説明

機能液滴吐出ヘッドの吐出検査方法および機能液滴吐出ヘッドの吐出検査装置

【課題】検査環境に関わらず、正確に吐出検査を行うことがでる機能液滴吐出ヘッドの吐出検査方法および機能液滴吐出ヘッドの吐出検査装置を提供する。
【解決手段】機能液の透明な溶媒を導入したインクジェット方式の機能液滴吐出ヘッド3により、透明なガラス板G上に溶媒を吐出着弾させて、機能液滴吐出ヘッド3における複数の吐出ノズル19の吐出性能を検査する機能液滴吐出ヘッド3の吐出検査方法であって、ガラス板G上の着弾予定位置に沿うように、溶媒を捨て吐出する捨て吐出工程と、ガラス板G上の着弾予定位置に、溶媒を検査吐出する検査吐出工程と、検査吐出より着弾した溶媒の着弾ドットDを画像認識して、複数の吐出ノズル19の吐出性能を検査する検査工程と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能液滴吐出ヘッドにおける吐出性能の検査を、機能液の透明な溶媒を用いて行う機能液滴吐出ヘッドの吐出検査方法および機能液滴吐出ヘッドの吐出検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の吐出検査方法として、キャリッジに搭載した複数の機能液滴吐出ヘッドにおける吐出ノズルの吐出性能を、キャリッジ単位で検査するものが知られている(特許文献1参照)。この吐出検査方法は、まず、アライメントマスクに形成された理想の着弾位置である基準マークを画像認識により取得しておく。次に、検査用ワークに対して、検査する機能液滴吐出ヘッドにより吐出検査用の検査液(実際には、機能液の溶媒)を吐出する。その後、検査用ワークに着弾した着弾ドットを複数個単位で連続的に画像認識する。最後に、画像認識した基準マークと着弾ドットとを比較することで、不吐出や飛行曲がり等の吐出ノズルの吐出性能を評価するようにしている。
【特許文献1】特開2007−152255号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような吐出検査方法では、全吐出ノズルから検査液を検査吐出した後に、その全着弾ドットを複数個単位で連続的に画像認識するため、吐出から画像認識完了までに時間がかかってしまう。このため、溶媒の揮発性が高い場合、吐出と同時に蒸発が促進される。吐出された溶媒の蒸発速度は、着弾ドット周囲の温度分布やエアーの流れに影響され、これらが一様でないと、各着弾ドットの蒸発が部分的に促進される。すなわち、溶媒が、理想の着弾位置に着弾しても、着弾ドットの蒸発速度が一様ではないため、経時的に着弾ドットが小さくなるだけでなく、中心位置がずれることがあり、吐出検査を正確に行うことができないという問題があった。
【0004】
本発明は、検査環境に関わらず、正確に吐出検査を行うことがでる機能液滴吐出ヘッドの吐出検査方法および機能液滴吐出ヘッドの吐出検査装置を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の機能液滴吐出ヘッドの吐出検査方法は、機能液の透明な溶媒を導入したインクジェット方式の機能液滴吐出ヘッドにより、透明なプレート上に溶媒を吐出着弾させて、機能液滴吐出ヘッドにおける複数の吐出ノズルの吐出性能を検査する機能液滴吐出ヘッドの吐出検査方法であって、プレート上の着弾予定位置に沿うように、溶媒を捨て吐出する捨て吐出工程と、プレート上の着弾予定位置に、溶媒を検査吐出する検査吐出工程と、検査吐出より着弾した溶媒の着弾ドットを画像認識して、複数の吐出ノズルの吐出性能を検査する検査工程と、を備えたことを特徴とする。
【0006】
本発明の機能液滴吐出ヘッドの吐出検査装置は、機能液の透明な溶媒を導入したインクジェット方式の機能液滴吐出ヘッドにより、透明なプレート上に溶媒を吐出着弾させて、機能液滴吐出ヘッドにおける複数の吐出ノズルの吐出性能を検査する機能液滴吐出ヘッドの吐出検査装置であって、プレート上の着弾予定位置に沿うように、溶媒を捨て吐出する捨て吐出手段と、プレート上の着弾予定位置に、溶媒を検査吐出する検査吐出手段と、検査吐出より着弾した溶媒の着弾ドットを画像認識して、複数の吐出ノズルの吐出性能を検査する検査手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
