説明

欠陥検査方法及び欠陥検査装置

【課題】フォトマスク(マスク)の表面に透明粒子が散布されても、粒状物による影響なく、マスクの欠陥を正確に検出できる欠陥検査方法及び欠陥検査装置。
【解決手段】粒状物が散布されたマスクを照明する光源装置、マスクの透過光を受ける対物レンズ、対物レンズからの光を受けてマスクの透過画像を撮像する撮像装置を含むカメラヘッドとを用い、オートフォーカス機構(AF機構)により撮像装置のフォーカスを基準動作点に制御しながらマスクの透過画像を撮像し、撮像装置から出力されるビデオ信号に基づいて欠陥検出を行う。欠陥検査に先立ってAF機構の基準動作点を設定する際、撮像装置のフォーカス点を対物レンズの光軸方向に変位させながら、マスクの透過画像を撮像する。また、粒状物の画像の輝度が周囲の画像の輝度とほぼ等しい輝度に移行するフォーカス点を検出する。最後に、検出されたフォーカス点をAF機構のフォーカス位置の基準点に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトマスクの透過画像を撮像し、透過画像のビデオ信号に基づいて欠陥を検出する欠陥検査方法及び欠陥検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスや液晶表示装置の製造工程においては、フォトマスクのパターンが基板上に転写されて、現像及びエッチング工程を経て各種のデバイスが製造されている。一方、フォトマスクに傷や異物等の欠陥が存在すると、正確なマスクパターンが基板に転写されず、各種デバイスの製造の歩留りが低下してしまう。このため、フォトマスクに存在する欠陥を検出する欠陥検査装置が用いられ、製造されたフォトマスクについて傷や異物等が存在するか否か検査されている。
【0003】
フォトマスクの欠陥検査装置では、フォトマスクの裏面側から照明光が投射され、フォトマスクを透過した透過光を対物レンズにより受光し、フォトマスクの透過画像が撮像されている。そして、透過画像のビデオ信号に基づき、ダイ対ダイ検査方式又はダイ対データベース検査方式により欠陥が検出されている(例えば、特許文献1参照)。また、欠陥検査の対象は、石英ガラスの基板上にクロムの遮光パターンが形成されたフォトマスクや銀等を用いたエマルジョンタイプのフォトマスクが検査対象とされている。
【特許文献1】特開2001−281159号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フォトマスクの表面は高精度な平坦面であるため、その表面に他の部材が貼り付き易く、一旦貼り付くと、その表面に傷が付き易い特性がある。この問題を解決するため、フォトマスクの表面に透明樹脂の粒状物が散布されたMAT型エマルジョンマスクが実用化されつつある。このMAT型エマルジョンマスクの表面には、透明な樹脂より構成され直径が数μm程度の粒状物が散布され、フォトマスクの表面に他の部材が貼り付くのが防止されている。
【0005】
MAT型エマルジョンマスクは、他の部材との貼り付きが防止され、表面に傷が付きにくい利点がある。しかしながら、MAT型エマルジョンマスクの表面には、無数の透明な粒状物が散布されているため、検査工程において撮像されるフォトマスクの透過像には、透明な粒状物が黒い画像として撮像され、疑似欠陥を発生する不具合が生じてしまう。さらに、粒状物はフォトマスクの表面に無数に散布されているので、疑似欠陥の数は多数に及び、正確な欠陥検査の妨げになっている。
【0006】
本発明の目的は、フォトマスクの表面に透明な粒子が無数に散布されても、透明粒状物による影響を受けることなく、フォトマスクの欠陥を正確に検出できる欠陥検査方法及び欠陥検査装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による欠陥検査方法は、 表面に透明な粒状物が散布されたフォトマスクに向けて照明光を投射する光源装置と、フォトマスクから出射した透過光を受光する対物レンズ、及び対物レンズからの出射光を受光してフォトマスクの透過画像を撮像する撮像装置を含むカメラヘッドとを用い、オートフォーカス機構により撮像装置のフォーカスを基準点に制御しながらフォトマスクの透過画像を撮像し、撮像装置から出力されるビデオ信号に基づいて欠陥検出を行う欠陥検査方法において、
