介して本体装置制御部との間でデータ信号を送受信するモジュール制御部と、モジュール制御部との間でデータ信号を送受信し、且つ、第1のインターフェースを介して本体装置の音声符号化/復号化部との間で符号化された音声信号を送受信する無線通信回路と、無線通信回路に接続されたアンテナと、モジュール制御部に接続された外部媒体接続用の第2のインターフェースを具備するスロットとからなる。本体装置制御部及びモジュール制御部は、本体装置インターフェース及び第1のインターフェースの所定の信号線上の制御信号に応じて、上記所定のデータ信号線を介したデータ信号の送受信方式を複数の方式から選択する。
【0021】
外部媒体は、外部記録媒体、無線LAN機能を有する外部媒体、及びGPS機能を有する外部媒体からなる群から選択されてもよい。
【0022】
当該記録媒体は、メモリースティックマイクロ(商標)、マイクロSD(商標)メモリーカード、マイクロSDメモリーカードへの変換アダプタを装着したメモリースティックマイクロ、及びメモリースティックマイクロへの変換アダプタを装着したマイクロSDメモリーカードのうちの少なくとも1つであってもよい。また、上記複数の方式としては、USB方式及びUART方式を採用することができる。
【0023】
本発明の移動通信端末は、本体装置と、本体装置に挿入されて当該本体装置との間で信号の送受信を行う無線通信モジュールとからなる。本体装置は、本体装置制御部と、音声符号化/復号化部と、本体装置制御部及び音声符号化/復号化部に接続された第1のインターフェースとからなる。一方、無線通信モジュールは、第1のインターフェースと接続される第2のインターフェースと、第1及び第2のインターフェースの所定のデータ信号線を介して本体装置制御部との間でデータ信号を送受信するモジュール制御部と、モジュール制御部の間でデータ信号を送受信し、且つ、第1及び第2のインターフェースを介して音声符号化/復号化部との間で符号化された音声信号を送受信する無線通信回路と、無線通信回路に接続されたアンテナと、モジュール制御部に接続された外部媒体接続用の第3のインターフェースを具備するスロットとからなる。本体装置制御部及びモジュール制御部は、第1及び第2のインターフェースの所定の信号線上の制御信号に応じて、上記所定のデータ信号線を介したデータ信号の送受信方式を複数の方式から選択する。
【0024】
外部媒体は、外部記録媒体、無線LAN機能を有する外部媒体、及びGPS機能を有する外部媒体からなる群から選択されてもよい。
【0025】
記録媒体は、メモリースティックマイクロ、マイクロSDメモリーカード、マイクロSDメモリーカードへの変換アダプタを装着したメモリースティックマイクロ、及びメモリースティックマイクロへの変換アダプタを装着したマイクロSDメモリーカードのうちの少なくとも1つであってもよい。また、上記複数の方式としてはUSB方式及びUART方式を採用することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、無線通信モジュール自体を買い換える必要なしに、所望の記憶容量を有する記録媒体のみを新たに購入して無線通信モジュールのスロットに挿入することにより、無線通信モジュールの記憶容量を拡張できる。従って、ユーザの負担が軽減される。また、無線通信モジュールのメーカは種々の記憶容量を持つモジュールを製品ラインアップに加えておく負担から解放される。また、無線LAN機能やGPS機能等を有する外部媒体を無線通信モジュールに接続することによって当該モジュールの機能拡張を容易に行えるので、それらの機能を有するモジュールを新たに購入する必要がない。従って、ユーザの負担が軽減される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下において本発明の好ましい一実施例を説明するが、本発明の範囲はこれに限定されるものではない。
【0028】
本発明の無線通信モジュール300の外観斜視図の一例を図3に示す。図3の無線通信モジュール300は、小型の外部記録媒体の1つであるメモリースティックマイクロ400を挿入するためのスロット302を有する。スロット302は、その内部に、メモリースティックマイクロ400の規格に準拠した仕様のインターフェースを具備する。無線通信モジュール300がスロット302を内蔵していることを明示するため、図3は無線通信モジュール300のケースの上側が透過した状態で描かれている。
【0029】
メモリースティックマイクロと同等の小型記録媒体としてマイクロSDメモリーカードがある。上述のように、図3に示す本発明の無線通信モジュール300のスロット302はメモリースティックマイクロ規格に準拠したインターフェースを具備する。マイクロSDメモリーカードをメモリースティックマイクロに変換するための変換アダプタは既に提案され、実用化されている。従って、図4に示すように、当該変換アダプタ600を装着したマイクロSDメモリー700をスロット302に挿入することにより、マイクロSDメモリーカード500の使用も可能となる。
