欠陥抽出走査電子顕微鏡検査装置及びその抽出方法
【課題】半導体装置や液晶などの回路パターンが形成された基板上の欠陥を検出する目的で検査を行う走査電子顕微鏡を搭載した検査装置において、困難となっている微細欠陥と擬似の識別を容易に実施できる検査装置及びその検査方法を提供する。
【解決手段】同一箇所を複数回スキャンして得られる画像あるいは画像信号を加算し、加算回数の異なる画像あるいは画像信号を比較することにより、擬似欠陥あるいは真の欠陥の欠陥位置を検出する。擬似欠陥あるいは真の欠陥のいずれを検出するかは、加算回数の異なる複数の画像の比較演算の組み合わせによって定める。
【解決手段】同一箇所を複数回スキャンして得られる画像あるいは画像信号を加算し、加算回数の異なる画像あるいは画像信号を比較することにより、擬似欠陥あるいは真の欠陥の欠陥位置を検出する。擬似欠陥あるいは真の欠陥のいずれを検出するかは、加算回数の異なる複数の画像の比較演算の組み合わせによって定める。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置や液晶など種々の回路パターンが形成された基板上に発生する物理的及び電気的不良(以下、欠陥)を検出する検査装置に関し、特に走査電子顕微鏡を搭載した検査装置に係わる。
【背景技術】
【0002】
半導体製品あるいは液晶製品の製造プロセスにおいては、各種の基板上に微細なパターンが形成される。前記製品の製造工程において、基板上に致命欠陥であるDOI(Defect of Interest)が存在すれば、製品不良の原因となる。従って、製品の歩留りを向上するために、基板上に存在する欠陥を製品の製造途中に検出し、欠陥の発生原因を迅速に特定して、後続して製造される製品に同じ欠陥を発生させないような対策を講じることが望まれている。
【0003】
欠陥検出の手段としては、光学画像や走査電子画像を撮像して欠陥位置を検出する外観検査装置が用いられている。また、欠陥の発生原因の特定には走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope;以下SEMと略)が搭載されたレビュー装置が用いられる。レビュー装置は、外観検査装置で検出した欠陥の特徴量(座標,サイズ,形態等)の結果情報に基づき、欠陥を高倍率で撮像する装置である。欠陥レビューは、手動(Manual Defect Review)またはADR(Auto Defect Review)で実行され、撮像結果をもとに欠陥分類を行う。各種製品の製造プロセスで発生する欠陥種はプロセス毎にある傾向があり、欠陥分類を行うことで、プロセス条件の変動を監視することができる。
【0004】
前記の外観検査装置としては、暗視野外観検査装置,明視野外観検査装置,SEM式外観検査装置等の種類がある。検査で使用する外観検査装置の種類は検出したい欠陥に応じて決める場合が多く、例えば、サイズが大きい異物は暗視野外観検査装置を、サイズが小さいパターン不良は明視野外観検査装置を、電気的不良や微細パターン不良はSEM式検査装置を使用する。
【0005】
外観検査装置あるいは欠陥検出機能を搭載したレビュー装置は、撮像された画像に所定アルゴリズムの演算処理を行って欠陥を検出する。代表的な手法として、Cell-to-Cell検査(以下、CTC検査またはArray検査)やDie-to-Die検査(以下、DTD検査またはRandom検査)、あるいは検出画像を適当な参照画像と比較して欠陥を検出するGolden Pattern検査(以下、GP検査)がある。CTC検査は、周期的に連続配列パターンが存在する領域内を検査するのに適し、DTD検査は半導体ウェーハのチップ領域(ダイ)といったランダムパターンが存在する領域内を検査するのに適する。
【0006】
CTC検査,DTD検査あるいはGP検査で使用される欠陥の抽出方法は、過去数十年間ほぼ変わっておらず、基本的には、ある画像とある画像の差分画像を生成し、差分画像を適当な閾値で二値化して、バックグランドとの差がある画素位置を欠陥として抽出する方法が用いられている。以上の検査方法は、バックグランドと差がある画素を欠陥とみなす考え方であるため、取得画像の明るさやコントラストによって、実際には欠陥ではない画素を欠陥として検出してしまう可能性が常に存在する。このため、擬似欠陥をなるべく排除できるような欠陥検出アルゴリズムが種々工夫されている。以上の実際には欠陥ではない欠陥を、以下の説明では擬似欠陥と称する。
【0007】
例えば、特公昭54−37475号公報(特許文献1)には、欠陥候補画像と参照画像の差分画像に加えて輪郭抽出画像も同時に利用し擬似欠陥を排除するアルゴリズムが開示されている。また、特開昭63−32666号公報(特許文献2)には、±1画素ずつずらした9枚の画像および画像信号ゲインを加減した2枚の画像、合計11枚の画像から、差信号の極性の変化を比較して欠陥と擬似欠陥を識別するアルゴリズムが開示されている。
【0008】
以上説明した欠陥検出方法において欠陥の検出精度を高めるには、ノイズ信号量に対する欠陥信号量の割合(信号対ノイズ比:S/N)を大きくすることが必須である。しかし、回路パターンの微細化と共に欠陥信号量も小さくなり、ノイズ信号との識別が難しくなっている。この傾向は半導体デバイス試料で特に顕著であり、超微細化のデザインルール(配線の最小線幅が30nm以下)を持つ半導体デバイス試料では、DOIの信号量とノイズとの区別がより難しくなっており、検査では、微細DOIと共に、擬似欠陥を多く検出することになる。従って、微細DOIを検出するには、何らかの工夫を行うことが必要となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特公昭54−37475号公報(米国特許4202631号)
【特許文献2】特開昭63−32666号公報(米国特許4860371号)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記「背景技術」で説明した理由により、回路パターンが形成された基板の検査において、検査結果における擬似欠陥率(擬似欠陥数/全検出数)が増大し、外観検査装置を用いた製造プロセス管理が難しくなっている。このような擬似欠陥は、高倍率のSEM式レビュー観察で確認しないと欠陥かどうかを判断することが難しく、外観検査装置の検査結果における擬似欠陥率が高くなると、レビュー装置で確認すべき欠陥数が増大し、従ってレビュー効率が低下する。結果として、製品の製造管理の業務効率に悪影響を与える。
【0011】
また外観検査装置には、通常、自動欠陥分類(ADC:Auto Defet Classification)機能が搭載されており、検査結果から擬似欠陥を自動削除できるが、DOIの微細化、S/Nの低下により、欠陥と擬似欠陥との特徴量(信号強度,サイズ,形態等)の差が縮まりADCでは分類及び削除できない擬似欠陥が増加している。
【0012】
本発明は、擬似欠陥を欠陥検出結果から従来よりも効率的に除去可能な検査方法ないし検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するための手段として、真の欠陥位置から得られる信号量はスキャン毎の変動が小さく、擬似欠陥の信号量はスキャン毎の変動が大きいという特徴を利用する。すなわち、同一箇所を複数回スキャンして得られる画像あるいは画像信号を加算し、加算回数の異なる画像あるいは画像信号を比較することにより、擬似欠陥あるいは真の欠陥の欠陥位置を検出する。擬似欠陥あるいは真の欠陥のいずれを検出するかは、加算回数の異なる複数の画像の比較演算の組み合わせによって定まる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、擬似欠陥率を抑えながら微細DOIを容易に検出できる検査方法ないし検査装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】走査電子顕微鏡(SEM)を搭載した検査装置の構成図。
【図2】ライン加算の方式種類の説明図と画質向上の効果を示す図。
【図3】Cell-to-Cell欠陥検出法及びDie-to-Die欠陥検出法の説明図。
【図4】加算画像を利用したFrame-to-Frame擬似欠陥抽出法を説明する図。
【図5】Frame-to-Frame擬似欠陥抽出法を利用して欠陥を抽出する説明図。
【図6】複数加算画像にCTC・DTD検出法を利用して欠陥を抽出する説明図。
【図7】欠陥候補画像を基にした各加算画像の差分画像の特徴を示す図。
【図8】加算画像の中から有効加算画像を自動選別する方法を説明する図。
【図9】試し検査の実行から有効加算数を検証する方法を説明する図。
【図10】検出感度閾値区間を三つに分割した方法を説明する図。
【図11】擬似欠陥検出感度閾値区間を導入した検査を説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に説明する実施形態は、SEMにより画像を取得して検査を行う検査装置の構成例について説明を行うが、画像加算によりS/Nを改善する撮像装置であれば、いずれの装置であっても適用可能である。
【0017】
はじめに、各実施例で共通する加算画像の取得方法について説明する。SEMの取得画像は、2次電子が少ない場合、画像13のようにバックグラウンドノイズが多く低S/Nの画像となる。S/Nを向上させる手段として、同一領域を複数回走査し、検出される2次電子あるいは反射電子信号を加算して画像信号量を実効的に増やす処理が行われる。図2のA図には、加算無しの画像13から画像加算を順次行うことにより、S/Nが改善された画像14が求められる様子を示す。加算回数は任意に定められるため、図2のA図では、検査で使用する画像の最大加算回数をn回と示している。
【0018】
n回加算画像を取得する代表的な方法として、ライン加算,インターバル加算,フレーム加算の3種がある。
【0019】
(ライン加算)
ライン加算は、走査ライン単位で複数回の走査を行い画像信号を加算し、得られるn回加算画像信号を合成して1つの画像を得る画像取得方法である。例えば、1回の撮像で取得する画像(フレームと称される)が4本の走査ラインの画像信号で構成されている場合を考える。図2のB図に示すように、まず1本目の走査ラインをn回走査し得られる画像信号を加算する。次に2本目の走査ラインをn回走査し得られる画像信号を加算し・・・という処理を順次4本目の走査ラインまで行い、得られる4本のn回加算画像信号を合成して1つの画像とする。
【0020】
(インターバル加算)