撮像装置のフォーカス点を対物レンズの光軸方向に変位させながら、フォトマスクの透過画像を撮像する工程と、
前記粒状物の画像の輝度が周囲の画像の輝度とほぼ等しい輝度に移行するフォーカス点を検出する工程と、
検出されたフォーカス点を、オートフォーカス機構のフォーカス位置の基準点に設定する工程とを有することを特徴とする。
【0008】
本発明者がMAT型エマルジョンマスクについて種々の実験及び解析を行った結果、フォトマスクの透過像に基づいて欠陥検出を行う検査装置においては、透明な粒状物の画像の輝度が周囲の輝度に比べて著しく低いことが判明した。このため、本来正常な部位であっても、欠陥が存在するものと判定し、疑似欠陥が生じてしまう。この透明粒状物の画像について、さらに詳細に解析したところ、撮像される透明粒状物の輝度は撮像装置のフォーカス点と密接に関係することが判明した。すなわち、撮像装置のフォーカス点がフォトマスクの表面に位置する場合、透明粒状物は低輝度画像(暗い画像)として撮像され、撮像装置のフォーカス点が対物レンズに近づく方向に変位するにしたがって、徐々に輝度が増大し、フォーカス点が透明粒状物の平均粒子径に相当する距離だけ変位したフォーカス点において輝度が反転し、周囲の輝度に等しい輝度又はそれよりも若干高い輝度の画像として撮像されることが判明した。この現象は、照明光が透明粒状物の表面で散乱するため、フォーカス点がフォトマスクの表面に位置すると暗い低輝度画像として撮像され、フォーカス点が透明粒状物の表面上に位置すると、透明粒状物から出射する透明光が撮像装置の対応する素子に入射し、周囲と同程度の明るい輝度画像として撮像されるためであると考えられる。
【0009】
上述した実験及び解析結果に基づき、本発明では、撮像装置のフォーカス点を対物レンズの光軸方向に変位させながらフォトマスクの透過画像を撮像し、粒状物の画像の輝度が暗から明に反転するフォーカス点を検出し、検出されたフォーカス点をオートフォーカス機構のフォーカス制御の基準点に設定する。このように撮像装置のフォーカス点を設定すれば、透明粒状物の画像は周囲の画像とほぼ同程度の輝度の画像として撮像されるため、疑似欠陥の発生を有効に防止することが可能になる。また、撮像装置のフォーカス点の変位量は、粒状物の粒子径程度であるため、本来の欠陥検出の解像度に悪影響を及ぼすことなく欠陥を検出できることも実証されている。
【0010】
本発明による欠陥検査方法は、表面に透明な粒状物が散布されたフォトマスクに向けて照明光を投射する光源装置と、フォトマスクから出射した透過光を受光する対物レンズ、及び対物レンズからの出射光を受光してフォトマスクの透過画像を撮像する撮像装置を含むカメラヘッドとを用い、オートフォーカス機構により撮像装置のフォーカスを基準点に制御しながらフォトマスクの透過画像を撮像し、撮像装置から出力されるビデオ信号に基づいて欠陥検出を行う欠陥検査方法において、
撮像装置のフォーカス点を対物レンズの光軸方向に変位させながら、フォトマスクの透過画像を撮像し、撮像装置から出力されるビデオ信号の振幅を順次比較して差分信号を形成する工程と、
前記差分信号を所定の閾値と比較し、差分信号が閾値以下となるフォーカス点を検出する工程と、
検出されたフォーカス点を、オートフォーカス機構のフォーカス位置の基準点に設定する工程とを有することを特徴とする。
【0011】
透明粒状物の画像の輝度が周囲の輝度にほぼ等しくなるフォーカス点を検出するに当たり、撮像装置から出力されるビデオ信号の振幅変化を用いることができる。すなわち、フォーカス点がフォトマスクの表面上に位置する場合、振幅変化の大きなビデオ信号が出力され、輝度が反転するとビデオ信号の振幅変化は大幅に低下する。従って、ビデオ信号の振幅変化に基づき透明粒状物の輝度が反転したか否かを容易に判断することが可能である。
【0012】
本発明による欠陥検査方法の好適実施例は、撮像装置のフォーカス点を光軸方向に変位させる際、前記カメラヘッドを対物レンズの光軸方向に1ステップづつ変位させることを特徴とする。
【0013】