これらの構成によれば、着弾ドットの近傍において、着弾ドットを構成する溶媒の他、捨て吐出された溶媒が蒸発する。したがって、着弾ドット周囲が、両溶媒の蒸気(気化溶媒)で満たされるため、検査対象である着弾ドットの蒸発が抑制される。すなわち、着弾ドットの蒸発時間を長くすることができる。これにより、着弾から画像認識完了まで時間を要しても、着弾ドットがほとんど体積変化(蒸発)することなく着弾ドットの検査、すなわち、吐出ノズルの吐出検査を正確に行うことができる。また、透明な溶媒を透明なプレートに吐出着弾させるため、着弾ドットの境界を鮮明に画像認識することができ、より正確に吐出検査を行うことができる。なお、プレートは、ガラス板であることが、好ましい。
【0008】
この場合、捨て吐出工程では、着弾予定位置を挟むように着弾予定位置の両側に溶媒を捨て吐出することが、好ましい。
【0009】
また、捨て吐出工程では、着弾予定位置を囲むように溶媒を捨て吐出することが、好ましい。
【0010】
これらの構成によれば、着弾ドットは、捨て吐出された溶媒で挟まれる(あるいは、囲まれる)ため、着弾ドットの蒸発時間をより長くすることができ、正確に吐出検査を行うことができる。
【0011】
この場合、検査吐出される溶媒の量に比して、捨て吐出される溶媒の量が多いことが、好ましい。
【0012】
この構成によれば、検査吐出された溶媒(着弾ドット)の表面積より、捨て吐出された溶媒の表面積が大きいため、捨て吐出された溶媒が着弾ドットより多く蒸発する。したがって、着弾ドットの近傍は、捨て吐出された溶媒の蒸気による雰囲気で満たされるため、着弾ドットの蒸発時間を長くすることができ、正確に吐出検査を行うことができる。
【0013】
この場合、着弾予定位置と同位置に基準マークが形成されたアライメントマスクを用い、基準マークを画像認識する基準位置取得工程と、をさらに備え、検査工程では、画像認識した基準マークと画像認識した着弾ドットとを比較することで、複数の吐出ノズルの吐出性能を検査することが、好ましい。
【0014】
この構成によれば、画像認識した着弾ドットおよび基準マークを比較することで、機能液的吐出ヘッドの複数の吐出ノズルにおける着弾位置に関する吐出性能を精度良く検査することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付した図面を参照して、本実施形態に係る機能液滴吐出ヘッドの吐出検査方法を適用した吐出検査装置について説明する。この吐出検査装置は、カラーフィルタなどを製造する描画装置に搭載する前に、機能液の溶媒を用いて機能液滴吐出ヘッド(吐出ノズル)の吐出性能を検査するものである。具体的には、複数の機能液滴吐出ヘッドをサブキャリッジに組み込んだ状態で、各機能液滴吐出ヘッドから溶媒を検査吐出させ、その着弾位置や飛行曲がり等の吐出性能を検査する。まず、吐出検査装置の説明に先立ち、検査対象となるヘッドユニットについて説明する。
【0016】
図1に示すように、ヘッドユニット1は、サブキャリッジ2と、サブキャリッジ2に搭載した12個の機能液滴吐出ヘッド3と、を備えている。12個の機能液滴吐出ヘッド3は、サブキャリッジ2に対して、6個ずつ左右(副走査方向)に二分され、R・G・Bの配色および階段状の配置において同一の配列パターンで配設されている。
【0017】
サブキャリッジ2は、12個の機能液滴吐出ヘッド3を取り付けるための12個の装着開口4が形成された本体プレート5と、本体プレート5の下面に突設され、ヘッドユニット1を後述する吐出検査装置31(図3参照)のアライメントマスクM(図5参照)に対し、位置決めするための基準となる一対の基準ピン(図示省略)と、本体プレート5の両短辺部分に取り付けた左右一対のプレート支持部材6と、一対のプレート支持部材6の上端部に掛け渡され、後述する吐出検査装置31のメインキャリッジ43(図3参照)に取り付けられるヘッド取付けプレート7と、を有している。なお、本体プレート5に対し12個の機能液滴吐出ヘッド3は、上記の一対の基準ピンを基準としアライメントされた状態で組みつけられている。