【0030】
同様に、マイクロSD規格に準拠したインターフェースを具備する本発明の無線通信モジュールに、マイクロSDへの変換アダプタを装着したメモリースティックマイクロを挿入して使用する構成も可能である。
【0031】
無線通信モジュール300の平面図(A1)、底面図(A2)、正面図(A3)及び側面図(A4)とを図5に示す。図中に無線通信モジュール300の寸法の一例が記載されており、縦42mm、横25.6mm及び厚さ4mmとコンパクトな構成である。メモリースティックマイクロの出し入れを容易にするため、スロット302の挿入口は、図5A1及びA2に示すように、無線通信モジュール300の側面よりも凹んだ形状に構成されることが好ましい。さらに、変換アダプタ600を装着したマイクロSDメモリー700をスロット302に挿入し、無線通信モジュール300をジャケット200のスロット218に挿入した状態を図5Bに示す。
【0032】
無線通信モジュール300のスロット302に挿入されている記録媒体の取り出し方法を図6に示す。図6のA1乃至A3はメモリースティックマイクロ400の取り出し方法を示しており、B1乃至B3はマイクロSDメモリー700の取り出し方法を示している。尚、マイクロSDメモリー700は図5に示す変換アダプタ600を装着した状態(700)で挿入されている。本発明の好ましい構成として、図6に示す実施例においては、プッシュ−プッシュ形式の挿抜機構が採用されている。このほか、当業者にとって周知の挿抜機構を採用することが可能である。
【0033】
図6のA1及びB1において、スロット302内にロックされたメモリースティックマイクロ400もしくは変換アダプタを装着したマイクロSDメモリー700の外側の側面は、図示されるように、無線通信モジュール300の側面から例えば0.5mm程度内側の位置にある(A1、B1)。これらの記録媒体を取り出す際、ユーザは記録媒体の側面をスロットの内部の方向に押して、無線通信モジュール300の側面から1.5mm程度のオーバーストローク位置まで押し込む(A2、B2)。この状態でユーザが記録媒体から手を離すと、記録媒体は無線通信モジュール300の側面から3.5mm程度の位置まで飛び出す(A3、B3)。このような機構により、ユーザは記録媒体を容易に取り出すことができる。
【0034】
本発明の無線通信モジュール300をジャケット200に挿入した場合の内部構成の一例を図7に示す。無線通信モジュール300においては、従来の無線通信モジュール100において、インターフェース部330を具備するスロットが設けられ、このスロットに外部の記憶媒体322が挿入される。
【0035】
無線通信モジュール300及びジャケット200を用いて他の端末や基地局との間で音声通信及びデータ通信を行なう際の信号の流れは、図1の従来構成の場合と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0036】
一方、本発明の無線通信モジュール300においては、無線通信モジュール300の電話番号、PIN、PUK等の固有情報や電話帳等のデータは、メモリースティックマイクロ400やマイクロSDメモリーカード500等の記録媒体322に格納される。ジャケット200のディスプレイ212やキーパッド210を介したユーザからのデータ書き込み要求やデータ読み出し要求に応答して、ジャケット制御部208は、それらの要求に対応する信号を、ジャケット200のインターフェース部216及び無線通信モジュール300のインターフェース部328のデータ送受信用のピン(TXD、RXD)を介してモジュール制御部320に送信する。当該信号に応答して、モジュール制御部320は、インターフェース部330を介して記憶媒体322へのデータ書き込みや記憶媒体322からのデータ読み出しを行う。記憶媒体322から読み出されたデータは、インターフェース部328及び216を介してモジュール制御部320からジャケット制御部208へと送信され、必要に応じてディスプレイ212上に表示される。
なお、電話番号、PIN,PUK等の固有情報や電話帳等をメモリースティックマイクロ400やマイクロSDメモリーカード500等の記録媒体322に記録するように説明したが、これらの情報は、ROM325に記録し、記録媒体322には別の情報、例えば画像データ等を記録させるようにしてもよく、移動通信端末を使用用途に応じてROM325と記録媒体322との記録内容のすみ分けを行えばよい。
【0037】