本発明による別の欠陥検査方法は、表面に透明な粒状物が散布されているフォトマスクに向けて照明光を投射する光源装置と、フォトマスクから出射した透過光を受光する対物レンズ、及び対物レンズからの出射光を受光してフォトマスクの透過画像を撮像する撮像装置を含むカメラヘッドとを用い、オートフォーカス機構により撮像装置のフォーカスを基準動作点に制御しながらフォトマスクの透過画像を撮像し、撮像装置から出力されるビデオ信号に基づいて欠陥検出を行う欠陥検査方法において、
前記オートフォーカス機構の基準点を、フォトマスクの表面から透明粒状物の平均粒子径に相当する距離だけ対物レンズに近づく方向に変位させて、フォトマスクの透過画像を撮像することを特徴とする。
種々のMAT型エマルジョンマスクについて実験した結果、透明粒状物の輝度が周囲の輝度にほぼ等しくなるフォーカス点は、透明粒状物の平均粒子径に相当する距離だけ対物レンズに近づく方向に変位した位置であることが判明した。また、透明粒状物の平均粒子径は予め既知である。従って、オートフォーカス機構の基準動作点をフォトマスクの表面から透明粒状物の平均粒子径に相当する距離だけ対物レンズに近づく方向に変位させることにより、透過粒状物による疑似欠陥が発生することなく欠陥検査を行うことが可能である。尚、MAT型エマルジョンマスクに用いられている透明粒状物の粒子径は、5〜10μm程度であり、その平均粒子径は約7μmである。
【0014】
本発明による欠陥検査方法は、表面に透明な粒状物が散布されたフォトマスクに向けて照明光を投射する光源装置と、フォトマスクから出射した透過光を受光する対物レンズ、及び対物レンズからの出射光を受光してフォトマスクの透過画像を撮像する撮像装置を含むカメラヘッドとを用い、オートフォーカス機構により撮像装置のフォーカスを基準動作点に制御しながらフォトマスクの透過画像を撮像し、撮像装置から出力されるビデオ信号に基づいて欠陥検出を行う欠陥検査方法において、
撮像装置のフォーカス点を対物レンズの光軸方向に変位させながら、フォトマスクの透過画像を撮像し、撮像装置から出力されるビデオ信号の振幅が最大となるフォーカス点を検出する工程と、
検出されたフォーカス点から前記透明粒状物の平均粒子径に相当する距離だけ対物レンズに近づく方向に変位した位置を、オートフォーカス機構のフォーカス位置の基準点に設定する工程とを有することを特徴とする。
ビデオ信号の振幅が最大となるフォーカス点において、透明粒状物は低輝度画像として撮像され、疑似欠陥が発生する。従って、ビデオ信号の振幅が最大となるフォーカス点から透明粒状物の平均粒子径に相当する距離だけ変位させることにより、透明粒状物は周囲とほぼ同等な輝度の画像として撮像され、この結果疑似欠陥を発生させることなく欠陥検査を行うことができる。
【0015】
本発明による欠陥検査方法の好適実施例は、フォトマスクは、その表面に数μmの直径を有する透明な樹脂の粒状物が散布されているMATタイプエマルジョンマスクとしたことを特徴とする。
【0016】
本発明による欠陥検査装置は、表面に透明な粒状物が散布されているフォトマスクに向けて照明光を投射する光源装置と、フォトマスクから出射した透過光を受光する対物レンズ、及び対物レンズからの出射光を受光してフォトマスクの透過画像を撮像する撮像装置を含むカメラヘッドと、撮像装置を対物レンズの光軸方向に変位させる手段と、撮像装置の焦点を基準動作点に制御するオートフォーカス機構とを具え、撮像装置のフォーカスを基準動作点に制御しながらフォトマスクの透過画像を撮像し、撮像装置から出力されるビデオ信号に基づいて欠陥検出を行う欠陥検査装置において、
前記透明粒状物が、周囲の画像の輝度にほぼ等しい輝度の画像として撮像される撮像装置のフォーカス点を検出する手段を有し、前記オートフォーカス機構の基準動作点を検出されたフォーカス点に設定してフォトマスクの透過画像を撮像することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、フォトマスクの表面に散布された透明粒状物の画像が周囲の画像とほぼ同程度の輝度画像として撮像されるので、フォトマスクに透明粒状物が散布されていても、疑似欠陥を発生することなく、欠陥検査を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は本発明による欠陥検査装置の一例を示す線図である。本例では、カメラヘッドと照明光源とを含む検査系を2台有し、ダイ対ダイ比較方式により欠陥検出を行う。尚、2つの検査系は同一の構成であるため、1つの検査系について説明する。欠陥検査すべきフォトマスクとして、表面に透明樹脂の粒状物が散布されたエマルジョンマスクを用いる。尚、粒状物の粒子径は5〜9μmであり、その平均粒子径は約7μmである。