インターバル加算は、最初にある複数の走査ラインをn回走査して画像信号を加算した後、次の走査ラインに電子線照射位置を移動し、同じ本数の複数走査ラインをn回走査して画像信号を加算し・・・という走査を順次繰り返すことにより、あるフレームのn回加算画像を得る走査方法である。例えば1フレームが4本の走査ラインの画像信号で構成されている場合を例にすると、図2のC図に示すように最初に第1走査ラインと第2走査ライン(図中で四角内数字で示される)をn回走査して第1走査ラインと第2走査ラインのn回加算画像信号を取得し、次に第3走査ラインと第4走査ラインに移動して、第3走査ラインと第4走査ラインのn回加算画像信号を取得し、これらのn回加算画像信号を合成して、1つのn回加算画像を取得する。
【0021】
(フレーム加算)
図2のDにはフレーム加算の概要を示す。同じく検査画像1フレームが4本の走査ラインの画像信号で構成されているとすると、1本目の走査ラインから4本目の走査ラインまで走査を行ってフレームを取得し、n枚のフレームを加算して画像加算を行う処理をフレーム加算という。フレーム加算のやり方は、n枚のフレームを取得後に加算処理を実行する場合もあれば、各フレームを取得する毎に順次加算を実行する場合、すなわち2枚目のフレームの取得時点で1枚目のフレームに加算処理を行い、3枚目のフレームの取得時点で既にある加算画像に3枚目のフレームを加算する・・・という処理を繰り返す手順をとる場合もある。
【0022】
(スプリット加算)
スプリット加算とは、ある走査ラインのn回走査後、当該走査ラインとは離間した走査ラインに移動してn回加算画像信号を取得する撮像方法をいう。例えば、第1走査ラインのn回走査→第3走査ラインのn回走査→第2走査ラインのn回走査→第4走査ラインのn回走査という要領で撮像を行う方法である。この場合、各スキャン間でどれだけ離間した走査ラインに移動するかは任意に設定できる。
【実施例1】
【0023】
本実施例1では、SEMを搭載した検査装置への適用例について説明する。図1のA図には本実施例の検査装置の全体構成図を示す。
【0024】
図1のA図に示す検査装置は、被検査試料であるウェーハ2をステージ4上に載置した走査電子顕微鏡3、欠陥検出のための画素演算を実行する画像処理部1、装置ユーザが各種の検査条件を設定するためのコンソール8により構成される。コンソール8は、検査画像やGUIが表示されるモニタとマウスなどのポインティングデバイス,キーボードなどの入力デバイス、およびGUIで必要な画面処理を実行するGUIユニット9などにより構成される。
【0025】
走査電子顕微鏡3は、電子銃から放出される一次電子線を対物レンズで試料上に集束させて照射し、これにより得られる2次電子あるいは反射電子を検出器5で検出する。この際、走査偏向器で一次電子線を試料上に走査することにより、所定の走査領域から発生する2次電子あるいは反射電子を二次元分布として検出できる。検出器5の出力信号はAD変換器によりディジタル画素信号に変換され、コンソール8のモニタに画像として表示される。
【0026】
走査電子顕微鏡3の各構成部は制御部6により制御され、例えば、電子銃や走査偏向器あるいは各種のレンズは制御部6内の電子光学系制御ユニットにより、ステージ4は制御部6内のステージ制御ユニットにより、真空ポンプ7は制御部6内の真空系制御ユニットにより制御される。上記のAD変換器は制御部6内に設けられる。
【0027】
本実施例の検査装置は、上記ライン加算,インターバル加算,フレーム加算,スプリット加算といった、画像信号のn回加算機能を備えている。制御部6は、ユーザが設定した検査レシピに従ってGUIユニット9が発行する動作コマンドに従って、走査偏向器の走査領域やステージ移動、あるいは一次電子線の照射条件を制御し、上記n回加算機能を実現させる。
【0028】
検出器5の出力信号は、上記の通りAD変換器によりディジタル画素信号に変換され、制御部6内で、上記ライン加算,インターバル加算,フレーム加算,スプリット加算のいずれかの処理手順に従って加算され、順次画像処理部1へ転送される。上記ディジタル画素信号が所定単位分集まったものがいわゆる画像である。
【0029】
図1のB図には、図1A図に示した画像処理部1の画像演算機能をより詳細な機能ブロック図で示した。画像処理部1の画像入力部101は受取ったSEM画像の中にある欠陥を分離するため、まず、欠陥候補画像103と参照画像104の画像ズレを位置ズレ検出部105で測り、ズレ量をDie画像調整部106で補正する。位置補正の後、欠陥判定部102は欠陥候補画像103と参照画像104を差分比較し、画像のGray Level(以下、GL)の差がある画素部分を欠陥として検出する。検出した欠陥を中心として画像を切り出し、ハブ12を通じて画像サーバ10のデータベース11に保存される。ここで、Gray Levelとは画像の明るさを示す指標であり、画像を構成する各画素の信号強度を適当な最大値で規格化して階調表現した値である。画像メモリ111は画像入力部101からの入力画像データあるいは欠陥判定部102での処理結果が一時的に格納される。ユーザは、コンソール8のGUIユニット9で欠陥画像を読み出して観察する。
【0030】
欠陥判定部102は、更に擬似欠陥抽出部107,欠陥抽出部108,有効加算回数判定部109,シーケンス制御部112を更に備えている。欠陥抽出部108は、1回加算からn回加算までの所望の画像信号を用いて上述したCTC比較,DTD比較あるいはGP比較などの欠陥抽出演算処理を実行し、取得画像内に存在する欠陥位置を抽出する。擬似欠陥抽出部107および有効加算回数判定部109の動作については後述する。合成部110は、擬似欠陥抽出部107と欠陥抽出部108の処理結果を合成して、欠陥検出結果から擬似欠陥を除去する。シーケンス制御部112は、画像処理全体の制御をつかさどる。なお、本実施例では、有効加算回数判定部109の機能は使用しないため、本実施例の検査装置における画像処理部1では、有効加算回数判定部109は実装されていなくてもよい。
【0031】
以上説明した画像処理部1の機能は、ソフトウェア実装もハードウェア実装のいずれの方法でも実装可能である。すなわち、ソフトウェア実装の場合は、汎用のCPUを用いて各機能ブロックの処理に相当するプログラムを実行させ、ハードウェア実装の場合は、各機能ブロックの処理に相当する処理チップを基板上に集積すれば実現できる。あるいはFPGAなどを用いて一部の機能をハード実装し、一部の機能をソフトウェア実装することもできる。
【0032】
次に、図3を用いて上述のCTC検査,DTD検査の概要について説明する。
【0033】
CTC検査法は半導体チップ内のメモリセル領域を検査するために使用される検査方法であり、欠陥候補セル画像301と301を1セルピッチ分ずらした参照セル画像302の差分演算を行い、得られるCTC差分画像303から欠陥を検出する。この比較演算処理をメモリセル領域内のメモリセルについて、検査セルと参照セルを変えながら(メモリセル1個分ずつずらしながら)領域端部から順次行っていき、メモリセル領域の欠陥検査を行う。
【0034】
DTD検査法は、半導体ウェーハ上に周期配列された検査対象Dieと適当な参照Dieの画像を比較して検査を行う検査方法であり、ロジック領域やメモリマットの周辺領域といった周期性の低いパターン形成領域の検査に有効である。欠陥候補ダイ画像304と1チップ分ずらした参照ダイ画像305を比較して得られるDTD差分画像306から欠陥を検出する。この比較演算処理をウェーハ内のDieについて、検査Dieと参照Dieを変えながら順次実行することによりウェーハの欠陥検査を行う。
【0035】
GPは、参照セル画像あるいは参照ダイ画像を固定の参照画像に変えて比較演算を行う検査方法である。
【0036】
次に図4を用いて、本実施例のFrame-to-Frame検査法(以下、FTF検査)について説明する。FTF検査の基本的なアルゴリズムは、加算回数の異なる2つの加算画像を用いて得られる差分画像を複数生成し、複数生成された差分画像に共通して検出される欠陥を擬似欠陥と判断するというものである。すなわち、2つの画像ペアの差分を取ると真の欠陥はキャンセルされる筈で、残る欠陥で信号強度の強い欠陥がn回加算処理によっても平均化されずに残る強い擬似欠陥であるという考え方に基づく。
【0037】
この考え方からすると、差分演算を行う画像ペアの一方は、最大加算回数だけ加算された画像であることが望ましい(真の欠陥の信号強度も擬似欠陥の信号強度も、最も強いと考えられるため)。また、複数の差分画像間での共通部分を取るという考え方からすると、複数の差分画像を生成するための複数の画像ペアは、互いに加算回数が一致しない加算画像を含んでいる必要がある。
【0038】
使用する差分画像は最低2つ(2セット)必要であるが、任意のセット数の差分画像を使用してFTF検査を行うことができる。
【0039】
以下、具体例で説明する。画像メモリ111に互いに加算回数の異なるn枚の加算画像が格納されているものとする。最大加算回数はn回である。図4に示すように、まず、視野内に欠陥部を含むn回目加算画像401とn−1回加算画像402を画像ペア1とし、n回目加算画像401とn−2回加算画像403を画像ペア2とし・・・という要領でn−1組の画像ペアを生成する。この処理は擬似欠陥抽出部107で実行される。
【0040】
次に、生成したn−1組の画像ペアについて位置ずれ検出部105および位置ずれ調整部106で視野中心を揃えて、擬似欠陥抽出部107で画像ペアの差分演算を実行する。
【0041】
差分演算の実行により、差分画像1と差分画像2・・・差分画像n−1が得られるが、これらの差分画像について、グレイレベルがバックグランドレベルよりも欠陥閾値以上に変化している箇所が存在する。擬似欠陥抽出部107は、このような箇所で差分画像1から差分画像n−1に共通する部分を擬似欠陥抽出画像405として抽出する。擬似欠陥抽出画像405中に存在する画素の座標が擬似欠陥座標である。最後まで残る擬似欠陥は図4に示されるように一つとは限らず、複数の場合もある。
【0042】
図4では、差分画像1から差分画像n−1の全てを使用して擬似欠陥抽出画像405を求めたが、任意の差分画像を使用して擬似欠陥抽出画像405を求めることができる。但し、アルゴリズムの特徴上、差分画像を求めるための画像ペアの一方はn回目加算画401であることが好ましい。
【0043】
図4で説明したアルゴリズムはあくまで擬似欠陥分布を求めるものであり、あくまで得られる欠陥検出結果から擬似欠陥を除くために補助的に使用されるアルゴリズムである。従って、真の欠陥は別な欠陥検出アルゴリズムにより検出する必要がある。
【0044】