従来の無線通信モジュール100とジャケット200との間でのデータのやり取りの際には、UARTシリアルインターフェース用のピンが使用されていた。また、移動通信端末1と他の端末や基地局との間のデータ通信と、無線通信モジュール100とジャケット200との間のデータの送受信(例えば、ROM122へのデータの書き込みやROM122からのデータの読み出し)とを同時に行うことはできなかった。UARTシリアルインターフェース用のピンを使用して他の端末や基地局とのデータ通信を行う場合、当該データ通信において送受信されるデータを無線通信モジュール100とジャケット200との間でUARTシリアルインターフェース用のピンを使用しなければならなかった。このため、ROM122へのデータ書き込みやROM122からのデータ読み出し等を中止する必要があった。
【0038】
これに対して、本発明の無線通信モジュール300は、ジャケット200との間でのデータの送受信をUSB方式で行うことができる。これにより、記録媒体322(メモリースティックマイクロ400やマイクロSDメモリーカード500)へ書き込まれたり記憶媒体322から読み出されたりするデータだけでなく、本発明の無線通信モジュールとジャケット200の組み合わせである移動通信端末2が外部の端末等とのデータ通信において送受信するデータも、無線通信モジュール300のインターフェース部328及びジャケット200のインターフェース部216の同じピンを使用して、同時に送受信できる。
【0039】
本発明の無線通信モジュール300のピン配置を図8に示す。ピンの配置については、図2に示す従来のピン配置と同一であってもよい。この場合、インターフェース部328は18本のピンを有する。このうちIF_SELピンは、データ送受信用の2本のピンTXD及びRXDを、UARTシリアルインターフェース用のピンとして使用するのか、あるいはUSBインターフェース用のピンとして使用するのかを指示する信号のやり取りに使用される。
【0040】
TXDピン及びRXDピンをいずれのインターフェース用のピンとして使用するのかを指定する機構には種々の態様があり得る。例えば、USB方式でのデータ送受信がデフォルトでジャケット制御部208に設定されており、ユーザがキーパッド210の所定のキーを押下したり、ディスプレイ212に表示されるメニューから所定の指示を選択した場合にのみ、当該TXDピン及びRXDピンをUARTシリアルインターフェースとして使用することができるようにしてもよい。デフォルト状態の場合、ジャケット制御部208は、例えば、IF_SELピンの電圧を低レベル(LOW)に保持する。当該IF_SELピンのLOW状態に応答して、ジャケット制御部208及びモジュール制御部320は、TXDピン及びRXDピンを介したデータの送受信をUART方式で行う。一方、TXDピン及びRXDピンをUSBインターフェースとして使用することが選択された場合、ジャケット制御部208は、IF_SELピンの電圧を高レベル(HIGH)に設定する。当該HIGH状態に応答して、ジャケット制御部208及びモジュール制御部320は、TXDピン及びRXDピンを介したデータの送受信をUSB方式で行う。
【0041】
USB方式でのデータの送受信の際には、当該方式の特性上、複数種類のデータを同時に送受信することができる。従って、移動通信端末2を用いて他の端末との間でデータ通信を行いながら、記憶媒体322へのデータの書き込みや記憶媒体322からのデータの読み込みを同時に行うことができる。
【0042】
以上、本明細書においては、本発明の無線通信モジュール300が外部記憶媒体用のインターフェースを具備する構成を実施例として例示してきた。しかし、本発明の範囲はこれに限定されない。例えば、無線LAN機能やGPS機能を有する外部媒体の規格に準拠したインターフェースを無線通信モジュールに設け、これらの外部媒体を当該インターフェースに接続することにより、無線通信モジュールの機能を容易に拡張することが可能となる。例えば、将来的にマイクロSD規格のカードやメモリースティックマイクロ規格の外部記録媒体として無線LAN機能やGPS機能を有するものが開発された場合には、メモリーカードのみならずこれらの新しい外部媒体に準拠した汎用的なインターフェースを無線通信モジュールに設けることにより、無線通信モジュールの機能を容易に拡張できる。一例として、本発明の無線通信モジュール300に、インターフェース330を介して対応する無線LANカードを接続した場合の構成を図9に示す。
図9は、図7で示した無線通信モジュール300の記憶媒体322の代わりに、無線LANカード323を備えたものである。それ以外の構成は図7と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】出願人が既に提案している従来の移動通信端末の構成例を示す図である。
【図2】図1の移動通信端末のピン配置の一例を示す図である。
【図3】本発明の無線通信モジュールの一実施例の外観斜視図である。
【図4】変換アダプタにより、メモリースティックマイクロとマイクロSDメモリーカードの両方が本発明の無線通信モジュールに適用可能となることを示す図である。
【図5】本発明の無線通信モジュールにつき、平面図、底面図、正面図及び側面図、並びに当該モジュールをジャケットのスロットに挿入した状態を示す図である。