【0019】
検査されるべきフォトマスク1の裏面側に、照明光を投射する光源装置2を配置する。この照明光源として、例えば水銀ランプを用いて紫外域の照明光を投射する。フォトマスク1をはさんで光源装置2とは反対側にフォトマスクの透過像を撮像する撮像装置が搭載されたカメラヘッド3を配置する。このカメラヘッド3は2次元駆動機構(図示せず)に連結され、光源装置2と同期して、フォトマスク1を2次元的に走査しながら透過像を撮像する。従って、カメラヘッド3により、フォトマスクの全面にわたって透過像が撮像される。さらに、カメラヘッド3には、カメラヘッド駆動装置4が連結され、カメラヘッド駆動装置を駆動制御することによりカメラヘッド3を対物レンズの光軸方向にそって変位させることができる。本例では、撮像装置のフォーカス点は、オートフォーカス機構から出力される焦点誤差信号に基づいてカメラヘッド駆動装置用の駆動制御信号を作成し、カメラヘッド3の光軸方向の位置を制御することにより制御する。カメラヘッド駆動装置として、ボールネジやラックピニオン機構等の種々の駆動装置を用いることができる。尚、カメラヘッドには、カメラヘッドの光軸方向の変位を検出する例えばエンコーダのような位置検出手段を設け、カメラヘッドの光軸方向の位置情報を検出する。
【0020】
カメラヘッド3は対物レンズ10を有し、対物レンズ10によりフォトマスク1から出射した透過光を受光する。対物レンズ10により受光された透過光は、レンズ11を経てビームスプリッタ12に入射する。ビームスプリッタで反射した光はレビュー光学系に入射し、フォトマスクの2次元画像をモニタ上に表示する。従って、ユーザは、レビュー光学系を介してモニタ上に表示される画像からフォトマスクの欠陥画像を観察することができる。ビームスプリッタを透過した光は、結像レンズ13及びダイクロイックミラー14を介して撮像素子15上に結像する。撮像素子として、例えば、ラインセンサ、2次元CCDカメラ又はTDIセンサ等の各種撮像素子を用いることができ、本例ではTDIセンサを用い、1ライン毎にビデオ信号を出力させる。尚、ダイクロイックミラー14は、後述するオートフォーカス用の光ビームとフォトマスクからの透過光とを分離する作用を果たす。 撮像素子15から出力されるビデオ信号は信号処理回路に供給され、当該ビデオ信号に基づいてフォトマスクに存在する欠陥が検出される。
【0021】
次に、撮像装置のフォーカス制御を行うオートフォーカス機構について説明する。半導体レーザ20からオートフォーカス用の光ビームを発生する。オートフォーカス用の光ビームは、欠陥検査用の検査ビームとは異なる波長光、例えば700〜800nmの近赤外域の波長光を用いる。この光ビームは、回転ミラー21に入射し、光軸のまわりで回転する光ビームに変換される。回転ミラーから出射した光ビームは、凹レンズ22、凸レンズ23、全反射ミラー24及びレンズ25を経てダイクロイックミラー14に入射する。ダイクロイックミラー14で反射した光ビームは、結像レンズ13、ビームスプリッタ12、レンズ11及び対物レンズ10を介してフォトマスク1の表面に斜めに入射する。従って、フォトマスクの表面は、回転する光ビームにより円軌道にしたがって走査されることになる。このように、フォトマスクの表面を円軌道にしたがって走査することにより、平均化された焦点誤差信号が出力される。
【0022】
フォトマスク1の表面で反射した反射光は、対物レンズ10により集光され、レンズ11、ビームスプリッタ12及び結像レンズ13を経てダイクロイックミラー14に入射する。この反射光は、ダイクロイックミラー14で反射し、フォトマスクから出射した検査光から分離される。ダイクロイックミラー14から出射した反射光は、レンズ25、全反射ミラー24、凸レンズ23、凹レンズ22を介して回転ミラー21に入射する。そして、全反射ミラー26を経て、2つの受光領域を有する光検出器27に入射する。
【0023】