そこで図5には、他の欠陥検出アルゴリズムと図4の擬似欠陥検出アルゴリズムを組み合わせて欠陥検出精度を高めた例について説明する。
【0045】
図5の左半分は、図4で説明したFTF検査のアルゴリズムを模式的に示した図であり、右半分は、通常のCTC検査のアルゴリズムを模式的に示した図である。図5に示す検査においては、最大加算回数がn回に設定されており、簡単のためn回加算画像からn−2回加算画像を使用して擬似欠陥を求めているものとする。
【0046】
図4と同じ要領で、n回加算画像501とn−1回加算画像502との画像ペア1を生成し、n回加算画像501とn−2回加算画像503との画像ペア2を生成し、これらの差分画像の共通部分を抽出することにより、擬似欠陥抽出画像504を取得する。擬似欠陥抽出画像504では真の欠陥である欠陥部は消えており、n回加算画像501で「擬似部」と表示した2つの擬似欠陥が残っている。
【0047】
一方、n回目加算画像501を検査領域画像とし、欠陥を含まない参照セル画像A506および参照セル画像B507との比較演算を行うことにより得られる画像がCTC欠陥画像508である。n回目加算画像501−参照セル画像A506およびn回目加算画像501−参照セル画像B507の2回の比較演算を行うのは、2つの差分画像を使用しないと真の欠陥かどうかが判定できないからである(通常のリアルゴースト処理)。CTC欠陥画像508には真の欠陥の他に2つの擬似欠陥が検出されている。
【0048】
以上得られたCTC欠陥画像508と擬似欠陥抽出画像504の比較演算を行うことにより、2つの擬似欠陥が除去された最終的な欠陥検出画像509が得られる。この処理は図1のB図に示した合成部110により実行される。なお、以上の説明はCTC検査を例にしたが、DTD検査あるいはGP検査にも適用可能であることは言うまでも無い。
【0049】
また、図4に示す画像ペアの一方として、1回加算画像からn−1回加算画像を平均化した画像を使用してもよい。
【0050】
以上、本実施例の検査装置により、検査結果から擬似欠陥を除去でき、従来よりも高精度な欠陥検出機能を実現する検査装置が得られる。また、アルゴリズムの改善により欠陥検出精度が向上するので、これにより検査レシピでの検査閾値設定が容易になり、レシピ作成者の熟練度の差による感度ばらつきが小さくなる。また、検出力の再現性と機差が小さくなり、装置が持つ検出力の性能を迅速に把握可能となる。また、擬似欠陥率が抑えられることで、SEMレビュー作業時間の短縮に繋がる。結果的に、半導体製造工程における低TAT(Turn Around Time)化に寄与できる。
【0051】
さらにまた、本実施例の欠陥検出アルゴリズムを複数の検査装置に実装して稼動させることにより、各検査装置の欠陥検出性能の機差が改善される。半導体製品の大手メーカの製品製造ラインには、定期メンテナンスやトラブル改善作業等を考慮して複数の同種SEM式検査装置を備えているが、これら複数のSEM式検査装置が本実施例の欠陥検出アルゴリズムを実装することにより、擬似欠陥の検出数のバラツキが小さくなり、検出結果のトレンドの変動を抑制することができる。
【実施例2】
【0052】
本実施例では、加算回数の異なる画像同士を用いてCTC検査,DTD検査あるいはGP検査を行って得られる検査結果を更に比較することにより、真の欠陥を特定する検査アルゴリズムを実行する機能を持つ検査装置について説明する。
【0053】
装置の全体構成は、図1に示す構成とほぼ同一であるので、共通部分についての機能・動作については説明は省略する。なお、図1のB図に示される画像処理部の機能のうち、擬似欠陥抽出部107および合成部110の機能は本実施例では使用しない(あるいは搭載されていない)。
【0054】
図6には本実施例の欠陥検出アルゴリズムの概要を示す。実施例1と同様、検査画像取得時の最大加算回数はn回であるとし、CTC検査により欠陥検査を行うものとする。
【0055】
検査画像の取得時、まずm回目の画像加算(m:1からnまでの自然数)が完了する毎に、m回加算検査画像とm加算参照セル画像との比較演算処理を行って欠陥検出を行う。すなわち、同じ加算回数の検査画像と参照セル画像同士で比較演算を行い、欠陥抽出画像を取得する。
【0056】
図6には、加算回数の異なる検査画像としてn回加算検査画像601,n−1回加算検査画像602およびn−2回加算検査画像602を使用し、各画像毎にn回加算欠陥抽出画像604,n−1回加算欠陥抽出画像605,n−2回加算欠陥抽出画像606が得られる。これらの欠陥抽出画像は、いずれの通常の欠陥検出アルゴリズムの処理結果であるので真の欠陥も含んでいる。従って、上記加算回数の異なる画像から得られる欠陥抽出画像の共通部分を抽出することにより、真の欠陥を抽出できる。以上の演算処理は、図1のB図に示した欠陥抽出部108により実行される。
【0057】
また、本実施例の欠陥検出アルゴリズムと実施例1の擬似欠陥検出アルゴリズムを組み合わせて検査を実行することもできる。例えば、図6に示すアルゴリズムと平行して1回加算画像からn−1回加算画像までの平均化処理を行い、得られた平均化画像とn回加算検査画像601との差分画像と、n回加算検査画像601とn−1回加算画像との差分画像との共通部分を抽出すれば、擬似欠陥を抽出できる。この処理結果と、図6に示すアルゴリズムの結果を合成すれば、擬似欠陥の除去された真の欠陥を抽出できる。
【実施例3】
【0058】
本実施例では、実施例1あるいは2で説明した検査アルゴリズムを最良の形態で実行するための追加機能について説明する。
【0059】
実施例1,2では、任意の加算回数の加算画像を用いて欠陥検出を行うという前提で説明を行ったが、実際には高精度な欠陥検査を行うためにより適切な加算回数が存在し、この加算回数は、欠陥検出アルゴリズムを実行するに際して、各検査画像が満たすべき以下の条件によって定まる。
【0060】
条件1:最大加算回数をn回とした場合に、m回加算画像(m:1からn−1までの自然数)における欠陥部の画素信号強度と、n回加算画像における欠陥部の画素信号強度の差が検査感度閾値より小さいこと。
【0061】
条件2:n回加算画像を用いて検出した擬似欠陥の座標と、m回加算画像を用いて検出した擬似欠陥の座標が同一でないこと。
【0062】
以上を図7を用いて具体的に説明する。
【0063】
図7は、最大加算回数画像(n回加算画像)とm回加算画像をツリー状に配置し、n回加算画像701と各m回加算画像との差分画像および差分画像のヒストグラム(度数分布)710をm回加算画像に対比して配置した模式図である。ヒストグラムは、横軸に差分画像の画素信号強度(すなわちn回加算画像m回加算画像とのグレイレベル差)を取り、縦軸に当該グレイレベルに対応する画素数を取っている。
【0064】
ここで、1回加算画像702とn回加算画像701の差分画像および2回加算画像703とn回加算画像701の差分画像である1回加算差分画像と2回加算差分画像を見ると、欠陥部の画素信号強度が閾値よりも大きいため、真の欠陥であるにもかかわらずキャンセルされずに差分画像に残っている。この状態でFTF比較を行うと欠陥部が1回加算差分画像と2回加算差分画像の共通部分として抽出され、真の欠陥であるにもかかわらず擬似欠陥と判断される。従って、1回加算画像702および2回加算画像703は、FFT検出に使用する加算画像としては不適である。n−3回加算画像705からn−1回加算画像707は条件1を満すので、FFT検出アルゴリズムに使用でき、擬似欠陥を除去し欠陥のみを抽出できる。
【0065】
一方、3回加算画像704は条件1を満たすが、3回加算差分画像にn回加算画像701と共通する擬似部が残っており条件2を満たしていない。この状態で、実施例2の欠陥検出アルゴリズムを実行すると、n回加算画像701と共通する擬似部は、擬似欠陥であるにもかかわらず欠陥として抽出されることになる。従って、3回加算差分画像は、実施例2の欠陥検出アルゴリズムで使用する加算画像としては不適である。
【0066】
また、場合によっては、実施例1の擬似欠陥検出アルゴリズムと実施例2の欠陥検出アルゴリズムを組み合わせて使用する場合もあるが、その場合に使用する加算画像としては、条件1と条件2を両方満たす必要がある。
【0067】
従って、使用する検査アルゴリズムに応じて使用する加算画像を適切に選択する必要がある。最も簡便には、条件1と条件2の両者を満足する加算画像を有効加算画像709として定めればよい。
【0068】
そこで以下では、有効加算画像を自動的に選別する機能について説明する。
【0069】
図7に示すヒストグラム710を見ると、加算回数の増加とともにヒストグラムの分布が鋭くなっていることが分かる。これは、加算により画像の画素強度のばらつきが低減されるためで、従って加算回数が増加すると、ヒストグラムの分散は小さくなる。
【0070】
一方、擬似欠陥(あるいは欠陥)とは、画像加算によりS/Nが改善されてもなお残る画素の異常値であり、欠陥検査とは、結局はヒストグラムの裾(テール)部分に含まれる画素数をカウントしていることに等しい。従って、ヒストグラムの分散が大きければ擬似欠陥ないし欠陥として検出される異常画素の数は増大し、分散が小さければ擬似欠陥ないし欠陥として検出される異常画素の数は減少する。たとえば、ヒストグラム710から、横軸のグレイレベル差がある一定値以上の画素数は、加算回数が減少するとともに増大することが分かる。すなわち、加算画像のヒストグラムの分散を何らかの指標で評価することによって、有効加算画像を選択することができる。
【0071】
図8のA図およびB図には、n回加算画像のヒストグラムと適当なm回加算画像のヒストグラム(本実施例では、例として2回加算画像のヒストグラム)を示す。2つのヒストグラムを比較すると、ヒストグラムの累積度数が等しくなるグレイレベル差は加算回数の小さなB図の方が大きくなっていることが分かる。これは、ヒストグラムの分散が大きいほど、ヒストグラムの裾が横軸方向に広がるためである。
【0072】
ここで、最大加算回数画像のヒストグラムを基準として、m回加算画像のヒストグラムの累積度数がn回加算画像のヒストグラムの累積度数と等しくなるグレイレベル差をプロットすると、図8のC図に示す回帰曲線が得られる。図8のC図は、縦軸にm回加算画像のグレイレベル差を、横軸に基準となるn回加算画像のグレイレベル差をプロットした図であり、m回加算画像のヒストグラムと最大加算回数画像のヒストグラムの相間をグレイレベル差で表現したものである。実際に得られる回帰曲線は、ジグザグ状に変動するが大まかには直線近似でき、図8のC図では直線近似したカーブを示している。
【0073】