【0018】
また、本体プレート5上には、機能液滴吐出ヘッド3に接続される圧力調整弁付きの左右一対の配管接続アッセンブリ8が設けられ、各配管接続アッセンブリ8は、吐出検査装置31の溶媒供給ユニット45(いずれも図3参照)に配管接続されている。また、ヘッド取付けプレート7の内側には、機能液滴吐出ヘッド3に接続される中間基板付きの配線接続アッセンブリが設けられ、各配線接続アッセンブリは、後述する吐出検査装置31の制御コンピュータに配線接続されている。
【0019】
図2に示すように、機能液滴吐出ヘッド3は、いわゆる2連のインクジェットヘッドであり、2連の接続針14を有する機能液導入部11と、機能液導入部11に連なる2連のヘッド基板12と、ヘッド基板12の下方に連なり溶媒を吐出するヘッド本体13と、を備えている(図2(a)参照)。
【0020】
機能液導入部11は、一対の接続針14を有しており、上記の配管接続アッセンブリ8を介して溶媒供給ユニット45(図3参照)から溶媒の供給を受けるようになっている。また、ヘッド本体13は、ピエゾ素子等で構成される2連のポンプ部15と、複数の吐出ノズル19が形成されたノズル面17を有するノズルプレート16と、を有している。ノズルプレート16のノズル面17に形成された多数(複数)の吐出ノズル19は、相互に平行且つ半ノズルピッチ分、位置ズレして列設された2列のノズル列(A列およびB列)18を構成しており、各ノズル列18は、等ピッチで並べた180個の吐出ノズル19で構成されている(図2(b)参照)。なお、180個の吐出ノズル19のうち、列端部の各10個の吐出ノズル19は、実際の描画では使用しないダミーノズルとなり、ダミーノズルに挟まれた吐出ノズル19は、有効ノズルとなる。
【0021】
ヘッド基板12には、2連のコネクタ20が設けられており、各コネクタ20はフレキシブルフラットケーブル(図示省略)を介して、上記の配線接続アッセンブリ(制御コンピュータ)に接続されている。そして、この制御コンピュータから出力された駆動波形が各コネクタ20を介して各ポンプ部15(圧電素子)に印加されることで、各吐出ノズル19から溶媒(機能液)が吐出される。
【0022】
次に、図3および図4を参照して、ヘッドユニット1単位で機能液滴吐出ヘッド3(吐出ノズル19)の吐出性能を検査する吐出検査装置31について説明する。吐出検査装置31は、機台32と、機台32上に設けた石定盤33と、石定盤33上の全域に広く載置され、ヘッドユニット1を搭載した描画検査装置34と、機能液滴吐出ヘッド3の機能維持・回復を行うメンテナンスユニット(フラッシング装置、ワイピング装置および吸引装置)35と、上記したヘッドユニット1を描画検査装置34に供給する給材装置36と、メンテナンスユニット35および給材装置36を支持する共通架台37と、を備えており、チャンバ装置(図示省略)内に収容されている。また、吐出検査装置31には、装置全体を統括制御する制御コンピュータが組み込まれており、チャンバ装置の外に配置されている。吐出検査装置31は、給材装置36により給材されたヘッドユニット1を描画検査装置34に搭載すると共に、搭載したヘッドユニット1(機能液滴吐出ヘッド3)の吐出検査をすべく、メンテナンスユニット35により機能液滴吐出ヘッド3の機能維持・回復を行いながら、描画検査装置34によりガラス板G上に溶媒を吐出し、吐出した溶媒の着弾位置や飛行曲がりなどを検査する。
【0023】
図3に示すように、描画検査装置34は、石定盤33上に載置され、主走査方向(Y軸方向)の移動軸を構成するY軸テーブル41と、Y軸テーブル41を跨いで設置され、副走査方向(X軸方向)の移動軸を構成するX軸テーブル42と、X軸テーブル42上をスライド自在に移動すると共に、ヘッドユニット1を着脱自在に垂設するメインキャリッジ43と、X軸テーブル42上をスライド自在に移動するカメラユニット44と、メインキャリッジ43に搭載され、ヘッドユニット1に溶媒を供給する溶媒供給ユニット45と、を備えている。この描画検査装置34において、X軸テーブル42およびY軸テーブル41が交わる領域が処理エリアとなっており、上記したカメラユニット44や後述するアンダーカメラ65のキャリブレーションを行うと共に、機能液滴吐出ヘッド3により溶媒を検査吐出してその検査を行う。