このオートフォーカス機構は、いわゆる「光てこ」の原理を利用して撮像装置のフォーカス状態を検出する機構であり、前ピン、合焦、及び後ピン状態及びその変位量に応じて2個の受光領域に入射する光量が変化する。従って、2個の受光領域からの出力信号の差分信号を取り出すことにより焦点誤差信号が得られ、得られた焦点誤差信号を撮像装置の焦点制御信号として用いることができる。本例では、得られた焦点制御信号をカメラヘッド駆動装置4の駆動制御信号として用い、撮像装置の焦点状態が設定された基準の焦点状態に維持されるように制御する。すなわち、光検出器27からの出力信号から得られた焦点誤差信号に基づいて信号処理回路においてカメラヘッド駆動回路用の駆動制御信号を形成し、この駆動制御信号をカメラヘッド駆動回路に供給して、カメラヘッド3全体を対物レンズの光軸方向に移動させ、設定された焦点状態を維持しながらフォトマスクの透過画像を撮像する。
【0024】
図2は欠陥検出回路の一例を示す線図である。本例では、ダイ対ダイ比較により欠陥を検出する。2台のカメラヘッド3a及び3bの撮像装置からそれぞれ出力されるビデオ信号は信号処理回路30に供給する。これらのビデオ信号はA/D変換器31a及び31bによりそれぞれデジタル信号に変換する。2つのデジタル信号は、シェージング補正回路32a及び32bによりシェージング補正され、差分検出回路33に供給される。そして、2台のカメラヘッドから出力されたビデオ信号間の差分を検出する。出力される差分信号は閾値回路34に供給され、所定の閾値と比較する。所定の閾値を超える差分信号が出力された場合、欠陥が存在するものと判断し、欠陥検出信号を発生する。尚、同時にカメラヘッドのアドレスも検出され、検出された欠陥のアドレスをメモリ(図示せず)に記憶する。
【0025】
次に、オートフォーカス機構におけるフォーカス位置の基準点の設定について説明する。図3A〜Dは、撮像装置のフォーカス点を対物レンズの光軸方向に変位させながら撮像したフォトマスクの透過像を示す。図3Aは、撮像装置のフォーカス点を後ピン状態、すなわちフォトマスクの表面から基板内部にわずかに変位した位置に設定して撮像した透過像である。図3Bは、撮像装置のフォーカス点がフォトマスクの表面上に位置した状態で撮像した透過像である。図3Cは、撮像装置のフォーカス点をフォトマスクの表面から粒状物の平均粒子径に相当する距離だけ対物レンズ側に変位させて(後ピン状態)撮像した透過像である。図3Dは、フォーカス点をさらに1ステップだけ対物レンズ方向に変位させて撮像した透過像である。
【0026】
図3Aに示すように、撮像装置のフォーカス点がフォトマスクの内部側に変位している場合、粒状物の約半数程度が黒の画像(周辺のガラス基板の画像の輝度よりも低い輝度の画像)として撮像され、残りの半数程度の粒状物は、そのエッジ部分が低輝度画像として撮像され粒状物の内部は周囲のガラス基板と同等な輝度の画像として撮像される。一方、撮像装置のフォーカス点がフォトマスクの表面上に位置すると、図3Bに示すように、多くの粒状物は、周囲のガラス基板の部分の画像よりも低い輝度の画像として撮像される。このように、粒状物が低輝度画像として撮像されることは、照明光が粒状物の表面で散乱してしまい、撮像装置に入射する照明光の光量が著しく減少するためと解される。尚、このような輝度の低い画像が撮像されると、疑似欠陥が生じてしまう。
【0027】
一方、フォトマスクの表面から対物レンズに近づくように徐々に変位させると、粒状物の画像の輝度は徐々に高くなり、粒状物の平均粒子径程度の距離だけ対物レンズに近づくようにデフォーカスさせて撮像すると、粒状物の画像濃度は、周囲のガラス基板の画像の輝度とほぼ同等又はそれよりも若干高い輝度の明るい画像に反転する。この輝度の反転現象は、粒状物を透過した透過光が撮像装置の対応する素子に入射するからであると解される。粒状物が、周囲のガラス基板の画像の輝度と同等な輝度の画像として撮像されれば、疑似欠陥が発生せず、欠陥検査に悪影響を与えることなく欠陥検査を行うことができる。
【0028】
さらに、フォーカス点を対物レンズにちかづけデフォーカス量を大きくすると、画像全体の鮮明度が低下する。また、各粒状物の画像の輝度は、その周辺のガラス基板の画像の輝度とほぼ等しい輝度の画像として撮像される。
【0029】