図8のC図に示す回帰曲線において、n回加算画像のグレイレベル差は自分自身との相間を見ているため傾き1の直線であり、以下、加算回数が小さくなるに従って、近似直線の傾きが大きくなる。これらの回帰曲線の近似直線の傾きはm回加算画像のヒストグラムの最大加算回数画像のヒストグラムからの乖離度合いを示しており、分散の指標として使用できる。従って、m回加算画像について回帰曲線の近似直線の傾きを事前に求めておき、近似直線の傾きが適当な閾値よりも小さくなる加算回数画像のみ、本実施例の擬似欠陥検出ないし欠陥検出アルゴリズムに使用すると定めることができる。以降の説明では、上記の閾値を「有効加算回数分散閾値」と称する。
【0074】
実際の装置運用の際には、検査レシピの設定時に、適当な試し検査画像のn回加算画像を取得し、各加算回数画像について上述の近似直線を求め、傾きについて適当な閾値を設定することにより、検査に使用できる画像の加算回数(有効加算回数)を求める。
【0075】
なお、加算回数の異なる加算画像毎にヒストグラムの形状ばらつきが余りに大きい場合、正常な回帰曲線が得られない。そこで、最大加算回数画像のヒストグラム特徴量(ヒストグラムの横軸として使用するパラメータ)とm回加算画像のヒストグラム特徴量との差異が少なくなるよう、画像の明るさやコントラストを調整する。すなわち、一次電子線の照射条件や検出器5のゲインなどを調整する。
【0076】
次に、得られた有効加算回数が最終的に条件1と条件2を満足する加算数なのかどうかを検証する手法について説明する。以下の説明は、ステージ連続移動方式の検査装置を前提として行うが、ステップアンドリピート方式の検査装置にも適用できる。
【0077】
今、有効加算回数がm回と定まったとする。まず、一定の広い領域を通常の高感度検査方法で検査を実施し、適当なDOIを検出して座標を登録する。登録されたDOIの座標を中心として、適当な領域(例えば1ダイ分)のストライプ画像を取得する。この際、ストライプ画像としては最大加算回数画像(n回加算回数画像)を取得する。このn回加算ストライプ画像が図9に示す901である。ここで、ストライプ画像とはステージ4を1方向に連続的に移動し、一次電子線をステージ移動方向とは交差する方向に走査して得られる画像のことである。
【0078】
その後、m回加算画像とm+1回加算画像を用いてFTF検査方法で上記ストライプ画像の試し検査を実行し、その結果得られるFFT検査結果902が、条件1(欠陥候補画像701の欠陥が検出されない)および条件2(擬似欠陥の数が減っていない)を満たすかどうか確認する。なお、m回加算画像とm+1回加算画像は、上記n回加算画像の撮像過程で既に得られているため新たな撮像は不要である。また、上記の有効加算回数の妥当性判定処理は、図1のB図に示した有効加算回数判定部109により実行される。こうして有効加算数の最小値を確認できる。
【0079】
その後、本実施例の各アルゴリズムをそれぞれ実行して欠陥を検出し、擬似欠陥数がもっとも少なくなる検出結果903が出るアルゴリズムを選択する。以上により、長時間の検査実施前に有効加算回数の妥当性を判断できる。
【0080】
なお、以上の説明ではヒストグラム特徴量としてグレイレベル差を使用した例について説明したが、他のヒストグラム特徴量、例えば、画素信号の輝度(明るさ)、コントラスト差などを使用することもできる。
【実施例4】
【0081】
実施例1および2で説明した検査アルゴリズムは、加算回数の異なる多数の画像を使用するので画像処理部1への負担が増加する。そこで本実施例では負担を減少する対策について説明する。
【0082】
図10のA図には、図7で示した有効加算画像709の一つを示し、B図にはA図に示す画像の破線A′に対応する画像プロファイルを示す。但し、B図の画像プロファイルは、A図のプロファイルそのものではなく、n回加算画像701との差画像の画像プロファイルを示したものである。図10のB図に示すように、画像プロファイルにおける縦軸に欠陥検出区間1001,DOI・擬似欠陥検出区間1002,虚報区間1003の3つの区分を設ける。
【0083】
図11には、上記3つの区分を設ける場合の検査フローを示す。
【0084】
検査レシピ設定時に、欠陥検出感度閾値(ステップ1101)と擬似欠陥検出感度閾値(ステップ1102)を設定し、上記3つの区分を設定する。
【0085】
検査開始(ステップ1103)後、ある欠陥候補画像の欠陥候補画素の信号強度が擬似欠陥検出閾値と比べ(ステップ1104)高い場合は欠陥検出閾値と比較する段階(ステップ1106)へ進む。擬似欠陥感度閾値より低い場合は虚報として処理(ステップ1105)する。
【0086】
ステップ1106での判定の結果、欠陥候補画素の信号強度が欠陥検出閾値と比べ高い場合は欠陥として識別し(ステップ1110)、画像サーバ10へ伝送する。欠陥検出閾値と比べ低い場合は、実施例3で説明した有効加算回数に基づき有効加算画像を選別する処理(ステップ11107)、各有効加算画像のヒストグラム補正処理(ステップ1108)及び前記アルゴリズムの画像比較処理(ステップ1109)を実行する。これにより擬似欠陥が除去され、真の欠陥のみが抽出されて画像サーバ10へ伝送される。
【0087】
なお、以上説明した処理は、図1のB図におけるシーケンス制御部112が他の各機能ブロックを制御することにより実行される。
【0088】
以上説明したフローでは、グレイレベル差が欠陥検出区間1001とDOI・擬似欠陥検出区間1002の間である画素についてのみ擬似欠陥の除去処理を行っている。従って、全ての画素に対して擬似欠陥の除去処理を行う場合に比べて、画像処理の負担が大幅に軽減される。
【0089】
以上の実施例は、SEM式検査装置への適用例について説明してきたが、本発明を欠陥レビューSEMに適用することも可能である。上述のように、欠陥レビューSEMは、外観検査装置で検出した欠陥の位置情報に基づき、当該欠陥位置を高倍率で撮像する装置であり、欠陥を確実に捕捉するために、欠陥位置をサーチするための低倍率撮像と捕捉した欠陥の中心を視野中心として撮像を行う高倍率撮像の2段階撮像を行っている。従って、本発明を欠陥レビューSEMに適用した場合、以下のような効果が得られる。
・擬似欠陥を検出する確率が減るため、低倍撮像時に従来よりも視野を広く取ることができる(視野を広くとっても擬似欠陥が含まれる可能性が従来よりも低い)。従って、ADR実行時のスループットが向上する。
・真の欠陥のみ捕捉できる可能性が高まるため、結果的に欠陥捕捉率が向上する。
【符号の説明】
【0090】
1 画像処理部
2 半導体製品試料(ウェーハ)
3 走査電子顕微鏡
4 ステージ
5 検出器
6 制御部
7 真空ポンプ
8 コンソール
9 GUIユニット
10 画像サーバ
11 データベース
12 ハブ
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置や液晶など種々の回路パターンが形成された基板上に発生する物理的及び電気的不良(以下、欠陥)を検出する検査装置に関し、特に走査電子顕微鏡を搭載した検査装置に係わる。
【背景技術】
【0002】
半導体製品あるいは液晶製品の製造プロセスにおいては、各種の基板上に微細なパターンが形成される。前記製品の製造工程において、基板上に致命欠陥であるDOI(Defect of Interest)が存在すれば、製品不良の原因となる。従って、製品の歩留りを向上するために、基板上に存在する欠陥を製品の製造途中に検出し、欠陥の発生原因を迅速に特定して、後続して製造される製品に同じ欠陥を発生させないような対策を講じることが望まれている。
【0003】
欠陥検出の手段としては、光学画像や走査電子画像を撮像して欠陥位置を検出する外観検査装置が用いられている。また、欠陥の発生原因の特定には走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope;以下SEMと略)が搭載されたレビュー装置が用いられる。レビュー装置は、外観検査装置で検出した欠陥の特徴量(座標,サイズ,形態等)の結果情報に基づき、欠陥を高倍率で撮像する装置である。欠陥レビューは、手動(Manual Defect Review)またはADR(Auto Defect Review)で実行され、撮像結果をもとに欠陥分類を行う。各種製品の製造プロセスで発生する欠陥種はプロセス毎にある傾向があり、欠陥分類を行うことで、プロセス条件の変動を監視することができる。
【0004】
前記の外観検査装置としては、暗視野外観検査装置,明視野外観検査装置,SEM式外観検査装置等の種類がある。検査で使用する外観検査装置の種類は検出したい欠陥に応じて決める場合が多く、例えば、サイズが大きい異物は暗視野外観検査装置を、サイズが小さいパターン不良は明視野外観検査装置を、電気的不良や微細パターン不良はSEM式検査装置を使用する。
【0005】
外観検査装置あるいは欠陥検出機能を搭載したレビュー装置は、撮像された画像に所定アルゴリズムの演算処理を行って欠陥を検出する。代表的な手法として、Cell-to-Cell検査(以下、CTC検査またはArray検査)やDie-to-Die検査(以下、DTD検査またはRandom検査)、あるいは検出画像を適当な参照画像と比較して欠陥を検出するGolden Pattern検査(以下、GP検査)がある。CTC検査は、周期的に連続配列パターンが存在する領域内を検査するのに適し、DTD検査は半導体ウェーハのチップ領域(ダイ)といったランダムパターンが存在する領域内を検査するのに適する。
【0006】
CTC検査,DTD検査あるいはGP検査で使用される欠陥の抽出方法は、過去数十年間ほぼ変わっておらず、基本的には、ある画像とある画像の差分画像を生成し、差分画像を適当な閾値で二値化して、バックグランドとの差がある画素位置を欠陥として抽出する方法が用いられている。以上の検査方法は、バックグランドと差がある画素を欠陥とみなす考え方であるため、取得画像の明るさやコントラストによって、実際には欠陥ではない画素を欠陥として検出してしまう可能性が常に存在する。このため、擬似欠陥をなるべく排除できるような欠陥検出アルゴリズムが種々工夫されている。以上の実際には欠陥ではない欠陥を、以下の説明では擬似欠陥と称する。
【0007】
例えば、特公昭54−37475号公報(特許文献1)には、欠陥候補画像と参照画像の差分画像に加えて輪郭抽出画像も同時に利用し擬似欠陥を排除するアルゴリズムが開示されている。また、特開昭63−32666号公報(特許文献2)には、±1画素ずつずらした9枚の画像および画像信号ゲインを加減した2枚の画像、合計11枚の画像から、差信号の極性の変化を比較して欠陥と擬似欠陥を識別するアルゴリズムが開示されている。