【0024】
X軸テーブル42は、一対の走行レール上を走査するX軸リニアモータを有しており、後述するメインキャリッジ43およびカメラユニット44を個別に副走査方向にスライド自在に搭載している。X軸テーブル42は、石定盤33上に立設した4本の柱に支持されており、Y軸テーブル41を跨いでメンテナンスユニット35の上方に臨む位置まで延在している。X軸テーブル42は、メインキャリッジ43に搭載したヘッドユニット1を、メンテナンスユニット35の直上部に位置するメンテナンスエリアおよび上記の処理エリアの間で、適宜移動させる。また、X軸テーブル42は、カメラユニット44を、処理エリアおよび処理エリアを挟むように対峙する待機エリアの間で、適宜移動させる。
【0025】
図4に示すように、Y軸テーブル41は、第1Y軸テーブル53と、第1Y軸テーブル53上に配設された第2Y軸テーブル54と、で構成されている。第1Y軸テーブル53は主に後述する基準マーク(吐出基準マークMc)や着弾ドットDの撮像の際に、後述するアライメントマスクMおよびガラス板Gを微少移動させ、第2Y軸テーブル54は主に後述するアライメントテーブル74および吸着テーブル75を処理エリアに交互に臨ませる。
【0026】
第1Y軸テーブル53は、主走査方向に延在するよう石定盤33上に直接支持された左右一対のテーブル台61と、一対のテーブル台61上に設けられ、主走査方向に延びる一対の第1ガイドレール62と、一方のテーブル台61上に設けられたY軸リニアモータ63と、Y軸リニアモータ63により第1ガイドレール62上をスライド自在に移動する第1スライダ64と、を備えている。また、一対のテーブル台61の間の石定盤33上には、上記したヘッドユニット1と後述するアライメントマスクMとを位置合わせする際に用いられる2台のアンダーカメラ65が配設されている。
【0027】
第2Y軸テーブル54は、第1スライダ64上に設けられ、主走査方向に延びる一対の第2ガイドレール71と、一対の第2ガイドレール71の外側に設けられたY軸ロッドレスシリンダ72と、Y軸ロッドレスシリンダ72により第2ガイドレール71上をスライド自在に移動する板状の第2スライダ73と、を備えている。また、第2スライダ73上には、各種基準となるマークが形成されたアライメントマスクMを保持したアライメントテーブル74と、機能液滴吐出ヘッド3により吐出される溶媒の着弾面を構成する透明なガラス板Gを吸着固定する吸着テーブル75と、が主走査方向に隣接して配置されている。
【0028】
図5に示すように、アライメントマスクMは、透明な石英ガラスで板状に構成され、2つのアンダーカメラ65のキャリブレーション基準となる上下一対のアンダーカメラ基準マークMa(アライメントマスクMの基準マークであって、ヘッドユニット1の基準ピンと同位置)と、2つの撮像カメラ93のキャリブレーション基準となる左右一対の撮像カメラ基準マークMbと、ヘッドユニット1から吐出された溶媒を検査するための着弾位置の基準となる複数の吐出基準マークMcと、を有している。吐出基準マークMcは、サブキャリッジ2に搭載された12個の機能液滴吐出ヘッド3が溶媒を吐出したときに、その着弾ドットDが着弾すべき着弾予定位置Mdに対応する位置(実際には、ヘッドユニット1における全吐出ノズル19の位置)に形成されている。
【0029】
吸着テーブル75は、内部に左右一対のエアーチャンバを有する吸着テーブル本体82と、各エアーチャンバの直上に配置され、吸着テーブル本体82の上面に配置された吸着プレート部83と、各エアーチャンバ内部のエアーを吸引するエアー吸引手段と、を有しており、吸着テーブル75は、一対の吸着プレート部83上に載置したガラス板Gを吸着固定する(図4参照)。
【0030】