上述した実験結果によれば、照明光は粒状物の表面で散乱するため、撮像装置のフォーカス点をフォトマスクの表面上に設定した場合、撮像装置に入射する光量が大幅に減少し、結果的に粒状物は、周囲よりも低い輝度の暗い画像とし撮像されるものと解される。一方、撮像装置のフォーカス点をフォトマスクの表面から粒状物の平均粒子径だけ対物レンズ側に変位させた場合、粒状物を透過した照明光が徐々に撮像装置の対応する素子に入射し始め、粒状物からの比較的大量の透過光が撮像装置に入射するため輝度反転が発生したものと解される。
【0030】
図4は、撮像装置であるTDIセンサから出力される1ラインごとのビデオ信号の波形を示す図である。図4A〜図4Dは、図3A〜Dの各フォーカス点に対応したTDIセンサからのビデオ信号を示す。図4Aに示すように、フォーカス点がフォトマスクの表面から基板側に僅かに変位した場合、比較的大きな振幅変化のビデオ信号が出力される。さらに、撮像装置のフォーカス点がフォトマスクの表面上に設定された場合、一層大きな振幅変化のビデオ信号が発生する。一方、フォーカス点がフォトマスクの表面から対物レンズ側に変位するにしたがってビデオ信号の振幅変化は小さくなり、粒状物の平均粒子径程度の距離だけ対物レンズ側に変位すると、ビデオ信号の振幅変化は大幅に減少する。さらに、フォーカス点が対物レンズ側に変位すると、解像度が低下しビデオ信号の振幅変化は同程度である。ビデオ信号の振幅変化が大きいことは、フォトマスク表面に存在する粒状物が低輝度画像として撮像されることに起因するものと考えられる。
【0031】
上述した実験結果によれば、撮像装置のフォーカス点がフォトマスクの表面上に位置する場合、ビデオ信号の振幅変化は最大であり、フォーカス点が対物レンズ側に変位するにしたがって振幅変化は減少する。この実験結果は図3に示すフォトマスク上に存在する粒状物の画像の輝度変化にほぼ対応している。図3及び図4に示す実験結果に基づき、本発明では、撮像装置のフォーカス点を徐々に変位させ、振幅変化が所定の閾値以下になった時のフォーカスの光軸方向の位置を検出する。検出されるフォーカス点は、粒状物が周囲の画像とほぼ同程度の輝度の画像として撮像される点に対応する。検出方法として、TDIセンサから出力されるビデオ信号の振幅変化を利用する。すなわち、欠陥検査のための透過像の撮像に先立って、カメラヘッドを光軸方向に1ステップづつ変位させて撮像装置のフォーカス点を対物レンズの光軸方向に変位させながらビデオ信号の振幅変化を検出する。そして、振幅変化が所定の閾値以下になった時点のフォーカス位置を検出し、検出したフォーカス点をオートフォーカス機構のフォーカス制御の基準点として設定する。このように設定すれば、透明な粒状物は周囲のガラス基板とほぼ同等な輝度画像として撮像されるので、透明な粒状物が欠陥画像として検出される不具合が解消される。
【0032】
図5は、オートフォーカス機構の基準点を設定する回路構成を示す図である。初めに、カメラヘッドを後ピン状態に設定し、フォトマスクの撮像を開始し、カメラヘッドを光軸方向に対物レンズに近づくように1ピッチづつ変位させて順次撮像する。撮像装置であるTDIセンサからのビデオ信号は、A/D変換器40によりデジタル信号に変換され、上限側のピーク値検出回路41a及び下限側のピーク値検出回路41bに供給され、上限側のピーク値と下限側のピーク値とを検出する。検出されたピーク値は減算回路42に供給され、ビデオ信号の振幅のピーク対ピーク値が検出される。このピーク対ピーク値信号は遅延メモリ43に供給され、1画像分遅延されて差分回路44に供給する。また、ピーク対ピーク値信号は差分回路44に直接供給する。差分回路44において、撮像装置のフォーカス点が順次光軸方向に変位したときのビデオ信号のピーク対ピークの振幅値が比較され、その差分信号を比較器45に供給する。比較器の他方に入力端子には所定の閾値が入力され、差分信号が閾値以下となるか否かが検出され、差分信号が閾値以下になったとき、出力信号を発生する。ここで、閾値は透明粒状物の画像の輝度が周囲画像の輝度にほぼ等しくなるときの振幅変化に対応する値に設定する。
【0033】
比較器45からの出力信号は、信号処理回路30に供給する。信号処理回路には、カメラヘッドの位置情報も順次入力すると共にオートフォーカス機構の光検出器から出力される焦点誤差信号も入力する。信号処理回路では、比較器45からの出力信号を受け取った際のカメラヘッドの位置情報に基づいてオートフォーカス機構の基準動作点を設定する。また、その時の焦点誤差信号に基づいてカメラヘッド駆動装置の駆動信号であるフォーカス制御信号を出力する。このように構成すれば、MAT型のエマルジョンマスクについて欠陥検査する際、透明粒状物は特異的な画像として撮像されず、疑似欠陥の発生が防止される。