【0008】
以上説明した欠陥検出方法において欠陥の検出精度を高めるには、ノイズ信号量に対する欠陥信号量の割合(信号対ノイズ比:S/N)を大きくすることが必須である。しかし、回路パターンの微細化と共に欠陥信号量も小さくなり、ノイズ信号との識別が難しくなっている。この傾向は半導体デバイス試料で特に顕著であり、超微細化のデザインルール(配線の最小線幅が30nm以下)を持つ半導体デバイス試料では、DOIの信号量とノイズとの区別がより難しくなっており、検査では、微細DOIと共に、擬似欠陥を多く検出することになる。従って、微細DOIを検出するには、何らかの工夫を行うことが必要となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特公昭54−37475号公報(米国特許4202631号)
【特許文献2】特開昭63−32666号公報(米国特許4860371号)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記「背景技術」で説明した理由により、回路パターンが形成された基板の検査において、検査結果における擬似欠陥率(擬似欠陥数/全検出数)が増大し、外観検査装置を用いた製造プロセス管理が難しくなっている。このような擬似欠陥は、高倍率のSEM式レビュー観察で確認しないと欠陥かどうかを判断することが難しく、外観検査装置の検査結果における擬似欠陥率が高くなると、レビュー装置で確認すべき欠陥数が増大し、従ってレビュー効率が低下する。結果として、製品の製造管理の業務効率に悪影響を与える。
【0011】
また外観検査装置には、通常、自動欠陥分類(ADC:Auto Defet Classification)機能が搭載されており、検査結果から擬似欠陥を自動削除できるが、DOIの微細化、S/Nの低下により、欠陥と擬似欠陥との特徴量(信号強度,サイズ,形態等)の差が縮まりADCでは分類及び削除できない擬似欠陥が増加している。
【0012】
本発明は、擬似欠陥を欠陥検出結果から従来よりも効率的に除去可能な検査方法ないし検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するための手段として、真の欠陥位置から得られる信号量はスキャン毎の変動が小さく、擬似欠陥の信号量はスキャン毎の変動が大きいという特徴を利用する。すなわち、同一箇所を複数回スキャンして得られる画像あるいは画像信号を加算し、加算回数の異なる画像あるいは画像信号を比較することにより、擬似欠陥あるいは真の欠陥の欠陥位置を検出する。擬似欠陥あるいは真の欠陥のいずれを検出するかは、加算回数の異なる複数の画像の比較演算の組み合わせによって定まる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、擬似欠陥率を抑えながら微細DOIを容易に検出できる検査方法ないし検査装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】走査電子顕微鏡(SEM)を搭載した検査装置の構成図。
【図2】ライン加算の方式種類の説明図と画質向上の効果を示す図。
【図3】Cell-to-Cell欠陥検出法及びDie-to-Die欠陥検出法の説明図。
【図4】加算画像を利用したFrame-to-Frame擬似欠陥抽出法を説明する図。
【図5】Frame-to-Frame擬似欠陥抽出法を利用して欠陥を抽出する説明図。
【図6】複数加算画像にCTC・DTD検出法を利用して欠陥を抽出する説明図。
【図7】欠陥候補画像を基にした各加算画像の差分画像の特徴を示す図。
【図8】加算画像の中から有効加算画像を自動選別する方法を説明する図。
【図9】試し検査の実行から有効加算数を検証する方法を説明する図。
【図10】検出感度閾値区間を三つに分割した方法を説明する図。
【図11】擬似欠陥検出感度閾値区間を導入した検査を説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に説明する実施形態は、SEMにより画像を取得して検査を行う検査装置の構成例について説明を行うが、画像加算によりS/Nを改善する撮像装置であれば、いずれの装置であっても適用可能である。
【0017】
はじめに、各実施例で共通する加算画像の取得方法について説明する。SEMの取得画像は、2次電子が少ない場合、画像13のようにバックグラウンドノイズが多く低S/Nの画像となる。S/Nを向上させる手段として、同一領域を複数回走査し、検出される2次電子あるいは反射電子信号を加算して画像信号量を実効的に増やす処理が行われる。図2のA図には、加算無しの画像13から画像加算を順次行うことにより、S/Nが改善された画像14が求められる様子を示す。加算回数は任意に定められるため、図2のA図では、検査で使用する画像の最大加算回数をn回と示している。
【0018】
n回加算画像を取得する代表的な方法として、ライン加算,インターバル加算,フレーム加算の3種がある。
【0019】
(ライン加算)
ライン加算は、走査ライン単位で複数回の走査を行い画像信号を加算し、得られるn回加算画像信号を合成して1つの画像を得る画像取得方法である。例えば、1回の撮像で取得する画像(フレームと称される)が4本の走査ラインの画像信号で構成されている場合を考える。図2のB図に示すように、まず1本目の走査ラインをn回走査し得られる画像信号を加算する。次に2本目の走査ラインをn回走査し得られる画像信号を加算し・・・という処理を順次4本目の走査ラインまで行い、得られる4本のn回加算画像信号を合成して1つの画像とする。
【0020】
(インターバル加算)
インターバル加算は、最初にある複数の走査ラインをn回走査して画像信号を加算した後、次の走査ラインに電子線照射位置を移動し、同じ本数の複数走査ラインをn回走査して画像信号を加算し・・・という走査を順次繰り返すことにより、あるフレームのn回加算画像を得る走査方法である。例えば1フレームが4本の走査ラインの画像信号で構成されている場合を例にすると、図2のC図に示すように最初に第1走査ラインと第2走査ライン(図中で四角内数字で示される)をn回走査して第1走査ラインと第2走査ラインのn回加算画像信号を取得し、次に第3走査ラインと第4走査ラインに移動して、第3走査ラインと第4走査ラインのn回加算画像信号を取得し、これらのn回加算画像信号を合成して、1つのn回加算画像を取得する。
【0021】
(フレーム加算)
図2のDにはフレーム加算の概要を示す。同じく検査画像1フレームが4本の走査ラインの画像信号で構成されているとすると、1本目の走査ラインから4本目の走査ラインまで走査を行ってフレームを取得し、n枚のフレームを加算して画像加算を行う処理をフレーム加算という。フレーム加算のやり方は、n枚のフレームを取得後に加算処理を実行する場合もあれば、各フレームを取得する毎に順次加算を実行する場合、すなわち2枚目のフレームの取得時点で1枚目のフレームに加算処理を行い、3枚目のフレームの取得時点で既にある加算画像に3枚目のフレームを加算する・・・という処理を繰り返す手順をとる場合もある。
【0022】
(スプリット加算)
スプリット加算とは、ある走査ラインのn回走査後、当該走査ラインとは離間した走査ラインに移動してn回加算画像信号を取得する撮像方法をいう。例えば、第1走査ラインのn回走査→第3走査ラインのn回走査→第2走査ラインのn回走査→第4走査ラインのn回走査という要領で撮像を行う方法である。この場合、各スキャン間でどれだけ離間した走査ラインに移動するかは任意に設定できる。
【実施例1】
【0023】
本実施例1では、SEMを搭載した検査装置への適用例について説明する。図1のA図には本実施例の検査装置の全体構成図を示す。
【0024】
図1のA図に示す検査装置は、被検査試料であるウェーハ2をステージ4上に載置した走査電子顕微鏡3、欠陥検出のための画素演算を実行する画像処理部1、装置ユーザが各種の検査条件を設定するためのコンソール8により構成される。コンソール8は、検査画像やGUIが表示されるモニタとマウスなどのポインティングデバイス,キーボードなどの入力デバイス、およびGUIで必要な画面処理を実行するGUIユニット9などにより構成される。
【0025】
走査電子顕微鏡3は、電子銃から放出される一次電子線を対物レンズで試料上に集束させて照射し、これにより得られる2次電子あるいは反射電子を検出器5で検出する。この際、走査偏向器で一次電子線を試料上に走査することにより、所定の走査領域から発生する2次電子あるいは反射電子を二次元分布として検出できる。検出器5の出力信号はAD変換器によりディジタル画素信号に変換され、コンソール8のモニタに画像として表示される。
【0026】
走査電子顕微鏡3の各構成部は制御部6により制御され、例えば、電子銃や走査偏向器あるいは各種のレンズは制御部6内の電子光学系制御ユニットにより、ステージ4は制御部6内のステージ制御ユニットにより、真空ポンプ7は制御部6内の真空系制御ユニットにより制御される。上記のAD変換器は制御部6内に設けられる。
【0027】
本実施例の検査装置は、上記ライン加算,インターバル加算,フレーム加算,スプリット加算といった、画像信号のn回加算機能を備えている。制御部6は、ユーザが設定した検査レシピに従ってGUIユニット9が発行する動作コマンドに従って、走査偏向器の走査領域やステージ移動、あるいは一次電子線の照射条件を制御し、上記n回加算機能を実現させる。
【0028】
検出器5の出力信号は、上記の通りAD変換器によりディジタル画素信号に変換され、制御部6内で、上記ライン加算,インターバル加算,フレーム加算,スプリット加算のいずれかの処理手順に従って加算され、順次画像処理部1へ転送される。上記ディジタル画素信号が所定単位分集まったものがいわゆる画像である。
【0029】
図1のB図には、図1A図に示した画像処理部1の画像演算機能をより詳細な機能ブロック図で示した。画像処理部1の画像入力部101は受取ったSEM画像の中にある欠陥を分離するため、まず、欠陥候補画像103と参照画像104の画像ズレを位置ズレ検出部105で測り、ズレ量をDie画像調整部106で補正する。位置補正の後、欠陥判定部102は欠陥候補画像103と参照画像104を差分比較し、画像のGray Level(以下、GL)の差がある画素部分を欠陥として検出する。検出した欠陥を中心として画像を切り出し、ハブ12を通じて画像サーバ10のデータベース11に保存される。ここで、Gray Levelとは画像の明るさを示す指標であり、画像を構成する各画素の信号強度を適当な最大値で規格化して階調表現した値である。画像メモリ111は画像入力部101からの入力画像データあるいは欠陥判定部102での処理結果が一時的に格納される。ユーザは、コンソール8のGUIユニット9で欠陥画像を読み出して観察する。