カメラユニット44は、X軸テーブル42に掛け渡されたカメラキャリッジフレームと、カメラキャリッジフレームに垂設されたカメラ支持フレームと、カメラ支持フレームに取り付けられ、副走査方向に隣接する2台の撮像カメラ93と、を有しており、この2台の撮像カメラ93は、後述する吐出検査方法において、上記したアライメントマスクMの吐出基準マークMcおよび溶媒が吐出された着弾ドットDを撮像する。また、撮像カメラ93は、マイクロヘッド等の微調整機構によりX、YおよびZ軸方向に微調整することが可能となっている。なお、特に図示しないが、撮像カメラ93による撮像時の照明は、落射照明が採用されている。
【0031】
メインキャリッジ43は、一対の走行レールに掛け渡されたキャリッジフレーム94と、キャリッジフレーム94に取り付けられ、ヘッドユニット1を昇降自在に移動させるZ軸テーブル95と、Z軸テーブル95に垂設され、ヘッドユニット1をθ方向に回転させるθテーブルと、θテーブルに垂設され、ヘッドユニット1を着脱自在に保持するヘッドユニットホルダと、を有している(図3参照)。
【0032】
次に、図6ないし図8を参照して、機能液滴吐出ヘッド3の吐出検査方法について説明する。この吐出検査方法は、12個の機能液滴吐出ヘッド3の吐出着弾位置や飛行曲がりを検査するものであり、アライメントマスクMの吐出基準マークMcを画像認識する基準位置取得工程と、吐出基準マークMcに対応するガラス板G上の着弾予定位置Mdに沿うように、溶媒を捨て吐出する捨て吐出工程と、ガラス板G上の着弾予定位置Mdに溶媒を検査吐出する検査吐出工程と、着弾ドットDを画像認識し、取得した吐出基準マークMcの位置と比較して複数の吐出ノズル19の吐出性能を評価する検査工程と、を備えている。なお、基準位置取得工程の前工程で、2つの撮像カメラ93および2つのアンダーカメラ65のキャリブレーションが行われるが、このキャリブレーションは、2つの撮像カメラ93によりアライメントマスクMの一対の撮像カメラ基準マークMbを画像認識すると共に、2つのアンダーカメラ65により一対のアンダーカメラ基準マークMaを画像認識することで行われる。
【0033】
基準位置取得工程では、撮像カメラ93によりアライメントマスクMの吐出基準マークMcを撮像する。具体的には、図6に示すように、先ず、図示下側に位置した機能液滴吐出ヘッド3の上側のノズル列(A列)18にあたる吐出基準マークMcを、図示左側から図示右側へ移動して撮像する(実際には、着弾ドット8個単位)。図示右側まで移動しきった後、図示下側へ移動し、下側のノズル列(B列)18にあたる吐出基準マークMcを図示右側から図示左側へ移動して撮像する。今度は、その上側に位置した複数の吐出基準マークMcを撮像し、これを6回繰り返すことで、2台の撮像カメラ93により、アライメントマスクMの全ての吐出基準マークMcを撮像する。撮像した吐出基準マークMcの画像データは、制御コンピュータに記憶され後述する検査工程で基準位置(着弾予定位置Md)として用いられる。
【0034】
捨て吐出工程では、まず、ガラス板Gおよびヘッドユニット1を処理エリアに臨ませる。その際、2つのアンダーカメラ65によりヘッドユニット1の一対の基準ピンを画像認識し、この認識結果に基づいて、X軸テーブル42およびメインキャリッジ43のθテーブルによりヘッドユニット1をアライメントする。アライメントが完了したら、ガラス板G上に各機能液滴吐出ヘッド3により捨て吐出を行う。具体的には、図7に示すように、各着弾予定位置Mdの上側近傍にこれに沿うように、ヘッドユニット1により検査吐出の数倍量の溶媒を、検査吐出する吐出ノズル19を用いて吐出する(図7(a)参照)。そして、第2Y軸テーブル54によりヘッドユニット1を、着弾予定位置Mdを挟むように反対側の位置(着弾予定位置Mdの下側近傍)に移動させ、同様に溶媒を吐出する(図7(b)参照)。なお、捨て吐出は、それぞれの側において、図示のように第2Y軸テーブル54を微小移動させながら隣接して複数列吐出するようにしてもよいし、重ね打ちで1列吐出するようにしてもよい。また、各捨打ドットを複数ショットの液滴吐出で行うことが好ましい。