【0034】
尚、順次出力されるビデオ信号のピーク対ピーク値信号を順次比較するのではなく、差分回路を介することなく比較器に直接供給してピーク対ピーク値を所定の閾値と直接比較し、閾値以下になった場合透明粒状物の輝度が周囲画像の輝度にほぼ等しくなったものと判断することも可能である。この場合、設定される閾値は、透明粒状物の画像が周囲画像の輝度にほぼ等しくなるように輝度が反転する際のビデオ信号の振幅のピーク対ピーク値に対応する値に設定する。
【0035】
変形例として、ビデオ信号の振幅変化が最大となるフォーカス点を検出し、検出されたフォーカス点から透明粒状物の平均粒子径に相当する距離だけ対物レンズに近づく方向に変位した点をオートフォーカス機構の基準動作点として設定することも可能である。
【0036】
さらに、別の変形例として、透明粒状物が周囲のガラス基板の画像の輝度にほぼ等しい輝度画像として撮像されるデフォーカス量を予め実験等により求めておき、信号処理回路にデフォーカス量を入力する手段を設け、オートフォーカス機構の基準動作点をデフォーカス量だけ変位した点に設定することも可能である。
或いは、透明粒状物の平均粒子径に相当する距離をデフォーカス量として入力することも可能である。
【0037】
本発明は上述した実施例だけに限定されず種々の変形や変更が可能である。例えば、上述した実施例では、欠陥検出手法としてダイ対ダイによる欠陥検査方式を用いたが、ダイ対データベース等の他の欠陥検出方法を利用して欠陥検出を行うことも可能である。また、撮像装置のフォーカス点を変位させる手段としてカメラヘッド駆動装置を用いてカメラヘッド全体を変位させたが、対物レンズに駆動機構を装着して対物レンズを光軸方向に移動させることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明による欠陥検査装置の一例を示す線図である。
【図2】欠陥検出回路の一例を示す線図である。
【図3】撮像装置のフォーカス点を対物レンズの光軸方向に変位させながら撮像したフォトマスクの透過像を示す図である。
【図4】ビデオ信号の振幅変化を示す図である。
【図5】オートフォーカス機構の基準動作点を設定する回路構成を示す図である。
【符号の説明】
【0039】
1 フォトマスク
2 光源装置
3 カメラヘッド
4 カメラヘッド駆動装置
10 対物レンズ
11 レンズ
12 ビームスプリッタ
13 結像レンズ
14 ダイクロイックミラー
15 撮像素子
20 半導体レーザ
21 回転ミラー
22 凸レンズ
23 凹レンズ
24 全反射ミラー
25 レンズ
30 信号処理回路
31,31b A/D変換器
32a,32b シェージング補正回路
33 差分検出回路
34 閾値回路
40 A/D変換器
41a,41b ピーク検出回路
42 減算器
43 遅延メモリ
44 差分回路
45 比較器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に透明な粒状物が散布されたフォトマスクに向けて照明光を投射する光源装置と、フォトマスクから出射した透過光を受光する対物レンズ、及び対物レンズからの出射光を受光してフォトマスクの透過画像を撮像する撮像装置を含むカメラヘッドとを用い、オートフォーカス機構により撮像装置のフォーカスを基準点に制御しながらフォトマスクの透過画像を撮像し、撮像装置から出力されるビデオ信号に基づいて欠陥検出を行う欠陥検査方法において、
撮像装置のフォーカス点を対物レンズの光軸方向に変位させながら、フォトマスクの透過画像を撮像する工程と、
前記粒状物の画像の輝度が周囲の画像の輝度とほぼ等しい輝度に移行するフォーカス点を検出する工程と、
検出されたフォーカス点を、オートフォーカス機構のフォーカス位置の基準点に設定する工程とを有することを特徴とする欠陥検査方法。
【請求項2】