【0030】
欠陥判定部102は、更に擬似欠陥抽出部107,欠陥抽出部108,有効加算回数判定部109,シーケンス制御部112を更に備えている。欠陥抽出部108は、1回加算からn回加算までの所望の画像信号を用いて上述したCTC比較,DTD比較あるいはGP比較などの欠陥抽出演算処理を実行し、取得画像内に存在する欠陥位置を抽出する。擬似欠陥抽出部107および有効加算回数判定部109の動作については後述する。合成部110は、擬似欠陥抽出部107と欠陥抽出部108の処理結果を合成して、欠陥検出結果から擬似欠陥を除去する。シーケンス制御部112は、画像処理全体の制御をつかさどる。なお、本実施例では、有効加算回数判定部109の機能は使用しないため、本実施例の検査装置における画像処理部1では、有効加算回数判定部109は実装されていなくてもよい。
【0031】
以上説明した画像処理部1の機能は、ソフトウェア実装もハードウェア実装のいずれの方法でも実装可能である。すなわち、ソフトウェア実装の場合は、汎用のCPUを用いて各機能ブロックの処理に相当するプログラムを実行させ、ハードウェア実装の場合は、各機能ブロックの処理に相当する処理チップを基板上に集積すれば実現できる。あるいはFPGAなどを用いて一部の機能をハード実装し、一部の機能をソフトウェア実装することもできる。
【0032】
次に、図3を用いて上述のCTC検査,DTD検査の概要について説明する。
【0033】
CTC検査法は半導体チップ内のメモリセル領域を検査するために使用される検査方法であり、欠陥候補セル画像301と301を1セルピッチ分ずらした参照セル画像302の差分演算を行い、得られるCTC差分画像303から欠陥を検出する。この比較演算処理をメモリセル領域内のメモリセルについて、検査セルと参照セルを変えながら(メモリセル1個分ずつずらしながら)領域端部から順次行っていき、メモリセル領域の欠陥検査を行う。
【0034】
DTD検査法は、半導体ウェーハ上に周期配列された検査対象Dieと適当な参照Dieの画像を比較して検査を行う検査方法であり、ロジック領域やメモリマットの周辺領域といった周期性の低いパターン形成領域の検査に有効である。欠陥候補ダイ画像304と1チップ分ずらした参照ダイ画像305を比較して得られるDTD差分画像306から欠陥を検出する。この比較演算処理をウェーハ内のDieについて、検査Dieと参照Dieを変えながら順次実行することによりウェーハの欠陥検査を行う。
【0035】
GPは、参照セル画像あるいは参照ダイ画像を固定の参照画像に変えて比較演算を行う検査方法である。
【0036】
次に図4を用いて、本実施例のFrame-to-Frame検査法(以下、FTF検査)について説明する。FTF検査の基本的なアルゴリズムは、加算回数の異なる2つの加算画像を用いて得られる差分画像を複数生成し、複数生成された差分画像に共通して検出される欠陥を擬似欠陥と判断するというものである。すなわち、2つの画像ペアの差分を取ると真の欠陥はキャンセルされる筈で、残る欠陥で信号強度の強い欠陥がn回加算処理によっても平均化されずに残る強い擬似欠陥であるという考え方に基づく。
【0037】
この考え方からすると、差分演算を行う画像ペアの一方は、最大加算回数だけ加算された画像であることが望ましい(真の欠陥の信号強度も擬似欠陥の信号強度も、最も強いと考えられるため)。また、複数の差分画像間での共通部分を取るという考え方からすると、複数の差分画像を生成するための複数の画像ペアは、互いに加算回数が一致しない加算画像を含んでいる必要がある。
【0038】
使用する差分画像は最低2つ(2セット)必要であるが、任意のセット数の差分画像を使用してFTF検査を行うことができる。
【0039】
以下、具体例で説明する。画像メモリ111に互いに加算回数の異なるn枚の加算画像が格納されているものとする。最大加算回数はn回である。図4に示すように、まず、視野内に欠陥部を含むn回目加算画像401とn−1回加算画像402を画像ペア1とし、n回目加算画像401とn−2回加算画像403を画像ペア2とし・・・という要領でn−1組の画像ペアを生成する。この処理は擬似欠陥抽出部107で実行される。
【0040】
次に、生成したn−1組の画像ペアについて位置ずれ検出部105および位置ずれ調整部106で視野中心を揃えて、擬似欠陥抽出部107で画像ペアの差分演算を実行する。
【0041】
差分演算の実行により、差分画像1と差分画像2・・・差分画像n−1が得られるが、これらの差分画像について、グレイレベルがバックグランドレベルよりも欠陥閾値以上に変化している箇所が存在する。擬似欠陥抽出部107は、このような箇所で差分画像1から差分画像n−1に共通する部分を擬似欠陥抽出画像405として抽出する。擬似欠陥抽出画像405中に存在する画素の座標が擬似欠陥座標である。最後まで残る擬似欠陥は図4に示されるように一つとは限らず、複数の場合もある。
【0042】
図4では、差分画像1から差分画像n−1の全てを使用して擬似欠陥抽出画像405を求めたが、任意の差分画像を使用して擬似欠陥抽出画像405を求めることができる。但し、アルゴリズムの特徴上、差分画像を求めるための画像ペアの一方はn回目加算画401であることが好ましい。
【0043】
図4で説明したアルゴリズムはあくまで擬似欠陥分布を求めるものであり、あくまで得られる欠陥検出結果から擬似欠陥を除くために補助的に使用されるアルゴリズムである。従って、真の欠陥は別な欠陥検出アルゴリズムにより検出する必要がある。
【0044】
そこで図5には、他の欠陥検出アルゴリズムと図4の擬似欠陥検出アルゴリズムを組み合わせて欠陥検出精度を高めた例について説明する。
【0045】
図5の左半分は、図4で説明したFTF検査のアルゴリズムを模式的に示した図であり、右半分は、通常のCTC検査のアルゴリズムを模式的に示した図である。図5に示す検査においては、最大加算回数がn回に設定されており、簡単のためn回加算画像からn−2回加算画像を使用して擬似欠陥を求めているものとする。
【0046】
図4と同じ要領で、n回加算画像501とn−1回加算画像502との画像ペア1を生成し、n回加算画像501とn−2回加算画像503との画像ペア2を生成し、これらの差分画像の共通部分を抽出することにより、擬似欠陥抽出画像504を取得する。擬似欠陥抽出画像504では真の欠陥である欠陥部は消えており、n回加算画像501で「擬似部」と表示した2つの擬似欠陥が残っている。
【0047】
一方、n回目加算画像501を検査領域画像とし、欠陥を含まない参照セル画像A506および参照セル画像B507との比較演算を行うことにより得られる画像がCTC欠陥画像508である。n回目加算画像501−参照セル画像A506およびn回目加算画像501−参照セル画像B507の2回の比較演算を行うのは、2つの差分画像を使用しないと真の欠陥かどうかが判定できないからである(通常のリアルゴースト処理)。CTC欠陥画像508には真の欠陥の他に2つの擬似欠陥が検出されている。
【0048】
以上得られたCTC欠陥画像508と擬似欠陥抽出画像504の比較演算を行うことにより、2つの擬似欠陥が除去された最終的な欠陥検出画像509が得られる。この処理は図1のB図に示した合成部110により実行される。なお、以上の説明はCTC検査を例にしたが、DTD検査あるいはGP検査にも適用可能であることは言うまでも無い。
【0049】
また、図4に示す画像ペアの一方として、1回加算画像からn−1回加算画像を平均化した画像を使用してもよい。
【0050】
以上、本実施例の検査装置により、検査結果から擬似欠陥を除去でき、従来よりも高精度な欠陥検出機能を実現する検査装置が得られる。また、アルゴリズムの改善により欠陥検出精度が向上するので、これにより検査レシピでの検査閾値設定が容易になり、レシピ作成者の熟練度の差による感度ばらつきが小さくなる。また、検出力の再現性と機差が小さくなり、装置が持つ検出力の性能を迅速に把握可能となる。また、擬似欠陥率が抑えられることで、SEMレビュー作業時間の短縮に繋がる。結果的に、半導体製造工程における低TAT(Turn Around Time)化に寄与できる。
【0051】
さらにまた、本実施例の欠陥検出アルゴリズムを複数の検査装置に実装して稼動させることにより、各検査装置の欠陥検出性能の機差が改善される。半導体製品の大手メーカの製品製造ラインには、定期メンテナンスやトラブル改善作業等を考慮して複数の同種SEM式検査装置を備えているが、これら複数のSEM式検査装置が本実施例の欠陥検出アルゴリズムを実装することにより、擬似欠陥の検出数のバラツキが小さくなり、検出結果のトレンドの変動を抑制することができる。
【実施例2】
【0052】
本実施例では、加算回数の異なる画像同士を用いてCTC検査,DTD検査あるいはGP検査を行って得られる検査結果を更に比較することにより、真の欠陥を特定する検査アルゴリズムを実行する機能を持つ検査装置について説明する。
【0053】
装置の全体構成は、図1に示す構成とほぼ同一であるので、共通部分についての機能・動作については説明は省略する。なお、図1のB図に示される画像処理部の機能のうち、擬似欠陥抽出部107および合成部110の機能は本実施例では使用しない(あるいは搭載されていない)。
【0054】
図6には本実施例の欠陥検出アルゴリズムの概要を示す。実施例1と同様、検査画像取得時の最大加算回数はn回であるとし、CTC検査により欠陥検査を行うものとする。
【0055】
検査画像の取得時、まずm回目の画像加算(m:1からnまでの自然数)が完了する毎に、m回加算検査画像とm加算参照セル画像との比較演算処理を行って欠陥検出を行う。すなわち、同じ加算回数の検査画像と参照セル画像同士で比較演算を行い、欠陥抽出画像を取得する。
【0056】
図6には、加算回数の異なる検査画像としてn回加算検査画像601,n−1回加算検査画像602およびn−2回加算検査画像602を使用し、各画像毎にn回加算欠陥抽出画像604,n−1回加算欠陥抽出画像605,n−2回加算欠陥抽出画像606が得られる。これらの欠陥抽出画像は、いずれの通常の欠陥検出アルゴリズムの処理結果であるので真の欠陥も含んでいる。従って、上記加算回数の異なる画像から得られる欠陥抽出画像の共通部分を抽出することにより、真の欠陥を抽出できる。以上の演算処理は、図1のB図に示した欠陥抽出部108により実行される。
【0057】