【0035】
続く検査吐出工程では、第2Y軸テーブル54によりノズル列18を着弾予定位置Mdの直上に臨ませる。そして、全機能液滴吐出ヘッド3の全吐出ノズル19から溶媒を吐出させる(検査吐出)。なお、この検査吐出は、各吐出ノズル19においてワンショットあるいは複数ショットで行う。
【0036】
検査工程では、基準位置取得工程と全く同じ手順で、撮像カメラ93により、ガラス板Gに着弾した全着弾ドットDを撮像し(図6参照)、画像データを制御コンピュータに記憶する。この場合、着弾ドットDを撮像する時点では、既に捨て吐出した溶媒の蒸発が開始しているため、検査吐出により着弾した溶媒の着弾ドットDは、ほとんど体積変化しない。また、後述する検査工程においても、着弾時の着弾ドットDの形状を概ね維持したまま、吐出検査が行われる。なお、捨て吐出工程および検査吐出工程を、連続して行うことで、着弾ドットDの体積変化をさらに考慮することなく吐出検査を行うことができる。また、着弾ドットDを透明なガラス板Gで受けるようにしているため、上記したように落射照明であっても、透明な着弾ドットDの境界を鮮明に画像認識することができるようになっている。
【0037】
そして、基準位置取得工程で予め制御コンピュータに記憶しておいた吐出基準マークMcの画像データと上記した着弾ドットDの画像データとを比較して吐出ノズル19の吐出検査(性能評価)を行う。具体的には、図8に示すように、吐出基準マークMcの画像データと着弾ドットDの画像データとを比較して、着弾ドットDと吐出基準マークMcとが一致した場合(図8(a)参照)、溶媒を吐出した吐出ノズル19は、着弾予定位置Mdに正常に吐出している判断される。一方、吐出した溶媒が、吐出基準マークMcから外れている場合(図8(b)参照)には飛行曲がりと判断され、着弾ドットDが小さい場合や円形でない場合(図8(c)参照)には不良吐出と判断され、さらに着弾ドットDが無い場合には不吐出と判断される。なお、図示のものでは、判断しやすいように吐出基準マークMc(着弾予定位置Md)を着弾ドットDよりひと回り大きな円で示している。
【0038】
なお、上記実施形態では、機能液滴吐出ヘッド3の2つのノズル列(A列、B列)18を同時に検査しているが、これを別々に、すなわちA列(B列)について吐出検査を行った後、B列(A列)について行ってもよい。図9に示すように、この場合の吐出基準マークMcおよび着弾ドットDの撮像は、同図下側に位置した機能液滴吐出ヘッド3の吐出基準マークMc(着弾ドットD)を、図示左側から図示右側へ移動して撮像する。図示右側まで移動しきった後、その上側に位置した複数の吐出基準マークMc(着弾ドットD)に移動し、図示右側から図示左側へ移動して撮像する。これを3回繰り返すことで、2台の撮像カメラ93により、アライメントマスクMの全吐出基準マークMcあるいは全着弾ドットDを撮像する。
【0039】
なお、捨て吐出は、A列あるいはB列のいずれで行ってもよい。また、図10に示すように、着弾予定位置Mdを囲むように捨て吐出を行ってもよい。この場合、両端の吐出ノズル19より外側にはみ出した位置で捨て吐出すると共に、着弾予定位置Mdの両外側にも捨て吐出を行う。また、上記のようにノズル列18には、両側10個のダミーノズルがあるが、本実施形態においては、このダミーノズルを含む全吐出ノズル19で、捨て吐出のみならず検査吐出を行うことが好ましい。これにより、検査吐出において、有効ノズルの両側にも溶媒が吐出されるため、検査する吐出ノズル19の蒸発を抑制することができる。なお、ダミーノズルから吐出された着弾ドットDを検査するか否かは自由である。
【0040】
なお、基準位置取得工程と、検査吐出工程と、捨て吐出工程とは、必ずしも上記の順序で行う必要はなく、検査工程の前にいずれもが終了していれば良い。
【0041】
以上の構成によれば、着弾ドットDの近傍に溶媒を捨て吐出することで、着弾ドットDの周囲が、両溶媒の蒸気で満たされるため、着弾ドットDの蒸発が抑制される。これにより、長時間着弾ドットDが、体積変化(蒸発)することがないため、吐出ノズル19の吐出検査を正確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】ヘッドユニットの外観斜視図である。