表面に透明な粒状物が散布されたフォトマスクに向けて照明光を投射する光源装置と、フォトマスクから出射した透過光を受光する対物レンズ、及び対物レンズからの出射光を受光してフォトマスクの透過画像を撮像する撮像装置を含むカメラヘッドとを用い、オートフォーカス機構により撮像装置のフォーカスを基準点に制御しながらフォトマスクの透過画像を撮像し、撮像装置から出力されるビデオ信号に基づいて欠陥検出を行う欠陥検査方法において、
撮像装置のフォーカス点を対物レンズの光軸方向に変位させながら、フォトマスクの透過画像を撮像し、撮像装置から出力されるビデオ信号の振幅を順次比較して差分信号を形成する工程と、
前記差分信号を所定の閾値と比較し、差分信号が閾値以下となるフォーカス点を検出する工程と、
検出されたフォーカス点を、オートフォーカス機構のフォーカス位置の基準点に設定する工程とを有することを特徴とする欠陥検査方法。
【請求項3】
請求項1に記載の欠陥検査方法において、前記撮像装置のフォーカス点を光軸方向に変位させる際、前記カメラヘッドを対物レンズの光軸方向に1ステップづつ変位させることを特徴とする欠陥検査方法。
【請求項4】
表面に透明な粒状物が散布されているフォトマスクに向けて照明光を投射する光源装置と、フォトマスクから出射した透過光を受光する対物レンズ、及び対物レンズからの出射光を受光してフォトマスクの透過画像を撮像する撮像装置を含むカメラヘッドとを用い、オートフォーカス機構により撮像装置のフォーカスを基準点に制御しながらフォトマスクの透過画像を撮像し、撮像装置から出力されるビデオ信号に基づいて欠陥検出を行う欠陥検査方法において、
前記オートフォーカス機構の基準点を、フォトマスクの表面から透明粒状物の平均粒子径に相当する距離だけ対物レンズに近づく方向に変位させて、フォトマスクの透過画像を撮像することを特徴とする欠陥検査方法。
【請求項5】
表面に透明な粒状物が散布されたフォトマスクに向けて照明光を投射する光源装置と、フォトマスクから出射した透過光を受光する対物レンズ、及び対物レンズからの出射光を受光してフォトマスクの透過画像を撮像する撮像装置を含むカメラヘッドとを用い、オートフォーカス機構により撮像装置のフォーカスを基準動作点に制御しながらフォトマスクの透過画像を撮像し、撮像装置から出力されるビデオ信号に基づいて欠陥検出を行う欠陥検査方法において、
撮像装置のフォーカス点を対物レンズの光軸方向に変位させながら、フォトマスクの透過画像を撮像し、撮像装置から出力されるビデオ信号の振幅が最大となるフォーカス点を検出する工程と、
検出されたフォーカス点から前記透明粒状物の平均粒子径に相当する距離だけ対物レンズに近づく方向に変位した位置を、オートフォーカス機構のフォーカス位置の基準点に設定する工程とを有することを特徴とする欠陥検査方法。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項に記載の欠陥検査方法において、前記フォトマスクは、その表面に数μmの直径を有する透明な樹脂の粒状物が散布されているMATタイプエマルジョンマスクとしたことを特徴とする欠陥検査方法。
【請求項7】
表面に透明な粒状物が散布されているフォトマスクに向けて照明光を投射する光源装置と、フォトマスクから出射した透過光を受光する対物レンズ、及び対物レンズからの出射光を受光してフォトマスクの透過画像を撮像する撮像装置を含むカメラヘッドと、撮像装置を対物レンズの光軸方向に変位させる手段と、撮像装置のフォーカスを基準点に制御するオートフォーカス機構とを具え、撮像装置のフォーカスを基準点に制御しながらフォトマスクの透過画像を撮像し、撮像装置から出力されるビデオ信号に基づいて欠陥検出を行う欠陥検査装置において、
前記透明粒状物が、周囲の画像の輝度にほぼ等しい輝度の画像として撮像される撮像装置のフォーカス点を検出する手段を有し、前記オートフォーカス機構の基準動作点を検出されたフォーカス点に設定してフォトマスクの透過画像を撮像することを特徴とする欠陥検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−292221(P2008−292221A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−136225(P2007−136225)
【出願日】平成19年5月23日(2007.5.23)
【出願人】(000115902)レーザーテック株式会社 (184)
【Fターム(参考)】