また、本実施例の欠陥検出アルゴリズムと実施例1の擬似欠陥検出アルゴリズムを組み合わせて検査を実行することもできる。例えば、図6に示すアルゴリズムと平行して1回加算画像からn−1回加算画像までの平均化処理を行い、得られた平均化画像とn回加算検査画像601との差分画像と、n回加算検査画像601とn−1回加算画像との差分画像との共通部分を抽出すれば、擬似欠陥を抽出できる。この処理結果と、図6に示すアルゴリズムの結果を合成すれば、擬似欠陥の除去された真の欠陥を抽出できる。
【実施例3】
【0058】
本実施例では、実施例1あるいは2で説明した検査アルゴリズムを最良の形態で実行するための追加機能について説明する。
【0059】
実施例1,2では、任意の加算回数の加算画像を用いて欠陥検出を行うという前提で説明を行ったが、実際には高精度な欠陥検査を行うためにより適切な加算回数が存在し、この加算回数は、欠陥検出アルゴリズムを実行するに際して、各検査画像が満たすべき以下の条件によって定まる。
【0060】
条件1:最大加算回数をn回とした場合に、m回加算画像(m:1からn−1までの自然数)における欠陥部の画素信号強度と、n回加算画像における欠陥部の画素信号強度の差が検査感度閾値より小さいこと。
【0061】
条件2:n回加算画像を用いて検出した擬似欠陥の座標と、m回加算画像を用いて検出した擬似欠陥の座標が同一でないこと。
【0062】
以上を図7を用いて具体的に説明する。
【0063】
図7は、最大加算回数画像(n回加算画像)とm回加算画像をツリー状に配置し、n回加算画像701と各m回加算画像との差分画像および差分画像のヒストグラム(度数分布)710をm回加算画像に対比して配置した模式図である。ヒストグラムは、横軸に差分画像の画素信号強度(すなわちn回加算画像m回加算画像とのグレイレベル差)を取り、縦軸に当該グレイレベルに対応する画素数を取っている。
【0064】
ここで、1回加算画像702とn回加算画像701の差分画像および2回加算画像703とn回加算画像701の差分画像である1回加算差分画像と2回加算差分画像を見ると、欠陥部の画素信号強度が閾値よりも大きいため、真の欠陥であるにもかかわらずキャンセルされずに差分画像に残っている。この状態でFTF比較を行うと欠陥部が1回加算差分画像と2回加算差分画像の共通部分として抽出され、真の欠陥であるにもかかわらず擬似欠陥と判断される。従って、1回加算画像702および2回加算画像703は、FFT検出に使用する加算画像としては不適である。n−3回加算画像705からn−1回加算画像707は条件1を満すので、FFT検出アルゴリズムに使用でき、擬似欠陥を除去し欠陥のみを抽出できる。
【0065】
一方、3回加算画像704は条件1を満たすが、3回加算差分画像にn回加算画像701と共通する擬似部が残っており条件2を満たしていない。この状態で、実施例2の欠陥検出アルゴリズムを実行すると、n回加算画像701と共通する擬似部は、擬似欠陥であるにもかかわらず欠陥として抽出されることになる。従って、3回加算差分画像は、実施例2の欠陥検出アルゴリズムで使用する加算画像としては不適である。
【0066】
また、場合によっては、実施例1の擬似欠陥検出アルゴリズムと実施例2の欠陥検出アルゴリズムを組み合わせて使用する場合もあるが、その場合に使用する加算画像としては、条件1と条件2を両方満たす必要がある。
【0067】
従って、使用する検査アルゴリズムに応じて使用する加算画像を適切に選択する必要がある。最も簡便には、条件1と条件2の両者を満足する加算画像を有効加算画像709として定めればよい。
【0068】
そこで以下では、有効加算画像を自動的に選別する機能について説明する。
【0069】
図7に示すヒストグラム710を見ると、加算回数の増加とともにヒストグラムの分布が鋭くなっていることが分かる。これは、加算により画像の画素強度のばらつきが低減されるためで、従って加算回数が増加すると、ヒストグラムの分散は小さくなる。
【0070】
一方、擬似欠陥(あるいは欠陥)とは、画像加算によりS/Nが改善されてもなお残る画素の異常値であり、欠陥検査とは、結局はヒストグラムの裾(テール)部分に含まれる画素数をカウントしていることに等しい。従って、ヒストグラムの分散が大きければ擬似欠陥ないし欠陥として検出される異常画素の数は増大し、分散が小さければ擬似欠陥ないし欠陥として検出される異常画素の数は減少する。たとえば、ヒストグラム710から、横軸のグレイレベル差がある一定値以上の画素数は、加算回数が減少するとともに増大することが分かる。すなわち、加算画像のヒストグラムの分散を何らかの指標で評価することによって、有効加算画像を選択することができる。
【0071】
図8のA図およびB図には、n回加算画像のヒストグラムと適当なm回加算画像のヒストグラム(本実施例では、例として2回加算画像のヒストグラム)を示す。2つのヒストグラムを比較すると、ヒストグラムの累積度数が等しくなるグレイレベル差は加算回数の小さなB図の方が大きくなっていることが分かる。これは、ヒストグラムの分散が大きいほど、ヒストグラムの裾が横軸方向に広がるためである。
【0072】
ここで、最大加算回数画像のヒストグラムを基準として、m回加算画像のヒストグラムの累積度数がn回加算画像のヒストグラムの累積度数と等しくなるグレイレベル差をプロットすると、図8のC図に示す回帰曲線が得られる。図8のC図は、縦軸にm回加算画像のグレイレベル差を、横軸に基準となるn回加算画像のグレイレベル差をプロットした図であり、m回加算画像のヒストグラムと最大加算回数画像のヒストグラムの相間をグレイレベル差で表現したものである。実際に得られる回帰曲線は、ジグザグ状に変動するが大まかには直線近似でき、図8のC図では直線近似したカーブを示している。
【0073】
図8のC図に示す回帰曲線において、n回加算画像のグレイレベル差は自分自身との相間を見ているため傾き1の直線であり、以下、加算回数が小さくなるに従って、近似直線の傾きが大きくなる。これらの回帰曲線の近似直線の傾きはm回加算画像のヒストグラムの最大加算回数画像のヒストグラムからの乖離度合いを示しており、分散の指標として使用できる。従って、m回加算画像について回帰曲線の近似直線の傾きを事前に求めておき、近似直線の傾きが適当な閾値よりも小さくなる加算回数画像のみ、本実施例の擬似欠陥検出ないし欠陥検出アルゴリズムに使用すると定めることができる。以降の説明では、上記の閾値を「有効加算回数分散閾値」と称する。
【0074】
実際の装置運用の際には、検査レシピの設定時に、適当な試し検査画像のn回加算画像を取得し、各加算回数画像について上述の近似直線を求め、傾きについて適当な閾値を設定することにより、検査に使用できる画像の加算回数(有効加算回数)を求める。
【0075】
なお、加算回数の異なる加算画像毎にヒストグラムの形状ばらつきが余りに大きい場合、正常な回帰曲線が得られない。そこで、最大加算回数画像のヒストグラム特徴量(ヒストグラムの横軸として使用するパラメータ)とm回加算画像のヒストグラム特徴量との差異が少なくなるよう、画像の明るさやコントラストを調整する。すなわち、一次電子線の照射条件や検出器5のゲインなどを調整する。
【0076】
次に、得られた有効加算回数が最終的に条件1と条件2を満足する加算数なのかどうかを検証する手法について説明する。以下の説明は、ステージ連続移動方式の検査装置を前提として行うが、ステップアンドリピート方式の検査装置にも適用できる。
【0077】
今、有効加算回数がm回と定まったとする。まず、一定の広い領域を通常の高感度検査方法で検査を実施し、適当なDOIを検出して座標を登録する。登録されたDOIの座標を中心として、適当な領域(例えば1ダイ分)のストライプ画像を取得する。この際、ストライプ画像としては最大加算回数画像(n回加算回数画像)を取得する。このn回加算ストライプ画像が図9に示す901である。ここで、ストライプ画像とはステージ4を1方向に連続的に移動し、一次電子線をステージ移動方向とは交差する方向に走査して得られる画像のことである。
【0078】
その後、m回加算画像とm+1回加算画像を用いてFTF検査方法で上記ストライプ画像の試し検査を実行し、その結果得られるFFT検査結果902が、条件1(欠陥候補画像701の欠陥が検出されない)および条件2(擬似欠陥の数が減っていない)を満たすかどうか確認する。なお、m回加算画像とm+1回加算画像は、上記n回加算画像の撮像過程で既に得られているため新たな撮像は不要である。また、上記の有効加算回数の妥当性判定処理は、図1のB図に示した有効加算回数判定部109により実行される。こうして有効加算数の最小値を確認できる。
【0079】
その後、本実施例の各アルゴリズムをそれぞれ実行して欠陥を検出し、擬似欠陥数がもっとも少なくなる検出結果903が出るアルゴリズムを選択する。以上により、長時間の検査実施前に有効加算回数の妥当性を判断できる。
【0080】
なお、以上の説明ではヒストグラム特徴量としてグレイレベル差を使用した例について説明したが、他のヒストグラム特徴量、例えば、画素信号の輝度(明るさ)、コントラスト差などを使用することもできる。
【実施例4】
【0081】
実施例1および2で説明した検査アルゴリズムは、加算回数の異なる多数の画像を使用するので画像処理部1への負担が増加する。そこで本実施例では負担を減少する対策について説明する。
【0082】
図10のA図には、図7で示した有効加算画像709の一つを示し、B図にはA図に示す画像の破線A′に対応する画像プロファイルを示す。但し、B図の画像プロファイルは、A図のプロファイルそのものではなく、n回加算画像701との差画像の画像プロファイルを示したものである。図10のB図に示すように、画像プロファイルにおける縦軸に欠陥検出区間1001,DOI・擬似欠陥検出区間1002,虚報区間1003の3つの区分を設ける。
【0083】
図11には、上記3つの区分を設ける場合の検査フローを示す。
【0084】
検査レシピ設定時に、欠陥検出感度閾値(ステップ1101)と擬似欠陥検出感度閾値(ステップ1102)を設定し、上記3つの区分を設定する。
【0085】
検査開始(ステップ1103)後、ある欠陥候補画像の欠陥候補画素の信号強度が擬似欠陥検出閾値と比べ(ステップ1104)高い場合は欠陥検出閾値と比較する段階(ステップ1106)へ進む。擬似欠陥感度閾値より低い場合は虚報として処理(ステップ1105)する。
【0086】
ステップ1106での判定の結果、欠陥候補画素の信号強度が欠陥検出閾値と比べ高い場合は欠陥として識別し(ステップ1110)、画像サーバ10へ伝送する。欠陥検出閾値と比べ低い場合は、実施例3で説明した有効加算回数に基づき有効加算画像を選別する処理(ステップ11107)、各有効加算画像のヒストグラム補正処理(ステップ1108)及び前記アルゴリズムの画像比較処理(ステップ1109)を実行する。これにより擬似欠陥が除去され、真の欠陥のみが抽出されて画像サーバ10へ伝送される。