【図2】機能液滴吐出ヘッドの外観斜視図である。
【図3】吐出検査装置の外観斜視図である。
【図4】Y軸テーブルの外観斜視図である。
【図5】アライメントマスクの平面図である。
【図6】吐出基準マークおよび着弾ドットの撮像手順を示す説明図である。
【図7】捨て吐出工程の手順を示す説明図である。
【図8】着弾ドットの撮像結果を示す説明図である。
【図9】吐出基準マークおよび着弾ドットの他の撮像手順を示す説明図である。
【図10】着弾予定位置を囲むように捨て吐出したときの説明図である。
【符号の説明】
【0043】
3…機能液滴吐出ヘッド 19…吐出ノズル 41…Y軸テーブル 42…X軸テーブル 44…カメラユニット 53…第1Y軸テーブル 54…第2Y軸テーブル 65…アンダーカメラ 93…撮像カメラ D…着弾ドット G…ガラス板 M…アライメントマスク Mc…吐出基準マーク Md…着弾予定位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能液の透明な溶媒を導入したインクジェット方式の機能液滴吐出ヘッドにより、透明なプレート上に前記溶媒を吐出着弾させて、前記機能液滴吐出ヘッドにおける複数の吐出ノズルの吐出性能を検査する機能液滴吐出ヘッドの吐出検査方法であって、
前記プレート上の着弾予定位置に沿うように、前記溶媒を捨て吐出する捨て吐出工程と、
前記プレート上の前記着弾予定位置に、前記溶媒を検査吐出する検査吐出工程と、
前記検査吐出より着弾した前記溶媒の着弾ドットを画像認識して、前記複数の吐出ノズルの吐出性能を検査する検査工程と、を備えたことを特徴とする機能液滴吐出ヘッドの吐出検査方法。
【請求項2】
前記捨て吐出工程では、前記着弾予定位置を挟むように前記着弾予定位置の両側に前記溶媒を捨て吐出することを特徴とする請求項1に記載の機能液滴吐出ヘッドの吐出検査方法。
【請求項3】
前記捨て吐出工程では、前記着弾予定位置を囲むように前記溶媒を捨て吐出することを特徴とする請求項1に記載の機能液滴吐出ヘッドの吐出検査方法。
【請求項4】
前記検査吐出される前記溶媒の量に比して、前記捨て吐出される前記溶媒の量が多いことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の機能液滴吐出ヘッドの吐出検査方法。
【請求項5】
前記着弾予定位置と同位置に基準マークが形成されたアライメントマスクを用い、前記基準マークを画像認識する基準位置取得工程と、をさらに備え、
前記検査工程では、画像認識した前記基準マークと画像認識した前記着弾ドットとを比較することで、前記複数の吐出ノズルの吐出性能を検査することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の機能液滴吐出ヘッドの吐出検査方法。
【請求項6】
機能液の透明な溶媒を導入したインクジェット方式の機能液滴吐出ヘッドにより、透明なプレート上に前記溶媒を吐出着弾させて、前記機能液滴吐出ヘッドにおける複数の吐出ノズルの吐出性能を検査する機能液滴吐出ヘッドの吐出検査装置であって、
前記プレート上の着弾予定位置に沿うように、前記溶媒を捨て吐出する捨て吐出手段と、
前記プレート上の前記着弾予定位置に、前記溶媒を検査吐出する検査吐出手段と、
前記検査吐出より着弾した前記溶媒の着弾ドットを画像認識して、前記複数の吐出ノズルの吐出性能を検査する検査手段と、を備えたことを特徴とする機能液滴吐出ヘッドの吐出検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−268947(P2009−268947A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−119588(P2008−119588)
【出願日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】