【図6】本発明の無線通信モジュールのスロットに挿入されている記録媒体の取り出し方法を示す図である。
【図7】本発明の無線通信モジュールをジャケットに挿入した場合の内部構成の一例を示す図である。
【図8】本発明の移動通信端末のピン配置の一例を示す図である。
【図9】本発明の無線通信モジュールに、対応する無線LANカードを接続した場合の構成を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体装置に挿入されて前記本体装置とともに移動通信端末として動作する無線通信モジュールにおいて、前記本体装置は、本体装置制御部と、音声符号化/復号化部と、前記本体装置制御部及び前記音声符号化/復号化部に接続された本体装置インターフェースとを具備し、前記無線通信モジュールは、
前記本体装置インターフェースと接続可能な第1のインターフェースと、
前記第1のインターフェースの所定のデータ信号線を介して前記本体装置制御部との間でデータ信号を送受信するモジュール制御部と、
前記モジュール制御部との間でデータ信号を送受信し、且つ、前記第1のインターフェースを介して前記本体装置の前記音声符号化/復号化部との間で符号化された音声信号を送受信する無線通信回路と、
前記無線通信回路に接続されたアンテナと、
前記モジュール制御部に接続された外部媒体接続用の第2のインターフェースを具備するスロットと
からなり、前記本体装置制御部及び前記モジュール制御部は、前記本体装置インターフェース及び前記第1のインターフェースの所定の信号線上の制御信号に応じて、前記所定のデータ信号線を介したデータ信号の送受信方式を複数の方式から選択することを特徴とする無線通信モジュール。
【請求項2】
前記外部媒体は、外部記録媒体、無線LAN機能を有する外部媒体、及びGPS機能を有する外部媒体からなる群から選択される請求項1に記載の無線通信モジュール。
【請求項3】
前記記録媒体は、メモリースティックマイクロ、マイクロSDメモリーカード、マイクロSDメモリーカードへの変換アダプタを装着したメモリースティックマイクロ、及びメモリースティックマイクロへの変換アダプタを装着したマイクロSDメモリーカードのうちの少なくとも1つである請求項2に記載の無線通信モジュール。
【請求項4】
前記複数の方式はUSB方式及びUART方式を含む請求項1に記載の無線通信モジュール。
【請求項5】
本体装置と、前記本体装置に挿入されて前記本体装置との間で信号の送受信を行う無線通信モジュールとからなる移動通信端末において、
前記本体装置は、本体装置制御部と、音声符号化/復号化部と、前記本体装置制御部及び前記音声符号化/復号化部に接続された第1のインターフェースとからなり、
前記無線通信モジュールは、前記第1のインターフェースと接続される第2のインターフェースと、前記第1及び第2のインターフェースの所定のデータ信号線を介して前記本体装置制御部との間でデータ信号を送受信するモジュール制御部と、前記モジュール制御部の間でデータ信号を送受信し、且つ、前記第1及び第2のインターフェースを介して前記音声符号化/復号化部との間で符号化された音声信号を送受信する無線通信回路と、前記無線通信回路に接続されたアンテナと、前記モジュール制御部に接続された外部媒体接続用の第3のインターフェースを具備するスロットとからなり、
前記本体装置制御部及び前記モジュール制御部は、前記第1及び第2のインターフェースの所定の信号線上の制御信号に応じて、前記所定のデータ信号線を介したデータ信号の送受信方式を複数の方式から選択することを特徴とする移動通信端末。
【請求項6】
前記外部媒体は、外部記録媒体、無線LAN機能を有する外部媒体、及びGPS機能を有する外部媒体からなる群から選択される請求項5に記載の移動通信端末。
【請求項7】
前記記録媒体は、メモリースティックマイクロ、マイクロSDメモリーカード、マイクロSDメモリーカードへの変換アダプタを装着したメモリースティックマイクロ、及びメモリースティックマイクロへの変換アダプタを装着したマイクロSDメモリーカードのうちの少なくとも1つである請求項2に記載の移動通信端末。
【請求項8】
前記複数の方式はUSB方式及びUART方式を含む請求項1に記載の移動通信端末。

【図1】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図9】
image rotate

【図2】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2008−193232(P2008−193232A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−23138(P2007−23138)
【出願日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(304058826)株式会社ウィルコム (56)
【Fターム(参考)】