【0087】
なお、以上説明した処理は、図1のB図におけるシーケンス制御部112が他の各機能ブロックを制御することにより実行される。
【0088】
以上説明したフローでは、グレイレベル差が欠陥検出区間1001とDOI・擬似欠陥検出区間1002の間である画素についてのみ擬似欠陥の除去処理を行っている。従って、全ての画素に対して擬似欠陥の除去処理を行う場合に比べて、画像処理の負担が大幅に軽減される。
【0089】
以上の実施例は、SEM式検査装置への適用例について説明してきたが、本発明を欠陥レビューSEMに適用することも可能である。上述のように、欠陥レビューSEMは、外観検査装置で検出した欠陥の位置情報に基づき、当該欠陥位置を高倍率で撮像する装置であり、欠陥を確実に捕捉するために、欠陥位置をサーチするための低倍率撮像と捕捉した欠陥の中心を視野中心として撮像を行う高倍率撮像の2段階撮像を行っている。従って、本発明を欠陥レビューSEMに適用した場合、以下のような効果が得られる。
・擬似欠陥を検出する確率が減るため、低倍撮像時に従来よりも視野を広く取ることができる(視野を広くとっても擬似欠陥が含まれる可能性が従来よりも低い)。従って、ADR実行時のスループットが向上する。
・真の欠陥のみ捕捉できる可能性が高まるため、結果的に欠陥捕捉率が向上する。
【符号の説明】
【0090】
1 画像処理部
2 半導体製品試料(ウェーハ)
3 走査電子顕微鏡
4 ステージ
5 検出器
6 制御部
7 真空ポンプ
8 コンソール
9 GUIユニット
10 画像サーバ
11 データベース
12 ハブ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周期構造を備えるパターンが形成された被検査試料上に存在する欠陥の位置を求める検査装置において、
前記被検査試料上の所定領域の画像を撮像する走査電子顕微鏡と、
前記所定領域の画像を所定回数加算する画像処理装置とを備え、
前記画像処理装置は、加算回数の異なる画像同士の差分画像を複数生成し、
前記差分画像のグレイレベルがバックグランドレベルよりも所定閾値以上変化している箇所であって、前記複数の差分画像に共通して含まれる箇所を抽出することにより、前記所定領域の画像に含まれる擬似欠陥の位置を求めることを特徴とする検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の検査装置において、
前記所定領域内の欠陥位置を求めるに際して加算回数の最大値をn回とするとき、
前記n回加算画像を用いて欠陥を抽出し、
当該抽出した欠陥の位置と前記擬似欠陥の位置を比較することにより、前記n回加算画像に含まれる擬似欠陥の位置を除去することを特徴とする検査装置。
【請求項3】
請求項2に記載の検査装置において、
前記被検査試料が、メモリセル領域あるいはダイが形成された半導体ウェーハであって、
前記n回加算画像を用いた欠陥の抽出に際し、ダイ比較,セル比較あるいは所定参照画像との比較のいずれかの比較演算を行って欠陥位置を求めることを特徴とする検査装置。
【請求項4】
請求項2に記載の検査装置において、
前記n回加算画像を用いた欠陥の抽出に際し、前記所定領域の画像と、当該所定領域から前記周期分離れた領域の画像とを比較することにより、前記所定領域内の欠陥位置を求めることを特徴とする検査装置。
【請求項5】
請求項1に記載の検査装置において、
前記所定領域の画像に含まれる画素のグレイレベルを欠陥区間,擬似区間,虚報区間に区分し、
当該欠陥区間と擬似区間に含まれる画素についてのみ擬似欠陥を求めるための処理を実行することを特徴とする検査装置。
【請求項6】
周期構造を備えるパターンが形成された被検査試料上に存在する欠陥の位置を求める検査装置において、
前記被検査試料上の所定領域の画像を撮像する走査電子顕微鏡と、
前記所定領域の画像を所定回数加算する画像処理装置とを備え、
前記画像処理装置は、加算回数の異なる画像を複数生成し、
当該加算回数の異なる複数の画像各々に対して欠陥位置を求め、
前記加算回数の異なる複数の画像に対して共通して含まれる欠陥を真の欠陥として求めることを特徴とする検査装置。
【請求項7】
請求項6に記載の検査装置において、
前記加算回数の異なる複数の画像から各々検出される欠陥であって、少なくとも2つ以上の画像について位置が不一致な欠陥を擬似欠陥と判定することを特徴とする検査装置。
【請求項8】
請求項6に記載の検査装置において、
前記加算回数の異なる複数の画像のうち最大加算回数(n回とする)の画像を除く画像の平均化画像を生成し、
当該平均化画像と前記n回加算画像との差分画像と前記n回加算画像と前記n−1回加算画像との差分画像の共通部分を抽出することにより、擬似欠陥を抽出することを特徴とする検査装置。
【請求項9】
請求項1または6に記載の検査装置において、
前記加算回数の異なる画像同士の差分画像または前記加算回数の異なる複数の画像を生成するに際し、妥当な加算回数を求める機能を備えた検査装置。
【請求項10】
請求項9に記載の検査装置において、
前記加算回数の異なる画像各々について所定の特徴量に対する画素数のヒストグラムを求め、
当該ヒストグラムの分散幅が所定の範囲内に収まるような画像が得られる加算回数を前記妥当な加算回数として求めることを特徴とする検査装置。
【請求項11】
請求項10に記載の検査装置において、
前記ヒストグラムとして、グレイレベル,画素の明るさあるいはコントラストのいずれか1つに対する画素数のヒストグラムを用いることを特徴とする検査装置。
【請求項12】
請求項11に記載の検査装置において、
前記加算回数の異なる複数の画像のうち最大加算回数画像のヒストグラム特徴量を基準として、前記最大加算回数画像以外の画像が持つヒストグラム特徴量の差を補正することを特徴とする検査装置。
【請求項1】
周期構造を備えるパターンが形成された被検査試料上に存在する欠陥の位置を求める検査装置において、
前記被検査試料上の所定領域の画像を撮像する走査電子顕微鏡と、
前記所定領域の画像を所定回数加算する画像処理装置とを備え、
前記画像処理装置は、加算回数の異なる画像同士の差分画像を複数生成し、
前記差分画像のグレイレベルがバックグランドレベルよりも所定閾値以上変化している箇所であって、前記複数の差分画像に共通して含まれる箇所を抽出することにより、前記所定領域の画像に含まれる擬似欠陥の位置を求めることを特徴とする検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の検査装置において、
前記所定領域内の欠陥位置を求めるに際して加算回数の最大値をn回とするとき、
前記n回加算画像を用いて欠陥を抽出し、
当該抽出した欠陥の位置と前記擬似欠陥の位置を比較することにより、前記n回加算画像に含まれる擬似欠陥の位置を除去することを特徴とする検査装置。
【請求項3】
請求項2に記載の検査装置において、
前記被検査試料が、メモリセル領域あるいはダイが形成された半導体ウェーハであって、
前記n回加算画像を用いた欠陥の抽出に際し、ダイ比較,セル比較あるいは所定参照画像との比較のいずれかの比較演算を行って欠陥位置を求めることを特徴とする検査装置。
【請求項4】
請求項2に記載の検査装置において、
前記n回加算画像を用いた欠陥の抽出に際し、前記所定領域の画像と、当該所定領域から前記周期分離れた領域の画像とを比較することにより、前記所定領域内の欠陥位置を求めることを特徴とする検査装置。
【請求項5】
請求項1に記載の検査装置において、
前記所定領域の画像に含まれる画素のグレイレベルを欠陥区間,擬似区間,虚報区間に区分し、
当該欠陥区間と擬似区間に含まれる画素についてのみ擬似欠陥を求めるための処理を実行することを特徴とする検査装置。
【請求項6】
周期構造を備えるパターンが形成された被検査試料上に存在する欠陥の位置を求める検査装置において、
前記被検査試料上の所定領域の画像を撮像する走査電子顕微鏡と、
前記所定領域の画像を所定回数加算する画像処理装置とを備え、
前記画像処理装置は、加算回数の異なる画像を複数生成し、
当該加算回数の異なる複数の画像各々に対して欠陥位置を求め、
前記加算回数の異なる複数の画像に対して共通して含まれる欠陥を真の欠陥として求めることを特徴とする検査装置。
【請求項7】
請求項6に記載の検査装置において、
前記加算回数の異なる複数の画像から各々検出される欠陥であって、少なくとも2つ以上の画像について位置が不一致な欠陥を擬似欠陥と判定することを特徴とする検査装置。
【請求項8】
請求項6に記載の検査装置において、
前記加算回数の異なる複数の画像のうち最大加算回数(n回とする)の画像を除く画像の平均化画像を生成し、
当該平均化画像と前記n回加算画像との差分画像と前記n回加算画像と前記n−1回加算画像との差分画像の共通部分を抽出することにより、擬似欠陥を抽出することを特徴とする検査装置。
【請求項9】
請求項1または6に記載の検査装置において、
前記加算回数の異なる画像同士の差分画像または前記加算回数の異なる複数の画像を生成するに際し、妥当な加算回数を求める機能を備えた検査装置。
【請求項10】
請求項9に記載の検査装置において、
前記加算回数の異なる画像各々について所定の特徴量に対する画素数のヒストグラムを求め、
当該ヒストグラムの分散幅が所定の範囲内に収まるような画像が得られる加算回数を前記妥当な加算回数として求めることを特徴とする検査装置。
【請求項11】
請求項10に記載の検査装置において、
前記ヒストグラムとして、グレイレベル,画素の明るさあるいはコントラストのいずれか1つに対する画素数のヒストグラムを用いることを特徴とする検査装置。
【請求項12】
請求項11に記載の検査装置において、
前記加算回数の異なる複数の画像のうち最大加算回数画像のヒストグラム特徴量を基準として、前記最大加算回数画像以外の画像が持つヒストグラム特徴量の差を補正することを特徴とする検査装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−169571(P2012−169571A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31514(P2011−31514)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
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